説明

マイクロメカニック式のキャップ構造

【課題】良好な真空封入を維持しかつできるだけ変らない外側のチップ寸法を維持して、ボンディングされた表面マイクロメカニック構成部分の安定性を高める。
【解決手段】マイクロメカニック式のキャップ構造はサブストレート10を有し、サブストレート10には空洞Kが設けられている。空洞Kは方形の基面と互いに向き合った平行な側壁区分から成る2つの側壁区分対とを有する。空洞Kの基面に相応するダイヤフラムの局部的な補強は安定化ビームSK1,SK2を有する安定化クロスによって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロメカニック式のキャップ構造に関する。この場合、キャップ構造はサブストレート、特にウェハの形をしたサブストレートとそれに設けられた空洞を有している。この場合、空洞は1つの基面と互いに向き合った平行な側壁区分から成る2つの側壁区分対とを有している。
【背景技術】
【0002】
原理的には任意のマイクロメカニック式の構成部材に使用可能であるにも拘らず、本発明及び本発明の根底を成す問題は、公知の表面マイクロメカニック式の回転値センサに関連して詳細に説明することにする。
【0003】
図4は公知のマイクロメカニック式の回転値センサの概略的な横断面図である。この回転値センサは通常のマイクロメカニック式のキャップ構造を有している。
【0004】
図4においては符号1はSi−サブストレート、符号2は下側の酸化膜、符号3は埋設された、ポリシリコンから成る導体路、符号4は上側の酸化膜、符号6はエピタキシーポリシリコンから成るボンドフレーム、符号7はアルミニウムから成るボンドパッド、符号9は封止ガラスもしくはシールガラス、符号10は空洞Kを有するSi−保護キャップウェハ、符号100はSi−ウェハ、符号20はスウィンガ、符号30は櫛構造、符号VSは前面側、符号RSは背面側である。
【0005】
通常の技術では特に前面側VSにおいては厚さ10μmのポリシリコンの層からトレンチ(ピット形式)とその下にある犠牲層(酸化膜2,4)の除去とによってマイクロメカニック式の構造が露出させられる。裏面側ではSi−ウェハ1内への深いエッチングが行なわれる。
【0006】
Si−ウェハ1とSi−保護キャップウェハ10との結合はシール−ガラス−ボンディングによって高温と高圧とのもとで達成される。この場合シールガラスもしくはガラスろう9はスクリーン印刷法でキャップウェハに施され、次いで炉プロセスで焼結される(プリベークプロセス)。
【0007】
Si−保護キャップウェハ10における空洞Kは異方性のマイクロメカニック式エッチングによって、例えばKOH−ウェットエッチングで製造される。したがって空洞Kは(111)側面と(100)エッチング底とを有する逆截頭ピラミッド形を提する。
【0008】
表面マイクロメカニック−回転値センサであって、質が高く、ガスで取囲まれた媒体による機械的な振動構造の減衰のわずかなものにとっては、わずかな絶対圧、すなわちバキュームカプセル化が必要である。
【0009】
5mbarよりも下のガスの閉込めが可能であるシールガラスプロセスは開発された。これはなかんづく空洞の最大可能な容積によって実現された。
【0010】
さらに空洞内縁からできるだけ離してシールガラスを位置決めすることが有利である。これは外方へずらされたスクリーン印刷によって実現可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
もちろん、外方へずらされたスクリーン印刷に基づく幅の狭まいシールガラス結合並びに空洞容積が大きい場合の薄いキャップダイヤフラムは、モルドパッケージのためにキャップされたチップの安定性を減少させる。何故ならばリードフレームに接着する場合にかつ次いで冷却する場合にはモルド材料を押込む場合の高いハイドロスタティックな圧力によって高い応力が発生するからである。
【0012】
本発明の課題は良好な真空封入を維持しかつできるだけ変らない外側のチップ寸法を維持して、ボンディングされた表面マイクロメカニック構成部分の安定性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本願発明に係るマイクロメカニック式のキャップ構造は、Si−保護キャップウエハ(10)の形をしたサブストレートを有し、該サブストレートに異方性のマイクロメカニック式エッチングによって形成された空洞(K)が設けられているマイクロメカニック式のキャップ構造であって、空洞(K)が1つの基面と互いに向き合った平行な側壁区分から成る2つの側壁区分対(A1,A2;A3,A4)とを有するマイクロメカニック式のキャップ構造において、前記空洞(K)が、少なくとも1つの、前記基面を補強する壁区分である安定化壁区分(SK1,SK2;S1−S4)を有し、該安定化壁区分が2つの側壁区分を互いに結合していることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るマイクロメカニック式のキャップ構造においては、前記空洞(K)が方形の形を有している。
【0015】
本発明に係るマイクロメカニック式のキャップ構造においては、前記空洞(K)が側壁区分(A1−A4)に対し平行に基面の上を延びる2つの交差する安定化壁区分(SK1,SK2)を有している。
【0016】
