説明

プロペラシャフトの支持構造

【課題】 カラー、一対のゴムブッシュ及びワッシャからなるマウントをブラケットに組付けて用いるプロペラシャフトの支持構造において、ブラケットからカラー、ゴムブッシュ及びワッシャが脱落することを、簡易に防止すること。
【解決手段】 プロペラシャフト10の支持構造において、カラー40の他端外周部に突起43を設けるとともに、ワッシャ60の内周部に軸方向全域に渡る貫通溝を設け、一対のゴムブッシュ50A、50Bに嵌合したカラー40の突起43が、それらのゴムブッシュ50A、50Bを圧縮してワッシャ60の貫通溝から該ワッシャ60の該ゴムブッシュ50A、50Bに対する反対側の端面の側にまで挿通されるとともに、該ワッシャ60に対して回転されて該ワッシャ60の該ゴムブッシュ50A、50Bに対する反対側の端面の側に係止されてなるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロペラシャフトの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の変速装置から駆動輪に動力を伝達する、従来のプロペラシャフトの支持構造として、特許文献1に記載の如く、プロペラシャフトに設けたセンターベアリングを支持するブラケットが、マウントを介して取付ボルト及びナットにより車体に取付けてなるものがある。
【0003】
従来のプロペラシャフトの支持構造において、マウントは、取付ボルトの外周側に嵌挿され、一端外周部にフランジを備えるカラーと、カラーの一端側〜他端側の外周面に嵌合され、ブラケットに形成した取付孔の周縁部を挟み込む一対のゴムブッシュと、カラーの他端側の外周面に嵌合されたゴムブッシュの端面と取付ボルト又はナットの座面との間に介装されるワッシャとを有して構成され、プロペラシャフト及びセンターベアリングを車体に対して弾性支持するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6-1876
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、ブラケットにカラー、一対のゴムブッシュ及びワッシャからなるマウントを組付けてブラケット組立体とし、このブラケット組立体をプロペラシャフトの車体への取付工程に搬送してその取付けに供することとしている。このブラケット組立体は例えばカラーの他端側の外周面にワッシャを軽圧入して組付ける等により、その組立状態を維持しようとするものである。
【0006】
しかしながら、上述のブラケット組立体にあっては、カラーとワッシャに搬送中の振動や、プロペラシャフトの取付工程での周辺部材との接触が及ぶとき、それらカラーとワッシャの取付けが外れ、ブラケットからカラー、ゴムブッシュ及びワッシャが脱落するおそれがある。
【0007】
尚、上述のブラケット組立体において、ブラケットとゴムブッシュを接着剤で固定したり、カラー又はワッシャとゴムブッシュを接着剤で固定することが考えられるが、生産性が悪い。
【0008】
本発明の課題は、カラー、一対のゴムブッシュ及びワッシャからなるマウントをブラケットに組付けて用いるプロペラシャフトの支持構造において、ブラケットからカラー、ゴムブッシュ及びワッシャが脱落することを、簡易に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、プロペラシャフトに設けたセンターベアリングを支持するブラケットが、マウントを介して取付ボルト及びナットにより車体に取付けられ、マウントが、取付ボルトの外周側に嵌挿され、一端外周部にフランジを備えるカラーと、カラーの一端側〜他端側の外周面に嵌合され、ブラケットに形成した取付孔の周縁部を挟み込む一対のゴムブッシュと、カラーの他端側の外周面に嵌合されたゴムブッシュの端面と取付ボルト又はナットの座面との間に介装されるワッシャとを有して構成されるプロペラシャフトの支持構造において、カラーの他端外周部に突起を設けるとともに、ワッシャの内周部に軸方向全域に渡る貫通溝を設け、一対のゴムブッシュに嵌合したカラーの突起が、それらのゴムブッシュを圧縮してワッシャの貫通溝から該ワッシャの該ゴムブッシュに対する反対側の端面の側にまで挿通されるとともに、該ワッシャに対して回転されて該ワッシャの該ゴムブッシュに対する反対側の端面の側に係止されてなるようにしたものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、前記ワッシャが前記ゴムブッシュに対する反対側の端面の側の内周部に不貫通溝を設け、前記カラーの突起が該ワッシャに対して回転されて該ワッシャの不貫通溝に係入し、外れ止めされるようにしたものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2の発明において更に、前記不貫通溝がワッシャの周方向で貫通溝に連続するように形成されるようにしたものである。
