説明

レーザリペア装置、レーザリペア方法、および情報処理装置

【課題】レーザリペア装置が高速に欠陥を修理することを可能とする。
【解決手段】CCDカメラ111がガラス基板102を撮像して画像データを生成する。制御部112は画像データに基づいて、ガラス基板102上の欠陥の外形を抽出する。また、制御部112は、レーザ発振器103から出射されたレーザ光がガラス基板102上に照射される範囲が、欠陥の外形とその外形に外接する外接矩形との複数の接点のうち少なくとも1つを含むように、ガラス基板102上にレーザ光を照射する位置を決定する。制御部112は、決定した位置と上記範囲とに基づいて欠陥の外形を狭めながら、上記の決定を繰り返す。そして、レーザリペア装置100は、繰り返しにより決定した複数の位置に、光学系を介してレーザ発振器103からのレーザ光を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物にレーザ光を照射して欠陥を修正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の基板の製造工程では、基板を撮像した画像を使った検査が行われ、検査の結果、欠陥が発見されると、必要に応じて欠陥の修正が行われる。基板には、例えば、液晶ディスプレイ(LCD;Liquid Crystal Display)、PDP(Plasma Display Panel)、有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイ、SED(Surface-conduction Electron-emitter Display)などのFPD(Flat Panel Display)基板や、半導体ウエハ、プリント基板などが含まれる。
【0003】
欠陥には、接続すべきでない導体同士が接続されてしまう「ショート欠陥」や、配線が途中で切れている「オープン欠陥」など、様々な種類がある。また、FPD基板の表面に付着したパーティクルやレジストなどの異物も、除去により修正すべき欠陥の例である。欠陥の修正方法は欠陥の種類に応じて異なるが、レーザ光の照射によって欠陥を修正する「レーザリペア(laser repair)」と呼ばれる技術が知られている。
【0004】
例えば、ショート欠陥は、FPD基板上に不適切に形成された金属配線の一部をレーザ光の照射により除去することで修正され、FPD基板の表面に付着したパーティクルやレジストなどの異物も、レーザ光の照射により除去することで修正される。すなわち、ショート欠陥と異物はいずれもレーザリペアの対象である。
【0005】
レーザリペア装置において、修正すべき欠陥を含む基板上にレーザ光を照射することが可能な範囲(以下、「最大照射範囲」という)は、レーザ光源から射出されるレーザ光のビーム断面の大きさおよび形状、ならびに光学系に含まれるレンズ等に依存する。最大照射範囲よりも欠陥の方が大きい場合、レーザリペア装置は一般的に、複数回に分けてレーザ光を照射することで欠陥を修正する(例えば、特許文献1を参照。)。
【0006】
例えば、欠陥に外接する矩形として定義される欠陥領域の左上の点から所定量オフセットした点を始点として、欠陥領域を完全に含むように、複数の矩形のレーザ照射領域を設定する方法がある。未加工部の発生を防ぐため、各レーザ照射領域は若干重ねられていてもよい。例えば、複数の矩形のレーザ照射領域を、互いに若干重ねながら規則正しく2次元アレイ状に並べることで欠陥領域を完全にカバーすることができる。
【特許文献1】特開2006−119575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、欠陥の形状は不規則である。よって、規則正しく2次元アレイ状に複数のレーザ照射領域を設定すると、複数のレーザ照射領域のうちいくつかは、実際には欠陥と少ししか重なっていないことがありうる。換言すれば、複数のレーザ照射領域の配置のパターンを変えれば、より少ないレーザ照射領域だけで欠陥を覆いつくせる可能性がある。
【0008】
つまり、規則正しく2次元アレイ状に設定された位置にレーザ光を照射することは、レーザ照射領域よりも大きな欠陥のレーザリペアにおいて、必ずしも効率的な修正方法であるとは言えない。
【0009】
そこで本発明は、レーザリペア装置が高速に欠陥を修理することを可能とする技術を提
供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、対象物上の欠陥を修正するレーザリペア装置が提供される。前記レーザリペア装置は、射出手段、光学系、撮像手段、欠陥抽出手段、照射位置決定手段を備える。
【0011】
前記射出手段は、レーザ光を射出する。前記光学系は、前記射出手段が射出した前記レーザ光を前記対象物に導く。前記撮像手段は、前記対象物を撮像して画像データを生成する。
【0012】
また、前記欠陥抽出手段は、前記撮像手段が生成した前記画像データに基づいて、前記対象物上の前記欠陥の外形を抽出する。
そして、前記照射位置決定手段は、前記射出手段と前記光学系により前記レーザ光が前記対象物上に照射される範囲が、前記欠陥の前記外形と前記外形に外接する外接矩形との複数の接点のうち少なくとも1つを含むように、前記対象物上に前記レーザ光を照射する位置を決定することを、前記欠陥抽出手段が抽出した前記欠陥の前記外形を前記位置と前記範囲に基づいて狭めながら繰り返す。
【0013】
さらに、前記レーザリペア装置は、前記照射位置決定手段が繰り返しにより決定した複数の前記位置に、前記光学系を介して前記レーザ光を照射する。
本発明の第2の態様によれば、上記レーザリペア装置が実行する方法が提供される。また、本発明の第3の態様によれば、対象物上の欠陥を修正するレーザリペア装置がレーザ光を照射すべき前記対象物上の複数の位置を決定する情報処理装置が提供される。
【0014】
前記情報処理装置は、前記対象物を撮像して得られた画像データを取得する取得手段と、前記取得手段が取得した前記画像データに基づいて、前記対象物上の前記欠陥の外形を抽出する欠陥抽出手段と、第1の態様の前記レーザリペア装置が備える前記照射位置決定手段と同様の照射位置決定手段とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明の上記各態様によれば、欠陥の外形と外接矩形との接点を考慮に入れながら、対象物上にレーザ光を照射する位置が決定される。したがって、レーザ光を照射する位置を欠陥の外形と無関係に規則正しく配置する場合に比べて、本発明の上記各態様によればレーザ光の照射回数を抑制することが可能であり、その分、高速に欠陥を修理することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、複数の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。まず、図1〜図14を参照して第1実施形態について説明してから、図15〜図17を参照して第2〜第4実施形態について主に第1実施形態との違いを説明する。最後にその他の実施形態についても説明する。
【0017】
図1は、第1実施形態によるレーザリペア装置の構成図である。
図1のレーザリペア装置100は、XYステージ101に載置されたガラス基板102上の欠陥を、レーザ発振器103から出射されたレーザ光によって修正する装置である。ガラス基板102は、例えば、薄板ガラス上にフォトリソグラフィ技術などによって回路パターンが形成されたLCD基板である。しかし、第1実施形態は、検査および修正の対象物が、LCD基板以外のFPD基板、半導体ウエハ、プリント配線基板などの各種基板である場合にも適用することができる。
【0018】
近年では各種基板が大型化しており、歩留まり向上のために製造工程中のいくつもの段階において多種の検査と修正が行われる。よって、短時間で効率的に欠陥の修正を行うことが望ましい。
【0019】
そのため、第1実施形態では、「修正しようとする欠陥が大きいために、当該欠陥を修正するには異なる複数の位置にレーザ光を照射する必要がある」という場合に注目している。例えば、ガラス基板102上に照射されたレーザ光のビーム断面よりも大きな欠陥を修正するには、複数回に分けてレーザ光を照射するのが一般的である。第1実施形態によれば、複数の位置にレーザ光を照射する場合に、効率的にレーザ光を照射するための位置および順序をレーザリペア装置100が決定する。
【0020】
図1において、レーザ光を射出する射出手段として機能するレーザ発振器103から出射されたレーザ光は、ミラー104で反射され、DMD(Digital Micromirror Device)105に入射する。DMD105は、微小デバイスの一種である微小ミラーが2次元アレイ状に配列された空間光変調器である。微小ミラーの傾斜角は、少なくとも2種類に切り替え可能である。傾斜角が第1と第2の角度であるときの微小ミラーの状態を、それぞれ以下では「オン状態」と「オフ状態」という。
【0021】
DMD105は、後述の制御部112からの指示に基づいて、個々の微小ミラーの傾斜角、すなわち個々の微小ミラーの状態を独立に切り替える。DMD105に対する指示は、例えば、レーザ光を照射すべきか否かを表す2値データを2次元アレイ状に並べたデータにより表され、制御部112から出力される。
【0022】
ミラー104からDMD105へ入射した入射光が、オン状態の微小ミラーにおいて反射されたとき、反射光の向きが鉛直方向となるように、レーザ発振器103、ミラー104、およびDMD105が配置されている。
【0023】
オン状態の微小ミラーで反射されたレーザ光の、ガラス基板102の表面へ至る光路状には、ハーフミラー106と結像レンズ107とハーフミラー108と対物レンズ109とを有する投影光学系が配置されている。オン状態の微小ミラーで反射されたレーザ光は、投影光学系を介して、ガラス基板102の表面に照射される。投影光学系は、ガラス基板102の表面とDMD105の微小ミラーのミラー面とを共役の位置とするよう構成されている。
【0024】
上記のミラー104、DMD105、および投影光学系は、レーザ発振器103が射出したレーザ光を、対象物であるガラス基板102に導く光学系を構成している。
オフ状態の微小ミラーは傾斜角がオン状態のときと異なる。よって、ミラー104からDMD105へ入射した入射光は、オフ状態の微小ミラーにおいて、ハーフミラー106へ至る方向とは異なる方向に反射され、ガラス基板102上には照射されない。図1では、オフ状態の微小ミラーによる反射光の光路を破線矢印で示した。
【0025】
したがって、個々の微小ミラーをオン状態またはオフ状態に制御することによって、各微小ミラーに対応するガラス基板102上の位置にレーザ光を照射するか否かを制御することができる。つまり、DMD105を用いることにより、任意の位置・方向・形状でレーザ光をガラス基板102上に照射することができる。このように、DMD105は、レーザ光のビーム断面形状を整形するレーザ光整形手段として機能する。
