説明

レベルシフト回路、および電力変換装置

【課題】電源電圧の変動の際に、半導体装置の製造ばらつきがあったとしても、容易に誤動作しない低電圧側回路から高電圧側回路に制御信号を伝達するレベルシフト回路を提供する。
【解決手段】レベルシフト回路において、高電圧側の電源電圧変動dV/dtが回路のロジックレベルに影響を与える程度に発生した時において、この変動はセット側にもリセット側にも起こることを利用し、時定数生成回路、もしくは電源電圧変動が先に起こる個所からの信号によって、第1、第2の論理回路において、誤動作の信号が通過するのをマスクして防止する。このマスクするタイミングに充分、余裕をとることにより、半導体プロセスにおける製造ばらつきが個々の素子にあったとしても、高電圧側の電源電圧変動dV/dtが発生時の誤信号がフリップフロップに伝わるのを防止でき、誤動作しない低電圧側回路から高電圧側回路に制御信号を伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主端子間に直列接続された第1および第2電力スイッチング素子からなる少なくとも1対のアームを備えたモータ駆動装置に係り、特に低電圧側回路から高電圧側回路に制御信号を伝達するレベルシフト回路と、該レベルシフト回路機能を有する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギーのため、モータをIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体素子で制御することは、近年、半導体素子、特にIGBTの低価格化により広く利用されている。
ところで上アームと下アームを備えた電力変換装置において、構成する上アームに用いるIGBTのエミッタは出力に接続されているため、上アームIGBTは主電源接地端子に対して電位的に浮動の状態で駆動される。例えば、上アームIGBTがオン状態では主電源と同じ高電圧が加わる。このため上アームIGBTを駆動するためには、制御回路であるマイコン(Microcomputer)の低電位から高電位に信号を伝える必要がある。このように低電位からの信号で電位的に浮動な上アームに対して駆動信号を送る手段としてレベルシフト回路を使うことが、図15に示す特許文献1に述べられている。
【0003】
特許文献1のレベルシフト回路の動作について、図15を参照して概略を説明する。図15(a)において、レベルシフト回路はセット用、リセット用の高耐圧n型MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor、絶縁ゲート電界効果型トランジスタ)2個、この高耐圧n型MOSFETを駆動するワンショットパルス発生器2個、抵抗2個、パルスフィルタ、及びRSフリップフロップで構成されている。セット用の高耐圧n型MOSFETのドレインは抵抗に接続され、パルスフィルタを通りRSフリップフロップのセット側に入力されている。リセット用の高耐圧n型MOSFETのドレインは、リセット用の抵抗に接続され、パルスフィルタを通りRSフリップフロップのリセット側に入力されている。
【0004】
このレベルシフト回路は次のように動作する。入力信号に対して、立ち上がり時(入力=“L”→“H”)にセット側のワンショットパルス発生器より短期間パルスが発生する(図15(b))。なお、“L”はLow、負、または0の信号を意味する。また、“H”はHigh、正、または1の信号を意味する。
このパルスによりセット側の高耐圧n型MOSFETがオン(ON)し、電流が流れることによりセット側の抵抗両端に電圧が発生する。パルスフィルタの時定数よりワンショットパルス発生器で発生するパルスの時間を長くすれば、抵抗両端で発生した電圧によるパルスはパルスフィルタを通過し、RSフリップフロップをセットして出力がオンとなる。立下り時(入力=“H”→“L”)はリセット側のワンショットパルス発生器より短期間パルスが発生し(図15(b))、リセット側の抵抗両端に電圧が発生し、RSフリップフロップをリセットして出力がオフ(OFF)となる。
【0005】
1つの高耐圧n型MOSFETで信号伝達を行う場合、上アームがオンしている状態では、高電圧が加わった状態で高耐圧n型MOSFETがオンしなければならず非常に大きな損失が発生する。入力信号をセット、リセット2つの信号に分解し、RSフリップフロップで復調することで、高耐圧n型MOSFETがオンする時間を短くし損失を低減している。
【0006】
また、特許文献2においては、前記の問題を解決する手段として、論理回路を用いた方法を示している。図16を参照して、その動作の概略を説明する。セット用、リセット用の高耐圧n型MOSFET2個、高耐圧n型MOSFET個を駆動するワンショットパルス発生器2個、抵抗2個の構成は図15と同じである。セット側高耐圧n型MOSFETのドレインはインバータ回路(NOT回路、反転回路)を通じてセット側のNAND回路に入力され、さらにリセット側のNAND回路に入力されている。リセット側高耐圧n型MOSFETのドレインは、インバータ回路を通じてリセット側のNAND(非論理積)回路に入力され、さらにセット側のNAND回路に入力されている。
【0007】
この構成により、通常動作時は、例えばセットの場合、セット側の抵抗のみ電圧降下が発生するので、インバータ回路で反転され、“H”となる。リセット側には電圧降下が発生していないので、“H”であり、セット信号がRSフリップフロップに伝わる。なお、高圧側の電源に電源電圧変動(dV/dt、V→V+ΔV)が発生した際は、セット、リセット両方に電圧降下が発生するため、例えばセット側のNAND回路はセット側の抵抗に接続された側は“H”となり、リセット側に接続された場合は“L”となるため、誤信号がフリップフロップに伝わらず、正常な動作を保つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3092862号公報
【特許文献2】特許第3635975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、IGBTがオン、オフするときには上下アームアース間の電圧が変化する。この電圧(電源電圧)の時間変化dV/dtによりレベルシフト回路の高耐圧n型MOSFETのソース、ドレイン間の寄生静電容量Cdsには前記電源電圧変動(dV/dt)において、(dV/dt)×Cdsの電流が流れる。この電流によりレベルシフト回路の抵抗に電圧が発生し、この電圧が大きい場合には誤オンあるいは誤オフを引き起こす。
【0010】
前記の特許文献1ではパルスフィルタにより電源電圧変動(dV/dt)が発生する誤信号をフィルタしている(図15(a))。しかしながら、システムによって発生する電圧はまちまちであり、パルスフィルタの時定数を適切に設計することが難しいという問題があった。すなわち、フィルタの時定数を長くするとワンショットパルス発生器により高耐圧n型MOSFETをオンする期間を長くする必要があり、損失が増加する。反対にフィルタの時定数が短すぎると電圧変動(dV/dt)による誤信号がパルスフィルタを通過し、誤オンあるいは誤オフを引き起こしてしまうという問題がある。
【0011】
また、特許文献2では、電源電圧変動(dV/dt)の際において、MOSFETの寄生静電容量Cdsに蓄えられた電荷は抵抗を通って流れる。このとき、流れる電流は時間ととともに減少していくが、この抵抗の抵抗値が大きいほど論理回路の閾値を超えている時間が長くなる。また、半導体集積回路でも製造上のばらつきがあって、セット、リセット抵抗の値をまったく同じにはできない。このため、例えばセット側が製造ばらつきで抵抗値が大きくなった場合、セット側のインバータ回路の出力が“H”となっている時間が、リセット側の“L”となっている時間より長くなり、セット側のNAND出力が誤信号を発生させ誤オンを引き起こす可能性がある(図16)。
【0012】
そこで、本発明はこのような問題点を解決するもので、その目的とするところは、電源電圧の変動の際においても、容易に誤動作しないレベルシフト回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題を解決して、本発明の目的を達成するために、以下のように構成した。
すなわち、低電圧直流電源を電源とする低電圧側回路から高電圧直流電源を電源とする高電圧側回路に制御信号を伝達するレベルシフト回路であって、前記低電圧直流電源を電源として、入力信号の立ち上がりと立下りでそれぞれセット信号パルスとリセット信号パルスとを生成するワンショットパルス発生器と、前記高電圧直流電源の低電位端子に第1端子を接続され、前記セット信号パルスを入力する第1の半導体スイッチング素子と、前記高電圧直流電源の低電位端子に第1端子を接続され、前記リセット信号パルスを入力する第2の半導体スイッチング素子と、前記高電圧直流電源の高電位端子と、前記第1の半導体スイッチング素子の第2端子との間に接続された第1の抵抗と、前記高電圧直流電源の高電位端子と、前記第2の半導体スイッチング素子の第2端子との間に接続された第2の抵抗と、前記第1の半導体スイッチング素子の第2端子と前記第1の抵抗の接続点を入力端子に接続した第1の時定数生成回路と、前記第2の半導体スイッチング素子の第2端子と前記第2の抵抗の接続点を入力端子に接続した第2の時定数生成回路と、前記第2の半導体スイッチング素子の第2端子と前記第2の抵抗の接続点を入力端子に接続した第3の時定数生成回路と、前記第1の半導体スイッチング素子の第2端子と前記第1の抵抗の接続点を入力端子に接続した第4の時定数生成回路と、前記高電圧直流電源を電源として、前記第1の時定数生成回路の出力端子と前記第2の時定数生成回路の出力端子とを、それぞれ第1入力端子と第2入力端子に接続し、かつセット信号を出力する第1の論理回路と、前記高電圧直流電源を電源として、前記第3の時定数生成回路の出力端子と前記第4の時定数生成回路の出力端子とを、それぞれ第1入力端子と第2入力端子に接続し、かつリセット信号を出力する第2の論理回路と、前記高電圧直流電源を電源として、前記第1の論理回路の出力のセット信号と、前記第2の論理回路の出力のリセット信号とを、それぞれ入力し、駆動信号を出力するフリップフロップ回路と、を備えた。
【0014】
かかる構成により、レベルシフト回路において、高電圧側の電源電圧変動(dV/dt)が発生した時は該電圧変動の影響を前記第1(第3)の時定数生成回路と第2(第4)の時定数生成回路を通して前記第1(第2)の論理回路で論理処理を行うので、電源電圧変動(dV/dt)による誤信号をマスク処理できて、誤動作を防止できる。
【発明の効果】
【0015】
以上、本発明によれば、電源電圧の変動の際においても、容易に誤動作しないレベルシフト回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のレベルシフト回路の第1実施形態の構成を示す回路図である。
【図2】本発明のレベルシフト回路に用いるワンショットパルス発生回路の構成例を示す回路図である。
【図3】本発明のレベルシフト回路に用いる時定数生成回路の構成例を示す回路図である。
【図4A】本発明のレベルシフト回路の第1実施形態において第1例の電源電圧変動があった場合の時定数生成回路の動作を示すタイムチャートである。
【図4B】本発明のレベルシフト回路の第1実施形態において第2例の電源電圧変動があった場合の時定数生成回路の動作を示すタイムチャートである。
【図5】本発明のレベルシフト回路に用いるフリップフロップ回路の構成例を示す回路図である。
【図6】本発明のレベルシフト回路の第2実施形態の構成を示す回路図である。
【図7】本発明のレベルシフト回路の第2実施形態において第1例の電源電圧変動があった場合の論理回路の動作を示すタイムチャートである。
【図8】本発明のレベルシフト回路の第3実施形態の構成を示す回路図である。
【図9】本発明のレベルシフト回路の第3実施形態において第1例の電源電圧変動があった場合の時定数生成回路の動作を示すタイムチャートである。
