説明

レイアウト検証方法およびレイアウト検証装置

【課題】パワーMOS素子が混在する半導体集積回路(IC)の設計において、回路シミュレーションの精度を向上させることができる技術を提供する。
【解決手段】まず、パワーMOS素子のゲート部分を仮想的に分割する。仮想的にMOS素子を分割する際に、接続情報を保持するための拡散抵抗素子をMOS素子の拡散層部分に生成する。分割された結果として得られる個々のMOS素子(セグメント108)が細かいほど解析精度が向上するが、一方で解析時間(シミュレーション時間)が増大するトレードオフの関係にあることから、分割するサイズを任意に設定できることが望ましい。さらに、ゲート部分と同様に、MOS素子上の配線を任意のサイズで分割し、配線セグメントごとに寄生抵抗を抽出し、メッシュ状の抵抗ネットを構成することで、より高精度な配線寄生抵抗の抽出を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路(IC)のレイアウト検証技術に関し、特に、パワーMOS素子の寄生抵抗、寄生容量等をレイアウトパターンから精度良く抽出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者が検討した技術として、例えば、半導体集積回路のレイアウト検証技術においては、以下の技術が考えられる。
【0003】
現在、MSIG製品(自動車、電源制御、モータドライバ、オーディオなど)で使われているパワーMOS素子は、MOSゲート幅(w値)が数mm〜数十mmオーダと非常に大きく、回路図上では現れないレイアウト上(メタル配線パターンなど)での配線寄生抵抗が大きく回路特性に影響する。この対策として、例えば、回路設計段階で設計者が配線パターンの形状を予想して回路図上に仮の配線寄生抵抗、寄生容量をシンボルとして付加する、いわゆる仮負荷シミュレーションという方法がある。しかし、仮負荷シミュレーションを行って回路設計しても、レイアウトパターンを実際に書くと、パワーMOS素子のICチップ上に占める面積比率が大きいために、回路設計時に期待したとおりのフロアプランで素子配置できないケースが大半である。そのため、仮負荷シミュレーション結果と、試作したICチップの実測の特性との乖離が大きいという問題がある。
【0004】
具体的には、前述のとおり、MOSゲート幅(w値)が数mm〜数十mmあることから、レイアウトパターン上は、ゲート幅を分割した複数のMOS素子を並列接続で構成することになるが、レイアウトパターンとして無駄な領域(以下、「デッドスペース」と称する)を減らして設計するために素子の分割数を変えるケースがある。これに伴い、パワーMOS素子に接続する配線の形状は当初の予想から変更されてしまう。
【0005】
これを解決する従来の技術としては、レイアウトパターンから実際の配線パターンの長さや幅を読み取り、そこから配線寄生抵抗、寄生容量を抽出し、シミュレーションへアノテーション(付加)する、いわゆる実負荷シミュレーション(以下、「ポストレイアウトシミュレーション」と称する)を行って、回路特性を解析する手法がある。
【0006】
この手法は、回路図とレイアウトパターンとの接続情報をそれぞれ抽出し、その接続情報を比較し、電気的特性の一致を解析する、いわゆるレイアウト解析技術(Layout Versus Schematic、以下「LVS」と称する)をベースに開発されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記のような半導体集積回路のレイアウト検証技術について、本発明者が検討した結果、以下のようなことが明らかとなった。
【0008】
前記の従来手法では、MOS素子のゲート幅(w値)が数μm〜数十μm程度の通常サイズの素子によるレイアウトパターンに対しては、寄生抵抗値、寄生容量値を精度良く抽出でき、シミュレーションへ反映できるが、パワーMOS素子の前述の問題に対しての解決策としては不十分である。その理由としては、パワーMOS素子のゲート幅を分割した複数のMOS素子の並列接続でパワーMOS素子を構成したとしても、1つのMOS素子のゲート幅(w値)が数百μm相当と大きく、パワーMOS素子を局所的にみた場合の左下部分と、右上部分では、MOS上の同一配線であっても、配線寄生抵抗が全く異なるからである。したがって、配線寄生抵抗を如何に精度良く見積もっても、パワーMOS素子自体を、1つの素子、または並列接続した複数のMOS素子程度の分割として扱ったのでは、シミュレーション時の精度向上につながらない。
【0009】
