プレート式触媒層反応器、該プレート式触媒層反応器に触媒を充填する方法及び該プレート式触媒層反応器を用いた反応生成物の製造方法
【課題】プレート型触媒層反応器に反応原料ガスを流したときに、過度の圧力損失を引き起こすことのない、触媒層を備えたプレート型触媒層反応器を提供すること。
【解決手段】隣り合う2枚の伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式触媒層反応器であって、触媒層は、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に触媒が充填されてなり、伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒の粒径(d)と伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)が、0.45より大きいことを特徴とする、プレート式触媒層反応器。
【解決手段】隣り合う2枚の伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式触媒層反応器であって、触媒層は、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に触媒が充填されてなり、伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒の粒径(d)と伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)が、0.45より大きいことを特徴とする、プレート式触媒層反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣り合う2枚の伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式触媒層反応器、及び該プレート式触媒層反応器に触媒を充填する方法、並びに、該プレート式触媒層反応器に有機化合物原料を供給し、該有機化合物原料を反応させて反応生成物を製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、接触気相酸化反応を利用し、不飽和脂肪酸等の反応物を製造する製造方法においては、工業的及び実用的な見地から、管式熱交換器形状の多管式反応器が用いられている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。上記反応の如く、熱交換能を有する反応器を使用して反応生成物を製造する反応事例としては発熱反応の場合と吸熱反応の場合が挙げられる。当該反応が発熱反応である事例として、(1)エチレンと酸素から酸化エチレンの製造、(2)プロピレンの酸化によるアクロレインあるいはアクリル酸の製造、(3)イソブチレンあるいはターシヤリーブタノールの酸化によるメタクロレインあるいはメタクリル酸の製造、(4)オレフィンの水素化によるパラフィンの製造、(5)カルボニル化合物の水素化によるアルコールの製造、(6)クメンハイドロパーオキサイドの酸分解によるアセトンとフェノールの製造、(7)ブテンの酸化脱水素によるブタジエンの製造が挙げられる。一方、当該反応が吸熱反応である事例としては、エチルベンゼンの脱水素によるスチレンの製造が挙げられる。
また、当該多管式反応器の管式熱交換器への触媒充填方法については多くの方法が知られている(例えば、特許文献3)。さらに、上記管式熱交換器への触媒充填に際して使用される、触媒充填機に関する知見も多数見受けられる(例えば、特許文献4、特許文献5及び特許文献6)。
【0003】
一方、上記多管式反応器が抱える問題点を解決するため、接触気相酸化反応を利用した不飽和脂肪酸等の製造に、複数の伝熱プレートを備えたプレート式触媒層反応器を用いることが提案されている(例えば、特許文献7及び特許文献8)。
【0004】
しかしながら、上記複数の伝熱プレートを備えたプレート式触媒層反応器が抱える問題点に関する知見、及び当該プレート式触媒層反応器に触媒を充填する方法についての知見は見あたらない。
【特許文献1】特開2001−139499号公報
【特許文献2】特開2001−137689号公報
【特許文献3】特開2002−306953号公報
【特許文献4】特公平3−9770号公報
【特許文献5】特開平11−333282号公報
【特許文献6】特開2002−306953号公報
【特許文献7】特開2004−167448号公報
【特許文献8】特開2004−202430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特開2004−202430号公報に記載されたプレート型触媒層反応器で用いられる伝熱プレートは、複雑な形状をしており、かつ、隣り合う2枚の伝熱プレートの最小間隔も充填される触媒の粒径に対して十分に広いとは言い難い。このような状況で、当該隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に、伝熱プレートの上方から触媒を投入した
場合、触媒が落下中にせり合って、伝熱プレート間にブリッジと呼ばれる架橋を生じやすい。当該ブリッジを生じると、該伝熱プレート間に形成された触媒層が不均一な状態になり、反応生成物の収率低下等の問題を生じることがある。
上記ブリッジを低減するための方法として触媒の粒の大きさを小さくする方法が考えられる。しかし、小さな粒の触媒を充填したプレート型触媒層反応器に反応原料ガスを流した場合、過度の圧力損失を引き起こし、反応生成物の収率低下等の問題を生じることがある。
従って、本発明の課題は、プレート型触媒層反応器に反応原料ガスを流したときに、過度の圧力損失を引き起こすことのない、触媒層を備えたプレート型触媒層反応器を提供することにある。
又、本発明の課題は、上記プレート型触媒層反応器において、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に、伝熱プレートの上方から触媒を投入した場合であっても、触媒が落下中にせり合って、伝熱プレート間にブリッジと呼ばれる架橋を生じさせない触媒の充填方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に触媒が充填されてなる触媒層を備えたプレート式触媒層反応器の、伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒の粒径(d)と伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)に着目し、本発明を完成するに至った。
また、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、複数の伝熱プレートを備えたプレート式触媒層反応器の、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に、搬送部材を備えた触媒充填手段を用いて、伝熱プレートの上方から粒状の触媒を充填する場合に、投入される触媒の搬送部材の終端部における状態に着目し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0007】
[1] 隣り合う2枚の伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式触媒層反応器であって、前記触媒層は、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に触媒が充填されてなり、前記伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒の粒径(d)と前記伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)が、0.45より大きいことを特徴とする、プレート式触媒層反応器。
[2] 前記伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒の粒径(d)と前記伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)が、0.45〜0.90であることを特徴とする、[1]に記載のプレート式触媒層反応器。
[3] 前記伝熱プレートは、2枚の波板を対面させて形成された伝熱プレートであり、
前記伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒が、円板形状又は板形状の触媒であり、前記触媒の厚さ(q)と前記伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(q/S)が、0.60より小さく、前記触媒の粒径(d)が、前記最小間隔(S)となる空間を形成する伝熱プレートを構成する波板の波の周期(L)より小さいことを特徴とする、[1]に記載のプレート式触媒層反応器。
[4] 前記伝熱プレートは、2枚の波板を対面させて形成された伝熱プレートであり、前記伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒が、棒形状の触媒であり、前記棒形状の触媒の軸方向に対して垂直に切った断面外周の2点間を結ぶ距離で最長の長さ(t)と前記伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(t/S)が、0.60より小さく、前記触媒の粒径(d)が前記最小間隔(S)となる空間を形成する伝熱プレートを構成する波板の波の周期(L)より小さいことを特徴とする、[1]に記載のプレート式触媒層反応器。
[5] 複数の伝熱プレートを備えたプレート式触媒層反応器の、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に、搬送部材を備えた触媒充填手段を用いて、前記伝熱プレートの上方から触媒を充填する方法であって、前記触媒が、前記搬送部材の終端部において上下
方向に重なり合っていないことを特徴とする、触媒を充填する方法。
[6] 前記搬送部材を備えた触媒充填手段が、ホッパー及び搬送部材を備えた触媒充填装置であることを特徴とする、[5]に記載の触媒を充填する方法。
[7] 前記触媒の粒径(d)と前記隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)が、0.45より大きいことを特徴とする、[5]又は[6]に記載の触媒を充填する方法。
[8] 前記触媒の粒径(d)と前記隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)が、0.45〜0.90であることを特徴とする、[5]又は[6]に記載の触媒を充填する方法。
[9] 隣り合う2枚の伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式触媒層反応器に、有機化合物原料ガスを供給し、前記有機化合物原料ガスを反応させて反応生成物を製造する製造方法であって、前記プレート式触媒層反応器が、[1]〜[4]のいずれか一に記載のプレート式触媒層反応器であることを特徴とする、反応生成物を製造する製造方法。
[10] 隣り合う2枚の伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式触媒層反応器に、有機化合物原料ガスを供給し、前記有機化合物原料ガスを反応させて反応生成物を製造する製造方法であって、前記プレート式触媒層反応器が、[5]〜[8]のいずれか1に記載の触媒を充填する方法で触媒が充填されたプレート式触媒層反応器であることを使って反応することを特徴とする、反応生成物を製造する製造方法。
[11] 前記有機化合物原料ガスの負荷量が、触媒1リットル当たり150リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]以上であることを特徴とする、[9]または[10]に記載の製造方法。
[12] 前記反応生成物が、メタクロレイン及びメタクリル酸の少なくとも一方、アクロレイン及びアクリル酸の少なくとも一方、マレイン酸、フタル酸、スチレン、酸化エチレン、又は、ブタジエンである、[9]〜[11]のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プレート型触媒層反応器に反応原料ガスを流したときに、過度の圧力損失を引き起こすことのない、触媒層を備えたプレート型触媒層反応器を提供することができる。
また、本発明によれば、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に、伝熱プレートの上方から粒状の触媒を投入した場合であっても、触媒が落下中にせり合って、伝熱プレート間にブリッジと呼ばれる架橋を生じさせない触媒の充填方法が提供できる。
また、本発明によれば、上記隣り合う2枚の伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式触媒層反応器を用いることで、単位触媒当たりの有機化合物原料ガスの処理負荷量を高めた場合であっても過度の圧力条件を回避して、有機化合物原料ガスを含む反応原料ガスを供給し、反応生成物を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のプレート式触媒層反応器は、隣り合う2枚の伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式触媒層反応器であって、前記触媒層は、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に触媒が充填されてなり、前記伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒の粒径(d)と前記伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)が、0.45より大きいことを特徴とする。
【0010】
本発明に適用できるプレート式触媒層反応器としては、円弧、楕円弧、矩形又は多角形の一部に賦形された波板の2枚を対面させ、当該両波板の凸面部を互いに接合して複数の熱媒体流路を形成した伝熱プレートを、複数配列してなりかつ隣り合った伝熱プレートの波板凸面部と波板凹面部とが対面して所定間隔の触媒層を形成した反応器が好適に例示できる。ここで、上記「円弧、楕円弧、矩形又は多角形の一部に賦形された波板」とは、波
板の波の形状が円弧、楕円弧、矩形又は多角形の一部の形状であることを意味する。
【0011】
該プレート式触媒層反応器の例を、図1〜図5に基づいて具体的に説明する
図1において、(1)は2枚の波板を対面させて形成された伝熱プレートであり、(2)は当該伝熱プレート(1)の内側に形成された複数の熱媒体流路であり、また(3)は隣り合う2枚の伝熱プレート(1)に挟まれた空間である。該空間に触媒が充填され触媒層が形成される。反応原料ガスは反応ガス入口(4)より供給され、触媒層を通過し、反応によって目的生成物が生産された後、反応ガス出口(5)よりプレート式触媒反応器の外に排出される。当該反応原料ガスの流れ方向に制限はないが、通常、下降流か、或いは上昇流に設定される。
また、熱媒体は伝熱プレート(1)の内側に形成された複数の熱媒体流路(2)に供給され、反応原料ガスの流れ方向に対して十字流の方向に流される。供給された熱媒体は、伝熱プレート(1)を通して、発熱反応の場合は触媒層を冷却し、一方、吸熱反応の場合は触媒層を加熱した後にプレート式触媒反応器の外に排出される。
上記プレート式触媒層反応器は、単一の触媒層の平均層厚さで構成することができ、また図1に記載の通り触媒層の平均層厚さが異なる複数の反応帯域に分割することもできる。上記複数の反応帯域には、独立して熱媒体を供給することが可能である。例えば、発熱反応の場合、反応により生じた熱を、伝熱プレートを隔てて除熱し、触媒層内の温度を独立して制御することが可能である。
【0012】
図2〜図5によって上記伝熱プレート(1)の構成を更に詳しく説明する。
