説明

リニアエンコーダ

【課題】 電源投入時の立ち上がり時間を短縮させることが可能なリニアエンコーダを提供すること。
【解決手段】 リニアスケールには、位置情報としてインクリメント位置を示す複数の情報を所定ピッチで記録したインクリメント指標部と、インクリメント位置とは別の基準点位置を示す複数の情報を所定ピッチで記録した基準点位置指標部と、インクリメント位置及び基準点位置とは別の位置情報を持つアブソ信号を記録したアブソ指標部とが設けられ、隣接する任意の基準点位置間に含まれるアブソ信号の組み合わせが他の基準点位置間に含まれるアブソ信号の組み合わせの何れとも異なるように設定され、信号処理部は上記検出ヘッドの検出素子からの検出信号に基づいてアブソ信号の組み合わせを読み取り、予め記憶していたテーブルと比較して可動部のリニアスケール上の絶対位置を求めるように構成されているもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、リニアモータを使用した電動アクチュエータに搭載されて使用されるリニアエンコーダとリニアエンコーダを使用した絶対位置特定方法に係り、特に、電源投入時の立ち上がり時間を短縮させることができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、リニアモータを使用した電動アクチュエータにおいては、移動の制御及びリニアモータの制御のために、リニアエンコーダによる位置検出が行われている。この種のリニアエンコーダとしては、リニアスケール上の特定位置(例えば、リニアスケールの両端)に設定した原点位置を基準として移動位置を検出するインクリメンタル型のものと、絶対位置を検出することが可能なアブソリュート型のものとがある。
尚、リニアエンコーダの構成を開示するものとして、例えは、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−51586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構成によると次のような問題があった。
上述したように、リニアエンコーダとしては、インクリメンタル型のものとアブソリュート型のものとがあるが、取扱性やコストの点からインクリメンタル型のリニアエンコーダが使用される傾向がある。
しかしながら、インクリメンタル型のリニアエンコーダの場合には、既に説明したように、原点位置を基準として移動位置を検出する構成になっているために、必ず原点位置を検出する必要がある。その為、電源投入時に可動部を原点位置に復帰させる原点復帰動作が必要となり、それが原因となって電源投入時の立ち上がり時間が長くなってしまうという問題があった。
【0005】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、電源投入時の立ち上がり時間を短縮させることが可能なリニアエンコーダとリニアエンコーダを使用した絶対位置特定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するべく本願発明の請求項1によるリニアエンコーダは、リニアモータを使用した電動アクチュエータの固定部に取り付けられたリニアスケールと、上記固定部に対して移動可能に設置された可動部に取り付けられ検出素子を備えた検出ヘッドと、上記検出素子からの検出信号に基づいて演算処理を行い上記可動部の上記リニアスケール上における絶対位置を求める信号処理部と、を具備し、上記リニアスケールには、インクリメント位置を示す情報を所定ピッチで記録したインクリメント位置指標部と、上記インクリメント位置とは別の基準点位置を示す情報を所定ピッチで記録した基準点位置指標部と、上記インクリメント位置及び上記基準点位置とは別の位置情報を持つアブソ信号を記録したアブソ指標部と、が設けられていて、任意の領域のアブソ信号の組み合わせが他の領域のアブソ信号の組み合わせの何れとも異なるように設定されており、上記信号処理部は、上記検出素子からの検出信号に基づいて任意の領域のアブソ信号の組み合わせを読み取り、予めテーブルに記憶されている複数のアブソ信号の組み合わせと比較することにより、上記可動部の上記リニアスケール上の絶対位置を求めるように構成されていることを特徴とするものである。