本発明に係るマイクロメカニック式のキャップ構造においては、前記安定化壁区分(SK1,SK2)が前記空洞(K)の空洞輪郭に対し低位に配置されている。
【0017】
本発明に係るマイクロメカニック式のキャップ構造においては、空洞(K)が、空洞輪郭に沿って、互いに向き合った平行な安定化壁区分(S1,S3;S2,S4)を2組有しており、安定化壁区分(S1,S3;S2,S4)が空洞(K)の隣り合う側壁区分(A1−A4)を、空洞(K)が8角形の形を有するように互いに結合している。
【0018】
本発明に係るマイクロメカニック式のキャップ構造においては、前記8角形の内角が135°である。
【0019】
本発明に係るマイクロメカニック式のキャップ構造においては、基面が(100)平面であって、側壁区分(A1−A4)が(111)平面である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の課題は、請求項に記載した特徴を有するマイクロメカニック式のキャップ構造によって解決された。
【0021】
本発明は空洞のための著しい容積の制限なしでキャップダイヤフラムを補強するために役立ちかつ選択的又は付加的に外側のチップ寸法を拡大することなくチップコーナにおける結合面の拡大にも役立つ。これによりプラスチックモルドケーシング内にパッケージするために前述の如きキャップを保持するセンサチップの安定性が高められる。
【0022】
本発明の根底を成す思想は空洞が2つの側壁区分を互いに結合する少なくとも1つの安定化壁区分を有していることである。単数又は複数の安定化壁区分はキャップの輪郭に沿って位置するか又は基面の上を延びることができ、したがって空洞が複数の部分空洞に分割されることができる。
【0023】
従属請求項には本発明の対象の有利な構成と改良とが開示されている。
【0024】
有利な構成によれば空洞は方形の形を有している。このような構造は実現が容易である。
【0025】
別の有利な構成によれば空洞は2つの交差する安定化壁区分を有し、これらの安定化壁区分は側壁区分に対し平行に基面の上を延びている。このような支持クロスは安定化に関してきわめて有効でかつ容易に製作可能である。
【0026】
本発明による別の有利な構成によれば、単数又は複数の安定化壁区分は空洞の輪郭に対し下げられている。これには空洞にて著しいスペース損失が発生しないという利点がある。
【0027】
別の有利な構成によれば、空洞は空洞の輪郭に沿って互いに向き合った2つの平行な安定化壁区分を有している。この安定化壁区分は隣り合った側壁区分を互いに結合し、空洞が8角形の形を有するようにする。この場合には内角は有利には135°である。
【0028】
別の有利な構成ではサブストレートはSi−サブストレートであって、基面は(100)平面であって、側壁区分は(111)平面である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明によるマイクロメカニック式のキャップ構造の第1実施例の概略的な横断面図。
【図2】本発明によるマイクロメカニック式のキャップ構造の第2実施例の概略的な横断面図。
【図3】本発明によるマイクロメカニック式のキャップ構造の第3実施例の概略的な横断面図。
【図4】通常のマイクロメカニック式のキャップ構造を有する公知の回転値センサの概略的な横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1から図3までにおいては図4と同じ関係符号は同じ構成部分又は機能的に同じ構成部分を示している。
【0031】
図1には本発明によるマイクロメカニック式のキャップ構造の第1実施例が示されている。
【0032】
マイクロメカニック式のキャップ構造はサブストレート10を有し、該サブストレート10には空洞Kが設けられている。空洞Kは方形の基面と互いに向き合った平行な側壁区分から成る2つの側壁区分対とを有する。サブストレートはSi−サブストレートであって、基面は(100)平面でかつ側壁区分A1−A4は(111)平面である。
【0033】
図1の実施例では空洞Kの基面に相応するダイヤフラムの局部的な補強は安定化ビームSK1,SK2を有する安定化クロスによって達成される。
【0034】
この安定化クロスはダイヤフラム安定性、すなわち空洞Kの基面の安定性及びキャップ全体の安定性を、空洞Kの容積、ひいては可能な真空閉込めを著しく制限することなく高める。
【0035】
ダイヤフラム補強、すなわち安定化ビームSK1,SK2は公知のマイクロメカニック式のキャップエッチングプロセス、2段階のKOHエッチングプロセスで製作することができる。
【0036】
図1に示したように安定化クロスSK1,SK2は空洞の外輪郭に対し低くされている。これは、最後のKOHステップの前に例えばSiOから成るハードマスクの形をした不動態が安定化クロスSK1,SK2の上で除去されることで達成される。次いで安定化クロスSK1,SK2は次のKOHエッチングプロセスで薄くされ、同時により細くエッチングされる。すなわち元来の(111)側面は扁平化され、図1に示したように別の結晶学的な面が出現する。この異方性のエッチングは良く知られており、マスクレイアウトであらかじめ規定することができる。結果として得られる補強クロスSK1,SK2は図1に看取ることができる。
【0037】
