説明

プリント電子部品のための機能性材料

本発明は、オキシマートのクラスから少なくとも1個の配位子を含み、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を含まない有機金属亜鉛錯体を含む、電子部品のための印刷可能な前駆体、および調整方法に関する。本発明は、さらに、対応するプリント電子部品、好ましくは、電界効果トランジスタに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品のための亜鉛錯体含有前駆体、および調整方法に関する。本発明は、さらに、対応するプリント電子部品、および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大量適用(例えば、個装でのRFID(=無線ICタグ)チップ)におけるプリント・エレクトロニクスの使用のため、確立された大量印刷工程の使用が望まれる。一般的に、プリント電子部品およびシステムは、導体、例えば接点用、半導体、例えば活性材料として、絶縁体、例えば障壁層として、などの複数の材料部分からなる。
【0003】
製造方法は、通常、蒸着段階、すなわち、特定の材料の支持材料(基板)への適用、および材料の望ましい特性を確保する後続工程段階からなる。大量対応、例えば、ロールトゥロール加工に関しては、フレキシブル基板(フィルム)の使用が望ましい。プリント回路製造のための以前の工程は、本質的に利点を有するが、欠点も有している。
【0004】
従来技術(WO 2004086289参照):ここで、従来のSiロジック部品および追加の構造化部品またはプリント部品のハイブリッド(例えばRFIDチップの場合金属アンテナ)は、高コストで組み立てられる。しかしながら、この工程は、実際の量産適用には、複雑すぎるとされる。
【0005】
有機材料(DE 19851703、WO 2004063806、WO 2002015264参照):これらのシステムは、液相からのポリマーに基づいた、プリント電子部品を含む。これらのシステムは、上記に言及した材料(従来技術)と比較して、単純工程により、溶液と区別される。ここで考慮される唯一の工程段階は、溶液の乾燥である。しかしながら、例えば、半導体材料および導電材料の場合における達成可能な性能は、いわゆるホッピング機構による、材料の代表的な特性の限定、例えば、電荷キャリア移動度<10cm/Vsなどにより制限される。この制限は、潜在的な適用に影響を及ぼす:プリント・トランジスタの性能は、半導体チャンネルの減少サイズとともに上昇し、この半導体チャンネルは、現在、大量工程により約40μmより小さく印刷することができない。技術のさらなる制限は、周囲条件に対する有機材料の感受性である。これは、製造中の複雑な手順、およびおそらくプリント部品のより短い寿命を生じさせる。
【0006】
無機材料:異なる固有特性により(例えば、結晶中における電荷キャリア移動)、このクラスの材料は、一般的に、プリント・エレクトロニクスにおいて使用される有機材料と比較して、さらなる性能の可能性を有する。
この領域において、2つの異なった手法が原則的に使用される:
【0007】
i)追加の工程段階なく、気相から調整:この場合、高電荷キャリア移動度の、非常に良好な配向の薄層を製造することが可能であるが、大量市場においては、高コストの真空技術および緩慢な層形成により適用が限られる。
【0008】
ii)前駆体材料から出発した湿式化学調整であって、材料は液相から適用され、例えば、スピンコーティングまたは印刷である(US 6867081、US 6867422、US 2005/0009225参照)。いくつかの場合、無機材料および有機マトリックスの混合物もまた、使用される(US 2006/0014365参照)。
【0009】
製造される層の継続的な電気的特性を確保するため、有機溶媒の蒸発を超える工程段階が、一般的に必要である。全ての場合において、湿式相からの前駆体がさらに所望の活性材料に変換される、合体領域を有する形態を製造することが必要である。所望の機能性は、このように製造される(半導体の場合、高電荷キャリア移動度)。したがって、加工は、>300℃の温度で行われるが、これは、フィルムコーティングのためのこの処理の使用を妨害する。
【0010】
前駆体材料の使用例は、Inorganica Chimica Acta 358(2005) 201-206に記載されている。ここで、亜鉛ケト酸オキシマートは、熱分解による酸化亜鉛調整のために用いられる。反応温度は、ケト酸オキシマート配位子の構造に依存する。低変換温度(約120℃)が、ナノスケールの酸化亜鉛粒子を調整するために用いられる。対照的に、高い分解温度(>250℃)では、気相工程(CVD)における使用が可能である。合成は、アルカリ金属塩を使用して行われ、そのアルカリ金属イオンは、Zn錯体において、およびさらに生成されるZnOにおいて、残基として電気的特性上の負の効果を有し得る。
