説明

プラズマ浸漬イオンを用いた加工装置及び方法

【課題】加速イオンを用いた低温プラズマ浸漬イオンにより様々な試片を加工処理する装置と方法を提供する。
【解決手段】本発明によるプラズマ浸漬イオンを用いた加工装置は、チャンバ内部に円筒形加工物が載置されると共に円筒形加工物の周囲を低温プラズマが囲むようになり、多重スロットを有する抽出電極を含む加工物蓋が円筒形加工物の周囲を覆ってプラズマから分離させ、スパッタリングを誘発するに十分な負電位が円筒形加工物と加工物蓋の抽出電極に付加されることにより、プラズマから出てきたイオンが抽出電極とプラズマとの間に形成されたシース内で加速され、抽出電極のスロットを通過して円筒形加工物に衝突して円筒形加工物の表面粗さを減少させる方式で行われ、本発明による加工装置及び方法は、大面積の円筒形基板、特に、マイクロまたはナノパターン転写技術のための基板表面を数nmの表面粗さにする効果があり、単一または多重チャンバ内でプラズマ洗浄、表面活性、表面研磨、乾式エッチング、蒸着、プラズマ浸漬イオンの注入及び蒸着などの工程を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ浸漬イオンを用いた加工装置及び方法に関するものであって、より詳細には、加速イオンを用いた低温プラズマ浸漬イオンにより様々な試片を加工処理する装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、エネルギを持っているイオンを用いた表面処理は、半導体工程、MEMS及びMEMSの量産、パターン転写技術、硬質コーティングなどの分野で必須である。
【0003】
イオンの衝突は、洗浄、基板表面の活性化、濡れ性の変化、硬度向上、様々なフィルムの蒸着、イオン注入による半導体ドーピング工程などの多様な分野に用いられている。
【0004】
通常、イオン加工は次のような2つの種類に分けられる。
【0005】
第1に、イオンソースからイオンビームを抽出し、真空チャンバ内部に一定の距離を置いて載置されている基板側に送る方式がある。
【0006】
この方式は、所望する結果を得るために、イオンビームと基板を別々にまたは同時に搬送させる。
【0007】
この時、イオン電荷(Charge)は、補助電子電極(Emitter)により中和されることができる。
【0008】
このような技術の例として、イオンビーム応用蒸着、イオンビームエッチングまたは加工(Milling)、イオンビーム注入などが挙げられる。
【0009】
第2に、加工物がプラズマの雰囲気内にあり、一定の値の負電位(Nagative potential)のバイアス(Bias)を電気的にかける装置がある。
【0010】
イオンは、加工物の前に形成されたシース内部で加速されるが、このような加速を誘発するために、DC、RF、及びパルスに供給されるバイアスなどが用いられる。
【0011】
PVD、PECVD、PI3D、RIEなどがこの技術範疇に属する。
【0012】
一方、イオンエッチングまたはイオン加工は重要なイオン加工の一分野である。
【0013】
それはエネルギを有するイオンによる表面スパッタリングに基づく。
【0014】
イオンスパッタリングの核心的な特徴は、イオンの入射角に対するスパッタリングの速度が図1に示すように非線形的に依存することである。
【0015】
物理的または反応的(Reactive)な加工の両方ともに適用可能である。
【0016】
イオン加工はたくさん適用されているが、その事例は、半導体工程、ナノ構造の形成、表面構造物の形成、表面粗度の改善などを含む。
【0017】
イオンビーム加工は先端加工技術であるが、この技術は光学部品の量産において最後の段階に適用されてきた。
【0018】
表面粗度を改善させるための適用は、光学部品及び高電力デバイス、またはSIMSとTEMなどの試片準備のような重要な境界面におけるマイクロ表面粗度値の改善を含む。
【0019】
通常、垂直なイオン入射角を用いたプラズマ加工は、基板に対して垂直方向に一定に加工が行われるため、パターンを形成するエッチング工程に適しているが、突出部分だけを選別的に除去して表面粗さを減少させる表面研磨工程には適していない。
【0020】
