ミラーアレイ
【課題】ミラーアレイの構成を簡略化する。
【解決手段】ミラーアレイ100は、ベース部2と、ベース部2に支持された複数のミラー110と、ミラー110に連結されてミラー110を駆動する複数のアクチュエータ1,1とを備え、ミラー110を互いに直交する主軸X及び副軸Y回りに回動させる。アクチュエータ1は、副軸Y方向に延びるアクチュエータ本体3と、アクチュエータ本体3の表面31に積層された圧電素子4とを有し、圧電素子4を伸縮させることによってアクチュエータ本体3を傾動させるように構成されている。各ミラー110には、副軸Yを挟んで並ぶ2つのアクチュエータ1,1が主軸Xに対して一方の側だけに設けられている。
【解決手段】ミラーアレイ100は、ベース部2と、ベース部2に支持された複数のミラー110と、ミラー110に連結されてミラー110を駆動する複数のアクチュエータ1,1とを備え、ミラー110を互いに直交する主軸X及び副軸Y回りに回動させる。アクチュエータ1は、副軸Y方向に延びるアクチュエータ本体3と、アクチュエータ本体3の表面31に積層された圧電素子4とを有し、圧電素子4を伸縮させることによってアクチュエータ本体3を傾動させるように構成されている。各ミラー110には、副軸Yを挟んで並ぶ2つのアクチュエータ1,1が主軸Xに対して一方の側だけに設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のミラーと該ミラーを駆動するアクチュエータとを備えたミラーアレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ミラーを互いに直交する主軸及び副軸回りに回動させるミラー装置が知られている。例えば、特許文献1には、1つのミラーにつき4つのアクチュエータを備えたミラー装置が開示されている。詳しくは、2つで1組のアクチュエータが、ミラーの主軸を挟んで両側に、即ち、2組設けられている。各組において、2つのアクチュエータは、副軸を挟んで並んでいる。各アクチュエータは、副軸方向に延びる板状のアクチュエータ本体と、該アクチュエータ本体に対向して設けられた対向電極とを備えている。各アクチュエータ本体は、対向電極との間の静電引力により対向電極に引きつけられるように傾動する。このように構成されたミラー装置においては、何れかの組の2つのアクチュエータを下方に傾動させることによって、ミラーが主軸回りに回動する。何れの組のアクチュエータを傾動させるかによって、ミラーの主軸回りの回動方向を切り替えることができる。一方、両方の組において副軸に対して一方の側に位置するアクチュエータを下方に傾動させることによって、ミラーが副軸回りに回動する。副軸に対して何れの側のアクチュエータを傾動させるかによって、ミラーの副軸回りの回動方向を切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−229916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数のミラーを備えるミラーアレイにおいては、ミラーの個数に応じて、アクチュエータの個数も多くなる。そのため、ミラーアレイに含まれるミラーの個数を増やすためにも、ミラー及びアクチュエータの構成を簡略化させることが好ましい。
【0005】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ミラーアレイの構成を簡略化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示されたミラーアレイは、ベース部と、該ベース部に支持された複数のミラーと、該ミラーに連結されて該ミラーを駆動する複数のアクチュエータとを備え、該ミラーを互いに直交する主軸及び副軸回りに回動させるものである。そして、前記アクチュエータは、前記副軸方向に延びるアクチュエータ本体と、該アクチュエータ本体の表面に積層された圧電素子とを有し、該圧電素子を伸縮させることによって該アクチュエータ本体を傾動させるように構成されており、前記各ミラーには、前記副軸を挟んで並ぶ2つの前記アクチュエータが前記主軸に対して一方の側だけに設けられている。
【0007】
前記の構成によれば、1つのミラーにつき2つのアクチュエータが設けられている。すなわち、特許文献1に記載のミラー装置に比べて、ミラー1つ当たりのアクチュエータの個数が減少している。そのため、ミラーアレイの構成を簡略化することができる。
【0008】
また、アクチュエータ本体の表面に圧電素子を積層させた構成においては、圧電素子を伸張させることによってアクチュエータ本体を圧電素子が積層された面とは反対側に傾動させることができる一方、圧電素子を収縮させることによってアクチュエータ本体を圧電素子側に傾動させることができる。そのため、アクチュエータをミラーの主軸に対して片側だけに設ける構成であっても、ミラーを主軸回りの何れの方向にも回動させることができる。
【0009】
さらに、ミラーごとに設けられた2つのアクチュエータは、副軸を挟んで並んでいるため、一方のアクチュエータを傾動させることによって、ミラーを副軸回りに回動させることができる。このとき、他方のアクチュエータを一方のアクチュエータとは反対側に傾動させることによって、ミラーの副軸回りの回動角を大きくすることができる。
【0010】
すなわち、アクチュエータをミラーの主軸に対して片側だけに設けるという簡略な構成であっても、アクチュエータを圧電駆動とし且つ2つのアクチュエータを副軸を挟んで並設することによって、ミラーを主軸回りにも副軸回りにも回動させることができる。
【発明の効果】
【0011】
前記ミラーアレイによれば、ミラーの駆動性能を損なうことなく、ミラーアレイを簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係るミラーアレイの平面図である。
【図2】ミラーアレイの下面図である。
【図3】ミラーアレイの、図1のIII−III線における断面図である。
【図4】波長選択スイッチの概略図である。
【図5】第1ヒンジの平面図である。
【図6】第2ヒンジの平面図である。
【図7】シミュレーションに用いた基本モデルの平面図である。
【図8】第1ヒンジのモデル0の平面図である。
【図9】第1ヒンジのモデル1の平面図である。
【図10】第1ヒンジのモデル2の平面図である。
【図11】第1ヒンジのモデル3の平面図である。
【図12】線条部の主軸方向成分と副軸方向成分を説明するための説明図である。
【図13】第1ヒンジのモデル4の平面図である。
【図14】第1ヒンジのモデル5の平面図である。
【図15】第1ヒンジのモデル6の平面図である。
【図16】第1ヒンジのモデル7の平面図である。
【図17】第1ヒンジのモデル8の平面図である。
【図18】第1ヒンジのモデル9の平面図である。
【図19】線条部の主軸方向成分と副軸方向成分を説明するための説明図である。
【図20】第1ヒンジのモデル10の平面図である。
【図21】第1ヒンジのモデル11の平面図である。
【図22】第1ヒンジのモデル12の平面図である。
【図23】第1ヒンジのモデル13の平面図である。
【図24】第1ヒンジのモデル14の平面図である。
【図25】第1ヒンジのモデル15の平面図である。
【図26】第1ヒンジのモデル16の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1は、ミラーアレイ100の平面図を、図2は、ミラーアレイ100の下面図を、図3はミラーアレイ100の、図1のIII−III線における断面図を示す。
【0015】
ミラーアレイ100は、枠状のベース部2と、複数のアクチュエータ1,1,…と、複数のミラー110,110,…と、各アクチュエータ1をミラー110に連結する第1ヒンジ6と、各ミラー110をベース部2に連結する第2ヒンジ7と、アクチュエータ1,1,…を制御する制御部120とを備えている。1つのミラー110につき、2つのアクチュエータ1,1が設けられている。すなわち、各ミラー110は、2つのアクチュエータ1,1により駆動される。詳しくは、ミラー110は、互いに直交する主軸X及び副軸Y回りに回動する。
【0016】
このミラーアレイ100は、SOI(Silicon on Insulator)基板200を用いて製造されている。SOI基板200は、単結晶シリコンで形成された第1シリコン層210と、SiO2で形成された酸化膜層220と、単結晶シリコンで形成された第2シリコン層230とがこの順で積層されて構成されている。
【0017】
このミラーアレイ100は、例えば、波長選択スイッチ300に組み込まれて使用される。図4に、波長選択スイッチ300の概略図を示す。
【0018】
波長選択スイッチ300は、1つの入力用光ファイバ310と、3つの出力用光ファイバ320〜340と、光ファイバ310〜340に設けられたコリメータ350と、回折格子で構成された分光器360と、レンズ370と、ミラーアレイ100とを備えている。尚、この例では、出力用ファイバは、3本だけであるが、これに限られるものではない。
【0019】
この波長選択スイッチ300においては、入力用光ファイバ310を介して、複数の異なる波長の光信号が入力される。この光信号は、コリメータ350により平行光にされる。平行光となった光信号は、分光器360によって、所定の数の特定波長の光信号に分波される。分波された光信号は、レンズ370によって集光され、ミラーアレイ100に入射する。分波される特定波長の個数と、ミラーアレイ100のミラー110の個数は対応している。つまり、分波された特定波長の光信号は、それぞれ対応するミラー110に入射する。そして、該光信号は、各ミラー110により反射し、再びレンズ370を通って、分光器360へ入射する。分光器360は、複数の異なる波長の光信号を合波し、出力用光ファイバ320〜340へ出力する。ここで、ミラーアレイ100は、各ミラー110を主軸回りに回動させることによって光信号の反射角度を調整して、対応する光信号がどの出力用光ファイバ320〜340へ入力されるのかを切り替える。さらに詳しくは、光信号を入力する出力用光ファイバ320〜340を切り替えるために各ミラー110の主軸回りの回動角を変更するときには、ミラー110を副軸回りに回動させた状態で主軸回りの回動角を変更する。こうすることによって、主軸回りの回動角を変更する際に、ミラー110からの反射光が所望していない出力用光ファイバへ入力されてしまうことを防止している。
【0020】
続いて、ミラーアレイ100の構成について詳細に説明する。
【0021】
ベース部2は、全体の図示は省略するが、概略長方形の枠状に形成されている。ベース部2の大部分は、第1シリコン層210、酸化膜層220及び第2シリコン層230で形成されている。
【0022】
ミラー110は、概略長方形状をした板状に形成されている。ミラー110は、第1シリコン層210の表面にAu/Ti膜を成膜して形成されている。
【0023】
第1ヒンジ6は、一端がアクチュエータ1の先端に連結され、他端がミラー110の端縁に連結されている。第1ヒンジ6の詳細な形状については、後述する。尚、図1〜3においては、第1ヒンジ6を簡略化して図示している。ミラー110には、2つの第1ヒンジ6,6が連結されている。つまり、ミラー110には、2つのアクチュエータ1,1が第1ヒンジ6,6を介して連結されている。2つの第1ヒンジ6,6は、ミラー110の端縁の中点に対して対称な位置に連結されている。第1ヒンジ6は、第1シリコン層210で形成されている。
【0024】
第2ヒンジ7の一端は、ミラー110の、第1ヒンジ6が連結された端縁と対向する端縁に連結されている。一方、第2ヒンジ7の他端は、ベース部2に連結されている。第2ヒンジ7の詳細な形状については、後述する。尚、図1〜3においては、第2ヒンジ7を簡略化して図示している。第2ヒンジ7は、ミラー110の端縁の中点に連結されている。第2ヒンジ7は、第1シリコン層210で形成されている。
【0025】
各アクチュエータ1は、前記ベース部2と、該ベース部2に連結されたアクチュエータ本体3と、アクチュエータ本体3の表面に形成された圧電素子4と、アクチュエータ本体3に対向して設けられた対向電極5とを備えている。
【0026】
アクチュエータ本体3は、その基端がベース部2に連結されている。アクチュエータ本体3は、ベース部2に片持ち状に支持されている。また、アクチュエータ本体3の先端に前記第1ヒンジ6が連結されている。アクチュエータ本体3は、第1シリコン層210で形成されている。アクチュエータ本体3は、ベース部2のうち第1シリコン層210で形成された部分と一体に形成されている。
【0027】
圧電素子4は、アクチュエータ本体3の表面31(対向電極と対向する面32とは反対側の面)に形成されている。圧電素子4は、下部電極41と、上部電極43と、これらに挟持された圧電体層42とを有する。下部電極41、圧電体層42、上部電極43は、アクチュエータ本体3の表面31にこの順で積層されている。圧電素子4は、SOI基板200とは別の部材で形成されている。詳しくは、下部電極41は、Pt/Ti膜で形成されている。圧電体層42は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)で形成されている。上部電極43は、Au/Ti膜で形成されている。
【0028】
圧電体層42は、アクチュエータ本体3の長手方向の全域に亘って設けられている。圧電体層42は、アクチュエータ本体3の基端部からベース部2側にも延びている。そして、圧電体層42は、ベース部2上において、隣接する別のアクチュエータの圧電体層42と連結されている。つまり、4つのアクチュエータ1,1,…の圧電体層42,42,…は、1つに連結されている。
【0029】
上部電極43は、圧電体層42のうちアクチュエータ本体3上の部分に設けられた本体43aと、圧電体層42のうちベース部2上の部分に設けられた端子(以下、「上部端子」ともいう)43bと、該本体43aと端子43bとを連結する連結部43cとを有している。連結部43cは、本体43aや端子43bよりも細い形状となっている。
【0030】
下部電極41は、圧電体層42と概ね同様の形状をしており、圧電体層42の下方に位置している。そのため、下部電極41は、基本的には、外部に露出していない。ただし、下部電極41の端子(以下、「下部端子」ともいう)41aだけが、外部に露出している。下部電極41の下部端子41aは、4つのアクチュエータ1,1,…の下部電極41,41,…で共通である。
【0031】
対向電極5は、ベース部2と一体的に構成されている。対向電極5は、アクチュエータ本体3の基端部33と対向して設けられている。対向電極5とアクチュエータ本体3の基端部33との間には、間隙G1が設けられている。対向電極5は、アクチュエータ本体3ごとに設けられている。対向電極5は、第2シリコン層230で形成されている。対向電極5は、ベース部2のうち第2シリコン層230で形成された部分と一体に形成されている。ただし、ベース部2の第2シリコン層230においては、4つの対向電極5,5,…のそれぞれを分離させるための溝234,234,…が形成されている。該溝234は、酸化膜層220まで達している。こうして、4つの対向電極5,5,…は、それぞれ電気的に絶縁されている。間隙G1は、酸化膜層220を除去することによって形成されている。
【0032】
ベース部2には、詳しくは後述するが、アクチュエータ本体3と対向電極5との間の静電容量を検出するための第1及び第2検出端子81,82が設けられている。詳しくは、第1検出端子81は、ベース部2における第1シリコン層210に設けられている。第1検出端子81は、第1シリコン層210に設けられているので、アクチュエータ本体3と電気的に接続されていることになる。また、ベース部2には、第2シリコン層230を第1シリコン層210側に露出させるための概略長方形状の開口21が形成されている。この開口21は、第1シリコン層210及び酸化膜層220を貫通している。第2検出端子82は、開口21において露出する第2シリコン層230に設けられている。第2検出端子82は、第2シリコン層230に設けられているので、対向電極5と電気的に接続されていることになる。
