説明

マスクブランク用ガラス基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、露光用マスクの製造方法、及び欠陥検査装置

【課題】 被転写体へのパターン転写に影響の大きな主表面近傍の内部欠陥を含む、ガラス基板の全ての領域の内部欠陥を良好に検出できること。
【解決手段】 合成石英ガラス基板4の端面2に対し離間して設置され、導入面28が平坦で鏡面研磨され、屈折率が上記ガラス基板と略同一である透光性を有する光導入補助部材25と、上記ガラス基板の端面2と光導入補助部材との間に介在され、屈折率が上記ガラス基板と略同一な超純水26と、光導入補助部材の導入面から、この光導入補助部材及び超純水を介し上記ガラス基板内へ、波長が200nm以下の短波長光を導入するレーザー照射装置21と、この短波長光により上記ガラス基板の内部欠陥16が発する、上記短波長光よりも長い波長の光15、17を受光するCCDカメラ23と、このCCDカメラが受光した光の光量に基づき、上記ガラス基板の内部欠陥を検出するコンピューター27とを有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の内部欠陥を検出するガラス基板の欠陥検査装置、ガラス基板の内部欠陥を検査した後にマスクブランク用ガラス基板を製造するマスクブランク用ガラス基板の製造方法、このマスクブランク用ガラス基板を用いるマスクブランクの製造方法、及びこのマスクブランクを用いる露光用マスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、半導体デバイスの微細化に対応して、光リソグラフィー技術において使用される露光光はArFエキシマレーザー(露光波長193nm)、F2エキシマレーザー(露光波長157nm)へと短波長化が進んでいる。上記光リソグラフィー技術において使用される露光用マスクや、この露光用マスクを製造するマスクブランクにおいても、マスクブランク用ガラス基板上に形成される、上述の露光光の露光波長に対して光を遮断する遮光膜や、位相を変化させる位相シフト膜の開発が急速に行われ、様々な膜材料が提案されている。
【0003】
また、上記マスクブランク用ガラス基板や、このマスクブランク用ガラス基板を製造するための合成石英ガラス基板の内部には、異物や気泡などの欠陥が存在しないことが要求されている。特許文献1には、ガラス基板に対し、He‐Neレーザーを入射し、ガラス基板に存在する内部欠陥(異物や気泡など)により散乱された散乱光を検出することで、上記内部欠陥を検出する欠陥検出装置が開示されている。
【特許文献1】特開平8‐261953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述のような欠陥検出装置によって内部欠陥が存在しないと判定された合成石英ガラス基板、マスクブランク用ガラス基板から製造される露光用マスクであっても、露光光であるArFエキシマレーザーを用いて半導体基板に露光用マスクのマスクパターンを転写するパターン転写時に、後述のガラス基板起因による転写パターン欠陥が生じて転写精度が低下する場合がある。
【0005】
この原因は、He‐Neレーザーなどの可視光レーザーを露光光としたときには散乱などが発生しなかったが、ArFエキシマレーザーやF2エキシマレーザーなどの高エネルギーの光を露光光としたときに、局所的に光学特性を変化(例えば透過率を低下)させる内部欠陥(局所脈理、内容物、異質物)が、ガラス基板中に存在しているからであると考えられる。
【0006】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、被転写体へのパターン転写に影響の大きな主表面近傍の内部欠陥を含む、ガラス基板における全ての領域の内部欠陥を良好に検出して、パターン転写の転写精度を良好にできる露光用マスクを製造する露光用マスクの製造方法、この露光用マスクを製造するためのマスクブランクを製造するマスクブランクの製造方法、及びこのマスクブランクを製造するためのマスクブランク用ガラス基板を製造するマスクブランク用ガラス基板の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、被検査体における全ての領域の内部欠陥を良好に検出できる欠陥検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の構成に記載のマスクブランク用ガラス基板の製造方法は、波長が200nm以下の短波長光を導入する導入面を有する合成石英ガラス基板を準備する準備工程と、上記合成石英ガラス基板の導入面と、導入面が平坦であって鏡面研磨され、屈折率が上記合成石英ガラス基板と略同一である透光性を有する光導入補助手段との間に、屈折率が上記合成石英ガラス基板と略同一な溶媒を介在させ、
上記光導入補助手段の上記導入面へ導入される上記短波長光を、上記溶媒を介して上記合成石英ガラス基板の上記導入面から導入し、この合成石英ガラス基板の内部欠陥が発する、上記短波長光よりも長い波長の長波長光を受光し、この受光した長波長光の光量に基づき上記内部欠陥を検出する検出工程とを有し、上記検出工程で内部欠陥が検出されない上記合成石英ガラス基板を用いてマスクブランク用ガラス基板を製造することを特徴とするものである。
【0008】
第2の構成に記載のマスクブランク用ガラス基板の製造方法は、第1の構成において、上記合成石英ガラス基板の導入面が一端面であり、検出工程の後に、合成石英ガラス基板の主表面を精密研磨して、マスクブランク用ガラス基板を得ることを特徴とするものである。
【0009】
第3の構成に記載のマスクブランク用ガラス基板の製造方法は、第1または第2の構成において、上記検出工程では、合成石英ガラス基板の導入面に対向する対向面側に設けられた光反転手段により、上記対向面を透過した光を反転して上記合成石英ガラス基板内へ戻すことを特徴とするものである。
【0010】
第4の構成に記載のマスクブランクの製造方法は、第1乃至第3の構成のいずれかに記載のマスクブランク用ガラス基板の製造方法によって得られたマスクブランク用ガラス基板の主表面上に、マスクパターンとなる薄膜を形成してマスクブランクを製造することを特徴とするものである。
【0011】