この問題を解決するために、垂直なイオン入射角を用いたプラズマ工程では、基板の傾斜(Tilting)または回転が主に用いられる(図2と図3)。
【0021】
例えば、図2は円筒形加工物に対するイオンビームエッチング工程の概念図であって、線形イオンソースから出てきたリボン状のイオンビームは、回転する加工物100の軸に沿って真空チャンバ内部に向かう。
【0022】
図3は、平板型加工物のためのイオンビームエッチング工程の概念図である。
【0023】
イオンソースから出てきた円形状のビームは、所定の角度だけ傾いたまま回転する加工物100に対して真空チャンバ内部に向かう。
【0024】
図面に示されている電子銃が、帯電されたイオンを中和させる。
【0025】
製品化したイオン加工装置の例としては、Gatan社のModle 691、PIPS(Precision Ion Polishing System)社とFischione Instr.社のModle 1010 Ion Mill、及びRoth & Rau AG社のIonScan 800 Polishing Fault Correction Systemがある。
【0026】
nm大きさのパターンを得るためには、数nmまたはそれ以下の大きさを有する表面研磨工程が必要である。
【0027】
半導体産業では、化学機械的研磨(CMP)工程が平板型のシリコンウェハの研磨に主に活用される。
【0028】
しかし、3次元形状を有する基板にはこのような化学機械的研磨工程を適用することができない。
【0029】
3次元形状を有する基板が適用される分野としては、電気診断写真(Electrophotographic)装備に用いられる光受容体(Photoreceptor)ドラムが挙げられる。
【0030】
ナノパターン転写のように、最近浮かび上がっている技術は、3次元基板、特に円筒形基板を有する場合に多くの利点がある。
【0031】
このような基板を用いて製作される大面積の円筒形ナノスタンプは、次世代ディスプレイの核心部品として活用されることができる。
【0032】
しかし、大面積の円筒形試片をその水準まで研磨できる装備はまだない。
【0033】
線形イオンソースから出てきたリボン状のイオンビームは、大面積を有する加工物の表面研磨に適用されるが、この方法は生産性に限界がある。
【0034】
2つ以上のイオンソースを同時に使用すると、システムが複雑になり、装備の価格が上昇し、また、イオンソース間の干渉のために各部品の信頼性が低下する問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
本発明は、このような点を考慮して発明したものであって、プラズマ雰囲気のチャンバ手段、加工物とプラズマを分離させる加工物蓋手段、加工物と蓋に負電位を付与する手段、加工物を回転させる手段などを含み、加工物蓋の周辺に形成されたシース(Sheath)の内部で加速されたイオンを浸漬させて、回転する加工物に衝突させる加工方式を採択することにより、大面積の円筒形加工物の表面研磨工程を効率的に行うプラズマ浸漬イオン加工装置及び方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0036】
前記目的を達成するために、本発明によるプラズマ浸漬イオンを用いた加工装置は、電気的に絶縁され、プラズマが満たされる真空チャンバと、加工物が載置される部分であって、真空チャンバ内部に設置されて回転可能な受け台及び回転装置と、少なくとも1面以上に、加工物の表面に沿って配置されるスロットが設けられ、伝導性をもって加工物を囲んで加工物をプラズマから分離させ、電気的に加工物に接続する蓋と、前記加工物と蓋に電源を供給する電源供給源と、を含むことを特徴とする。
【0037】
また、加工方法は、電気的に絶縁されたチャンバ内部に加工物を配置するが、チャンバに電気的に絶縁され、回転が可能な受け台上に配置する段階と、加工物に電気的に接続し、スロットによりイオン抽出電極の役割をする蓋で加工物の周辺を覆う段階と、前記チャンバ内部にプラズマを提供する段階と、前記加工物と蓋に負のバイアスを付加し、前記加工物を回転させる段階と、前記抽出電極により蓋の周辺に形成されたシース内部で加速されたイオンが蓋と加工物との間の間隔の内部に引っ張られ、その内部の加工物に衝突することにより、加工物の表面を加工する段階と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
