説明

マイクロポンプ及びこれを用いた半導体装置

【課題】 外部からの電気エネルギーの供給なしに自律的に動作するマイクロポンプを提供する。
【解決手段】 マイクロポンプは、熱源側に位置する高温側部材と、放熱側に位置する低温側部材と、前記高温側部材と前記低温側部材の間に位置する中間層と、前記中間層と前記低温側部材の間で流路の一部を形成するチャンバーと、を備え、前記中間層は、ダイアフラムと、前記高温側部材からの吸熱及び前記低温側部材からの放熱により前記ダイアフラムを変位させる変位手段と、を含み、前記ダイアフラムは、変位前の第1位置と、前記変位により前記低温側部材と接する第2位置との間を変位することにより、前記チャンバー内への流体の取り込みと排出を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロポンプと、これを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロポンプはダイアフラムの変形に追従して生じる流路の容積変化を利用して流路内の流体を搬送、送出するものである。メカニカルに駆動されるマイクロポンプでは、ダイアフラムに圧電材料が用いられるのが一般的である。マイクロポンプは、マイクロチャネルやインクジェットヘッドに適用されている他、CPU等の発熱体の水冷システムにも適用が検討されている。
【0003】
近年のLSIの微細化・高集積による発熱量の増大に対しては、電源電圧の低減をはかる方向で発熱量を緩和する開発が進められてきた。しかし、低電圧で動作する回路ではトランジスタの閾値電圧を低く設定する必要があり、リーク電流を増大させてしまい、低電圧化による発熱量の低減は限界に達している。このような背景で、1cm2あたり100Wという原子炉に並ぶ極めて高密度な熱源であるLSIを高効率に冷却できる低コストの冷却システムが望まれている。また、CPUなどの信号処理を行う半導体素子だけでなく、半導体レーザーや照明用発光ダイオードにおいても、同様に低コストの冷却システムが望まれている。
【0004】
従来の空冷ファンに代わる高効率冷却の手段の一つに水冷システムがある。水冷システムではウォータジャケット(水枕)と呼ばれる密閉型ヒートシンクに冷媒(冷却水)を流して冷却を行う。冷媒の循環にはポンプが用いられる。しかし、ポンプの使用は、コスト面でもそれ自体の消費電力を要する点でも従来にない負担が付加されるため、導入が遅れている。また、水枕を微細化してウォータジャケットを作成すると、水路の圧力損が増えるためポンプが行う機械的仕事量の増加を招き、その結果消費電力を増大させるという欠点がある。ポンプの大型化はコスト増を招き、消費電力の増加は排出熱量の増加となる。
【0005】
これらの理由から、有効な手段は補助ポンプの使用である。しかし、従来から用いられている圧電ダイアフラムによるポンプでは、ポンプに機械的な仕事を行わせるために電力の供給が必要である。しかし、圧電アクチュエータは動作電圧が高く、駆動回路における電気エネルギーを伴う。また、圧電体の変位量が小さいためポンプの流量を増やすのが困難である。
【0006】
インク噴出装置の可撓性ダイアフラムにバイメタル積層体を用いる構成が知られている(たとえば、特許文献1参照)。また、弁の可撓部にバイメタルを用いて弁の開閉を行なうマイクロバルブも知られている(たとえば、特許文献2参照)。しかし、特許文献1では、バイメタル積層体を磁場の作用で湾曲させているため、バイメタル積層体上に複数の電極を直列に設けて電流を印加しなければならない。また、特許文献2では、ヒーターで加熱することによってバイメタルを熱変形させているので、電気エネルギーの供給が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭52−055534号公報
【特許文献2】特開2000-2662232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記課題に鑑みて、外部からの電気エネルギーの供給なしに自律的に動作するマイクロポンプと、これを利用した半導体装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、第1の側面では、マイクロポンプは、
熱源側に位置する高温側部材と、
放熱側に位置する低温側部材と、
前記高温側部材と前記低温側部材の間に位置する中間層と、
前記中間層と前記低温側部材の間で流路の一部を形成するチャンバーと、
を備え、
前記中間層は、ダイアフラムと、前記高温側部材からの吸熱及び前記低温側部材からの放熱により前記ダイアフラムを変位させる変位手段と、を含み、
前記ダイアフラムは、変位前の第1位置と、前記変位により前記低温側部材と接する第2位置との間を変位することにより、前記チャンバー内への流体の取り込みと排出を行なわせる。
【0010】
第2の側面では、マイクロポンプを用いた半導体装置を提供する。半導体装置は、
上述した構成を有するマイクロポンプと、
前記マイクロポンプの高温側部材に接触する半導体素子と、
前記マイクロポンプに接続されて前記流体を循環させる循環系と
を含む。
【発明の効果】
【0011】
上記の構成により、外部からの電気エネルギーの供給なしにマイクロポンプを自律的に動作させることが可能になる。冷却システムを内蔵する半導体装置にマイクロポンプを組み込む場合は、高い冷却効率を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1のマイクロポンプの原理を説明するための概略構成図である。
【図2】図1のマイクロポンプの動作シーケンスを示す図である。
【図3A】第1基板を用いた中間層の形成工程を示す図である。
【図3B】第1基板を用いた中間層の形成工程を示す図である。
【図3C】第1基板を用いた中間層の形成工程を示す図である。
