説明

レイアウト設計方法およびレイアウト設計装置

【課題】複数の電源受給領域間での信号の行き来の発生を検出し、実デバイスにおいて、予測不能なタイミング違反が発生することを防止できるレイアウト設計方法およびレイアウト設計装置を提供する。
【解決手段】複数の電源受給領域のそれぞれに、対応する電源の供給を受けて動作する回路セルを配置し、回路セル間の接続の情報を含む第1のレイアウトデータを作成し、回路が動作タイミングの仕様を満たすように回路セル間に追加セルを配置し、回路セルおよび追加セル間の接続の情報、並びに、回路セルおよび追加セルのそれぞれが複数の電源受給領域のいずれに位置するかを示す電源受給領域情報を含む第2のレイアウトデータを作成し、第1のレイアウトデータと第2のレイアウトデータとを比較して追加セルを把握するとともに、追加セルの後段および前段に接続される回路セルであるレシーバセルとドライバセルとの間で異なる電源受給領域間の行き来が発生している箇所を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ別系統の電源が供給される複数の電源受給領域が設けられた半導体集積回路のレイアウト設計方法およびこの半導体集積回路のレイアウト設計を行うレイアウト設計装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の電源系統を有する半導体集積回路の電源分離レイアウト設計では、電源分離を行うブロック数の電源受給領域を設け、特定の領域に特定の回路を構成する回路セルを配置する。このようにして、電源ノイズによる特定の回路の遅延変動を抑制している。
【0003】
自動配置配線ツールによる最適化では、タイミング、デザインルール違反の改善に最適と判断する場所に追加セルを配置する。この時は、信号の流れ(配線経路)を考慮することができないので、追加セルによって電源受給領域境界で信号の行き来が発生する場合がある。信号の行き来が発生すると、それぞれの電源受給領域では、互いに関連性の無いタイミングで電源電圧変動が発生するため、この電源電圧変動によって発生する遅延時間の変動により、設計時には予測不可能なタイミング違反が、実デバイスで発生する可能性がある。
【0004】
これに対し、複数の電源受給領域間での追加セルによる信号の行き来が発生した場所を考慮して、電圧降下(IR−DROP)解析ツールを使用して、電圧降下による遅延の時間的変化を解析し、最大遅延変化分のマージンを持たせてタイミング解析を行う方法がある。しかし、IR−DROP解析や、マージンを考慮した最適化処理には比較的長い時間がかかるという問題がある。
【0005】
ここで、本発明に関わる先行技術文献として、特許文献1および2がある。
【0006】
特許文献1は、例えば、その請求項1において、複数の電源系統を有する半導体集積回路のレイアウト設計に際して、プリミティブ・セルに電源を供給する電源ラインの配線を、電源系統毎のフロアプラン工程とプリミティブ・セル配置工程との間で行い、前記プリミティブ・セル配置工程では、前記電源ラインに付加された配線名と、プリミティブ・セルが有する電源情報とが一致する領域を探索し、プリミティブ・セルの配置を確定することで、電源分離を実現する、ことを特徴とするレイアウト方法を開示する。
【0007】
また、特許文献2は、例えば、その請求項1において、各々電源ラインを有するマクロ・セルを配置し、所望マクロ・セル間を配線で接続するセルベースIC方式による半導体集積回路のレイアウト方法において、複数の電源系統に接続されるマクロ・セルを識別する工程と、異電源系に接続される前記マクロ・セルの配置領域に電源分離用マクロ・セルを配置する工程と、前記マクロ・セル内部に電源系の異なるマクロ・セルを配置する工程とを有することを特徴とする半導体集積回路のレイアウト方法を開示する。
【0008】
しかし、現実には、前述のように、これらの特許文献に開示された回路セルの配置工程完了後に、動作タイミングを満たすために最適化が行われる。この時に、回路セル間にバッファ等の追加セルが、信号伝達時間の調整のために追加される。
【0009】
この追加セルに、分離された電源のいずれが供給されるかは、様々な条件によって変化する。分離された電源の電圧は、平均的な電圧は同じであるとしても、それぞれが供給する回路の動作タイミングに応じて、異なるタイミングで変動する。このため、追加セルは、供給される電源によって異なる遅延特性を持つことになるので、実デバイスにおける正確なタイミング予測が困難になる。
【0010】
