説明

ルテニウムを補助金属種と共に堆積させるための方法及び組成物

【課題】
当技術分野は、ルテニウム含有フィルムの蒸気相形成のための改善された組成物を求めている。
【解決手段】
ルテニウム堆積の速度及び程度をそのような補助金属種の不存在下でのルテニウムの堆積に比較して増大させる補助金属種と共にルテニウムを堆積させることを含む、蒸着プロセスでルテニウム含有フィルムを形成する方法。そのような方法を実施するために有用な実例となる前駆物質組成物は、ルテニウム前駆物質及びストロンチウム前駆物質を溶媒媒質中に含み、組成物中において、ルテニウム及びストロンチウムが互いに共堆積されるように、ルテニウム前駆物質及びストロンチウム前駆物質のうちの一方が他方の前駆物質の中心金属原子に配位する側鎖官能基を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、基材上にルテニウム含有フィルムを製造するための、例えばマイクロ電子デバイス及びそのためのデバイスの前駆物質構造の製造における組成物及びプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 進歩したマイクロ電子デバイスの製造において、ルテニウムは、例えば動的ランダムアクセスメモリー(DRAM)デバイスにおける電極を形成するために、重要性を増しつつある構築材料である。ルテニウム電極は、例えばチタン酸ストロンチウム(STO)及びチタン酸バリウムストロンチウム(BST)を主体とするコンデンサーなどのコンデンサーの製造において利用することができる。
【0003】
[0003] それにも拘わらず、従来のルテニウム前駆物質材料を使用するときは、原子層堆積(ALD: Atomic Layer Deposition)などの多くの蒸着プロセスにおいて必要なアスペクト比でルテニウム金属を堆積させることが困難である。特に、ルテニウム金属のALD堆積は、過度に長いインキュベーション時間(ルテニウムがフィルム成長の開始に十分な程度に核形成するか又は凝集するために必要とされる持続時間)、生じるフィルムの粗さ、低い前駆物質使用効率、及び全体として高いプロセスコストという不利点に悩まされる。
【0004】
[0004] 当技術分野は、それ故、マイクロ電子デバイス製造のためのルテニウム電極製造などのための用途における、ルテニウム含有フィルムの蒸気相形成のための改善された組成物及び堆積プロセスを求め続けている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005] 本発明は、DRAMコンデンサーなどのマイクロ電子デバイスにおけるルテニウム系電極の製造などの用途において有用な、ルテニウム含有材料の堆積のための組成物及びプロセスに関する。
【0006】
[0006] 一態様において、本発明は、補助金属種と共にルテニウムを堆積させることを含む蒸着法でルテニウム含有フィルムを形成する方法であって、補助金属種が、そのような補助金属種の不存在下でのルテニウムの堆積に比較して、ルテニウム堆積の速度及び程度を増大させる方法に関する。
【0007】
[0007] 本発明のさらなる態様は、蒸着プロセスでルテニウム含有フィルムを形成する方法であって、そのような補助金属種の不存在下でのルテニウムの堆積に比較してルテニウム核形成の速度及び程度を増大させる補助金属種と共にルテニウムを堆積させることを含む方法に関する。
【0008】
[0008] 他の態様において、本発明は、ルテニウムと、そのような補助金属種の不存在下でのルテニウムの堆積に比較してルテニウム堆積の速度及び程度を増大させる補助金属種と、を共堆積させることを含む、蒸着法でルテニウム含有フィルムを形成する方法であって、ルテニウム前駆物質と補助金属種前駆物質のうちの一方が他方の前駆物質の中心金属原子に配位する側鎖官能基を含む方法に関する。
【0009】
[0009] さらなる態様において、本発明は、ルテニウムと、補助金属種と、が互いに共堆積するように、ルテニウム前駆物質及び補助金属種前駆物質のうちの一方が他方の前駆物質の中心金属原子に配位する側鎖官能基を含む、ルテニウム前駆物質及び補助金属種前駆物質を含む前駆物質組成物に関する。
【0010】
[0010] さらなる態様において、本発明は、ルテニウムと、補助金属種と、が互いに共堆積するように、ルテニウム前駆物質及び補助金属種前駆物質のうちの一方が他方の前駆物質の中心金属原子に配位する側鎖官能基を含む、ルテニウム前駆物質及び補助金属種前駆物質を溶媒媒質中に含む前駆物質組成物に関する。
【0011】
