説明

プラズマ処理装置

【課題】プラズマ密度ないしプラズマ処理特性の面内均一性を向上させる。
【解決手段】プラズマ処理装置10は、内部にてウエハWにプラズマ処理が施される処理容器100と、高周波を出力する第1の高周波電源140と、処理容器100の外部にて、外側コイル、内側コイル及びその間に設けられたn個(nは1以上の整数)の中間コイルが中心軸に対して同心状に巻かれた高周波アンテナ120と、処理容器100の壁面の一部を構成し、高周波アンテナ120から発生する電磁界のエネルギーを処理容器100内に導入する誘電体窓105と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理体にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置に関し、特に、高周波アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマを励起して被処理体を微細加工する装置としては、容量結合型プラズマ処理装置、誘導結合型プラズマ処理装置、マイクロ波プラズマ処理装置等がある。このうち、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)処理装置は、処理容器の天井面に設けられた誘電体窓に高周波アンテナを配置し、アンテナのコイルに高周波電流を流してコイルの周りに電磁界を発生させ、電界エネルギーを誘電体窓を介して処理容器内に投入し、その電界エネルギーによりガスを励起させてプラズマを生成する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、高周波アンテナは、平面状に外周側と内周側との2つの渦巻きコイルにより形成されている。2つの渦巻きコイルはパワー分割され、これにより、処理室内に形成される誘導結合プラズマのプラズマ密度分布を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−311182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記形状の高周波アンテナでは、外周側と内周側の2つのコイルによって得られる円状の電流パターンから2つのドーナツ型のプラズマが作り出され、その2つのドーナツ型のプラズマとプラズマとの間ではプラズマ密度が下がり、その結果、被処理体に対するプラズマ処理の面内均一性が低下する。その他、圧力等のプラズマ条件によっても、プラズマ密度に変化が生じ、プラズマの均一性を確保することが難しかった。
【0006】
特に、近年の被処理体の大型化に伴い、装置も大型化している。よって、大型のプラズマ処理装置においても、広いプラズマ励起空間に均一にプラズマを生成する必要があり、プラズマの均一性の確保がより困難な状況になっている。
【0007】
上記課題に鑑み、本発明は、プラズマ密度ないしプラズマ処理特性の面内均一性の向上が可能なプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様によれば、内部にて被処理体にプラズマ処理が施される処理容器と、高周波を出力する第1の高周波電源と、前記処理容器の外部にて、外側コイル、内側コイル及びその間に設けられたn個(nは1以上の整数)の中間コイルが中心軸に対して同心状に巻かれた高周波アンテナと、前記処理容器の壁面の一部を構成し、前記高周波アンテナから発生する電磁界のエネルギーを前記処理容器内に導入する誘電体窓と、を有するプラズマ処理装置が提供される。
【0009】
かかる構成によれば、高周波アンテナは、中心軸に対して同心状に巻かれた外側コイル、内側コイル及びその間に設けられたn個(nは1以上の整数)の中間コイルを有している。この結果、プラズマ励起領域内に内側コイル及び外側コイルに加えて、個数n(n≧1)の中間コイルによってプラズマを作り出すことができる。よって、2つのコイルのみによってプラズマが作り出される場合に生じていたコイル間の中間領域でのプラズマ密度の落ち込みがなくなり、全体としてプラズマの均一化を図ることができる。これにより、被処理体の処理の面内均一性を保つことができる。
【0010】
少なくとも前記外側コイル及び前記内側コイル間に設けられ、前記第1の高周波電源から出力された高周波のパワーを所望の割合に分割して各コイルに供給するパワー分割部を有していてもよい。
【0011】
たとえば、最初に、外側コイルに一番ハイパワーの高周波電力を投入し、次に、内側コイルにそれより低い高周波電力を投入し、最後に中間コイルに残りの高周波電力を投入する。
【0012】
被処理体の縁側では、プラズマ中の電子やイオンが壁に拡散して消滅するのでプラズマ密度が低くなる傾向がある。これを考慮して、外側のプラズマ密度が一番高くなるように最初に外側コイルにハイパワーの電力を印加する。これにより、被処理体の縁部のエッチングレートの低下等を防ぐことができる。パワー分割部により分割された残りの高周波電力は、内側コイル及び中間コイルに分けて投入される。
【0013】
この結果、プラズマ励起領域のうち外側のプラズマ密度が全体のプラズマ密度よりやや高くなるように制御するとともに、内側と外側の間の中央部分でのプラズマ密度の低下を防止し、全体としてプラズマの均一化を図ることができる。これにより、被処理体の処理の面内均一性を保つことができる。
【0014】
前記パワー分割部は、前記各コイル間に設けられ、前記第1の高周波電源から出力された高周波のパワーを所望の割合にそれぞれ分割して各コイルに供給してもよい。
【0015】
前記各コイルの少なくともいずれかは前記誘電体窓との距離が可変になるように可動式になっていてもよい。
【0016】
2つのコイル間に前記パワー分割部が設けられていない場合、当該2つのコイルのいずれかが可動式になっていてもよい。
【0017】
前記2つ以上のパワー分割部は、前記中心軸に対して対称的に設けられていてもよい。
【0018】
前記2つ以上のパワー分割部は、前記中心軸に対して非対称に設けられ、シールド部材によりシールドされていてもよい。