【0026】
また、レーザリペア装置100は、照明光源110と、撮像手段として機能するCCD(Charge Coupled Device)カメラ111とを備える。撮像に照明光が必要な場合は、照
明光源110からの照明光がハーフミラー108で反射され、対物レンズ109を介してガラス基板102の表面に照射される。なお、CCDカメラ111の代わりにCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)カメラ等の撮像装置を用いてもよい。
【0027】
レーザ光および照明光の、ガラス基板102の表面における反射光は、いずれも、対物レンズ109、ハーフミラー108、および結像レンズ107を通り、ハーフミラー106で反射され、CCDカメラ111の受光面に配置された光電変換素子に入射する。それにより、CCDカメラ111はガラス基板102を撮像して画像データを生成する。
【0028】
ここで、説明の便宜上、鉛直方向の座標軸をZ軸とし、Z軸に垂直な2つの座標軸をX軸およびY軸とする。また、ガラス基板102の表面は矩形であり、その矩形の各辺はX軸またはY軸に平行であるとする。XYステージ101の名称は、対物レンズ109に対してガラス基板102をX方向およびY方向に相対的に移動させる機能による。
【0029】
対物レンズ109に対するガラス基板102のX方向およびY方向の相対的な移動は、様々な方法により実現可能である。
例えば、レーザ発振器103、ミラー104、DMD105、ハーフミラー106、結像レンズ107、ハーフミラー108、対物レンズ109、照明光源110、およびCCDカメラ111は、互いに相対位置が固定された状態で1つの光学ユニットとしてまとめられていてもよい。そして、XYステージ101は、ガラス基板102を載置するためのテーブル部と門型のガントリとを備えていてもよい。ガントリは、Y軸に平行な梁を有し、テーブル部の上面を跨ぐように設けられる。光学ユニットは、ガントリの梁に沿って移動可能なようにガントリに取り付けられる。
【0030】
例えば、ガントリが床に対して固定されており、テーブル部が不図示のモータによりX方向に移動可能であれば、対物レンズ109に対するガラス基板102のX方向およびY方向の相対的な移動が可能となる。あるいは、テーブル部が床に対して固定されており、ガントリ全体が不図示のモータによりX方向に移動可能な構成においても、対物レンズ109に対するガラス基板102のX方向およびY方向の相対的な移動は可能である。
【0031】
対物レンズ109に対するガラス基板102のX方向およびY方向の相対的な移動を可能とする例えば上記のような構成により、ガラス基板102上の任意の位置にレーザ発振器103からのレーザ光を照射することが可能となる。また、ガラス基板102上の任意の位置をCCDカメラ111で撮像することも可能となる。
【0032】
さらに、レーザリペア装置100は制御部112と操作部113とモニタ114を備える。
制御部112はレーザリペア装置100全体を制御する。操作部113は、キーボードやポインティングデバイスなどの入力機器により実現される。操作部113から入力された指示は、制御部112に送られる。
【0033】
また、モニタ114は、制御部112からの指示にしたがって画像や文字等を表示する。モニタ114は、例えば、CCDカメラ111が撮像したガラス基板102の画像を表示してもよい。
【0034】
制御部112への入力は操作部113からの指示とCCDカメラ111からの画像データである。また、制御部112は、不図示のネットワークを介して不図示の外部装置から入力を受け取ってもよい。制御部112は入力にしたがい、XYステージ101、レーザ発振器103、DMD105、およびモニタ114を制御する。例えば、XYステージ101がX方向に移動可能なテーブル部とガントリを備える場合、制御部112は、テーブ
ル部をX方向に動かすモータと、ガントリに沿って光学ユニットをY方向に動かすモータの両者を制御する。
【0035】
制御部112による処理の具体例は後述するが、制御部112は、専用のハードウェア回路でもよく、汎用的なコンピュータでもよい。制御部112の機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの組み合わせ、のいずれにより実現されてもよい。
【0036】
例えば、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリと、ワーキングエリアとして使われるRAM(Random Access Memory)と、ハードディスク装置等の外部記憶装置と、外部機器との接続インタフェイスとを備え、これらがバスで相互に接続されたコンピュータにより制御部112が実現されてもよい。
【0037】
この場合、制御部112を実現するコンピュータには、XYステージ101、レーザ発振器103、DMD105、CCDカメラ111、操作部113、およびモニタ114が接続される。また、上記CPUは、プログラムをRAMにロードして実行することにより、後述の制御部112の機能を実現する。制御部112の機能を実現するためのプログラムは、例えば、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶され、記憶媒体の読み取り装置を介してコンピュータのハードディスク装置にインストールされてもよい。
【0038】
また、制御部112には、ネットワークを介して間接的に、あるいはケーブルにより直接的に、不図示の欠陥検査装置が接続されている。欠陥検査装置は、ガラス基板102の表面を検査し、もし欠陥があれば、例えば、欠陥の位置する座標、欠陥の大きさ、および欠陥の種類などを認識して検査結果として記録する。欠陥の位置する座標は、例えば、ガラス基板102を基準とした座標系で表される。欠陥検査装置は、検査結果のデータをレーザリペア装置100に出力する。
【0039】
また、欠陥検査装置は、検査を行ったときの条件を記録した「レシピ」と呼ばれるデータをさらにレーザリペア装置100に出力してもよい。レシピには、例えば検査を行ったときの照明光の強度や波長などが含まれていてもよい。
【0040】
制御部112は、欠陥検査装置から受け取った検査結果のデータにしたがって、欠陥検査装置が検出した欠陥の位置に合わせて、XYステージ101が備える不図示のモータを制御する。その際、制御部112は必要に応じて、ガラス基板102を基準とした座標系からXYステージ101を基準とした座標系への座標変換を行ってもよい。
【0041】
例えば、検査結果のデータにおいて欠陥の位置が欠陥の重心の座標で表されている場合、制御部112は、対物レンズ109の光軸が欠陥の重心を通るように、ガラス基板102と光学ユニットの相対位置を制御する。ただし、検査結果における座標に含まれる誤差などが要因で、実際には、対物レンズ109の光軸が欠陥の重心から多少外れることもある。そのため、レーザリペア装置100は、CCDカメラ111により欠陥を撮像し、制御部112により欠陥の正確な位置と範囲を認識して対物レンズ光軸と照射範囲の中心を合わせるキャリブレーションをしてから、欠陥へのレーザ光の照射を行う。
【0042】
詳しくは図3〜図14とともに説明するが、制御部112は、CCDカメラ111が対象物であるガラス基板102を撮像して生成した画像データに基づいて、ガラス基板102上の欠陥の外形を抽出する欠陥抽出手段としても機能する。
【0043】
さらに、制御部112は、次のように動作することで照射位置決定手段としても機能する。
制御部112は、レーザ発振器103から出射されたレーザ光がガラス基板102上に照射される範囲が、欠陥の外形とその外形に外接する外接矩形との複数の接点のうち少なくとも1つを含むように、ガラス基板102上にレーザ光を照射する位置を決定する。例えば、制御部112は、レーザ光の照射される範囲が、複数の接点のうち外接矩形の頂点(すなわち外接矩形の角)に最も近い接点を含むように、位置を決定してもよい。
【0044】
そして、制御部112は、決定した位置と上記レーザ光の照射される範囲とに基づいて欠陥の外形を狭めながら、上記の決定を繰り返す。例えば、制御部112は、決定した位置に配置された上記範囲またはその範囲に内接する矩形を取り除くことにより、欠陥の外形を狭めてもよい。
【0045】
このように照射位置決定手段としての制御部112が繰り返しにより決定した複数の照射位置に、レーザリペア装置100は、光学系を介してレーザ発振器103からのレーザ光を照射する。その結果、レーザ光の照射回数が適切に抑制され、短時間で効率よく欠陥を修正することが可能となる。
【0046】
また、制御部112は、決定した複数の位置間の距離に基づいて、複数の位置にレーザ光を照射する順序を決定する照射順序決定手段としても機能する。レーザリペア装置100は、照射順序決定手段としての制御部112が決定した順序で、照射位置決定手段としての制御部112が決定した複数の位置に、順次レーザ光を照射する。
【0047】
さらに、制御部112は、抽出した欠陥の外形と、決定した複数の位置にそれぞれ上記範囲を配置したときに生じる範囲同士の重なりに基づいて、レーザ光のビーム断面形状を整形するよう、DMD105を制御する整形制御手段としても機能する。
【0048】
続いて、図1のように構成されたレーザリペア装置100が修正の対象とする欠陥の例について図2を参照して説明する。なお、混乱のおそれはないので、以下ではガラス基板102上の欠陥の実体と、欠陥が存在するガラス基板102をCCDカメラ111が撮像して得られた画像(以下、「欠陥画像」という)に写った欠陥の像を特に区別せず、単に「欠陥」という。
【0049】
図2は、欠陥の例を示す図である。図2には、欠陥画像に写った欠陥201と配線202〜206が図示されている。欠陥201は、配線202と配線203にまたがっており、ショート欠陥の一種である。
【0050】
また、後述するように、欠陥201は、レーザ光を照射することが可能な最大照射範囲よりも大きい。よって、欠陥201の全体を除去するには、レーザリペア装置100はレーザ光を複数回それぞれ異なる位置に照射する必要がある。第1実施形態では、効率的なレーザリペアを実現するレーザ光照射位置とレーザ光照射順を、レーザリペア装置100の制御部112が後述の方法により決定する。
【0051】
なお、以下では欠陥画像の水平方向および垂直方向の座標軸をそれぞれx軸およびy軸とする。また、以下ではx軸とX軸は平行であり、y軸とY軸は平行であると仮定する。