【0011】
可溶性ZnO前駆体材料のさらなる使用例は、WO 2006138071に記載されている。ここで言及するZnO前駆体は、酢酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトネート、ギ酸亜鉛、水酸化亜鉛、塩化亜鉛、および硝酸亜鉛である。調整される材料の比較的高い分解温度(>200℃)、および昇華傾向は、この処理において不利な効果を有する。さらに、変換中の結晶形成は、基板上の膜形成を減少させ、したがって、基板への材料の接着および表面の均質性を減少させる。
【0012】
EP 1324398には、半導体特性を有する金属酸化物含有薄膜製造方法が記載され、同方法は、酸素および溶媒を含む有機金属亜鉛溶液(例えば、酢酸亜鉛など)の基板への接着のための少なくとも一段階、および熱処理による有機金属溶液の、少なくとも一分解段階からなる。WO 2006138071と同一の欠点がまた、この工程において生じる。
【0013】
これらの、プリント回路の従来方法は、大量生産におけるその適用性において、大量印刷適用に制限されている。
【発明の概要】
【0014】
したがって、本発明の目的は、無機材料を提供することであって、該無機材料の電気的特性は、一方で材料組成により、および他方でプリント材料の調整方法により、調節することが可能である。このため、狙いは無機材料の利点を保持する材料システムを開発することである。プリント工程により湿式相から材料を加工することが可能でなくてはならない。平面上における各場合における所望の材料の電子的性能、およびフレキシブル基板は、エネルギーの低入力のみを必要とする工程段階を使用して、製造されなければならない。
【0015】
驚くべきことに、本発明において方法が開発され、該方法において、新規の有機金属前駆体材料が調整され、表面に適用され、および続いて、低温において電気的に活性な、すなわち、導電性、半導体性および/または絶縁性の材料に変換される。ここで製造される層は、印刷工程に有利な表面特性によって区別される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、ガラス基板上でのディップコーティングによる、メトキシエタノール中のビス[2−(メトキシイミノ)プロパノエート]亜鉛を含み、X線光電子分光法(XPS)による種々の反応時間を使用して、150℃において処理された、本発明に記載の被膜の分析を示す。
【図2】図2は、石英基板上でのスピンコーティングによる、メトキシエタノール中のビス[2−(メトキシイミノ)プロパノエート]亜鉛を含み、150℃において処理された、本発明に記載の、被膜のX線回折パターン(回折角2シータに対してプロットされた強度)を示す。
【図3】図3は、本発明に記載の、薄膜フィルム電界効果トランジスタの構造の図表示を示す。
【図4】図4は、本発明に記載の、亜鉛オキシマート前駆体を含む、半導体層を備えた薄膜トランジスタ(TFT)のドレイン−ソース電圧変化における、ゲート−ソース電圧変化に対する出発特性線電界を示す。
【0017】
したがって、本発明は、電子部品を被覆するための前駆体に関し、オキシマートのクラスから少なくとも1個の配位子を含み、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を含まない有機金属亜鉛錯体を含むことを特徴とする。
【0018】
用語「アルカリ金属およびアルカリ土類金属を含まない」は、調整された亜鉛錯体における、アルカリ金属またはアルカリ土類金属含有量が、0.2重量%未満であることを意味する。
【0019】
アルカリ金属を含まない出発化合物の調整は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を含む残渣が電気的特性上の負の効果を有するため、電子部品における使用には極めて重要である。これらの元素は、結晶中において外来原子の役目を務め、電荷キャリア特性に好ましくない影響を及ぼす。
【0020】
好ましい態様において、前駆体は印刷可能であり、プリント電界効果トランジスタ(FET)、好ましくは、薄膜トランジスタ(TFT)を被覆するための印刷用インク、または印刷用ペーストの形態である。
【0021】
用語「印刷可能な前駆体」は、その材料特性により、印刷工程による湿式相から処理されることを可能とする前駆体材料を意味すると理解される。
【0022】
用語「電界効果トランジスタ(FET)」は、二極性トランジスタとは対照的に、1種類の荷電のみが電流輸送に関与する単極性トランジスタ(設計に依存して、電子またはホール、あるいは電子欠陥)のグループを意味すると理解される。FETの最も広く知られたタイプは、MOSFET(金属酸化物半導体FET)である。