【0019】
前記外側コイル、前記内側コイル及び前記中間コイルはそれぞれ複数のコイルから形成され、前記外側コイルを形成する複数のコイルの各給電点は、前記中心軸に対して対称的な位置に設けられ、前記中間コイルを形成する複数のコイルの各給電点は、前記中心軸に対して対称的な位置に設けられ、前記内側コイルを形成する複数のコイルの各給電点は、前記中心軸に対して対称的な位置に設けられていてもよい。
【0020】
前記各コイルの給電点は、前記中心軸に対して180°、120°、90°、72°、60°のいずれかの間隔で配置されていてもよい。
【0021】
前記各コイルには、ブロッキングコンデンサがそれぞれ介在してもよい。
【0022】
2つ以上のパワー分割部は、可変コンデンサを有していてもよい。
【0023】
前記各コイルに供給されている高周波の電流、電圧、位相の少なくともいずれかを測定する測定器と、前記測定器により測定された高周波の電流、電圧、位相の少なくともいずれかに基づき、前記パワー分割部にて分割するパワー比を制御する制御装置を有していてもよい。
【0024】
前記制御装置は、メモリを有し、前記メモリに予め記憶したレシピに従い前記パワー分割部にて分割するパワー比を制御してもよい。
【0025】
高周波を出力する第2の高周波電源を有し、前記外側コイル、前記内側コイル及び前記中間コイルのいずれか一つは、前記第1の高周波電源に接続され、前記第1の高周波電源に接続されなかった残りの2つのコイルは、前記第2の高周波電源に接続され、前記第2の高周波電源から出力された高周波のパワーを所望の割合に分割して前記残りの2つのコイルに供給するパワー分割部を更に有していてもよい。
【0026】
前記第1の高周波電源は、前記外側コイルに接続され、前記第2の高周波電源は、前記内側コイル及び前記中間コイルに接続されていてもよい。
【0027】
高周波を出力する第2及び第3の高周波電源を有し、前記外側コイル、前記内側コイル及び前記中間コイルのいずれか一つは、前記第1の高周波電源に接続され、前記第1の高周波電源に接続されなかった残りの2つのコイルの一方は、前記第2の高周波電源に接続され、前記残りの2つのコイルの他方は、前記第3の高周波電源に接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように本発明によれば、プラズマ密度ないしプラズマ処理特性の面内均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプラズマ処理装置の縦断面図である。
【図2】同実施形態に係る高周波アンテナの構成を説明するための図である。
【図3】図3(a)はウエハの径方向のプラズマ密度を示し、図3(b)はブロッキングコンデンサの作用を説明するための図である。
【図4】同実施形態に係る等価回路を示した図である。
【図5】第1実施形態に係るプラズマ処理装置の変形例を示した図である。
【図6】第1実施形態に係るプラズマ処理装置の他の変形例を示した図である。
【図7】第1実施形態に係るプラズマ処理装置の他の変形例を示した図である。
【図8】図8(a)は本発明の第2実施形態に係るプラズマ処理装置の縦断面図であり、図8(b)は同実施形態に係る高周波アンテナの構成を説明するための図である。
【図9】ウエハの周方向の電圧の状態を説明するための図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係るプラズマ処理装置の縦断面図である。
【図11】図11(a)は本発明の第4実施形態に係るプラズマ処理装置の縦断面図であり、図11(b)は同実施形態に係る高周波アンテナの構成を説明するための図である。
【図12】本発明の第5実施形態に係るプラズマ処理装置の縦断面図である。
【図13】本発明の第6実施形態に係るプラズマ処理装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0031】
<第1実施形態>
(プラズマ処理装置の全体構成)
まず、本発明の第1実施形態に係るプラズマ処理装置の全体構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、誘導結合型プラズマ処理装置の縦断面を模式的に示した図である。図2は、高周波アンテナの構成を説明するための図である。
【0032】
図1に示したように、たとえば、エッチング装置等のプラズマ処理装置10は、ゲートバルブGVから搬入したウエハWをプラズマ処理する処理容器100を有する。処理容器100は円筒状の形状で、たとえばアルミニウム等の金属から形成され、接地されている。処理容器100の内壁は、陽極酸化処理されている。なお、処理容器100の内壁は、石英やイットリア等の誘電体にてカバーされていてもよい。
【0033】
処理容器100の天井面には、処理容器100の開口部に誘電体窓105が嵌め込まれ、これにより、処理容器100内の空間の気密が維持される。誘電体窓105は、アルミナや石英等で形成された真円状のプレートである。誘電体窓105は、高周波アンテナ120から発生する電磁界のエネルギーを透過し、そのエネルギーを処理容器100内に導入する。
【0034】
誘電体窓105の下面には、シャワープレート110が埋め込まれている。シャワープレート110にはガス導入管110aが設けられている。ガス導入管110aは、ウエハW側に開口された多数のガス孔110bから処理容器100内にガスを放出する。ガス導入管110aは、処理容器100の天井面中央から外部へ向けて貫通し、ガス供給源115に接続されている。
【0035】
誘電体窓105の大気側には、高周波(RF)アンテナ120が配設されている。図2に示したように、誘電体窓105の表面を外側ゾーン、内側ゾーン、中間ゾーンに仮想的に分け、誘電体窓105の中心を通る軸を中心軸Oとする。
【0036】
高周波アンテナ120は、外側ゾーンに配置された外側コイル120aと、内側ゾーンに配置された内側コイル120cと、中間ゾーンに配置された中間コイル120bとを有している。外側コイル120a、中間コイル120b、内側コイル120cは中心軸Oに対して同心円状に設けられている。
