プラズマ処理装置、マイクロ波導入装置及びプラズマ処理方法
【課題】処理容器の上部にマイクロ波導入機構を設けることが必須とされず、装置設計における自由度が高いマイクロ波プラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】マイクロ波導入装置5は、マイクロ波を生成すると共に、マイクロ波を複数の経路に分配して出力するマイクロ波出力部50と、マイクロ波出力部50から出力されたマイクロ波を処理容器2内へ導入するアンテナユニット60と、アンテナユニット60により導入されたマイクロ波を処理容器2内に放射するマイクロ波放射モジュール80と、を有している。マイクロ波放射モジュール80は、誘電体窓部材としてのマイクロ波透過板81と、導体部材としてのカバー部材82とを有している。カバー部材82は、マイクロ波透過板81を介して処理容器2内に導入されるマイクロ波がウエハWの方向へ向かうようにマイクロ波の方向を規制する。
【解決手段】マイクロ波導入装置5は、マイクロ波を生成すると共に、マイクロ波を複数の経路に分配して出力するマイクロ波出力部50と、マイクロ波出力部50から出力されたマイクロ波を処理容器2内へ導入するアンテナユニット60と、アンテナユニット60により導入されたマイクロ波を処理容器2内に放射するマイクロ波放射モジュール80と、を有している。マイクロ波放射モジュール80は、誘電体窓部材としてのマイクロ波透過板81と、導体部材としてのカバー部材82とを有している。カバー部材82は、マイクロ波透過板81を介して処理容器2内に導入されるマイクロ波がウエハWの方向へ向かうようにマイクロ波の方向を規制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理容器へ所定周波数のマイクロ波を導き、プラズマを生成させて被処理体をプラズマ処理するプラズマ処理装置、マイクロ波導入装置及びプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ等の被処理体に対して所定のプラズマ処理を施すプラズマ処理装置として、処理容器内にマイクロ波を導入してプラズマを生成させるマイクロ波プラズマ処理装置が知られている。このマイクロ波プラズマ処理装置では、処理容器内で高密度のプラズマを生成させることが可能であり、生成されたプラズマによって、例えば酸化処理、窒化処理、堆積処理、エッチング処理等が行われる。
【0003】
マイクロ波プラズマ処理装置では、処理容器内にマイクロ波を導入するためのマイクロ波導入機構が、処理容器の上部に配置される。例えば、複数のスロットを有する平面アンテナを用いて処理容器内にマイクロ波を導入するスロットアンテナ方式のマイクロ波プラズマ処理装置では、通常、被処理体の径より大きなマイクロ波透過窓が処理容器の天井部に被処理体に対向して配置される。また、例えば特許文献1では、大電力を投入して処理容器内で大きなプラズマ放電を得るため、処理容器の上部に複数のマイクロ波導入機構を設けたマイクロ波プラズマ処理装置も提案されている。
【0004】
しかし、従来のマイクロ波プラズマ処理装置では、処理容器の上部には、マイクロ波導入機構以外の他の機構、例えばガス導入機構などを配設する余地がほとんどなく、装置設計における自由度が制約されてしまうという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−259633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、処理容器の上部にマイクロ波導入機構を設けることが必須でなく、装置設計における自由度が高いマイクロ波プラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプラズマ処理装置は、
被処理体を収容する処理容器と、
前記処理容器内で被処理体を載置する載置部と、
前記処理容器内に処理ガスを供給するガス供給機構と、
前記処理容器内で前記処理ガスのプラズマを生成させるためのマイクロ波を発生させると共に、前記処理容器内に前記マイクロ波を導入するマイクロ波導入装置と
を備えている。
本発明のプラズマ処理装置において、前記マイクロ波導入装置は、
被処理体の周囲に配置され、マイクロ波を透過させて前記処理容器内へ放射する誘電体窓部材と、
前記誘電体窓部材を介して前記処理容器内に放射されるマイクロ波が被処理体の表面と平行な方向で被処理体へ向かうように規制する導体部材と、
を含むマイクロ波放射モジュールを有している。
【0008】
本発明のプラズマ処理装置において、前記マイクロ波導入装置は、マイクロ波を生成すると共に出力するマイクロ波出力部と、
前記処理容器の下部に外側から装着されて前記マイクロ波出力部から出力されたマイクロ波を前記マイクロ波放射モジュールへ供給する1つ又は複数のアンテナモジュールと、を備えていてもよい。
【0009】
本発明のプラズマ処理装置において、前記誘電体窓部材は、前記処理容器内の空間に露出して被処理体に向けてマイクロ波を放射するマイクロ波放射面を有していてもよい。また、前記導体部材は、前記マイクロ波放射面を除く前記誘電体窓部材の表面を覆うものであってもよい。この場合、前記マイクロ波放射面は、被処理体のエッジの形状に対応した形状を有していてもよく、例えば、被処理体が平面視円形である場合、前記マイクロ波放射面が弧状に湾曲した形状を有していてもよい。
【0010】
本発明のプラズマ処理装置は、被処理体を囲むように、複数の前記マイクロ波放射モジュールを有していてもよい。この場合、1つの前記マイクロ波放射モジュールに対し、1つ又は複数の前記アンテナモジュールが接続されていてもよい。
【0011】
本発明のプラズマ処理装置は、前記アンテナモジュールを少なくとも3つ以上有していてもよい。
【0012】
本発明のプラズマ処理装置は、前記誘電体窓部材の下端が、前記載置部に載置された被処理体の上面の高さ以上の高さ位置に配置されていてもよい。
【0013】
本発明のプラズマ処理装置は、前記ガス供給機構から供給される処理ガスを導入するガス導入部が、前記処理容器の天井部に設けられていてもよい。この場合、前記処理容器内を減圧排気する排気装置に接続する排気口が、前記処理容器の天井部に設けられていてもよい。
【0014】
また、本発明のプラズマ処理装置は、前記処理容器内を減圧排気する排気装置に接続する排気口が、前記処理容器の側壁部又は底壁部に設けられていてもよい。
【0015】
また、本発明のプラズマ処理装置において、前記載置部は、前記処理容器の底壁部に設けられていてもよい。
【0016】
また、本発明のプラズマ処理装置は、前記載置部に高周波電力を供給する高周波電源部を有していてもよい。
【0017】
また、本発明のプラズマ処理装置は、前記載置部と前記マイクロ波放射モジュールとの間に、直流電圧が印加される直流電圧印加部を有していてもよい。
【0018】
本発明のプラズマ処理方法は、上記いずれかのプラズマ処理装置により、被処理体を処理するものである。
【0019】
本発明のマイクロ波導入装置は、被処理体を収容する処理容器内で処理ガスのプラズマを生成させるためのマイクロ波を発生させると共に、前記処理容器内に前記マイクロ波を導入するマイクロ波導入装置である。
このマイクロ波導入装置は、
被処理体を囲むようにその周囲に配置され、マイクロ波を透過させて前記処理容器内へ放射する誘電体窓部材と、
前記誘電体窓部材を介して前記処理容器内に放射されるマイクロ波が被処理体の表面と平行な方向で被処理体へ向かうように規制する導体部材と、
を含むマイクロ波放射モジュールを有していてもよい。
【0020】
本発明のマイクロ波導入装置は、
マイクロ波を生成すると共に出力するマイクロ波出力部と、
前記処理容器の下部に外側から装着されて前記マイクロ波出力部から出力されたマイクロ波を、前記マイクロ波放射モジュールへ供給する1つ又は複数のアンテナモジュールと、
をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のプラズマ処理装置は、被処理体の周囲に誘電体窓部材と導体部材とを含むマイクロ波放射モジュールを配置し、被処理体の周囲からマイクロ波を導入する。これにより、本発明によれば、処理容器の上部にマイクロ波導入機構を設ける必要がなくなり、処理容器の上部を他の機構に利用することが可能となる。従って、装置設計上の自由度を大幅に向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置の概略の構成を示す断面図である。
【図2】図1に示した制御部の構成を示す説明図である。
【図3】図1に示したマイクロ波導入装置におけるマイクロ波出力部とアンテナユニットの構成を示す説明図である。
【図4】図3に示したマイクロ波導入部を示す断面図である。
【図5】マイクロ波導入部の平面アンテナを示す平面図である。
【図6】図1に示したマイクロ波放射モジュールの配置を示す平面図である。
【図7】一つのマイクロ波放射モジュールとウエハとの配置を説明する要部斜視図である。
【図8】第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置の第1の変形例を示す説明図である。
【図9】第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置の第2の変形例を示す説明図である。
【図10】図1のプラズマ処理装置における天井部の底面図である。
【図11】比較例のプラズマ処理装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図12A】第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置の第3の変形例を示す説明図である。
【図12B】第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置の第4の変形例を示す説明図である。
【図12C】第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置の第5の変形例を示す説明図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係るプラズマ処理装置の概略の構成を示す断面図である。
【図14】図13に示したマイクロ波導入装置におけるマイクロ波出力部とアンテナモジュールの構成を示す説明図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係るプラズマ処理装置の概略の構成を示す断面図である。
【図16】図15に示したプラズマ処理装置の要部を拡大して示す断面図である。
【図17】本発明の第4の実施の形態に係るプラズマ処理装置の概略の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1および図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置の概略の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係るプラズマ処理装置の概略の構成を示す断面図である。図2は、図1に示した制御部の構成を示す説明図である。本実施の形態に係るプラズマ処理装置1は、連続する複数の動作を伴って、例えば半導体デバイス製造用の半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」と記す。)Wに対して、成膜処理、拡散処理、エッチング処理、アッシング処理等の所定の処理を施す装置である。
【0024】
プラズマ処理装置1は、被処理体であるウエハWを収容する処理容器2と、処理容器2の内部においてウエハWを載置する載置部17と、処理容器2内にガスを供給するガス供給機構3と、処理容器2内を減圧排気する排気装置4と、処理容器2内にプラズマを生成させるためのマイクロ波を発生させると共に、処理容器2内にマイクロ波を導入するマイクロ波導入装置5と、これらプラズマ処理装置1の各構成部を制御する制御部8とを備えている。なお、処理容器2内にガスを供給する手段としては、ガス供給機構3の代りに、プラズマ処理装置1の構成には含まれない外部のガス供給機構を使用してもよい。
【0025】
処理容器2は、例えば略円筒形状をなしている。処理容器2は、例えばアルミニウムおよびその合金等の金属材料によって形成されている。処理容器2の表面は、例えばアルマイト処理(陽極酸化処理)が施されていてもよい。処理容器2は、接地されている。なお、処理容器2と処理容器2に装着された各部材との接合部分には、シール部材が配備されており、処理容器2内の気密性が維持されている。
【0026】
処理容器2は、板状の天井部11および底壁部13と、天井部11と底壁部13とを連結する側壁部12とを有している。天井部11は、複数の開口部を有している。例えば、天井部11には、複数の排気口11aが設けられている。また、天井部11には、複数のガス導入用開口11bが設けられている。各ガス導入用開口11bには、後述するノズル16が装着されている。
【0027】
側壁部12は、処理容器2に隣接する図示しない搬送室との間でウエハWの搬入出を行うための搬入出口12aを有している。処理容器2と図示しない搬送室との間には、ゲートバルブGが配置されている。ゲートバルブGは、搬入出口12aを開閉する機能を有している。ゲートバルブGは、閉状態で処理容器2を気密にシールすると共に、開状態で処理容器2と図示しない搬送室との間でウエハWの移送を可能にする。
【0028】
底壁部13には、載置部17が設けられている。載置部17は、底壁部13とは別部材によって底壁部13よりもやや厚みをもって形成され、底壁部13に固定されている。載置部17は、例えば処理容器2と同様のアルミニウムおよびその合金等の金属材料や、セラミックスなどによって形成することができる。載置部17には、載置領域17aが設けられている。この載置領域17aは、被処理体であるウエハWを水平に載置するためのものである。本実施の形態のプラズマ処理装置1において、載置領域17aは、載置部17の内壁面に、ウエハWの大きさより少し大きく形成された凹部である。なお、載置領域17aは、凹部に限らず、凸部やテーブル状に設けてもよい。また、載置部17には、載置領域17aに近接して、その直下に電極26が埋設されている。電極26は、載置領域17aと同程度の大きさを有し、全体が絶縁被覆材27によって被覆されている。
【0029】
底壁部13は、複数(図1では2つのみ図示)の開口部13bを有している。各開口部13bには、後述するマイクロ波導入装置5のマイクロ波導入部63(アンテナモジュール61の一部分)が、処理容器2の外側から装着されている。つまり、マイクロ波導入装置5は、処理容器2の下部に設けられている。マイクロ波導入装置5は、処理容器2内に電磁波(マイクロ波)を導入してプラズマを生成するプラズマ生成手段として機能する。マイクロ波導入装置5の構成については、後で詳しく説明する。
【0030】
プラズマ処理装置1は、更に、載置領域17aを含む載置部17に高周波電力を供給する高周波バイアス電源25と、載置部17と高周波バイアス電源25との間に設けられた整合器24とを備えている。高周波バイアス電源25は、載置部17の載置領域17aの直下に埋設された電極26に電気的に接続されている。高周波バイアス電源25は、ウエハWにイオンを引き込むために、載置部17に高周波電力を供給する。なお、載置部17を導電性材料で形成する場合は、電極26を設けず、載置部17と底壁部13との間に絶縁材を介在させて、載置部17と高周波バイアス電源25とを電気的に接続する構成としてもよい。また、高周波バイアス電源25と整合器24とを用いない装置構成とすることも可能であり、この場合、載置部17を底壁部13と一体に形成してもよい。
【0031】
図示しないが、プラズマ処理装置1は、更に、載置領域17aを加熱または冷却する温度制御機構を備えている。温度制御機構は、例えば、ウエハWの温度を、25℃(室温)〜900℃の範囲内で制御する。また、載置領域17aには、その上面(載置面)に対して突没可能に設けられた複数の支持ピン28が設けられている。複数の支持ピン28は、任意の昇降機構により上下に変位し、上昇位置において、図示しない搬送室との間でウエハWの受け渡しを行うことができるように構成されている。
【0032】
プラズマ処理装置1は、更に、処理容器2の天井部11に設けられたガス導入部15を備えている。ガス導入部15は、天井部11の複数のガス導入用開口11bに装着された円筒形状をなすノズル16を有している。ノズル16は、その下面に形成されたガス孔16aを有している。ノズル16の配置については、後で説明する。
【0033】
ガス供給機構3は、ガス供給源31を含むガス供給装置3aと、ガス供給源31とガス導入部15とを接続する配管32とを有している。なお、図1では、1つのガス供給源31を図示しているが、ガス供給装置3aは、使用されるガスの種類に応じて複数のガス供給源を含んでいてもよい。
【0034】
ガス供給源31は、例えば、プラズマ生成用の希ガスや、酸化処理、窒化処理、成膜処理、エッチング処理およびアッシング処理に使用される処理ガス等のガス供給源として用いられる。なお、プラズマ生成用の希ガスとしては、例えば、Ar、Kr、Xe、He等が使用される。酸化処理に使用される処理ガスとしては、例えば、酸素ガス、オゾン、NO2ガス等の酸化性ガスが使用される。窒化処理に使用される処理ガスとしては、窒化ガス、NH3ガス、N2Oガス等が使用される。また、処理容器2においてCVD処理が行われる場合には、ガス供給源31は、成膜原料ガス、処理容器2内の雰囲気を置換する際に使用されるパージガス、処理容器2内をクリーニングする際に使用されるクリーニングガス等の供給源として用いられる。なお、成膜原料ガスとしては、例えば、TiCl4ガスとNH3ガスが使用される。パージガスとしては、例えば、N2、Ar等が使用される。クリーニングガスとしては、例えば、ClF3、NF3等が使用される。エッチングガスとしては、CF4ガス、HBrガス等が使用される。アッシングガスとしては、酸素ガス等が使用される。
【0035】
図示しないが、ガス供給装置3aは、更に、配管32の途中に設けられたマスフローコントローラおよび開閉バルブを含んでいる。処理容器2内に供給されるガスの種類や、これらのガスの流量等は、マスフローコントローラおよび開閉バルブによって制御される。