従来は、複数の電源受給領域間での追加セルによる信号の行き来の発生を検出することができず、実デバイスにおいて、予測不能なタイミング違反が発生することがあった。また、実デバイスにおいて、予測不能なタイミング違反が発生することを防止するために、複数の電源受給領域間での追加セルの行き来の発生の可能性を考えて余裕を持たせた解析を行う必要があった。
【0011】
【特許文献1】特開平11−297844号公報
【特許文献2】特開平9−153548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、複数の電源受給領域間での信号の行き来の発生を検出し、実デバイスにおいて、予測不能なタイミング違反が発生することを防止できるレイアウト設計方法およびレイアウト設計装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、それぞれ別系統の電源が供給される複数の電源受給領域が設けられた半導体集積回路のレイアウト設計方法において、
前記複数の電源受給領域のそれぞれに、対応する電源の供給を受けて動作する回路セルを配置し、該回路セル間の接続の情報を含む第1のレイアウトデータを作成し、記憶手段に記憶し、
前記回路セル間を接続することによって形成される回路が動作タイミングの仕様を満たすように前記回路セル間に追加して接続する、信号伝達特性を変化させる追加セルを配置し、前記回路セルおよび追加セル間の接続の情報、並びに、前記回路セルおよび追加セルのそれぞれが前記複数の電源受給領域のいずれに位置するかを示す電源受給領域情報を含む第2のレイアウトデータを作成し、
前記第1のレイアウトデータと第2のレイアウトデータとを比較して前記追加セルを把握するとともに、該追加セルの後段および前段に接続される前記回路セルであるレシーバセルとドライバセルとの間の接続経路を追跡し、該レシーバセルとドライバセルとの間で異なる電源受給領域間の行き来が発生している箇所を抽出することを特徴とするレイアウト設計方法を提供するものである。
【0014】
ここで、前記抽出した箇所の前記追加セルの配置を、異なる電源受給領域間の行き来が発生しないように修正し、修正済みレイアウトデータを作成することが好ましい。
【0015】
また、本発明は、それぞれ別系統の電源が供給される複数の電源受給領域が設けられた半導体集積回路のレイアウト設計を行うレイアウト設計装置において、
前記複数の電源受給領域のそれぞれに、対応する電源の供給を受けて動作する回路セルを配置し、該回路セル間の接続の情報を含む第1のレイアウトデータを作成する配置手段と、
前記第1のレイアウトデータを記憶する記憶手段と、
前記回路セル間を接続することによって形成される回路が動作タイミングの仕様を満たすように前記回路セル間に追加して接続する、信号伝達特性を変化させる追加セルを配置し、前記回路セルおよび追加セル間の接続の情報、並びに、前記回路セルおよび追加セルのそれぞれが前記複数の電源受給領域のいずれに位置するかを示す電源受給領域情報を含む第2のレイアウトデータを作成する最適化手段と、
前記第1のレイアウトデータと第2のレイアウトデータとを比較して前記追加セルを把握するとともに、該追加セルの後段および前段に接続される前記回路セルであるレシーバセルとドライバセルとの間の接続経路を追跡し、該レシーバセルとドライバセルとの間で異なる電源受給領域間の行き来が発生している箇所を抽出するレイアウト検証手段とを有することを特徴とするレイアウト設計装置を提供する。
【0016】
ここで、前記抽出した箇所の前記追加セルの位置を、異なる電源受給領域間の行き来が発生しないように修正し、修正済みレイアウトデータを作成する修正手段をさらに有することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、それぞれ別系統の電源が供給される複数の電源系統を有する半導体集積回路の電源分離レイアウト設計において、タイミング、デザインルールの最適化で追加(挿入)された追加セルによって、異なる電源受給領域境界に信号の行き来が発生していないかどうかを確認する。発生している場合、その原因となっている追加セルを、行き来が発生しないように移動することで、設計時に予測不能なタイミング違反が、実デバイスで発生することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明のレイアウト設計方法およびレイアウト設計装置を詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明のレイアウト設計装置の構成を表す一実施形態のブロック概念図である。同図に示すレイアウト設計装置10は、配置手段12と、記憶手段14と、最適化手段16と、レイアウト検証手段18と、修正手段20とによって構成されている。レイアウト設計装置10は、本発明のレイアウト設計方法を適用して、それぞれ別系統の電源が供給される複数の電源受給領域(電源分離領域)が設けられた半導体集積回路のレイアウト設計を行う。
