説明

プラズマ処理装置のワーク保持治具

【課題】プラズマ処理装置において、簡易な構造で確実にワークと金属製マスクを固定できるワーク保持治具を提供する。
【解決手段】処理チャンバと、プラズマ生成部と、ステージと、ワーク保持治具とで少なくとも構成され、プラズマ生成ガスを吸引しプラズマを処理基板上にダウンフローさせて基板を処理するプラズマ処理装置において、ワーク保持治具が、処理基板60を所定の位置に保持すると共に磁気を生じさせるワーク保持台50と、ワーク保持台に保持された処理基板上に載置固定される磁性体からなるメタルマスク80とによって構成され、ワーク保持台が、ワーク保持台から延出する少なくとも一対の位置決めロッドを具備すると共に、処理基板及びメタルマスクには、所定の位置に位置決め用孔が形成され、処理基板及びメタルマスクを、位置決めロッドがそれぞれの位置決め用孔に貫通するようにワーク保持台に載置することにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属製マスクを用い、銅箔付き樹脂基板又は樹脂基板等のワークにプラズマを用いてエッチングを施すプラズマ処理装置のワーク保持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、処理室を形成する蓋部材の内側に着脱自在に取り付けられ密着した状態で電極上のワークに当接して押さえつけるワーク押さえを備えたプラズマ処理装置において、ワーク押さえを蓋部材の内側に装着する際に用いられる取付治具を透明な板状部材で構成し、この板状部材にワーク押さえを蓋部材の内側へ取り付ける際の取付位置の目印となる基準線やタップ穴を設けたことにより、処理対象ワークを押さえつける適切な押さえ位置を正確に蓋部材に移し替えることができ、ワーク切換時にワーク押さえの位置を調節する段取り替え作業を容易にかつ正確に行うことができることを開示する。
【0003】
特許文献2は、機能液を基板上に所定のパターンで配置することにより薄膜パターンを形成する際用いられるマスクであって、基板上の機能液が配置されるパターンと同じ形状、大きさの開口パターンを有する薄膜パターン形成部と、アライメントマークを形成するマーク形成部とが具備されると共に、前記マーク形成部は、少なくとも折曲部を有するアライメントマーク形成部及び該アライメントマーク形成部に連続するインク受け形成部からなり、前記インク受け形成部は前記アライメントマーク形成部より大きい薄膜パターン形成用マスクを開示し、この薄膜パターン形成用マスクが金属製マスクであり、且つ親液パターン形成工程において、O2プラズマ処理を用いることが開示されている。
【特許文献1】特開2001−110875号公報
【特許文献2】特開2005−93224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるように、従来の押さえ機構では、押さえ部材が実際にワークを電極に対して押さえつけている状態を確認することが困難であるため、押さえ部材の位置調整には試行錯誤的な作業が必要とされ、正しい位置を押さえつけていない場合には処理対象部位を誤って押さえ部材で覆ってしまうなどの不具合が発生しやすく、プラズマ処理の不良を発生させるという問題があった。また、特許文献2には、開口部を介して直接金属製マスクの下方の基板を処理できることから、薄膜形成用マスクとして金属製マスクを用いることが開示される。
【0005】
以上のように、プラズマ処理装置において、ワークを所定の位置に固定すると共に、ワーク上にエッチング範囲が開口する金属製マスクを所定の位置にしっかりと固定することが要求されている。
【0006】
このため、この発明では、プラズマ処理装置において、簡易な構造で確実にワークと金属製マスクを固定できるワーク保持治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、この発明は、処理チャンバと、処理チャンバ上方に設けられたプラズマ生成部と、該プラズマ生成部と対する位置に配されたステージと、該ステージ上に載置され、処理基板を保持するワーク保持治具とによってとによって少なくとも構成され、プラズマ生成ガスを吸引してプラズマを前記処理基板上にダウンフローさせて基板を処理するプラズマ処理装置において、前記ワーク保持治具が、処理基板を所定の位置に保持すると共に磁気を生じさせるワーク保持台と、該ワーク保持台に保持された処理基板上に載置固定される磁性体からなるメタルマスクとによって構成され、前記ワーク保持台が、該ワーク保持台から延出する少なくとも一対の位置決めロッドを具備すると共に、前記処理基板及び前記メタルマスクには、所定の位置に位置決め用孔が形成され、前記処理基板及び前記メタルマスクを、前記位置決めロッドがそれぞれの位置決め用孔に貫通するようにワーク保持台に載置することにある。