【0033】
さらに、ベース部2の第1シリコン層210には、開口21を挟んで、第1検出端子81とを反対側に、参照端子83が設けられている。この参照端子83は、詳しくは後述するが、参照静電容量を検出するための端子である。
【0034】
また、ベース部2のうち、開口21に隣接し且つ開口21よりも参照端子83側の部分には、第1シリコン層210と第2シリコン層230との間に間隙G2が設けられている。間隙G2は、開口21と連通している。間隙G2は、酸化膜層220を除去することによって形成されている。
【0035】
次に、このように構成されたミラーアレイ100の動作について説明する。ミラーアレイ100の制御部120は、上部電極43の端子43bと下部電極41の下部端子41aとに駆動電圧を印加する。この駆動電圧に応じて、圧電体層42が収縮又は伸張し、アクチュエータ本体3が上方(表面31側)又は下方(裏面32側)に傾動する。さらに詳しくは、ミラー110に連結された2つのアクチュエータ本体3,3を同じ方向に傾動させることによって、ミラー110を主軸X回りに回動させることができる。このとき、2つのアクチュエータ本体3,3を上方に傾動させるか、下方に傾動させるかによって、ミラー110の主軸X回りの回動方向を切り替えることができる。一方、2つのアクチュエータ本体3,3をそれぞれ逆方向に傾動させることによって、ミラー110を副軸Y回りに回動させることができる。このとき、上方に傾動させるアクチュエータ本体3と下方に傾動させるアクチュエータ本体3とを入れ替えることによって、ミラー110の副軸Y回りの回動方向を切り替えることができる。
【0036】
また、制御部120は、ベース部2に設けられた第1及び第2検出端子81,82を介して、アクチュエータ本体3と対向電極5との間の静電容量を検出することによって、アクチュエータ本体3の変位、即ち、傾動量を検出する。つまり、アクチュエータ本体3が傾動すると、アクチュエータ本体3と対向電極5との間の間隙G1の大きさが変化する。それにより、アクチュエータ本体3と対向電極5との間の静電容量が変化するので、該静電容量を検出することによって、アクチュエータ本体3の傾動量を検出することができる。そして、制御部120は、第1及び第2検出端子81,82間の静電容量に基づいて、アクチュエータ本体3の傾動量が所望の値となるように駆動電圧を調整する。こうすることで、圧電素子4に特性変化が生じたとしても、アクチュエータ本体3の傾動量を安定的に制御することができる。
【0037】
尚、静電容量を検出する際には、制御部120は、参照端子83と第2検出端子82とを介して、ベース部2における間隙G2を挟んだ第1シリコン層210と第2シリコン層230との間の静電容量を検出している。間隙G2は、アクチュエータ本体3を作動させても変化しないはずなので、間隙G2の静電容量を参照用の静電容量として用いることができる。すなわち、間隙G1における静電容量は、アクチュエータ本体3の傾動前後での変化量が微小であるために、それだけでは回路内で大きな増幅を得にくい。しかし、同様の静電容量を持つ参照電極を設けることによって、傾動前の静電容量分を差動で打ち消し、静電容量の傾動前後での変化分のみを大きく増幅できる。これにより、アクチュエータ本体3の傾動に起因する静電容量の変化を精度良く検出することができる。尚、必ずしも間隙G2を設ける必要はなく、酸化膜層220が存在する部分における静電容量を参照用として用いてもよい。ただし、この場合には、参照用の静電容量の値を、傾動前の間隙G1における静電容量に合わせる必要がある。
【0038】
ミラー110の回動角を一定に保持する場合の制御方法については、検出部の静電容量を一定に保つフィードバック制御の他に、上位システムがミラーからの反射光を監視し、光量が一定となるように演算装置へフィードバックをかける方法を用いてもよい。あるいは、両者を組み合わせて用いることもできる。
【0039】
制御部120は、CPUのような演算装置で構成され得る。制御部120は、ミラー110を所望の回動角に回動させるための駆動電圧の電圧値を、演算装置からアクセス可能な記憶装置に記憶されているパラメータを参照して決定する。パラメータは、各駆動電圧ごとのミラーの回動角を表しており、テーブル形式のデータであったり、近似曲線の係数の形式で記憶装置に記憶されている。
【0040】
記憶装置に記憶されるパラメータには、温度変化といった周囲環境によって生じる変位を含む場合もある。他に、電圧を印可しない状態では圧電素子によって発生するアクチュエータの反りが一定していないため、アクチュエータの反りを基準面に一致させるためのオフセット電圧を記憶装置に記憶する場合もある。これらのパラメータは、通常、ミラーごとに必要であるが、1つで代表する場合もある。
【0041】
前記のようなCPUによる電圧印加指示は、回路を簡略化するために、1つ1つのミラー110に対して順番に行うようにしてもよい。
【0042】
次に、ミラーアレイ100の製造方法について説明する。
【0043】
まず、SOI基板200を用意する。
【0044】
続いて、間隙G1,G2となる部分の酸化膜層220を犠牲層エッチングにより除去する。この際、第1シリコン層210に複数の貫通孔を形成し、該貫通孔を介して犠牲層エッチングを行う。また、間隙G1となる部分に関しては、酸化膜層220を全て除去するのではなく、対向電極5となる部分のうちアクチュエータ本体3の先端側の端部に酸化膜層220が一部残留するようにしておく。
【0045】
その後、第1シリコン層210の表面にSiO2膜、Pt/Ti膜250、PZT膜及びAu/Ti膜を順に成膜し、その後、それらをエッチングにより所定の形状に形成する。こうして、第1シリコン層210の表面に圧電素子4を形成する。尚、SiO2膜等の成膜により、先の犠牲層エッチングで用いた貫通孔が埋められる。
【0046】
続いて、第1シリコン層210をエッチングして、ベース部2、アクチュエータ本体3,3,…、ミラー110,110、第1ヒンジ6,6,…、及び第2ヒンジ7,7を形成する。その後、ベース部2の開口21において露出する酸化膜層220をエッチングにより除去する。
【0047】
次に、第2シリコン層230をエッチングして対向電極5を形成する。このとき、対向電極5のうち、この工程で除去される部分と隣接する側の端部(即ち、アクチュエータ本体3の先端側の端部)には酸化膜層220が残っているので、エッチングガスが間隙G1内へ流入することが防止される。それにより、間隙G1を形成する第1及び第2シリコン層210,230が不必要に加工されることが防止される。
【0048】
続いて、アクチュエータ本体3,3,…、ミラー110,110、第1ヒンジ6,6,…及び第2ヒンジ7,7の裏側の酸化膜層220をエッチングにより除去する。このとき、対向電極5となる部分のうちアクチュエータ本体3の先端側の端部に残っていた酸化膜層220も除去され、完全な間隙G1が形成される。
【0049】
次に、Au/Ti膜を成膜して、ミラー110の表面の鏡面、ミラー110の裏面のバランスウェイト、並びにベース部2における第1検出端子81、第2検出端子82及び参照端子83を形成する。
【0050】
こうして、ミラーアレイ100が製造される。
【0051】
続いて、第1ヒンジ6の詳細な形状について説明する。図5に第1ヒンジ6の平面図を示す。
【0052】
第1ヒンジ6は、ミラー側に設けられた第1つづら折り部61と、アクチュエータ側に設けられた第2つづら折り部62とを有している。第1つづら折り部61と第2つづら折り部62は、1本の線条で連続的に形成されている。
【0053】
第1つづら折り部61は、直線状に延びる線条部61aと、折り返すように屈曲する屈曲部61bとが交互に繋がっており、全体としてつづら折り状に屈曲している。第1つづら折り部61は、一端がミラー110の主軸X方向(幅方向)外側の端部に連結されている。線条部61a,61a,…は、主軸X方向に延びており、互いに平行で且つ等間隔に配置されている。屈曲部61b,61b,…は、主軸X方向の内側と外側とに位置している。換言すると、第1つづら折り部61は、主軸X方向へ蛇行しながら副軸Y方向(長手方向)に延びている。第1つづら折り部61は、ミラー110から主軸X方向内側へ延びる線条部61aで始まり、屈曲部61bを介して、主軸X方向外側へ延びる線条部61a及び主軸X方向内側へ延びる線条部61aを繰り返し、最後は主軸X方向内側へ延びる線条部61aで終わっている。
【0054】
第2つづら折り部62は、直線状に延びる線条部62aと、折り返すように屈曲する屈曲部62bとが交互に繋がっており、全体としてつづら折り状に屈曲している。第2つづら折り部62は、一端がアクチュエータ1の主軸X方向外側の端部に連結されている。線条部62a,62a,…は、副軸Y方向に延びて、互いに平行で且つ等間隔に配置されている。屈曲部62b,62b,…は、副軸Y方向のアクチュエータ側とミラー側とに位置している。換言すると、第2つづら折り部62は、副軸Y方向へ蛇行しながら主軸X方向に延びている。第2つづら折り部62は、アクチュエータ1から、ミラー側へ延びる線条部62aで始まり、屈曲部62bを介して、アクチュエータ側へ延びる線条部62a及びミラー側へ延びる線条部62aを繰り返し、最後はミラー側へ延びる線条部62aで終わっている。最後のミラー側へ延びる線条部62aが第1つづら折り部61に連結されている。
【0055】
1つのミラー110に連結された2つの第1ヒンジ6,6は、副軸Yに対して線対称に構成されている。
【0056】
このように構成された第1ヒンジ6によれば、アクチュエータ1の駆動力(変位)をミラー110に効率良く伝達することができると共に、ミラー110の回動を妨げてしまうのを防止することができる。
【0057】
つまり、アクチュエータ1の駆動力をミラー110に効率良く伝達するためには、第1ヒンジ6は、主軸X回りの曲げ剛性が小さすぎても、大きすぎてもよくない。主軸X回りの曲げ剛性が小さすぎると、アクチュエータ1の駆動力を第1ヒンジ6が吸収してしまい、ミラー110に伝達される駆動力が減少する。一方、主軸X回りの曲げ剛性が大きすぎると、アクチュエータ1の傾動を妨げてしまう。つまり、例えば、アクチュエータ本体3の先端が下方へ沈み込むように傾動する場合、ミラー110は、アクチュエータ側が沈み込みむように回動する。すなわち、アクチュエータ1及びミラー110は全体として、第1ヒンジ6で屈曲した状態になる。ここで、第1ヒンジの曲げ剛性が大きいと、第1ヒンジ6で屈曲することが難しい。その結果、アクチュエータ1は、第1ヒンジ6及びミラー110が抵抗となって、傾動が妨げられてしまう。
【0058】
それに対して、本実施形態では、第1ヒンジ6は、主軸X方向に延びる複数の線条部61a,61a,…を含む第1つづら折り部61と、副軸Y方向に延びる複数の線条部62a,62a,…を含む第2つづら折り部62とを有している。第1つづら折り部61の線条部61a,61a,…は主軸X方向に延びるので、主軸X回りの捩れ変形が生じ易い。つまり、第1つづら折り部61は、主軸X回りの曲げ剛性が小さい。一方、第2つづら折り部62の線条部62a,62a,…は副軸Y方向に延びるので、主軸X回りには曲がり難い。つまり、第2つづら折り部62は、主軸X回りの曲げ剛性が大きい。こうして、第1ヒンジ6は、主軸X回りの曲げ剛性が小さい第1つづら折り部61と主軸X回りの曲げ剛性が大きい第2つづら折り部62とを組み合わせることによって、主軸X回りの曲げ剛性を調節して、全体として適度な曲げ剛性を実現することができる。
【0059】
また、ミラー110の回動を妨げないようにするためには、第1ヒンジ6は、副軸Y回りの曲げ剛性が小さいことが好ましい。つまり、ミラー110を副軸Y回りに回動させる際には、2つのアクチュエータ1,1は、副軸Yに対して平行な状態のまま単純に上下に傾動するのに対し、ミラー110は副軸Y回りに回動する。そのため、第1ヒンジ6は、副軸Y回りに捩れなければならない。第1ヒンジ6の副軸Y回りの曲げ剛性が大きいと、2つのアクチュエータ1,1が上下に傾動しても、第1ヒンジ6,6が抵抗となって、ミラー110の副軸Y回りの回動を妨げてしまう。
【0060】
それに対して、本実施形態では、第1ヒンジ6は、副軸Y方向に延びる複数の線条部62a,62a,…を含む第2つづら折り部62とを有している。第2つづら折り部62の線条部62a,62a,…は副軸Y方向に延びるので、副軸Y回りの捩れ変形が生じ易い。つまり、第2つづら折り部62は、副軸Y回りの曲げ剛性が小さい。こうして、第1ヒンジ6は、副軸Y回りの曲げ剛性が小さい第2つづら折り部62を有することによって、全体としての副軸Y回りの曲げ剛性を低減している。
【0061】
次に、第2ヒンジ7の詳細な形状について説明する。図6に第2ヒンジ7の平面図を示す。
【0062】
第2ヒンジ7は、1本の線条で形成されている。第2ヒンジ7は、一端がミラー110に連結されており、そこから反時計回りの渦巻状に渦巻の中心に向かって延び、渦巻の中心で折り返して、そこから時計回りの渦巻状に渦巻の外側に向かって延び、他端がベース部2に連結されている。詳しくは、第2ヒンジ7は、主軸X方向に延びる横線条部71aと、副軸Y方向に延びる縦線条部71bとが交互に繋がっており、全体として渦巻形状を形成している。第2ヒンジ7の一端及び他端は、副軸Y上に位置している。第2ヒンジ7を副軸Yで2分割した場合に、副軸Yに対して一側の部分と他側の部分とは渦巻の中心に対して点対称の形状をしている。
【0063】
このように構成された第2ヒンジ7は、渦巻状をしているので、ミラー110の主軸X回りの回動と副軸Y回りに回動とを妨げないようにすることができる。すなわち、第2ヒンジ7を渦巻状に形成することによって、第2ヒンジ7は、或る程度の長さを有する複数の横線条部71a,71a,…と、或る程度の長さを有する複数の縦線条部71b,71b,…とを含むようになる。横線条部71a,71a,…は、主軸X方向に延びるので、主軸X回りのねじり剛性が小さい。また、縦線条部71b,71b,…は、副軸Y方向に延びるので、副軸Y回りのねじり剛性が小さい。つまり、第2ヒンジ7は、主軸X回りにも、副軸Y回りにも回動し易い。その結果、ミラー110の主軸X回りの回動と副軸Y回りの回動を妨げない。
【0064】
また、横線条部71a,71a,…は、渦巻きの中心を通り且つ主軸Xを挟んで両側に均等に配置されると共に、縦線条部71b,71b,…は、副軸Yを挟んで両側に均等に配置されている。そのため、ミラー110が主軸X回り及び副軸Y回りに変形する際の第2ヒンジ7の変形が主軸X及び副軸Yに対して均等になる。
【0065】
〈シミュレーション〉
続いて、第1ヒンジ6の形状を変化させた場合のミラー110の回動角のシミュレーションについて説明する。尚、以下のシミュレーションに用いたモデルは、一例に過ぎず、これらに限定されるものではない。
【0066】
図7にシミュレーションに用いた基本モデルの平面図を示す。シミュレーションでは、図7に示すようなモデルを用いた。アクチュエータ本体3、第1ヒンジ6、ミラー110、第2ヒンジ7は、厚さ7.5μmのシリコンで構成され、アクチュエータ本体3の表面の全面(図7においてハッチングが付された領域)に厚さ3μmのPZTが積層されている。シミュレーションに用いた解析ツールは、ANSYS Workbench Mechanical 13.0であり、材料特性としては、シリコンは、線形等方性とし、ヤング率を170GPa、密度を2330kg/m3、ポアソン比を0.3とした。また、PZTは、線形等方性とし、ヤング率を60GPa、密度を8500kg/m3、ポアソン比を0.3、圧電定数d31を1.15×10−10m/Vとした。