図2において、(1)は2枚の波板(11)を接合して形成された伝熱プレート(1)である。該波の形状は円弧の一部で構成されているが、特に限定されず、製作の都合や反応原料ガスの流動を考慮して決定することができる。また、波の高さ(H)と波の周期(L)も特に制限はないが、高さ(H)は5〜50mm、周期(L)は10〜100mmが適当であるが、触媒層内での反応に伴う反応熱とそれを除熱或いは加熱する熱媒体の流量から決定される。
【0013】
図3〜図5[図3は図1のIII部の拡大図であり、図4は図1のIV部の拡大図であり図5は図1のV部の拡大図である]はそれぞれ反応原料ガスの入口近傍部分、中間部及び反応原料ガスの出口近傍の伝熱プレート(1)の形状を示す。
該伝熱プレート(1)は、円弧又は楕円弧に賦形された波板(11)の2枚を対面させ、その波板(11)の凸面部(a)を互いに接合して複数の熱媒体流路(2)が形成されたものである。そして、隣り合う2枚の伝熱プレート(1)の波板凸面部(a)と波板凹面部(b)とを所定間隔で対面させて空間(3)が形成される。
ここで、図中のS1、S2、及びS3は、上記III部、IV部及びV部における、隣り合う2枚の伝熱プレート(1)に挟まれた空間(3)の最小間隔を示す。該S1、S2、及びS3は波板(11)に賦形される円弧、又は楕円弧の形状を適宜変えることにより変化させることができる。また、図3〜図5において、最小間隔は、S1<S2<S3に設定されている。なお、本発明のプレート式触媒層反応器において、伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)とは、一つのプレート式触媒層反応器において、最小間隔(S)が複数存在する場合は、複数存在する最小間隔のうち最も小さい間隔(S)を意味し、例えば、上記の如く、S1、S2、及びS3が存在する場合、S1、S2、及びS3で最小のもの、即ち、図3〜5において、S1<S2<S3の場合はS1のことを言う。
上記S1は5〜20mm、S2は10〜30mm、S3は15〜50mm程度に設定されることが一般的である。好ましくは、S1は10〜15mm、S2は15〜20mm、S3は20〜40mmが選定される。
【0014】
図1において、配列された隣り合う伝熱プレート(1)の間隔は、反応ガス入口(4)の位置における間隔(P1)と反応ガス出口(5)の位置における間隔(P2)とは同寸
法である。即ち、隣り合う伝熱プレート(1)は互いに平行に複数配列して配置されている。該伝熱プレート(1)の薄板の板厚には、2mm以下、好適には1mm以下の鋼板が用いられる。
【0015】
伝熱プレート(1)の反応ガス流れ方向の長さは、通常0.5〜10メートル(m)であり、好ましくは0.5〜5m、さらに好ましくは0.5〜3mである。通常入手できる薄板鋼板のサイズから、1.5m以上の時は2枚のプレートを接合するか、組み合わせて用いることもできる。
伝熱プレート(1)の反応ガスの流れ方向と直角の方向(図1では紙面に直角方向の奥行き)の長さは特に制限はなく、通常0.1から20mが用いられる。好ましくは3から15m、より好ましくは6から10mである。
また、伝熱プレート(1)の反応ガスの流れ方向と直角の方向には、隣り合う2枚の伝熱プレート(1)の間に、各伝熱プレート(1)と直交するように仕切り板を設置することができる。該仕切り板は、触媒の充填性、反応器のメンテナンス性を考慮して、設置間隔が適宜選択される。該設置間隔は20〜1000ミリメートルであることが好ましい。
伝熱プレート(1)は図3〜図5に示した配置と同様に積層され、積層される枚数には制限は無い。実際的には、反応に必要な触媒量から決定されるが、数十枚から数百枚である。
また、目的物の生産量のために必要なプレート式触媒層反応器全体の触媒充填量は、用いる触媒の反応速度や反応原料ガス中の原料成分濃度などによって決定され、それぞれのプレート式触媒層反応器によって異なる。
【0016】
本発明に用いられる触媒の形状としては、直径が3〜15ミリメートル(mm)の球形状、最長径が3〜15mmのペレット形状、円外径が3〜15mm、高さが3〜15mmの円柱形状、または円柱の中心に穴の開いたリング形状であって、円外径が3〜15mm、円内径が1〜3mm、高さが3〜15mmの形状のものが好適に例示できる。
また、本発明に用いられる触媒の形状として、厚さが2〜4mm、直径が9〜30mmの円板形状、厚さが2〜4mm、厚さ方向に対して垂直に切った断面外周の2点間を結ぶ距離で最長の長さが8〜30mmの板形状や、棒形状の軸方向の長さが9〜30mm、棒形状の軸方向に対して垂直に切った断面外周の2点間を結ぶ距離で最長の長さ(断面が円の場合は直径)が2〜4mmの棒形状を好適に例示できる。
本発明における触媒の粒径(d)とは、触媒の形状が上記球形状の場合はその直径を、ペレット形状の場合はその最長径を、円柱形状またはリング形状の場合は、円外径または高さのうち長い方の長さを、円板形状の場合は円外径を、板形状の場合は厚さ方向に対して垂直に切った断面外周の2点間を結ぶ距離で最長の長さを、棒形状の場合は軸方向の長さをいう。
上記ペレット形状の最長径とは、2枚の平行面でペレットを挟んだときの2面の距離であって、ペレットをあらゆる角度に動かしたときに最大となる距離をいう。
【0017】
上述のように、本発明のプレート式触媒層反応器において、伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒の粒径(d)と上記伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)は、0.45より大きい。当該数値範囲は、反応原料ガスを流通させたときの圧力損失の観点から設定されたものである。上記[d/S]は、0.5より大きいことが好ましい。
但し、一つのプレート式触媒層反応器において、最小間隔(S)が複数存在する場合(上記の如くS1、S2、及びS3が存在する場合)の上記比(d/S)は、上記触媒の粒径(d)と、複数存在する最小間隔のうち最も小さい間隔(S)との比である。上記[d/S]が0.45以下の場合は、伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒の粒径(d)が小さくなり、反応原料ガスを流通させたときに、過度な圧力損失を引き起こす。
圧力損失が大きい場合、反応器入口圧力が高くなり、それに従い圧縮機の吐出圧力が高
くなることによって圧縮に使われるエネルギーが増大し、電気や蒸気の使用量が増大する。また、酸化反応では特に著しいが、反応器の差圧が大きくなり、反応圧力が高くなるほど反応の選択率が低下する。上記圧力損失は、同じ条件での反応において、[d/S]が0.45の場合に比べて、当該[d/S]を調整することにより、5%以上低下させることが好ましく、10%以上低下させることがより好ましく、15%以上低下させることが最も好ましい。
【0018】
一方、伝熱プレート間にブリッジと呼ばれる架橋を生じさせないという観点からは、伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒の粒径(d)と隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)は、0.3〜0.9であることが好ましく、0.4〜0.8であることがより好ましく、0.4〜0.7であることが特に好ましい。
【0019】
反応原料ガスを流通させたときの圧力損失の観点、及び、伝熱プレート間にブリッジと呼ばれる架橋を生じさせないという観点の双方を考慮した場合は、伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒の粒径(d)と伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)は、0.45〜0.90であることが好ましく、0.45〜0.80であることがより好ましく、0.50〜0.70であることが特に好ましい。上記[d/S]が0.90より大きいとブリッジを起こし易い傾向にある。
また、上記条件は、用いられる触媒の形状に特に制限はないが、球形状、ペレット形状、円柱形状、及びリング形状からなる群から選ばれるいずれかの形状の触媒が用いられた場合、より好ましい。
さらに、上記プレート式触媒層反応器において、上記伝熱プレートが、2枚の波板を対面させて形成された伝熱プレートである場合、反応原料ガスの流れ方向に対して形状的に周期性をもっている伝熱プレートに挟まれた空間に偏り無く触媒を充填するという観点から、触媒の粒径(d)が最小間隔(S)となる空間を形成する伝熱プレートを構成する波板の周期(L)好ましくはその1/2を超えないことが好ましい。すなわち、上記[d/S]は[L/S]より小さいことが好ましく、上記[d/S]は[L/S]の1/2より小さいことがより好ましい。更に、上記[d/S]は、プレートに挟まれた空間に充填可能であることという形状的な制約の観点から、球形状、ペレット形状、円柱形上、及びリング形状からなる群から選ばれるいずれかの形状の触媒の場合、1.00より小さいことが好ましい。
【0020】
上記プレート式触媒層反応器において、上記伝熱プレートが、2枚の波板を対面させて形成された伝熱プレートであり、伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒が、上記円板形状又は板形状の触媒である場合、当該触媒の厚さ(q)(図8参照)と伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(q/S)が0.60より小さく、触媒の粒径(d)が、最小間隔(S)となる空間を形成する伝熱プレートを構成する波板の波の周期(L)より小さいことが好ましい。
また、上記[q/S]は、0.50より小さいことがより好ましい。当該数値は、充填時に伝熱プレート間にブリッジと呼ばれる架橋を生じさせないという観点から設定される。一方、上記[q/S]は、反応原料ガスを流通させたときの圧力損失の観点から、0.20より大きいことが好ましく、0.30より大きいことがより好ましく、0.40より大きいことが更に好ましい。
さらに、触媒の粒径(d)は、最小間隔(S)となる空間を形成する伝熱プレートを構成する波板の波の周期(L)の1/2より小さいことがより好ましい。
触媒の粒径(d)が、最小間隔(S)となる空間を形成する伝熱プレートを構成する波板の波の周期(L)より大きいとブリッジを起こし易い傾向にある。
【0021】
上記プレート式触媒層反応器において、上記伝熱プレートが、2枚の波板を対面させて
形成された伝熱プレートであり、伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒が、上記棒形状の触媒である場合、当該棒形状の触媒の軸方向に対して垂直に切った断面外周の2点間を結ぶ距離で最長の長さ(t)(図9参照)と伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(t/S)が0.60より小さく、触媒の軸方向の長さ(W)(図9参照)が最小間隔(S)となる空間を形成する伝熱プレートを構成する波板の波の周期(L)より小さいことが好ましい。
また、上記[t/S]は、0.50より小さいことがより好ましい。当該数値は、充填時に伝熱プレート間にブリッジと呼ばれる架橋を生じさせないという観点から設定される。一方、上記[t/S]は、反応原料ガスを流通させたときの圧力損失の観点から、0.20より大きいことが好ましく、0.30より大きいことがより好ましく、0.40より大きいことが更に好ましい。
さらに、触媒の軸方向の長さ(W)が、最小間隔(S)となる空間を形成する伝熱プレートを構成する波板の波の周期(L)の1/2より小さいことがより好ましい。
触媒の軸方向の長さ(W)が最小間隔(S)となる空間を形成する伝熱プレートを構成する波板の波の周期(L)より大きいとブリッジを起こし易い傾向にある。
尚、本発明において、棒形状の触媒の場合、触媒の粒径(d)と触媒の軸方向の長さ(W)は同義である。
【0022】
本発明の触媒を充填する方法(以下、単に充填方法ともいう)は、複数の伝熱プレートを備えたプレート式触媒層反応器の、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に、搬送部材を備えた触媒充填手段を用いて、前記伝熱プレートの上方から触媒を充填する方法であって、前記触媒が、前記搬送部材の終端部において上下方向に重なり合っていないことを特徴とする。ここで、上記触媒が上下方向に重なり合っていないこととは、触媒が搬送部材の終端部において単層であることを意味する。
【0023】
本発明の充填方法における搬送部材を備えた触媒充填手段は、触媒が、搬送部材の終端部において上下方向に重なり合わないように調整できる充填手段であれば特に限定されない。以下、上記搬送部材を備えた触媒充填手段の好適な例を説明する。
【0024】
例えば、図10に示す3辺に枠を備えた取っ手付SUS製板が挙げられる。更に好適なものとしては、図11に示す、触媒粒径(d)よりも低い高さのガイド板を備え、3辺に枠を有するSUS製板が挙げられる。
これら触媒充填手段を用いて触媒を充填する場合は、搬送部材である板の上に充填する触媒を乗せた後に、取っ手を持って左右に振って乗せた触媒を均して上下に重なり無く分散し、次いで、板の枠を持たない一辺から、当該一辺において触媒が上下方向に重なり合わないようにして触媒を投入するとよい。
【0025】
上記搬送部材である板の枠を持たない一辺の長さは、プレート式触媒層反応器の幅の50%〜100%、好ましくは70%〜100%、更に好ましくは80%〜95%の長さのものを用いることができる。隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に、伝熱プレートと直交するように仕切り板が設けられる場合は、上記板の枠を持たない一辺の長さは、上記設けられた仕切り板の間隔(すなわち、隣り合う2枚の仕切り板で区切られた幅)の50%〜100%、好ましくは70%〜100%、更に好ましくは80%〜95%の長さのものを用いることができる。
上記搬送部材である板の枠を持たない一辺の長さがプレート式触媒層反応器の幅、或いは仕切り板の間隔の50%より小さい場合は、充填層の中心部と両脇部とで充填密度の異なった不均一な充填となる可能性がある。一方、100%より大きい場合は、プレート式触媒層反応器の幅、或いは仕切り板の間隔を超えた長さになり、所定の箇所以外に触媒がこぼれてしまう可能性がある。
上記搬送部材である板の枠を持たない一辺は、反応原料ガス入口の上方50センチメー
トル以内、好ましくは30センチメートル以内、更に好ましくは10cm以内の高さに位置させて、触媒を充填するのが良い。50cmより高い場合、伝熱プレートの最初の波形部に触媒が落下する際の衝撃で、触媒に過度な割れが生じる可能性がある。
【0026】
本発明の充填方法において、上記搬送部材を備えた触媒充填手段は、ホッパー及び搬送部材を備えた触媒充填装置であることが好ましい。以下、本発明の充填方法に使用するのに好適な触媒充填装置を例示する。
第一の触媒充填装置としては、図6に示す、粒子状の触媒を貯留するホッパー(6)と、該ホッパーから流下する触媒を載せて伝熱プレートの上方へ搬送供給するためのベルトコンベア(7)を備えた装置が挙げられる。当該ベルトコンベアの横幅(ベルトコンベアのベルトが進行する方向と直角の方向)は、適宜設定することが可能である。
当該触媒充填装置には、図6に示すように、ベルトコンベアの上面に、仕切り壁(8)を設けても良い。そして、仕切り壁(8)とベルトコンベアの両端に設置された壁との間隔(10)は、上記隣り合う2枚の伝熱プレート(1)間に設置された、隣り合う2枚の仕切り板で区切られた幅(すなわち、仕切り板の設置間隔)の50%〜100%であることが好ましく、より好ましくは70%〜100%であり、更に好ましくは80%〜95%である。
これによって、仕切り板の設置間隔ごとに触媒搬送列を形成することができる。仕切り板の設置間隔ごとに触媒搬送列を形成させて、触媒を充填することで、隣り合う2枚の仕切り板で区切られた幅における、触媒層の均一性が向上するため好ましい。上記仕切り壁(8)の個数、又は上記触媒搬送列の個数は、特に限定されない。
【0027】