【0012】
請求項4の発明は、請求項2又は3の発明において更に、前記不貫通溝がワッシャの周方向でカラーの突起を両側から挟み込む一対の回り止め面を備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
(請求項1)
(a)ブラケットを挟み込んでいる一対のゴムブッシュに嵌合したカラーの突起が、それらのゴムブッシュを圧縮しつつ、ワッシャの反対側の端面の側に係止される。従って、カラーの突起がゴムブッシュの圧縮の反力によりワッシャの反対側の端面の側に強く係止するものになり、カラー又はワッシャに搬送中の振動や、プロペラシャフトの取付工程での周辺部材との接触が及んでも、それらの係止が外れることを防止できる。ブラケットからカラー、ゴムブッシュ及びワッシャが脱落することを、接着剤を用いずに、高い生産性で、簡易に防止できる。
【0014】
(請求項2)
(b)前記ワッシャが前記ゴムブッシュに対する反対側の端面の側の内周部に不貫通溝を設け、前記カラーの突起が該ワッシャに対して回転されて該ワッシャの不貫通溝に係入し、外れ止めされる。従って、カラーの突起がワッシャの反対側の端面の側の不貫通溝に係入して回り止めされ、ひいては外れ止めされるものになり、上述(a)のカラーとワッシャの係止が外れることの防止の一層確実を図ることができる。
【0015】
(請求項3)
(c)前記不貫通溝がワッシャの周方向で貫通溝に連続するように形成される。従って、カラーの突起がワッシャの貫通溝からワッシャの該ゴムブッシュに対する反対側の端面の側に挿通された後、カラーの突起をワッシャの貫通溝に連続する不貫通溝に係入して着座する位置にまでスムースに移行でき、生産性を一層向上できる。
【0016】
(請求項4)
(d)前記不貫通溝がワッシャの周方向でカラーの突起を両側から挟み込む一対の回り止め面を備える。従って、カラーの突起がワッシャの反対側の端面の側の不貫通溝に係入して着座するときに一対の回り止め面により挟み込まれ、前述(b)の回り止めの一層確実を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は自動車用プロペラシャフトを示す全体図である。
【図2】図2は図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図3はブラケット組立体を示す断面図である。
【図4】図4はブラケット組立体の構成部品を示す斜視図である。
【図5】図5はカラーを示す斜視図である。
【図6】図6はワッシャを示す斜視図である。
【図7】図7はブラケット組立体の組立順を示す斜視図である。
【図8】図8はワッシャの変形例を示す斜視図である。
【図9】図9はワッシャの変形例を示す斜視図である。
【図10】図10はワッシャの変形例を示す斜視図である。
【図11】図11はワッシャの変形例を示す斜視図である。
【図12】図12はカラーとワッシャの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
自動車用プロペラシャフト10は、図1に示す如く、第1と第2の分割シャフト11、12を等速継手13により連結して構成される。プロペラシャフト10は、一方の分割シャフト11に嵌合して設けたセンターベアリング14を支持するブラケット20を、マウント30を介して取付ボルト(本実施例では鍔付きボルト)15及びナット16により車体17に取付けて支持される。
【0019】
ブラケット20は、図2に示す如く、センターベアリング14を内部に支持する円環状のブラケット本体21と、ブラケット本体21の下面から左右に延出させた左右の取付板22、22とから構成される。各取付板22の外端部には、マウント30が嵌着される取付孔23が形成されている。