[0011] 他の態様において、本発明は、ジシクロペンタジエニルルテニウム化合物が、ジシクロペンタジエニルストロンチウム化合物のストロンチウム金属中心に配位する、そのシクロペンタジエニル環の少なくとも1つにルイス塩基官能基を含む、ジシクロペンタジエニルストロンチウム化合物、ジシクロペンタジエニルルテニウム化合物、及び溶媒媒質を含む前駆物質組成物に関する。
【0012】
[0012] さらなる態様において、本発明は、ルテニウム前駆物質及び補助金属種前駆物質を含む組成物であって、
【0013】
【化1】


(式中、
EはO又はSであり;
XはNであり;
Mは、ルテニウム、ストロンチウム、バリウム又はカルシウムであり;
〜R13の各々は、互いに同じであっても異なっていてもよく、かつ各々は水素、メチル、エチル及びプロピルから独立に選択される)
からなる群から選択される式の少なくとも1種の前駆物質を含む組成物に関する。
【0014】
[0013] さらなる態様において、本発明は、ビス(n−プロピルテトラメチルシクロペンタジエニル)ストロンチウム及びエチルメチルアミノエチルシクロペンタジエニルルテニウムジシクロペンタジエンを含む組成物に関する。
【0015】
[0014] 本発明の追加の態様、特徴及び実施形態は、以下の開示及び添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】[0015] ジシクロペンタジエニルストロンチウム前駆物質と、ジシクロペンタジエニルルテニウム前駆物質と、の間の協調的相互作用であって、ルテニウム前駆物質が、ストロンチウム前駆物質のストロンチウム金属中心に配位し得る、シクロペンタジエニル側鎖のアミノアルキルルイス塩基基を含むものの模式図である。
【図2】[0016]図1の組成物の混合物並びにそのルテニウム及びストロンチウム成分についての熱重量分析データのSTAプロットを示す図である。
【図3】[0017]酸化ストロンチウムのシード層に堆積したルテニウムフィルムの原子間力顕微鏡(AFM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[0018] 本発明は、ケイ素、二酸化ケイ素、炭化ケイ素などの非金属基材、及び他の非導電性半導体製造基材上のルテニウムの堆積に非常に適した高い効率の様式でルテニウムを堆積させるための組成物及びプロセスに関する。そのような非金属基材への適用において、本発明の組成物及び方法は、先行技術のルテニウム組成物及び堆積方法により要求される長いインキュベーション時間と比較して短い又は無視さえできるインキュベーション期間を提供する。
【0018】
[0019] 広範な態様において、本発明は、そのような補助金属種の不存在下での対応する堆積を上回ってルテニウム堆積の速度及び程度を増大させる補助金属種と共にルテニウムを堆積させることを意図する。ルテニウムは、補助金属種を含有するフィルム上に堆積させることもでき、又はルテニウムは補助金属種と同時に堆積させることもできる;すなわち、ルテニウムの(補助金属堆積に対して)同時堆積及び後堆積の両方が、「補助金属種と共にルテニウムを堆積させること」という用語の意味のうちに意図されている。
【0019】
[0020] 本発明は、それ故、ルテニウム核形成の速度及び程度をそのような補助金属種の不存在下でのルテニウムの堆積と比較して増大させる補助金属種と共にルテニウムを堆積させることを含む、蒸着プロセスでルテニウム含有フィルムを形成する方法を意図する。
【0020】
[0021] そのような方法において、ルテニウム核形成工程は、補助金属種の不存在下でのルテニウム核形成と比較して一様で急速である。
【0021】
[0022] 本明細書において使用する用語「補助金属種」は、金属又は金属含有材料を指し、その場合、そのような材料における金属は、ストロンチウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、バナジウム、鉄及びハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属種を含む。
【0022】
[0023] ルテニウムがそれらの上に堆積されるときに使用される補助金属種は、上記金属の1種又は複数種を、元素金属フィルムとして、又は酸素含有化合物、例えばそのような金属種の酸化物又は炭酸塩として含むことができる。そのような酸素含有補助金属種の実例として、酸化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化バリウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化バナジウム、及び酸化鉄等が挙げられる。