上記ホッパーの下部には、ホッパーから流下する触媒の量を制御するための制御部材(ダンパー等)が設置されていることが好ましい。また、各触媒搬送列には、搬送供給される触媒の層厚さを調整するための層厚さ調整板(9)が設置されていることが好ましい。上記制御部材、及び層厚さ調整板の高さを調整することで、ベルトコンベアの終端部における搬送触媒の層の状態、即ち、上下方向の重なり状態を制御することが可能である。
【0028】
上記触媒充填装置には、ベルトコンベアの搬送終端部から触媒を各投入部(上記隣り合う伝熱プレートに挟まれた空間で、かつ隣り合う仕切り板で区切られた空間)に案内するために、シュートを設けてもよい。
【0029】
第二の触媒充填装置としては、図7に示す、粒子状の触媒を貯留するホッパー(14)と、該ホッパーから流下する触媒を載せて伝熱プレートの上方へ搬送供給するための触媒搬送通路(12)(以下、トラフともいう)と、該トラフに振動を付与する振動源(13)とを備えた装置が挙げられる。当該トラフの横幅(トラフ上の触媒が進行する方向と直角の方向)は、適宜設定することが可能である。
上記第一の触媒充填装置と同様に、トラフの上面に、仕切り壁を設けても良い。そして、仕切り壁とトラフの両端の壁との間隔は、上記隣り合う2枚の伝熱プレート(1)間に設置された、隣り合う2枚の仕切り板で区切られた幅(すなわち、仕切り板の設置間隔)の50%〜100%であることが好ましく、より好ましくは70%〜100%であり、更に好ましくは80%〜95%である。
これによって、各仕切り板の設置間隔ごとに触媒搬送列を形成することができる。仕切り板の設置間隔ごとに触媒搬送列を形成させて、触媒を充填することで、隣り合う2枚の仕切り板で区切られた幅における、触媒層の均一性が向上するため好ましい。上記仕切り壁の個数、又は上記触媒搬送列の個数は、特に限定されない。
【0030】
上記触媒充填装置には、トラフの搬送終端部から触媒を各投入部(上記隣り合う伝熱プレートに挟まれた空間で、かつ隣り合う仕切り板で区切られた空間)に案内するために、シュートを設けてもよい。
【0031】
上記トラフに振動を付与する振動源は、所定の振動数でトラフを振動できるものであれば特に限定されない。トラフに振動を伝達することでトラフ上の触媒が搬送終端部方向へ移動する。該振動源としては、電気コイルと永久磁石とを組み合わせた電磁式の振動体が好適に例示できる。
【0032】
上記ホッパーの下部には、ホッパーから流下する触媒の量を制御するための制御部材(ダンパー等)が設置されていることが好ましい。
また、各触媒搬送列には、搬送供給される触媒の層厚さを調整するための層厚さ調整板が設置されていることが好ましい。この層厚さ調整板の高さの調整、上記振動源の振動数の調整、トラフの長さ、幅、及び傾きの調整、並びにこれらの組合せを用いることで、トラフの終端部における搬送触媒の層の状態、即ち、上下方向の重なり状態を制御することが可能である。
【0033】
触媒が良好な状態で充填されていることの確認は、触媒の充填高さの理論値と実測値との比較(例えば理論値に対する実測値の誤差が5%以内)、及び、隣り合う2枚の仕切り板
で区切られた各区画間での触媒の充填高さの比較(例えば各区画間の充填高さの差が充填高さの5%以内)によって確認することができる。
【0034】
上記の方法で搬送部材の終端部における搬送触媒の層の状態、即ち、上下方向の重なり状態を制御し、搬送部材の終端部における搬送触媒の重なり状態が上下方向に重なり合っていない状態で触媒を投入することによって、伝熱プレートの上方から粒状の触媒を投入した場合であっても、触媒が、上記空間(3)を落下中にせり合って伝熱プレート間にブリッジを形成することなく、均一に充填される。
【0035】
上記触媒充填装置は、伝熱プレートの上方において、台車などの位置変更機構に保持されて、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間が並ぶ方向(A)、及び、当該方向(A)に直交する方向に、位置変更自在となるように構成されていてもよい。当該構成により、触媒充填装置は、伝熱プレートの上方において、縦横の位置変更が自在となり、触媒の充填作業がより効率的となる。
【0036】
本発明の製造方法は、隣り合う2枚の伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式触媒層反応器に、有機化合物原料ガスを供給し、有機化合物原料ガスを反応させて反応生成物を製造する製造方法であって、当該プレート式触媒層反応器が、本発明のプレート式触媒層反応器であることを特徴とする。
また、本発明の製造方法は、隣り合う2枚の伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式触媒層反応器に、有機化合物原料ガスを供給し、有機化合物原料ガスを反応させて反応生成物を製造する製造方法であって、当該プレート式触媒層反応器が、本発明の充填方法で触媒が充填されたプレート式触媒層反応器であることを特徴とする。
【0037】
本発明の製造方法に適用可能な反応は、発熱又は吸熱を伴う反応であれば特に限定されず、以下に示すものが好適に例示できる。
発熱を伴う反応としては、(1)エチレンと酸素から酸化エチレンを生成する反応、(2)炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシヤリーブタノールからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種、または、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種と、酸素から、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド、並びに炭素数3及び4の不飽和脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の反応生成物を生成する反応、(3)炭素数4以上の脂肪族炭化水素と、酸素からマレイン酸 を生成する反応、(4)o−キシレンと酸素からフタル酸
を生成する反応、(5)オレフィンの水素化によりパラフィンを生成する反応、(6)カルボニル化合物の水素化によりアルコールを生成する反応、(7)クメンハイドロパーオキサイドの酸分解によりアセトンとフェノールを生成する反応、(8)ブテンの酸化脱水素によるブタジエンの製造が挙げられる。
一方、吸熱を伴う反応としては、エチルベンゼンの脱水素によりスチレンを生成する反応が挙げられる。
すなわち、本発明の製造方法を用いて製造される反応生成物としては、メタクロレイン及びメタクリル酸の少なくとも一方、アクロレイン及びアクリル酸の少なくとも一方、マレイン酸、フタル酸、スチレン、酸化エチレン、又は、ブタジエンが好適に例示される。
また、これら反応生成物を得るための反応条件は、公知の反応条件を適用することが可能である。
【0038】
本発明の製造方法に用いられる反応原料ガスは、上記反応に適用されうる反応原料ガスであれば、特に限定されない。本発明の製造方法において上記反応原料ガスは上記プレート式触媒層反応器に供給される。
以下に上記(2)に記載の反応生成物の製造方法における反応原料ガスの例について説明する。上記(2)に係る反応原料ガスに含まれる有機化合物原料ガスは、上述のように、炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシヤリーブタノールからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種、または、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種である。
上記炭素数3の炭化水素としては、プロピレン、プロパンが挙げられる。
上記炭素数4の炭化水素としては、n−ブテン、イソブテン、n−ブタン、イソブタンが挙げられる。
上記炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドとしては、アクロレイン、メタクロレインが挙げられる。
また、上記反応生成物である炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド、並びに炭素数3及び4の不飽和脂肪酸における、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドとしては、アクロレイン、メタクロレインが挙げられ、炭素数3及び4の不飽和脂肪酸としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
【0039】
上記(2)に係る反応原料ガスは、有機化合物原料ガス、分子状酸素、及び必要に応じて窒素や水蒸気などの反応に不活性なガスを含む。
上記有機化合物原料ガスは、1種のみの構成としてもよく、また2種以上を混合した混合物としてもよい。上記有機化合物原料ガスの組成は、目的に応じて適宜選択される。
上記有機化合物原料ガスの、上記反応原料ガスに対する含有量は、特に限定されないが、有機化合物原料ガスが炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシヤリーブタノールからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種の場合、該有機化合物原料ガスの総量として、5〜13モル%であることが好ましく、有機化合物原料ガスが炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種の場合、該有機化合物原料ガスの総量として、1〜13モル%であることが好ましい。また、上記分子状酸素の、上記反応原料ガスに対する含有量は、有機化合物原料ガスが炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシヤリーブタノールからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種の場合、該有機化合物原料ガスの総量の1〜3倍量であることが好ましく、有機化合物原料ガスが炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種の場合、該有機化合物原料ガスの総量の0.5〜3倍量であることが好ましい。
上記不活性なガスの、上記反応原料ガスに対する含有量は、上記反応原料ガス全量から有機化合物原料ガスの総量と分子状酸素量を除いた値となる。なお、上記不活性なガスは、反応系から排出される排気ガスを再循環した不活性ガスを用いてもよい。
【0040】
本発明の製造方法には、目的に応じて、公知の触媒を用いることが可能である。炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシヤリーブタノールからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種、または、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種、並びに、分子状酸素を含む反応原料ガスを供給し、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド、並びに炭素数3及び4の不飽和脂肪酸からなる群から選ばれる一種以上の反応生成物を製造する触媒の組成としては、モリブデン、タングステン、ビスマスなどを含む金属酸化物、または、バナジウムなどを含む金属酸化物が挙げられる。
【0041】
上記有機化合物原料ガスがプロピレンの場合、上記金属酸化物として、下記一般式(1)で表される化合物が好適に例示される。
Mo(a)Bi(b)Co(c)Ni(d)Fe(e)X(f)Y(g)Z(h)Q(i)Si(j)O(k)・・・式(1)
上記式(1)中、Moはモリブデン、Biはビスマス、Coはコバルト、Niはニッケル、Feは鉄、Xはナトリウム、カリウム、ルビジュウム、セシウム及びタリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素、Yはほう素、りん、砒素及びタングステンからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素、Zはマグネシウム、カルシウム、亜鉛、セリウム及びサマリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素、Qはハロゲン元素、Siはシリカ、Oは酸素を表す。
また、a、b、c、d、e、f、g、h、i、j及びkは、それぞれMo、Bi、Co、Ni、Fe、X、Y、Z、Q、Si及びOの原子比を表し、モリブデン原子(Mo)が12のとき、0.5≦b≦7、0≦c≦10、0≦d≦10、1≦c+d≦10、0.05≦e≦3、0.0005≦f≦3、0≦g≦3、0≦h≦1、0≦i≦0.5、0≦j≦40であり、kは各元素の酸化状態によって決まる値である。
【0042】
一方、上記有機化合物原料ガスがアクロレインの場合、上記金属酸化物として、下記一般式(2)で表される化合物が好適に例示される。
Mo(12)V(a)X(b)Cu(c)Y(d)Sb(e)Z(f)Si(g)C(h)O(i)・・・式(2)
上記式(2)中、XはNb及びWからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を示す。YはMg、Ca、Sr、BaおよびZnからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を示す。ZはFe、Co、Ni、Bi、Alからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を示す。但し、Mo、V、Nb、Cu、W、Sb、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Fe、Co、Ni、Bi、Al、Si、CおよびOは元素記号である。a、b、c、d、e、f、g、hおよびiは各元素の原子比を表し、モリブデン原子(Mo)12に対して、0<a≦12、0≦b≦12、0≦c≦12、0≦d≦8、0≦e≦500、0≦f≦500、0≦g≦500、0≦h≦500であり、iは前記各元素のうちCを除いた各元素の酸化状態によって決まる値である。
【0043】
本発明の製造方法では、単位触媒当たりの有機化合物原料ガスの処理負荷量を高めたときに、触媒を通過する反応ガスの過度の圧力損失の増大を防止できる。したがって、有機化合物原料ガスの負荷量が、触媒1リットル当たり150リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]以上で好適に目的反応生成物を製造できる。有機化合物原料ガスの負荷量が、触媒1リットル当たり150〜1000リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]であることが好ましく、触媒1リットル当たり170〜300リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]であることがより好ましく、触媒1リットル当たり200〜250リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]であることが特に好ましい。上記有機化合物原料ガスの負荷量が、触媒1リットル当たり150リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]以上とは、上記単位触媒当たりの有機化合物原料ガスの
処理負荷量を高めた状態を意味する。
【0044】
上記有機化合物原料ガスが、炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシヤリーブタノールからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種である場合は、上記有機化合物原料ガスの負荷量は、触媒1リットル当たり170〜290リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]であることがより好ましく、触媒1リットル当たり200〜250リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]であることが特に好ましい。