又、請求項2によるリニアエンコーダは、請求項1記載のリニアエンコーダにおいて、上記基準点位置指標部には、次の式(I)を満たす必要ビット(n)の最小値に対して、次の式(II)で示す1レコードピッチ(P)毎に基準点位置を示す情報が記録されており、上記アブソ指標部には、上記基準点位置指標部の上記1レコードピッチ(P)の中に予め設定された(n+a)ビットのアブソ信号が検出最少ピッチ(m)毎に記録されており、隣接する任意の基準点位置間に含まれるアブソ信号の組み合わせが他の基準点位置間に含まれるアブソ信号の組み合わせの何れとも異なるように設定されており、上記信号処理部は、上記検出ヘッドが最大1レコードピッチ(P)動くと、(n+a)ビットのアブソ信号を読み取り、これと上記インクリメント指標部からの情報に基づいて上記可動部の上記リニアスケール上の絶対位置を求めるように構成されていることを特徴とするものである。
{m×(n+a)}×2≧L―――(I)
P={m×(n+a)}―――――(II)
但し、
m:アブソ相検出最少ピッチ
n:1レコードの必要ビット
a:エラー補正ビット
L:ストローク
又、請求項3によるリニアエンコーダは、請求項1記載のリニアエンコーダにおいて、上記基準点位置指標部には検出最少ピッチ(m)毎に基準点位置を示す情報が記録されており、アブソ指標部には検出最少ピッチ(m)毎に予め決められた(n)ビットの連続したアブソ信号の組み合わせが記録されており、 少なくとも1検出最少ピッチ(m)ずれることにより任意の領域のアブソ信号の組み合わせが別の領域のアブソ信号の組み合わせの何れとも異なるように設定されており、上記信号処理部は、上記検出ヘッドが検出最少ピッチ(m)動くと、(n)ビットのアブソ信号を読み取り、これと上記インクリメント指標部からの情報に基づいて上記可動部の上記リニアスケール上の絶対位置を求めるように構成されていることを特徴とするものである。
但し、
m:アブソ相検出最少ピッチ
n:1レコードの必要ビット
a:エラー補正ビット
又、請求項4によるリニアエンコーダを使用した絶対位置特定方法は、リニアスケールに、インクリメント位置を示す情報を所定ピッチで記録したインクリメント位置指標部と、上記インクリメント位置とは別の基準点位置を示す情報を所定ピッチで記録した基準点位置指標部と、上記インクリメント位置及び上記基準点位置とは別の位置情報を持つアブソ信号を記録したアブソ指標部と、を設けておき、
任意の領域のアブソ信号の組み合わせが他の領域のアブソ信号の組み合わせの何れとも異なるように設定されており、電源オフにより検出ヘッドを備えた可動部が任意の位置で停止した時、次の電源オンにより上記可動部を予め設定された方向に移動させて基準点位置指標部の基準点位置を検出し、次いで、検出ヘッドを反対側に移動させて隣接する別の基準点位置を検出し、上記検出ヘッドの基準点位置間の移動の際任意の領域のアブソ信号の組み合わせを読み取り、上記読み取ったアブソ信号の組み合わせと予めテーブルに記憶されている複数のアブソ信号の組み合わせと比較することにより、上記可動部の上記リニアスケール上の絶対位置を求めるように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
以上述べたように本願発明の請求項1によるリニアエンコーダによると、リニアモータを使用した電動アクチュエータの固定部に取り付けられたリニアスケールと、上記固定部に対して移動可能に設置された可動部に取り付けられ検出素子を備えた検出ヘッドと、上記検出素子からの検出信号に基づいて演算処理を行い上記可動部の上記リニアスケール上における絶対位置を求める信号処理部と、を具備し、上記リニアスケールには、インクリメント位置を示す情報を所定ピッチで記録したインクリメント位置指標部と、上記インクリメント位置とは別の基準点位置を示す情報を所定ピッチで記録した基準点位置指標部と、上記インクリメント位置及び上記基準点位置とは別の位置情報を持つアブソ信号を記録したアブソ指標部と、が設けられていて、任意の領域のアブソ信号の組み合わせが他の領域のアブソ信号の組み合わせの何れとも異なるように設定されており、上記信号処理部は、上記検出素子からの検出信号に基づいて任意の領域のアブソ信号の組み合わせを読み取り、予めテーブルに記憶されている複数のアブソ信号の組み合わせと比較することにより、上記可動部の上記リニアスケール上の絶対位置を求めるように構成されているので、電源投入時の立ち上がり時間を短縮させることができる。つまり、可動部のリニアスケール上における絶対位置を検出することができるので、従来のインクリメント型のリニアエンコーダの場合に必要であった原点復帰動作が不要になったからである。
