説明

プリプレグシートの自動積層装置

【課題】 強化繊維に予め樹脂が含浸されたプリプレグシートを複数層積層してFRP積層体を製造する際に、装置を大型にする必要もなく、しかも自動的に任意の層数自動的に積層することが可能なプリプレグシートの自動積層装置を提供することである。
【解決手段】 プリプレグシートを、基材の上に所定の押圧力を付加しながら予め定められる所定の層数連続的に往復しながら積層する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機等に用いられる軽量かつ高強度な繊維強化プラスチック製の板材や角材を製造する際に、強化繊維束に予め樹脂が含浸されたプリプレグシートを自動的に複数層積層して成形可能なプリプレグシートの自動積層装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近では、ガラス繊維や炭素繊維、あるいはナイロン繊維等の高強力糸条よりなる繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics:以下、FRPという。)で種々の複合材パネルを製造しており、一般産業用途等にも広く適用されている。また、最近では航空機や自動車などの軽量化のための用途が広がっている。
【0003】
一般に大型の複合材パネルを製造する際には、所定形状の型材にテープ状のプリプレグ(強化繊維に予めマトリックス樹脂を含浸して半硬化状態としたもの)を積層していき、その後で加熱硬化して成形する。
【0004】
最近では積層工程を自動的に行うファイバープレースメント法と呼ばれる積層方法が知られており、予め樹脂が含浸された強化繊維であるテープ状のプリプレグをマンドレル表面に加圧しながら積層すると共に、別に備える加熱装置やオートクレーブ等により含浸された樹脂を溶融して固着していく成形方法である。
【0005】
しかし、所定幅の板材を製造する際には、予め所定幅に切断したプリプレグシートを複数層順に積層していく作業が必要である。また、所定形状の角材(パイプ状の)を製造する際には、予め所定サイズの芯型を用意して、その四面の幅に応じて準備したプリプレグシートをそれぞれの面毎に、前記芯型の全長に渡って積層していき、角型に成形したあとで加熱硬化している。また、加熱硬化する前に、絶縁性を付与するためにガラス繊維シートや他の樹脂製シート等で角型の全周を被覆し、加熱硬化後、脱芯してさらに一体的に成形された積層製品を成形することもできる。
【0006】
また、従来プリプレグを用いてFRP製角パイプを得る方法としては、中子となる角柱に離型処理を施しプリプレグシートを所定枚数積層した後、オートクレーブで成形する方法が取られている。
【0007】
さらに、積層する層数に対応した台数の積層装置を備え、角柱形状の中子の周囲にプリプレグシートを順次複数層積層しながら加熱硬化するFRP製角パイプの連続製造装置が既に出願されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3357342号公報(第1−4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記プリプレグシートを複数層人手により順次積層していく作業は、たとえ板状のFRP積層体であっても、面倒であり困難である。また、自動機械で複数層積層する場合は、積層する層数に対応した数の積層装置が必要となる。
【0009】
そのために、多層の積層体を製造するには、それに応じて多数の積層装置を設置する必要があって、装置全体が大型になるという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、上記問題点を解消するために、強化繊維に予め樹脂が含浸されたプリプレグシートを複数層積層してFRP積層体を製造する際に、装置を大型にする必要もなく、しかも自動的に任意の層数自動的に積層することが可能なプリプレグシートの自動積層装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために請求項1に係る発明は、炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維に熱硬化性樹脂を予め含浸したプリプレグシートを複数層積層してFRP積層体を製造するプリプレグシート積層装置であって、前記プリプレグシートを基材の上に積層する際に、前記プリプレグシートまたは前記基材のいずれか一方を、所定の押圧力を付加しながら予め定められる回数往復移動することで所定の層数連続的に積層することを特徴としている。