FETは3つの接続部がある:
・ソース
・ゲート
・ドレイン。
【0023】
MOSFETにおいて、4番目の接続バルク(基板)も存在する。これは既に独立したトランジスタにおいて、ソース接続部に内部で接続されていて、別々に配線されていない。
本発明によれば、用語「FET」は、一般的に次のタイプの電界効果トランジスタを包含する:
・接合型電界効果トランジスタ(JFET)
・ショットキー電界効果トランジスタ(MESFET)
・金属酸化膜半導体FET(MOSFET)
・高電子移動度トランジスタ(HEMT)
・イオン感応性電界効果トランジスタ(ISFET)
・薄膜トランジスタ(TFT)。
【0024】
本発明によれば、TFTが好ましく、該TFTにより、大面積電子回路が製造可能である。
【0025】
既に上記に記載した通り、前駆体は、有機金属亜鉛錯体として、オキシマートのクラスから、少なくとも1個の配位子を含む。本発明によれば、亜鉛錯体の配位子は、2−(メトキシイミノ)アルカノエート、2−(エトキシイミノ)アルカノエートまたは2−(ヒドロキシイミノ)アルカノエートであることが好ましい。
【0026】
本発明は、さらに、前駆体の調整方法に関し、少なくとも1種のオキソカルボン酸が、アルカリ金属を含まない塩基の存在下で、少なくとも1種のヒドロキシアミンまたはアルキルヒドロキシアミンと反応し、続いて、例えば硝酸亜鉛などの無機亜鉛塩が添加されることを特徴とする。
酸化亜鉛の薄層用に用いられる出発化合物は、本発明によれば、オキシマート配位子を含む亜鉛錯体である。配位子は、水溶液中の塩基の存在下で、ヒドロキシアミンまたはアルキルヒドロキシアミンと、アルファ−ケト酸またはオキソカルボン酸との縮合により合成される。前駆体または亜鉛錯体は、室温で、亜鉛塩、例えば、硝酸亜鉛の添加後に生じる。
【0027】
用いられるオキソカルボン酸は、このクラスの化合物の全てを代表する。しかしながら、好ましいのは、オキソ酢酸、オキソプロパン酸、またはオキソブタン酸の使用である。
【0028】
用いられるアルカリ金属を含まない塩基は、好ましくは、炭酸水素アルキルアンモニウム、炭酸アルキルアンモニウムまたは水酸化アルキルアンモニウムである。特に好ましいのは、水酸化テトラエチルアンモニウムまたは重炭酸テトラエチルアンモニウムである。これらの化合物および、そこから生じる副生成物は、水中で直ちに可溶である。したがって、それらは、一方で、水溶液中で前駆体調整のための反応を行うために適しており、他方で、生じる副生成物を、再結晶により、前駆体から容易に分離できる。
【0029】
本発明は、さらに、以下の薄層を有するプリント電子部品に関する:
・硬質またはフレキシブル導電基板、あるいは導電層を有する絶縁体基板(ゲート)
・絶縁体
・少なくとも1つの電極(ドレイン電極)
・少なくとも1つの、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を含まない、絶縁性および/または半導体性および/または導電性特性を有し、本発明による前駆体から得られる酸化亜鉛層。
【0030】
好ましい態様において、電子部品(図3参照)は、電界効果トランジスタ、またはSiO層を備えた、高n型ドープシリコンウエハからなる、薄膜トランジスタからなり、該ウエハに、接着プロモーターとして金電極が中間層に適用される。金電極は、チャンネル幅および長さの好ましい比を実現するために、インターデジタル構造を有している。
半導体酸化亜鉛層は、スピンコーティングにより基板に適用される。
【0031】
さらなる好ましい態様において、電子部品は、電界効果トランジスタまたは薄膜トランジスタからなり、該トランジスタのゲートは、設計に応じて、薄層または基板材料の形で、高n型ドープシリコンウエハ、高n型ドープシリコン薄層、導電性高分子、金属酸化物または金属からなる。設計に応じて、薄層は、配置において、半導体層または絶縁層の下(ボトムゲート)または上(トップゲート)に適用される場合があった。ゲートは、スピンコーティング、ディップコーティング、フレキソ印刷/グラビア印刷、インクジェット印刷、および気相または液相からの蒸着技術により、構造的または非構造的に適用される。
【0032】
さらなる好ましい態様において、電子部品は電界効果トランジスタまたは薄膜トランジスタからなり、該トランジスタのソースおよびドレイン電極は、各場合において薄層の形の、高n型ドープシリコン薄層、導電高分子、金属酸化物または金属からなる。設計に応じて、薄層は、配置において、半導体層または絶縁層の下(ボトムゲート)または上(トップゲート)に適用される場合があった。
電極は、フレキソ印刷/グラビア印刷、インクジェット印刷、および気相または液相からの蒸着技術により、構造的に適用される。