【0023】
[0024] 好ましい補助金属種としては、酸化ストロンチウム及び/又は炭酸ストロンチウムが含まれ、それらは、例えば、基材上に薄いフィルムを形成して、ルテニウムがその上に容易に堆積することができる核形成剤、シード又は中間層の役割を果たし、そうでなければルテニウムが核形成のために極端に長いインキュベーション時間を要求するケイ素、二酸化ケイ素、炭化ケイ素その他などの非金属基材上においてさえも形成する。
【0024】
[0025] 例として、従来のルテニウム前駆物質及び堆積技法を使用するケイ素又は酸化ケイ素基材上のルテニウムの堆積は、ルテニウム核形成が起こりフィルムが成長を開始するために、原子層堆積プロセスにおいて200〜500パルスを必要とすることがある。本発明による補助金属種の使用は、そのような欠陥を克服して、ルテニウムが実質的により短い時間で、例えば20〜40パルスで堆積することを可能にして、それによりALD系の堆積効率を実質的に増大させる。
【0025】
[0026] 補助金属種は、ルテニウムと共に共堆積される材料として使用されるとき、ALDプロセスにおいてルテニウム前駆物質と交替する有機金属前駆物質の形態をとることができ、その結果、前駆物質の各々が上昇温度で基材と交互に接触する。あるいは、そのような補助材料は、ルテニウムと、補助金属種と、の共堆積のために、固体の原料としてルテニウム前駆物質との混合物中で、又は1種若しくは複数種の溶媒中のカクテル組成物で使用することができる。
【0026】
[0027] 一実施形態において、本発明は、ルテニウムと、補助金属種と、が互いに共堆積するように、ルテニウム前駆物質及び補助金属種前駆物質のうちの一方が他方の前駆物質の中心金属原子に配位する側鎖官能基を含む、ルテニウム前駆物質及び補助金属種前駆物質を意図する。
【0027】
[0028] 例えば、組成物は、ルテニウム前駆物質及び補助金属種前駆物質を含むことができ、組成物は、
【0028】
【化2】


(式中、
EはO又はSであり;
XはNであり;
Mは、ルテニウム、ストロンチウム、バリウム又はカルシウムであり;
〜R13の各々は、同じであっても異なっていてもよく、かつ各々は、水素、メチル、エチル及びプロピルから独立に選択される)
からなる群から選択される式の少なくとも1種の前駆物質を含む。
【0029】
[0029] 他の実施形態において、補助金属前駆物質及びルテニウム前駆物質は、両方とも溶媒媒質中に存在し、それは揮発して蒸着チェンバーに輸送され、適当な上昇温度で基材と接触して、ルテニウム及び補助金属種を基材上に堆積させる。
【0030】
[0030] そのような溶媒溶液において、補助金属前駆物質を、ルテニウム前駆物質と共に利用することが有用であり、ここで、ルテニウムと、補助金属種と、が互いにより容易に共堆積されるように、そのような前駆物質の一方が他方の前駆物質の中心金属原子に配位する側鎖官能基を有する。
【0031】
[0031] 例として、前駆物質組成物は、ジシクロペンタジエニルストロンチウム化合物、ジシクロペンタジエニルルテニウム化合物、及び溶媒媒質を含有することができ、組成物中において、ジシクロペンタジエニルルテニウム化合物は、そのシクロペンタジエニル環の少なくとも1つにジシクロペンタジエニルストロンチウム化合物のストロンチウム金属中心に配位するルイス塩基官能基を含む。そのようなタイプの特に好ましい組成物として、炭化水素溶媒中のビス(n−プロピルテトラメチルシクロペンタジエニル)ストロンチウム及びエチルメチルアミノエチルシクロペンタジエニルルテニウムジシクロペンタジエンが含まれる。
【0032】
[0032] そのような前駆物質組成物は、適当な温度で揮発して前駆物質の蒸気を形成することができて、それは蒸着チェンバーに輸送されて上昇温度で基材と接触して、基材上にルテニウム含有フィルムを形成し、該フィルムも補助金属を含有する。
【0033】
[0033] 補助金属が基材上に堆積すると、それはルテニウム堆積及びフィルム成長のための核形成サイトを形成する。ルテニウム及び補助金属が逐次的に堆積し、補助金属はパルス接触様式で表面に堆積されて、補助金属中間層を提供することができ、次にその上にルテニウム含有前駆物質蒸気からルテニウムが堆積される。
【0034】