【0020】
ここで、ネットリストは、半導体集積回路を構成する回路セルと、その回路セル間の接続情報を表すものである。ネットリストには、各々の回路セルが接続される電源配線の情報も含まれており、半導体集積回路のレイアウト設計時には、各々の回路セルが接続される電源配線の情報に応じて、それぞれ別系統の電源が供給される複数の電源受給領域が設けられる。
【0021】
配置手段12には、半導体集積回路のネットリストが入力される。配置手段12は、ネットリストに基づいて、半導体集積回路内に設けられた複数の電源受給領域のそれぞれに、対応する電源(別系統の電源)の供給を受けて動作する回路セルを配置し、回路セル間の接続の情報を含む第1のレイアウトデータを作成して出力する。
【0022】
ここで、電源系統が異なる回路セルは、ガードリングもしくはシールドリングによって、それぞれ異なる領域に分けることができる。一方、回路セルが接続される電源配線によって、電源系統が異なる回路セルを分けることもできる。
【0023】
電源系統が異なる回路セルを、それぞれ異なる領域に分ける場合、回路セルおよび追加セルが配置された位置(電源受給領域)の情報によって供給される電源系統が分かるので、その間の行き来の有無を容易に検出できる。一方、接続される電源配線によって、電源系統が異なる回路セルを分ける場合、それぞれの回路セルおよび追加セルが、どの電源配線に接続されているのかの情報を参照して行き来の有無を検出する。
【0024】
電源受給領域は、説明の都合上、領域という表現を使用しているが、電源系統が異なる回路セルを、それぞれ異なる領域に分ける場合だけではなく、接続される電源配線によって、電源系統が異なる回路セルを分ける場合の両方の意味を含む。
【0025】
続いて、記憶手段14には、配置手段12から第1のレイアウトデータが入力される。記憶手段14は、配置手段12から入力される第1のレイアウトデータを記憶し、記憶した第1のレイアウトデータを出力する。
【0026】
最適化手段16には、記憶手段14から第1のレイアウトデータが入力される。最適化手段16は、記憶手段14から入力される第1のレイアウトデータに基づき、回路セル間を接続することによって形成される回路が動作タイミングの仕様を満たすように回路セル間に追加して接続する、信号伝達特性を変化させる追加セルを配置し、回路セルおよび追加セル間の接続の情報、並びに、回路セルおよび追加セルのそれぞれが複数の電源受給領域のいずれに位置するかを示す電源受給領域情報を含む第2のレイアウトデータを作成して出力する。
【0027】
ここで、回路セル間には、上記動作タイミングの仕様に応じて、追加セルが追加されない(追加する必要がない)場合もあるし、追加セルが1つ、ないしは、2つ以上直列に接続されて追加される場合もある。ここでは、信号を出力する側の回路セルをドライバセルと呼び、これに対して、信号が入力される側の回路セルをレシーバセルと呼ぶ。つまり、信号は、ドライバセルから直接、あるいは、所定数の追加セルを介してレシーバセルに伝達される。
【0028】
レイアウト検証手段18には、記憶手段14から第1のレイアウトデータが入力され、最適化手段16から第2のレイアウトデータが入力される。レイアウト検証手段18は、第1のレイアウトデータと第2のレイアウトデータとを比較して追加セルを把握する、すなわち、追加セルの位置(電源受給領域)とその接続情報を把握するとともに、レシーバセルとドライバセルとの間の接続経路を追跡し、レシーバセルとドライバセルとの間で異なる電源受給領域間の行き来が発生している箇所を抽出する。そして、回路セルおよび追加セルの接続情報、信号の行き来の発生箇所の情報、並びに、電源受給領域情報を含む検証データを作成して出力する。
【0029】
修正手段20には、レイアウト検証手段18から検証データが入力される。修正手段20は、レイアウト検証手段18から入力される検証データに基づいて、レイアウト検証手段18が抽出した、レシーバセルとドライバセルとの間で異なる電源受給領域間の行き来が発生している箇所の追加セルの位置を、異なる電源受給領域間の行き来が発生しないように修正する。そして、回路セルおよび追加セルの接続情報、並びに、電源受給領域情報を含む修正済みレイアウトデータを作成して出力する。
