説明

マイクロ流体デバイス及びその製造方法、並びにこのマイクロ流体デバイスを備えた化学分析装置

【課題】 歪み及び破損を発生させずに基板同士を接合でき、赤外分光法により流路を流れる微小流体を分析することができるマイクロ流体デバイス及びその製造方法、並びにこのマイクロ流体デバイスを備えた化学分析装置を提供する。
【解決手段】 石英基板1の一方の面に流路3を形成し、この流路3の表面に赤外線反射膜4を形成する。また、基板1の流路3の各終端部に整合する位置に夫々貫通孔5が形成されたサファイヤ基板2の一方の面上にシリコン酸化膜6を形成する。そして、基板1の流路3が形成されている面と、基板2のシリコン酸化膜6が形成されている面とを重ね合わせ、フッ酸により基板1と基板2のシリコン酸化膜6とを溶解接合することにより、基板1と基板2とを貼り合わせてマイクロ流体デバイスとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の微細加工技術によって微細な流路が形成されたマイクロ流体デバイス及びその製造方法、並びにこのマイクロ流体デバイスを備えた化学分析装置に関し、特に、医療用検査デバイス及び環境検査デバイス等の微小容積の液体及び気体等の流体を扱うマイクロ流体デバイス及びその製造方法、並びにこのマイクロ流体デバイスを備えた化学分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、半導体の微細加工技術を利用して、シリコン及びガラス等のセラミックス基板、樹脂基板又は金属基板上に微細な流路を形成したマイクロ流体デバイス並びにμ−TAS(Micro Total Analysis System:マイクロ化学分析システム)が開発されている。マイクロ流体デバイスが扱う流体は体積が微小でレイノルズ数が小さいため、層流になりやく、安定した液界面が形成される。また、流体が層流を形成すると、2つの流体間の反応は自己拡散のみによって起こるため、反応の制御が容易になる。更に、層流を利用すれば流体の分離も容易になる。
【0003】
一般に、層流を形成するためには、流路の幅が約500μm以下であればよいと言われている。このように、マイクロ流体デバイスにおいては、拡散速度に対して流路の容積が小さいため、拡散が迅速に起こり、効率的に反応させることができる。また、流体の体積に対して内壁の面積が大きく、流体と流路の内壁との接触面積が大きいため、内壁が流体に及ぼす影響が大きくなり、この影響を効率的に利用することができる。このため、例えば、外部から流体の温度を容易に制御することができるため、流体の精密な温度制御が可能になると共に、流体の温度を急激に変化させることも可能になる。また、流体を化学反応させる場合、内壁を触媒として利用すれば、反応効率が飛躍的に向上する。
【0004】
マイクロ流体デバイスは、総じてエネルギーの利用効率が高いため、反応効率が高く、反応生成物の収率が極めて高い。また、実験室レベルでは、試薬及び廃液の量が少なくてすむことから、実験の低コスト化及び環境への負荷低減を図ることができる。更に、1つのマイクロ流体デバイスにおける流路の数を増やしたり、又は装置に搭載するマイクロ流体デバイスの数を増やしたりすることによって、少量生産からマスプロダクションへの移行が容易である。更にまた、マスプロダクションを実施する場合においても、1つの流路を流れる流体の量が微量であるため、安全性が高い。
【0005】
上述したように、マイクロ流体デバイスは、微小流体を扱えることから、環境・化学分析及び医療分野への応用展開がなされている。例えば、医療診断においては、診断に必要な献体が少量ですむため、患者への負担が少ない所謂低侵襲医療が実現できる。また、環境・化学分析分野においても、少量の試料を好感度にセンシングすることが可能になる。
【0006】
このような特徴から、近時、マイクロ流体デバイスへの期待が高まり、あらゆる分野において研究開発が盛んになっており、内部を流れる微小流体のモニタリング及び分析手法も開発されている。従来、マイクロ流体デバイス内を流れる微小流体を分析する方法として、電気的なセンシング及び紫外光又は可視光等を使用した光学的な分析等が検討されている(例えば、特許文献1参照)。図9は特許文献1に記載の化学分析装置の流路周辺部分を示す断面図である。図9に示すように、特許文献1に記載の化学分析装置は、一方の面に微細流路104に沿って伸びる1対の凸部102a及び102bが形成された平面部材101上に、微細流路104を覆うようにシリコン基板からなる封止部材103が配置されている。また、微細流路104の底面には反射膜107が形成されている。この化学分析装置には、封止部材103上にLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)等の発光部105が配置されると共に、PD(Photo Diode:フォトダイオード)等の受光部106が配置されている。そして、発光部105から出射され、反射膜107で反射した光108を、受光部106で検出することにより、微細流路104内を流れる微小流体の流速計測及び分光計測を行っている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−279537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の従来の技術には以下に示す問題点がある。従来のマイクロ流体デバイスにおいては、一般にガラス基板又は石英基板が使用されているが、石英は赤外線透過性が最も高いOH基を含まないものでも波長が2.5μm以上の近赤外線よりも長波長の光は透過せず、またガラスは近赤外線よりも短い1乃至1.5μmの光さえも吸収してしまうため、有機材料及び無機材料の分析手法としてマクロ分析では一般的に利用されている赤外分光法を適用することができないという問題点がある。また、サファイヤ、Si、ZnSe、CaF、GaAsSe、BaF、CdTe、Ge、ダイヤモンド、AgCl及びZnS等の赤外線を透過する材料からなる基板を使用することも検討されているが、これらの材料からなる基板は、その表面に微細な流路を形成することが困難であるという問題点がある。
