説明

レーザ装置

【課題】外部共振器を備えるレーザ装置における光軸調整作業の簡易化を図る。
【解決手段】レーザ光源1、入力結合素子9を有する外部共振器14、光検出素子6、光軸調整具を備える。光源1側に配置される光軸調整具4a,4bの間の特定位置と、光検出素子6の受光面とを幾何光学的な共役関係に配置する。例えば一対のミラーを光軸調整具としてその間に共役点を設けることにより、光検出素子6上のスポット位置変動量を抑制でき、光検出素子6を移動することなく光軸調整可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光源を有し、外部共振器において波長を変換するレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光源からのレーザ光を外部共振器に結合し、共振させるレーザ装置はよく知られており、主に共振器内部に配置された非線形光学結晶にて波長変換、特に第2高調波発生装置に用いられている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
一方、近年、医療分野において光線力学的治療(PDT:photodynamic therapy)が注目されている。この方法は、正常細胞よりがん細胞に吸収され易く、かつ、光吸収により活性酸素を発生しがん細胞を死滅させる作用を有する腫瘍親和性光感受性物質を、静脈注射により患者に投与し、この増感剤に吸収されやすい波長のレーザ光を照射してがん細胞を死滅させるものである。PDTは、従来のがん治療法との併用あるいは代替により、初期の表在性がん、例えば肺がん、食道がん、胃がん、子宮がんなどに対して治療効果があることが判明しており、以下の特徴がある。
(1)正常細胞の障害を最小限に抑えてがん細胞を破壊できる。
(2)治療後の臓器などの機能保持が可能で、治療後の「生活の質(QOF:quality of life)」が保たれる。
(3)必要に応じた再治療が可能である。
(4)体力の衰えた患者にも適用できる。
PDTに適した光源は波長が650nm付近の連続波レーザである。この波長は、治療に用いられる光感受性物質の吸収波長にあたり、また、連続波はパルス波に比べてピークパワーが小さいため通常細胞に与えるダメージを小さくすることができる点で有利である。
【特許文献1】特開平8−116122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、650nm付近の波長の連続波レーザとしては赤色半導体レーザが知られているが、赤色半導体レーザでは出力が小さすぎる。また、赤色半導体レーザから放射される光は発振線幅が広い波長範囲に亘っているため、光感受性物質への吸収効率が低く、光感受性物質に吸収されない光が多い。光感受性物質に吸収されない光のエネルギーは通常細胞にダメージを与えてしまう。そのため、発振線幅の狭いレーザが求められている。
【0005】
一方、1000nm以上の波長帯域では線幅の狭いレーザはよく知られているため、線幅の狭い650nm付近の波長を作り出すには、1300nmのレーザを外部共振器に導き、共振器内に配置された非線形光学結晶から第2高調波を発生させればよい。しかしながら、外部共振器によりこのような波長帯域の光を波長変換するレーザ装置を製造する際には、以下に説明するような問題がある。
【0006】
このようなレーザ装置の組立調整作業において、外部共振器の共振を達成するためには、レーザ光源101からのレーザ光を光軸調整し、外部共振器にモードマッチングさせる作業が不可欠となる。光軸調整は通常、レーザ光源と外部共振器の間に配置されたミラーによって行われる。光軸は角度と平行移動の2つの成分があるため、これらを任意に設定するための光軸調整具として、最低2つのミラーが必要となる。
【0007】
調整手順の一例について、外部共振器を有するレーザ装置の一例の概略構成を示す図12を参照して説明する。図12に示すように、このレーザ装置は、レーザ光源101、位相変調器102、レンズ103、光軸調整具としての一対の調整用ミラー104a及び104b、外部共振器114、コリメータレンズ105、光検出素子106より構成される。外部共振器114は、入力結合鏡109、ミラー110、共振器ミラー111a及び111bより成り、共振器ミラー111a及び111bの間に非線形光学結晶112が配置される。また、光検出素子106からの出力が制御回路107及びオシロスコープ108に出力される。
【0008】
このような構成において、レーザ光源101から出射されるレーザ光は、レンズ103を介して調整用ミラー104a、104bで反射され、入力結合鏡109を介して外部共振器114へ導かれる。外部共振器114を構成するミラー110をアクチュエータ113によって前後に細かく往復することによって共振器長を微小に変化させながら、入力結合鏡109からの反射光を光検出素子106で受け、その出力信号をオシロスコープ108でモニターする。
ここでモードマッチング、すなわち光軸調整が全くなされていない場合は図13Aに示すように、一定の信号レベルが検出される。調整用ミラー104a及び104bの角度調整によって光軸を調整し、徐々にモードマッチング率を高くしていくと、共振器長が波長の整数倍となったときに共振器へ光が引き込まれることによって図13Bにおいて破線Sで囲んで示すように、電流値が低下するディップと呼ばれる信号が現れる。図13Cに示すようにこのディップが最も深くなったところでモードマッチングの調整が終了する。この作業において、ミラーの角度調整によってビームの光軸が変化すると同時に、入力結合鏡109で反射され光検出素子106へ向かうビームも向きを変える。
なお、図12に示すように、レーザ光源101とレンズ103との間に位相変調器102を配置することにより、モードマッチングされた後の使用状態において、モニター用のサイドバンドの光(光源の波長λに対し±Δλの波長を有する光)を生成し、これらの光を利用して外部共振器114での波長λの光の変換光率をモニターすることができる。この結果に基づいて例えば外部共振器114を構成するミラー110に取り付けたVCM(Voice Coil Motor)等のアクチュエータ113を調整することにより、例えば非線形光学結晶112による2次高調波の出力のばらつきを抑えることができる。
【0009】
