説明

ポリベンゾオキサゾール樹脂膜の製造方法、絶縁膜および半導体装置

【課題】 Cuの耐拡散性を持ち、かつ電気特性、熱特性、機械特性および物理特性の全てに優れ、特に誘電率が極めて低く、高耐熱性を有し密着性に優れた絶縁膜およびそれを用いた半導体装置を提供する。
【解決手段】 ジアミノフェノール化合物および/またはビスアミノフェノール化合物と、ジカルボン酸化合物とより構成されるポリベンゾオキサゾール樹脂膜の製造方法であって、前記ジアミノフェノール化合物および/またはビスアミノフェノール化合物と、ジカルボン酸化合物は、真空中で気化させて基板上に堆積させることにより製膜することを特徴とするポリベンゾオキサゾール樹脂膜の製造方法。前記基板上に堆積させたジアミノフェノール化合物および/またはビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸化合物とを、反応させる第(1)項に記載のポリベンゾオキサゾール樹脂膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリベンゾオキサゾール樹脂膜の製造方法、絶縁膜および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の多層配線は、現在、配線材料として従来のAlから代わってCuが使用されてきている。しかし、この配線材料のCuは、トランジスタ層、絶縁層に容易に拡散をする。このため、Cu配線の側面、底面は、通常バリアーメタル層として、PVD法で作製したTaN、TiN、WN等を、Cu配線の上面はCVD法(化学蒸着法)で作製したSiN、SiCN等の絶縁膜を用いて拡散を防止している。
一方、半導体の高速化、低消費電力化等のために、配線間の容量低減のため、配線間で用いられる絶縁層(いわゆるLow−k層、絶縁層本体)の低誘電率化が進められ、その適用が進められている。
しかし、このLow−k層に比べて、上記のSiN膜、SiCN膜の誘電率は相対的に高く、実効誘電率の低減のための効果は少なくなってきている。実効誘電率の低減のためには、多層配線で使用される絶縁層であるLow−k膜に加えて、Low−k層のハードマスク、Cuのキャップ膜、エッチングストッパー膜等多層配線で使用される絶縁層の全ての低誘電率化を考える必要がある。
このような多層配線の絶縁層であるCuのキャップ膜の絶縁層としては、CVD法による無機系のSiN膜が主に使用されており、SiN膜にカーボン(C)を導入する事により低誘電率化も検討されている。しかし、このSiN膜の誘電率は7程度であり、カーボンを導入してSiCNまたはSiCにまでしても誘電率は、3.5〜5程度までしか低減する事は出来ず、Low−k膜の誘電率が2.0〜2.5の材料が開発され、その適用が試みられている事と比較すると、大きく乖離している。
また、Low−k膜の誘電率が2.5以下の絶縁材料では、誘電率低減のためその多くが空孔の導入手法を用いている。空孔の導入により誘電率は低減されるが、空孔導入及び空孔導入量増大により、主な問題点として、膜密度の低下、機械強度の低下、接着性の低下、薬液、ガス等の浸入が発生している。この事により、エッチング、アッシング耐性の低下によるインテグレーションマージンが狭くなるやCMP工程、ダイシング工程、パッケージ組み立て工程におけるストレスにより配線層での剥離や割れの問題が発生するため、誘電率が2.5以下の絶縁材料をデバイスの量産に用いる事は容易には出来ない。
これらのことから、Low−k層以外の絶縁膜として、Cu配線のキャップ膜に低誘電率でかつCuの拡散防止能を備えた材料、その配線構造、半導体装置の提案が必要となっている。しかし、上記配線構造の製造において絶縁層がCVD法により形成されるのもかかわらず、特にLow−k層に好適なポリベンゾオキサゾールを用いてCVD法による層形成を行う具体例が知られていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記用途に適したCuの拡散防止能を備え、電気特性及び熱特性及び物理特性の全てに優れ、特に耐熱性と密着性に優れたポリベンゾオキサゾール樹脂膜の製造方法およびそれを用いた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、Cuの耐拡散性を持ち、かつ誘電率の低い有機膜を得るために、例えばポリベンゾオキサゾール樹脂を乾式法によって製膜することにより、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
(1) ジアミノフェノール化合物および/またはビスアミノフェノール化合物と、ジカルボン酸化合物とより構成されるポリベンゾオキサゾール樹脂膜の製造方法であって、前記ジアミノフェノール化合物および/またはビスアミノフェノール化合物と、ジカルボン酸化合物は、真空中で気化させて基板上に堆積させることにより製膜することを特徴とするポリベンゾオキサゾール樹脂膜の製造方法、
(2) 前記基板上に堆積させたジアミノフェノール化合物および/またはビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸化合物とを、反応させる第(1)項に記載のポリベンゾオキサゾール樹脂膜の製造方法、
(3) 前記ポリベンゾオキサゾール樹脂膜を、加熱又は電子線照射又は紫外線照射することにより硬化させる第(1)項または第(2)項に記載のポリベンゾオキサゾール樹脂膜の製造方法、
(4) 前記ジアミノフェノール化合物およびビスアミノフェノール化合物は、式(2)で表される基の中から選ばれる少なくとも1種の基を有するものである第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載のポリベンゾオキサゾール樹脂膜の製造方法、
【0005】
【化2】