厳密には、上記の仮定は、レーザリペア装置100の歪み、レーザリペア装置100の各部の取り付け位置または取り付け角度のずれ、およびガラス基板102の歪みまたは撓みなどの影響で成立しないこともある。しかしながら、例えば公知の技術を用いて各種の補正を行うことにより、上記の歪み、ずれ、撓みなどの影響を事実上なくすことが可能であり、上記の仮定が成立すると見なすことができる。
【0052】
続いて、図3〜図11を参照して、第1実施形態においてレーザ光照射位置を決定する
処理について説明する。
図3は、第1実施形態においてレーザ光照射位置を決定する処理のフローチャートである。図3の処理は、1つの欠陥に対して1回実行される。
【0053】
図3のステップS101において、制御部112は、欠陥の外形と外接矩形(bounding
box)との接点を求める。具体的には、ステップS101では次のような処理が行われる。
【0054】
まず、制御部112は、欠陥検査装置から受け取った検査結果に含まれる欠陥の座標のデータに基づいて、対物レンズ109の光軸が欠陥の重心を通るように、ガラス基板102と光学ユニットの相対位置を制御する。そして、制御部112は、ガラス基板102を撮像するようCCDカメラ111に命令する。すると、CCDカメラ111はガラス基板102を撮像し、撮像によって得られた欠陥画像のデータを制御部112に出力する。
【0055】
上記のように、検査結果における座標には多少の誤差が含まれることがある。よって、欠陥画像の中心が厳密に欠陥の重心と一致しているとは限らないが、一般には欠陥が欠陥画像内に含まれていると期待される。
【0056】
たとえ欠陥が欠陥画像からはみ出していても、制御部112はXYステージ101の不図示のモータを制御することで、欠陥が欠陥画像内に位置するよう調整することができる。制御部112は、自動的に調整を行ってもよく、作業者からの操作部113を介した命令にしたがって調整を行ってもよい。よって、以下では欠陥画像内(すなわち視野内)に欠陥が存在するものとして説明する。
【0057】
制御部112は、欠陥画像を処理することで欠陥の外形を求める。制御部112は、例えば、欠陥のない正常な良品のガラス基板を予め撮像しておいて得た基準画像に基づいて欠陥の外形を求めてもよい。なお、基準画像は、例えば、制御部112を実現するコンピュータが備えるハードディスク装置に予め格納されていてもよい。
【0058】
例えば、制御部112は、テンプレートマッチングなどの画像処理技術を用いて、欠陥画像と基準画像との位置合わせを行う。そのうえで制御部112は、例えば、欠陥画像の各画素について、欠陥画像における画素値Pと、基準画像における対応する画素の画素値Qとの差の絶対値|P−Q|を、所定の閾値Tと比較する。制御部112は、|P−Q|≧Tのとき、注目している当該画素が欠陥に含まれると認識し、|P−Q|<Tのとき、当該画素が欠陥に含まれないと認識してもよい。
【0059】
例えば、CCDカメラ111が、輝度画像と呼ばれるモノクロームの画像を撮像するものであれば、制御部112は画素値として輝度値を用いることができる。CCDカメラ111がカラー画像を撮像するものであっても、制御部112は基準画像と欠陥画像との比較から、類似の方法により、各画素が欠陥に含まれるか否かを認識することができる。
【0060】
制御部112は、上記に例示した方法またはその他の方法を用いて、欠陥画像における各画素が欠陥に含まれるか否かを認識することにより、欠陥の外形を求める。
制御部112はさらに、求めた欠陥の外形から、欠陥に外接する外接矩形を求める。第1実施形態では、制御部112の計算負荷を削減するため、外接矩形は、「x軸に平行な辺とy軸に平行な辺で囲まれた矩形である」という条件のもとで求められる。
【0061】
例えば、制御部112は、欠陥画像における各画素について欠陥に含まれるか否かを認識した結果を、欠陥に含まれる画素を「1」という画素値で表し、欠陥に含まれない画素を「0」という画素値で表した2値画像の形式で記憶してもよい。制御部112は、その
2値画像において「1」という画素値で表された画素のうち、x座標が最小のもの、x座標が最大のもの、y座標が最小のもの、y座標が最大のものを調べることで、外接矩形の各辺を求めることができる。
【0062】
また、ステップS101において制御部112は、欠陥の外形と外接矩形との接点も求める。これら接点は、上記2値画像において「1」という画素値で表された画素のうち、x座標が最小のもの、x座標が最大のもの、y座標が最小のもの、y座標が最大のものの、それぞれのxy座標で表される。
【0063】
以上のようにしてステップS101で求められた外接矩形および接点の例を図4に示す。
図4は、第1実施形態においてレーザ光照射位置を決定する処理の途中経過を説明する第1の図である。図4の欠陥201は図2の欠陥201と同じである。なお、図2の配線202〜206は、基準画像と欠陥画像とで共通する部分であるため、図4以降の図では省略されている。
【0064】
図4に示した欠陥201の外接矩形211の4つの頂点は、右上から時計回りに、頂点C1、C2、C3、およびC4である。また、欠陥201の外形と外接矩形211との接点は、外接矩形211の上辺における接点P1、右辺における接点P2、下辺における接点P3、および左辺における接点P4の4点である。
【0065】
ここで図3の説明に戻ると、以上のステップS101の処理に続いて、制御部112は、ステップS102において、未試行の接点の有無を判断する。ここで、ある接点Pが「未試行」であるとは、接点Pの位置に基づいて図5に示す基準矩形302の配置をまだ制御部112が試していないことを意味する。
【0066】
図5は、レーザ光の最大照射範囲と基準矩形について説明する図である。図5に示した円はレーザ光の最大照射範囲301であり、最大照射範囲301に内接する正方形が基準矩形302である。
【0067】
より正確には、最大照射範囲301は、ガラス基板102上に照射可能なレーザ光のビーム断面の形状を、欠陥画像における範囲に変換して示したものである。第1実施形態では、レーザ発振器103から出射されるレーザ光のビーム断面の形状が円形であるため、最大照射範囲301も円形である。
【0068】
また、第1実施形態では、制御部112の計算負荷を削減し、かつ照射回数を抑制するため、x軸に平行な辺とy軸に平行な辺で囲まれ、かつ最大照射範囲301に内接する正方形が、基準矩形302として用いられている。
【0069】
ここで図3の説明に戻ると、図5に示した基準矩形302の配置をまだ制御部112が試行していない接点が残っていれば、処理はステップS102からステップS103に移行する。逆に、すべての接点について制御部112が既に基準矩形302の配置を試行していれば、処理はステップS102からステップS107に移行する。したがって、ステップS101の直後にステップS102が実行された場合は、ステップS103に処理が移行する。
【0070】
ステップS103で制御部112は、図5の基準矩形302を用い、未試行で設定済み照射位置に最も近い接点を含む設定可能領域を求める。
ここで、「設定済み照射位置」とは、図3の処理の進行につれてレーザ光を照射する照射位置として制御部112が設定する位置のことである。複数の照射位置が設定済みの場
合、ステップS103の処理では直近に設定された照射位置が参照される。
【0071】
また、ステップS103が1回目に実行されたときには「設定済み照射位置」は存在しないので、制御部112は外接矩形の頂点を「設定済み照射位置」の代わりに用いてステップS103の処理を行う。つまり、設定済み照射位置が存在しない場合には、制御部112は、各接点について、外接矩形の4つの頂点のうちで当該接点に最も近い頂点までの距離を算出し、算出した距離が最も短い接点を設定済み照射位置の代わりに参照する。
【0072】
また、「設定可能領域」とは、「未試行で設定済み照射位置に最も近い接点」として現在注目している接点から外接矩形の内部の方向に向かって基準矩形302を配置することが可能で、しかも現在注目している接点を境界上に含む領域である。
【0073】
ここで、設定可能領域について説明するため、ステップS103が1回目に実行されたときの具体例について、上記図4を再度参照して説明する。
図4の例においては、ステップS103が1回目に実行されたとき、ステップS101に関して説明した接点P1〜P4のうち、接点P2が外接矩形211の頂点に最も近い。すなわち、図4のとおり、接点P2と頂点C1の距離は、接点P2と他のどの頂点の距離よりも短く、また、接点P1と頂点C1の距離や接点P3と頂点C3の距離などよりも短い。
【0074】
したがって、制御部112は、接点P2を「未試行で設定済み照射位置に最も近い接点」と見なして、設定可能領域を求める。その結果、図4の設定可能領域212が得られる。
【0075】
つまり、上記の定義から、図4の例においては、制御部112は、接点P2から外接矩形211の内部の方向に向かって基準矩形302を配置することが可能で、しかも接点P2を含む領域を求める。接点P2は外接矩形211の右辺上の接点なので、「接点P2から外接矩形211の内部に向かって基準矩形302を配置する」とは、「基準矩形302の右辺と外接矩形211の右辺が一直線上に位置するように基準矩形302を配置する」という意味である。
【0076】
また、上記の定義から、図4の例における設定可能領域212は、現在注目している接点P2を含む領域である。したがって、設定可能領域212の上辺は、接点P2を下端に含むように基準矩形302を配置したときの基準矩形302の上辺の位置により規定される。また、設定可能領域212の下辺は、接点P2を上端に含むように基準矩形302を配置したときの基準矩形302の下辺の位置により規定される。
【0077】
第1実施形態において設定可能領域が上記のように定義されているのは、レーザ光を照射する範囲としての欠陥の範囲(ここでは輪郭線を含む範囲)に各接点が含まれることを考慮しているためである。
【0078】
なお、もし、注目している接点が外接矩形の上辺上の接点(例えば外接矩形211の上辺上の接点P1)であれば、設定可能領域は、外接矩形の上辺と基準矩形302の上辺が一直線上に位置するように基準矩形302を配置することが可能な領域である。
【0079】
また、この場合、設定可能領域の左辺は、注目している接点を右端に含むように基準矩形302を配置したときの基準矩形302の左辺の位置により規定される。そして、設定可能領域の右辺は、注目している接点を左端に含むように基準矩形302を配置したときの基準矩形302の右辺の位置により規定される。
【0080】
あるいは、もし、注目している接点が外接矩形の下辺上の接点(例えば外接矩形211の下辺上の接点P3)であれば、設定可能領域は、外接矩形の下辺と基準矩形302の下辺が一直線上に位置するように基準矩形302を配置することが可能な領域である。
【0081】