【0067】
各アクチュエータ本体3は、長方形であって、長さ(副軸Y方向の寸法)3000μm、幅(主軸X方向の寸法)47.5μmとした。2つのアクチュエータ本体3,3は基端部で一体化され、一体化された部分の基端部が固定的に拘束されているものとした。一体化された部分は、長さ80μm、幅100μmとした。2つのアクチュエータ本体3,3の間には、5μmの隙間を設けた。
【0068】
ミラー110は、長方形であって、長さ400μm、幅100μmとした。
【0069】
第2ヒンジ7は、前述のような渦巻形状であって、渦巻の中心に向かって概ね3周半だけ延び、そこから折り返して、渦巻の外側に向かって概ね3周半だけ延びている。第2ヒンジ7とベース部2との間の副軸Y方向の間隔は140μmである。第2ヒンジ7の主軸X方向の全幅は、72μmである。また、第2ヒンジ7の渦巻きの中心に存在する縦線条部71bの長さは56μmである。線条の幅を2μmとし、線条同士の間隔を3μmとした。第2ヒンジ7のミラー側の端部及びベース部側の端部は、5μmだけ副軸Y方向に延びている。第2ヒンジ7のベース部側の端部が固定的に拘束されているものとした。
【0070】
このようなモデルにおいて、第1ヒンジ6の形状を種々変更させて、ミラー110の回動角を求めた。ミラー110の主軸X回りの回動角については、2つのアクチュエータ1,1に5Vの電圧を印加した際の回動角を求めた。また、ミラー110の副軸Y回りの回動角については、一方のアクチュエータ1に5V、他方のアクチュエータ1に−5Vの電圧を印加した際の回動角を求めた。
【0071】
−モデル0−
図8に、第1ヒンジ6のモデル0の平面図を示す。このモデル0は、第1ヒンジ6を第1つづら折り部61だけで構成したモデルである。アクチュエータ1,1とミラー110との間の副軸Y方向の間隔は123μmであり、その中に24本の線条部61a,61a,…が互いに平行に且つ等間隔に設けられている。このモデル0においてミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、0.74度であった。
【0072】
−モデル1−
図9に、第1ヒンジ6のモデル1の平面図を示す。モデル1は、図5に示す第1ヒンジ6と同じ構成をしている。詳しくは、モデル1は、第1ヒンジ6を第1つづら折り部61及び第2つづら折り部62とで構成している。第1つづら折り部61がミラー側に、第2つづら折り部62がアクチュエータ側に配置されている。第1つづら折り部61は、ミラー110の主軸X方向の外側の端部に連結されている。第2つづら折り部62は、アクチュエータ1の主軸X方向の外側の端部に連結されている。アクチュエータ1,1とミラー110との間の副軸Y方向の間隔は、128μmである。第1つづら折り部61の線条部61a,61a,…は、合計11本だけ設けられており、互いに平行且つ主軸X方向に延びている。第2つづら折り部62の線条部62a,62a,…は、合計9本だけ設けられており、互いに平行且つ副軸Y方向に延びている。第2つづら折り部62は、アクチュエータ1から第1つづら折り部61に至るまでの間において、最もアクチュエータ1側の線条部62aは、主軸X方向の最外に位置している。そして、最も第1つづら折り部側の線条部62aは、主軸X方向の最内に位置している。このモデル1においてミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、2.65度であった。尚、アクチュエータ1,1とミラー110との間の副軸Y方向の間隔は、以下のモデル2〜7においても同様に、128μmである。
【0073】
−モデル2−
図10に、第1ヒンジ6のモデル2の平面図を示す。モデル2は、基本的な構成は前記モデル1と同様であり、第2つづら折り部62の線条部62aの本数がモデル1と異なる。詳しくは、モデル2では、第2つづら折り部62の線条部62aが、主軸X方向外側から内側に向かって7本だけ設けられている。尚、屈曲部62bの個数も、線条部62aの本数に合わせて、モデル1と比べて減っている。このモデル2においてミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、2.55度であった。
【0074】
−モデル3−
図11に、第1ヒンジ6のモデル3の平面図を示す。モデル3は、基本的な構成は前記モデル2と同様であり、第2つづら折り部62の線条部62aの延びる方向がモデル2と異なる。詳しくは、モデル3では、第2つづら折り部62の線条部62aが、副軸Yに対して傾斜した方向に延びている。線条部62aは、ミラー側よりもアクチュエータ側の方が主軸X方向内側に位置するように傾斜している。ただし、主軸X方向の最外に位置する線条部62aは、傾斜することなく、副軸Y方向に延びている。線条部62aと副軸Yとのなす角(以下、傾斜角ともいう)θyは、13度である。このように傾斜した線条部62aは、図12に示すように、主軸X方向成分62axと副軸Y方向成分62ayとに分解したときに、副軸Y方向成分62ayの方が大きくなるように傾斜している。すなわち、線条部62aの副軸Yに対する傾斜角θyは、45度未満である。このモデル3においてミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、2.66度であった。
【0075】
−モデル4−
図13に、第1ヒンジ6のモデル4の平面図を示す。モデル4は、基本的な構成は前記モデル2と同様であり、第1つづら折り部61の線条部61aの本数と、第2つづら折り部62のアクチュエータ1及び第1つづら折り部61への連結のされ方がモデル2と異なる。詳しくは、第1つづら折り部61は、10本の線条部61a,61a,…が設けられており、最もアクチュエータ側の線条部61aは、主軸X方向の内側から外側に向かって延びて終わっている。第2つづら折り部62は、アクチュエータ1から第1つづら折り部61に至るまでの間において、最もアクチュエータ1側の線条部62aは、主軸X方向の最内に位置している。すなわち、第2つづら折り部62は、アクチュエータ1の主軸X方向外側の端部から副軸Y方向に延びて、すぐに、主軸X方向内側へ向かって屈曲し、主軸X方向の最内から外側に向かって、蛇行しながら延びている。そして、主軸X方向の最外の線条部62aが第1つづら折り部61に連結されている。このモデル4においてミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、2.51度であった。
【0076】
−モデル5−
図14に、第1ヒンジ6のモデル5の平面図を示す。モデル5は、基本的な構成は前記モデル4と同様であり、第2つづら折り部62の線条部62aの延びる方向がモデル4と異なる。詳しくは、モデル5では、第2つづら折り部62の線条部62a…が、副軸Yに対して傾斜した方向に延びている。線条部62aは、アクチュエータ側よりもミラー側の方が主軸X方向内側に位置するように傾斜している。ただし、主軸X方向の最外に位置する線条部62aは、傾斜することなく、副軸Y方向に延びている。線条部62aと副軸Yとのなす角(以下、副軸Yに対する傾斜角ともいう)θyは13度である。このように傾斜した線条部62aは、主軸X方向成分62axと副軸Y方向成分62ayとに分解したときに、副軸Y方向成分62ayの方が大きくなるように傾斜している。すなわち、線条部62aの副軸Y方向に対する傾斜角θyは45度未満である。このモデル5においてミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は1.40度であった。
【0077】
−モデル6−
図15に、第1ヒンジ6のモデル6の平面図を示す。モデル6は、基本的な構成は、前記モデル3と同様であり、モデル3の第1ヒンジ6を主軸Xと平行な直線に対して反転させた形状(すなわち、図11における第1ヒンジ6の左右を反転させた形状)をしている点でモデル3と異なる。つまり、モデル6の第1ヒンジ6は、第1つづら折り部61がアクチュエータ側に、第2つづら折り部62がミラー側に設けられている。第2つづら折り部62の線条部62aは、副軸Yに対して傾斜した方向に延びている。線条部62aは、アクチュエータ側よりもミラー側の方が主軸X方向内側に位置するように傾斜している。線条部62aの副軸Yに対する傾斜角θyは、13度である。このモデル6においてミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、2.53度であった。
【0078】
−モデル7−
図16に、第1ヒンジ6のモデル7の平面図を示す。モデル7は、基本的な構成は、前記モデル5と同様であり、モデル5の第1ヒンジ6を主軸Xと平行な直線に対して反転させた形状(すなわち、図14における第1ヒンジ6の左右を反転させた形状)をしている。つまり、モデル7の第1ヒンジ6は、第1つづら折り部61がアクチュエータ側に、第2つづら折り部62がミラー側に設けられている。第2つづら折り部62の線条部62a,62a,…は、副軸Yに対して傾斜した方向に延びている。線条部62aは、ミラー側よりもアクチュエータ側の方が主軸X方向内側に位置するように傾斜している。線条部62aの副軸Yに対する傾斜角θyは、13度である。このモデル7においてミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、1.59度であった。
【0079】
−小括−
以上、モデル0〜7を比較すると、副軸Y回りの回動角は、モデル0が0.74度であるのに対し、モデル1〜7が1.40〜2.66度である。つまり、第1ヒンジ6に第1つづら折り部61と第2つづら折り部62とを含ませることによって副軸Y回りの回動角が増大することがわかる。また、第2つづら折り部62において線条部62aを副軸Yに対して傾斜させた場合であっても、副軸Y回りの回動角が増大することがわかる。さらに、モデル1〜7の中でも、モデル1〜4,6は、モデル5,7に比べて、副軸Y回りの回動角が大幅に増大している。
【0080】
−モデル8−
図17に、第1ヒンジ6のモデル8の平面図を示す。モデル8は、基本的な構成は前記モデル2と同様であり、第1つづら折り部61の副軸Y方向の寸法がモデル2と異なる。詳しくは、アクチュエータ1,1とミラー110との間の副軸Y方向の間隔は、188μmである。また、アクチュエータ1から第2つづら折り部62のミラー側の端部までの副軸Y方向の距離は、75μmである。第1つづら折り部61の両端部は、副軸Y方向に延びる縦線条部61c,61cとなっており、それぞれ第2つづら折り部62の端部とミラー110とに連結されている。各縦線条部61cの長さは、33μmである。第1つづら折り部61の副軸Y方向の長さは、113μmである。このモデル8において、ミラー110を主軸X回りに回動させたときの回動角は、5.48度であり、ミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、2.80度であった。尚、アクチュエータ1,1とミラー110との間の副軸Y方向の間隔は、以下のモデル9〜13においても同様に、188μmである。
【0081】
−モデル9−
図18に、第1ヒンジ6のモデル9の平面図を示す。モデル9は、基本的な構成は前記モデル8と同様であり、第1つづら折り部61の線条部61aの延びる方向がモデル8と異なる。詳しくは、モデル9では、第1つづら折り部61の線条部61aが、主軸Xに対して傾斜した方向に延びている。線条部61aは、主軸X方向外側よりも主軸X方向内側の方がミラー側に位置するように傾斜している。線条部61aと主軸Xとのなす角(以下、主軸Xに対する傾斜角ともいう)θxは、30度である。このように傾斜した線条部61aは、図19に示すように、主軸X方向成分61axと副軸Y方向成分61ayとに分解したときに、主軸X方向成分61axの方が大きくなるように傾斜している。すなわち、線条部61aの主軸Xに対する傾斜角θxは、45度未満である。第1つづら折り部61全体としての副軸Y方向への寸法はモデル8と同じであるが、縦線条部61cの長さがモデル8と異なる。モデル9では、第2つづら折り部側とミラー側とで縦線条部61cが異なり、第2つづら折り部側の縦線条部61cの長さは、20μmである。このモデル9において、ミラー110を主軸X回りに回動させたときの回動角は、5.13度であり、ミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、3.00度であった。
【0082】
−モデル10−
図20に、第1ヒンジ6のモデル10の平面図を示す。モデル10は、基本的な構成は、前記モデル9と同様であり、第1つづら折り部61の線条部61aの傾斜方向がモデル9と異なる。詳しくは、モデル10では、第1つづら折り部61の線条部61aは、主軸X方向外側よりも主軸X方向内側の方がアクチュエータ側に位置するように傾斜している。線条部61aの主軸Xに対する傾斜角θxは、30度である。このように傾斜した線条部61aは、主軸X方向成分61axと副軸Y方向成分61ayとに分解したときに、主軸X方向成分61axの方が大きくなるように傾斜している。ミラー側の縦線条部61cの長さは、20μmである。このモデル10において、ミラー110を主軸X回りに回動させたときの回動角は、5.13度であり、ミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、2.73度であった。
【0083】
−モデル11−
図21に、第1ヒンジ6のモデル11の平面図を示す。モデル11は、基本的な構成は、前記モデル8と同様であり、モデル8の第1ヒンジ6を主軸Xと平行な直線に対して反転させた形状(すなわち、図17における第1ヒンジ6の左右を反転させた形状)をしている点でモデル8と異なる。詳しくは、モデル11の第1ヒンジ6は、第1つづら折り部61がアクチュエータ側に、第2つづら折り部62がミラー側に設けられている。このモデル11において、ミラー110を主軸X回りに回動させたときの回動角は、5.12度であり、ミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、2.83度であった。
【0084】
−モデル12−
図22に、第1ヒンジ6のモデル12の平面図を示す。モデル12は、基本的な構成は、前記モデル9と同様であり、モデル9の第1ヒンジ6を主軸Xと平行な直線に対して反転させた形状(すなわち、図18における第1ヒンジ6の左右を反転させた形状)をしている点でモデル9と異なる。詳しくは、モデル12の第1ヒンジ6は、第1つづら折り部61がアクチュエータ側に、第2つづら折り部62がミラー側に設けられている。第1つづら折り部61の線条部61aは、主軸Xに対して傾斜した方向に延びている。線条部61aは、主軸X方向外側よりも主軸X方向内側の方がアクチュエータ側に位置するように傾斜している。線条部61aと主軸Xに対する傾斜角θxは、30度である。このモデル12において、ミラー110を主軸X回りに回動させたときの回動角は、4.88度であり、ミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、3.49度であった。
【0085】
−モデル13−
図23に、第1ヒンジ6のモデル13の平面図を示す。モデル13は、基本的な構成は、前記モデル10と同様であり、モデル10の第1ヒンジ6を主軸Xと平行な直線に対して反転させた形状をしている点でモデル10と異なる。詳しくは、モデル13の第1ヒンジ6は、第1つづら折り部61がアクチュエータ側に、第2つづら折り部62がミラー側に設けられている。第1つづら折り部61の線条部61aは、主軸Xに対して傾斜した方向に延びている。線条部61aは、主軸X方向外側よりも主軸X方向内側の方がミラー側に位置するように傾斜している。線条部61aと主軸Xに対する傾斜角θxは、30度である。このモデル13において、ミラー110を主軸X回りに回動させたときの回動角は、4.87度であり、ミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、2.31度であった。