【0012】
上記の構成を有する請求項1に係る発明によれば、プリプレグシートを往復させながら複数層連続的に積層するので、簡単な操作で任意の層数のFRP積層体を製造することができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、プリプレグシートと剥離シートとを合わせて巻回したボビンを回転自在に支持するボビン装着部と、前記ボビンから前記プリプレグシートを引き出す際に前記剥離シートを分離して巻き取る剥離シート巻取部と、引き出されたプリプレグシートをガイドしながら送り出す送りローラ部と、所定の押圧力にて基材に圧接される圧接ローラとを有するプリプレグシート供給部を備え、さらに、前記基材を保持すると共に水平方向に往復移動可能な基材保持部と、移動する前記基材保持部を停止してターンする反転手段と、該基材保持部が載置されるテーブルを備えていることを特徴としている。
【0014】
上記の構成を有する請求項2に係る発明によれば、プリプレグシートを積層する基材を往復移動させるだけで、任意の層数のFRP製品を製造することができる。
【0015】
請求項3に係る発明は、前記圧接ローラを備える圧接ガイドローラ部を前記送りローラ部の最下部に配設して、前記圧接ガイドローラ部と前記送りローラ部とを一体的に上下動させる昇降手段を備えると共に、前記圧接ローラをスプリング部材を介して上下動自在に弾性支持していることを特徴としている。
【0016】
上記の構成を有する請求項3に係る発明によれば、圧接ローラが上下動自在であるので、種々の基材の高さに対応可能であると共に所定の押圧力でプリプレグシートを積層することができる。
【0017】
請求項4に係る発明は、前記圧接ローラを、回転自在に軸支されるアーム部材の一端側の先端部に装着し、他端側にセンサードッグ部を設けて、前記アーム部材をブッシュ等の回転補助具とトーションバネを介してプレート本体に軸支すると共に、前記プレート本体に前記センサードッグを検知するセンサを設けたことを特徴としている。
【0018】
上記の構成を有する請求項4に係る発明によれば、トーションバネを介して回転自在に軸支されるプレート本体の先端部に圧接ローラを装着しているので、トーションバネにより所定の押圧力でプリプレグシートを積層することができる。
【0019】
請求項5に係る発明は、前記送りローラ部に少なくとも一対のニップローラを設け、該ニップローラを、ニップするシートを送り出す方向には回転するが逆方向には回転しないクラッチローラと、該クラッチローラに押圧されると共に回転自在な従動ローラとで構成したことを特徴としている。
【0020】
上記の構成を有する請求項5に係る発明によれば、一旦引き出したプリプレグシートが押し戻されることがなく、所定のターン部形状とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、プリプレグシートを、基材の上を往復して所定の押圧力を付加しながら予め定められる所定の層数連続的に積層する構成の自動積層装置としたので、単一の積層装置により多数層のFRP製積層材を製造可能なプリプレグシートの自動積層装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係るプリプレグシートの自動積層装置の実施の形態について、図1から図4に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明に係わるプリプレグシートの自動積層装置の装置主要部の構成を示す正面図であり、図2は斜視図である。図3は基材の上にプリプレグシートを積み重ねていく積層工程の流れを示す説明図であって、(a)は全体模式図であり、(b)は基材を右方向に移動しながら積層しているところを示し、(c)は基材をターンして左方向に移動して積層するところを示し、(d)は複数層連続して積層した直後の状態を示し、(e)には両端のターン部を切断して完成された積層板を示している。図4は角パイプ状の積層体及びその製造工程を示しており、(a)は角パイプ状積層体の全体斜視図であり、(b)は積層肯定を示す流れ図である。
【0024】
図1および図2に示すように、本発明に係るプリプレグシートの自動積層装置は、プリプレグシート1Aと剥離シート1Bとを合わせて大径に巻回したボビン1を回転自在に支持するボビン装着部10と、剥離シート巻取部20と、送りローラ部30と圧接ガイドローラ部40とを有するプリプレグシート供給部を備えている。