【0009】
そこで、図9に記載の化学分析装置のように、一方の基板には加工性が優れた石英基板を使用し、他方の基板はSi等の赤外線が透過する材料により形成したものも提案されているが、赤外線を透過する材料の多くは熱及び水分に弱く、また石英との熱膨張率の差が大きいため、基板同士を貼り合わせる際に加熱すると、基板に破損及び歪みが生じるという問題点がある。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、歪み及び破損を発生させずに基板同士を接合でき、赤外分光法により流路を流れる微小流体を分析することができるマイクロ流体デバイス及びその製造方法、並びにこのマイクロ流体デバイスを備えた化学分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願第1発明に係るマイクロ流体デバイスは、石英又はガラスからなり一方の表面に流路が形成された第1の基板と、前記流路表面の少なくとも一部に形成された赤外線反射膜と、前記第1の基板における前記流路が形成された面に貼り合わされ赤外線を透過する第2の基板と、前記第2の基板の貼り合わせ面の少なくとも一部に形成されたシリコン酸化膜と、を有し、フッ酸により前記第1の基板と前記第2の基板上の前記シリコン酸化膜とを溶解接合することにより前記第1の基板と前記第2の基板とが貼り合わされていることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、第2の基板の貼り合わせ面の少なくとも一部にシリコン酸化膜が形成され、フッ酸によりこのシリコン酸化膜と第1の基板とを溶解接合することにより第1の基板と第2の基板とが貼り合わされているため、第1及び第2の基板を常温で貼り合わせることができる。その結果、基板に歪み及び破損が発生することなく、歩留りよく、これらを貼り合わせることができる。また、第2の基板が赤外線を透過するため、赤外分光法により流路を流れる微小流体を分析することができる。これにより、流路内において、液体又は気体状の有機材料及び無機材料等からなる流体の反応状態、試料の有無及び流れ等を計測することが可能になる。更に、前記流路の表面の少なくとも一部に赤外線反射膜が形成されているため、この赤外線反射膜で反射した赤外線を検出するように発光素子及び受光素子を配置することにより、赤外線の光路長を長くすることができる。その結果、分析感度が向上する。
【0013】
このマイクロ流体デバイスにおける前記第2の基板は、サファイヤ、Si、ZnSe、Ge及びダイヤモンドからなる群から選択された1種の材料により形成することができる。
【0014】
本願第2発明に係るマイクロ流体デバイスは、石英又はガラスからなり一方の表面に流路が形成された第1の基板と、前記流路表面の少なくとも一部に形成された赤外線反射膜と、前記第1の基板における前記流路が形成された面に貼り合わされ赤外線を透過する第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との貼り合わせ部に設けられフォトレジスト、ポリジメチルシロキサン、エポキシ樹脂及び紫外線硬化樹脂からなる群から選択された1種の材料からなる接着層と、を有し、前記接着層を介して前記第1の基板と前記第2の基板とが貼り合わされていることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、第1の基板と第2の基板との貼り合わせ部に接着層が設けられており、この接着層を介して第1の基板と第2の基板とが貼り合わされているため、熱膨張率の影響を小さくすることができ、第1の基板の熱膨張率と第2の基板の熱膨張率との差が大きい場合でも、破損及び歪みを発生させずに、これらを容易に貼り合わせることができる。また、第2の基板が赤外線を透過するため、赤外分光法により流路を流れる微小流体を分析することができる。その結果、流路内において、液体又は気体状の有機材料及び無機材料等からなる流体の反応状態、試料の有無及び流れ等を計測することが可能になる。更に、流路の表面の少なくとも一部に赤外線反射膜が形成されているため、この赤外線反射膜で反射した赤外線を検出するように発光素子及び受光素子を配置することにより、赤外線の光路長を長くすることができ、分析感度が向上する。
【0016】
このマイクロ流体デバイスにおける前記第2の基板は、サファイヤ、Si、ZnSe、CaF、GaAsSe、BaF、CdTe、Ge、ダイヤモンド、AgCl及びZnSからなる群から選択された1種の材料により形成することができる。
【0017】
また、これらのマイクロ流体デバイスにおける前記赤外線反射膜は、例えば白金膜である。これにより、流体により赤外線反射膜が腐食し、感度が低下することを防止できる。
【0018】