しかし、従来技術は、前述のとおりレイアウト解析技術(LVS)をベースに開発されており、レイアウト解析技術によるMOS素子の認識方法は、ゲートを生成する領域を1つの素子として認識することに加え、ソース/ドレインに接続される配線のノード分割も不規則であるため、局所的な素子分割を行うことが出来なかった。
【0010】
したがって、従来手法のポストレイアウトシミュレーションでも、パワーMOS素子部分に対しては配線寄生抵抗・容量抽出の対象から一旦除外し、パワーMOS素子部分の等価回路を挿入する運用をしている。この等価回路は、製品とは別に事前に開発された素子パラメータ抽出パターン(以下、「TEGパターン」と称する)から取り出し、パワーMOS素子部分の特性を実測し、実測値と等価となるマクロモデル(素子の集合体)を作成して利用している。
【0011】
この運用の問題点は、実測値からモデリングすることで特性を考慮した回路設計が可能であるが、モデリング用のTEGパターンが必要であるという点である。しかも、TEGパターンからモデリングした以外のパターン形状への変更を行うことができず、さらにパワーMOS素子の電流分布解析などの局所的な配線寄生抵抗の影響を解析することができない。
【0012】
そこで、本発明の目的は、パワーMOS素子が混在する半導体集積回路(IC)の設計において、回路シミュレーションの精度を向上させることができる技術を提供することにある。
【0013】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0015】
本発明によるレイアウト検証技術では、まず、パワーMOS素子のゲート部分を仮想的に分割する。これは、分割された結果として得られる個々のMOS素子(セグメント)が細かいほど解析精度が向上するが、一方で解析時間(シミュレーション時間)が増大するトレードオフの関係にあることから、分割するサイズを任意に設定できることが望ましい。
【0016】
さらに、ゲート部分と同様に、MOS素子上の配線を任意のサイズで分割し、ここの配線セグメントごとに寄生抵抗を抽出し、メッシュ状の抵抗ネットを構成することで、より高精度な配線寄生抵抗の抽出を行うことができる。
【0017】
また、パワーMOS素子の接続は通常アルミ配線で行われるが、上記した方法のパワーMOS素子を仮想的に分割する事で、分割した結果のMOS素子間にアルミ配線が存在しないケースも発生する。この対策として、仮想的にMOS素子を分割する際に、接続情報を保持するための拡散抵抗素子をMOS素子の拡散層部分に生成する。
【発明の効果】
【0018】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0019】
(1)パワーMOSの仮想分割(分割後のMOS素子間の接続情報保持のための拡散抵抗素子生成を含む)及び任意サイズのセグメントによる配線部分のノード分割を可能とすることでパワーMOS素子が混在するIC設計時のシミュレーション精度向上が可能となる。
【0020】
(2)TEGパターン投入によるモデリング作業量を削減でき、任意形状のパワーMOSデバイスを利用できることから、ICのレイアウトパターン上のデッドスペースを削減し、より小さいチップサイズを得られる。
【0021】
(3)設計仕損低減、作業工数削減、コスト低減を見込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0023】
図1は、本発明の一実施の形態によるレイアウト検証方法において、パワーMOSの分割を示すレイアウトパターン図である。
【0024】
図1(a)は、パワーMOS素子の全体レイアウト図である。図1(a)に示すパワーMOS素子のレイアウトパターンは、拡散層(Difusion layer)101、ゲート層(Gate layer)102、ビア層(Via layer)103,105、メタル層(Metal Layer)104,106、パッド層(PAD layer)107などから構成されている。複数のゲート層102と拡散層101からなる個々のMOS素子が、ビア層103,105とメタル層104,106により並列接続されている。
【0025】
図1(b)は、図1(a)のパワーMOS素子を任意のサイズのセグメントに分割した場合の拡大図である。
【0026】
本発明によるレイアウト検証技術では、まず、パワーMOS素子のゲート部分を仮想的に分割する。分割した一単位を以下「セグメント」と称する。図1(b)では、分割したセグメント108のサイズを一例として、ゲート幅方向に”w=5.0”としたが、この値に限定されるものではない。セグメント108のサイズは、例えば、後述のユーザ入力手段205等で、”Gate layer w=5.0”のように任意の値を指定する。wの値を指定しない場合(デフォルト値)は、基本的には無限幅とする。
【0027】