本発明によるプラズマ浸漬イオンを用いた加工装置及び工程は、大面積の円筒形基板、特にマイクロまたはナノパターン転写技術のための基板表面を数nmの表面粗さにする効果がある。
【0039】
また、単一または多重チャンバ内でプラズマ洗浄、表面活性、表面研磨、乾式エッチング、蒸着、プラズマ浸漬イオンの注入及び蒸着などの工程を効率的に行う効果がある。
【0040】
また、本発明の加工装置及び方法は、パターン転写のためのマイクロ及びナノスタンパー、イメージ転写装備の光受容器ドラム、3次元半導体デバイスなどに有効に適用することができる。
【0041】
したがって、本発明の加工装置及び方法は、簡単な設計と低維持費用で大面積の円筒形及び平板型基板表面が数nmの表面粗さを持つようにする効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】入射角による加速イオンによるスパッタリング速度の傾向を示すグラフである。
【図2】円筒形加工物に対するイオンビームエッチング工程を示す概念図である。
【図3】平板型加工物に対するイオンビームエッチング工程を示す概念図である。
【図4】本発明の概念図であって、鋭い先端を有する部品を加工する工程概念図である。
【図5】本発明の概念図であって、3次元の厚い絶縁体加工物を加工する工程概念図である。
【図6】本発明の概念図であって、円筒形加工物の表面研磨工程を示す概念図である。
【図7】本発明の概念図であって、角度をつけた状態で円筒形加工物の表面研磨工程を示す概念図である。
【図8】本発明の一例で、図6の構造を含むプラズマ浸漬イオン加工の概念図である。
【図9】本発明の他の例で、図6の構造を含み、2つの円筒形加工物を1バッチで処理する加工の概念図である。
【図10】本発明のまた他の例で、格子化した電極が加工物蓋の片面にだけ付着された場合を示す概念図である。
【図11】本発明のまた他の例で、三角形の加工物蓋を示す概念図である。
【図12】本発明のまた他の例で、加工物蓋に設けられる電極の配置に対する他の例を示す概念図である。
【図13】本発明のまた他の例で、平板型加工物の表面研磨工程を示す概念図である。
【図14】本発明のまた他の例で、二重の加工物蓋を示す概念図である。
【図15】本発明の工程を実際に実現した実験装備を示す写真である。
【図16】図15の実験装備を用いてプラズマ浸漬イオン加工を行う間のパルスバイアス電圧及び印加電流を示す写真である。
【図17】ICP放電のアルゴンと窒素プラズマによる電子エネルギの確率関数グラフである。
【図18】図15の実験装備を用いてガラス試片に対するプラズマ浸漬イオン加工を実施した結果を示す写真である。
【図19】スロットの幅と位置設定によるイオンの衝突状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、添付した図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0044】
本発明のプラズマ浸漬イオンを用いた加工装置は、大面積の加工物、例えば円筒形加工物の表面研磨工程のためのものであって、電気的に絶縁され、プラズマが蓋の周辺に均一に満たされる真空チャンバ10と、円筒形や円盤形の加工物11が載置される部分であって、真空チャンバ10の内部に設置されて回転可能な受け台12及び回転装置13と、少なくとも1面以上に、加工物の表面に沿って配置されるスロット14が設けられ、伝導性をもって加工物11を囲んで加工物11をプラズマから分離させ、電気的に加工物11に接続する蓋15と、前記加工物11と蓋15に電源を供給する電源供給源16と、を含むように形成される。
【0045】
前記蓋15は、様々な断面形態、例えば四角断面や三角断面などの形態を有することができ、前記蓋15と加工物11に提供されるバイアスは、RF磁気バイアス、単極繰り返しパルスバイアス、蓄積された正電荷がパルス毎に負電荷を相殺できる双極繰り返しパルスバイアスなどが適用されることができ、前記真空チャンバ10に満たされるプラズマは、内部アンテナを有するICPソース、アルゴンなどの不活性ガス、反応性ガスなどが適用されることができる。