【0045】
上記有機化合物原料ガスが、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種である場合は、上記有機化合物原料ガスの負荷量は、触媒1リットル当たり180〜300リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]であることがより好ましく、触媒1リットル当たり200〜250リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]であることが特に好ましい。
【0046】
上記伝熱プレートの熱媒体流路に供給される熱媒体の温度は、200〜600℃で供給されることが好ましい。有機化合物原料ガスが、炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシヤリーブタノールからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種のときは、250〜450℃で供給されることが好ましく、より好ましくは、300〜420℃である。該有機化合物原料ガスが、プロピレンの場合は、熱媒流路に供給される熱媒体の温度が250〜400℃であることが好ましく、320〜400℃であることがより好ましい。
一方、有機化合物原料ガスが、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種のときは、200〜350℃で熱媒流路に供給されることが好ましく、より好ましくは、250〜330℃である。該有機化合物原料ガスがアクロレインの場合は、熱媒流路に供給される熱媒体の温度が200〜350℃であることが好ましく、250〜320℃であることがより好ましい。
【0047】
上記熱媒体を流す方向は、反応ガスの流れ方向と直交させることが好ましい。
また、熱媒体の入口温度と出口温度の温度差は0.5〜10℃であることが好ましく、2〜5℃であることがより好ましい。熱媒体流路のそれぞれにおいて、1〜複数の流路毎に、熱媒体の流量、温度、及び流す方向を変えることも可能である。
【0048】
プレート式触媒層反応器が図1に記載の如く触媒層の平均層厚さが異なる複数の反応帯域で構成される場合、熱媒体は、複数の反応帯域にそれぞれ最適な温度で供給される。
また、一つの反応帯域においても、1〜複数の流路毎に、独立して同温の熱媒体を同じ方向に流す場合も、向流(カウンターフロー)方向に流す場合もある。また、ある反応帯域の熱媒体流路に供給され排出された熱媒体を同じあるいは別の反応帯域の熱媒体流路に供給することも可能である。
同じ反応帯域では、熱媒体の温度は基本的に同じであることが好ましいが、ホットスポット現象が発生しない範囲で変化させることは可能である。
【0049】
上記熱媒体流路に供給される熱媒体の流量は反応熱量と伝熱抵抗から決定される。しかし、伝熱抵抗は、通常、液体である熱媒体より反応原料ガスの気体側にあるので問題になることは少ないが、熱媒体流路内の液線速度は好適には0.3m/s以上が採用される。反応原料ガス側伝熱抵抗に比較し、熱媒体側の抵抗が小さく問題にならない値とするには、0.5〜1.0m/sが最も適当である。大きすぎると熱媒体の循環ポンプの動力が大きくなって経済面で好ましくない。
なお、用いられる熱媒体は、公知のものを使用することが可能である。
【0050】
本発明の製造方法において、反応圧力は、通常、常圧から3000kPa(キロパスカル)、好ましくは常圧から1000kPa、より好ましくは常圧から300kPaである。
【実施例】
【0051】
以下実施例等を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0052】
触媒Aとして、Sb(100)Ni(43)Mo(35)V(7)Nb(3)Cu(9)Si(20)O(x)の組成の触媒粉末を、常法により製造した(酸素の組成Xは各々の金属酸化物の酸化状態によって定まる値である)。この触媒粉末を成型し、外径5mmφ、内径2mmφ、及び高さ4mmのリング状触媒を製造した。
また、触媒Bとして、Sb(100)Ni(43)Mo(35)V(7)Nb(3)Cu(9)Si(20)O(x)の組成の触媒粉末を、常法により製造した(酸素の組成Xは各々の金属酸化物の酸化状態によって定まる値である)。この触媒粉末を成型し外径4mmφ、高さ3mmのペレット状触媒を製造した。
一方、プレート式触媒層反応器は図1に示す構造のものを用いた。すなわち、用いた伝熱プレートは、波型形状の薄いステンレスプレート(板厚1mm)の2枚を対面・接合して反応温度調節用の熱媒体流路が形成された伝熱プレートである。
上記伝熱プレートを図1に示すように平行に設置し、その間隔(図1に示すP1及びP2)を26mmに調整した。すなわち、隣り合う2枚の伝熱プレートの間に、触媒が充填され触媒層が形成可能な構造とした。触媒層が形成された場合は、波形形状の仕様によって、表1に示すように、反応原料ガスの流れ方向の上流から第1反応帯域(S1)、第2反応帯域(S2)、および第3反応帯域(S3)に分割される。
図2に示す波型形状の周期(L)、及び高さ(H)、並びに、波数及び伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)を表1に示す。また、伝熱プレートの幅は96mmとした。
当該プレート式触媒層反応器における伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)は、第1反応帯域(S1)の伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔 9.5mmであった。
当該伝熱プレート式触媒層反応器に触媒を充填した場合、その触媒量は2.5L(リットル)であった(当該、触媒量は反応器を垂直にし、反応器最下部に板を取り付けて上部より水を注いで測った体積測定の結果である)。
【0053】
【表1】
【0054】
<実施例1>
触媒の粒径(d)が5mmである上記触媒Aを、幅90mm、奥行き300mm、深さ20mmの取っ手付SUS製板(図10)上に乗せた後に、取っ手を持って左右に振って
乗せた触媒を均して上下に重なり無く分散した。次いで、当該SUS製板の幅90mmの淵(板の枠を持たない一辺)を、伝熱プレートの幅96mmの入口に平行になるように合わせ、板の枠を持たない一辺から、当該一辺において触媒が上下方向に重なり合わないようにして触媒を上記プレート式触媒層反応器に投入した。
この操作を繰り返したところ、反応器内部で閉塞を起こすことなく、触媒の充填を完了した。充填された触媒量は2.5Lであった。
触媒充填時、SUS製板の淵から投入されていく触媒の状況を観察したところ、粒が重なり合って投入されていく触媒は観察されなかった。
触媒の粒径(d)は5mm、伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)は9.5mmであり、その比(d/S)は0.53であった。
上記触媒を充填したプレート式触媒層反応器の上部より室温の空気を供給し、入口圧力と出口圧力を測定して、触媒層の圧力損失を求めた。結果を表2に示す。
【0055】
<試験例1>
触媒の粒径(d)が5mmである上記触媒Aを、幅90mm、奥行き150mm、深さ100mmのSUS容器に入れ、0.5Lずつ、5回に分けて上記プレート式触媒層反応器に投入した。当該SUS容器に触媒A 0.5Lを入れ、当該SUS容器の幅90mmの淵を、伝熱プレートの幅96mmの入口に平行になるように合わせ、容器を傾けて触媒の投入を開始したところ、触媒を0.2L充填したところで、反応器内部の第1反応帯域(S1)で閉塞を起こし、触媒の充填の継続が不可能となった。
触媒充填時、SUS容器の淵から投入されていく触媒の状況を観察したところ、2〜3粒の触媒がSUS容器の淵で重なり合って、次いで投入されていく状態が観察された。
触媒の粒径(d)は5mm、伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)は9.5mmであり、その比(d/S)は0.53であった。
【0056】
<比較例1>
触媒の粒径が4mmである上記触媒Bを、幅90mm、奥行き300mm、深さ20mmの取っ手付SUS製板(図10)上に乗せた後に、取っ手を持って左右に振って乗せた触媒を均して上下に重なり無く分散した。次いで、当該SUS製板の幅90mmの淵(板の枠を持たない一辺)を、伝熱プレートの幅96mmの入口に平行になるように合わせ、板の枠を持たない一辺から、当該一辺において触媒が上下方向に重なり合わないようにして触媒を上記プレート式触媒層反応器に投入した。
この操作を繰り返したところ、反応器内部で閉塞を起こすことなく、触媒の充填を完了した。充填された触媒量は2.5Lであった。
触媒充填時、SUS製板の淵から投入されていく触媒の状況を観察したところ、粒が重なり合って投入されていく触媒は観察されなかった。
触媒の粒径(d)は4mm、伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)は9.5mmであり、その比(d/S)は0.42であった。
上記触媒を充填したプレート式触媒層反応器の上部より室温の空気を供給し、入口圧力と出口圧力を測定して、触媒層の圧力損失を求めた。結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
上記表中の[1]〜[3]は、以下の通りである。
[1]当該最小間隔(S)は、上記S1、S2及びS3における最小間隔のうち最も小さい間隔(S)である。
[2]触媒充填時、搬送部材の終端部における触媒の重なり状況であり、「無し」とは、触媒が上下方向に重なり合っていないことを意味し、「あり」とは、触媒が上下方向に重なり合っていたことを意味する。
[3]通気量[NL/L/Hr]は、触媒量1L(リットル)、1時間当たりの空気の供給量を表す。なお、空気の容積は標準状態(0℃、101.325kPa)換算での容積を用いる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明のプレート式触媒層反応器内に設置される伝熱プレートの縦断面図。
【図2】2枚の波板を接合して形成された伝熱プレートの拡大図。
【図3】図1のIII部の拡大図。
【図4】図1のIV部の拡大図。
【図5】図1のV部の拡大図。
【図6】第一の触媒充填装置の例を示す概略図。
【図7】第二の触媒充填装置の例を示す概略図。
【図8】円板形状または板形状の触媒の例を示す概略図。
【図9】棒形状の触媒の例を示す概略図。
【図10】搬送部材を備えた触媒充填手段の例を示す概略図。
【図11】搬送部材を備えた触媒充填手段の例を示す概略図。
【符号の説明】
【0059】
1 伝熱プレート
2 熱媒体流路
3 空間
4 反応ガス入口
5 反応ガス出口
6 ホッパー
7 ベルトコンベア
8 仕切り壁
9 層厚さ調整板
10 仕切り壁とベルトコンベアの両端に設置された壁との間隔
11 波板
12 触媒搬送通路
13 振動源
14 ホッパー
a 波板の凸面部
b 波板の凹面部
d 触媒の粒径
q 触媒の厚さ
t 棒形状の触媒の軸方向に対して垂直に切った断面外周の2点間を結ぶ距離で最長の
長さ
W 棒形状の触媒の場合における、触媒の軸方向の長さ
L 波の周期
H 波の高さ
S1、S2、S3 隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣り合う2枚の伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式触媒層反応器、及び該プレート式触媒層反応器に触媒を充填する方法、並びに、該プレート式触媒層反応器に有機化合物原料を供給し、該有機化合物原料を反応させて反応生成物を製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、接触気相酸化反応を利用し、不飽和脂肪酸等の反応物を製造する製造方法においては、工業的及び実用的な見地から、管式熱交換器形状の多管式反応器が用いられている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。上記反応の如く、熱交換能を有する反応器を使用して反応生成物を製造する反応事例としては発熱反応の場合と吸熱反応の場合が挙げられる。当該反応が発熱反応である事例として、(1)エチレンと酸素から酸化エチレンの製造、(2)プロピレンの酸化によるアクロレインあるいはアクリル酸の製造、(3)イソブチレンあるいはターシヤリーブタノールの酸化によるメタクロレインあるいはメタクリル酸の製造、(4)オレフィンの水素化によるパラフィンの製造、(5)カルボニル化合物の水素化によるアルコールの製造、(6)クメンハイドロパーオキサイドの酸分解によるアセトンとフェノールの製造、(7)ブテンの酸化脱水素によるブタジエンの製造が挙げられる。一方、当該反応が吸熱反応である事例としては、エチルベンゼンの脱水素によるスチレンの製造が挙げられる。
また、当該多管式反応器の管式熱交換器への触媒充填方法については多くの方法が知られている(例えば、特許文献3)。さらに、上記管式熱交換器への触媒充填に際して使用される、触媒充填機に関する知見も多数見受けられる(例えば、特許文献4、特許文献5及び特許文献6)。
【0003】
一方、上記多管式反応器が抱える問題点を解決するため、接触気相酸化反応を利用した不飽和脂肪酸等の製造に、複数の伝熱プレートを備えたプレート式触媒層反応器を用いることが提案されている(例えば、特許文献7及び特許文献8)。
【0004】
しかしながら、上記複数の伝熱プレートを備えたプレート式触媒層反応器が抱える問題点に関する知見、及び当該プレート式触媒層反応器に触媒を充填する方法についての知見は見あたらない。
【特許文献1】特開2001−139499号公報
【特許文献2】特開2001−137689号公報
【特許文献3】特開2002−306953号公報
【特許文献4】特公平3−9770号公報
【特許文献5】特開平11−333282号公報
【特許文献6】特開2002−306953号公報
【特許文献7】特開2004−167448号公報
【特許文献8】特開2004−202430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特開2004−202430号公報に記載されたプレート型触媒層反応器で用いられる伝熱プレートは、複雑な形状をしており、かつ、隣り合う2枚の伝熱プレートの最小間隔も充填される触媒の粒径に対して十分に広いとは言い難い。このような状況で、当該隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に、伝熱プレートの上方から触媒を投入した
場合、触媒が落下中にせり合って、伝熱プレート間にブリッジと呼ばれる架橋を生じやすい。当該ブリッジを生じると、該伝熱プレート間に形成された触媒層が不均一な状態になり、反応生成物の収率低下等の問題を生じることがある。
上記ブリッジを低減するための方法として触媒の粒の大きさを小さくする方法が考えられる。しかし、小さな粒の触媒を充填したプレート型触媒層反応器に反応原料ガスを流した場合、過度の圧力損失を引き起こし、反応生成物の収率低下等の問題を生じることがある。
従って、本発明の課題は、プレート型触媒層反応器に反応原料ガスを流したときに、過度の圧力損失を引き起こすことのない、触媒層を備えたプレート型触媒層反応器を提供することにある。
又、本発明の課題は、上記プレート型触媒層反応器において、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に、伝熱プレートの上方から触媒を投入した場合であっても、触媒が落下中にせり合って、伝熱プレート間にブリッジと呼ばれる架橋を生じさせない触媒の充填方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に触媒が充填されてなる触媒層を備えたプレート式触媒層反応器の、伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒の粒径(d)と伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)に着目し、本発明を完成するに至った。