【図10】本発明のレベルシフト回路の第4実施形態の構成を示す回路図である。
【図11】本発明のレベルシフト回路に用いる時定数生成回路の他の構成例を示す回路図である。
【図12】本発明のレベルシフト回路の第5実施形態の構成を示す回路図である。
【図13】本発明のレベルシフト回路に用いるフリップフロップ回路の他の構成例を示す回路図である。
【図14】本発明の電力変換装置の構成を示す回路図である。
【図15】従来のレベルシフト回路の第1の構成例を示す回路図(a)と信号のタイムチャート(b)である。
【図16】従来のレベルシフト回路の第2の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
(レベルシフト回路の第1実施形態)
まず、図1を参照して、本発明のレベルシフト回路の第1実施形態の回路構成の概要を述べ、その後、より詳しい回路構成や、動作について説明をする。
【0018】
<回路構成の概要>
図1に本発明のレベルシフト回路の第1実施形態の回路構成を示す。図1のレベルシフト回路11は、低電圧直流電源(不図示)と高電圧直流電源(VB)163とによって動作する。高電圧直流電源の一端は低電位端子である下アームアース160であり、他端は高電圧直流電源の高電位端子161である。なお、アースとしては前記した下アームアース160と異なる上アームアース162があり、前記した高電圧直流電源163は上アームアース162と高電圧直流電源の高電位端子161との間に高電圧の直流電源を供給している。下アームアース160と上アームアース162は共にアースではあるが、それぞれに帰属する回路が互いに影響が受け難いようにアースを分けている。
【0019】
図1において、レベルシフト回路11の入力信号144は、入力信号の変化時に“H”パルスを発生するワンショットパルス発生器140に入力している。ワンショットパルス発生器140は、入力信号144を受けて信号の立ち上がり時に“H”パルスを発生するワンショットパルス発生回路141と、入力信号144を入力するインバータ回路143と、このインバータ回路143の出力を入力する信号の立ち上がり時に“H”パルスを発生するワンショットパルス発生回路142と、から構成されている。入力信号144の立ち上がり時はワンショットパルス発生回路141から“H”パルスが出力され、インバータ回路143とワンショットパルス発生回路142の組み合わせにより、入力信号144の立ち下がり時にワンショットパルス発生回路142から“H”パルスが出力される。
なお、以上の入力信号144、ワンショットパルス発生回路141、142、及び、インバータ回路143は低電圧直流電源によって駆動される信号と回路である。
また、ワンショットパルス発生回路141、142の具体的な回路構成は後記する。
【0020】
また、RS(リセット、セット)型のフリップフロップ回路130のセット側の信号を生成することになる高耐圧n型MOSFET101(第1の半導体スイッチング素子)、及びリセット側の信号を生成することになる高耐圧n型MOSFET102(第2の半導体スイッチング素子)のソースは両方とも下アームアース160に接地されている。高耐圧n型MOSFET101のゲート入力には前記したワンショットパルス発生回路141の出力が接続されている。また、高耐圧n型MOSFET102のゲート入力には前記したワンショットパルス発生回路142の出力が接続されている。
セット側の高耐圧n型MOSFET101のドレインは抵抗111の一端に接続されている(接続点(B)181)。リセット側の高耐圧n型MOSFET102のドレインは抵抗112の一端に接続されている(接続点(E)182)。抵抗111及び抵抗112の他端は高電圧直流電源の高電位端子(A、D)161に接続されている。
なお、高耐圧n型MOSFET101と高耐圧n型MOSFET102は同一のデバイスで構成され、ほぼ同一の電気的特性を有している。
また、抵抗111と抵抗112は、ほぼ同一の抵抗値を有している。
【0021】
時定数生成回路151と時定数生成回路154のそれぞれの入力端子は、セット側の高耐圧n型MOSFET101のドレインと抵抗111の接続点181に共に接続されている。時定数生成回路152と時定数生成回路153のそれぞれの入力端子は、リセット側の高耐圧n型MOSFET102のドレインと抵抗112の接続点182に共に接続されている。
時定数生成回路151と時定数生成回路153は同一の回路で構成され、ほぼ同一の特性を有している。時定数生成回路152と時定数生成回路154は同一の回路で構成され、ほぼ同一の特性を有している。
なお、時定数生成回路151、153及び、時定数生成回路152、154の具体的な回路構成は後記する。
【0022】
第1の論理回路121はNAND(非論理積)回路123とインバータ回路125で構成されている。インバータ回路125の入力端子は前記した時定数生成回路151の出力端子が接続され、インバータ回路125の出力端子はNAND回路123の第1入力ゲートに接続されている。NAND回路123の第2入力ゲートには前記した時定数生成回路152の出力端子が接続されている。
第2の論理回路122はNAND回路124とインバータ回路126で構成されている。インバータ回路126の入力端子は前記した時定数生成回路153の出力端子が接続され、インバータ回路126の出力端子はNAND回路124の第1入力ゲートに接続されている。NAND回路124の第2入力ゲートには前記した時定数生成回路152出力端子が接続されている。
【0023】
RS型のフリップフロップ回路130のセット端子Sには、前記した第1の論理回路121の出力端子であるNAND回路123の出力端子が接続されている。なお、セット端子Sは“L”で動作する。したがって、セット端子Sに下付きのLを表示して表している。
フリップフロップ回路130のリセット端子Rには、前記した第2の論理回路122の出力端子であるNAND回路124の出力端子が接続されている。なお、リセット端子Rは“L”で動作する。したがって、リセット端子Rに下付きのLを表示して表している。
フリップフロップ回路130の出力端子(Q)131には、高電圧側電源での出力信号が得られる。
【0024】
なお、以上の時定数生成回路151、152、153、154、インバータ回路125、126、NAND回路123、124、及びフリップフロップ回路130は高電圧直流電源の下で動作する。
【0025】
また、ツェナーダイオード171、172はそれぞれ抵抗111、112の両端に接続されている。高電圧直流電源の高電位端子161はアームを備えたモータ駆動装置にも接続されているので、電圧変動が大きい。ツェナーダイオード171、172は高電圧直流電源の高電位端子161が変動した場合において、高耐圧n型MOSFET101、102、抵抗111、112あるいは時定数生成回路151、152、153、154の入力部の耐圧を超え、破壊するのを防止している。
【0026】
<ワンショットパルス発生回路>
前述したワンショットパルス発生装置140における、ワンショットパルス発生回路141の具体的な回路について、図2を参照して、以下に説明する。
図2において、ワンショットパルス発生回路141の入力端子206はNAND回路201の第1入力ゲートとインバータ回路203の入力端子に接続されている。インバータ回路203の出力端子はインバータ回路204の入力端子に接続されている。インバータ回路204の出力端子はインバータ回路205の入力端子に接続されている。インバータ回路205の出力端子はNAND回路201の第2入力ゲートに接続されている。NAND回路201の出力端子はインバータ回路202の入力端子に接続されている。インバータ回路202の出力端子207はワンショットパルス発生回路141の出力端子207となっている。
なお、直列に接続されたインバータ回路203、204、205の最初のインバータ回路203入力から最後のインバータ回路205の出力までの総計の遅延時間をtPWとする。
【0027】
以上の回路構成において、直列に接続されたインバータ回路203、204、205の段数は奇数個であるので、ワンショットパルス発生回路141の入力端子206の入力信号が“H”でも、“L”でも静的であれば、NAND回路201の第1、第2入力ゲートのどちらかが、“L”であるので、NAND回路201の出力は“H”であり、インバータ回路202の出力(出力端子207)、つまりワンショットパルス発生回路141の出力(出力端子207)は“L”である。
【0028】
ただし、動的な動作においては、この限りではない。つまり、ワンショットパルス発生回路141の入力端子206の入力信号が“L”であると、インバータ回路205の出力は“H”である。このとき、入力端子206の入力信号が“H”に変わると、直列に接続されたインバータ回路203、204、205の総計の遅延時間tPWが経つまではインバータ回路205の出力は“H”のままである。したがって、時間tPWが経つまではNAND回路201の出力は“L”でインバータ回路202の出力、つまりワンショットパルス発生回路141の出力は“H”となる。
以上により、ワンショットパルス発生回路141は入力端子206の入力信号が“L”から“H”に変化するときのみ、その立ち上がり時点において、パルス幅tPWのパルスを発生する回路となっている。
【0029】
<時定数生成回路>
前述した時定数生成回路151〜154の回路構成を図3に示す。ただし、時定数生成回路151(153)と時定数生成回路152(154)では、求める役目が異なるので、回路構成が異なる。時定数生成回路151(153)に用いる回路構成を図3(a)に示す。また、時定数生成回路152(154)に用いる回路構成を図3(b)に示す。これらについて、以下に順に説明する。
【0030】
<時定数生成回路151、153>
図3(a)は時定数生成回路151(153)に用いる回路構成である。図3(a)において、時定数生成回路151の入力端子316はNOR(非論理和)回路311の第1入力ゲートと抵抗313の一端に接続されている。抵抗313の他端はコンデンサ314の一端とNOR回路311の第2入力ゲートに接続されている。NOR回路311の出力端子はインバータ回路312の入力端子に接続されている。インバータ回路312の出力端子は時定数生成回路151の出力端子317となっている。
なお、コンデンサ314の他端はアース(下アームアース160(図1))に接続されている。
【0031】
以上の回路構成において、時定数生成回路151の入力端子316が“L”から“H”へ変化した場合には、“H”の信号は直ちにNOR回路311の第1入力ゲートに伝わって、NOR回路311の出力を“L”にして、インバータ回路312の出力端子である時定数生成回路151の出力を殆ど遅延時間無しに“H”を出力する。つまり、信号“H”が伝達されたことになる。
【0032】
一方、時定数生成回路151の入力端子316が“H”から“L”へ変化した場合には、コンデンサ314には前状態での“H”に相当する電荷、および電圧が残っていて、NOR回路311の第2入力ゲートでNOR回路311の出力を“L”にしているために、第1入力ゲートが“L”になったとしてもNOR回路311の出力は直ぐには変化しない。したがって、インバータ回路312の出力端子である時定数生成回路151の出力は“H”の状態を保っている。時定数生成回路151の出力が変化するのは、抵抗313とコンデンサ314によるRC(CR)回路の時定数tに相当する時間が経って、コンデンサ314の電荷、および電圧が減少して、コンデンサからの出力の電位が“L”となってからである。このとき、NOR回路311の第2入力ゲートが“L”になり、NOR回路311の第1、第2入力ゲートが共に“L”となって、NOR回路311の出力は“H”となり、インバータ回路312の出力端子である時定数生成回路151の出力は“L”となる。したがって、信号“L”が伝達されたことになる。
【0033】