【0046】
また、前記加工物11の載置のために設けられる受け台12はベアリング手段を含み、また加工物11の回転のための回転装置13はモータなどを駆動源にする通常の回転装置が適用される。
【0047】
また、前記真空チャンバ10は、チャンバ内部を高真空にするポンプ17と、蓋15に沿って噴射するガスシャワー18を含む。
【0048】
したがって、電気的に絶縁された真空チャンバ10の内部には円筒形加工物11が受け台12上に付着された状態に配置され、このように配置される円筒形加工物11の周囲を円筒形軸に沿って均一に分布されている低温プラズマが囲むようになる。
【0049】
前記円筒形加工物11は蓋15内に収容され、プラズマから隔離される。
【0050】
前記蓋15には、抽出電極(Extracting electrode)の役割をするスロット14が形成されるが、スロット14は円筒形加工物11の表面に沿って配置され、加工物11から一定の距離を置く。
【0051】
また、スパッタリングを誘発するに十分な負電位が電気的に互いに接続している加工物11と蓋15に付加される。
【0052】
これによって、プラズマから出てきたイオンは、抽出電極とプラズマとの間に形成されたシース(Sheath)内で加速され、スロット14を通過して加工物11と抽出電極との間の間隔の内部でリボン波形のビームを形成した後、加工物11の表面粗さの減少を発生させるように、所定の傾斜角度範囲内で円筒形加工物11に衝突する。
【0053】
例えば、図12に示すように、加工物11の直径と同様にスロット14の幅を設定せず、スロット14の幅を狭く設定するが、この時のスロット14の位置を加工物11の外郭側に向かうように設定して加工物11の一定部分だけにイオンが衝突するようにして円筒の任意の地点で円筒の表面に到達するイオンの入射角を制限することができる。
【0054】
また、図19に示すように、上述したスロット14の幅と位置設定により加工物11に衝突するイオンが加工物の垂直方向ではなく、加工物の側部方向に進行して衝突するようにして、加工物11の突出部分を選択的に除去する効果がある。
【0055】
前記電気的なバイアスは、直流(DC)、単極または双極のパルス、またはRFバイアスを用いることができる。
【0056】
また、加工物11と抽出電極の相対回転による一般的なプラズマ浸漬イオン加工により、円筒形加工物11の表面を均一に処理することができる。
【0057】
本発明では加工物が回転する構成を例に挙げたが、加工物を固定し、蓋を回転させる構成も可能である。
【0058】
また、スパッタリングは、アルゴンのような不活性気体がプラズマを形成する時、または反応性ガスからプラズマが形成される時に物理的に行われる。
【0059】
そして、伝導体または非伝導体円筒形加工物の両方ともに適用でき、この時の加工物は直径が1〜40cm、長さは10〜200cmまで加工が可能である。
【0060】
以下、図面を参照して本発明の様々な実施例を説明する。
【0061】
図4では、格子化した(Gridded)プラズマ浸漬イオンの注入及び蒸着(PI3D)工程を用いて鋭い先端を有する加工物11を加工する工程を示す。
【0062】
例えば、図4と図5に示された加工物を加工する場合、スロットよりも格子形状がさらに効果的である。
【0063】
図5では、3次元の厚い絶縁体加工物11に対する格子化したプラズマ浸漬イオンの注入及び蒸着工程を示す。
【0064】
図6では、プラズマ浸漬イオン加工による円筒形加工物11の表面研磨工程を示す。
【0065】
電気的に加工物11に接続して加工物11を囲む蓋15は、四角断面を持っており、4つの面に多重スロット14、すなわち抽出電極が付着されている。
【0066】
この時、スロット14の幅は、加工物11の直径と同一であり、スロット14の長さは加工物11の長さと同一である。
【0067】
図7では、図6に示されたプラズマ浸漬イオン加工方法とほぼ同様に円筒形加工物11の表面を研磨する工程を示す。
【0068】
この時、円筒形加工物11の軸が加工物を囲む蓋15に対して一定の角度をもって傾いている。
【0069】
図8は、本発明の具体化された一実施例であって、図6に示された構造を含むプラズマ浸漬イオン加工の例を示す。
【0070】