また、この場合、設定可能領域の左辺は、注目している接点を右端に含むように基準矩形302を配置したときの基準矩形302の左辺の位置により規定される。そして、設定可能領域の右辺は、注目している接点を左端に含むように基準矩形302を配置したときの基準矩形302の右辺の位置により規定される。
【0082】
あるいは、もし、注目している接点が外接矩形の左辺上の接点(例えば外接矩形211の左辺上の接点P4)であれば、設定可能領域は、外接矩形の左辺と基準矩形302の左辺が一直線上に位置するように基準矩形302を配置することが可能な領域である。
【0083】
また、この場合、設定可能領域の上辺は、注目している接点を下端に含むように基準矩形302を配置したときの基準矩形302の上辺の位置により規定される。そして、設定可能領域の下辺は、注目している接点を上端に含むように基準矩形302を配置したときの基準矩形302の下辺の位置により規定される。
【0084】
ここで図3の説明に戻ると、制御部112は、ステップS103で以上説明したようにして設定可能領域を求めると、続いて、ステップS104において次のような判断処理を行う。
【0085】
ステップS103で注目した接点が外接矩形の右辺または左辺上の接点である場合、制御部112は、設定可能領域の内部に、欠陥の最上点または最下点が存在するか否かを判断する。設定可能領域の内部に最上点または最下点が存在する場合は、処理がステップS105に移行し、設定可能領域の内部に最上点または最下点が存在しない場合は、別の接点に基づく試行のため、処理はステップS102に戻る。
【0086】
ステップS103で注目した接点が外接矩形の上辺または下辺上の接点である場合、制御部112は、設定可能領域の境界を含む内部に、欠陥201の最左点または最右点が存在するか否かを判断する。設定可能領域の内部に最左点または最右点が存在する場合は、処理がステップS105に移行し、設定可能領域の内部に最左点または最右点が存在しない場合は、別の接点に基づく試行のため、処理はステップS102に戻る。
【0087】
なお、ステップS104の判断における「設定可能領域の内部」とは、設定可能領域の上辺、下辺、左辺、および右辺を含む内部という意味である。
例えば、図4の例では、欠陥201の最上点である接点P1が、設定可能領域212の内部に含まれる。したがって、図4の例において処理はステップS104からステップS105に移行する。
【0088】
処理がステップS104からステップS105に移行すると、制御部112は、ステップS104で検出した点を通る辺を持つ設定可能領域内の基準矩形302の位置を、レーザ光を照射する位置として設定する。そして、制御部112は設定した位置に基準矩形302を配置し、基準矩形302の範囲を欠陥から切り取ることで、欠陥の外形を狭める。
【0089】
ここで、「ステップS104で検出した点」とは、ステップS103で注目した接点が外接矩形の右辺または左辺上の接点である場合、設定可能領域の内部に存在することが検出された欠陥の最上点または最下点である。あるいは、ステップS103で注目した接点が外接矩形の上辺または下辺上の接点である場合、「ステップS104で検出した点」とは、設定可能領域の内部に存在することが検出された欠陥の最左点または最右点である。
また、第1実施形態では、基準矩形302の位置は、基準矩形302の重心の位置により表される。
【0090】
ここで、ステップS105において基準矩形302を配置する処理の具体例について説明するため図6を参照する。
図6は、第1実施形態においてレーザ光照射位置を決定する処理の途中経過を説明する第2の図である。図6には、図4と同じ欠陥201、その外接矩形211、および設定可能領域212が示されている。また、上記のように、図4の例ではステップS104で接点P1が検出される。
【0091】
したがって、図6の例において制御部112は、検出した接点P1を通る辺を基準矩形302が持つように、設定可能領域212内に基準矩形302の位置を設定する。なお、ここで接点P1は欠陥201の最上点なので、「接点P1を通る辺を基準矩形302が持つように基準矩形302の位置を設定する」とは、具体的には、基準矩形302の上辺が接点P1を通るように基準矩形302の位置を設定するという意味である。
【0092】
図6には、位置が設定された基準矩形213も図示されている。なお、参照符号「302」は基準矩形一般について用いるが、特定の位置に配置された基準矩形を取り立てて示す場合には、図6の「213」のように、「302」とは異なる参照符号を用いる。
【0093】
また、もし、ステップS104で検出された検出点が欠陥の最下点であれば、ステップS105では基準矩形302の下辺が検出点を通るように基準矩形302の位置が設定される。また、もし検出点が欠陥の最左点であれば、ステップS105では基準矩形302の左辺が検出点を通るように基準矩形302の位置が設定される。同様に、もし検出点が欠陥の最右点であれば、ステップS105では基準矩形302の右辺が検出点を通るように基準矩形302の位置が設定される。
【0094】
以上、図6を参照して説明したようにして基準矩形302の位置すなわちレーザ光の照射位置を設定すると、上記のとおり制御部112は、ステップS105において続いて、基準矩形302の範囲を欠陥から切り取る。この切り取りの処理の具体例について説明するため、ここで図7を参照する。
【0095】
図7は、基準矩形を用いたマスキングを説明する図である。図3のステップS101における欠陥の外形を求める処理に関して説明したように、制御部112は、例えば、欠陥画像における各画素について欠陥に含まれるか否かを認識した結果を、2値画像の形式で記憶してもよい。
【0096】
図7の2値画像401は、欠陥に含まれる画素を「1」という画素値で表し、欠陥に含まれない画素を「0」という画素値で表した2値画像である。図7においては、「1」と「0」という画素値はそれぞれ白と黒で表されている。なお、紙面の都合上、2値画像401は欠陥画像のうち図4の外接矩形211に相当する範囲のみを抜粋して示したものであるが、実際には、外接矩形211の外部は「0」という画素値で表される。
【0097】
ステップS105における切り取りの処理は一般的なマスキング処理である。つまり、図6において外接矩形211内に配置された基準矩形213の範囲のみを、切り取る範囲として「0」という画素値で表した2値画像402を用いて、制御部112はマスキング処理を実行する。
【0098】
具体的には、制御部112は各画素について、2値画像401における画素値と2値画像402における画素値の論理積を算出する。その結果として、図6において欠陥201
から基準矩形213の範囲を切り取った残りを示す2値画像403が得られる。制御部112は、マスキング後の欠陥201の外形として、2値画像403において「1」という画素値で表された領域を認識することができる。
【0099】
ここで図3の説明に戻ると、ステップS105の実行後、処理はステップS106に移行する。ステップS106では、制御部112が、まだ切り取られずに残っている欠陥の有無を判断する。
【0100】
まだ切り取られずに残っている欠陥があれば、処理はステップS101に戻り、残った範囲の欠陥の外形および外接矩形の認識から、上記の処理が繰り返される。逆に、欠陥のすべての部分が切り取り済みであれば、欠陥を除去するのに必要な数だけ、制御部112がレーザ光の照射位置を設定し終えたということなので、図3の処理は終了する。
【0101】
また、上記のステップS102において、未試行の接点がないと制御部112が判断した場合、処理はステップS107に移行する。すなわち、現在切り取られずに残っている欠陥とその外接矩形とのすべての接点について、ステップS102〜S104の処理を繰り返してもステップS105に移行することがなければ、制御部112はステップS107の処理を実行する。
【0102】
ステップS107において、制御部112は、図5の基準矩形302を用い、設定済み照射位置に最も近い接点を含む設定可能領域を求める。ステップS107は、未試行の接点に限らず、現在切り取られずに残っている欠陥の外形とその外接矩形とのすべての接点を対象として、設定済み照射位置に最も近い接点を制御部112が探す以外、ステップS103と同様である。
【0103】
設定済み照射位置が存在しない場合の処理も、ステップS103とステップS107とで同様である。よって、ステップS107の詳しい説明は省略する。ステップS107の実行後、処理はステップS108に移行する。
【0104】
ステップS108において制御部112は、ステップS107で求めた設定可能領域内で、基準矩形302を配置したときに基準矩形302と重なる欠陥の面積が最大となるような基準矩形302の位置を、レーザ光を照射する位置として設定する。そして、制御部112は設定した位置に基準矩形302を配置し、基準矩形302の範囲を欠陥から切り取ることで、欠陥の外形を狭める。
【0105】
例えば、制御部112は、設定可能領域内で、基準矩形302を1画素ずつ動かしながら、基準矩形302と重なる欠陥の面積が最大となる位置を探索してもよい。なお、ステップS108において、配置した基準矩形302の範囲を欠陥から切り取るマスキング処理はステップS105と同様である。ステップS108の実行後、処理はステップS106に移行する。
【0106】
以上、図3の各ステップについて詳細に説明した。上記のとおり、図3の処理は、欠陥の外接矩形を求め、外接矩形に欠陥が接する複数の接点の中から注目する接点を選択し、注目する接点を基準とする設定可能領域内に、最端点を含むことを優先しながら基準矩形302を配置することの繰り返しである。したがって、図3の処理には次のような特徴と効果がある。
【0107】
すなわち、図3の処理は、欠陥の外縁を中心部よりも優先しながら、基準矩形302を配置する位置を決定する点に特徴があり、この特徴は、照射回数の抑制に寄与する。その理由は、欠陥の中心部を優先して基準矩形302を配置する場合と比較すると明らかであ
る。
【0108】
仮に、図3の処理の代わりに、欠陥の中心付近に先に基準矩形302を配置し、欠陥の外縁に向けて順次基準矩形302の配置を繰り返していく処理が行われるとする。すると、最初に配置された基準矩形302の位置によっては、例えば欠陥の上端付近と下端付近の双方に、欠陥との重なりが少ない基準矩形302を配置する必要が生じるかもしれない。
【0109】
欠陥の上端付近と下端付近の双方に、欠陥との重なりが少ない基準矩形302が配置されている場合、配置のパターンを変えれば、より少ない個数の基準矩形302で欠陥の全体を覆いつくすことが可能かもしれない。例えば、配置したすべての基準矩形302を上または下に同じ量ずつずらせば、より少ない個数の基準矩形302で欠陥の全体を覆いつくすことが可能かもしれない。つまり、欠陥の中心付近に先に基準矩形302を配置する方法では、照射回数が無駄に多くなる可能性がある。