【0037】
なお、各コイル120a〜120cは、各ゾーンを約一周しているが、これに限られず、複数回巻かれていても良い。また、本実施形態では、中間ゾーンは1つ設けられているが、これに限られず、2つ以上のゾーンに分割され、各中間ゾーンに一対一に中間コイルが配設されていてもよい。
【0038】
各コイル120a〜120cの一端には、給電棒125a〜125cがそれぞれ接続されている。給電棒125a〜125cは、整合器135を介して第1の高周波電源140に接続されている。第1の高周波電源140から出力された高周波電力は、整合器135、各給電棒125a〜125cを通って各コイル120a〜120cに印加され、これにより、各コイル120a〜120cに高周波電流が流れる。
【0039】
各コイル120a〜120c間には、パワー分割部130が介在している。パワー分割部130は、可変インピーダンス回路(たとえば、可変コンデンサ)130a、130bを有している。外側アンテナ回路は、外側コイル120aのみで構成される。中間アンテナ回路は、可変インピーダンス回路130aと中間コイル120bとから構成される。内側アンテナ回路は、可変インピーダンス回路130aと可変インピーダンス回路130bと内側コイル120cとから構成される。
【0040】
可変インピーダンス回路130a、130bは、インピーダンス調整部として機能する。つまり、可変インピーダンス回路130aの容量を調節することにより、後述するように、中間及び内側アンテナ回路のインピーダンスが制御され、外側アンテナ回路と中間及び内側アンテナ回路とに流れる電流の割合を制御することができる。同様に、可変インピーダンス回路130bの容量を調節することにより、中間アンテナ回路と内側アンテナ回路のインピーダンスが制御され、中間アンテナ回路と内側アンテナ回路とに流れる電流の割合を制御することができる。
【0041】
このように、可変インピーダンス回路130a、130bは、第1の高周波電源140から出力された高周波のパワーを所望の割合に分割して各コイルに供給するパワー分割の機能を有する。なお、可変コンデンサは、少なくとも外側コイル120a及び内側コイル120c間に設けられていればよいが、本実施形態のように各コイル間に設けられていれば、パワー分割制御の精度が向上する。
【0042】
かかる構成によれば、プラズマ処理中、第1の高周波電源140からたとえば、13.56MHzの高周波電力が高周波アンテナ120へ供給され、高周波アンテナ120の各コイル120a〜120cに高周波電流が流れる。これにより、コイルの周りに電磁界が発生し、誘電体窓105を介して電界エネルギーを処理容器100内に投入する。投入されたエネルギーはガスを励起させ、これによりプラズマが生成される。この際のプラズマの密度分布は、可変インピーダンス回路130a、130bによって外側コイル120a、中間コイル120b、内側コイル120cのインピーダンス制御により制御されるが、これについては後述する。
【0043】
外側コイル120a、中間コイル120b、内側コイル120cの他端部には、ブロッキングコンデンサ145a〜145cがそれぞれ介在し、接地される。ブロッキングコンデンサ145a〜145cの機能についても後述する。
【0044】
処理容器100の内部には、ウエハWを載置する載置台150が設けられている。載置台150に載置されたウエハWは、図示しない静電チャックにより吸着保持される。載置台150には、整合器155を介して第1の高周波電源160が接続されている。第1の高周波電源160は、プラズマ処理中に、バイアス用の高周波電力、例えば周波数が2MHzの高周波電力を載置台150に印加する。このバイアス用の高周波電力により、処理容器100内に生成されたプラズマ中のイオンが効果的にウエハWに引き込まれる。
【0045】
処理容器100の底部には、排気管165を介して真空ポンプを含む排気装置170が接続され、処理容器100の内部をたとえば、1.33Pa程度の所望の真空度にする。
【0046】
パワー分割部130は、制御装置220と接続されている。制御装置220は、CPU220a、メモリ220b、インタフェース(I/F)220cを有していて、各部は内部バス220dにより信号のやり取りが可能になっている。
【0047】
メモリ220bには、予め、パワー分割部130の可変インピーダンス回路130a、130bのそれぞれの容量を制御するためのレシピが記憶されている。レシピには、可変インピーダンス回路130a、130bのそれぞれの容量がプロセス毎に定められている。CPU220aは、プロセスに合致したレシピを選択し、そのレシピに従って可変インピーダンス回路130a、130bのそれぞれの容量を制御する。レシピはハードディスク等に記憶されていてもよいし、CDROM等の記憶媒体に記憶されていてもよいし、ネットワークを介して適宜ダウンロードするようにしてもよい。
【0048】
(アンテナ構成)
たとえば、高周波アンテナが、外周側と内周側の2つの渦巻きコイルにより形成されていると、外周側と内周側の2つのコイルによって得られる円状の電流パターンから2つのドーナツ型のプラズマが作り出され、その2つのドーナツ型のプラズマの間ではプラズマ密度が下がる。たとえば、図3(a)の曲線Npに、外周側と内周側の2つの渦巻きコイルによって得られるプラズマ密度分布の一例を示す。直径が300mmのウエハの外周部及び内周部にてプラズマ密度が高くその間のプラズマ密度が低くなっている。これによれば、ウエハに対するプラズマ処理の面内均一性が悪くなるため、歩留まりが下がり、生産性が低下する。
【0049】
これに対して、本実施形態に係る高周波アンテナ120は、外側コイル120a、中間コイル120b及び内側コイル120cの3つのコイルが中心軸Oに対して同心状に巻かれている。これにより、図3(a)の曲線Ncに示したように、外側コイル120a、中間コイル120b及び内側コイル120cの3つのコイルによって得られるプラズマ密度分布では、ウエハの外周部及び内周部にてプラズマ密度が高く、また中間コイル120bがあるためにその間のプラズマ密度も低下しない。これによれば、ウエハに対するプラズマ処理の面内均一性が良好で、歩留まりが上がり生産性が向上する。
