レジストの加熱・冷却方法
【課題】 レジストを高精度に加熱・冷却する。
【解決手段】 熱伝導性の悪い基板11上にレジストパターン形成を行うため、レジスト12を加熱冷却する際に、温度調整板13の温度を段階的又は連続的に変化させることにより、レジスト12のベークの温度管理と時間管理を高精度に制御することが可能となり、レジストパターンの線幅制御性が向上し、特に微細パターンに対応することができる。
【解決手段】 熱伝導性の悪い基板11上にレジストパターン形成を行うため、レジスト12を加熱冷却する際に、温度調整板13の温度を段階的又は連続的に変化させることにより、レジスト12のベークの温度管理と時間管理を高精度に制御することが可能となり、レジストパターンの線幅制御性が向上し、特に微細パターンに対応することができる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光、紫外線、X線、EB、イオンビーム等を用いてレジストパターンの形成を行う際に用いるレジストの加熱・冷却方法に関するものである。
【0002】また、このレジストの加熱・冷却方法を用いて作製されたレチクル、X線反射型マスク、又はEB用マスク、光学素子、液晶基板、これらを用いた露光装置を用いて作製されたデバイス及びデバイス製造方法に関するものである。
【0003】
【従来の技術】従来、光学機器を構成する光学系にはレンズやプリズムのような屈折型の光学素子が多く用いられており、図11に示すような回折光学素子は入射波面を定められた波面に変換する光学素子として用いられている。この回折光学素子は屈折型光学素子にはない特長を有しており、例えば屈折型光学素子と逆の分散値を有していたり、この回折光学素子を光学系に用いた際には光学系の小型化等の特長を有している。
【0004】従来の回折型光学素子の製造には、機械研削又は機械研削で作製した型を用いたモールド等により作製している。しかし、光学素子として回折光学素子に大きなパワーを持たせるためには、可能な限り微細なピッチにおいて製造することが望ましく、半導体製造工程を応用する方法が検討され始めている。
【0005】一般に、回折光学素子の形状を図12に示すような階段状のバイナリ型の形状にすることにより半導体製造技術が適用可能となり、高精度の回折光学素子を製造することができる。このため、ブレーズド形状を階段形状に近似したバイナリ型の回折光学素子に関する研究が、最近では盛んに進められている。
【0006】また、光学素子として回折光学素子に大きなパワーを持たせるためだけでなく、近似の度合いを高めるためにも加工線幅は可能な限り微細なことが望まれる。そこで、高性能な回折光学素子を得るために、高精度のサブミクロン加工が可能な半導体製造で培われたリソグラフィ技術が用いられる。
【0007】しかし、上述したリソグラフィ技術はSi基板を用いた場合を前提として開発が進められている。
【0008】リソグラフィ技術を用いて微細パターンを型取りするために、光、紫外線、X線、EB、イオンビーム等に感光する有機物から成るレジストを用い、露光装置において感光させることにより、所望のレジストパターンを形成し、更にこのレジストパターンをマスクとして薬品を用いてエッチングしたり、プラズマ等を用いるドライエッチング装置を用いて加工する。しかし、上述したマスクや素子に用いられる基板は Siと比較すると1〜2桁熱伝導率が低い。
【0009】これらの加工方法はレチクル、特に位相シフトレチクル、X線反射型マスク、又はEB用マスクや、光学素子、液晶基板等のSiウェハ以外の基板を用いる製造においても応用されてきている。
【0010】しかし、上述したマスクや素子に用いられる基板は、Si と比較すると1〜2桁熱伝導率が低い。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】リソグラフィ技術による微細な線幅を決定するレジストパターンは、レジストの塗布、プリベーク、露光、ポストエクスポージャーべーク、現像、ポストベークを順次に行うことにより製造することができる。しかしながら、各工程ともSiウェハを用いることを前提として装置が開発されているため、特にベーク時には様々な問題が発生する。
【0012】また、製造工程においてプリベークは必ず行われるが、ポストエクスポージャーべークやポストベークは、レジストの種類又はレジストパターン形成後に行う工程により選択される。通常の半導体製造工程では図13に示すように、基板1に塗布されているレジスト2を加熱するために、ホットプレート板3を用いてピンチ上に基板1を載せ基板1の裏面側から加熱する。しかし、基板1に石英を用いた場合にはSiウェハと比較すると熱伝導率も低く、基板1の板厚もSiウェハと比較すると厚い。基板1の温度がプレート板3と同じ温度に達するために要する時間は、基板1の材料の熱伝導率が小さいと、また単位面積当りの熱容量(比熱・密度・厚さ)が大きくなると長くなる。そのため、基板1の温度制御性が著しく困難となる。
【0013】即ち、光露光に用いるレクチルを考えてみても、石英基板1の熱伝導率はSiよりも2桁低く、板厚も6.35〜9mmであり、板厚1mm以下であるSiウェハよりも数10倍の時間を要する。Siウェハ上のレジストと比較すると、通常の60秒のベーク時間では、基板1がプレート板3の温度まで達することは不可能である。また、冷却にも同様の時間が要することになる。
【0014】また、熱伝導性の悪い基板とは、板厚0.725mmのSiウェハよりも温度上昇に10倍以上の時間の要するものと定義する。即ち、密度ρ、比熱c、熱伝導率λ、厚みtとすると、次の式(1)を満たす基板である。
【0015】
(ρc/λ)t2≧5.23×10-2 …(1)
従来、熱伝導性の悪い基板上におけるパターンニングは、Siウェハの量産工程と比較すると太い線幅の工程にしか応用することができない。そのため、オーブンや赤外線による加熱等の方法が用いられている。しかし、レチクル、特に位相シフトレチクル、X線反射型マスク、又はEB用マスクや、光学素子、液晶等ではSiウェハと同レベル又はそれ以上の加工精度が要求されている。特に、最近開発が進んできた化学増幅型のレジストを用いる際には酸の拡散の範囲がベークにより制御されるため、レジストの線幅とベークが密接に関係してきており、0.1℃単位の温度管理と時間管理が極めて重要となってくる。
【0016】本発明の目的は、上述の問題点を解消し、レジストパターンの線幅制御性が向上するレジストの加熱・冷却方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明に係るレジストの加熱・冷却方法は、熱伝導性の悪い基板上にパターン形成を行うため、前記基板を加熱する際に、温度調節板の温度を段階的又は連続的に変化させていくことを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明を図1〜図10に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。図1は第1の実施例における回折光学素子の製作断面図を示しており、図1(a)は直径a=200mm、厚さt=20mmの石英から成る基板11を示している。また、前述の式(1)における(ρc/λ)t2を計算すると、厚さt=20mmの石英基板においては、(ρc/λ)t2=525.3と非常に大きな値となってしまう。