第5の構成に記載の露光用マスクの製造方法は、第4に記載のマスクブランクにおける薄膜をパターニングして、マスクブランク用ガラス基板の主表面上にマスクパターンを形成し、露光用マスクを製造することを特徴とするものである。
【0012】
第6の構成に記載の欠陥検査装置は、透光性を有する被検査体の導入面に対し離間して設置され、導入面が平坦であって鏡面研磨され、屈折率が上記被検査体と略同一である透光性を有する光導入補助手段と、上記光導入補助手段の上記導入面から、この光導入補助手段及び、屈折率が上記被検査体と略同一な溶媒を介し当該被検査体の上記導入面を経て当該被検査体へ、波長が200nm以下の短波長光を導入する光導入手段と、この被検査体内に導入された上記短波長光により当該被検査体の内部欠陥が発する、上記短波長光よりも長い波長の長波長光を受光する受光手段と、この受光手段が受光した上記長波長光の光量に基づき、上記被検査体の上記内部欠陥を検出する検出手段とを有することを特徴とするものである。
【0013】
第7の構成に記載の欠陥検査装置は、第6の構成において、上記被検査体がインゴット状態、ブロック状態または基板状態の合成石英ガラスであることを特徴とするものである。
【0014】
第8の構成に記載の欠陥検査装置は、第6または7の構成において、上記被検査体の導入面に対向する対向面側に光反転手段が設けられ、この光反転手段により、上記対向面を透過した光を反転して上記被検査体内へ戻すことを特徴とするものである。
【0015】
第9の構成に記載のマスクブランク用ガラス基板の製造方法は、第1乃至第3の構成のいずれかにおいて、上記検出工程では、合成石英ガラス基板の導入面側に、光導入補助手段に連設する光反転手段が当該導入面の所定方向に延在して設けられ、上記合成石英ガラス基板の対向面側に、上記導入面の所定方向と同一な方向に光反転手段が延在して設けられ、上記光導入補助手段から上記合成石英ガラス基板内に導入された光を、上記対向面側の光反転手段と上記導入面側の光反転手段とにより互いに反転して、当該合成石英ガラス基板の上記導入面または上記対向面へ再び導入し、これらの導入位置を上記導入面の所定方向に移動させることを特徴とするものである。
【0016】
第10の構成に記載の欠陥検査装置は、第6乃至第8の構成のいずれかにおいて、上記被検査体の導入面側には、光導入補助手段に連設する光反転手段が当該導入面の所定方向に延在して設置され、上記被検査体の対向面側には、上記導入面の所定方向と同一な方向に光反転手段が延在して設置され、上記光導入補助手段から上記被検査体内に導入された光を、上記対向面側の光反転手段と上記導入面側の光反転手段とにより互いに反転して、当該被検査体の上記導入面または上記対向面へ再び導入し、これらの導入位置を上記導入面の所定方向に移動させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
第1の構成によれば、合成石英ガラス基板に露光波長の光を導入して、この露光波長の光を当該ガラス基板の内部欠陥の検査に用いることから、この合成石英ガラス基板からマスクブランク用ガラス基板及びマスクブランクを経て製造される露光用マスク及び露光光を用いたパターン転写の際に転写パターン欠陥となる内部欠陥を良好に検出できる。このため、この内部欠陥が検出されない合成石英ガラス基板を用いてマスクブランク用ガラス基板を製造することにより、このマスクブランク用ガラス基板を用いた露光用マスクには、ガラス基板の内部欠陥に起因して局所的に光学特性が変化(例えば透過率が低下)する領域が存在しなくなるので、転写パターン欠陥が生ずることがなく、転写精度を向上させることができる。
【0018】
また、合成石英ガラス基板の導入面と、導入面が平坦であって鏡面研磨され、屈折率が合成石英ガラス基板と略同一である透光性を有する光導入補助手段との間に、屈折率が合成石英ガラス基板と略同一な溶媒を介在させることから、合成石英ガラス基板の導入面が平坦でなく、表面粗さが粗い場合にも、この合成石英ガラス基板の内部における全ての領域に露光波長の光を導入して、この光を合成石英ガラス基板の対向面へ到達させることができ、このため、合成石英ガラス基板の内部における全ての領域の内部欠陥を良好に検出できる。従って、当該合成石英ガラス基板から露光用マスクのガラス基板を製造する場合に、マスクパターンが形成される側の主表面近傍の内部欠陥(つまり、当該露光用マスクを用いた被転写体へのパターン転写の際に影響の大きな内部欠陥)を含む、当該ガラス基板の全ての領域の内部欠陥を良好に検出できる。この結果、内部欠陥が検出されない合成石英ガラス基板から露光用マスクを製造することで、この露光用マスクを用いたパターン転写の転写精度を向上させることができる。
【0019】
第2の構成によれば、マスクブランク用ガラス基板の製造工程の、主表面を精密研磨する前の早い段階で合成石英ガラス基板の内部欠陥を検出することから、内部欠陥の存在しない合成石英ガラス基板に対してのみ主表面を精密研磨し、内部欠陥の存在する合成石英ガラス基板について主表面を精密研磨する無駄を省くことができる。
【0020】
第3の構成によれば、合成石英ガラス基板の導入面に対向する対向面側に設けられた光反転手段により、対向面を透過した光を反転して合成石英ガラス基板内へ戻すことから、合成石英ガラス基板内には、導入面側からの光と対向面に戻された光とが伝播するので、内部欠陥に高いエネルギーの光が照射されて検出感度が高まり、欠陥検査精度を向上できると共に、欠陥検査時間を短縮できる。
【0021】
第4または第5の構成によれば、第1乃至第3の構成のいずれか記載のマスクブランク用ガラス基板の製造方法によって得られたマスクブランク用ガラス基板を用いてマスクブランクを製造し、このマスクブランクにおける薄膜をパターニングして露光用マスクを製造することから、この露光用マスクを用いて被転写体に当該露光用マスクのマスクパターンを転写するパターン転写時に、この露光用マスクには、マスクパターンが形成される側の主表面近傍を含む、全ての領域に内部欠陥が存在しない合成石英ガラス基板が用いられるので、上記内部欠陥に起因して局所的に光学特性が変化(例えば透過率が低下)する領域が存在せず、パターン転写に悪影響を及ぼして転写パターン欠陥が生ずることがなく、転写精度を向上させることができる。
【0022】