【図3D】第1基板を用いた中間層の形成工程を示す図である。
【図3E】第1基板を用いた中間層の形成工程を示す図である。
【図3F】第1基板を用いた中間層の形成工程を示す図である。
【図3G】第1基板を用いた中間層の形成工程を示す図である。
【図4A】第2基板を用いた高温側部材の形成工程を示す図である。
【図4B】第2基板を用いた高温側部材の形成工程を示す図である。
【図4C】第2基板を用いた高温側部材の形成工程を示す図である。
【図4D】第2基板を用いた高温側部材の形成工程を示す図である。
【図4E】第2基板を用いた高温側部材の形成工程を示す図である。
【図5】第1基板と第2基板の積層加工の工程を示す図である。
【図6】第3基板を用いた低温側部材の形成工程を示す図である。
【図7】第3基板の第1基板への積層加工の工程を示す図である。
【図8A】実施例で用いたバイメタルによるダイアフラムの変形シミュレーションの結果を示す図である。
【図8B】図8Aのデータに基づく変位分布図である。
【図9】バイメタルによるマイクロポンプの変形例1を示す図である。
【図10】バイメタルによるマイクロポンプの変形例2を示す図である。
【図11】バイメタルによるマイクロポンプの変形例3を示す図である。
【図12】バイメタルによるマイクロポンプを用いた半導体装置の概略構成図である。
【図13】実施例2のマイクロポンプの概略構成図である。
【図14】図13のマイクロポンプの動作シーケンスを示す図である。
【図15A】実施例2のマイクロポンプの中間層の形成工程図である。
【図15B】実施例2のマイクロポンプの中間層の形成工程図である。
【図15C】実施例2のマイクロポンプの中間層の形成工程図である。
【図15D】実施例2のマイクロポンプの中間層の形成工程図である。
【図15E】実施例2のマイクロポンプの中間層の形成工程図である。
【図15F】実施例2のマイクロポンプの中間層の形成工程図である。
【図16A】実施例2のマイクロポンプの第1基板と第2基板の積層工程図である。
【図16B】実施例2のマイクロポンプの第1基板と第3基板の積層工程図である。
【図16C】実施例2のマイクロポンプの第1基板と第3基板の積層工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、実施例によるマイクロポンプの構成、動作、及び製造方法を説明する。実施例を通して、マイクロポンプは、熱源側に設けられる高温側部材と放熱側に設けられる低温側部材の界面に位置する中間層に、流路内で変形・変位が可能なダイアフラムを有する。ダイアフラムの変形・変位は、バイメタルを利用し、高温側部材からの吸熱作用と低温側部材での放熱作用とにより自立的に行なわせる。バイメタルとは、熱膨張率の異なる二種以上の金属薄板を組み合わせたものであり、温度変化に応じて湾曲するようにしたものである。バイメタルを用いてダイアフラムを変形・変位させることにより、流路内の圧力が変化させて、マイクロポンプへの流体の流入、流出を実現する。
【実施例1】
【0014】
図1は、実施例1のバイメタルによるマイクロポンプ10の基本的な原理を説明するための図である。実施例1では、ダイアフラム変位手段として、ダイアフラム33自体をバイメタルで構成する。すなわち、ダイアフラムを構成するバイメタルがダイアフラム変位手段となる。
【0015】
実施例1において、図1(A)及び図1(B)に示すように、マイクロポンプ10は、図示しない熱源側に位置する高温側部材20と、放熱側に位置する低温側部材40と、高温側部材20と低温側部材の40の間に位置する中間層30とを有する。中間層30は、バイメタルのダイアフラム33と、インレット側のインバルブ35及びアウトレット側のアウトバルブ37を含む。中間層30と低温側部材40との間は、マイクロポンプ10内の流路を構成するチャンバー45及びバルブ室42となっている。
【0016】
高温側部材20は、熱源と接するか又は熱源を含む。低温側部材40は、冷却(放熱)部と接するか又は冷却(放熱)部を構成する。バイメタルによるダイアフラム33は、変位前の第1位置と、熱変形により低温側部材40と接触する第2位置との間を変位可能である。第1位置は、実施例1ではダイアフラム33が高温側部材20と接する初期位置に一致する。バイメタルのダイアフラム33は、第1位置で高温側部材20から熱を吸収することによって、チャンバー45内を低温側部材40に向かって張り出す方向に変形し、放熱部41と接触する。低温側の放熱部41と接触することによって熱を放出し、変形前の形状に復帰して第1位置に戻る。第1位置において、高温側部材20と接して熱を吸収することによって、再び変形・変位する。ダイアフラム33が熱変形による上記の動作を繰り返すことによって、インバルブ35とアウトバルブ37を駆動し、チャンバー45内への流体の取り込みと、チャンバー45からの流体の排出を行なう。
【0017】
ダイアフラム33は弾性体で構成され、線膨張率の異なる2種類以上の弾性体板で構成される。具体例として、ダイアフラム33は、第1位置で高温側部材20と直接接触する高い線膨張係数(高CTE)を有する第1部材31と、高温側部材20と反対側の面に位置する低い線膨張係数(低CTE)の第2部材32を組み合わせたものである。第1部材(高CTE部材)31は、たとえば、Al、Cu、Se、又はこれらを含む合金である。第2部材(低CTE部材)32は、たとえば、Si、Mo、W、Cr、Ni、又はこれらを含む合金である。第1部材と第2部材のいずれか一方を半導体としてもよい。
【0018】
ダイアフラム33の周縁部は保持部材38で保持されているので、受熱により変形する場合は、中央部分が低温側に向かって張り出すように変形する。ダイアフラム33の位置変化に応じて、インバルブ35とアウトバルブ37は、ポンプ動作時に流体の取り込みと排出を行い、流体(冷媒)の逆流を阻止する。