[式(2)中、X1は式(4)で表される基の中から選ばれる基を示す。]
【0006】
【化4】

[式(2)および式(4)で表される基のベンゼン環上の水素原子は、架橋基を有していても良い、脂肪族基および芳香族基の中から選ばれる少なくとも1種の有機基で置換されていてもよい。]
【0007】
(5) 前記ジカルボン酸化合物は、式(3)で表される基の中から選ばれる少なくとも1種の基を有するものである第(1)項乃至第(4)項のいずれかに記載のポリベンゾオキサゾール樹脂膜の製造方法、
【0008】
【化3】

[式(3)中、X1は前記式(4)で表される基の中から選ばれる基を示し、式(3)で表される基のベンゼン環上の水素原子は、架橋基を有していても良い、脂肪族基および芳香族基の中から選ばれる少なくとも1種の有機基で置換されていてもよい。]
【0009】
(6) 第(1)項乃至第(5)項のいずれかに記載のポリベンゾオキサゾール樹脂膜の製造方法により得られた絶縁膜、
(7) 前記絶縁膜は、一般式(1)で表される繰り返し単位を有する樹脂より構成されるものである、第(6)項に記載の絶縁膜、
【0010】
【化1】

[式(1)中、Xは前記式(2)で表される基の中から選ばれる少なくとも1種の基を示し、Yは前記式(3)で表される基の中から選ばれる少なくとも1種の基を示す。nは1〜10000の整数を示す。]
【0011】
(8) 半導体基板上に形成された金属配線層と第(6)項または第(7)項に記載の絶縁膜とが直接接触して配置されていることを特徴とする半導体装置、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記用途に適したCuの拡散防止能を備え、電気特性及び熱特性及び物理特性の全てに優れ、特に耐熱性と密着性に優れたポリベンゾオキサゾール樹脂膜の製造方法およびそれを用いた半導体装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、ジアミノフェノール化合物および/またはビスアミノフェノール化合物と、ジカルボン酸化合物とより構成されるポリベンゾオキサゾール樹脂膜の製造方法であって、前記ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸化合物は、真空中で気化させて基板上に堆積させることにより製膜することを特徴とするポリベンゾオキサゾール樹脂膜の製造方法である。これにより、上記用途に適したCuの拡散防止能を備え、電気特性及び熱特性及び物理特性の全てに優れ、特に耐熱性と密着性に優れたポリベンゾオキサゾール樹脂膜を得ることができる。
【0014】
本発明において、ジアミノフェノール化合物および/またはビスアミノフェノール化合物と、ジカルボン酸化合物によるポリベンゾオキサゾールの重合反応に関しては、酸クロリド法、活性エステル法や、ポリリン酸やジシクロヘキシルカルボジイミドなどの脱水縮合材を同時に気化、堆積させることで反応をさせることもできる。
前記ジアミノフェノール化合物、ビスアミノフェノール化合物、ジカルボン酸化合物を、基板上に堆積させた後に基板を任意の温度に加熱、または任意の温度に加熱された基板上に堆積させることにより、ポリベンゾオキサゾール前駆体樹脂膜を得ることができる。
【0015】
また、重合反応が完了したポリベンゾオキサゾール前駆体樹脂膜を、閉環反応させる方法としては、例えば、真空蒸着装置内で基板上に製膜後、基板を400℃に加熱して反応させる方法が挙げられる。ポリベンゾオキサゾール前駆体樹脂膜に対してUV照射する方法、電子線照射する方法等を用いてもよい。
【0016】
本発明で得られるポリベンゾオキサゾール樹脂としては、一般式(1)で表される繰り返し単位を有するものが挙げられるが、このポリベンゾオキサゾールとしては、一般式(1)中、Xで表される構造を有する式(2)で表される基の中から選ばれる1種の基を有するジアミノフェノール化合物および/またはビスアミノフェノール化合物と、一般式(1)中、Yで表される構造を有する式(4)で表される基の中から選ばれる1種の基を有するジカルボン酸とを反応させることにより、得ることができる。
一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリベンゾオキサゾール樹脂以外の樹脂構造のものを得る場合は、ポリベンゾオキサゾール樹脂の合成に一般的に用いられているジアミノフェノール化合物、ビスアミノフェノール化合物およびジカルボン酸を用いることができる。
まず、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリベンゾオキサゾールを合成するためのジアミノフェノール化合物およびビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸化合物について説明する。
【0017】
ジアミノフェノール化合物およびビスアミノフェノール化合物
前記ジアミノフェノール化合物およびビスアミノフェノール化合物としては、例えば、2,4−ジアミノ−レゾルシノールおよび2,5−ジアミノ−1,4−ジヒドロキシルベンゼン等のジヒドロキシルベンゼンを有する化合物:、
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−ビフェニルおよび3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノ−ビフェニル等のジヒドロキシ−ビフェニルを有するビスアミノフェノール化合物:、
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルエーテル等のジヒドロキシ−ジフェニルエーテルを有するビスアミノフェノール化合物:、