【0033】
さらなる好ましい態様において、電子部品は、電子部品は電界効果トランジスタまたは薄膜トランジスタからなり、該トランジスタの絶縁層は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、絶縁高分子または金属酸化物からなる。絶縁層は、スピンコーティング、ディップコーティング、フレキソ印刷/グラビア印刷、インクジェット印刷、および気相または液相からの蒸着技術により、構造的または非構造的に適用される。
【0034】
さらなる好ましい態様において、酸化亜鉛または表面は無孔であり、したがって閉鎖され、よって、好ましくは、さらに続く層へのなめらかな界面として作用する。
【0035】
酸化亜鉛層は、15nmから1μm、好ましくは30nmから750nmの厚さを有する。層厚さは、各場合において使用されるコーティング技術、およびそのパラメータに依存する。スピンコーティングの場合、これらは、例えば、回転速度および時間である。
【0036】
本発明によれば、スピンコーティングにより製造されるZnO層の電気的性能として、電荷キャリア移動度の値が、18ボルトのFETしきい電圧において、10−3cm/Vsより大きな値となる。実験が行われる再現可能な実験条件、すなわち、不活性条件下(酸素<5ppm、湿度<10ppm)が、これに関連して重要である。
本発明によれば、30Vより小さいFETしきい電圧が測定された。
【0037】
本発明によれば、基板は、ガラス、セラミック、金属またはプラスチック基板などの硬質基板、あるいはフレキシブル基板、特にプラスチックフィルムまたは金属ホイルであり得る。本発明によれば、フレキシブル基板(フィルムまたはホイル)が好ましい。
【0038】
本発明は、さらに、絶縁性および/または半導体性および/または導電性特性の酸化亜鉛層または表面を有する電子構造の製造方法に関し、
a)本発明による有機金属亜鉛錯体の前駆体溶液を、任意で1回または2回以上、積層する方法で、実現される電子構造に対応して、ディップコーティング、スピンコーティングまたはフレキソ印刷/グラビア印刷により、基板に適用する、
b)酸化亜鉛層または表面の形成を伴って、空気中または酸素雰囲気中で、適用された前駆体の焼成または乾燥をする、
c)適用された電子構造が、最終的に、絶縁層で密閉されることができ、接点を備え、完了する、
ことを特徴とする。
【0039】
この方法は、集積回路において、電子部品および個別部品の接点の両方を製造する。
本発明によれば、前駆体溶液の、ディップコーティング、スピンコーティング、およびインクジェット印刷またはフレキソ印刷/グラビア印刷などの方法による基板への適用は、当業者には既知であり(M.A. Aegerter, M. Menning; Sol-Gel Technologies for Glass Producers and Users, Kluwer Academic Publishers, Dordrecht, Netherlands, 2004参照)、本発明に従うと、インクジェット印刷またはフレキソ/グラビア印刷が好ましい。
【0040】
亜鉛錯体前駆体の、絶縁性、半導体性および/または導電性特性を有する機能性酸化亜鉛層への熱変換は、80℃以上の温度で行われる。温度は、好ましくは、150℃および200℃の間である。
【0041】
亜鉛錯体前駆体の、絶縁性、半導体性および/または導電性特性を有する機能性酸化亜鉛層への熱変換は、さらなる好ましい態様において、400nmより短い波長のUV光照射により行われる。波長は、好ましくは、150nmおよび380nmの間である。UV照射の利点は、それにより製造されるZnO層が、より低い表面粗さを有することである。表面粗さの増加は、それに続く薄層が均質に形成されず、したがって、電気的に機能しない(例えば、損傷誘電層による短絡)という、リスク増加を意味するであろう。
【0042】
最終的に、機能性酸化亜鉛層を、絶縁層で密閉することができる。部品は、接点を備え、伝統的方法で完了する。
【0043】
本発明は、さらに、本発明に記載の、電界効果トランジスタにおける、1または2以上の機能性層の製造のための有機金属亜鉛錯体または前駆体の使用に関する。
【0044】
以下の例は、本発明を説明することを目的とする。しかしながら、それらは、一切限定と見なされるべきではない。組成物において使用することのできる全ての化合物または成分は、既知であり、商業的に入手可能であるか、または既知の方法により合成することができる。
【0045】
例1:酸化亜鉛前駆体 ビス[2−(メトキシイミノ)プロパノエート]亜鉛の、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含まない調整物