【0019】
高温側部材20は、発熱体(図1では不図示)と接触して熱を受け取る受熱部21と、受熱部21で受けた熱をダイアフラムに伝える伝熱部22を含む。伝熱部22は、実施例1ではバイメタルのダイアフラム33と高温側部材20との接触、非接触を制御する接触調整手段として機能する。高温側部材20と中間層30は、断熱材52を介して接続されている。同様に、中間層30と低温側部材40は断熱材51を介して接続されている。
【0020】
図2(A)及び図2(B)は、図1のマイクロポンプ10の動作シーケンスを示す図である。図1(B)の実線で描かれている状態、すなわち、ダイアフラム33が変形することなく第1位置で高温側部材20と接しており、インバルブ35とアウトバルブ37が閉じている状態を初期位置とする。
【0021】
図2(A)のように、高温側部材20の受熱部21上に、発熱体としてのLSI素子70が置かれているとする。LSI素子70は、基板90への接合面と反対側の面で高温側部材20と接している。LSI素子70の動作により発生する熱は、受熱部21及び伝熱部22を介してバイメタルのダイアフラム33に吸収される。これにより、中間層30の温度が上昇し、ダイアフラム33が低温側部材40に向かって凹変形して、低温側部材40と接触する第2位置へと変位する。ダイアフラム33の変形により、チャンバー45内の流路体積が減少して、アウトレット側での流体圧が上昇する。アウトバルブ37が押し上げられて開放状態となり、流体が排出管54へと排出される。このとき、インバルブ35は閉じられている。
【0022】
次に、図2(B)のように、バイメタルのダイアフラム33が低温側部材40の放熱部41と接触することによって熱を放出し、高温側部材20と接触する第1位置へと復帰する。これにより、チャンバー内の流路体積が増大し(回復し)、流体圧が低減する。インレット側のインバルブ35が導入路34内の流体圧により下方に開いて、チャンバー45内に流体が流れ込む。このとき、アウトバルブ37は閉じられた状態であり、チャンバー45内を満たす流体によって低温側部材40の放熱部41が冷却される。初期位置に復帰したダイアフラム33が高温側部材20と接触して吸熱することで、マイクロポンプ10は再び図2(A)の状態へ移行し、以後、図2(A)と図2(B)の動作を繰り返す。
【0023】
図3A〜図3Gは、マイクロポンプ10の製造プロセスの一部として、中間層30に用いる第1基板の加工工程を示す図である。実施例1では、ダイアフラム33を構成するバイメタルの少なくとも一層に、半導体材料、たとえば単結晶シリコンを用いる。シリコンは半導体プロセスを用いて加工が容易であるばかりでなく、163W・mKと金属と遜色ない熱伝導率を有し、2.9ppm/Kの線拡張係数を有するため、マイクロポンプの構成材料に適している。また金属と表面で共晶するので、強力な接合が可能である。
【0024】
まず、図3Aに示すように、第1基板としてシリコン単結晶ウェーハ(適宜、「シリコン基板」と称する)61を準備し、レジスト62を塗布し、マスク1を用いてパターニング(露光・現像)する。次に、図3Bに示すように、レジスト62をマスクとしてシリコン基板61を100μmの深さにエッチングし、その後レジストを剥離、洗浄する。これにより、シリコン基板61にフレーム状の突起68が形成される。
【0025】
次に、図3Cに示すようにレジスト64を塗布し、ダイアフラム部を開口したマスク2を用いてレジスト64をパターニングし、全面に膜厚約50nmのクロム膜65をスパッタリングする。次に、図3Dに示すように、リフトオフ法によりクロム膜65のパターニングを行なう。
【0026】
次に、図3Eに示すように、メッキ用の100μmの厚膜レジスト66を塗布し、マスク2を用いてクロム膜65が露出する開口67を形成する。次に、図3Fに示すように、電解メッキにより銅又はニッケルの層31を100μmにメッキ成長する。この金属層31は、バイメタルの高CTE部材(第1部材)31となる。その後、図3Gに示すようにメッキレジスト66を除去する。フレーム状の突起68は、図1でダイアフラム33を保持する保持部38となる。これにより、シリコン基板61上で保持部38に取り囲まれた領域に高CTEのCu膜31が形成された第1基板60が出来上がる。
【0027】
上述した中間層30の形成はあくまでもひとつの例であり、バイメタルの低膨張側の層32にシリコンを用いた場合に、高膨張側の層31としてシリコンよりも線膨張率が数倍以上大きい任意の材料を用いることができる。高膨張側の層31として、金属等、選択肢は多様であるが、マンガン、クロム、ニッケル、銅やこれらの合金が一般的である。半導体プロセスを用いる場合は、上述したようにエッチングやメッキが容易な銅やニッケルがよい。銅の熱伝導率は300W/mK、線膨張係数は145ppm/Kであり、単結晶シリコンと組み合わせることによって良好なバイメタルを作製することができる。なお、現在市販されているバイメタルの種類は現行JISC2530「電気用バイメタル板」に分類記載されている。この分類によれば、記号TM1に分類される材料では湾曲係数が20×10-6/K前後の材料を容易に入手することができる。
【0028】
図4A〜図4Eは、マイクロポンプ10の製造プロセスの一部として、高温側部材20に用いる第2基板の加工工程を示す図である。まず、図4Aに示すように、第2基板として第2のシリコン単結晶ウェーハ(適宜、「シリコン基板」と称する)25を準備する。全面にレジスト26を塗布し、マスク3を用いてレジスト26をパターニングし、所定の箇所に開口27を形成する。次に、図4Bに示すように、レジスト26をマスクとして、DRIE法により、シリコン基板25にインレット・アウトレット穴部28を形成する。その後、レジスト26を除去する。
【0029】