【0086】
−小括−
以上、モデル8とモデル11とを比較すると、第1つづら折り部61の線条部61aが主軸X方向に延び且つ第2つづら折り部62の線条部62aが副軸Y方向に延びる構成においては、第1つづら折り部61と第2つづら折り部62の位置が入れ替わっても、主軸X回り及び副軸Y回りの回動角は大きく変わらないことがわかる。つまり、第1つづら折り部61と第2つづら折り部62とがアクチュエータ側とミラー側との何れの位置であっても、主軸X回り及び副軸Y回りの回動角に大きな影響はない。
【0087】
また、第1つづら折り部61の線条部61aが主軸X方向に延びるモデル8と、第1つづら折り部61の線条部61aが主軸X方向に対して傾斜したモデル9,10とを比較すると、何れのモデルも主軸X回り及び副軸Y回りの回動角は大きいことがわかる。より詳細には、主軸X回りの回動角は、モデル8が最も大きいのに対し、副軸Y回りの回動角は、モデル9が最も大きく、モデル10が最も小さいことがわかる。ただし、これらの差は僅かである。
【0088】
さらに、第1つづら折り部61の線条部61aが主軸X方向に延びるモデル11と、第1つづら折り部61の線条部61aが主軸X方向に対して傾斜したモデル12,13とを比較すると、何れのモデルも主軸X回り及び副軸Y回りの回動角は大きいことがわかる。より詳細には、主軸X回りの回動角は、モデル11が最も大きいのに対し、副軸Y回りの回動角は、モデル12が最も大きく、モデル13が最も小さいことがわかる。ただし、これらの差は僅かである。
【0089】
−モデル14−
図24に、第1ヒンジ6のモデル14の平面図を示す。モデル14は、基本的な構成はモデル0と同様であり、第1つづら折り部61の線条部61aの本数がモデル0と異なる。詳しくは、モデル14は、第1ヒンジ6を第1つづら折り部61だけで構成したモデルである。アクチュエータ1,1とミラー110との間の副軸Y方向の間隔は128μmであり、その中に16本の線条部61a,61a,…が互いに平行に且つ等間隔に設けられている。第1つづら折り部61の両端部には、副軸Y方向に延びる縦線条部61c,61cが設けられている。縦線条部61cの長さは、25.5μmである。このモデル14において、ミラー110を主軸X回りに回動させたときの回動角は、5.73度であり、ミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、0.87度であった。尚、アクチュエータ1,1とミラー110との間の副軸Y方向の間隔は、以下のモデル15,16においても同様に、128μmである。
【0090】
−モデル15−
図25に、第1ヒンジ6のモデル15の平面図を示す。モデル15は、基本的な構成はモデル14と同様であり、第1つづら折り部61の線条部61aの延びる方向がモデル14と異なる。詳しくは、モデル15では、第1つづら折り部61の線条部61aが、主軸Xに対して傾斜した方向に延びている。線条部61aは、主軸X方向外側よりも主軸X方向内側の方がミラー側に位置するように傾斜している。線条部61aの主軸Xに対する傾斜角θxは、35度である。ミラー側の縦線条部61cの長さは、27.5μmである。このモデル15において、ミラー110を主軸X回りに回動させたときの回動角は、4.60度であり、ミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、0.58度であった。
【0091】
−モデル16−
図26に、第1ヒンジ6のモデル16の平面図を示す。モデル16は、基本的な構成はモデル15と同様であり、第1つづら折り部61の線条部61aの傾斜方向がモデル15と異なる。詳しくは、モデル16では、第1つづら折り部61の線条部61aが、主軸Xに対して傾斜した方向に延びている。線条部61aは、主軸X方向外側よりも主軸X方向内側の方がアクチュエータ側に位置するように傾斜している。線条部61aの主軸Xに対する傾斜角θxは、35度である。アクチュエータ側の縦線条部61cの長さは、27.5μmである。このモデル16において、ミラー110を主軸X回りに回動させたときの回動角は、4.59度であり、ミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、1.30度であった。
【0092】
−小括−
モデル14とモデル15,16とを比較すると、線条部61aを主軸Xに対して傾斜させると、主軸X回りの回動角は小さくなり、副軸Y回りの回動角は、傾斜方向に応じて、大きくも、小さくもなることがわかる。尚、アクチュエータ1とミラー110との間の副軸Y方向寸法が同じであって第1ヒンジ6を第1つづら折り部61と第2つづら折り部62とで構成したモデル2においては、ミラー110を主軸X回りに回動させたときの回動角は、5.64度であり、ミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、2.55度であった。この結果からすると、線条部61aを単に傾斜させることに比べて、第1ヒンジ6に第1つづら折り部61と第2つづら折り部62とを含ませる方が、副軸Y回りの回動角を大幅に大きくできることがわかる。さらに、そのような構成であっても、主軸X回りの回動角をあまり低減させないこともわかる。
【0093】
したがって、本実施形態によれば、ミラーアレイ100は、ベース部2と、該ベース部2に支持された複数のミラー110,110,…と、該ミラー110に連結されて該ミラー110を駆動する複数のアクチュエータ1,1とを備え、該ミラー110を互いに直交する主軸X及び副軸Y回りに回動させる。そして、アクチュエータ1は、前記副軸Y方向に延びるアクチュエータ本体3と、該アクチュエータ本体3の表面に積層された圧電素子4とを有し、該圧電素子4を伸縮させることによって該アクチュエータ本体3を傾動させるように構成されており、前記各ミラー110には、前記副軸Yを挟んで並ぶ2つの前記アクチュエータ1,1が前記主軸Xに対して一方の側だけに設けられている。
【0094】
この構成によれば、1つのミラー110につき2つのアクチュエータ1,1が設けられている。すなわち、特許文献1に記載のミラー装置に比べて、ミラー1つ当たりのアクチュエータの個数が減少している。そのため、ミラーアレイ100の構成を簡略化することができる。
【0095】
また、アクチュエータ1をミラー110の主軸Xに対して片側だけに設けるという簡略な構成であっても、アクチュエータ1を圧電駆動とし且つ2つのアクチュエータ1,1を副軸Yを挟んで並設することによって、ミラー110を主軸X回りにも副軸Y回りにも回動させることができる。
【0096】
すなわち、アクチュエータ本体3と圧電素子4とを積層させた構成においては、圧電素子4を伸張させることによってアクチュエータ本体3を圧電素子4とは反対側に傾動させることができる一方、圧電素子4を収縮させることによってアクチュエータ本体3を圧電素子側に傾動させることができる。そのため、アクチュエータ1をミラー110の主軸Xに対して片側だけに設ける構成であっても、ミラー110を主軸X回りの何れの方向に回動させることができる。
【0097】
さらに、ミラー110ごとに設けられた2つのアクチュエータ1,1は、副軸Yを挟んで並んでいるため、一方のアクチュエータ1を傾動させることによって、ミラー110を副軸Y回りに回動させることができる。このとき、他方のアクチュエータ1を一方のアクチュエータ1とは反対側に傾動させることによって、ミラー110の副軸Y回りの回動角を大きくすることができる。また、ミラー110を副軸Y回りに回動させるときに副軸Yが傾動することを防止することができる。
【0098】
また、2つのアクチュエータ1,1は、主軸X方向において、ミラー110の主軸X方向の寸法内に収まっている。つまり、2つのアクチュエータ1,1とミラー110とを含むミラー装置の主軸X方向寸法を抑制することができる。その結果、ミラーアレイ100のように、複数のミラー110,110,…を有する構成であっても、ミラー110をコンパクトに配置することができ、ひいては、ミラーアレイ100の小型化を図ることができる。
【0099】
また、前記ミラーアレイ100においては、各アクチュエータ1は、第1ヒンジ6を介してミラー110に連結されており、ミラー110は、第2ヒンジ7を介してベース部2に支持されており、第1ヒンジ6は、つづら折り状に屈曲して、互いに平行な複数の線条部61a,61a,…を含む第1つづら折り部61と、つづら折り状に屈曲して、互いに平行で且つ第1つづら折り部61の線条部61aとは異なる方向に延びる複数の線条部62a,62a,…を含む第2つづら折り部62とを有し、第1つづら折り部61の線条部61aは、主軸X方向への成分61axと副軸Y方向への成分61ayとに分解したときに主軸X方向への成分61axが多くなる方向に延びている一方、第2つづら折り部62の線条部62aは、主軸X方向への成分62axと副軸Y方向への成分62ayとに分解したときに副軸Y方向への成分62ayが大きくなる方向に延びているものとする。
【0100】
この構成によれば、第1つづら折り部61は、主軸X回りの曲げ剛性が小さくなる。一方、第2つづら折り部62は、副軸Y回りの曲げ剛性が小さく且つ主軸X回りの曲げ剛性が大きくなる。そのため、第1ヒンジ6は、主軸X回りの曲げ剛性を調節して全体として適度な曲げ剛性を実現することができる。それに加えて、第1ヒンジ6は、全体としての副軸Y回りの曲げ剛性を低減することができる。その結果、第1ヒンジ6は、アクチュエータ1の駆動力(変位)をミラー110に効率良く伝達することができると共に、ミラー110の回動を妨げてしまうのを防止することができる。
【0101】
さらに、前記ミラーアレイ100においては、第2ヒンジ7は、一端から、渦巻状に渦巻の中心に向かって延びた後、折り返して、渦巻状に渦巻の外側に向かって延びて他端に至る形状をしている。
【0102】
この構成によれば、第2ヒンジ7には、主軸X方向に延びる横線条部71aと副軸Y方向に延びる縦線条部71bとが含まれる。横線条部71aは、主軸X回りのねじり剛性が小さい。また、縦線条部71bは、副軸Y回りのねじり剛性が小さい。そのため、第2ヒンジ7は、主軸X回りにも、副軸Y回りにも回動し易いので、ミラー110の主軸X回りの回動と副軸Y回りに回動とを妨げないようにすることができる。また、第2ヒンジ7は、渦巻状に形成されているので、第1ヒンジ6のようにつづら折り状に形成される構成と比較して、線条が折り返される部分がほとんどないので、容易に製造することができる。
【0103】
《その他の実施形態》
本発明は、前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0104】
前記実施形態では、ミラーアレイ100を波長選択スイッチ300に適用した例を説明したが、これに限られるものではない。ミラーアレイ100は様々なアプリケーションに組み込むことができる。
【0105】
また、前記実施形態における形状、寸法、材質は、例示に過ぎず、これらに限られるものではない。例えば、PZTの代わりに、非鉛圧電材料であるKNN((K,Na)NbO3)等を用いてもよい。
【0106】
また、前記実施形態では、アクチュエータ1とミラー110との連結に第1ヒンジ6を、ミラー110とベース部2との連結に第2ヒンジ7を採用しているが、これに限られるものではない。例えば、第1ヒンジ6に代えて第2ヒンジ7を採用することもできるし、第2ヒンジ7に代えて第1ヒンジ6を採用することもできる。
【0107】
また、前記ミラーアレイ100では、上部端子43b、第1検出端子81及び参照端子83が全てのアクチュエータ1,1,…に対して共通で設けられているが、個別に設けられてもよいし、アクチュエータ1,1,…をいくつかのグループに分けて、該端子をグループごとに設けてもよい。
【0108】
また、前記第1及び第2ヒンジ6,7は、前記アクチュエータ1の構成でなくても、前述の効果を奏することができる。つまり、2つで1組のアクチュエータが、ミラーの主軸を挟んで両側に、即ち、2組設けられている構成であっても、各アクチュエータとミラーとの連結に前記第1又は第2ヒンジ6,7を採用することができる。さらには、圧電駆動式以外のアクチュエータであっても、前記第1及び第2ヒンジ6,7を採用することができる。例えば、対向電極との間の静電力によりアクチュエータ本体を傾動させる静電駆動式のアクチュエータや、アクチュエータ本体に設けたコイルによる磁力と外部磁場との関係でアクチュエータ本体を傾動させる電磁駆動式のアクチュエータや、線膨張係数が異なる部材でアクチュエータ本体を構成し、両者の熱ひずみの差によりアクチュエータ本体を傾動させるアクチュエータに適用してもよい。
【0109】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上説明したように、本発明は、複数のミラーと該ミラーを駆動するアクチュエータとを備えたミラーアレイについて有用である。
【符号の説明】
【0111】
100 ミラーアレイ
110 ミラー
300 波長選択スイッチ
1 アクチュエータ
2 ベース部
3 アクチュエータ本体
4 圧電素子
6 第1ヒンジ
61 第1つづら折り部
61a 線条部
62 第2つづら折り部
62a 線条部
7 第2ヒンジ
X 主軸
Y 副軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のミラーと該ミラーを駆動するアクチュエータとを備えたミラーアレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ミラーを互いに直交する主軸及び副軸回りに回動させるミラー装置が知られている。例えば、特許文献1には、1つのミラーにつき4つのアクチュエータを備えたミラー装置が開示されている。詳しくは、2つで1組のアクチュエータが、ミラーの主軸を挟んで両側に、即ち、2組設けられている。各組において、2つのアクチュエータは、副軸を挟んで並んでいる。各アクチュエータは、副軸方向に延びる板状のアクチュエータ本体と、該アクチュエータ本体に対向して設けられた対向電極とを備えている。各アクチュエータ本体は、対向電極との間の静電引力により対向電極に引きつけられるように傾動する。このように構成されたミラー装置においては、何れかの組の2つのアクチュエータを下方に傾動させることによって、ミラーが主軸回りに回動する。何れの組のアクチュエータを傾動させるかによって、ミラーの主軸回りの回動方向を切り替えることができる。一方、両方の組において副軸に対して一方の側に位置するアクチュエータを下方に傾動させることによって、ミラーが副軸回りに回動する。副軸に対して何れの側のアクチュエータを傾動させるかによって、ミラーの副軸回りの回動方向を切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−229916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数のミラーを備えるミラーアレイにおいては、ミラーの個数に応じて、アクチュエータの個数も多くなる。そのため、ミラーアレイに含まれるミラーの個数を増やすためにも、ミラー及びアクチュエータの構成を簡略化させることが好ましい。