以上により、図3(a)の時定数生成回路151は入力端子316の信号が“L”から“H”へ変化した場合には、入力信号“H”を出力信号“H”として直ちに伝達するが、入力端子316の信号が“H”から“L”へ変化した場合には、前記時定数tに相当する時間が経ってから出力信号に“L”として伝達する。このように、信号の変化が立ち上がり(速い)か、立下り(遅い)かによって信号伝達の遅延時間が異なる。
なお、「殆ど遅延時間無しに」、あるいは「直ちに伝達する」という意味は、時定数生成回路151に遅延時間を生成するために備えた抵抗313とコンデンサ314によるRC(CR)回路の時定数tに比較すれば、充分に無視できるほどの短い時間であるということである。
【0034】
<時定数生成回路152、154>
図3(b)は時定数生成回路152(154)に用いる回路構成である。図3(b)において、時定数生成回路152の入力端子326はNAND回路321の第1入力ゲートと抵抗323の一端に接続されている。抵抗323の他端はコンデンサ324の一端とNAND回路321の第2入力ゲートに接続されている。NAND回路321の出力端子はインバータ回路322の入力端子に接続されている。インバータ回路322の出力端子は時定数生成回路152の出力端子327となっている。
なお、コンデンサ324の他端はアース(下アームアース160(図1))に接続されている。
【0035】
以上の構成において、時定数生成回路152の入力端子326の信号が“H”から“L”へ変化した場合には、“L”の信号は直ちにNAND回路321の第1入力ゲートに伝わって、NAND回路321の出力を“H”にして、インバータ回路322の出力端子である時定数生成回路152の出力を殆ど遅延時間無しに“L”を出力する。つまり、信号“L”が伝達されたことになる。
【0036】
一方、時定数生成回路152の入力端子326の信号が“L”から“H”へ変化した場合には、コンデンサ324には前状態での“L”に相当する電荷、および電圧が残っていて、NAND回路321の第2入力ゲートでNAND回路321の出力を“H”にしているために、第1入力ゲートが“H”になったとしてもNAND回路321の出力は直ぐには変化しない。したがって、インバータ回路322の出力端子である時定数生成回路152の出力は“L”の状態を保っている。
【0037】
時定数生成回路152の出力が変化するのは、抵抗323とコンデンサ324によるRC(CR)回路の時定数tに相当する時間が経って、コンデンサ324の電荷、および電圧が増加して、コンデンサからの出力の電位が“H”となってからである。このとき、NAND回路321の第2入力ゲートが“H”になり、NAND回路321の第1、第2入力ゲートが共に“H”となって、NAND回路321の出力は“L”となり、インバータ回路322の出力端子である時定数生成回路152の出力は“H”となる。したがって、信号“H”が伝達されたことになる。
【0038】
以上により、図3(a)の時定数生成回路152は入力端子326の信号が“H”から“L”へ変化した場合には、入力信号“L”を出力信号“L”として直ちに伝達するが、入力端子316が“L”から“H”へ変化した場合には、前記時定数tに相当する時間が経ってから出力信号に“H”として伝達する。このように、信号の変化が立ち上がり(遅い)か、立下り(速い)かによって信号伝達の遅延時間が異なる。
なお、「殆ど遅延時間無しに」、あるいは「直ちに伝達する」という意味は、時定数生成回路152に遅延時間を生成するために備えた抵抗323とコンデンサ324によるRC(CR)回路の時定数tに比較すれば、充分に無視できるほどの短い時間であるということである。
【0039】
<フリップフロップ回路>
前述したフリップフロップ回路130の具体的な回路構成について、図5を参照して、以下に説明する。
図5において、NAND回路511の出力端子はNAND回路512の第1入力ゲートに接続されている。NAND回路512の出力端子はNAND回路511の第2入力ゲートに接続されている。NAND回路511の第1入力ゲートはRS型のフリップフロップ回路としてのセット端子(S)515となっている。NAND回路512の第2入力ゲートはRSフリップフロップとしてのリセット端子(R)516となっている。NAND回路511の出力端子はフリップフロップ回路130の出力端子(Q)514となっている。なお、セット端子(S)515とリセット端子(R)516は“L”信号によって動作する。したがって、セット端子(S)515とリセット端子(R)516の記号にはLが下付けで添えて表現している。
【0040】
<第1実施形態の回路動作(通常動作)>
第1実施形態の動作について説明する。まず、レベルシフト回路11としての通常動作について述べる。
図1において、通常動作の場合、レベルシフト回路11の入力信号144が“L”から“H”になるとワンショットパルス発生器140の中のワンショットパルス回路141の出力にパルス幅tPWの“H”のパルスが発生する。これにより、セット側の高耐圧n型MOSFET101が正のパルスの区間だけ、オンし、抵抗111に電圧降下が発生する。つまり接続点181の電圧が下がり“L”の状態となる。
【0041】
接続点181は時定数生成回路151に入力しているが、前記したように時定数生成回路151は時定数tの遅延時間を経過した後に、第1の論理回路121の第1の入力端子であるインバータ回路125に入力する。このとき、tPW>tであれば、インバータ回路125は“H”の信号をNAND回路123の第1入力ゲートに伝達する。このとき、NAND回路123の第2入力ゲートには、“H”の信号が接続点182から時定数生成回路152を通って与えられているので、NAND回路123の出力は“L”となる。そして、フリップフロップ回路130の“L”信号で動作するセット端子(S)にこのNAND回路123の出力の“L”が入力するので、フリップフロップ回路130の出力131は“H”となる。
【0042】
なお、フリップフロップ回路130の具体的な構造は前記したように、図5の回路図のようにNAND回路511とNAND回路512によるラッチ回路を構成している。したがって、セット端子(S)515に“L”信号が入力することによって、NAND回路511の出力(Q)514が“H”となる。NAND回路511の出力514はNAND回路512の第1入力ゲートに入力し、NAND回路512の第2入力ゲートはリセット端子(R)516であって“H”の状態であるので、NAND回路512の出力は“L”となって、NAND回路511の出力514を“H”に保つ。したがって、セット端子(S)515にはパルス状(パルス幅は概ねtPW)の“L”信号であって、そのパルスが消えて“H”に戻ったとしても、NAND回路511の出力(Q)514は“H”に保たれる。また、このNAND回路511の出力(Q)514はフリップフロップ回路130の出力端子(Q)131(図1)と同一の出力端子である。
【0043】
以上により、レベルシフト回路11の入力信号144が“L”から“H”になると、パルス状(パルス幅は概ねtPW)の信号によって、セット側の高耐圧n型MOSFET101、時定数生成回路151、第1の論理回路121が動作し、フリップフロップ回路130から“H”の信号が出力され、かつ“H”の状態に保たれる。以上の動作の過程において、セット側の高耐圧n型MOSFET101はパルス状(パルス幅は概ねtPW)の信号によって動作するので、消費する電力が少ない。
【0044】
次に、レベルシフト回路11の入力信号144が“H”から“L”になるとワンショットパルス発生器140の中のインバータ回路143で反転した信号がワンショットパルス回路142に入力して、出力にパルス幅tPWの“H”のパルスが発生する。これにより、リセット側の高耐圧n型MOSFET102が“H”のパルスの区間だけ、オンし、抵抗112に電圧降下が発生する。
【0045】
つまり接続点182の電圧が下がり“L”の状態となる。接続点182は時定数生成回路153に入力しているが、前記したように時定数生成回路152は時定数tの遅延時間を経過した後に、第2の論理回路122の第1の入力端子であるインバータ回路126に入力する。このとき、tPW>tであれば、インバータ回路126は“H”の信号をNAND回路124の第1入力ゲートに伝達する。このとき、NAND回路124の第2入力ゲートには、“H”の信号が接続点181から時定数生成回路154を通って与えられているので、NAND回路124の出力は“L”となる。そして、フリップフロップ回路130の“L”信号で動作するリセット端子(R)にこのNAND回路124の出力の“L”が入力するので、フリップフロップ回路130の出力131は“L”となる。
【0046】
なお、フリップフロップ回路130の具体的な構造は前記したように、図5の回路図のようにNAND回路511とNAND回路512によるラッチ回路を構成している。したがって、リセット端子(R)516に“L”信号が入力することによって、NAND回路512の出力が“H”となる。セット端子(S)515は“H”の状態であるので、NAND回路511の出力(Q)514は“L”となる。つまり、フリップフロップ回路130の出力(Q)131は“L”となる。
なお、NAND回路511の出力514はNAND回路512の第1入力ゲートに入力しているので、出力514は“L”により、NAND回路512の出力を“H”に保つ。したがって、リセット端子(R)516にはパルス状(パルス幅は概ねtPW)の“L”信号であって、そのパルスが消えて“H”に戻ったとしても、NAND回路512の出力は“H”に保たれる。よって、セット端子(S)515が“H”である限りはNAND回路511の出力(Q)514は“L”に保たれる。
【0047】
以上により、レベルシフト回路11の入力信号144が“H”から“L”になると、パルス状(パルス幅は概ねtPW)の信号によって、リセット側の高耐圧n型MOSFET102、時定数生成回路153、第2の論理回路122が動作し、フリップフロップ回路130から“L”の信号が出力され、かつ“L”の状態に保たれる。以上の動作の過程において、リセット側の高耐圧n型MOSFET102はパルス状(パルス幅は概ねtPW)の信号によって動作するので、消費する電力が少ない。
【0048】
<第1実施形態の電源変動時の動作>
第1実施形態の動作については以上に説明した通りであるが、本発明はアームを備えたモータ駆動装置のレベルシフト回路を想定しているので、モータのリアクタンスの影響による電源電圧変動においても誤動作が起きないように対処するとさらによい。
次に、図1において、上下アームアース間(上アームアース162と下アームアース160との間)に電圧変化dV/dt(電源電圧変動)が発生した時の動作について説明する。電源電圧変動が発生した場合、高耐圧n型MOSFET101、102には寄生静電容量があるので、抵抗111及び抵抗112の両方に電圧降下が発生する。このときの回路動作について、図4A、図4Bを参照して説明する。
【0049】
図4Aは電源電圧が上昇した場合(V→V+ΔV)を示している。なお、図4Aにおいて、横軸は経過する時間である。このとき、抵抗111及び抵抗112の両方に電圧降下が発生し、図1のB−A間(B181−A161間)と、E−D間(E182−D161間)に電位差が発生する。この電位差は時定数生成回路151、152、153、154を含めた高電圧直流電源を用いる高電圧側回路のロジックの閾値(ロジックレベル、VTH)を超してしまうことがある。図4AにおいてはB−A間(E−D間も同様)の電圧が変動して、VBAから−ΔVBA下がり、前記ロジックの閾値であるVTHを超してしまった場合の様子を示している。このとき、前記ロジックの閾値であるVTHを超したか否かという観点から模式的に簡単に表現したのが、図4AのVLB、VLEで表した項の波形である。つまり、電圧降下がVTHより少ない範囲ではVLB、VLEは“H”とし、電圧降下がVTHより大きい範囲ではVLB、VLEは“L”としている。
【0050】