分割された結果として得られる個々のMOS素子(セグメント108)が細かいほど解析精度が向上するが、一方で解析時間(シミュレーション時間)が増大するトレードオフの関係にあることから、分割するセグメント108のサイズを任意に設定できることが望ましい。
【0028】
外部から指定したサイズでパワーMOS素子のゲート部分を仮想的に分割した後、各セグメントのMOS素子を認識する。
【0029】
図2は、本発明の一実施の形態によるレイアウト検証装置の構成、およびレイアウト検証方法のフローを示す図である。図2は、本実施の形態によるパワーMOS素子(仮想的に分割したMOS素子)抽出方法のフローを示している。
【0030】
本実施の形態によるレイアウト検証技術は、従来のLVS(Layout Versus Schematic)技術に対して、ユーザが指定したサイズにより仮想的に分割したMOS素子(セグメント)を認識可能とさせる技術である。
【0031】
図2に示すように、本実施の形態によるレイアウト検証装置は、LVSを実施する装置であり、例えば、各素子認識手段201、接続情報抽出手段202,203、接続情報比較手段204などから構成される。各素子認識手段201は、ユーザ入力手段205、Gate Layerのセグメント分割手段206、分割データごとの各素子認識手段207などから成る。本実施の形態によるレイアウト検証装置は、一般的なコンピュータシステムにより、ハードウエアとソフトウエアが協働して実現される。
【0032】
各素子認識手段201は、ゲート層をセグメントに分割し、セグメントごとの各素子を認識する手段である。接続情報抽出手段202は、各素子の間の接続情報を分割されたレイアウトパターンから抽出する手段である。接続情報抽出手段203は、回路図211に基づいて各素子の間の接続情報を抽出する手段である。接続情報比較手段204は、レイアウト208に基づいて生成された接続情報(1)210と、回路図211に基づいて生成された接続情報(2)212とを比較する手段である。ユーザ入力手段205は、セグメントのサイズ(例えば、図1(b)におけるwの値)を指定するGUI(Graphical User Interface)等の入力手段である。Gate Layerのセグメント分割手段206は、パワーMOS素子のゲート部分をセグメント単位に分割する手段である。分割データごとの各素子認識手段207は、分割されたセグメントごとに各素子を認識する手段である。
【0033】
次に、本実施の形態によるレイアウト検証方法のフローを説明する。
【0034】
まず、各素子認識手段201により、パワーMOS素子を含むICのレイアウト208と各デバイス構成情報209に基づいて、各素子の認識を行う。各デバイス構成情報209は、MOS素子、抵抗、容量等の各素子の定義を記述したものである。例えば、MOS素子の場合は、拡散層とゲート層から構成され、ソース、ゲート、ドレインの電極を有する、というような情報がテキストで記述されている。
【0035】
各素子認識手段201では、Gate Layerのセグメント分割手段206により、ユーザ入力手段205により指定された任意のセグメント・サイズにレイアウト208が分割される。そして、分割データごとの各素子認識手段207により、セグメントに分割された各素子の認識が行われる。
【0036】
次に、接続情報抽出手段202により、分割された各素子の間の接続情報(1)210が抽出される。この際、メタル配線やコンタクトやビアなどの各情報を使用して接続情報を抽出する。
【0037】
一方、接続情報抽出手段203により、回路図211から、接続情報(2)212が抽出される。
【0038】
次に、接続情報比較手段204により、接続情報(1)210と接続情報(2)212とが、各デバイス比較情報213に基づいて比較され、比較結果レポート214およびマッピング情報215が出力される。各デバイス比較情報213には、比較を行う際の判断基準(LVSルール)が記述されている。例えば、各素子のサイズや並列MOS素子の集約化などのルールが記述される。比較結果レポート214には、レイアウト208と回路図211との相違点などが記述される。マッピング情報215には、レイアウト208と回路図211との対応関係情報などが記述される。
【0039】
図3は、本発明の一実施の形態によるレイアウト検証方法において、パワーMOSの配線部寄生抵抗抽出を示すレイアウトパターン図である。
【0040】
図3(a)は、パワーMOS素子の全体レイアウト図である。図3(a)に示すパワーMOS素子のレイアウトパターンは、図1(a)と同じであるので、説明を省略する。
【0041】
図3(b)は、図3(a)のパワーMOS素子の配線部分を任意のサイズのセグメントに分割して寄生抵抗の抽出を行った場合の拡大図である。
