マイクロニードルおよびその製造方法と金型
【課題】生体内分解性の樹脂を加熱し軟化又は溶解し、金型(鋳型)でプレスしてマイクロニードルを製造する方法は良く知られている。この方法では、針状突起の折損が多く、品質のよいものは歩留まりが低い状況であり、周辺部や末端部では、針の根元で湾曲する傾向が見られた。特に収縮率の高いPGAほど湾曲する傾向が見られた。そこで、これらの欠点を克服するマイクロニードルの製造方法の提供が課題となっていた。
【解決手段】樹脂の冷却収縮時に生じる応力を遮断するため、上記応力の遮蔽板を設置した金属金型(鋳型)を作製し、プレス加工によるマイクロニードルの作製を行った。これにより、マイクロニードル外周部の針状突起の湾曲は抑制され、特に、熱収縮性の大きいPGA樹脂を用いても、図8に示されるような品質のよいマイクロニードルが提供できるようになった。
【解決手段】樹脂の冷却収縮時に生じる応力を遮断するため、上記応力の遮蔽板を設置した金属金型(鋳型)を作製し、プレス加工によるマイクロニードルの作製を行った。これにより、マイクロニードル外周部の針状突起の湾曲は抑制され、特に、熱収縮性の大きいPGA樹脂を用いても、図8に示されるような品質のよいマイクロニードルが提供できるようになった。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロニードルの製造方法に関するものである。特に生体内分解性の材料で構築され、基板(または基盤)の主面上にアレイ(行列)状に突起するように形成された多数の針状突起を作製するプレス製造方法に関するものである。特に本発明はプレス法に特有の針状突起のひずみを克服する製造方法に関するものであり、またその製造方法に使用する金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に経口投与できない薬剤は注射によって投与される。注射器を用いた投与は皮膚の損傷が大きく、痛みを伴う。それに対し貼付剤のような経皮投与は簡便であり、さらに薬剤を局所的に送達させるための薬剤送達の制御が可能である。また、薬剤の副作用を軽減もしくは回避することもできる。しかし、貼付剤を用いた場合には薬効発現に時間が必要であり、使用できる薬剤も化学的な物性が経皮吸収に適した種類でないと良好な結果が得られないことから、使用可能な薬剤は大きく制約されている。
【0003】
現在では、更に皮膚透過性を向上させるため、イオントフォレシス(iontophoresis)やソノフォレシス(sonophoresis)、エレクトロポレーション(electroporation)等の方法が応用されているが、なお、皮膚の損傷やそれに伴う障害、感染に対するバリア機能の回復などについて懸念されている。しかも、いずれの方法を用いても適応できる薬剤は限定されている。すなわち、イオントフォレシスは水溶液中で薬剤は帯電している必要があり、ソノフォレシスとエレクトロポレーションでは、薬剤の分子量は小さくなくてはならないなどの制限がある。
【0004】
薬剤の経皮投与において、薬剤送達の障害となっているものは皮膚の表層にある角質層であることが知られている。近年、その障害を克服するために角質層を貫通することで回避し、該角質層下に薬剤を送達する、マイクロニードルやマイクロブレードの開発が盛んに行われている(特許文献1及び2参照)。
マイクロニードルは、基板の主面に多数の微小な針状突起をアレイ(行列)状に並ぶように形成したデバイスである。マイクロニードルの全体的な形態は、大きさは全く異なるが、いわゆる剣山(切花を飾るための器具であって、板上に多数の針が設けられたもの)のような形態である。マイクロニードルは、上記特許文献1の図1などからも明らかなとおり、基板を有し、かつ、その主面に一体的に設けられた多数の針状突起とを有するものである。
マイクロニードルの基板は、通常、厚さ0.3mm〜5mm程度以上の平板である。針状突起は、アスペクト比(突起長さと直径との比)が大きく、一般に、基板の主面からの突起長さが200μm〜1mmで、かつ直径が数十μm〜200μm程度である。
マイクロニードルは、薬剤送達や体液サンプリングのためのデバイスとしての利用が知られている。針状突起は、皮膚の上層の角質層を十分に貫通できるが痛点までは届かない程度の長さを有する。そのため、マイクロニードルは、適用時に皮膚貫通に伴う痛みを感じなくてよいという利点がある。マイクロニードルは、その針状突起の直径が数十μm〜200μm程度と小さいために、皮膚への損傷は注射針やマイクロブレードを適用したときよりもはるかに小さい。
【0005】
ポリアミドやポリエステルなどの樹脂を材料とするマイクロニードルも提案されている(特許文献3参照)。特にポリエステル樹脂として、ポリ乳酸樹脂やポリグリコール酸を用いて作製したマイクロニードルは、生体内分解性であるため、金属製あるいはシリコン製マイクロニードルと比較して安全性の高いものであると考えられている。
マイクロニードルを樹脂成形によって作製する場合、その成形金型は、本願の図1に示すように、マイクロニードルの基板面を形成するための主面と、その主面に多数設けられた貫通孔2とを有する構造となる。貫通孔2は、針状突起を形成するためのキャビティである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2002−517300号公報
【特許文献2】特表2000−512529号公報
【特許文献3】特表2003−501161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1に示すような成形金型を用い、かつ、ポリアミドやポリエステルなどの樹脂を用いてマイクロニードルを作製する場合、その成形手順は、成形材料の樹脂を高温に加熱して熔融し、金型を該樹脂に押し付け、型の凹凸を転写形成した後、樹脂と金型とを室温まで冷却して樹脂を固化し、製品を金型から離型する、といった手順となる。
しかしながら、本発明者等が、上記のような成形手順によって形成されたマイクロニードルを詳細に観察したところ、該マイクロニードルの基板の主面の外周の末端に近い領域に形成された針状突起の根元部分が、樹脂の冷却収縮に起因するせん断応力の作用によって変形していることがわかった。
その結果、針状突起が根元で湾曲することになる。これは、樹脂の熱膨張率と金型の熱膨張率が大きく異なるからである。
このようなマイクロニードルを皮膚への穿刺に適用する場合、根元が湾曲した針状突起では、穿刺時に折れ曲がったり、折損しやすいということも分かった。
そこで本発明では、薬剤の経皮投与のために好適で、折れ難く、しかも屈曲しにくいマイクロニードルの製造方法とそれによるマイクロニードルを提供することを目的とする。
また、本発明の更なる目的は、本発明の製造方法に用いる金型(鋳型)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来、マイクロニードルの針状突起を皮膚に穿刺するに際して、該針状突起の折損や湾曲を避けるためには、マイクロニードルの材料として、強度の強い樹脂を使用する必要があることは知られていた。また、そのために、融点の高い材料の樹脂を使用することが、求められていた。そして、生体内分解性の樹脂の中では、例えばポリ乳酸(PLA)よりも、ポリグリコール酸(PGA)の方が融点が高く、針状突起を作製した場合、PLAよりPGAの方が材料強度が強いことは、知られていた。
しかし、本発明者等の研究によれば、PGA樹脂のような融点の高い材料を用いると、根元が湾曲した針状突起が形成される問題がより顕著に生じることがわかった。
即ち、PGA樹脂は成形の際に、他の材料よりも高い温度まで加熱する必要があるために、室温に冷却して行く過程でより大きい収縮が起きる。例えば、結晶化を伴うPGA樹脂の熱膨張率と金型の熱膨張率を比較すると、PGA樹脂の方が約10倍近く熱膨張率が高くなっており、製造過程で約200℃の温度差がある場合、PGA樹脂の体積収縮は、約6〜8%近くに達する。そのため、基板の主面の外形が一辺10mm程度の正方形であるようなマイクロニードルにおいては、図1に示されるように冷却後のマイクロニードルの基板の収縮(基板の面に沿った横方向への収縮)により、中央部の針状突起と周辺部の針状突起の距離が約30〜40μm程度縮小することになる。その結果、図2に示すように、基板の主面の周辺部においては、根元が湾曲した針状突起が形成される。
【0009】
そこで、本発明者等は、鋭意研究を行った結果、マイクロニードルの基板の主面に対応する金型の第一の主面に稜線状突起を形成すれば、樹脂が冷却によって固化(結晶化)収縮する時に生じる応力を該稜線状突起が遮断し得ることを見出し、本発明を完成させた。以下に、その稜線状突起を、遮蔽板と呼んで本発明を説明する。
【0010】
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)樹脂製の基板の主面に針状突起が一体的に形成された構造を有するマイクロニードルの製造方法であって、
金型を加熱して、樹脂に圧着する工程と、
上記樹脂を冷却し、成形された樹脂を離型する工程とを有し、
前記金型は、製造すべきマイクロニードルの基板の主面を形成するための主面を有し、該金型の主面には、針状突起を形成するための貫通孔と、該金型の主面から稜線状に突起する遮蔽板とが設けられており、
該遮蔽板は、樹脂を冷却する時にマイクロニードルの基板内に生じる横方向の収縮を抑制し得る位置に設けられ、かつ、該遮蔽板の突起の高さは、製造すべきマイクロニードルの基板の厚さよりも小さいものである、
前記製造方法。
(2)金型の主面における遮蔽板の形状が、金型の主面の中央の領域を分割する形状、金型の主面の中央の領域を囲む形状、金型の主面の外周を囲む形状、または、前記形状のうちの2以上の形状を組み合わせた形状を有する、上記(1)記載の製造方法。
(3)金型の主面における遮蔽板の形状が、該金型の主面の中央の領域を分割する十字形、金型の主面の中央の領域を囲む円形、金型の主面の外周を囲む円形、または、これらの形状を重ね合わせた形状であり、
遮蔽板の断面形状が、楔形、正方形、長方形、または、台形であり、
貫通孔が、円柱状、または、円錐状の孔であり、
金型の主面における貫通孔の開口部には、テーパー状の面取りが設けられており、
各貫通孔の中心軸同士の間の距離が、0.4mm〜1mmであり、
貫通孔の数が、50〜500である、
上記(1)または(2)記載の製造方法。
(4)遮蔽板が、貫通孔のある領域を2以上に分割する形状を有している、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)樹脂が、生体内分解性の樹脂である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)生体内分解性の樹脂が、ポリグリコール酸を主体とする樹脂である、上記(5)記載の製造方法。
(7)金型の加熱温度が、樹脂の融点の温度を中心として−10度〜+30度の範囲内の温度である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8)金型が、上型とそれに対向する下型とを有し、これらの型の間で樹脂がマイクロニードルへと成形されるものであり、上型は、マイクロニードルの基板の主面を形成するための主面を持ち、下型は、マイクロニードルの基板の裏面を形成し、上型の圧着工程もしくは離型工程における基板の保持のための主面を持ち、
該下型には、上型が契合し得る凹部が設けられており、
生体分解性樹脂を該下型の凹部内に配置し、
上型を上記樹脂の融点まで加熱して、上記樹脂に圧着する工程と、
上記樹脂を冷却し、成形された樹脂を離型する工程とを有する、
上記(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法。
(9)金型が、上型とそれに対向する下型とを有し、これらの型の間で樹脂がマイクロニードルへと成形されるものであり、上型は、マイクロニードルの基板の主面を形成するための主面を持ち、下型は、マイクロニードルの基板の裏面を形成するための主面を持ち、
上型の裏面上において、貫通孔の開口を塞く位置に、弾性材料からなる押さえ部材を配置し、該押さえ部材によって、上型の裏面への樹脂材料の漏出を抑制する、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の製造方法。
(10)押さえ部材の材料が、ポリテトラフルオロエチレンを主体とする樹脂である、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の製造方法。
(11)樹脂製の基板の主面に針状突起が一体的に形成された構造を有するマイクロニードルを成形するための金型であって、
製造すべきマイクロニードルの基板の主面を形成するための主面を有し、該金型の主面には、針状突起を形成するための貫通孔と、該金型の主面から稜線状に突起する遮蔽板とが設けられており、
該遮蔽板は、樹脂を冷却する時にマイクロニードルの基板内に生じる横方向の収縮を抑制し得る位置に設けられ、かつ、該遮蔽板の突起の高さは、製造すべきマイクロニードルの基板の厚さよりも小さいものである、
前記金型。
(12)金型の主面における遮蔽板の形状が、金型の主面の中央の領域を分割する形状、金型の主面の中央の領域を囲む形状、金型の主面の外周を囲む形状、または、前記形状のうちの2以上の形状を組み合わせた形状を有する、上記(11)記載の金型。
(13)遮蔽板が、貫通孔のある領域を2以上に分割する形状を有している、上記(11)または(12)記載の金型。
(14)金型の主面における遮蔽板の形状が、該金型の主面の中央の領域を分割する十字形、金型の主面の中央の領域を囲む円形、金型の主面の外周を囲む円形、または、これらの形状を重ね合わせた形状であり、
遮蔽板の断面形状が、楔形、正方形、長方形、または、台形であり、
貫通孔が、円柱状、または、円錐状の孔であり、
金型の主面における貫通孔の開口部には、テーパー状の面取りが設けられており、
各貫通孔の中心軸同士の間の距離が、0.4mm〜1mmであり、
貫通孔の数が、50〜500である、
上記(11)〜(13)のいずれかに記載の金型。