【0025】
前記ボビン装着部10は、ボビン1を装着すると共にベアリング部材を介して回転自在なボス12と、前記ボス12の外周部に設けられたネジ部にねじ込まれて挿脱自在となる枠体11とを備えている。そのために、一方の枠体11を取り外して前記ボス12に前記ボビン1を装着し、その後で一旦取り外した前記枠体11を装着して、ボビン1を回転自在に支持する構成である。
【0026】
また、前記ボビン装着部10は2セット装着しているが、これらのいずれか一方のボビン装着部10に装着されたボビン1を用いてプリプレグシート1Aを積層すると共に、他方のボビン装着部には予備のボビン1、もしくは次工程に用いるボビン1を前もって装着しておくことができる。
【0027】
上記の構成であれば、稼動効率を落とすことなく速やかにボビン交換を行い、連続した積層工程を維持することが可能となり好適である。
【0028】
前記剥離シート巻取部20は、プリプレグシート1Aを巻回する際に、プリプレグシート同士が付着しないように、その間に挿入される中間シートである剥離シート1Bを、前記プリプレグシート1Aを引き出す際にこのプリプレグシート1Aから分離して巻き取っていく装置である。また、この回転駆動力は、ボビン1を支持する枠体11の回転からベルト14を介して伝達されている。
【0029】
そのために、ボビン1からプリプレグシート1Aが引き出されると、回転する枠体11の回転に連れて、前記剥離シート巻取部20が回転し、前記プリプレグシート1Aから分離した剥離シート1Bを順次巻き取ることができる。
【0030】
また、前記剥離シート巻取部20の回転速度は、引き出されながら分離される剥離シート1Bの長さ以上のものを巻き取り可能な程度に設定されている。さらに、前記巻取部20の巻取ローラ部を回転フリーとすると共に、軸方向に付加される軽い摩擦力で回転する構成としている。この構成であれば、巻き取る際の前記剥離シート1Bの張力によりその巻取速度を自動調整するので、前記剥離シート1Bを常に緊張状態で巻き取ることができ好適である。
【0031】
13は、のぞき窓であって、ボビン1の残量が一目で判るように、また、ボビン1の交換時期を把握するために利用される。
【0032】
前記送りローラ部30は、支持フレーム31に、第一ガイドローラ32、第二ガイドローラ33、ニップローラを構成する従動ローラ34とクラッチローラ35を上から順に備えている。さらに全てのローラは回転自在、すなわちベアリング部材を有する従動ローラとされていて、引き出されるプリプレグシート1Aに連動して回転するガイドローラとなっている。
【0033】
前記ニップローラは少なくとも一対必要であるが、本実施の形態においては、従動ローラ34にクラッチローラ35を当接する方向に付勢して一対のニップローラを形成している。また、引き出されるプリプレグシート1Aをスムーズに案内しガイドするために、プリプレグシート1Aの移動に連動して回転し、プリプレグシート1Aが停止すると回転を停止することが肝要である。そのために、前記クラッチローラ35を、ニップするシートを送り出す方向には回転するが逆方向には回転しないようなクラッチベアリングを内蔵するローラとしている。また、支持フレーム31に軸支されるアーム36の先端部に前記クラッチローラ35を装着すると共に、該クラッチローラ35が、所定の付勢力を備えるトーションバネを介して、前記従動ローラ34に当接する構成とした。
【0034】
前記圧接ガイドローラ部40は、前記送りローラ部30の最下部に配設されていて、昇降手段60(図2参照)により、前記圧接ガイドローラ部40と前記送りローラ部30とを一体的に上下動可能としている。また、前記圧接ガイドローラ部40は、ブラケット41と圧接ローラ42とアーム部材43とを備えており、従動ローラである前記圧接ローラ42を、前記ブラケット41に回転自在に軸支されるアーム部材43の一端側の先端部に装着している。また、前記アーム部材43の他端側にセンサードッグ44を設け、前記アーム部材43をブッシュ等の回転補助具とトーションバネを介して支持するブラケット41に前記センサードッグ44を検知するセンサ45を設けている。
【0035】
前記圧接ローラ42が下降して基材2に当接すると、前記トーションバネの付勢力に抗して、前記アーム部材43の支軸を中心として回転する。この時に、前記アーム部材43の他端側に設けられているセンサードッグ44も同様に回転し、センサ45の検知領域に到達する。前記センサ45が前記センサードッグ44を検知すると、後述する昇降手段60の駆動を停止する。そのために、前記基材2の上面位置に対応した所定の下降位置で前記圧接ローラ42を停止することができ、当接する基材2に対して常時同じ付勢力で押圧しながら積層を行うことが可能となる。