【0042】
本発明によるレイアウト検証技術では、ユーザが外部から指定したセグメント・サイズでメタルパターンを分割し、各セグメントの抵抗ラダーネットを、シート抵抗値から算出する。”any angle edge”から成る三角形、台形部分についても抵抗ネット計算ができれば理想的であるが、抵抗ラダーネットから削除処理も可能とする。
【0043】
図3(b)では、分割したセグメント301のサイズを一例として、”dx=8.0,dy=5.0”としたが、この値に限定されるものではない。セグメント301のサイズ(dx,dy)は、ユーザが外部より指定可能とする。例えば、後述のユーザ入力手段205等で、”metal cutting origin=(10.0 0.0),metal dx=8.0,metal dy=5.0”のように任意の値を指定する。なお、”metal cutting origin=(10.0 0.0)”は、原点を示す。
【0044】
図2のフローに従ってゲート部分を分割して接続情報を抽出した後に、さらに、ゲート部分と同様に、MOS素子上の配線を任意のサイズで分割し、ここの配線セグメントごとに寄生抵抗を抽出し、メッシュ状の抵抗ネットを構成することで、より高精度な配線寄生抵抗の抽出を行うことができる。
【0045】
図4は、本発明の一実施の形態によるレイアウト検証装置の構成、およびレイアウト検証方法のフローを示す図である。図4は、本実施の形態によるパワーMOS素子の配線部分寄生抵抗抽出のフローを示している。
【0046】
図4に示すように、本実施の形態によるレイアウト検証装置は、MOS素子部分の配線寄生抵抗および配線寄生容量を抽出する装置であり、例えば、配線形状・配線間隔抽出手段401、各配線要素の寄生抵抗・寄生容量算出手段402、接続情報への寄生抵抗・寄生容量挿入手段403、寄生抵抗・寄生容量リダクション手段404などから構成される。また、配線形状・配線間隔抽出手段401は、ユーザ入力手段205、セグメント分割手段406、セグメント毎の配線形状・配線間隔抽出手段407などから成る。本実施の形態によるレイアウト検証装置は、一般的なコンピュータシステムにより、ハードウエアとソフトウエアが協働して実現される。
【0047】
配線形状・配線間隔抽出手段401は、MOS素子部分のメタル配線をセグメントに分割して各セグメントの配線形状と配線間隔を抽出する手段である。各配線要素の寄生抵抗・寄生容量算出手段402は、各配線要素(セグメント)の寄生抵抗と寄生容量をシート抵抗等から算出する手段である。接続情報への寄生抵抗・寄生容量挿入手段403は、各配線要素の寄生抵抗・寄生容量算出手段402で算出した寄生抵抗・寄生容量を接続情報(ネットリスト)に付加する手段である。寄生抵抗・寄生容量リダクション手段404は、並列/直列接続の配線で影響を及ぼさないものを集約したりして、接続情報のデータ量を少なくする手段である。ユーザ入力手段205は、分割するセグメント・サイズをGUI等で入力する手段である。セグメント分割手段406は、メタル配線パターンをセグメントに分割する手段である。セグメント毎の配線形状・配線間隔抽出手段407は、セグメント毎の配線形状と配線間隔を抽出する手段である。
【0048】
次に、本実施の形態によるレイアウト検証方法のフローを説明する。
【0049】
まず、配線形状・配線間隔抽出手段401により、パワーMOS素子を含むICのレイアウト208と、図2のフローで抽出された接続情報(1)210,接続情報(2)212およびマッピング情報215に基づいて、配線形状と配線間隔の抽出を行う。配線形状・配線間隔抽出手段401では、セグメント分割手段406により、ユーザ入力手段205で指定された分割セグメント・サイズに基づいて、配線部分の分割を行う。また、セグメント毎の配線形状・配線間隔抽出手段407により、セグメント毎の配線形状と配線間隔の抽出を行う。
【0050】
次に、各配線要素の寄生抵抗・寄生容量算出手段402により、プロセス物理情報408に基づいて、各配線要素の寄生抵抗と寄生容量の算出を行う。プロセス物理情報408は、製造プロセス毎の基準サイズにおける各配線要素の抵抗値・容量値などである。
【0051】
次に、接続情報への寄生抵抗・寄生容量挿入手段403により、算出された寄生抵抗および寄生容量を接続情報(1)210に挿入する。
【0052】
次に、寄生抵抗・寄生容量リダクション手段404により、並列/直列接続の配線で影響を及ぼさないものを集約したりして、接続情報のデータ量を少なくする。そして、寄生抵抗・容量込の接続情報409を出力する。
【0053】
また、SPICEネットリスト生成手段405により、寄生抵抗・容量込のSPICEネットリスト(回路シミュレーション用の接続情報)410を生成して出力する。