次に、図4Cに示すように、シリコン基板25の裏面、すなわちインレット・アウトレット穴部28を形成したのと反対側の面にレジスト29を塗布し、マスク4を用いてレジスト29をパターニングし、DRIE法によりシリコン基板25をエッチングしてリセス23を形成する。リセス23の平面形状は、中間層30のダイアフラム33とインバルブ35及びアウトバルブ37に対応する形状となっている。その後、レジスト29を除去する。
【0030】
次に、図4Dに示すように、シリコン基板25の裏面側にレジスト71を塗布し、マスク5を用いてレジスト71をパターニングする。そして、図4Eに示すように、レジスト71をマスクとして、DRIE法により、インレット・アウトレット穴部28と連通するまでシリコン基板25をエッチングして、高温側部材20の受熱部21、伝熱部(接触調整手段)22、流体の導入路34、排出路36、及びハウジング24を形成する。これにより高温側の第2基板50が出来上がる。
【0031】
図5は、中間層30を構成する第1基板60と、高温側の第2基板50との積層加工の工程を示す図である。図5(a)に示すように、第2基板50の裏面(伝熱部22側)にエポキシ接着剤52をディスペンス塗布し、その下面に第1基板60を接合する。この場合、第2基板50の受熱部21に伝熱部(接触調整手段)22を取り囲むようにディスペンスされたエポキシ接着材52は、第1基板60のフレーム状の突起、すなわち保持部38に接合される。
【0032】
次に、図5(b)に示すように、接合した第1基板60の裏面、すなわち高CTE層としてのCu層31を形成した面と反対側の面を、シリコン基板61が所望の厚さになるまで研削・研磨する。この例では、シリコン基板61の厚さが100μmになるまで研削・研磨する。その後、研磨した裏面に図示しないレジストを塗布し、マスク6を用いてダイアフラム33と、インバルブ35及びアウトバルブ37を形成する。レジストを除去して、マイクロポンプ10の高温側部材20と中間層30が完成する。保持部38の内側にあるシリコン基板は、ダイアフラム33の低CTE層(第2部材)32となる。また、流体導入路34に対応する部分のシリコン基板がインバルブ35となり、流体排出路36に対応する部分のシリコン基板がアウトバルブ37となる。この段階で、ダイアフラム33とインバルブ35、アウトバルブ37の裏面(研磨面)に、高分子保護膜を形成しておいてもよい。高温側部材20と中間層30とを接合するエポキシ接着材52は、断熱材として機能する。インバルブ35は、マイクロポンプ10の動作時に導入路34側に開かないように、ハウジング24で係止されている。他方、アウトバルブ37は、排出路36側に開くように構成されている。
【0033】
図6は、マイクロポンプ10の製造プロセスの一部として、低温側部材40に用いる第3基板の加工工程を示す図である。図6(a)に示すように、第3基板として第3のシリコン単結晶ウェーハ41を準備する。全面に永久レジスト51を塗布し、マスク7を用いて永久レジスト51をパターニングして、所定の形状の空間55を形成する。空間55は、組み立て後のマイクロポンプ10のチャンバー45とバルブ室42に相当する。空間55を区画する永久レジスト51は、マイクロポンプ10のハウジング51として機能するとともに、中間層40と低温側部材40との間の断熱材として機能する。永久レジスト51は、たとえばエポキシ系樹脂、ポリイミド等である。次に、図6(b)に示すように、パターニングした永久レジスト51上の所定の箇所にエポキシ接着剤56をディスペンス形成する。
【0034】
図7は、図5で形成した第1基板60と第2基板50との積層体に、第3基板41を接合する工程を示す図である。図7(a)に示すように、第3基板41のエポキシ形接着剤56上に第1基板60の裏面を接合する。このとき、エポキシ接着剤56は、アウトレット側のアウトバルブ37に抵触しないように塗布されていなければならない。次に、図7(b)に示すように、接合体をダイサーでチップ分離する。ダイシングの際には、流体導入路34となる開口34及び流体排出路36となる開口36を保護してチップ分離するのが望ましい。ことにより、マイクロポンプ10の主要部が完成する。ダイアフラム33と低温側部材40の間に流路の一部となるチャンバー45が形成され、インバルブ35とアウトバルブ37の下方に、流路の一部となるバルブ室42が形成される。アウトバルブ37は下方のバルブ室42に向けて開かないように、ハウジング51により係止されている。この状態での概略上面図が図7(c)である。
【0035】
マイクロポンプ10の内面を、高分子保護膜(不図示)で保護してもよい。たとえば、マイクロポンプ10の機密性を高め、リークを低減するために、ポリバラキシレン膜を気相蒸着重合法による成膜する。最後に、流体導入路33と流体排出路36に図示しない流入管53と排出管54(図1参照)を結合し、流体を封入することによってマイクロポンプが完成する。
【0036】
図8Aは、バイメタルによるダイアフラムの変形シミュレーションデータ、図8Bは図8Aのデータに基づく変位分布図である。シミュレーションでは、上面側に高CTE部材(第1部材)として膜厚100μmのCuを、下面側に低CTE部材(第2部材)として膜厚100μmの単結晶シリコンを用い、20mm×20mmのバイメタルダイアフラムとした。また、図1のように、ダイアフラム33がフレーム(保持部)38と一体形成されているものとした。50℃の温度上昇を与えた場合、図8A及び図8Bに示すように、ダイアフラムの中央部が凹状に変形することがわかる。もっともこの場合、変位量はZ軸方向に−4μmと小さいので、マイクロポンプとして機能させる場合は、流路となるチャンバー45の空間高さを4μmとしなければならない。マイクロポンプにおけるバイメタルのより有効な適用例は、後述する実施例2で述べることとする。
【0037】