また、電源電圧が上昇したままの場合にも高耐圧n型MOSFET101、102の寄生静電容量には、電圧変動に応じた電荷が蓄積されると電流はそれ以上流れなくなるので、やがてB−A間(B181−A161間)、及びE−D間(E182−D161間)の電位差は減少していく。この過程において、電圧降下が再びVTHより小さくなる。
このとき、時定数生成回路151では前記したように“L”の変化においては、入力からtを経過後に出力が動作し、“H”の変化においては、入力から直ちに出力が動作する。したがって、この電圧変化に対して、時定数生成回路151(153)tを経過後に出力が動作する。また、時定数生成回路152は直ちに動作する。
【0051】
したがって、時定数生成回路151(153)の出力波形は図4AのVt1の項の動作波形となる。また、時定数生成回路152では前記したように“L”の変化においては、入力から直ちに出力が動作し、“H”の変化においては、入力からtを経過後に出力が動作する。したがって、時定数生成回路152(154)の出力波形は図4AのVt2の項の動作波形となる。
【0052】
電源電圧が上昇し、高電圧側回路のロジックの閾値(ロジックレベル、VTH)を超してしまう場合において、この影響は図1のB点181にも、E点182も起こる。これらがB点181とE点182に同時に起こったとすると、これは電圧降下であるので、高電圧側回路のロジックの閾値VTHを基準にしてロジック動作を判断すれば、ともに“L”が入力されたと同等である。セット側の信号に関連する動作として、B点181に接続された時定数生成回路151の出力波形は入力からtを経過後に出力が動作する。また、E点182に接続された時定数生成回路153の出力波形は入力から直ちに出力が動作する。
【0053】
また、電源電圧が上昇したままであっても、やがてB−A間(B181−A161間)、及びE−D間(E182−D161間)の電位差は減少していく。この過程において、電圧降下が再びVTHより小さくなり、閾値VTHが“H”と同等となった場合においては、B点181に接続された時定数生成回路151の出力波形は入力から直ちに出力が動作する。また、E点182に接続された時定数生成回路153の出力波形は入力からtを経過後に出力が動作する。
【0054】
以上の動作状況の波形が図4AのVt1の項とVt2の項で示している。このVt1の波形とVt2の波形を比較すれば、時定数生成回路151が“L”となる区間の前後において、時定数生成回路152が先に“L”となり、後に“H”となる区間を形成している。したがって、電源電圧が変動することによる時定数生成回路151が“L”となって、第1の論理回路121に誤った信号を入力する直前と直後に時定数生成回路152が“L”となっていて、マスクをしたことに相当し、第1の論理回路121が誤った信号を出力することを防止する。これにより、電源電圧変動により、誤ったセット信号を出力することを防止している。
【0055】
また、リセット側の信号に関連する動作についても同様で、E点182に接続された時定数生成回路153の出力波形と、B点181に接続された時定数生成回路154の出力波形の関係において、時定数生成回路153が“L”となる区間の前後において、時定数生成回路154が先に“L”となり、後に“H”となる区間を形成している。これにより、第2の論理回路122に誤った信号を入力する直前と直後に時定数生成回路154が“L”となっていて、マスクをしたことに相当し、第2の論理回路122が誤った信号を出力することを防止する。これにより、電源電圧変動により、誤ったリセット信号を出力することを防止している。
【0056】
以上は、電源電圧が上昇する場合についてであったが、上昇と下降が繰り返された場合を図4Bに示す。
図4Bにおいては、一度上昇した電源電圧が再び降下した場合を示している。電源電圧が上昇し、高電圧側回路のロジックの閾値VTHを超し、B−A間(B181−A161間)、及びE−D間(E182−D161間)の電位差があまり元に戻らない内に、電源電圧が急に戻った場合を示している。このときの、電源電圧(上下アームアース間電圧)と、B−A間、及びE−D間の電位差は図示した通りで、B−A間、及びE−D間の電位差は図4Aに比較して、早く戻ることにはなるが、それに対する、VLB、VLE、Vt1、Vt2の動作は図4Aの場合と本質的な差はない。したがって、高電圧側回路のロジックの閾値VTHを超すような電源電圧変動があったとしてもセット側、及びリセット側の信号においても誤動作を防止できる。
【0057】
(レベルシフト回路の第2実施形態)
図6に本発明のレベルシフト回路の第2実施形態を示す。まず回路構成の概要について述べ、その後、動作について説明する。なお、第1実施形態と共通する要素には同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0058】
<回路構成の概要>
図6のレベルシフト回路12は、低電圧直流電源(不図示)と高電圧直流電源(VB)163とによって動作する。高電圧直流電源の一端は低電位端子である下アームアース160であり、他端は高電圧直流電源の高電位端子161である。なお、アースとしては前記した下アームアース160と異なる上アームアース162があり、前記した高電圧直流電源163は上アームアース162と高電圧直流電源の高電位端子161に高電圧の直流電源を供給している。下アームアース160と上アームアース162は共にアースではあるが、それぞれに帰属する回路が互いに影響が受け難いようにアースを分けている。
【0059】
図6において、レベルシフト回路12の入力信号144は、入力信号の変化時に“H”パルスを発生するワンショットパルス発生器140に入力している。ワンショットパルス発生器140は、入力信号144を受けて信号の立ち上がり時に“H”パルスを発生するワンショットパルス発生回路141と、入力信号144を入力するインバータ回路143と、このインバータ回路143の出力を入力する信号の立ち上がり時に“H”パルスを発生するワンショットパルス発生回路142と、から構成されている。入力信号144の立ち上がり時はワンショットパルス発生回路141から“H”パルスが出力され、インバータ回路143とワンショットパルス発生回路142の組み合わせにより、入力信号144の立ち下がり時にワンショットパルス発生回路142から“H”パルスが出力される。
なお、以上の入力信号144、ワンショットパルス発生回路141、142、及び、インバータ回路143は低電圧直流電源による信号と回路である。
【0060】
また、RS型のフリップフロップ回路130のセット側の信号を生成することになる高耐圧n型MOSFET101(第1の半導体スイッチング素子)、及びリセット側の信号を生成することになる高耐圧n型MOSFET102(第2の半導体スイッチング素子)のソースは両方とも下アームアース160に接地されている。高耐圧n型MOSFET101のゲート入力には前記したワンショットパルス発生回路141の出力が接続されている。また、高耐圧n型MOSFET102のゲート入力には前記したワンショットパルス発生回路142の出力が接続されている。
【0061】
セット側の高耐圧n型MOSFET101のドレインは抵抗113の一端に接続されている(接続点(C)183)。抵抗113の他端は抵抗111の一端に接続されている(接続点(B)181)。抵抗111の他端は高電圧直流電源の高電位端子(A)161に接続されている。
リセット側の高耐圧n型MOSFET102のドレインは抵抗114の一端に接続されている(接続点(F)184)。抵抗114の他端は抵抗112の一端に接続されている(接続点(E)182)。抵抗112の他端は高電圧直流電源の高電位端子(D)161に接続されている。
【0062】
なお、高耐圧n型MOSFET101と高耐圧n型MOSFET102は同一のデバイスで構成され、ほぼ同一の特性を有している。
また、抵抗111と抵抗112は、ほぼ同一の抵抗値を有している。また、抵抗113と抵抗114は、ほぼ同一の抵抗値を有している。
【0063】
第1の論理回路621はNAND回路123とインバータ回路125、及びインバータ回路623とインバータ回路624とで構成されている。インバータ回路125の入力端子は前記接続点(B)181に接続され、インバータ回路125の出力端子はNAND回路123の第1入力ゲートに接続されている。インバータ回路624の入力端子は前記接続点(F)184に接続され、インバータ回路624の出力端子はインバータ回路623の入力端子に接続され、インバータ回路623の出力端子はNAND回路123の第2入力ゲートに接続されている。
【0064】
第2の論理回路622はNAND回路124とインバータ回路126、及びインバータ回路625とインバータ回路626とで構成されている。インバータ回路126の入力端子は前記接続点(E)182に接続され、インバータ回路126の出力端子はNAND回路124の第1入力ゲートに接続されている。インバータ回路626の入力端子は前記接続点(C)183に接続され、インバータ回路626の出力端子はインバータ回路625の入力端子に接続され、インバータ回路625の出力端子はNAND回路124の第2入力ゲートに接続されている。
【0065】
フリップフロップ回路130のセット端子Sには前記した第1の論理回路621の出力端子であるNAND回路123の出力端子が接続されている。なお、セット端子Sは“L”の信号で動作する。フリップフロップ回路130のリセット端子Rには前記した第2の論理回路622の出力端子であるNAND回路124の出力端子が接続されている。なお、リセット端子Rは“L”の信号で動作する。フリップフロップ回路130の出力端子(Q)131には、高電圧側電源での出力信号が得られる。
【0066】
また、ツェナーダイオード171は高耐圧n型MOSFET101のドレインと抵抗113の一端を接続した接続点183と高電圧電源端子161との間に接続されている。
ツェナーダイオード172は高耐圧n型MOSFET102のドレインと抵抗114の一端を接続した接続点184と高電圧電源端子161との間に接続されている。
【0067】
<第2実施形態の回路動作(通常動作)>
第2実施形態の動作について説明する。まず、レベルシフト回路12としての通常動作について図6を参照して述べる。
通常動作の場合、レベルシフト回路12の入力信号144が“L”から“H”になるとワンショットパルス発生器140の中のワンショットパルス回路141の出力にパルス幅tPWの“H”のパルスが発生する。これにより、セット側の高耐圧n型MOSFET101が正のパルスの区間だけ、オンし、抵抗111に電圧降下が発生する。つまり接続点181の電圧がさがり“L”の状態となる。この信号は第1の論理回路621の第1の入力であるインバータ回路125に入力する。インバータ回路125は“H”の信号をNAND回路123の第1入力ゲートに伝達する。
【0068】
このとき、NAND回路123の第2入力ゲートには、“H”の信号が接続点184からインバータ回路624とインバータ回路623を通って与えられているので、NAND回路123の出力は“L”となる。そして、フリップフロップ回路130の“L”信号で動作するセット端子(S)にこのNAND回路123の出力の“L”が入力するので、フリップフロップ回路130の出力131は“H”となる。
なお、フリップフロップ回路130の具体的な構造は前記したように、図5の回路図のNAND回路511とNAND回路512によるラッチ回路を構成している。したがって、フリップフロップ回路130の出力131は“H”を保持する。以上の動作の過程において、セット側の高耐圧n型MOSFET101はパルス状(パルス幅は概ねtPW)の信号によって動作するので、消費する電力が少ない。
【0069】
次に、レベルシフト回路12の入力信号144が“H”から“L”になるとワンショットパルス発生器140の中のインバータ回路143で反転した信号がワンショットパルス回路142に入力して、出力にパルス幅tPWの“H”のパルスが発生する。これにより、リセット側の高耐圧n型MOSFET102が正のパルスの区間だけ、オンし、抵抗112に電圧降下が発生する。つまり接続点182の電圧がさがり“L”の状態となる。