【0005】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ミラーアレイの構成を簡略化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示されたミラーアレイは、ベース部と、該ベース部に支持された複数のミラーと、該ミラーに連結されて該ミラーを駆動する複数のアクチュエータとを備え、該ミラーを互いに直交する主軸及び副軸回りに回動させるものである。そして、前記アクチュエータは、前記副軸方向に延びるアクチュエータ本体と、該アクチュエータ本体の表面に積層された圧電素子とを有し、該圧電素子を伸縮させることによって該アクチュエータ本体を傾動させるように構成されており、前記各ミラーには、前記副軸を挟んで並ぶ2つの前記アクチュエータが前記主軸に対して一方の側だけに設けられている。
【0007】
前記の構成によれば、1つのミラーにつき2つのアクチュエータが設けられている。すなわち、特許文献1に記載のミラー装置に比べて、ミラー1つ当たりのアクチュエータの個数が減少している。そのため、ミラーアレイの構成を簡略化することができる。
【0008】
また、アクチュエータ本体の表面に圧電素子を積層させた構成においては、圧電素子を伸張させることによってアクチュエータ本体を圧電素子が積層された面とは反対側に傾動させることができる一方、圧電素子を収縮させることによってアクチュエータ本体を圧電素子側に傾動させることができる。そのため、アクチュエータをミラーの主軸に対して片側だけに設ける構成であっても、ミラーを主軸回りの何れの方向にも回動させることができる。
【0009】
さらに、ミラーごとに設けられた2つのアクチュエータは、副軸を挟んで並んでいるため、一方のアクチュエータを傾動させることによって、ミラーを副軸回りに回動させることができる。このとき、他方のアクチュエータを一方のアクチュエータとは反対側に傾動させることによって、ミラーの副軸回りの回動角を大きくすることができる。
【0010】
すなわち、アクチュエータをミラーの主軸に対して片側だけに設けるという簡略な構成であっても、アクチュエータを圧電駆動とし且つ2つのアクチュエータを副軸を挟んで並設することによって、ミラーを主軸回りにも副軸回りにも回動させることができる。
【発明の効果】
【0011】
前記ミラーアレイによれば、ミラーの駆動性能を損なうことなく、ミラーアレイを簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係るミラーアレイの平面図である。
【図2】ミラーアレイの下面図である。
【図3】ミラーアレイの、図1のIII−III線における断面図である。
【図4】波長選択スイッチの概略図である。
【図5】第1ヒンジの平面図である。
【図6】第2ヒンジの平面図である。
【図7】シミュレーションに用いた基本モデルの平面図である。
【図8】第1ヒンジのモデル0の平面図である。
【図9】第1ヒンジのモデル1の平面図である。
【図10】第1ヒンジのモデル2の平面図である。
【図11】第1ヒンジのモデル3の平面図である。
【図12】線条部の主軸方向成分と副軸方向成分を説明するための説明図である。
【図13】第1ヒンジのモデル4の平面図である。
【図14】第1ヒンジのモデル5の平面図である。
【図15】第1ヒンジのモデル6の平面図である。
【図16】第1ヒンジのモデル7の平面図である。
【図17】第1ヒンジのモデル8の平面図である。
【図18】第1ヒンジのモデル9の平面図である。
【図19】線条部の主軸方向成分と副軸方向成分を説明するための説明図である。
【図20】第1ヒンジのモデル10の平面図である。
【図21】第1ヒンジのモデル11の平面図である。
【図22】第1ヒンジのモデル12の平面図である。
【図23】第1ヒンジのモデル13の平面図である。
【図24】第1ヒンジのモデル14の平面図である。
【図25】第1ヒンジのモデル15の平面図である。
【図26】第1ヒンジのモデル16の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1は、ミラーアレイ100の平面図を、図2は、ミラーアレイ100の下面図を、図3はミラーアレイ100の、図1のIII−III線における断面図を示す。
【0015】
ミラーアレイ100は、枠状のベース部2と、複数のアクチュエータ1,1,…と、複数のミラー110,110,…と、各アクチュエータ1をミラー110に連結する第1ヒンジ6と、各ミラー110をベース部2に連結する第2ヒンジ7と、アクチュエータ1,1,…を制御する制御部120とを備えている。1つのミラー110につき、2つのアクチュエータ1,1が設けられている。すなわち、各ミラー110は、2つのアクチュエータ1,1により駆動される。詳しくは、ミラー110は、互いに直交する主軸X及び副軸Y回りに回動する。
【0016】
このミラーアレイ100は、SOI(Silicon on Insulator)基板200を用いて製造されている。SOI基板200は、単結晶シリコンで形成された第1シリコン層210と、SiO2で形成された酸化膜層220と、単結晶シリコンで形成された第2シリコン層230とがこの順で積層されて構成されている。
【0017】
このミラーアレイ100は、例えば、波長選択スイッチ300に組み込まれて使用される。図4に、波長選択スイッチ300の概略図を示す。
【0018】
波長選択スイッチ300は、1つの入力用光ファイバ310と、3つの出力用光ファイバ320〜340と、光ファイバ310〜340に設けられたコリメータ350と、回折格子で構成された分光器360と、レンズ370と、ミラーアレイ100とを備えている。尚、この例では、出力用ファイバは、3本だけであるが、これに限られるものではない。
【0019】
この波長選択スイッチ300においては、入力用光ファイバ310を介して、複数の異なる波長の光信号が入力される。この光信号は、コリメータ350により平行光にされる。平行光となった光信号は、分光器360によって、所定の数の特定波長の光信号に分波される。分波された光信号は、レンズ370によって集光され、ミラーアレイ100に入射する。分波される特定波長の個数と、ミラーアレイ100のミラー110の個数は対応している。つまり、分波された特定波長の光信号は、それぞれ対応するミラー110に入射する。そして、該光信号は、各ミラー110により反射し、再びレンズ370を通って、分光器360へ入射する。分光器360は、複数の異なる波長の光信号を合波し、出力用光ファイバ320〜340へ出力する。ここで、ミラーアレイ100は、各ミラー110を主軸回りに回動させることによって光信号の反射角度を調整して、対応する光信号がどの出力用光ファイバ320〜340へ入力されるのかを切り替える。さらに詳しくは、光信号を入力する出力用光ファイバ320〜340を切り替えるために各ミラー110の主軸回りの回動角を変更するときには、ミラー110を副軸回りに回動させた状態で主軸回りの回動角を変更する。こうすることによって、主軸回りの回動角を変更する際に、ミラー110からの反射光が所望していない出力用光ファイバへ入力されてしまうことを防止している。
【0020】
続いて、ミラーアレイ100の構成について詳細に説明する。
【0021】
ベース部2は、全体の図示は省略するが、概略長方形の枠状に形成されている。ベース部2の大部分は、第1シリコン層210、酸化膜層220及び第2シリコン層230で形成されている。
【0022】
ミラー110は、概略長方形状をした板状に形成されている。ミラー110は、第1シリコン層210の表面にAu/Ti膜を成膜して形成されている。
【0023】
第1ヒンジ6は、一端がアクチュエータ1の先端に連結され、他端がミラー110の端縁に連結されている。第1ヒンジ6の詳細な形状については、後述する。尚、図1〜3においては、第1ヒンジ6を簡略化して図示している。ミラー110には、2つの第1ヒンジ6,6が連結されている。つまり、ミラー110には、2つのアクチュエータ1,1が第1ヒンジ6,6を介して連結されている。2つの第1ヒンジ6,6は、ミラー110の端縁の中点に対して対称な位置に連結されている。第1ヒンジ6は、第1シリコン層210で形成されている。
【0024】
第2ヒンジ7の一端は、ミラー110の、第1ヒンジ6が連結された端縁と対向する端縁に連結されている。一方、第2ヒンジ7の他端は、ベース部2に連結されている。第2ヒンジ7の詳細な形状については、後述する。尚、図1〜3においては、第2ヒンジ7を簡略化して図示している。第2ヒンジ7は、ミラー110の端縁の中点に連結されている。第2ヒンジ7は、第1シリコン層210で形成されている。
【0025】
各アクチュエータ1は、前記ベース部2と、該ベース部2に連結されたアクチュエータ本体3と、アクチュエータ本体3の表面に形成された圧電素子4と、アクチュエータ本体3に対向して設けられた対向電極5とを備えている。
【0026】
アクチュエータ本体3は、その基端がベース部2に連結されている。アクチュエータ本体3は、ベース部2に片持ち状に支持されている。また、アクチュエータ本体3の先端に前記第1ヒンジ6が連結されている。アクチュエータ本体3は、第1シリコン層210で形成されている。アクチュエータ本体3は、ベース部2のうち第1シリコン層210で形成された部分と一体に形成されている。
【0027】
圧電素子4は、アクチュエータ本体3の表面31(対向電極と対向する面32とは反対側の面)に形成されている。圧電素子4は、下部電極41と、上部電極43と、これらに挟持された圧電体層42とを有する。下部電極41、圧電体層42、上部電極43は、アクチュエータ本体3の表面31にこの順で積層されている。圧電素子4は、SOI基板200とは別の部材で形成されている。詳しくは、下部電極41は、Pt/Ti膜で形成されている。圧電体層42は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)で形成されている。上部電極43は、Au/Ti膜で形成されている。
【0028】
圧電体層42は、アクチュエータ本体3の長手方向の全域に亘って設けられている。圧電体層42は、アクチュエータ本体3の基端部からベース部2側にも延びている。そして、圧電体層42は、ベース部2上において、隣接する別のアクチュエータの圧電体層42と連結されている。つまり、4つのアクチュエータ1,1,…の圧電体層42,42,…は、1つに連結されている。
【0029】
上部電極43は、圧電体層42のうちアクチュエータ本体3上の部分に設けられた本体43aと、圧電体層42のうちベース部2上の部分に設けられた端子(以下、「上部端子」ともいう)43bと、該本体43aと端子43bとを連結する連結部43cとを有している。連結部43cは、本体43aや端子43bよりも細い形状となっている。
【0030】
下部電極41は、圧電体層42と概ね同様の形状をしており、圧電体層42の下方に位置している。そのため、下部電極41は、基本的には、外部に露出していない。ただし、下部電極41の端子(以下、「下部端子」ともいう)41aだけが、外部に露出している。下部電極41の下部端子41aは、4つのアクチュエータ1,1,…の下部電極41,41,…で共通である。
【0031】
対向電極5は、ベース部2と一体的に構成されている。対向電極5は、アクチュエータ本体3の基端部33と対向して設けられている。対向電極5とアクチュエータ本体3の基端部33との間には、間隙G1が設けられている。対向電極5は、アクチュエータ本体3ごとに設けられている。対向電極5は、第2シリコン層230で形成されている。対向電極5は、ベース部2のうち第2シリコン層230で形成された部分と一体に形成されている。ただし、ベース部2の第2シリコン層230においては、4つの対向電極5,5,…のそれぞれを分離させるための溝234,234,…が形成されている。該溝234は、酸化膜層220まで達している。こうして、4つの対向電極5,5,…は、それぞれ電気的に絶縁されている。間隙G1は、酸化膜層220を除去することによって形成されている。
【0032】
ベース部2には、詳しくは後述するが、アクチュエータ本体3と対向電極5との間の静電容量を検出するための第1及び第2検出端子81,82が設けられている。詳しくは、第1検出端子81は、ベース部2における第1シリコン層210に設けられている。第1検出端子81は、第1シリコン層210に設けられているので、アクチュエータ本体3と電気的に接続されていることになる。また、ベース部2には、第2シリコン層230を第1シリコン層210側に露出させるための概略長方形状の開口21が形成されている。この開口21は、第1シリコン層210及び酸化膜層220を貫通している。第2検出端子82は、開口21において露出する第2シリコン層230に設けられている。第2検出端子82は、第2シリコン層230に設けられているので、対向電極5と電気的に接続されていることになる。
【0033】
さらに、ベース部2の第1シリコン層210には、開口21を挟んで、第1検出端子81とを反対側に、参照端子83が設けられている。この参照端子83は、詳しくは後述するが、参照静電容量を検出するための端子である。
【0034】
また、ベース部2のうち、開口21に隣接し且つ開口21よりも参照端子83側の部分には、第1シリコン層210と第2シリコン層230との間に間隙G2が設けられている。間隙G2は、開口21と連通している。間隙G2は、酸化膜層220を除去することによって形成されている。
【0035】
次に、このように構成されたミラーアレイ100の動作について説明する。ミラーアレイ100の制御部120は、上部電極43の端子43bと下部電極41の下部端子41aとに駆動電圧を印加する。この駆動電圧に応じて、圧電体層42が収縮又は伸張し、アクチュエータ本体3が上方(表面31側)又は下方(裏面32側)に傾動する。さらに詳しくは、ミラー110に連結された2つのアクチュエータ本体3,3を同じ方向に傾動させることによって、ミラー110を主軸X回りに回動させることができる。このとき、2つのアクチュエータ本体3,3を上方に傾動させるか、下方に傾動させるかによって、ミラー110の主軸X回りの回動方向を切り替えることができる。一方、2つのアクチュエータ本体3,3をそれぞれ逆方向に傾動させることによって、ミラー110を副軸Y回りに回動させることができる。このとき、上方に傾動させるアクチュエータ本体3と下方に傾動させるアクチュエータ本体3とを入れ替えることによって、ミラー110の副軸Y回りの回動方向を切り替えることができる。
【0036】
また、制御部120は、ベース部2に設けられた第1及び第2検出端子81,82を介して、アクチュエータ本体3と対向電極5との間の静電容量を検出することによって、アクチュエータ本体3の変位、即ち、傾動量を検出する。つまり、アクチュエータ本体3が傾動すると、アクチュエータ本体3と対向電極5との間の間隙G1の大きさが変化する。それにより、アクチュエータ本体3と対向電極5との間の静電容量が変化するので、該静電容量を検出することによって、アクチュエータ本体3の傾動量を検出することができる。そして、制御部120は、第1及び第2検出端子81,82間の静電容量に基づいて、アクチュエータ本体3の傾動量が所望の値となるように駆動電圧を調整する。こうすることで、圧電素子4に特性変化が生じたとしても、アクチュエータ本体3の傾動量を安定的に制御することができる。
【0037】
尚、静電容量を検出する際には、制御部120は、参照端子83と第2検出端子82とを介して、ベース部2における間隙G2を挟んだ第1シリコン層210と第2シリコン層230との間の静電容量を検出している。間隙G2は、アクチュエータ本体3を作動させても変化しないはずなので、間隙G2の静電容量を参照用の静電容量として用いることができる。すなわち、間隙G1における静電容量は、アクチュエータ本体3の傾動前後での変化量が微小であるために、それだけでは回路内で大きな増幅を得にくい。しかし、同様の静電容量を持つ参照電極を設けることによって、傾動前の静電容量分を差動で打ち消し、静電容量の傾動前後での変化分のみを大きく増幅できる。これにより、アクチュエータ本体3の傾動に起因する静電容量の変化を精度良く検出することができる。尚、必ずしも間隙G2を設ける必要はなく、酸化膜層220が存在する部分における静電容量を参照用として用いてもよい。ただし、この場合には、参照用の静電容量の値を、傾動前の間隙G1における静電容量に合わせる必要がある。