【0008】
これによって、磁性体のメタルマスクが、位置決めロッドによってワークと共に位置決めされると共に、磁石の吸引力によってワークを固定すると共にワークに密着するため、プラズマによる効率の良いエッチング作業を行うことができるものである。
【0009】
また、前記ワーク保持台が、前記テーブル上に固定される断熱プレートと、該断熱プレート上に固定される亜鉛プレートと、該亜鉛プレート上に配される複数の磁石からなる磁石プレートと、該磁石上に固定される下敷きプレートと、該下敷きプレート上に配され、所定の位置に所定の大きさの頭部保持開口部が形成されるツールピン頭部固定用保持プレートと、該ツールピン固定用頭部保持プレートの頭部保持開口部に噛合する頭部及び該頭部から所定の長さ延出する位置決め用ロッドを有するツールピンと、前記ツールピン頭部固定用保持プレート上に載置されると共に、前記ツールピンのロッド部が貫通する保持孔を有するツールピンロッド固定用保持プレートとを具備することが望ましい。
【0010】
以上の構成により、ツールピン頭部固定用保持プレート及びルールピンロッド固定用保持プレートを種々選択することによって、ツールピンの位置を、ワーク及びメタルマスクの形状、エッチング箇所等の合わせて容易に変化させることができるため、汎用性を持たせることができると共に、取り替え作業を簡略化することができるものである。
【0011】
さらに、前記メタルマスクは、積層された複数のメタルマスクプレートによって構成されることが望ましい。
【0012】
メタルマスクの厚さが厚いと基板表面の凹凸にメタルマスクが追従できず、隙間ができるという不具合があり、メタルマスクの厚さが薄いと磁力を受ける力が小さく、処理基板の保持力が低下するという不具合が生じる。このため、薄いメタルマスクプレートを積層してメタルマスクを構成することによって、上述した不具合を解消することができる。
【0013】
さらにまた、前記磁石プレートは、所定の大きさの方形の磁石が縦横に並べられて所定の面積に構成されることが望ましい。小さい磁石を並べることによって、磁石プレート表面上の磁束密度を均等にできるので、メタルマスクによる処理基板の保持力を安定させることができるものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本願発明によれば、ツールピン頭部固定用保持プレート及びルールピンロッド固定用保持プレートを種々選択することによって、ツールピンの位置を、ワーク及びメタルマスクの形状、エッチング箇所等の合わせて容易に変化させることができると共に、薄いメタルマスクプレートを積層してメタルマスクを構成することによって、処理基板の凹凸に対応することができ且つ処理基板を保持固定することができ、さらに、小磁石を並べることによって磁石プレート表面上の磁束密度を均等にできるので、メタルマスクによる処理基板の保持力を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施例について図面により説明する。
【実施例】
【0016】
本願発明に実施例に係るプラズマ処理装置1は、例えば図1に示すもので、処理チャンバ2と、処理チャンバ2上方に設けられたプラズマ生成部3と、このプラズマ生成部3と対する位置に配されたステージ4と、このステージ4上に載置され、下記する処理基板60を保持するワーク保持治具5と、前記プラズマ生成部3と処理チャンバ2によって画成されるプラズマ空間6と間に配された石英板7と、前記プラズマ空間6とワーク保持治具5との間に配され、複数のプラズマ通過孔8が形成されたフィルタ9とによって構成され、プラズマ生成ガスを排気口10から吸引してプラズマを前記ワーク保持治具5上にダウンフローさせてプラズマ処理(エッチング等)を行うものである。尚、プラズマ生成に用いるガスは、酸素ガス、及び添加ガスとしてアルゴンガスなどの希ガス、窒素ガス、CF4ガス、COF2ガス、CHF3ガスがある。
【0017】