本願第3発明に係るマイクロ流体デバイスの製造方法は、石英又はガラスからなる第1の基板の一方の面上に、流路を形成する予定の領域が開口部となっているフォトレジストパターンを形成し、このフォトレジストパターンをマスクにして前記第1の基板をエッチングすることにより、前記第1の基板の表面に流路を形成する工程と、前記フォトレジストパターンをマスクにして前記流路表面の少なくとも一部に赤外線反射膜を形成する工程と、赤外線を透過する材料からなる第2の基板における前記第1の基板との貼り合わせ面の少なくとも一部にシリコン酸化膜を形成する工程と、フッ酸により前記第1の基板における前記流路が形成された面に前記第2の基板の前記シリコン酸化膜を溶解接合することにより、前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせる工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
本発明においては、第1の基板と第2の基板とを貼り合わせる際に、第2の基板における貼り合わせ面の少なくとも一部にシリコン酸化膜を形成した後、フッ酸により第1の基板における流路が形成された面に第2の基板のシリコン酸化膜を溶解接合しているため、溶着法よりも低い温度で、且つ容易に第1の基板と第2の基板とを貼り合わせることができる。その結果、貼り合わせ時における基板の破損及び歪みを防止することができる。
【0020】
本願第4発明に係るマイクロ流体デバイスの製造方法は、石英又はガラスからなる第1の基板の一方の面上に、流路を形成する予定の領域が開口部となっているフォトレジストパターンを形成し、このフォトレジストパターンをマスクにして前記第1の基板をエッチングすることにより、前記第1の基板の表面に流路を形成する工程と、前記フォトレジストパターンをマスクにして前記流路表面の少なくとも一部に赤外線反射膜を形成する工程と、赤外線を透過する材料からなる第2の基板における前記第1の基板との貼り合わせ面の少なくとも一部にフォトレジスト、ポリジメチルシロキサン、エポキシ樹脂及び紫外線硬化樹脂からなる群から選択された1種の材料からなる接着層を形成する工程と、前記第1の基板における前記流路が形成された面と前記第2の基板の前記接着層が形成されている面とが対向するように前記第1の基板と前記第2の基板とを重ね合わせ、前記接着層を介して前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせる工程と、を有することを特徴とする。
【0021】
本発明においては、接着層を介して第1の基板と第2の基板とを貼り合わせているため、溶着法に比べて低い温度で、且つ容易に第1の基板と第2の基板とを貼り合わせることができる。これにより、貼り合わせ時における基板の破損及び歪みを防止することができる。
【0022】
なお、前記接着層がフォトレジストにより形成されている場合は、前記第1の基板及び前記第2の基板を加圧しながら加熱することにより、前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせることができる。また、前記接着層がポリジメチルシロキサンにより形成されている場合は、前記接着層に酸素プラズマを照射した後、前記第1の基板及び前記第2の基板を重ね合わせ、更にこれらを加圧することにより、前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせることができる。更に、前記接着層がエポキシ樹脂により形成されている場合は、前記第1の基板及び前記第2の基板を加圧しながら前記接着層を硬化させることにより、前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせることができる。更にまた、
前記接着層が紫外線硬化樹脂により形成されている場合は、前記接着層に紫外線を照射することにより、前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせることができる。
【0023】
前述のマイクロ流体デバイスの製造方法においては、前記赤外線反射膜として、気相蒸着法により白金膜を形成してもよい。
【0024】
本願第5発明に係る化学分析装置は、前述のマイクロ流体デバイスと、前記マイクロ流体デバイスの前記第2の基板上に配置され前記マイクロ流体デバイスの流路に向かって赤外線を出射する発光素子と、前記マイクロ流体デバイスの前記第2の基板上に配置され前記発光素子から出射され前記赤外線反射膜で反射した赤外線を検出する受光素子と、を有することを特徴とする。
【0025】
本発明においては、赤外分光法を適用することができるため、マイクロ流体デバイス中を流れる流体を、容易に且つ感度よく分析することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、赤外光を透過する材料により一方の基板を形成しているため、赤外分光法により流路を流れる流体の分析を行うことができると共に、破損及び歪みが発生しない方法で基板を貼り合わせることができるため、赤外線を透過する基板を使用しても、基板同士を歩留りよく貼り合わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明者等は前述の問題点を解決するために、鋭意実験検討を行った結果、以下の知見を得た。赤外線を透過する基板材料としては、例えば、サファイヤ、Si、ZnSe、CaF、GaAsSe、BaF、CdTe、Ge、ダイヤモンド、AgCl及びZnS等が挙げられるが、これらの材料からなる基板上に微細な流路を形成することは困難である。そこで、本発明者等は、従来使用されている石英基板及びガラス基板に流路を形成し、その上に前述の赤外線を透過する材料からなる基板を貼り合わせることにした。しかしながら、陽極接合及び熱溶着等の従来の接合方法は、いずれも基板に数百℃の熱を加えるため、熱膨張率が異なる基板同士を貼り合わせることはできない。例えば、Si、Ge及びダイヤモンドと、石英及びガラスとは、熱膨張率の差が大きいため、これらを陽極接合及び熱溶着により接合すると破損してしまう。また、Si、Ge及びダイヤモンド以外の材料は、熱に弱いため陽極接合及び熱溶着では接合することができず、また直接接合する方法もない。このため、本発明者等は更に検討を行い、少なくとも一方の基板の接合面上に、シリコン酸化膜、フォトレジスト又はポリジメチルシロキサンからなる接着層を形成することにより、熱膨張率の影響が少ない温度条件下で、2枚の基板を貼り合わせることが可能になることを見出した。