重炭酸テトラメチルアンモニウム(22.94g、120mmol)を、水20ml中の2−オキソプロパン酸(=ピルビン酸)(5.28g、60mmol)およびメトキシルアミンヒドロクロリド(5.02g、60mmol)に、撹拌しながら少量ずつ加える。目で確認できるガスの発生が完了したところで、混合物をさらに2時間撹拌する。亜硝酸亜鉛六水和物(8.92g、30mmol)を続いて加え、4時間後、混合物を5℃まで冷却する。生じた白色沈殿物をろ過し、熱水から再結晶させる。収量5.5g(56.7%)。
【0046】
例2:半導体特性を有する(例1からの)酸化亜鉛前駆体からの未ドープ酸化亜鉛の調整
例1に従って調整された、ビス[2−(メトキシイミノ)プロパノエート]亜鉛を、ガラス製、セラミック製、PETなどのポリマー製の基板に、スピンコーティング(または、ディップコーティング、またはインクジェット印刷でもよい)により適用する。亜鉛錯体を、続いて、空気中で2時間、150℃の温度において加熱する(図1参照)。このようにして得た酸化亜鉛フィルムは、均一で、亀裂がなく、無孔の表面形態を示す。層は酸化亜鉛結晶からなり、その大きさは焼成温度に依存する。それらは半導体特性を有する。
【0047】
例3:UV曝露による、半導体特性を有する(例1からの)酸化亜鉛前駆体からの未ドープ酸化亜鉛の調整
例1に従って調整された、ビス[2−(メトキシイミノ)プロパノエート]亜鉛を、ガラス製、セラミック製、PETなどのポリマー製の基板に、スピンコーティング(または、ディップコーティング、またはインクジェット印刷でもよい)により適用する。亜鉛錯体を、続いて、空気中で、Feアークランプからの、1時間のUV光照射(照射強度 150mW/cmから200mW/cm)により、酸化亜鉛に変換する。このようにして得た酸化亜鉛被膜は、例2のように、均一で、亀裂がなく、無孔の表面形態を示し、さらに、極めて低い表面粗さを有する。層は酸化亜鉛結晶からなり、例2のような、同程度の半導体特性を有する。
【0048】
例4から6:種々の被覆方法
全ての場合において、2−メトキシエタノール中で、ビス[2−(メトキシイミノ)プロパノエート]亜鉛の10重量%溶液が使用される。
ディップコーティング:引上げ速度 約1mm/秒。用いられる基板は、76×26mmガラスプレートである。
スピンコーティング:スピンコーティングには、溶液150μlが基板に適用される。使用される基板は、20×20mm石英または15×15mmシリコン(FET製造用金電極を備えた)である。継続時間および速度に選択されるパラメータは、予備速度の1500rpmにおいて10秒、および最終速度の2500rpmにおいて20秒である。
インクジェット印刷:Dimatrix DMP 2811プリンターにより行われる。
【0049】
図の索引
本発明は、以下のさらなる詳細において、いくつかの実施例に関して説明される(図1から4参照)。
図1:ガラス基板上でのディップコーティングによる、メトキシエタノール中のビス[2−(メトキシイミノ)プロパノエート]亜鉛を含み、X線光電子分光法(XPS)による種々の反応時間を使用して、150℃において処理された、本発明に記載の被膜の分析を示す図である。XPSスペクトルにより、サンプル中に存在する元素およびそれらの酸化状態についての、および混合比についての情報が得られる。したがって、十分な処理継続時間後、被膜中に酸化亜鉛が存在することを示すことができる。有機不純物(例えば、炭素および窒素)は、手法の検出限界以下の約0.2mol%である。
【0050】
図2:石英基板上でのスピンコーティングによる、メトキシエタノール中のビス[2−(メトキシイミノ)プロパノエート]亜鉛を含み、150℃において処理された、本発明に記載の、被膜のX線回折パターン(回折角2シータに対してプロットされた強度)を示す図である。XRDパターンは、基板に加え、ウルツァイト構造を有する酸化亜鉛が、唯一の結晶相として存在することを示す。結晶不純物は、検出限界以下の約2重量%である。平均結晶サイズは、シェラー式を通して、ナノ結晶物質の典型である線幅拡大から、約8nmと計算することができる。
【0051】
図3:本発明に記載の、薄膜フィルム電界効果トランジスタの構造の図表示を示す図である。(1=半導体酸化亜鉛;2=ドレイン、金ソース、インジウムスズ酸化物;3=絶縁体 SiO;4=基板/ゲートシリコン。) 部品は、SiO層を備えた、高n型ドープシリコンウエハからなり、該ウエハに金電極が接着プロモーターとして中間層に適用される。金電極は、インターデジタル構造を有している。
【0052】