図9は、本発明の具体化された他の実施例であって、図6に示された構造を含み、平行に接続している2つの円筒形加工物11を1バッチで処理できるプラズマ浸漬イオン加工の例を示す。
【0071】
図10は、本発明のまた他の実施例であって、加工物11を囲んでいる蓋15は四角形断面を有し、多重スロットの形態を有する抽出電極、すなわちスロット14は蓋15の4面のうち片面にだけ付着された場合で、スロット14の幅は円筒形加工物11の直径と同一である。
【0072】
図11は、本発明のまた他の実施例であって、加工物11を囲んでいる蓋15が三角形断面を有し、多重スロット14が3面に設けられている場合で、スロット14の幅は加工物11の直径と同一である。
【0073】
図12は、本発明のまた他の実施例であって、加工物11の蓋15が四角形断面を有し、4面にそれぞれ2つずつの多重スロット14を有する。
【0074】
この時、スロット14は、衝突するイオンが加工物11の表面をかすめるように入射する角度を有するように設けられる。
【0075】
図13は、本発明のまた他の実施例であって、平板型加工物11に適用するためのプラズマ浸漬イオン加工方法を示す。
【0076】
この時、傾斜して入ってくる入射により全方向でのイオン衝突を発生させるように、蓋15に設けられる抽出電極、すなわちスロット14は傾斜した格子を有する。
【0077】
図14は、本発明のまた他の実施例であって、二重の加工物蓋15を示す。
【0078】
加工物11を囲んでいる蓋15は、互いに所定のギャップを維持する内側のインナー蓋15aと外側のアウター蓋15bで構成され、内側の伝導性インナー蓋15aは加工物11に接続し、アウター蓋15bはフローティング(Floating)または接地される。
【0079】
本発明で実現しようとする加工装置をより効率的に活用するためには、アウター蓋はフローティング状態が好ましく、工程の特性上、フローティング状態を維持し難い場合は接地する方法を選択することがよい。
【0080】
四角断面を有するインナー蓋15aとアウター蓋15bの各面には2つずつのスロット14が設けられ、この時の各スロット14は加工物11の中心ではなく、外郭側に向かって位置される。
【0081】
このようにスロット14が位置されることにより、加工物11に衝突したイオンは、衝突した後に流れの向きが変更されて部分的に優れた研磨特性を示す。
【0082】
この時、スロット14の幅は加工物11の一部の面積をカバーする狭い幅を有する。
【0083】
図15は、実際に実現された本発明の実験装備の写真を示している。
【0084】
また、前面格子を分離させた状態を示している。
【0085】
図16は、図15に示された実験装備を用いてプラズマ浸漬イオン加工を行う間のパルスバイアス電圧及び印加電流を示している。
【0086】
図17は、ICP放電のアルゴンと窒素プラズマによる電子エネルギの確率関数グラフを示している。
【0087】
図18は、図15に示された実験装備を用いてガラス試片に対してプラズマ浸漬イオン加工を実施した結果である。
【0088】
(a)と(b)は、それぞれイオン加工する前と、イオン加工した後の電子顕微鏡(AFM)測定結果である(アルゴンプラズマ、パルスバイアス:2kV、2s、2kHz)。
【0089】
一方、本発明によるプラズマ浸漬イオンを用いた加工方法に対して説明する。
【0090】
前記プラズマ浸漬イオンを用いた加工方法は、加工物11と蓋15に接続している電源供給源16により、加工物11と蓋15にプラズマ電位に比して相対的に負の値を有するバイアスが提供され、蓋15の抽出電極により蓋の周辺に形成されたシース内部で加速されたイオンが蓋15と加工物11との間の間隔の内部に引っ張られるようになり、このように流入されたイオンは、回転する加工物11に所定範囲の入射角をもって衝突し、これによって円筒形加工物11の表面を研磨する工程が行われる。
【0091】
詳細に説明すると、先ず、電気的に絶縁されたチャンバ内部に加工物を配置する段階であって、チャンバに電気的に絶縁され、回転が可能な受け台上に加工物を配置する段階を行う。
【0092】
次に、加工物に電気的に絶縁された蓋を被せる段階を行う。
【0093】
この時、蓋は、加工物に電気的に接続してスロットによりイオン抽出電極の役割をする。
【0094】