又、請求項2によるリニアエンコーダは、請求項1記載のリニアエンコーダにおいて、上記基準点位置指標部には、次の式(I)を満たす必要ビット(n)の最小値に対して、次の式(II)で示す1レコードピッチ(P)毎に基準点位置を示す情報が記録されており、上記アブソ指標部には、上記基準点位置指標部の上記1レコードピッチ(P)の中に予め設定された(n+a)ビットのアブソ信号が検出最少ピッチ(m)毎に記録されており、隣接する任意の基準点位置間に含まれるアブソ信号の組み合わせが他の基準点位置間に含まれるアブソ信号の組み合わせの何れとも異なるように設定されており、上記信号処理部は、上記検出ヘッドが最大1レコードピッチ(P)動くと、(n+a)ビットのアブソ信号を読み取り、これと上記インクリメント指標部からの情報に基づいて上記可動部の上記リニアスケール上の絶対位置を求めるように構成されているので、上記効果をより確実なものとすることができる。
{m×(n+a)}×2≧L―――(I)
P={m×(n+a)}―――――(II)
但し、
m:アブソ相検出最少ピッチ
n:1レコードの必要ビット
a:エラー補正ビット
L:ストローク
又、請求項3によるリニアエンコーダは、請求項1記載のリニアエンコーダにおいて、上記基準点位置指標部には検出最少ピッチ(m)毎に基準点位置を示す情報が記録されており、アブソ指標部には検出最少ピッチ(m)毎に予め決められた(n)ビットの連続したアブソ信号の組み合わせが記録されており、 少なくとも1検出最少ピッチ(m)ずれることにより任意の領域のアブソ信号の組み合わせが別の領域のアブソ信号の組み合わせの何れとも異なるように設定されており、上記信号処理部は、上記検出ヘッドが検出最少ピッチ(m)動くと、(n)ビットのアブソ信号を読み取り、これと上記インクリメント指標部からの情報に基づいて上記可動部の上記リニアスケール上の絶対位置を求めるように構成されているので、上記した効果と同等の効果を得ることができ、且つ、検出ヘッドの移動量を最小にすることができる。
但し、
m:アブソ相検出最少ピッチ
n:1レコードの必要ビット
a:エラー補正ビット
さらに、請求項4は本願発明を方法として規定したものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、リニアエンコーダを搭載したリニアアクチュエータの構成を示す平面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図1のII−II断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を示す図で、リニアエンコーダの構成を示す平面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態を示す図で、動作を説明するための図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態を示す図で、検出ヘッドの構成を示す平面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示す図で、動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1乃至図3を参照して本発明の第1の実施の形態を説明する。図1は本実施の形態によるリニアエンコーダを搭載した電動アクチュエータ(単軸ロボット)の構成を示す平面図である。まず、固定部1があり、この固定部1はハウジング2を備えている。このハウジング2は、図2に示すように、ベース部3と、このベース部3の左右両側に立設されたカバー部5、5とから構成されている。
【0010】
上記ベース部3上には一対のガイドレール7、7が設置されている。上記一対のガイドレール7、7の間にステータ部(固定子)9が設置されている。上記ステータ部9は、ヨーク11を備えていて、このヨーク11上には、図1に示すように、複数個のマグネット13が設置されている。上記複数個のマグネット13は、隣接するマグネット13の極性がN・Sとなるように配置されている。
