説明

プリント配線板、プリント配線板モジュール、光通信モジュール、光通信装置、および演算処理装置

【課題】信号導体のある層とGNDプレーン層との位置がずれた場合であっても、インピーダンスの予期せぬ低下を抑制するプリント配線板を提供する。
【解決手段】リジット基板2と電気的に接続している加熱端子11c、加熱端子11cより幅の狭い配線部11b、及び加熱端子11cと配線部11bとに接続し幅が徐々に変化する接続部11aからなる信号導体11と、配線部11bが形成された層とは別の層であって、GND導体15が形成されているとともに、接続部11a及び加熱端子11cに対応する部分のGND導体15がくり抜かれたくり抜き17を有するGNDプレーン層とを備え、接続部11aと配線部11bとの境界部分から、GND導体15への水平方向の距離は、GNDプレーン層と信号導体11との間の誘電体の厚み以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プリント配線板、プリント配線板モジュール、光通信モジュール、光通信装置、および演算処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話及び光送受信モジュール等小型筐体内に複数のプリント配線板(以下「基板」)が設置され当該複数の基板間を跨いで信号を伝送させる場合に、基板と基板とを直接接続する手段が多く用いられている。特にフレキシブル回路基板(Flexible Printed Circuit Board、以下「FPC基板」)は、相対的な向きが変わる2枚のリジット基板の間を接続する携帯電話等、及び基板とモジュールとの間で信号を高速伝送する通信系のアプリケーション等にてよく使用される。
【0003】
前者の携帯電話等では、2枚の基板の信号配線、電源及びGND間の接続機構としてコネクタが用いられている。
後者の光送受信モジュール等において、年々信号速度が向上して数Gbpsに達することも珍しくなく、信号波形に含まれる周波数成分も10GHzを超える。今後も、速度の継続的な向上が予想されている。
【0004】
このような高速化に対応するために、後者の光送受信モジュール等では、双方の信号配線、電源及びGND間を基板上に設けたパッド(端子)を直接接触することで又はハンダ付けなどで接続することで電気的導通を得る手法が用いられている。
【0005】
基板と基板との接続部分において、信号導体の寸法及びGND導体に対する位置関係が不連続となり、その結果、信号配線のインピーダンスが不連続となる場合がある。このようなインピーダンスの不連続は、信号波形の劣化の要因となる。このため、接続部分において、信号伝送路のインピーダンスをできるだけ整合させるための各種手法がとられている。FPC基板はリジット基板に比べて導体層間厚みが薄く、配線幅が細くなり、結果、配線導体と接続部導体との寸法差がリジット基板より大きくなり、問題は深刻である。
【0006】
このため、2つの基板の信号導体及びGND導体を直接ハンダ付けして接続する方式において、双方の基板の信号配線用端子、GND用端子及び周辺の導体レイアウトを最適化することで、接続部でのインピーダンス不整合を緩和する手法が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−123744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の手法では信号導体のテーパーが始まる位置とGND導体の境界とが重なっており、各基板の積層時において信号導体がある層とGNDプレーン層との位置がずれた場合に、GND導体が信号導体のテーパー状部分に重なりインピーダンスが予期せず低下するという課題があった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、信号導体のある層とGNDプレーン層との位置がずれた場合であっても、GND導体が信号導体のテーパー状部分に重ならず、それによりインピーダンスの予期せぬ低下を抑制するプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るプリント配線板は、他のプリント配線板と電気的に接続している端子部、端子部より幅の狭い信号配線部、及び端子部と信号配線部とに接続し幅が徐々に変化する接続部からなる信号導体と、信号配線部が形成された層とは別の層であって、GND導体が形成されているとともに、接続部及び端子部に対応する部分のGND導体がくり抜かれたくり抜き部を有するGNDプレーン層とを備え、接続部と信号配線部との境界部分から、GND導体への水平方向の距離は、GNDプレーン層と信号導体との間の誘電体の厚み以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、接続部と信号配線部との境界部分から、GND導体への水平方向の距離が一定以上離れているために、信号導体のある層とGNDプレーン層との位置がずれた場合であっても、GND導体が信号導体のテーパー状部分に重ならず、それによりインピーダンスの予期せぬ低下を抑制するプリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態1に係るFPC基板の平面図である。
【図2】図1に示すFPC基板の表面及び裏面の構成を示す図である。
【図3】図1及び図4のIII−III’切断面における断面図である。
【図4】図3に示すリジット基板の平面図である。
【図5】図1に示すFPC基板における接続部と配線部との境界部付近の拡大図である。
【図6】実施の形態1に係るFPC基板の平面図である。
【図7】実施の形態2に係るFPC基板の平面図である。
【図8】図7に示すFPC基板の表面及び裏面の構成を示す図である。
【図9】図7及び図10のIX−IX’切断面における断面図である。
【図10】図9に示すリジット基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係るFPC基板1の平面図である。図2は図1に記載されたFPC基板1を表面の構成及び裏面の構成に分けて示した図である。図3は図1及び図4のIII−III’切断面における断面図である。図4は図3に記載されたリジット基板2の平面図である。
実施の形態1では、差動信号用のペア配線の場合を例に説明する。
【0013】
図1−4において、1はFPC基板(プリント配線板、第1のプリント配線板、第2のプリント配線板)、2はリジット基板(他のプリント配線板、第2のプリント配線板、第1のプリント配線板)、3はリジット基板2とFPC基板1とを電気的に接続するハンダである。図を分かりやすくするためにハンダ3の厚さは実際より厚く表示している。以下ハンダを用いて説明するが、リジット基板2とFPC基板1との間の電気的接続は、ハンダに限らず例えば導電性接着剤等を用いてもよい。あるいは、ハンダや導電性接着剤等を用いず、接触させてもよい。
【0014】
11はFPC基板の表面の信号導体、11aはテーパー状の接続部、11bは所定のインピーダンスを持つ配線部(信号配線部)、11cは加熱端子(端子部)、12はFPC基板の裏面の信号導体、13はFPC基板の裏面の信号端子(接続端子、第1の接続端子、第2の接続端子)、14はFPC基板の表面の加熱端子であるGND導体、15は、一部がくり抜かれてGNDプレーン層に形成されたFPC基板の裏面のGND導体、16はFPC基板の裏面のGND端子(接続端子、第1の接続端子、第2の接続端子)、17はFPC基板裏面のGND導体のくり抜き、18はFPC基板の表面と裏面の導体を接続するViaである。
なお、ここで述べるGND導体、GNDプレーン及びGND端子などにおける“GND”とは、電気回路としてのGND及び電源の双方を含むものとする(以下同様)。
【0015】
21はリジット基板の表面の信号導体、23はリジット基板の表面の信号端子(第2の接続端子、第1の接続端子)、24はリジット基板の表面のGND導体、25はリジット基板の裏面のGND導体、26はリジット基板の表面のGND端子(第2の接続端子、第1の接続端子)、28はリジット基板の表面と裏面の導体を接続するスルーホール、29はくり抜き領域である。
【0016】
FPC基板1は両面に導体がある両面基板である。
一般的にはFPC基板の表裏表面には保護膜があるが、本図では省略した。この保護膜は、裏面では信号端子13及びGND端子16の部分が開口しており、当該開口部分にハンダが塗られている。
【0017】
また、FPC基板1とリジット基板2とのハンダ付け時にFPC基板1の表面からVia18を介して信号端子13と信号端子23との間のハンダ3に熱を加えるため、信号端子13及び信号端子23とおおよそ同一領域の保護膜も開口している。
【0018】
