説明

モータ内蔵ローラの制御装置、モータ内蔵ローラ及びコンベア装置

【課題】モータ内蔵ローラの駆動モータや制御基板等の焼損を防止すると共に、過大な電流が流れる時間を極力短縮して消費電力を抑制することができるモータ内蔵ローラの制御装置を提供することを目的する。
【解決手段】モータ制御部42には、駆動モータ31に供給される電流の電流値が入力されており、この電流値が一定の値を越えないように制限している。モータ駆動部25に流される電流の電流値が、「所定の上限値」以上となる状態が一定時間以上続いた場合に、「所定の上限値」を段階的に下げる。「所定の上限値」を低下させた状況下において、モータ駆動部25に流される電流の実測値が、「所定の上限値」よりも下の一定値以下となった場合に「所定の上限値」を元の値に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DCブラシレスモータ等を使用したモータ内蔵ローラの制御装置、当該モータ内蔵ローラ、及びモータ内蔵ローラを用いたコンベア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンベア装置等を構成する部品として、モータ内蔵ローラが知られている。ここでモータ内蔵ローラは、本体筒内に駆動モータが内蔵され、当該駆動モータを駆動することによって本体筒を回転させる装置である。
前記した様にモータ内蔵ローラは、コンベア装置を構成する部品として使用される場合が多いが、コンベア装置によって搬送される物品が障害物に引っ掛かって停止すると、モータ内蔵ローラの本体筒の回転が外力によって強制的に停止され、駆動モータの回転がロック状態になる。
その結果、内部の駆動モータに過負荷が掛かり、モータ駆動回路やモータコイルが発熱し、モータ駆動回路やモータコイルが熱により破損する恐れがある。
【0003】
そこでこの問題を解決するための手段として、駆動モータがロック状態となったことを検知し、駆動モータがロック状態となった場合に駆動モータへの供給電力を低下させる構成を採用したモータ内蔵ローラが、特許文献1に開示されている。
特許文献1に開示されたモータ内蔵ローラでは、駆動モータがロック状態になると駆動モータへの供給電力を低下させ、さらにロック状態が一定時間継続する場合は駆動モータへの電力供給を停止する。
【0004】
また特許文献2には、分岐路を備えたコンベア装置が開示されている。
【特許文献1】特開2007−68393号公報
【特許文献2】特開2002−247927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のモータ内蔵ローラでは、駆動モータがロックした場合に駆動モータに供給する供給電力が低下されるので、駆動モータがロック状態状態となっても駆動モータの焼損は防がれる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたモータ内蔵ローラは、駆動モータが停止したことを条件として供給電力を低下させる構成であるため、モータ内蔵ローラの本体筒と搬送物との間に滑りがある場合には対処することができないという問題がある。
すなわち特許文献1に開示された方策は、搬送物が引っ掛かった場合に、摩擦によって本体筒の回転が完全に停止することを前提としている。
しかしながら、実際には、モータ内蔵ローラの本体筒と搬送物との間にはある程度の滑りがあり、搬送物が停止したからといって、駆動モータが強制的に停止されるとは言えない。
そのためモータ内蔵ローラの駆動モータ等に過電流が流れているにも係わらず供給電力を低下させることができず、駆動モータが焼損してしまう恐れがある。
【0007】
特に前記した特許文献2の様に、主搬送路の他に分岐路を備えたコンベア装置においては、モータ内蔵ローラの本体筒と搬送物との間に、敢えてある程度の滑りを持たせる場合もあり、この様な滑りを許容する設計を採用している場合には駆動モータに過大な電流が流れることとなる。