次に、前記チャンバ内部にプラズマを提供する段階を行う。
【0095】
すなわち、蓋の周辺に低温の高密度プラズマを提供し、この時のプラズマは加工物に応じて均一に提供されることが好ましい。
【0096】
次に、前記加工物と蓋に負のバイアスを付加し、前記加工物を回転させる段階を行う。
【0097】
この時のバイアスは、DC、単極または双極のパルスまたはRFを用いることができる。
【0098】
次に、所定の値の入射角及びイオンエネルギを有するイオン衝突により、加工物の表面を研磨する段階を行う。
【0099】
具体的には、抽出電極により蓋の周辺に形成されたシース内部で加速されたイオンが蓋と加工物との間の間隔の内部に引っ張られ、その内部の加工物に衝突するようになることで、加工物の表面を加工する段階を行う。
【0100】
また、前記加工物の表面を加工する段階で、プラズマ工程は、表面洗浄、表面活性化、マイクロナノ及びナノパターン構造の乾式エッチング、薄膜蒸着、イオン化蒸着、繰り返しエッチング、イオン注入によるプラズマ工程、表面研磨、その他の応用工程に適用することができる。
【0101】
本発明は、様々な加工物に対するイオンビームまたはプラズマ加工する場合、表面研磨、洗浄、表面活性化、エッチング、薄膜蒸着、イオン注入及びその他の表面処理を行うことができ、マイクロ及びナノパターン転写技術、半導体デバイス、平板型ディスプレイなどの製品生産に適用することができる。
【符号の説明】
【0102】
10 真空チャンバ
11 加工物
12 受け台
13 回転装置
14 スロット
15 蓋
16 電源供給源
17 ポンプ
18 ガスシャワー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に絶縁され、プラズマが満たされる真空チャンバ10と、
加工物11が載置される部分であって、真空チャンバ10の内部に設置されて回転可能な受け台12及び回転装置13と、
少なくとも1面以上に、加工物の表面に沿って配置されるスロット14が設けられ、伝導性をもって加工物11を囲んで加工物11をプラズマから分離させ、電気的に加工物11に接続する蓋15と、
前記加工物11と蓋15に電源を供給する電源供給源16と、
を含み、
前記加工物と蓋にプラズマ電位に比して相対的に負の値を有するバイアスが提供され、前記蓋はスロットを有する抽出電極の役割をし、前記抽出電極により蓋の周辺に形成されたシース内部で加速されたイオンが蓋と加工物との間の間隔の内部に引っ張られ、回転する加工物に衝突して加工物の表面を研磨することを特徴とするプラズマ浸漬イオンを用いた加工装置。
【請求項2】
前記加工物11は、円筒形加工物または平板型加工物であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ浸漬イオンを用いた加工装置。
【請求項3】
前記加工物11は、蓋15に対して相対的に一定の角度傾いていることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマ浸漬イオンを用いた加工装置。
【請求項4】
前記蓋15のスロット14は、衝突するイオンが加工物の表面をかすめるように入射させるために、四角断面の蓋の場合は4つの面にそれぞれ2つずつ設けられることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ浸漬イオンを用いた加工装置。
【請求項5】
前記蓋15は四角断面の蓋であり、抽出電極の役割をするスロット14は四角断面の各面に設けられることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ浸漬イオンを用いた加工装置。
【請求項6】
前記蓋15は、互いに所定のギャップを維持する内側のインナー蓋15aと外側のアウター蓋15bで構成され、内側の伝導性インナー蓋15aは加工物11に接続し、アウター蓋15bはフローティングまたは接地されることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ浸漬イオンを用いた加工装置。
【請求項7】
前記バイアスは、RF磁気バイアス、単極繰り返しパルスバイアス、双極繰り返しパルスバイアスのうち何れか1つであることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ浸漬イオンを用いた加工装置。