FPC基板1の片面を、GND導体15が設けられたGNDプレーン層とし、反対面を、信号配線(信号導体11)が設けられた層とするマイクロストリップ構造としたことでFPC基板1において配線部11bのインピーダンスを安定させることができるという効果がある。
【0019】
信号配線(配線部11b)の左右にさらに後述のGND配線30を設け、当該GND配線30と反対面のGND導体15とを短い間隔で複数のVia18によって接続する構成としてもよい。そうすることで、FPC基板1において配線部11bのインピーダンスをより安定させることができるという効果がある。
【0020】
また、FPC基板1におけるリジット基板2と対向する面に信号導体11を設けてもよい。
【0021】
図2(a)はFPC基板1の表面の構成を、また図2(b)はFPC基板1の裏面の構成をそれぞれ示す図である。
図2(a)に示すように、接続部11aは、相対的に幅の狭い配線部11bと幅の広い加熱端子11cとの間に配置され、配線部11bと同じ幅を有する配線部11b側端部から、加熱端子11cと同じ幅を有する加熱端子11c側端部まで直線的に幅が変化するテーパーを備える。
接続部11aの幅の変化は、直線的なテーパーに限らず、徐々に変化するその他の形状でもよい。
【0022】
一般的に両面FPC基板は表裏の導体間の誘電体の厚みが薄いため、所望の配線インピーダンスを実現するには信号用配線(配線部11b)の幅を細くする必要があり、通常リジット基板の配線幅の半分程度またはそれ以下になる。一方で、ハンダ付けの容易性と接続時の歪みによる断線防止のため、ハンダ付けする端子(信号端子13)の大きさはリジット基板側端子(信号端子23)の大きさとほぼ同様となる。
【0023】
その為にマイクロストリップ構造のままでは信号端子13の幅は配線部11bの幅に比べて非常に大きくなりインピーダンスの低下を招く。
【0024】
上記構成の接続部11aを備えることによって、信号導体11のインピーダンスの急激な変化を回避しつつ、テーパー状の接続部11a及び加熱端子11cでのインピーダンスを配線部11bのインピーダンスに近づけることができるという効果がある。
【0025】
図5は、FPC基板1の接続部11aと配線部11bとの境界付近の拡大図である。
実施の形態1のFPC基板1では、接続部11aと配線部11bとの境界部分から、GND導体15への水平方向の距離は、GND導体15(GNDプレーン層)と信号導体11との間の誘電体の厚み以上としている。
【0026】
より具体的には、図5に示すように、GND導体15とくり抜き17との境界は、配線部11bと垂直に重なる垂直部と、当該垂直部に連なる傾斜部とを備え、接続部11aと配線部11bとの境界部分(図5にてXで示す点)から、上記垂直部と上記傾斜部との接点(図5にてYで示す点)への水平方向における配線部11bと平行の方向の距離及び配線部11bと垂直の方向の距離は、共にGND導体15(GNDプレーン層)と信号導体11との間の誘電体の厚み以上である。
【0027】
即ち、GND導体15に水平な平面のうち配線部11bと平行の方向をΔx、配線部11bと垂直の方向をΔyとすると、Δx及びΔyは以下の数式(1)及び(2)を満たす。
Δx≧t・・・(1)
Δy≧t・・・(2)
但し、tは、FPC基板1の表面の導体(信号導体11)と裏面の導体(GND導体15)との間の誘電体の厚さである。
GND導体15とくり抜き17との境界の傾斜部は、接続部11aのテーパーより大きなテーパーの直線である。そのため、接続部11aとGND導体15との水平方向の距離は、接続部11aの配線部11b側端部から加熱端子11c側端部へ向かうに従い大きくなる。
傾斜部の形状及び接続部11aのテーパー部分の形状は、接続部11aの配線部11b側端部から加熱端子11c側端部へ向かうに従い距離が離れる形状であれば、直線に限らず、どのような形状であってもよい。例えば円弧形状であってもよい。
【0028】
以上の構造とすることで、FPC基板1の製造時に、表面導体(信号導体11)と裏面導体(GND導体15)の位置がずれ、配線部11bより太い接続部11aの下にGND導体15が重なり局所的に低インピーダンスとなることを防ぐことができる。
積層にて基板を製造する場合に、熱膨張等種々の原因から積層位置がずれる(積層ずれ)。積層ずれの大きさの最大値は、配線部11bと平行の方向及び配線部11bと垂直の方向共に概ね上記tとなる。その為、Δx及びΔyの値をt以上とすることによって、積層ずれの影響を適切に緩和し、インピーダンスの予期せぬ低下を抑制することができるという効果がある。