前記ワーク保持治具5は、図2及び図3に示すように、処理基板60を所定の位置に保持すると共に磁気を生じさせるワーク保持台50と、このワーク保持台50に保持された処理基板60上に載置固定される磁性体からなるメタルマスク80とによって構成される。
【0018】
前記ワーク保持台50は、図3に示すように、ワーク保持台50から延出する少なくとも一対、この実施例では4つの位置決めロッド72を具備すると共に、前記処理基板60及び前記メタルマスク80には、所定の位置に位置決め用孔60a,82が形成され、前記処理基板60及び前記メタルマスク80を、前記位置決めロッド72がそれぞれの位置決め用孔60a,82に貫通するようにワーク保持台50に載置することによって、メタルマスク80によって処理基板60がワーク保持台50に固定されるものである。
【0019】
また、前記ワーク保持台50は、図2に示すように、前記テーブル4上に固定されるガラスエポキシ板からなる断熱プレート51と、この断熱プレート51上に固定される亜鉛プレート52と、この亜鉛プレート52上に配される複数の磁石53aからなる磁石プレート53と、この磁石プレート53上に固定される両面銅張ガラスエポキシ板からなる下敷きプレート54と、この下敷きプレート54上に配され、所定の位置に所定の大きさの頭部保持開口部55aが形成される両面銅張ガラスエポキシ板からなるツールピン頭部固定用保持プレート55と、このツールピン頭部固定用保持プレート55の頭部保持開口部55aに噛合する頭部71及びこの頭部71から所定の長さ延出する位置決め用ロッド72を有するツールピン70と、前記ツールピン頭部固定用保持プレート55上に載置され、前記ツールピン70の位置決め用ロッド部72が貫通する保持孔56aを有する両面銅張ガラスエポキシ板からなるツールピンロッド固定用保持プレートと56とによって構成される。
【0020】
また、前記メタルマスク80は、図3に示すように積層された複数のメタルマスクプレート81によって構成される。このメタルマスクプレート81は、前記位置決め用ロッド72が貫通して位置が固定される保持孔82を有する。また、このメタルマスクプレート81には、前記処理基板60上の所定の箇所だけにプラズマ処理をするために、処理用開口部83が形成されているものである。尚、この実施例では、4枚のメタルマスクプレート81を積層することによってメタルマスク80を構成している。これによって、それぞれが所定の薄さであることから処理基板60の凹凸に追従することができると共に、複数積層することによって、下記する磁石プレートの磁力を十分に受けることができるため、処理基板60を効率的に固定することができるものである。
【0021】
前記ツールピン70は、図4で示すように、下敷プレート54上に載置されるツールピン頭部固定用保持プレート55の頭部保持開口部55aに嵌め込まれる頭部71を、その上部に配されるツールピンロッド固定用保持プレート56によって押さえて固定し、ツールピン70の位置決め用ロッド72を、保持孔56aを貫通させて延出させるようにしたものである。これによって、ツールピン頭部固定用保持プレート55の頭部保持開口部55aの位置と保持孔56aの位置を変更することによって、位置決め用ロッド72の位置を変化させることができるため、ワーク保持台50に汎用性を持たせることができるものである。
【0022】
また、前記処理基板60にも、前記位置決め用ロッド72が貫通する保持孔60aが形成される。
【0023】
さらに、前記磁石プレート53は、所定の大きさの方形の磁石53aが縦横に所定数並べられて、前記処理基板60に対応して所定の面積に構成されるものである。この磁石53aの大きさとしては、10×10mmから20×20mmの範囲内の方形であることが望ましい。この場合、正方形でも、長方形でも特にその形状は限定されるものでなく、場合によっては六角形にし、ハニカム形状に配置することも可能である。尚、前記磁石83aとしては、永久磁石であっても、電磁石であっても良いものである。
【0024】
以上説明したように、本願発明によれば、ツールピン頭部固定用保持プレート55及びルールピンロッド固定用保持プレート56を種々選択することによって、ツールピン71の位置を、処理基板60及びメタルマスク80の形状、エッチング箇所等の合わせて容易に変化させることができると共に、薄いメタルマスクプレート81を積層してメタルマスク80を構成したことによって、処理基板60の凹凸に対応することができ且つ処理基板60を効率的に保持固定することができ、さらに、磁石83aを並べることによって磁石プレート83表面上の磁束密度を均等にできるので、メタルマスク80による処理基板60の保持力を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本願発明に係るプラズマ処理装置の概略構成図である。