9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−フェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−(4−アミノ−3−ヒドロキシ)−フェノキシ−フェニル)フルオレン等のフルオレン骨格を有する化合物:、
2,2’−ビス−(4−アミノ−3−ヒドロキシ−フェノキシ)−1,1’−ビナフタレン等のビナフタレン骨格を有する化合物:、
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルスルホン、ビス(4−(4−アミノ−3−ヒドロキシ)−フェノキシ−フェニル)スルホンおよびビス(4−(4−ヒドロキシ−3−アミノ)フェノキシ−フェニル)スルホン等のスルホン基を有する化合物:、
2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等のフッ素またはフッ素化アルキル基を有する化合物が挙げられ、これらを単独また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、ジヒドロキシルベンゼンを有する化合物、フルオレン骨格を有する化合物、ビナフタレン骨格を有する化合物の中から選ばれる1種以上のビスアミノフェノール化合物が好ましい。これにより、ポリベンゾオキサゾール樹脂の耐熱性を向上することができる。
【0018】
また、架橋基を有するものを用いてもよく、例えば、2,2’−ビス−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)−6,6’−ビス−エチニル−1,1’−ビナフタレンおよび2,2’−ビス−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)−6,6’−ビス−フェニルエチニル−1,1’−ビナフタレン等のエチニル(フェニルエチニル)−ビナフタレンを有するビスアミノフェノール化合物:、
1,5−ビス−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)−2,6−ビス−エチニル−ナフタレン、1,5−ビス−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)−2,6−ビス−フェニルエチニル−ナフタレン)、1,5−ビス−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)−2−フェニルエチニルナフタレンおよび1,5−ビス−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)−3−フェニルエチニルナフタレン等のエチニル(フェニルエチニル)−ナフタレンを有するビスアミノフェノール化合物:、
9,9−ビス−4−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)フェニル−2,7−ビス−エチニル−フルオレン、9,9−ビス−4−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)フェニル−2,7−ビス−フェニルエチニル−フルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−フェニル)−2,7−ビス−エチニル−フルオレンおよび9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−フェニル)−2,7−ビス−フェニルエチニル−フルオレン等のエチニル(フェニルエチニル)−フルオレンを有するビスアミノフェノール化合物:、
1,3−ビス−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)−4−エチニル−ベンゼン、1,3−ビス−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)−4−フェニルエチニル−ベンゼン、1,4−ビス−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)−3−エチニル−ベンゼンおよび1,4−ビス−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)−3−フェニルエチニル−ベンゼン等のエチニル(フェニルエチニル)−ベンゼンを有するビスアミノフェノール化合物:、
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−2−フェニルエチニル−ジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−5−フェニルエチニル−ジフェニルエーテルおよび3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−6−フェニルエチニル−ジフェニルエーテル等のエチニル(フェニルエチニル)−ジフェニルエーテルを有するビスアミノフェノール化合物:、
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−2−フェニルエチニル−ビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−5−フェニルエチニル−ビフェニルおよび3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−6−フェニルエチニル−ビフェニル等のエチニル(フェニルエチニル)−ビフェニルを有するビスアミノフェノール化合物:、