【0110】
それに対して、図3の処理では、ステップS101、S102、S103、およびS107において制御部112が、欠陥と外接矩形との接点(すなわち欠陥の最外縁にある点)に注目している。
【0111】
しかも、ステップS104のとおり、右辺または左辺上の接点が注目されている場合は、欠陥の最上点または最下点を基準矩形302が含むように基準矩形302を配置することが優先される。同様に、上辺または下辺上の接点が注目されている場合は、欠陥の最左点または最右点を基準矩形302が含むように基準矩形302を配置することが優先される。
【0112】
したがって、図3の処理によれば、欠陥の外縁から先に基準矩形302が配置されるので、欠陥の中心付近に先に基準矩形302を配置する場合のような無駄が生じない。よって、図3の処理によれば、レーザ光の照射回数を、事実上、必要最低限に抑制することができる。
【0113】
続いて、図3の処理において基準矩形302を配置してはその範囲を切り取る繰り返しについての理解を助けるため、具体例を用いて、図6に示した状態からどのように状態が変遷するのかについて図8〜図10を参照して説明する。
【0114】
ステップS105の1回目の実行により、図6に示したように基準矩形213が配置され、図7に示した処理によって基準矩形213の範囲が欠陥201から切り取られると、切り取り後の欠陥201の右端は、図6に示した点P5と点P6を結ぶ線となる。なお、以下では欠陥201の輪郭線が基準矩形213の左辺と交わる2点のうち、図6において上の方の点を点P5とし、下の方の点を点P6とする。
【0115】
すると、欠陥201の一部がまだ切り取られずに残っているため、処理はステップS106からステップS101に戻り、外接矩形が再度求められる。この2回目のステップS101の実行について図8を参照して説明する。
【0116】
図8は、第1実施形態においてレーザ光照射位置を決定する処理の途中経過を説明する第3の図である。
図8に示すように、基準矩形213の切り取りにより、欠陥201の上端は接点P1から点P5に変わり、右端は接点P2から点P5と点P6を結ぶ線分に変わる。したがって、2回目のステップS101の実行において求められる外接矩形214は、上辺と右辺が点P5を通り、左辺が接点P4を通り、下辺が接点P3を通る矩形である。以下では外接
矩形214の右下の頂点を頂点C5と呼び、左上の頂点を頂点C6と呼ぶ。
【0117】
外接矩形214と、1回目の切り取り後の欠陥201との接点は、次のとおりである。すなわち、上辺での接点は点P5であり、左辺での接点は接点P4であり、下辺での接点は接点P3であり、右辺では点P5と点P6を結ぶ線分上のすべての点が接点である。
【0118】
こうして欠陥201と外接矩形214との接点がステップS101で求められると、続くステップS102において未試行の接点があると判断され、処理はステップS103に移行する。
【0119】
そして、ステップS103で、制御部112は、設定済み照射位置である基準矩形213の重心に最も近い接点として接点P5に注目し、接点P5を含む設定可能領域を求める。なお、接点P5は、外接矩形214の右上の頂点なので、外接矩形214の上辺における接点でもあり、右辺における接点でもある。
【0120】
このように、注目している接点が外接矩形の頂点である場合、第1実施形態では、ステップS104において制御部112は、基準矩形302の上辺または下辺を外接矩形の上辺または下辺と一直線上に揃えるように配置することで設定可能領域を求める。つまり、制御部112は、頂点が右辺または左辺における接点であることよりも上辺または下辺における接点であることに便宜上優先的に注目してステップS103を実行する。
【0121】
ここで「便宜上」と述べる理由は、注目している接点が外接矩形の頂点である場合に、右辺または左辺における接点であることを優先したとしても、後続のステップS104とS105の処理の結果が変わらないためである。
【0122】
例えば、外接矩形214の右上の頂点である接点P5に関して、上辺における接点であることを優先すると、上辺が外接矩形214の上辺と一直線上に位置し、かつ接点P5を含むように基準矩形302を配置することが可能な設定可能領域215が求められる。ここで、接点P5は外接矩形214の右上の頂点なので、欠陥201の最右点でもある。したがって、ステップS104では少なくとも接点P5が検出され、ステップS105では右辺が接点P5を通るように基準矩形302の位置が設定される。
【0123】
図9は、第1実施形態においてレーザ光照射位置を決定する処理の途中経過を説明する第4の図であり、上記のようにして設定された基準矩形216が示されている。上記の説明から明らかなとおり、基準矩形216の右上の頂点は、外接矩形214の右上の頂点でありステップS103で注目した接点でもある接点P5である。
【0124】
ここで、外接矩形214の右上の頂点である接点P5がステップS103で注目された場合に、上記とは逆に、便宜上、右辺における接点であることがステップS104において優先されたと仮定する。
【0125】
この場合、右辺が外接矩形214の右辺と一直線上に位置し、かつ接点P5を含むように基準矩形302を配置することが可能な設定可能領域が求められる。すると、接点P5は欠陥201の最上点でもあるから、ステップS104では接点P5が検出され、ステップS105では上辺が接点P5を通るように基準矩形302の位置が設定される。すなわち、右上の頂点が接点P5と一致するように、基準矩形302の位置が設定され、こうして設定される位置は、図9の基準矩形216の位置と同じである。
【0126】
したがって、注目している接点が外接矩形の頂点である場合に、上辺または下辺における接点であることと、右辺または左辺における接点であることのいずれを優先して注目し
ても、ステップS105の結果は同じである。よって、上記では「便宜上」と述べた。また、便宜上、右辺または左辺における接点であることを優先する実施形態も当然可能である。
【0127】
以上説明したようにして図3の処理が進行すると、最終的には、図10に示したように、複数の基準矩形によって図4の欠陥201の元の範囲の全体が覆われた状態になる。
図10は、第1実施形態においてレーザ光照射位置を決定し終わった段階を説明する図である。図9に関して説明したように基準矩形216の位置が設定された後、同様にして順次、基準矩形217、基準矩形218、および基準矩形219の位置が設定され、図3の処理が終了する。
【0128】
なお、第1実施形態において上記のようにレーザ光照射位置を決定する処理は、例えば図11の比較例と比べて、レーザ光の照射回数を削減し、欠陥の修正にかかる時間を短縮する効果がある。
【0129】
図11は、比較例における複数のレーザ光照射位置を示す図である。図11には、図4と同じ欠陥201の外形およびその外接矩形211が示されている。図11の比較例は、外接矩形211の左上の頂点C4を起点として、外接矩形211を覆うように基準矩形302を2次元アレイ状に規則正しく配置する例である。
【0130】
比較例において外接矩形211を覆うには、図11に示したように、9つの基準矩形220〜228が必要である。このうち、基準矩形225と基準矩形228は、欠陥201と全く重なりがないので実際のレーザ光照射位置の設定から除くことができる。しかしながら、それでも残りの7つの基準矩形220〜224、226、および227の重心が、比較例においてはレーザ光照射位置として設定される。つまり、比較例では欠陥201を修正するのに7回レーザ光を照射する必要がある。
【0131】
他方、図10に示したように、第1実施形態によれば、5つの基準矩形だけで欠陥201を覆いつくすことができるので、欠陥201を修正するのに5回レーザ光を照射するだけでよい。このように、第1実施形態によれば、欠陥201との重なりの少ない位置に無駄に基準矩形302を配置することが避けられる。したがって、第1実施形態では、単に規則的に基準矩形302を配置する比較例よりも少ない回数で欠陥201の修正が可能となる。
【0132】
つまり、第1実施形態は、レーザリペア装置100が欠陥201を修正するのにかかる時間を短縮する効果を有する。なぜなら、照射回数が削減されることにより、レーザ光の照射自体にかかる時間が削減されるだけでなく、レーザ光の照射位置間の移動にかかる時間も削減されるからである。したがって、第1実施形態によれば、高速な修正が実現される。
【0133】
続いて、第1実施形態において上記のようにして設定された複数のレーザ光照射位置に、実際にレーザ光を照射する順序を決定する処理の具体例について、図12を参照して説明する。
【0134】
図12は、第1実施形態においてレーザ光照射順を決定する処理を説明する図である。図12には、図10と同じく欠陥201ならびに設定された5つの基準矩形213、216、217、218、および219が示されている。また、5つの基準矩形213、216、217、218、および219それぞれの重心G1〜G5も示されている。
【0135】
さらに、図12には欠陥201の重心G0も示されている。より正確には、重心G0は
、図1のレーザリペア装置100の制御部112が不図示の欠陥検査装置から受け取った検査結果のデータにおいて欠陥201の重心として示されている点である。したがって、重心G0は、欠陥201の真の重心からは、ずれている可能性もある。
【0136】
図1に関して説明したように、制御部112は、欠陥検査装置から受け取った重心G0の座標を対物レンズ109の光軸が通るようにXYステージ101を制御し、CCDカメラ111にガラス基板102を撮像させる。したがって、重心G0は欠陥画像の中心点である。また、重心G0を対物レンズ109の光軸が通っているので、重心G0は、XYステージ101による相対移動を行わずに現在レーザ光を照射することが可能な位置でもある。
【0137】
したがって、重心G0を起点とし、5つの基準矩形それぞれの重心G1〜G5を1度ずつ通る最短の経路に沿って順にレーザ光の照射を行えば、レーザリペア装置100による欠陥201の修正にかかる時間を最短にすることができる。なお、経路の長さは、XYステージ101によるX方向とY方向の相対移動速度に差がなければユークリッド距離により表すことができ、差があればX方向とY方向の相対移動速度に応じて重み付けされたマンハッタン距離により表すことができる。
【0138】
しかしながら、設定された基準矩形の位置および個数、ならびに重心G0の位置によらず、常に厳密に最短の経路を求めるのが困難であることは、組み合わせ最適化問題の分野で周知のとおりである。
【0139】
そこで、第1実施形態においては、単純なアルゴリズムにより高速で近似解を得るために、制御部112は次のようにしてレーザ光の照射順を決定する。