【0028】
以下、本発明の実施形態に係るマイクロ流体デバイスについて、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は本実施形態のマイクロ流体デバイスを示す斜視図であり、図2(a)はそのA−A線による断面図であり、図2(b)はB−B線による断面図である。図1、図2(a)及び図2(b)に示すように、本実施形態のマイクロ流体デバイスは、例えば石英からなる基板1と、例えばサファイヤ等の赤外線を透過する材料からなる基板2とが、シリコン酸化膜6を介して貼り合わされて形成されている。これら基板1及び基板2の縦(長辺)の長さは、例えば76mmであり、横(短辺)の長さは、例えば26mmであり、厚さは例えば1.5mmである。また、シリコン酸化膜6の厚さは、例えば500Å程度である。
【0029】
基板1における基板2に対向する側の表面には、流体が流れる流路3が形成されている。この流路3の流体の流通方向に直交する断面における形状は、角部が丸みを帯びた矩形であり、その表面には白金からなる赤外線反射膜4が形成されている。この流路3の幅は例えば150μm程度であり、深さは例えば50μm程度であり、赤外線反射膜4の厚さは例えば200Å程度である。また、流路3は、1本の流路が2本に分岐するように、即ち平面視でY字状になっている。
【0030】
一方、基板2における流路3の各終端部に整合する位置には、夫々開口部5が形成されている。この開口部5は流体を流路3に入出する入出口であり、その直径は例えば1mmである。
【0031】
本実施形態のマイクロ流体デバイスは、赤外線を透過するサファイヤにより基板2を形成し、基板2内における赤外線の減衰を最小限に抑制しているため、流路3を流れる微小流体の分析に赤外分光法を適用することができる。また、基板1に形成されている流路3の表面に赤外線反射膜4を形成しているため、光路長を長くすることができ、高感度な分析が可能になる。また、基板上に発光素子及び受光素子等の光学素子を配置することにより、これらの光学素子を容易に集積化することができる。
【0032】
次に、本実施形態のマイクロ流体デバイスの製造方法について説明する。図3(a)乃至(e)及び図4(a)乃至図4(a)乃至(c)は本実施形態のマイクロ流体デバイスの製造方法をその工程順に示す断面図であり、図1に示すA−A線による断面図に相当する。先ず、図3(a)に示すように、石英からなる基板1の表面にフォトレジスト11を塗布し、フォトリソグラフィによりフォトレジスト11をパターニングして、流路3を形成する予定の領域に開口部12を形成する。このとき、開口部12の幅は、流路3の幅よりも小さくなるようにする。
【0033】
次に、図3(b)に示すように、例えばフッ化アンモニウムとフッ酸とを7:1の比率で混合した溶液をエッチング溶液とし、フォトレジスト11をマスクにして基板1をエッチングし、基板1の表面に例えば幅が150μm、深さが50μmの溝13を形成する。このとき、溝13上には、フォトレジスト3が庇状に残る。そこで、図3(c)に示すように、溝13形成後の基板1を純水中で超音波洗浄して、フォトレジスト11の溝13上の庇部分を除去し、フォトレジスト11に溝13と同じ幅の開口部14を形成する。
【0034】
次に、図3(d)に示すように、基板1及びフォトレジスト11上に、例えばスパッタ法等により、厚さが200Å程度の白金膜15を形成する。そして、図3(e)に示すように、例えば、アセトン等によりフォトレジスト11を溶解除去することにより、溝13の内壁以外の部分に形成された白金膜をリフトオフし、表面上に白金からなる赤外線反射膜4が形成された微細流路3を形成する。
【0035】
一方、図4(a)に示すように、機械加工により、サファイヤからなる基板2に、例えば直径が1mm程度の開口部5を形成する。この開口部5は、後の工程において石英基板1と基板2とを重ね合わせたときに、基板1の表面に形成された流路3の各終端部に整合する位置に形成する。次に、図4(b)に示すように、開口部5が形成された基板2の一方の面上に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition法:化学蒸着)法等により、厚さが500Å程度のシリコン酸化膜6を形成する。そして、基板1と基板2とを重ね合わせ、例えば1質量%の希フッ酸等により相互に接合する。具体的には、フッ酸によりシリコン酸化膜6及び基板1の表面に存在するSi−OH基同士が水素結合し、更に乾燥させるとこれらが共有結合となって強度が増して、基板1とシリコン酸化膜6とが相互に接合される。このとき、基板2の開口部5が、基板1の流路3の各終端部に整合するようにアライメントする。これにより、本実施形態のマイクロ流体デバイスが作製される。
【0036】