しかしながら、一緒になってこのようなキャップ構造の空洞容積を形成する2つもしくは4つの部分空洞のエッチングによる補強ウェブ又は補強クロスも考えられる。この場合には表面マイクロメカニック構造に対するウェブもしくはクロスの間隔はガラスろうの厚さだけによって決定される。換言すればこのような実施例においては補強クロスもしくは補強ウェブは空洞輪郭に対して沈降させられない。
【0038】
図2には本発明によるマイクロメカニック式のキャップ構造の第2実施例が示されている。
【0039】
図2の実施例では空洞形は8角形により外側の輪郭に近づけられ、もはや方形ではない。このような幾何学的な形状は方形ではない表面マイクロメカニック構造、例えば回転スインガにとって有効である。この構造ではコーナにおける結合面は、垂直な(010)平面である安定化壁区分S1−S4が間に設けられることで拡大される。すなわち、シュミレーションが示すようにまさにそこでシールガラスの応力が集中する。したがって外側のチップ寸法を変化させることなくシールガラス結合のはきりした安定化が期待できる。
【0040】
このような構造は同様に通常のキャップエッチングプロセスで実現できる。空洞Kの4つの側面は通常のように公知の(111)側面によって形成される。他の4つの壁、つまり安定化壁S1−S4は垂直な(010)平面によって形成される。(010)平面のエッチング値は良く知られているので、すなわち空洞基面のエッチング値に相当しているので、この構造はマスクレイアウトで図2において線MVによって示したように良好にあらかじめ規定することができる。
【0041】
図3には本発明によるマイクロメカニック式のキャップ構造の第3実施例が概略的な横断面図で示されている。
【0042】
図3の第3実施例は第1実施例と第2実施例との組合わせである。つまり、支持クロスビームSK1,SK2を有する支持クロスに加えて4つの安定化壁S1−S4が設けられている。これにより当該構造には最適な安定性が与えられる。
【0043】
本発明は先きに有利な実施例について記載したが本発明はこれに限定されることはなく、多様な形式で変更可能である。
【0044】
特に本発明の保護層はマイクロメカニック式の回転値センサにだけ使用され得るものではなく任意のマイクロメカニック式の構成部材に使用することができる。個々の層のための材料の選択は記述した材料に限定されるものではない。特に本発明はシリコン構成部材のためだけでなく、他のマイクロメカニック式材料から成る構成部材にも使用可能である。
【0045】
もちろん安定化は図示の形に限定されるものではなく、任意の形式で安定化ウェブによって達成可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 Siサブストレート
2 酸化膜
3 導体路
4 酸化膜
6 ボンドフレーム
7 ボンドパッド
9 封止ガラス
10 Si−保護キャップウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si−保護キャップウエハ(10)の形をしたサブストレートを有し、該サブストレートに異方性のマイクロメカニック式エッチングによって形成された空洞(K)が設けられているマイクロメカニック式のキャップ構造であって、空洞(K)が1つの基面と互いに向き合った平行な側壁区分から成る2つの側壁区分対(A1,A2;A3,A4)とを有するマイクロメカニック式のキャップ構造において、前記空洞(K)が、少なくとも1つの、前記基面を補強する壁区分である安定化壁区分(SK1,SK2;S1−S4)を有し、該安定化壁区分が2つの側壁区分を互いに結合していることを特徴とする、マイクロメカニック式のキャップ構造。
【請求項2】
前記空洞(K)が方形の形を有している、請求項1記載のマイクロメカニック式のキャップ構造。
【請求項3】
前記空洞(K)が側壁区分(A1−A4)に対し平行に基面の上を延びる2つの交差する安定化壁区分(SK1,SK2)を有している、請求項1又は2記載のマイクロメカニック式のキャップ構造。
【請求項4】
前記安定化壁区分(SK1,SK2)が前記空洞(K)の空洞輪郭に対し低位に配置されている、請求項3記載のマイクロメカニック式のキャップ構造。
【請求項5】
空洞(K)が、空洞輪郭に沿って、互いに向き合った平行な安定化壁区分(S1,S3;S2,S4)を2組有しており、安定化壁区分(S1,S3;S2,S4)が空洞(K)の隣り合う側壁区分(A1−A4)を、空洞(K)が8角形の形を有するように互いに結合している、請求項1記載のマイクロメカニック式のキャップ構造。
【請求項6】
前記8角形の内角が135°である、請求項5記載のマイクロメカニック式のキャップ構造。
【請求項7】
基面が(100)平面であって、側壁区分(A1−A4)が(111)平面である、請求項1記載のマイクロメカニック式のキャップ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−91317(P2012−91317A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237797(P2011−237797)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【分割の表示】特願2001−27356(P2001−27356)の分割
【原出願日】平成13年2月2日(2001.2.2)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】