【0038】
ミラー110の回動角を一定に保持する場合の制御方法については、検出部の静電容量を一定に保つフィードバック制御の他に、上位システムがミラーからの反射光を監視し、光量が一定となるように演算装置へフィードバックをかける方法を用いてもよい。あるいは、両者を組み合わせて用いることもできる。
【0039】
制御部120は、CPUのような演算装置で構成され得る。制御部120は、ミラー110を所望の回動角に回動させるための駆動電圧の電圧値を、演算装置からアクセス可能な記憶装置に記憶されているパラメータを参照して決定する。パラメータは、各駆動電圧ごとのミラーの回動角を表しており、テーブル形式のデータであったり、近似曲線の係数の形式で記憶装置に記憶されている。
【0040】
記憶装置に記憶されるパラメータには、温度変化といった周囲環境によって生じる変位を含む場合もある。他に、電圧を印可しない状態では圧電素子によって発生するアクチュエータの反りが一定していないため、アクチュエータの反りを基準面に一致させるためのオフセット電圧を記憶装置に記憶する場合もある。これらのパラメータは、通常、ミラーごとに必要であるが、1つで代表する場合もある。
【0041】
前記のようなCPUによる電圧印加指示は、回路を簡略化するために、1つ1つのミラー110に対して順番に行うようにしてもよい。
【0042】
次に、ミラーアレイ100の製造方法について説明する。
【0043】
まず、SOI基板200を用意する。
【0044】
続いて、間隙G1,G2となる部分の酸化膜層220を犠牲層エッチングにより除去する。この際、第1シリコン層210に複数の貫通孔を形成し、該貫通孔を介して犠牲層エッチングを行う。また、間隙G1となる部分に関しては、酸化膜層220を全て除去するのではなく、対向電極5となる部分のうちアクチュエータ本体3の先端側の端部に酸化膜層220が一部残留するようにしておく。
【0045】
その後、第1シリコン層210の表面にSiO2膜、Pt/Ti膜250、PZT膜及びAu/Ti膜を順に成膜し、その後、それらをエッチングにより所定の形状に形成する。こうして、第1シリコン層210の表面に圧電素子4を形成する。尚、SiO2膜等の成膜により、先の犠牲層エッチングで用いた貫通孔が埋められる。
【0046】
続いて、第1シリコン層210をエッチングして、ベース部2、アクチュエータ本体3,3,…、ミラー110,110、第1ヒンジ6,6,…、及び第2ヒンジ7,7を形成する。その後、ベース部2の開口21において露出する酸化膜層220をエッチングにより除去する。
【0047】
次に、第2シリコン層230をエッチングして対向電極5を形成する。このとき、対向電極5のうち、この工程で除去される部分と隣接する側の端部(即ち、アクチュエータ本体3の先端側の端部)には酸化膜層220が残っているので、エッチングガスが間隙G1内へ流入することが防止される。それにより、間隙G1を形成する第1及び第2シリコン層210,230が不必要に加工されることが防止される。
【0048】
続いて、アクチュエータ本体3,3,…、ミラー110,110、第1ヒンジ6,6,…及び第2ヒンジ7,7の裏側の酸化膜層220をエッチングにより除去する。このとき、対向電極5となる部分のうちアクチュエータ本体3の先端側の端部に残っていた酸化膜層220も除去され、完全な間隙G1が形成される。
【0049】
次に、Au/Ti膜を成膜して、ミラー110の表面の鏡面、ミラー110の裏面のバランスウェイト、並びにベース部2における第1検出端子81、第2検出端子82及び参照端子83を形成する。
【0050】
こうして、ミラーアレイ100が製造される。
【0051】
続いて、第1ヒンジ6の詳細な形状について説明する。図5に第1ヒンジ6の平面図を示す。
【0052】
第1ヒンジ6は、ミラー側に設けられた第1つづら折り部61と、アクチュエータ側に設けられた第2つづら折り部62とを有している。第1つづら折り部61と第2つづら折り部62は、1本の線条で連続的に形成されている。
【0053】
第1つづら折り部61は、直線状に延びる線条部61aと、折り返すように屈曲する屈曲部61bとが交互に繋がっており、全体としてつづら折り状に屈曲している。第1つづら折り部61は、一端がミラー110の主軸X方向(幅方向)外側の端部に連結されている。線条部61a,61a,…は、主軸X方向に延びており、互いに平行で且つ等間隔に配置されている。屈曲部61b,61b,…は、主軸X方向の内側と外側とに位置している。換言すると、第1つづら折り部61は、主軸X方向へ蛇行しながら副軸Y方向(長手方向)に延びている。第1つづら折り部61は、ミラー110から主軸X方向内側へ延びる線条部61aで始まり、屈曲部61bを介して、主軸X方向外側へ延びる線条部61a及び主軸X方向内側へ延びる線条部61aを繰り返し、最後は主軸X方向内側へ延びる線条部61aで終わっている。
【0054】
第2つづら折り部62は、直線状に延びる線条部62aと、折り返すように屈曲する屈曲部62bとが交互に繋がっており、全体としてつづら折り状に屈曲している。第2つづら折り部62は、一端がアクチュエータ1の主軸X方向外側の端部に連結されている。線条部62a,62a,…は、副軸Y方向に延びて、互いに平行で且つ等間隔に配置されている。屈曲部62b,62b,…は、副軸Y方向のアクチュエータ側とミラー側とに位置している。換言すると、第2つづら折り部62は、副軸Y方向へ蛇行しながら主軸X方向に延びている。第2つづら折り部62は、アクチュエータ1から、ミラー側へ延びる線条部62aで始まり、屈曲部62bを介して、アクチュエータ側へ延びる線条部62a及びミラー側へ延びる線条部62aを繰り返し、最後はミラー側へ延びる線条部62aで終わっている。最後のミラー側へ延びる線条部62aが第1つづら折り部61に連結されている。
【0055】
1つのミラー110に連結された2つの第1ヒンジ6,6は、副軸Yに対して線対称に構成されている。
【0056】
このように構成された第1ヒンジ6によれば、アクチュエータ1の駆動力(変位)をミラー110に効率良く伝達することができると共に、ミラー110の回動を妨げてしまうのを防止することができる。
【0057】
つまり、アクチュエータ1の駆動力をミラー110に効率良く伝達するためには、第1ヒンジ6は、主軸X回りの曲げ剛性が小さすぎても、大きすぎてもよくない。主軸X回りの曲げ剛性が小さすぎると、アクチュエータ1の駆動力を第1ヒンジ6が吸収してしまい、ミラー110に伝達される駆動力が減少する。一方、主軸X回りの曲げ剛性が大きすぎると、アクチュエータ1の傾動を妨げてしまう。つまり、例えば、アクチュエータ本体3の先端が下方へ沈み込むように傾動する場合、ミラー110は、アクチュエータ側が沈み込みむように回動する。すなわち、アクチュエータ1及びミラー110は全体として、第1ヒンジ6で屈曲した状態になる。ここで、第1ヒンジの曲げ剛性が大きいと、第1ヒンジ6で屈曲することが難しい。その結果、アクチュエータ1は、第1ヒンジ6及びミラー110が抵抗となって、傾動が妨げられてしまう。
【0058】
それに対して、本実施形態では、第1ヒンジ6は、主軸X方向に延びる複数の線条部61a,61a,…を含む第1つづら折り部61と、副軸Y方向に延びる複数の線条部62a,62a,…を含む第2つづら折り部62とを有している。第1つづら折り部61の線条部61a,61a,…は主軸X方向に延びるので、主軸X回りの捩れ変形が生じ易い。つまり、第1つづら折り部61は、主軸X回りの曲げ剛性が小さい。一方、第2つづら折り部62の線条部62a,62a,…は副軸Y方向に延びるので、主軸X回りには曲がり難い。つまり、第2つづら折り部62は、主軸X回りの曲げ剛性が大きい。こうして、第1ヒンジ6は、主軸X回りの曲げ剛性が小さい第1つづら折り部61と主軸X回りの曲げ剛性が大きい第2つづら折り部62とを組み合わせることによって、主軸X回りの曲げ剛性を調節して、全体として適度な曲げ剛性を実現することができる。
【0059】
また、ミラー110の回動を妨げないようにするためには、第1ヒンジ6は、副軸Y回りの曲げ剛性が小さいことが好ましい。つまり、ミラー110を副軸Y回りに回動させる際には、2つのアクチュエータ1,1は、副軸Yに対して平行な状態のまま単純に上下に傾動するのに対し、ミラー110は副軸Y回りに回動する。そのため、第1ヒンジ6は、副軸Y回りに捩れなければならない。第1ヒンジ6の副軸Y回りの曲げ剛性が大きいと、2つのアクチュエータ1,1が上下に傾動しても、第1ヒンジ6,6が抵抗となって、ミラー110の副軸Y回りの回動を妨げてしまう。
【0060】
それに対して、本実施形態では、第1ヒンジ6は、副軸Y方向に延びる複数の線条部62a,62a,…を含む第2つづら折り部62とを有している。第2つづら折り部62の線条部62a,62a,…は副軸Y方向に延びるので、副軸Y回りの捩れ変形が生じ易い。つまり、第2つづら折り部62は、副軸Y回りの曲げ剛性が小さい。こうして、第1ヒンジ6は、副軸Y回りの曲げ剛性が小さい第2つづら折り部62を有することによって、全体としての副軸Y回りの曲げ剛性を低減している。
【0061】
次に、第2ヒンジ7の詳細な形状について説明する。図6に第2ヒンジ7の平面図を示す。
【0062】
第2ヒンジ7は、1本の線条で形成されている。第2ヒンジ7は、一端がミラー110に連結されており、そこから反時計回りの渦巻状に渦巻の中心に向かって延び、渦巻の中心で折り返して、そこから時計回りの渦巻状に渦巻の外側に向かって延び、他端がベース部2に連結されている。詳しくは、第2ヒンジ7は、主軸X方向に延びる横線条部71aと、副軸Y方向に延びる縦線条部71bとが交互に繋がっており、全体として渦巻形状を形成している。第2ヒンジ7の一端及び他端は、副軸Y上に位置している。第2ヒンジ7を副軸Yで2分割した場合に、副軸Yに対して一側の部分と他側の部分とは渦巻の中心に対して点対称の形状をしている。
【0063】
このように構成された第2ヒンジ7は、渦巻状をしているので、ミラー110の主軸X回りの回動と副軸Y回りに回動とを妨げないようにすることができる。すなわち、第2ヒンジ7を渦巻状に形成することによって、第2ヒンジ7は、或る程度の長さを有する複数の横線条部71a,71a,…と、或る程度の長さを有する複数の縦線条部71b,71b,…とを含むようになる。横線条部71a,71a,…は、主軸X方向に延びるので、主軸X回りのねじり剛性が小さい。また、縦線条部71b,71b,…は、副軸Y方向に延びるので、副軸Y回りのねじり剛性が小さい。つまり、第2ヒンジ7は、主軸X回りにも、副軸Y回りにも回動し易い。その結果、ミラー110の主軸X回りの回動と副軸Y回りの回動を妨げない。
【0064】
また、横線条部71a,71a,…は、渦巻きの中心を通り且つ主軸Xを挟んで両側に均等に配置されると共に、縦線条部71b,71b,…は、副軸Yを挟んで両側に均等に配置されている。そのため、ミラー110が主軸X回り及び副軸Y回りに変形する際の第2ヒンジ7の変形が主軸X及び副軸Yに対して均等になる。
【0065】
〈シミュレーション〉
続いて、第1ヒンジ6の形状を変化させた場合のミラー110の回動角のシミュレーションについて説明する。尚、以下のシミュレーションに用いたモデルは、一例に過ぎず、これらに限定されるものではない。
【0066】
図7にシミュレーションに用いた基本モデルの平面図を示す。シミュレーションでは、図7に示すようなモデルを用いた。アクチュエータ本体3、第1ヒンジ6、ミラー110、第2ヒンジ7は、厚さ7.5μmのシリコンで構成され、アクチュエータ本体3の表面の全面(図7においてハッチングが付された領域)に厚さ3μmのPZTが積層されている。シミュレーションに用いた解析ツールは、ANSYS Workbench Mechanical 13.0であり、材料特性としては、シリコンは、線形等方性とし、ヤング率を170GPa、密度を2330kg/m3、ポアソン比を0.3とした。また、PZTは、線形等方性とし、ヤング率を60GPa、密度を8500kg/m3、ポアソン比を0.3、圧電定数d31を1.15×10−10m/Vとした。
【0067】
各アクチュエータ本体3は、長方形であって、長さ(副軸Y方向の寸法)3000μm、幅(主軸X方向の寸法)47.5μmとした。2つのアクチュエータ本体3,3は基端部で一体化され、一体化された部分の基端部が固定的に拘束されているものとした。一体化された部分は、長さ80μm、幅100μmとした。2つのアクチュエータ本体3,3の間には、5μmの隙間を設けた。
【0068】
ミラー110は、長方形であって、長さ400μm、幅100μmとした。
【0069】
第2ヒンジ7は、前述のような渦巻形状であって、渦巻の中心に向かって概ね3周半だけ延び、そこから折り返して、渦巻の外側に向かって概ね3周半だけ延びている。第2ヒンジ7とベース部2との間の副軸Y方向の間隔は140μmである。第2ヒンジ7の主軸X方向の全幅は、72μmである。また、第2ヒンジ7の渦巻きの中心に存在する縦線条部71bの長さは56μmである。線条の幅を2μmとし、線条同士の間隔を3μmとした。第2ヒンジ7のミラー側の端部及びベース部側の端部は、5μmだけ副軸Y方向に延びている。第2ヒンジ7のベース部側の端部が固定的に拘束されているものとした。
【0070】
このようなモデルにおいて、第1ヒンジ6の形状を種々変更させて、ミラー110の回動角を求めた。ミラー110の主軸X回りの回動角については、2つのアクチュエータ1,1に5Vの電圧を印加した際の回動角を求めた。また、ミラー110の副軸Y回りの回動角については、一方のアクチュエータ1に5V、他方のアクチュエータ1に−5Vの電圧を印加した際の回動角を求めた。
【0071】
−モデル0−
図8に、第1ヒンジ6のモデル0の平面図を示す。このモデル0は、第1ヒンジ6を第1つづら折り部61だけで構成したモデルである。アクチュエータ1,1とミラー110との間の副軸Y方向の間隔は123μmであり、その中に24本の線条部61a,61a,…が互いに平行に且つ等間隔に設けられている。このモデル0においてミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、0.74度であった。
【0072】
−モデル1−
図9に、第1ヒンジ6のモデル1の平面図を示す。モデル1は、図5に示す第1ヒンジ6と同じ構成をしている。詳しくは、モデル1は、第1ヒンジ6を第1つづら折り部61及び第2つづら折り部62とで構成している。第1つづら折り部61がミラー側に、第2つづら折り部62がアクチュエータ側に配置されている。第1つづら折り部61は、ミラー110の主軸X方向の外側の端部に連結されている。第2つづら折り部62は、アクチュエータ1の主軸X方向の外側の端部に連結されている。アクチュエータ1,1とミラー110との間の副軸Y方向の間隔は、128μmである。第1つづら折り部61の線条部61a,61a,…は、合計11本だけ設けられており、互いに平行且つ主軸X方向に延びている。第2つづら折り部62の線条部62a,62a,…は、合計9本だけ設けられており、互いに平行且つ副軸Y方向に延びている。第2つづら折り部62は、アクチュエータ1から第1つづら折り部61に至るまでの間において、最もアクチュエータ1側の線条部62aは、主軸X方向の最外に位置している。そして、最も第1つづら折り部側の線条部62aは、主軸X方向の最内に位置している。このモデル1においてミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、2.65度であった。尚、アクチュエータ1,1とミラー110との間の副軸Y方向の間隔は、以下のモデル2〜7においても同様に、128μmである。