なお、本実施形態のマイクロ流体デバイスにおいては、シリコン酸化膜6の厚さを500Åにしているが、本発明はこれに限定されるものではない。歩留まりの点からはシリコン酸化膜6の厚さは厚い方が好ましいが、一方でシリコン酸化膜は赤外線を吸収するという問題があるため、シリコン酸化膜6は、フッ酸接合が可能で、赤外線の吸収が無視できる程度の厚さにすることが望ましい。このように、本実施形態のマイクロ流体デバイスは、シリコン酸化膜6の厚さを接合に支障がでない最小限の厚さにしているため、流路上にシリコン酸化膜6が形成されていても問題はないが、流路の情報をより精度よく取得するためには、図4(c)に示すように流路上に形成されたシリコン酸化膜を除去することが好ましい。その方法としては、例えば、シリコン酸化膜6上にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィにより流路に整合する部分のみフォトレジストを除去した後、希フッ酸により流路に整合する部分のシリコン酸化膜6をエッチングして、基板1と基板2とを貼り合わせる方法がある。又は、基板1と基板2とを貼り合わせた後、流路に希フッ酸を流し込み、流路部分のシリコン酸化膜をエッチングすることもできる。
【0037】
また、本実施形態のマイクロ流体デバイスにおいては、基板1を石英により形成し、基板2をサファイヤにより形成しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、基板1を石英ガラス以外のガラスにより形成することもできる。その場合、基板1における基板2との貼り合わせ面の流路3以外の部分にシリコン酸化膜を形成することが好ましい。また、基板2は、例えばSi、ZnSe、Ge及びダイヤモンド等により形成することができる。その場合も、サファイヤ基板と同様に、機械加工により所定の位置に開口部5を形成し、CVD法等に基板1との貼り合わせ面にシリコン酸化膜を形成することにより、熱膨張率の差が大きい基板1と基板2とを破損させることなく、容易に貼り合わせることができる。但し、Siは、赤外波長域に数カ所の吸収ピークがあり、また、可視光が透過せず内部を目視できないため、高感度及び視認性が求められる用途においては、基板2は、可視光に対して透明で、赤外線透過性が高く、吸収がない材料により形成することが好ましい。
【0038】
上述の如く、本実施形態のマイクロ流体デバイスにおいては、基板2の表面にシリコン酸化膜6を形成しているため、基板1と基板2とを接合する際に、フッ酸接合という常温での接合方法を適用することができる。その結果、熱膨張率が異なる基板同士を、歪み及び破損を発生させることなく、容易に貼り合わせることができる。
【0039】
次に、本発明の第2の実施形態のマイクロ流体デバイスについて説明する。図5(a)乃至(c)は本実施形態のマイクロ流体デバイスの製造方法をその工程順に示す断面図であり、図1に示すA−A線による断面図に相当する。図5(c)に示すように、本実施形態のマイクロ流体デバイスは、石英からなり表面に流路3が形成された基板1とサファイヤからなり流路3の各終端部と整合する位置に開口部5が形成された基板2とが、フォトレジスト16を介して貼り合わされて形成されている。
【0040】
次に、このマイクロ流体デバイスの製造方法について説明する。先ず、図5(a)に示すように、前述の第1の実施形態のマイクロ流体デバイスと同様の方法で、石英基板1に赤外反射膜4が設けられた流路3を形成する。次に、図5(b)に示すように、機械加工により流路3の各終端部に整合する位置に夫々開口部5が形成されたサファイヤ基板2の表面に、フォトレジスト16を塗布し、例えば85℃で5分間程度加熱した後、フォトリソグラフィによりフォトレジスト16をパターニングして、流路3と整合する領域に開口部22を形成する。そして、図5(c)に示すように、基板1と基板2とを重ね合わせ、例えば0.3MPaの圧力をかけながら、120乃至150℃の温度で10乃至30分間程度加熱することによりフォトレジスト16を軟化させて、基板1と基板2とを貼り合わせる。このとき、基板2の開口部5が、基板1の流路3の各終端部に整合するようにアライメントする。これにより、本実施形態のマイクロ流体デバイスが作製される。なお、本実施形態の上記以外の構成及び効果は、前述の第1の実施形態のマイクロ流体デバイスと同様である。
【0041】
このように、本実施形態のマイクロ流体デバイスにおいては、フォトレジスト16を介して基板1と基板2とを貼り合わせているため、溶着法に比べて低い温度でこれらを貼り合わせることができる。これにより、熱膨張率の影響が小さくなるため、熱膨張率の差が大きい石英基板1とサファイヤ基板2を破損させずに、貼り合わせることができる。また、フッ酸が不要になるため、反射膜及び基板材料を選択する際に、フッ酸に対する腐食性を考慮しなくてよい。更に、流路3に整合する部分にはフォトレジスト16を形成していないため、流路3を流れる流体の分析に赤外分光法を適用した際に、フォトレジスト16による赤外線の減衰を抑制することができる。
【0042】
本実施形態のマイクロ流体デバイスにおいてはフォトレジスト16を介して基板1と基板2とを貼り合わせているが、本発明はこれに限定されるものではなく、基板2上にフォトレジスト、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane:PDMS)、エポキシ樹脂及び紫外線硬化樹脂からなる群から選択された1種の材料からなる接着層を形成し、この接着層を介して基板1と基板2とを貼り合わせることができる。具体的には、PDMSの場合は、サファイヤからなる基板2上にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィによりこのフォトレジストをパターニングして、流路3と整合する領域以外の部分のフォトレジストを除去する。次に、基板2及びフォトレジスト上にPDMSを塗布し、例えば24時間程度自然乾燥させてPDMSを硬化させた後、アセトン等によりフォトレジストを溶解除去することにより、流路3と整合する領域のPDMSをリフトオフする。そして、石英からなる基板1と基板2とを重ね合わせ、例えば0.3MPaで24時間程度加圧する。この方法で接合した場合、可逆的に接合と剥離を行うことができるが、接合強度を上げて非可逆的な接合とする場合には、PDMSを硬化させた後、その表面に例えば10秒程度酸素プラズマを照射する。これにより、PDMD層表面に存在していた有機物が取り除かれて表面にSi−OH基が出てくるため、永久接合が可能になる。