【0011】
又、上記固定部1には可動部15が、図1中左右方向に移動可能な状態で設置されている。上記可動部15はコイルアッセンブリ17を備えている。このコイルアッセンブリ17は、上記マグネット13に対して、図2中上下方向に微小距離を隔てて設置されたコアにコイルが巻回された構成になっている。上記コイルアッセンブリ17の上にはスライダープレート19が設置されていて、このスライダープレート19の左右両側であって下面側には、複数個のガイド部材21、21が取り付けられている。本実施の形態の場合には、図1に示すように、左右に2個ずつのガイド部材21が取り付けられている。上記ガイド部材21には、図2に示すように、ガイド凹部21aが形成されていて、ガイド部材21はこのガイド凹部21aを介して既に説明したガイドレール7に対して移動可能に係合している。
【0012】
上記スライダープレート19の上にはテーブル23が取り付けられており、このテーブル23上には図示しない様々な作業部材が搭載されることになる。上記テーブル23は図示しないボルト等によって上記スライダープレート19上に取付・固定されているものである。
【0013】
上記構成をなす電動アクチュエータにはリニアエンコーダ31が設置されている。このリニアエンコーダ31は、磁気的又は光学的に読取可能な位置情報が記録されたリニアスケール33と、このリニアスケール33に記録された情報を読み取る検出ヘッド35と、検出ヘッド35からの検出信号を入力して処理する信号処理部37とから構成されている。又、この実施の形態の場合には、上記リニアスケール33としては、位置情報が磁気的に記録された磁気スケールが使用されており、又、上記検出ヘッド35としては、磁気記録情報を読み取ることができるMRセンサが使用されている。
【0014】
上記リニアスケール33は、図2に示すように、図2中右側に示されているガイドレール7の外側位置であって上記ベース部3上に、ベース部3の長手方向略全長にわたって設置されている。一方、上記検出ヘッド35はガイド部材21の外側部下端に取り付けられていて、上記リニアスケール33に対向・配置されている。
【0015】
上記リニアエンコーダ31の構成を模式的に示すと図3に示すようなものとなる。まず、リニアスケール33には、インクリメント指標部41と、基準点位置指標部43と、アブソ指標部45とが設けられている。上記インクリメント指標部41には、一定微小ピッチ毎の位置を示すインクリメント情報(A相、B相)が記録されている。又、上記基準点位置指標部43には、上記インクリメント情報に沿って一定間隔の基準点情報(Z相)が記録されている。又、上記アブソ指標部45には、上記インクリメント情報ピッチの規定倍率に設定されるピッチ毎に「0」又は「1」の情報(ABS相)が記録されている。
尚、既に説明した検出ヘッド35には、インクリメント情報を検出するインクリ相センサ35c(図示せず)と、上記Z相を検出するZ相センサ35aと、上記ABS相を検出するABS相センサ35bとが設置されている(図4に示す)。
【0016】
又、上記基準点位置指標部43には、次の式(I)を満たす必要ビット(n)の最小値に対して、次の式(II)で示すピッチ(P)毎に基準点位置が示されている。又、上記アブソ指標部45には、上記基準点位置指標部43の上記ピッチ(P)の中に予め設定された(n+a)ビットのアブソ信号を検出最少ピッチ(m)毎に記録している。
{m×(n+a)}×2≧L―――(I)
P={m×(n+a)}―――――(II)
但し、
m:アブソ相検出最少ピッチ
n:1レコードの必要ビット
a:エラー補正ビット
L:ストローク
【0017】
又、この実施の形態の場合には、基準点位置指標部43における隣接する任意の二つの基準点位置間のアブソ指標部45の10ビット分の信号を検出ヘッド35によって読み込み、この10ビット分の信号を解析することにより可動部15の絶対位置を特定するようにしている。又、上記10ビット分信号の内9ビット分が位置検出用であり、1ビット分がエラー修正用に使用されている。そして、9ビット分の位置検出用の信号に関しては次の式(III)に示すような数の組み合わせがある。
=512―――(III)
【0018】
以上の構成を基にその作用を説明する。