[0034] ALDプロセス適用において、シリカ又はケイ素などの非金属基材上で、ストロンチウム含有材料、例えば酸化ストロンチウム及び/又は炭酸ストロンチウムの薄層は、そのようなストロンチウム含有層の不存在下で一般に行われている、基材上におけるルテニウムの長くかかるインキュベーション期間を実質的に直ちに排除するのに効果的であることが見出された。
【0035】
[0035] したがって、補助金属含有界面層は、ALDプロセスにおいてルテニウムの堆積前に基材上に堆積されるのが有利であり、その結果、界面層は、基材上で核形成層又はシード層又は架橋層の役割を果たし、その結果次にルテニウムが界面層上に効率的に堆積することができる。界面層は、任意の適当な厚さであってよく、典型的にはルテニウムの優れたフィルム成長を提供するために僅か数オングストロームの厚さである。
【0036】
[0036] 界面層は任意の適当な様式で形成することができる。一実施形態において、堆積は、オゾン、水又はアルコールを存在させ補助金属の酸化物を形成させ、かつルテニウム含有材料を補助金属の酸化物上に堆積させて実施される。他の実施形態において、堆積は、補助金属含有材料の堆積を促進するためにアンモニア、水素、ボラン、及び一酸化炭素からなる群から選択される作用剤を存在させ、かつルテニウム含有材料を補助金属含有材料上に堆積させて、実施される。
【0037】
[0037] 具体的な例として、補助金属酸化物は、ケイ素、二酸化ケイ素などの基材、又は他の絶縁性若しくは非導電性表面上に、例えばストロンチウム前駆物質の1〜5パルスで形成されて、酸化ストロンチウムの非常に薄い層を形成し、続いて酸化ストロンチウム層上にルテニウムを堆積させることができる。この構成は、ルテニウム含有フィルム形成のためのインキュベーション時間を大きく減少させる。そのような酸化ストロンチウム堆積がなくては、ルテニウム含有フィルムの形成は起こらない。
【0038】
[0038] さらなる例として、そのような界面層堆積加工は、ビス(n−プロピルテトラメチルシクロペンタジエニル)ストロンチウムのパルス導入に続く中間ガスパージ後のオゾンのパルスを含むサイクルで実施されたが、その際、ストロンチウム材料のパルスは、インキュベーション時間が殆ど又は全くなしでルテニウムの堆積を開始するのに十分である。より厚いフィルムについてのX線回折による測定は、ビス(n−プロピルテトラメチルシクロペンタジエニル)ストロンチウムのサイクルが、0.8オングストロームのオーダーであってよい厚さに対応することを示す。そのようなALDプロセスにおいて、酸素は、適当なストロンチウム含有酸化物層及び/又は炭酸ストロンチウム層が形成される限り、オゾンの代わりにパルスされてもよい。商業的ALDプロセスにおいて、3〜10パルスのサイクルが、界面材料を有する基材の全表面を覆ってルテニウムの堆積速度を最大化するために十分であり得る。
【0039】
[0039] ルテニウムが補助金属含有材料と共に共堆積されて、補助金属含有材料の不存在下でのルテニウム堆積と比較してルテニウム堆積の高い速度及び程度が提供され、補助金属及びルテニウム原料が溶媒媒質中に溶解した有機金属化合物を含むとき、それぞれの有機金属化合物及び溶媒媒質は任意の適当なタイプのものであってよい。有機金属化合物の有機部分は、アルキル、アリール、シクロアルキル、アミノ、アルケニル、シクロアルケニル、アミジネート、グアニジネート、又は他の適当な有機置換基を含むことができる。
【0040】
[0040] 溶媒媒質は、ルテニウム前駆物質及び補助金属前駆物質が溶解される単一成分溶媒組成物又は多成分溶媒混合物を含むことができる。溶媒媒質は、任意の適当なタイプのものであってよく、例えば、アルカン(オクタン、デカン、ヘキサンその他)、シクロペンタジエン及びそれらの誘導体などの炭化水素溶媒、エーテル、アルコール、アミン、ポリアミン、過フッ素化溶媒その他を含むことができる。
【0041】
[0041] そのようなカクテル溶液中の補助金属前駆物質及びルテニウム前駆物質は、基材上で形成する成長しつつあるフィルムへの適切な量の補助金属及びルテニウムの送達を促進するであろう任意の適当な量で存在することができる。
【0042】
[0042] 例えば、ストロンチウム前駆物質及びルテニウム前駆物質が使用されるとき、前駆物質溶媒溶液中におけるストロンチウムのルテニウムに対する重量比、WtSr/WtRuは、0.8〜1.25の範囲内、より好ましくは0.9〜1.1の範囲内、及び最も好ましくは0.95〜1.05の範囲内にあってよい。そのようなカクテル溶液は、気化器を使用して溶液から前駆物質蒸気を形成してALD反応装置に送達することができ、それによりストロンチウム及びルテニウムが酸素又はオゾンガスのパルス拍出を用いて基材上に共堆積され、その結果、堆積した金属が基材上にストロンチウムルテネートフィルムを形成する。