第6または第7の構成によれば、被検査体に露光波長の光を導入して、この露光波長の光を被検査体の内部欠陥の検査に用いることから、上記被検査体が露光用マスクのガラス基板を製造するものである場合には、露光用マスク及び露光光を用いたパターン転写の際に転写パターン欠陥となる被検査体の内部欠陥を良好に検出できる。
【0023】
また、被検査体の導入面と、導入面が平坦であって鏡面研磨され、屈折率が被検査体と略同一である透光性を有する光導入補助手段との間に、屈折率が被検査体と略同一な溶媒を介在させることから、被検査体の導入面が平坦でなく、表面粗さが粗い場合にも、この被検査体の内部における全ての領域に露光波長の光を導入して、この光を被検査体の対向面へ到達させることができる。このため、被検査体の内部における全ての領域の内部欠陥を良好に検出できる。この結果、当該被検査体から露光用マスクのガラス基板を製造する場合に、マスクパターンが形成される側の主表面近傍の内部欠陥(つまり、当該露光用マスクを用いた被転写体へのパターン転写の際に影響の大きな内部欠陥)を含む、当該ガラス基板の全ての領域の内部欠陥を良好に検出できる。
【0024】
第8の構成によれば、被検査体の導入面に対向する対向面側に設けられた光反転手段により、対向面を透過した光を反転して被検査体内へ戻すことから、被検査体内には、導入面側からの光と対向面に戻された光とが伝播するので、内部欠陥に高いエネルギーの光が照射されて検出感度が高まり、欠陥検査精度を向上できると共に、欠陥検査時間を短縮できる。
【0025】
第9または第10の構成によれば、合成石英ガラス基板の導入面側には、光導入補助手段に連設する光反転手段が当該導入面の所定方向に延在し、上記合成石英ガラス基板の対向面側には、上記導入面の所定方向と同一な方向に光反転手段が延在し、光導入補助手段から合成石英ガラス基板内に導入された光が、対向面側の光反転手段と導入面側の光反転手段とにより互いに反転して、合成石英ガラス基板の導入面または対向面へ再び導入され、これらの導入位置を上記導入面の所定方向に移動することから、光導入補助手段及び溶媒を介して合成石英ガラス基板内へ光を導入する光導入手段を、被検査体の導入面の所定方向に沿って相対的に移動させる必要がなくなり、欠陥検査方法を簡易化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、マスクブランク用ガラス基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、露光用マスクの製造方法について最良の形態を、図面に基づき説明する。尚、以下、露光光を、露光波長が200nm以下のArFエキシマレーザー光(露光波長:193nm)として説明する。
【0027】
〔A〕マスクブランク用ガラス基板の製造方法
特開平8−31723号公報や特開2003−81654号公報に記載された製造方法により作製された合成石英ガラスインゴットから、約152.4mm×約152.4mm×約6.85mmに切り出して得られた合成石英ガラス板1(図1(a))に面取り加工を施し、次に、この合成石英ガラス板1の表面のうち、少なくとも、検査用の光である波長が200nm以下の短波長光(露光波長の光、つまりArFエキシマレーザー光)を導入する側の端面2と、この導入面としての端面2に隣接し、後述の内部欠陥16(図2)が発する光15、17等を受光する側の端面3とを、上記露光波長の光を導入できる程度に鏡面研磨して、透光性を有する被検査体としての合成石英ガラス基板4を準備する(図1(b))。
【0028】
この準備工程においては、合成石英ガラス基板4の表面のうちの残りの端面18及び19と、互いに対向する主表面5及び6とは鏡面研磨されず、その表面粗さは約0.5μm程度であるが、上記端面2及び3の表面粗さは約0.03μm以下とされる。
【0029】
次に、図2に示すガラス基板の欠陥検査装置20に合成石英ガラス基板4を装着し、ArFエキシマレーザー光を合成石英ガラス基板4の端面2から、後述の光導入補助部材25及び超純水26を介して導入し、この合成石英ガラス基板4中に存在する内部欠陥16が発する露光波長の光よりも長い波長の長波長光(蛍光)15を、合成石英ガラス基板4の内部欠陥16以外の領域が発する露光波長よりも長い波長の長波長光(蛍光)17と共に、この合成石英ガラス基板4の、上記端面2に隣接する端面3から受光し、この受光した光15及び17の光量(強度)の相違に基づき、上記内部欠陥16を検出する検出工程を実施する。
【0030】
ここで、合成石英ガラス基板4に存在する内部欠陥16のうち、露光波長が200nm超の露光光源(例えば、KrFエキシマレーザー(波長:248nm))の場合には問題とならないが、ArFエキシマレーザーのように波長が200nm以下の露光光源の場合に問題となる内部欠陥16として局所脈理、内容物、異質物等がある。これらの内部欠陥16は、合成石英ガラス基板4からマスクブランク用ガラス基板7及びマスクブランク9を経て製造された露光用マスク14と、露光波長が200nm以下の上記露光光とを用いて、当該露光用マスク14のマスクパターンを被転写体に転写するパターン転写時に、いずれも局所的な光学特性の変化(例えば透過率の低下)を生じさせ、パターン転写に悪影響を及ぼして転写精度を低下させるものとなる。
【0031】
上記「局所脈理」は、合成石英ガラスの合成時に金属元素が合成石英ガラス中に微量に混入された領域である。露光用マスク14のマスクブランク用ガラス基板7に当該局所脈理が存在すると、パターン転写時に約20〜40%の透過率低下が生じ、転写精度を低下させる。また、上記「内容物」は、金属元素が合成石英ガラス中に、局所脈理の場合よりも多く混入された領域である。露光用マスク14のマスクブランク用ガラス基板7に当該内容物が存在すると、パターン転写時に約40〜60%の透過率低下が生じる。更に、「異質物」は、合成石英ガラス中に酸素が過剰に混入された酸素過剰領域であり、高エネルギーの光が照射された後は回復しない。露光用マスク14のマスクブランク用ガラス基板7に当該異質物が存在すると、パターン転写時に約5〜15%の透過率の低下が生じる。
【0032】