現状のレーザ装置においては、入力結合鏡109と光検出素子106の間に配置されたコリメータレンズ105の後ろ側焦点位置付近に光検出素子106の受光面が位置している。このため調整にともなう光軸の変化によって受光面上におけるレーザ光が光軸と垂直の方向に移動して、受光面内からはずれてしまう。このときの信号の変化の一例を図14A〜Cに模式的に示す。レーザ光が受光面からはずれ、図14A及び図14Bにおいてそれぞれ実線d1、実線d2で示すように信号レベルが下がるとか、または、図14Cにおいて実線d3で示すように全く信号が得られなくなってしまう。このような場合は、受光位置が光軸からずれた分だけ光検出素子の位置をずらす作業を行う必要が生じる。
【0010】
一方、光検出素子においては、近赤外線である1300nmに感度を持つ光検出素子であるInGaAsフォトダイオードの光応答速度が遅いという問題がある。
図15は、可視光で使用されるシリコンフォトダイオードとInGaAsフォトダイオードとにおける受光部直径に対する遮断周波数の変化を示す図である。なお、遮断周波数が高いほど光応答速度が速い。図15から分かるように、同じ受光部直径で比べるとInGaAsフォトダイオードがシリコンフォトダイオードに比べてはるかに光応答速度が遅いことがわかる。光検出素子の光応答速度が遅いと、サーボロッキングが不安定となり、ノイズの多いレーザとなってしまう。一例として、上述したようなサイドバンドの光を利用して出力モニターを行う場合は、20MHz以上、望ましくは50MHz程度の応答速度が必要となる。したがって、InGaAsフォトダイオードを用いてシリコンフォトダイオードと同等の光応答速度を得るためには、受光部直径が非常に小さいものを使わざるをえない。
このようにInGaAsフォトダイオードを光検出素子として用いる場合において、応答速度を早くするために受光部直径を小さくすると、上述したように、光軸調整中に光検出素子106の位置をずらす回数が非常に多くなり、このことが調整作業の困難さの原因となっている。また調整が可能であっても作業に時間がかかり、コストが甚大となるという問題がある。外部共振器114に配置する非線形光学結晶112が劣化するなどして交換する際にもこのような光軸調整は必要となるので、装置の製造過程のみではなく、メンテナンス、修理作業の際においても、このような調整作業の時間を短縮することが強く望まれている。
また近年、半導体のデザインルールの微細化により、レーザ装置が半導体工場内で使用されることが多くなっている。これらのレーザ装置に組み込まれているレーザ光源は寿命による交換作業が不可欠である。しかし半導体工場では装置の停止時間が半導体装置の製造コストに直結するため、短時間での交換、メンテナンス作業が要求されている。
【0011】
以上の問題に鑑みて、本発明は、上述したような外部共振器を備えるレーザ装置における光軸調整作業の簡易化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、レーザ光源と、入力結合素子を有する外部共振器と、光検出素子と、この光検出素子により検出される光出力に基づいて外部共振器にレーザ光源からのレーザ光の光軸を合わせるための光軸調整具とを備えて成り、光源側に配置される光軸調整具と外部共振器の入力結合素子との間の特定位置と、光検出素子の受光面とが、幾何光学的な共役関係に配置されて成る構成とする。
また、本発明は、上述のレーザ装置において、光軸調整具を一対のミラーとすることを特徴とする。
更に、本発明は、上述のレーザ装置において、特定位置を、一対のミラーの間に設ける構成とすることを特徴とする。
【0013】
上述の本発明によれば、外部共振器を有するレーザ装置において、この外部共振器にレーザ光源からのレーザ光の光軸を合わせる光軸調整具と、外部共振器の入力結合素子との間の特定位置を、光検出素子の受光面と幾何光学的な共役関係に配置するものである。
このような構成とすることによって、後述するように、光軸調整具により光軸を偏向又は移動した場合に、光検出素子の受光面上におけるレーザ光のスポット位置の移動量を低減化することができる。したがって、光軸調整作業の簡易化を図ることができる。
特に、光軸調整具として一対のミラーを用い、その間に光検出素子の受光面と共役関係にある特定位置を配置することによって、確実にレーザ光のスポット位置の移動量を低減化することができる。したがって、光スポットが光検出素子の受光領域からずれることを回避でき、光検出素子を移動させることなく光軸を調整することが可能となることから、光軸調整を要する組み立て製造作業、メンテナンス作業の格段な簡易化を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外部共振器を備えるレーザ装置において、光軸調整作業の簡易化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明を実施するための最良の形態の例を説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
まず、レーザ装置において2枚のミラーにより光軸調整を行う場合において、2つのミラーの変位量に対して、光検出素子上の光軸位置がどの程度変化するかについて、図1のレーザ装置の概略構成図を参照して説明する。
図1に示すレーザ装置においては、連続波を発振するレーザ光源101、光軸調整具としての一対の調整用ミラー104a及び104b、外部共振器114、光学レンズ115、光検出素子106を備える例を示す。外部共振器114は、入力結合鏡109、ミラー110、111a及び111bより成り、この例では共振器ミラーとするミラー111a及び111bの間に非線形光学結晶112が配置される。なお、図1において光軸調整前の光軸を破線A´、光軸調整後の光軸を実線Aで示す。
【0016】
このような構成において、調整用ミラー104a及び104bの角度変位量をそれぞれ(α1,β1)、(α2,β2)とする。ここでαはミラー104a、104bの反射面と光軸Aに沿う面内、すなわち図1の紙面内における角度変位、βは調整用ミラー104a及び104bの反射面に沿う一点鎖線s1及びs2で示す図1の紙面内の方向を回転軸とする角度変位とする。図1において、矢印α1、α2、β1、β2はそれぞれこの角度変位の+方向を示す。このとき、光検出素子106の受光面上における光軸に垂直な面内での移動量は、下記式(1)及び(2)により表される。光軸に垂直な面内で図1の紙面に沿う方向(矢印hで示す)の変位をDh、図1の紙面と直交する方向(矢印vで示す)をDvとして示す。fは光学レンズ115の焦点距離である。
【0017】
Dh=2f×tan(α1+α2)・・・(1)