(15)貫通孔が形成される領域が、厚さ0.3mm〜1mmの平板状である、上記(11)〜(14)のいずれかに記載の金型。
(16)遮蔽板が、金型の主面の外周を囲む形状を含むように設けられ、
遮蔽板の幅が、0.5mmである、上記(11)〜(15)のいずれかに記載の金型。
(17)貫通孔の内部に、該孔の金型の主面側の端部から該孔の先端部まで、筋状の突出部が設置されており、筋状の突出部の断面形状が楔形または四角形状である、上記(11)〜(16)のいずれかに記載の金型。
(18)上記(1)〜(10)のいずれかに記載の製造方法によって得られるマイクロニードルであって、
樹脂製の基板の主面に針状突起が一体的に形成された構造を有し、
該基板の主面には、前記製造方法に用いられた金型の主面に設けられた遮蔽板が転写されてなる溝が形成されていることを特徴とする、
マイクロニードル。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、マイクロニードルを形成するための金型の構造が重要である。この金型の構成を説明するために、図11、12に示すように、製造すべきマイクロニードル10の基板4の主面(針状突起12が存在する面)の側の形状を成形するための金型3を上型と呼ぶ。本発明では、この上型の構造が重要である。
図11、12に示すように、金型(上型)3は、マイクロニードル10の基板4の主面4Aを形成するために主面3Aを有する。以下、上型の主面3Aを、「上型主面」と呼ぶ。上型主面3Aには、針状突起を形成するための貫通孔2と、該上型主面3Aから稜線状に突起する遮蔽板1とが設けられている。
本発明では、上型主面3に、遮蔽板1を稜線状に突起させ、それによって材料樹脂の収縮を抑制し、該収縮に起因する内部応力を分断し、その結果、針状突起の根元の変形を抑制している。
上型主面3に遮蔽板1が突起していることによって、得られるマイクロニードル10の基板4の主面4Aには、遮蔽板1に対応する溝11が形成され、該溝11で分割または囲まれたブロック毎に樹脂の収縮が起こることになる。
図11、12に示すように、本発明の金型は、上型に対向する下型5を有し、これらの型の間で樹脂がマイクロニードルへと成形される。下型は、マイクロニードル10の基板4の裏面(通常は平坦面である)を形成するための金型である。下型の上面5Bを「下型主面」と呼ぶ。
下型5は、上型3と対になった樹脂成形用の金型の一部であってもよいし、成形時に圧縮力を加えるためのプレス装置の基盤(加圧を受けるステージ)であってもよい。下型がプレス装置の基盤である場合、本発明による金型は、上型だけであると解釈することもできる。
図3は、上型主面を見たときの、遮蔽板と貫通孔の配置パターンを示した概略図である。同図の例では、遮蔽板は、上型主面に十字を描くように稜線状に突起している。
図3に示されるような十字の遮蔽板を持った金型(鋳型)を用いると、該遮蔽板によって、マイクロニードルの基板は4つのブロックに分かれるため、図4に示すようにブロック毎の表面での収縮を考慮すればよいことになる。
それ故、分割された各ブロック内の針状突起の根元に生じる横方向のズレは、4分の1になると考えられる。例えば、針状突起が直径約100μmの円柱状である場合、マイクロニードルの基板の表面における、収縮による横方向のズレが約10μm以下であれば、針状突起に対して大きい影響を与えないと考えられる。
そこで、図5や図6、図7(a)に例示される遮蔽板を設置したマイクロニードルの金型を作製した。
図5に例示する金型の態様では、遮蔽板は、上型主面の中心と外周縁との間の中間の領域に円を描くように突起しており、この円を描く遮蔽板の内側および外側の領域に針状突起のための貫通孔が配列されている。
また、図6に例示する金型の態様では、遮蔽板は、図5の円に、図3の十字を重ね合わせた形状を有する。
また、図7(a)に例示する金型の態様では、遮蔽板は、上型主面に設けられた貫通孔を全て囲むように、外周縁の側で円形に突起している。
これらの金型を、加熱して軟化したPGA樹脂に圧着し、マイクロニードルを作製すると、遮蔽板のない場合に得られた図2のマイクロニードルと比較して、例えば、図8の写真図に示されるように、作製されたマイクロニードルの針状突起には、湾曲はほとんど見られない。
【0012】
尚、遮蔽板のない場合でも、金型を樹脂材料に押し付けた後の離型性の向上と皮膚への穿刺性の向上のため、図9のような円錐状の貫通孔を持つ金型が好ましい。このような円錐状のテーパー面は、抜き勾配として作用し、好ましい態様である。
この金型をPGA樹脂に加熱圧着してマイクロニードルを作製すると、図10に示されるように、針状突起の根元の湾曲がかなり減少し、しかも針状突起の先端部が鋭利になったものが得られる。この態様に、遮蔽板を加えることで、高信頼性の湾曲の抑制効果が得られる。
本発明者等は、これらの知見を総合して、熱収縮性の大きいPGA樹脂を用いて品質の良好なマイクロニードルの製造方法を完成した。
【0013】
本発明により、使用する樹脂材料、とりわけ生体内分解性樹脂の冷却時の収縮が緩和され、マイクロニードルの周辺部の針状突起が図2のように湾曲したり、折損することがなくなった。その結果、図8や図10のように高品質なPGA樹脂製のマイクロニードルを製造することができるようになった。本発明により、皮膚への穿刺時に折れずに、かつ屈曲することなく皮膚を良好に穿孔できるPGA樹脂製マイクロニードルを容易に得ることができるようになった。更に本発明の金型(鋳型)を使用することにより、このようなマイクロニードルを容易に製造することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、従来のマイクロニードルの製造方法における成形金型内のようすを模式的に示した断面図である。同図では、遮蔽板のない金型を材料にプレスした場合に、PGA樹脂が冷却されて固化する際に、該樹脂が基板に沿って中心に向かって収縮する様子を示している。PGA樹脂プレート(PGA樹脂からなる基板)の内部に描かれた太い矢印は、収縮の方向を示している。
【図2】図2は、遮蔽板のない金型を用いて得られたマイクロニードルの針状突起の根元部分を拡大して示した写真図である。主面に外周部分に位置する針状突起が、その根元にせん断変形を受けて、湾曲していることが示されている。
【図3】図3は、本発明の金型(上型)の一態様を例示する正面図(金型の上型主面を見せた図)である。同図の態様では、上型主面の中央に十字形の遮蔽板が配置されている。
【図4】図4は、マイクロニードルを成形するための金型に遮蔽板を設置すると、それによって、冷却固体化する際の樹脂収縮が分断されることを示す模式図(断面図)である。PGA樹脂プレート(PGA樹脂からなる基板)の内部に描かれた太い矢印は、収縮の方向を示している。
【図5】図5は、本発明の金型の他の態様を例示する正面図である。同図の態様では、上型主面の中央領域に円形の遮蔽板が配置されている。
【図6】図6は、本発明の金型の他の態様を例示する正面図である。同図の態様では、上型主面の中央領域に、十字形と円形とが組み合わされた形状の遮蔽板が配置されている。
【図7】図7(a)は、本発明の金型の他の態様を例示する正面図である。同図の態様では、上型主面の外周領域に、全ての貫通孔を囲むように、円形の遮蔽板が配置されている。貫通孔は、円柱状であって、8×8の行列状に配列されている。図7(b)は、図7(a)のX−X断面図であって、切断面だけを示している。
【図8】図7の金型を用いて得られたマイクロニードルの針状突起の根元部分を拡大して示した写真図である。
【図9】図9は、本発明の金型の断面を部分的に拡大した図であって、貫通孔の中心軸を含む平面で切断した図である。同図の例では、貫通孔は円錐状となっている。また、同図では、貫通孔内の空間にハッチングを施している。
【図10】図10は、図9の金型を用いて得られたマイクロニードルの針状突起の根元部分を拡大して示した写真図である。
【図11】図11は、本発明の金型と、それによって製造されたマイクロニードルとを例示した斜視図である。
【図12】図12は、本発明の金型と、それによって製造されたマイクロニードルとを例示した斜視図である。
【図13】図13は、樹脂が上型の裏面に漏出する問題を解決するための押さえ部材とその作用を示した写真図である。
【図14】図14は、本発明の金型の他の態様を例示した図である。図14(a)は、図14(b)のY−Y断面図であって、切断面と遮蔽板だけを示している。
【図15】図15は、穿刺性確認実験を示した写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を、添付図面に示された好ましい態様を参照して更に詳細に説明する。
図11、図12は、本発明の金型の一例と、それによって製造されたマイクロニードルとを示した斜視図であって、金型を上下に開き、それらの間に、マイクロニードルの製品を配置して、分解組立図のように示した図である。同図に示した金型は、分かりやすいように、主要部分だけを示している。実際の金型は、プレス装置に取り付けたり、位置合わせを行ったりするための部分がさらに付帯する。また、同図では、説明のために、マイクロニードルの外径を上型と同様の円板状に描いているが、外形は任意である。また、同図では、説明のために、マイクロニードルの針状突起の数を少なく描いている。
本発明によるマイクロニードルの製造方法としては、樹脂成形における一般的な鍛造的手法(型の凹凸を樹脂に押圧し、反転的に転写する方法)、または、射出成形手法などが挙げられる。
図11に例示する金型を用い、樹脂材料を圧縮してマイクロニードルを成形する場合の主要なステップは、例えば次の(i)〜(iv)のとおりである。
(i)下型主面5A上に、プレート状等の材料樹脂(例えば、生体内分解性の樹脂、特にPGA)を置く。
(ii)上型3をプレス装置の上側の可動部分(いわゆる、ラム)に取り付け、該上型を樹脂の融点付近まで加熱する。プレス装置の可動部分を降下させ、上型3を樹脂に圧着し、樹脂を流動させて、該樹脂を上型主面と貫通孔内に行きわたらせる。
該上型の加熱温度は、使用する樹脂の融点付近が好ましく、融点温度の−10度〜+30度の温度を使用することができる。より好ましくは、融点温度の−5度〜+20度を挙げることができる。
(iii)この状態で上型の温度を室温付近(ガラス遷移点〜常温付近)に冷却する。
(iv)上型3を上昇させ、成形された樹脂を取り外し、樹脂性のマイクロニードル10を得る。
【0016】
本発明の製造方法によって得られたマイクロニードルは、図11、12のとおり、基板4の主面4Aに、上型の遮蔽板1が転写されてなる溝11を有するものとなっている。
遮蔽板1が上型主面の外周に設けられる場合、マイクロニードルの基板4の主面4Aの外周にも、それに対応する環状の溝が形成されることになるが、該環状の溝が製品に含まれないように、その部分を後工程で切り落としてもよい。
【0017】
融点以上に加熱された樹脂が型から流出することを防ぐため、平板状の下型を用いる替わりに、図12に示すように、凹部5Bを持った下型5を使用し、上型を凹部にはめ込んで成形してもよく、また、針状突起の高さが不均一になるのを抑制するため、高精度に型内を密閉して成形を行うこともできる。
さらに、大量生産を考えれば、長尺状やロールから巻き出した帯状の樹脂材料をプレス機に搬送挿入し、上記と同様に、その片側表面に融点付近に加熱された上型を圧着し凹凸を転写し、冷却後金型を取り外し、後で、所定の薬剤デバイスサイズに切断する、という製造方法であってもよい。
【0018】
上型および下型(下型はプレス装置の基盤であってもよい)の材料は、目的に合った金属であれば特に限定はされないが、好ましいものとして、例えば、鋼材、銅、真鍮等を挙げることができる。より好ましくは、金型の耐久性や微細孔の切削性、生体への安全性を考慮して鋼材、例えばステンレンス鋼(特に、18%Cr、8%Ni、高S添加オーステナイト系ステンレス鋼)を挙げることができる。
【0019】
生体内分解性樹脂としては、例えばPLAやPGAのようなポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、あるいはこれらの混合物や共重合体等を使用することができる。特に、針状突起の強度の点で、PGAを主体とする樹脂が好ましいものとして挙げることができる。PGAを主体とする樹脂とは、PGAだけからなる樹脂、または、PGAに必要な添加物がさらに加えられた樹脂である。
【0020】
下型の温度、および、該下型上に配置される材料樹脂の初期の温度は、室温でよい。上側のプレス装置に取り付けられた上型の温度は、用いる樹脂(PLAやPGAなど)のガラス転移温度以上に設定する必要がある。好ましくは、融点付近の温度に設定することが望ましい。例えば、PGAの場合には240℃〜250℃を挙げることができる。
【0021】
本発明の金型は、図3〜図7、図11、図12に例示するように、上型3を少なくとも有するものであって、該上型は、材料樹脂に押し付けることで該樹脂を変形させて、針状突起を備えた基板面を形成するためのものである。上型3は、図11に示すように、マイクロニードル10の基板面4Aを形成するための上型主面3Aを有し、該上型主面3Aには、以下の形状の遮蔽板1が突起し、かつ、貫通孔2が設けられている。遮蔽板1は、上型主面3A上に長く連なって延びる稜線状突起である。
遮蔽板は、貫通孔の位置を避けるように、即ち、貫通孔同士の間を通過するように形成される。また、先に遮蔽板が形成され、該遮蔽板を避けるように、貫通孔の位置が決定されてもよい。
(a)遮蔽板1をその長手方向に垂直に切断したときの断面の形状(以下、単に「遮蔽板の断面形状」という)は、マイクロニードルへと成形された樹脂を冷却する時に、該マイクロニードルの基板4が横方向に収縮するのを妨害し遮断する役割を果たすものであればよく、特に限定されるものではないが、好ましい断面形状として、楔型(例えば、1度〜10度程度の鋭角の頂点が突き出した三角形)、正方形、長方形または台形を挙げることができる。図7においては、長方形の断面形状のものが示されている。
(b)上型主面における遮蔽板1の形状(即ち、上型主面上に遮蔽板の稜線が描くパターン)は、マイクロニードル10の基板4の主面4Aを分割して、横方向(上型主面に沿った方向)への樹脂の収縮を分散させることが出来る形状であればよい。