【0036】
プラズマ処理装置1は、更に、排気口11aと排気装置4とを接続する排気管14を備えている。排気装置4は、例えばAPCバルブと、処理容器2の内部空間を所定の真空度まで高速に減圧することが可能な高速真空ポンプとを有している。このような高速真空ポンプとしては、例えばターボ分子ポンプ等がある。排気装置4の高速真空ポンプを作動させることによって、処理容器2は、その内部空間が所定の真空度、例えば0.133Paまで減圧される。なお、図1では、複数の排気口11aから排気管14を介して1つの排気装置4に接続する構成となっているが、排気装置4は排気口11a毎に個別に設けてもよい。
【0037】
プラズマ処理装置1の各構成部は、それぞれ制御部8に接続されて、制御部8によって制御される。制御部8は、典型的にはコンピュータである。図2に示した例では、制御部8は、CPUを備えたプロセスコントローラ91と、このプロセスコントローラ91に接続されたユーザーインターフェース92および記憶部93とを備えている。
【0038】
プロセスコントローラ91は、プラズマ処理装置1において、例えば温度、圧力、ガス流量、バイアス印加用の高周波電力、マイクロ波出力等のプロセス条件に関係する各構成部(例えば、高周波バイアス電源25、ガス供給装置3a、排気装置4、マイクロ波導入装置5等)を統括して制御する制御手段である。
【0039】
ユーザーインターフェース92は、工程管理者がプラズマ処理装置1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードやタッチパネル、プラズマ処理装置1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を有している。
【0040】
記憶部93には、プラズマ処理装置1で実行される各種処理をプロセスコントローラ91の制御によって実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や、処理条件データ等が記録されたレシピ等が保存されている。プロセスコントローラ91は、ユーザーインターフェース92からの指示等、必要に応じて、任意の制御プログラムやレシピを記憶部93から呼び出して実行する。これにより、プロセスコントローラ91による制御下で、プラズマ処理装置1の処理容器2内において所望の処理が行われる。
【0041】
上記の制御プログラムおよびレシピは、例えば、CD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリ、DVD、ブルーレイディスク等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納された状態のものを利用することができる。また、上記のレシピは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用することも可能である。
【0042】
次に、図1、図3ないし図7を参照して、マイクロ波導入装置5の構成について詳しく説明する。図3は、マイクロ波導入装置5におけるマイクロ波出力部50とアンテナユニット60の構成を示す説明図である。図4は、処理容器2に装着されたマイクロ波導入部63とマイクロ波放射モジュール80を拡大して示す断面図である。図5は、図4に示したマイクロ波導入部63における平面アンテナ71を示す平面図である。図6は、処理容器2内におけるマイクロ波放射モジュール80の配置を説明する平面図である。図7は、一つのマイクロ波放射モジュール80とウエハWとの配置を説明する要部斜視図である。
【0043】
前述のように、マイクロ波導入装置5は、処理容器2の下部に設けられ、処理容器2内に電磁波(マイクロ波)を導入してプラズマを生成するプラズマ生成手段として機能する。図1および図3に示したように、マイクロ波導入装置5は、マイクロ波を生成すると共に、マイクロ波を複数の経路に分配して出力するマイクロ波出力部50と、マイクロ波出力部50から出力されたマイクロ波を処理容器2内へ導入するアンテナユニット60と、アンテナユニット60により導入されたマイクロ波を処理容器2内に放射するマイクロ波放射モジュール80と、を有している。
【0044】
<マイクロ波出力部>
マイクロ波出力部50は、電源部51と、マイクロ波発振器52と、マイクロ波発振器52によって発振されたマイクロ波を増幅するアンプ53と、アンプ53によって増幅されたマイクロ波を複数の経路に分配する分配器54とを有している。マイクロ波発振器52は、所定の周波数(例えば、2.45GHz)でマイクロ波を発振(例えば、PLL発振)させる。なお、マイクロ波の周波数は、2.45GHzに限らず、8.35GHz、5.8GHz、1.98GHz等であってもよい。また、このようなマイクロ波出力部50は、マイクロ波の周波数を例えば800MHzから1GHzの範囲内とする場合にも適用することが可能である。分配器54は、入力側と出力側のインピーダンスを整合させながらマイクロ波を分配する。
【0045】
<アンテナユニット>
アンテナユニット60は、複数のアンテナモジュール61を含んでいる。複数のアンテナモジュール61は、それぞれ、分配器54によって分配されたマイクロ波を処理容器2内に導入する。各アンテナモジュール61は、分配されたマイクロ波を主に増幅して出力するアンプ部62と、アンプ部62から出力されたマイクロ波を処理容器2内に導入するマイクロ波導入部63と、を有している。
【0046】
(アンプ部)
アンプ部62は、マイクロ波の位相を変化させる位相器62Aと、メインアンプ62Cに入力されるマイクロ波の電力レベルを調整する可変ゲインアンプ62Bと、ソリッドステートアンプとして構成されたメインアンプ62Cと、後述するマイクロ波導入部63のアンテナ部で反射されてメインアンプ62Cに向かう反射マイクロ波を分離するアイソレータ62Dとを含んでいる。
【0047】
位相器62Aは、マイクロ波の位相を変化させて、マイクロ波の放射特性を変化させることができるように構成されている。位相器62Aは、例えば、アンテナモジュール61毎にマイクロ波の位相を調整することによって、マイクロ波の指向性を制御してプラズマの分布を変化させることに用いられる。なお、このような放射特性の調整を行わない場合には、位相器62Aを設けなくてもよい。
【0048】
可変ゲインアンプ62Bは、個々のアンテナモジュール61のばらつきの調整や、プラズマ強度の調整のために用いられる。例えば、可変ゲインアンプ62Bをアンテナモジュール61毎に変化させることによって、処理容器2内全体のプラズマの分布を調整することができる。
【0049】
図示しないが、メインアンプ62Cは、例えば、入力整合回路、半導体増幅素子、出力整合回路および高Q共振回路を含んでいる。半導体増幅素子としては、例えば、E級動作が可能なGaAsHEMT、GaNHEMT、LD(Laterally Diffused)−MOSが用いられる。
【0050】
アイソレータ62Dは、サーキュレータとダミーロード(同軸終端器)とを有している。サーキュレータは、後述するマイクロ波導入部63のアンテナ部で反射された反射マイクロ波をダミーロードへ導くものである。ダミーロードは、サーキュレータによって導かれた反射マイクロ波を熱に変換するものである。
【0051】
(マイクロ波導入部)
図1に示したように、複数のマイクロ波導入部63は、処理容器2の底壁部13に設けられた開口部13bに装着されている。より具体的には、マイクロ波導入部63の上部が開口部13bに挿入され、図示しない固定手段で固定されている。図4に示したように、マイクロ波導入部63は、インピーダンスを整合させるチューナ64と、増幅されたマイクロ波を処理容器2内に放射するアンテナ部65と、金属材料よりなり、図4における上下方向に延びる円筒状の形状を有する本体容器66と、本体容器66内において本体容器66が延びる方向と同じ方向に延びる内側導体67とを有している。本体容器66および内側導体67は、同軸管を構成している。本体容器66は、この同軸管の外側導体を構成している。内側導体67は、棒状または筒状の形状を有している。本体容器66の内周面と内側導体67の外周面との間の空間は、マイクロ波伝送路68を形成する。
【0052】
図示しないが、アンテナモジュール61は、更に、本体容器66の基端側(下端側)に設けられた給電変換部を有している。給電変換部は、同軸ケーブルを介してメインアンプ62Cに接続されている。アイソレータ62Dは、同軸ケーブルの途中に設けられている。
【0053】
チューナ64は、スラグチューナを構成している。具体的には、図4に示したように、チューナ64は、本体容器66のアンテナ部65よりも基端部側(下端部側)の部分に配置された2つのスラグ74A,74Bと、2つのスラグ74A,74Bを動作させるアクチュエータ75と、このアクチュエータ75を制御するチューナコントローラ76とを有している。
【0054】
スラグ74A,74Bは、板状且つ環状の形状を有し、本体容器66の内周面と内側導体67の外周面との間に配置されている。また、スラグ74A,74Bは、誘電体材料によって形成されている。スラグ74A,74Bを形成する誘電体材料としては、例えば、比誘電率が10の高純度アルミナを用いることができる。高純度アルミナは、通常、スラグを形成する材料として用いられている石英(比誘電率3.88)やテフロン(登録商標)(比誘電率2.03)よりも比誘電率が大きいため、スラグ74A,74Bの厚みを小さくすることができる。また、高純度アルミナは、石英やテフロン(登録商標)に比べて、誘電正接(tanδ)が小さく、マイクロ波の損失を小さくすることができるという特徴を有している。高純度アルミナは、更に、歪みが小さいという特徴と、熱に強いという特徴も有している。高純度アルミナとしては、純度99.9%以上のアルミナ焼結体であることが好ましい。また、高純度アルミナとして、単結晶アルミナ(サファイア)を用いてもよい。
【0055】
チューナ64は、チューナコントローラ76からの指令に基づいて、アクチュエータ75によって、スラグ74A,74Bを上下方向に移動させる。これにより、チューナ64は、インピーダンスを調整する。例えば、チューナコントローラ76は、終端部のインピーダンスが50Ωになるように、スラグ74A,74Bの位置を調整する。
【0056】
本実施の形態では、アンプ部62のメインアンプ62C、マイクロ波導入部63のチューナ64および平面アンテナ71は、互いに近接して配置されている。特に、チューナ64および平面アンテナ71は、集中定数回路を構成し、且つ共振器として機能する。平面アンテナ71の取り付け部分には、インピーダンス不整合が存在する。本実施の形態では、チューナ64によって、プラズマを含めて高精度でチューニングすることができ、平面アンテナ71における反射の影響を解消することができる。また、チューナ64によって、平面アンテナ71に至るまでのインピーダンス不整合を高精度で解消することができ、実質的に不整合部分をプラズマ空間とすることができる。これにより、チューナ64によって、高精度のプラズマ制御が可能になる。
【0057】
アンテナ部65は、本体容器66における給電変換部とは反対側に設けられている。上述のように、本体容器66におけるアンテナ部65よりも基端側の部分は、チューナ64によるインピーダンス調整範囲となっている。
【0058】
図4に示したように、アンテナ部65は、内側導体67の上端部に接続された平面アンテナ71と、平面アンテナ71の下面側に配置されたマイクロ波遅波材72とを有している。
【0059】
平面アンテナ71は、円板形状を有している。また、平面アンテナ71は、平面アンテナ71を貫通するように形成されたスロット71aを有している。図5に示した例では、4つのスロット71aが設けられており、各スロット71aは、4つに均等に分割された円弧形状を有している。なお、スロット71aの数は、4つに限らず、5つ以上であってもよいし、1つ以上3つ以下であってもよい。
【0060】
マイクロ波遅波材72は、真空よりも大きい誘電率を有する材料によって形成されている。マイクロ波遅波材72を形成する材料としては、例えば、石英、セラミックス、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等のフッ素系樹脂、ポリイミド樹脂等を用いることができる。マイクロ波は、真空中ではその波長が長くなる。マイクロ波遅波材72は、マイクロ波の波長を短くしてプラズマを調整する機能を有している。また、マイクロ波の位相は、マイクロ波遅波材72の厚みによって変化する。そのため、マイクロ波遅波材72の厚みによってマイクロ波の位相を調整することにより、平面アンテナ71が定在波の腹の位置になるように調整することができる。これにより、平面アンテナ71における反射波を抑制することができると共に、平面アンテナ71から放射されるマイクロ波の放射エネルギーを大きくすることができる。つまり、これにより、マイクロ波のパワーを効率よく処理容器2内に導入することができる。
【0061】
<マイクロ波放射モジュール>
図1及び図4に示すように、マイクロ波放射モジュール80は、誘電体窓部材としてのマイクロ波透過板81と、導体部材としてのカバー部材82とを有している。マイクロ波放射モジュール80は、処理容器2の内部に配置されている。マイクロ波放射モジュール80の下端(つまり、マイクロ波透過板81の下面)は、平面アンテナ71の上面にほぼ接して設けられている。これにより、一つのマイクロ波放射モジュール80は、一つのアンテナモジュール61に接続され、アンテナモジュール61を介して導入されたマイクロ波を処理容器2内の空間へ向けて放射する。
【0062】
図6に示すように、本実施の形態のプラズマ処理装置1では、処理容器2内のウエハWの周囲に、4つのマイクロ波放射モジュール80(図6では、符号80A1,80A2,80A3及び80A4で表す)を有している。マイクロ波放射モジュール80A1,80A2,80A3及び80A4は、互いに分離して、ウエハWの周囲を囲むように、同一円周上に均等に配置されている。本実施の形態では、4つのマイクロ波放射モジュール80A1,80A2,80A3及び80A4は同じ構成である。なお、図6では、各マイクロ波放射モジュール80A1,80A2,80A3,80A4にそれぞれ接続されるアンテナモジュール61の平面アンテナ71の位置を破線で示すとともに、処理容器2は図示を省略している。
【0063】
(マイクロ波透過板)
マイクロ波透過板81は、ウエハWを囲むようにその周囲に配置され、アンテナモジュール61により導入されたマイクロ波を透過させて処理容器2内に放射する。マイクロ波透過板81は、誘電体材料によって形成されている。マイクロ波透過板81を形成する誘電体材料としては、例えば石英やセラミックス等が用いられる。本実施の形態のプラズマ処理装置1では、マイクロ波透過板81は、カバー部材82によって、処理容器2の底壁部13に固定されている。
【0064】
(カバー部材)
カバー部材82は、マイクロ波透過板81を介して処理容器2内に導入されるマイクロ波が、ウエハWの表面と平行な面に沿ってウエハWへ向かうように、マイクロ波の方向を規制する。つまり、カバー部材82は、マイクロ波透過板81を透過して処理容器2内の空間へ導入されるマイクロ波の方向を定める部材である。カバー部材82は、例えばアルミニウムおよびその合金等の金属材料によって形成されている。カバー部材82の表面は、例えばアルマイト処理(陽極酸化処理)が施されていてもよい。また、シリコンやY2O3などの被膜が形成されていてもよい。カバー部材82は、マイクロ波透過板81を覆うように、かつマイクロ波透過板81に密着して設けられている。カバー部材82は、例えば螺子等の任意の固定手段で、処理容器2の底壁部13に固定されている。
【0065】
図4、図6及び図7に示した例では、マイクロ波透過板81は、平面視扇型の短冊状をなし、その縦断面が一定の厚みを有する立体形状を有している。カバー部材82もマイクロ波透過板81に対応して平面視が扇型をなし、その短尺方向の縦断面はL字形をしている。なお、マイクロ波透過板81やカバー部材82の形状は、図示のものに限らず、被処理体の形状に応じて任意の形状とすることができる。
【0066】
図4及び図7に示すように、マイクロ波透過板81の片側(内周側)の側面は、カバー部材82に覆われておらず、処理容器2の内部空間に露出している。このマイクロ波透過板81の露出面は、処理容器2内の載置領域17aに載置されたウエハWへ向けてマイクロ波を放射するマイクロ波放射面81aとなっている。なお、図4では、マイクロ波放射面81aから放射される表面波モードのマイクロ波の方向を太い矢印で示した。
【0067】
本実施の形態のプラズマ処理装置1では、マイクロ波放射面81aは、平面視円形のウエハWのエッジ形状に対応した形状となっている。すなわち、マイクロ波放射面81aは、弧状に湾曲し、ウエハWのエッジ形状に対応した曲面を有している。このように、マイクロ波放射面81aの形状をウエハWのエッジ形状に対応させることによって、4つのマイクロ波透過板81のマイクロ波放射面81aからウエハWの中心Oへ向けてマイクロ波を効率よく放射できる。
【0068】
図4に示したように、マイクロ波透過板81の下端が、載置領域17aに載置されたウエハWの上面の高さ以上の高さ位置に配置されることが好ましい。特に、載置領域17aに載置されたウエハWの上面を拡大した仮想平面に対し、マイクロ波透過板81の下面が一致することがより好ましい。本実施の形態のプラズマ処理装置1では、ウエハWの上面と、載置部17の表面及び底壁部13におけるウエハWの周囲の内表面Sと、マイクロ波透過板81の下面と、がほぼ同じ高さであり、同一の仮想平面上に形成されている。このような高さにマイクロ波透過板81を配置することによって、マイクロ波透過板81のマイクロ波放射面81aとウエハWとの間に、段差等の境界条件をなくし、マイクロ波放射面81aから放射される表面波モードのマイクロ波を効率よくウエハWの表面へ向けて導き、ウエハWの上方でプラズマを生成させることが可能になる。
【0069】
また、本実施の形態のプラズマ処理装置1では、図1に示すように、載置領域17aを含む載置部17に高周波バイアス電源25から高周波電力を供給できるように構成されている。載置部17に高周波バイアス電源25から高周波電力を印加することで、ウエハWにイオンを引き込むことができるため、例えばプラズマ処理装置1でイオン性の強いプラズマによる処理を行う場合に、処理効率を向上させることができる。