【0070】
この信号は第2の論理回路622の第1の入力であるインバータ回路126に入力する。インバータ回路126は“H”の信号をNAND回路124の第1入力ゲートに伝達する。このとき、NAND回路124の第2入力ゲートには、“H”の信号が接続点183からインバータ回路626とインバータ回路625を通って与えられているので、NAND回路124の出力は“L”となる。そして、フリップフロップ回路130の“L”信号で動作するリセット端子(R)にこのNAND回路124の出力の“L”が入力するので、フリップフロップ回路130の出力131は“L”となる。
【0071】
なお、フリップフロップ回路130の具体的な構造は前記したように、図5の回路図のNAND回路511とNAND回路512によるラッチ回路を構成している。したがって、フリップフロップ回路130の出力131は“L”を保持する。以上の動作の過程において、セット側の高耐圧n型MOSFET102はパルス状(パルス幅は概ねtPW)の信号によって動作するので、消費する電力が少ない。
【0072】
<第2実施形態の電源変動時の動作>
次に、第2実施形態における電源電圧変動の際の動作について図6と図7を参照して説明する。
図6において、上下アームアース間(上アームアース162と下アームアース160との間)に電圧変化dV/dt(電源電圧変動)が発生した時の動作について説明する。電源電圧変動が発生した場合、高耐圧n型MOSFET101、102には寄生静電容量があるので、抵抗111及び抵抗112の両方に電圧降下が発生する。このときの回路動作について、図7を参照して説明する。
【0073】
図7は電源電圧が上昇した場合(V→V+ΔV)を示している。なお、図7において、横軸は経過する時間である。このとき、抵抗111と抵抗113及び抵抗112と抵抗114に電圧降下が発生する。図6のB−A間(B181−A161間)とC−A間(C183−A161間)、及び、E−D間(E182−D161間)とF−D間(F184−D161間)に電位差が発生する。この電位差は高電圧電源を用いる高電圧側回路のロジックの閾値(ロジックレベル、VTH)を超してしまうことがある。図7においてはB−A間(E−D間も同様)の電圧が変動して、VBAから−ΔVBA下がり、前記ロジックの閾値であるVTHを超してしまった場合の様子を示している。また、C−A間(F−D間も同様)の電圧が変動して、VCAから−ΔVCA下がり、前記ロジックの閾値であるVTHを超してしまった場合の様子を示している。
【0074】
このとき、前記ロジックの閾値であるVTHを超したか否かという観点から模式的に簡単に表現したのが、図7のVLB、VLEで表した項、及びVLC、VLFの波形である。つまり、電圧降下がVTHより少ない範囲ではVLB、VLE、VLC、VLFは“H”とし、電圧降下がVTHより大きい範囲ではVLB、VLE、VLC、VLFは“L”としている。
前記したように、電源電圧が上昇したままの場合にも高耐圧n型MOSFET101、102の寄生静電容量には、電圧変動に応じた電荷が蓄積されると電流はそれ以上流れなくなるので、やがてB−A間(B181−A161間)、及びE−D間(E182−D161間)の電位差は減少していく。この過程において、電圧降下が再びVTHより小さくなる。
【0075】
このとき、セット側の信号に関わるインバータ回路125の入力は接続点181におけるB−A間の電位差変動を受け、インバータ回路624の入力は接続点184におけるF−D間(C−A間)の電位差変動を受ける。図7に示すようにF−D間(C−A間)の電位差変動はB−A間に比較して、大きく、かつ、速く起きるのでVLC、VLFはVLB、VLEよりもS(時間)だけ早く、“H”から“L”に変化する。
【0076】
また、電源電圧が上昇したままでありながら、高耐圧n型MOSFET101、102の寄生静電容量に電流が流れなくなり、B−A間(B181−A161間)、及びE−D間(E182−D161間)の電位差が減少していく場合においては、B−A間の電位差は当初からE−D間の電位差より少ないのでVLB、VLEはVLC、VLFよりもS(時間)だけ早く、“L”から“H”に復帰する。
【0077】
したがって、電源電圧変動を受けた際にインバータ回路125は図7のVLB、VLEの項の波形にしたがって動作し、インバータ回路624はVLC、VLFの項の波形にしたがって動作する。そのため電圧変動による誤動作の信号がインバータ回路125を通ってNAND回路123を誤動作させる前に、インバータ回路624はNAND回路123が誤動作をしないマスクとなる信号をSだけ早く伝達する。また、インバータ回路125から誤動作をさせる信号が消えてから、Sだけ時間を経過した後に、誤動作を防ぐマスク信号を解除する。
以上により、電源電圧変動によるセット信号が出されることを防止している。
【0078】
また、リセット側の信号に関連する動作についても同様で、リセット側の信号に関わるインバータ回路126の入力は接続点182においてB−A間と同じ電位差変動を受け、インバータ回路626の入力は接続点183におけるC−A間の電位差変動を受ける。これらについては同一の回路構成をとっているので、電源電圧変動によるリセット信号が出されることを同様に防止している。
また、電源電圧変動において、電圧が上昇するのみならず、復帰する場合も効果があるが、動作、作用はほぼ同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0079】
(レベルシフト回路の第3実施形態)
図8に本発明のレベルシフト回路の第3実施形態を示す。まず回路構成の概要について述べ、その後、動作について説明する。
【0080】
<回路構成の概要>
図8のレベルシフト回路13は、低電圧直流電源(不図示)と高電圧直流電源(VB)163とによって動作する。高電圧直流電源の一端は低電位端子である下アームアース160であり、他端は高電圧直流電源の高電位端子161である。なお、アースとしては前記した下アームアース160と異なる上アームアース162があり、前記した高電圧直流電源163は上アームアース162と高電圧直流電源の高電位端子161に高電圧の直流電源を供給している。下アームアース160と上アームアース162は共にアースではあるが、それぞれに帰属する回路が互いに影響が受け難いようにアースを分けている。
【0081】
図8において、レベルシフト回路13の入力信号144は、入力信号の変化時に“H”パルスを発生するワンショットパルス発生器140に入力している。ワンショットパルス発生器140は、入力信号144を受けて信号の立ち上がり時に“H”パルスを発生するワンショットパルス発生回路141と、入力信号144を入力するインバータ回路143と、このインバータ回路143の出力を入力する信号の立ち上がり時に“H”パルスを発生するワンショットパルス発生回路142と、から構成されている。入力信号144の立ち上がり時はワンショットパルス発生回路141から“H”パルスが出力され、インバータ回路143とワンショットパルス発生回路142の組み合わせにより、入力信号144の立ち下がり時にワンショットパルス発生回路142から“H”パルスが出力される。
なお、以上の入力信号144、ワンショットパルス発生回路141、142、及び、インバータ回路143は低電圧直流電源による信号と回路である。
【0082】
また、RS型のフリップフロップ回路130のセット側の信号を生成する高耐圧n型MOSFET101(第1の半導体スイッチング素子)、及びリセット側の信号を生成する高耐圧n型MOSFET102(第2の半導体スイッチング素子)のソースは両方とも下アームアース160に接地されている。高耐圧n型MOSFET101のゲート入力には前記したワンショットパルス発生回路141の出力が接続されている。また、高耐圧n型MOSFET102のゲート入力には前記したワンショットパルス発生回路142の出力が接続されている。
【0083】
セット側の高耐圧n型MOSFET101のドレインは抵抗113の一端に接続されている(接続点(C)183)。抵抗113の他端は抵抗111の一端に接続されている(接続点(B)181)。抵抗111の他端は高電圧直流電源の高電位端子(A)161に接続されている。
リセット側の高耐圧n型MOSFET102のドレインは抵抗114の一端に接続されている(接続点(F)184)。抵抗114の他端は抵抗112の一端に接続されている(接続点(E)182)。抵抗112の他端は高電圧直流電源の高電位端子(D)161に接続されている。
【0084】
なお、高耐圧n型MOSFET101と高耐圧n型MOSFET102は同一のデバイスで構成され、ほぼ同一の電気的特性を有している。
また、抵抗111と抵抗112は、ほぼ同一の抵抗値を有している。また、抵抗113と抵抗114は、ほぼ同一の抵抗値を有している。
【0085】
時定数生成回路151の入力端子は、セット側の抵抗111と抵抗113の接続点(B)181に接続されている。時定数生成回路152の入力端子は、リセット側の高耐圧n型MOSFET102のドレインと抵抗114の接続点(F)184に接続されている。時定数生成回路153の入力端子は、リセット側の抵抗112と抵抗114の接続点(E)182に接続されている。時定数生成回路154の入力端子は、セット側の高耐圧n型MOSFET101のドレインと抵抗113の接続点(C)183に接続されている。
【0086】
第1の論理回路621はNAND回路123とインバータ回路125、及びインバータ回路623とインバータ回路624とで構成されている。インバータ回路125の入力端子は前記した時定数生成回路151の出力端子が接続され、インバータ回路125の出力端子はNAND回路123の第1入力ゲートに接続されている。インバータ回路624の入力端子は前記した時定数生成回路152出力端子が接続され、インバータ回路624の出力端子はインバータ回路623の入力端子に接続され、インバータ回路623の出力端子はNAND回路123の第2入力ゲートに接続されている。
【0087】
第2の論理回路622はNAND回路124とインバータ回路126、及びインバータ回路625とインバータ回路626とで構成されている。インバータ回路126の入力端子は前記した時定数生成回路153の出力端子が接続され、インバータ回路126の出力端子はNAND回路124の第1入力ゲートに接続されている。インバータ回路626の入力端子は前記した時定数生成回路154出力端子が接続され、インバータ回路626の出力端子はインバータ回路625の入力端子に接続され、インバータ回路625の出力端子はNAND回路124の第2入力ゲートに接続されている。
【0088】
フリップフロップ回路130のセット端子Sには前記した第1の論理回路621の出力であるNAND回路123の出力端子が接続されている。なお、セット端子Sは“L”の信号で動作する。フリップフロップ回路130のリセット端子Rには前記した第2の論理回路622の出力であるNAND回路124の出力端子が接続されている。なお、リセット端子Rは“L”の信号で動作する。フリップフロップ回路130の出力端子(Q)131には、高電圧側電源での出力信号が得られる。
【0089】
また、ツェナーダイオード171は高耐圧n型MOSFET101のドレインと抵抗113の一端を接続した接続点183と高電圧直流電源の高電位端子161との間に接続されている。ツェナーダイオード172は高耐圧n型MOSFET102のドレインと抵抗114の一端を接続した接続点184と高電圧直流電源の高電位端子161との間に接続されている。
【0090】
<第3実施形態の回路動作(通常動作)>
第3実施形態の動作について説明する。まず、レベルシフト回路13としての通常動作について述べる。
通常動作の場合、レベルシフト回路13の入力信号144が“L”から“H”になるとワンショットパルス発生器140の中のワンショットパルス回路141の出力にパルス幅tPWの正(“H”)のパルスが発生する。これにより、セット側の高耐圧n型MOSFET101が正のパルスの区間だけ、オンし、抵抗111に電圧降下が発生する。