貫通孔(針状突起に対応)毎の周囲に遮蔽板を配置することにより最大限の収縮分散効果が得られると考えられるが、金型の加工難度・コストの面から鑑みてマイクロニードルの仕様精度に応じた遮蔽板の配置を行えばよい。例えば、図3、図5、図6に示されるように、マイクロニードル基板の中央部に十字形、円形、または、それらを重ね合わせた形状の遮蔽板を設置することが挙げられる。
(c)遮蔽板1の幅(即ち、遮蔽板の断面形状のうち、上型主面に沿った方向の最大の寸法)や突出の高さは、目的に応じて適宜変えることができる。図3のような直線的な遮蔽板の場合、その幅は、隣り合った貫通孔同士の間の距離以下、特に、貫通孔に影響を与えない範囲が望ましい。遮蔽板の幅の下限は、遮蔽板の高さや、成形に必要な機械的強度に応じて適宜決定すればよい。
また、図5のような円形の遮蔽板の場合には、遮蔽板を避けて、円柱状又は円錐状の貫通孔を設置してもよい。
(d)図7(a)に示されるように、更に金型の主面の外周(マイクロニードルの基板外周に対応する位置)に、針状突起全体を囲むように、遮蔽板が設置されていてもよい。
【0022】
遮蔽板は、上型主面からの突起の高さが重要である。
応力を遮断するためには、遮蔽板の突起の高さは、PGAなどの樹脂材料が成形時に上型と接して溶融する部分よりも深くまで入るようにすることが好ましい。樹脂材料が溶融する部分の深さは、例えば、加工後の断面を観察して、樹脂材料の状態の変化によって判断することができる。
樹脂材料が溶融している部分の深さは、条件や製品の形状によって異なるが、例えば、PGAであれば、マイクロニードルの基板の表面から0.05mm〜0.1mm程度の深さまでが溶融している事例が挙げられる。
以上の点を考慮し、かつ、高温となる遮蔽板自体の影響をも考慮して、遮蔽板の突起の高さは、0.3mm〜0.4mm以上が好ましい下限の範囲である。遮蔽板の突起の高さの上限は、マイクロニードルが複数に分断されないように決定すればよく、全体にわたって該基板の厚さより小さい値を適宜決定するのが好ましい。遮蔽板の突起は、局所的には、マイクロニードルの基板を貫通する部分を有していてもよい。マイクロニードルの基板は、通常は板厚が0.5mm〜5mm程度の平板である。その場合の遮蔽板の突起の高さの上限は、特に限定はされないが、0.3mm〜1mm程度であればよい。
遮蔽板の幅や突起の高さは、必ずしも全体にわたって一定である必要はない。例えば、図14の態様では、外周の円形の遮蔽板の方が、中央の十字の遮蔽板よりも、高く、幅広い。
【0023】
針状突起を形成するためのキャビティとして上型主面に設けられる貫通孔の態様を、次に例示する。
(e)貫通孔の全体的な形状は、限定はされないが、円柱形、円錐形、円錐台形が好ましい形状である。また、図7(b)に現れている貫通孔の断面形状、または、図9の貫通孔の断面形状のように、金型の上型主面における貫通孔の開口部には、必要に応じた角度と深さにて傾斜(テーパー状の面取り)が設けられており、その先に円柱状の貫通孔または円錐状の貫通孔が形成されている。その結果、形成される針状突起は、図8に示されるように円錐台の上に円柱状の針状突起が積み重なったような形状(円柱の基部が広がった形状)や、図10に示されるように円錐台の上に円錐状の針状突起が積み重なったような形状(円錐の基部が上部より広がった形状)になり、皮膚への穿刺時に針状突起が座屈等で折れることが生じ難くなっている。
【0024】
皮膚に針状突起を穿刺する際に、針状突起の先端径は重要であって、該先端径が小さくなるに従って、より小さい力で皮膚の表面を貫くことが可能である。
しかし、針状突起全体を細くしてしまうと、強度が低下し穿刺時に加わる力に耐えられず針状突起が破損する可能性がある。
従って、針状突起の根元付近を太くして十分な強度を持たせ、先端に向かうにつれて細くし、先端を鋭利にした円錐状の針状突起が好ましい態様である。このような円錐状の針状突起を形成するためには、上型の貫通孔の内部形状を円錐状とすればよい。貫通孔の内部形状を円錐状とすることで、離型時における抜き抵抗が減少し、針状突起の欠損が減少することも期待できる。
上型の貫通孔の内部形状を円錐状とするための加工方法としては、例えば、円柱状の貫通孔に対して孔内が円錐状となるようにメッキ(硬質クロムメッキなど)によって金属を堆積させる方法、機械加工によって円錐状の貫通孔を形成する方法などが挙げられる。
【0025】
(f)貫通孔の間隔(即ち、隣り合った貫通孔のそれぞれの中心軸同士の間の距離)は、皮膚に対する穿刺性を考慮し、400μm〜1mmが好ましい。400μm以下であれば、皮膚からの針に対する抵抗が多くなり、穿刺性が低下する傾向が見られる。針状突起の間隔が大きくなれば穿刺性は向上するが、針状突起の数が減少し、針状突起に担持できる薬剤の量も減少するため、好ましい間隔は1mm以下であると考えられる。
(g)貫通孔の数は、目的に応じて適宜選択することが出来る。例えば50〜500を挙げることができる。薬剤を担持するために、好ましくは50〜200を挙げることができる。
(h)貫通孔の直径、とりわけ最も太い部分の直径は、穿刺性を考慮し、必要な針状突起の形状によって多様であるが、金型の上型主面における貫通孔の開口の直径は、皿座グリの直径も含めて約200μm〜500μmの範囲が好ましい。より好ましくは約200〜350μmの範囲を挙げることができる。
【0026】
(i)更に、円柱状または円錐状の貫通孔の内部に、金型表面から先端部まで、筋状の突出部が設置されていてもよい。該筋状の突出部の断面形状(該突出部をその長手方向に垂直に切断したときの断面の形状)は、楔形または四角形が好ましい形状である。貫通孔の内部に筋状突起を設けることにより、成形される針状突起の胴体周囲には、該針状突起の根元から先端部にかけて、薬物担持用の溝を形成することが出来る。
【0027】
上記金型を樹脂へ圧着するとは、樹脂の軟化状態にもよるが、貫通孔内に樹脂が充填するように、樹脂に上型主面を押し付けて圧力をかけることを言う。例えば、PGAシートを金型(上型)の温度で軟化させ、2〜5kg/cm2の加圧力の範囲で、金型を材料樹脂に圧着する。
その際、常圧(大気圧)中で圧着してもよいが、減圧下で圧着を行えば、貫通孔への樹脂の充填をより加速できる。例えば10Pa近傍の陰圧下で行うことができる。これにより製品の針状突起部分に気泡や空孔が生じることを回避できる。その結果、針状突起の強度低下を避けることが出来る。
【0028】
上記金型の表面には、金属メッキやテフロンコーテイングなど、樹脂の離型を容易にするためのコーティングが施されていてもよい。
金属メッキは、樹脂成形金型の内部表面に対して施される一般的なものであってよく、例えば、硬質クロムメッキが挙げられる。
上記金型から樹脂を離型させるとは、金型からマイクロニードルの成形品を分離することを言う。離型の際の樹脂温度については、好ましくは樹脂の針状突起部分については遷移点を越えた、遷移点近傍の温度で分離することが望ましいが、針状突起の基板部分の温度は、樹脂の変形を防ぐために遷移点以下になっていることが望ましい。
なお、上記金型を加熱して樹脂に圧着させると、樹脂が貫通孔の先端から上型の裏面側へ漏出して固化する場合があるため、離型を容易にするために、貫通孔を漏出して固化した樹脂部分をきれいに削除し、離型に影響が出ないようにすることが好ましい。また、圧着面反対側の貫通孔出口を小さくすることによって漏出を抑制することもできる。
【0029】
上記のとおり、上型には、針状突起を成形するために貫通孔が設けられるが、そのため該貫通孔を通じて樹脂が上型の裏面(上型主面の反対側の面)まで漏出し、針状突起が貫通孔から抜け難くなり、問題となる。
図13(a)は、樹脂が上型の裏面に漏出しているようすを示す写真図である。本発明者等の研究によれば、漏出して固化した樹脂材料(いわゆる成形バリ)を除去せずに製品を離型すると、針状突起の先端部分や全体が欠損するといった問題が生じることがわかった。
上型の裏面まで漏出し固化した樹脂材料を除去してから離型すれば、針状突起の品質に問題は生じない。しかし、実際の製造では、そのような毎回の成形ごとのバリの除去作業は無くすことが好ましい。
本発明では、この問題に対して、上型の裏面とプレス装置の上側の可動部分との間に、図13(b)に示すような弾性材料、特に、樹脂材料からなる押さえ部材を配置し、貫通孔の開口を塞ぎ、樹脂材料の漏出を抑制することを提案する。
貫通孔の上端の開口が完全に密閉された場合、針状突起として孔部を充満させるために高圧が必要となり、金型の変形を伴ったり、金型の高強度化による金型製作の困難が伴う。これに対して、前記のような押さえ部材の配置によって、貫通孔の上端の開口が完全に密封されることなく、逃がし弁を取り付けたかのように適切に塞がれ、貫通孔の機能を失うことなく、しかも、大量の樹脂の漏出が抑制され、針状突起はスムーズに貫通孔から抜けるようになる。
押さえ部材を配置するに際しては、例えば、図14に示すように、上型の周囲を厚くすることで、押さえ部材を配置する領域を相対的に窪みとし、該窪みの内部に押さえ部材を配置し、プレス装置のラムからの加圧力が、押さえ部材だけに作用することのないような構造とすることが好ましい。
【0030】
押さえ部材の材料は、特に限定はされないが、(i)成形時の加熱でも溶融しない材料であること、(ii)押さえ部材の下面が成形樹脂と接触するので離型性の良好な材料であること、(iii)成形時に貫通孔内から圧力を受けた時に、孔内の空気だけを逃がす微小な隙間が生じる程度の弾性材料であること、が好ましい。
そのような材料としては、例えば、フッ素樹脂(とりわけ、テフロン(登録商標)として市販されているポリテトラフルオロエチレンなど)が挙げられる。また、成形樹脂と接触する側にこれら樹脂材料からなる部材を配置し、その背後に金属バネなどの弾性体を配置した複合部材であってもよい。
【0031】
図13(b)に示す押さえ部材を、図13(c)に示すように、上型の裏面に配置することによって、樹脂が漏出する隙間が塞がれると同時に、押さえ部材自体が加熱され膨張することによって、上型に裏側から適度な圧力を加えることが可能になり、上型のたわみを抑制する作用も期待できる。
図13(d)は、上型の裏面にフッ素樹脂製の押さえ部材を配置して、加圧成形を行った際の、上型の裏面のようすを示す写真図である。上型の裏側に何も設置せずに成形を行った図13(a)の状態と比較して、図13(d)では、上型の裏側への樹脂の漏出は見られず、漏出を防止できていることがわかる。
実際に、テフロン(登録商標)製の押さえ部材を上型の裏面に配置して、マイクロニードルを成形したところ、針状突起の欠損が減少した。針状突起の欠損の原因として、上型のたわみ、上型温度が中央部付近で下がりやすいこと、小さな空気だまりが上型主面に存在することなどが考えられる。
押さえ部材を設置しない場合は、上型の押し込み量を増加させると、上型の裏側へ漏出する樹脂の量が増加するだけであったが、押さえ部材を設置することによって、漏出なしで押し込み量を増加させることが可能になった。押し込み量を増加させることで、針状突起の欠損が減少し、また、上型の片当たりが抑制され、圧力が増加することで空気だまりも排除される。
【0032】
本発明の製造方法の好ましい態様は、次のとおりである。
生体内分解性の樹脂製マイクロニードルの製造方法であって、
下記(a)〜(c)の特徴を有する遮蔽板と、下記(d)〜(g)の貫通孔とを有する金属製金型を使用し、
前記金型を加熱して、上記樹脂に圧着してマイクロニードルを成形する工程と、
成形の後、樹脂を冷却し、成形されたマイクロニードルを離型する工程とを、
有することを特徴とする、マイクロニードルの製造方法。
(a)遮蔽板の断面形状が、楔型、正方形、長方形または台形であること。
(b)上型主面を見たときの遮蔽板の形状が、十字形、円形、または、これらを重ね合わせた形状のものであり、マイクロニードルの基板の中央部に対応する位置に設置されている。
(c)更に、マイクロニードルの基板の外周部に対応する位置に、遮蔽板が設置されていてもよい。
(d)遮蔽板を避けて、円柱状、または、円錐状の貫通孔が設けられている。
(e)上型主面における貫通孔の開口部には傾斜(テーパー状の面取り)が付いており、その結果、形成される針状突起は、円錐台の上に円柱状又は円錐状の針状突起が積み重なった形状になる。
(f)貫通孔の間隔は400μm〜1mmである。
(g)貫通孔の本数は50〜500本である。
【0033】
また、本発明の製造方法の好ましい他の態様は、次のとおりである。
次の工程を有するマイクロニードルの製造方法であって、
生体分解性樹脂を金属製基盤(下型)の凹部の中に収納する工程と、
上記(a)〜(c)の特徴を有する遮蔽板と、上記(d)〜(g)の貫通孔とを有し、前記凹部に契合する金属製金型(上型)を使用し、上記金型を上記樹脂の融点まで加熱して、上記樹脂に圧着してマイクロニードルを成形する工程と、
上記樹脂を冷却し、成形固化した樹脂を離型する工程とを、
有することを特徴とする、マイクロニードルの製造方法。
【0034】
また、マイクロニードルを製造するための本発明の金型の好ましい態様は、次のとおりである。
生体内分解性樹脂と圧着する金型表面に、上記(a)〜(c)の特徴を有する遮蔽板が突出し、それによって、マイクロニードルの基板が2以上に分割され、かつ、上記(d)〜(g)の貫通孔が設けられていることを特徴とする、マイクロニードル製造用金型、
【実施例】
【0035】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に何等限定されるものではない。
【0036】
(参考例1)
〔遮蔽板のない金型を用いたプレス方法によるマイクロニードルの製造〕
本発明による実施例を示す前に、従来技術の一例として、遮蔽板のない金型を用いたプレス方法によるマイクロニードルの製造例を示す。
本参考例では、密閉プレス方法を用いて、マイクロニードルの製造を行なった。
密閉プレス方法とは、材料樹脂が金型の周囲からはみ出して逃げないように、下型に凹部を設けて周囲を取り囲み、上型と下型とによって材料樹脂を閉じ込めながら加圧成形する方法である。ただし、型内と型外とは、上型の貫通孔によって連通している。