【0030】
以下、電源受給領域が2つの場合(領域1、領域2)を例に挙げて、レイアウト設計装置10の動作とともに、本発明のレイアウト設計方法を適用する半導体集積回路のレイアウト設計の各工程について、図2および図3を参照して説明する。図2は、本発明のレイアウト設計方法を適用する半導体集積回路のレイアウト設計の各工程を表す一実施形態のフローチャートである。図3(a)〜(d)は、本発明のレイアウト設計方法を適用する半導体集積回路のレイアウト設計の各工程を示す一実施形態のレイアウト概念図である。
【0031】
半導体集積回路のネットリストに基づいて、半導体集積回路のレイアウトのフロアプランを決定し、複数の電源受給領域(領域1、領域2)の配置箇所の設定を行う(ステップS1)。例えば、図3(a)に示すように、それぞれ別系統の電源が供給される領域1および領域2の範囲を設定する。
【0032】
続いて、各々の領域1および領域2において、それぞれ別系統の電源、および、グランドGNDの配線を行う(ステップS2)。
【0033】
続いて、配置手段12が、各々の領域1および領域2においてプリミティブセル(回路セル)の配置を行い、第1のレイアウトデータを作成する(ステップS3)。図3(a)の例では、(1)〜(6)の回路セルペアが示されている。(1)〜(6)は、いずれも、その両端の、信号の出力側の回路セルがドライバセル30であり、入力側の回路セルがレシーバセル32である。
【0034】
図2では省略しているが、配置手段12によって作成された第1のレイアウトデータは記憶手段14に入力され、記憶(保持)される。そして、記憶手段14に記憶された第1のレイアウトデータは、最適化手段16およびレイアウト検証手段18に入力される。
【0035】
続いて、最適化手段16によって、回路セル配置後のネットリストに基づいてタイミング解析を行う(ステップS4)。この時点では、早期にタイミングの改善を行う目的から、詳細配線ではなく、仮配線の状態のネットリストでタイミング解析を行う。
【0036】
引き続き、最適化手段16が、タイミング、デザインルール等を考慮した最適化を行い、第2のレイアウトデータを作成する(ステップS5)。この最適化によって、ドライバセル30とレシーバセル32との間に所定数の追加セルが追加される場合がある。図3(b)の例では、ドライバセル30とレシーバセル32との間に、1つないしは2つの追加セル34、36が追加されている。
【0037】
ここで、図3(b)の(1)の例は、共に領域2に配置されたドライバセル30とそのレシーバセル32である2個の回路セル(バッファ)間に、同じ領域2に配置された1個の追加セル(バッファ)34が、ドライバセル30からレシーバセル32へ向かって追加されている。
【0038】
同(2)の例は、共に領域1に配置されたドライバセル30とレシーバセル32である2個の回路セルの間に、同じ領域1に配置された1個の追加セル34が、ドライバセル30からレシーバセル32へ向かって追加されている。
【0039】
同(3)の例は、一方が領域2に配置されたドライバセル30で、他方が領域1に配置されたレシーバセル32である2個の回路セル間に、領域2に配置された1個の追加セル34と領域1に配置された1個の追加セル36が、ドライバセル30からレシーバセル32へ向かって追加されている。
【0040】
同(4)の例は、共に領域2に配置されたドライバセル30とレシーバセル32である2個の回路セルの間に、領域1に配置された1個の追加セル34が、ドライバセル30からレシーバセル32へ向かって追加されている。
【0041】
同(5)の例は、共に領域1に配置されたドライバセル30とレシーバセル32である2個の回路セルの間に、領域2に配置された1個の追加セル34が、ドライバセル30からレシーバセル32へ向かって追加されている。
【0042】
同(6)の例は、一方が領域2に配置されたドライバセル30で、他方が領域1に配置されたレシーバセル32である2個の回路セル間に、領域1に配置された1個の追加セル34と領域2に配置された1個の追加セル36が、ドライバセル30からレシーバセル32へ向かって追加されている。
【0043】
続いて、レイアウト検証手段18が、第1のレイアウトデータと第2のレイアウトデータとを比較して追加セル34、36の状態を把握し、かつ、レシーバセル32からドライバセル30へ向かって経路を追跡(図3(c)に点線矢印で示す)して、電源受給領域境界(領域1と領域2との間)で信号の行き来が発生しているかいないかをチェックして検証データを作成する(ステップS6)。図3(b)の例の場合、同図(c)に○で囲んで示すように、行き来が発生しているのは、(4)〜(6)の例である。