【0050】
特に、現状では主に直径300mmのウエハが対象であるが、将来的には直径450mmのウエハに対してプラズマ処理が行われる。FPD用基板も年々大型化していてこれらの基板にもプラズマ処理が行われる。よって、歩留まり、生産性の向上を図るために、大面積でのプラズマの均一性がますます重要になる。本実施形態では、大型化する被処理体のサイズに合わせて、中間コイルの個数n(n≧1)を増加させる。このようにして、外周側と内周側との間にてプラズマ密度が低下しないように高周波アンテナ120の形状を適正化する。
【0051】
(パワー分割/インピーダンス調整)
また、各コイルに印加される高周波電力は、パワー分割部130により所望の割合に分割される。高周波アンテナ120のインピーダンス調整機能について、図4を参照しながら説明する。
【0052】
図4は、高周波アンテナ120の給電部分の等価回路を示す。前述したように、第1の高周波電源140から出力された高周波は、整合器135を介して外側コイル120a、中間コイル120b及び内側コイル120cに供給される。外側コイル120aには、直接高周波電力が供給される。中間コイル120bには、可変インピーダンス回路(たとえば、可変コンデンサ)130aを介して高周波電力が供給される。内側コイル120cには、可変インピーダンス回路(たとえば、可変コンデンサ)130a及び可変インピーダンス回路(たとえば、可変コンデンサ)130bを介して高周波電力が供給される。
【0053】
外側コイル120a、中間コイル120b及び内側コイル120cのインピーダンスZo、Zc、Ziの調整方法を述べる。外側コイル120aは、コイルのみから形成されるため、インピーダンスZoは固定値をとる。中間コイル120bのインピーダンスZcは、可変インピーダンス回路130aの容量を変えることにより変化させることができる。内側コイル120cのインピーダンスZiは、可変インピーダンス回路130a及び可変インピーダンス回路130bの容量をそれぞれ変えることにより変化させることができる。
【0054】
高周波電流Iiと高周波電流Icと高周波電流Ioとは、インピーダンスZiとインピーダンスZcとインピーダンスZoとの割合に応じて変化する。これを利用して、本実施形態では、制御装置220の指令に従って可変インピーダンス回路130a及び可変インピーダンス回路130bの容量をそれぞれ制御する。これにより、インピーダンスZiとインピーダンスZcとを変化させることによって、各インピーダンスZi,Zc,Zoの割合を変化させる。これにより、各コイルに流れる高周波電流Ii,Ic,Ioの割合を調整することができる。
【0055】
ウエハWの周縁側では、プラズマ中の電子やイオンが壁に当たって消滅するのでプラズマ密度が低くなる傾向がある。これを考慮して、外側のプラズマ密度が一番高くなるように外側コイル120aに一番ハイパワーの高周波電力を投入する。パワー分割部130により分割された残りの高周波電力は、内側コイル120c及び中間コイル120bに分けて投入される。このようにして、高周波アンテナ120の3つのコイル120a〜120cとパワー分割部130によって、高周波アンテナ120とプラズマとの誘導結合状態を調整することができる。この結果、プラズマ励起領域のうち外側のプラズマ密度が全体のプラズマ密度よりやや高くなるように制御するとともに、内側と外側の間の中間部分におけるプラズマ密度の低下を防止し、全体としてプラズマの均一化を図ることができる。この結果、被処理体の処理の面内均一性を保つことができる。
【0056】
特に、近年、1つのチャンバで多種のプロセスを行いたいとのユーザの要望がある。しかしながら、今までのプラズマ処理装置では、プラズマプロセス毎のガス種、圧力、RFパワーによりプラズマの均一性が変わってしまい、均一性の確保が難しかった。一方、本実施形態に係るプラズマ処理装置によれば、3ゾーン以上のアンテナに対してプロセスに応じたパワー分割制御を実行すれば、多種のプロセスに応じて適正な給電ができ、プロセス毎にプラズマの均一性を担保できる。
【0057】
(フィードバック制御)
制御装置220は、各コイルに印加する高周波電力の割合をフィードバック制御してもよい。その場合、各給電棒125a、125b、125cには測定器250a、250b、250cが接続されていて、各コイル120a、120b、120cに流れる高周波の電流、電圧、位相の少なくともいずれかを測定するようになっている。
【0058】
制御装置220は、測定器250a〜250cにより測定された高周波の電流、電圧、位相に基づき、パワー分割部130にて分割するパワー比を制御する。より具体的には、制御装置220は、各コイル120a、120b、120cに流れている電流、電圧、位相からそのコイルにどれだけ高周波電力が投入されているかを、P=VI×cosθ(V:電圧、I:電流、θ:位相)に基づき算出し、各コイル120a〜120cに投入されるべき高周波電力と現在投入されている電力との差を小さくするように可変インピーダンス回路130a、130bをフィードバック制御する。測定器250a〜250cとしては、電圧計、プローブ、CT(Current Transfer)が用いられる。
【0059】
以上のフィードバック制御により、図3(a)に示したように、プラズマ密度の不均一を曲線Np→曲線Nc→曲線Nuのように補正し、より均一なプラズマを生成することができる。
【0060】
なお、制御装置220は、メモリ220bを有し、メモリ220bに予め記憶したレシピに従いパワー分割部130にて分割するパワー比を制御してもよい。この場合、メモリ220bには、予め、パワー分割部130にて分割するパワー比を制御するためのレシピが複数記憶されている。レシピには、可変インピーダンス回路130a、130bのそれぞれの容量が予め設定されている。CPU220aは、これから実行するプロセスに合致したレシピを選択し、そのレシピに従って可変インピーダンス回路130a、130bのそれぞれの容量を制御する。