【0054】
図2のフローと図4のフローの組み合わせにより、パワーMOS素子内部の寄生抽出を高精度に行うことができる。
【0055】
図5は、本発明の一実施の形態によるレイアウト検証装置およびレイアウト検証方法を利用したパワーMOSのデバイス抽出及び配線寄生抵抗抽出の結果を示す図である。
【0056】
図5(a)は、パワーMOS素子の全体レイアウト図である。図5(a)に示すパワーMOS素子のレイアウトパターンは、図1(a)と同じであるので、説明を省略する。
【0057】
図5(b)は、図2のフローと図4のフローを実施し、任意サイズにより分割を行ったデバイス抽出及び配線抵抗の抽出を行った結果を示している。なお、ネット接続情報はソース/ドレインのみを示し、ゲートの接続情報などは省略している。
【0058】
図5(b)に示すように、セグメント分割された複数のMOS素子501と、複数の寄生抵抗502とがメッシュ状にネットリストを構成している。
【0059】
図6は、本発明の一実施の形態によるレイアウト検証方法において、パワーMOSの拡散抵抗抽出方法を示すレイアウトパターン図である。
【0060】
図6(a)は、パワーMOS素子の全体レイアウト図である。図6(a)に示すパワーMOS素子のレイアウトパターンは、図1(a)と同じであるので、説明を省略する。
【0061】
図6(b)は、図6(a)のパワーMOS素子の拡散層部分を任意のサイズのセグメントに分割してMOS素子の接続を保持するための拡散抵抗素子の抽出を行った場合の拡大図である。図6は、図1で示したパワーMOSを仮想的に分割した場合、分割したMOS素子の接続情報を保持するための拡散抵抗抽出方法を示している。
【0062】
パワーMOS素子の接続は通常アルミ配線で行われるが、図5で説明した方法のパワーMOS素子を仮想的に分割する事で、分割した結果のMOS素子間にアルミ配線が存在しないケースも発生する。この対策として、仮想的にMOS素子を分割する際に、接続情報を保持するための拡散抵抗素子をMOS素子の拡散層部分に生成する。
【0063】
すなわち、図6(b)に示すように、例えば5μmピッチ(w=5.0)で拡散抵抗認識層(ダミー層)601を配置する。拡散抵抗認識層601の幅は、0.1μmなど、微小幅を用いる。
【0064】
そして、LVSでは、この拡散抵抗認識層601を使って、MOS素子を構成する拡散層101を分割し、拡散層101と拡散抵抗認識層601とのAND演算を行い、分割したMOS素子の接続を保持するための拡散抵抗602を形成する。
【0065】
図7は、本発明の一実施の形態によるレイアウト検証装置およびレイアウト検証方法を利用したパワーMOSのデバイス抽出、配線寄生抵抗抽出及び拡散抵抗抽出の結果を示す図である。
【0066】
図7において、”rdiff”は、分割後の各MOS素子間をつなぐ拡散層の拡散抵抗602である。また”rM1”は、分割後の各MOS素子間をつなぐメタル配線層(M1)の寄生抵抗502である。
【0067】
図7の結果例は、仮想的にパワーMOS素子を分割し、分割したMOS間を拡散抵抗で接続情報を保持した結果と、パワーMOS部分の配線層(M1)をメッシュ状に分割して配線寄生抵抗を抽出した例である。
【0068】
配線層部分に関しては、1層,2層,3層とそれぞれメッシュ分割による配線寄生の抽出は可能である。
【0069】
したがって、本実施の形態のレイアウト検証方法およびレイアウト検証装置によれば、パワーMOSの仮想分割(分割後のMOS素子間の接続情報保持のための拡散抵抗素子生成を含む)及び任意サイズのセグメントによる配線部分のノード分割を可能とすることで、パワーMOS素子が混在するIC設計時のシミュレーション精度向上が可能となる。
【0070】
さらに、TEGパターン投入によるモデリング作業量を削減でき、任意形状のパワーMOSデバイスを利用できることから、ICのレイアウトパターン上のデッドスペースを削減し、より小さいチップサイズを得られる。この結果、設計仕損低減、作業工数削減、コスト低減を見込むことができる。
【0071】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、アナログ・デジタル混載のIC全般の回路/レイアウト設計等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】(a),(b)は本発明の一実施の形態によるレイアウト検証方法において、パワーMOSの分割を示すレイアウトパターン図である。
【図2】本発明の一実施の形態によるレイアウト検証装置の構成、およびレイアウト検証方法のフローを示す図である。