【0073】
−モデル2−
図10に、第1ヒンジ6のモデル2の平面図を示す。モデル2は、基本的な構成は前記モデル1と同様であり、第2つづら折り部62の線条部62aの本数がモデル1と異なる。詳しくは、モデル2では、第2つづら折り部62の線条部62aが、主軸X方向外側から内側に向かって7本だけ設けられている。尚、屈曲部62bの個数も、線条部62aの本数に合わせて、モデル1と比べて減っている。このモデル2においてミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、2.55度であった。
【0074】
−モデル3−
図11に、第1ヒンジ6のモデル3の平面図を示す。モデル3は、基本的な構成は前記モデル2と同様であり、第2つづら折り部62の線条部62aの延びる方向がモデル2と異なる。詳しくは、モデル3では、第2つづら折り部62の線条部62aが、副軸Yに対して傾斜した方向に延びている。線条部62aは、ミラー側よりもアクチュエータ側の方が主軸X方向内側に位置するように傾斜している。ただし、主軸X方向の最外に位置する線条部62aは、傾斜することなく、副軸Y方向に延びている。線条部62aと副軸Yとのなす角(以下、傾斜角ともいう)θyは、13度である。このように傾斜した線条部62aは、図12に示すように、主軸X方向成分62axと副軸Y方向成分62ayとに分解したときに、副軸Y方向成分62ayの方が大きくなるように傾斜している。すなわち、線条部62aの副軸Yに対する傾斜角θyは、45度未満である。このモデル3においてミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、2.66度であった。
【0075】
−モデル4−
図13に、第1ヒンジ6のモデル4の平面図を示す。モデル4は、基本的な構成は前記モデル2と同様であり、第1つづら折り部61の線条部61aの本数と、第2つづら折り部62のアクチュエータ1及び第1つづら折り部61への連結のされ方がモデル2と異なる。詳しくは、第1つづら折り部61は、10本の線条部61a,61a,…が設けられており、最もアクチュエータ側の線条部61aは、主軸X方向の内側から外側に向かって延びて終わっている。第2つづら折り部62は、アクチュエータ1から第1つづら折り部61に至るまでの間において、最もアクチュエータ1側の線条部62aは、主軸X方向の最内に位置している。すなわち、第2つづら折り部62は、アクチュエータ1の主軸X方向外側の端部から副軸Y方向に延びて、すぐに、主軸X方向内側へ向かって屈曲し、主軸X方向の最内から外側に向かって、蛇行しながら延びている。そして、主軸X方向の最外の線条部62aが第1つづら折り部61に連結されている。このモデル4においてミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、2.51度であった。
【0076】
−モデル5−
図14に、第1ヒンジ6のモデル5の平面図を示す。モデル5は、基本的な構成は前記モデル4と同様であり、第2つづら折り部62の線条部62aの延びる方向がモデル4と異なる。詳しくは、モデル5では、第2つづら折り部62の線条部62a…が、副軸Yに対して傾斜した方向に延びている。線条部62aは、アクチュエータ側よりもミラー側の方が主軸X方向内側に位置するように傾斜している。ただし、主軸X方向の最外に位置する線条部62aは、傾斜することなく、副軸Y方向に延びている。線条部62aと副軸Yとのなす角(以下、副軸Yに対する傾斜角ともいう)θyは13度である。このように傾斜した線条部62aは、主軸X方向成分62axと副軸Y方向成分62ayとに分解したときに、副軸Y方向成分62ayの方が大きくなるように傾斜している。すなわち、線条部62aの副軸Y方向に対する傾斜角θyは45度未満である。このモデル5においてミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は1.40度であった。
【0077】
−モデル6−
図15に、第1ヒンジ6のモデル6の平面図を示す。モデル6は、基本的な構成は、前記モデル3と同様であり、モデル3の第1ヒンジ6を主軸Xと平行な直線に対して反転させた形状(すなわち、図11における第1ヒンジ6の左右を反転させた形状)をしている点でモデル3と異なる。つまり、モデル6の第1ヒンジ6は、第1つづら折り部61がアクチュエータ側に、第2つづら折り部62がミラー側に設けられている。第2つづら折り部62の線条部62aは、副軸Yに対して傾斜した方向に延びている。線条部62aは、アクチュエータ側よりもミラー側の方が主軸X方向内側に位置するように傾斜している。線条部62aの副軸Yに対する傾斜角θyは、13度である。このモデル6においてミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、2.53度であった。
【0078】
−モデル7−
図16に、第1ヒンジ6のモデル7の平面図を示す。モデル7は、基本的な構成は、前記モデル5と同様であり、モデル5の第1ヒンジ6を主軸Xと平行な直線に対して反転させた形状(すなわち、図14における第1ヒンジ6の左右を反転させた形状)をしている。つまり、モデル7の第1ヒンジ6は、第1つづら折り部61がアクチュエータ側に、第2つづら折り部62がミラー側に設けられている。第2つづら折り部62の線条部62a,62a,…は、副軸Yに対して傾斜した方向に延びている。線条部62aは、ミラー側よりもアクチュエータ側の方が主軸X方向内側に位置するように傾斜している。線条部62aの副軸Yに対する傾斜角θyは、13度である。このモデル7においてミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、1.59度であった。
【0079】
−小括−
以上、モデル0〜7を比較すると、副軸Y回りの回動角は、モデル0が0.74度であるのに対し、モデル1〜7が1.40〜2.66度である。つまり、第1ヒンジ6に第1つづら折り部61と第2つづら折り部62とを含ませることによって副軸Y回りの回動角が増大することがわかる。また、第2つづら折り部62において線条部62aを副軸Yに対して傾斜させた場合であっても、副軸Y回りの回動角が増大することがわかる。さらに、モデル1〜7の中でも、モデル1〜4,6は、モデル5,7に比べて、副軸Y回りの回動角が大幅に増大している。
【0080】
−モデル8−
図17に、第1ヒンジ6のモデル8の平面図を示す。モデル8は、基本的な構成は前記モデル2と同様であり、第1つづら折り部61の副軸Y方向の寸法がモデル2と異なる。詳しくは、アクチュエータ1,1とミラー110との間の副軸Y方向の間隔は、188μmである。また、アクチュエータ1から第2つづら折り部62のミラー側の端部までの副軸Y方向の距離は、75μmである。第1つづら折り部61の両端部は、副軸Y方向に延びる縦線条部61c,61cとなっており、それぞれ第2つづら折り部62の端部とミラー110とに連結されている。各縦線条部61cの長さは、33μmである。第1つづら折り部61の副軸Y方向の長さは、113μmである。このモデル8において、ミラー110を主軸X回りに回動させたときの回動角は、5.48度であり、ミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、2.80度であった。尚、アクチュエータ1,1とミラー110との間の副軸Y方向の間隔は、以下のモデル9〜13においても同様に、188μmである。
【0081】
−モデル9−
図18に、第1ヒンジ6のモデル9の平面図を示す。モデル9は、基本的な構成は前記モデル8と同様であり、第1つづら折り部61の線条部61aの延びる方向がモデル8と異なる。詳しくは、モデル9では、第1つづら折り部61の線条部61aが、主軸Xに対して傾斜した方向に延びている。線条部61aは、主軸X方向外側よりも主軸X方向内側の方がミラー側に位置するように傾斜している。線条部61aと主軸Xとのなす角(以下、主軸Xに対する傾斜角ともいう)θxは、30度である。このように傾斜した線条部61aは、図19に示すように、主軸X方向成分61axと副軸Y方向成分61ayとに分解したときに、主軸X方向成分61axの方が大きくなるように傾斜している。すなわち、線条部61aの主軸Xに対する傾斜角θxは、45度未満である。第1つづら折り部61全体としての副軸Y方向への寸法はモデル8と同じであるが、縦線条部61cの長さがモデル8と異なる。モデル9では、第2つづら折り部側とミラー側とで縦線条部61cが異なり、第2つづら折り部側の縦線条部61cの長さは、20μmである。このモデル9において、ミラー110を主軸X回りに回動させたときの回動角は、5.13度であり、ミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、3.00度であった。
【0082】
−モデル10−
図20に、第1ヒンジ6のモデル10の平面図を示す。モデル10は、基本的な構成は、前記モデル9と同様であり、第1つづら折り部61の線条部61aの傾斜方向がモデル9と異なる。詳しくは、モデル10では、第1つづら折り部61の線条部61aは、主軸X方向外側よりも主軸X方向内側の方がアクチュエータ側に位置するように傾斜している。線条部61aの主軸Xに対する傾斜角θxは、30度である。このように傾斜した線条部61aは、主軸X方向成分61axと副軸Y方向成分61ayとに分解したときに、主軸X方向成分61axの方が大きくなるように傾斜している。ミラー側の縦線条部61cの長さは、20μmである。このモデル10において、ミラー110を主軸X回りに回動させたときの回動角は、5.13度であり、ミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、2.73度であった。
【0083】
−モデル11−
図21に、第1ヒンジ6のモデル11の平面図を示す。モデル11は、基本的な構成は、前記モデル8と同様であり、モデル8の第1ヒンジ6を主軸Xと平行な直線に対して反転させた形状(すなわち、図17における第1ヒンジ6の左右を反転させた形状)をしている点でモデル8と異なる。詳しくは、モデル11の第1ヒンジ6は、第1つづら折り部61がアクチュエータ側に、第2つづら折り部62がミラー側に設けられている。このモデル11において、ミラー110を主軸X回りに回動させたときの回動角は、5.12度であり、ミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、2.83度であった。
【0084】
−モデル12−
図22に、第1ヒンジ6のモデル12の平面図を示す。モデル12は、基本的な構成は、前記モデル9と同様であり、モデル9の第1ヒンジ6を主軸Xと平行な直線に対して反転させた形状(すなわち、図18における第1ヒンジ6の左右を反転させた形状)をしている点でモデル9と異なる。詳しくは、モデル12の第1ヒンジ6は、第1つづら折り部61がアクチュエータ側に、第2つづら折り部62がミラー側に設けられている。第1つづら折り部61の線条部61aは、主軸Xに対して傾斜した方向に延びている。線条部61aは、主軸X方向外側よりも主軸X方向内側の方がアクチュエータ側に位置するように傾斜している。線条部61aと主軸Xに対する傾斜角θxは、30度である。このモデル12において、ミラー110を主軸X回りに回動させたときの回動角は、4.88度であり、ミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、3.49度であった。
【0085】
−モデル13−
図23に、第1ヒンジ6のモデル13の平面図を示す。モデル13は、基本的な構成は、前記モデル10と同様であり、モデル10の第1ヒンジ6を主軸Xと平行な直線に対して反転させた形状をしている点でモデル10と異なる。詳しくは、モデル13の第1ヒンジ6は、第1つづら折り部61がアクチュエータ側に、第2つづら折り部62がミラー側に設けられている。第1つづら折り部61の線条部61aは、主軸Xに対して傾斜した方向に延びている。線条部61aは、主軸X方向外側よりも主軸X方向内側の方がミラー側に位置するように傾斜している。線条部61aと主軸Xに対する傾斜角θxは、30度である。このモデル13において、ミラー110を主軸X回りに回動させたときの回動角は、4.87度であり、ミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、2.31度であった。
【0086】
−小括−
以上、モデル8とモデル11とを比較すると、第1つづら折り部61の線条部61aが主軸X方向に延び且つ第2つづら折り部62の線条部62aが副軸Y方向に延びる構成においては、第1つづら折り部61と第2つづら折り部62の位置が入れ替わっても、主軸X回り及び副軸Y回りの回動角は大きく変わらないことがわかる。つまり、第1つづら折り部61と第2つづら折り部62とがアクチュエータ側とミラー側との何れの位置であっても、主軸X回り及び副軸Y回りの回動角に大きな影響はない。
【0087】
また、第1つづら折り部61の線条部61aが主軸X方向に延びるモデル8と、第1つづら折り部61の線条部61aが主軸X方向に対して傾斜したモデル9,10とを比較すると、何れのモデルも主軸X回り及び副軸Y回りの回動角は大きいことがわかる。より詳細には、主軸X回りの回動角は、モデル8が最も大きいのに対し、副軸Y回りの回動角は、モデル9が最も大きく、モデル10が最も小さいことがわかる。ただし、これらの差は僅かである。
【0088】
さらに、第1つづら折り部61の線条部61aが主軸X方向に延びるモデル11と、第1つづら折り部61の線条部61aが主軸X方向に対して傾斜したモデル12,13とを比較すると、何れのモデルも主軸X回り及び副軸Y回りの回動角は大きいことがわかる。より詳細には、主軸X回りの回動角は、モデル11が最も大きいのに対し、副軸Y回りの回動角は、モデル12が最も大きく、モデル13が最も小さいことがわかる。ただし、これらの差は僅かである。
【0089】
−モデル14−
図24に、第1ヒンジ6のモデル14の平面図を示す。モデル14は、基本的な構成はモデル0と同様であり、第1つづら折り部61の線条部61aの本数がモデル0と異なる。詳しくは、モデル14は、第1ヒンジ6を第1つづら折り部61だけで構成したモデルである。アクチュエータ1,1とミラー110との間の副軸Y方向の間隔は128μmであり、その中に16本の線条部61a,61a,…が互いに平行に且つ等間隔に設けられている。第1つづら折り部61の両端部には、副軸Y方向に延びる縦線条部61c,61cが設けられている。縦線条部61cの長さは、25.5μmである。このモデル14において、ミラー110を主軸X回りに回動させたときの回動角は、5.73度であり、ミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、0.87度であった。尚、アクチュエータ1,1とミラー110との間の副軸Y方向の間隔は、以下のモデル15,16においても同様に、128μmである。
【0090】
−モデル15−
図25に、第1ヒンジ6のモデル15の平面図を示す。モデル15は、基本的な構成はモデル14と同様であり、第1つづら折り部61の線条部61aの延びる方向がモデル14と異なる。詳しくは、モデル15では、第1つづら折り部61の線条部61aが、主軸Xに対して傾斜した方向に延びている。線条部61aは、主軸X方向外側よりも主軸X方向内側の方がミラー側に位置するように傾斜している。線条部61aの主軸Xに対する傾斜角θxは、35度である。ミラー側の縦線条部61cの長さは、27.5μmである。このモデル15において、ミラー110を主軸X回りに回動させたときの回動角は、4.60度であり、ミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、0.58度であった。