【0061】
誘導結合型プラズマ処理装置では、高周波の電磁界をプラズマの生成に用いることから、プラズマに均等にエネルギーを供給するために装置の対称性が重要になってくる。よって、本実施形態では、図1及び図2に示したように、可変インピーダンス回路130a、130bを装置の中心軸O上に直列に配置して、3ゾーンに設けられた3つのコイルの高周波アンテナ120と可変インピーダンス回路130a、130bとの対称性を維持している。つまり、高周波アンテナ120が中心軸Oに対して対称性を有しているのに加えて、パワー分割部130も中心軸Oに対して対称性を有している。
【0062】
(ブロッキングコンデンサ)
各コイル120a〜120cの終端部には、ブロッキングコンデンサ145a〜145cが介在している。図3(b)を参照すると、ブロッキングコンデンサ145a〜145cを用いなかった場合の各コイル120a、120b、120cの給電点Sa,Sb,Scの電圧Vp1に対して、ブロッキングコンデンサ145a〜145cを用いた場合には、給電点Sa,Sb,Scの電圧Vp2を電圧Vp1の半分程度まで下げることができる。これにより、給電点Sa,Sb,Sc近傍の天板が電子の加速により激しくスパッタされることを避けることができる。
【0063】
<第1実施形態の変形例>
第1実施形態の変形例を図5〜図7に示す。図5〜図7のプラズマ処理装置10では、処理容器100内部を省略してあるが、図1と同じ構成である。図5のプラズマ処理装置10は、外側コイル120a、中間コイル120bの給電点Sa、Sbに対して内側コイル120cの給電点Scが180°ずれた位置に配置されている。図6のプラズマ処理装置10は、外側コイル120aの給電点Saに対して、中間コイル120b、内側コイル120cの給電点Sb,Scが180°ずれた位置に配置されている。
【0064】
図7のプラズマ処理装置10は、外側コイル120a、中間コイル120bの給電点Sa,Sbに対して、内側コイル120cの給電点Scが180°ずれた位置に配置されている。これに加えて、図5及び図6では、可変インピーダンス回路130a,130bが直列に接続されているのに対して、図7では、可変インピーダンス回路130a,130bが並列に接続されている。しかしながら、いずれも中心軸Oに対して対称性を有している。
【0065】
変形例によっても、3つ以上のゾーンを有する高周波アンテナ120に適正にパワーを分割した高周波電力を供給することにより、プラズマの均一性を向上させることができる。
【0066】
<第2実施形態>
一般的に、誘導結合型プラズマ処理装置では、(1)高周波アンテナ120からの電磁界エネルギーを用いた電子の加速によるプラズマ生成だけを考えるのではなく、(2)コンデンサを通ってプラズマに結合する電子を考慮したプラズマの均一性を図る必要がある。よって、(1)のアンテナの設計だけでなく、(2)の容量成分を考慮した装置設計が必要になる。
【0067】
第1実施形態に係るプラズマ処理装置10では、ウエハWの径方向に対するプラズマ密度の均一性が図られた。つまり、第1実施形態では、(1)を考慮して、高周波アンテナ120を外側ゾーン、内側ゾーン、中間ゾーンの3つのゾーンに仮想的に分け、各ゾーンにコイルを設けることにより、径方向のプラズマ密度の均一性を高めた。
【0068】
また、第1実施形態では、(2)を考慮してブロッキングコンデンサを用いて、給電点における電圧を下げた。これにより、給電点の電圧が高いために給電点近傍の誘電体窓105がプラズマからアタックされることを回避した。
【0069】
第2実施形態では、これに加えて、ウエハWの周方向に対するプラズマ密度の均一性を図る。つまり、第2実施形態では、対称性を有する複数の給電点を配置することにより、周方向のプラズマ密度の均一性を向上させる。
【0070】
1本のコイルを1重又は2重以上に巻いた高周波アンテナは、周方向に非対称な電圧分布をもつ。図9にコイルを1周(360°)巻いたときのコイルの電圧Vp1の分布を示す。このとき、コイルの電圧Vp1は、給電点Pで最も高く、徐々に降下していく。よって、周方向におけるプラズマ密度は、給電点Pで最も高く、徐々に低くなっていく。このように、1本のコイルを1重に巻いただけでは、周方向のプラズマ密度の均一性が図れない。
【0071】
そこで、本実施形態では、各ゾーンに2本ずつのコイルを設けることにより、周方向のプラズマ密度の均一性を図っている。図8(a)は、本実施形態にかかるプラズマ処理装置10の縦断面を模式的に示した図である。プラズマ処理装置10では、処理容器100の内部を省略してあるが、図1と同じ構成である。図8(b)は、本実施形態にかかるプラズマ処理装置10の給電部分を模式的に示した図である。
【0072】
外側ゾーンの外側コイルは、第1の外側コイル120a1及び第2の外側コイル120a2の2本から形成されている。第1の外側コイル120a1及び第2の外側コイル120a2の一端は、給電点Sa1,Sa2にて給電棒125a1、125a2にそれぞれ接続されている。第1の高周波電源140から出力された高周波電力は、整合器135、各給電棒125a1、125a2を通って第1の外側コイル120a1及び第2の外側コイル120a2に印加される。第1の外側コイル120a1及び第2の外側コイル120a2は、中心軸Oに対して同方向に一周したのち、ブロッキングコンデンサ145a1、145a2を介して接地される。給電点Sa1,Sa2は、180°離れた、中心軸Oに対して対向する点に配置される。
【0073】