【0019】本実施例においては、自重変形や鏡筒の加工精度による接触部位の不均一、固定時に加わる応力等による取付時の歪み、気圧や温度変動によって変形する量を低減するために、板厚20mmの石英基板を用いたが、Siウェハとほぼ同じ板厚の石英基板を用いてもよい。しかし、その場合においても(ρc/λ)t2=0.69となる。
【0020】先ず、微細パターンを型取るために、図1(b)に示すように光に感光する有機物である例えばKrF用化学増幅型レジストUV6(Shipley社製)のレジスト12を基板11上に塗布する。このレジスト12は加工する線幅にもよるが、サブミクロンの加工を施すためには、膜厚1μm程度の厚みに対し約5nmの制御が必要となってくる。また、レジスト12を塗布する前に、基板11からの反射を防止したり、基板11からの化学的作用を避けるために、例えばバーク材AR3(Shipley社製)を塗布した後に加熱する場合もある。その際には、更に185℃でこのベーク工程等を必要とする。
【0021】次に、図1(c)に示すように、レジスト側及び非レジスト側双方に温度調節板13を用いることによりプリベーク工程を行う。
【0022】この工程を更に詳細に説明すると、複数の温度調節板13を持つ図2に示すベーキング装置によりレジスト12の加熱及び冷却を行う。厚さ20mmの石英基板11上のレジストを135±0.1℃に加熱するために、レジスト12側の温度調節板13aは135℃に固定し、非レジスト側の温度調節板13bは180℃、温度調節板13cは150℃、温度調整板13dは140℃、温度調整板13eは135℃に保っておく。また、温度調節板13bと基板11との間隔をスペーサ14により保持し、今回は0.1mmとする。非レジスト側の温度調整板13b、13c、13d、13e上にそれぞれ、30秒、15秒、5秒、30秒の間、基板11とレジスト12側の温度調整板13aを一体として移動させる。また冷却時には、レジスト側の温度調整板13aを一体として移動させる。
【0023】上記の設定温度及びその温度調整板13b〜13e上に保持する時間は、レジスト12を塗布する基板11の材質や厚さ等の形状と、加熱又は冷却する温度によって、最適なものを選択する。勿論、この値は温度調節板13と基板11との間隔によっても変化させる必要がある。これらは計算によって、おおまかな設定温度を決め、実際に基板11の温度設定やレジストパターンの出来具合によって調整していってもよい。また、赤外線を用いた温度センサを用いて実基板の温度を測定しながら、温度調節板13の温度を調整してゆくことも可能である。
【0024】また、今回は複数の温度に設定された複数の温度調整板13上を基板11が移動することによって、温度を段階的に変化させていったが、温度調整板13の温度を連続又は断続的に変化させても支障はない。
【0025】また、これらは温度調節板13のレジスト12側、非レジスト側の双方温度を変化させることもできる。更に、温度調整板13はレジスト12側又は非レジスト側の何れかのみ配置してもよい。
【0026】熱伝導率の低い材料を基板11とする場合に、面内の温度分布が問題となる場合もある。その際に、図3(a)に示すように温度調整板13を複数個に分割し、(b)に示すように個々により細かく温度設定を行うこともできる。
【0027】また、この加熱冷却は空気中で行ってもよいが、He等の熱伝導率の高い雰囲気中において行ってもよい。レジスト12側の温度調整板13aからのレジスト12への加熱・冷却は、空間にある気体による熱伝導、気体の対流による熱対流、温度調節板13aからの幅射によるが、レジスト12と温度調節板13aの間隔が0.5mm程度では、レジスト12と温度調節板13aとの間の空間に存在する気体による熱伝導が支配的となる。また、この0.5mmの空気層における熱伝導率は、板厚1mmのSiウェハの熱伝導率とほぼ同等である。
【0028】また、レジスト12と温度調節板13aの間隔をより狭くしたい場合又はスペーサ14を介在する場所がない場合には、図1(d)に示すように温度調節板13aに検出用マーク15を設け、この検出用マーク15をレーザー測長機16等を用いて検出することにより、レジスト12と温度調節板13aとの間隔を測定することができる。なお、この間隔は図1(e)に示すようにマイクロメータ17を用いて測定してもよい。このようにして、レジスト12と温度調節板13aとの間隔を測定することにより、10μm程度の間隔まで制御可能となる。また、検出用マーク15は測定方法によっては設けなくともよい。
【0029】何れかの方法により、加熱・冷却されたレジスト12をKrFレーザー光等を用いた露光装置を用いて露光する。露光には、KrFレーザー光の他に光、紫外線、X線、EB、イオンビームを用い、レジスト12は各エネルギに対応するものを使用してもよい。
【0030】続いて再度、加熱工程であるポストエクスポージャーべーク、現像工程、ポストベークを経ることにより、図1(f)に示すように露光方法にもよるが線幅0.1〜0.5μm程度の所望の面形状を有する微細なレジストパターン18を形成することができる。これらのポストエクスポージャーべーク、ポストベークはプリベークと同様に、図1(c)〜(e)及び図2において用いた温度調節板13を用いてもよい。特に、プリベークとポストエクスポージャーべークでは高精度な温度制御性が必要である。
【0031】次に、図1(g)に示すように基板11をレジストパターン18をマスクとして薬品を用いてエッチングしたり、プラズマ等を用いるドライエッチング装置を用いて加工する。しかしながら、サブミクロンの線幅では主として高精度のドライエッチングが使用されている。
【0032】また、本実施例においては、基板11の石英を用いたが、石英の代りにアルミナ珪酸ガラス、硼珪酸ガラス、アルミナ等の酸化物、弗化カルシウム、弗化リチウム、弗化バリウム、弗化マグネシウム、弗化ストロンチウム等の弗化物、光学用プラスチック等の透光性を有する材料を用いてもよい。
【0033】図1(b)〜(g)の工程を繰り返すことにより、図1(h)に示すような階段状の形状、例えば8段の回折光学素子19を形成することができる。このような高精度の微細な回折光学素子を製造することにり、設計時の光学性能を充分に発揮することができる。
【0034】図4は第2の実施例におけるArFレーザー露光装置に用いるレチクルの製作断面図を示しており、図4(a)に示すように光露光に用いるレチクル用基板は、板厚6.35mm、6インチ角の石英透過基板21上に遮光膜としてクロム膜22が成膜されている。板厚6.35mmの基板21において、式(1)を計算すると(ρc/λ)t2=53.0と非常に大きな値となってしまう。