すなわち特許文献2の様に、主搬送路の他に分岐路を備えたコンベア装置においては、搬送物を主搬送路から分岐路に移載する際に、搬送物を強制的に停止させる。具体的には、主搬送路上に障害物を出現させ、当該障害物に搬送物を衝突させて搬送物を停止させる。主搬送路の他に分岐路を備えたコンベア装置においては、障害物に搬送物を衝突させて搬送物を停止させる動作が日常的に行われるから、モータ内蔵ローラの本体筒と搬送物との間に、敢えてある程度の滑りを持たせる場合がある。また主搬送路の他に分岐路を備えたコンベア装置においては、障害物に搬送物を衝突させて搬送物を停止させる動作が日常的に行われるから、たとえモータ内蔵ローラが焼損することは無くても駆動モータに過大な電流が流れることが日常的に行われ、省エネルギーに反する。
【0008】
さらに特許文献1に記載の構成では、ロック状態が一定時間継続する場合は駆動モータへの電力供給を停止するが、制御装置の構造によっては、モータ内蔵ローラ内の駆動モータを直ちに再起動することが困難であるものもある。
【0009】
そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、モータ内蔵ローラの駆動モータや制御基板等の焼損を防止すると共に、過大な電流が流れる時間を極力短縮して消費電力を抑制することができるモータ内蔵ローラの制御装置や、この制御装置を内蔵したモータ内蔵ローラ等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、本体筒内に駆動モータが内蔵され、当該駆動モータを駆動することによって本体筒が回転するモータ内蔵ローラを制御するモータ内蔵ローラの制御装置において、前記駆動モータへの供給電流を検出する電流検出手段及び/又はモータ内蔵ローラの温度を検知する温度検知手段と、前記駆動モータへの供給電流を所定の上限値以下に制限する供給電流制御手段とを備え、前記電流検出手段によって前記駆動モータに流れる電流が所定の危険値以上となったことが検出された場合及び/又は温度検知手段が所定の高温を検知した場合に、前記供給電流制御手段が前記駆動モータへの供給電流の前記上限値を低下させる一方、前記電流検出手段によって、前記駆動モータに流れる電流値が前記上限値よりも下の一定値以下になったことが検出された場合及び/又は温度検知手段が所定の低温を検知した場合に、前記駆動モータへの供給電流の前記上限値を高めることを特徴とするモータ内蔵ローラの制御装置である。
【0011】
ここで前記した「所定の危険値」は、前記した「所定の上限値」と同一であっても構わない。もちろん「所定の危険値」と「所定の上限値」が別の値であってもよい。
すなわち制御回路によって、上限値を越える電流が流れることがあり得ない回路や、瞬間的に上限値を越える電流が流れることがあり得る回路がある。前者の上限値を越える電流が流れることがあり得ない回路を採用する場合は、「所定の危険値」と「所定の上限値」が同一であることが望ましい。
逆に上限値を越える電流が流れることがあり得る回路を採用する場合には、「所定の危険値」と「所定の上限値」が別であることが推奨され、より望ましくは、「所定の危険値」が「所定の上限値」よりも高いことが推奨される。
【0012】
本発明のモータ内蔵ローラの制御装置では、駆動モータへの供給電流を検出する電流検出手段か、モータ内蔵ローラの温度を検知する温度検知手段のいずれか又はその両方を備えている。
ここで駆動モータへの供給電流を検出する電流検出手段は、駆動モータへの供給電流が過電流であるか否かを直接的に検知するものである。一方、温度検知手段は、駆動モータへの供給電流が過電流であるか否かを間接的に検知するものであるといえる。すなわち駆動モータに過大な電流が流れると、コイルや基板その他が発熱するので、モータ内蔵ローラの温度を検知することによって供給電流が過電流であるか否かが判る。
本発明のモータ内蔵ローラの制御装置は、供給電流制御手段を備え、駆動モータに供給される電流が過大である場合には駆動モータへの供給電流の上限値を低下させる。その結果、駆動モータへ供給される電流値が低下し、モータ等の焼損が防がれる。
また本発明では、駆動モータへの供給電流が過電流状態を脱した場合は駆動モータへの供給電流の上限値を高める。
すなわち駆動モータへの供給電流が過電流状態を脱した場合、搬送物あるいは障害物が除去されたと想定されるから、駆動モータへの供給電流の上限値を高め、通常の搬送状態に戻す。
【0013】