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−6,6’−ジフェニルエチニル−ジフェニルスルホン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノ−6,6’−ジフェニルエチニル−ジフェニルスルホンおよび3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ジフェニルエチニル−ジフェニルスルホン等のエチニル(フェニルエチニル)−ジフェニルスルホンを有するビスアミノフェノール化合物:、
2,2−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−エチニル−フェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−フェニルエチニル−フェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3−ヒドロキシ−4−アミノ−6−フェニルエチニル−フェニル)−プロパンおよび2,2−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−2−フェニルエチニル−フェニル)−プロパン等のエチニル(フェニルエチニル)−フェニル−プロパンを有するビスアミノフェノール化合物:、
2,2−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−エチニル−フェニル)−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−フェニルエチニル−フェニル)−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス−(3−ヒドロキシ−4−アミノ−6−フェニルエチニル−フェニル)−ヘキサフルオロプロパンおよび2,2−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−2−フェニルエチニル−フェニル)−ヘキサフルオロプロパン等のエチニル(フェニルエチニル)−フェニル−ヘキサフルオロプロパンを有するビスアミノフェノール化合物等が挙げられ、これらを単独また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、エチニル(フェニルエチニル)−ナフタレンを有するビスアミノフェノール化合物およびエチニル(フェニルエチニル)−フルオレンを有するビスアミノフェノール化合物より選ばれる1種以上の架橋基を有するビスアミノフェノール化合物が好ましい。これにより、ポリベンゾオキサゾール樹脂を加熱することにより3次元網目状に架橋反応を生じるため、ポリベンゾオキサゾール樹脂の耐熱性をさらに向上することができる。
【0019】
ジカルボン酸化合物
前記ジカルボン酸化合物としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、2−フルオロイソフタル酸および2,3,5,6−テトラフルオロテレフタル酸等のフタル酸:、
4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビス(4−カルボキシフェノキシ)ビフェニルおよび4,4’−ビス(3−カルボキシフェノキシ)ビフェニル等のビフェニル骨格を有するジカルボン酸:、
1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレン骨格を有するジカルボン酸:、
4,4’−スルホニルビス安息香酸、3,4’−スルホニルビス安息香酸、3,3’−スルホニルビス安息香酸、4,4’−オキシビス安息香酸、3,4’−オキシビス安息香酸および3,3’−オキシビス安息香酸等のビス安息香酸:、
2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンおよび2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等のビス−カルボキシフェニル−プロパン(ヘキサフルオロプロパン):、
9,9−ビス(4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(3−カルボキシフェノキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス−(2−カルボキシ−フェニル)フルオレンおよび9,9−ビス−(3−カルボキシ−フェニル)フルオレン等のフルオレン骨格を有するジカルボン酸:、
1,3−アダマンタンジカルボン酸、2,5−ジメチルアダマンタン−1,3−ジカルボン酸、2,5−ジフェニルアダマンタン−1,3−ジカルボン酸、2,5−ビス(t−ブチル)アダマンタン−1,3−ジカルボン酸などのアダマンタン骨格を有するジカルボン酸:、
4,4’−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−p−ターフェニルおよび4,4’−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−m−ターフェニル等のビス−カルボキシフェニル−ターフェニル化合物:、
等が挙げられ、これらを単独また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、ビス安息香酸骨格を有する化合物の中から選ばれる1種以上のジカルボン酸化合物が好ましい。これにより、ポリベンゾオキサゾール樹脂膜の密着性を向上することができる。