【図2】ワーク保持治具の分解構成図である。
【図3】ワーク保持治具の分解構成図である。
【図4】ツールピンの固定状態を示した説明断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 プラズマ処理装置
2 処理チャンバ
3 プラズマ生成部
4 ステージ
5 ワーク保持治具
6 プラズマ空間
7 石英板
8 プラズマ通過孔
9 フィルタ
10 排気口
50 ワーク保持台
51 断熱プレート
52 亜鉛プレート
53 磁石プレート
53a 磁石
54 下敷きプレート
55 ツールピン頭部固定用保持プレート
55a 頭部保持開口部
56 ツールピンロッド固定用保持プレート
56a 保持孔
60 処理基板
60a 保持孔
70 ツールピン
71 頭部
72 位置決め用ロッド部
80 メタルマスク
81 メタルマスクプレート
82 保持孔
83 処理用開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理チャンバと、処理チャンバ上方に設けられたプラズマ生成部と、該プラズマ生成部と対する位置に配されたステージと、該ステージ上に載置され、処理基板を保持するワーク保持治具とによってとによって少なくとも構成され、プラズマ生成ガスを吸引してプラズマを前記処理基板上にダウンフローさせて基板を処理するプラズマ処理装置において、
前記ワーク保持治具が、処理基板を所定の位置に保持すると共に磁気を生じさせるワーク保持台と、該ワーク保持台に保持された処理基板上に載置固定される磁性体からなるメタルマスクとによって構成され、
前記ワーク保持台が、該ワーク保持台から延出する少なくとも一対の位置決めロッドを具備すると共に、前記処理基板及び前記メタルマスクには、所定の位置に位置決め用孔が形成され、
前記処理基板及び前記メタルマスクを、前記位置決めロッドがそれぞれの位置決め用孔に貫通するようにワーク保持台に載置することを特徴とするプラズマ処理装置のワーク保持治具。
【請求項2】
前記ワーク保持台が、
前記テーブル上に固定される断熱プレートと、
該断熱プレート上に固定される亜鉛プレートと、
該亜鉛プレート上に配される複数の磁石からなる磁石プレートと、
該磁石上に固定される下敷きプレートと、
該下敷きプレート上に配され、所定の位置に所定の大きさの頭部保持開口部が形成されるツールピン頭部固定用保持プレートと、
該ツールピン頭部固定用保持プレートの頭部保持開口部に噛合する頭部及び該頭部から所定の長さ延出する位置決め用ロッドを有するツールピンと、
前記ツールピン頭部固定用保持プレート上に載置され、前記ツールピンのロッド部が貫通する保持孔を有するツールピンロッド固定用保持プレートとを具備することを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置のワーク保持治具。
【請求項3】
前記メタルマスクは、積層された複数のメタルマスクプレートによって構成されることを特徴とする請求項1又は2記載のプラズマ処理装置のワーク保持治具。
【請求項4】
前記磁石プレートは、所定の大きさの方形の磁石が縦横に並べられて所定の面積に構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載にプラズマ処理装置のワーク保持治具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−118366(P2010−118366A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288327(P2008−288327)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(503034401)株式会社ケイテックリサーチ (6)
【出願人】(593030923)株式会社ニッシン (14)
【出願人】(500486416)東海電子工業株式会社 (5)
【出願人】(500564219)株式会社キンキ磁石応用 (3)
【Fターム(参考)】