また、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、複数の伝熱プレートを備えたプレート式触媒層反応器の、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に、搬送部材を備えた触媒充填手段を用いて、伝熱プレートの上方から粒状の触媒を充填する場合に、投入される触媒の搬送部材の終端部における状態に着目し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0007】
[1] 隣り合う2枚の伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式触媒層反応器であって、前記触媒層は、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に触媒が充填されてなり、前記伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒の粒径(d)と前記伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)が、0.45より大きいことを特徴とする、プレート式触媒層反応器。
[2] 前記伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒の粒径(d)と前記伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)が、0.45〜0.90であることを特徴とする、[1]に記載のプレート式触媒層反応器。
[3] 前記伝熱プレートは、2枚の波板を対面させて形成された伝熱プレートであり、
前記伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒が、円板形状又は板形状の触媒であり、前記触媒の厚さ(q)と前記伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(q/S)が、0.60より小さく、前記触媒の粒径(d)が、前記最小間隔(S)となる空間を形成する伝熱プレートを構成する波板の波の周期(L)より小さいことを特徴とする、[1]に記載のプレート式触媒層反応器。
[4] 前記伝熱プレートは、2枚の波板を対面させて形成された伝熱プレートであり、前記伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒が、棒形状の触媒であり、前記棒形状の触媒の軸方向に対して垂直に切った断面外周の2点間を結ぶ距離で最長の長さ(t)と前記伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(t/S)が、0.60より小さく、前記触媒の粒径(d)が前記最小間隔(S)となる空間を形成する伝熱プレートを構成する波板の波の周期(L)より小さいことを特徴とする、[1]に記載のプレート式触媒層反応器。
[5] 複数の伝熱プレートを備えたプレート式触媒層反応器の、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に、搬送部材を備えた触媒充填手段を用いて、前記伝熱プレートの上方から触媒を充填する方法であって、前記触媒が、前記搬送部材の終端部において上下
方向に重なり合っていないことを特徴とする、触媒を充填する方法。
[6] 前記搬送部材を備えた触媒充填手段が、ホッパー及び搬送部材を備えた触媒充填装置であることを特徴とする、[5]に記載の触媒を充填する方法。
[7] 前記触媒の粒径(d)と前記隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)が、0.45より大きいことを特徴とする、[5]又は[6]に記載の触媒を充填する方法。
[8] 前記触媒の粒径(d)と前記隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)が、0.45〜0.90であることを特徴とする、[5]又は[6]に記載の触媒を充填する方法。
[9] 隣り合う2枚の伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式触媒層反応器に、有機化合物原料ガスを供給し、前記有機化合物原料ガスを反応させて反応生成物を製造する製造方法であって、前記プレート式触媒層反応器が、[1]〜[4]のいずれか一に記載のプレート式触媒層反応器であることを特徴とする、反応生成物を製造する製造方法。
[10] 隣り合う2枚の伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式触媒層反応器に、有機化合物原料ガスを供給し、前記有機化合物原料ガスを反応させて反応生成物を製造する製造方法であって、前記プレート式触媒層反応器が、[5]〜[8]のいずれか1に記載の触媒を充填する方法で触媒が充填されたプレート式触媒層反応器であることを使って反応することを特徴とする、反応生成物を製造する製造方法。
[11] 前記有機化合物原料ガスの負荷量が、触媒1リットル当たり150リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]以上であることを特徴とする、[9]または[10]に記載の製造方法。
[12] 前記反応生成物が、メタクロレイン及びメタクリル酸の少なくとも一方、アクロレイン及びアクリル酸の少なくとも一方、マレイン酸、フタル酸、スチレン、酸化エチレン、又は、ブタジエンである、[9]〜[11]のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プレート型触媒層反応器に反応原料ガスを流したときに、過度の圧力損失を引き起こすことのない、触媒層を備えたプレート型触媒層反応器を提供することができる。
また、本発明によれば、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に、伝熱プレートの上方から粒状の触媒を投入した場合であっても、触媒が落下中にせり合って、伝熱プレート間にブリッジと呼ばれる架橋を生じさせない触媒の充填方法が提供できる。
また、本発明によれば、上記隣り合う2枚の伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式触媒層反応器を用いることで、単位触媒当たりの有機化合物原料ガスの処理負荷量を高めた場合であっても過度の圧力条件を回避して、有機化合物原料ガスを含む反応原料ガスを供給し、反応生成物を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のプレート式触媒層反応器は、隣り合う2枚の伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式触媒層反応器であって、前記触媒層は、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に触媒が充填されてなり、前記伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒の粒径(d)と前記伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)が、0.45より大きいことを特徴とする。
【0010】
本発明に適用できるプレート式触媒層反応器としては、円弧、楕円弧、矩形又は多角形の一部に賦形された波板の2枚を対面させ、当該両波板の凸面部を互いに接合して複数の熱媒体流路を形成した伝熱プレートを、複数配列してなりかつ隣り合った伝熱プレートの波板凸面部と波板凹面部とが対面して所定間隔の触媒層を形成した反応器が好適に例示できる。ここで、上記「円弧、楕円弧、矩形又は多角形の一部に賦形された波板」とは、波
板の波の形状が円弧、楕円弧、矩形又は多角形の一部の形状であることを意味する。
【0011】
該プレート式触媒層反応器の例を、図1〜図5に基づいて具体的に説明する
図1において、(1)は2枚の波板を対面させて形成された伝熱プレートであり、(2)は当該伝熱プレート(1)の内側に形成された複数の熱媒体流路であり、また(3)は隣り合う2枚の伝熱プレート(1)に挟まれた空間である。該空間に触媒が充填され触媒層が形成される。反応原料ガスは反応ガス入口(4)より供給され、触媒層を通過し、反応によって目的生成物が生産された後、反応ガス出口(5)よりプレート式触媒反応器の外に排出される。当該反応原料ガスの流れ方向に制限はないが、通常、下降流か、或いは上昇流に設定される。
また、熱媒体は伝熱プレート(1)の内側に形成された複数の熱媒体流路(2)に供給され、反応原料ガスの流れ方向に対して十字流の方向に流される。供給された熱媒体は、伝熱プレート(1)を通して、発熱反応の場合は触媒層を冷却し、一方、吸熱反応の場合は触媒層を加熱した後にプレート式触媒反応器の外に排出される。
上記プレート式触媒層反応器は、単一の触媒層の平均層厚さで構成することができ、また図1に記載の通り触媒層の平均層厚さが異なる複数の反応帯域に分割することもできる。上記複数の反応帯域には、独立して熱媒体を供給することが可能である。例えば、発熱反応の場合、反応により生じた熱を、伝熱プレートを隔てて除熱し、触媒層内の温度を独立して制御することが可能である。
【0012】
図2〜図5によって上記伝熱プレート(1)の構成を更に詳しく説明する。
図2において、(1)は2枚の波板(11)を接合して形成された伝熱プレート(1)である。該波の形状は円弧の一部で構成されているが、特に限定されず、製作の都合や反応原料ガスの流動を考慮して決定することができる。また、波の高さ(H)と波の周期(L)も特に制限はないが、高さ(H)は5〜50mm、周期(L)は10〜100mmが適当であるが、触媒層内での反応に伴う反応熱とそれを除熱或いは加熱する熱媒体の流量から決定される。
【0013】
図3〜図5[図3は図1のIII部の拡大図であり、図4は図1のIV部の拡大図であり図5は図1のV部の拡大図である]はそれぞれ反応原料ガスの入口近傍部分、中間部及び反応原料ガスの出口近傍の伝熱プレート(1)の形状を示す。
該伝熱プレート(1)は、円弧又は楕円弧に賦形された波板(11)の2枚を対面させ、その波板(11)の凸面部(a)を互いに接合して複数の熱媒体流路(2)が形成されたものである。そして、隣り合う2枚の伝熱プレート(1)の波板凸面部(a)と波板凹面部(b)とを所定間隔で対面させて空間(3)が形成される。
ここで、図中のS1、S2、及びS3は、上記III部、IV部及びV部における、隣り合う2枚の伝熱プレート(1)に挟まれた空間(3)の最小間隔を示す。該S1、S2、及びS3は波板(11)に賦形される円弧、又は楕円弧の形状を適宜変えることにより変化させることができる。また、図3〜図5において、最小間隔は、S1<S2<S3に設定されている。なお、本発明のプレート式触媒層反応器において、伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)とは、一つのプレート式触媒層反応器において、最小間隔(S)が複数存在する場合は、複数存在する最小間隔のうち最も小さい間隔(S)を意味し、例えば、上記の如く、S1、S2、及びS3が存在する場合、S1、S2、及びS3で最小のもの、即ち、図3〜5において、S1<S2<S3の場合はS1のことを言う。
上記S1は5〜20mm、S2は10〜30mm、S3は15〜50mm程度に設定されることが一般的である。好ましくは、S1は10〜15mm、S2は15〜20mm、S3は20〜40mmが選定される。
【0014】
図1において、配列された隣り合う伝熱プレート(1)の間隔は、反応ガス入口(4)の位置における間隔(P1)と反応ガス出口(5)の位置における間隔(P2)とは同寸
法である。即ち、隣り合う伝熱プレート(1)は互いに平行に複数配列して配置されている。該伝熱プレート(1)の薄板の板厚には、2mm以下、好適には1mm以下の鋼板が用いられる。
【0015】
伝熱プレート(1)の反応ガス流れ方向の長さは、通常0.5〜10メートル(m)であり、好ましくは0.5〜5m、さらに好ましくは0.5〜3mである。通常入手できる薄板鋼板のサイズから、1.5m以上の時は2枚のプレートを接合するか、組み合わせて用いることもできる。
伝熱プレート(1)の反応ガスの流れ方向と直角の方向(図1では紙面に直角方向の奥行き)の長さは特に制限はなく、通常0.1から20mが用いられる。好ましくは3から15m、より好ましくは6から10mである。
また、伝熱プレート(1)の反応ガスの流れ方向と直角の方向には、隣り合う2枚の伝熱プレート(1)の間に、各伝熱プレート(1)と直交するように仕切り板を設置することができる。該仕切り板は、触媒の充填性、反応器のメンテナンス性を考慮して、設置間隔が適宜選択される。該設置間隔は20〜1000ミリメートルであることが好ましい。
伝熱プレート(1)は図3〜図5に示した配置と同様に積層され、積層される枚数には制限は無い。実際的には、反応に必要な触媒量から決定されるが、数十枚から数百枚である。
また、目的物の生産量のために必要なプレート式触媒層反応器全体の触媒充填量は、用いる触媒の反応速度や反応原料ガス中の原料成分濃度などによって決定され、それぞれのプレート式触媒層反応器によって異なる。
【0016】
本発明に用いられる触媒の形状としては、直径が3〜15ミリメートル(mm)の球形状、最長径が3〜15mmのペレット形状、円外径が3〜15mm、高さが3〜15mmの円柱形状、または円柱の中心に穴の開いたリング形状であって、円外径が3〜15mm、円内径が1〜3mm、高さが3〜15mmの形状のものが好適に例示できる。
また、本発明に用いられる触媒の形状として、厚さが2〜4mm、直径が9〜30mmの円板形状、厚さが2〜4mm、厚さ方向に対して垂直に切った断面外周の2点間を結ぶ距離で最長の長さが8〜30mmの板形状や、棒形状の軸方向の長さが9〜30mm、棒形状の軸方向に対して垂直に切った断面外周の2点間を結ぶ距離で最長の長さ(断面が円の場合は直径)が2〜4mmの棒形状を好適に例示できる。
本発明における触媒の粒径(d)とは、触媒の形状が上記球形状の場合はその直径を、ペレット形状の場合はその最長径を、円柱形状またはリング形状の場合は、円外径または高さのうち長い方の長さを、円板形状の場合は円外径を、板形状の場合は厚さ方向に対して垂直に切った断面外周の2点間を結ぶ距離で最長の長さを、棒形状の場合は軸方向の長さをいう。
上記ペレット形状の最長径とは、2枚の平行面でペレットを挟んだときの2面の距離であって、ペレットをあらゆる角度に動かしたときに最大となる距離をいう。
【0017】
上述のように、本発明のプレート式触媒層反応器において、伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒の粒径(d)と上記伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)は、0.45より大きい。当該数値範囲は、反応原料ガスを流通させたときの圧力損失の観点から設定されたものである。上記[d/S]は、0.5より大きいことが好ましい。
但し、一つのプレート式触媒層反応器において、最小間隔(S)が複数存在する場合(上記の如くS1、S2、及びS3が存在する場合)の上記比(d/S)は、上記触媒の粒径(d)と、複数存在する最小間隔のうち最も小さい間隔(S)との比である。上記[d/S]が0.45以下の場合は、伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒の粒径(d)が小さくなり、反応原料ガスを流通させたときに、過度な圧力損失を引き起こす。
圧力損失が大きい場合、反応器入口圧力が高くなり、それに従い圧縮機の吐出圧力が高
くなることによって圧縮に使われるエネルギーが増大し、電気や蒸気の使用量が増大する。また、酸化反応では特に著しいが、反応器の差圧が大きくなり、反応圧力が高くなるほど反応の選択率が低下する。上記圧力損失は、同じ条件での反応において、[d/S]が0.45の場合に比べて、当該[d/S]を調整することにより、5%以上低下させることが好ましく、10%以上低下させることがより好ましく、15%以上低下させることが最も好ましい。