Dv=2f×tan(β1+β2)・・・(2)
【0018】
本発明によれば、光軸調整具として用いる例えば調整用ミラーのうち、光源に近いものと外部共振器の入力結合素子との間の任意の地点、特に好ましくは2つの調整用ミラーの間の特定位置と、光検出素子の受光面とが幾何光学的に共役となるように配置する。共役な位置とすることによって、以下に説明するように、調整用ミラーを角度変位させて光軸を調整する際の光検出素子の受光面でのレーザビームの移動量を小さくすることができる。
【0019】
図2は、本発明の実施形態例に係るレーザ装置の一例の概略構成図である。この例においては、連続波を発振するレーザ光源1と、入力結合素子9を有する外部共振器14と、光学レンズ5と、光検出素子6と、この光検出素子6により検出される光出力に基づいて外部共振器14にレーザ光源1からのレーザ光の光軸を合わせる、いわゆるモードマッチングさせるための光軸調整具、この場合調整用ミラー4a及び4bを備える構成とした例を示す。そしてこの例においては、光源1側の調整用ミラー4aと光結合素子9との間の特定位置C1が、光検出素子6の受光面と幾何光学的な共役の位置となるように配置する。この例においては特定位置C1を調整用ミラー4a及び4bの間に配置した例を示す。図2においては、光軸調整前の光軸を破線A1、光軸調整後の光軸を実線Aとして示す。
【0020】
ここで、図2に示すように、調整用ミラー4a及び4bから、光検出素子6の受光面と幾何光学的な共役の位置とする特定位置C1までの距離をそれぞれP1及びP2とする。なお、符号は光の進行方向を+とする。また、共役となる特定位置C1が光検出素子6の受光面に結像される横倍率をk、調整用ミラー4a及び4bの角度変位量をそれぞれ(α1,β1)、(α2,β2)とした場合(α及びβの符号は図1に示す例と同様とする)、光検出素子6の受光面上でのスポット位置の移動量Dは、下記の式(3)及び(4)で表される。この場合も、光軸Aに垂直な面内で図2の紙面に沿う方向(矢印hで示す)の変位をDh、図2の紙面と直交する方向(矢印vで示す)をDvとして示す。
【0021】
Dh=2k×{P1×tanα1−P2×tan(α2−α1)}・・・(3)
Dv=2k×{P1×tanβ1−P2×tan(β2−β1)}・・・(4)
【0022】
このように、2枚の調整用ミラー4a及び4bを使って光軸を調整する際、それぞれ同じ向きに回転させると光軸の角度の変化を打ち消すことになるため、それぞれ逆の方向に回転させることが多い。もし、調整用ミラー4a及び4bの間に共役となる点が存在すれば、P1の符号が正、P2の符号が負となるために相殺され、移動量Dh、Dvの絶対値を小さくする効果がある。これに対し、調整用ミラー4a及び4bの間に共役となる点が存在しなければ、P1とP2が同符号となり、移動量の絶対値は大きくなることが分かる。
【0023】
したがって、光検出素子6の受光面と幾何光学的に共役となる特定位置は、2つの調整用ミラーを用いる場合はその間とすることが望ましいことが分かる。特に、回転角度α1、α2、β1、β2が略同じである場合は調整用ミラー4a及び4bの中間点に位置することによって、光スポット位置の変動量Dを最小限とすることができる。
なお、特定位置C1を調整用ミラー4bと光結合素子9との間に配置する場合においても、従来と比べて光検出素子6の受光面上でのスポットの移動量を抑制することができるので、光軸調整作業の簡易化を図ることが可能である。
【0024】
なお、必要とする光軸調整量は、基本的には外部共振器14の入力結合素子9を配置する際の機械的な精度によって異なってくる。また非線形光学結晶12の交換の際には個々の非線形光学結晶12の入出射面の面精度によってもこの光軸調整量は変化する。
したがって、特定位置C1をどこに配置することが好ましいかは一概にいえないが、一対の調整用ミラー4a及び4bを用いる場合に、ほぼ同一の形状のミラーを用いるときは、後述するように、これらミラー4a及び4bの中間点から、ミラー4a及び4bの間隔の4分の1の範囲とすることが望ましいといえる。
一方、調整用ミラー4a及び4bの距離や大きさ、また曲率を設ける場合などにおいて、一方の調整用ミラーの光軸調整量が大となる場合においては、この光軸調整量が大とされる調整用ミラーの近傍に特定位置C1を配置することが望ましいといえる。
【0025】
次に、光軸調整具として調整用ミラーの代わりに、図3に示すようなウェッジ板21を用いる例についえ説明する。
図3に示すように、ウェッジ板21の入射面と出射面の成すウェッジ角をθとし、屈折率をnとすると、このウェッジ板21を通過する光ビームの偏角δは、
δ=(n−1)×θ
となる。
ウェッジ板単体では、光軸を中心としてこのウェッジ板を回転させたとき、光ビームは円を描く。一方、同じウェッジ板を2枚向かい合わせにし、それぞれ光軸を中心に適当な角度に回転させて用いると、偏角が最大2×(n−1)×θから0までの3次元の任意の方向に光ビームを偏光させることができ、ミラー2枚と同等の光軸調整作用が得られる。
以下これについて図面を参照して説明する。
図4A及びBは、光軸と直交する面を有するウェッジ板を2枚用意し、この光軸と直交する面を対向させた一対のウェッジ板ユニット22a及び22bの概略断面構成図である。
図4Aにおいては、入射光の光軸Bがほぼ平行移動した状態、図4Bにおいては、ウェッジ板22a及び22bを回転させて入射光の光軸Bを下向きに偏向させた場合を示す。
【0026】
各ウェッジ板を回転させて光軸を種々の角度に偏向、又は平行移動した状態を図5A〜Eに示す。図5A〜Eにおいては、光軸の移動する様子をx軸(水平方向)及びy軸(垂直方向)の座標により示したものである。図5Aにおいては、ウェッジ板22A及び22Bを通過後に光軸Bがx−y座標の原点に垂直となるように配置した場合を示す。図5Bに示すように、各ウェッジ板22a、22bをそれぞれ矢印wa、wbで示すように、それぞれ光の進行方向に向かって右向き、左向きに90°回転させると、光軸Bはx軸方向正側に角度θx0偏向する。図5Cに示すように、更に各ウェッジ板22a及び22bをそれぞれ矢印wa、wbで示すように更に90°回転させると、光軸Bはy軸方向負側にy平行移動する。図5Dに示すように、各ウェッジ板22a及び22bを90°更に回転させると、光軸Bはx軸方向負側に角度θx0偏向する。そして図5Eに示すように、各ウェッジ板22a及び22bを更に90°回転させると、光軸Bは図5Aに示す元の位置に戻る。