【0029】
なお、本実施の形態ではFPC基板1にテーパー形状を設けたが、リジット基板2にテーパー形状を設けた場合でも、同様に適用可能である。
【0030】
また、本実施の形態では両面基板を用いて説明したが、GNDプレーン層が複数ある3層以上の多層基板であっても構わない。
【0031】
さらに、本実施の形態では、信号導体11が差動信号用ペア配線である例を用いて説明したが、シングルエンドの配線でも構わない。また、信号導体11が差動信号用ペア配線及びシングルエンドの配線の両方を含んでもよい。以上の場合、差動信号用ペア配線、シングルエンドの配線、又はその両方が複数であってもよい。
【0032】
信号導体11の左右に配置されたGND配線30を備え、当該GND配線30及びGND導体15を接続するVia18を短い間隔で更に備えた構造(ガードGND付き構造)としてもよい。そうすることで、配線部11bのインピーダンスを安定させることができる。
図6は、1つのシングルエンド配線と1つの差動信号用ペア配線から構成され、また、上記GND配線30を更に備えた場合を示す図である。
信号導体11を複数備える場合、それらの複数の信号導体11間の少なくとも一部、及び両端の信号導体11の外側に、Via18を介してGND導体15と接続された複数のGND配線30を設けてもよい。上記複数の信号導体11間のGND配線30は、好適には信号が異なる信号導体11の間にのみ設ける。
くり抜き17は、複数の信号導体11のうち一部の信号導体毎に設けられていてもよい。例えば、速度の速い信号用の信号導体11にはくり抜き17を設け、速度の遅い信号用の信号導体11にはくり抜き17を設けない構成としてもよい。
【0033】
以上より、実施の形態1に係るFPC基板1は、リジット基板2と電気的に接続している加熱端子11c、加熱端子11cより幅の狭い配線部11b、及び加熱端子11cと配線部11bとに接続し幅が徐々に変化する接続部11aからなる信号導体11と、配線部11bが形成された層とは別の層であって、GND導体15が形成されているとともに、接続部11a及び加熱端子11cに対応する部分のGND導体15がくり抜かれたくり抜き17を有するGNDプレーン層とを備え、接続部11aと配線部11bとの境界部分から、GND導体15への水平方向の距離は、GNDプレーン層と信号導体11との間の誘電体の厚み以上となるように構成した。このため、接続部11aと配線部11bとの境界部分からGND導体15への水平方向の距離が一定以上離れているために、信号導体11のある層とGNDプレーン層との位置がずれた場合であってもGND導体15が信号導体11のテーパー状部分(接続部11a)に重ならず、それによりインピーダンスの予期せぬ低下を抑制するFPC基板1を提供することができる。
【0034】
また、実施の形態1によれば、GND導体15とくり抜き17との境界は、配線部11bと垂直に重なる垂直部と、当該垂直部に連なる傾斜部とを備え、接続部11aと配線部11bとの境界部分から垂直部と傾斜部との接点への水平方向における配線部11bと平行の方向の距離及び配線部11bと垂直の方向の距離は、共にGNDプレーン層と信号導体11との間の誘電体の厚み以上であるように構成したので、接続部11aと配線部11bとの境界部分からGND導体15への水平方向の距離が一定以上離れているために、信号導体11のある層とGNDプレーン層との位置がずれた場合であってもGND導体15が信号導体11のテーパー状部分(接続部11a)に重ならず、それによりインピーダンスの予期せぬ低下を抑制するFPC基板1を提供することができる。
【0035】
また、実施の形態1によれば、信号導体11は、1本のシングルエンド信号用導体から構成したので、一般的なシングルエンド信号用導体を用いたプリント配線板に応用することができる。
【0036】
また、実施の形態1によれば、信号導体11は、2本の差動信号用導体から構成したので、差動信号用導体を用いたプリント配線板に応用することができる。
【0037】
また、実施の形態1によれば、信号導体11を複数設け、複数の信号導体11間の少なくとも一部、及び両端の信号導体11の外側に配置され、GND導体15に電気的に接続された複数のGND配線30を備え、くり抜き17は、複数の信号導体11のうち一部の信号導体毎に設けられているように構成したので、信号導体11を複数備える場合であってもインピーダンスを安定させることができる。
【0038】
実施の形態2.