請求項2に記載の発明は、モータ内蔵ローラの制御装置は前記電流検出手段を備えるものであり、前記一定値は、モータ内蔵ローラを無負荷状態で回転させた場合に前記駆動モータに流れる電流値に相当する電流値であることを特徴とする請求項1に記載のモータ内蔵ローラの制御装置である。
【0014】
本発明のモータ内蔵ローラの制御装置は、先の発明に従属するものであり、駆動モータへの供給電流が過電流である場合には駆動モータに供給される電流値が制限される。そして駆動モータに実際に流れる電流値が、モータ内蔵ローラを無負荷状態で回転させた場合に駆動モータに流れる電流値に相当する電流値となったことを条件として駆動モータへの供給電流の上限値を高め、通常の搬送状態に戻す。
【0015】
請求項3に記載の発明は、モータ内蔵ローラの制御装置は前記温度検知手段を備えるものであり、前記モータ内蔵ローラの本体筒内に、駆動モータに電力を供給する基板が内蔵され、前記温度検知手段は、前記基板の温度を検知するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ内蔵ローラの制御装置である。
【0016】
本発明のモータ内蔵ローラの制御装置では、温度検知手段によって基板の温度を監視し、駆動モータに過電流が流れているか否かを間接的に検知している。また本発明では、基板の温度を監視しているので、基板の焼損を確実に防ぐことができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、前記供給電流制御手段は、前記駆動モータへの供給電流を段階的に低下させるものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のモータ内蔵ローラの制御装置である。
【0018】
本発明のモータ内蔵ローラの制御装置では、駆動モータへの供給電流を段階的に低下させるものであるから、中間的に低下された状態の際には搬送物を搬送する能力を保持している。そのため偶発的に搬送物が障害物と衝突し、偶然に障害が無くなった場合に搬送物は従来通り下流に搬送される。
【0019】
請求項5に記載の発明は、 請求項1乃至4のいずれかに記載のモータ内蔵ローラの制御装置を内蔵したモータ内蔵ローラである。
【0020】
また請求項6に記載の発明は、主搬送路と、主搬送路から分岐した分岐路を有し、両者の分岐路に搬送物と当接させて搬送物を停止させる移動規制部材が出没するものであり、この搬送物移動規制部材の近傍に請求項1乃至4のいずれかに記載の制御装置で制御されるモータ内蔵ローラを配置したことを特徴とするコンベア装置である。
【0021】
本発明のコンベア装置は、主搬送路と分岐路とを有し、両者の分岐部に搬送物移動規制部材を出現させて搬送物を停止する。ここで本発明では、搬送物移動規制部材の近傍に請求項1乃至4のいずれかに記載の制御装置で制御されるモータ内蔵ローラが配置されている。そのため搬送物が搬送物移動規制部材と当接して停止したとき、駆動モータに供給される電流値の上限が規制され、無駄な電力消費が抑制される。
【発明の効果】
【0022】
本発明のモータ内蔵ローラの制御装置等によれば、駆動モータや制御基板内の温度上昇を制御することが出来るため、モータ内蔵ローラの焼損や傷みが防止される。また本発明のモータ内蔵ローラの制御装置によれば、無駄な電力消費が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態のモータ内蔵ローラの断面図である。図2は、本発明の実施形態のモータ内蔵ローラの制御装置のブロック図である。
【0024】
本発明の第1の実施形態におけるモータ内蔵ローラ1は図1に示されており、本体筒12、駆動モータ31、減速機21及び基板2を有している。そして基板2の一部で本発明の実施形態のモータ内蔵ローラの制御装置が構成されている。なお、図1は断面図であるが、ハッチング省略している。
【0025】
本体筒12は円筒状であり、内部の空間に駆動モータ31、減速機21及び基板2等が配置されている。すなわちモータ内蔵ローラ1には、駆動モータ31及び基板2が内蔵されている。また本体筒12の両端は閉塞部材13,14で閉塞されている。そして、この閉塞部材13,14には、軸受28、29を介して固定軸17,18が貫通しており、固定軸17、18と本体筒12との間は回転自在となっている。