【0043】
[0043] 本明細書中において上で言及したように、ルテニウムが、溶媒媒質中にルテニウム前駆物質及び補助金属種前駆物質を含む前駆物質組成物から堆積されるとき、ルテニウム前駆物質及び補助金属種前駆物質のうちの一方が他方の前駆物質の中心金属原子に配位する側鎖官能基を含み、その結果ルテニウムと補助金属種とが互いに共堆積することが有利である。
【0044】
[0044] そのような側鎖配位官能基は、補助金属種の素性、並びに使用される特定のルテニウム前駆物質及び補助金属種前駆物質に応じて広く変えることができる。一般的に、配位する官能基は配位する原子として酸素、窒素又は硫黄原子を含むことができ、かつ側鎖官能基はアミン、ポリアミン、エーテル、ポリエーテル、スルフィル基その他を含むことができ、必要とされるのは、配位する官能基がそのような配位する官能基を欠く対応する堆積組成物と比較してルテニウムの増量した堆積を生成するために効果的であること、及びほかの点では使用される組成物及び堆積技法と適合性であることだけである。
【0045】
[0045] 図1は、アミノ窒素原子がストロンチウム金属中心に配位して、その結果配位された金属が効率的に互いに堆積する、ビス(n−プロピルテトラメチルシクロペンタジエニル)ストロンチウム及びエチルメチルアミノエチルシクロペンタジエニルルテニウムジシクロペンタジエンを含む組成物を例示する。例えば、ビス(n−プロピルテトラメチルシクロペンタジエニル)ストロンチウムと、エチルメチルアミノエチルシクロペンタジエニルルテニウムシクロペンタジエンと、の1:1(重量にて)混合物は、そのような目的のために使用することができる。
【0046】
[0046] 本発明のルテニウム堆積プロセス及び組成物は、ルテニウム堆積のためのインキュベーション期間が、先行技術の組成物及びプロセスの利用で必要になる極めて長い時間とは対照的に、極めて短いか又はなくなりさえする。したがって、ルテニウムは、ケイ素及び/又は二酸化ケイ素などの非金属基材上でさえ、ALDプロセスのサイクル時間と一致する非常に急速な様式で効果的に堆積することができる。
【0047】
[0047] 本発明のルテニウム蒸着プロセスは、ルテニウムの効果的堆積を提供する任意の適当な温度、圧力、流速及び組成パラメーターで実施することができる。
【0048】
[0048] 実例として、原子層堆積プロセスは、送達温度180℃、基材温度325℃、及び圧力1torrで、図1に示したルテニウム前駆物質及びストロンチウム前駆物質を利用して実施することができ、該プロセスにおいて、ルテニウム前駆物質は、キシレン溶液中濃度0.2モルで供給され、ALD接触期間10秒になるように速度0.1ミリリットル/分で、ストロンチウム前駆物質の送達と交互に送達される。ストロンチウム前駆物質は、各4度目の接触が20秒間持続することを除き、10秒間の間隔で基材と接触する。オゾンは、ストロンチウム前駆物質との共反応物質として使用され、酸素はルテニウム共反応物質として使用される。そのようなALD蒸着条件は、二酸化ケイ素基材上33〜71オングストロームの範囲内の実質的厚さ、及びケイ素基材上17〜56オングストロームの厚さを提供することが見出された。ストロンチウム前駆物質は酸化ストロンチウム及び/又は炭酸ストロンチウムの界面層を形成するので、ルテニウムの成長は非常に急速である。
【0049】
[0049] 図2は、ビス(n−プロピルテトラメチルシクロペンタジエニル)ストロンチウムと、エチルメチルアミノエチルシクロペンタジエニルルテニウムシクロペンタジエンと、の1:1(重量にて)混合物、並びにルテニウム前駆物質及びストロンチウム前駆物質の各々を単独で含む、図1に示したタイプの前駆物質組成物についての熱重量分析データのSTAプロットである。ストロンチウム前駆物質ビス(n−プロピルテトラメチルシクロペンタジエニル)ストロンチウムは、そのようなSTAプロットにおいてSr20と表示されている。Sr20/Ru前駆物質混合物についてのSTAデータは、良好な揮発及び輸送の性質を反映している。
【0050】
[0050] 図3は、本発明に従って、エチルメチルアミノエチルシクロペンタジエニルルテニウムシクロペンタジエンをルテニウム前駆物質として利用して実施されたALDにより、酸化ストロンチウムシード層上に堆積したルテニウムフィルムの原子間力顕微鏡(AFM)写真であり、フィルムがRms(Rq)特性0.800nm及び平均粗度(Ra)0.611nmを有することを示す。ルテニウムフィルムは、それ故、非常に平滑で特性は一様である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