【0043】
また、エポキシ樹脂の場合は、基板2上の流路3と整合する領域以外の部分にエポキシ樹脂を塗布した後、基板1と基板2とを重ね合わせ、例えば0.3MPaで24時間程度加圧しながらエポキシ樹脂を硬化させる。更に、紫外線硬化樹脂の場合は、基板1及び基板2のうち少なくとも一方を紫外線が透過する材料により形成し、基板2上の流路3と整合する領域以外の部分に紫外線硬化樹脂を塗布した後、基板1と基板2とを重ね合わせ、紫外線を透過する基板側から接着層に紫外線を照射することより、紫外線硬化樹脂を硬化させる。
【0044】
なお、本実施形態のマイクロ流体デバイスにおいては、基板1を石英により形成し、基板2をサファイヤにより形成しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、基板1を石英ガラス以外のガラスにより形成することもできる。その場合、基板1における基板2との貼り合わせ面の流路3以外の部分にシリコン酸化膜を形成することが好ましい。また、基板2は、赤外線を透過する材料により形成されていればよく、例えばSi、ZnSe、CaF、GaAsSe、BaF、CdF、Ge、ダイヤモンド、AgCl及びZnS等により形成することができる。その場合も、サファイヤ基板と同様に、機械加工により所定の位置に開口部5を形成し、CVD法等に基板1との貼り合わせ面にシリコン酸化膜を形成することにより、熱膨張率の差が大きい基板1と基板2とを破損させることなく、容易に貼り合わせることができる。但し、Siは、赤外波長域に数カ所の吸収ピークがあり、また、可視光が透過せず内部を目視できないため、高感度及び視認性が求められる用途においては、基板2は、可視光に対して透明で、赤外線透過性が高く、吸収がない材料により形成することが好ましい。
【0045】
また、前述の第1及び第2の実施形態のマイクロ流体デバイスにおいては、赤外線反射膜4として、厚さが200Å程度の白金膜を形成しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、金(Au)等の貴金属又はCr及びNi等のように、フッ酸に対して安定で、赤外線反射率が高く、耐熱性があり、流体によって腐食されにくい金属材料により形成されていればよい。また、例えば、赤外線反射膜4を、アルミニウム等のように赤外線を反射するが、流体により腐食が発生しやすい材料の上に、赤外線を透過し且つ耐食性が優れた無機材料からなるバリア層を形成した2層構造にすることもできる。バリア層を形成する無機材料は透明であることが好ましく、例えば、セラミック、アルミナ、ダイヤモンド、無機系酸化物及び無機系窒化物等を使用することができる。更に、赤外線反射膜4を基板2の流路3と整合する領域上に形成してもよい。なお、赤外線反射膜4の膜厚は、例えば100Å乃至1μmであることが好ましい。膜厚が100Å未満の場合、半透明となり、反射が十分に得られない。また、膜厚が1μmよりも厚いと、リフトオフが難しく、残渣が発生しやすくなる。
【0046】
上述の如く構成されたマイクロ流体デバイスは、医療用検査デバイス及び環境検査用デバイスとして使用することができ、例えば、基板2上に赤外線発光素子及び赤外線受光素子等の光学素子を配置することにより、流路3内を流れる微小流体の化学分析を行うことができる。
【0047】
以下、本発明の第3の実施形態として、前述の第2の実施形態のマイクロ流体デバイスに発光素子及び受光素子を搭載した集積型の化学分析装置について説明する。図6は本発明の第3の実施形態に係る化学分析装置を示す分解斜視図であり、図7はそのB−B線による断面図である。なお、図6においては発光素子及び受光素子を省略している。図6に示すように、本実施形態の化学分析装置は、例えばシリコーン樹脂等からなる直方体のパッキン23に、例えばシリコーン樹脂からなるチューブ27が挿通されている接続部材が、マイクロ流体デバイスの基板2側の両端部に1個ずつ配置されている。この接続部材のチューブ27の一方の端部はマイクロ流体デバイスの開口部5に挿入されており、他方の端部は外部の部材、例えば、この化学分析装置に流体を供給する供給装置のコネクタ(図示せず)、及び化学分析装置を通過した流体を回収する回収装置のコネクタ(図示せず)に接続されている。
【0048】
また、接続部材のパッキン23上には夫々押さえ板24が配置されており、接続部材のチューブ27は夫々、押さえ板24に形成された貫通孔30に挿通されている。更に、マイクロ流体デバイスの基板1側の両端部にはフレーム29が1個ずつ配置されている。そして、ねじ26を、2枚の押さえ板24に形成された貫通孔24に挿通させ、フレーム25に形成されたねじ穴29に螺合させることにより、押さえ板24がフレーム29と共にパッキン23を挟圧している。更に、図7に示すように、基板2における流路3の上方の領域には、赤外線を出射する発光素子20と赤外線を検出する受光素子21とが並べて配置されている。
【0049】
次に、本実施形態の化学分析装置の動作について説明する。本実施形態の化学分析装置は、外部の供給装置(図示せず)から供給された流体が、一方の接続部材のチューブ27を流通し、マイクロ流体デバイスの開口部5から流路3の導入される。そして、この流体は流路3において、温度調節又は化学反応等の所定の処理が施される。その際、発光素子20から赤外線22aを出射し、流路3を流れる微小流体を透過し、反射膜4で反射した後、再度微小流体を透過した赤外線22bを受光素子21で検出することにより、流路3を流れる微小流体の化学分析を行う。その後、この流体はマイクロ流体デバイスの他端部に形成されている開口部5を介して他方の接続部材のチューブ27に導入され、外部の回収装置(図示せず)に対して排出される。