【0026】
また駆動モータ31と減速機21とは、内筒部材19によりユニット化されている。
駆動モータ31と減速機21とは、従来公知のものを用いることができ、特に限定されるものではないが、本実施形態の駆動モータ31は、DCブラシレスモータが用いられている。
【0027】
モータ内蔵ローラ1では、駆動モータ31が作動すると回転軸23が回転し、減速機21が回転して、さらに、減速機21の先に設けられた動力伝達部材30によって本体筒12が回転する。そして、モータ内蔵ローラ1は、固定軸17、18が他の部材に支持された状態で駆動モータ31を回転させて、本体筒12を回転させて使用される。
【0028】
固定軸17は中空状に形成されている。この中空の固定軸17内に、駆動モータ31を制御するためなどに用いられる信号線や、電力線やモータ制御部42に接続されている書き込み専用線等が束ねられたケーブル22が通過しており、必要な信号の通信や電力の供給等が行われる。そして、ケーブル22は、中央制御装置6につながっており、ケーブル22により、基板2と外部の中央制御装置6との間で、信号のやりとりが行われる。
【0029】
基板2は駆動モータ31の動作を制御するものであり、図1に示されるように、軸受28と駆動モータ31の間に2枚配置されている。そして、2枚の基板2が構成する回路が、本発明の実施形態のモータ内蔵ローラの制御装置(以下 単に制御装置)43を構成する。
なお外部の中央制御装置6からの信号は、ケーブル22を通じて本体筒12内の制御装置43へ伝達され駆動モータ31の動作の制御が行われる。
【0030】
回転軸23の近傍には、複数のホールIC7(図2の例では3つ)が配置されている。ホールIC7は、回転子の磁極の周方向の位置を検知し、磁極検知信号を発信するものである。
【0031】
ホールIC7は、ホール素子とパワースイッチング回路の全部あるいは一部を一体化して構成されている。さらに具体的にはホールIC7は磁界の大きさを検知するホール素子と、該ホール素子により検出された微小信号を増幅する増幅器と、増幅器において増幅された信号を方形波に成型するシュミットトリガ回路と、安定化電源回路と、温度補償回路とを備えている。
【0032】
本発明の実施形態では、磁極の位置を検知するためにホールIC7を採用する例を示したが、これに限らず発光ダイオードとフォトセンサを用いたフォト・フォトインタラプタ式のものや磁気飽和素子を用いたインダクタンス式のものなど、いかなる方式の磁極位置検知手段を採用してもよい。
【0033】
駆動モータ31は、回転子(回転軸23)の回転駆動を制御する制御装置43(図2)に接続されている。
モータ内蔵ローラの制御装置43は、モータ制御部42、モータ駆動部25、シャント抵抗50、電流検知部45、サーミスタ51、温度検出部47とで構成されている。
サーミスタ51は、基板2に取り付けられており、基板2の温度に応じて抵抗値が変化する。サーミスタ51の信号は、温度検出部47に入力されて基板2の温度が演算され、モータ制御部42に入力される。
サーミスタ51は、基板2の温度を検知するものであり、駆動モータ31に過電流が流れたことを間接的に検知することができる。すなわち本体筒12に過度に抵抗がかかると、駆動モータ31に過大な電流が流れ、駆動モータ31に電力を供給する基板2が発熱する。したがって基板2の温度が過度に上昇する現象は、駆動モータ31に過負荷が掛かっている事態を示している。
【0034】
モータ制御部42は、各ホールIC7と信号線で接続されており、ホールIC7から出力された磁極検知信号(回転数検知信号)は、モータパルス制御部27に入力されるようになっている。モータパルス制御部27は磁気検知信号にパルス波形処理等を施し、この処理信号をモータ駆動部25へ送る。モータ駆動部25は、モータ制御部42からの信号に基づき、駆動モータ31へ電力を供給する。
【0035】
また本実施形態では、モータ制御部42は、電流検知部45の信号に基づいて、駆動モータ31に供給される電流値を所定の上限値以下に制限する機能(供給電流制御手段)を備えている。