【0035】更に、クロム膜22上には反射防止のために酸化クロム等を積層してもよい。クロム膜22を所望のパターンに形成するため、クロム膜22上に、例えばEB用化学増幅型レジストSAL601(Shipley社製)から成るレジスト12を塗布する。通常では、光を用いた縮小露光装置ではレチクルのパターンは4〜5倍の大きさに拡大されるため、化学増幅型のレジスト12を必要とする程の微細パターンは少ないが、角パターンのOPC等の微細な形状が要求される場合には使用する必要がある。
【0036】レジスト12のベーク温度の制御性を向上させるために、150℃から105℃まで連続的に温度が調整された温度調節板13上に基板21を位置しレジスト12を加熱する。更に、冷却には0℃から23℃まで連続的に温度が調整された温度調節板13を用いる。
【0037】続いて、図4(b)に示すようにレジスト12をEB描画装置において、描画後に、ポストエクスポージャーべーク、現像、ポストベーク等を順次に行いパターニングし、そのレジストパターンをマスクとしてクロム膜32をドライエッチング又はウエットエッチングによりエッチングすることにより、所望のパターン23を形成する。本実施例においては図示しないが、位相シフトレチクル用のシフタの形成等に用いてもよい。
【0038】従って、本実施例においてはレジスト12を加熱する際に温度制御を高精度に行うことにより、線幅制御性に優れた光露光用レチクル24を形成することができる。
【0039】図5は第3の実施例におけるX線反射型マスク構造体の製作断面図を示しており、図5(a)に示すように板厚6.35mm、6インチ角のNZTE(near zero thermal expansion)基板31上にMo/Siの多層構造から成る反射基板32が積層され、更にこの反射基板32上にW膜33が積層されている。しかし、板厚10mmの基板31において、式(1)を計算すると(ρc/λ)t2=51.3と非常に大きな値となってしまう。また、W膜33を所望のパターンに形成するため、このW膜33上に例えばEB用化学増幅型レジストSAL601(Shipley社製)から成るレジスト12を塗布する。
【0040】X線反射型マスク構造体を用いる縮小X線露光では、露光される線幅は0.1μm以下と非常に微細なため、4倍程度のマスクの線幅も極めて微細な線幅が要求される。
【0041】そして、レジスト12を加熱する際の温度制御性を向上させるために、130℃、123℃、120℃に調整された温度調節板13をレジスト12に0.2mmの間隔で30秒、10秒、20秒ずつ移動させる。この間隔の制御には第1の実施例に述べたように、検出用マーク15及びレーザー測長機16等を用いてもよい。更に冷却には、13℃、20℃、23℃に調整された温度調節板13をレジスト12に0.2mmの間隔で移動させることにより行う。
【0042】続いて、図5(b)に示すように、レジスト12をEB描画装置において、描画後にポストエクスポージャーベーク、現象、ポストベーク等を順次に行いパターニングし、そのレジストパターンをマスクとしてW膜33をドライエッチング又はウエットエッチングによりエッチングすることにより、所望の非反射パターン34を形成する。
【0043】従って、本実施例においては高精度の温度制御を行うことができるため、図5(b)に示すような線幅制御性に優れたX線反射型マスク構造体35を形成することができる。
【0044】また、液晶基板を作製する際には、通常では液晶基板には板厚1mm程度の例えばW7095(コーニング社製)から成るガラスが用いられるため、熱伝導率は石英よりも低い。ただし、液晶ではあまり微細パターンは要求されていないため、オーブン等を用いたベーク方法を用いることができる。しかし、最近では低温ポリシリコン等の開発により、駆動部のICも同時に作成する等の微細化も進んでおり、このような微細パターンを必要とする加工を行う際には、温度調節板13の温度を段階的又は連続的に変化させる。
【0045】パターニングに用いるレジスト12を加熱する際に高精度の温度制御を行うことにより、線幅制御性に優れた液晶基板を形成することができる。
【0046】図6は半導体露光装置を概略図を示しており、KrF、ArF、F2エキシマレーザー等の光源41から出射した光束Lはミラー42により反射され、照明光学系43に導光された後に、第1物体であるレチクル44面上を照明する。更に、レチクル44の情報を得た光束Lは縮小投影光学系45を透過し、焦点位置を調整するウェハステージ46上に配置されているウェハ47へ投影される。
【0047】図7はこの半導体露光装置における照明光学系43又は投影光学系45の拡大断面図を示しており、これらの光学素子43、45は屈折光学素子51及び第1の実施例において製作した回折光学素子19から成る光学素子の組み合わせにより構成されている。本実施例においては回折光学素子19は1枚しか使用していないが、複数枚使用してもよい。
【0048】回折光学素子19は線幅制御性が良く、高精度に光学素子が製造されているため、理論値に近い回折効率を得ることができる。更に、従来の光学素子に比較すると剛性を十分に得ることができる。このような回折光学素子19を照明光学系53又は投影光学系45に使用することにより、自重変形や鏡筒の加工精度による接触部位の不均一、固定時に加わる応力等による歪み、気圧や温度変動による変形を最小限に止めたり又は除去することが可能となり、面変形が発生せず収差を小さくすることができ、設計時の性能を十分発揮でき、像性能を向上させることができる。
【0049】また、従来の屈折素子のみを使用した光学系と比較すると、レンズの枚数を低減することができ、これにより硝材による光吸収が低減され、吸収熱によるレンズの変形や屈折率変化を最小限にすることが可能となる。また、色収差の補正が容易なため、レーザーの波長帯域を拡げ、レーザーのパワーを有効に利用することができる。更に、半導体露光装置を設置する環境が変化した場合においても、焦点位置のずれ発生を最小限に止めることができ、結果として高精度なパターン転写を良好に行うことができる。
【0050】図8は第3の実施例において作成したX線反射型マスク構造体35を用いた半導体露光装置(X線縮小露光装置)の要部概略図であり、X線の減衰を防ぐために光学系全体を真空に保つための露光室である真空容器61内に納められている。
【0051】アンジュレータ光源62からは、細くて平行な所謂ペンシルビーム状のX線ビームXが放射される。このX線ビームXを全反射ミラー63で反射して短波長成分をカットし、ほぼ単色なX線ビームXとしてマスクステージ64に搭載された反射型マスク構造体35を照射する。反射型マスク構造体35には第3の実施例の手法を用いて所望のパターン34が形成され、このパターン34に応じてX線ビームXは反射し、投影光学系65に導かれる。更に、X線ビームXは投影光学系66を介して、ウエハステージ67に搭載されたウエハ68を照射し、反射型マスク構造体35のパターン34がウエハ68に縮小投影され、感光剤(レジスト)上に焼付けられる。
【0052】上記のようなX線縮小露光装置で露光することにより、量産に対応した高精度なX線縮小露光を行うことができた。
【0053】次に、第1の実施例において作製した回折光学素子を搭載した半導体露光装置又は第3の実施例おいて作製したX線反射型マスク構造体35を用いたX線縮小露光装置を利用した半導体デバイスの製造方法を説明する。