まず、制御部112は、配置された5つの基準矩形の重心G1〜G5のうち、現在レーザ光を照射することが可能な位置である重心G0からの距離が最短のものを、最初の照射位置として決定する。図12の例では、重心G1〜G5のうちで重心G4が最も重心G0に近い。よって、制御部112は、照射順が1番目の照射位置を重心G4に決定する。
【0140】
その後、制御部112は、まだ照射順が決定されていない重心のうち、照射順がj番目の照射位置からの距離が最短のものを、(j+1)番目の照射位置として決定することを繰り返す(1≦j<N。Nは配置された基準矩形の数であり、図12の例ではN=5)。そして、制御部112が、配置した基準矩形の重心のすべてについて照射順を決定し終えると、レーザ光の照射位置と照射順が確定する。
【0141】
図12の例では、具体的には、重心G4が1番目の照射位置、重心G3が2番目の照射位置、重心G2が3番目の照射位置、重心G1が4番目の照射位置、重心G5が5番目の照射位置である。図12には、重心G0から出発して照射順に5つの照射位置をたどる経路が矢印で示してある。
【0142】
以上のようにしてレーザ光の照射位置と照射順を決定した後、制御部112は、続いて、レーザ光を照射する形状を決定する。以下に、レーザ光を照射する形状を決定する処理について、図12と図13を参照して説明する。
【0143】
図13は、第1実施形態において設定される複数の照射領域の例を示す図である。図1に関して説明したように、第1実施形態ではDMD105を用いているので、レーザ光のビーム断面形状を任意の形状に整形してガラス基板102の表面に照射することが可能である。
【0144】
換言すれば、レーザ光を1箇所に複数回照射すると回路パターンの損傷を招く場合であ
っても、DMD105を用いることによって、照射位置の決定において、基準矩形同士が重なるような配置が許されるようになる。したがって、DMD105を用いることにより、欠陥201の外形に応じて柔軟に複数の基準矩形を配置することが可能となり、照射回数を少なくすることができる。
【0145】
第1実施形態では、欠陥201にのみレーザ光を照射し(つまり、欠陥201の外部へはレーザ光を照射せず)、複数の基準矩形が重なっている領域にも1回だけレーザ光を照射するように、レーザ光を照射する領域の形状を制御部112が決定する。
【0146】
具体的には、制御部112は次のようにして照射領域の形状を決定する。
まず、制御部112は、図12において1番目の照射位置である重心G4に対応する基準矩形218と欠陥201の重なる範囲を、図13に示すように、1回目のレーザ光照射における照射領域501として決定する。
【0147】
その後、制御部112は、(j+1)番目の照射位置に対応する基準矩形と欠陥201が重なる範囲であって、かつ1回目〜j回目のレーザ光照射における照射領域のいずれとも重ならない範囲を、(j+1)回目のレーザ光照射における照射領域に決定する。ここで、1≦j<Nであり、Nは配置された基準矩形の数である。
【0148】
具体的には、2番目の照射位置である重心G3に対応する基準矩形217と欠陥201が重なる範囲であって、かつ1回目の照射における照射領域501とは重ならない範囲を、制御部112は2回目のレーザ光照射における照射領域502として決定する。
【0149】
また、3番目の照射位置である重心G2に対応する基準矩形216は、図12において基準矩形217と重なっている。よって、制御部112は、3回目のレーザ光照射における照射領域503として、基準矩形216と欠陥201が重なる範囲のうち照射領域502と重ならない部分のみを選択する。
【0150】
4番目の照射位置である重心G1に対応する基準矩形213と、5番目の照射位置である重心G5に対応する基準矩形219は、図12に示すように、もともと他の基準矩形とは重なっていない。したがって、制御部112は図13に示すように、基準矩形213と欠陥201の重なる範囲を4回目のレーザ光照射における照射領域504として選択し、基準矩形219と欠陥201の重なる範囲を5回目のレーザ光照射における照射領域505として選択する。
【0151】
図13に示すように、5回のレーザ光照射に対応する5つの照射領域501〜505は、互いに素な領域であり、欠陥201の全域を覆いつくしている。したがって、レーザリペア装置100が照射領域501〜505に順にレーザ光を照射することにより、欠陥201上にもれなくレーザ光が照射されるとともに、欠陥201以外の部分にはレーザ光が照射されない。したがって、欠陥201以外の部分が不要なレーザ光の照射によって損傷してしまうといったことは起こらない。
【0152】
制御部112は、上記のようにして決定したレーザ光の照射位置、照射順、および照射領域に基づいて、欠陥201上へのレーザ光の照射を制御する。具体的には、1≦j<Nであり、Nは配置された基準矩形の数であるとして、制御部112は各整数jについて以下の処理を行う。
【0153】
すなわち、制御部112は、j番目の照射位置を対物レンズ109の光軸が通るようにXYステージ101を制御する。また、制御部112は、j回目のレーザ光照射における照射領域のデータを用いてDMD105の各微小ミラーの状態を制御したうえで、レーザ
発振器103にレーザ光を出射させる。
【0154】
図14は、第1実施形態において設定される1つの照射領域に対応するDMD制御データの例を模式的に示す図である。
上記のとおりDMD105の各微小ミラーはオン状態とオフ状態に制御可能である。したがって、例えば1回目のレーザ光の照射において制御部112は、欠陥画像において図13の照射領域501に含まれる画素に対応する微小ミラーをオン状態に駆動することを指示するとともに、それ以外の微小ミラーにをオフ状態に駆動することを指示する。
【0155】
制御部112がDMD105を制御するためのDMD制御データ600は、例えば、オン状態を示す「1」という値と、オフ状態を示す「0」という値のいずれかを微小ミラーごとに指定するデータでもよい。
【0156】
図14では、模式的に、「1」という値が指定された微小ミラーを白で表し、「0」という値が指定された微小ミラーを黒で表している。したがって、図13の照射領域501に対応する部分が、図14ではオン領域601として白く表されている。また、図示の便宜上、最大照射範囲603を示す円と最大照射範囲603に内接する基準矩形602とを白線で示したが、最大照射範囲603および基準矩形602の輪郭上の微小ミラーをオン状態に駆動するという意味ではない。
【0157】
図14に示すように、DMD105は、最大照射範囲603よりも広い範囲にわたって微小ミラーを2次元アレイ状に配置したものでもよい。その場合、DMD105を移動可能な構成としておくと、微小ミラーが破損した領域ができたときにキャリブレーションを行うことにより、DMD105の交換なしにリペアを継続することができる。
【0158】
以上、図1〜図14を参照して第1実施形態について説明した。
続いて、第2実施形態について、図2、図13、および図15を参照して主に第1実施形態との違いを説明する。
【0159】
図15は、第2実施形態において設定される複数の照射領域の例を示す図である。第2実施形態では、レーザリペア装置100は、欠陥201の全域にわたってレーザ光を照射するのではなく、照射禁止領域を除いた範囲にのみレーザ光を照射して欠陥201を修正する。照射禁止領域は、任意の基準にしたがって予め定めておくことができるが、第2実施形態では図2の配線202〜206と重なる領域である。
【0160】
図2において欠陥201は配線202、203、および205と重なっている。レーザ発振器103の仕様や配線202、203、および205の性質などによっては、欠陥201へのレーザ光の照射によって配線202、203、および205が損傷する危険性がある。そこで、第2実施形態では図2の配線202〜206の領域が照射禁止領域として予めレーザリペア装置100に登録される。
【0161】
例えば、照射禁止領域は、図3のステップS101に関して説明した基準画像上で定義されていてもよい。例えば、制御部112は、上記のように欠陥201を抽出する際に欠陥画像と基準画像の位置合わせを行うので、基準画像上で定義された照射禁止領域に対応する欠陥画像内の領域を認識することができる。
【0162】
第2実施形態と第1実施形態におけるレーザリペア装置100の動作の違いは、制御部112が照射領域を決定する動作にある。すなわち、第2実施形態においては、レーザ光の照射位置と照射順を決定した後、制御部112が次のようにして照射領域を決定する。
【0163】
まず、制御部112は、1番目の照射位置に対応する基準矩形と基準矩形の重なる範囲であって、照射禁止領域とは重ならない範囲を、1回目のレーザ光照射における照射領域として決定する。図2、図13、および図15を比較すると分かるように、第1実施形態における照射領域501は、配線205の領域と一部が重なるので、第2実施形態における2つの分離した照射領域501aと501bに対応する。
【0164】
なお、DMD105を用いることによって、このように分離した2つの照射領域501aと501bに同時にレーザ光を照射することが可能である。よって、照射禁止領域を設定することによって照射回数が増加するということはない。すなわち、初めから欠陥が複数に分離したものであったとして処理を行うことができる。
【0165】
その後、制御部112は、(j+1)番目の照射位置に対応する基準矩形と欠陥201が重なる範囲であって、かつ1回目〜j回目のレーザ光照射における照射領域のいずれとも重ならず、かつ照射禁止領域とも重ならない範囲を選択する。そして、制御部112は選択した範囲を(j+1)回目のレーザ光照射における照射領域に決定する。
【0166】
具体的には、第1実施形態での2回目のレーザ光照射における照射領域502は、照射禁止領域との重なりがないので、第2実施形態でも同じく2回目のレーザ光照射における照射領域502として決定される。
【0167】
また、第1実施形態での3回目のレーザ光照射における照射領域503は、配線202および205と一部が重なる。よって、第2実施形態では、配線202および205の領域とは重ならず、互いに分離した2つの照射領域503aと503bが、3回目のレーザ光照射における照射領域として決定される。
【0168】
同様に、第1実施形態での4回目のレーザ光照射における照射領域504は、配線202と一部が重なる。よって、第2実施形態では、その重なりを除いた照射領域504aが、4回目のレーザ光における照射領域として決定される。
【0169】
また、第1実施形態の5回目のレーザ光照射における照射領域505は、配線203と一部が重なる。よって、第2実施形態では、配線203の領域とは重ならず、互いに分離した2つの照射領域505aと505bが、5回目のレーザ光照射における照射領域として決定される。