【請求項8】
前記プラズマは、内部アンテナを有するICPソース、不活性ガス、反応性ガスのうち何れか1つにより製造されることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ浸漬イオンを用いた加工装置。
【請求項9】
前記受け台12及び回転装置13と蓋15は2セットが設けられ、1つの真空チャンバ10内に並んで配置されることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ浸漬イオンを用いた加工装置。
【請求項10】
電気的に絶縁され、プラズマが満たされる真空チャンバ10と、
加工物11が載置される部分であって、真空チャンバ10の内部に設置される受け台12と、
少なくとも1面以上に、加工物の表面に沿って配置されるスロット14が設けられ、伝導性をもって加工物11を囲んで加工物11をプラズマから分離させ、電気的に加工物11に接続すると共に回転可能な蓋15及びこの蓋15の回転のための回転装置13と、
前記加工物11と蓋15に電源を供給する電源供給源16と、
を含み、
前記加工物と蓋にプラズマ電位に比して相対的に負の値を有するバイアスが提供され、前記蓋はスロットを有する抽出電極の役割をして回転し、前記抽出電極により蓋の周辺に形成されたシース内部で加速されたイオンが蓋と加工物との間の間隔の内部に引っ張られ、その内部の加工物に衝突することにより、加工物の表面を研磨することを特徴とするプラズマ浸漬イオンを用いた加工装置。
【請求項11】
電気的に絶縁されたチャンバ内部に加工物を配置するが、チャンバに電気的に絶縁され、回転が可能な受け台上に配置する段階と、
加工物に電気的に接続し、スロットによりイオン抽出電極の役割をする蓋で加工物の周辺を覆う段階と、
前記チャンバ内部にプラズマを提供する段階と、
前記加工物と蓋に負のバイアスを付加し、前記加工物を回転させる段階と、
前記抽出電極により蓋の周辺に形成されたシース内部で加速されたイオンが蓋と加工物との間の間隔の内部に引っ張られ、その内部の加工物に衝突することにより、加工物の表面を加工する段階と、
を含むことを特徴とするプラズマ浸漬イオンを用いた加工方法。
【請求項12】
前記蓋15は、互いに所定のギャップを維持する内側のインナー蓋15aと外側のアウター蓋15bで構成され、内側の伝導性インナー蓋15aは加工物11に接続し、アウター蓋15bはフローティングまたは接地される形態のものを使用することを特徴とする請求項11に記載のプラズマ浸漬イオンを用いた加工方法。
【請求項13】
前記加工物の表面を加工する段階は、表面洗浄、表面活性化、マイクロナノ及びナノパターン構造の乾式エッチング、薄膜蒸着、イオン化蒸着、繰り返しエッチング、イオンの注入によるプラズマ工程、表面研磨から選択された何れか1つの加工を含むことを特徴とする請求項11に記載のプラズマ浸漬イオンを用いた加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18(a)】
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【図18(b)】
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【図19】
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【公表番号】特表2013−511817(P2013−511817A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541004(P2012−541004)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【国際出願番号】PCT/KR2010/007418
【国際公開番号】WO2011/065669
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(507296791)コリア エレクトロテクノロジー リサーチ インスティテュート (24)
【Fターム(参考)】