【0054】図9はICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル或いはCCD等の半導体デバイスの製造工程のフローチャート図を示している。先ず、ステップS1において半導体デバイスの回路設計を行い、続いてステップS2においてステップS1で設計した回路パターンをEB描画装置等を用いマスクを製造する。一方、ステップS3においてシリコン等の材料を用いてウェハを製造する。その後に、前工程と呼ばれるステップS4において、ステップS2、S3において用意したマスク及びウェハを用い、マスクを露光装置内にローディングし、マスクを搬送しマスクチャックにチャッキングする。
【0055】次に、ウェハをローディングしてアライメントのずれを検出して、ウェハステージを駆動して位置合わせを行い、アライメントが合致すると露光を行う。露光の終了後にウェハは次のショットヘステップ移動し、リソグラフィ技術によってウェハ上に回路を形成する。更に、後工程と呼ばれるステップS5において、ステップS4によって製造されたウェハを用いてダイシング、ボンディング等のアッセンブリ工程、チップ封入等のパッケージング工程を経て半導体チップ化する。チップ化された半導体デバイスは、ステップS6において動作確認テスト、耐久テスト等の検査を行う。このような一連の工程を経て半導体デバイスは完成し、ステップS7に進み出荷される。
【0056】図20は図9におけるステップS3において、ウェハ製造の詳細な製造工程のフローチャート図を示している。先ず、ステップS11においてウェハ表面を酸化させる。続いて、ステップS12においてウェハ表面をCVD法により絶縁膜を形成し、ステップS13において電極を蒸着法により形成する。更にステップS14に進みウェハにイオンを打込み、続いてステップS15においてウェハ上に感光剤を塗布する。ステップS16では、半導体露光装置によりマスクの回路パターンをウェハ上の感光剤(レジスト)上に焼付ける。
【0057】ステップS17において、ステップS16において露光したウェハ上の感光剤を現像する。更に、ステップS18でステップS17において現像したレジスト像以外の部分をエッチングする。その後に、ステップS19においてエッチングが済んで不要となったレジストを剥離する。更に、これらの一連の工程を繰り返し行うことにより、ウェハ上に多重の回路パターンを形成することができる。
【0058】なお、本実施例の製造方法を用いれば、従来は製造が難しかった高集積度の半導体デバイスの量産に対応することができる。
【0059】
【発明の効果】以上説明したように本発明に係るレジストの加熱・冷却方法は、熱伝導性の悪い基板上にレジストパターン形成を行うため、レジストを加熱冷却する際に温度調整板の温度を段階的又は連続的に変化させることにより、レジストのベークの温度管理と時間管理を高精度に制御することが可能となり、レジストパターンの線幅制御性が向上し、特に微細パターンに対応できる。
【0060】また、本実施例に係るレジストの加熱・冷却方法によれば、微細なピッチで精度良く作製された回折光学素子を搭載した半導体露光装置又は本実施例によるレチクル又はマスクを用いた露光装置による高精度なデバイス製造方法、及びデバイスを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施例における回折光学素子の製作断面図である。
【図2】ベーキング装置の概略図である。
【図3】温度調整板の概略図である。
【図4】第2の実施例におけるレチクル係る工程の製作断面図である。
【図5】第3の実施例におけるX線反射型マスク構造体の製作断面図である。
【図6】半導体露光装置の概略図である。
【図7】光学系の拡大断面図である。
【図8】X線縮小露光装置の概略図である。
【図9】半導体デバイスの製造フローチャート図である。
【図10】ウェハプロセスの詳細なフローチャート図である。
【図11】回折光学素子の斜視図である。
【図12】回折光学素子の断面図である。
【図13】従来のベーキング装置の概略図である。
【符号の説明】
11、21、31 基板
12 レジスト
13 温度調整板
14 スペーサ
15 検出用マーク
16 レーザー測長機
17 マイクロメータ
18 レジストパターン
19 回折光学素子
22 クロム膜
23 レチクル
32 反射基板
34 非反射パターン
35 X線反射型マスク構造体
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光、紫外線、X線、EB、イオンビーム等を用いてレジストパターンの形成を行う際に用いるレジストの加熱・冷却方法に関するものである。
【0002】また、このレジストの加熱・冷却方法を用いて作製されたレチクル、X線反射型マスク、又はEB用マスク、光学素子、液晶基板、これらを用いた露光装置を用いて作製されたデバイス及びデバイス製造方法に関するものである。
【0003】
【従来の技術】従来、光学機器を構成する光学系にはレンズやプリズムのような屈折型の光学素子が多く用いられており、図11に示すような回折光学素子は入射波面を定められた波面に変換する光学素子として用いられている。この回折光学素子は屈折型光学素子にはない特長を有しており、例えば屈折型光学素子と逆の分散値を有していたり、この回折光学素子を光学系に用いた際には光学系の小型化等の特長を有している。
【0004】従来の回折型光学素子の製造には、機械研削又は機械研削で作製した型を用いたモールド等により作製している。しかし、光学素子として回折光学素子に大きなパワーを持たせるためには、可能な限り微細なピッチにおいて製造することが望ましく、半導体製造工程を応用する方法が検討され始めている。
【0005】一般に、回折光学素子の形状を図12に示すような階段状のバイナリ型の形状にすることにより半導体製造技術が適用可能となり、高精度の回折光学素子を製造することができる。このため、ブレーズド形状を階段形状に近似したバイナリ型の回折光学素子に関する研究が、最近では盛んに進められている。
【0006】また、光学素子として回折光学素子に大きなパワーを持たせるためだけでなく、近似の度合いを高めるためにも加工線幅は可能な限り微細なことが望まれる。そこで、高性能な回折光学素子を得るために、高精度のサブミクロン加工が可能な半導体製造で培われたリソグラフィ技術が用いられる。
【0007】しかし、上述したリソグラフィ技術はSi基板を用いた場合を前提として開発が進められている。
【0008】リソグラフィ技術を用いて微細パターンを型取りするために、光、紫外線、X線、EB、イオンビーム等に感光する有機物から成るレジストを用い、露光装置において感光させることにより、所望のレジストパターンを形成し、更にこのレジストパターンをマスクとして薬品を用いてエッチングしたり、プラズマ等を用いるドライエッチング装置を用いて加工する。しかし、上述したマスクや素子に用いられる基板は Siと比較すると1〜2桁熱伝導率が低い。