図9は実施例1のマイクロポンプの変形例1、図10はマイクロポンプの変形例2、図11はマイクロポンプの変形例3を示す。図1のマイクロポンプ1と同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略する。図9のマイクロポンプ110Aでは、インレット側の流入管53と、アウトレット側の排出管54を、低温側に設けている。この構成では、高温側部材20の受熱部21が流路に面しているので、高温側部材20を直接冷却することができる。したがって、冷却効率を向上することができる。マイクロポンプ110Aを作製する場合は、低温側部材40となる基板41に、マスク3(図4A参照)を用いて開口を形成して流体導入路及び流体排出路を形成する。高温側部材20からの熱によるダイアフラム33の変位と、インバルブ35及びアウトバルブ37の開閉動作は、実施例1と同様である。
【0038】
図10のマイクロポンプ110Bは、図9の構成をさらに変形したものであり、低温側部材40に冷却水路120が設けられている。冷却水路120はウォータジャケットとし機能する。半導体プロセスを用いてマイクロポンプとウォータジャケットを一体的に形成することができる。
【0039】
図11のマイクロポンプ110Cは、インバルブ135とアウトバルブ137をバイメタルで形成したものである。アウトバルブ137において、高CTE材(第1部材)と低CTE材(第2部材)の積層を、ダイアフラム33の積層と逆にする。図11の構成によると、インバルブ135とアウトバルブ137の動作を、チャンバー45内の圧力変動のみに依存させるのではなく、より自律的なものにすることができるので、ダイアフラム33は、その機械的な運動(変位)を、流体の輸送だけに割り振ることができる。このような効果は、インバルブ135とアウトバルブ137のいずれか一方だけをバイメタルで構成してもある程度達成することができる。
【0040】
図12は、マイクロポンプの使用形態の一例として、マイクロポンプを組み込んだ半導体装置100を示す概略図である。半導体装置100は、マイクロポンプ110Aと、マイクロポンプ110Aの高温側部材20に接するLSI素子70と、マイクロポンプ110Aに接続されて流体を循環させる循環系85とを含む。循環系85は、配管81と、熱交換器又はラジエター82とを含む。循環系85に主ポンプ83を接続してもよい。この場合、マイクロポンプ110Aは自律的に動作する補助ポンプとして機能する。また、循環系85の一部として、低温側部材40に接するウォータジャケット80を配置するのが望ましい。
【0041】
主ポンプ83から排出された冷媒流体はウォータジャケット80に入り、マイクロポンプ110Aを通してLSI素子70から伝達された熱量を受け取り、マイクロポンプ110Aのインレットに入る。熱源とウォータジャケット80の温度差を利用してマイクロポンプ110Aが動作すると、アウトレットから流体が排出され、熱交換器82をとおり主ポンプ83に循環する。熱交換器82は熱源から受け取った熱量を2次側冷媒に移動する装置であり、2次側冷媒が空気の場合はラジエターである。
【0042】
近年のLSIはエネルギー密度が100W/cm2を越え原子炉レベルに近づいている。さらに厄介なのは、省電力機能の発達により使用状況により発熱量が大きく変動することである。マイクロポンプ110Aが無い場合、主ポンプ83は、ウォータジャケット80と往復の配管81と熱交換器82の間のすべての圧力損を加味して流体を加圧・循環しなければならず、高い圧力を生成する必要がある。また、主ポンプ83からウォータジャケット80への配管81は高い陽圧となり、接続部に高度の信頼性を必要とする。流体の流量を制御して主ポンプ83の消費電力を低減したり、排出する流体の温度を上げて熱交換器82での交換率を稼ぐことは理論的には可能であるが、ウォータジャケット80から熱源へ熱の逆流を伴うリスクが高く、高度なポンプ制御を必要とするため実現が困難である。
【0043】
これに対し、図12の構成では、マイクロポンプ110Aのダイアフラムの自律的な動作により、ウォータジャケット80から流体を吸い出す機能を果たすことができる。マイクロポンプ110Aが動作しているときは、主ポンプ83は主ポンプ83からウォータジャケット80までの流路と、ウォータジャケット80の圧力損の一部をカバーする圧力だけを生成すればよい。このようにマイクロポンプ110Aを補助ポンプとして機能させることによって、圧力の上昇点を全体に分散することができるため、流体の循環システムにとっても信頼性を向上する手段となる。
【0044】
マイクロポンプ110Aが動作していないときは、全流路の圧力損を主ポンプ83がカバーする必要があり、概算では流量が1/2〜1/3程度に低下する。しかし、マイクロポンプ110Aが動作していないというのは、熱源からの発熱が少なくことを意味するので、冷却の必要性が高くないことを意味する。したがって、冷却能力の低下は影響せず、むしろ望ましいともいえる。しかもマイクロポンプ110Aでは熱源(LSI素子70)からウォータジャケット80に向かって一方通行に熱が移動し逆流することはない。したがって、従来に比べてポンプの消費電力を低減することが可能である。
【0045】
このように、半導体装置100にマイクロポンプ110Aを組み込むことにより、熱源のLSI素子70において強い冷却が必要になると、マイクロポンプ110Aの自律的な動作により自動的に冷却効率を上げることができる。マイクロポンプ110Aを補助ポンプとして機能させることにより、主ポンプ83の電力削減や低グレード化によるコストダウンが可能となる。また、冷却循環路内で最も大きな圧力損失を生ずるウォータジャケット80の近傍にマイクロポンプ110Aを置くことによって、水路配管の水圧を低下させて漏水事故に対してのリスクを軽減することができる。
【0046】