まず、電動アクチュエータとしての通常の動作を説明する。可動部15のコイルアッセンブリ17に任意の方向の電流を流すことにより、固定部1側の複数個のマグネット13との関係により、図1中左右何れかの方向に推力が発生する。それによって、可動部15が図1中左右何れかの方向に移動することになる。
【0019】
次に、可動部15が任意の位置にある状態で電源がオフされ、その後再度電源が投入された場合の作用について説明する。
まず、検出ヘッド35(可動部15)が基準点位置指標部43の任意の基準点位置間の中間地点で位置決めされ、その状態で電源が「OFF」されたものと仮定する。この状態で、再度、電源が投入されると、従来のインクリメント型のリニアエンコーダであれば、ストロークの左右何れかの終端に設定されている原点に復帰させる動作が実行される。
これに対して、本実施の形態の場合には、停止されている可動部15の絶対位置の検出が行われることになる。以下、この絶対位置の検出について説明する。
【0020】
まず、予め決められている方向に検出ヘッド35(可動部15)が移動し、それによって、Z相センサ35aが最初の基準点位置の信号を読み取る。次に、反対方向に検出ヘッド35(可動部15)が移動し、同Z相センサ35aが反対側の基準点位置の信号を読み取ると共に、最初の基準点位置と次の基準点位置の間にあるアブソ指標部45の10ビット分の信号をABS相センサ35bが読み取る。
【0021】
次に、上記読み取ったアブソ指標部45の10ビット分の信号と、予めテーブルに記憶されている様々な10ビット分の信号とを比較して、一致する10ビット分の信号を特定し、それによって、可動部15の絶対位置を特定する。次に、検出ヘッド35のインクリ相センサ35cが読み取ったインクリメント指標部41の信号を、位置決めカウンタのクロックとして使用する。この点については従来のインクリメント型のリニアエンコーダの場合と同様である。
【0022】
上記絶対位置の検出に関して、図4を参照して、より具体的に説明する。図4に示すように、アブソ指標部45には512通りの10ビット分の信号の組み合わせが設定されている。そして、電源オフにより検出ヘッド35が「ABS4」の位置で停止したとする。この状態で次に電源がオンされた場合には、図中矢印aで示すように、検出ヘッド35が図中左側に移動して、そのZ相センサ35aが「Z1」を検出する。次いで、検出ヘッド35は反対側(図中矢印bで示す方向)に移動して、そのZ相センサ35aが「Z2」を検出する。検出ヘッド35が「Z1」から「Z2」に移動する間に、ABS相センサ35bが10ビット分の信号を読み取る。そして、その読み取った10ビット分の信号と予めテーブルに記憶されている様々な10ビット分の信号とを比較して、一致する10ビット分の信号を特定し、それによって、可動部15の絶対位置を特定するものである。
【0023】
以上本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。
まず、電源を一旦オフにした後に再度投入した場合の立ち上がり時間を短縮させることができる。これは従来のインクリメント型のリニアエンコーダの場合に必要であった原点復帰動作が不要になったからである。つまり、可動部15が仕様ストローク内の任意の場所にある状態で電源をオフされても、次に電源を投入した時に両側の基準点位置内を移動するだけで、可動部15の絶対位置を特定することができるからである。
【0024】
次に、図5及び図6を参照して本発明の第2の実施の形態を説明する。まず、基準点位置指標部43には検出最少ピッチ(m)毎に基準点位置を示す信号が記録されている。又、アブソ指標部45には上記最少ピッチ(m)毎に予め決められた(n)ビットの連続した信号の組み合わせが記録されている。本実施例には、前記第1の実施の形態の場合における10ビットの組み合わせを一組(1レコード)とし、たとえば、線形帰還シフトレジスタ(LFSR)を用いた1ビットずれると他のどの10ビットの組み合わせの信号とも異なる信号の組み合わせになるように設定されている。この場合、10ビットで1データを表し誤り訂正のビットは存在しない。
【0025】
そして、前記第1の実施の形態の場合と同様に、検出ヘッド35が上記アブソ指標部45の10ビットを一組みとしてこれを同時に読み取る。そして、信号処理部37はこれとインクリメント指標部41からの情報に基づいて、可動部15の上記リニアスケール33上における絶対位置を求めるものである。