【0070】
本実施の形態のプラズマ処理装置1では、マイクロ波透過板81のマイクロ波放射面81aから放射されたマイクロ波は、図4に示すように、マイクロ波透過板81とウエハWとの間に露出している金属表面(底壁部13におけるウエハWの周囲の内表面S)を表面波モードで伝搬する。このように金属表面を伝搬する表面波は、プラズマと金属表面との間に存在するシース(図示せず)によりガイドされる。すなわち、シース内に存在する誘電率が低い低電子密度の層とプラズマとの間を表面波が伝搬する。このため、少なくとも底壁部13におけるウエハWの周囲の内表面Sに、例えばシリコン等の材質の溶射膜を形成しておくことが好ましい。溶射膜によって、内表面Sがマイクロ波で削られてコンタミネーション発生原因となることを防止できる。なお、溶射膜に代えて、マイクロ波透過板81とウエハWとの間に露出している内表面Sに例えばシリコン製の環状部材を配置して、内表面Sを覆ってもよい。
【0071】
上記のように構成されたマイクロ波導入装置5では、メインアンプ62Cで増幅されたマイクロ波が、本体容器66の内周面と内側導体67の外周面との間(マイクロ波伝送路68)を通って平面アンテナ71に達し、平面アンテナ71のスロット71aからマイクロ波透過板81を透過して処理容器2の内部空間に放射される。この際、マイクロ波の放射方向は、カバー部材82によって規制されるため、処理容器2内の空間に臨むマイクロ波放射面81aからウエハWへ向けてマイクロ波が放射される。このマイクロ波は、底壁部13におけるウエハW周囲の内表面S上を表面波としてウエハWの方向へ伝搬する。本実施の形態のプラズマ処理装置1では、マイクロ波放射面81aが平面視円形のウエハWのエッジ形状に対応した曲面を有しているため、表面波モードのマイクロ波がウエハWの中心Oへ向けて効率よく放射される。図6では、代表的にマイクロ波放射モジュール80A1から放射されるマイクロ波の方向を太い矢印で示した。なお、マイクロ波放射モジュール80A1,80A2,80A3及び80A4から、それぞれ放射される表面波モードのマイクロ波は、アンプ部62の位相器62Aで位相調節を行うことにより、互いの干渉を制御することができる。このようにして放射されたマイクロ波によって、ウエハWの直上部で表面波プラズマが生成し、ウエハWに対して所定のプラズマ処理が行われる。
【0072】
(第1の変形例)
図8は、第1の実施の形態のプラズマ処理装置1におけるマイクロ波導入装置5の第1の変形例を示す説明図である。図8では、図6と同様に、処理容器2内におけるマイクロ波放射モジュール80とウエハWの配置を示している。図8は、一つのマイクロ波放射モジュール80に対して、二つのアンテナモジュール61が接続されている。すなわち、本変形例では、ウエハWの周囲に、ウエハWを囲むように互いに分離した4つのマイクロ波放射モジュール80(図8では、符号80B1,80B2,80B3及び80B4で表している)が設けられており、それぞれに、アンテナモジュール61が二つずつ接続されている。図8では、アンテナモジュール61の平面アンテナ71の位置を破線で示している。このように、一つのマイクロ波放射モジュール80に対して、二つ以上のアンテナモジュール61を接続することにより、処理容器2内で生成するプラズマの密度の制御性を向上させることができる。
【0073】
なお、一つのマイクロ波放射モジュール80に接続されるアンテナモジュール61の数は、3つ以上でもよい。また、図8では、4つのマイクロ波放射モジュール80(80B1〜80B4)に、それぞれ均等な数のアンテナモジュール61が接続されているが、マイクロ波放射モジュール80毎に異なる数のアンテナモジュール61を接続することもできる。
【0074】
(第2の変形例)
また、図9は、第1の実施の形態のプラズマ処理装置1におけるマイクロ波導入装置5の第2の変形例を示す説明図である。図6及び図8では、処理容器2内のウエハWの周囲に、ウエハWを囲むように4つのマイクロ波放射モジュール80を設けた例を示したが、ウエハWを囲むことができれば、マイクロ波放射モジュール80の数は任意である。例えば、マイクロ波放射モジュール80の数は、単一でもよいし、2つないし3つでもよく、5つ以上でもよい。図9には、単一のマイクロ波放射モジュール80Cに4つのアンテナモジュール61を接続した例を示した。図9では、アンテナモジュール61の平面アンテナ71の位置を破線で示している。図9に示す例では、マイクロ波放射モジュール80Cを構成するマイクロ波透過板81及びカバー部材82は、共に環状に形成された単一の部材である。4つのアンテナモジュール61は、ウエハWの周囲に均等に配置されている。
【0075】
上記各変形例に示したように、プラズマ処理装置1では、処理の目的に応じて、マイクロ波導入装置5の構成、特にマイクロ波放射モジュール80とアンテナモジュール61との配置の組み合わせ、を選択することができる。これにより、処理容器2内におけるプラズマ密度の局所的な制御を容易に行うことができる。プラズマ処理装置1において、処理容器2内で生成するプラズマの分布を制御しやすくするという観点では、ウエハWの周囲に、少なくとも3つ以上のアンテナモジュール61が配置されるように、マイクロ波導入装置5を構成することが好ましい。また、アンテナモジュール61の数が多いほど、処理容器2内でのプラズマの局所的な制御が容易になる。
【0076】
また、以上の説明では、平面視円形のウエハWに対して、その周囲に、マイクロ波放射モジュール80を略円形に配列する例を挙げた。しかし、被処理体が例えば矩形のフラットパネルディスプレイ用基板などである場合は、該基板の周囲に、全体として四角形になるようにマイクロ波放射モジュール80を配列することができる。
【0077】
<ガス導入・排気>
上述のとおり、プラズマ処理装置1の処理容器2の天井部11には、複数のガス導入用開口11bが設けられ、各ガス導入用開口11bに装着されたノズル16を有している(図1も参照)。また、処理容器2の天井部11には、複数の排気口11aが設けられ、排気装置4が接続されている。図10は、本実施の形態のプラズマ処理装置1の天井部11の底面図であり、天井部11におけるノズル16と排気口11aの配置例を示したものである。図10に示す例では、天井部11において、同心円状に内側に12個、外側に28個のノズル16が2重に配列されている。また、天井部11において、その中心部に1個、中心部と周縁部との中間領域に6個の排気口11aが形成されている。そして、ノズル16と排気口11aとは、同心円状に交互に配置されている。なお、天井部11におけるノズル16と排気口11aとの配置や個数は、図10に示した構成に限るものではなく、例えばノズル16と排気口11aとを格子状に交互に配置するなど、種々の変形が可能である。
【0078】
図10に示すように、ガス導入のためのノズル16と排気のための排気口11aの両方を、処理容器2の天井部11において互いに近接して設けることにより、ウエハW表面(処理対象面)付近での処理ガスのレジデンスタイムを短くすることができる。つまり、ノズル16から処理容器2内に導入された処理ガスを、排気口11aから(排気装置4により)短時間で排出できる。このように、処理容器2内でのガスレジデンスタイムを短くすることで、成膜処理の場合の膜質の改善を図ることが可能となる。例えば、プラズマ処理装置1を用いてウエハW上のポリシリコンの窒化処理を行う場合では、ガスレジデンスタイムを短くすることで、処理容器2内のパーツから放出される酸素に起因する膜中への酸素の混入を低減できる。また、例えば、プラズマ処理装置1を用いてウエハW上のポリシリコンの酸化処理を行う場合では、ガスレジデンスタイムを短くすることで、酸化レートを向上させることができる。
【0079】
次に、プラズマ処理装置1におけるプラズマ処理の一例について説明する。ここでは、処理ガスとして窒素を含有するガスを使用して、ウエハWの表面に対してプラズマ窒化処理を施す場合を例に挙げて、プラズマ処理の手順について説明する。まず、例えばユーザーインターフェース92から、プラズマ処理装置1においてプラズマ窒化処理を行うように、プロセスコントローラ91に指令が入力される。次に、プロセスコントローラ91は、この指令を受けて、記憶部93またはコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に保存されたレシピを読み出す。次に、レシピに基づく条件によってプラズマ窒化処理が実行されるように、プロセスコントローラ91からプラズマ処理装置1の各エンドデバイス(例えば、高周波バイアス電源25、ガス供給装置3a、排気装置4、マイクロ波導入装置5等)に制御信号が送出される。
【0080】
次に、ゲートバルブGが開状態にされて、図示しない搬送装置によって、ウエハWが、ゲートバルブGおよび搬入出口12aを通って処理容器2内に搬入される。ウエハWは、複数の支持ピン28に受け渡され、載置部17の載置領域17aに載置される。次に、ゲートバルブGが閉状態にされて、排気装置4によって、処理容器2内が減圧排気される。次に、ガス供給機構3によって、所定の流量の希ガスおよび窒素含有ガスが、ガス導入部15を介して処理容器2内に導入される。処理容器2の内部空間は、排気量およびガス供給量を調整することによって、所定の圧力に調整される。
【0081】
次に、マイクロ波出力部50において、処理容器2内に導入するマイクロ波を発生させる。マイクロ波は、分配器54によって複数系統(例えば4系統)に分配される。マイクロ波出力部50の分配器54から出力された複数のマイクロ波は、アンテナユニット60の複数のアンテナモジュール61に入力され、各アンテナモジュール61によって、処理容器2内に導入される。各アンテナモジュール61では、マイクロ波は、アンプ部62およびマイクロ波導入部63を伝搬する。マイクロ波導入部63のアンテナ部65に到達したマイクロ波は、平面アンテナ71のスロット71aを介し、マイクロ波放射モジュール80のカバー部材82によって方向を規定されると共にマイクロ波透過板81を透過して、マイクロ波放射面81aから処理容器2内におけるウエハWの上方の空間に向けて放射される。このようにして、各アンテナモジュール61から、それぞれ別々にマイクロ波が処理容器2内に導入される。各アンテナモジュール61では、分配器54で分配されたマイクロ波をアンプ部62で個別に増幅することが可能であるため、処理容器2内に導入されるマイクロ波のパワーを個別に制御できる。従って、処理容器2内のプラズマ密度を局所的に制御することが可能である。
【0082】
上記のように、ウエハWの周囲の複数の部位から処理容器2内に導入されたマイクロ波は、それぞれ処理容器2内のウエハWの直上位置に電磁界を形成する。これにより、処理容器2内に導入された不活性ガスや窒素含有ガス等の処理ガスをプラズマ化する。そして、プラズマ中の活性種、例えばラジカルやイオンの作用によって、ウエハWのシリコン表面が窒化されてシリコン窒化膜SiNの薄膜が形成される。
【0083】
プロセスコントローラ91からプラズマ処理装置1の各エンドデバイスにプラズマ処理を終了させる制御信号が送出されると、マイクロ波の発生が停止されると共に、希ガスおよび窒素含有ガスの供給が停止されて、ウエハWに対するプラズマ処理が終了する。次に、ゲートバルブGが開状態にされて、図示しない搬送装置によって、ウエハWが搬出される。
【0084】
なお、窒素含有ガスの代りに酸素含有ガスを使用することにより、ウエハWに対して酸化処理を施すことができる。また、成膜原料ガスを使用することにより、プラズマCVD法によって、ウエハWに対して成膜処理を施すことができる。
【0085】
本実施の形態のプラズマ処理装置1では、被処理体であるウエハWを囲むように、その周囲にマイクロ波導入装置5のマイクロ波放射モジュール80を配置し、ウエハWの周囲からマイクロ波を導入する。処理容器2の下部にマイクロ波導入装置5を配置したことにより、処理容器2の天井部11にマイクロ波導入機構を設けることが必須ではなくなった。従って、天井部11を他の機構に利用することが可能となり、図10に例示したように、処理容器2の天井部11からガス導入/排気を行うことが可能であり、装置設計上の自由度を大幅に向上させることが可能となった。
【0086】
次に、本実施の形態における効果について説明する。前述のように、本実施の形態に係るプラズマ処理装置1では、処理容器2の底壁部13に装着されたアンテナモジュール61及びマイクロ波放射モジュール80を介して処理容器2内にマイクロ波が導入される。このような構成による効果について、以下、比較例のプラズマ処理装置と比較しながら説明する。なお、処理容器の上部からマイクロ波を導入するプラズマ処理装置を、比較例のプラズマ処理装置と呼ぶ。
【0087】
図11は、比較例のプラズマ処理装置の構成を模式的に示す断面図である。比較例のプラズマ処理装置501は、処理容器502、載置台521および支持部材522を備えている。プラズマ処理装置501は、図1に示したマイクロ波導入装置5の代りに、マイクロ波導入装置505を備えている。マイクロ波導入装置505は、処理容器502の上部に設けられる。マイクロ波導入装置505としては、例えば石英製のマイクロ波透過板573を1個だけ含む既知の構成のマイクロ波導入装置である。
【0088】
プラズマ処理装置501では、マイクロ波導入装置505のマイクロ波透過板573が処理容器502の上部に設けられているため、処理ガスの導入や排気を、処理容器502の上部から行うことができない。プラズマ処理装置501では、多くの場合、処理ガスの導入は、処理容器502の側部から行うか、載置台521とマイクロ波透過板573との間にシャワープレート(図示せず)を介在配備させる方法に限られてしまう。また、ガスの排気は、多くの場合、処理容器502の底部から行う方法に限られてしまう。
【0089】
また、プラズマ処理装置501では、マイクロ波透過板573が載置台521の直上に存在するため、例えば、プラズマ酸化処理やプラズマ窒化処理を繰返す間にマイクロ波透過板573に付着した薄膜が剥がれ、ウエハW上に落下し、パーティクル発生源となる。
【0090】
プラズマ処理装置501では、マイクロ波導入装置505が処理容器502の上部に設けられていることや、処理容器502内に、ウエハWを載置する載置台521および支持部材522を備えているため、処理容器502の容積が大きくなり、小型化が困難である。
【0091】
以上のように、比較例のプラズマ処理装置501では、処理容器502の天井部にマイクロ波導入機構を配備していたため、処理容器の容積の小型化が困難であり、また、他の機構を天井部に設けることが困難であった。その結果、装置設計の自由度が大幅に制約を受けていた。また、プラズマ処理装置501では、パーティクル発生源となる可能性があるマイクロ波透過板573を載置台521の直上に設ける必要があったため、パーティクル対策も困難であった。それに対し、本実施の形態のプラズマ処理装置1では、処理容器2の底壁部13にマイクロ波導入機構を設け、処理容器2内でプラズマを生成させるためのマイクロ波を、ウエハWの周囲に設けたマイクロ波放射モジュール80から導入する構成とした。かかる構成を採用したことにより、プラズマ処理装置1では、処理容器2の容積を従来の構成のマイクロ波プラズマ処理装置に比べて格段に小さくすることが可能である。また、処理容器2の天井部11にマイクロ波導入機構を設けることが必須でなくなるため、処理容器2の天井部11に、ガスを導入するガス導入部や、ガスを排気する排気部を設け、天井部11を介してガスの導入、排気を行うことも可能となった。さらに、ウエハWの直上にマイクロ波透過板を配置する必要がないため、マイクロ波透過板に起因するパーティクルの発生も低減できる。
【0092】
次に、図12A〜図12Cを参照して、処理容器2におけるガス導入部と排気部の配置例を挙げ、本実施の形態のプラズマ処理装置1の効果についてさらに詳しく説明する。図1に示したプラズマ処理装置1では、処理容器2内へのガスの導入と排気を共に天井部11を介して行う構成とした。しかし、本発明のプラズマ処理装置は、装置設計の自由度が大きいため、例えばガスの導入部と排気部の構成について、さらに多くのバリエーションを採用することが可能である。
【0093】
図12A〜図12Cは、ガス導入位置と排気位置が図1のプラズマ処理装置1と異なる変形例のプラズマ処理装置を簡略化して示したものであり、それ以外の構成は第1のプラズマ処理装置1と同様である。なお、図12A〜図12Cにおいて、ガス導入部94と排気部95は、これらを配設する大まかな場所を象徴的に示す意味でのみ用いられる。図12A〜図12Cにおいて、具体的なノズルや排気口の配置は、例えば図10に例示したように、より複雑な構成とすることができる。
【0094】
(第3の変形例)
図12Aは、ガス導入部94を処理容器2の天井部11に設け、排気部95を処理容器2の側壁部12に設けた態様である。この第3の変形例では、仮にマイクロ波放射モジュール80のマイクロ波透過板81で膜剥がれなどのパーティクルが発生しても、処理容器2の天井部11から処理ガスが導入され、側壁部12に設けた排気部95から排気されるガスの流れによって、ウエハWの表面にパーティクルを付着しにくくすることができる。また、ガスの排気を処理容器2の側壁部12から行うため、排気部95がウエハWの直上に存在しないことにより、ウエハWの表面へパーティクルが落下する確率を低減できる。
【0095】
(第4の変形例)
図12Bは、ガス導入部94を処理容器2の側壁部12に設け、排気部95を処理容器2の天井部11に設けた態様である。第4の変形例では、処理容器2の天井部11からガスの排気を行うが、天井部11における排気部95の配置の自由度が高いため、例えばウエハWの直上位置を外して排気口を設けることができる。これにより、パーティクルの落下によるウエハWの汚染を低減できる。
【0096】
(第5の変形例)
図12Cは、ガス導入部94Aを処理容器2の天井部11に、ガス導入部94Bを処理容器2の側壁部12に設け、排気部95を処理容器2の底壁部13に設けた態様である。第5の変形例では、ガス導入部94Aから、ある種類のガスを導入し、ガス導入部94Bから、ガス導入部94Aから導入するガスと同種もしくは別の種類のガスを導入することができる。本変形例は、複数のガスを同時に使用するプロセスに有効である。また、ガスの排気を処理容器2の底壁部13から行うため、排気部95がウエハWの直上に存在しないことにより、ウエハWの表面へパーティクルが落下する確率を低減できる。