また、図5Bに示すウェッジ板22a及び22bを同じ向きに90°回転するとy軸方向に角度を偏向させることができ、回転角度を調整することによって、偏向角度を調整することができる。また、図5Cに示すウェッジ板22a及び22bを同一方向に回転させるとx−y平面内への平行移動が可能である。
【0027】
図5A〜Eにおいて説明した構成では、各ウェッジ板22a及び22bの間隔を調整可能とすることによって、平行移動量を調整することができる。この場合は、ウェッジ板2枚のみで光軸調整具を構成することができる。
一方、同様のウェッジ板2枚を1組とするウェッジ板ユニットを2組設けることによって、角度及び平行移動の調整を各ウェッジ板の回転機構のみによって行うことが可能となる。
【0028】
図6においては、本発明の実施形態例に係るレーザ装置において、2組のウェッジ板ユニットを光軸調整具として用いる構成の一例の概略構成図を示す。図6において、図2と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。この例においては、上述の図5A〜Eにおいて説明した構成のウェッジ板ユニット22及び23を用いるもので、これらウェッジ板ユニット22及び23の間の特定位置C2に、光検出素子6の受光面と幾何光学的に共役となる点を設ける構成とする。この例においては、特定位置C2をウェッジ板ユニット22及び23のほぼ中間位置に配置する例を示す。ウェッジ板ユニット22及び23による光軸の偏向及び平行移動による光検出素子6の受光面での光スポットの位置変動量は前述の一対のミラーを用いる場合と同様の式(3)及び(4)が適用可能である。したがって、このような構成とすることによって、図2に示す例と同様に、光検出素子6の受光面上での光スポット位置の移動量Dを小さくすることが可能である。
【0029】
なお、ウェッジ板ユニット22及び23が同一の形状のウェッジ板の組み合わせより構成される場合は、ウェッジ板ユニット22及び23の略中間位置に共役となる特定位置C2を配置することが好ましい。
【0030】
図7は、本発明の他の実施形態例によるレーザ装置の一例の概略構成図である。図7において、図2と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
この例においては、レーザ光源1から射出される光を、光ファイバー32を介して、光軸調整具として用いるコリメータレンズ34に入射する場合を示す。このコリメータレンズ34は図示しないチルト回転機構及び平行移動機構を有するコリメータレンズユニット35に配置される。光ファイバー32の出射端の光結合素子33はこのコリメータレンズユニット35の一端に固定される。コリメータレンズユニット35のチルト回転機構及び平行移動機構により、矢印tで示す回転方向、また矢印m1及びm2で示す方向にコリメータレンズ34の出射角度偏向及び光軸平行移動が可能とされる。このように、光源1から出射される光が光ファイバー32によりコリメータレンズ34に入射される構成とすることによって、コリメータレンズ34の回転及び平行移動に対して結合効率を損なうことなく光を入射させることができるという利点を有する。
【0031】
そしてこの例においては、このチルト回転機構の回転中心C3を、光検出素子6の受光面と幾何光学的に共役な位置となるように配置する。このような構成とすることによって、上述の図1及び図6に示す例と同様に、光検出素子6の受光面上での光スポット位置の移動量Dを小さくすることが可能である。特に、チルト回転調整の回転中心C3が光検出素子6の受光面と共役となる位置にあるため、チルト調整によっては受光面上での光スポットの移動はない。光軸に垂直な面内での平行移動調整によるずれのみが、スポット移動に関係するので、光軸調整作業を大幅に簡易化することが可能となる。
【0032】
以上説明したように、本発明によれば、外部共振器へのモードマッチングすなわち光軸調整の際に、光検出素子の位置を殆ど動かす必要がなくなり、調整作業時間を大幅に短縮することができることとなる。また、必ずしも熟練作業者でなくとも調整が可能になる。したがって、組み立て製造時及びメンテナンス時も含めた調整作業にかかる時間及び人員の両方を削減することが可能であり、大幅なコストの低減化が可能となる。
【0033】
次に、上述の実施形態例におけるレーザ装置について、より具体的な寸法形状を検討した第1〜第5の実施形態例について説明する。
〔1〕第1の実施形態例
図8に本発明の第1の実施形態例に係るレーザ装置の概略構成図を示す。図8において、図2と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。この例においては、レーザ光源1として、波長1300nm、M=1、射出口において直径1mmのビームウェストを持つ連続波レーザを用いる。レーザ光源1の射出光路上に、光学レンズ2が配置される。この光学レンズ2は、レーザ光源1側に凸面を向けた平凸レンズであり、曲率半径151.1mm、厚さ2.5mm、材質はBK7(Schott (株)社製、商品名)、焦点距離は300mmであり、後述する外部共振器14にレーザ光源1からのレーザ光をモードマッチングさせる作用を有する。そしてこの例においては、光軸調整具として一対の調整用ミラー4a及び4bを用いる。外部共振器14のレーザ光の入射位置には、入力結合素子9例えば半透鏡より成る入力結合鏡が配置される。この入力結合素子9の外部共振器14側の面には半透過膜が形成される。また、入力結合素子9と光検出素子6との間に配置される光学レンズ5は、入力結合素子9側に凸面を向けた平凸レンズを用いる。この場合、その曲率半径は23.4mm、厚さ2.5mm、材質はBK7(Schott (株)社製、商品名)、焦点距離46.5mmであり、光検出素子6の受光面に集光する作用を有する。光検出素子6としては、InGaAsより成るPIN(P-Intrinsic-N)フォトダイオードであり、受光面の大きさは直径0.8mmである。C4は光学レンズ5によって光検出素子6の受光面と共役となる特定位置を示す。
【0034】
外部共振器14は、入力結合素子9と、その他のミラー10、11a及び11bより構成される。入力結合素子9は両面とも平面であり、材質は合成石英、厚さは3mmである。ミラー10は平面ミラー、ミラー11a及び11bは曲率半径125mmの凹面ミラーである。入力結合素子9及びミラー10、11a及び11bへの入射角はそれぞれ10°に設定されている。また、ミラー11a及び11bの間には非線形光学結晶12として例えば厚さ4mmのBBO(β−BaB)結晶が配置される。