[0051] 本発明のルテニウム前駆物質組成物及びルテニウムフィルム堆積方法は、ルテニウム含有フィルムを急速にかつ良好な最終フィルム特性をもって製造するのに非常に効果的である。ルテニウム堆積のためのインキュベーション期間を極めて短くすること又はなくすことさえでき、ルテニウムは、ケイ素及び/又は二酸化ケイ素などの非金属基材上でさえ、ALDプロセスサイクル時間と一致する様式で効率的に堆積することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補助金属種と共にルテニウムを堆積させることであって、当該補助金属種がルテニウム核形成の速度及び程度をそのような補助金属種の不存在下でのルテニウムの堆積に比較して増大させることを含む、蒸着プロセスでルテニウム含有フィルムを形成する方法。
【請求項2】
ルテニウム核形成工程が、前記補助金属種の不存在下でのルテニウム核形成と比較して一様かつ急速である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記補助金属種が、ストロンチウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、バナジウム、鉄及びハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記補助金属種が、酸化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化バリウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、及び酸化ニオブからなる群から選択される少なくとも1つの種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ルテニウム含有フィルムが、マイクロ電子デバイス又はその前駆物質構造を製造するためのプロセスで形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ルテニウムがストロンチウム含有材料上に堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ストロンチウム含有材料が酸化ストロンチウム及び/又は炭酸ストロンチウムを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記補助金属種が非金属基材上に堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記非金属基材がケイ素及び/又は酸化ケイ素を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記補助金属種が、化学的蒸着及び原子層堆積からなる群から選択される蒸着プロセスにより堆積される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記補助金属種がジシクロペンタジエニルストロンチウム前駆物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ルテニウムが、ジシクロペンタジエニルストロンチウム前駆物質の蒸気から原子層堆積により形成されたストロンチウム含有フィルム上に堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ルテニウム及び前記補助金属種を含む前駆物質紙から、ルテニウムが前記補助金属と共に堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記補助金属がストロンチウムを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記補助金属種がジシクロペンタジエニルストロンチウム化合物を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ジシクロペンタジエニルストロンチウム化合物がSr(PrMeCp)(式中、Prはn−プロピルであり、Meはメチルであり、Cpはシクロペンタジエニルである)を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ルテニウム及び前記補助金属種が、溶媒媒