【0026】
又、この第2の実施の形態の場合には、検出ヘッド35が図5に示すような構成になっている。すなわち、1個のZ相センサ35aと10個のABS相センサ35bから構成されているものである。このような構成の検出ヘッド35を使用すれば、検出ヘッド35が最少ピッチ(m)だけ移動するだけで10ビット分のABS相信号を一括して読み取ることができるものである。
【0027】
上記絶対位置の検出に関して、図6を参照して、より具体的に説明する。図6(a)に示すように、アブソ指標部45には1レコード10ビット分の信号の組み合わせが設定されている。具体的には、次の式(IV)に示す10ビット時の生成多項式 によるビットパターンで構成され、データ「0000000001
」を1ビットずつ左シフトさせている。そして、図6(b)に示すように、MSBから数えて1ビット目と4ビット目をEXOR回路に入力してその結果を10ビット目に返すように予めビットパターンが書き込まれている。
10 +X7 +1―――(IV)
そして、電源オフにより検出ヘッド35が「Z0」と「Z1」との間で停止したとする。この状態で次に電源がオンされた場合には、図中矢印aで示すように、検出ヘッド35が図中左側に移動して、そのZ相センサ35aが「Z0」を検出する。次いで、検出ヘッド35は反対側(図中矢印bで示す方向)に移動して、そのZ相センサ35aが「「Z1」を検出する。検出ヘッド35が「Z0」から「Z1」に移動する間に、10個のABS相センサ35bが10ビット分の信号を読み取る。そして、その読み取った10ビット分の信号と予めテーブルに記憶されている様々な10ビット分の信号とを比較して、一致する10ビット分の信号を特定し、それによって、可動部15の絶対位置を特定するものである。
【0028】
したがって、前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができる。特に、この実施の形態の場合には、検出ヘッド35を1ビット分(m)だけ移動させるだけで、可動部15の絶対位置を検出することができるものである。
【0029】
尚、本発明は前記第1、第2の実施の形態に限定されるものではない。
前記第1、第2の実施の形態では、磁気的なリニアスケールと検出ヘッドによってリニアエンコーダを構成した例を示したが、光学的なものであってもよい。例えば、多数のスリットを有するテープによりリニアスケールを形成すると共に、光学的に上記スリットを検出するセンサにより検出ヘッドを形成することになる。
又、前記第1、第2の実施の形態の場合には、固定子がマグネット、可動子がコイルの場合を例に挙げて説明したが、その逆でもよい。
又、前記第1、第2の実施の形態で説明した電動アクチュエータはあくまで一例であり、様々な用途に様々な構成のロボットに適用可能である。
又、リニアモータタイプのものに限定されず、ボールネジ・ボールナットタイプのものに対しても同様に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、例えば、電動アクチュエータに搭載されて使用されるリニアエンコーダに係り、特に、電源投入後の立ち上がり時間を短縮させることができるように工夫したものに関し、例えば、一軸の電動アクチュエータ用のリニアエンコーダとして好適である。
【符号の説明】
【0031】
1 固定部
2 ハウジング
3 ベース部
5 カバー部
7 ガイドレール
9 ステータ部
11 ステータ
13 マグネット
15 可動部
17 コイルアッセンブリ
19 スライダープレート
21 ガイド部材
23 テーブル
31 リニアエンコーダ
33 リニアスケール
35 検出ヘッド
37 信号処理部
41 インクリメント指標部
43 基準点位置指標部
45 アブソ指標部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニアモータを使用した電動アクチュエータの固定部に取り付けられたリニアスケールと、
上記固定部に対して移動可能に設置された可動部に取り付けられ検出素子を備えた検出ヘッドと、
上記検出素子からの検出信号に基づいて演算処理を行い上記可動部の上記リニアスケール上における絶対位置を求める信号処理部と、
を具備し、