図7−10を用いてこの発明の実施の形態2について説明する。これらの図において図1−6を用いて説明した構成と同様又は対応する構成については同一の要素番号を付し重複する説明は省略した。
【0039】
図7はこの発明の実施の形態2に係るFPC基板1の平面図である。図8は図7に記載されたFPC基板1を表面の構成及び裏面の構成に分けて示した図である。図9は図7及び図10のIX−IX’切断面における断面図である。図10はリジット基板2の平面図である。
【0040】
図7−10にて、33はFPC基板の裏面の信号端子(接続端子、第1の接続端子、第2の接続端子)、36はFPC基板の裏面のGND端子(接続端子、第1の接続端子、第2の接続端子)である。
【0041】
図7−10で示すように、実施の形態2の信号端子33は、リジット基板2の表面の信号端子23より小さい。また、GND端子36は、リジット基板2の表面のGND端子26より小さい。
【0042】
より具体的には、図7に示すように、信号端子33及びGND端子36は、信号端子23及びGND端子26の外形寸法と比べ、4辺のいずれもt(FPC基板1の信号導体11とGND導体15との間の誘電体の厚さ)以上小さい。
なお、図7における上下方向の2辺のみをt以上小さくしてもよい。
【0043】
従来、ハンダ付けの位置、特に端子が並んでいる方向のハンダ付けの位置がずれると、FPC基板の信号端子とリジット基板のGND端子との間、及びFPC基板のGND端子とリジット基板の信号端子との間がそれぞれ近づき、もともと低インピーダンスになりやすい端子部でのインピーダンスがさらに低くなるという課題があった。
【0044】
以上の構造とすることで、FPC基板1をリジット基板2にハンダ付けした時に位置ずれが生じても、FPC基板1の信号端子33及びGND端子36がリジット基板2の信号端子23及びGND端子26からはみ出さない。
【0045】
これにより、FPC基板1の信号端子33とリジット基板2のGND端子26との距離、及びFPC基板1のGND端子36とリジット基板2の信号端子23との距離が近づくことによって寄生容量が生じ、局所的に低インピーダンスとなることを防ぐことができるという効果がある。
上述の通り、積層にて基板を製造する場合の積層ずれの大きさの最大値は、配線部11bと平行の方向及び配線部11bと垂直の方向共に概ね上記tとなる。その為、信号端子33及びGND端子36における信号端子33及びGND端子36が並んでいる方向(即ち、配線部11bと垂直の方向)の外形寸法を信号端子23及びGND端子26における同一方向の外形寸法よりもt以上小さくすることによって、積層ずれの影響を適切に緩和し、インピーダンスの予期せぬ低下を抑制することができるという効果がある。
【0046】
なお、本実施の形態は、FPC基板1の端子(信号端子33及びGND端子36)をリジット基板2の端子(信号端子23及びGND端子26)より小さくする例を用いて説明したが、逆であっても(即ち、信号端子23及びGND端子26を信号端子33及びGND端子36より小さくしても)同様の効果を得ることができる。
【0047】
また、本実施の形態2では両面基板を用いて説明したが、GNDプレーン層が複数ある3層以上の多層基板にも適用可能である。
【0048】
さらに、本実施の形態2では、信号導体11が差動信号用ペア配線である例を用いて説明したが、シングルエンドの配線でも構わない。また、信号導体11が差動信号用ペア配線及びシングルエンドの配線の両方を含んでもよい。以上の場合で、差動信号用ペア配線、シングルエンドの配線、又はその両方が複数であってもよい。
【0049】
また、FPC基板1、リジット基板2又はその両方が上記実施の形態1で説明した構成を備えてもよい。
【0050】
以上より、実施の形態2に係るプリント配線板モジュールは、加熱端子11c、加熱端子11cより幅の狭い配線部11b、及び加熱端子11cと配線部11bとに接続し幅が徐々に変化する接続部11aからなる信号導体11と、信号導体11が形成された層とは別の層に形成されたGND導体15と、信号導体11又はGND導体15に電気的に接続した第1の接続端子(信号端子33,23、GND端子36,26)とが設けられた第1のプリント配線板(FPC基板1、リジット基板2)と、第1の接続端子と(ハンダ等により)電気的に接続された第2の接続端子(信号端子23,33、GND端子26,36)が設けられた第2のプリント配線板(リジット基板2、FPC基板1)とを備え、第1の接続端子における当該第1の接続端子が並んでいる方向の外形寸法と第2の接続端子における当該方向の外形寸法との差分の絶対値は、信号導体11とGND導体15との間の誘電体の厚み以上となるように構成した。このため、ハンダ付けの位置、特に第1の接続端子が並んでいる方向のハンダ付けの位置がずれた場合でも、FPC基板1の信号端子33とリジット基板2のGND端子26、およびFPC基板1のGND端子36とリジット基板2の信号端子23がそれぞれ近づくことがなく、それによりインピーダンスの予期せぬ低下を抑制するプリント配線モジュールを提供することができる。
【0051】
また、実施の形態2によれば、FPC基板1、リジット基板2又はその両方は、更に上記実施の形態1で説明した構成としたので、GND導体15が信号導体11のテーパー状部分(接続部11a)に重ならず、それによりインピーダンスの予期せぬ低下を抑制することができる。
【0052】
上記実施の形態1又は実施の形態2で説明したプリント配線板(FPC基板1)、又はプリント配線板モジュール(FPC基板1及びリジット基板2)は、光通信モジュールに適用可能である。
上記光通信モジュールは、光通信装置に適用可能である。
【0053】
実施の形態1又は実施の形態2で説明したプリント配線板又はプリント配線板モジュールは、演算処理装置に適用可能である。