【0036】
前記トーションバネの付勢力の調整は、トーションバネの一端を係止する取付孔を前記ブラケット41に複数設けておき、その係止孔位置を変えてバネ力を調整することができる。また、センサ45を装着するセンサブラケット46の取付位置を変えることで前記センサ45の検知位置を調整し、前記圧接ローラ42の回転角度を変更して押圧力を制御することもできる。
【0037】
前記圧接ローラ42を上下動自在に弾性支持するスプリング部材として、本実施の形態においてはねじりを利用するトーションバネを用いたが、前記圧接ローラ42を鉛直方向に上下動自在とする摺動ガイドを用いると共に、コイルスプリングを装着して圧縮力を利用して弾性支持することも可能である。
【0038】
上記のような構成としているために、前記圧接ローラ42は上下動自在であると共に、一定の押圧力を発揮して下部部材である基材2に当接する構成となる。
【0039】
前記基材2は基材保持部3に固定されているが、前記基材保持部3は、本体ベース6に固着される断面U字状の支持ガイド5によりその側面部をガイドされ、底面部をガイドローラ8に支持されながら水平方向に移動する移動テーブル4に装着されている。前記ガイドローラ8は所定ピッチ毎に複数設けられており、複数のガイドローラ8により同時に前記移動テーブル4の底面部を支持する構成である。また、前記移動テーブル4の移動を反転して水平方向に往復移動する反転手段50を備えている。
【0040】
次に、反転手段50と昇降手段60について、図2より説明する。
【0041】
反転手段50は、駆動モータM2に装着されるピニオン51と前記移動テーブル4に固着されるラック52を備える直線運動機構部と、移動検知及び左右両端の反転位置を規制するためのセンサードッグ53と近接センサS1、S2、S3とを備えている。
【0042】
前記ラック52とセンサードッグ53とは前記移動テーブル4に配設されていて、駆動モータM2により駆動される前記ピニオン51により水平方向に直線移動する。また、近接センサS1、S2、S3は前記支持ガイド5の所定位置に固着されている。
【0043】
前記移動テーブル4は不図示のスライドガイド等を介して、断面U字状の前記支持ガイド5にガイドされながら水平方向に移動する(図中の矢印方向に)構成とされている。また、図中の左方向に移動する際には、近接センサS1がセンサードッグ53を検知して停止し右方向に反転する。図中の右方向に移動し、近接センサS3がセンサードッグ53を検知して停止する。さらに必要に応じて反転する構成とすることができる。
【0044】
センサS2は通過回数をカウントするためのセンサであって、予め設定される積層数に応じた回数反転するような構成である。これらの設定および装置の開始や停止の操作機能は制御盤7に収納されており、該制御盤7の上面に操作ボタンが設けられている。
【0045】
昇降手段60は、立設フレーム61と、該立設フレーム61に装着される昇降モータM1と、同じく立設フレーム61に設置される左右一対のスライドガイド63と、不図示のラックとピニオンとを備えている。前記スライドガイド63に沿って摺動するスライドブロックと前記ラックとが、前記プリプレグシート供給部を一体的に装着しているフレーム62に固着されていて、前記ピニオンの回転により前記プリプレグシート供給部を一体的に昇降駆動することができる。
【0046】
上記のような構成としているので、ボビン1から引き出されたプリプレグシート1Aを送りローラ部30から圧接ガイドローラ部40を経由して、圧接ローラ42と基材2のニップ点に挿通して把持させた状態で前記基材2を移動すると、前記プリプレグシート1Aが前記基材2に付着した状態で引き出されていく。そのために、回転しながら押圧する圧接ローラ42により所定の押圧力で前記プリプレグシート1Aを付着させながら、基材2に積層していくことができる。
【0047】
また、上記した実施の形態では、基材2の上にプリプレグシート1Aを積層する例としたが、平板状の積層体を製造する際には、特に新たな基材を用いずに、滑らかな平行な面であれば、装置本体のベース部にそのまま積層していくこともできる。ただし、含浸される樹脂との付着状態を剥がしやすい材質若しくは面祖度であって、且つ予め所定幅とされた基材2を用いれば、正規の幅の積層体を容易に製造することができ好適である。