【0020】
また、架橋基を有するジカルボン酸を用いてもよく、例えば、3−エチニルフタル酸、4−エチニルフタル酸、5−エチニルイソフタル酸、2−エチニルテレフタル酸および3−エチニルテレフタル酸等のエチニルフタル酸:、
2−エチニル−1,5−ナフタレンジカルボン酸および3−エチニル−1,5−ナフタレンジカルボン酸等のエチニル−ナフタレンジカルボン酸:、
4,4’−ジエチニル−2,2’−ビフェニルジカルボン酸および5,5’−ジエチニル−2,2’−ビフェニルジカルボン酸等のジエチニル−ビフェニルジカルボン酸:、
2,2−ビス(2−カルボキシ−3−エチニルフェニル)プロパンおよび2,2−ビス(2−カルボキシ−4−エチニルフェニル)プロパン等のビス(カルボキシ−エチニルフェニル)プロパン:、
2,2−ビス(2−カルボキシ−4−エチニルフェニル)ヘキサフルオロプロパンおよび2,2−ビス(3−カルボキシ−5−エチニルフェニル)ヘキサフルオロプロパン等のビス(カルボキシ−エチニルフェニル)ヘキサフルオロプロパン:、
5−(1−エチニル−フェニル)−イソフタル酸および2−(1−エチニル−フェニル)−テレフタル酸等の(エチニル−フェニル)−フタル酸:、
3−フェニルエチニルフタル酸、5−フェニルエチニルイソフタル酸、2−フェニルエチニルテレフタル酸および3−フェニルエチニルテレフタル酸等のフェニルエチニルフタル酸:、
2−フェニルエチニル−1,5−ナフタレンジカルボン酸等のフェニルエチニル−ナフタレンジカルボン酸、
3,3’−ジフェニルエチニル−2,2’−ビフェニルジカルボン酸等のジフェニルエチニル−ビフェニルジカルボン酸:、
2,2−ビス(2−カルボキシ−3−フェニルエチニルフェニル)プロパン等のビス(カルボキシ−フェニルエチニルフェニル)プロパン:、
2,2−ビス(2−カルボキシ−4−フェニルエチニルフェニル)ヘキサフルオロプロパン等のビス(カルボキシ−フェニルエチニルフェニル)ヘキサフルオロプロパン:、
5−(1−フェニルエチニル−フェノキシ)−イソフタル酸、5−(2−フェニルエチニル−フェノキシ)−イソフタル酸、5−(3−フェニルエチニル−フェノキシ)イソフタル酸、および2−(1−フェニルエチニル−フェノキシ)テレフタル酸等のフェニルエチニル−フェノキシフタル酸:、
4,4’−トランジカルボン酸および3,4’−トランジカルボン酸等のトランジカルボン酸等の分子内にアセチレン骨格を有するジカルボン酸:、
1,2−ビフェニレンジカルボン酸および1,3−ビフェニレンジカルボン酸等のビフェニレン骨格を有するジカルボン酸:、
等が挙げられ、これらを単独また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、エチニルフタル酸、フェニルエチニルフタル酸、(フェニルエチニル−フェノキシ)−イソフタル酸から選ばれる1種以上のジカルボン酸が好ましい。これにより、ポリベンゾオキサゾール樹脂を加熱することにより3次元網目状に架橋反応を生じるため、ポリベンゾオキサゾール樹脂の耐熱性をさらに向上することができる。
【0021】
本発明に用いる装置の例について、図1を用いて説明する。
装置において、原料モノマーを気化する処理室1は、該処理室1内を、外部の真空ポンプその他の真空排気系2に、該処理室1と該真空排気系2を気密に仕切ることが出来る排気バルブ3を介して接続されると共に、該処理室1内に合成される樹脂を構成する原料モノマーが気化して堆積され膜を形成する基板4を、基板ホルダー5によって下向きに保持するようになっており、該基板4を該基板ホルダー5の背面に設けられたヒーター6によって、所望温度に加熱できるようにし、また、該処理室1内の下部に、該基板4に対向して、合成される樹脂の原料モノマーa、bを蒸発させるための、ガラス製の蒸発源容器7、7’が設けられ、該各蒸発源容器7、7’を、その周囲に巻回されたヒーター8、8’によって、所望温度に加熱できるような構造を有するものが挙げられる。また、図中、9はヒーター6の電源、10、10’はそれぞれヒーター8、8’の電源、11は基板4と蒸発源容器7、7’との間に介在されるシャッターを示す。
また、上記装置は、温度制御のために原料モノマーa、b内に挿入された熱電対12、12’を有し、外部に導出の温度制御器で、常時温度を測定できるようになっているものが好ましい。
【0022】
次に、本発明の半導体装置について好適な実施の形態に基づいて説明する。
図2は、本発明の半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。
半導体装置100は、素子が形成された半導体基板13と、半導体基板13の上側(図1上側)に設けられた保護膜14と、保護膜14の上に設けられた絶縁膜15およびバリアメタル層17で覆われた銅配線層16を有している。
絶縁膜15には、配線すべきパターンに対応した凹部が形成されており、その凹部内には銅配線層16が設けられている。
絶縁膜15は、ナノフォーム(微細孔)(図示せず。)が形成されていても良い。
また、絶縁膜15の上側(下側保護膜14と反対側面)には、ハードマスク層18が形成され、さらには銅配線層16とハードマスク層18の上面には、保護膜(上側)14が形成されている。
また、本実施の形態では、絶縁膜15を用いた半導体装置100について説明したが、本発明はこれに限定されない。上記保護膜14や絶縁膜15にポリベンゾオキサゾールを用いた場合、その樹脂膜の形成に、上記方法を用いることができる