ここで、各部の距離及び光路長を以下の通り設定する。
【0035】
レーザ光源1の射出口からレンズ2までの距離 a1=300mm
レンズ2からミラー4aまでの距離 a2=18.3mm
ミラー4bから入力結合素子9の共振器側の面までの距離 a3=74mm
入力結合素子9の共振器側の面からレンズ5までの距離 a4=100mm
レンズ5から光検出素子6の受光面までの距離 a5=55.7mm
ミラー4aからC4までの距離 p1=70mm
ミラー4bからC4までの距離 p2=−70mm
入力結合素子9とミラー10との間の光路長 w1=132mm
ミラー10とミラー11aとの間の光路長 w2=150mm
ミラー11a及び11bの間の光路長 w3=150mm
ミラー11bと入力結合素子9の間の光路長 w4=150mm
【0036】
以上の構成において、特定位置C4におけるレーザビームの直径は0.43mm、位置C4が光検出素子6の受光面に結像する倍率kは−0.23であるため、光検出素子6の受光面でのレーザビーム直径は0.1mmとなる。
この第1の実施形態例において、調整用ミラー4a及び4bを用いてモードマッチ調整をしたときの光検出素子6の受光面上でのビームの移動量を計算する。光源1側の調整用ミラー4aを図8の紙面内で時計回りに0.5°、共振器側の調整用ミラー4bを図8の紙面内で反時計回りに0.5°傾けた場合、上記式(3)により、レーザビームの移動量は0.28mmとなる。調整開始前に光検出素子6の受光面の中心にレーザビームが位置していれば、調整によってもレーザビームがこの受光面内にとどまることが分かる。したがって、この場合は光検出素子6の位置を移動することなく、モードマッチング調整が可能となる。
【0037】
一方、本発明構成とすることなく、光学レンズ5の後側焦点位置に光検出素子6の受光面を配置する従来構成と同様の配置とする場合は、その移動量を求めると、上記式(1)により0.8mmとなり、レーザビームが光検出素子6の受光面からはずれてしまう。なお、この場合は光学レンズ5と光検出素子6の受光面までの距離は、a5=44.8mmである。
【0038】
また、特定位置C4を調整用ミラー4a及び4bの中間から共振器14側の調整用ミラー4b側にずらして配置した場合については以下の通りである。各部の距離を以下の通り設定する。
レンズ5から光検出素子6の受光面までの距離 a5=57.7mm
ミラー4aからC4までの距離 p1=100mm
ミラー4bからC4までの距離 p2=−40mm
以上の設定とし、その他の部品の距離及び光路長は上述の例と同様としたとき、特定位置C4におけるビーム直径は0.39mm、位置C4が受光面に結像する倍率kは−0.28であるため、光検出素子6の受光面でのビーム直径は0.11mmとなる。このとき上記の例と同様に、光源1側の調整用ミラー4aを図8の紙面内で時計回りに0.5°、共振器14側の調整用ミラー4bを図8の紙面内で反時計回りに0.5°傾けた場合、上記式(3)によりレーザビームの移動量は0.10mmとなり、上述の例すなわち調整用ミラー4a及び4bの中間に特定位置C4を配置する場合と同様に、レーザビームが光検出素子6の受光面内にとどまる。
【0039】
一方、特定位置C4を他方の調整用ミラー4a側に移動した場合について説明する。この例においては、各部の距離を以下の通り設定する。
レンズ5から光検出素子6の受光面までの距離 a5=54.3mm
ミラー4aからC4までの距離 p1=40mm
ミラー4bからC4までの距離 p2=−100mm
以上の設定とし、その他の部品の距離及び光路長は上述の例と同様としたとき、特定位置C4におけるレーザビームの直径は0.47mm、位置C4が受光面に結像する倍率kは−0.20であるため、光検出素子6の受光面でのレーザビームの直径は0.09mmとなる。上記の例と同様に、光源1側の調整用ミラー4aを図8の紙面内で時計回りに0.5°、共振器14側の調整用ミラー4bを紙面内で反時計回りに0.5°傾けた場合、上記式(3)によりレーザビームの移動量は0.56mmとなり、同様にレーザビームが光検出素子6の受光面内にとどまる。
したがって、これらの結果から、特定位置は調整用ミラー4a及び4bの中間位置から、これらの間の距離の4分の1程度の範囲に設定することによって、光軸調整の際に光検出素子6の受光面内でのレーザビームの移動を十分に抑制することができて、光検出素子6の位置を移動することなく、モードマッチング調整が可能となる。
【0040】
〔2〕第2の実施形態例
この例においては、図8に示す構成として、レーザ光源1や光学レンズ2及び5などを以下に示す通り変更した。レーザ光源1として、波長532nm、M=1、射出口において直径1mmのビームウェストを持つ連続波レーザを用いる。光学レンズ2はレーザ光源1側に凸面を向けた平凸レンズであり、曲率半径249.35mm、厚さ2.5mm、材質BK7(Schott (株)社製、商品名)、焦点距離480mmであり、外部共振器14にレーザ光源1からのレーザ光をモードマッチングさせる作用を有する。光学レンズ5は入力結合素子9側に凸面を向けた平凸レンズであり、曲率半径34.1mm、厚さ2.5mm、材質BK7(Schott (株)社製、商品名)、焦点距離65.6mmであり、光検出素子6の受光面にレーザ光を集光する作用を有する。光検出素子6の受光面の大きさは直径2mmである。
なお、その他の構成、特に外部共振器14を構成するミラー9,10、11a、11b及び非線形光学結晶12の材料、構成、寸法は上述の第1の実施形態例と同様とする。
すなわち、入力結合素子9は両面とも平面であり、材質は合成石英、厚さは3mmである。ミラー10は平面ミラー、ミラー11a及び11bは曲率半径125mmの凹面ミラーである。入力結合素子9及びミラー10、11a及び11bへの入射角はそれぞれ10°に設定されている。また、ミラー11a及び11bの間には非線形光学結晶12として例えば厚さ4mmのBBO(β−BaB)結晶が配置される。
ここで、各部の距離及び光路長を以下の通り設定する。
【0041】
レーザ光源1の射出口からレンズ2までの距離 a1=480mm
レンズ2から調整用ミラー4aまでの距離 a2=200mm
ミラー4bから入力結合素子9の共振器側の面までの距離 a3=74mm
入力結合素子9の共振器側の面からレンズ5までの距離 a4=100mm
レンズ5から光検出素子6の受光面までの距離 a5=88.2mm
ミラー4aからC4までの距離 p1=70mm
ミラー4bからC4までの距離 p2=−70mm