【0020】
マウント30は、図3、図4に示す如く、カラー40と、一対のゴムブッシュ50A、50Bと、ワッシャ60とを有して構成される。
【0021】
カラー40は、取付ボルト15の外周側に嵌挿される円筒本体41を有し、円筒本体41の一端(基端)外周部に円形フランジ42を備える。カラー40は、図5に示す如く、円筒本体41の他端(先端)外周部に半径方向外方に突出する突起43を設け、本実施例では周方向に180度間隔をなす2位置に突起43、43を設けている。
【0022】
一対の防振部材であるゴムブッシュ50A、50Bは、カラー40の円筒本体41の一端側〜他端側の外周面に嵌合されて挿通される円環状をなし、ブラケット20の取付板22に形成した取付孔23の周縁部を挟み込む。各ゴムブッシュ50A、50Bは、それらの接合面を介して互いに線対称形状をなすように形成され、それらの接合面内に円環状をなすブラケット保持金具51、52を加硫接着等して設けている。両ゴムブッシュ50A、50Bのブラケット保持金具51、52は2つ合わせて外方にコ字状に開口する環状凹溝53を形成し、この環状凹溝53内にブラケット20の取付板22に形成した取付孔23の周縁部が挟み込まれる。両ゴムブッシュ50A、50Bは、図4に示す如く、内周部の軸方向全域に渡る貫通溝54を設け、本実施例では周方向に180度間隔をなす2位置に貫通溝54、54を設けている。カラー40の円筒本体41がそれらのゴムブッシュ50A、50Bの内周面に嵌合されるとき、カラー40の突起43はゴムブッシュ50A、50Bの貫通溝54に挿通できる。
【0023】
ワッシャ60は、カラー40の円筒本体41が挿通し得る円環状をなし、カラー40の他端側の外周面に嵌合されたゴムブッシュ50Bの端面と取付ボルト15(又はナット16)の座面15Aとの間に介装される。ワッシャ60は、図6に示す如く、内周部の軸方向全域に渡る貫通溝61を設け、本実施例では周方向に180度間隔をなす2位置に貫通溝61、61を設けている。ワッシャ60は、図6に示す如く、ゴムブッシュ50Bに対する反対側の端面の側の内周部に一定深さの不貫通溝62を設け、本実施例では上述の両貫通溝61と周方向に90度間隔をなして離隔する2位置に不貫通溝62、62を設けている。カラー40の円筒本体41が一対のゴムブッシュ50A、50Bの内周面を経てワッシャ60の内周に挿通されるとき、カラー40の突起43はワッシャ60の貫通溝61をゴムブッシュ50Bの側から該ゴムブッシュ50Bに対する反対側にまで挿通でき、カラー40の突起43はゴムブッシュ50Bに対する反対側でワッシャ60の不貫通溝62に係入して着座できる。不貫通溝62はワッシャ60の周方向でカラー40の突起43を両側から挟み込む一対の回り止め面63A、63Bを備える。回り止め面63A、63Bは不貫通溝62の平坦状溝底64から垂直に立上る垂直面により形成される。
【0024】
しかるに、マウント30は、一対のゴムブッシュ50A、50Bのブラケット保持金具51、52が形成する環状凹溝53内にブラケット20の取付板22に形成した取付孔23の周縁部を挟み込む。そして、これら一対のゴムブッシュ50A、50Bに嵌合したカラー40の突起43が、それらのゴムブッシュ50A、50Bを圧縮してワッシャ60の貫通溝61から該ワッシャ60の該ゴムブッシュ50Bに対する反対側の端面にまで挿通されるとともに、該ワッシャ60に対して回転されて該ワッシャ60の該ゴムブッシュ50Bに対する反対側の端面に係止される。本実施例では、カラー40の突起43が、該ワッシャ60に対して回転されて該ワッシャ60の不貫通溝62に係入し、外れ止め(回り止め)される。
【0025】
即ち、マウント30は、ブラケット20にカラー40、一対のゴムブッシュ50A、50B及びワッシャ60を下記(1)〜(5)の順に組付けたブラケット組立体100を形成し、このブラケット組立体100をプロペラシャフト10の車体17への取付工程に搬送してその取付けに供する(図7)。
【0026】
(1)一対のゴムブッシュ50A、50Bのブラケット保持金具51、52が形成する環状凹溝53内にブラケット20の取付板22に形成した取付孔23の周縁部を挟み込む。
【0027】
(2)ゴムブッシュ50Bの端面にワッシャ60の不貫通溝62が形成されていない端面を添設する。
【0028】