図9に戻って、コイルを1周(360°)巻いたときの第1の外側コイル120a1の電圧Vpl1の分布及び第2の外側コイル120a2の電圧Vpl2の分布を示す。このとき、各コイルの電圧Vpl1及び電圧Vpl2は、給電点Sa1、Sa2で最も高く、徐々に降下していく。しかしながら、給電点Sa1、Sa2での電圧Vpl1、Vpl2は、1本のコイルを巻いたときの給電点Pの電圧Vplより低い。これに加えて、給電点Sa1、Sa2は180°離れた点である。よって、第1の外側コイル120a1及び第2の外側コイル120a2の2本のコイルの周りに発生する電磁界のエネルギーは、1本のコイルの周りに生じる電磁界のエネルギーより、周方向で均一になる。
【0074】
同様にして、中間ゾーンの中間コイルは、第1の中間コイル120b1及び第2の中間コイル120b2の2本から形成されている。第1の中間コイル120b1及び第2の中間コイル120b2の一端部は、給電点Sb1,Sb2にて給電棒125b1、125b2にそれぞれ接続されている。第1の高周波電源140から出力された高周波電力は、各給電棒125b1、125b2を通って第1の中間コイル120b1及び第2の中間コイル120b2に印加される。第1の中間コイル120b1及び第2の中間コイル120b2は一周したのち、ブロッキングコンデンサ145b1、145b2を介して接地される。
【0075】
同様にして、内側ゾーンの内側コイルは、第1の内側コイル120c1及び第2の内側コイル120c2の2本から形成されている。第1の内側コイル120c1及び第2の内側コイル120c2の一端は、給電点Sc1,Sc2にて給電棒125c1、125c2にそれぞれ接続されている。第1の高周波電源140から出力された高周波電力は、各給電棒125c1、125c2を通って第1の内側コイル120c1及び第2の内側コイル120c2に印加される。第1の内側コイル120c1及び第2の内側コイル120c2は一周したのち、ブロッキングコンデンサ145c1、145c2を介して接地される。
【0076】
これにより、1本のコイルを1重に巻いただけでは、周方向のプラズマ密度の均一性が図れなかったのに対し、2本のコイルを同一方向に巻き、各コイルの給電点を180°離して位置づけたことにより、図9に示したように、2本のコイルの周方向にて電圧の均一性が向上し、処理容器100の内部に導入される電界エネルギーの均一性を高めることができる。この結果、給電点付近の誘電体窓105のアタック力が低減されるとともに、各ゾーンについて周方向のプラズマ密度の均一性を向上させることができる。
【0077】
第2実施形態では、これに加えて第1実施形態で述べた少なくとも3つのゾーン及びパワー分割による径方向のプラズマ密度の均一も図ることができる。以上から、第2実施形態に係るプラズマ処理装置10では、プラズマ励起領域の全体に渡ってより均一なプラズマを生成することができ、プラズマ処理装置の大型化にも対応することができる。
【0078】
なお、外側コイル、内側コイル及び中間コイルはそれぞれ複数のコイルから形成され、外側コイルを形成する複数のコイルの各給電点は、中心軸Oに対して対称的な位置に設けられればよい。たとえば、本実施形態の高周波アンテナ120では、各コイルは、両側から入って一周した後、グラウンドで終わる構成であり、給電点は2点で180℃の対称性を有している。これを、給電点を3点にして120℃対称にしてもよいし、給電点を4点にして90℃対称でも良い。
【0079】
各コイルの給電点は、中心軸Oに対して180°、120°、90°、72°、60°のいずれかの間隔で配置されればよい。対称的に配置される給電点の数が多いほど、周方向にてプラズマ密度が均一になり、給電点付近の誘電体窓105のアタック力が低減される。また、給電点が多ければ多いほど、電磁界分布によるプラズマ分布の均一性だけでなく、容量分布によるプラズマ分布の均一性も均一にできる。
【0080】
<第3実施形態>
第1実施形態では、パワー分割部130内の可変インピーダンス回路(たとえば、可変コンデンサ)130a、130bは、中心軸Oに対して対称的に配置されていた。これに対して、第3実施形態では、可変インピーダンス回路130a、130bは、中心軸Oに対して非対称に配置されている。このような場合、図10に示すように、パワー分割部130と高周波アンテナ120の存在する空間とは、シールド部材300によりシールドされる。シールド部材300は、アルミニウム等の導電性部材から形成されている。高周波アンテナ120はアンテナ室310に内蔵されている。
【0081】
これにより、パワー分割部130と高周波アンテナ120との非対称なカップリングを避け、浮遊容量成分の対称性を維持することができる。これにより、プラズマの生成が、アンテナ周りの磁場の状態等に影響を及ぼされないようにすることができる。また、パワー分割部130と高周波アンテナ120との間の電界の相互干渉をなくし、アンテナ内の電圧や振幅などのバランスを崩さないようにすることができる。
【0082】
<第4実施形態>
第4実施形態では、プラズマとのカップリングを高周波アンテナ120とプラズマとの距離を変えることにより制御する。図11では、パワー分割部130の可変インピーダンス回路130aは1つであり、外側コイル120a2と中間コイル120b2との間のパワー分割を行う。本実施形態では、給電点はSa1、Sa2、Sb1、Sb2の4つである。
【0083】
中間コイル120b1と内側コイル120c1とは、導線125c1により接続されている。中間コイル120b2と内側コイル120c2とは、導線125c2により接続されている。外側コイル120a1、120a2及び内側コイル120c1,120c2の端部には、ブロッキングコンデンサ145a1、145a2、145c1、145c2が設けられる。
【0084】
内側コイル120c1、120c2は、誘電体窓105との距離が可変になるように可動式になっている。内側コイル120c1、120c2と誘電体窓105との間は、空間400になっている。
【0085】
これによれば、高周波アンテナ120を下げれば、プラズマとの距離が近くなるため、電子の加速がよくなる。一方、高周波アンテナ120を上げれば、プラズマとの距離が遠くなるため、電子の加速が悪くなる。
【0086】