入力結合素子9とミラー10との間の光路長 w1=132mm
ミラー10とミラー11aとの間の光路長 w2=150mm
ミラー11a及び11bの間の光路長 w3=150mm
ミラー11bと入力結合素子9の間の光路長 w4=150mm
【0042】
この場合、特定位置C4におけるレーザビームの直径は0.54mm、C4が光検出素子6の受光面に結像する倍率kは−0.37であるため、光検出素子6の受光面でのレーザビーム直径は0.2mmとなる。
この第2の実施形態例において、調整用ミラー4a及び4bを用いてモードマッチ調整をしたときの光検出素子6の受光面上でのレーザビームの移動量を計算する。調整用ミラー4aを図8の紙面内で時計回りに0.5°、調整用ミラー4bを図8の紙面内で反時計回りに0.5°傾けた場合、上記式(3)により、レーザビームの移動量Dは0.45mmとなる。調整開始前に光検出素子6の受光面の中心にレーザビームが位置していれば、調整によってもレーザビームが光検出素子6の受光面内にとどまる。したがって、光検出素子6の位置を変更する必要がなく、簡単に光軸調整を行うことが可能であることが分かる。
【0043】
なお、本発明構成とすることなく、光学レンズ5の後側焦点位置に光検出素子6の受光面を配置した場合の移動量を求めると、上記式(1)により2.3mmとなり、光検出素子6の受光面からレーザビームの位置がはずれてしまう。このときレンズ5から光検出素子6までの距離はa5=65mmである。
【0044】
〔3〕第3の実施形態例
図9に本発明の第3の実施形態例に係るレーザ装置の一例の概略構成図を示す。図9において、図8と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。この例においては、光学レンズ2を調整用ミラー4bと外部共振器14の入力結合素子9との間に配置した例を示す。この例においては、レーザ光源1として、波長532nm、M=1、射出口において直径1mmのビームウェストを持つ連続波レーザである。光学レンズ2は、調整用ミラー4b側に凸面を向けた平凸レンズであり、曲率半径249.35mm、厚さ2.5mm、材質BK7(Schott (株)社製、商品名)、焦点距離118.5mmであり、外部共振器14の入力結合素子9と後述する外部共振器14に光源1からのレーザ光をモードマッチさせる作用を有する。入力結合素子9は、上述の第1及び第2の実施形態例と同様に、外部共振器9側に半透過膜が形成された半透鏡である。光学レンズ5は入力結合素子9側に凸面を向けた平凸レンズであり、曲率半径34.1mm、厚さ2.5mm、材質BK7(Schott (株)社製、商品名)、焦点距離108.2mmであり、光検出素子6に集光する作用を有する。光検出素子6は受光面の直径が2mmのフォトダイオードである。ここで、C5は光学レンズ2、入力結合素子9の半透面による反射、光学レンズ5によって光検出素子6の受光面と共役となる特定位置である。
【0045】
外部共振器14のミラー10、11a及び11bの材料構成、非線形光学結晶12の材料、寸法は前述の第1及び第2の実施形態例と同様の構成とする。
すなわち、入力結合素子9は両面とも平面であり、材質は合成石英、厚さは3mmである。ミラー10は平面ミラー、ミラー11a及び11bは曲率半径125mmの凹面ミラーである。入力結合素子9及びミラー10、11a及び11bへの入射角はそれぞれ10°に設定されている。また、ミラー11a及び11bの間には非線形光学結晶12として例えば厚さ4mmのBBO(β−BaB)結晶が配置される。
ここで、各部の距離及び光路長を以下の通り設定する。
【0046】
レーザ光源1の射出口からレンズ2までの距離 b1=330mm
ミラー4bから光学レンズ2までの距離 b2=50mm
レンズ2から入力結合素子9の共振器側の面までの距離 b3=66.3mm
入力結合素子9の共振器側の面からレンズ5までの距離 b4=141mm
レンズ5から光検出素子6の受光面までの距離 b5=88.2mm
ミラー4aからC5までの距離 p1=60mm
ミラー4bからC5までの距離 p2=−60mm
入力結合素子9とミラー10との間の光路長 w1=150mm
ミラー10とミラー11aとの間の光路長 w2=150mm
ミラー11a及び11bの間の光路長 w3=132mm
ミラー11bと入力結合素子9の間の光路長 w4=150mm
【0047】
なお、入力結合素子9は、光学レンズ2側からミラー10側に透過する光に対しては焦点距離−271.3mm、光学レンズ2側からの光を光学レンズ5側に反射する光に対しては焦点距離−42.8mmのレンズとして作用する。
特定位置C5におけるレーザビームの直径は1.02mm、位置C5が光検出素子6の受光面に結像する倍率kは−0.49であるため、光検出素子6の受光面でのビーム直径は0.5mmとなる。
この第3の実施形態例において、調整用ミラー4a及び4bを用いてモードマッチング調整をしたときの光検出素子6の受光面上でのレーザビームの移動量を計算する。調整用ミラー4aを図9の紙面内で時計回りに0.5°、調整用ミラー4bを図9の紙面内で反時計回りに0.5°傾けると、上記式(3)によりレーザビームの移動量は0.51mmとなる。調整開始前に光検出素子9の受光面の中心にビームが位置していれば、調整によってもビームが受光面内にとどまる。
【0048】
これに対し、本発明構成とすることなく、光学レンズ5の焦点位置に光検出素子6の受光面を配置した場合のレーザビーム移動量を求めると、上記式(1)により3.8mmとなり、光検出素子6の受光面から外れてしまう。このとき、光学レンズ5と光検出素子6の受光面との距離はb5=106.2mmである。
【0049】
〔4〕第4の実施形態例
図10に本発明の第4の実施形態例に係るレーザ装置の概略構成図を示す。この例においては、光軸調整具として、2枚のウェッジ板より成るウェッジ板ユニットを2組用いる場合を示す。図10において、図6と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