【0170】
続いて、第3実施形態について、図3、図7、図8、および図16を参照して主に第1実施形態との違いを説明する。
図16は、第3実施形態においてレーザ光照射位置を決定する処理の途中経過を説明する図である。第3実施形態は、制御部112が基準矩形302の配置を繰り返すことで複数の照射位置を決定していく過程において、切り取りには基準矩形302ではなく最大照射範囲301を用いる点で第1実施形態と異なっている。
【0171】
図3のステップS105とS108では、基準矩形302の位置の設定と、欠陥からの基準矩形302の切り取りが行われる。第3実施形態では、ステップS105とS108において、基準矩形302ではなく最大照射範囲301が欠陥から切り取られる。
【0172】
図16には、図8と同様の欠陥201と、最初に位置が設定された基準矩形213が示されている。第1実施形態では、基準矩形213が欠陥201から切り取られる。しかしながら、第3実施形態では、位置が設定された基準矩形213に外接する最大照射範囲229が欠陥201から切り取られる。
【0173】
切り取りの処理は、図7に示したような単純なマスキング処理により実現可能である。よって、第3実施形態において制御部112は、図7の2値画像402のように基準矩形213の範囲が「0」という値に設定されたマスクを用いる代わりに、最大照射範囲229が「0」という値に設定されたマスクを用いるだけでよい。
【0174】
つまり、第3実施形態は第1実施形態と比較してアルゴリズムの複雑さが増してはいない。それにもかかわらず、第3実施形態においては、制御部112が、基準矩形302を1回配置するたびに第1実施形態よりも広い範囲を切り取るので、レーザ光の照射回数を第1実施形態よりも削減することが可能な場合がある。
【0175】
例えば、図16に示すように第3実施形態においては、基準矩形213よりも広い最大照射範囲229が欠陥201から切り取られる。最大照射範囲229の輪郭線と欠陥201の輪郭線の2つの交点のうち上にある方を点P7、下にある方を点P8と呼ぶことにすると、点P7は点P5よりも左下にあり、点P8は点P6よりも左にある。したがって、最大照射範囲229の切り取り後の欠陥201の外接矩形230は、図8の外接矩形214よりも小さい。
【0176】
欠陥201の外形によっては、このように切り取りのたびに第1実施形態よりも広い範囲を切り取ることにより、レーザ光の照射回数を削減可能な場合がある。そして、レーザ光の照射回数が削減されれば、欠陥201の修正にかかる時間が削減される。
【0177】
なお、第3実施形態においても、円形の最大照射範囲229を切り取った後、再度処理が図3のステップS101に戻り、その後にステップS103またはS107で制御部112が設定可能領域を求めるに際しては、基準矩形302が用いられる。なぜなら、x軸に平行な辺とy軸に平行な辺で囲まれた基準矩形302を用いて設定可能領域を求めるアルゴリズムは単純で、制御部112の計算負荷が低く、処理時間が短くて済むからである。
【0178】
図16の例では、点P7が欠陥201の新たな上端なので、外接矩形230の上辺は点P7を通り、点P7は外接矩形230と欠陥201との接点である。また、点P7よりも点P8の方がわずかに右にあり、点P8が欠陥201の新たな右端であるため、外接矩形230の右辺は点P8を通り、点P8は外接矩形230と欠陥201との接点である。なお、図16では、外接矩形230の右上の頂点を頂点C7として示し、右下の頂点を頂点C8として示し、左上の頂点を頂点C9として示してある。
【0179】
ステップS105における最大照射範囲229の切り取り後、制御部112はステップS103で、設定済みの基準矩形213の重心に最も近い節点P7に注目して設定可能領域231を求める。
【0180】
続いて、第4実施形態について、図17を参照して主に第1実施形態との違いを説明する。第4実施形態においては、レーザ光を照射すべき位置として、モニタ114が表示する欠陥画像または欠陥201の外形における位置を指定する入力を受け取る指定手段として、操作部113が機能する。そして、レーザリペア装置100は、操作部113が受け取った入力により指定される位置にレーザ光を照射する。
【0181】
図17は、第4実施形態においてモニタに表示される画面例の図である。第4実施形態では、CCDカメラ111が撮像した欠陥画像に、最大照射範囲701や702の円形の枠を重ね合わせて、表示手段としてのモニタ114に表示させる制御を制御部112が行う。
【0182】
すなわち、制御部112は、欠陥画像をモニタ114に表示させるとともに、操作部113を介して作業者から指定される位置情報を操作部113から受け取る。そして、制御部112は、受け取った位置情報が表す位置に最大照射範囲701や702などの枠を重ね合わせて表示するよう、モニタ114を制御する。
【0183】
例えば、操作部113がマウスにより実現される場合、制御部112は、マウスのドラッグ操作に応じて最大照射範囲701の枠を欠陥画像内で移動しながら表示するよう、モニタ114を制御する。そして、例えばクリック操作が行われると、制御部112はクリック操作が行われたときのカーソル位置に最大照射範囲701を配置する。
【0184】
図17に示すように、操作部113は、複数の最大照射範囲の配置の指示、換言すればレーザ光の照射位置の指示を受け取ることができる。そして、制御部112は指示にしたがって複数の最大照射範囲(例えば最大照射範囲701および702)を配置する。
【0185】
また、操作部113からレーザ光の照射位置の指示を終了する旨の命令を受けると、それを契機として制御部112は、例えば第1実施形態と同様にしてレーザ光の照射順を決定し、レーザ光の照射領域の形状を設定する。そして、制御部112は、各照射位置に照射順にしたがって順次レーザ光を照射するよう、XYステージ101、レーザ発振器103、およびDMD105を制御する。
【0186】
すなわち、第4実施形態によれば、作業者からの指示に基づいてレーザ光の照射が行われるので、照射位置を柔軟に決定することができる。
また、レーザリペア装置100が1箇所の照射位置の指示を受けるたびに実際にレーザ光の照射を行う場合と比較すると、第4実施形態は、複数回の照射に要する時間が短いという利点を有する。なぜなら、指示された複数の照射位置同士の距離を考慮して制御部112が照射順を決定するので、複数の照射位置を結ぶ可能な経路のうちで比較的短い経路が選択されるからである。
【0187】
このように、第4実施形態によれば、手動による指示に基づいて欠陥201の修正を行う場合においても、従来よりも修正時間を短縮することができる。
なお、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、様々に変形可能である。以下にその例をいくつか述べる。
【0188】
レーザリペア装置100は、DMD105の代わりに、透過型液晶または反射型液晶を用いた空間光変調器を備えていてもよい。また、レーザリペア装置100は、2次元アレイ状に微小デバイスが配列された空間光変調器の代わりに、1次元状(すなわち線状)に微小デバイスが配列された空間光変調器を用いてもよい。
【0189】
あるいは、レーザリペア装置100は、空間光変調器の代わりに矩形可変スリットなどによってレーザ光のビーム断面形状を整形してもよいし、レーザ光のビーム断面形状を整形する部品を備えていなくてもよい。
【0190】
スリットを用いる実施形態や、レーザリペア装置100がレーザ光のビーム断面形状を整形する部品を備えない実施形態においては、欠陥以外の部分にもレーザ光が照射されることになる。また、互いに重なって設定された基準矩形がある場合は、1箇所に2回以上レーザ光が照射される場合もありうる。
【0191】
しかし、レーザ光の強度、レーザ光の波長、ガラス基板102上に形成された回路パターンの性質などによっては、欠陥以外の部分にレーザ光が照射されたり同じ場所に2回以上レーザ光が照射されたりしても、回路パターンが損傷されるおそれがない。よって、そ
のようにレーザ光による損傷のおそれがないと判明している場合には、スリットを用いる実施形態や、レーザリペア装置100がレーザ光のビーム断面形状を整形する部品を備えない実施形態を採用してもよい。
【0192】
なお、レーザリペア装置100がレーザ光のビーム断面形状を整形する部品を備えない場合は、制御部112は、図12のようにレーザ光の照射順を決定した後、図13のように照射領域を決定する必要がない。
【0193】
また、レーザ光の照射順を決定するための図12の処理は、任意の最短経路探索アルゴリズムに置き換えることが可能である。あるいは、制御部112は、例えば「x座標の値が大きな照射位置から順にレーザ光を照射する」、または「基準矩形302が配置された順にレーザ光を照射する」などの予め決められた規則にしたがって照射順序を決定してもよい。
【0194】
また、照射順を決定する処理において、照射位置同士の距離は、ユークリッド距離で表してもよく、ガラス基板102と対物レンズ109のX方向とY方向それぞれの相対移動にかかるコストに応じて重みづけしたマンハッタン距離で表してもよい。コストとしては、例えばモータ駆動電力や移動時間を用いることができる。
【0195】
さらに、図5において基準矩形302は最大照射範囲301に内接する正方形だが、基準矩形302は、最大照射範囲301に含まれる矩形でありさえすればよい。基準矩形302は、最大照射範囲301に内接していなくてもよいし、正方形でなく長方形であってもよい。
【0196】
また、レーザ発振器103の仕様に応じて、最大照射範囲の形状は、円でない場合もある。最大照射範囲の形状によらず、最大照射範囲に含まれる任意の矩形を基準矩形として利用することができる。
【0197】
また、第1実施形態において制御部112は、図3のステップS103を1回目に実行するとき、外接矩形の頂点に最も近い接点に注目する。しかし、ステップS103の1回目の実行において、制御部112は、注目する接点を別の基準で選択してもよい。例えば、制御部112は、重心G0と各接点との距離を考慮して注目する接点を決定してもよい。
【0198】
あるいは、制御部112は、ステップS103の1回目の実行において複数の接点にそれぞれ注目した複数の場合について以降の処理をそれぞれ実行し、決定した複数の照射位置をたどる経路が最短となる場合の結果を採用してもよい。例えば、制御部112は、ステップS103の1回目の実行において図4の4つの接点P1〜P4にそれぞれ注目し、以降の処理を4つの場合についてそれぞれ実行して照射位置と照射順を求めてもよい。その結果、4つの場合のうちで、複数の照射位置をたどる経路が最短となる場合の結果にしたがって、制御部112は実際のレーザ光の照射を制御してもよい。
【0199】