上型として、厚さ1mmの平板状金型を用い、その上型主面に、直径約100μmの円柱状の貫通孔を、8行8列のマトリクス状に並ぶように形成した。貫通孔同士の間の中心軸間の距離は、縦横ともに、約800μmとした。この金型には遮蔽板は設置されていない。
下型は、上記上型が嵌合し得る凹部を有する金属平板であって、該下型をプレス装置の基盤上に配置した。下型の温度は室温(26℃)に設定した。
生体内分解性樹脂として、厚さ1.5mmのPGAプレートを使用し、下型の凹部内に配置した。
上型を、プレス装置の上側の可動部分であるラムに取り付け、該上型の温度を約245℃に設定した。プレス装置のラムを降下させ、上型主面をPGAプレートに圧着させた。
上型主面の高さが、PGAプレートの元の上面の高さから、圧着降下速度50μm/sにて、さらに約0.3mm降下するまで加圧を行った。
型全体を室温まで冷却した後、プレス装置のラムを上昇させ、上型と、それに密着したPGAプレートとを取り出し、上型の貫通孔より外部(上型主面の反対側)に漏出したPGAを除去し、上型からPGA製のマイクロニードルを離型した。
得られたマイクロニードルは、針状突起の径や高さについてはほぼ均一であったが、図2に示されるように、外周部の末端の領域に形成された針状突起が、根元付近で曲がっていた。
【0037】
(実施例1)
〔円柱状の貫通孔と遮蔽板とを設けた上型を用いた、マイクロニードルの製造〕
本実施例では、図7に示される上型を用いたこと以外は、上記参考例1と同様の条件にて、密閉プレス方法によるPGA製マイクロニードルを製造し、針根元部の屈曲の抑制に有効かどうかを確認した。
上型は、上記参考例1と同様に、厚さ1mmの平板状金型を用い、その上型主面に、直径約100μmの円柱状の貫通孔を、8行8列のマトリクス状に並ぶように形成した。貫通孔同士の間の中心軸間の距離は、縦横ともに、約800μmとした。
樹脂材料(PGA)が溶融する深さより、十分に深くまで遮蔽板が入るように、該遮蔽板の突起の高さを0.4mmとした。
また、該上型には、PGAの冷却時の収縮を抑制する目的で、全ての貫通孔を1つの円で囲むように、上型主面の外周部に円形の稜線状突起を遮蔽板として設けた。
下型、樹脂材料、成形条件は、参考例1と同様である。
作製されたマイクロニードルは、図8に示されるように、外周末端部の針状突起の根元には、湾曲がほぼ見られなかった。
以上の点から、外周を取り囲むように遮蔽板を付与することによって、樹脂材料の収縮時に生じる応力を遮断することが可能であり、針状突起の屈曲の抑制に有効であることが分かった。
【0038】
(実施例2)
〔円錐状の貫通孔と遮蔽板とを設けた上型を用いた、マイクロニードルの製造〕
本実施例では、図9に示されるように、貫通孔を円錐状とした上型を用いたこと以外は、上記実施例1と同様の条件にて、密閉プレス方法によるPGA製マイクロニードルを製造した。
上型の厚さ、貫通孔の配列は、実施例1と同様であるが、本実施例では、図9に示すように、貫通孔を円錐状とし、該貫通孔の上型主面側の開口部に、皿状の座グリ加工を施して、円錐形の基部をさらに太く広げた。
作製されたマイクロニードルは、図10に示されるように、外周末端部の針状突起の根元が湾曲することがなく、針状突起の先端部も鋭利になっていた。
【0039】
(実施例3)
本実施例では、図14(b)に示すように、上型主面3Aの外周部に全ての貫通孔を囲む円形の遮蔽板1aを設け、かつ、中央に十字形の遮蔽板1bを設けた。また、上型主面における貫通孔の配置を、同心円状とした。針状突起の先端径は約0.03mmとし、針の高さは約0.6mmとした。
上記実施例1と同様の成形条件にて、密閉プレス方法によるPGA製マイクロニードルを製造した。
作製されたマイクロニードルは、実施例1で得られたものと比べて、針状突起の屈曲はより抑制されており、また、ほぼ均一な形状の針状突起が形成されていることがわかった。また、作製されたマイクロニードルの主面の中央部では、針状突起の屈曲が無かったことから、遮蔽板による中央部の針状突起への影響は小さいことがわかった。
【0040】
(実施例4)
本実施例では、図3に示す十字形の遮蔽板と、図9に示す円錐形の貫通孔とを設けた上型を用い、上記実施例1と同様の条件にてマイクロニードルを作製し、その円錐状の針状突起の穿刺性と強度とを確認した。
針状突起の穿刺性と強度とを確認するために、ヒトの前腕の皮膚の表層の特性に近似した皮膚モデル(ヒトの前腕部を丸棒で押した時の荷重−ストローク関係とほぼ同じ抵抗を示すモデル)を構築し、穿刺性確認実験を行った。
【0041】
穿刺性確認実験の手順は次のとおりである。
実験に使用したマイクロニードルは、図15(a)に示すとおり、十字形の遮蔽板に起因する十字形の溝が、中央の主面に形成されたものである。穿刺前の針状突起には、いずれにも、成形による変形は生じていなかった。
先ず、マイクロニードルを、上下方向に移動するよう制御可能なレオメータ(SHIMADZU EZTest)の先端に取り付ける。そして、針状突起の先が皮膚モデルに接触した高さから、さらに12mm降下するまで、マイクロニードルを皮膚モデルに押しつける。その後、マイクロニードルを皮膚モデルから取り除き、その皮膚モデルに、針状突起が刺さった箇所のみ染色することが可能な薬品を塗布し、約1分間染色する。
尚、針状突起が刺さったかどうかの判断が穿刺後の染色だけでは難しい場合には、穿刺実験を行う直前に、針状突起に染色液を塗布して穿刺実験し、実験後の皮膚およびマイクロニードルを確認してもよい。
穿刺実験後の皮膚モデルの表面を確認したところ、マイクロニードルの針状突起の約8割程度が穿刺されていることが確認できた。
また、穿刺実験後のマイクロニードルの針状突起を確認したところ、先端だけが曲がった針状突起が存在したが、全ての針状突起が根元で屈曲することなく残存していることがわかった。
これにより、本発明によって得られたマイクロニードルは、針状突起が皮膚に対して十分な穿刺性を有し、強度的にも問題がないことが確認できた。
【0042】
(参考例2)
本参考例では、遮蔽板が無くかつ円柱形の貫通孔を設けた図1に示す上型を用い、上記実施例4と同様の条件にてマイクロニードルを作製し、その円錐状の針状突起の穿刺性と強度とを確認した。
マイクロニードルは、図15(b)に示すとおり、円柱形の針状突起を有するものを使用した。穿刺前の針状突起には、図2に示すように、成形による変形が生じているものがあった。
穿刺性確認実験の手順は上記実施例4と同様である。
穿刺実験後の皮膚モデルの表面を確認したところ、数本の針状突起が刺さっていた可能性があるが、大部分の針状突起針については、押し当てられた跡が残っているだけで、刺さっていないことがわかった。
また、穿刺実験後のマイクロニードルの針状突起を確認したところ、図15(c)に示すとおり、ほとんどの針状突起が大きく曲がっていた。この原因は、針状突起の穿刺性が悪いことや、針状突起の根元の剛性不足、成形時の根元の屈曲にあると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の製造方法と金型を使用することにより、冷却時収縮性の強い生体内分解性樹脂(例えばPGA)を使用しても、マイクロニードルの外周部末端の針状突起において、針の根元部分での湾曲が見られない高品質なマイクロニードルを製造出来るようになった。
これにより、マイクロニードルとして皮膚への穿刺性が優れるが、熱膨張性が高くて周辺部分の針状突起が根元で曲がり易いものであったPGA樹脂が使用できるようになり、品質の良好なPGA製マイクロニードルを提供出来るようになった。
【符号の説明】
【0044】
1: 遮蔽板
2: 金型(上型)の主面に設けられた貫通孔
3: 金型(上型)
4: PGA樹脂プレート(マイクロニードルの基板)
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロニードルの製造方法に関するものである。特に生体内分解性の材料で構築され、基板(または基盤)の主面上にアレイ(行列)状に突起するように形成された多数の針状突起を作製するプレス製造方法に関するものである。特に本発明はプレス法に特有の針状突起のひずみを克服する製造方法に関するものであり、またその製造方法に使用する金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に経口投与できない薬剤は注射によって投与される。注射器を用いた投与は皮膚の損傷が大きく、痛みを伴う。それに対し貼付剤のような経皮投与は簡便であり、さらに薬剤を局所的に送達させるための薬剤送達の制御が可能である。また、薬剤の副作用を軽減もしくは回避することもできる。しかし、貼付剤を用いた場合には薬効発現に時間が必要であり、使用できる薬剤も化学的な物性が経皮吸収に適した種類でないと良好な結果が得られないことから、使用可能な薬剤は大きく制約されている。
【0003】
現在では、更に皮膚透過性を向上させるため、イオントフォレシス(iontophoresis)やソノフォレシス(sonophoresis)、エレクトロポレーション(electroporation)等の方法が応用されているが、なお、皮膚の損傷やそれに伴う障害、感染に対するバリア機能の回復などについて懸念されている。しかも、いずれの方法を用いても適応できる薬剤は限定されている。すなわち、イオントフォレシスは水溶液中で薬剤は帯電している必要があり、ソノフォレシスとエレクトロポレーションでは、薬剤の分子量は小さくなくてはならないなどの制限がある。
【0004】
薬剤の経皮投与において、薬剤送達の障害となっているものは皮膚の表層にある角質層であることが知られている。近年、その障害を克服するために角質層を貫通することで回避し、該角質層下に薬剤を送達する、マイクロニードルやマイクロブレードの開発が盛んに行われている(特許文献1及び2参照)。
マイクロニードルは、基板の主面に多数の微小な針状突起をアレイ(行列)状に並ぶように形成したデバイスである。マイクロニードルの全体的な形態は、大きさは全く異なるが、いわゆる剣山(切花を飾るための器具であって、板上に多数の針が設けられたもの)のような形態である。マイクロニードルは、上記特許文献1の図1などからも明らかなとおり、基板を有し、かつ、その主面に一体的に設けられた多数の針状突起とを有するものである。
マイクロニードルの基板は、通常、厚さ0.3mm〜5mm程度以上の平板である。針状突起は、アスペクト比(突起長さと直径との比)が大きく、一般に、基板の主面からの突起長さが200μm〜1mmで、かつ直径が数十μm〜200μm程度である。
マイクロニードルは、薬剤送達や体液サンプリングのためのデバイスとしての利用が知られている。針状突起は、皮膚の上層の角質層を十分に貫通できるが痛点までは届かない程度の長さを有する。そのため、マイクロニードルは、適用時に皮膚貫通に伴う痛みを感じなくてよいという利点がある。マイクロニードルは、その針状突起の直径が数十μm〜200μm程度と小さいために、皮膚への損傷は注射針やマイクロブレードを適用したときよりもはるかに小さい。
【0005】
ポリアミドやポリエステルなどの樹脂を材料とするマイクロニードルも提案されている(特許文献3参照)。特にポリエステル樹脂として、ポリ乳酸樹脂やポリグリコール酸を用いて作製したマイクロニードルは、生体内分解性であるため、金属製あるいはシリコン製マイクロニードルと比較して安全性の高いものであると考えられている。
マイクロニードルを樹脂成形によって作製する場合、その成形金型は、本願の図1に示すように、マイクロニードルの基板面を形成するための主面と、その主面に多数設けられた貫通孔2とを有する構造となる。貫通孔2は、針状突起を形成するためのキャビティである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2002−517300号公報
【特許文献2】特表2000−512529号公報
【特許文献3】特表2003−501161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1に示すような成形金型を用い、かつ、ポリアミドやポリエステルなどの樹脂を用いてマイクロニードルを作製する場合、その成形手順は、成形材料の樹脂を高温に加熱して熔融し、金型を該樹脂に押し付け、型の凹凸を転写形成した後、樹脂と金型とを室温まで冷却して樹脂を固化し、製品を金型から離型する、といった手順となる。
しかしながら、本発明者等が、上記のような成形手順によって形成されたマイクロニードルを詳細に観察したところ、該マイクロニードルの基板の主面の外周の末端に近い領域に形成された針状突起の根元部分が、樹脂の冷却収縮に起因するせん断応力の作用によって変形していることがわかった。
その結果、針状突起が根元で湾曲することになる。これは、樹脂の熱膨張率と金型の熱膨張率が大きく異なるからである。
このようなマイクロニードルを皮膚への穿刺に適用する場合、根元が湾曲した針状突起では、穿刺時に折れ曲がったり、折損しやすいということも分かった。
そこで本発明では、薬剤の経皮投与のために好適で、折れ難く、しかも屈曲しにくいマイクロニードルの製造方法とそれによるマイクロニードルを提供することを目的とする。
また、本発明の更なる目的は、本発明の製造方法に用いる金型(鋳型)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来、マイクロニードルの針状突起を皮膚に穿刺するに際して、該針状突起の折損や湾曲を避けるためには、マイクロニードルの材料として、強度の強い樹脂を使用する必要があることは知られていた。また、そのために、融点の高い材料の樹脂を使用することが、求められていた。そして、生体内分解性の樹脂の中では、例えばポリ乳酸(PLA)よりも、ポリグリコール酸(PGA)の方が融点が高く、針状突起を作製した場合、PLAよりPGAの方が材料強度が強いことは、知られていた。
しかし、本発明者等の研究によれば、PGA樹脂のような融点の高い材料を用いると、根元が湾曲した針状突起が形成される問題がより顕著に生じることがわかった。