前記検出工程を実施する上記ガラス基板の欠陥検査装置20は、上述の内部欠陥16(パターン転写時に局所的な光学特性の変化を生じさせる局所脈理、内容物、異質物等)を検出するものである。このガラス基板の欠陥検査装置20は、図2に示すように、短波長光としての露光波長の光(つまり、露光波長と同一波長の光)であるArFエキシマレーザー光を合成石英ガラス基板4の端面2から導入する光導入手段としてのレーザー照射装置21と、合成石英ガラス基板4を載置し、レーザー照射装置21から発せられるレーザー光に対して合成石英ガラス基板4をX方向、Y方向、Z方向にそれぞれ移動させるXYZステージ22と、このXYZステージ22に載置された合成石英ガラス基板4の端面3側に設置され、CCD素子とこのCCD素子の検出範囲を広げるためのレンズ(ともに不図示)とを備え、合成石英ガラス基板4の幅方向(つまり、レーザー照射装置21から照射されるレーザー光の照射方向)の略全域に渡って検出視野24を有する、受光手段としてのCCDカメラ(ラインセンサカメラ)23と、このCCDカメラ23にUSBケーブル26を用いて接続された検出手段としてのコンピュータ27と、合成石英ガラス基板4の端面2に対して離間して設置された透光性を有する光導入補助手段としての光導入補助部材25と、この光導入補助部材25と合成石英ガラス基板4の端面2との間に介在された溶媒としての超純水26(図5)とを有して構成される。
【0033】
レーザー照射装置21は、XYZステージ22が合成石英ガラス基板4をY方向に移動させている間に、ArFエキシマレーザー光を光導入補助部材25及び超純水26を介して、合成石英ガラス基板4の端面2におけるY方向(つまり端面2の長手方向)の各位置から順次導入する。また、CCDカメラ23は、合成石英ガラス基板4の端面2におけるY方向の各位置へ入射されたArFエキシマレーザー光(波長λ1)によって合成石英ガラス基板4が発する、波長λ1によりも長い波長の長波長光15及び17を、合成石英ガラス基板4のY方向の各位置毎に、合成石英ガラス基板4の端面3側から受光して撮影する。本実施の形態では、CCDカメラ23はモノクロカメラであり、光15及び17の明暗を受光して撮影する。
【0034】
コンピュータ27は、CCDカメラ23からの画像を入力して、合成石英ガラス基板4のY方向の各位置毎に画像処理し、この合成石英基板4のY方向の各位置について、CCDカメラ23が受光する光15及び17の光量(強度)を、合成石英ガラス基板4のX方向位置との関係で解析する。つまり、コンピュータ27は、光15及び17の光量が所定閾値以上の局所的な光量を有する場合に、その所定閾値以上の局所的な光量の光15を内部欠陥16が発したと判断して、この内部欠陥16の位置(合成石英ガラス基板4におけるX方向及びY方向の位置)と共に、内部欠陥16が発する局所的な光量の光15の形状などから内部欠陥16の種類(局所脈理、内容物、異質物)を特定して検出する。
【0035】
例えば、合成石英ガラス基板4に内部欠陥16として局所脈理または内容物が存在する場合には、レーザー照射装置21からのArFエキシマレーザー光が合成石英ガラス基板4に導入されることによって、上記局所脈理または内容物が図3(A)に示すように、所定閾値(1000counts)以上の局所的な光量の光15を発し、合成石英ガラス基板4の局所脈理または内容物以外の領域が光17を発する。コンピュータ27は、CCDカメラ23が受光した光15及び17を画像処理して解析することで、所定閾値以上の局所的な光量の光15の形状から内部欠陥16を局所脈理または異質物と判断し、且つその所定閾値以上の局所的な光量の光15が発する位置に局所脈理または内容物が存在するとして、その局所脈理または内容物をその位置と共に検出する。ここで、図3(A)の場合、横軸は合成石英ガラス基板4のX方向位置を、縦軸は光15及び17の光量(強度)をそれぞれ示す。
【0036】
また、合成石英ガラス基板4に内部欠陥16として異質物が存在する場合には、レーザー照射装置21からArFエキシマレーザー光が合成石英ガラス基板4に導入されることによって、上記異質物が図3(B)に示すように、所定の範囲(例えば20〜50mm)に所定閾値(1000counts)以上の局所的な光量の光15を発し、合成石英ガラス基板4の異質物以外の領域が光17を発する。コンピュータ27は、CCDカメラ23が受光した光15及び17を画像処理して解析することで、所定閾値以上の局所的な光量の光15の形状から内部欠陥16を異質物と判断し、且つその所定閾値以上の局所的な光量の光15が発生する位置に当該異質物が存在するとして、この異質物をその位置と共に検出する。ここで、図3(B)の場合も、横軸は合成石英ガラス基板4のX方向位置を、縦軸は光15及び17の光量(強度)をそれぞれ示す。
【0037】
図2、図4及び図5に示す上記光導入補助部材25は、屈折率が合成石英ガラス基板4と略同一である透光性を有する材質、例えば合成石英ガラスにて構成される。この光導入補助部材25はXYZテーブル22のレーザー照射装置21側に設置され、その表面が導入面28とされ、裏面側に凹部29が形成される。上記導入面28は、平坦面に形成されると共に、露光波長の光(ArFエキシマレーザー光)を導入可能に鏡面研磨されている。
【0038】
光導入補助部材25の凹部29内に、合成石英ガラス基板4の端面2側部分が配設される。この凹部29には、合成石英ガラス基板4の端面2側部分の接触位置にパッキン等のシール部材40が設けられる。従って、合成石英ガラス基板4の端面2側部分は、シール部材40を介して光導入補助部材25の凹部29に支持され、光導入補助部材25と合成石英ガラス基板4の端面2側部分との間に液密状態の空間41が構成される。合成石英ガラス基板4における、端面2に対向する端面18側部分は、XYZステージ22に設置された支持部材42により支持されて、合成石英ガラス基板4はXYZステージ22上で、光導入補助部材25及び支持部材42により水平状態に支持される。
【0039】
光導入補助部材25と合成石英ガラス基板4の端面2側部分との間の上記空間41内に、屈折率が合成石英ガラス基板4と略同一な前記超純水26が満たされる。ここで、屈折率は、合成石英ガラスが1.52であり、超純水が1.44である。一般に、合成石英ガラス基板4の端面2、3、18、及び端面3に対向する端面19は、主表面5、6に直交する側面43と、この側面43と主表面5、6のそれぞれに接する箇所に形成される面取り面44とで構成される。従って、合成石英ガラス基板4の内部領域は、主表面5、6のそれぞれから面取り面44の幅に相当する深さまでの表層領域45と、表層領域45以外の領域である主要領域46とに区画される。上記表層領域45は、面取り面44の幅が約0.6mmの場合には、合成石英ガラス基板4の内部において主表面5、6から深さ約0.6mmまでの領域である。