【0048】
次に、プリプレグシート1Aを複数層積層する工程を図3により説明する。
【0049】
図3(a)に示すように、ボビン1から剥離シート1Bを剥離シート巻取部20部にて巻き取りながら、プリプレグシート1Aが分離されて、送りローラ部30の、従動ローラ34とクラッチローラ35から構成されるニップローラを経由して、一方の圧接ローラ42bにより押圧されながら基材2上に積層される。
【0050】
図3(b)には、基材2を図中の矢印に示す右方向に移動している状態を示しており、移動する基材2に連動して前記プリプレグシート1A引き出されていく様子が判る。基材2の全長に渡ってプリプレグシート1Aを積層した後の所定位置にて前述した反転が行われて、基材2が図3(c)に示すように左方向に移動する。
【0051】
基材2が左方向に移動する際には、プリプレグシート1Aは、他方の圧接ローラ42aにより押圧されながら基材2上に積層されていく。積層する直線長さは前記基材の全長より少し長い距離としているので、反転すると前記プリプレグシート1Aの折り返し部にターン部1Rが前記基材端部から突出して生じるが、この大きさは、前記の反転位置によるので、所定位置に前述の近接センサS1、S3を設置することで所定の移動距離を設定し所定の大きさのターン部1Rに制御することができる。
【0052】
前記プリプレグシート1Aを一方向に積層した後で反転してUターンする際に、ニップローラを構成する一方のローラをクラッチローラ35としているので、一旦引き出されたプリプレグシート1Aが戻ったり弛んだりせずに、適度なUターンカーブ形状のターン部1Rを形成しながら連続積層していくことができる。
【0053】
プリプレグシート1Aは、炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維に予めマトリックス樹脂を含浸して半硬化状態としたものであるため、所定の押圧力を付加することで、上下の相接する層同士を付着することができる。そのために、所定幅のテーブル若しくは基材2上に複数層の前記プリプレグシート1Aを順次積層していくことができる。
【0054】
このようにして、前記プリプレグシート1Aを所定層連続して積層すると図3(d)に示すように、基材の長さLの両端部に所定数の重なったターン部が形成された積層体を製造する。この積層体を加熱硬化した後で、突出したターン部をそれぞれの端部C1、C2にて切断すると、図3(e)に示す長さLの積層板Pを製造することができる。
【0055】
上記では、単に平板状の積層板Pの製造工程について説明してきたが、本発明によれば角パイプ状の積層体を製造することも可能である。以下、図4により角パイプ状の積層体の製造工程について説明する。
【0056】
図4(a)には完成された角パイプ状積層体PAを示しており、図4(b)にはその積層工程を示している。
【0057】
図4(b)に示すように、所定長さの角柱状若しくは角パイプ状の基材となる中子2Aにプリプレグシート1Aを複数層(予め定められた層数)積層して第一面積層を行う。その後で積層された面を下側にし、積層されていない面を上側にするように前記中子2Aを上下反転して、第二面積層を行う。それから横転して未だ積層されていない側面部を上側として第三面積層を行い、さらに上下反転して最後に第四面積層を行う。
【0058】
第四面まで積層した後で加熱硬化し、中子2Aを抜き出すと所望の角パイプ状積層体PAが得られる。また、必要に応じてそれぞれのターン部を切断して除去することは上記と同様である。
【0059】
それぞれの面を積層する際には、それぞれの面を構成する所定シート幅のプリプレグシート1Aを用いる。また、それぞれのシート幅に応じたサイズの中子2Aを用いるようにしている。このように、中子2Aの形状とシート幅を揃えることで、種々のサイズの角パイプ状積層体PAを製造することができる。
【0060】
上記の積層の際の往復移動は、基材や中子を往復移動させても、プリプレグシート供給部自体を往復移動させてもよい。ただ、本実施の形態に係わる反転手段を用いて軽量な基材もしくは中子を往復移動する構成とすれば、より簡単な構成で往復移動が可能となり好適である。
【0061】
このように本発明によれば、平板状の積層体である積層板でも、立体形状の角パイプ状積層体でも自動的に所定層数積層し容易に製造することができる。また、積層する上面を水平面とする所定形状の基材を用いることで、種々の多角形のパイプ状積層体を製造可能であることは明らかである。