即ち、PGA樹脂は成形の際に、他の材料よりも高い温度まで加熱する必要があるために、室温に冷却して行く過程でより大きい収縮が起きる。例えば、結晶化を伴うPGA樹脂の熱膨張率と金型の熱膨張率を比較すると、PGA樹脂の方が約10倍近く熱膨張率が高くなっており、製造過程で約200℃の温度差がある場合、PGA樹脂の体積収縮は、約6〜8%近くに達する。そのため、基板の主面の外形が一辺10mm程度の正方形であるようなマイクロニードルにおいては、図1に示されるように冷却後のマイクロニードルの基板の収縮(基板の面に沿った横方向への収縮)により、中央部の針状突起と周辺部の針状突起の距離が約30〜40μm程度縮小することになる。その結果、図2に示すように、基板の主面の周辺部においては、根元が湾曲した針状突起が形成される。
【0009】
そこで、本発明者等は、鋭意研究を行った結果、マイクロニードルの基板の主面に対応する金型の第一の主面に稜線状突起を形成すれば、樹脂が冷却によって固化(結晶化)収縮する時に生じる応力を該稜線状突起が遮断し得ることを見出し、本発明を完成させた。以下に、その稜線状突起を、遮蔽板と呼んで本発明を説明する。
【0010】
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)樹脂製の基板の主面に針状突起が一体的に形成された構造を有するマイクロニードルの製造方法であって、
金型を加熱して、樹脂に圧着する工程と、
上記樹脂を冷却し、成形された樹脂を離型する工程とを有し、
前記金型は、製造すべきマイクロニードルの基板の主面を形成するための主面を有し、該金型の主面には、針状突起を形成するための貫通孔と、該金型の主面から稜線状に突起する遮蔽板とが設けられており、
該遮蔽板は、樹脂を冷却する時にマイクロニードルの基板内に生じる横方向の収縮を抑制し得る位置に設けられ、かつ、該遮蔽板の突起の高さは、製造すべきマイクロニードルの基板の厚さよりも小さいものである、
前記製造方法。
(2)金型の主面における遮蔽板の形状が、金型の主面の中央の領域を分割する形状、金型の主面の中央の領域を囲む形状、金型の主面の外周を囲む形状、または、前記形状のうちの2以上の形状を組み合わせた形状を有する、上記(1)記載の製造方法。
(3)金型の主面における遮蔽板の形状が、該金型の主面の中央の領域を分割する十字形、金型の主面の中央の領域を囲む円形、金型の主面の外周を囲む円形、または、これらの形状を重ね合わせた形状であり、
遮蔽板の断面形状が、楔形、正方形、長方形、または、台形であり、
貫通孔が、円柱状、または、円錐状の孔であり、
金型の主面における貫通孔の開口部には、テーパー状の面取りが設けられており、
各貫通孔の中心軸同士の間の距離が、0.4mm〜1mmであり、
貫通孔の数が、50〜500である、
上記(1)または(2)記載の製造方法。
(4)遮蔽板が、貫通孔のある領域を2以上に分割する形状を有している、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)樹脂が、生体内分解性の樹脂である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)生体内分解性の樹脂が、ポリグリコール酸を主体とする樹脂である、上記(5)記載の製造方法。
(7)金型の加熱温度が、樹脂の融点の温度を中心として−10度〜+30度の範囲内の温度である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8)金型が、上型とそれに対向する下型とを有し、これらの型の間で樹脂がマイクロニードルへと成形されるものであり、上型は、マイクロニードルの基板の主面を形成するための主面を持ち、下型は、マイクロニードルの基板の裏面を形成し、上型の圧着工程もしくは離型工程における基板の保持のための主面を持ち、
該下型には、上型が契合し得る凹部が設けられており、
生体分解性樹脂を該下型の凹部内に配置し、
上型を上記樹脂の融点まで加熱して、上記樹脂に圧着する工程と、
上記樹脂を冷却し、成形された樹脂を離型する工程とを有する、
上記(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法。
(9)金型が、上型とそれに対向する下型とを有し、これらの型の間で樹脂がマイクロニードルへと成形されるものであり、上型は、マイクロニードルの基板の主面を形成するための主面を持ち、下型は、マイクロニードルの基板の裏面を形成するための主面を持ち、
上型の裏面上において、貫通孔の開口を塞く位置に、弾性材料からなる押さえ部材を配置し、該押さえ部材によって、上型の裏面への樹脂材料の漏出を抑制する、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の製造方法。
(10)押さえ部材の材料が、ポリテトラフルオロエチレンを主体とする樹脂である、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の製造方法。
(11)樹脂製の基板の主面に針状突起が一体的に形成された構造を有するマイクロニードルを成形するための金型であって、
製造すべきマイクロニードルの基板の主面を形成するための主面を有し、該金型の主面には、針状突起を形成するための貫通孔と、該金型の主面から稜線状に突起する遮蔽板とが設けられており、
該遮蔽板は、樹脂を冷却する時にマイクロニードルの基板内に生じる横方向の収縮を抑制し得る位置に設けられ、かつ、該遮蔽板の突起の高さは、製造すべきマイクロニードルの基板の厚さよりも小さいものである、
前記金型。
(12)金型の主面における遮蔽板の形状が、金型の主面の中央の領域を分割する形状、金型の主面の中央の領域を囲む形状、金型の主面の外周を囲む形状、または、前記形状のうちの2以上の形状を組み合わせた形状を有する、上記(11)記載の金型。
(13)遮蔽板が、貫通孔のある領域を2以上に分割する形状を有している、上記(11)または(12)記載の金型。
(14)金型の主面における遮蔽板の形状が、該金型の主面の中央の領域を分割する十字形、金型の主面の中央の領域を囲む円形、金型の主面の外周を囲む円形、または、これらの形状を重ね合わせた形状であり、
遮蔽板の断面形状が、楔形、正方形、長方形、または、台形であり、
貫通孔が、円柱状、または、円錐状の孔であり、
金型の主面における貫通孔の開口部には、テーパー状の面取りが設けられており、
各貫通孔の中心軸同士の間の距離が、0.4mm〜1mmであり、
貫通孔の数が、50〜500である、
上記(11)〜(13)のいずれかに記載の金型。
(15)貫通孔が形成される領域が、厚さ0.3mm〜1mmの平板状である、上記(11)〜(14)のいずれかに記載の金型。
(16)遮蔽板が、金型の主面の外周を囲む形状を含むように設けられ、
遮蔽板の幅が、0.5mmである、上記(11)〜(15)のいずれかに記載の金型。
(17)貫通孔の内部に、該孔の金型の主面側の端部から該孔の先端部まで、筋状の突出部が設置されており、筋状の突出部の断面形状が楔形または四角形状である、上記(11)〜(16)のいずれかに記載の金型。
(18)上記(1)〜(10)のいずれかに記載の製造方法によって得られるマイクロニードルであって、
樹脂製の基板の主面に針状突起が一体的に形成された構造を有し、
該基板の主面には、前記製造方法に用いられた金型の主面に設けられた遮蔽板が転写されてなる溝が形成されていることを特徴とする、
マイクロニードル。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、マイクロニードルを形成するための金型の構造が重要である。この金型の構成を説明するために、図11、12に示すように、製造すべきマイクロニードル10の基板4の主面(針状突起12が存在する面)の側の形状を成形するための金型3を上型と呼ぶ。本発明では、この上型の構造が重要である。
図11、12に示すように、金型(上型)3は、マイクロニードル10の基板4の主面4Aを形成するために主面3Aを有する。以下、上型の主面3Aを、「上型主面」と呼ぶ。上型主面3Aには、針状突起を形成するための貫通孔2と、該上型主面3Aから稜線状に突起する遮蔽板1とが設けられている。
本発明では、上型主面3に、遮蔽板1を稜線状に突起させ、それによって材料樹脂の収縮を抑制し、該収縮に起因する内部応力を分断し、その結果、針状突起の根元の変形を抑制している。
上型主面3に遮蔽板1が突起していることによって、得られるマイクロニードル10の基板4の主面4Aには、遮蔽板1に対応する溝11が形成され、該溝11で分割または囲まれたブロック毎に樹脂の収縮が起こることになる。
図11、12に示すように、本発明の金型は、上型に対向する下型5を有し、これらの型の間で樹脂がマイクロニードルへと成形される。下型は、マイクロニードル10の基板4の裏面(通常は平坦面である)を形成するための金型である。下型の上面5Bを「下型主面」と呼ぶ。
下型5は、上型3と対になった樹脂成形用の金型の一部であってもよいし、成形時に圧縮力を加えるためのプレス装置の基盤(加圧を受けるステージ)であってもよい。下型がプレス装置の基盤である場合、本発明による金型は、上型だけであると解釈することもできる。
図3は、上型主面を見たときの、遮蔽板と貫通孔の配置パターンを示した概略図である。同図の例では、遮蔽板は、上型主面に十字を描くように稜線状に突起している。
図3に示されるような十字の遮蔽板を持った金型(鋳型)を用いると、該遮蔽板によって、マイクロニードルの基板は4つのブロックに分かれるため、図4に示すようにブロック毎の表面での収縮を考慮すればよいことになる。
それ故、分割された各ブロック内の針状突起の根元に生じる横方向のズレは、4分の1になると考えられる。例えば、針状突起が直径約100μmの円柱状である場合、マイクロニードルの基板の表面における、収縮による横方向のズレが約10μm以下であれば、針状突起に対して大きい影響を与えないと考えられる。
そこで、図5や図6、図7(a)に例示される遮蔽板を設置したマイクロニードルの金型を作製した。
図5に例示する金型の態様では、遮蔽板は、上型主面の中心と外周縁との間の中間の領域に円を描くように突起しており、この円を描く遮蔽板の内側および外側の領域に針状突起のための貫通孔が配列されている。
また、図6に例示する金型の態様では、遮蔽板は、図5の円に、図3の十字を重ね合わせた形状を有する。
また、図7(a)に例示する金型の態様では、遮蔽板は、上型主面に設けられた貫通孔を全て囲むように、外周縁の側で円形に突起している。
これらの金型を、加熱して軟化したPGA樹脂に圧着し、マイクロニードルを作製すると、遮蔽板のない場合に得られた図2のマイクロニードルと比較して、例えば、図8の写真図に示されるように、作製されたマイクロニードルの針状突起には、湾曲はほとんど見られない。
【0012】
尚、遮蔽板のない場合でも、金型を樹脂材料に押し付けた後の離型性の向上と皮膚への穿刺性の向上のため、図9のような円錐状の貫通孔を持つ金型が好ましい。このような円錐状のテーパー面は、抜き勾配として作用し、好ましい態様である。
この金型をPGA樹脂に加熱圧着してマイクロニードルを作製すると、図10に示されるように、針状突起の根元の湾曲がかなり減少し、しかも針状突起の先端部が鋭利になったものが得られる。この態様に、遮蔽板を加えることで、高信頼性の湾曲の抑制効果が得られる。
本発明者等は、これらの知見を総合して、熱収縮性の大きいPGA樹脂を用いて品質の良好なマイクロニードルの製造方法を完成した。
【0013】
本発明により、使用する樹脂材料、とりわけ生体内分解性樹脂の冷却時の収縮が緩和され、マイクロニードルの周辺部の針状突起が図2のように湾曲したり、折損することがなくなった。その結果、図8や図10のように高品質なPGA樹脂製のマイクロニードルを製造することができるようになった。本発明により、皮膚への穿刺時に折れずに、かつ屈曲することなく皮膚を良好に穿孔できるPGA樹脂製マイクロニードルを容易に得ることができるようになった。更に本発明の金型(鋳型)を使用することにより、このようなマイクロニードルを容易に製造することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、従来のマイクロニードルの製造方法における成形金型内のようすを模式的に示した断面図である。同図では、遮蔽板のない金型を材料にプレスした場合に、PGA樹脂が冷却されて固化する際に、該樹脂が基板に沿って中心に向かって収縮する様子を示している。PGA樹脂プレート(PGA樹脂からなる基板)の内部に描かれた太い矢印は、収縮の方向を示している。
【図2】図2は、遮蔽板のない金型を用いて得られたマイクロニードルの針状突起の根元部分を拡大して示した写真図である。主面に外周部分に位置する針状突起が、その根元にせん断変形を受けて、湾曲していることが示されている。
【図3】図3は、本発明の金型(上型)の一態様を例示する正面図(金型の上型主面を見せた図)である。同図の態様では、上型主面の中央に十字形の遮蔽板が配置されている。
【図4】図4は、マイクロニードルを成形するための金型に遮蔽板を設置すると、それによって、冷却固体化する際の樹脂収縮が分断されることを示す模式図(断面図)である。PGA樹脂プレート(PGA樹脂からなる基板)の内部に描かれた太い矢印は、収縮の方向を示している。
【図5】図5は、本発明の金型の他の態様を例示する正面図である。同図の態様では、上型主面の中央領域に円形の遮蔽板が配置されている。
【図6】図6は、本発明の金型の他の態様を例示する正面図である。同図の態様では、上型主面の中央領域に、十字形と円形とが組み合わされた形状の遮蔽板が配置されている。
【図7】図7(a)は、本発明の金型の他の態様を例示する正面図である。同図の態様では、上型主面の外周領域に、全ての貫通孔を囲むように、円形の遮蔽板が配置されている。貫通孔は、円柱状であって、8×8の行列状に配列されている。図7(b)は、図7(a)のX−X断面図であって、切断面だけを示している。
【図8】図7の金型を用いて得られたマイクロニードルの針状突起の根元部分を拡大して示した写真図である。