すなわちモータ駆動部25にはシャント抵抗50が接続されており、モータ駆動部25から駆動モータ31に供給される電流が監視されている。より具体的にはシャント抵抗50と呼ばれる抵抗に流れる電流を電流検知部45で検出し(電流を電圧に変換して検出)、その値がモータ制御部42に入力される。
【0036】
本実施形態の制御装置43では、モータ制御部42によってモータ駆動部25が制御されるが、モータ制御部42には、駆動モータ31に供給される電流の電流値が入力されており、この電流値が一定の値(所定の上限値)を越えないように通電パターンに対してPWM制御を行うことによって電流制限制御を行っている。
【0037】
また本実施形態の制御装置43では、モータ駆動部25に流される電流の電流値が、危険値以上となる状態が一定時間以上続いた場合に、前記した「所定の上限値」自体を段階的に下げる機能を備えている。本実施形態では、危険値は「所定の上限値」と同一の電流値に設定されている。したがって、本実施形態では、前記した「所定の上限値」以上となる状態が一定時間以上続いた場合に、前記した「所定の上限値」自体を段階的に下げる機能を備えている。
すなわち本実施形態の制御装置43では、公知のコンパレータ等によってモータ駆動部25に流される電流の実測値(電流検知部45の信号)と「所定の上限値」とを比較し、電流の実測値が、「所定の上限値」以上となる状態が一定時間以上続いた場合に、前記した「所定の上限値」を段階的に下げる。例えば「所定の上限値」を30%〜50%低下させ、モータ駆動部25に流される電流の電流値が新たな「所定の上限値」を越えないように電流制限制御を行う。
「所定の上限値」を下げる回数は任意であり、例えば3回程度低下させることも可能であり、最初の「所定の上限値」の10%という様な下限値に至るまで低下させることも可能である。
【0038】
また本実施形態の制御装置43では、「所定の上限値」を低下させた状況下において、モータ駆動部25に流される電流の実測値(電流検知部45の信号)が、「所定の上限値」よりも下の一定値以下となった場合に「所定の上限値」を元の値に戻す。
例えばモータ駆動部25に流される電流の実測値が、モータ内蔵ローラ1を無負荷状態で回転させた場合に前記駆動モータ31に流れる電流値に相当する値となった場合に、「所定の上限値」を上昇させ、元の値に戻す。
【0039】
以下、本実施形態の制御装置43の上記した動作を、図を参照しつつ説明する。
図3は、本実施形態の制御装置の動作を説明するタイムチャートである。図3に示すタイムチャートは、主搬送路と、分岐路とを備えたコンベア装置に本発明のモータ内蔵ローラを採用した場合を想定している。
図4は、本発明の実施形態のモータ内蔵ローラを使用したコンベア装置の部分正面図である。
上記したモータ内蔵ローラ1は、図4に示すようなコンベア装置20の駆動ローラ60、71として使用される。コンベア装置20は、平行に配置された一対のサイドレール62,62との間に駆動ローラ60(モータ内蔵ローラ1)と、従動ローラ63とが複数並設されたものである。従動ローラ63はサイドレール62、62の間に固定された図示しない固定軸に対して回転自在なアイドルローラである。
【0040】
また、図4に示すようにコンベア装置20は本流たる主搬送路65から分岐する支流たる分岐路66を備えている。そして主搬送路65から分岐路66に搬送物Wが送られるよう構成されたものであり、主搬送路65と分岐路66との分岐部には紙面垂直方向に出没自在に移動規制部材61が配置されている。
【0041】
そして、被搬送物Wが主搬送路65を搬送される場合は、移動規制部材61は紙面垂直方向から下方向に没入しているが、分岐路66に被搬送物Wを送る場合には、移動規制部材61は上昇し、被搬送物Wの搬送を一時停止し、図示しない移載装置によって分岐路66方向に被搬送物Wを送りこむように構成されている。
【0042】
図3に示すタイムチャートの説明に戻ると、図3のタイムチャートにおいて、一点鎖線で示す線は、モータ駆動部25に流される電流の上限を示す線である。すなわち一点鎖線が「所定の上限値」を示す。
また図3において、実線は、モータ駆動部25に流される電流の実測値(電流検知部45の信号)を示す。