【0097】
図12A〜図12Cに示すように、処理容器2の底壁部13にマイクロ波導入機構を設けたことにより、天井部11や側壁部12から、種々の組み合わせでガスの導入と排気を行うことが可能になる。図12A〜図12Cの第3〜第5の変形例に挙げたガスの導入・排気の態様は、あくまでも例示であり、また、各変形例の組み合わせも可能である。
【0098】
さらに、本実施の形態のプラズマ処理装置では、装置設計の自由度が大幅に向上しているため、ガス導入・排気の機構のほかに、処理容器2の天井部11に種々の機構を設けることができる。例えば、天井部11には、ウエハWの膜厚をモニタする計測器、処理容器2内のプラズマの状態をモニタする計測器など、種々の機構を配備することも可能になる。
【0099】
[第2の実施の形態]
次に、図13及び図14を参照して、本発明の第2の実施の形態に係るプラズマ処理装置について説明する。図13は、本実施の形態におけるプラズマ処理装置1Aの概略の構成を示す断面図であり、第1の実施の形態の図1に対応する図である。図14は、本実施の形態のマイクロ波導入装置5Aのマイクロ波出力部50Aとアンテナモジュール61の構成を示す説明図であり、第1の実施の形態の図3にほぼ対応する図である。
【0100】
第1の実施の形態のプラズマ処理装置1では、マイクロ波導入装置5として、マイクロ波出力部50に分配器54を設け、マイクロ波を複数のアンテナモジュール61に分配してから複数のマイクロ波放射モジュール80へ供給する構成とした。これに対し、第2の実施の形態のプラズマ処理装置1Aでは、複数のマイクロ波導入装置5Aを設け、一つのアンテナモジュール61から、一つのマイクロ波放射モジュール80へマイクロ波を供給する。本実施の形態に係るプラズマ処理装置1Aにおける他の構成は、第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置1と同じであるため、図13、図14において、図1、図3と同じ構成には同一の符号を付して説明を省略する。なお、本実施の形態では、図14に示すアンテナモジュール61のアンプ部62の構成をさらに簡素化してもよい。
【0101】
図13及び図14に示したように、本実施の形態のプラズマ処理装置1Aでは、マイクロ波導入装置5Aのマイクロ波出力部50Aに分配器を設けていない。そして、マイクロ波導入装置5Aでは、一つのマイクロ波出力部50Aから、一つのアンテナモジュール61を介して、一つのマイクロ波放射モジュール80へマイクロ波を供給する構成とした。このように、プラズマ処理装置1Aでは、複数のマイクロ波導入装置5Aを独立して設けることにより、各マイクロ波放射モジュール80から放射されるマイクロ波のパワーや周波数を独立して制御することが容易になる。従って、処理容器2内でマイクロ波放射モジュール80から放射されるマイクロ波によって発生するプラズマの密度を、個々のマイクロ波放射モジュール80毎に局所的に制御しやすい。また、本実施の形態のプラズマ処理装置1Aは、例えば、複数の被処理体を同一の処理容器内で同時に処理する場合などにも利用できる。
【0102】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。なお、本実施の形態のプラズマ処理装置1Aの変形例として、複数のマイクロ波導入装置5Aにおいて、マイクロ波放射モジュール80を共通化することも可能である。
【0103】
[第3の実施の形態]
次に、図15及び図16を参照して、本発明の第3の実施の形態に係るプラズマ処理装置について説明する。図15は、本実施の形態におけるプラズマ処理装置1Bの概略の構成を示す断面図であり、第1の実施の形態の図1に対応する図である。図16は、本実施の形態のプラズマ処理装置1Bのマイクロ波導入部63とマイクロ波放射モジュール80を含む要部を拡大して示す断面図であり、第1の実施の形態の図4にほぼ対応する図である。
【0104】
本実施の形態のプラズマ処理装置1Bでは、載置部17の周囲の底壁部13に、直流電圧印加部としてのDC印加部83と、このDC印加部83に電気的に接続された可変直流電源85と、を設けた。すなわち、プラズマ処理装置1Bは、ウエハWを収容する処理容器2と、処理容器2の内部においてウエハWを載置する載置部17と、処理容器2内にガスを供給するガス供給機構3と、処理容器2内を減圧排気する排気装置4と、処理容器2内にプラズマを生成させるためのマイクロ波を発生させると共に、処理容器2内にマイクロ波を導入するマイクロ波導入装置5と、載置部17とマイクロ波放射モジュール80との間において底壁部13に設けられたDC印加部83と、これらプラズマ処理装置1Bの各構成部を制御する制御部8とを備えている。
【0105】
DC印加部83は、導電性材料からなり、載置部17を囲むとともに、マイクロ波放射モジュール80と載置部17との間に介在するように、例えば環状に設けられている。DC印加部83は、その上面が処理容器2内に露出するようにして底壁部13に埋設されている。底壁部13とDC印加部83との間は、絶縁材84が設けられて絶縁され、接地電位の底壁部13に対して電気的にフローティングの状態となっている。可変直流電源85は、図示しないスイッチ部によりオン/オフの切り換えができるように構成され、DC印加部83に対し、例えば負の直流電圧を印加する。
【0106】
本実施の形態のプラズマ処理装置1Bでは、可変直流電源85から、DC印加部83へ直流電圧を印加することにより、マイクロ波透過板81からのマイクロ波をウエハWの方向へ伝搬させやすくすることができる。マイクロ波透過板81のマイクロ波放射面81aから放射されたマイクロ波は、図16において太矢印で示すように、マイクロ波透過板81とウエハWとの間に露出している金属表面(底壁部13及びDC印加部83におけるウエハWの周囲の内表面S’)を表面波モードで伝搬する。このように金属表面を伝搬する表面波は、プラズマと金属表面との間に存在するシース(図示せず)によりガイドされる。すなわち、シース内に存在する誘電率が低い低電子密度の層とプラズマとの間を表面波が伝搬する。本実施の形態では、載置領域17aの周辺にDC印加部83を設け、可変直流電源85から例えば負電圧を印加することによって、シース厚を拡大させることが可能となる。シース厚を拡大することによって、シースに沿って表面波をウエハWの近傍まで効率よく導くことができる。このように、DC印加部83を設け、そこに直流電圧を印加することによって、シース厚を調節し、表面波モードのマイクロ波の伝搬効率を高めることができる。
【0107】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。なお、本実施の形態のように、載置部17の周囲の底壁部13にDC印加部83を設ける構成は、第2の実施の形態(図13参照)のプラズマ処理装置1Aにも適用可能である。
【0108】
[第4の実施の形態]
次に、図17を参照して、本発明の第4の実施の形態に係るプラズマ処理装置について説明する。図17は、本実施の形態におけるプラズマ処理装置1Cの概略の構成を示す断面図であり、第1の実施の形態の図1に対応する図である。
【0109】
第1〜第3の実施の形態では、マイクロ波放射モジュール80の全体が、処理容器2内に収容される構成としたが、本実施の形態では、マイクロ波放射モジュール80の大部分が、処理容器2の外側にはみ出た格好で装着されている。すなわち、プラズマ処理装置1Cは、ウエハWを収容する処理容器2と、処理容器2の内部においてウエハWを載置する載置部17と、処理容器2内にガスを供給するガス供給機構3と、処理容器2内を減圧排気する排気装置4と、処理容器2内にプラズマを生成させるためのマイクロ波を発生させると共に、処理容器2内にマイクロ波を導入するマイクロ波導入装置5と、これらプラズマ処理装置1Cの各構成部を制御する制御部8とを備えている。そして、本実施の形態のプラズマ処理装置1Cでは、マイクロ波導入装置5のマイクロ波放射モジュール80を側壁部12の下端に外側から装着した。より具体的には、図17に示すように、プラズマ処理装置1Cでは、マイクロ波放射モジュール80が側壁部12の下端に接し、アンテナモジュール61のマイクロ波導入部63が底壁部13の側端に接するように、マイクロ波導入装置5を配備した。本実施の形態では、マイクロ波放射モジュール80の大部分が処理容器2の外側に突出して存在している。このため、処理容器2内の空間に露出するマイクロ波透過板81のマイクロ波放射面81aとカバー部材82の内周面は、処理容器2の側壁部12の内周面と段差なくほぼ連続している。処理容器2の内径(互いに対向する側壁部12間の距離)は、ウエハWを間に挟んで互いに対向するマイクロ波放射面81a間の距離と一致している。ただし、マイクロ波透過板81のマイクロ波放射面81a及びカバー部材82の内周面の位置は、処理容器2の側壁部12の内周面の位置と、水平方向に必ずしも一致していなくてもよい。
【0110】
本実施の形態のプラズマ処理装置1Cでは、例えば図11に挙げた比較例のプラズマ処理装置501よりも、処理容器の径を大幅に小さくできる。比較例のプラズマ処理装置501では、処理容器502の上部に設けられたマイクロ波導入装置505のマイクロ波透過板573からマイクロ波が導入されて処理容器502の内部でプラズマPが生成する。このとき、処理容器502内のプラズマ密度は、側壁部512の内表面ではほぼゼロになる。ウエハW面内での処理の均一性を考慮すると、載置台521に載置されたウエハW上の全面で必要なプラズマ密度(好ましくは、均一なプラズマ密度)を維持することが必要である。そのためには、図11に示すように、ウエハWの径よりも十分に大きな径を持つプラズマPを処理容器502内で生成させる必要がある。処理容器502内でウエハWの径よりも十分に大きな径を持つプラズマを生成させるためには、ウエハWのエッジと処理容器502の側壁部512との間に十分な間隔をあけておくことが必要となる。つまり、図11に示したように、比較例のプラズマ処理装置501においては、プラズマPの大きさを見込んで、載置台521と処理容器502の側壁部512との間に十分な距離を確保しておく必要がある。
【0111】
それに対し、本実施の形態のプラズマ処理装置1Cでは、ウエハWの周囲にマイクロ波放射モジュール80を設け、ウエハWのエッジに近い位置からウエハWへ向けて水平方向にマイクロ波を導入することにより、ウエハWの直上部にプラズマを生成させる。このため、処理容器2の側壁部12の位置がウエハWのエッジに近接していても、ウエハW面内での処理の均一性に悪影響を与える懸念はほとんどない。従って、本実施の形態のプラズマ処理装置1Cでは、比較例のプラズマ処理装置501に比べて、処理容器2の内径が小さくてよく、その内部容積を大幅に縮小できる。従って、処理容器2の小型化を図ることができる。また、本実施の形態のプラズマ処理装置1Cでは、比較例のプラズマ処理装置501に比べて処理容器2の内部容積を小さくできるため、処理容器2内での処理ガスのレジデンスタイムを短くすることが可能になり、例えば成膜装置として用いる場合に膜質の向上が期待できる。
【0112】
また、本実施の形態のプラズマ処理装置1Cでは、マイクロ波放射モジュール80の大部分が処理容器2の外側に置かれているため、例えば第1〜第3の実施の形態のプラズマ処理装置1,1A,1Bと比較しても、処理容器2の内部空間の容積をさらに小さくすることが可能になる。
【0113】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。なお、本実施の形態のように、マイクロ波放射モジュール80を側壁部12の下端に装着する構成は、第2の実施の形態(図13参照)のプラズマ処理装置1Aや、第3の実施の形態のプラズマ処理装置1B(図15参照)にも適用可能である。
【0114】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明のプラズマ処理装置は、半導体ウエハを被処理体とする場合に限らず、例えば太陽電池パネルの基板やフラットパネルディスプレイ用基板を被処理体とするプラズマ処理装置にも適用できる。
【0115】
また、真空処理に限らず、大気圧プラズマを利用することもできる。
【0116】
また、上記各実施の形態のプラズマ処理装置では、処理容器2の底壁部13に載置部17を設けたが、処理容器2内に金属製のステージ又は台部を設け、該ステージ又は台部に載置されたウエハWへ向けて、その周囲に高さ位置を合わせて配置したマイクロ波放射モジュールからマイクロ波を放射するようにしてもよい。
【0117】
また、上記各実施の形態では、処理容器2の天井部11にはマイクロ波導入機構を設けていない。しかし、マイクロ波導入装置5と組み合わせて、処理容器2の天井部11に補助的にマイクロ波導入機構を設けることを妨げるものではない。
【符号の説明】
【0118】
1…プラズマ処理装置、2…処理容器、3…ガス供給機構、4…排気装置、5…マイクロ波導入装置、8…制御部、11…天井部、12…側壁部、13…底壁部、14…排気管、15…ガス導入部、16…ノズル、17…載置部、17a…載置領域、24…整合器、25…高周波バイアス電源、26…電極、27…絶縁被覆材、28…支持ピン、50…マイクロ波出力部、51…電源部、52…マイクロ波発振器、53…アンプ、54…分配器、60…アンテナユニット、61…アンテナモジュール、62…アンプ部、63…マイクロ波導入部、64…チューナ、65…アンテナ部、66…本体容器、67…内側導体、71…平面アンテナ、71a…スロット、72…マイクロ波遅波材、80…マイクロ波放射モジュール、81…マイクロ波透過板、82…カバー部材、91…プロセスコントローラ、92…ユーザーインターフェース、93…記憶部、W…半導体ウエハ
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理容器へ所定周波数のマイクロ波を導き、プラズマを生成させて被処理体をプラズマ処理するプラズマ処理装置、マイクロ波導入装置及びプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ等の被処理体に対して所定のプラズマ処理を施すプラズマ処理装置として、処理容器内にマイクロ波を導入してプラズマを生成させるマイクロ波プラズマ処理装置が知られている。このマイクロ波プラズマ処理装置では、処理容器内で高密度のプラズマを生成させることが可能であり、生成されたプラズマによって、例えば酸化処理、窒化処理、堆積処理、エッチング処理等が行われる。
【0003】
マイクロ波プラズマ処理装置では、処理容器内にマイクロ波を導入するためのマイクロ波導入機構が、処理容器の上部に配置される。例えば、複数のスロットを有する平面アンテナを用いて処理容器内にマイクロ波を導入するスロットアンテナ方式のマイクロ波プラズマ処理装置では、通常、被処理体の径より大きなマイクロ波透過窓が処理容器の天井部に被処理体に対向して配置される。また、例えば特許文献1では、大電力を投入して処理容器内で大きなプラズマ放電を得るため、処理容器の上部に複数のマイクロ波導入機構を設けたマイクロ波プラズマ処理装置も提案されている。
【0004】
しかし、従来のマイクロ波プラズマ処理装置では、処理容器の上部には、マイクロ波導入機構以外の他の機構、例えばガス導入機構などを配設する余地がほとんどなく、装置設計における自由度が制約されてしまうという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−259633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、処理容器の上部にマイクロ波導入機構を設けることが必須でなく、装置設計における自由度が高いマイクロ波プラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプラズマ処理装置は、
被処理体を収容する処理容器と、
前記処理容器内で被処理体を載置する載置部と、
前記処理容器内に処理ガスを供給するガス供給機構と、
前記処理容器内で前記処理ガスのプラズマを生成させるためのマイクロ波を発生させると共に、前記処理容器内に前記マイクロ波を導入するマイクロ波導入装置と
を備えている。
本発明のプラズマ処理装置において、前記マイクロ波導入装置は、
被処理体の周囲に配置され、マイクロ波を透過させて前記処理容器内へ放射する誘電体窓部材と、
前記誘電体窓部材を介して前記処理容器内に放射されるマイクロ波が被処理体の表面と平行な方向で被処理体へ向かうように規制する導体部材と、
を含むマイクロ波放射モジュールを有している。
【0008】
本発明のプラズマ処理装置において、前記マイクロ波導入装置は、マイクロ波を生成すると共に出力するマイクロ波出力部と、
前記処理容器の下部に外側から装着されて前記マイクロ波出力部から出力されたマイクロ波を前記マイクロ波放射モジュールへ供給する1つ又は複数のアンテナモジュールと、を備えていてもよい。
【0009】
本発明のプラズマ処理装置において、前記誘電体窓部材は、前記処理容器内の空間に露出して被処理体に向けてマイクロ波を放射するマイクロ波放射面を有していてもよい。また、前記導体部材は、前記マイクロ波放射面を除く前記誘電体窓部材の表面を覆うものであってもよい。この場合、前記マイクロ波放射面は、被処理体のエッジの形状に対応した形状を有していてもよく、例えば、被処理体が平面視円形である場合、前記マイクロ波放射面が弧状に湾曲した形状を有していてもよい。
【0010】
本発明のプラズマ処理装置は、被処理体を囲むように、複数の前記マイクロ波放射モジュールを有していてもよい。この場合、1つの前記マイクロ波放射モジュールに対し、1つ又は複数の前記アンテナモジュールが接続されていてもよい。
【0011】
本発明のプラズマ処理装置は、前記アンテナモジュールを少なくとも3つ以上有していてもよい。
【0012】
本発明のプラズマ処理装置は、前記誘電体窓部材の下端が、前記載置部に載置された被処理体の上面の高さ以上の高さ位置に配置されていてもよい。
【0013】
本発明のプラズマ処理装置は、前記ガス供給機構から供給される処理ガスを導入するガス導入部が、前記処理容器の天井部に設けられていてもよい。この場合、前記処理容器内を減圧排気する排気装置に接続する排気口が、前記処理容器の天井部に設けられていてもよい。