【図9】図9は、本発明の金型の断面を部分的に拡大した図であって、貫通孔の中心軸を含む平面で切断した図である。同図の例では、貫通孔は円錐状となっている。また、同図では、貫通孔内の空間にハッチングを施している。
【図10】図10は、図9の金型を用いて得られたマイクロニードルの針状突起の根元部分を拡大して示した写真図である。
【図11】図11は、本発明の金型と、それによって製造されたマイクロニードルとを例示した斜視図である。
【図12】図12は、本発明の金型と、それによって製造されたマイクロニードルとを例示した斜視図である。
【図13】図13は、樹脂が上型の裏面に漏出する問題を解決するための押さえ部材とその作用を示した写真図である。
【図14】図14は、本発明の金型の他の態様を例示した図である。図14(a)は、図14(b)のY−Y断面図であって、切断面と遮蔽板だけを示している。
【図15】図15は、穿刺性確認実験を示した写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を、添付図面に示された好ましい態様を参照して更に詳細に説明する。
図11、図12は、本発明の金型の一例と、それによって製造されたマイクロニードルとを示した斜視図であって、金型を上下に開き、それらの間に、マイクロニードルの製品を配置して、分解組立図のように示した図である。同図に示した金型は、分かりやすいように、主要部分だけを示している。実際の金型は、プレス装置に取り付けたり、位置合わせを行ったりするための部分がさらに付帯する。また、同図では、説明のために、マイクロニードルの外径を上型と同様の円板状に描いているが、外形は任意である。また、同図では、説明のために、マイクロニードルの針状突起の数を少なく描いている。
本発明によるマイクロニードルの製造方法としては、樹脂成形における一般的な鍛造的手法(型の凹凸を樹脂に押圧し、反転的に転写する方法)、または、射出成形手法などが挙げられる。
図11に例示する金型を用い、樹脂材料を圧縮してマイクロニードルを成形する場合の主要なステップは、例えば次の(i)〜(iv)のとおりである。
(i)下型主面5A上に、プレート状等の材料樹脂(例えば、生体内分解性の樹脂、特にPGA)を置く。
(ii)上型3をプレス装置の上側の可動部分(いわゆる、ラム)に取り付け、該上型を樹脂の融点付近まで加熱する。プレス装置の可動部分を降下させ、上型3を樹脂に圧着し、樹脂を流動させて、該樹脂を上型主面と貫通孔内に行きわたらせる。
該上型の加熱温度は、使用する樹脂の融点付近が好ましく、融点温度の−10度〜+30度の温度を使用することができる。より好ましくは、融点温度の−5度〜+20度を挙げることができる。
(iii)この状態で上型の温度を室温付近(ガラス遷移点〜常温付近)に冷却する。
(iv)上型3を上昇させ、成形された樹脂を取り外し、樹脂性のマイクロニードル10を得る。
【0016】
本発明の製造方法によって得られたマイクロニードルは、図11、12のとおり、基板4の主面4Aに、上型の遮蔽板1が転写されてなる溝11を有するものとなっている。
遮蔽板1が上型主面の外周に設けられる場合、マイクロニードルの基板4の主面4Aの外周にも、それに対応する環状の溝が形成されることになるが、該環状の溝が製品に含まれないように、その部分を後工程で切り落としてもよい。
【0017】
融点以上に加熱された樹脂が型から流出することを防ぐため、平板状の下型を用いる替わりに、図12に示すように、凹部5Bを持った下型5を使用し、上型を凹部にはめ込んで成形してもよく、また、針状突起の高さが不均一になるのを抑制するため、高精度に型内を密閉して成形を行うこともできる。
さらに、大量生産を考えれば、長尺状やロールから巻き出した帯状の樹脂材料をプレス機に搬送挿入し、上記と同様に、その片側表面に融点付近に加熱された上型を圧着し凹凸を転写し、冷却後金型を取り外し、後で、所定の薬剤デバイスサイズに切断する、という製造方法であってもよい。
【0018】
上型および下型(下型はプレス装置の基盤であってもよい)の材料は、目的に合った金属であれば特に限定はされないが、好ましいものとして、例えば、鋼材、銅、真鍮等を挙げることができる。より好ましくは、金型の耐久性や微細孔の切削性、生体への安全性を考慮して鋼材、例えばステンレンス鋼(特に、18%Cr、8%Ni、高S添加オーステナイト系ステンレス鋼)を挙げることができる。
【0019】
生体内分解性樹脂としては、例えばPLAやPGAのようなポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、あるいはこれらの混合物や共重合体等を使用することができる。特に、針状突起の強度の点で、PGAを主体とする樹脂が好ましいものとして挙げることができる。PGAを主体とする樹脂とは、PGAだけからなる樹脂、または、PGAに必要な添加物がさらに加えられた樹脂である。
【0020】
下型の温度、および、該下型上に配置される材料樹脂の初期の温度は、室温でよい。上側のプレス装置に取り付けられた上型の温度は、用いる樹脂(PLAやPGAなど)のガラス転移温度以上に設定する必要がある。好ましくは、融点付近の温度に設定することが望ましい。例えば、PGAの場合には240℃〜250℃を挙げることができる。
【0021】
本発明の金型は、図3〜図7、図11、図12に例示するように、上型3を少なくとも有するものであって、該上型は、材料樹脂に押し付けることで該樹脂を変形させて、針状突起を備えた基板面を形成するためのものである。上型3は、図11に示すように、マイクロニードル10の基板面4Aを形成するための上型主面3Aを有し、該上型主面3Aには、以下の形状の遮蔽板1が突起し、かつ、貫通孔2が設けられている。遮蔽板1は、上型主面3A上に長く連なって延びる稜線状突起である。
遮蔽板は、貫通孔の位置を避けるように、即ち、貫通孔同士の間を通過するように形成される。また、先に遮蔽板が形成され、該遮蔽板を避けるように、貫通孔の位置が決定されてもよい。
(a)遮蔽板1をその長手方向に垂直に切断したときの断面の形状(以下、単に「遮蔽板の断面形状」という)は、マイクロニードルへと成形された樹脂を冷却する時に、該マイクロニードルの基板4が横方向に収縮するのを妨害し遮断する役割を果たすものであればよく、特に限定されるものではないが、好ましい断面形状として、楔型(例えば、1度〜10度程度の鋭角の頂点が突き出した三角形)、正方形、長方形または台形を挙げることができる。図7においては、長方形の断面形状のものが示されている。
(b)上型主面における遮蔽板1の形状(即ち、上型主面上に遮蔽板の稜線が描くパターン)は、マイクロニードル10の基板4の主面4Aを分割して、横方向(上型主面に沿った方向)への樹脂の収縮を分散させることが出来る形状であればよい。
貫通孔(針状突起に対応)毎の周囲に遮蔽板を配置することにより最大限の収縮分散効果が得られると考えられるが、金型の加工難度・コストの面から鑑みてマイクロニードルの仕様精度に応じた遮蔽板の配置を行えばよい。例えば、図3、図5、図6に示されるように、マイクロニードル基板の中央部に十字形、円形、または、それらを重ね合わせた形状の遮蔽板を設置することが挙げられる。
(c)遮蔽板1の幅(即ち、遮蔽板の断面形状のうち、上型主面に沿った方向の最大の寸法)や突出の高さは、目的に応じて適宜変えることができる。図3のような直線的な遮蔽板の場合、その幅は、隣り合った貫通孔同士の間の距離以下、特に、貫通孔に影響を与えない範囲が望ましい。遮蔽板の幅の下限は、遮蔽板の高さや、成形に必要な機械的強度に応じて適宜決定すればよい。
また、図5のような円形の遮蔽板の場合には、遮蔽板を避けて、円柱状又は円錐状の貫通孔を設置してもよい。
(d)図7(a)に示されるように、更に金型の主面の外周(マイクロニードルの基板外周に対応する位置)に、針状突起全体を囲むように、遮蔽板が設置されていてもよい。
【0022】
遮蔽板は、上型主面からの突起の高さが重要である。
応力を遮断するためには、遮蔽板の突起の高さは、PGAなどの樹脂材料が成形時に上型と接して溶融する部分よりも深くまで入るようにすることが好ましい。樹脂材料が溶融する部分の深さは、例えば、加工後の断面を観察して、樹脂材料の状態の変化によって判断することができる。
樹脂材料が溶融している部分の深さは、条件や製品の形状によって異なるが、例えば、PGAであれば、マイクロニードルの基板の表面から0.05mm〜0.1mm程度の深さまでが溶融している事例が挙げられる。
以上の点を考慮し、かつ、高温となる遮蔽板自体の影響をも考慮して、遮蔽板の突起の高さは、0.3mm〜0.4mm以上が好ましい下限の範囲である。遮蔽板の突起の高さの上限は、マイクロニードルが複数に分断されないように決定すればよく、全体にわたって該基板の厚さより小さい値を適宜決定するのが好ましい。遮蔽板の突起は、局所的には、マイクロニードルの基板を貫通する部分を有していてもよい。マイクロニードルの基板は、通常は板厚が0.5mm〜5mm程度の平板である。その場合の遮蔽板の突起の高さの上限は、特に限定はされないが、0.3mm〜1mm程度であればよい。
遮蔽板の幅や突起の高さは、必ずしも全体にわたって一定である必要はない。例えば、図14の態様では、外周の円形の遮蔽板の方が、中央の十字の遮蔽板よりも、高く、幅広い。
【0023】
針状突起を形成するためのキャビティとして上型主面に設けられる貫通孔の態様を、次に例示する。
(e)貫通孔の全体的な形状は、限定はされないが、円柱形、円錐形、円錐台形が好ましい形状である。また、図7(b)に現れている貫通孔の断面形状、または、図9の貫通孔の断面形状のように、金型の上型主面における貫通孔の開口部には、必要に応じた角度と深さにて傾斜(テーパー状の面取り)が設けられており、その先に円柱状の貫通孔または円錐状の貫通孔が形成されている。その結果、形成される針状突起は、図8に示されるように円錐台の上に円柱状の針状突起が積み重なったような形状(円柱の基部が広がった形状)や、図10に示されるように円錐台の上に円錐状の針状突起が積み重なったような形状(円錐の基部が上部より広がった形状)になり、皮膚への穿刺時に針状突起が座屈等で折れることが生じ難くなっている。
【0024】
皮膚に針状突起を穿刺する際に、針状突起の先端径は重要であって、該先端径が小さくなるに従って、より小さい力で皮膚の表面を貫くことが可能である。
しかし、針状突起全体を細くしてしまうと、強度が低下し穿刺時に加わる力に耐えられず針状突起が破損する可能性がある。
従って、針状突起の根元付近を太くして十分な強度を持たせ、先端に向かうにつれて細くし、先端を鋭利にした円錐状の針状突起が好ましい態様である。このような円錐状の針状突起を形成するためには、上型の貫通孔の内部形状を円錐状とすればよい。貫通孔の内部形状を円錐状とすることで、離型時における抜き抵抗が減少し、針状突起の欠損が減少することも期待できる。
上型の貫通孔の内部形状を円錐状とするための加工方法としては、例えば、円柱状の貫通孔に対して孔内が円錐状となるようにメッキ(硬質クロムメッキなど)によって金属を堆積させる方法、機械加工によって円錐状の貫通孔を形成する方法などが挙げられる。
【0025】
(f)貫通孔の間隔(即ち、隣り合った貫通孔のそれぞれの中心軸同士の間の距離)は、皮膚に対する穿刺性を考慮し、400μm〜1mmが好ましい。400μm以下であれば、皮膚からの針に対する抵抗が多くなり、穿刺性が低下する傾向が見られる。針状突起の間隔が大きくなれば穿刺性は向上するが、針状突起の数が減少し、針状突起に担持できる薬剤の量も減少するため、好ましい間隔は1mm以下であると考えられる。
(g)貫通孔の数は、目的に応じて適宜選択することが出来る。例えば50〜500を挙げることができる。薬剤を担持するために、好ましくは50〜200を挙げることができる。
(h)貫通孔の直径、とりわけ最も太い部分の直径は、穿刺性を考慮し、必要な針状突起の形状によって多様であるが、金型の上型主面における貫通孔の開口の直径は、皿座グリの直径も含めて約200μm〜500μmの範囲が好ましい。より好ましくは約200〜350μmの範囲を挙げることができる。
【0026】
(i)更に、円柱状または円錐状の貫通孔の内部に、金型表面から先端部まで、筋状の突出部が設置されていてもよい。該筋状の突出部の断面形状(該突出部をその長手方向に垂直に切断したときの断面の形状)は、楔形または四角形が好ましい形状である。貫通孔の内部に筋状突起を設けることにより、成形される針状突起の胴体周囲には、該針状突起の根元から先端部にかけて、薬物担持用の溝を形成することが出来る。
【0027】
上記金型を樹脂へ圧着するとは、樹脂の軟化状態にもよるが、貫通孔内に樹脂が充填するように、樹脂に上型主面を押し付けて圧力をかけることを言う。例えば、PGAシートを金型(上型)の温度で軟化させ、2〜5kg/cm2の加圧力の範囲で、金型を材料樹脂に圧着する。
その際、常圧(大気圧)中で圧着してもよいが、減圧下で圧着を行えば、貫通孔への樹脂の充填をより加速できる。例えば10Pa近傍の陰圧下で行うことができる。これにより製品の針状突起部分に気泡や空孔が生じることを回避できる。その結果、針状突起の強度低下を避けることが出来る。
【0028】
上記金型の表面には、金属メッキやテフロンコーテイングなど、樹脂の離型を容易にするためのコーティングが施されていてもよい。
金属メッキは、樹脂成形金型の内部表面に対して施される一般的なものであってよく、例えば、硬質クロムメッキが挙げられる。
上記金型から樹脂を離型させるとは、金型からマイクロニードルの成形品を分離することを言う。離型の際の樹脂温度については、好ましくは樹脂の針状突起部分については遷移点を越えた、遷移点近傍の温度で分離することが望ましいが、針状突起の基板部分の温度は、樹脂の変形を防ぐために遷移点以下になっていることが望ましい。
なお、上記金型を加熱して樹脂に圧着させると、樹脂が貫通孔の先端から上型の裏面側へ漏出して固化する場合があるため、離型を容易にするために、貫通孔を漏出して固化した樹脂部分をきれいに削除し、離型に影響が出ないようにすることが好ましい。また、圧着面反対側の貫通孔出口を小さくすることによって漏出を抑制することもできる。
【0029】