【0040】
レーザー照射装置21からのArFエキシマレーザー光を合成石英ガラス基板4の端面2から直接(光導入補助部材25及び超純水26を介することなく)、その端面2の側面43に垂直に当該合成石英ガラス基板4内へ導入した場合、面取り面44から導入されるArFエキシマレーザー光は、この面取り面44にて屈折して合成石英ガラス基板4内を伝播し、端面18へ到達せずに外部へ漏出してしまう。このため、合成石英ガラス基板4における主要領域46内にはArFエキシマレーザー光が伝播するものの、主表面5、6近傍の上記表層領域45内にはArFエキシマレーザー光が伝播せず、この表層領域45内に存在する内部欠陥16を検出することができない。
【0041】
ところが、合成石英ガラス基板4の端面2と光導入補助部材25との間に上記超純水26が介在されることで、合成石英ガラス基板4の端面2にいかなる幅寸法の面取り面44が形成されていても、また端面2が鏡面研磨されておらず、その表面粗さが粗い場合にも、光導入補助部材25及び超純水26を経て端面2から合成石英ガラス基板4内へ導入されるレーザー照射装置21からのArFエキシマレーザー光は、主表面5、6近傍の表層領域45内においても、主要領域46内と同様に、端面2に対向する端面18へ到達することが可能となる。
【0042】
つまり、合成石英ガラス基板4の端面2から面取り面44を経て表層領域45内へ導入されるArFエキシマレーザー光は、端面18の主表面5、6にそれぞれ接する面取り面44に至り、これらの面取り面44にて全反射して、当該表層領域45内において端面2側へ伝播する。また、端面2から側面43を経て主要領域46内へ導入されたArFエキシマレーザー光は、端面18の側面43に至り、この側面43から外部へ透過する。
【0043】
従って、合成石英ガラス基板4においては、表層領域45及び主要領域46に存在する内部欠陥16が発する光15及び17をCCDカメラ23が受光し、この受光した光をコンピュータ27が解析することで、合成石英ガラス基板4の全領域(表層領域45及び主要領域46)に存在する内部欠陥16を検出することが可能となる。
【0044】
ここで、レーザー照射装置21から合成石英ガラス基板4へ導入されるArFエキシマレーザー光は、合成石英ガラス基板4の内部欠陥16を照射したときに、この内部欠陥16から、導入したArFエキシマレーザー光の波長よりも長い波長の光15、17を発生させることができれば足りる。具体的には、レーザー照射装置21から照射されるArFエキシマレーザー光は、ビーム形状が4.0mm×7.0mm、パワーが6mJ、周波数が50Hzである。
【0045】
上記ガラス基板の欠陥検査装置20によって内部欠陥16が検出されない合成石英ガラス基板4に対し、その主表面5、6を所望の表面粗さになるように鏡面・精密研磨し、洗浄処理を実施してマスクブランク用ガラス基板7を得る(図1(c))。このときの主表面5、6の表面粗さは、自乗平均平方根粗さ(RMS)で0.2nm以下が好ましい。
【0046】
〔B〕マスクブランクの製造方法
次に、マスクブランク用ガラス基板7の主表面5上にマスクパターンとなる薄膜(ハーフトーン膜8)をスパッタリング法により形成して、マスクブランク9(ハーフトーン型位相シフトマスクブランク)を作製する(図1(d))。ハーフトーン膜8の成膜は、以下の構成を有するスパッタリング装置を使って行う。
【0047】
このスパッタリング装置は、図6に示すようなDCマグネトロンスパッタリング装置30であり、真空槽31を有しており、この真空槽31の内部にマグネトロンカソード32及び基板ホルダ33が配置されている。マグネトロンカソード32には、バッキングプレート34に接着されたスパッタリングターゲット35が装着されている。例えば、上記バッキングプレート34に無酸素鋼を用い、スパッタリングターゲット35とバッキングプレート34との接着にインジウムを用いる。上記バッキングプレート34は水冷機構により直接または間接的に冷却される。また、マグネトロンカソード32、バッキングプレート34及びスパッタリングターゲット35は電気的に結合されている。基板ホルダ33にガラス基板7が装着される。
【0048】
上記スパッタリングターゲット35とガラス基板7とは、図7に示すように、ガラス基板7とスパッタリングターゲット35の対向する面が所定の角度を有するように配置されている。この場合、例えばスパッタリングターゲット35とガラス基板7のオフセット距離は340mm、スパッタリングターゲット35とガラス基板7間の垂直距離(T/S)は380mm、スパッタリングターゲットの傾斜角は15°である。
【0049】
図6の真空槽31は、排気口37を介して真空ポンプにより排気される。真空槽31内の雰囲気が、形成する膜の特性に影響しない真空度に達した後に、ガス導入口38から窒素を含む混合ガスを導入し、DC電源39を用いてマグネトロンカソード32に負電圧を加え、スパッタリングを行う。DC電源39はアーク検出機能を持ち、スパッタリング中の放電状態を監視する。真空槽31の内部圧力は圧力計36によって測定される。
【0050】
〔C〕露光用マスクの製造方法
次に、図1に示すように、上記マスクブランク9(ハーフトーン型位相シフトマスクブランク)のハーフトーン膜8の表面にレジストを塗布した後、加熱処理してレジスト膜10を形成する。(図1(e))。
【0051】
次に、レジスト膜付きのマスクブランク11におけるレジスト膜10に所定のパターンを描画・現像処理し、レジストパターン12を形成する(図1(f))。
【0052】
次に、上記レジストパターン12をマスクにして、ハーフトーン膜8をドライエッチングしてハーフトーン膜パターン13をマスクパターンとして形成する(図1(g))。
【0053】
最後に、レジストパターン12を除去して、ガラス基板7上にハーフトーン膜パターン13が形成された露光用マスク14を得る(図1(h))。
【0054】
[D]半導体デバイスの製造方法