なお一点鎖線と実線が重なる状況の場合は、見やすくするために実線を一点鎖線の下側に描いている。
【0043】
図3において、原点から時間aまでの間は、コンベア装置20の主搬送路65を搬送物Wが移動している状態である。そして時間aの段階で、搬送物Wが分岐部に至り、移動規制部材61に衝突する。
また時間bの時に搬送物Wが分岐路66方向に送り出される。
【0044】
本実施形態の制御装置では、通常は、「所定の上限値」が100%出力の状態で運転される。すなわち本実施形態の制御装置では、通常は、能力の100%までモータ駆動部25に電流を供給することができる。しかしながら実際の負荷は、それよりも低く、例えば最大能力の30%程度の電流によってモータ内蔵ローラが駆動されている。
【0045】
時間が経過してa時になると、搬送物Wが分岐部に至り、移動規制部材61に衝突し、搬送物Wが停止する。その結果、モータ内蔵ローラ1が大きな抵抗を受け、駆動モータ31に過電流が流れる。
すなわち駆動モータ31に流れる電流が急激に増加し、出力し得る最大の電流が駆動モータ31に流れる。具体的には、実線の様に危険値たる「所定の上限値」の電流が駆動モータ31に流れる。
【0046】
そしてこの状態が一定時間続くと、「所定の上限値」が低下する。図3の例によると、元の値から30%低下する。
しかしながら搬送物Wは、移動規制部材61に衝突したままの状態であるから、ひき続き、出力し得る最大の電流が駆動モータ31に流れることとなる。
さらにこの状態が一定時間続くと、「所定の上限値」がさらに低下する。図3の例によると、一段低下状態の「所定の上限値」を基準として30%低下し、能力の70%出力が新たな「所定の上限値」となる。
しかしながら搬送物Wは、移動規制部材61に衝突したままの状態であるから、ひき続き、出力しえる最大の電流が駆動モータ31に流れることとなる。すなわち新たな危険値たる新たな「所定の上限値」の電流が駆動モータ31に流れる。
この状態が一定時間続くと、「所定の上限値」が低下する。図3の例によると、先の「所定の上限値」からさらに30%低下する。
【0047】
こうして30%づつ「所定の上限値」を低下させ、時間がbに至ると、搬送物Wが分岐路66方向に送り出されるから、モータ内蔵ローラ1は、無負荷状態で運転されることとなる。この様にモータ駆動部25に流される電流の実測値が、モータ内蔵ローラ1を無負荷状態で回転させた場合に前記駆動モータ31に流れる電流値に相当する値となると、「所定の上限値」を元の値(100%)に戻る。
実際のコンベア装置では、次の搬送物が上流側から搬送されるので、実際の電流値は上昇する。
【0048】
上記した一連の動作を図5のフローチャートに基づいて再度説明する。
図5は本発明の第1の実施形態にかかるモータ内蔵ローラの制御装置の動作を示すフローチャートである。
【0049】
本実施形態の制御装置では、ステップ1で駆動モータ31が動作を開始し、次のステップ2で無負荷時の電流値を設定する。また「所定の上限値」の初期値を設定する。
そして、ステップ3で実際に駆動モータ31に供給されている電流値を測定し、ステップ4に移行する。
【0050】
ステップ4では、実際に駆動モータ31に供給されている電流が「所定の上限値」以上の電流か否かが判定され、「所定の上限値」以上の電流が流れていない場合、ステップ3に戻る。そしてステップ5で一定時間その状態であるか否かが判定され、一定時間その状態でない場合、ステップ3に戻る。すなわちステップ3,4,5で、実際に駆動モータ31に供給されている電流を監視し、電流が「所定の上限値」以上となっている状況が一定以上続くか否かが監視される。
そしてステップ5で、電流が「所定の上限値」以上となっている状況が一定以上続いていると判定されたならば、ステップ6に移行し、「所定の上限値」を一段階下げる。
【0051】
そしてステップ6で電流値を1段階下げた後、ステップ7に移行する。ステップ7では、「所定の上限値」が最低値であるか否かを確認する。すなわち本実施形態では、「所定の上限値」を複数回に渡って低下させるが、低下させる場合にも下限があり、それよりも低下させることは好ましくない。
具体的には、「所定の上限値」の最低値は、モータ内蔵ローラが無負荷時に回転し得る電流値であり、無負荷時に流れる電流値よりも幾分高い値である。