上記リニアスケールには、インクリメント位置を示す情報を所定ピッチで記録したインクリメント位置指標部と、上記インクリメント位置とは別の基準点位置を示す情報を所定ピッチで記録した基準点位置指標部と、上記インクリメント位置及び上記基準点位置とは別の位置情報を持つアブソ信号を記録したアブソ指標部と、が設けられていて、
任意の領域のアブソ信号の組み合わせが他の領域のアブソ信号の組み合わせの何れとも異なるように設定されており、
上記信号処理部は、上記検出素子からの検出信号に基づいて任意の領域のアブソ信号の組み合わせを読み取り、予めテーブルに記憶されている複数のアブソ信号の組み合わせと比較することにより、上記可動部の上記リニアスケール上の絶対位置を求めるように構成されていることを特徴とするリニアエンコーダ。
【請求項2】
請求項1記載のリニアエンコーダにおいて、
上記基準点位置指標部には、次の式(I)を満たす必要ビット(n)の最小値に対して、次の式(II)で示す1レコードピッチ(P)毎に基準点位置を示す情報が記録されており、
上記アブソ指標部には、上記基準点位置指標部の上記1レコードピッチ(P)の中に予め設定された(n+a)ビットのアブソ信号が検出最少ピッチ(m)毎に記録されており、
隣接する任意の基準点位置間に含まれるアブソ信号の組み合わせが他の基準点位置間に含まれるアブソ信号の組み合わせの何れとも異なるように設定されており、
上記信号処理部は、上記検出ヘッドが最大1レコードピッチ(P)動くと、(n+a)ビットのアブソ信号を読み取り、これと上記インクリメント指標部からの情報に基づいて上記可動部の上記リニアスケール上の絶対位置を求めるように構成されていることを特徴とするリニアエンコーダ。
{m×(n+a)}×2≧L―――(I)
P={m×(n+a)}―――――(II)
但し、
m:アブソ相検出最少ピッチ
n:1レコードの必要ビット
a:エラー補正ビット
L:ストローク
【請求項3】
請求項1記載のリニアエンコーダにおいて、
上記基準点位置指標部には検出最少ピッチ(m)毎に基準点位置を示す情報が記録されており、
アブソ指標部には検出最少ピッチ(m)毎に予め決められた(n)ビットの連続したアブソ信号の組み合わせが記録されており、
少なくとも1検出最少ピッチ(m)ずれることにより任意の領域のアブソ信号の組み合わせが別の領域のアブソ信号の組み合わせの何れとも異なるように設定されており、
上記信号処理部は、上記検出ヘッドが検出最少ピッチ(m)動くと、(n)ビットのアブソ信号を読み取り、これと上記インクリメント指標部からの情報に基づいて上記可動部の上記リニアスケール上の絶対位置を求めるように構成されていることを特徴とするリニアエンコーダ。
但し、
m:アブソ相検出最少ピッチ
n:1レコードの必要ビット
a:エラー補正ビット
【請求項4】
リニアスケールに、インクリメント位置を示す情報を所定ピッチで記録したインクリメント位置指標部と、上記インクリメント位置とは別の基準点位置を示す情報を所定ピッチで記録した基準点位置指標部と、上記インクリメント位置及び上記基準点位置とは別の位置情報を持つアブソ信号を記録したアブソ指標部と、を設けておき、
任意の領域のアブソ信号の組み合わせが他の領域のアブソ信号の組み合わせの何れとも異なるように設定されており、
電源オフにより検出ヘッドを備えた可動部が任意の位置で停止した時、次の電源オンにより上記可動部を予め設定された方向に移動させて基準点位置指標部の基準点位置を検出し、次いで、検出ヘッドを反対側に移動させて隣接する別の基準点位置を検出し、
上記検出ヘッドの基準点位置間の移動の際任意の領域のアブソ信号の組み合わせを読み取り、
上記読み取ったアブソ信号の組み合わせと予めテーブルに記憶されている複数のアブソ信号の組み合わせと比較することにより、上記可動部の上記リニアスケール上の絶対位置を求めるように構成されていることを特徴とするリニアエンコーダを使用した絶対位置特定方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−288339(P2010−288339A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138865(P2009−138865)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(391008515)株式会社アイエイアイ (107)
【Fターム(参考)】