得られた露光用マスク14を露光装置に装着し、この露光用マスク14を使用し、ArFエキシマレーザーを露光光として光リソグラフィー技術を用い、半導体基板(半導体ウェハ)に形成されているレジスト膜に露光用マスクのマスクパターンを転写して、この半導体基板上に所望の回路パターンを形成し、半導体デバイスを製造する。
【0055】
[E]実施の形態の効果
上述のように構成されたことから、上記実施の形態によれば、次の効果(1)〜(3)を奏する。
(1)合成石英ガラス基板4に、波長が200nm以下の短波長光である露光波長の光(ArFエキシマレーザー光)を導入して、この露光波長の光を当該ガラス基板の内部欠陥16の検査に用いることから、この合成石英ガラス基板4からマスクブランク用ガラス基板7及びマスクブランク9を経て製造される露光用マスク14及び露光光を用いたパターン転写の際に転写パターン欠陥となる内部欠陥16を良好に検出できる。このため、この内部欠陥16が検出されない合成石英ガラス基板4を用いてマスクブランク用ガラス基板7を製造することにより、このマスクブランク用ガラス基板7を用いた露光用マスク14には、ガラス基板の内部欠陥16に起因して局所的に光学特性が変化(例えば透過光が低下)する領域が存在しなくなるので、転写パターン欠陥が生ずることなく、転写精度を向上させることができる。
【0056】
(2)合成石英ガラス基板4の端面2と、導入面28が平坦であって鏡面研磨され、屈折率が合成石英ガラス基板4と略同一である透光性を有する光導入補助部材25との間に、屈折率が合成石英ガラス基板4と略同一な超純水26を介在させることから、合成石英ガラス基板4の端面2が平坦でなく、表面粗さが粗い場合にも、この合成石英ガラス基板4の内部における全ての領域(主表面5、6近傍の表層領域45と主要領域46)に端面2を経てArFエキシマレーザー光を導入して、この光を合成石英ガラス基板4の端面18へ到達させることができ、このため、合成石英ガラス基板4の内部における全ての領域の内部欠陥16を良好に検出できる。従って、合成石英ガラス基板4から露光用マスク14を製造する場合にマスクパターン(ハーフトーン膜パターン13)が形成される側の主表面5近傍の内部欠陥を含む、当該合成石英ガラス基板4の全ての領域の内部欠陥16を良好に検出できることになる。
合成石英ガラス基板4において、上記マスクパターンが形成される側の主表面5近傍の内部欠陥16は、露光用マスク14を用いた被転写体(例えば半導体ウェハ)へのパターン転写時に、合成石英ガラス基板4における他の箇所の内部欠陥16が露光装置の焦点深度の関係から被転写体に結像されにくいのに対し、被転写体に結像転写され易いので、パターン転写の際に影響が大きい。欠陥検出装置20では、特にこの主表面5近傍の内部欠陥16を良好に検出できる。この結果、内部欠陥が検出されない合成石英ガラス基板4から露光用マスク14を製造することで、この露光用マスク14を用いたパターン転写の転写精度を向上させることができる。
【0057】
(3)マスクブランク用ガラス基板7の製造工程の、主表面5、6を鏡面・精密研磨する前の早い段階で合成石英ガラス基板4の内部欠陥16を検出することから、内部欠陥16の存在しない合成石英ガラス基板4に対してのみ主表面5、6を鏡面・精密研磨し、内部欠陥16の存在する合成石英ガラス基板4について主表面5、6を鏡面・精密研磨する無駄を省くことができる。
【0058】
図8は、本発明に係る欠陥検査装置における第2を実施の形態を示す、図5に対応する断面図である。この第2を実施の形態において、前記第1の実施の形態と同様な部分は、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0059】
このガラス基板の欠陥検査装置50では、XYZステージ22に装着された合成石英ガラス基板4の端面18側に、この端面18に近接して光反転手段としてのプリズム51またはミラー(本実施の形態ではプリズム51)が設置されている。このプリズム51は、レーザー照射装置21から光導入補助部材25及び超純水26を通り、合成石英ガラス基板4の端面2の側面43から当該合成石英ガラス基板4内へ導入され、この合成石英ガラス基板4の主要領域46を伝播して端面18の側面43から外部へ透過したArFエキシマレーザー光を、反射面52及び53にて全反射させて反転させ、合成石英ガラス基板4における端面18の側面43から再び当該合成石英ガラス基板4の主要領域46内へ導くものである。
【0060】
このように、合成石英ガラス基板4の主要領域46を伝播し、端面18の側面43から外部へ透過したArFエキシマレーザー光を、プリズム51によって再び合成石英ガラス基板4の主要領域46内へ導くことにより、合成石英ガラス基板4の主要領域46内には、端面2から導入されたArFエキシマレーザー光と、端面18から戻されたArFエキシマレーザー光とが伝播することから、合成石英ガラス基板4の内部欠陥16に高いエネルギーの光を照射できるので検出感度が高まり、欠陥検出精度を向上させることができると共に、欠陥検査時間を短縮できる。
【0061】
尚、このプリズム51と合成石英ガラス基板4の端面18との間に、屈折率が合成石英ガラス基板4と略同一な超純水を介在させてもよい。この場合には、光の経路において屈折率の変動が少ないことから、光の伝播損失を低減できる。
【0062】
図9は、本発明に係る欠陥検査装置における第3の実施の形態を示す平面図である。この第3の実施の形態において、前記第1の実施の形態の欠陥検査装置20と同様な部分は、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0063】
このガラス基板の欠陥検査装置60は、合成石英ガラス基板4における端面2の一端部へArFエキシマレーザー光を導入する、光導入補助部材25と同様な構造の光導入補助部材61と、この光導入補助部材61に連設され、合成石英ガラス基板4の端面2に離間してこの端面2の長手方向(図2及び図9のY方向)に延在して設けられた光反転手段としての導入面側プリズム62と、合成石英ガラス基板4における端面18に離間して、上記導入面側プリズム62と同一な方向に延在して設けられた光反転手段としての対向面側プリズム63と、光導入補助部材61及び導入面側プリズム62と合成石英ガラス基板4の端面2側部分との間、及び対向面側プリズム63と合成石英ガラス基板4の端面18側部分との間に介在された溶媒としての超純水26と、前記実施の形態のレーザー照射装置21、XYZステージ22、CCDカメラ23及びコンピュータ27等とを有して構成される。