図12の例では、メイン回路基板90にはんだバンプ72を介して実装された単一のLSI素子70のみを描いているが、半導体装置100において、メイン回路基板90上に複数のLSI素子70を配置する構成とすることもできる。この場合は、各LSI素子70にマイクロポンプ110Aを配置しつつ、熱交換器(又はラジエター)82と主ポンプ83を共用にすることができる。また、図12の例ではマイクロポンプ110Aを用いているが、半導体装置100において、図1のマイクロポンプ10や変形例2又は3のマイクロポンプ110B、110Cを同様の形態で使用できることは言うまでもない。
【実施例2】
【0047】
図13は、実施例2のバイメタルによるマイクロポンプ200の概略構成図、図14はマイクロポンプ200の動作を説明するための図である。実施例2では、ダイアフラム233と高温側部材20との間に、バイメタルによる変位手段253を挿入する。図13に示すように、変位手段253は、線膨張率の異なる2種類以上の弾性部材を含むバイメタルであり、高温側部材20の伝熱部22と直接接触する高CTE材の第1部材231と、高温側部材と反対側に位置する低CTE材の第2部材232を含む。変位手段253は、初期位置で高温側部材20の伝熱部22と接しているものとする。
【0048】
マイクロポンプ200は、図示しない熱源側に位置する高温側部材20と、放熱側に位置する低温側部材40と、高温側部材20と低温側部材の40の間に位置する中間層230とを有する。中間層230は、ダイアフラム233、ダイアフラムを変形させる変位手段253、インレット側のインバルブ235、及びアウトレット側のアウトバルブ237を含む。中間層230と低温側部材40との間に、マイクロポンプ10内の流路を構成するチャンバー45及びバルブ室42が設けられている。熱源は、たとえば高温側部材20の受熱部21上に搭載される電子部品等の発熱体(不図示)である。
【0049】
ダイアフラム233は、変位手段253の動きに応じて、変位前の第1位置と、変位手段253に押圧されて低温側部材40と接触する第2位置との間を変位する。すなわち、図14(A)に示すように、変位手段253が高温側部材20の受熱部21及び伝熱部22を介して熱を吸収することにより、伝熱部22から離れる方向(図面の下方)に湾曲する。これによりダイアフラム233は低温側部材40に向かって押圧され、低温側部材40と接触する第2位置へと変位する。ダイアフラム233の変位によりチャンバー45内の体積が変化し、圧力上昇に伴ってアウトバルブ237が上方に開き、チャンバー45内の流体が排出される。
【0050】
変位手段253に吸収された熱は、ダイアフラム233を介して、低温側部材40の放熱部41から放出される。これにより、図14(B)に示すように変位手段253の湾曲が解消され、高温側部材20と接触する初期位置へ復帰する。変位手段253の初期位置への復帰に伴って、押圧されていたダイアフラム233も第1位置へと復帰する。チャンバー内の体積も元の状態に回復し、内圧が減少する。インバルブ235が下側に開いて流体がチャンバー45内に流入する。熱源、たとえば高温側部材20の受熱部21に搭載される発熱体(不図示)の存在により、図14(A)と図14(B)の動作が自律的に繰り返され、マイクロポンプ200の動作が継続する。
【0051】
実施例2の構成では、バイメタルによる変位手段253は、片持ち梁構造に形成され、ダイアフラム233を第1位置から第2位置へ駆動するアクチュエータとして機能する。たとえば、TM1(KOSC2530による分類)相当のバイメタル材で、厚さ200μm、さ10mm、幅10mmのバイメタルを片持ち梁状に保持した場合、温度が50℃上昇したときに、自由端の最大変位量は300〜500μmとなる。実施例2では、後述するように平面形状が三角型の変位手段を複数組み合わせて配置する。
【0052】
図15A〜図15Fは、実施例2のマイクロポンプ200の中間層230の形成工程を示す図である。まず、図15Aに示すように、中間層230を構成する第1基板として、SOI基板210を用いる。SOI基板は、シリコン基板211と表面シリコン(Si)膜213との間に、シリコン酸化膜(SiO2)212を挿入した基板である。実施例では、シリコン酸化膜212は犠牲膜として用いられる。SOI基板210上にレジスト214を塗布し、マスク11を用いてレジスト214をパターニングする。次に、図15Bに示すように、レジスト214をマスクとして、Si膜213とSiO2膜212をエッチングし、エッチング終了後にレジスト214を除去する。
【0053】
次に、図15Cに示すように、全面にレジスト216を形成し、マスク12を用いてレジスト216をパターニングする。パターニングにより、レジスト216に平面形状で4つの三角形を組み合わせた開口219が形成され、開口219内にSi膜213が露出する。次に、図15Dに示すように、全面に膜厚50nmのCr膜217をスパッタし、リフトオフ法でCr膜217をパターニングする。これにより、SOI基板210の表面Si膜213は、バイメタルの一方の側の層を構成する低CTE部材(Si膜)232となる。
【0054】
次に、図15Eに示すように、全面にめっきレジスト221を形成し、図15Cで用いたマスク12を用いてパターニングし、露出したCr膜をシードとして、電解メッキによりSi膜232上にCu又はNi膜231を形成する。次に、図15Fに示すように、等方性エッチングによりSiO2犠牲膜212を除去して、片持ち梁構造のバイメタル変位手段253を形成する。この例では、四角形のダイアフラム233に合わせて、4つの三角形を組み合わせた片持ち梁状の変位手段253を構成しているが、ダイアフラム233やチャンバー45を6角形、8角形、円形等にすることによって、6個、8個又はそれ以上の変位手段253を設ける構成としてもよい。いずれの場合も三角形の頂点部分でダイアフラムを押圧して低温側に変位させる。