誘電体窓105とのコイルとの距離の遠近により、コイルとコイルとのパワー比を変えるのと同等の効果を得られる。たとえば、一方のコイルとプラズマとの距離を他方のコイルとプラズマとの距離より大きくすることにより、同じ電流が流れていても、一方のコイルとプラズマとの結合度は、他方のコイルとプラズマとの結合度より小さくなる。
【0087】
以上では、内側コイル120c1、120c2を可動式にしたが、外側コイル120a1,120a2,中間コイル120b1,120b2及び内側コイル120c1,120c2の少なくともいずれかが、誘電体窓105との距離が可変になるように可動式になっていてもよい。外側コイル、内側コイル、中間コイルの全部が可動式でもよい。
【0088】
なお、高周波アンテナ120と誘電体窓105との間の空間400に、誘電体を挟み込んだり、この空間400をガルデンで満たしてもよい。高周波アンテナ120と誘電体窓105との間の距離を離す、これらの間に誘電物を挟み込む、高周波アンテナ120と誘電体窓105との間の空間400にガルデンで満たす等はすべて容量成分を入れたことになり、コンデンサを用いないで容量性分布を変化させる方法である。挟み込む誘電体は、誘電率が高い方がよい。
【0089】
また、高周波アンテナ120と誘電体窓105との間の誘電体の厚さを変えることにより、プラズマとの結合状態を変えることもできる。簡単な機構でプラズマの分布を変えることができるのでコスト安である。
【0090】
<第5実施形態>
第5実施形態では、図12に示したように、第1の高周波電源140に加え、所望の高周波を出力する第2の高周波電源141が設けられている。本実施形態では、第1の高周波電源140は、整合器135を介して外側コイル120aに接続される。第2の高周波電源141は、整合器136を介して内側コイル120c及び中間コイル120bに接続されている。可変インピーダンス回路130aは、第2の高周波電源141から出力された高周波のパワーを所望の割合に分割して内側コイル120c及び中間コイル120bに供給する。
【0091】
本実施形態によれば、3ゾーンそれぞれにより最適なパワーを印加したいプロセスにおいて制御性が向上し、精度の高いパワー分割が可能となる。
【0092】
なお、本実施形態では、第1の高周波電源140に外側コイル120aを接続し、第2の高周波電源141に残りの2つのコイル(内側コイル120c及び中間コイル120b)を接続したが、これに限られず、外側コイル120a、内側コイル120c及び中間コイル120bのいずれか一つが第1の高周波電源140に接続され、第1の高周波電源140に接続されなかった残りの2つのコイルは、第2の高周波電源141に接続されるようにしてもよい。
【0093】
<第6実施形態>
第6実施形態では、図13に示したように、第1の高周波電源140に加え、所望の高周波を出力する第2及び第3の高周波電源141,142が設けられている。本実施形態では、第1の高周波電源140は、整合器135を介して外側コイル120aに接続される。第2の高周波電源141は、整合器136を介して中間コイル120bに接続される。第3の高周波電源142は、整合器137を介して内側コイル120cに接続される。
【0094】
このように、本実施形態では、外側コイル120a、内側コイル120c及び中間コイル120bのいずれか一つは、第1の高周波電源140に接続され、第1の高周波電源140に接続されなかった残りの2つのコイルの一方は、第2の高周波電源141に接続され、前記残りの2つのコイルの他方は、第3の高周波電源142に接続される。
【0095】
本実施形態によれば、3ゾーンそれぞれにより最適なパワーを印加したいプロセスにおいて制御性が向上し、精度の高いパワー分割が可能となる。
【0096】
以上に説明したように、各実施形態によれば、3ゾーン以上のアンテナに対して、可変コンデンサによりパワーの投入比率を変えて高周波電力を投入する。これにより、各巻コイルに供給されるパワーを分割する。これにより、ウエハWの径方向のプラズマの均一性を図ることができる。
【0097】
また、各ゾーンのアンテナ(コイル)毎に給電点を対称に複数設けることにより、ウエハWの周方向のプラズマの均一性を図ることができる。電源をコイル毎に複数用いるとコスト高になるが、パワー分割部130を用いて各コイルに投入するパワーを分割するとコスト安である。
【0098】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0099】
例えば、本発明に係る高周波アンテナの各ゾーンのコイルの巻き数は、平面状に2周以上巻いてもよいし、各コイルを縦に積んでもよい。
【0100】
図示していないが、ガスを処理容器内に放出する際、外側ゾーン、内側ゾーン、中間ゾーンからなる同心円のマルチゾーンでガスの流量やガスの種類を制御してもよい。
【0101】
また、本発明のプラズマ処理装置は、エッチング装置に限られず、アッシング、表面改質、CVD(Chemical Vapor Deposition)等のプラズマ処理を行う装置であればよい。
【0102】
また、本発明のプラズマ処理装置によりプラズマ処理される被処理体は、シリコンウエハに限れず、FPD(Flat Panel Display)用基板又は太陽電池用基板等であってもよい。FPDとしては、液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence;EL)ディスプレイ、蛍光表示管(Vacuum Fluorescent Display;VFD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)等が例示される。
【符号の説明】
【0103】
10 プラズマ処理装置
100 処理容器
105 誘電体窓
115 ガス供給源
120 高周波アンテナ
120a,120a1,120a2 外側コイル
120b,120b1,120b2 中間コイル
120c,120c1,120c2 内側コイル
125a,125b,125c 給電棒
130 パワー分割部
135,136,137,155 整合器
130a,130b 可変インピーダンス回路