上記のとおり、上型には、針状突起を成形するために貫通孔が設けられるが、そのため該貫通孔を通じて樹脂が上型の裏面(上型主面の反対側の面)まで漏出し、針状突起が貫通孔から抜け難くなり、問題となる。
図13(a)は、樹脂が上型の裏面に漏出しているようすを示す写真図である。本発明者等の研究によれば、漏出して固化した樹脂材料(いわゆる成形バリ)を除去せずに製品を離型すると、針状突起の先端部分や全体が欠損するといった問題が生じることがわかった。
上型の裏面まで漏出し固化した樹脂材料を除去してから離型すれば、針状突起の品質に問題は生じない。しかし、実際の製造では、そのような毎回の成形ごとのバリの除去作業は無くすことが好ましい。
本発明では、この問題に対して、上型の裏面とプレス装置の上側の可動部分との間に、図13(b)に示すような弾性材料、特に、樹脂材料からなる押さえ部材を配置し、貫通孔の開口を塞ぎ、樹脂材料の漏出を抑制することを提案する。
貫通孔の上端の開口が完全に密閉された場合、針状突起として孔部を充満させるために高圧が必要となり、金型の変形を伴ったり、金型の高強度化による金型製作の困難が伴う。これに対して、前記のような押さえ部材の配置によって、貫通孔の上端の開口が完全に密封されることなく、逃がし弁を取り付けたかのように適切に塞がれ、貫通孔の機能を失うことなく、しかも、大量の樹脂の漏出が抑制され、針状突起はスムーズに貫通孔から抜けるようになる。
押さえ部材を配置するに際しては、例えば、図14に示すように、上型の周囲を厚くすることで、押さえ部材を配置する領域を相対的に窪みとし、該窪みの内部に押さえ部材を配置し、プレス装置のラムからの加圧力が、押さえ部材だけに作用することのないような構造とすることが好ましい。
【0030】
押さえ部材の材料は、特に限定はされないが、(i)成形時の加熱でも溶融しない材料であること、(ii)押さえ部材の下面が成形樹脂と接触するので離型性の良好な材料であること、(iii)成形時に貫通孔内から圧力を受けた時に、孔内の空気だけを逃がす微小な隙間が生じる程度の弾性材料であること、が好ましい。
そのような材料としては、例えば、フッ素樹脂(とりわけ、テフロン(登録商標)として市販されているポリテトラフルオロエチレンなど)が挙げられる。また、成形樹脂と接触する側にこれら樹脂材料からなる部材を配置し、その背後に金属バネなどの弾性体を配置した複合部材であってもよい。
【0031】
図13(b)に示す押さえ部材を、図13(c)に示すように、上型の裏面に配置することによって、樹脂が漏出する隙間が塞がれると同時に、押さえ部材自体が加熱され膨張することによって、上型に裏側から適度な圧力を加えることが可能になり、上型のたわみを抑制する作用も期待できる。
図13(d)は、上型の裏面にフッ素樹脂製の押さえ部材を配置して、加圧成形を行った際の、上型の裏面のようすを示す写真図である。上型の裏側に何も設置せずに成形を行った図13(a)の状態と比較して、図13(d)では、上型の裏側への樹脂の漏出は見られず、漏出を防止できていることがわかる。
実際に、テフロン(登録商標)製の押さえ部材を上型の裏面に配置して、マイクロニードルを成形したところ、針状突起の欠損が減少した。針状突起の欠損の原因として、上型のたわみ、上型温度が中央部付近で下がりやすいこと、小さな空気だまりが上型主面に存在することなどが考えられる。
押さえ部材を設置しない場合は、上型の押し込み量を増加させると、上型の裏側へ漏出する樹脂の量が増加するだけであったが、押さえ部材を設置することによって、漏出なしで押し込み量を増加させることが可能になった。押し込み量を増加させることで、針状突起の欠損が減少し、また、上型の片当たりが抑制され、圧力が増加することで空気だまりも排除される。
【0032】
本発明の製造方法の好ましい態様は、次のとおりである。
生体内分解性の樹脂製マイクロニードルの製造方法であって、
下記(a)〜(c)の特徴を有する遮蔽板と、下記(d)〜(g)の貫通孔とを有する金属製金型を使用し、
前記金型を加熱して、上記樹脂に圧着してマイクロニードルを成形する工程と、
成形の後、樹脂を冷却し、成形されたマイクロニードルを離型する工程とを、
有することを特徴とする、マイクロニードルの製造方法。
(a)遮蔽板の断面形状が、楔型、正方形、長方形または台形であること。
(b)上型主面を見たときの遮蔽板の形状が、十字形、円形、または、これらを重ね合わせた形状のものであり、マイクロニードルの基板の中央部に対応する位置に設置されている。
(c)更に、マイクロニードルの基板の外周部に対応する位置に、遮蔽板が設置されていてもよい。
(d)遮蔽板を避けて、円柱状、または、円錐状の貫通孔が設けられている。
(e)上型主面における貫通孔の開口部には傾斜(テーパー状の面取り)が付いており、その結果、形成される針状突起は、円錐台の上に円柱状又は円錐状の針状突起が積み重なった形状になる。
(f)貫通孔の間隔は400μm〜1mmである。
(g)貫通孔の本数は50〜500本である。
【0033】
また、本発明の製造方法の好ましい他の態様は、次のとおりである。
次の工程を有するマイクロニードルの製造方法であって、
生体分解性樹脂を金属製基盤(下型)の凹部の中に収納する工程と、
上記(a)〜(c)の特徴を有する遮蔽板と、上記(d)〜(g)の貫通孔とを有し、前記凹部に契合する金属製金型(上型)を使用し、上記金型を上記樹脂の融点まで加熱して、上記樹脂に圧着してマイクロニードルを成形する工程と、
上記樹脂を冷却し、成形固化した樹脂を離型する工程とを、
有することを特徴とする、マイクロニードルの製造方法。
【0034】
また、マイクロニードルを製造するための本発明の金型の好ましい態様は、次のとおりである。
生体内分解性樹脂と圧着する金型表面に、上記(a)〜(c)の特徴を有する遮蔽板が突出し、それによって、マイクロニードルの基板が2以上に分割され、かつ、上記(d)〜(g)の貫通孔が設けられていることを特徴とする、マイクロニードル製造用金型、
【実施例】
【0035】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に何等限定されるものではない。
【0036】
(参考例1)
〔遮蔽板のない金型を用いたプレス方法によるマイクロニードルの製造〕
本発明による実施例を示す前に、従来技術の一例として、遮蔽板のない金型を用いたプレス方法によるマイクロニードルの製造例を示す。
本参考例では、密閉プレス方法を用いて、マイクロニードルの製造を行なった。
密閉プレス方法とは、材料樹脂が金型の周囲からはみ出して逃げないように、下型に凹部を設けて周囲を取り囲み、上型と下型とによって材料樹脂を閉じ込めながら加圧成形する方法である。ただし、型内と型外とは、上型の貫通孔によって連通している。
上型として、厚さ1mmの平板状金型を用い、その上型主面に、直径約100μmの円柱状の貫通孔を、8行8列のマトリクス状に並ぶように形成した。貫通孔同士の間の中心軸間の距離は、縦横ともに、約800μmとした。この金型には遮蔽板は設置されていない。
下型は、上記上型が嵌合し得る凹部を有する金属平板であって、該下型をプレス装置の基盤上に配置した。下型の温度は室温(26℃)に設定した。
生体内分解性樹脂として、厚さ1.5mmのPGAプレートを使用し、下型の凹部内に配置した。
上型を、プレス装置の上側の可動部分であるラムに取り付け、該上型の温度を約245℃に設定した。プレス装置のラムを降下させ、上型主面をPGAプレートに圧着させた。
上型主面の高さが、PGAプレートの元の上面の高さから、圧着降下速度50μm/sにて、さらに約0.3mm降下するまで加圧を行った。
型全体を室温まで冷却した後、プレス装置のラムを上昇させ、上型と、それに密着したPGAプレートとを取り出し、上型の貫通孔より外部(上型主面の反対側)に漏出したPGAを除去し、上型からPGA製のマイクロニードルを離型した。
得られたマイクロニードルは、針状突起の径や高さについてはほぼ均一であったが、図2に示されるように、外周部の末端の領域に形成された針状突起が、根元付近で曲がっていた。
【0037】
(実施例1)
〔円柱状の貫通孔と遮蔽板とを設けた上型を用いた、マイクロニードルの製造〕
本実施例では、図7に示される上型を用いたこと以外は、上記参考例1と同様の条件にて、密閉プレス方法によるPGA製マイクロニードルを製造し、針根元部の屈曲の抑制に有効かどうかを確認した。
上型は、上記参考例1と同様に、厚さ1mmの平板状金型を用い、その上型主面に、直径約100μmの円柱状の貫通孔を、8行8列のマトリクス状に並ぶように形成した。貫通孔同士の間の中心軸間の距離は、縦横ともに、約800μmとした。
樹脂材料(PGA)が溶融する深さより、十分に深くまで遮蔽板が入るように、該遮蔽板の突起の高さを0.4mmとした。
また、該上型には、PGAの冷却時の収縮を抑制する目的で、全ての貫通孔を1つの円で囲むように、上型主面の外周部に円形の稜線状突起を遮蔽板として設けた。
下型、樹脂材料、成形条件は、参考例1と同様である。
作製されたマイクロニードルは、図8に示されるように、外周末端部の針状突起の根元には、湾曲がほぼ見られなかった。
以上の点から、外周を取り囲むように遮蔽板を付与することによって、樹脂材料の収縮時に生じる応力を遮断することが可能であり、針状突起の屈曲の抑制に有効であることが分かった。
【0038】
(実施例2)
〔円錐状の貫通孔と遮蔽板とを設けた上型を用いた、マイクロニードルの製造〕
本実施例では、図9に示されるように、貫通孔を円錐状とした上型を用いたこと以外は、上記実施例1と同様の条件にて、密閉プレス方法によるPGA製マイクロニードルを製造した。
上型の厚さ、貫通孔の配列は、実施例1と同様であるが、本実施例では、図9に示すように、貫通孔を円錐状とし、該貫通孔の上型主面側の開口部に、皿状の座グリ加工を施して、円錐形の基部をさらに太く広げた。
作製されたマイクロニードルは、図10に示されるように、外周末端部の針状突起の根元が湾曲することがなく、針状突起の先端部も鋭利になっていた。
【0039】
(実施例3)
本実施例では、図14(b)に示すように、上型主面3Aの外周部に全ての貫通孔を囲む円形の遮蔽板1aを設け、かつ、中央に十字形の遮蔽板1bを設けた。また、上型主面における貫通孔の配置を、同心円状とした。針状突起の先端径は約0.03mmとし、針の高さは約0.6mmとした。
上記実施例1と同様の成形条件にて、密閉プレス方法によるPGA製マイクロニードルを製造した。
作製されたマイクロニードルは、実施例1で得られたものと比べて、針状突起の屈曲はより抑制されており、また、ほぼ均一な形状の針状突起が形成されていることがわかった。また、作製されたマイクロニードルの主面の中央部では、針状突起の屈曲が無かったことから、遮蔽板による中央部の針状突起への影響は小さいことがわかった。
【0040】
(実施例4)
本実施例では、図3に示す十字形の遮蔽板と、図9に示す円錐形の貫通孔とを設けた上型を用い、上記実施例1と同様の条件にてマイクロニードルを作製し、その円錐状の針状突起の穿刺性と強度とを確認した。
針状突起の穿刺性と強度とを確認するために、ヒトの前腕の皮膚の表層の特性に近似した皮膚モデル(ヒトの前腕部を丸棒で押した時の荷重−ストローク関係とほぼ同じ抵抗を示すモデル)を構築し、穿刺性確認実験を行った。
【0041】
穿刺性確認実験の手順は次のとおりである。
実験に使用したマイクロニードルは、図15(a)に示すとおり、十字形の遮蔽板に起因する十字形の溝が、中央の主面に形成されたものである。穿刺前の針状突起には、いずれにも、成形による変形は生じていなかった。
先ず、マイクロニードルを、上下方向に移動するよう制御可能なレオメータ(SHIMADZU EZTest)の先端に取り付ける。そして、針状突起の先が皮膚モデルに接触した高さから、さらに12mm降下するまで、マイクロニードルを皮膚モデルに押しつける。その後、マイクロニードルを皮膚モデルから取り除き、その皮膚モデルに、針状突起が刺さった箇所のみ染色することが可能な薬品を塗布し、約1分間染色する。
尚、針状突起が刺さったかどうかの判断が穿刺後の染色だけでは難しい場合には、穿刺実験を行う直前に、針状突起に染色液を塗布して穿刺実験し、実験後の皮膚およびマイクロニードルを確認してもよい。
穿刺実験後の皮膚モデルの表面を確認したところ、マイクロニードルの針状突起の約8割程度が穿刺されていることが確認できた。
また、穿刺実験後のマイクロニードルの針状突起を確認したところ、先端だけが曲がった針状突起が存在したが、全ての針状突起が根元で屈曲することなく残存していることがわかった。
これにより、本発明によって得られたマイクロニードルは、針状突起が皮膚に対して十分な穿刺性を有し、強度的にも問題がないことが確認できた。
【0042】
(参考例2)
本参考例では、遮蔽板が無くかつ円柱形の貫通孔を設けた図1に示す上型を用い、上記実施例4と同様の条件にてマイクロニードルを作製し、その円錐状の針状突起の穿刺性と強度とを確認した。
マイクロニードルは、図15(b)に示すとおり、円柱形の針状突起を有するものを使用した。穿刺前の針状突起には、図2に示すように、成形による変形が生じているものがあった。
穿刺性確認実験の手順は上記実施例4と同様である。
穿刺実験後の皮膚モデルの表面を確認したところ、数本の針状突起が刺さっていた可能性があるが、大部分の針状突起針については、押し当てられた跡が残っているだけで、刺さっていないことがわかった。
また、穿刺実験後のマイクロニードルの針状突起を確認したところ、図15(c)に示すとおり、ほとんどの針状突起が大きく曲がっていた。この原因は、針状突起の穿刺性が悪いことや、針状突起の根元の剛性不足、成形時の根元の屈曲にあると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の製造方法と金型を使用することにより、冷却時収縮性の強い生体内分解性樹脂(例えばPGA)を使用しても、マイクロニードルの外周部末端の針状突起において、針の根元部分での湾曲が見られない高品質なマイクロニードルを製造出来るようになった。
これにより、マイクロニードルとして皮膚への穿刺性が優れるが、熱膨張性が高くて周辺部分の針状突起が根元で曲がり易いものであったPGA樹脂が使用できるようになり、品質の良好なPGA製マイクロニードルを提供出来るようになった。