【0055】
図16Aは、変位手段253を形成した第1基板260と、高温側部材20となる第2基板50との積層加工の工程を示す図である。第2基板50の作製方法は実施例1と同様であり、説明を省略する。第2基板50の接合側の面にエポキシ接着層52をディスペンス形成して、第1基板260上に接合する。
【0056】
図16B及び図16Cは、第2基板を積層した第1基板に、低温側部材40となる第3基板41を積層する工程を示す図である。図16Bに示すように、接合に先立ち、第2基板を積層したシリコン基板211の裏面を、ダイアフラム233と、インバルブ235及びアウトバルブ237に適した所望の厚さ、たとえば100μmの膜厚になるまで研削・研磨する。これにより、高温側部材20、中間層230、及びハウジング24を含む積層体が出来上がる。他方で、実施例1と同様にして第3基板41上の所定の箇所で永久レジスト51を加工した低温側部材40を準備しておく。永久レジスト51にエポキシ接着材56を塗布しておく。
【0057】
図16Cに示すように、エポキシ接着材を介して、第3基板を第1基板と第2基板の積層体に接合することによって、高温側部材20、中間層230、及び低温側部材40を有するマイクロポンプ200が完成する。中間層230は、ダイアフラム233、インバルブ235、アウトバルブ237、バイメタルの変位手段253を含み、中間層230と低温側部材40の間にチャンバー45が形成される。インレット側の開口34とアウトレット側の開口36に循環系を構成する配管(不図示)を接続し、流体を封入することでマイクロポンプ200が完成する。
【0058】
実施例2の構造では、ダイアフラム233の面積は20mm×20mmであり、変位手段253を構成するバイメタルの熱容量は0.1uJ/K程度である。接触熱抵抗を含めた総熱抵抗が1K・Wであるとすると、温度変化の時定数はその積より、0.1us(マイクロ秒)となり、瞬時に吸熱あるいは放熱を完了することが可能である。実際の動作は流体の粘性抵抗によって制約を受けるが、仮に100Hzの動作を行うと、10ml/sの流量が得られることになり、数百Wの熱量を輸送できることが期待される。実際の使用形態では中間層230にある程度の熱容量を持たせるか、図示しないバイパス流路を形成して高温側の冷却を行うと、さらに効率的な冷却が可能となる。
【0059】
以上説明したように、本発明のマイクロポンプは、バイメタ構造からなる変位手段の熱変形を動力とする。バイメタル構造の変位手段は、実施例1ではダイアフラム自体を構成するバイメタル、実施例2ではダイアフラムを押圧変形する変位手段である。中間層のバイメタルが高温側と接触することにより吸熱変形してダイアフラムを低温側に変位させる。低温側との接触により放熱することによって、ダイアフラム(及び変位手段)は、もとの位置に復帰する。このような構成により、外部からの電気エネルギーの供給や電圧印加なしに、マイクロポンプを自律的に動作させることが可能になる。マイクロポンプを冷却システム内蔵型の半導体装置の補助ポンプとして用いる場合は、強い冷却が必要になると自動的に冷却効率が上がる効率的な冷却構造を提供することができる。
【0060】
なお、上述したようにダイアフラムやチャンバーの形状は矩形に限定されず、多角形、円形でもよい。また、変位手段となるバイメタルの作製は、シリコン基板上への金属膜の形成に限定されず、線膨張係数の異なる2種類の金属を張り合わせたものを用いてもよい。また、マイクロポンプの高温側部材、中間層、及び低温側部材を半導体プロセスで形成するかわりに、鋳型成形など任意の方法で作製してもよい。また、図12に示す半導体装置に組み込まれるマイクロポンプとして、実施例2のマイクロポンプ200を用いてもよい。
【0061】
以上の説明に対して以下の付記を提示する。
(付記1)
熱源側に位置する高温側部材と、
放熱側に位置する低温側部材と、
前記高温側部材と前記低温側部材の間に位置する中間層と、
前記中間層と前記低温側部材の間で流路の一部を形成するチャンバーと、
を備え、
前記中間層は、ダイアフラムと、前記高温側部材からの吸熱及び前記低温側部材からの放熱により前記ダイアフラムを変位させる変位手段(31,32,253)と、を含み、
前記ダイアフラムは、変位前の第1位置と、前記変位により前記低温側部材と接する第2位置との間を変位することにより、前記チャンバー内への流体の取り込みと排出を行なわせることを特徴とするマイクロポンプ。
(付記2)
前記変位手段は、第1の線膨張係数を有して前記高温側部材側に位置する第1部材と、前記第1の線膨張係数よりも小さい第2の線膨張係数を有して前記高温側部材と反対側に位置する第2部材とを含むバイメタルであることを特徴とする付記1に記載のマイクロポンプ。
(付記3)
前記ダイアフラムは、前記第1位置において前記高温側部材と接していることを特徴とする付記2に記載のマイクロポンプ。
(付記4)
前記変位手段は、前記ダイアフラムと前記高温側部材の間に配置される片持ち梁構造のバイメタルであることを特徴とする付記2に記載のマイクロポンプ。
(付記5)
前記片持ち梁構造のバイメタルは、前記高温側部材からの熱により湾曲して、前記ダイアフラムを前記低温側部材と接する前記第2の位置へ変位させることを特徴とする付記4に記載のマイクロポンプ
(付記6)
前記中間層は、前記チャンバーに前記流体を導入する流体導入路に位置する第1バルブと、前記チャンバーから前記流体を排出する流体排出路に位置する第2バルブをさらに含み、前記ダイアフラム、前記第1バルブ、及び前記第2バルブは一体形成されていること
いることを特徴とする付記1〜5のいずれか1に記載のマイクロポンプ。
(付記7)
前記ダイアフラムの前記第1部材と前記第2部材の少なくとも一方は半導体であることを特徴とする付記1〜6のいずれか1に記載のマイクロポンプ。
(付記8)