【0014】
また、本発明のプラズマ処理装置は、前記処理容器内を減圧排気する排気装置に接続する排気口が、前記処理容器の側壁部又は底壁部に設けられていてもよい。
【0015】
また、本発明のプラズマ処理装置において、前記載置部は、前記処理容器の底壁部に設けられていてもよい。
【0016】
また、本発明のプラズマ処理装置は、前記載置部に高周波電力を供給する高周波電源部を有していてもよい。
【0017】
また、本発明のプラズマ処理装置は、前記載置部と前記マイクロ波放射モジュールとの間に、直流電圧が印加される直流電圧印加部を有していてもよい。
【0018】
本発明のプラズマ処理方法は、上記いずれかのプラズマ処理装置により、被処理体を処理するものである。
【0019】
本発明のマイクロ波導入装置は、被処理体を収容する処理容器内で処理ガスのプラズマを生成させるためのマイクロ波を発生させると共に、前記処理容器内に前記マイクロ波を導入するマイクロ波導入装置である。
このマイクロ波導入装置は、
被処理体を囲むようにその周囲に配置され、マイクロ波を透過させて前記処理容器内へ放射する誘電体窓部材と、
前記誘電体窓部材を介して前記処理容器内に放射されるマイクロ波が被処理体の表面と平行な方向で被処理体へ向かうように規制する導体部材と、
を含むマイクロ波放射モジュールを有していてもよい。
【0020】
本発明のマイクロ波導入装置は、
マイクロ波を生成すると共に出力するマイクロ波出力部と、
前記処理容器の下部に外側から装着されて前記マイクロ波出力部から出力されたマイクロ波を、前記マイクロ波放射モジュールへ供給する1つ又は複数のアンテナモジュールと、
をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のプラズマ処理装置は、被処理体の周囲に誘電体窓部材と導体部材とを含むマイクロ波放射モジュールを配置し、被処理体の周囲からマイクロ波を導入する。これにより、本発明によれば、処理容器の上部にマイクロ波導入機構を設ける必要がなくなり、処理容器の上部を他の機構に利用することが可能となる。従って、装置設計上の自由度を大幅に向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置の概略の構成を示す断面図である。
【図2】図1に示した制御部の構成を示す説明図である。
【図3】図1に示したマイクロ波導入装置におけるマイクロ波出力部とアンテナユニットの構成を示す説明図である。
【図4】図3に示したマイクロ波導入部を示す断面図である。
【図5】マイクロ波導入部の平面アンテナを示す平面図である。
【図6】図1に示したマイクロ波放射モジュールの配置を示す平面図である。
【図7】一つのマイクロ波放射モジュールとウエハとの配置を説明する要部斜視図である。
【図8】第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置の第1の変形例を示す説明図である。
【図9】第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置の第2の変形例を示す説明図である。
【図10】図1のプラズマ処理装置における天井部の底面図である。
【図11】比較例のプラズマ処理装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図12A】第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置の第3の変形例を示す説明図である。
【図12B】第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置の第4の変形例を示す説明図である。
【図12C】第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置の第5の変形例を示す説明図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係るプラズマ処理装置の概略の構成を示す断面図である。
【図14】図13に示したマイクロ波導入装置におけるマイクロ波出力部とアンテナモジュールの構成を示す説明図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係るプラズマ処理装置の概略の構成を示す断面図である。
【図16】図15に示したプラズマ処理装置の要部を拡大して示す断面図である。
【図17】本発明の第4の実施の形態に係るプラズマ処理装置の概略の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1および図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置の概略の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係るプラズマ処理装置の概略の構成を示す断面図である。図2は、図1に示した制御部の構成を示す説明図である。本実施の形態に係るプラズマ処理装置1は、連続する複数の動作を伴って、例えば半導体デバイス製造用の半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」と記す。)Wに対して、成膜処理、拡散処理、エッチング処理、アッシング処理等の所定の処理を施す装置である。
【0024】
プラズマ処理装置1は、被処理体であるウエハWを収容する処理容器2と、処理容器2の内部においてウエハWを載置する載置部17と、処理容器2内にガスを供給するガス供給機構3と、処理容器2内を減圧排気する排気装置4と、処理容器2内にプラズマを生成させるためのマイクロ波を発生させると共に、処理容器2内にマイクロ波を導入するマイクロ波導入装置5と、これらプラズマ処理装置1の各構成部を制御する制御部8とを備えている。なお、処理容器2内にガスを供給する手段としては、ガス供給機構3の代りに、プラズマ処理装置1の構成には含まれない外部のガス供給機構を使用してもよい。
【0025】
処理容器2は、例えば略円筒形状をなしている。処理容器2は、例えばアルミニウムおよびその合金等の金属材料によって形成されている。処理容器2の表面は、例えばアルマイト処理(陽極酸化処理)が施されていてもよい。処理容器2は、接地されている。なお、処理容器2と処理容器2に装着された各部材との接合部分には、シール部材が配備されており、処理容器2内の気密性が維持されている。
【0026】
処理容器2は、板状の天井部11および底壁部13と、天井部11と底壁部13とを連結する側壁部12とを有している。天井部11は、複数の開口部を有している。例えば、天井部11には、複数の排気口11aが設けられている。また、天井部11には、複数のガス導入用開口11bが設けられている。各ガス導入用開口11bには、後述するノズル16が装着されている。
【0027】
側壁部12は、処理容器2に隣接する図示しない搬送室との間でウエハWの搬入出を行うための搬入出口12aを有している。処理容器2と図示しない搬送室との間には、ゲートバルブGが配置されている。ゲートバルブGは、搬入出口12aを開閉する機能を有している。ゲートバルブGは、閉状態で処理容器2を気密にシールすると共に、開状態で処理容器2と図示しない搬送室との間でウエハWの移送を可能にする。
【0028】
底壁部13には、載置部17が設けられている。載置部17は、底壁部13とは別部材によって底壁部13よりもやや厚みをもって形成され、底壁部13に固定されている。載置部17は、例えば処理容器2と同様のアルミニウムおよびその合金等の金属材料や、セラミックスなどによって形成することができる。載置部17には、載置領域17aが設けられている。この載置領域17aは、被処理体であるウエハWを水平に載置するためのものである。本実施の形態のプラズマ処理装置1において、載置領域17aは、載置部17の内壁面に、ウエハWの大きさより少し大きく形成された凹部である。なお、載置領域17aは、凹部に限らず、凸部やテーブル状に設けてもよい。また、載置部17には、載置領域17aに近接して、その直下に電極26が埋設されている。電極26は、載置領域17aと同程度の大きさを有し、全体が絶縁被覆材27によって被覆されている。
【0029】
底壁部13は、複数(図1では2つのみ図示)の開口部13bを有している。各開口部13bには、後述するマイクロ波導入装置5のマイクロ波導入部63(アンテナモジュール61の一部分)が、処理容器2の外側から装着されている。つまり、マイクロ波導入装置5は、処理容器2の下部に設けられている。マイクロ波導入装置5は、処理容器2内に電磁波(マイクロ波)を導入してプラズマを生成するプラズマ生成手段として機能する。マイクロ波導入装置5の構成については、後で詳しく説明する。
【0030】
プラズマ処理装置1は、更に、載置領域17aを含む載置部17に高周波電力を供給する高周波バイアス電源25と、載置部17と高周波バイアス電源25との間に設けられた整合器24とを備えている。高周波バイアス電源25は、載置部17の載置領域17aの直下に埋設された電極26に電気的に接続されている。高周波バイアス電源25は、ウエハWにイオンを引き込むために、載置部17に高周波電力を供給する。なお、載置部17を導電性材料で形成する場合は、電極26を設けず、載置部17と底壁部13との間に絶縁材を介在させて、載置部17と高周波バイアス電源25とを電気的に接続する構成としてもよい。また、高周波バイアス電源25と整合器24とを用いない装置構成とすることも可能であり、この場合、載置部17を底壁部13と一体に形成してもよい。
【0031】
図示しないが、プラズマ処理装置1は、更に、載置領域17aを加熱または冷却する温度制御機構を備えている。温度制御機構は、例えば、ウエハWの温度を、25℃(室温)〜900℃の範囲内で制御する。また、載置領域17aには、その上面(載置面)に対して突没可能に設けられた複数の支持ピン28が設けられている。複数の支持ピン28は、任意の昇降機構により上下に変位し、上昇位置において、図示しない搬送室との間でウエハWの受け渡しを行うことができるように構成されている。
【0032】
プラズマ処理装置1は、更に、処理容器2の天井部11に設けられたガス導入部15を備えている。ガス導入部15は、天井部11の複数のガス導入用開口11bに装着された円筒形状をなすノズル16を有している。ノズル16は、その下面に形成されたガス孔16aを有している。ノズル16の配置については、後で説明する。
【0033】
ガス供給機構3は、ガス供給源31を含むガス供給装置3aと、ガス供給源31とガス導入部15とを接続する配管32とを有している。なお、図1では、1つのガス供給源31を図示しているが、ガス供給装置3aは、使用されるガスの種類に応じて複数のガス供給源を含んでいてもよい。
【0034】
ガス供給源31は、例えば、プラズマ生成用の希ガスや、酸化処理、窒化処理、成膜処理、エッチング処理およびアッシング処理に使用される処理ガス等のガス供給源として用いられる。なお、プラズマ生成用の希ガスとしては、例えば、Ar、Kr、Xe、He等が使用される。酸化処理に使用される処理ガスとしては、例えば、酸素ガス、オゾン、NO2ガス等の酸化性ガスが使用される。窒化処理に使用される処理ガスとしては、窒化ガス、NH3ガス、N2Oガス等が使用される。また、処理容器2においてCVD処理が行われる場合には、ガス供給源31は、成膜原料ガス、処理容器2内の雰囲気を置換する際に使用されるパージガス、処理容器2内をクリーニングする際に使用されるクリーニングガス等の供給源として用いられる。なお、成膜原料ガスとしては、例えば、TiCl4ガスとNH3ガスが使用される。パージガスとしては、例えば、N2、Ar等が使用される。クリーニングガスとしては、例えば、ClF3、NF3等が使用される。エッチングガスとしては、CF4ガス、HBrガス等が使用される。アッシングガスとしては、酸素ガス等が使用される。
【0035】
図示しないが、ガス供給装置3aは、更に、配管32の途中に設けられたマスフローコントローラおよび開閉バルブを含んでいる。処理容器2内に供給されるガスの種類や、これらのガスの流量等は、マスフローコントローラおよび開閉バルブによって制御される。
【0036】
プラズマ処理装置1は、更に、排気口11aと排気装置4とを接続する排気管14を備えている。排気装置4は、例えばAPCバルブと、処理容器2の内部空間を所定の真空度まで高速に減圧することが可能な高速真空ポンプとを有している。このような高速真空ポンプとしては、例えばターボ分子ポンプ等がある。排気装置4の高速真空ポンプを作動させることによって、処理容器2は、その内部空間が所定の真空度、例えば0.133Paまで減圧される。なお、図1では、複数の排気口11aから排気管14を介して1つの排気装置4に接続する構成となっているが、排気装置4は排気口11a毎に個別に設けてもよい。
【0037】
プラズマ処理装置1の各構成部は、それぞれ制御部8に接続されて、制御部8によって制御される。制御部8は、典型的にはコンピュータである。図2に示した例では、制御部8は、CPUを備えたプロセスコントローラ91と、このプロセスコントローラ91に接続されたユーザーインターフェース92および記憶部93とを備えている。
【0038】
プロセスコントローラ91は、プラズマ処理装置1において、例えば温度、圧力、ガス流量、バイアス印加用の高周波電力、マイクロ波出力等のプロセス条件に関係する各構成部(例えば、高周波バイアス電源25、ガス供給装置3a、排気装置4、マイクロ波導入装置5等)を統括して制御する制御手段である。
【0039】
ユーザーインターフェース92は、工程管理者がプラズマ処理装置1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードやタッチパネル、プラズマ処理装置1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を有している。
【0040】
記憶部93には、プラズマ処理装置1で実行される各種処理をプロセスコントローラ91の制御によって実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や、処理条件データ等が記録されたレシピ等が保存されている。プロセスコントローラ91は、ユーザーインターフェース92からの指示等、必要に応じて、任意の制御プログラムやレシピを記憶部93から呼び出して実行する。これにより、プロセスコントローラ91による制御下で、プラズマ処理装置1の処理容器2内において所望の処理が行われる。
【0041】
上記の制御プログラムおよびレシピは、例えば、CD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリ、DVD、ブルーレイディスク等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納された状態のものを利用することができる。また、上記のレシピは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用することも可能である。
【0042】
次に、図1、図3ないし図7を参照して、マイクロ波導入装置5の構成について詳しく説明する。図3は、マイクロ波導入装置5におけるマイクロ波出力部50とアンテナユニット60の構成を示す説明図である。図4は、処理容器2に装着されたマイクロ波導入部63とマイクロ波放射モジュール80を拡大して示す断面図である。図5は、図4に示したマイクロ波導入部63における平面アンテナ71を示す平面図である。図6は、処理容器2内におけるマイクロ波放射モジュール80の配置を説明する平面図である。図7は、一つのマイクロ波放射モジュール80とウエハWとの配置を説明する要部斜視図である。
【0043】
前述のように、マイクロ波導入装置5は、処理容器2の下部に設けられ、処理容器2内に電磁波(マイクロ波)を導入してプラズマを生成するプラズマ生成手段として機能する。図1および図3に示したように、マイクロ波導入装置5は、マイクロ波を生成すると共に、マイクロ波を複数の経路に分配して出力するマイクロ波出力部50と、マイクロ波出力部50から出力されたマイクロ波を処理容器2内へ導入するアンテナユニット60と、アンテナユニット60により導入されたマイクロ波を処理容器2内に放射するマイクロ波放射モジュール80と、を有している。
【0044】
<マイクロ波出力部>
マイクロ波出力部50は、電源部51と、マイクロ波発振器52と、マイクロ波発振器52によって発振されたマイクロ波を増幅するアンプ53と、アンプ53によって増幅されたマイクロ波を複数の経路に分配する分配器54とを有している。マイクロ波発振器52は、所定の周波数(例えば、2.45GHz)でマイクロ波を発振(例えば、PLL発振)させる。なお、マイクロ波の周波数は、2.45GHzに限らず、8.35GHz、5.8GHz、1.98GHz等であってもよい。また、このようなマイクロ波出力部50は、マイクロ波の周波数を例えば800MHzから1GHzの範囲内とする場合にも適用することが可能である。分配器54は、入力側と出力側のインピーダンスを整合させながらマイクロ波を分配する。
【0045】
<アンテナユニット>
アンテナユニット60は、複数のアンテナモジュール61を含んでいる。複数のアンテナモジュール61は、それぞれ、分配器54によって分配されたマイクロ波を処理容器2内に導入する。各アンテナモジュール61は、分配されたマイクロ波を主に増幅して出力するアンプ部62と、アンプ部62から出力されたマイクロ波を処理容器2内に導入するマイクロ波導入部63と、を有している。
【0046】
(アンプ部)
アンプ部62は、マイクロ波の位相を変化させる位相器62Aと、メインアンプ62Cに入力されるマイクロ波の電力レベルを調整する可変ゲインアンプ62Bと、ソリッドステートアンプとして構成されたメインアンプ62Cと、後述するマイクロ波導入部63のアンテナ部で反射されてメインアンプ62Cに向かう反射マイクロ波を分離するアイソレータ62Dとを含んでいる。
【0047】
位相器62Aは、マイクロ波の位相を変化させて、マイクロ波の放射特性を変化させることができるように構成されている。位相器62Aは、例えば、アンテナモジュール61毎にマイクロ波の位相を調整することによって、マイクロ波の指向性を制御してプラズマの分布を変化させることに用いられる。なお、このような放射特性の調整を行わない場合には、位相器62Aを設けなくてもよい。