この例においては、レーザ光源1として波長532nm、M=1、射出口において直径1mmのビームウェストを持つ連続波レーザを用いる。光源1とウェッジ板ユニット22との間に配置される光学レンズ2は、レーザ光源1側に凸面を向けた平凸レンズであり、曲率半径249.35mm、厚さ2.5mm、材質BK7(Schott (株)社製、商品名)、焦点距離480mmであり、外部共振器14にレーザ光源1からのレーザ光をモードマッチングさせる作用を有する。外部共振器14の入力結合素子9は、共振器14側の面に半透過膜が形成される半透鏡より構成される。入力結合素子9と光検出素子6との間に配置される光学レンズ5は、入力結合素子9側に凸面を向けた平凸レンズとする。この光学レンズ5は曲率半径34.1mm、厚さ2.5mm、材質BK7(Schott (株)社製、商品名)、焦点距離65.6mmであり、光検出素子6にレーザ光を集光する作用を有する。光検出素子6はフォトダイオードであり、受光面の大きさは直径2mmである。C6は光学レンズ5によって光検出素子6の受光面と共役となる特定位置を示す。
【0050】
外部共振器14のミラー10、11a及び11bの材料構成、非線形光学結晶12の材料、寸法は前述の第1及び第2の実施形態例と同様の構成とする。
すなわち、入力結合素子9は両面とも平面であり、材質は合成石英、厚さは3mmである。ミラー10は平面ミラー、ミラー11a及び11bは曲率半径125mmの凹面ミラーである。入力結合素子9及びミラー10、11a及び11bへの入射角はそれぞれ10°に設定されている。また、ミラー11a及び11bの間には非線形光学結晶12として例えば厚さ4mmのBBO(β−BaB)結晶が配置される。
ここで、各部の距離及び光路長を以下の通り設定する。
【0051】
レーザ光源1の射出口からレンズ2までの距離 c1=480mm
レンズ2からウェッジ板ユニット22までの距離 c2=200mm
ウェッジ板ユニット23から入力結合素子9の共振器側の面までの距離
c3=74mm
入力結合素子9の共振器側の面からレンズ5までの距離 c4=100mm
レンズ5から光検出素子6の受光面までの距離 c5=88.2mm
ウェッジ板ユニット22からC6までの距離 p3=70mm
ウェッジ板ユニット23からC6までの距離 p4=−70mm
入力結合素子9とミラー10との間の光路長 w1=132mm
ミラー10とミラー11aとの間の光路長 w2=150mm
ミラー11a及び11bの間の光路長 w3=150mm
ミラー11bと入力結合素子9の間の光路長 w4=150mm
【0052】
この場合、特定位置C6におけるレーザビームの直径は0.54mm、位置C6が光検出素子6の受光面に結像する倍率kは−0.37であるため、光検出素子6の受光面でのレーザビーム直径は0.2mmとなる。
この第4の実施形態例において、ウェッジ板ユニット22及び23を用いてモードマッチ調整をしたときの光検出素子6の受光面上でのレーザビームの移動量を計算する。ウェッジ板ユニット22により図10の紙面内で光軸が時計回りに1°、ウェッジ板ユニット23により図10の紙面内で光軸が反時計回りに1°傾いた場合、レーザビームの移動量は0.45mmとなる。調整開始前に光検出素子6の受光面の中心にレーザビームが位置していれば、調整によってもレーザビームが光検出素子6の受光面内にとどまる。従って、光軸調整にあたって、光検出素子6の位置を移動する必要がなく、光軸調整作業の簡易化を図ることができる。
【0053】
これに対し、本発明構成とすることなく、光学レンズ5の後側焦点位置に光検出素子6の受光面を配置した場合の移動量を求めると2.3mmとなり、光検出素子6の受光面からはずれてしまう。このとき光学レンズ5と光検出素子6との距離c5=65mmである。
【0054】
〔5〕第5の実施形態例
図11に本発明の第5の実施形態例に係るレーザ装置の概略構成図を示す。この例においては、光軸調整具として、コリメータレンズと、このコリメータレンズをチルト回転機構及び平行移動機構により回転調整、位置調整を可能としたコリメータレンズユニットにより構成する例を示す。図11において、図7と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
この例においては、光源1として、波長532nmの連続波レーザを用いる。そしてコア径3.5μmのシングルモードの光ファイバー32によりレーザ光が伝送される構成とする。ファイバー射出端の光結合素子33はコリメータユニット35の光入力端に固定される。コリメータレンズ34はファイバー33の射出端側に平面、共振器14側に凸面を向けた平凸レンズであり、曲率半径1.56mm、厚さ1mm、材質BK7(Schott (株)社製、商品名)、焦点距離3mmであり、外部共振器14に光源1からのレーザ光をモードマッチングさせる作用を有する。入力結合素子9は、共振器14側の面に半透過膜が形成された半透鏡とする。光学レンズ5は入力結合素子9側に凸面を向けた平凸レンズであり、曲率半径34.1mm、厚さ2.5mm、材質BK7(Schott (株)社製、商品名)、焦点距離65.6mmであり、光検出素子6に集光する作用を有する。光検出素子6はフォトダイオードであり、受光面の大きさは直径2mmである。C7は光学レンズ5によって光検出素子6の受光面と共役となる特定位置であり、コリメータレンズ34の凸面の頂点に位置している。コリメータユニット35は、特定位置C7を回転中心にした水平方向、垂直方向のチルト回転機構および光軸に垂直な面内での水平、垂直方向の平行移動機構を備える。また、CM2,CM3,CM4は全反射ミラーであり、CM1とともに光共振器を構成している。
【0055】
外部共振器14のミラー10、11a及び11bの材料構成、非線形光学結晶12の材料、寸法は前述の第1及び第2の実施形態例と同様の構成とする。
すなわち、入力結合素子9は両面とも平面であり、材質は合成石英、厚さは3mmである。ミラー10は平面ミラー、ミラー11a及び11bは曲率半径125mmの凹面ミラーである。入力結合素子9及びミラー10、11a及び11bへの入射角はそれぞれ10°に設定されている。また、ミラー11a及び11bの間には非線形光学結晶12として例えば厚さ4mmのBBO(β−BaB)結晶が配置される。
【0056】
ここで、各部の距離及び光路長を以下の通り設定する。
ファイバー32射出端からレンズ34までの距離 d1=2.4mm
レンズ34から入力結合素子9の共振器側の面までの距離 d2=167mm
入力結合素子9の共振器側の面からレンズ5までの距離 d3=77mm
レンズ5から光検出素子6の受光面までの距離 d4=88.2mm
入力結合素子9とミラー10との間の光路長 w1=132mm
ミラー10とミラー11aとの間の光路長 w2=150mm
ミラー11a及び11bの間の光路長 w3=150mm
ミラー11bと入力結合素子9の間の光路長 w4=150mm
【0057】