【0009】これらの加工方法はレチクル、特に位相シフトレチクル、X線反射型マスク、又はEB用マスクや、光学素子、液晶基板等のSiウェハ以外の基板を用いる製造においても応用されてきている。
【0010】しかし、上述したマスクや素子に用いられる基板は、Si と比較すると1〜2桁熱伝導率が低い。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】リソグラフィ技術による微細な線幅を決定するレジストパターンは、レジストの塗布、プリベーク、露光、ポストエクスポージャーべーク、現像、ポストベークを順次に行うことにより製造することができる。しかしながら、各工程ともSiウェハを用いることを前提として装置が開発されているため、特にベーク時には様々な問題が発生する。
【0012】また、製造工程においてプリベークは必ず行われるが、ポストエクスポージャーべークやポストベークは、レジストの種類又はレジストパターン形成後に行う工程により選択される。通常の半導体製造工程では図13に示すように、基板1に塗布されているレジスト2を加熱するために、ホットプレート板3を用いてピンチ上に基板1を載せ基板1の裏面側から加熱する。しかし、基板1に石英を用いた場合にはSiウェハと比較すると熱伝導率も低く、基板1の板厚もSiウェハと比較すると厚い。基板1の温度がプレート板3と同じ温度に達するために要する時間は、基板1の材料の熱伝導率が小さいと、また単位面積当りの熱容量(比熱・密度・厚さ)が大きくなると長くなる。そのため、基板1の温度制御性が著しく困難となる。
【0013】即ち、光露光に用いるレクチルを考えてみても、石英基板1の熱伝導率はSiよりも2桁低く、板厚も6.35〜9mmであり、板厚1mm以下であるSiウェハよりも数10倍の時間を要する。Siウェハ上のレジストと比較すると、通常の60秒のベーク時間では、基板1がプレート板3の温度まで達することは不可能である。また、冷却にも同様の時間が要することになる。
【0014】また、熱伝導性の悪い基板とは、板厚0.725mmのSiウェハよりも温度上昇に10倍以上の時間の要するものと定義する。即ち、密度ρ、比熱c、熱伝導率λ、厚みtとすると、次の式(1)を満たす基板である。
【0015】
(ρc/λ)t2≧5.23×10-2 …(1)
従来、熱伝導性の悪い基板上におけるパターンニングは、Siウェハの量産工程と比較すると太い線幅の工程にしか応用することができない。そのため、オーブンや赤外線による加熱等の方法が用いられている。しかし、レチクル、特に位相シフトレチクル、X線反射型マスク、又はEB用マスクや、光学素子、液晶等ではSiウェハと同レベル又はそれ以上の加工精度が要求されている。特に、最近開発が進んできた化学増幅型のレジストを用いる際には酸の拡散の範囲がベークにより制御されるため、レジストの線幅とベークが密接に関係してきており、0.1℃単位の温度管理と時間管理が極めて重要となってくる。
【0016】本発明の目的は、上述の問題点を解消し、レジストパターンの線幅制御性が向上するレジストの加熱・冷却方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明に係るレジストの加熱・冷却方法は、熱伝導性の悪い基板上にパターン形成を行うため、前記基板を加熱する際に、温度調節板の温度を段階的又は連続的に変化させていくことを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明を図1〜図10に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。図1は第1の実施例における回折光学素子の製作断面図を示しており、図1(a)は直径a=200mm、厚さt=20mmの石英から成る基板11を示している。また、前述の式(1)における(ρc/λ)t2を計算すると、厚さt=20mmの石英基板においては、(ρc/λ)t2=525.3と非常に大きな値となってしまう。
【0019】本実施例においては、自重変形や鏡筒の加工精度による接触部位の不均一、固定時に加わる応力等による取付時の歪み、気圧や温度変動によって変形する量を低減するために、板厚20mmの石英基板を用いたが、Siウェハとほぼ同じ板厚の石英基板を用いてもよい。しかし、その場合においても(ρc/λ)t2=0.69となる。
【0020】先ず、微細パターンを型取るために、図1(b)に示すように光に感光する有機物である例えばKrF用化学増幅型レジストUV6(Shipley社製)のレジスト12を基板11上に塗布する。このレジスト12は加工する線幅にもよるが、サブミクロンの加工を施すためには、膜厚1μm程度の厚みに対し約5nmの制御が必要となってくる。また、レジスト12を塗布する前に、基板11からの反射を防止したり、基板11からの化学的作用を避けるために、例えばバーク材AR3(Shipley社製)を塗布した後に加熱する場合もある。その際には、更に185℃でこのベーク工程等を必要とする。
【0021】次に、図1(c)に示すように、レジスト側及び非レジスト側双方に温度調節板13を用いることによりプリベーク工程を行う。
【0022】この工程を更に詳細に説明すると、複数の温度調節板13を持つ図2に示すベーキング装置によりレジスト12の加熱及び冷却を行う。厚さ20mmの石英基板11上のレジストを135±0.1℃に加熱するために、レジスト12側の温度調節板13aは135℃に固定し、非レジスト側の温度調節板13bは180℃、温度調節板13cは150℃、温度調整板13dは140℃、温度調整板13eは135℃に保っておく。また、温度調節板13bと基板11との間隔をスペーサ14により保持し、今回は0.1mmとする。非レジスト側の温度調整板13b、13c、13d、13e上にそれぞれ、30秒、15秒、5秒、30秒の間、基板11とレジスト12側の温度調整板13aを一体として移動させる。また冷却時には、レジスト側の温度調整板13aを一体として移動させる。
【0023】上記の設定温度及びその温度調整板13b〜13e上に保持する時間は、レジスト12を塗布する基板11の材質や厚さ等の形状と、加熱又は冷却する温度によって、最適なものを選択する。勿論、この値は温度調節板13と基板11との間隔によっても変化させる必要がある。これらは計算によって、おおまかな設定温度を決め、実際に基板11の温度設定やレジストパターンの出来具合によって調整していってもよい。また、赤外線を用いた温度センサを用いて実基板の温度を測定しながら、温度調節板13の温度を調整してゆくことも可能である。
【0024】また、今回は複数の温度に設定された複数の温度調整板13上を基板11が移動することによって、温度を段階的に変化させていったが、温度調整板13の温度を連続又は断続的に変化させても支障はない。
【0025】また、これらは温度調節板13のレジスト12側、非レジスト側の双方温度を変化させることもできる。更に、温度調整板13はレジスト12側又は非レジスト側の何れかのみ配置してもよい。
【0026】熱伝導率の低い材料を基板11とする場合に、面内の温度分布が問題となる場合もある。その際に、図3(a)に示すように温度調整板13を複数個に分割し、(b)に示すように個々により細かく温度設定を行うこともできる。