【0044】
図3(c)の(4)の例は、領域2(ドライバセル30)→領域1(追加セル34)→領域2(レシーバセル32)の順に、電源受給領域境界で信号が2回行き来している。
【0045】
同(5)の例は、領域1(ドライバセル30)→領域2(追加セル34)→領域1(レシーバセル32)の順に、電源受給領域境界で信号が2回行き来している。
【0046】
同(6)の例は、領域2(ドライバセル30)→領域1(追加セル34)→領域2(追加セル36)→領域1(レシーバセル32)の順に、電源受給領域境界で信号が3回行き来している。
【0047】
その結果、電源受給領域境界で信号の行き来が発生している場合(ステップS7で‘YES’)にはステップS8へ進む。一方、信号の行き来が発生していない場合(ステップS7で‘NO’)にはステップS9へ進む。
【0048】
信号の行き来が発生している場合には、信号の行き来の原因となっている追加セルの位置を、行き来が発生しないように修正し(配置する領域を移動し)、修正済みレイアウトデータを作成する(ステップS8)。
【0049】
図3(c)の(4)の例では、ドライバセル30およびレシーバセル32の回路セルが領域2に配置されているのに対して、追加セル34が領域1に配置されていることが行き来の原因であるから、図3(d)に示すように、追加セル34を領域2へ移動する。
【0050】
同(5)の例は、ドライバセル30およびレシーバセル32が領域1に配置されているのに対して、追加セル34が領域2に配置されていることが行き来の原因であるから、図3(d)に示すように、追加セル34を領域1へ移動する。
【0051】
同(6)の例は、ドライバセル30が領域2に配置され、レシーバセル32が領域1に配置されているのに対して、前段の追加セル34が領域1に配置され、後段の追加セル36が領域2に配置されていることが行き来の原因であるから、図3(d)に示すように、前段の追加セル34を領域2へ移動する。あるいは、後段の追加セル36を領域1へ移動しても良い。
【0052】
その後、再度、電源受給領域境界での信号の行き来をチェックする(ステップS6)。その結果、信号の行き来が発生している場合(ステップS7で‘YES’)には再度ステップS8へ進み、上記追加セルの移動を繰り返し行う。一方、信号の行き来が発生していない場合(ステップS7で‘NO’)にはステップS9へ進む。
【0053】
信号の行き来が発生していない場合には、詳細配線を行う(ステップS9)。
【0054】
以上のように、それぞれ別系統の電源が供給される複数の電源系統を有する半導体集積回路の電源分離レイアウト設計において、タイミング、デザインルールの最適化で追加された追加セルによって、異なる電源受給領域境界に信号の行き来が発生していないかどうかを確認する。発生している場合、その原因となっている追加セルを、行き来が発生しないように移動することで、設計時に予測不能なタイミング違反が、実デバイスで発生することを防止することができる。
【0055】
なお、上記実施形態では、電源受給領域の数が、領域1および領域2の、2つの場合を説明したが、本発明において、電源受給領域の数は2以上であれば良く、その数の上限はない。図3では、それぞれの回路セル30,32をバッファの記号を用いて模式的に示したが、実際には、さまざまな機能を有する回路セルを配置の対象とすることができる。また、追加セルとしてバッファを例に挙げたが、これも限定されず、追加セルは、タイミング調整や、デザインルール違反の改善のための専用のセルなどであっても良い。
【0056】
また、ドライバセルとレシーバセルの間に追加される追加セルの個数も0〜2個に限定されず、3個以上の場合もある。追加される追加セルの個数が増えるに従って、複数の電源受給領域を横切る可能性も高くなるが、基本的に、ドライバセルに近い側の追加セルはドライバセルの電源受給領域に移動し、レシーバセルに近い側の追加セルはレシーバセルの電源受給領域に移動する。もしくは、全ての追加セルをドライバセル側、もしくは、レシーバセル側へ移動する。
【0057】
また、実施形態では、仮配線でタイミング解析をしているが、詳細配線を行ってからタイミング解析を行っても良い。この場合、追加セルを移動する時同時に、詳細配線も修正する。また、ステップS9の詳細配線は不要である。
【0058】