【0062】
そのために、強化繊維に予め樹脂が含浸されたプリプレグシートを複数層積層してFRP積層体を製造する際に、装置を大型にする必要もなく、しかも自動的に任意の層数自動的に積層することが可能なプリプレグシートの自動積層装置を得ることができる。
【0063】
上記したように、本発明によれば、プリプレグシートを、基材の上を所定の押圧力を付加しながら往復して、予め定められる所定の層数連続的に積層する構成の自動積層装置としたので、単一の積層装置により多数層のFRP製積層材を製造可能なプリプレグシートの自動積層装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係るプリプレグシートの自動積層装置の装置主要部を示す正面図である。
【図2】装置主要部の斜視図である。
【図3】基材の上にプリプレグシートを積み重ねていく積層工程の流れを示す説明図であって、(a)は全体模式図であり、(b)は基材を右方向に移動しながら積層しているところを示し、(c)は基材をターンして左方向に移動して積層するところを示し、(d)は複数層連続して積層した直後の状態を示し、(e)には両端のターン部を切断して完成された積層板を示している。
【図4】角パイプ状の積層体及びその製造工程を示しており、(a)は角パイプ状積層体の全体斜視図であり、(b)は積層工程を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0065】
1 ボビン
1A プリプレグシート
1B 剥離シート
2 基材
3 基材保持部
10 ボビン装着部
20 剥離シート巻取部
30 送りローラ部
40 圧接ガイドローラ部
50 反転手段
60 昇降手段
P 積層板
PA 角パイプ状積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維に熱硬化性樹脂を予め含浸したプリプレグシートを複数層積層してFRP積層体を製造するプリプレグシート積層装置であって、
前記プリプレグシートを基材の上に積層する際に、前記プリプレグシートまたは前記基材のいずれか一方を、所定の押圧力を付加しながら予め定められる回数往復移動することで所定の層数連続的に積層することを特徴とするプリプレグシートの自動積層装置。
【請求項2】
プリプレグシートと剥離シートとを合わせて巻回したボビンを回転自在に支持するボビン装着部と、前記ボビンから前記プリプレグシートを引き出す際に前記剥離シートを分離して巻き取る剥離シート巻取部と、引き出されたプリプレグシートをガイドしながら送り出す送りローラ部と、所定の押圧力にて基材に圧接される圧接ローラとを有するプリプレグシート供給部を備え、さらに、前記基材を保持すると共に水平方向に往復移動可能な基材保持部と、移動する前記基材保持部を停止してターンする反転手段と、該基材保持部が載置されるテーブルを備えていることを特徴とする請求項1に記載のプリプレグシートの自動積層装置。
【請求項3】
前記圧接ローラを備える圧接ガイドローラ部を前記送りローラ部の最下部に配設して、前記圧接ガイドローラ部と前記送りローラ部とを一体的に上下動させる昇降手段を備えると共に、前記圧接ローラをスプリング部材を介して上下動自在に弾性支持していることを特徴とする請求項2に記載のプリプレグシートの自動積層装置。
【請求項4】
前記圧接ローラを、回転自在に軸支されるアーム部材の一端側の先端部に装着し、他端側にセンサードッグ部を設けて、前記アーム部材をブッシュ等の回転補助具とトーションバネを介してプレート本体に軸支すると共に、前記プレート本体に前記センサードッグを検知するセンサを設けたことを特徴とする請求項3に記載のプリプレグシートの自動積層装置。
【請求項5】
前記送りローラ部に少なくとも一対のニップローラを設け、該ニップローラを、ニップするシートを送り出す方向には回転するが逆方向には回転しないクラッチローラと、該クラッチローラに押圧されると共に回転自在な従動ローラとで構成したことを特徴とするプリプレグシートの自動積層装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−218720(P2006−218720A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33984(P2005−33984)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】