【0018】
一方、伝熱プレート間にブリッジと呼ばれる架橋を生じさせないという観点からは、伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒の粒径(d)と隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)は、0.3〜0.9であることが好ましく、0.4〜0.8であることがより好ましく、0.4〜0.7であることが特に好ましい。
【0019】
反応原料ガスを流通させたときの圧力損失の観点、及び、伝熱プレート間にブリッジと呼ばれる架橋を生じさせないという観点の双方を考慮した場合は、伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒の粒径(d)と伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)は、0.45〜0.90であることが好ましく、0.45〜0.80であることがより好ましく、0.50〜0.70であることが特に好ましい。上記[d/S]が0.90より大きいとブリッジを起こし易い傾向にある。
また、上記条件は、用いられる触媒の形状に特に制限はないが、球形状、ペレット形状、円柱形状、及びリング形状からなる群から選ばれるいずれかの形状の触媒が用いられた場合、より好ましい。
さらに、上記プレート式触媒層反応器において、上記伝熱プレートが、2枚の波板を対面させて形成された伝熱プレートである場合、反応原料ガスの流れ方向に対して形状的に周期性をもっている伝熱プレートに挟まれた空間に偏り無く触媒を充填するという観点から、触媒の粒径(d)が最小間隔(S)となる空間を形成する伝熱プレートを構成する波板の周期(L)好ましくはその1/2を超えないことが好ましい。すなわち、上記[d/S]は[L/S]より小さいことが好ましく、上記[d/S]は[L/S]の1/2より小さいことがより好ましい。更に、上記[d/S]は、プレートに挟まれた空間に充填可能であることという形状的な制約の観点から、球形状、ペレット形状、円柱形上、及びリング形状からなる群から選ばれるいずれかの形状の触媒の場合、1.00より小さいことが好ましい。
【0020】
上記プレート式触媒層反応器において、上記伝熱プレートが、2枚の波板を対面させて形成された伝熱プレートであり、伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒が、上記円板形状又は板形状の触媒である場合、当該触媒の厚さ(q)(図8参照)と伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(q/S)が0.60より小さく、触媒の粒径(d)が、最小間隔(S)となる空間を形成する伝熱プレートを構成する波板の波の周期(L)より小さいことが好ましい。
また、上記[q/S]は、0.50より小さいことがより好ましい。当該数値は、充填時に伝熱プレート間にブリッジと呼ばれる架橋を生じさせないという観点から設定される。一方、上記[q/S]は、反応原料ガスを流通させたときの圧力損失の観点から、0.20より大きいことが好ましく、0.30より大きいことがより好ましく、0.40より大きいことが更に好ましい。
さらに、触媒の粒径(d)は、最小間隔(S)となる空間を形成する伝熱プレートを構成する波板の波の周期(L)の1/2より小さいことがより好ましい。
触媒の粒径(d)が、最小間隔(S)となる空間を形成する伝熱プレートを構成する波板の波の周期(L)より大きいとブリッジを起こし易い傾向にある。
【0021】
上記プレート式触媒層反応器において、上記伝熱プレートが、2枚の波板を対面させて
形成された伝熱プレートであり、伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒が、上記棒形状の触媒である場合、当該棒形状の触媒の軸方向に対して垂直に切った断面外周の2点間を結ぶ距離で最長の長さ(t)(図9参照)と伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(t/S)が0.60より小さく、触媒の軸方向の長さ(W)(図9参照)が最小間隔(S)となる空間を形成する伝熱プレートを構成する波板の波の周期(L)より小さいことが好ましい。
また、上記[t/S]は、0.50より小さいことがより好ましい。当該数値は、充填時に伝熱プレート間にブリッジと呼ばれる架橋を生じさせないという観点から設定される。一方、上記[t/S]は、反応原料ガスを流通させたときの圧力損失の観点から、0.20より大きいことが好ましく、0.30より大きいことがより好ましく、0.40より大きいことが更に好ましい。
さらに、触媒の軸方向の長さ(W)が、最小間隔(S)となる空間を形成する伝熱プレートを構成する波板の波の周期(L)の1/2より小さいことがより好ましい。
触媒の軸方向の長さ(W)が最小間隔(S)となる空間を形成する伝熱プレートを構成する波板の波の周期(L)より大きいとブリッジを起こし易い傾向にある。
尚、本発明において、棒形状の触媒の場合、触媒の粒径(d)と触媒の軸方向の長さ(W)は同義である。
【0022】
本発明の触媒を充填する方法(以下、単に充填方法ともいう)は、複数の伝熱プレートを備えたプレート式触媒層反応器の、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に、搬送部材を備えた触媒充填手段を用いて、前記伝熱プレートの上方から触媒を充填する方法であって、前記触媒が、前記搬送部材の終端部において上下方向に重なり合っていないことを特徴とする。ここで、上記触媒が上下方向に重なり合っていないこととは、触媒が搬送部材の終端部において単層であることを意味する。
【0023】
本発明の充填方法における搬送部材を備えた触媒充填手段は、触媒が、搬送部材の終端部において上下方向に重なり合わないように調整できる充填手段であれば特に限定されない。以下、上記搬送部材を備えた触媒充填手段の好適な例を説明する。
【0024】
例えば、図10に示す3辺に枠を備えた取っ手付SUS製板が挙げられる。更に好適なものとしては、図11に示す、触媒粒径(d)よりも低い高さのガイド板を備え、3辺に枠を有するSUS製板が挙げられる。
これら触媒充填手段を用いて触媒を充填する場合は、搬送部材である板の上に充填する触媒を乗せた後に、取っ手を持って左右に振って乗せた触媒を均して上下に重なり無く分散し、次いで、板の枠を持たない一辺から、当該一辺において触媒が上下方向に重なり合わないようにして触媒を投入するとよい。
【0025】
上記搬送部材である板の枠を持たない一辺の長さは、プレート式触媒層反応器の幅の50%〜100%、好ましくは70%〜100%、更に好ましくは80%〜95%の長さのものを用いることができる。隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に、伝熱プレートと直交するように仕切り板が設けられる場合は、上記板の枠を持たない一辺の長さは、上記設けられた仕切り板の間隔(すなわち、隣り合う2枚の仕切り板で区切られた幅)の50%〜100%、好ましくは70%〜100%、更に好ましくは80%〜95%の長さのものを用いることができる。
上記搬送部材である板の枠を持たない一辺の長さがプレート式触媒層反応器の幅、或いは仕切り板の間隔の50%より小さい場合は、充填層の中心部と両脇部とで充填密度の異なった不均一な充填となる可能性がある。一方、100%より大きい場合は、プレート式触媒層反応器の幅、或いは仕切り板の間隔を超えた長さになり、所定の箇所以外に触媒がこぼれてしまう可能性がある。
上記搬送部材である板の枠を持たない一辺は、反応原料ガス入口の上方50センチメー
トル以内、好ましくは30センチメートル以内、更に好ましくは10cm以内の高さに位置させて、触媒を充填するのが良い。50cmより高い場合、伝熱プレートの最初の波形部に触媒が落下する際の衝撃で、触媒に過度な割れが生じる可能性がある。
【0026】
本発明の充填方法において、上記搬送部材を備えた触媒充填手段は、ホッパー及び搬送部材を備えた触媒充填装置であることが好ましい。以下、本発明の充填方法に使用するのに好適な触媒充填装置を例示する。
第一の触媒充填装置としては、図6に示す、粒子状の触媒を貯留するホッパー(6)と、該ホッパーから流下する触媒を載せて伝熱プレートの上方へ搬送供給するためのベルトコンベア(7)を備えた装置が挙げられる。当該ベルトコンベアの横幅(ベルトコンベアのベルトが進行する方向と直角の方向)は、適宜設定することが可能である。
当該触媒充填装置には、図6に示すように、ベルトコンベアの上面に、仕切り壁(8)を設けても良い。そして、仕切り壁(8)とベルトコンベアの両端に設置された壁との間隔(10)は、上記隣り合う2枚の伝熱プレート(1)間に設置された、隣り合う2枚の仕切り板で区切られた幅(すなわち、仕切り板の設置間隔)の50%〜100%であることが好ましく、より好ましくは70%〜100%であり、更に好ましくは80%〜95%である。
これによって、仕切り板の設置間隔ごとに触媒搬送列を形成することができる。仕切り板の設置間隔ごとに触媒搬送列を形成させて、触媒を充填することで、隣り合う2枚の仕切り板で区切られた幅における、触媒層の均一性が向上するため好ましい。上記仕切り壁(8)の個数、又は上記触媒搬送列の個数は、特に限定されない。
【0027】
上記ホッパーの下部には、ホッパーから流下する触媒の量を制御するための制御部材(ダンパー等)が設置されていることが好ましい。また、各触媒搬送列には、搬送供給される触媒の層厚さを調整するための層厚さ調整板(9)が設置されていることが好ましい。上記制御部材、及び層厚さ調整板の高さを調整することで、ベルトコンベアの終端部における搬送触媒の層の状態、即ち、上下方向の重なり状態を制御することが可能である。
【0028】
上記触媒充填装置には、ベルトコンベアの搬送終端部から触媒を各投入部(上記隣り合う伝熱プレートに挟まれた空間で、かつ隣り合う仕切り板で区切られた空間)に案内するために、シュートを設けてもよい。
【0029】
第二の触媒充填装置としては、図7に示す、粒子状の触媒を貯留するホッパー(14)と、該ホッパーから流下する触媒を載せて伝熱プレートの上方へ搬送供給するための触媒搬送通路(12)(以下、トラフともいう)と、該トラフに振動を付与する振動源(13)とを備えた装置が挙げられる。当該トラフの横幅(トラフ上の触媒が進行する方向と直角の方向)は、適宜設定することが可能である。
上記第一の触媒充填装置と同様に、トラフの上面に、仕切り壁を設けても良い。そして、仕切り壁とトラフの両端の壁との間隔は、上記隣り合う2枚の伝熱プレート(1)間に設置された、隣り合う2枚の仕切り板で区切られた幅(すなわち、仕切り板の設置間隔)の50%〜100%であることが好ましく、より好ましくは70%〜100%であり、更に好ましくは80%〜95%である。
これによって、各仕切り板の設置間隔ごとに触媒搬送列を形成することができる。仕切り板の設置間隔ごとに触媒搬送列を形成させて、触媒を充填することで、隣り合う2枚の仕切り板で区切られた幅における、触媒層の均一性が向上するため好ましい。上記仕切り壁の個数、又は上記触媒搬送列の個数は、特に限定されない。
【0030】
上記触媒充填装置には、トラフの搬送終端部から触媒を各投入部(上記隣り合う伝熱プレートに挟まれた空間で、かつ隣り合う仕切り板で区切られた空間)に案内するために、シュートを設けてもよい。
【0031】
上記トラフに振動を付与する振動源は、所定の振動数でトラフを振動できるものであれば特に限定されない。トラフに振動を伝達することでトラフ上の触媒が搬送終端部方向へ移動する。該振動源としては、電気コイルと永久磁石とを組み合わせた電磁式の振動体が好適に例示できる。
【0032】
上記ホッパーの下部には、ホッパーから流下する触媒の量を制御するための制御部材(ダンパー等)が設置されていることが好ましい。
また、各触媒搬送列には、搬送供給される触媒の層厚さを調整するための層厚さ調整板が設置されていることが好ましい。この層厚さ調整板の高さの調整、上記振動源の振動数の調整、トラフの長さ、幅、及び傾きの調整、並びにこれらの組合せを用いることで、トラフの終端部における搬送触媒の層の状態、即ち、上下方向の重なり状態を制御することが可能である。
【0033】
触媒が良好な状態で充填されていることの確認は、触媒の充填高さの理論値と実測値との比較(例えば理論値に対する実測値の誤差が5%以内)、及び、隣り合う2枚の仕切り板
で区切られた各区画間での触媒の充填高さの比較(例えば各区画間の充填高さの差が充填高さの5%以内)によって確認することができる。
【0034】
上記の方法で搬送部材の終端部における搬送触媒の層の状態、即ち、上下方向の重なり状態を制御し、搬送部材の終端部における搬送触媒の重なり状態が上下方向に重なり合っていない状態で触媒を投入することによって、伝熱プレートの上方から粒状の触媒を投入した場合であっても、触媒が、上記空間(3)を落下中にせり合って伝熱プレート間にブリッジを形成することなく、均一に充填される。
【0035】
上記触媒充填装置は、伝熱プレートの上方において、台車などの位置変更機構に保持されて、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間が並ぶ方向(A)、及び、当該方向(A)に直交する方向に、位置変更自在となるように構成されていてもよい。当該構成により、触媒充填装置は、伝熱プレートの上方において、縦横の位置変更が自在となり、触媒の充填作業がより効率的となる。
【0036】
本発明の製造方法は、隣り合う2枚の伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式触媒層反応器に、有機化合物原料ガスを供給し、有機化合物原料ガスを反応させて反応生成物を製造する製造方法であって、当該プレート式触媒層反応器が、本発明のプレート式触媒層反応器であることを特徴とする。
また、本発明の製造方法は、隣り合う2枚の伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式触媒層反応器に、有機化合物原料ガスを供給し、有機化合物原料ガスを反応させて反応生成物を製造する製造方法であって、当該プレート式触媒層反応器が、本発明の充填方法で触媒が充填されたプレート式触媒層反応器であることを特徴とする。
【0037】
本発明の製造方法に適用可能な反応は、発熱又は吸熱を伴う反応であれば特に限定されず、以下に示すものが好適に例示できる。
発熱を伴う反応としては、(1)エチレンと酸素から酸化エチレンを生成する反応、(2)炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシヤリーブタノールからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種、または、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種と、酸素から、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド、並びに炭素数3及び4の不飽和脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の反応生成物を生成する反応、(3)炭素数4以上の脂肪族炭化水素と、酸素からマレイン酸 を生成する反応、(4)o−キシレンと酸素からフタル酸
を生成する反応、(5)オレフィンの水素化によりパラフィンを生成する反応、(6)カルボニル化合物の水素化によりアルコールを生成する反応、(7)クメンハイドロパーオキサイドの酸分解によりアセトンとフェノールを生成する反応、(8)ブテンの酸化脱水素によるブタジエンの製造が挙げられる。
一方、吸熱を伴う反応としては、エチルベンゼンの脱水素によりスチレンを生成する反応が挙げられる。