【符号の説明】
【0044】
1: 遮蔽板
2: 金型(上型)の主面に設けられた貫通孔
3: 金型(上型)
4: PGA樹脂プレート(マイクロニードルの基板)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の基板の主面に針状突起が一体的に形成された構造を有するマイクロニードルの製造方法であって、
金型を加熱して、樹脂に圧着する工程と、
上記樹脂を冷却し、成形された樹脂を離型する工程とを有し、
前記金型は、製造すべきマイクロニードルの基板の主面を形成するための主面を有し、該金型の主面には、針状突起を形成するための貫通孔と、該金型の主面から稜線状に突起する遮蔽板とが設けられており、
該遮蔽板は、樹脂を冷却する時にマイクロニードルの基板内に生じる横方向の収縮を抑制し得るように設けられている、
前記製造方法。
【請求項2】
金型の主面における遮蔽板の形状が、金型の主面の中央の領域を分割する形状、金型の主面の中央の領域を囲む形状、金型の主面の外周を囲む形状、または、前記形状のうちの2以上の形状を組み合わせた形状を有する、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
金型の主面における遮蔽板の形状が、該金型の主面の中央の領域を分割する十字形、金型の主面の中央の領域を囲む円形、金型の主面の外周を囲む円形、または、これらの形状を重ね合わせた形状であり、
遮蔽板の断面形状が、楔形、正方形、長方形、または、台形であり、
貫通孔が、円柱状、または、円錐状の孔であり、
金型の主面における貫通孔の開口部には、テーパー状の面取りが設けられており、
各貫通孔の中心軸同士の間の距離が、0.4mm〜1mmであり、
貫通孔の数が、50〜500である、
請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
遮蔽板が、貫通孔のある領域を2以上に分割する形状を有している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
樹脂が、生体内分解性の樹脂である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
生体内分解性の樹脂が、ポリグリコール酸を主体とする樹脂である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
金型の加熱温度が、樹脂の融点の温度を中心として−10度〜+30度の範囲内の温度である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
金型が、上型とそれに対向する下型とを有し、これらの型の間で樹脂がマイクロニードルへと成形されるものであり、上型は、マイクロニードルの基板の主面を形成するための主面を持ち、下型は、マイクロニードルの基板の裏面を形成し、上型の圧着工程もしくは離型工程における基板の保持のための主面を持ち、
該下型には、上型が契合し得る凹部が設けられており、
生体分解性樹脂を該下型の凹部内に配置し、
上型を上記樹脂の融点まで加熱して、上記樹脂に圧着する工程と、
上記樹脂を冷却し、成形された樹脂を離型する工程とを有する、
請求項1〜7のいずれか1項に記載のマイクロニードルの製造方法。
【請求項9】
金型が、上型とそれに対向する下型とを有し、これらの型の間で樹脂がマイクロニードルへと成形されるものであり、上型は、マイクロニードルの基板の主面を形成するための主面を持ち、下型は、マイクロニードルの基板の裏面を形成するための主面を持ち、
上型の裏面上において、貫通孔の開口を塞く位置に、弾性材料からなる押さえ部材を配置し、該押さえ部材によって、上型の裏面への樹脂材料の漏出を抑制する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
押さえ部材の材料が、ポリテトラフルオロエチレンを主体とする樹脂である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
樹脂製の基板の主面に針状突起が一体的に形成された構造を有するマイクロニードルを成形するための金型であって、
製造すべきマイクロニードルの基板の主面を形成するための主面を有し、該金型の主面には、針状突起を形成するための貫通孔と、該金型の主面から稜線状に突起する遮蔽板とが設けられており、
該遮蔽板は、樹脂を冷却する時にマイクロニードルの基板内に生じる横方向の収縮を抑制し得る位置に設けられ、かつ、該遮蔽板の突起の高さは、製造すべきマイクロニードルの基板の厚さよりも小さいものである、
前記金型。
【請求項12】
金型の主面における遮蔽板の形状が、金型の主面の中央の領域を分割する形状、金型の主面の中央の領域を囲む形状、金型の主面の外周を囲む形状、または、前記形状のうちの2以上の形状を組み合わせた形状を有する、請求項11記載の金型。
【請求項13】
遮蔽板が、貫通孔が設けられている領域を2以上に分割する形状を有している、請求項11または12に記載の金型。
【請求項14】
金型の主面における遮蔽板の形状が、該金型の主面の中央の領域を分割する十字形、金型の主面の中央の領域を囲む円形、金型の主面の外周を囲む円形、または、これらの形状を重ね合わせた形状であり、
遮蔽板の断面形状が、楔形、正方形、長方形、または、台形であり、
貫通孔が、円柱状、または、円錐状の孔であり、
金型の主面における貫通孔の開口部には、テーパー状の面取りが設けられており、
各貫通孔の中心軸同士の間の距離が、0.4mm〜1mmであり、
貫通孔の数が、50〜500である、
請求項11〜13のいずれか1項に記載の金型。
【請求項15】
貫通孔が設けられている領域が、厚さ0.3mm〜1mmの平板状である、請求項11〜14のいずれか1項に記載の金型。
【請求項16】
金型の主面の外周を囲む形状の遮蔽板を含んでおり、
該遮蔽板の幅が、0.5mmである、請求項11〜15のいずれか1項に記載の金型。
【請求項17】
貫通孔の内部に、該孔の金型の主面側の端部から該孔の先端部まで、筋状の突出部が設置されており、筋状の突出部の断面形状が楔形または四角形状である、請求項11〜16のいずれか1項に記載の金型。
【請求項18】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法によって得られたマイクロニードルであって、
樹脂製の基板の主面に針状突起が一体的に形成された構造を有し、
該基板の主面には、前記製造方法に用いられた金型の主面に設けられた遮蔽板が転写されてなる溝が形成されていることを特徴とする、
マイクロニードル。
【請求項1】
樹脂製の基板の主面に針状突起が一体的に形成された構造を有するマイクロニードルの製造方法であって、
金型を加熱して、樹脂に圧着する工程と、
上記樹脂を冷却し、成形された樹脂を離型する工程とを有し、
前記金型は、製造すべきマイクロニードルの基板の主面を形成するための主面を有し、該金型の主面には、針状突起を形成するための貫通孔と、該金型の主面から稜線状に突起する遮蔽板とが設けられており、
該遮蔽板は、樹脂を冷却する時にマイクロニードルの基板内に生じる横方向の収縮を抑制し得るように設けられている、
前記製造方法。
【請求項2】
金型の主面における遮蔽板の形状が、金型の主面の中央の領域を分割する形状、金型の主面の中央の領域を囲む形状、金型の主面の外周を囲む形状、または、前記形状のうちの2以上の形状を組み合わせた形状を有する、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
金型の主面における遮蔽板の形状が、該金型の主面の中央の領域を分割する十字形、金型の主面の中央の領域を囲む円形、金型の主面の外周を囲む円形、または、これらの形状を重ね合わせた形状であり、
遮蔽板の断面形状が、楔形、正方形、長方形、または、台形であり、
貫通孔が、円柱状、または、円錐状の孔であり、
金型の主面における貫通孔の開口部には、テーパー状の面取りが設けられており、
各貫通孔の中心軸同士の間の距離が、0.4mm〜1mmであり、
貫通孔の数が、50〜500である、
請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
遮蔽板が、貫通孔のある領域を2以上に分割する形状を有している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
樹脂が、生体内分解性の樹脂である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
生体内分解性の樹脂が、ポリグリコール酸を主体とする樹脂である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
金型の加熱温度が、樹脂の融点の温度を中心として−10度〜+30度の範囲内の温度である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
金型が、上型とそれに対向する下型とを有し、これらの型の間で樹脂がマイクロニードルへと成形されるものであり、上型は、マイクロニードルの基板の主面を形成するための主面を持ち、下型は、マイクロニードルの基板の裏面を形成し、上型の圧着工程もしくは離型工程における基板の保持のための主面を持ち、
該下型には、上型が契合し得る凹部が設けられており、
生体分解性樹脂を該下型の凹部内に配置し、
上型を上記樹脂の融点まで加熱して、上記樹脂に圧着する工程と、
上記樹脂を冷却し、成形された樹脂を離型する工程とを有する、
請求項1〜7のいずれか1項に記載のマイクロニードルの製造方法。
【請求項9】
金型が、上型とそれに対向する下型とを有し、これらの型の間で樹脂がマイクロニードルへと成形されるものであり、上型は、マイクロニードルの基板の主面を形成するための主面を持ち、下型は、マイクロニードルの基板の裏面を形成するための主面を持ち、
上型の裏面上において、貫通孔の開口を塞く位置に、弾性材料からなる押さえ部材を配置し、該押さえ部材によって、上型の裏面への樹脂材料の漏出を抑制する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
押さえ部材の材料が、ポリテトラフルオロエチレンを主体とする樹脂である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
樹脂製の基板の主面に針状突起が一体的に形成された構造を有するマイクロニードルを成形するための金型であって、
製造すべきマイクロニードルの基板の主面を形成するための主面を有し、該金型の主面には、針状突起を形成するための貫通孔と、該金型の主面から稜線状に突起する遮蔽板とが設けられており、
該遮蔽板は、樹脂を冷却する時にマイクロニードルの基板内に生じる横方向の収縮を抑制し得る位置に設けられ、かつ、該遮蔽板の突起の高さは、製造すべきマイクロニードルの基板の厚さよりも小さいものである、
前記金型。
【請求項12】
金型の主面における遮蔽板の形状が、金型の主面の中央の領域を分割する形状、金型の主面の中央の領域を囲む形状、金型の主面の外周を囲む形状、または、前記形状のうちの2以上の形状を組み合わせた形状を有する、請求項11記載の金型。
【請求項13】
遮蔽板が、貫通孔が設けられている領域を2以上に分割する形状を有している、請求項11または12に記載の金型。
【請求項14】
金型の主面における遮蔽板の形状が、該金型の主面の中央の領域を分割する十字形、金型の主面の中央の領域を囲む円形、金型の主面の外周を囲む円形、または、これらの形状を重ね合わせた形状であり、
遮蔽板の断面形状が、楔形、正方形、長方形、または、台形であり、
貫通孔が、円柱状、または、円錐状の孔であり、
金型の主面における貫通孔の開口部には、テーパー状の面取りが設けられており、
各貫通孔の中心軸同士の間の距離が、0.4mm〜1mmであり、
貫通孔の数が、50〜500である、
請求項11〜13のいずれか1項に記載の金型。
【請求項15】
貫通孔が設けられている領域が、厚さ0.3mm〜1mmの平板状である、請求項11〜14のいずれか1項に記載の金型。
【請求項16】
金型の主面の外周を囲む形状の遮蔽板を含んでおり、
該遮蔽板の幅が、0.5mmである、請求項11〜15のいずれか1項に記載の金型。
【請求項17】
貫通孔の内部に、該孔の金型の主面側の端部から該孔の先端部まで、筋状の突出部が設置されており、筋状の突出部の断面形状が楔形または四角形状である、請求項11〜16のいずれか1項に記載の金型。
【請求項18】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法によって得られたマイクロニードルであって、
樹脂製の基板の主面に針状突起が一体的に形成された構造を有し、
該基板の主面には、前記製造方法に用いられた金型の主面に設けられた遮蔽板が転写されてなる溝が形成されていることを特徴とする、
マイクロニードル。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図12】
【図14】
【図2】
【図8】
【図10】
【図13】
【図15】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図12】
【図14】
【図2】
【図8】
【図10】
【図13】
【図15】
【公開番号】特開2010−247535(P2010−247535A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69725(P2010−69725)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【出願人】(302005628)株式会社 メドレックス (35)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【出願人】(302005628)株式会社 メドレックス (35)
【Fターム(参考)】
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