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例の内容になんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例で作製した膜を、下記の方法により、比誘電率、Cu拡散性を測定した。
(1)比誘電率
低抵抗(0.01Ωcm以下)のP型Si基板上に製膜した膜をSSM495(SSM社製)Hgプローブにより測定をした。
(2)Cu拡散性
低抵抗(0.01Ωcm以下)のP型Si基板上に製膜した膜上に、Cuを、メタルマスクを用いて、直径1mmのパッドを真空蒸着により作製し、温度200℃で任意の電界を印加して、1E―2の大電流が流れるまでの時間を測定する事により得た。
【0024】
(実施例1)
実施例においては、上記で説明した装置(図1)を用いた。
原料モノマーa、bとして、ジカルボン酸化合物としてイソフタル酸ジクロリドを用い、ビスアミノフェノール化合物として3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノ−ビフェニルを用いる。上記の原料モノマーa、bを、図1の装置内で反応させることにより、基板3上にポリベンゾオキサゾール樹脂膜を得るた。以下に詳細な条件を示す。
【0025】
蒸発源容器7、7’の一方に、原料モノマーaとしてイソフタル酸ジクロリドと、他方に原料モノマーbとして3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノ−ビフェニルとを充填し、シャッター11を閉じた状態で、処理室1内の雰囲気ガスの全圧を、真空排気系2を介して1×10−5Torrに設定した。
【0026】
次いで、蒸発源容器7、7’に、挿入された熱電対12、12’で、温度を測定しながら、ヒーター8、8’によって、イソフタル酸ジクロリドを66℃±3℃に、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノ−ビフェニルを175℃±3℃に加熱する。この時、各原料モノマーa、bが1:1のモル比で蒸発するように、イソフタル酸ジクロリドの蒸気圧で、処理室1内の圧力を4×10−3Torrに設定する。
【0027】
続いて、原料モノマーa、bが、所望温度に達して、蒸発を開始した後に、シャッター11を開き、基板4上に、原料モノマーa、bを堆積させて、基板上において、室温で重合反応を進め、所定の膜厚になったらシャッター11を閉じた。
【0028】
次いで、ヒーター6を用いて、基板4を加熱することにより、基板4上に製膜されたポリベンゾオキサゾール樹脂膜を硬化させた。比誘電率を測定したところ、2.9であった。Cuの耐拡散性も良好な結果であった。
【0029】
(実施例2)
室温で製膜した後の硬化条件以外は、実施例1と同様に実施した。
基板4上に製膜されたポリベンゾオキサゾール樹脂膜を紫外線照射することにより硬化させ、比誘電率を測定したところ、3.0であった。Cuの耐拡散性も良好な結果であった。
【0030】
(実施例3)
室温で製膜した後の硬化条件以外は、実施例1と同様に実施した。
基板4上に製膜されたポリベンゾオキサゾール樹脂膜を電子線照射することにより硬化させ、比誘電率を測定したところ、3.0であった。Cuの耐拡散性も良好な結果であった。
【0031】
(比較例1)
化学気相法を用いて、SiCN膜を製膜し、比誘電率を測定したところ4.9であった。実施例と比較例の結果のまとめを表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
ダマシン工程により作製された銅配線の上に、上記図1に示す装置を用いて、ポリベンゾオキサゾール絶縁膜を製膜し、上記図2に示す半導体装置と同様の配線を埋め込んだ積層構造を有する半導体装置を形成した。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を実施する装置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 処理室
2 真空排気系
3 排気バルブ
4 基板
5 基板ホルダー
6 ヒーター
7,7’ 蒸発源容器
8,8’ ヒーター
9 電源
10,10’ 電源
11 シャッター
12,12’ 熱電対
13 半導体基板
14 保護膜
15 絶縁膜
16 銅配線層
17 バリアメタル層
18 ハードマスク層
100 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミノフェノール化合物および/またはビスアミノフェノール化合物と、ジカルボン酸化合物とより構成されるポリベンゾオキサゾール樹脂膜の製造方法であって、前記ジアミノフェノール化合物および/またはビスアミノフェノール化合物と、ジカルボン酸化合物は、真空中で気化させて基板上に堆積させることにより製膜することを特徴とするポリベンゾオキサゾール樹脂膜の製造方法。
【請求項2】
前記基板上に堆積させたジアミノフェノール化合物および/またはビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸化合物とを、反応させる請求項1に記載のポリベンゾオキサゾール樹脂膜の製造方法。
【請求項3】
前記ポリベンゾオキサゾール樹脂膜を、加熱又は電子線照射又は紫外線照射することにより硬化させる請求項1または2に記載のポリベンゾオキサゾール樹脂膜の製造方法。
【請求項4】
前記ジアミノフェノール化合物およびビスアミノフェノール化合物は、式(2)で表される基の中から選ばれる少なくとも1種の基を有するものである請求項1乃至3のいずれかに記載のポリベンゾオキサゾール樹脂膜の製造方法。
【化2】