(3)カラー40の円筒本体41を先端側から一対のゴムブッシュ50A、50Bの内周面に嵌合する。このとき、カラー40の突起43はゴムブッシュ50A、50Bの貫通溝54に挿通する。
【0029】
(4)一対のゴムブッシュ50A、50Bに嵌合したカラー40の突起43が、それらのゴムブッシュ50A、50Bを軸方向に圧縮してワッシャ60の貫通溝61から該ワッシャ60の該ゴムブッシュ50Bに対する反対側の端面にまで挿通される(図7(A)、(B))。
【0030】
(5)上述(4)のカラー40の突起43が、ワッシャ60に対して回転されて該ワッシャ60の該ゴムブッシュ50Bに対する反対側の端面に、それらゴムブッシュ50A、50Bの圧縮の反力で弾発的に係止される。本実施例では、カラー40の突起43が該ワッシャ60の該ゴムブッシュ50Bに対する反対側の端面内の不貫通溝62に、それらゴムブッシュ50A、50Bの圧縮の反力で弾発的に係入して着座し、不貫通溝62の相対する回り止め面63A、63Bに挟み込まれて外れ止め(回り止め)される(図7(C)〜(E))。これにより、ブラケット組立体100が形成される。
【0031】
ブラケット組立体100にあっては、カラー40の円筒本体41の先端側端面とワッシャ60の不貫通溝62を備える端面とが略面一をなす。取付ボルト15がカラー40の内周に嵌挿されて車体17の裏面側のナット16に螺着されるとき、取付ボルト15の座面15Aはそれらカラー40、ワッシャ60の端面に着座するものになる(図3)。
【0032】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)ブラケット組立体100において、ブラケット20を挟み込んでいる一対のゴムブッシュ50A、50Bに嵌合したカラー40の突起43が、それらのゴムブッシュ50A、50Bを圧縮しつつ、ワッシャ60の反対側の端面の側に係止される。従って、カラー40の突起43がゴムブッシュ50A、50Bの圧縮の反力によりワッシャ60の反対側の端面の側に強く係止するものになり、カラー40又はワッシャ60に搬送中の振動や、プロペラシャフト10の取付工程での周辺部材との接触が及んでも、それらの係止が外れることを防止できる。ブラケット20からカラー40、ゴムブッシュ50A、50B及びワッシャ60が脱落することを、接着剤を用いずに、高い生産性で、簡易に防止できる。
【0033】
(b)前記ワッシャ60が前記ゴムブッシュ50Bに対する反対側の端面の側の内周部に不貫通溝62を設け、前記カラー40の突起43が該ワッシャ60に対して回転されて該ワッシャ60の不貫通溝62に係入し、外れ止めされる。従って、カラー40の突起43がワッシャ60の反対側の端面の側の不貫通溝62に係入して回り止めされ、ひいては外れ止めされるものになり、上述(a)のカラー40とワッシャ60の係止が外れることの防止の一層確実を図ることができる。
【0034】
(c)前記不貫通溝62がワッシャ60の周方向でカラー40の突起43を両側から挟み込む一対の回り止め面63A、63Bを備える。従って、カラー40の突起43がワッシャ60の反対側の端面の側の不貫通溝62に係入して着座するときに一対の回り止め面63A、63Bにより挟み込まれ、前述(b)の回り止めの一層確実を図ることができる。
【0035】
図8は前述したワッシャ60の変形例としてのワッシャ60Aである。ワッシャ60Aがワッシャ60と異なる点は、不貫通溝62がワッシャ60の周方向で貫通溝61に連続するように形成したことにある。不貫通溝62は一方の回り止め面63Aのみを備える。
【0036】
ワッシャ60Aによれば、カラー40の突起43がワッシャ60Aの貫通溝61からワッシャ60Aの該ゴムブッシュ50Bに対する反対側の端面の側に挿通された後、カラー40の突起43をワッシャ60Aの貫通溝61に連続する不貫通溝62に係入して着座する位置にまでスムースに回転移行でき、生産性を一層向上できる。
【0037】
図9は上述のワッシャ60Aの変形例としてのワッシャ60Bである。ワッシャ60Bがワッシャ60Aと異なる点は、不貫通溝62の溝底64を貫通溝61につながる勾配面64Aと、この勾配面64Aにつながる平坦面64Bからなるものにし、勾配面64Aを貫通溝61から平坦面64Bに向けて下り勾配にしたことにある。貫通溝61から不貫通溝62に係入されたカラー40の突起43は、平坦面64Bに着座し、平坦面64Bの一側の垂直面からなる回り止め面63Aと、平坦面64Bの他側の勾配面64Aとの境界部からなる回り止め面63Bにより、ワッシャ60Bの周方向の両側から挟み込まれる。