なお「所定の上限値」が最低値であるか否かを判断するステップに代わって、「所定の上限値」を下げた回数をカウントし、この回数に制限を設けてもよい。
【0052】
「所定の上限値」が最低値でないならばステップ8,9で、今の実際の電流値が、無負荷状態時の電流値であるか、あるいは下げた「所定の上限値」の電流が流れているかを判断し、さらにステップ8,9を繰り返していずれかの状態になるのを待つ。
そして実際の電流値が、無負荷状態時の電流値となったならばステップ9からステップ10に移行し、「所定の上限値」を初期値に戻してステップ53に戻る。
【0053】
一方、今の実際の電流値が、下げた「所定の上限値」の電流であるならば(実際にはこの状態が一定時間続くことが条件となる)ステップ6に移行し、「所定の上限値」をさらにもう一段階下げる。
【0054】
この様にステップ6〜ステップ9を繰り返し、「所定の上限値」を複数回低下させた結果、「所定の上限値」が最低値に至った場合は、これ以上「所定の上限値」を低下させることができないので、ステップ11に移行し、実際の電流値が、無負荷状態時の電流値になるのを待つこととなる。
そして実際の電流値が、無負荷状態時の電流値となったならばステップ11からステップ10に移行し、「所定の上限値」を初期値に戻してステップ53に戻る。
【0055】
以上説明した実施形態は、駆動モータ31に流れる電流を実測してこれが「所定の上限値」以上である場合に「所定の上限値」を低下させたが、基板2等の温度を指標として「所定の上限値」を低下させてもよい。
図6は本発明の第2の実施形態にかかるモータ内蔵ローラの制御装置の動作を示すフローチャートである。
図6に示すフローチャートでは、電流値を「所定の上限値」と比較する代わりに、基板の温度が一定以上であるか否かによって「所定の上限値」を低下させている。
【0056】
図6に示すフローチャートに従うと、ステップ51で駆動モータ31が動作を開始し、次のステップ52で通常運転時の基板の温度を設定温度して設定する。また「所定の上限値」の初期値を設定する。
そして、ステップ53で実際の基板2の温度を測定し、ステップ54に移行する。
【0057】
ステップ54では、実際の基板2の温度が設定温度以上の温度か否かが判定され、設定温度以上の温度に至っていない場合は、ステップ53に戻り、この動作を繰り返す。すなわちステップ53,54で、実際の基板の温度を監視し、基板の温度が設定温度以上となった場合はステップ55に移行する。そしてステップ55で一定時間その状態であるか否かが判定され、一定時間その状態でない場合、ステップ53に戻る。またステップ55で一定時間その状態が続くと判定されたならば、ステップ56に移行し、供給電流の上限たる「所定の上限値」を一段階下げる。
【0058】
そしてステップ56で「所定の上限値」を1段階下げ、ステップ57に移行する。ステップ57では、「所定の上限値」が最低値であるか否かを確認する。
【0059】
「所定の上限値」が最低値でないならばステップ58,59で、今の実際の電流値が、無負荷状態時の電流値であるか、あるいは基板2の温度が設定温度未満の温度か否かを判断し、さらにステップ58,59を繰り返していずれかの状態になるのを待つ。
そして基板2の温度が設定温度未満の温度となったならばステップ59からステップ60に移行し、「所定の上限値」を初期値に戻してステップ3に戻る。
【0060】
一方、今の実際の電流値が、下げた「所定の上限値」の電流であるならば(実際にはこの状態が一定時間続くことが条件となる)ステップ56に移行し、「所定の上限値」をさらにもう一段階さげる。
【0061】
この様にステップ56〜ステップ59を繰り返し、「所定の上限値」を複数回低下させた結果、「所定の上限値」が最低値に至った場合は、これ以上「所定の上限値」を低下させることができないので、ステップ61に移行し、基板の温度が設定値未満になるのを待つこととなる。
そして基板の温度が設定値未満になったならばステップ61からステップ60に移行し、「所定の上限値」を初期値に戻してステップ3に戻る。
【0062】