【0048】
可変ゲインアンプ62Bは、個々のアンテナモジュール61のばらつきの調整や、プラズマ強度の調整のために用いられる。例えば、可変ゲインアンプ62Bをアンテナモジュール61毎に変化させることによって、処理容器2内全体のプラズマの分布を調整することができる。
【0049】
図示しないが、メインアンプ62Cは、例えば、入力整合回路、半導体増幅素子、出力整合回路および高Q共振回路を含んでいる。半導体増幅素子としては、例えば、E級動作が可能なGaAsHEMT、GaNHEMT、LD(Laterally Diffused)−MOSが用いられる。
【0050】
アイソレータ62Dは、サーキュレータとダミーロード(同軸終端器)とを有している。サーキュレータは、後述するマイクロ波導入部63のアンテナ部で反射された反射マイクロ波をダミーロードへ導くものである。ダミーロードは、サーキュレータによって導かれた反射マイクロ波を熱に変換するものである。
【0051】
(マイクロ波導入部)
図1に示したように、複数のマイクロ波導入部63は、処理容器2の底壁部13に設けられた開口部13bに装着されている。より具体的には、マイクロ波導入部63の上部が開口部13bに挿入され、図示しない固定手段で固定されている。図4に示したように、マイクロ波導入部63は、インピーダンスを整合させるチューナ64と、増幅されたマイクロ波を処理容器2内に放射するアンテナ部65と、金属材料よりなり、図4における上下方向に延びる円筒状の形状を有する本体容器66と、本体容器66内において本体容器66が延びる方向と同じ方向に延びる内側導体67とを有している。本体容器66および内側導体67は、同軸管を構成している。本体容器66は、この同軸管の外側導体を構成している。内側導体67は、棒状または筒状の形状を有している。本体容器66の内周面と内側導体67の外周面との間の空間は、マイクロ波伝送路68を形成する。
【0052】
図示しないが、アンテナモジュール61は、更に、本体容器66の基端側(下端側)に設けられた給電変換部を有している。給電変換部は、同軸ケーブルを介してメインアンプ62Cに接続されている。アイソレータ62Dは、同軸ケーブルの途中に設けられている。
【0053】
チューナ64は、スラグチューナを構成している。具体的には、図4に示したように、チューナ64は、本体容器66のアンテナ部65よりも基端部側(下端部側)の部分に配置された2つのスラグ74A,74Bと、2つのスラグ74A,74Bを動作させるアクチュエータ75と、このアクチュエータ75を制御するチューナコントローラ76とを有している。
【0054】
スラグ74A,74Bは、板状且つ環状の形状を有し、本体容器66の内周面と内側導体67の外周面との間に配置されている。また、スラグ74A,74Bは、誘電体材料によって形成されている。スラグ74A,74Bを形成する誘電体材料としては、例えば、比誘電率が10の高純度アルミナを用いることができる。高純度アルミナは、通常、スラグを形成する材料として用いられている石英(比誘電率3.88)やテフロン(登録商標)(比誘電率2.03)よりも比誘電率が大きいため、スラグ74A,74Bの厚みを小さくすることができる。また、高純度アルミナは、石英やテフロン(登録商標)に比べて、誘電正接(tanδ)が小さく、マイクロ波の損失を小さくすることができるという特徴を有している。高純度アルミナは、更に、歪みが小さいという特徴と、熱に強いという特徴も有している。高純度アルミナとしては、純度99.9%以上のアルミナ焼結体であることが好ましい。また、高純度アルミナとして、単結晶アルミナ(サファイア)を用いてもよい。
【0055】
チューナ64は、チューナコントローラ76からの指令に基づいて、アクチュエータ75によって、スラグ74A,74Bを上下方向に移動させる。これにより、チューナ64は、インピーダンスを調整する。例えば、チューナコントローラ76は、終端部のインピーダンスが50Ωになるように、スラグ74A,74Bの位置を調整する。
【0056】
本実施の形態では、アンプ部62のメインアンプ62C、マイクロ波導入部63のチューナ64および平面アンテナ71は、互いに近接して配置されている。特に、チューナ64および平面アンテナ71は、集中定数回路を構成し、且つ共振器として機能する。平面アンテナ71の取り付け部分には、インピーダンス不整合が存在する。本実施の形態では、チューナ64によって、プラズマを含めて高精度でチューニングすることができ、平面アンテナ71における反射の影響を解消することができる。また、チューナ64によって、平面アンテナ71に至るまでのインピーダンス不整合を高精度で解消することができ、実質的に不整合部分をプラズマ空間とすることができる。これにより、チューナ64によって、高精度のプラズマ制御が可能になる。
【0057】
アンテナ部65は、本体容器66における給電変換部とは反対側に設けられている。上述のように、本体容器66におけるアンテナ部65よりも基端側の部分は、チューナ64によるインピーダンス調整範囲となっている。
【0058】
図4に示したように、アンテナ部65は、内側導体67の上端部に接続された平面アンテナ71と、平面アンテナ71の下面側に配置されたマイクロ波遅波材72とを有している。
【0059】
平面アンテナ71は、円板形状を有している。また、平面アンテナ71は、平面アンテナ71を貫通するように形成されたスロット71aを有している。図5に示した例では、4つのスロット71aが設けられており、各スロット71aは、4つに均等に分割された円弧形状を有している。なお、スロット71aの数は、4つに限らず、5つ以上であってもよいし、1つ以上3つ以下であってもよい。
【0060】
マイクロ波遅波材72は、真空よりも大きい誘電率を有する材料によって形成されている。マイクロ波遅波材72を形成する材料としては、例えば、石英、セラミックス、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等のフッ素系樹脂、ポリイミド樹脂等を用いることができる。マイクロ波は、真空中ではその波長が長くなる。マイクロ波遅波材72は、マイクロ波の波長を短くしてプラズマを調整する機能を有している。また、マイクロ波の位相は、マイクロ波遅波材72の厚みによって変化する。そのため、マイクロ波遅波材72の厚みによってマイクロ波の位相を調整することにより、平面アンテナ71が定在波の腹の位置になるように調整することができる。これにより、平面アンテナ71における反射波を抑制することができると共に、平面アンテナ71から放射されるマイクロ波の放射エネルギーを大きくすることができる。つまり、これにより、マイクロ波のパワーを効率よく処理容器2内に導入することができる。
【0061】
<マイクロ波放射モジュール>
図1及び図4に示すように、マイクロ波放射モジュール80は、誘電体窓部材としてのマイクロ波透過板81と、導体部材としてのカバー部材82とを有している。マイクロ波放射モジュール80は、処理容器2の内部に配置されている。マイクロ波放射モジュール80の下端(つまり、マイクロ波透過板81の下面)は、平面アンテナ71の上面にほぼ接して設けられている。これにより、一つのマイクロ波放射モジュール80は、一つのアンテナモジュール61に接続され、アンテナモジュール61を介して導入されたマイクロ波を処理容器2内の空間へ向けて放射する。
【0062】
図6に示すように、本実施の形態のプラズマ処理装置1では、処理容器2内のウエハWの周囲に、4つのマイクロ波放射モジュール80(図6では、符号80A1,80A2,80A3及び80A4で表す)を有している。マイクロ波放射モジュール80A1,80A2,80A3及び80A4は、互いに分離して、ウエハWの周囲を囲むように、同一円周上に均等に配置されている。本実施の形態では、4つのマイクロ波放射モジュール80A1,80A2,80A3及び80A4は同じ構成である。なお、図6では、各マイクロ波放射モジュール80A1,80A2,80A3,80A4にそれぞれ接続されるアンテナモジュール61の平面アンテナ71の位置を破線で示すとともに、処理容器2は図示を省略している。
【0063】
(マイクロ波透過板)
マイクロ波透過板81は、ウエハWを囲むようにその周囲に配置され、アンテナモジュール61により導入されたマイクロ波を透過させて処理容器2内に放射する。マイクロ波透過板81は、誘電体材料によって形成されている。マイクロ波透過板81を形成する誘電体材料としては、例えば石英やセラミックス等が用いられる。本実施の形態のプラズマ処理装置1では、マイクロ波透過板81は、カバー部材82によって、処理容器2の底壁部13に固定されている。
【0064】
(カバー部材)
カバー部材82は、マイクロ波透過板81を介して処理容器2内に導入されるマイクロ波が、ウエハWの表面と平行な面に沿ってウエハWへ向かうように、マイクロ波の方向を規制する。つまり、カバー部材82は、マイクロ波透過板81を透過して処理容器2内の空間へ導入されるマイクロ波の方向を定める部材である。カバー部材82は、例えばアルミニウムおよびその合金等の金属材料によって形成されている。カバー部材82の表面は、例えばアルマイト処理(陽極酸化処理)が施されていてもよい。また、シリコンやY2O3などの被膜が形成されていてもよい。カバー部材82は、マイクロ波透過板81を覆うように、かつマイクロ波透過板81に密着して設けられている。カバー部材82は、例えば螺子等の任意の固定手段で、処理容器2の底壁部13に固定されている。
【0065】
図4、図6及び図7に示した例では、マイクロ波透過板81は、平面視扇型の短冊状をなし、その縦断面が一定の厚みを有する立体形状を有している。カバー部材82もマイクロ波透過板81に対応して平面視が扇型をなし、その短尺方向の縦断面はL字形をしている。なお、マイクロ波透過板81やカバー部材82の形状は、図示のものに限らず、被処理体の形状に応じて任意の形状とすることができる。
【0066】
図4及び図7に示すように、マイクロ波透過板81の片側(内周側)の側面は、カバー部材82に覆われておらず、処理容器2の内部空間に露出している。このマイクロ波透過板81の露出面は、処理容器2内の載置領域17aに載置されたウエハWへ向けてマイクロ波を放射するマイクロ波放射面81aとなっている。なお、図4では、マイクロ波放射面81aから放射される表面波モードのマイクロ波の方向を太い矢印で示した。
【0067】
本実施の形態のプラズマ処理装置1では、マイクロ波放射面81aは、平面視円形のウエハWのエッジ形状に対応した形状となっている。すなわち、マイクロ波放射面81aは、弧状に湾曲し、ウエハWのエッジ形状に対応した曲面を有している。このように、マイクロ波放射面81aの形状をウエハWのエッジ形状に対応させることによって、4つのマイクロ波透過板81のマイクロ波放射面81aからウエハWの中心Oへ向けてマイクロ波を効率よく放射できる。
【0068】
図4に示したように、マイクロ波透過板81の下端が、載置領域17aに載置されたウエハWの上面の高さ以上の高さ位置に配置されることが好ましい。特に、載置領域17aに載置されたウエハWの上面を拡大した仮想平面に対し、マイクロ波透過板81の下面が一致することがより好ましい。本実施の形態のプラズマ処理装置1では、ウエハWの上面と、載置部17の表面及び底壁部13におけるウエハWの周囲の内表面Sと、マイクロ波透過板81の下面と、がほぼ同じ高さであり、同一の仮想平面上に形成されている。このような高さにマイクロ波透過板81を配置することによって、マイクロ波透過板81のマイクロ波放射面81aとウエハWとの間に、段差等の境界条件をなくし、マイクロ波放射面81aから放射される表面波モードのマイクロ波を効率よくウエハWの表面へ向けて導き、ウエハWの上方でプラズマを生成させることが可能になる。
【0069】
また、本実施の形態のプラズマ処理装置1では、図1に示すように、載置領域17aを含む載置部17に高周波バイアス電源25から高周波電力を供給できるように構成されている。載置部17に高周波バイアス電源25から高周波電力を印加することで、ウエハWにイオンを引き込むことができるため、例えばプラズマ処理装置1でイオン性の強いプラズマによる処理を行う場合に、処理効率を向上させることができる。
【0070】
本実施の形態のプラズマ処理装置1では、マイクロ波透過板81のマイクロ波放射面81aから放射されたマイクロ波は、図4に示すように、マイクロ波透過板81とウエハWとの間に露出している金属表面(底壁部13におけるウエハWの周囲の内表面S)を表面波モードで伝搬する。このように金属表面を伝搬する表面波は、プラズマと金属表面との間に存在するシース(図示せず)によりガイドされる。すなわち、シース内に存在する誘電率が低い低電子密度の層とプラズマとの間を表面波が伝搬する。このため、少なくとも底壁部13におけるウエハWの周囲の内表面Sに、例えばシリコン等の材質の溶射膜を形成しておくことが好ましい。溶射膜によって、内表面Sがマイクロ波で削られてコンタミネーション発生原因となることを防止できる。なお、溶射膜に代えて、マイクロ波透過板81とウエハWとの間に露出している内表面Sに例えばシリコン製の環状部材を配置して、内表面Sを覆ってもよい。
【0071】
上記のように構成されたマイクロ波導入装置5では、メインアンプ62Cで増幅されたマイクロ波が、本体容器66の内周面と内側導体67の外周面との間(マイクロ波伝送路68)を通って平面アンテナ71に達し、平面アンテナ71のスロット71aからマイクロ波透過板81を透過して処理容器2の内部空間に放射される。この際、マイクロ波の放射方向は、カバー部材82によって規制されるため、処理容器2内の空間に臨むマイクロ波放射面81aからウエハWへ向けてマイクロ波が放射される。このマイクロ波は、底壁部13におけるウエハW周囲の内表面S上を表面波としてウエハWの方向へ伝搬する。本実施の形態のプラズマ処理装置1では、マイクロ波放射面81aが平面視円形のウエハWのエッジ形状に対応した曲面を有しているため、表面波モードのマイクロ波がウエハWの中心Oへ向けて効率よく放射される。図6では、代表的にマイクロ波放射モジュール80A1から放射されるマイクロ波の方向を太い矢印で示した。なお、マイクロ波放射モジュール80A1,80A2,80A3及び80A4から、それぞれ放射される表面波モードのマイクロ波は、アンプ部62の位相器62Aで位相調節を行うことにより、互いの干渉を制御することができる。このようにして放射されたマイクロ波によって、ウエハWの直上部で表面波プラズマが生成し、ウエハWに対して所定のプラズマ処理が行われる。
【0072】
(第1の変形例)
図8は、第1の実施の形態のプラズマ処理装置1におけるマイクロ波導入装置5の第1の変形例を示す説明図である。図8では、図6と同様に、処理容器2内におけるマイクロ波放射モジュール80とウエハWの配置を示している。図8は、一つのマイクロ波放射モジュール80に対して、二つのアンテナモジュール61が接続されている。すなわち、本変形例では、ウエハWの周囲に、ウエハWを囲むように互いに分離した4つのマイクロ波放射モジュール80(図8では、符号80B1,80B2,80B3及び80B4で表している)が設けられており、それぞれに、アンテナモジュール61が二つずつ接続されている。図8では、アンテナモジュール61の平面アンテナ71の位置を破線で示している。このように、一つのマイクロ波放射モジュール80に対して、二つ以上のアンテナモジュール61を接続することにより、処理容器2内で生成するプラズマの密度の制御性を向上させることができる。
【0073】
なお、一つのマイクロ波放射モジュール80に接続されるアンテナモジュール61の数は、3つ以上でもよい。また、図8では、4つのマイクロ波放射モジュール80(80B1〜80B4)に、それぞれ均等な数のアンテナモジュール61が接続されているが、マイクロ波放射モジュール80毎に異なる数のアンテナモジュール61を接続することもできる。
【0074】
(第2の変形例)
また、図9は、第1の実施の形態のプラズマ処理装置1におけるマイクロ波導入装置5の第2の変形例を示す説明図である。図6及び図8では、処理容器2内のウエハWの周囲に、ウエハWを囲むように4つのマイクロ波放射モジュール80を設けた例を示したが、ウエハWを囲むことができれば、マイクロ波放射モジュール80の数は任意である。例えば、マイクロ波放射モジュール80の数は、単一でもよいし、2つないし3つでもよく、5つ以上でもよい。図9には、単一のマイクロ波放射モジュール80Cに4つのアンテナモジュール61を接続した例を示した。図9では、アンテナモジュール61の平面アンテナ71の位置を破線で示している。図9に示す例では、マイクロ波放射モジュール80Cを構成するマイクロ波透過板81及びカバー部材82は、共に環状に形成された単一の部材である。4つのアンテナモジュール61は、ウエハWの周囲に均等に配置されている。
【0075】
上記各変形例に示したように、プラズマ処理装置1では、処理の目的に応じて、マイクロ波導入装置5の構成、特にマイクロ波放射モジュール80とアンテナモジュール61との配置の組み合わせ、を選択することができる。これにより、処理容器2内におけるプラズマ密度の局所的な制御を容易に行うことができる。プラズマ処理装置1において、処理容器2内で生成するプラズマの分布を制御しやすくするという観点では、ウエハWの周囲に、少なくとも3つ以上のアンテナモジュール61が配置されるように、マイクロ波導入装置5を構成することが好ましい。また、アンテナモジュール61の数が多いほど、処理容器2内でのプラズマの局所的な制御が容易になる。
【0076】
また、以上の説明では、平面視円形のウエハWに対して、その周囲に、マイクロ波放射モジュール80を略円形に配列する例を挙げた。しかし、被処理体が例えば矩形のフラットパネルディスプレイ用基板などである場合は、該基板の周囲に、全体として四角形になるようにマイクロ波放射モジュール80を配列することができる。
【0077】
<ガス導入・排気>