【0064】
レーザー照射装置21から照射されたArFエキシマレーザー光は、光導入補助部材61及び超純水26を通過して、合成石英ガラス基板4における端面2の一端部から当該合成石英ガラス基板4内へ導入され、この合成石英ガラス基板4のY方向に直交するX方向へ伝播して端面18に至り、この端面18を透過し超純水26を経て対向面側プリズム63に至り、この対向面側プリズム63にて反転される。この対向面側プリズム63にて反転されたArFエキシマレーザー光は、合成石英ガラス基板4の端面18において、上記透過位置から当該端面18の長手方向(端面2の長手方向と一致する方向;Y方向)に若干ずれた位置で合成石英ガラス基板4内へ導入され、この合成石英ガラス基板4内を端面2へ向かってX方向に直進して伝播し、端面2を透過し超純水26を経て導入面側プリズム62に至り、この導入面側プリズム62にて反転する。導入面側プリズム62にて反転されたArFエキシマレーザー光は、端面2において上記透過位置から当該端面2の長手方向(Y方向)に若干ずれた位置で当該合成石英ガラス基板4内へ導入され、この合成石英ガラス基板4内を端面18へ向かってX方向に直進して伝播する。
【0065】
以下同様に、合成石英ガラス基板4内を伝播するArFエキシマレーザー光は、導入面側プリズム62及び対向面側プリズム63により順次反転され、当該合成石英ガラス基板4の端面2、18への導入位置を、これらの端面2及び18の長手方向(Y方向)に順次若干量だけ移動させながら、当該合成石英ガラス基板4内を端面2から端面18へ向かって、または端面18から端面2へ向かって直進して伝播する。このため、レーザー照射装置21から合成石英ガラス基板4の端面2へArFエキシマレーザー光を導入する際に、XYZステージ22を合成石英ガラス基板4の端面2における長手方向(Y方向)へ移動させる必要がないので、欠陥検査装置60の構造を簡素化できると共に、この欠陥検査装置60による欠陥検査方法も簡易化できる。
【0066】
尚、上記ガラス基板の欠陥検査装置60においては、CCDカメラ23は、ArFエキシマレーザー光を導入する端面2に隣接する端面3側に設置されてもよいが、内部欠陥16の位置を正確に検出するためには、主表面5または6側に設置するのが好ましい。但しこの場合には、CCDカメラ23が設置される側の主表面5または6は鏡面研磨されていることを要する。
【0067】
図10は、本発明に係る欠陥検査装置における第4の実施の形態を示す斜視図である。この第4の実施の形態において前記第1の実施の形態の欠陥検査装置20と同様な部分は、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0068】
この第4の実施の形態の欠陥検査装置70は、合成石英ガラス基板4ではなく、この合成石英ガラス基板4を切り出す前のブロック状態の合成石英ガラス(合成石英ガラスブロック71)、またはこの合成石英ガラスブロック71を製造するためのインゴット状態の合成石英ガラスの内部欠陥16を検出するものである。本実施の形態では、欠陥検査装置70は、合成石英ガラスブロック71の内部欠陥16を検出する。この欠陥検査装置70における光導入補助部材72の凹部73内に、合成石英ガラスブロック71の導入面74側部分が液密状態に支持される。この光導入補助部材72と合成石英ガラスブロック71の導入面74側部分との間に超純水26が満たされる。また、光導入補助部材72の導入面75は平坦面であって、鏡面研磨して形成されている。
【0069】
従って、この欠陥検査装置70にあっても、合成石英ガラスブロック71の導入面74が平坦面でなく、または表面粗さが粗い場合にも、レーザー照射装置21からのArFエキシマレーザー光を光導入補助部材72の導入面75から、当該光導入補助部材72及び超純水26を経て合成石英ガラスブロック71の導入面74へ導入し、この合成石英ガラスブロック71内を伝播して、導入面74に対向する対向面76へ導くことができる。このため、合成石英ガラスブロック71において、内部欠陥16が存在する部分については、マスクブランク用ガラス基板7を製造するための合成石英ガラス基板4とせず、内部欠陥16が存在しない部分についてのみから上記合成石英ガラス基板4を切り出して製造する。
【0070】
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記実施の形態では、露光光源がArFエキシマレーザーの場合を述べたが、波長が200nm以下の、好ましくは100nm〜200nmの光であればよく、F2エキシマレーザーであってもよい。また、ArFエキシマレーザーやF2エキシマレーザーと同じ波長を得るために、重水(D)ランプ等の光源から光を分光させて中心波長がArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザーと同じ光を用いても構わない。
【0071】
また、上記実施の形態においては、CCDカメラ23をカラーカメラとして、合成石英ガラス基板49の内部欠陥16及びこの内部欠陥16以外の領域が発する、波長が200nm以下の露光波長の光よりも長い波長の光15及び17を受光して撮影し、コンピュータ27は、このCCDカメラ23の画像を赤、緑、青の色別に画像処理し、この色別に画像処理した光の強度(光量)分布から内部欠陥16を検出してもよい。
【0072】
更に、上記実施の形態では、合成石英ガラス基板40の内部欠陥16及びこの内部欠陥16以外の領域が発する、露光波長の光よりも長い波長の光15及び17をCCDカメラ23が受光するものを述べたが、これらの光15及び17を分光器が受光して、内部欠陥16の分光特性(波長及び強度)や、光15及び17の強度(光量)分布を測定して、内部欠陥16を検出してもよい。
【0073】