【0050】
本実施形態の化学分析装置は、マイクロ流体デバイスの基板2を、サファイヤ等の赤外線を透過する材料により形成しているため、赤外分光法により流路3を流れる微小流体中の物質の定量分析及び定性分析を行うことが可能になる。その結果、反応のモニタリング及び反応生成物の検出が可能になるため、従来の化学分析装置に比べて、情報量が飛躍的に増加する。また、マイクロ流体デバイスにおける流路3の表面に赤外線を反射する反射膜4が設けられているため、発光素子20及び受光素子21を共に基板2上に配置することができる。これにより、特許文献1に記載の分析方法に比べて赤外線の光路長が長くなり高感度な分析が可能になると共に、基板2上に光学素子を集積することができる。
【0051】
前述の第3の実施形態の化学分析装置においては、流路1の表面に設けられた反射膜4により、赤外線を1回反射させて測定しているが、本発明はこれに限定するものではなく、例えば、基板2表面の流路3に整合する領域にも反射膜を形成し、発光素子20から出射した赤外線を多重反射させた後、受光素子21で検出することもできる。図8は本発明の第3の実施形態の変形例の化学分析装置を示す断面図であり、図6に示すC−C線による断面図に相当する。図8に示すように、本変形例の化学分析装置は、マイクロ流体デバイスの基板2の基板1と対向する表面における流路3に整合する領域に、赤外線反射膜7が形成されている。そして、発光素子20及び受光素子21は、夫々流路3の上方の基板2上に所定の間隔をあけて配置されている。なお、反射膜7には、発光素子20から出射した赤外線22aが流路3内に入射する領域、及び流路3内で多重反射した赤外線22bが受光素子21に向けて出射する領域には、夫々開口部31が設けられている
【0052】
本変形例の化学分析装置においては、赤外線32aを反射膜7に設けられた開口部31から流路3内に、流体の流通方向に沿って入射し、流路3内で多重反射させた後、他の開口部31から出射させた赤外線32bを、受光素子21で検出している。これにより、多重反射により出射光(赤外線32b)の強度が大きくなり検知感度が向上する。この化学分析装置は、局所的な反応状態のモニタリングには適さないが、例えば、流路3の出口で極めて微量の反応生成物を分析する場合等に好適である。なお、本変形例の上記以外の構成及び動作は、前述の第3の実施形態の化学分析装置と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施形態のマイクロ流体デバイスを示す斜視図である。
【図2】図1に示すA−A線による断面図である。
【図3】(a)乃至(e)は本発明の第1の実施形態のマイクロ流体デバイスの製造方法をその工程順に示す断面図であり、図1に示すA−A線による断面図に相当する。
【図4】(a)乃至(c)は本発明の第1の実施形態のマイクロ流体デバイスの製造方法をその工程順に示す断面図であり、(a)は図3(e)の次の工程を示す。
【図5】(a)乃至(c)は本発明の第2の実施形態のマイクロ流体デバイスの製造方法をその工程順に示す断面図であり、図1に示すA−A線による断面図に相当する。
【図6】本発明の第3の実施形態の化学分析装置を示す分解斜視図である。
【図7】図6に示すB−B線による断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態の変形例の化学分析装置を示す断面図であり、図6に示すC−C線による断面図に相当する。
【図9】特許文献1に記載の化学分析装置の流路周辺部分を示す断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1、2;基板
3;流路
4、7;反射膜
5;開口部
6;シリコン酸化膜
11、16;フォトレジスト
12、31;開口部
13;溝
15;白金膜
20;発光素子
21;受光素子
22a、22b、32a、32b;赤外線
23;パッキン
24;押さえ板
25;プレート
26;ねじ
27;チューブ
28、30;貫通孔
29;ねじ穴
101;平面部材
102a、102b;凸部
103;封止部材
104;微細流路
105;発光部
106;受光部
107;反射膜
108;光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英又はガラスからなり一方の表面に流路が形成された第1の基板と、前記流路表面の少なくとも一部に形成された赤外線反射膜と、前記第1の基板における前記流路が形成された面に貼り合わされ赤外線を透過する第2の基板と、前記第2の基板の貼り合わせ面の少なくとも一部に形成されたシリコン酸化膜と、を有し、フッ酸により前記第1の基板と前記第2の基板上の前記シリコン酸化膜とを溶解接合することにより前記第1の基板と前記第2の基板とが貼り合わされていることを特徴とするマイクロ流体デバイス。
【請求項2】
前記第2の基板は、サファイヤ、Si、ZnSe、Ge及びダイヤモンドからなる群から選択された1種の材料からなることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