【0027】また、この加熱冷却は空気中で行ってもよいが、He等の熱伝導率の高い雰囲気中において行ってもよい。レジスト12側の温度調整板13aからのレジスト12への加熱・冷却は、空間にある気体による熱伝導、気体の対流による熱対流、温度調節板13aからの幅射によるが、レジスト12と温度調節板13aの間隔が0.5mm程度では、レジスト12と温度調節板13aとの間の空間に存在する気体による熱伝導が支配的となる。また、この0.5mmの空気層における熱伝導率は、板厚1mmのSiウェハの熱伝導率とほぼ同等である。
【0028】また、レジスト12と温度調節板13aの間隔をより狭くしたい場合又はスペーサ14を介在する場所がない場合には、図1(d)に示すように温度調節板13aに検出用マーク15を設け、この検出用マーク15をレーザー測長機16等を用いて検出することにより、レジスト12と温度調節板13aとの間隔を測定することができる。なお、この間隔は図1(e)に示すようにマイクロメータ17を用いて測定してもよい。このようにして、レジスト12と温度調節板13aとの間隔を測定することにより、10μm程度の間隔まで制御可能となる。また、検出用マーク15は測定方法によっては設けなくともよい。
【0029】何れかの方法により、加熱・冷却されたレジスト12をKrFレーザー光等を用いた露光装置を用いて露光する。露光には、KrFレーザー光の他に光、紫外線、X線、EB、イオンビームを用い、レジスト12は各エネルギに対応するものを使用してもよい。
【0030】続いて再度、加熱工程であるポストエクスポージャーべーク、現像工程、ポストベークを経ることにより、図1(f)に示すように露光方法にもよるが線幅0.1〜0.5μm程度の所望の面形状を有する微細なレジストパターン18を形成することができる。これらのポストエクスポージャーべーク、ポストベークはプリベークと同様に、図1(c)〜(e)及び図2において用いた温度調節板13を用いてもよい。特に、プリベークとポストエクスポージャーべークでは高精度な温度制御性が必要である。
【0031】次に、図1(g)に示すように基板11をレジストパターン18をマスクとして薬品を用いてエッチングしたり、プラズマ等を用いるドライエッチング装置を用いて加工する。しかしながら、サブミクロンの線幅では主として高精度のドライエッチングが使用されている。
【0032】また、本実施例においては、基板11の石英を用いたが、石英の代りにアルミナ珪酸ガラス、硼珪酸ガラス、アルミナ等の酸化物、弗化カルシウム、弗化リチウム、弗化バリウム、弗化マグネシウム、弗化ストロンチウム等の弗化物、光学用プラスチック等の透光性を有する材料を用いてもよい。
【0033】図1(b)〜(g)の工程を繰り返すことにより、図1(h)に示すような階段状の形状、例えば8段の回折光学素子19を形成することができる。このような高精度の微細な回折光学素子を製造することにり、設計時の光学性能を充分に発揮することができる。
【0034】図4は第2の実施例におけるArFレーザー露光装置に用いるレチクルの製作断面図を示しており、図4(a)に示すように光露光に用いるレチクル用基板は、板厚6.35mm、6インチ角の石英透過基板21上に遮光膜としてクロム膜22が成膜されている。板厚6.35mmの基板21において、式(1)を計算すると(ρc/λ)t2=53.0と非常に大きな値となってしまう。
【0035】更に、クロム膜22上には反射防止のために酸化クロム等を積層してもよい。クロム膜22を所望のパターンに形成するため、クロム膜22上に、例えばEB用化学増幅型レジストSAL601(Shipley社製)から成るレジスト12を塗布する。通常では、光を用いた縮小露光装置ではレチクルのパターンは4〜5倍の大きさに拡大されるため、化学増幅型のレジスト12を必要とする程の微細パターンは少ないが、角パターンのOPC等の微細な形状が要求される場合には使用する必要がある。
【0036】レジスト12のベーク温度の制御性を向上させるために、150℃から105℃まで連続的に温度が調整された温度調節板13上に基板21を位置しレジスト12を加熱する。更に、冷却には0℃から23℃まで連続的に温度が調整された温度調節板13を用いる。
【0037】続いて、図4(b)に示すようにレジスト12をEB描画装置において、描画後に、ポストエクスポージャーべーク、現像、ポストベーク等を順次に行いパターニングし、そのレジストパターンをマスクとしてクロム膜32をドライエッチング又はウエットエッチングによりエッチングすることにより、所望のパターン23を形成する。本実施例においては図示しないが、位相シフトレチクル用のシフタの形成等に用いてもよい。
【0038】従って、本実施例においてはレジスト12を加熱する際に温度制御を高精度に行うことにより、線幅制御性に優れた光露光用レチクル24を形成することができる。
【0039】図5は第3の実施例におけるX線反射型マスク構造体の製作断面図を示しており、図5(a)に示すように板厚6.35mm、6インチ角のNZTE(near zero thermal expansion)基板31上にMo/Siの多層構造から成る反射基板32が積層され、更にこの反射基板32上にW膜33が積層されている。しかし、板厚10mmの基板31において、式(1)を計算すると(ρc/λ)t2=51.3と非常に大きな値となってしまう。また、W膜33を所望のパターンに形成するため、このW膜33上に例えばEB用化学増幅型レジストSAL601(Shipley社製)から成るレジスト12を塗布する。
【0040】X線反射型マスク構造体を用いる縮小X線露光では、露光される線幅は0.1μm以下と非常に微細なため、4倍程度のマスクの線幅も極めて微細な線幅が要求される。
【0041】そして、レジスト12を加熱する際の温度制御性を向上させるために、130℃、123℃、120℃に調整された温度調節板13をレジスト12に0.2mmの間隔で30秒、10秒、20秒ずつ移動させる。この間隔の制御には第1の実施例に述べたように、検出用マーク15及びレーザー測長機16等を用いてもよい。更に冷却には、13℃、20℃、23℃に調整された温度調節板13をレジスト12に0.2mmの間隔で移動させることにより行う。
【0042】続いて、図5(b)に示すように、レジスト12をEB描画装置において、描画後にポストエクスポージャーベーク、現象、ポストベーク等を順次に行いパターニングし、そのレジストパターンをマスクとしてW膜33をドライエッチング又はウエットエッチングによりエッチングすることにより、所望の非反射パターン34を形成する。
【0043】従って、本実施例においては高精度の温度制御を行うことができるため、図5(b)に示すような線幅制御性に優れたX線反射型マスク構造体35を形成することができる。