また、上記の各実施形態では、外接矩形および基準矩形302の各辺は、x軸またはy軸に平行である。その理由は上記のとおり、制御部112の計算負荷を軽減するためである。しかしながら、欠陥の形状に合わせた向きの外接矩形および基準矩形を用いる実施形態も可能である。
【0200】
具体的には、制御部112は、レーザ光の照射回数をより削減し、各照射を結ぶ経路をより短くするため、『ディジタル画像処理』(CG−ARTS協会発行)の183ページに記載の方法などにより、欠陥の外形の主軸の方向を計算してもよい。すなわち、制御部
112は、下記の式(1)により定義されるpq次モーメントM(p,q)を用いて下記の式(2)の方程式を解くことで、欠陥の外形の主軸がx軸となす角θを計算してもよい。
【0201】
【数1】

【0202】
【数2】

【0203】
なお、式(1)における総和記号Σは、欠陥画像において欠陥に含まれるすべての画素について、当該画素の座標を(x,y)=(i,j)として、(i)の和を算出することを表している。また、欠陥の外形の主軸の方向は、欠陥の重心を通る直線がx軸となす角θにより表される。
【0204】
制御部112は、式(1)と(2)によって欠陥の外形の主軸の方向を計算し、x軸に対して角θだけ傾いた辺を持つ矩形という条件で、欠陥の外接矩形を求めてもよい。そして、x軸に対して角θだけ傾いた辺を持ち、最大照射範囲301に含まれる矩形という条件で、基準矩形を定義してもよい。
【0205】
x軸に対して傾いた外接矩形と基準矩形を用いる点以外は、制御部112は、第1〜第3実施形態と同様に動作する。傾いた外接矩形と基準矩形を用いることで、例えば角θの傾きを持つ楕円状の欠陥をより効率よく修正することが可能となる。
【0206】
また、制御部112は、主軸の方向を計算する代わりに、予め決められたM個の角度θ1〜θMについて、それぞれx軸に対して角θjだけ傾いた外接矩形と基準矩形を用いて照射位置と照射順を決定し、修正にかかる時間tjを見積もってもよい(1≦j≦M)。そして、見積もった時間tjが最短となる場合の照射位置と照射順にしたがって、制御部112はレーザ光の照射を制御してもよい。
【0207】
なお、図1では制御部112がレーザリペア装置100に含まれているが、レーザリペア装置100の外部の不図示のサーバ等の情報処理装置が、制御部112の機能を果たしてもよい。
【0208】
例えば、サーバは、CCDカメラ111がガラス基板102を撮像して得られた画像データを取得する取得手段として、レーザリペア装置100からネットワークを介して送信されたデータを受信するネットワーク・インタフェイスを備えていてもよい。そして、サーバは、例えば第1実施形態における制御部112と同様に、欠陥抽出手段および照射位置決定手段として機能してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0209】
【図1】第1実施形態によるレーザリペア装置の構成図である。
【図2】欠陥の例を示す図である。
【図3】第1実施形態においてレーザ光照射位置を決定する処理のフローチャートである。
【図4】第1実施形態においてレーザ光照射位置を決定する処理の途中経過を説明する第1の図である。
【図5】レーザ光の最大照射範囲と基準矩形について説明する図である。
【図6】第1実施形態においてレーザ光照射位置を決定する処理の途中経過を説明する第2の図である。
【図7】基準矩形を用いたマスキングを説明する図である。
【図8】第1実施形態においてレーザ光照射位置を決定する処理の途中経過を説明する第3の図である。
【図9】第1実施形態においてレーザ光照射位置を決定する処理の途中経過を説明する第4の図である。
【図10】第1実施形態においてレーザ光照射位置を決定し終わった段階を説明する図である。
【図11】比較例における複数のレーザ光照射位置を示す図である。
【図12】第1実施形態においてレーザ光照射順を決定する処理を説明する図である。
【図13】第1実施形態において設定される複数の照射領域の例を示す図である。
【図14】第1実施形態において設定される1つの照射領域に対応するDMD制御データの例を模式的に示す図である。
【図15】第2実施形態において設定される複数の照射領域の例を示す図である。
【図16】第3実施形態においてレーザ光照射位置を決定する処理の途中経過を説明する図である。
【図17】第4実施形態においてモニタに表示される画面例の図である。
【符号の説明】
【0210】
100 レーザリペア装置
101 XYステージ
102 ガラス基板
103 レーザ発振器
104 ミラー
105 DMD
106、108 ハーフミラー
107 結像レンズ
109 対物レンズ
110 照明光源
111 CCDカメラ
112 制御部
113 操作部
114 モニタ
201 欠陥
202〜206 配線
211、214、230 外接矩形
212、215、231 設定可能領域
213、216〜228、302、602 基準矩形
229、301、603、701、702 最大照射範囲
401〜403 2値画像
501〜505、501a〜505b 照射領域
600 DMD制御データ
601 オン領域
P1〜P8 接点
C1〜C9 頂点
G0〜G5 重心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物上の欠陥を修正するレーザリペア装置であって、
レーザ光を射出する射出手段と、
前記射出手段が射出した前記レーザ光を前記対象物に導く光学系と、
前記対象物を撮像して画像データを生成する撮像手段と、
前記撮像手段が生成した前記画像データに基づいて、前記対象物上の前記欠陥の外形を抽出する欠陥抽出手段と、
前記射出手段と前記光学系により前記レーザ光が前記対象物上に照射される範囲が、前記欠陥の前記外形と前記外形に外接する外接矩形との複数の接点のうち少なくとも1つを含むように、前記対象物上に前記レーザ光を照射する位置を決定することを、前記欠陥抽出手段が抽出した前記欠陥の前記外形を前記位置と前記範囲に基づいて狭めながら繰り返す照射位置決定手段とを備え、
前記照射位置決定手段が繰り返しにより決定した複数の前記位置に、前記光学系を介して前記レーザ光を照射することを特徴とするレーザリペア装置。
【請求項2】
前記照射位置決定手段が決定した前記複数の位置間の距離に基づいて、前記複数の位置に前記レーザ光を照射する順序を決定する照射順序決定手段をさらに備え、
前記照射順序決定手段が決定した前記順序で、前記照射位置決定手段が決定した前記複数の位置に、前記光学系を介して前記レーザ光を照射する、
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザリペア装置。
【請求項3】
前記照射位置決定手段は、前記複数の接点のうち前記外接矩形の頂点に最も近い接点を前記範囲が含むように、前記位置を決定することを特徴とする請求項1または2に記載のレーザリペア装置。
【請求項4】
前記照射位置決定手段は、決定した前記位置に配置された前記範囲または前記範囲に内接する矩形を取り除くことにより、前記欠陥の前記外形を狭めることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のレーザリペア装置。
【請求項5】
前記光学系によって前記射出手段から前記対象物へと導かれる前記レーザ光の光路上に配置され、前記レーザ光のビーム断面形状を整形するレーザ光整形手段と、
前記欠陥抽出手段が抽出した前記欠陥の前記外形と、前記照射位置決定手段が決定した前記複数の位置にそれぞれ前記範囲を配置したときに生じる前記範囲同士の重なりに基づいて、前記ビーム断面形状を整形するよう、前記レーザ光整形手段を制御する整形制御手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のレーザリペア装置。
【請求項6】
前記レーザ光整形手段が、1次元または2次元に配列された複数の微小デバイスを備える空間光変調手段であり、
前記整形制御手段は、前記空間光変調手段が備える前記複数の微小デバイスをそれぞれ制御することで、前記空間変調手段に前記ビーム断面形状を整形させる、
ことを特徴とする請求項5に記載のレーザリペア装置。
【請求項7】
前記整形制御手段は、前記レーザ光の照射を禁止することが予め決められた照射禁止領域にも基づいて、前記レーザ光整形手段を制御することを特徴とする請求項5または6に記載のレーザリペア装置。
【請求項8】
前記画像データまたは前記欠陥の前記外形を表示する表示手段と、
前記表示手段が表示する前記画像データまたは前記欠陥の前記外形における位置を、前記レーザ光を照射すべき位置として指定する入力を受け取る指定手段と、
をさらに備え、
前記指定手段が受け取った前記入力により指定される前記位置に、前記光学系を介して前記レーザ光を照射する、
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザリペア装置。
【請求項9】
レーザ光の照射により対象物上の欠陥を修正するレーザリペア装置が、
対象物を撮像して画像データを生成し、
生成した前記画像データに基づいて、前記対象物上の前記欠陥の外形を抽出し、
前記レーザ光が前記対象物上に照射される範囲が、前記欠陥の前記外形と前記外形に外接する外接矩形との複数の接点のうち少なくとも1つを含むように、前記対象物上に前記レーザ光を照射する位置を決定することを、抽出した前記欠陥の前記外形を前記位置と前記範囲に基づいて狭めながら繰り返し、
繰り返しにより決定した複数の前記位置に前記レーザ光を照射する、
ことを特徴とするレーザリペア方法。
【請求項10】
対象物上の欠陥を修正するレーザリペア装置がレーザ光を照射すべき前記対象物上の複数の位置を決定する情報処理装置であって、
前記対象物を撮像して得られた画像データを取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記画像データに基づいて、前記対象物上の前記欠陥の外形を抽出する欠陥抽出手段と、
前記レーザリペア装置において前記レーザ光が前記対象物上に照射される範囲が、前記欠陥の前記外形と前記外形に外接する外接矩形との複数の接点のうち少なくとも1つを含むように、前記対象物上に前記レーザ光を照射する位置を決定することを、前記欠陥抽出手段が抽出した前記欠陥の前記外形を前記位置と前記範囲に基づいて狭めながら繰り返す照射位置決定手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−139693(P2010−139693A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315416(P2008−315416)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】