【0091】
つまり接続点181の電圧が下がり“L”の状態となる。接続点181は時定数生成回路151に入力しているが、前記したように時定数生成回路151は時定数tの遅延時間を経過した後に、第1の論理回路621の第1の入力であるインバータ回路125に入力する。このとき、tPW>tであれば、インバータ回路125は“H”の信号をNAND回路123の第1入力ゲートに伝達する。インバータ回路125は“H”の信号をNAND回路123の第1入力ゲートに伝達する。
【0092】
このとき、NAND回路123の第2入力ゲートには、“H”の信号が接続点184から時定数生成回路152とインバータ回路624とインバータ回路623を通って与えられているので、NAND回路123の出力は“L”となる。そして、フリップフロップ回路130の“L”信号で動作するセット端子(S)にこのNAND回路123の出力の“L”が入力するので、フリップフロップ回路130の出力131は“H”となる。
【0093】
なお、フリップフロップ回路130の具体的な回路構成は前記したように、図5の回路図のNAND回路511とNAND回路512によるラッチ回路を構成している。したがって、フリップフロップ回路130の出力131は“H”を保持する。以上の動作の過程において、セット側の高耐圧n型MOSFET101はパルス状(パルス幅は概ねtPW)の信号によって動作するので、消費する電力が少ない。
【0094】
次に、レベルシフト回路13の入力信号144が“H”から“L”になるとワンショットパルス発生器140の中のインバータ回路143で反転した信号がワンショットパルス回路142に入力して、出力にパルス幅tPWの“H”のパルスが発生する。これにより、リセット側の高耐圧n型MOSFET102が“H”のパルスの区間だけ、オンし、抵抗112に電圧降下が発生する。つまり接続点182の電圧が下がり“L”の状態となる。接続点182は時定数生成回路153に入力しているが、前記したように時定数生成回路153は時定数tの遅延時間を経過した後に、第2の論理回路622の第1の入力であるインバータ回路126に入力する。このとき、tPW>tであれば、インバータ回路126は“H”の信号をNAND回路124の第1入力ゲートに伝達する。
【0095】
このとき、NAND回路124の第2入力ゲートには、“H”の信号が接続点183から、時定数生成回路154とインバータ回路626とインバータ回路625を通って与えられているので、NAND回路124の出力は“L”となる。そして、フリップフロップ回路130の“L”信号で動作するリセット端子(R)にこのNAND回路124の出力の“L”が入力するので、フリップフロップ回路130の出力131は“L”となる。
【0096】
なお、フリップフロップ回路130の具体的な構造は前記したように、図5の回路図のNAND回路511とNAND回路512によるラッチ回路を構成している。したがって、フリップフロップ回路130の出力131は“L”を保持する。以上の動作の過程において、セット側の高耐圧n型MOSFET102はパルス状(パルス幅は概ねtPW)の信号によって動作するので、消費する電力が少ない。
【0097】
<第3実施形態の電源変動時の動作>
次に、本第3実施形態における電源電圧変動の際の動作について図8と図9を参照して説明する。
図9において、上下アームアース間(上アームアース162と下アームアース160との間)に電圧変化dV/dt(電源電圧変動)が発生した時の動作について説明する。電源電圧変動が発生した場合、図8における高耐圧n型MOSFET101、102には寄生静電容量があるので、抵抗111及び抵抗112の両方に電圧降下が発生する。このときの回路動作について、図9を参照して説明する。
【0098】
図9は電源電圧が上昇した場合(V→V+ΔV)を示している。このとき、図8の抵抗111と抵抗113及び抵抗112と抵抗114に電圧降下が発生する。図8のB−A間(B181−A161間)とC−A間(C183−A161間)、及び、E−D間(E182−D161間)とF−D間(F184−D161間)に電位差が発生する。この電位差は高電圧電源を用いる高電圧側回路のロジックの閾値(ロジックレベル、VTH)を超してしまうことがある。
【0099】
図9においてはB−A間(E−D間も同様)の電圧が変動して、VBAから−ΔVBA下がり、前記ロジックの閾値であるVTHを超してしまった場合の様子を示している。また、C−A間(F−D間も同様)の電圧が変動して、VCAから−ΔVCA下がり、前記ロジックの閾値であるVTHを超してしまった場合の様子を示している。
このとき、前記ロジックの閾値であるVTHを超したか否かという観点から模式的に簡単に表現したのが、図9のVLB、VLEで表した項、及びVLC、VLFで表した項の波形である。つまり、電圧降下がVTHより少ない範囲ではVLB、VLE、VLC、VLFは“H”とし、電圧降下がVTHより大きい範囲ではVLB、VLE、VLC、VLFは“L”としている。
【0100】
前記したように、電源電圧が上昇したままの場合にも高耐圧n型MOSFET101、102の寄生静電容量には、電圧変動に応じた電荷が蓄積されると電流はそれ以上流れなくなるので、やがてB−A間(B181−A161間)、及びE−D間(E182−D161間)の電位差は減少していく。この過程において、電圧降下が再びVTHより小さくなる。
【0101】
このとき、図8のセット側の信号に関わる時定数生成回路151の入力は接続点181におけるB−A間の電位差変動を受け、時定数生成回路152の入力は接続点184におけるF−D間(C−A間)の電位差変動を受ける。図9に示すようにF−D間(C−A間)の電位差変動はB−A間に比較して、大きく、かつ、速く起きるのでVLC、VLFはVLB、VLEよりもSだけ早く、“H”から“L”に変化する。
【0102】
また、電源電圧が上昇したままでありながら、高耐圧n型MOSFET101、102の寄生静電容量に電流が流れなくなり、B−A間(B181−A161間)、及びE−D間(E182−D161間)の電位差が減少していく場合においては、電位差が当初より小さいので、VLB、VLEはVLC、VLFよりもSだけ早く、“L”から“H”に復帰する。
【0103】
さらに、前記したように時定数生成回路151は“L”になる際はtだけ遅延する特性を有し、かつ時定数生成回路152は“H”になる際はtだけ遅延する特性を有しているので、時定数生成回路151の出力であるVt1と、時定数生成回路152の出力であるVt2のそれぞれの動作波形は図9のようになる。時定数生成回路151の出力はインバータ回路125を通りNAND回路123の第1入力ゲートに入力する。また、時定数生成回路152の出力はインバータ回路624とインバータ回路623を通りNAND回路123の第2入力ゲートに入力する。
【0104】
したがって、電圧変動による誤動作の信号がインバータ回路125を通ってNAND回路123を誤動作させる前に、インバータ回路624とインバータ回路623からNAND回路123が誤動作をしないマスクの信号を(S+t)だけ早く伝達する。また、インバータ回路125から誤動作をさせる信号が消えてから、(S+t)だけ時間を経過した後に、誤動作を防ぐマスク信号を解除する。
以上により、電源電圧変動によるセット信号が出されることを二重の対策で防止している。
【0105】
また、リセット側の信号に関連する動作についても同様で、リセット側の信号に関わるインバータ回路126の入力は接続点182においてB−A間と同じの電位差変動を受け、インバータ回路626の入力は接続点183におけるC−A間の電位差変動を受ける。これらについては時定数生成回路153、154を含めて同一の回路構成をとっているので、電源電圧変動によるリセット信号が出されることを同様に防止している。
また、電源電圧変動において、電圧が上昇するのみならず、復帰する場合も効果があるが、動作、作用はほぼ同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0106】
(レベルシフト回路の第4実施形態)
図10に本発明のレベルシフト回路の第4実施形態を示す。まず回路構成の概要について述べ、その後、動作について説明する。
【0107】
<回路構成の概要>
図10のレベルシフト回路14は、低電圧直流電源(不図示)と高電圧直流電源(VB)163とによって動作する。高電圧直流電源の一端は低電位端子である下アームアース160であり、他端は高電圧直流電源の高電位端子161である。なお、アースとしては前記した下アームアース160と異なる上アームアース162があり、前記した高電圧直流電源163は、上アームアース162と高電圧直流電源の高電位端子161に高電圧の直流電源を供給している。下アームアース160と上アームアース162は共にアースではあるが、それぞれに帰属する回路が互いに影響が受け難いようにアースを分けている。
【0108】
図10において、レベルシフト回路14の入力信号144は、入力信号の変化時に“H”パルスを発生するワンショットパルス発生器140に入力している。ワンショットパルス発生器140は、入力信号144を受けて信号の立ち上がり時に“H”パルスを発生するワンショットパルス発生回路141と、入力信号144を入力するインバータ回路143と、このインバータ回路143の出力を入力する信号の立ち上がり時に“H”パルスを発生するワンショットパルス発生回路142と、から構成されている。入力信号144の立ち上がり時はワンショットパルス発生回路141から“H”パルスが出力され、インバータ回路143とワンショットパルス発生回路142の組み合わせにより、入力信号144の立ち下がり時にワンショットパルス発生回路142から“H”パルスが出力される。
なお、以上の入力信号144、ワンショットパルス発生回路141、142、及び、インバータ回路143は低電圧直流電源による信号と回路である。
【0109】
また、セット側の高耐圧n型MOSFET101(第1の半導体スイッチング素子)、及びリセット側の高耐圧n型MOSFET102(第2の半導体スイッチング素子)のソースは両方とも下アームアース160に接地されている。高耐圧n型MOSFET101のゲート入力には前記したワンショットパルス発生回路141の出力が接続されている。また、高耐圧n型MOSFET102のゲート入力には前記したワンショットパルス発生回路142の出力が接続されている。
【0110】
セット側の高耐圧n型MOSFET101のドレインは抵抗113の一端に接続されている(接続点(C)183)。抵抗113の他端は抵抗111の一端に接続されている(接続点(B)181)。抵抗111の他端は高電圧直流電源の高電位端子(A)161に接続されている。
リセット側の高耐圧n型MOSFET102のドレインは抵抗114の一端に接続されている(接続点(F)184)。抵抗114の他端は抵抗112の一端に接続されている(接続点(E)182)。抵抗112の他端は高電圧直流電源の高電位端子(D)161に接続されている。
【0111】
なお、高耐圧n型MOSFET101と高耐圧n型MOSFET102は同一のデバイスで構成され、ほぼ同一の特性を有している。
また、抵抗111と抵抗112は、ほぼ同一の抵抗値を有している。また、抵抗113と抵抗114は、ほぼ同一の抵抗値を有している。
【0112】
第1の論理回路621はNAND回路123とインバータ回路125、及びインバータ回路623とインバータ回路624とで構成されている。インバータ回路125の入力端子は前記接続点(B)181に接続され、インバータ回路125の出力端子はNAND回路123の第1入力ゲートに接続されている。インバータ回路624の入力端子は前記接続点(F)184に接続され、インバータ回路624の出力端子はインバータ回路623の入力端子に接続され、インバータ回路623の出力端子はNAND回路123の第2入力ゲートに接続されている。
【0113】
