説明

マルチチャネルアンプIC、マルチチャネルアンプIC実装フレキシブル基板ならびにマルチチャネルアンプICの試験方法

【課題】 マルチチャネルアンプICもしくはマルチチャネルアンプIC実装フレキシブル基板の動作確認を容易に行えるようにする。
【解決手段】 マルチチャネルアンプIC20を、入力端子Tと、チャージアンプ21、ローパスフィルター22およびサンプルホールド23から構成される電荷検出部と、入力端子Tとチャージアンプ21との間に試験信号を入力させるための配線部26と、入力端子Tとチャージアンプ21との間に試験信号を入力可能な状態と入力不可能な状態とを切り替えるスイッチSWとから構成される複数の電荷検出回路と、この複数の電荷検出回路の出力の中から選択された出力のみを出力するマルチプレクサー24等から構成し、マルチチャネルアンプIC20内に試験信号を入力した状態で、各ChのSWのみをオンにして、そのChのみ試験信号に対応した出力があることを確認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照射された放射線の線量あるいは該放射線の励起により発せられる光の光量に応じた量の電荷を潜像電荷として蓄積する蓄電部を有する放射線固体検出器等から電荷を検出するためのマルチチャネルアンプIC、マルチチャネルアンプIC実装フレキシブル基板ならびにマルチチャネルアンプICの試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、医療診断等を目的とする放射線撮影において、放射線を検出して得た電荷を潜像電荷として蓄電部に一旦蓄積し、該蓄積した潜像電荷を放射線画像情報を表す電気信号に変換して出力する放射線固体検出器(以下単に検出器ともいう)を使用する放射線画像情報記録読取装置が各種提案されている。この装置において使用される放射線固体検出器としては、種々のタイプのものが提案されているが、蓄積された電荷を外部に読み出す電荷読出プロセスの面から、検出器に読取光(読取用の電磁波)を照射して読み出す光読出方式のものがある。
【0003】
本出願人は、読出しの高速応答性と効率的な信号電荷の取り出しの両立を図ることができる光読出方式の放射線固体検出器として、特許文献1や特許文献2等において、記録用の放射線あるいは該放射線の励起により発せられる光(以下記録光という)に対して透過性を有する第1導電層、記録光を受けることにより導電性を呈する記録用光導電層、第1導電層に帯電される電荷と同極性の電荷に対しては略絶縁体として作用し、かつ、該同極性の電荷と逆極性の電荷に対しては略導電体として作用する電荷輸送層、読取光の照射を受けることにより導電性を呈する読取用光導電層、読取光に対して透過性を有する複数の線状電極を備えた第2導電層を、この順に積層して成り、記録用光導電層と電荷輸送層との界面に形成される蓄電部に、画像情報を担持する潜像電荷(静電潜像)を蓄積する検出器を提案している。
【0004】
このような検出器から電荷を検出する場合、各線状電極毎に電荷検出用のチャージアンプを接続する必要があるが、線状電極の配線ピッチは約100μmと非常に狭いため、一般的に複数のチャージアンプが集積化されたマルチチャネルアンプICが用いられる。このマルチチャネルアンプICは、通常TCP(Tape Carrier Package)またはCOF(Chip On Film)に実装された形態で検出器に接続される。
【特許文献1】特開2000−105297号公報
【特許文献2】特開2000−284056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなマルチチャネルアンプICを実装したTCPもしくはCOF等のマルチチャネルアンプIC実装フレキシブル基板の動作確認(製品検査)を行う場合、複数の線状電極に対応した複数の入力用配線の各々と出力用配線との間に試験信号を流して確認する必要があるが、入力用配線の配線ピッチは線状電極の配線ピッチと対応しているため非常に狭く、このような入力用配線の一つ一つにプローブを接触させて検査を行うのは効率的ではない。
【0006】