上述のとおり、プラズマ処理装置1の処理容器2の天井部11には、複数のガス導入用開口11bが設けられ、各ガス導入用開口11bに装着されたノズル16を有している(図1も参照)。また、処理容器2の天井部11には、複数の排気口11aが設けられ、排気装置4が接続されている。図10は、本実施の形態のプラズマ処理装置1の天井部11の底面図であり、天井部11におけるノズル16と排気口11aの配置例を示したものである。図10に示す例では、天井部11において、同心円状に内側に12個、外側に28個のノズル16が2重に配列されている。また、天井部11において、その中心部に1個、中心部と周縁部との中間領域に6個の排気口11aが形成されている。そして、ノズル16と排気口11aとは、同心円状に交互に配置されている。なお、天井部11におけるノズル16と排気口11aとの配置や個数は、図10に示した構成に限るものではなく、例えばノズル16と排気口11aとを格子状に交互に配置するなど、種々の変形が可能である。
【0078】
図10に示すように、ガス導入のためのノズル16と排気のための排気口11aの両方を、処理容器2の天井部11において互いに近接して設けることにより、ウエハW表面(処理対象面)付近での処理ガスのレジデンスタイムを短くすることができる。つまり、ノズル16から処理容器2内に導入された処理ガスを、排気口11aから(排気装置4により)短時間で排出できる。このように、処理容器2内でのガスレジデンスタイムを短くすることで、成膜処理の場合の膜質の改善を図ることが可能となる。例えば、プラズマ処理装置1を用いてウエハW上のポリシリコンの窒化処理を行う場合では、ガスレジデンスタイムを短くすることで、処理容器2内のパーツから放出される酸素に起因する膜中への酸素の混入を低減できる。また、例えば、プラズマ処理装置1を用いてウエハW上のポリシリコンの酸化処理を行う場合では、ガスレジデンスタイムを短くすることで、酸化レートを向上させることができる。
【0079】
次に、プラズマ処理装置1におけるプラズマ処理の一例について説明する。ここでは、処理ガスとして窒素を含有するガスを使用して、ウエハWの表面に対してプラズマ窒化処理を施す場合を例に挙げて、プラズマ処理の手順について説明する。まず、例えばユーザーインターフェース92から、プラズマ処理装置1においてプラズマ窒化処理を行うように、プロセスコントローラ91に指令が入力される。次に、プロセスコントローラ91は、この指令を受けて、記憶部93またはコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に保存されたレシピを読み出す。次に、レシピに基づく条件によってプラズマ窒化処理が実行されるように、プロセスコントローラ91からプラズマ処理装置1の各エンドデバイス(例えば、高周波バイアス電源25、ガス供給装置3a、排気装置4、マイクロ波導入装置5等)に制御信号が送出される。
【0080】
次に、ゲートバルブGが開状態にされて、図示しない搬送装置によって、ウエハWが、ゲートバルブGおよび搬入出口12aを通って処理容器2内に搬入される。ウエハWは、複数の支持ピン28に受け渡され、載置部17の載置領域17aに載置される。次に、ゲートバルブGが閉状態にされて、排気装置4によって、処理容器2内が減圧排気される。次に、ガス供給機構3によって、所定の流量の希ガスおよび窒素含有ガスが、ガス導入部15を介して処理容器2内に導入される。処理容器2の内部空間は、排気量およびガス供給量を調整することによって、所定の圧力に調整される。
【0081】
次に、マイクロ波出力部50において、処理容器2内に導入するマイクロ波を発生させる。マイクロ波は、分配器54によって複数系統(例えば4系統)に分配される。マイクロ波出力部50の分配器54から出力された複数のマイクロ波は、アンテナユニット60の複数のアンテナモジュール61に入力され、各アンテナモジュール61によって、処理容器2内に導入される。各アンテナモジュール61では、マイクロ波は、アンプ部62およびマイクロ波導入部63を伝搬する。マイクロ波導入部63のアンテナ部65に到達したマイクロ波は、平面アンテナ71のスロット71aを介し、マイクロ波放射モジュール80のカバー部材82によって方向を規定されると共にマイクロ波透過板81を透過して、マイクロ波放射面81aから処理容器2内におけるウエハWの上方の空間に向けて放射される。このようにして、各アンテナモジュール61から、それぞれ別々にマイクロ波が処理容器2内に導入される。各アンテナモジュール61では、分配器54で分配されたマイクロ波をアンプ部62で個別に増幅することが可能であるため、処理容器2内に導入されるマイクロ波のパワーを個別に制御できる。従って、処理容器2内のプラズマ密度を局所的に制御することが可能である。
【0082】
上記のように、ウエハWの周囲の複数の部位から処理容器2内に導入されたマイクロ波は、それぞれ処理容器2内のウエハWの直上位置に電磁界を形成する。これにより、処理容器2内に導入された不活性ガスや窒素含有ガス等の処理ガスをプラズマ化する。そして、プラズマ中の活性種、例えばラジカルやイオンの作用によって、ウエハWのシリコン表面が窒化されてシリコン窒化膜SiNの薄膜が形成される。
【0083】
プロセスコントローラ91からプラズマ処理装置1の各エンドデバイスにプラズマ処理を終了させる制御信号が送出されると、マイクロ波の発生が停止されると共に、希ガスおよび窒素含有ガスの供給が停止されて、ウエハWに対するプラズマ処理が終了する。次に、ゲートバルブGが開状態にされて、図示しない搬送装置によって、ウエハWが搬出される。
【0084】
なお、窒素含有ガスの代りに酸素含有ガスを使用することにより、ウエハWに対して酸化処理を施すことができる。また、成膜原料ガスを使用することにより、プラズマCVD法によって、ウエハWに対して成膜処理を施すことができる。
【0085】
本実施の形態のプラズマ処理装置1では、被処理体であるウエハWを囲むように、その周囲にマイクロ波導入装置5のマイクロ波放射モジュール80を配置し、ウエハWの周囲からマイクロ波を導入する。処理容器2の下部にマイクロ波導入装置5を配置したことにより、処理容器2の天井部11にマイクロ波導入機構を設けることが必須ではなくなった。従って、天井部11を他の機構に利用することが可能となり、図10に例示したように、処理容器2の天井部11からガス導入/排気を行うことが可能であり、装置設計上の自由度を大幅に向上させることが可能となった。
【0086】
次に、本実施の形態における効果について説明する。前述のように、本実施の形態に係るプラズマ処理装置1では、処理容器2の底壁部13に装着されたアンテナモジュール61及びマイクロ波放射モジュール80を介して処理容器2内にマイクロ波が導入される。このような構成による効果について、以下、比較例のプラズマ処理装置と比較しながら説明する。なお、処理容器の上部からマイクロ波を導入するプラズマ処理装置を、比較例のプラズマ処理装置と呼ぶ。
【0087】
図11は、比較例のプラズマ処理装置の構成を模式的に示す断面図である。比較例のプラズマ処理装置501は、処理容器502、載置台521および支持部材522を備えている。プラズマ処理装置501は、図1に示したマイクロ波導入装置5の代りに、マイクロ波導入装置505を備えている。マイクロ波導入装置505は、処理容器502の上部に設けられる。マイクロ波導入装置505としては、例えば石英製のマイクロ波透過板573を1個だけ含む既知の構成のマイクロ波導入装置である。
【0088】
プラズマ処理装置501では、マイクロ波導入装置505のマイクロ波透過板573が処理容器502の上部に設けられているため、処理ガスの導入や排気を、処理容器502の上部から行うことができない。プラズマ処理装置501では、多くの場合、処理ガスの導入は、処理容器502の側部から行うか、載置台521とマイクロ波透過板573との間にシャワープレート(図示せず)を介在配備させる方法に限られてしまう。また、ガスの排気は、多くの場合、処理容器502の底部から行う方法に限られてしまう。
【0089】
また、プラズマ処理装置501では、マイクロ波透過板573が載置台521の直上に存在するため、例えば、プラズマ酸化処理やプラズマ窒化処理を繰返す間にマイクロ波透過板573に付着した薄膜が剥がれ、ウエハW上に落下し、パーティクル発生源となる。
【0090】
プラズマ処理装置501では、マイクロ波導入装置505が処理容器502の上部に設けられていることや、処理容器502内に、ウエハWを載置する載置台521および支持部材522を備えているため、処理容器502の容積が大きくなり、小型化が困難である。
【0091】
以上のように、比較例のプラズマ処理装置501では、処理容器502の天井部にマイクロ波導入機構を配備していたため、処理容器の容積の小型化が困難であり、また、他の機構を天井部に設けることが困難であった。その結果、装置設計の自由度が大幅に制約を受けていた。また、プラズマ処理装置501では、パーティクル発生源となる可能性があるマイクロ波透過板573を載置台521の直上に設ける必要があったため、パーティクル対策も困難であった。それに対し、本実施の形態のプラズマ処理装置1では、処理容器2の底壁部13にマイクロ波導入機構を設け、処理容器2内でプラズマを生成させるためのマイクロ波を、ウエハWの周囲に設けたマイクロ波放射モジュール80から導入する構成とした。かかる構成を採用したことにより、プラズマ処理装置1では、処理容器2の容積を従来の構成のマイクロ波プラズマ処理装置に比べて格段に小さくすることが可能である。また、処理容器2の天井部11にマイクロ波導入機構を設けることが必須でなくなるため、処理容器2の天井部11に、ガスを導入するガス導入部や、ガスを排気する排気部を設け、天井部11を介してガスの導入、排気を行うことも可能となった。さらに、ウエハWの直上にマイクロ波透過板を配置する必要がないため、マイクロ波透過板に起因するパーティクルの発生も低減できる。
【0092】
次に、図12A〜図12Cを参照して、処理容器2におけるガス導入部と排気部の配置例を挙げ、本実施の形態のプラズマ処理装置1の効果についてさらに詳しく説明する。図1に示したプラズマ処理装置1では、処理容器2内へのガスの導入と排気を共に天井部11を介して行う構成とした。しかし、本発明のプラズマ処理装置は、装置設計の自由度が大きいため、例えばガスの導入部と排気部の構成について、さらに多くのバリエーションを採用することが可能である。
【0093】
図12A〜図12Cは、ガス導入位置と排気位置が図1のプラズマ処理装置1と異なる変形例のプラズマ処理装置を簡略化して示したものであり、それ以外の構成は第1のプラズマ処理装置1と同様である。なお、図12A〜図12Cにおいて、ガス導入部94と排気部95は、これらを配設する大まかな場所を象徴的に示す意味でのみ用いられる。図12A〜図12Cにおいて、具体的なノズルや排気口の配置は、例えば図10に例示したように、より複雑な構成とすることができる。
【0094】
(第3の変形例)
図12Aは、ガス導入部94を処理容器2の天井部11に設け、排気部95を処理容器2の側壁部12に設けた態様である。この第3の変形例では、仮にマイクロ波放射モジュール80のマイクロ波透過板81で膜剥がれなどのパーティクルが発生しても、処理容器2の天井部11から処理ガスが導入され、側壁部12に設けた排気部95から排気されるガスの流れによって、ウエハWの表面にパーティクルを付着しにくくすることができる。また、ガスの排気を処理容器2の側壁部12から行うため、排気部95がウエハWの直上に存在しないことにより、ウエハWの表面へパーティクルが落下する確率を低減できる。
【0095】
(第4の変形例)
図12Bは、ガス導入部94を処理容器2の側壁部12に設け、排気部95を処理容器2の天井部11に設けた態様である。第4の変形例では、処理容器2の天井部11からガスの排気を行うが、天井部11における排気部95の配置の自由度が高いため、例えばウエハWの直上位置を外して排気口を設けることができる。これにより、パーティクルの落下によるウエハWの汚染を低減できる。
【0096】
(第5の変形例)
図12Cは、ガス導入部94Aを処理容器2の天井部11に、ガス導入部94Bを処理容器2の側壁部12に設け、排気部95を処理容器2の底壁部13に設けた態様である。第5の変形例では、ガス導入部94Aから、ある種類のガスを導入し、ガス導入部94Bから、ガス導入部94Aから導入するガスと同種もしくは別の種類のガスを導入することができる。本変形例は、複数のガスを同時に使用するプロセスに有効である。また、ガスの排気を処理容器2の底壁部13から行うため、排気部95がウエハWの直上に存在しないことにより、ウエハWの表面へパーティクルが落下する確率を低減できる。
【0097】
図12A〜図12Cに示すように、処理容器2の底壁部13にマイクロ波導入機構を設けたことにより、天井部11や側壁部12から、種々の組み合わせでガスの導入と排気を行うことが可能になる。図12A〜図12Cの第3〜第5の変形例に挙げたガスの導入・排気の態様は、あくまでも例示であり、また、各変形例の組み合わせも可能である。
【0098】
さらに、本実施の形態のプラズマ処理装置では、装置設計の自由度が大幅に向上しているため、ガス導入・排気の機構のほかに、処理容器2の天井部11に種々の機構を設けることができる。例えば、天井部11には、ウエハWの膜厚をモニタする計測器、処理容器2内のプラズマの状態をモニタする計測器など、種々の機構を配備することも可能になる。
【0099】
[第2の実施の形態]
次に、図13及び図14を参照して、本発明の第2の実施の形態に係るプラズマ処理装置について説明する。図13は、本実施の形態におけるプラズマ処理装置1Aの概略の構成を示す断面図であり、第1の実施の形態の図1に対応する図である。図14は、本実施の形態のマイクロ波導入装置5Aのマイクロ波出力部50Aとアンテナモジュール61の構成を示す説明図であり、第1の実施の形態の図3にほぼ対応する図である。
【0100】
第1の実施の形態のプラズマ処理装置1では、マイクロ波導入装置5として、マイクロ波出力部50に分配器54を設け、マイクロ波を複数のアンテナモジュール61に分配してから複数のマイクロ波放射モジュール80へ供給する構成とした。これに対し、第2の実施の形態のプラズマ処理装置1Aでは、複数のマイクロ波導入装置5Aを設け、一つのアンテナモジュール61から、一つのマイクロ波放射モジュール80へマイクロ波を供給する。本実施の形態に係るプラズマ処理装置1Aにおける他の構成は、第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置1と同じであるため、図13、図14において、図1、図3と同じ構成には同一の符号を付して説明を省略する。なお、本実施の形態では、図14に示すアンテナモジュール61のアンプ部62の構成をさらに簡素化してもよい。
【0101】
図13及び図14に示したように、本実施の形態のプラズマ処理装置1Aでは、マイクロ波導入装置5Aのマイクロ波出力部50Aに分配器を設けていない。そして、マイクロ波導入装置5Aでは、一つのマイクロ波出力部50Aから、一つのアンテナモジュール61を介して、一つのマイクロ波放射モジュール80へマイクロ波を供給する構成とした。このように、プラズマ処理装置1Aでは、複数のマイクロ波導入装置5Aを独立して設けることにより、各マイクロ波放射モジュール80から放射されるマイクロ波のパワーや周波数を独立して制御することが容易になる。従って、処理容器2内でマイクロ波放射モジュール80から放射されるマイクロ波によって発生するプラズマの密度を、個々のマイクロ波放射モジュール80毎に局所的に制御しやすい。また、本実施の形態のプラズマ処理装置1Aは、例えば、複数の被処理体を同一の処理容器内で同時に処理する場合などにも利用できる。
【0102】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。なお、本実施の形態のプラズマ処理装置1Aの変形例として、複数のマイクロ波導入装置5Aにおいて、マイクロ波放射モジュール80を共通化することも可能である。
【0103】
[第3の実施の形態]
次に、図15及び図16を参照して、本発明の第3の実施の形態に係るプラズマ処理装置について説明する。図15は、本実施の形態におけるプラズマ処理装置1Bの概略の構成を示す断面図であり、第1の実施の形態の図1に対応する図である。図16は、本実施の形態のプラズマ処理装置1Bのマイクロ波導入部63とマイクロ波放射モジュール80を含む要部を拡大して示す断面図であり、第1の実施の形態の図4にほぼ対応する図である。
【0104】
本実施の形態のプラズマ処理装置1Bでは、載置部17の周囲の底壁部13に、直流電圧印加部としてのDC印加部83と、このDC印加部83に電気的に接続された可変直流電源85と、を設けた。すなわち、プラズマ処理装置1Bは、ウエハWを収容する処理容器2と、処理容器2の内部においてウエハWを載置する載置部17と、処理容器2内にガスを供給するガス供給機構3と、処理容器2内を減圧排気する排気装置4と、処理容器2内にプラズマを生成させるためのマイクロ波を発生させると共に、処理容器2内にマイクロ波を導入するマイクロ波導入装置5と、載置部17とマイクロ波放射モジュール80との間において底壁部13に設けられたDC印加部83と、これらプラズマ処理装置1Bの各構成部を制御する制御部8とを備えている。
【0105】
DC印加部83は、導電性材料からなり、載置部17を囲むとともに、マイクロ波放射モジュール80と載置部17との間に介在するように、例えば環状に設けられている。DC印加部83は、その上面が処理容器2内に露出するようにして底壁部13に埋設されている。底壁部13とDC印加部83との間は、絶縁材84が設けられて絶縁され、接地電位の底壁部13に対して電気的にフローティングの状態となっている。可変直流電源85は、図示しないスイッチ部によりオン/オフの切り換えができるように構成され、DC印加部83に対し、例えば負の直流電圧を印加する。
【0106】
本実施の形態のプラズマ処理装置1Bでは、可変直流電源85から、DC印加部83へ直流電圧を印加することにより、マイクロ波透過板81からのマイクロ波をウエハWの方向へ伝搬させやすくすることができる。マイクロ波透過板81のマイクロ波放射面81aから放射されたマイクロ波は、図16において太矢印で示すように、マイクロ波透過板81とウエハWとの間に露出している金属表面(底壁部13及びDC印加部83におけるウエハWの周囲の内表面S’)を表面波モードで伝搬する。このように金属表面を伝搬する表面波は、プラズマと金属表面との間に存在するシース(図示せず)によりガイドされる。すなわち、シース内に存在する誘電率が低い低電子密度の層とプラズマとの間を表面波が伝搬する。本実施の形態では、載置領域17aの周辺にDC印加部83を設け、可変直流電源85から例えば負電圧を印加することによって、シース厚を拡大させることが可能となる。シース厚を拡大することによって、シースに沿って表面波をウエハWの近傍まで効率よく導くことができる。このように、DC印加部83を設け、そこに直流電圧を印加することによって、シース厚を調節し、表面波モードのマイクロ波の伝搬効率を高めることができる。