また、上記実施の形態では、マスクブランク用ガラス基板上にハーフトーン膜を形成したハーフトーン型位相シフトマスクブランクの場合を述べたが、これに限定されるものではない。例えば、合成石英ガラス基板7上にハーフトーン膜と、このハーフトーン膜上に遮光膜とを有するハーフトーン型位相シフトマスクブランクや、マスクブランク用ガラス基板7上に遮光膜が形成されたフォトマスクブランクであっても構わない。尚、これらのハーフトーン型位相シフトマスクブランク、フォトマスクブランクの遮光膜上にレジスト膜を形成していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係るマスクブランク用ガラス基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、及び露光用マスクの製造方法における一実施の形態を示す製造工程図である。
【図2】本発明に係る欠陥検査装置における第1の実施の形態を示す斜視図である。
【図3】図2のコンピュータが画像処理した、受光した光の強度分布を示すグラフである。
【図4】図2の欠陥検査装置を示す平面図である。
【図5】図4のV‐V線に沿う断面図である。
【図6】図1のマスクブランクの製造工程において用いられるスパッタリング装置を示す概略側面図である。
【図7】図4のスパッタリングターゲットとマスクブランク用ガラス基板との位置関係を示す側面図である。
【図8】本発明に係る欠陥検査装置における第2の実施の形態を示す、図5に対応する斜視図である。
【図9】本発明に係る欠陥検査装置における第3の実施の形態を示す平面図である。
【図10】本発明に係る欠陥検査装置における第4の実施の形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0075】
1 合成石英ガラス板
2 端面(導入面)
4 合成石英ガラス基板(被検査体)
5、6 主表面
7 マスクブランク用ガラス基板
8 ハーフトーン膜(薄膜)
9 マスクブランク
13 ハーフトーン膜パターン(マスクパターン)
14 露光用マスク
15、17 光
16 内部欠陥
18 端面(対向面)
20 ガラス基板の欠陥検査装置
21 レーザー照射装置(光導入手段)
23 CCDカメラ(受光手段)
25 光導入補助部材(光導入補助手段)
26 超純水(溶媒)
27 コンピュータ(検出手段)
28 導入面
41 空間
50 ガラス基板の欠陥検査装置
51 プリズム(光反転手段)
60 ガラス基板の欠陥検査装置
61 光導入補助部材(光導入補助手段)
62 導入面側プリズム(導入面側の光反転手段)
63 対向面側プリズム(対向面側の光反転手段)
70 欠陥検査装置
71 合成石英ガラスブロック(被検査体)
72 光導入補助部材(光導入補助手段)
74 導入面
75 導入面
76 対向面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長が200nm以下の短波長光を導入する導入面を有する合成石英ガラス基板を準備する準備工程と、
上記合成石英ガラス基板の導入面と、導入面が平坦であって鏡面研磨され、屈折率が上記合成石英ガラス基板と略同一である透光性を有する光導入補助手段との間に、屈折率が上記合成石英ガラス基板と略同一な溶媒を介在させ、
上記光導入補助手段の上記導入面へ導入される上記短波長光を、上記溶媒を介して上記合成石英ガラス基板の上記導入面から導入し、この合成石英ガラス基板の内部欠陥が発する、上記短波長光よりも長い波長の長波長光を受光し、この受光した長波長光の光量に基づき上記内部欠陥を検出する検出工程とを有し、
上記検出工程で内部欠陥が検出されない上記合成石英ガラス基板を用いてマスクブランク用ガラス基板を製造することを特徴とするマスクブランク用ガラス基板の製造方法。
【請求項2】
上記合成石英ガラス基板の導入面が一端面であり、検出工程の後に、合成石英ガラス基板の主表面を精密研磨して、マスクブランク用ガラス基板を得ることを特徴とする請求項1に記載のマスクブランク用ガラス基板の製造方法。
【請求項3】
上記検出工程では、合成石英ガラス基板の導入面に対向する対向面側に設けられた光反転手段により、上記対向面を透過した光を反転して上記合成石英ガラス基板内へ戻すことを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランク用ガラス基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のマスクブランク用ガラス基板の製造方法によって得られたマスクブランク用ガラス基板の主表面上に、マスクパターンとなる薄膜を形成してマスクブランクを製造することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のマスクブランクにおける薄膜をパターニングして、マスクブランク用ガラス基板の主表面上にマスクパターンを形成し、露光用マスクを製造することを特徴とする露光用マスクの製造方法。
【請求項6】
透光性を有する被検査体の導入面に対し離間して設置され、導入面が平坦であって鏡面研磨され、屈折率が上記被検査体と略同一である透光性を有する光導入補助手段と、
上記光導入補助手段の上記導入面から、この光導入補助手段及び、屈折率が上記被検査体と略同一な溶媒を介し当該被検査体の上記導入面を経て当該被検査体へ、波長が200nm以下の短波長光を導入する光導入手段と、
この被検査体内に導入された上記短波長光により当該被検査体の内部欠陥が発する、上記短波長光よりも長い波長の長波長光を受光する受光手段と、
この受光手段が受光した上記長波長光の光量に基づき、上記被検査体の上記内部欠陥を検出する検出手段とを有することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項7】
上記被検査体がインゴット状態、ブロック状態または基板状態の合成石英ガラスであることを特徴とする請求項6に記載の欠陥検査装置。
【請求項8】
上記被検査体の導入面に対向する対向面側に光反転手段が設けられ、この光反転手段により、上記対向面を透過した光を反転して上記被検査体内へ戻すことを特徴とする請求項6または7に記載の欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−41312(P2007−41312A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225789(P2005−225789)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】