すなわち、本発明の製造方法を用いて製造される反応生成物としては、メタクロレイン及びメタクリル酸の少なくとも一方、アクロレイン及びアクリル酸の少なくとも一方、マレイン酸、フタル酸、スチレン、酸化エチレン、又は、ブタジエンが好適に例示される。
また、これら反応生成物を得るための反応条件は、公知の反応条件を適用することが可能である。
【0038】
本発明の製造方法に用いられる反応原料ガスは、上記反応に適用されうる反応原料ガスであれば、特に限定されない。本発明の製造方法において上記反応原料ガスは上記プレート式触媒層反応器に供給される。
以下に上記(2)に記載の反応生成物の製造方法における反応原料ガスの例について説明する。上記(2)に係る反応原料ガスに含まれる有機化合物原料ガスは、上述のように、炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシヤリーブタノールからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種、または、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種である。
上記炭素数3の炭化水素としては、プロピレン、プロパンが挙げられる。
上記炭素数4の炭化水素としては、n−ブテン、イソブテン、n−ブタン、イソブタンが挙げられる。
上記炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドとしては、アクロレイン、メタクロレインが挙げられる。
また、上記反応生成物である炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド、並びに炭素数3及び4の不飽和脂肪酸における、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドとしては、アクロレイン、メタクロレインが挙げられ、炭素数3及び4の不飽和脂肪酸としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
【0039】
上記(2)に係る反応原料ガスは、有機化合物原料ガス、分子状酸素、及び必要に応じて窒素や水蒸気などの反応に不活性なガスを含む。
上記有機化合物原料ガスは、1種のみの構成としてもよく、また2種以上を混合した混合物としてもよい。上記有機化合物原料ガスの組成は、目的に応じて適宜選択される。
上記有機化合物原料ガスの、上記反応原料ガスに対する含有量は、特に限定されないが、有機化合物原料ガスが炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシヤリーブタノールからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種の場合、該有機化合物原料ガスの総量として、5〜13モル%であることが好ましく、有機化合物原料ガスが炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種の場合、該有機化合物原料ガスの総量として、1〜13モル%であることが好ましい。また、上記分子状酸素の、上記反応原料ガスに対する含有量は、有機化合物原料ガスが炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシヤリーブタノールからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種の場合、該有機化合物原料ガスの総量の1〜3倍量であることが好ましく、有機化合物原料ガスが炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種の場合、該有機化合物原料ガスの総量の0.5〜3倍量であることが好ましい。
上記不活性なガスの、上記反応原料ガスに対する含有量は、上記反応原料ガス全量から有機化合物原料ガスの総量と分子状酸素量を除いた値となる。なお、上記不活性なガスは、反応系から排出される排気ガスを再循環した不活性ガスを用いてもよい。
【0040】
本発明の製造方法には、目的に応じて、公知の触媒を用いることが可能である。炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシヤリーブタノールからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種、または、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種、並びに、分子状酸素を含む反応原料ガスを供給し、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド、並びに炭素数3及び4の不飽和脂肪酸からなる群から選ばれる一種以上の反応生成物を製造する触媒の組成としては、モリブデン、タングステン、ビスマスなどを含む金属酸化物、または、バナジウムなどを含む金属酸化物が挙げられる。
【0041】
上記有機化合物原料ガスがプロピレンの場合、上記金属酸化物として、下記一般式(1)で表される化合物が好適に例示される。
Mo(a)Bi(b)Co(c)Ni(d)Fe(e)X(f)Y(g)Z(h)Q(i)Si(j)O(k)・・・式(1)
上記式(1)中、Moはモリブデン、Biはビスマス、Coはコバルト、Niはニッケル、Feは鉄、Xはナトリウム、カリウム、ルビジュウム、セシウム及びタリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素、Yはほう素、りん、砒素及びタングステンからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素、Zはマグネシウム、カルシウム、亜鉛、セリウム及びサマリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素、Qはハロゲン元素、Siはシリカ、Oは酸素を表す。
また、a、b、c、d、e、f、g、h、i、j及びkは、それぞれMo、Bi、Co、Ni、Fe、X、Y、Z、Q、Si及びOの原子比を表し、モリブデン原子(Mo)が12のとき、0.5≦b≦7、0≦c≦10、0≦d≦10、1≦c+d≦10、0.05≦e≦3、0.0005≦f≦3、0≦g≦3、0≦h≦1、0≦i≦0.5、0≦j≦40であり、kは各元素の酸化状態によって決まる値である。
【0042】
一方、上記有機化合物原料ガスがアクロレインの場合、上記金属酸化物として、下記一般式(2)で表される化合物が好適に例示される。
Mo(12)V(a)X(b)Cu(c)Y(d)Sb(e)Z(f)Si(g)C(h)O(i)・・・式(2)
上記式(2)中、XはNb及びWからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を示す。YはMg、Ca、Sr、BaおよびZnからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を示す。ZはFe、Co、Ni、Bi、Alからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を示す。但し、Mo、V、Nb、Cu、W、Sb、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Fe、Co、Ni、Bi、Al、Si、CおよびOは元素記号である。a、b、c、d、e、f、g、hおよびiは各元素の原子比を表し、モリブデン原子(Mo)12に対して、0<a≦12、0≦b≦12、0≦c≦12、0≦d≦8、0≦e≦500、0≦f≦500、0≦g≦500、0≦h≦500であり、iは前記各元素のうちCを除いた各元素の酸化状態によって決まる値である。
【0043】
本発明の製造方法では、単位触媒当たりの有機化合物原料ガスの処理負荷量を高めたときに、触媒を通過する反応ガスの過度の圧力損失の増大を防止できる。したがって、有機化合物原料ガスの負荷量が、触媒1リットル当たり150リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]以上で好適に目的反応生成物を製造できる。有機化合物原料ガスの負荷量が、触媒1リットル当たり150〜1000リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]であることが好ましく、触媒1リットル当たり170〜300リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]であることがより好ましく、触媒1リットル当たり200〜250リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]であることが特に好ましい。上記有機化合物原料ガスの負荷量が、触媒1リットル当たり150リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]以上とは、上記単位触媒当たりの有機化合物原料ガスの
処理負荷量を高めた状態を意味する。
【0044】
上記有機化合物原料ガスが、炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシヤリーブタノールからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種である場合は、上記有機化合物原料ガスの負荷量は、触媒1リットル当たり170〜290リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]であることがより好ましく、触媒1リットル当たり200〜250リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]であることが特に好ましい。
【0045】
上記有機化合物原料ガスが、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種である場合は、上記有機化合物原料ガスの負荷量は、触媒1リットル当たり180〜300リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]であることがより好ましく、触媒1リットル当たり200〜250リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]であることが特に好ましい。
【0046】
上記伝熱プレートの熱媒体流路に供給される熱媒体の温度は、200〜600℃で供給されることが好ましい。有機化合物原料ガスが、炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシヤリーブタノールからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種のときは、250〜450℃で供給されることが好ましく、より好ましくは、300〜420℃である。該有機化合物原料ガスが、プロピレンの場合は、熱媒流路に供給される熱媒体の温度が250〜400℃であることが好ましく、320〜400℃であることがより好ましい。
一方、有機化合物原料ガスが、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる有機化合物原料ガスの少なくとも1種のときは、200〜350℃で熱媒流路に供給されることが好ましく、より好ましくは、250〜330℃である。該有機化合物原料ガスがアクロレインの場合は、熱媒流路に供給される熱媒体の温度が200〜350℃であることが好ましく、250〜320℃であることがより好ましい。
【0047】
上記熱媒体を流す方向は、反応ガスの流れ方向と直交させることが好ましい。
また、熱媒体の入口温度と出口温度の温度差は0.5〜10℃であることが好ましく、2〜5℃であることがより好ましい。熱媒体流路のそれぞれにおいて、1〜複数の流路毎に、熱媒体の流量、温度、及び流す方向を変えることも可能である。
【0048】
プレート式触媒層反応器が図1に記載の如く触媒層の平均層厚さが異なる複数の反応帯域で構成される場合、熱媒体は、複数の反応帯域にそれぞれ最適な温度で供給される。
また、一つの反応帯域においても、1〜複数の流路毎に、独立して同温の熱媒体を同じ方向に流す場合も、向流(カウンターフロー)方向に流す場合もある。また、ある反応帯域の熱媒体流路に供給され排出された熱媒体を同じあるいは別の反応帯域の熱媒体流路に供給することも可能である。
同じ反応帯域では、熱媒体の温度は基本的に同じであることが好ましいが、ホットスポット現象が発生しない範囲で変化させることは可能である。
【0049】
上記熱媒体流路に供給される熱媒体の流量は反応熱量と伝熱抵抗から決定される。しかし、伝熱抵抗は、通常、液体である熱媒体より反応原料ガスの気体側にあるので問題になることは少ないが、熱媒体流路内の液線速度は好適には0.3m/s以上が採用される。反応原料ガス側伝熱抵抗に比較し、熱媒体側の抵抗が小さく問題にならない値とするには、0.5〜1.0m/sが最も適当である。大きすぎると熱媒体の循環ポンプの動力が大きくなって経済面で好ましくない。
なお、用いられる熱媒体は、公知のものを使用することが可能である。
【0050】
本発明の製造方法において、反応圧力は、通常、常圧から3000kPa(キロパスカル)、好ましくは常圧から1000kPa、より好ましくは常圧から300kPaである。
【実施例】
【0051】
以下実施例等を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0052】
触媒Aとして、Sb(100)Ni(43)Mo(35)V(7)Nb(3)Cu(9)Si(20)O(x)の組成の触媒粉末を、常法により製造した(酸素の組成Xは各々の金属酸化物の酸化状態によって定まる値である)。この触媒粉末を成型し、外径5mmφ、内径2mmφ、及び高さ4mmのリング状触媒を製造した。
また、触媒Bとして、Sb(100)Ni(43)Mo(35)V(7)Nb(3)Cu(9)Si(20)O(x)の組成の触媒粉末を、常法により製造した(酸素の組成Xは各々の金属酸化物の酸化状態によって定まる値である)。この触媒粉末を成型し外径4mmφ、高さ3mmのペレット状触媒を製造した。
一方、プレート式触媒層反応器は図1に示す構造のものを用いた。すなわち、用いた伝熱プレートは、波型形状の薄いステンレスプレート(板厚1mm)の2枚を対面・接合して反応温度調節用の熱媒体流路が形成された伝熱プレートである。
上記伝熱プレートを図1に示すように平行に設置し、その間隔(図1に示すP1及びP2)を26mmに調整した。すなわち、隣り合う2枚の伝熱プレートの間に、触媒が充填され触媒層が形成可能な構造とした。触媒層が形成された場合は、波形形状の仕様によって、表1に示すように、反応原料ガスの流れ方向の上流から第1反応帯域(S1)、第2反応帯域(S2)、および第3反応帯域(S3)に分割される。
図2に示す波型形状の周期(L)、及び高さ(H)、並びに、波数及び伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)を表1に示す。また、伝熱プレートの幅は96mmとした。
当該プレート式触媒層反応器における伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)は、第1反応帯域(S1)の伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔 9.5mmであった。
当該伝熱プレート式触媒層反応器に触媒を充填した場合、その触媒量は2.5L(リットル)であった(当該、触媒量は反応器を垂直にし、反応器最下部に板を取り付けて上部より水を注いで測った体積測定の結果である)。
【0053】
【表1】
【0054】
<実施例1>
触媒の粒径(d)が5mmである上記触媒Aを、幅90mm、奥行き300mm、深さ20mmの取っ手付SUS製板(図10)上に乗せた後に、取っ手を持って左右に振って
乗せた触媒を均して上下に重なり無く分散した。次いで、当該SUS製板の幅90mmの淵(板の枠を持たない一辺)を、伝熱プレートの幅96mmの入口に平行になるように合わせ、板の枠を持たない一辺から、当該一辺において触媒が上下方向に重なり合わないようにして触媒を上記プレート式触媒層反応器に投入した。