【0107】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。なお、本実施の形態のように、載置部17の周囲の底壁部13にDC印加部83を設ける構成は、第2の実施の形態(図13参照)のプラズマ処理装置1Aにも適用可能である。
【0108】
[第4の実施の形態]
次に、図17を参照して、本発明の第4の実施の形態に係るプラズマ処理装置について説明する。図17は、本実施の形態におけるプラズマ処理装置1Cの概略の構成を示す断面図であり、第1の実施の形態の図1に対応する図である。
【0109】
第1〜第3の実施の形態では、マイクロ波放射モジュール80の全体が、処理容器2内に収容される構成としたが、本実施の形態では、マイクロ波放射モジュール80の大部分が、処理容器2の外側にはみ出た格好で装着されている。すなわち、プラズマ処理装置1Cは、ウエハWを収容する処理容器2と、処理容器2の内部においてウエハWを載置する載置部17と、処理容器2内にガスを供給するガス供給機構3と、処理容器2内を減圧排気する排気装置4と、処理容器2内にプラズマを生成させるためのマイクロ波を発生させると共に、処理容器2内にマイクロ波を導入するマイクロ波導入装置5と、これらプラズマ処理装置1Cの各構成部を制御する制御部8とを備えている。そして、本実施の形態のプラズマ処理装置1Cでは、マイクロ波導入装置5のマイクロ波放射モジュール80を側壁部12の下端に外側から装着した。より具体的には、図17に示すように、プラズマ処理装置1Cでは、マイクロ波放射モジュール80が側壁部12の下端に接し、アンテナモジュール61のマイクロ波導入部63が底壁部13の側端に接するように、マイクロ波導入装置5を配備した。本実施の形態では、マイクロ波放射モジュール80の大部分が処理容器2の外側に突出して存在している。このため、処理容器2内の空間に露出するマイクロ波透過板81のマイクロ波放射面81aとカバー部材82の内周面は、処理容器2の側壁部12の内周面と段差なくほぼ連続している。処理容器2の内径(互いに対向する側壁部12間の距離)は、ウエハWを間に挟んで互いに対向するマイクロ波放射面81a間の距離と一致している。ただし、マイクロ波透過板81のマイクロ波放射面81a及びカバー部材82の内周面の位置は、処理容器2の側壁部12の内周面の位置と、水平方向に必ずしも一致していなくてもよい。
【0110】
本実施の形態のプラズマ処理装置1Cでは、例えば図11に挙げた比較例のプラズマ処理装置501よりも、処理容器の径を大幅に小さくできる。比較例のプラズマ処理装置501では、処理容器502の上部に設けられたマイクロ波導入装置505のマイクロ波透過板573からマイクロ波が導入されて処理容器502の内部でプラズマPが生成する。このとき、処理容器502内のプラズマ密度は、側壁部512の内表面ではほぼゼロになる。ウエハW面内での処理の均一性を考慮すると、載置台521に載置されたウエハW上の全面で必要なプラズマ密度(好ましくは、均一なプラズマ密度)を維持することが必要である。そのためには、図11に示すように、ウエハWの径よりも十分に大きな径を持つプラズマPを処理容器502内で生成させる必要がある。処理容器502内でウエハWの径よりも十分に大きな径を持つプラズマを生成させるためには、ウエハWのエッジと処理容器502の側壁部512との間に十分な間隔をあけておくことが必要となる。つまり、図11に示したように、比較例のプラズマ処理装置501においては、プラズマPの大きさを見込んで、載置台521と処理容器502の側壁部512との間に十分な距離を確保しておく必要がある。
【0111】
それに対し、本実施の形態のプラズマ処理装置1Cでは、ウエハWの周囲にマイクロ波放射モジュール80を設け、ウエハWのエッジに近い位置からウエハWへ向けて水平方向にマイクロ波を導入することにより、ウエハWの直上部にプラズマを生成させる。このため、処理容器2の側壁部12の位置がウエハWのエッジに近接していても、ウエハW面内での処理の均一性に悪影響を与える懸念はほとんどない。従って、本実施の形態のプラズマ処理装置1Cでは、比較例のプラズマ処理装置501に比べて、処理容器2の内径が小さくてよく、その内部容積を大幅に縮小できる。従って、処理容器2の小型化を図ることができる。また、本実施の形態のプラズマ処理装置1Cでは、比較例のプラズマ処理装置501に比べて処理容器2の内部容積を小さくできるため、処理容器2内での処理ガスのレジデンスタイムを短くすることが可能になり、例えば成膜装置として用いる場合に膜質の向上が期待できる。
【0112】
また、本実施の形態のプラズマ処理装置1Cでは、マイクロ波放射モジュール80の大部分が処理容器2の外側に置かれているため、例えば第1〜第3の実施の形態のプラズマ処理装置1,1A,1Bと比較しても、処理容器2の内部空間の容積をさらに小さくすることが可能になる。
【0113】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。なお、本実施の形態のように、マイクロ波放射モジュール80を側壁部12の下端に装着する構成は、第2の実施の形態(図13参照)のプラズマ処理装置1Aや、第3の実施の形態のプラズマ処理装置1B(図15参照)にも適用可能である。
【0114】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明のプラズマ処理装置は、半導体ウエハを被処理体とする場合に限らず、例えば太陽電池パネルの基板やフラットパネルディスプレイ用基板を被処理体とするプラズマ処理装置にも適用できる。
【0115】
また、真空処理に限らず、大気圧プラズマを利用することもできる。
【0116】
また、上記各実施の形態のプラズマ処理装置では、処理容器2の底壁部13に載置部17を設けたが、処理容器2内に金属製のステージ又は台部を設け、該ステージ又は台部に載置されたウエハWへ向けて、その周囲に高さ位置を合わせて配置したマイクロ波放射モジュールからマイクロ波を放射するようにしてもよい。
【0117】
また、上記各実施の形態では、処理容器2の天井部11にはマイクロ波導入機構を設けていない。しかし、マイクロ波導入装置5と組み合わせて、処理容器2の天井部11に補助的にマイクロ波導入機構を設けることを妨げるものではない。
【符号の説明】
【0118】
1…プラズマ処理装置、2…処理容器、3…ガス供給機構、4…排気装置、5…マイクロ波導入装置、8…制御部、11…天井部、12…側壁部、13…底壁部、14…排気管、15…ガス導入部、16…ノズル、17…載置部、17a…載置領域、24…整合器、25…高周波バイアス電源、26…電極、27…絶縁被覆材、28…支持ピン、50…マイクロ波出力部、51…電源部、52…マイクロ波発振器、53…アンプ、54…分配器、60…アンテナユニット、61…アンテナモジュール、62…アンプ部、63…マイクロ波導入部、64…チューナ、65…アンテナ部、66…本体容器、67…内側導体、71…平面アンテナ、71a…スロット、72…マイクロ波遅波材、80…マイクロ波放射モジュール、81…マイクロ波透過板、82…カバー部材、91…プロセスコントローラ、92…ユーザーインターフェース、93…記憶部、W…半導体ウエハ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体を収容する処理容器と、
前記処理容器内で被処理体を載置する載置部と、
前記処理容器内に処理ガスを供給するガス供給機構と、
前記処理容器内で前記処理ガスのプラズマを生成させるためのマイクロ波を発生させると共に、前記処理容器内に前記マイクロ波を導入するマイクロ波導入装置と
を備え、
前記マイクロ波導入装置は、
被処理体の周囲に配置され、マイクロ波を透過させて前記処理容器内へ放射する誘電体窓部材と、
前記誘電体窓部材を介して前記処理容器内に放射されるマイクロ波が被処理体の表面と平行な方向で被処理体へ向かうように規制する導体部材と、
を含むマイクロ波放射モジュールを有しているプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記マイクロ波導入装置は、
マイクロ波を生成すると共に出力するマイクロ波出力部と、
前記処理容器の下部に外側から装着されて前記マイクロ波出力部から出力されたマイクロ波を前記マイクロ波放射モジュールへ供給する1つ又は複数のアンテナモジュールと、
を備えている請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記誘電体窓部材は、前記処理容器内の空間に露出して被処理体に向けてマイクロ波を放射するマイクロ波放射面を有しており、
前記導体部材は、前記マイクロ波放射面を除く前記誘電体窓部材の表面を覆うものである請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記マイクロ波放射面は、被処理体のエッジの形状に対応した形状を有している請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
被処理体が平面視円形であり、前記マイクロ波放射面が弧状に湾曲した形状を有している請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
被処理体を囲むように、複数の前記マイクロ波放射モジュールを有する請求項2ないし5のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
1つの前記マイクロ波放射モジュールに対し、1つ又は複数の前記アンテナモジュールが接続されている請求項6に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記アンテナモジュールを少なくとも3つ以上有する請求項6又は7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記誘電体窓部材の下端が、前記載置部に載置された被処理体の上面の高さ以上の高さ位置に配置されている請求項1ないし8のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記ガス供給機構から供給される処理ガスを導入するガス導入部が、前記処理容器の天井部に設けられており、
前記処理容器内を減圧排気する排気装置に接続する排気口が、前記処理容器の天井部に設けられている請求項1ないし9のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記処理容器内を減圧排気する排気装置に接続する排気口が、前記処理容器の側壁部又は底壁部に設けられている請求項1ないし9のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記載置部は、前記処理容器の底壁部に設けられている請求項1ないし11のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記載置部に高周波電力を供給する高周波電源部を有する請求項1ないし12のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
前記載置部と前記マイクロ波放射モジュールとの間に、直流電圧が印加される直流電圧印加部を有する請求項1ないし13のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置により、被処理体を処理するプラズマ処理方法。
【請求項16】
被処理体を収容する処理容器内で処理ガスのプラズマを生成させるためのマイクロ波を発生させると共に、前記処理容器内に前記マイクロ波を導入するマイクロ波導入装置であって、
被処理体の周囲に配置され、マイクロ波を透過させて前記処理容器内へ放射する誘電体窓部材と、
前記誘電体窓部材を介して前記処理容器内に放射されるマイクロ波が被処理体の表面と平行な方向で被処理体へ向かうように規制する導体部材と、
を含むマイクロ波放射モジュールを有していることを特徴とするマイクロ波導入装置。
【請求項17】
マイクロ波を生成すると共に出力するマイクロ波出力部と、
前記処理容器の下部に外側から装着されて前記マイクロ波出力部から出力されたマイクロ波を、前記マイクロ波放射モジュールへ供給する1つ又は複数のアンテナモジュールと、
をさらに備えている請求項16に記載のマイクロ波導入装置。
【請求項1】
被処理体を収容する処理容器と、
前記処理容器内で被処理体を載置する載置部と、
前記処理容器内に処理ガスを供給するガス供給機構と、
前記処理容器内で前記処理ガスのプラズマを生成させるためのマイクロ波を発生させると共に、前記処理容器内に前記マイクロ波を導入するマイクロ波導入装置と
を備え、
前記マイクロ波導入装置は、
被処理体の周囲に配置され、マイクロ波を透過させて前記処理容器内へ放射する誘電体窓部材と、
前記誘電体窓部材を介して前記処理容器内に放射されるマイクロ波が被処理体の表面と平行な方向で被処理体へ向かうように規制する導体部材と、
を含むマイクロ波放射モジュールを有しているプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記マイクロ波導入装置は、
マイクロ波を生成すると共に出力するマイクロ波出力部と、
前記処理容器の下部に外側から装着されて前記マイクロ波出力部から出力されたマイクロ波を前記マイクロ波放射モジュールへ供給する1つ又は複数のアンテナモジュールと、
を備えている請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記誘電体窓部材は、前記処理容器内の空間に露出して被処理体に向けてマイクロ波を放射するマイクロ波放射面を有しており、
前記導体部材は、前記マイクロ波放射面を除く前記誘電体窓部材の表面を覆うものである請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記マイクロ波放射面は、被処理体のエッジの形状に対応した形状を有している請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
被処理体が平面視円形であり、前記マイクロ波放射面が弧状に湾曲した形状を有している請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
被処理体を囲むように、複数の前記マイクロ波放射モジュールを有する請求項2ないし5のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
1つの前記マイクロ波放射モジュールに対し、1つ又は複数の前記アンテナモジュールが接続されている請求項6に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記アンテナモジュールを少なくとも3つ以上有する請求項6又は7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記誘電体窓部材の下端が、前記載置部に載置された被処理体の上面の高さ以上の高さ位置に配置されている請求項1ないし8のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記ガス供給機構から供給される処理ガスを導入するガス導入部が、前記処理容器の天井部に設けられており、
前記処理容器内を減圧排気する排気装置に接続する排気口が、前記処理容器の天井部に設けられている請求項1ないし9のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記処理容器内を減圧排気する排気装置に接続する排気口が、前記処理容器の側壁部又は底壁部に設けられている請求項1ないし9のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記載置部は、前記処理容器の底壁部に設けられている請求項1ないし11のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記載置部に高周波電力を供給する高周波電源部を有する請求項1ないし12のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
前記載置部と前記マイクロ波放射モジュールとの間に、直流電圧が印加される直流電圧印加部を有する請求項1ないし13のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置により、被処理体を処理するプラズマ処理方法。
【請求項16】
被処理体を収容する処理容器内で処理ガスのプラズマを生成させるためのマイクロ波を発生させると共に、前記処理容器内に前記マイクロ波を導入するマイクロ波導入装置であって、
被処理体の周囲に配置され、マイクロ波を透過させて前記処理容器内へ放射する誘電体窓部材と、
前記誘電体窓部材を介して前記処理容器内に放射されるマイクロ波が被処理体の表面と平行な方向で被処理体へ向かうように規制する導体部材と、
を含むマイクロ波放射モジュールを有していることを特徴とするマイクロ波導入装置。
【請求項17】
マイクロ波を生成すると共に出力するマイクロ波出力部と、
前記処理容器の下部に外側から装着されて前記マイクロ波出力部から出力されたマイクロ波を、前記マイクロ波放射モジュールへ供給する1つ又は複数のアンテナモジュールと、
をさらに備えている請求項16に記載のマイクロ波導入装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−45551(P2013−45551A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181478(P2011−181478)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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