本発明のレイアウト設計方法は、その一部ないしは全部を、コンピュータ(制御手段)上で動作するソフトウェアで実現することができる。この場合、修正手段を実装することは必須ではない。例えば、オペレータによって入力される修正の指示命令に応じて、レイアウト設計装置が修正を実行することも可能である。
【0059】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明のレイアウト設計方法およびレイアウト設計装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明のレイアウト設計装置の構成を表す一実施形態のブロック概念図である。
【図2】本発明のレイアウト設計方法を適用する半導体集積回路のレイアウト設計の各工程を表す一実施形態のフローチャートである。
【図3】(a)、(b)、(c)および(d)は、本発明のレイアウト設計方法を適用する半導体集積回路のレイアウト設計の各工程を表す一実施形態のレイアウト概念図である。
【符号の説明】
【0061】
10 レイアウト設計装置
12 配置手段
14 記憶手段
16 最適化手段
18 レイアウト検証手段
20 修正手段
30 ドライバセル
32 レシーバセル
34、36 追加セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ別系統の電源が供給される複数の電源受給領域が設けられた半導体集積回路のレイアウト設計方法において、
前記複数の電源受給領域のそれぞれに、対応する電源の供給を受けて動作する回路セルを配置し、該回路セル間の接続の情報を含む第1のレイアウトデータを作成し、記憶手段に記憶し、
前記回路セル間を接続することによって形成される回路が動作タイミングの仕様を満たすように前記回路セル間に追加して接続する、信号伝達特性を変化させる追加セルを配置し、前記回路セルおよび追加セル間の接続の情報、並びに、前記回路セルおよび追加セルのそれぞれが前記複数の電源受給領域のいずれに位置するかを示す電源受給領域情報を含む第2のレイアウトデータを作成し、
前記第1のレイアウトデータと第2のレイアウトデータとを比較して前記追加セルを把握するとともに、該追加セルの後段および前段に接続される前記回路セルであるレシーバセルとドライバセルとの間の接続経路を追跡し、該レシーバセルとドライバセルとの間で異なる電源受給領域間の行き来が発生している箇所を抽出することを特徴とするレイアウト設計方法。
【請求項2】
前記抽出した箇所の前記追加セルの配置を、異なる電源受給領域間の行き来が発生しないように修正し、修正済みレイアウトデータを作成することを特徴とする請求項1記載のレイアウト設計方法。
【請求項3】
それぞれ別系統の電源が供給される複数の電源受給領域が設けられた半導体集積回路のレイアウト設計を行うレイアウト設計装置において、
前記複数の電源受給領域のそれぞれに、対応する電源の供給を受けて動作する回路セルを配置し、該回路セル間の接続の情報を含む第1のレイアウトデータを作成する配置手段と、
前記第1のレイアウトデータを記憶する記憶手段と、
前記回路セル間を接続することによって形成される回路が動作タイミングの仕様を満たすように前記回路セル間に追加して接続する、信号伝達特性を変化させる追加セルを配置し、前記回路セルおよび追加セル間の接続の情報、並びに、前記回路セルおよび追加セルのそれぞれが前記複数の電源受給領域のいずれに位置するかを示す電源受給領域情報を含む第2のレイアウトデータを作成する最適化手段と、
前記第1のレイアウトデータと第2のレイアウトデータとを比較して前記追加セルを把握するとともに、該追加セルの後段および前段に接続される前記回路セルであるレシーバセルとドライバセルとの間の接続経路を追跡し、該レシーバセルとドライバセルとの間で異なる電源受給領域間の行き来が発生している箇所を抽出するレイアウト検証手段とを有することを特徴とするレイアウト設計装置。
【請求項4】
前記抽出した箇所の前記追加セルの位置を、異なる電源受給領域間の行き来が発生しないように修正し、修正済みレイアウトデータを作成する修正手段をさらに有することを特徴とする請求項3記載のレイアウト設計装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−262268(P2008−262268A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102673(P2007−102673)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(501285133)川崎マイクロエレクトロニクス株式会社 (449)
【Fターム(参考)】