また、複数の入力用配線の各々に対応した複数のプローブを備えた検査用冶具を用いることも考えられるが、このような検査用冶具は非常に高価である。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、マルチチャネルアンプICもしくはマルチチャネルアンプIC実装フレキシブル基板の動作確認を容易に行うことが可能なマルチチャネルアンプIC、マルチチャネルアンプIC実装フレキシブル基板ならびにマルチチャネルアンプICの試験方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるマルチチャネルアンプICは、複数の電荷検出回路と、複数の電荷検出回路の出力の中から選択された出力のみを出力する出力切替回路とを備え、電荷検出回路が、入力端子、入力端子に接続された電荷検出部、入力端子と電荷検出部との間に試験信号を入力させるための配線部、および入力端子と電荷検出部との間に試験信号を入力可能な状態と入力不可能な状態とを切り替える入力切替部とを備え、出力切替回路と入力切替部とが独立して制御可能なものであることを特徴とするものである。
【0009】
なお、試験信号の入力については、マルチチャネルアンプICに試験信号入力用の端子を設けて外部から試験信号を入力するようにしてもよいし、マルチチャネルアンプICに試験信号発生回路を内蔵して内部から試験信号を入力するようにしてもよい。
【0010】
また、本発明によるマルチチャネルアンプIC実装フレキシブル基板は、フレキシブル基板と、フレキシブル基板上に実装された請求項1記載のマルチチャネルアンプICとを備えたことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明による第1のマルチチャネルアンプICの試験方法は、請求項1記載のマルチチャネルアンプICを用いて、マルチチャネルアンプICの動作確認試験、もしくはマルチチャネルアンプICに接続された配線の状態確認試験を行う方法であって、複数の電荷検出回路の中から一つの電荷検出回路の入力端子と電荷検出部との間のみに試験信号を入力し、出力切替回路により複数の電荷検出回路の出力を切り替えて、試験信号を入力した電荷検出回路のみから入力に対応した信号が出力されていることを確認することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明による第2のマルチチャネルアンプICの試験方法は、請求項1記載のマルチチャネルアンプICを用いて、マルチチャネルアンプICの動作確認試験、もしくはマルチチャネルアンプICに接続された配線の状態確認試験を行う方法であって、複数の電荷検出回路の入力端子を全て短絡し、複数の電荷検出回路の中から一つの電荷検出回路の入力端子と電荷検出部との間のみに試験信号を入力し、出力切替回路により複数の電荷検出回路の出力を切り替えて、全ての電荷検出回路から入力に対応した信号が出力されていることを確認することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるマルチチャネルアンプICによれば、複数の電荷検出回路と、複数の電荷検出回路の出力の中から選択された出力のみを出力する出力切替回路とを備え、電荷検出回路が、入力端子、入力端子に接続された電荷検出部、入力端子と電荷検出部との間に試験信号を入力させるための配線部、および入力端子と電荷検出部との間に試験信号を入力可能な状態と入力不可能な状態とを切り替える入力切替部とを備え、出力切替回路と入力切替部とを独立して制御可能なものとしたので、出力切替回路の出力端子に出力信号モニターを接続し、試験信号入力用の端子に試験信号出力手段を接続(試験信号発生回路を内蔵した場合には不要)した状態で、各電荷検出回路の入力切替部により試験信号の入力を切り替え、出力切替回路において試験対象の電荷検出回路の信号を出力させることにより、マルチチャネルアンプICの動作確認試験、もしくはマルチチャネルアンプICに接続された配線の状態確認試験を容易に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の一実施の形態のマルチチャネルアンプIC実装フレキシブル基板の上面図、図2は上記マルチチャネルアンプIC実装フレキシブル基板に実装されたマルチチャネルアンプICの概略構成図である。なお、本実施の形態においてはマルチチャネルアンプICの一例として4Ch分の入力を備えたものについて説明する。
【0015】
このマルチチャネルアンプIC実装フレキシブル基板1は、フレキシブル基板10上にマルチチャネルアンプIC20を実装した所謂COFと呼ばれる形態のものである。
【0016】
マルチチャネルアンプIC20は、4Ch分の入力端子TL1、TL2、TL3、TL4と、出力端子TOUTと、試験信号入力用端子TTESTとを備えており、フレキシブル基板10は、マルチチャネルアンプIC20の入力端子TL1、TL2、TL3、TL4の各々に対応した入力用配線L1、L2、L3、L4と、出力端子TOUTに対応した出力用配線OUTと、試験信号入力用端子TTESTに対応した試験信号入力用配線TESTを備えている。