140,160 第1の高周波電源
141 第2の高周波電源
142 第3の高周波電源
145a,145a1,145a2 ブロッキングコンデンサ
145b,145b1,145b2 ブロッキングコンデンサ
145c,145c1,145c2 ブロッキングコンデンサ
150 載置台
220 制御装置
250a,250b,250c 測定器
300 シールド部材
310 アンテナ室


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にて被処理体にプラズマ処理が施される処理容器と、
高周波を出力する第1の高周波電源と、
前記処理容器の外部にて、外側コイル、内側コイル及びその間に設けられたn個(nは1以上の整数)の中間コイルが中心軸に対して同心状に巻かれた高周波アンテナと、
前記処理容器の開口部に設けられ、前記高周波アンテナから発生する電磁界のエネルギーを前記処理容器内に導入する誘電体窓と、を備えるプラズマ処理装置。
【請求項2】
少なくとも前記外側コイル及び前記内側コイル間に設けられ、前記第1の高周波電源から出力された高周波のパワーを所望の割合に分割して各コイルに供給するパワー分割部を備える請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記パワー分割部は、前記各コイル間に設けられ、前記第1の高周波電源から出力された高周波のパワーを所望の割合にそれぞれ分割して各コイルに供給する請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記各コイルの少なくともいずれかは前記誘電体窓との距離が可変になるように可動式になっている請求項1〜3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
2つのコイル間に前記パワー分割部が設けられていない場合、当該2つのコイルのいずれかが可動式になっている請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記2つ以上のパワー分割部は、前記中心軸に対して対称的に設けられる請求項2〜5のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記2つ以上のパワー分割部は、前記中心軸に対して非対称に設けられ、
前記パワー分割部と高周波アンテナの存在する空間とは、シールド部材によりシールドされる請求項2〜5のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記外側コイル、前記内側コイル及び前記中間コイルはそれぞれ複数のコイルから形成され、
前記外側コイルを形成する複数のコイルの各給電点は、前記中心軸に対して対称的な位置に設けられ、
前記中間コイルを形成する複数のコイルの各給電点は、前記中心軸に対して対称的な位置に設けられ、
前記内側コイルを形成する複数のコイルの各給電点は、前記中心軸に対して対称的な位置に設けられる請求項1〜7のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記各コイルの給電点は、前記中心軸に対して180°、120°、90°、72°、60°のいずれかの間隔で配置される請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記各コイルには、ブロッキングコンデンサがそれぞれ介在する請求項1〜9のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記2つ以上のパワー分割部は、可変コンデンサを有する請求項2〜10のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記各コイルに供給されている高周波の電流、電圧、位相の少なくともいずれかを測定する測定器と、
前記測定器により測定された高周波の電流、電圧、位相の少なくともいずれかに基づき、前記パワー分割部にて分割するパワー比を制御する制御装置を備える請求項2〜11のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記制御装置は、メモリを有し、前記メモリに予め記憶したレシピに従い前記パワー分割部にて分割するパワー比を制御する請求項12に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
高周波を出力する第2の高周波電源を備え、
前記外側コイル、前記内側コイル及び前記中間コイルのいずれか一つは、前記第1の高周波電源に接続され、
前記第1の高周波電源に接続されなかった残りの2つのコイルは、前記第2の高周波電源に接続され、
前記第2の高周波電源から出力された高周波のパワーを所望の割合に分割して前記残りの2つのコイルに供給するパワー分割部を更に備える請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
前記第1の高周波電源は、前記外側コイルに接続され、
前記第2の高周波電源は、前記内側コイル及び前記中間コイルに接続される請求項14に記載のプラズマ処理装置。
【請求項16】
高周波を出力する第2及び第3の高周波電源を備え、
前記外側コイル、前記内側コイル及び前記中間コイルのいずれか一つは、前記第1の高周波電源に接続され、
前記第1の高周波電源に接続されなかった残りの2つのコイルの一方は、前記第2の高周波電源に接続され、前記残りの2つのコイルの他方は、前記第3の高周波電源に接続される請求項1に記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−238981(P2010−238981A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86470(P2009−86470)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】