[式(2)中、X1は式(4)で表される基の中から選ばれる基を示す。]
【化4】

[式(2)および式(4)で表される基のベンゼン環上の水素原子は、架橋基を有していても良い、脂肪族基および芳香族基の中から選ばれる少なくとも1種の有機基で置換されていてもよい。]
【請求項5】
前記ジカルボン酸化合物は、式(3)で表される基の中から選ばれる少なくとも1種の基を有するものである請求項1乃至4のいずれかに記載のポリベンゾオキサゾール樹脂膜の製造方法。
【化3】

[式(3)中、X1は前記式(4)で表される基の中から選ばれる基を示し、式(3)で表される基のベンゼン環上の水素原子は、架橋基を有していても良い、脂肪族基および芳香族基の中から選ばれる少なくとも1種の有機基で置換されていてもよい。]
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のポリベンゾオキサゾール樹脂膜の製造方法により得られた絶縁膜。
【請求項7】
前記絶縁膜は、一般式(1)で表される繰り返し単位を有する樹脂より構成されるものである、請求項6に記載の絶縁膜。
【化1】

[式(1)中、Xは式(2)で表される基の中から選ばれる少なくとも1種の基を示し、Yは式(3)で表される基の中から選ばれる少なくとも1種の基を示す。nは1〜10000の整数を示す。]
【化2】

【化3】

[式(2)および式(3)中、X1は式(4)で表される基の中から選ばれる基を示す。]
【化4】

[式(2)、式(3)および式(4)で表される基のベンゼン環上の水素原子は、架橋基を有していても良い、脂肪族基および芳香族基の中から選ばれる少なくとも1種の有機基で置換されていてもよい。]
【請求項8】
半導体基板上に形成された金属配線層と請求項6または7に記載の絶縁膜とが直接接触して配置されていることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−278992(P2006−278992A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100154(P2005−100154)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】