【0017】
マルチチャネルアンプIC20の内部は、複数の電荷検出回路と、この複数の電荷検出回路の出力の中から選択された出力のみを出力するマルチプレクサー(出力切替回路)24と、マルチプレクサー24に接続された出力バッファー25とから構成されており、出力バッファー25の出力側には出力端子TOUTが接続されている。
【0018】
各電荷検出回路は、入力端子Tと、チャージアンプ21、ローパスフィルター(LPF)22およびサンプルホールド(S/H)23から構成される電荷検出部と、入力端子Tとチャージアンプ21との間に試験信号を入力させるための配線部26と、入力端子Tとチャージアンプ21との間に試験信号を入力可能な状態と入力不可能な状態とを切り替えるスイッチ(入力切替部)SWとから構成されている。なお、マルチプレクサー(出力切替回路)24とスイッチ(入力切替部)SWとは独立して制御可能なものである。また、配線部26は複数の電荷検出回路で共用しており、共用部からスイッチSWを介して各電荷検出回路の入力端子Tとチャージアンプ21との間に接続されている。また配線部26の一端には、マルチチャネルアンプIC20の外部から試験信号を入力させるための試験信号入力用端子TTESTが接続されている。
【0019】
さらにマルチチャネルアンプIC20は、内部のSWの制御等を行うための不図示の制御信号入力用配線と、この制御信号入力用配線に外部から接続させるための不図示の制御信号入力用端子とを備えている。
【0020】
上記のように構成されたマルチチャネルアンプIC20およびマルチチャネルアンプIC実装フレキシブル基板1の第1の試験方法について説明する。図3はマルチチャネルアンプIC20およびマルチチャネルアンプIC実装フレキシブル基板1の第1の試験方法を示すタイミングチャートである。
【0021】
最初にマルチチャネルアンプIC20の動作確認について説明する。マルチチャネルアンプIC20をフレキシブル基板10に実装する前の状態で、マルチチャネルアンプIC20の出力端子TOUTに出力信号モニターを接続し、試験信号入力用端子TTESTに試験信号出力手段を接続する。
【0022】
図3に示すように、試験信号をマルチチャネルアンプIC20内に入力した状態で、Ch1のSW1のみをオンにする。この状態でマルチプレクサー24の出力を切り替えてCh1からCh4までの出力を確認し、Ch1のみ試験信号に対応した出力があることを確認する。以下残りのCh2からCh4も同様に各ChのSWのみをオン(試験信号を入力可能な状態)にして、そのChのみ試験信号に対応した出力があることを確認する。上記の確認がいずれも正常に行えれば、マルチチャネルアンプIC20内でショート等の欠陥が無いことが確認できる。
【0023】
上記のようにしてマルチチャネルアンプIC20の動作確認を行ったのち、このマルチチャネルアンプIC20をフレキシブル基板10に実装して、フレキシブル基板10の出力用配線OUT端部に出力信号モニターを接続し、試験信号入力用配線TEST端部に試験信号出力手段を接続する。この状態で上記と同様にCh1からCh4までの各ChのSWのみをオンにして、そのChのみ試験信号に対応した出力があることが確認できれば、フレキシブル基板10に形成された配線間でショート等の欠陥が無いことが確認できる。
【0024】
次にマルチチャネルアンプIC20およびマルチチャネルアンプIC実装フレキシブル基板1の第2の試験方法について説明する。図4はマルチチャネルアンプIC20およびマルチチャネルアンプIC実装フレキシブル基板1の第2の試験方法を示すタイミングチャートである。
【0025】
最初にマルチチャネルアンプIC20の動作確認について説明する。マルチチャネルアンプIC20をフレキシブル基板10に実装する前の状態で、マルチチャネルアンプIC20の出力端子TOUTに出力信号モニターを接続し、試験信号入力用端子TTESTに試験信号出力手段を接続し、さらに入力端子TL1、TL2、TL3、TL4を全て短絡する。
【0026】
図4に示すように、試験信号をマルチチャネルアンプIC20内に入力した状態で、Ch1のSW1のみをオンにする。この状態でマルチプレクサー24の出力を切り替えてCh1からCh4までの出力を確認し、全てのChで試験信号に対応した出力があることを確認する。以下残りのCh2からCh4も同様に各ChのSWのみをオンにして、全てのChで試験信号に対応した出力があることを確認する。上記の確認がいずれも正常に行えれば、マルチチャネルアンプIC20内で断線等の欠陥が無いことが確認できる。