【0038】
ワッシャ60Bによれば、カラー40の突起43がワッシャ60の貫通溝61からワッシャ60の該ゴムブッシュ50Bに対する反対側の端面の側に挿通された後、カラー40の突起43をワッシャ60の貫通溝61に連続する不貫通溝62に係入して着座する位置にまでスムースに回転移行でき、生産性を一層向上できる。
【0039】
また、ワッシャ60Bによれば、カラー40の突起43がワッシャ60の反対側の端面の側の不貫通溝62に係入して着座するときに一対の回り止め面63A、63Bにより挟み込まれ、前述(b)の回り止めの一層確実を図ることができる。
【0040】
図10は上述のワッシャ60Aの変形例としてのワッシャ60Cである。ワッシャ60Cがワッシャ60Aと異なる点は、不貫通溝62の溝底65を貫通溝61につながる平坦面65Aと、この平坦面65Aにつながる勾配面65Bと、この勾配面65Bにつながる平坦面65Cからなるものにし、勾配面65Bを平坦面65Aから平坦面65Cに向けて上り勾配面にし、勾配面65Bと平坦面65Cの境界部を垂直面にしたことある。貫通溝61から不貫通溝62に係入されたカラー40の突起43は、平坦面65Cに着座し、平坦面65Cの一側の垂直面からなる回り止め面63Aと、平坦面65Cの他側の勾配面65Bとの境界部の垂直面からなる回り止め面63Bにより、ワッシャ60Cの周方向の両側から挟み込まれる。
【0041】
ワッシャ60Cによれば、カラー40の突起43がワッシャ60の貫通溝61からワッシャ60の該ゴムブッシュ50Bに対する反対側の端面の側に挿通された後、カラー40の突起43をワッシャ60Cの貫通溝61に連続する不貫通溝62に係入して着座する位置にまでスムースに回転移行でき、生産性を一層向上できる。
【0042】
また、ワッシャ60Cによれば、カラー40の突起43がワッシャ60Cの反対側の端面の側の不貫通溝62に係入して着座するときに一対の回り止め面63A、63Bにより挟み込まれ、前述(b)の回り止めの一層確実を図ることができる。
【0043】
図11は上述のワッシャ60Aの変形例としてのワッシャ60Dである。ワッシャ60Dがワッシャ60Aと異なる点は、不貫通溝62の溝底66を貫通溝61につながる平坦面66Aと、この平坦面66Aにつながる勾配面66Bと、この勾配面66Bにつながる勾配面66Cと、この勾配面66Cにつながる平坦面66Dからなるものにし、勾配面66Bを平坦面66Aから勾配面66Cに向けて上り勾配面とし、勾配面66Cを勾配面66Bから平坦面66Dに向けて下り勾配面にしたことにある。貫通溝61から不貫通溝62に係入されたカラー40の突起43は、平坦面66Dに着座し、平坦面66Dの一側の垂直面からなる回り止め面63Aと、平坦面66Dの他側の勾配面66Cとの境界部からなる回り止め面63Bにより、ワッシャ60Dの周方向の両側から挟み込まれる。
【0044】
ワッシャ60Dによれば、カラー40の突起43がワッシャ60Dの貫通溝61からワッシャ60Dの該ゴムブッシュ50Bに対する反対側の端面の側に挿通された後、カラー40の突起43をワッシャ60Dの貫通溝61に連続する不貫通溝62に係入して着座する位置にまでスムースに回転移行でき、生産性を一層向上できる。
【0045】
また、ワッシャ60Dによれば、カラー40の突起43がワッシャ60Dの反対側の端面の側の不貫通溝62に係入して着座するときに一対の回り止め面63A、63Bにより挟み込まれ、前述(b)の回り止めの一層確実を図ることができる。
【0046】
図12は前述のカラー40とワッシャ60の変形例としてのカラー40A、ワッシャ60Eである。
【0047】
カラー40Aがカラー40と異なる点は、ワッシャ60の不貫通溝62に着座する突起43の下面をカラー40の周方向で後述するワッシャ60Eの不貫通溝62の勾配状溝底67に隙間なく面接触する勾配面43Aとしたことにある。
【0048】