【0054】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 FPC基板(プリント配線板、第1のプリント配線板、第2のプリント配線板)、2 リジット基板(他のプリント配線板、第2のプリント配線板、第1のプリント配線板)、3 ハンダ、11 信号導体、11a 接続部、11b 配線部(信号配線部)、11c 加熱端子(端子部)、12 信号導体、13,33 信号端子(接続端子、第1の接続端子、第2の接続端子)、14 GND導体、15 GND導体、16,36 GND端子(接続端子、第1の接続端子、第2の接続端子)、17 くり抜き、18 Via、21 信号導体、23 信号端子(第2の接続端子、第1の接続端子)、24 GND導体、25 GND導体、26 GND端子(第2の接続端子、第1の接続端子)、28 スルーホール、29 くり抜き領域、30 GND配線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他のプリント配線板と電気的に接続している端子部、前記端子部より幅の狭い信号配線部、及び前記端子部と前記信号配線部とに接続し幅が徐々に変化する接続部からなる信号導体と、
前記信号配線部が形成された層とは別の層であって、GND導体が形成されているとともに、前記接続部及び前記端子部に対応する部分のGND導体がくり抜かれたくり抜き部を有するGNDプレーン層とを備え、
前記接続部と前記信号配線部との境界部分から、前記GND導体への水平方向の距離は、前記GNDプレーン層と前記信号導体との間の誘電体の厚み以上である
ことを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
前記GND導体と前記くり抜かれた部分との境界は、前記信号配線部と垂直に重なる垂直部と、当該垂直部に連なる傾斜部とを備え、
前記接続部と前記信号配線部との境界部分から前記垂直部と前記傾斜部との接点への水平方向における前記信号配線部と平行の方向の距離及び前記信号配線部と垂直の方向の距離は、共に前記GNDプレーン層と前記信号導体との間の誘電体の厚み以上であることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記信号導体は、1本のシングルエンド信号用導体から構成されていることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板。
【請求項4】
前記信号導体は、2本の差動信号用導体から構成されていることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板。
【請求項5】
前記信号導体を複数設け、
前記複数の信号導体間の少なくとも一部、及び両端の信号導体の外側に配置され、前記GND導体に電気的に接続された複数のGND配線を備え、
前記くり抜き部は、前記複数の信号導体のうち一部の信号導体毎に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載のプリント配線板。
【請求項6】
リジット構造であることを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載のプリント配線板。
【請求項7】
フレキシブル構造であることを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載のプリント配線板。
【請求項8】
端子部、前記端子部より幅の狭い信号配線部、及び前記端子部と前記信号配線部とに接続し幅が徐々に変化する接続部からなる信号導体と、前記信号導体が形成された層とは別の層に形成されたGND導体と、前記信号導体又は前記GND導体に電気的に接続した第1の接続端子とが設けられた第1のプリント配線板と、
前記第1の接続端子と電気的に接続された第2の接続端子が設けられた第2のプリント配線板とを備え、
前記第1の接続端子における当該第1の接続端子が並んでいる方向の外形寸法と前記第2の接続端子における前記方向の外形寸法との差分の絶対値は、前記信号導体と前記GND導体との間の誘電体の厚み以上であることを特徴とするプリント配線板モジュール。
【請求項9】
前記第1のプリント配線板は、更に、請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載のプリント配線板の構造を備えたことを特徴とする請求項8記載のプリント配線板モジュール。
【請求項10】
請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載のプリント配線板を備えたことを特徴とする光通信モジュール。
【請求項11】
請求項8又は請求項9記載のプリント配線板モジュールを備えたことを特徴とする光通信モジュール。
【請求項12】
請求項10又は請求項11記載の光通信モジュールを備えたことを特徴とする光通信装置。
【請求項13】
請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載のプリント配線板を備えたことを特徴とする演算処理装置。
【請求項14】
請求項8又は請求項9記載のプリント配線板モジュールを備えたことを特徴とする演算処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−26601(P2013−26601A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163181(P2011−163181)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】