第2の論理回路622はNAND回路124とインバータ回路126、及びインバータ回路625とインバータ回路626とで構成されている。インバータ回路126の入力端子は前記接続点(E)182に接続され、インバータ回路126の出力端子はNAND回路124の第1入力ゲートに接続されている。インバータ回路626の入力端子は前記接続点(C)183に接続され、インバータ回路626の出力端子はインバータ回路625の入力端子に接続され、インバータ回路625の出力端子はNAND回路124の第2入力ゲートに接続されている。
【0114】
第1の論理回路621の出力であり、かつNAND回路123の出力は抵抗とコンデンサからなるCR回路から構成されるフィルタ回路191に入力している。
また、第2の論理回路622の出力であり、かつNAND回路124の出力は抵抗とコンデンサからなるCR回路から構成されるフィルタ回路192に入力している。
【0115】
フリップフロップ回路130のセット端子Sには前記したフィルタ回路191の出力端子が接続されている。なお、セット端子Sは“L”の信号で動作する。フリップフロップ回路130のリセット端子Rには前記したフィルタ回路192の出力端子が接続されている。なお、リセット端子Rは“L”の信号で動作する。フリップフロップ回路130の出力端子Q131には、高電圧側電源での出力信号が得られる。
【0116】
また、ツェナーダイオード171は高耐圧n型MOSFET101のドレインと抵抗113の一端を接続した接続点183と高電圧電源端子161との間に接続されている。
ツェナーダイオード172は高耐圧n型MOSFET102のドレインと抵抗114の一端を接続した接続点184と高電圧電源端子161との間に接続されている。
【0117】
以上の回路は図6で示した第2実施形態に対して、第1の論理回路621と第2の論理回路622の出力にそれぞれフィルタ回路191とフィルタ回路192をさらに備えたものである。したがって、第4実施形態でも図6で示した第2実施形態の動作と効果を有しており、さらにフィルタ回路191とフィルタ回路192によって、より微弱なパルス幅の細い誤動作信号を除去する機能を付加したものである。
【0118】
(レベルシフト回路のその他の実施形態)
以上、レベルシフト回路の実施形態について説明したが、レベルシフト回路を構成する個々の回路は、以上に限定されるものではない。
図2において、ワンショットパルス発生回路141の遅延素子として3個のインバータ回路203、204、205を3段に直列に接続した回路を示したが、インバータ回路は奇数段であればよく、1段あるいは5段以上の奇数個のインバータ回路を直列に接続した回路でもよい。また、抵抗とコンデンサからなるCR回路をインバータ回路203または、インバータ回路204またはインバータ回路205の出力端子に設けて遅延時間tPWを設定、もしくは付加してもよい。
【0119】
また、図2において、ワンショットパルス発生回路141を構成するNAND回路201をNOR回路に置き換えれば入力信号の立ち下がりにおいてパルスを発生するワンショットパルス発生回路を構成できる。ただし、“H”パルスとするためにはインバータ回路202を省略するか、あるいはインバータ回路202の次にインバータ回路を1段追加する必要がある。
また、このワンショットパルス発生回路141を構成するNAND回路201をNOR回路に置き換えたワンショットパルス発生回路を図1のワンショットパルス発生回路142の替わりに用いれば、図1におけるワンショットパルス発生装置140のなかのインバータ回路143を省略することもできる。
【0120】
また、図1、図8において、時定数生成回路151(153)として、図3(a)の回路を示した。ここでは遅延時間を生成する要素として抵抗313とコンデンサ314を用いていたが、図11(a)に示した回路を用いてもよい。図11(a)においては、インバータ回路333、334、335、336を直列に4段接続したものである。このインバータ回路333、334、335、336の遅延により遅延時間tを生成している。
なお、インバータ回路の直列の段数は偶数であれば4段に限らず構成できる。
また、これらのインバータ回路333、334、335、336は遅延時間を設けるためのものである。したがって、MOSFETのチャネル長を他のものよりも長くして、駆動能力を低下させれば遅延時間は大きく設定できる。
また、直列の偶数段のインバータ回路と、抵抗とコンデンサによるCR回路を組み合わせてもよい。
【0121】
また、図1、図8において、時定数生成回路152(154)として、図3(b)の回路を示した。ここでは遅延時間を生成する要素として抵抗323とコンデンサ324を用いていたが、図11(b)に示した回路を用いてもよい。図11(b)においては、インバータ回路343、344、345、346を直列に4段接続したものである。このインバータ回路343、344、345、346の遅延により遅延時間tを生成している。
なお、インバータ回路の直列の段数は偶数であれば4段に限らず構成できる。
また、これらのインバータ回路343、344、345、346は遅延時間を設けるためのものである。したがって、MOSFETのチャネル長を他のものよりも長くして、駆動能力を低下させれば遅延時間は大きく設定できる。
また、直列の偶数段のインバータ回路と、抵抗とコンデンサによるCR回路を組み合わせてもよい。
【0122】
また、図1における第1、第2の論理回路121、122、また図6における第1、第2の論理回路621、622においてはNAND回路123(124)とインバータ回路125(126、623、624、625、626)を用いて構成しているが、同一の機能は他の回路でも構成できる。
図12は図1のレベルシフト回路11において、第1、第2の論理回路121、122とフリップフロップ回路130を他の回路に置き換えたものである。図12において、第1の論理回路221はNOR回路223とインバータ回路225で構成されている。NOR回路223の第1入力ゲートが第1の論理回路221の第1入力端子である。インバータ回路225の入力端子が第1の論理回路221の第2入力端子である。インバータ回路225の出力端子はNOR回路223の第2入力ゲートに入力している。NOR回路223の出力端子が第1の論理回路221の出力端子となっている。
【0123】
また、第2の論理回路222はNOR回路224とインバータ回路226で構成されている。NOR回路224の第1入力ゲートが第2の論理回路222の第1入力端子である。インバータ回路226の入力端子が第2の論理回路222の第2入力端子である。インバータ回路226の出力端子はNOR回路224の第2入力ゲートに入力している。NOR回路224の出力端子が第2の論理回路222の出力端子となっている。
【0124】
第1の論理回路221の出力端子はフリップフロップ回路230のセット端子Sに接続されている。第2の論理回路222の出力端子はフリップフロップ回路230のリセット端子Rに接続されている。
以上のように、第1、第2の論理回路は様々な回路で構成できる。ただし、図12の第1の論理回路221と第2の論理回路222の出力は“H”の信号で動作する構成となっている。
【0125】
したがって、フリップフロップ回路230のセット端子Sとリセット端子Rはともに、“H”の信号で動作する。セット端子Sとリセット端子Rが“H”の信号で動作する回路として、図13の回路構成例を示す。
図13において、NOR回路521の出力端子はNOR回路522の第1入力ゲートに接続されている。NOR回路522の出力端子はNOR回路521の第2入力ゲートに接続されている。NOR回路521の第1入力ゲートはRSフリップフロップとしてのセット端子(S)525となっている。NOR回路522の第2入力ゲートはRSフリップフロップとしてのリセット端子(R)526となっている。NOR回路521の出力端子はインバータ回路523の入力端子に接続され、インバータ回路523の出力端子がフリップフロップ回路230の出力端子(Q)524となっている。なお、セット端子(S)525とリセット端子(R)526は“H”の信号によって動作する。したがって、セット端子(S)525とリセット端子(R)526の記号にはHが下付きで添えて表現している。
以上、フリップフロップ回路も様々に構成できる。
【0126】
また、図10において、フィルタ回路191、192を用いたレベルシフト回路14の第4実施形態を示したが、このようなフィルタ回路191、192を用いる手法は他の実施形態でも可能である。つまり、図1、図6、図8、図12のそれぞれの実施形態において、フィルタ回路191、192をさらに備え、第1、第2の論理回路の出力をそれぞれフィルタ回路191、192を通してからフリップフロップ回路のセット端子、リセット端子に接続すればよい。
【0127】
また、以上において、回路をMOSFETで構成した場合を示したが、前述した回路が構成できれば、MOSFETであることには限らない。例えば、バイポーラトランジスタやBiCMOSで構成してもよい。
【0128】
なお、図1、図6、図8、図10、図12において、ツェナーダイオード171、172をレベルシフト回路11、12、13、14、15が構成される素子の保護を目的として設けた場合を示したが、このツェナーダイオード171、172は必須要件の素子ではない。
【0129】
(電力変換装置の実施形態)
次に、以上のレベルシフト回路を備えた電力変換装置の実施形態について述べる。
図14は前記したレベルシフト回路11(図1)を用いて電力変換装置10を構成する回路を示すものである。IGBT92のエミッタ端子は下アームアース160に接続され、IGBT92のコレクタ端子はIGBT91のエミッタ端子に接続され、IGBT91のコレクタ端子は高電圧直流電源の高電位端子161に接続されている。IGBT92のゲート入力端子はレベルシフト回路11Bの出力端子に接続されている。IGBT91のゲート入力端子はレベルシフト回路11Aの出力端子に接続されている。IGBT92のコレクタ端子とIGBT91のエミッタ端子との接続点164が電力変換装置10の出力端子となっている。また、ツェナーダイオード93、94はそれぞれIGBT91、92のエミッタ端子とコレクタ端子に接続されている。
【0130】
低電圧側回路の信号がレベルシフト回路11Aの入力端子144に入力し、高電圧側回路の信号に変換されてレベルシフト回路11Aの出力端子131から出力する。この高電圧側回路の信号によって、IGBT91が駆動される。また、別の低電圧側回路の信号がレベルシフト回路11Bによって、高電圧側回路の信号に変換され、IGBT92が駆動される。IGBT91、92によって、電力変換装置10の出力端子164に電力変換された出力が得られる。
【0131】
(電力変換装置のその他の実施形態)
以上、図14においては、1対のアームを形成するIGBT91とIGBT92による電力変換装置であったが、3対のアームを形成する6個のIGBTと、6個のレベルシフト回路を用いれば、3相の電力変換装置も構成できる。
【0132】
また、図14においてはレベルシフト回路11A、11Bの出力端子をそれぞれIGBT91、92のゲート入力端子に直接、接続した例を示したが、回路の保護や駆動能力の調整のために、レベルシフト回路11A、11Bの出力端子とGBT91、92のゲート入力端子との間にバッファ回路や緩衝回路の機能を有する回路を挿入してもよい。
【0133】
また、図14においては、図1で示したレベルシフト回路11を用いて電力変換装置を構成する実施形態を示したが、レベルシフト回路としては図1の回路には限定されない。図6、図8、図10、図12に示したレベルシフト回路でもよい。
【0134】
以上、本発明によれば、レベルシフト回路において、高電圧側の電源電圧変動dV/dtが回路のロジックレベルに影響を与えるような発生の仕方をした場合、この変動はセット側にもリセット側にも起こることを利用し、時定数生成回路、もしくは電源電圧変動が先に起こる個所からの信号によって、第1、第2の論理回路でマスクし、誤動作の信号が通過するのを防止する。