【0044】また、液晶基板を作製する際には、通常では液晶基板には板厚1mm程度の例えばW7095(コーニング社製)から成るガラスが用いられるため、熱伝導率は石英よりも低い。ただし、液晶ではあまり微細パターンは要求されていないため、オーブン等を用いたベーク方法を用いることができる。しかし、最近では低温ポリシリコン等の開発により、駆動部のICも同時に作成する等の微細化も進んでおり、このような微細パターンを必要とする加工を行う際には、温度調節板13の温度を段階的又は連続的に変化させる。
【0045】パターニングに用いるレジスト12を加熱する際に高精度の温度制御を行うことにより、線幅制御性に優れた液晶基板を形成することができる。
【0046】図6は半導体露光装置を概略図を示しており、KrF、ArF、F2エキシマレーザー等の光源41から出射した光束Lはミラー42により反射され、照明光学系43に導光された後に、第1物体であるレチクル44面上を照明する。更に、レチクル44の情報を得た光束Lは縮小投影光学系45を透過し、焦点位置を調整するウェハステージ46上に配置されているウェハ47へ投影される。
【0047】図7はこの半導体露光装置における照明光学系43又は投影光学系45の拡大断面図を示しており、これらの光学素子43、45は屈折光学素子51及び第1の実施例において製作した回折光学素子19から成る光学素子の組み合わせにより構成されている。本実施例においては回折光学素子19は1枚しか使用していないが、複数枚使用してもよい。
【0048】回折光学素子19は線幅制御性が良く、高精度に光学素子が製造されているため、理論値に近い回折効率を得ることができる。更に、従来の光学素子に比較すると剛性を十分に得ることができる。このような回折光学素子19を照明光学系53又は投影光学系45に使用することにより、自重変形や鏡筒の加工精度による接触部位の不均一、固定時に加わる応力等による歪み、気圧や温度変動による変形を最小限に止めたり又は除去することが可能となり、面変形が発生せず収差を小さくすることができ、設計時の性能を十分発揮でき、像性能を向上させることができる。
【0049】また、従来の屈折素子のみを使用した光学系と比較すると、レンズの枚数を低減することができ、これにより硝材による光吸収が低減され、吸収熱によるレンズの変形や屈折率変化を最小限にすることが可能となる。また、色収差の補正が容易なため、レーザーの波長帯域を拡げ、レーザーのパワーを有効に利用することができる。更に、半導体露光装置を設置する環境が変化した場合においても、焦点位置のずれ発生を最小限に止めることができ、結果として高精度なパターン転写を良好に行うことができる。
【0050】図8は第3の実施例において作成したX線反射型マスク構造体35を用いた半導体露光装置(X線縮小露光装置)の要部概略図であり、X線の減衰を防ぐために光学系全体を真空に保つための露光室である真空容器61内に納められている。
【0051】アンジュレータ光源62からは、細くて平行な所謂ペンシルビーム状のX線ビームXが放射される。このX線ビームXを全反射ミラー63で反射して短波長成分をカットし、ほぼ単色なX線ビームXとしてマスクステージ64に搭載された反射型マスク構造体35を照射する。反射型マスク構造体35には第3の実施例の手法を用いて所望のパターン34が形成され、このパターン34に応じてX線ビームXは反射し、投影光学系65に導かれる。更に、X線ビームXは投影光学系66を介して、ウエハステージ67に搭載されたウエハ68を照射し、反射型マスク構造体35のパターン34がウエハ68に縮小投影され、感光剤(レジスト)上に焼付けられる。
【0052】上記のようなX線縮小露光装置で露光することにより、量産に対応した高精度なX線縮小露光を行うことができた。
【0053】次に、第1の実施例において作製した回折光学素子を搭載した半導体露光装置又は第3の実施例おいて作製したX線反射型マスク構造体35を用いたX線縮小露光装置を利用した半導体デバイスの製造方法を説明する。
【0054】図9はICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル或いはCCD等の半導体デバイスの製造工程のフローチャート図を示している。先ず、ステップS1において半導体デバイスの回路設計を行い、続いてステップS2においてステップS1で設計した回路パターンをEB描画装置等を用いマスクを製造する。一方、ステップS3においてシリコン等の材料を用いてウェハを製造する。その後に、前工程と呼ばれるステップS4において、ステップS2、S3において用意したマスク及びウェハを用い、マスクを露光装置内にローディングし、マスクを搬送しマスクチャックにチャッキングする。
【0055】次に、ウェハをローディングしてアライメントのずれを検出して、ウェハステージを駆動して位置合わせを行い、アライメントが合致すると露光を行う。露光の終了後にウェハは次のショットヘステップ移動し、リソグラフィ技術によってウェハ上に回路を形成する。更に、後工程と呼ばれるステップS5において、ステップS4によって製造されたウェハを用いてダイシング、ボンディング等のアッセンブリ工程、チップ封入等のパッケージング工程を経て半導体チップ化する。チップ化された半導体デバイスは、ステップS6において動作確認テスト、耐久テスト等の検査を行う。このような一連の工程を経て半導体デバイスは完成し、ステップS7に進み出荷される。
【0056】図20は図9におけるステップS3において、ウェハ製造の詳細な製造工程のフローチャート図を示している。先ず、ステップS11においてウェハ表面を酸化させる。続いて、ステップS12においてウェハ表面をCVD法により絶縁膜を形成し、ステップS13において電極を蒸着法により形成する。更にステップS14に進みウェハにイオンを打込み、続いてステップS15においてウェハ上に感光剤を塗布する。ステップS16では、半導体露光装置によりマスクの回路パターンをウェハ上の感光剤(レジスト)上に焼付ける。
【0057】ステップS17において、ステップS16において露光したウェハ上の感光剤を現像する。更に、ステップS18でステップS17において現像したレジスト像以外の部分をエッチングする。その後に、ステップS19においてエッチングが済んで不要となったレジストを剥離する。更に、これらの一連の工程を繰り返し行うことにより、ウェハ上に多重の回路パターンを形成することができる。
【0058】なお、本実施例の製造方法を用いれば、従来は製造が難しかった高集積度の半導体デバイスの量産に対応することができる。
【0059】
【発明の効果】以上説明したように本発明に係るレジストの加熱・冷却方法は、熱伝導性の悪い基板上にレジストパターン形成を行うため、レジストを加熱冷却する際に温度調整板の温度を段階的又は連続的に変化させることにより、レジストのベークの温度管理と時間管理を高精度に制御することが可能となり、レジストパターンの線幅制御性が向上し、特に微細パターンに対応できる。
【0060】また、本実施例に係るレジストの加熱・冷却方法によれば、微細なピッチで精度良く作製された回折光学素子を搭載した半導体露光装置又は本実施例によるレチクル又はマスクを用いた露光装置による高精度なデバイス製造方法、及びデバイスを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施例における回折光学素子の製作断面図である。