質中に溶解したストロンチウム金属前駆物質及びルテニウム金属前駆物質を含む前駆物質組成物の前駆物質蒸気から堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ルテニウム前駆物質及びストロンチウム前駆物質が両方ともジシクロペンタジエニル化合物である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ルテニウム前駆物質が、その構成要素であるシクロペンタジエニル環の少なくとも1つに、ストロンチウム前駆物質のストロンチウム金属中心に配位する側鎖ルイス塩基官能基を含むジシクロペンタジエニルルテニウム化合物を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記側鎖ルイス塩基官能基が、アミン、ポリアミン、エーテル、及びポリエーテルからなる群から選択される官能基を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記溶媒媒質が炭化水素溶媒を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
ルテニウム前駆物質と、補助金属種前駆物質と、を溶媒媒質中に含み、
ルテニウムと補助金属種とが互いに共堆積するように、ルテニウム前駆物質及び補助金属種前駆物質のうちの一方が、他方の前駆物質の中心金属原子に配位する側鎖官能基を含む、
前駆物質組成物。
【請求項23】
前記補助金属種前駆物質がジシクロペンタジエニルストロンチウム化合物を含む、請求項22に記載の前駆物質組成物。
【請求項24】
前記ルテニウム前駆物質がジシクロペンタジエニルルテニウム化合物を含む、請求項23に記載の前駆物質組成物。
【請求項25】
前記ストロンチウム及びルテニウム化合物が0.8〜1.25の範囲内の重量比で当該組成物中に存在する、請求項24に記載の前駆物質組成物。
【請求項26】
前記溶媒媒質が炭化水素溶媒を含む、請求項24に記載の前駆物質組成物。
【請求項27】
ビス(n−プロピルテトラメチルシクロペンタジエニル)ストロンチウム及びエチルメチルアミノエチルシクロペンタジエニルルテニウムジシクロペンタジエンを含む組成物。
【請求項28】
ジシクロペンタジエニルストロンチウム化合物、ジシクロペンタジエニルルテニウム化合物、及び溶媒媒質を含む組成物であって、
ジシクロペンタジエニルルテニウム化合物が、そのシクロペンタジエニル環の少なくとも1つに、前記ジシクロペンタジエニルストロンチウム化合物のストロンチウム金属中心に配位するルイス塩基官能基を含む組成物。
【請求項29】
オゾン、水又はアルコールが存在して補助金属の酸化物を形成し、ルテニウム含有材料が前記補助金属の酸化物上に堆積される、請求項4に記載の方法。
【請求項30】
アンモニア、水素、ボラン、及び一酸化炭素からなる群から選択される作用剤が存在して補助金属含有材料の堆積を促進し、ルテニウム含有材料が前記補助金属含有材料上に堆積される、請求項4に記載の方法。
【請求項31】
ルテニウム前駆物質及び補助金属種前駆物質を含む前駆物質組成物であって、
ルテニウムと補助金属種とが互いに共堆積するように、ルテニウム前駆物質及び補助金属種前駆物質のうちの一方が他方の前駆物質の中心金属原子に配位する側鎖官能基を含む前駆物質組成物。
【請求項32】
ルテニウム前駆物質及び補助金属種前駆物質を含む組成物であって、
【化1】


(式中、
EはO又はSであり;
XはNであり;
Mは、ルテニウム、ストロンチウム、バリウム又はカルシウムであり;
〜R13の各々は、互いに同じであっても異なっていてもよく、各々は水素、メチル、エチル及びプロピルから独立に選択される)
からなる群から選択される式の少なくとも1種の前駆物質を含む組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−520943(P2012−520943A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500919(P2012−500919)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/027614
【国際公開番号】WO2010/107878
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(599006351)アドバンスド テクノロジー マテリアルズ,インコーポレイテッド (141)
【Fターム(参考)】