【図3】(a),(b)は本発明の一実施の形態によるレイアウト検証方法において、パワーMOSの配線部寄生抵抗抽出を示すレイアウトパターン図である。
【図4】本発明の一実施の形態によるレイアウト検証装置の構成、およびレイアウト検証方法のフローを示す図である。
【図5】(a),(b)は本発明の一実施の形態によるレイアウト検証装置およびレイアウト検証方法を利用したパワーMOSのデバイス抽出及び配線寄生抵抗抽出の結果を示す図である。
【図6】(a),(b)は本発明の一実施の形態によるレイアウト検証方法において、パワーMOSの拡散抵抗抽出方法を示すレイアウトパターン図である。
【図7】本発明の一実施の形態によるレイアウト検証装置およびレイアウト検証方法を利用したパワーMOSのデバイス抽出、配線寄生抵抗抽出及び拡散抵抗抽出の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
101 拡散層
102 ゲート層
103,105 ビア層
104 ,106 メタル層
107 パッド層
108,301 セグメント
201 各素子認識手段
202,203 接続情報抽出手段
204 接続情報比較手段
205 ユーザ入力手段
206 Gate layerのセグメント分割手段
207 分割データごとの各素子認識手段
208 レイアウト
209 各デバイス構成情報
210 接続情報(1)
211 回路図
212 接続情報(2)
213 各デバイス比較情報
214 比較結果レポート
215 マッピング情報
401 配線形状・配線間隔抽出手段
402 各配線要素の寄生抵抗・寄生容量算出手段
403 接続情報への寄生抵抗・寄生容量挿入手段
404 寄生抵抗・寄生容量リダクション手段
405 SPICEネットリスト生成手段
406 セグメント分割手段
407 セグメント毎の配線形状・配線間隔抽出手段
408 プロセス物理情報
409 接続情報(寄生抵抗・容量込)
410 SPICEネットリスト(寄生抵抗・容量込)
501 MOS素子
502 寄生抵抗
601 拡散抵抗認識層
602 拡散抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータシステムにより実現される、パワーMOS素子を含む半導体集積回路のレイアウト検証方法であって、
前記パワーMOS素子のレイアウトパターンを仮想的に第1のセグメント単位に分割する第1のステップと、
前記第1のセグメント単位で各素子を認識し、第1の接続情報を抽出する第2のステップと、
回路図から第2の接続情報を抽出する第3のステップと、
前記第1の接続情報と前記第2の接続情報とを比較する第4のステップと、を有することを特徴とするレイアウト検証方法。
【請求項2】
請求項1記載のレイアウト検証方法において、
前記第1のセグメント間の各素子の接続を保持するための拡散抵抗を前記第1の接続情報に挿入する第5のステップをさらに有することを特徴とするレイアウト検証方法。
【請求項3】
請求項2記載のレイアウト検証方法において、
前記パワーMOS素子上の配線パターンを仮想的に第2のセグメント単位に分割する第6のステップと、
前記第2のセグメント単位の各配線パターンから寄生抵抗及び/又は寄生容量を抽出し、前記第1の接続情報に挿入する第7のステップと、をさらに有することを特徴とするレイアウト検証方法。
【請求項4】
請求項3記載のレイアウト検証方法において、
前記第1のセグメント及び前記第2のセグメントのサイズは、任意に設定できることを特徴とするレイアウト検証方法。
【請求項5】
コンピュータシステムにより実現される、パワーMOS素子を含む半導体集積回路のレイアウト検証装置であって、
前記パワーMOS素子のレイアウトパターンを仮想的にセグメント単位に分割する手段と、
前記セグメント単位で各素子を認識し、第1の接続情報を抽出する手段と、
回路図から第2の接続情報を抽出する手段と、
前記第1の接続情報と前記第2の接続情報とを比較する手段と、を有することを特徴とするレイアウト検証装置。

【図2】
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【図4】
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【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−97541(P2008−97541A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281859(P2006−281859)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】