以上説明した実施形態では、「所定の上限値」を危険値とし、「所定の上限値」の電流が流れる状態が続けば「所定の上限値」を低下させたが、「所定の上限値」と危険値とは必ずしも同一でなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態のモータ内蔵ローラの断面図である。
【図2】本発明の実施形態のモータ内蔵ローラの制御装置のブロック図である。
【図3】本発明の実施形態の制御装置の動作を説明するタイムチャートである。
【図4】本発明の実施形態のモータ内蔵ローラを採用したコンベア装置の部分正面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態にかかるモータ内蔵ローラの制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態にかかるモータ内蔵ローラの制御装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
1 モータ駆動ローラ
2 基板
7 ホールIC
20 コンベア装置
42 モータ制御部
43 モータ内蔵ローラの制御装置
45 電流検知部
47 温度検知部
50 シャント抵抗
51 サーミスタ
60 駆動ローラ(モータ内蔵ローラ)
65 主搬送路
66 分岐路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体筒内に駆動モータが内蔵され、当該駆動モータを駆動することによって本体筒が回転するモータ内蔵ローラを制御するモータ内蔵ローラの制御装置において、前記駆動モータへの供給電流を検出する電流検出手段及び/又はモータ内蔵ローラの温度を検知する温度検知手段と、前記駆動モータへの供給電流を所定の上限値以下に制限する供給電流制御手段とを備え、前記電流検出手段によって前記駆動モータに流れる電流が所定の危険値以上となったことが検出された場合及び/又は温度検知手段が所定の高温を検知した場合に、前記供給電流制御手段が前記駆動モータへの供給電流の前記上限値を低下させる一方、前記電流検出手段によって、前記駆動モータに流れる電流値が前記上限値よりも下の一定値以下になったことが検出された場合及び/又は温度検知手段が所定の低温を検知した場合に、前記駆動モータへの供給電流の前記上限値を高めることを特徴とするモータ内蔵ローラの制御装置。
【請求項2】
モータ内蔵ローラの制御装置は前記電流検出手段を備えるものであり、前記一定値は、モータ内蔵ローラを無負荷状態で回転させた場合に前記駆動モータに流れる電流値に相当する電流値であることを特徴とする請求項1に記載のモータ内蔵ローラの制御装置。
【請求項3】
モータ内蔵ローラの制御装置は前記温度検知手段を備えるものであり、前記モータ内蔵ローラの本体筒内に、駆動モータに電力を供給する基板が内蔵され、前記温度検知手段は、前記基板の温度を検知するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ内蔵ローラの制御装置。
【請求項4】
前記供給電流制御手段は、前記駆動モータへの供給電流を段階的に低下させるものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のモータ内蔵ローラの制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のモータ内蔵ローラの制御装置を内蔵したモータ内蔵ローラ。
【請求項6】
主搬送路と、主搬送路から分岐した分岐路を有し、両者の分岐路に搬送物と当接させて搬送物を停止させる移動規制部材が出没するものであり、この搬送物移動規制部材の近傍に請求項1乃至4のいずれかに記載の制御装置で制御されるモータ内蔵ローラを配置したことを特徴とするコンベア装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−240077(P2009−240077A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83586(P2008−83586)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(592026819)伊東電機株式会社 (71)
【Fターム(参考)】