石英又はガラスからなり一方の表面に流路が形成された第1の基板と、前記流路表面の少なくとも一部に形成された赤外線反射膜と、前記第1の基板における前記流路が形成された面に貼り合わされ赤外線を透過する第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との貼り合わせ部に設けられフォトレジスト、ポリジメチルシロキサン、エポキシ樹脂及び紫外線硬化樹脂からなる群から選択された1種の材料からなる接着層と、を有し、前記接着層を介して前記第1の基板と前記第2の基板とが貼り合わされていることを特徴とするマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
前記第2の基板は、サファイヤ、Si、ZnSe、CaF、GaAsSe、BaF、CdTe、Ge、ダイヤモンド、AgCl及びZnSからなる群から選択された1種の材料からなることを特徴とする請求項3に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
前記赤外線反射膜が白金膜であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
石英又はガラスからなる第1の基板の一方の面上に、流路を形成する予定の領域が開口部となっているフォトレジストパターンを形成し、このフォトレジストパターンをマスクにして前記第1の基板をエッチングすることにより、前記第1の基板の表面に流路を形成する工程と、前記フォトレジストパターンをマスクにして前記流路表面の少なくとも一部に赤外線反射膜を形成する工程と、赤外線を透過する材料からなる第2の基板における前記第1の基板との貼り合わせ面の少なくとも一部にシリコン酸化膜を形成する工程と、フッ酸により前記第1の基板における前記流路が形成された面に前記第2の基板の前記シリコン酸化膜を溶解接合することにより、前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせる工程と、を有することを特徴とするマイクロ流体デバイスの製造方法。
【請求項7】
石英又はガラスからなる第1の基板の一方の面上に、流路を形成する予定の領域が開口部となっているフォトレジストパターンを形成し、このフォトレジストパターンをマスクにして前記第1の基板をエッチングすることにより、前記第1の基板の表面に流路を形成する工程と、前記フォトレジストパターンをマスクにして前記流路表面の少なくとも一部に赤外線反射膜を形成する工程と、赤外線を透過する材料からなる第2の基板における前記第1の基板との貼り合わせ面の少なくとも一部にフォトレジスト、ポリジメチルシロキサン、エポキシ樹脂及び紫外線硬化樹脂からなる群から選択された1種の材料からなる接着層を形成する工程と、前記第1の基板における前記流路が形成された面と前記第2の基板の前記接着層が形成されている面とが対向するように前記第1の基板と前記第2の基板とを重ね合わせ、前記接着層を介して前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせる工程と、を有することを特徴とするマイクロ流体デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記接着層がフォトレジストにより形成されている場合、前記第1の基板及び前記第2の基板を加圧しながら加熱することにより、前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせることを特徴とする請求項7に記載のマイクロ流体デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記接着層がポリジメチルシロキサンにより形成されている場合、前記接着層に酸素プラズマを照射した後、前記第1の基板及び前記第2の基板を重ね合わせ、更にこれらを加圧することにより、前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせることを特徴とする請求項7に記載のマイクロ流体デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記接着層がエポキシ樹脂により形成されている場合、前記第1の基板及び前記第2の基板を加圧しながら前記接着層を硬化させることにより、前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせることを特徴とする請求項7に記載のマイクロ流体デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記接着層が紫外線硬化樹脂により形成されている場合、前記接着層に紫外線を照射することにより、前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせることを特徴とする請求項7に記載のマイクロ流体デバイスの製造方法。
【請求項12】
前記赤外線反射膜として、気相蒸着法により白金膜を形成することを特徴とする請求項6乃至11のいずれか1項に記載のマイクロ流体デバイスの製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のマイクロ流体デバイスと、前記マイクロ流体デバイスの前記第2の基板上に配置され前記マイクロ流体デバイスの流路に向かって赤外線を出射する発光素子と、前記マイクロ流体デバイスの前記第2の基板上に配置され前記発光素子から出射され前記赤外線反射膜で反射した赤外線を検出する受光素子と、を有することを特徴とする化学分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−184010(P2006−184010A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374475(P2004−374475)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】