ワッシャ60Eがワッシャ60Aと異なる点は、不貫通溝62の溝底67を、貫通溝61から不貫通溝62に向けて下り勾配をなす勾配面としたことにある。貫通溝61から不貫通溝62に係入されたカラー40Aの突起43の下面の勾配面43Aは、溝底67に着座し、溝底67の一側の垂直面からなる回り止め面63Aと、溝底67の中間部の勾配面からなる回り止め面63Bにより、ワッシャ60Eの周方向の両側から挟み込まれる。
【0049】
ワッシャ60Eによれば、カラー40Aの突起43がワッシャ60Eの貫通溝61からワッシャ60Eの該ゴムブッシュ50Bに対する反対側の端面の側に挿通された後、カラー40Aの突起43をワッシャ60Eの貫通溝61に連続する不貫通溝62に係入して着座する位置にまでスムースに回転移行でき、生産性を一層向上できる。
【0050】
また、ワッシャ60Eによれば、カラー40Aの突起43がワッシャ60Eの反対側の端面の側の不貫通溝62に係入して着座するときに一対の回り止め面63A、63Bにより挟み込まれ、前述(b)の回り止めの一層確実を図ることができる。
【0051】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、プロペラシャフトの支持構造において、カラーの他端外周部に突起を設けるとともに、ワッシャの内周部に軸方向全域に渡る貫通溝を設け、一対のゴムブッシュに嵌合したカラーの突起が、それらのゴムブッシュを圧縮してワッシャの貫通溝から該ワッシャの該ゴムブッシュに対する反対側の端面にまで挿通されるとともに、該ワッシャに対して回転されて該ワッシャの該ゴムブッシュに対する反対側の端面に係止されてなるようにしたものである。これにより、カラー、一対のゴムブッシュ及びワッシャからなるマウントをブラケットに組付けて用いるプロペラシャフトの支持構造において、ブラケットからカラー、ゴムブッシュ及びワッシャが脱落することを、簡易に防止することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 プロペラシャフト
14 センターベアリング
15 取付ボルト
15A 座面
16 ナット
17 車体
20 ブラケット
23 取付孔
30 マウント
40、40A カラー
42 フランジ
43 突起
50A、50B ゴムブッシュ
60、60A〜60E ワッシャ
61 貫通溝
62 不貫通溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラシャフトに設けたセンターベアリングを支持するブラケットが、マウントを介して取付ボルト及びナットにより車体に取付けられ、
マウントが、
取付ボルトの外周側に嵌挿され、一端外周部にフランジを備えるカラーと、
カラーの一端側〜他端側の外周面に嵌合され、ブラケットに形成した取付孔の周縁部を挟み込む一対のゴムブッシュと、
カラーの他端側の外周面に嵌合されたゴムブッシュの端面と取付ボルト又はナットの座面との間に介装されるワッシャとを有して構成されるプロペラシャフトの支持構造において、
カラーの他端外周部に突起を設けるとともに、ワッシャの内周部に軸方向全域に渡る貫通溝を設け、
一対のゴムブッシュに嵌合したカラーの突起が、それらのゴムブッシュを圧縮してワッシャの貫通溝から該ワッシャの該ゴムブッシュに対する反対側の端面の側にまで挿通されるとともに、該ワッシャに対して回転されて該ワッシャの該ゴムブッシュに対する反対側の端面の側に係止されてなることを特徴とするプロペラシャフトの支持構造。
【請求項2】
前記ワッシャが前記ゴムブッシュに対する反対側の端面の側の内周部に不貫通溝を設け、前記カラーの突起が該ワッシャに対して回転されて該ワッシャの不貫通溝に係入し、外れ止めされる請求項1に記載のプロペラシャフトの支持構造。
【請求項3】
前記不貫通溝がワッシャの周方向で貫通溝に連続するように形成される請求項2に記載のプロペラシャフトの支持構造。
【請求項4】
前記不貫通溝がワッシャの周方向でカラーの突起を両側から挟み込む一対の回り止め面を備える請求項2又は3に記載のプロペラシャフトの支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−131822(P2011−131822A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294742(P2009−294742)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【Fターム(参考)】