前記ダイアフラムの前記第1部材と前記第2部材の少なくとも一方は金属であることを特徴とする付記1〜6のいずれか1に記載のマイクロポンプ。
(付記9)
前記ダイアフラムの第1部材は、Al、Cu、Se、Ni又はこれらを含む合金であることを特徴とする付記1〜6のいずれか1に記載のマイクロポンプ。
(付記10)
前記ダイアフラムの第2部材は、Si、Mo、W、Cr、Ni又はこれらを含む合金であることを特徴とする付記1〜6のいずれか1に記載のマイクロポンプ。
(付記11)
前記バイメタルの表面は高分子膜で保護されていることを特徴とする付記1〜10のいずれか1に記載のマイクロポンプ。
(付記12)
前記高温側部材は、前記熱源と接して熱を受け取る受熱部(21)と、前記受熱部で受け取った熱を前記変位手段へ伝えて前記変位手段との接触、非接触を制御する接触調整手段とを含むことを特徴とする付記1に記載のマイクロポンプ。
(付記13)
前記低温側部材は、内部に流体が通るチャネルを有し、前記チャネル壁面から前記流体へ熱交換を行うことを特徴とする付記1に記載のマイクロポンプ。
(付記14)
付記1〜6のいずれか1に記載のマイクロポンプと、
前記マイクロポンプの高温側部材に接触する半導体素子と、
前記マイクロポンプに接続されて前記流体を循環させる循環系と
を含む半導体装置。
(付記15)
前記循環系に接続される主ポンプをさらに含むことを特徴とする付記14に記載の半導体装置。
(付記16)
前記循環系に接続され、前記マイクロポンプの低温側部材と接触するウォータジャケットをさらに含むことを特徴とする付記14又は15に記載の半導体装置。
【産業上の利用可能性】
【0062】
任意の熱源を有する微細構造の循環チャネルに適用することができる。たとえば、微細な電子部品のための冷却システムに適用可能である。また、冷却システムを組み込んだ半導体装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
10、110A、110B、110C、200 マイクロポンプ
20 高温側部材
21 受熱部
22 伝熱部(接触調整手段)
25、61 シリコン基板
30、230 中間層
31、231 バイメタルの第1部材(高CTE部材)
32、232 バイメタルの第2部材(低CTE部材)
33、233 ダイアフラム
34 流体導入路
35、235 インバルブ
36 流体排出路
37、237 アウトバルブ
38 保持部
40 低温側部材
41 シリコン基板(第3基板)
50 第2基板
51 断熱材(永久レジスト)
52 断熱材(エポキシ接着剤)
60 第1基板
253 変位手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源側に位置する高温側部材と、
放熱側に位置する低温側部材と、
前記高温側部材と前記低温側部材の間に位置する中間層と、
前記中間層と前記低温側部材の間で流路の一部を形成するチャンバーと、
を備え、
前記中間層は、ダイアフラムと、前記高温側部材からの吸熱及び前記低温側部材からの放熱により前記ダイアフラムを変位させる変位手段と、を含み、
前記ダイアフラムは、変位前の第1位置と、前記変位により前記低温側部材と接する第2位置との間を変位することにより、前記チャンバー内への流体の取り込みと排出を行なわせることを特徴とするマイクロポンプ。
【請求項2】
前記変位手段は、第1の線膨張係数を有して前記高温側部材側に位置する第1部材と、前記第1の線膨張係数よりも小さい第2の線膨張係数を有して前記高温側部材と反対側に位置する第2部材とを含むバイメタルであることを特徴とする請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項3】
前記ダイアフラムは、前記第1位置において前記高温側部材と接していることを特徴とする請求項2に記載のマイクロポンプ。
【請求項4】
前記変位手段は、前記ダイアフラムと前記高温側部材の間に配置される片持ち梁構造のバイメタルであることを特徴とする請求項2に記載のマイクロポンプ。
【請求項5】
前記中間層は、前記チャンバーに前記流体を導入する流体導入路に位置する第1バルブと、前記チャンバーから前記流体を排出する流体排出路に位置する第2バルブをさらに含み、前記ダイアフラム、前記第1バルブ、及び前記第2バルブは一体形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のマイクロポンプ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のマイクロポンプと、
前記マイクロポンプの高温側部材に接触する半導体素子と、
前記マイクロポンプに接続されて前記流体を循環させる循環系と
を含む半導体装置。
【請求項7】
前記循環系に接続される主ポンプをさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図15E】
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【図15F】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図8A】
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【図8B】
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【公開番号】特開2012−102710(P2012−102710A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254252(P2010−254252)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】