【0027】
上記のようにしてマルチチャネルアンプIC20の動作確認を行ったのち、このマルチチャネルアンプIC20をフレキシブル基板10に実装して、フレキシブル基板10の出力用配線OUT端部に出力信号モニターを接続し、試験信号入力用配線TEST端部に試験信号出力手段を接続し、入力用配線L1、L2、L3、L4の各々の端部を全て短絡する。この状態で上記と同様にCh1からCh4までの各ChのSWのみをオンにして、全てのChで試験信号に対応した出力があることが確認できれば、フレキシブル基板10に形成された配線に断線等の欠陥が無いことが確認できる。
【0028】
なお、本実施の形態においてマルチチャネルアンプICは4Chのものとしたが、これに限らず複数Chであれば何Chでもよい。
【0029】
また、電荷検出部の構成も上記に限定されるものではなく、電荷が検出可能な態様であればどのようなものでもよい。
【0030】
また、マルチチャネルアンプICを実装したマルチチャネルアンプIC実装フレキシブル基板については、COFと呼ばれる形態のもの以外に、TCPと呼ばれる形態のものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態のマルチチャネルアンプIC実装フレキシブル基板の上面図
【図2】上記マルチチャネルアンプIC実装フレキシブル基板に実装されたマルチチャネルアンプICの概略構成図
【図3】マルチチャネルアンプICおよびマルチチャネルアンプIC実装フレキシブル基板の第1の試験方法を示すタイミングチャート
【図4】マルチチャネルアンプICおよびマルチチャネルアンプIC実装フレキシブル基板の第2の試験方法を示すタイミングチャート
【符号の説明】
【0032】
1 マルチチャネルアンプIC実装フレキシブル基板
10 フレキシブル基板
20 マルチチャネルアンプIC
21 チャージアンプ
22 ローパスフィルター
23 サンプルホールド
24 マルチプレクサー
25 出力バッファー
26 配線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電荷検出回路と、
該複数の電荷検出回路の出力の中から選択された出力のみを出力する出力切替回路とを備え、
前記電荷検出回路が、
入力端子、
該入力端子に接続された電荷検出部、
前記入力端子と前記電荷検出部との間に試験信号を入力させるための配線部、
および前記入力端子と前記電荷検出部との間に前記試験信号を入力可能な状態と入力不可能な状態とを切り替える入力切替部とを備え、
前記出力切替回路と前記入力切替部とが独立して制御可能なものであることを特徴とするマルチチャネルアンプIC。
【請求項2】
フレキシブル基板と、
該フレキシブル基板上に実装された請求項1記載のマルチチャネルアンプICとを備えたことを特徴とするマルチチャネルアンプIC実装フレキシブル基板。
【請求項3】
請求項1記載のマルチチャネルアンプICを用いて、該マルチチャネルアンプICの動作確認試験、もしくは該マルチチャネルアンプICに接続された配線の状態確認試験を行うマルチチャネルアンプICの試験方法であって、
前記複数の電荷検出回路の中から一つの前記電荷検出回路の前記入力端子と前記電荷検出部との間のみに前記試験信号を入力し、
前記出力切替回路により前記複数の電荷検出回路の出力を切り替えて、前記試験信号を入力した前記電荷検出回路のみから前記入力に対応した信号が出力されていることを確認することを特徴とするマルチチャネルアンプICの試験方法。
【請求項4】
請求項1記載のマルチチャネルアンプICを用いて、該マルチチャネルアンプICの動作確認試験、もしくは該マルチチャネルアンプICに接続された配線の状態確認試験を行うマルチチャネルアンプICの試験方法であって、
前記複数の電荷検出回路の前記入力端子を全て短絡し、
前記複数の電荷検出回路の中から一つの前記電荷検出回路の前記入力端子と前記電荷検出部との間のみに前記試験信号を入力し、
前記出力切替回路により前記複数の電荷検出回路の出力を切り替えて、全ての前記電荷検出回路から前記入力に対応した信号が出力されていることを確認することを特徴とするマルチチャネルアンプICの試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−114966(P2006−114966A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297439(P2004−297439)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】