図4:本発明に記載の、亜鉛オキシマート前駆体を含む、半導体層を備えた薄膜トランジスタ(TFT)のドレイン−ソース電圧変化における、ゲート−ソース電圧変化に対する出発特性線電界を示す図である。特性線電界は、半導体材料として典型的な経過を示す。加えて、重要な材料パラメータ、特に電荷キャリア移動度の抽出を可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を被覆するための前駆体であって、オキシマートのクラスから少なくとも1個の配位子を含み、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を含まない有機金属亜鉛錯体を含むことを特徴とする、前記前駆体。
【請求項2】
配位子が、2−(メトキシイミノ)アルカノエート、2−(エトキシイミノ)アルカノエートまたは2−(ヒドロキシイミノ)アルカノエートであることを特徴とする、請求項1に記載の前駆体。
【請求項3】
印刷可能であって、プリント電界効果トランジスタ(FET)における印刷用インク、または印刷用ペーストの形態で用いられることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の前駆体。
【請求項4】
以下の薄層を有するプリント電子部品:
・硬質またはフレキシブル導電基板、あるいは導電層を有する絶縁体基板(ゲート)
・絶縁体
・少なくとも1つの電極(ドレイン電極)
・少なくとも1つの、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を含まない、絶縁性および/または半導体性および/または導電性特性を有し、請求項1〜3のいずれかに記載の前駆体から得られるZnO層プリント。
【請求項5】
酸化亜鉛層が無孔であることを特徴とする、請求項4に記載のプリント電子部品。
【請求項6】
ガラス、セラミック、金属またはプラスチック基板などの硬質基板、あるいはフレキシブル基板、特にプラスチックフィルムまたは金属ホイルであることを特徴とする、請求項4または5に記載のプリント電子部品。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の前駆体の調整方法であって、少なくとも1種のオキソカルボン酸が、アルカリ金属を含まない塩基の存在下で、少なくとも1種のヒドロキシアミンまたはアルキルヒドロキシアミンと反応し、続いて、無機亜鉛塩が添加されることを特徴とする、前記方法。
【請求項8】
用いられるオキソカルボン酸が、オキソ酢酸、オキソプロパン酸またはオキソブタン酸であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
用いられるアルカリ金属およびアルカリ土類金属を含まない塩基が、炭酸水素アルキルアンモニウム、炭酸アルキルアンモニウムまたは水酸化アルキルアンモニウムであることを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
絶縁性および/または半導体性および/または導電性酸化亜鉛層または表面を有する電子構造の製造方法であって、
a)請求項1〜3のいずれかに記載の有機金属亜鉛錯体の前駆体溶液を、任意で1回または2回以上、積層する方法で、実現される電子構造に対応して、ディップコーティング、スピンコーティングまたはフレキソ印刷/グラビア印刷により、基板に適用する、
b)酸化亜鉛層または表面の形成を伴って、空気中または酸素雰囲気中で、適用された前駆体の焼成または乾燥をする、
c)適用された電子構造が、最終的に、絶縁層で密閉されることができ、接点を備え、完了する、
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項11】
焼成温度Tが、80℃以上であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
焼成または乾燥が、400nmより短い波長のUV光照射により行われることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
酸化亜鉛層が無孔であることを特徴とする、請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
電界効果トランジスタにおける、1または2以上の機能性層の製造のための、請求項1〜3のいずれかに記載の前駆体の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2010−535937(P2010−535937A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516385(P2010−516385)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004876
【国際公開番号】WO2009/010142
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】