【図2】ベーキング装置の概略図である。
【図3】温度調整板の概略図である。
【図4】第2の実施例におけるレチクル係る工程の製作断面図である。
【図5】第3の実施例におけるX線反射型マスク構造体の製作断面図である。
【図6】半導体露光装置の概略図である。
【図7】光学系の拡大断面図である。
【図8】X線縮小露光装置の概略図である。
【図9】半導体デバイスの製造フローチャート図である。
【図10】ウェハプロセスの詳細なフローチャート図である。
【図11】回折光学素子の斜視図である。
【図12】回折光学素子の断面図である。
【図13】従来のベーキング装置の概略図である。
【符号の説明】
11、21、31 基板
12 レジスト
13 温度調整板
14 スペーサ
15 検出用マーク
16 レーザー測長機
17 マイクロメータ
18 レジストパターン
19 回折光学素子
22 クロム膜
23 レチクル
32 反射基板
34 非反射パターン
35 X線反射型マスク構造体
【特許請求の範囲】
【請求項1】 熱伝導性の悪い基板にパターン形成を行うため、前記基板を加熱又は冷却する際に、温度調整板の温度を段階的又は連続的に変化させてゆくことを特徴とするレジストの加熱・冷却方法。
【請求項2】 前記温度調整板は、レジストを塗布された基板のレジスト側、非レジスト側、又は両面に設けている請求項1に記載のレジストの加熱・冷却方法。
【請求項3】 前記両側に設けた前記温度調整板のうちの一方は温度を固定している請求項2に記載のレジストの加熱・冷却方法。
【請求項4】 前記温度調整板と前記基板が直接接触している請求項1に記載のレジストの加熱・冷却方法。
【請求項5】 前記温度調整板と前記基板の間に一定の間隔を設けた請求項1に記載のレジストの加熱・冷却方法。
【請求項6】 前記間隔は10μm〜1mmである請求項5に記載のレジストの加熱・冷却方法。
【請求項7】 前記温度調整板は前記基板の到達温度に合わせて調整する請求項1に記載のレジストの加熱・冷却方法。
【請求項8】 前記温度調節板は分割して温度調整をすることを可能とした請求項7に記載のレジストが加熱・冷却方法。
【請求項9】 請求項1に記載のレジストの加熱・冷却方法を用いて作製したレチクル、X線反射型マスク又はEB用マスク。
【請求項10】 請求項1に記載のレジストの加熱・冷却方法を用いて作製した光学素子。
【請求項11】 請求項1に記載のレジストの加熱・冷却方法を用いて作製した液晶基板。
【請求項12】 前記レジストを塗布した前記基板の少なくとも一部が、アルミナ珪酸ガラス、硼珪酸ガラス、石英、アルミナ等の酸化物、弗化カルシウム、弗化リチウム、弗化バリウム、弗化マグネシウム、弗化ストロンチウム等の弗化物、光学用プラスチックから成る請求項1に記載のレジストの加熱・冷却方法。
【請求項13】 請求項9のレチクル又はマスクを用いて露光を行う露光装置。
【請求項14】 請求項10の光学素子を用いて光露光を行う光露光装置。
【請求項15】 請求項13又は14の何れかの露光装置を用い、露光により被転写体に所望のパターンを転写し、これを加工、形成して作製したデバイス。
【請求項16】 請求項13又は14の何れかの露光装置を用い、露光により被転写体に所望のパターンを転写し、これを加工、形成してデバイスを製造するデバイス製造方法。
【請求項1】 熱伝導性の悪い基板にパターン形成を行うため、前記基板を加熱又は冷却する際に、温度調整板の温度を段階的又は連続的に変化させてゆくことを特徴とするレジストの加熱・冷却方法。
【請求項2】 前記温度調整板は、レジストを塗布された基板のレジスト側、非レジスト側、又は両面に設けている請求項1に記載のレジストの加熱・冷却方法。
【請求項3】 前記両側に設けた前記温度調整板のうちの一方は温度を固定している請求項2に記載のレジストの加熱・冷却方法。
【請求項4】 前記温度調整板と前記基板が直接接触している請求項1に記載のレジストの加熱・冷却方法。
【請求項5】 前記温度調整板と前記基板の間に一定の間隔を設けた請求項1に記載のレジストの加熱・冷却方法。
【請求項6】 前記間隔は10μm〜1mmである請求項5に記載のレジストの加熱・冷却方法。
【請求項7】 前記温度調整板は前記基板の到達温度に合わせて調整する請求項1に記載のレジストの加熱・冷却方法。
【請求項8】 前記温度調節板は分割して温度調整をすることを可能とした請求項7に記載のレジストが加熱・冷却方法。
【請求項9】 請求項1に記載のレジストの加熱・冷却方法を用いて作製したレチクル、X線反射型マスク又はEB用マスク。
【請求項10】 請求項1に記載のレジストの加熱・冷却方法を用いて作製した光学素子。
【請求項11】 請求項1に記載のレジストの加熱・冷却方法を用いて作製した液晶基板。
【請求項12】 前記レジストを塗布した前記基板の少なくとも一部が、アルミナ珪酸ガラス、硼珪酸ガラス、石英、アルミナ等の酸化物、弗化カルシウム、弗化リチウム、弗化バリウム、弗化マグネシウム、弗化ストロンチウム等の弗化物、光学用プラスチックから成る請求項1に記載のレジストの加熱・冷却方法。
【請求項13】 請求項9のレチクル又はマスクを用いて露光を行う露光装置。
【請求項14】 請求項10の光学素子を用いて光露光を行う光露光装置。
【請求項15】 請求項13又は14の何れかの露光装置を用い、露光により被転写体に所望のパターンを転写し、これを加工、形成して作製したデバイス。
【請求項16】 請求項13又は14の何れかの露光装置を用い、露光により被転写体に所望のパターンを転写し、これを加工、形成してデバイスを製造するデバイス製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図12】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図11】
【図13】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図12】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図11】
【図13】
【図10】
【公開番号】特開2002−203770(P2002−203770A)
【公開日】平成14年7月19日(2002.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−400903(P2000−400903)
【出願日】平成12年12月28日(2000.12.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成14年7月19日(2002.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成12年12月28日(2000.12.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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