このマスクするタイミングに充分、余裕をとることにより、半導体プロセスにおける製造ばらつきが回路を構成する個々の素子にあったとしても、高電圧側の電源電圧変動dV/dtが発生時の誤信号がフリップフロップに伝わるのを防止できる。これにより、低消費電力で、製造ばらつきにも強く、電源電圧変動にも誤動作しないレベルシフト回路を提供することができる。
また、該レベルシフトを用いた電力変換装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0135】
10 電力変換装置
11、11A、11B、12、13、14、15 レベルシフト回路
101 高耐圧n型MOSFET(第1の半導体スイッチング素子)
102 高耐圧n型MOSFET(第2の半導体スイッチング素子)
111 抵抗(第1の抵抗)
112 抵抗(第2の抵抗)
113 抵抗(第3の抵抗)
114 抵抗(第4の抵抗)
313、323 抵抗
121、221、621 論理回路(第1の論理回路)
122、222、622 論理回路(第2の論理回路)
123、124、201、321、341、511、512 NAND回路
125、126、143、202、203、204、205、225、226、312、322、332、333、334、335、336、342、343、344、345、346、523、623、624、625、626 インバータ回路
130、230 フリップフロップ回路
140 ワンショットパルス発生器
141、142 ワンショットパルス発生回路
151 時定数生成回路(第1の時定数生成回路)
152 時定数生成回路(第2の時定数生成回路)
153 時定数生成回路(第3の時定数生成回路)
154 時定数生成回路(第4の時定数生成回路)
160 下アームアース、高電圧直流電源の低電位端子
161 高電圧直流電源の高電位端子
162 上アームアース
163 高電圧直流電源(上アーム電源)
171、172、93、94 ツェナーダイオード
191 フィルタ回路(第1のフィルタ回路)
192 フィルタ回路(第2のフィルタ回路)
223、224、311、331、521、522 NOR回路
314、324 コンデンサ
91、92 IGBT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低電圧直流電源を電源とする低電圧側回路から高電圧直流電源を電源とする高電圧側回路に制御信号を伝達するレベルシフト回路であって、
前記低電圧直流電源を電源として、入力信号の立ち上がりと立下りでそれぞれセット信号パルスとリセット信号パルスとを生成するワンショットパルス発生器と、
前記高電圧直流電源の低電位端子に第1端子を接続され、前記セット信号パルスを入力する第1の半導体スイッチング素子と、
前記高電圧直流電源の低電位端子に第1端子を接続され、前記リセット信号パルスを入力する第2の半導体スイッチング素子と、
前記高電圧直流電源の高電位端子と、前記第1の半導体スイッチング素子の第2端子との間に接続された第1の抵抗と、
前記高電圧直流電源の高電位端子と、前記第2の半導体スイッチング素子の第2端子との間に接続された第2の抵抗と、
前記第1の半導体スイッチング素子の第2端子と前記第1の抵抗の接続点を入力端子に接続した第1の時定数生成回路と、
前記第2の半導体スイッチング素子の第2端子と前記第2の抵抗の接続点を入力端子に接続した第2の時定数生成回路と、
前記第2の半導体スイッチング素子の第2端子と前記第2の抵抗の接続点を入力端子に接続した第3の時定数生成回路と、
前記第1の半導体スイッチング素子の第2端子と前記第1の抵抗の接続点を入力端子に接続した第4の時定数生成回路と、
前記高電圧直流電源を電源として、前記第1の時定数生成回路の出力端子と前記第2の時定数生成回路の出力端子とを、それぞれ第1入力端子と第2入力端子に接続し、かつセット信号を出力する第1の論理回路と、
前記高電圧直流電源を電源として、前記第3の時定数生成回路の出力端子と前記第4の時定数生成回路の出力端子とを、それぞれ第1入力端子と第2入力端子に接続し、かつリセット信号を出力する第2の論理回路と、
前記高電圧直流電源を電源として、前記第1の論理回路の出力のセット信号と、前記第2の論理回路の出力のリセット信号とを、それぞれ入力し、駆動信号を出力するフリップフロップ回路と、
を備えたことを特徴とするレベルシフト回路。
【請求項2】
低電圧直流電源を電源とする低電圧側回路から高電圧直流電源を電源とする高電圧側回路に制御信号を伝達するレベルシフト回路であって、
前記低電圧直流電源を電源として、入力信号の立ち上がりと立下りでそれぞれセット信号パルスとリセット信号パルスとを生成するワンショットパルス発生器と、
前記高電圧直流電源の低電位端子に第1端子を接続され、前記セット信号パルスを入力する第1の半導体スイッチング素子と、
前記高電圧直流電源の低電位端子に第1端子を接続され、前記リセット信号パルスを入力する第2の半導体スイッチング素子と、
前記高電圧直流電源の高電位端子に一端を接続された第1の抵抗と、
前記高電圧直流電源の高電位端子に一端を接続された第2の抵抗と、
前記第1の抵抗の他端と、前記第1の半導体スイッチング素子の第2端子との間に接続された第3の抵抗と、
前記第2の抵抗の他端と、前記第2の半導体スイッチング素子の第2端子との間に接続された第4の抵抗と、
前記第1の抵抗と前記第3の抵抗の接続点を入力端子に接続した第1の時定数生成回路と、
前記第2の半導体スイッチング素子の第2端子と前記第4の抵抗の接続点を入力端子に接続した第2の時定数生成回路と、
前記第2の抵抗と前記第4の抵抗の接続点を入力端子に接続した第3の時定数生成回路と、
前記第1の半導体スイッチング素子の第2端子と前記第3の抵抗の接続点を入力端子に接続した第4の時定数生成回路と、
前記高電圧直流電源を電源として、前記第1の時定数生成回路の出力端子と前記第2の時定数生成回路の出力端子とを、それぞれ第1入力端子と第2入力端子に接続し、かつセット信号を出力する第1の論理回路と、
前記高電圧直流電源を電源として、前記第3の時定数生成回路の出力端子と前記第4の時定数生成回路の出力端子とを、それぞれ第1入力端子と第2入力端子に接続し、かつリセット信号を出力する第2の論理回路と、
前記高電圧直流電源を電源として、前記第1の論理回路の出力のセット信号と、前記第2の論理回路の出力のリセット信号とを、それぞれ入力し、駆動信号を出力するフリップフロップ回路と、
を備えたことを特徴とするレベルシフト回路。
【請求項3】
低電圧直流電源を電源とする低電圧側回路から高電圧直流電源を電源とする高電圧側回路に制御信号を伝達するレベルシフト回路であって、
前記低電圧直流電源を電源として、入力信号の立ち上がりと立下りでそれぞれセット信号パルスとリセット信号パルスとを生成するワンショットパルス発生器と、
前記高電圧直流電源の低電位端子に第1端子を接続され、前記セット信号パルスを入力する第1の半導体スイッチング素子と、
前記高電圧直流電源の低電位端子に第1端子を接続され、前記リセット信号パルスを入力する第2の半導体スイッチング素子と、
前記高電圧直流電源の高電位端子と、前記第1の半導体スイッチング素子の第2端子との間に接続された第1の抵抗と、
前記高電圧直流電源の高電位端子と、前記第2の半導体スイッチング素子の第2端子との間に接続された第2の抵抗と、
前記高電圧直流電源を電源として、前記第1の半導体スイッチング素子の第2端子と前記第1の抵抗の接続点と、前記第2の半導体スイッチング素子の第2端子と前記第2の抵抗の接続点とを、それぞれ第1入力端子と第2入力端子に接続し、かつセット信号を出力する第1の論理回路と、
前記高電圧直流電源を電源として、前記第2の半導体スイッチング素子の第2端子と前記第2の抵抗の接続点と、前記第1の半導体スイッチング素子の第2端子と前記第1の抵抗の接続点とを、それぞれ第1入力端子と第2入力端子に接続し、かつリセット信号を出力する第2の論理回路と、
セット信号を出力する前記第1の論理回路の出力に接続された第1のフィルタ回路と、
リセット信号を出力する前記第2の論理回路の出力に接続された第2のフィルタ回路と、
前記高電圧直流電源を電源として、前記第1のフィルタ回路の出力のセット信号と、前記第2のフィルタ回路の出力のリセット信号とを、それぞれ入力し、駆動信号を出力するフリップフロップ回路と、
を備えたことを特徴とするレベルシフト回路。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のレベルシフト回路において、
さらに、
第1のフィルタ回路と、
第2のフィルタ回路と、
を備え、
前記第1の論理回路の出力を第1のフィルタ回路の入力に接続し、前記第2の論理回路の出力を第2のフィルタ回路の入力に接続し、第1のフィルタ回路の出力と、第2のフィルタ回路の出力とを、それぞれ前記フリップフロップ回路に入力したことを特徴とするレベルシフト回路。
【請求項5】
前記第1、第2、第3、第4の時定数生成回路は、それぞれの入力信号の立ち下がり時と立上がり時とでは時定数が異なることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項4に記載のレベルシフト回路。
【請求項6】
前記第1の時定数生成回路は、前記第2の時定数生成回路と比較して、入力信号の立ち下がり時では時定数が大きく、立ち上がり時では時定数が小さいこと、かつ、前記第3の時定数生成回路は、前記第4の時定数生成回路と比較して、入力信号の立ち下がり時では時定数が大きく、立ち上がり時では時定数が小さいことを特徴とする請求項5に記載のレベルシフト回路。
【請求項7】
前記第1、第2、第3、第4の時定数生成回路において、時定数を定める抵抗手段と静電容量手段がそれぞれに備えられていることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項4または請求項5または請求項6に記載のレベルシフト回路。
【請求項8】
前記第1、第3の時定数生成回路において非論理和回路が備えられ、かつ前記第2、第4の時定数生成回路において非論理積回路が備えられたことを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載のレベルシフト回路。
【請求項9】
前記第1のフィルタ回路と前記第2のフィルタ回路において、フィルタ特性を定める抵抗手段と静電容量手段がそれぞれに備えられていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のレベルシフト回路。
【請求項10】
前記第1、第2の半導体スイッチング素子は該半導体スイッチング素子を形成する基板が他の回路と切り離され独立した半導体素子であることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のレベルシフト回路。
【請求項11】
前記第1、第2の半導体スイッチング素子はMOSFETであり、前記半導体スイッチング素子の第1端子はMOSFETのソースであり、前記半導体スイッチング素子の第2端子はMOSFETのドレインであることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載のレベルシフト回路。
【請求項12】
レベルシフト回路を備えた電力変換装置において、
さらにアームを構成するIGBTを備え、
該IGBTが、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の前記レベルシフト回路によって駆動されることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−193419(P2011−193419A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60169(P2010−60169)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】