【0091】
−モデル16−
図26に、第1ヒンジ6のモデル16の平面図を示す。モデル16は、基本的な構成はモデル15と同様であり、第1つづら折り部61の線条部61aの傾斜方向がモデル15と異なる。詳しくは、モデル16では、第1つづら折り部61の線条部61aが、主軸Xに対して傾斜した方向に延びている。線条部61aは、主軸X方向外側よりも主軸X方向内側の方がアクチュエータ側に位置するように傾斜している。線条部61aの主軸Xに対する傾斜角θxは、35度である。アクチュエータ側の縦線条部61cの長さは、27.5μmである。このモデル16において、ミラー110を主軸X回りに回動させたときの回動角は、4.59度であり、ミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、1.30度であった。
【0092】
−小括−
モデル14とモデル15,16とを比較すると、線条部61aを主軸Xに対して傾斜させると、主軸X回りの回動角は小さくなり、副軸Y回りの回動角は、傾斜方向に応じて、大きくも、小さくもなることがわかる。尚、アクチュエータ1とミラー110との間の副軸Y方向寸法が同じであって第1ヒンジ6を第1つづら折り部61と第2つづら折り部62とで構成したモデル2においては、ミラー110を主軸X回りに回動させたときの回動角は、5.64度であり、ミラー110を副軸Y回りに回動させたときの回動角は、2.55度であった。この結果からすると、線条部61aを単に傾斜させることに比べて、第1ヒンジ6に第1つづら折り部61と第2つづら折り部62とを含ませる方が、副軸Y回りの回動角を大幅に大きくできることがわかる。さらに、そのような構成であっても、主軸X回りの回動角をあまり低減させないこともわかる。
【0093】
したがって、本実施形態によれば、ミラーアレイ100は、ベース部2と、該ベース部2に支持された複数のミラー110,110,…と、該ミラー110に連結されて該ミラー110を駆動する複数のアクチュエータ1,1とを備え、該ミラー110を互いに直交する主軸X及び副軸Y回りに回動させる。そして、アクチュエータ1は、前記副軸Y方向に延びるアクチュエータ本体3と、該アクチュエータ本体3の表面に積層された圧電素子4とを有し、該圧電素子4を伸縮させることによって該アクチュエータ本体3を傾動させるように構成されており、前記各ミラー110には、前記副軸Yを挟んで並ぶ2つの前記アクチュエータ1,1が前記主軸Xに対して一方の側だけに設けられている。
【0094】
この構成によれば、1つのミラー110につき2つのアクチュエータ1,1が設けられている。すなわち、特許文献1に記載のミラー装置に比べて、ミラー1つ当たりのアクチュエータの個数が減少している。そのため、ミラーアレイ100の構成を簡略化することができる。
【0095】
また、アクチュエータ1をミラー110の主軸Xに対して片側だけに設けるという簡略な構成であっても、アクチュエータ1を圧電駆動とし且つ2つのアクチュエータ1,1を副軸Yを挟んで並設することによって、ミラー110を主軸X回りにも副軸Y回りにも回動させることができる。
【0096】
すなわち、アクチュエータ本体3と圧電素子4とを積層させた構成においては、圧電素子4を伸張させることによってアクチュエータ本体3を圧電素子4とは反対側に傾動させることができる一方、圧電素子4を収縮させることによってアクチュエータ本体3を圧電素子側に傾動させることができる。そのため、アクチュエータ1をミラー110の主軸Xに対して片側だけに設ける構成であっても、ミラー110を主軸X回りの何れの方向に回動させることができる。
【0097】
さらに、ミラー110ごとに設けられた2つのアクチュエータ1,1は、副軸Yを挟んで並んでいるため、一方のアクチュエータ1を傾動させることによって、ミラー110を副軸Y回りに回動させることができる。このとき、他方のアクチュエータ1を一方のアクチュエータ1とは反対側に傾動させることによって、ミラー110の副軸Y回りの回動角を大きくすることができる。また、ミラー110を副軸Y回りに回動させるときに副軸Yが傾動することを防止することができる。
【0098】
また、2つのアクチュエータ1,1は、主軸X方向において、ミラー110の主軸X方向の寸法内に収まっている。つまり、2つのアクチュエータ1,1とミラー110とを含むミラー装置の主軸X方向寸法を抑制することができる。その結果、ミラーアレイ100のように、複数のミラー110,110,…を有する構成であっても、ミラー110をコンパクトに配置することができ、ひいては、ミラーアレイ100の小型化を図ることができる。
【0099】
また、前記ミラーアレイ100においては、各アクチュエータ1は、第1ヒンジ6を介してミラー110に連結されており、ミラー110は、第2ヒンジ7を介してベース部2に支持されており、第1ヒンジ6は、つづら折り状に屈曲して、互いに平行な複数の線条部61a,61a,…を含む第1つづら折り部61と、つづら折り状に屈曲して、互いに平行で且つ第1つづら折り部61の線条部61aとは異なる方向に延びる複数の線条部62a,62a,…を含む第2つづら折り部62とを有し、第1つづら折り部61の線条部61aは、主軸X方向への成分61axと副軸Y方向への成分61ayとに分解したときに主軸X方向への成分61axが多くなる方向に延びている一方、第2つづら折り部62の線条部62aは、主軸X方向への成分62axと副軸Y方向への成分62ayとに分解したときに副軸Y方向への成分62ayが大きくなる方向に延びているものとする。
【0100】
この構成によれば、第1つづら折り部61は、主軸X回りの曲げ剛性が小さくなる。一方、第2つづら折り部62は、副軸Y回りの曲げ剛性が小さく且つ主軸X回りの曲げ剛性が大きくなる。そのため、第1ヒンジ6は、主軸X回りの曲げ剛性を調節して全体として適度な曲げ剛性を実現することができる。それに加えて、第1ヒンジ6は、全体としての副軸Y回りの曲げ剛性を低減することができる。その結果、第1ヒンジ6は、アクチュエータ1の駆動力(変位)をミラー110に効率良く伝達することができると共に、ミラー110の回動を妨げてしまうのを防止することができる。
【0101】
さらに、前記ミラーアレイ100においては、第2ヒンジ7は、一端から、渦巻状に渦巻の中心に向かって延びた後、折り返して、渦巻状に渦巻の外側に向かって延びて他端に至る形状をしている。
【0102】
この構成によれば、第2ヒンジ7には、主軸X方向に延びる横線条部71aと副軸Y方向に延びる縦線条部71bとが含まれる。横線条部71aは、主軸X回りのねじり剛性が小さい。また、縦線条部71bは、副軸Y回りのねじり剛性が小さい。そのため、第2ヒンジ7は、主軸X回りにも、副軸Y回りにも回動し易いので、ミラー110の主軸X回りの回動と副軸Y回りに回動とを妨げないようにすることができる。また、第2ヒンジ7は、渦巻状に形成されているので、第1ヒンジ6のようにつづら折り状に形成される構成と比較して、線条が折り返される部分がほとんどないので、容易に製造することができる。
【0103】
《その他の実施形態》
本発明は、前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0104】
前記実施形態では、ミラーアレイ100を波長選択スイッチ300に適用した例を説明したが、これに限られるものではない。ミラーアレイ100は様々なアプリケーションに組み込むことができる。
【0105】
また、前記実施形態における形状、寸法、材質は、例示に過ぎず、これらに限られるものではない。例えば、PZTの代わりに、非鉛圧電材料であるKNN((K,Na)NbO3)等を用いてもよい。
【0106】
また、前記実施形態では、アクチュエータ1とミラー110との連結に第1ヒンジ6を、ミラー110とベース部2との連結に第2ヒンジ7を採用しているが、これに限られるものではない。例えば、第1ヒンジ6に代えて第2ヒンジ7を採用することもできるし、第2ヒンジ7に代えて第1ヒンジ6を採用することもできる。
【0107】
また、前記ミラーアレイ100では、上部端子43b、第1検出端子81及び参照端子83が全てのアクチュエータ1,1,…に対して共通で設けられているが、個別に設けられてもよいし、アクチュエータ1,1,…をいくつかのグループに分けて、該端子をグループごとに設けてもよい。
【0108】
また、前記第1及び第2ヒンジ6,7は、前記アクチュエータ1の構成でなくても、前述の効果を奏することができる。つまり、2つで1組のアクチュエータが、ミラーの主軸を挟んで両側に、即ち、2組設けられている構成であっても、各アクチュエータとミラーとの連結に前記第1又は第2ヒンジ6,7を採用することができる。さらには、圧電駆動式以外のアクチュエータであっても、前記第1及び第2ヒンジ6,7を採用することができる。例えば、対向電極との間の静電力によりアクチュエータ本体を傾動させる静電駆動式のアクチュエータや、アクチュエータ本体に設けたコイルによる磁力と外部磁場との関係でアクチュエータ本体を傾動させる電磁駆動式のアクチュエータや、線膨張係数が異なる部材でアクチュエータ本体を構成し、両者の熱ひずみの差によりアクチュエータ本体を傾動させるアクチュエータに適用してもよい。
【0109】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上説明したように、本発明は、複数のミラーと該ミラーを駆動するアクチュエータとを備えたミラーアレイについて有用である。
【符号の説明】
【0111】
100 ミラーアレイ
110 ミラー
300 波長選択スイッチ
1 アクチュエータ
2 ベース部
3 アクチュエータ本体
4 圧電素子
6 第1ヒンジ
61 第1つづら折り部
61a 線条部
62 第2つづら折り部
62a 線条部
7 第2ヒンジ
X 主軸
Y 副軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、該ベース部に支持された複数のミラーと、該ミラーに連結されて該ミラーを駆動する複数のアクチュエータとを備え、該ミラーを互いに直交する主軸及び副軸回りに回動させるミラーアレイであって、
前記アクチュエータは、前記副軸方向に延びるアクチュエータ本体と、該アクチュエータ本体の表面に積層された圧電素子とを有し、該圧電素子を伸縮させることによって該アクチュエータ本体を傾動させるように構成されており、
前記各ミラーには、前記副軸を挟んで並ぶ2つの前記アクチュエータが前記主軸に対して一方の側だけに設けられているミラーアレイ。
【請求項2】
請求項1に記載のミラーアレイにおいて、
前記複数のミラーは、前記主軸方向に配列されているミラーアレイ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のミラーアレイにおいて、
前記各アクチュエータは、第1ヒンジを介して前記ミラーに連結されており、
前記ミラーは、第2ヒンジを介して前記ベース部に支持されており、
前記第1又は/及び第2ヒンジは、つづら折り状に屈曲して、互いに平行な複数の線条部を含む第1つづら折り部と、つづら折り状に屈曲して、互いに平行で且つ該第1つづら折り部の該線条部とは異なる方向に延びる複数の線条部を含む第2つづら折り部とを有し、
前記第1つづら折り部の線条部は、前記主軸方向への成分と前記副軸方向への成分とに分解したときに前記主軸方向への成分が多くなる方向に延びている一方、
前記第2つづら折り部の線条部は、前記主軸方向への成分と前記副軸方向への成分とに分解したときに前記副軸方向への成分が大きくなる方向に延びているミラーアレイ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のミラーアレイにおいて、
前記各アクチュエータは、第1ヒンジを介して前記ミラーに連結されており、
前記ミラーは、第2ヒンジを介して前記ベース部に支持されており、
前記第1又は/及び第2ヒンジは、一端から、渦巻状に渦巻の中心に向かって延びた後、折り返して、渦巻状に渦巻の外側に向かって延びて他端に至る形状をしているミラーアレイ。
【請求項5】
請求項3に記載のミラーアレイにおいて、
前記第1ヒンジは、前記第1つづら折り部と前記第2つづら折り部とを有し、
前記第2ヒンジは、一端から、渦巻状に渦巻の中心に向かって延びた後、折り返して、渦巻状に渦巻の外側に向かって延びて他端に至る形状をしているミラーアレイ。
【請求項1】
ベース部と、該ベース部に支持された複数のミラーと、該ミラーに連結されて該ミラーを駆動する複数のアクチュエータとを備え、該ミラーを互いに直交する主軸及び副軸回りに回動させるミラーアレイであって、
前記アクチュエータは、前記副軸方向に延びるアクチュエータ本体と、該アクチュエータ本体の表面に積層された圧電素子とを有し、該圧電素子を伸縮させることによって該アクチュエータ本体を傾動させるように構成されており、
前記各ミラーには、前記副軸を挟んで並ぶ2つの前記アクチュエータが前記主軸に対して一方の側だけに設けられているミラーアレイ。
【請求項2】
請求項1に記載のミラーアレイにおいて、
前記複数のミラーは、前記主軸方向に配列されているミラーアレイ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のミラーアレイにおいて、
前記各アクチュエータは、第1ヒンジを介して前記ミラーに連結されており、
前記ミラーは、第2ヒンジを介して前記ベース部に支持されており、
前記第1又は/及び第2ヒンジは、つづら折り状に屈曲して、互いに平行な複数の線条部を含む第1つづら折り部と、つづら折り状に屈曲して、互いに平行で且つ該第1つづら折り部の該線条部とは異なる方向に延びる複数の線条部を含む第2つづら折り部とを有し、
前記第1つづら折り部の線条部は、前記主軸方向への成分と前記副軸方向への成分とに分解したときに前記主軸方向への成分が多くなる方向に延びている一方、
前記第2つづら折り部の線条部は、前記主軸方向への成分と前記副軸方向への成分とに分解したときに前記副軸方向への成分が大きくなる方向に延びているミラーアレイ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のミラーアレイにおいて、
前記各アクチュエータは、第1ヒンジを介して前記ミラーに連結されており、
前記ミラーは、第2ヒンジを介して前記ベース部に支持されており、
前記第1又は/及び第2ヒンジは、一端から、渦巻状に渦巻の中心に向かって延びた後、折り返して、渦巻状に渦巻の外側に向かって延びて他端に至る形状をしているミラーアレイ。
【請求項5】
請求項3に記載のミラーアレイにおいて、
前記第1ヒンジは、前記第1つづら折り部と前記第2つづら折り部とを有し、
前記第2ヒンジは、一端から、渦巻状に渦巻の中心に向かって延びた後、折り返して、渦巻状に渦巻の外側に向かって延びて他端に至る形状をしているミラーアレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2013−88703(P2013−88703A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230615(P2011−230615)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000183369)住友精密工業株式会社 (336)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000183369)住友精密工業株式会社 (336)
【Fターム(参考)】
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