この操作を繰り返したところ、反応器内部で閉塞を起こすことなく、触媒の充填を完了した。充填された触媒量は2.5Lであった。
触媒充填時、SUS製板の淵から投入されていく触媒の状況を観察したところ、粒が重なり合って投入されていく触媒は観察されなかった。
触媒の粒径(d)は5mm、伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)は9.5mmであり、その比(d/S)は0.53であった。
上記触媒を充填したプレート式触媒層反応器の上部より室温の空気を供給し、入口圧力と出口圧力を測定して、触媒層の圧力損失を求めた。結果を表2に示す。
【0055】
<試験例1>
触媒の粒径(d)が5mmである上記触媒Aを、幅90mm、奥行き150mm、深さ100mmのSUS容器に入れ、0.5Lずつ、5回に分けて上記プレート式触媒層反応器に投入した。当該SUS容器に触媒A 0.5Lを入れ、当該SUS容器の幅90mmの淵を、伝熱プレートの幅96mmの入口に平行になるように合わせ、容器を傾けて触媒の投入を開始したところ、触媒を0.2L充填したところで、反応器内部の第1反応帯域(S1)で閉塞を起こし、触媒の充填の継続が不可能となった。
触媒充填時、SUS容器の淵から投入されていく触媒の状況を観察したところ、2〜3粒の触媒がSUS容器の淵で重なり合って、次いで投入されていく状態が観察された。
触媒の粒径(d)は5mm、伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)は9.5mmであり、その比(d/S)は0.53であった。
【0056】
<比較例1>
触媒の粒径が4mmである上記触媒Bを、幅90mm、奥行き300mm、深さ20mmの取っ手付SUS製板(図10)上に乗せた後に、取っ手を持って左右に振って乗せた触媒を均して上下に重なり無く分散した。次いで、当該SUS製板の幅90mmの淵(板の枠を持たない一辺)を、伝熱プレートの幅96mmの入口に平行になるように合わせ、板の枠を持たない一辺から、当該一辺において触媒が上下方向に重なり合わないようにして触媒を上記プレート式触媒層反応器に投入した。
この操作を繰り返したところ、反応器内部で閉塞を起こすことなく、触媒の充填を完了した。充填された触媒量は2.5Lであった。
触媒充填時、SUS製板の淵から投入されていく触媒の状況を観察したところ、粒が重なり合って投入されていく触媒は観察されなかった。
触媒の粒径(d)は4mm、伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)は9.5mmであり、その比(d/S)は0.42であった。
上記触媒を充填したプレート式触媒層反応器の上部より室温の空気を供給し、入口圧力と出口圧力を測定して、触媒層の圧力損失を求めた。結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
上記表中の[1]〜[3]は、以下の通りである。
[1]当該最小間隔(S)は、上記S1、S2及びS3における最小間隔のうち最も小さい間隔(S)である。
[2]触媒充填時、搬送部材の終端部における触媒の重なり状況であり、「無し」とは、触媒が上下方向に重なり合っていないことを意味し、「あり」とは、触媒が上下方向に重なり合っていたことを意味する。
[3]通気量[NL/L/Hr]は、触媒量1L(リットル)、1時間当たりの空気の供給量を表す。なお、空気の容積は標準状態(0℃、101.325kPa)換算での容積を用いる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明のプレート式触媒層反応器内に設置される伝熱プレートの縦断面図。
【図2】2枚の波板を接合して形成された伝熱プレートの拡大図。
【図3】図1のIII部の拡大図。
【図4】図1のIV部の拡大図。
【図5】図1のV部の拡大図。
【図6】第一の触媒充填装置の例を示す概略図。
【図7】第二の触媒充填装置の例を示す概略図。
【図8】円板形状または板形状の触媒の例を示す概略図。
【図9】棒形状の触媒の例を示す概略図。
【図10】搬送部材を備えた触媒充填手段の例を示す概略図。
【図11】搬送部材を備えた触媒充填手段の例を示す概略図。
【符号の説明】
【0059】
1 伝熱プレート
2 熱媒体流路
3 空間
4 反応ガス入口
5 反応ガス出口
6 ホッパー
7 ベルトコンベア
8 仕切り壁
9 層厚さ調整板
10 仕切り壁とベルトコンベアの両端に設置された壁との間隔
11 波板
12 触媒搬送通路
13 振動源
14 ホッパー
a 波板の凸面部
b 波板の凹面部
d 触媒の粒径
q 触媒の厚さ
t 棒形状の触媒の軸方向に対して垂直に切った断面外周の2点間を結ぶ距離で最長の
長さ
W 棒形状の触媒の場合における、触媒の軸方向の長さ
L 波の周期
H 波の高さ
S1、S2、S3 隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う2枚の伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式触媒層反応器であって、
前記触媒層は、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に触媒が充填されてなり、
前記伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒の粒径(d)と前記伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)が、0.45より大きいことを特徴とする、プレート式触媒層反応器。
【請求項2】
前記伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒の粒径(d)と前記伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)が、0.45〜0.90であることを特徴とする、請求項1に記載のプレート式触媒層反応器。
【請求項3】
前記伝熱プレートは、2枚の波板を対面させて形成された伝熱プレートであり、
前記伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒が、円板形状又は板形状の触媒であり、
前記触媒の厚さ(q)と前記伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(q/S)が、0.60より小さく、
前記触媒の粒径(d)が、前記最小間隔(S)となる空間を形成する伝熱プレートを構成する波板の波の周期(L)より小さいことを特徴とする、請求項1に記載のプレート式触媒層反応器。
【請求項4】
前記伝熱プレートは、2枚の波板を対面させて形成された伝熱プレートであり、
前記伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒が、棒形状の触媒であり、
前記棒形状の触媒の軸方向に対して垂直に切った断面外周の2点間を結ぶ距離で最長の長さ(t)と前記伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(t/S)が、0.60より小さく、
前記触媒の粒径(d)が前記最小間隔(S)となる空間を形成する伝熱プレートを構成する波板の波の周期(L)より小さいことを特徴とする、請求項1に記載のプレート式触媒層反応器。
【請求項5】
複数の伝熱プレートを備えたプレート式触媒層反応器の、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に、搬送部材を備えた触媒充填手段を用いて、前記伝熱プレートの上方から触媒を充填する方法であって、前記触媒が、前記搬送部材の終端部において上下方向に重なり合っていないことを特徴とする、触媒を充填する方法。
【請求項6】
前記搬送部材を備えた触媒充填手段が、ホッパー及び搬送部材を備えた触媒充填装置であることを特徴とする、請求項5に記載の触媒を充填する方法。
【請求項7】
前記触媒の粒径(d)と前記隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)が、0.45より大きいことを特徴とする、請求項5又は6に記載の触媒を充填する方法。
【請求項8】
前記触媒の粒径(d)と前記隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)が、0.45〜0.90であることを特徴とする、請求項5又は6に記載の触媒を充填する方法。
【請求項9】
隣り合う2枚の伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式触媒層反応器に、有機化合物原料ガスを供給し、前記有機化合物原料ガスを反応させて反応生成物を製造する製造方法であって、前記プレート式触媒層反応器が、請求項1〜4のいずれか1項
に記載のプレート式触媒層反応器であることを特徴とする、反応生成物を製造する製造方法。
【請求項10】
隣り合う2枚の伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式触媒層反応器に、有機化合物原料ガスを供給し、前記有機化合物原料ガスを反応させて反応生成物を製造する製造方法であって、前記プレート式触媒層反応器が、請求項5〜8のいずれか1項に記載の触媒を充填する方法で触媒が充填されたプレート式触媒層反応器であることを特徴とする、反応生成物を製造する製造方法。
【請求項11】
前記有機化合物原料ガスの負荷量が、触媒1リットル当たり150リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]以上であることを特徴とする、請求項9または10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記反応生成物が、メタクロレイン及びメタクリル酸の少なくとも一方、アクロレイン及びアクリル酸の少なくとも一方、マレイン酸、フタル酸、スチレン、酸化エチレン、又は、ブタジエンである、請求項9〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項1】
隣り合う2枚の伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式触媒層反応器であって、
前記触媒層は、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に触媒が充填されてなり、
前記伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒の粒径(d)と前記伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)が、0.45より大きいことを特徴とする、プレート式触媒層反応器。
【請求項2】
前記伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒の粒径(d)と前記伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)が、0.45〜0.90であることを特徴とする、請求項1に記載のプレート式触媒層反応器。
【請求項3】
前記伝熱プレートは、2枚の波板を対面させて形成された伝熱プレートであり、
前記伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒が、円板形状又は板形状の触媒であり、
前記触媒の厚さ(q)と前記伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(q/S)が、0.60より小さく、
前記触媒の粒径(d)が、前記最小間隔(S)となる空間を形成する伝熱プレートを構成する波板の波の周期(L)より小さいことを特徴とする、請求項1に記載のプレート式触媒層反応器。
【請求項4】
前記伝熱プレートは、2枚の波板を対面させて形成された伝熱プレートであり、
前記伝熱プレートに挟まれた空間に充填される触媒が、棒形状の触媒であり、
前記棒形状の触媒の軸方向に対して垂直に切った断面外周の2点間を結ぶ距離で最長の長さ(t)と前記伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(t/S)が、0.60より小さく、
前記触媒の粒径(d)が前記最小間隔(S)となる空間を形成する伝熱プレートを構成する波板の波の周期(L)より小さいことを特徴とする、請求項1に記載のプレート式触媒層反応器。
【請求項5】
複数の伝熱プレートを備えたプレート式触媒層反応器の、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に、搬送部材を備えた触媒充填手段を用いて、前記伝熱プレートの上方から触媒を充填する方法であって、前記触媒が、前記搬送部材の終端部において上下方向に重なり合っていないことを特徴とする、触媒を充填する方法。
【請求項6】
前記搬送部材を備えた触媒充填手段が、ホッパー及び搬送部材を備えた触媒充填装置であることを特徴とする、請求項5に記載の触媒を充填する方法。
【請求項7】
前記触媒の粒径(d)と前記隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)が、0.45より大きいことを特徴とする、請求項5又は6に記載の触媒を充填する方法。
【請求項8】
前記触媒の粒径(d)と前記隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間の最小間隔(S)との比(d/S)が、0.45〜0.90であることを特徴とする、請求項5又は6に記載の触媒を充填する方法。
【請求項9】
隣り合う2枚の伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式触媒層反応器に、有機化合物原料ガスを供給し、前記有機化合物原料ガスを反応させて反応生成物を製造する製造方法であって、前記プレート式触媒層反応器が、請求項1〜4のいずれか1項
に記載のプレート式触媒層反応器であることを特徴とする、反応生成物を製造する製造方法。
【請求項10】
隣り合う2枚の伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式触媒層反応器に、有機化合物原料ガスを供給し、前記有機化合物原料ガスを反応させて反応生成物を製造する製造方法であって、前記プレート式触媒層反応器が、請求項5〜8のいずれか1項に記載の触媒を充填する方法で触媒が充填されたプレート式触媒層反応器であることを特徴とする、反応生成物を製造する製造方法。
【請求項11】
前記有機化合物原料ガスの負荷量が、触媒1リットル当たり150リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]以上であることを特徴とする、請求項9または10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記反応生成物が、メタクロレイン及びメタクリル酸の少なくとも一方、アクロレイン及びアクリル酸の少なくとも一方、マレイン酸、フタル酸、スチレン、酸化エチレン、又は、ブタジエンである、請求項9〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−262123(P2009−262123A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236356(P2008−236356)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【出願人】(000176763)三菱化学エンジニアリング株式会社 (85)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【出願人】(000176763)三菱化学エンジニアリング株式会社 (85)
【Fターム(参考)】
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