特定位置C7におけるレーザビームの直径は0.58mm、位置C7が光検出素子6の受光面に結像する倍率kは−0.37であるため、光検出素子6の受光面でのレーザビーム直径は0.21mmとなる。
この第5の実施形態例において、コリメータユニット35のチルト調整により外部共振器14へのモードマッチ調整を行った場合、その回転中心が、光検出素子6の受光面と共役となる点C7と一致しているため、光検出素子6の受光面上でレーザビームは移動しない。
【0058】
これに対し、本発明構成とすることなく、光学レンズ5の後側焦点位置に光検出素子6の受光面を配置した場合、コリメータレンズユニット35のチルト回転機構により0.9°以上レーザビームの偏向を行うと、光検出素子6の受光面からレーザビームがはずれてしまう。このとき、光学レンズ5と光検出素子6との間の距離はd4=65mmである。
【0059】
以上説明したように、本発明によれば、レーザ装置の光軸調整作業の際に光検出素子の位置を変更する必要がなく、極めて簡単な作業で光軸調整を行うことが可能となる。
特に、従来は調整が非常に困難であった波長1300nmから波長650nmへの波長変換を行う外部共振器を有するレーザ装置において、その波長帯域に適用できるInGaAs等のフォトダイオードを光検出素子として用いる場合に、その受光面の面積が直径1mm程度と比較的小さくても、上述したようにこの光検出素子の位置を変更することなく光軸調整が可能であり、上述の波長帯域のレーザ装置における光軸調整作業を格段に簡易化することが可能である。
一方、光検出素子の受光面上での光スポットの移動量が小さくなるため、従来のレーザ装置と比較してより受光面積の小さい光検出を使用することが可能となる。フォトダイオードは一般に受光面積が小さいほど安価であるため、より安価な光検出素子を使用することができ、コストダウンに有効である。
また、半導体製造プロセスにおいて使用されるレーザ装置においても本発明構成を採用することによって、その組み立て調整、修理メンテナンス作業の簡易化を図ることができる。このため、半導体工場における製造装置の停止期間の短縮を図ることができ、半導体製造のコストへの悪影響を回避することが可能となる。
【0060】
なお、本発明は、上述の図1〜図11に示す例に限定されるものではなく、各光学部品の材料、寸法形状や配置、機能等において、本発明構成を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能であることはいうまでもない。また、パルスレーザ光源を用いるレーザ装置においても、例えばフォトダイオードにパルスレーザ光を受光させる際にミラーを回転させて調整する場合などに本発明を適用することによって、その光軸調整作業の簡易化を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】レーザ装置の光軸調整の説明に供する概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態例に係るレーザ装置の概略構成図である。
【図3】ウェッジ板の断面構成図である。
【図4】A及びBはウェッジ板ユニットによる光軸偏向の説明に供する概略断面構成図である。
【図5】A〜Eはウェッジ板ユニットによる光軸偏向の説明に供する概略断面構成図である。
【図6】本発明の実施形態例に係るレーザ装置の概略構成図である。
【図7】本発明の実施形態例に係るレーザ装置の概略構成図である。
【図8】本発明の実施形態例に係るレーザ装置の概略構成図である。
【図9】本発明の実施形態例に係るレーザ装置の概略構成図である。
【図10】本発明の実施形態例に係るレーザ装置の概略構成図である。
【図11】本発明の実施形態例に係るレーザ装置の概略構成図である。
【図12】従来のレーザ装置の一例の概略構成図である。
【図13】A〜Cはレーザ装置における光軸調整作業時の出力の変化の一例を示す図である。
【図14】A〜Cはレーザ装置における光軸調整作業時の出力の変化の一例を示す図である。
【図15】シリコンフォトダイオード及びInGaAsフォトダイオードにおける受光面積と遮断周波数との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1.レーザ光源、4.光軸調整具、4a,4b.調整用ミラー、5.光学レンズ、6.光検出素子、9.入力結合素子、10.ミラー、11a,11b.ミラー、12.非線形光学結晶、14.外部共振器、21.ウェッジ板、22a,22b,23a,23b.ウェッジ板、22,23.ウェッジ板ユニット、32.光ファイバー、33.光結合素子、34.コリメータレンズ、35.コリメータレンズユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源と、入力結合素子を有する外部共振器と、光検出素子と、該光検出素子により検出される光出力に基づいて前記外部共振器に前記レーザ光源からのレーザ光の光軸を合わせるための光軸調整具とを備えて成り、
前記光源側に配置される前記光軸調整具と前記外部共振器の入力結合素子との間の特定位置と、光検出素子の受光面とが、幾何光学的な共役関係に配置されて成ることを特徴とするレーザ装置。
【請求項2】
前記光軸調整具が一対のミラーであることを特徴とする請求項1記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記特定位置が、前記一対のミラーの間に設けられることを特徴とする請求項2記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記特定位置が、前記一対のミラーの間の中間位置から前記ミラーの間の距離の4分の1の範囲内に配置されることを特徴とする請求項3記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記光軸調整具として、一対のウェッジ板より成るウェッジ板ユニットが1組以上設けられて成ることを特徴とする請求項1記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記ウェッジ板ユニットが2組設けられ、
前記特定位置が、前記2組のウェッジ板ユニットの間に設けられることを特徴とする請求項5記載のレーザ装置。
【請求項7】
前記光軸調整具がコリメータレンズであり、
前記コリメータレンズにチルト回転機構及び平行移動機構が備えられることを特徴とする請求項1記載のレーザ装置。
【請求項8】
前記特定位置が、前記コリメータレンズの前記チルト回転機構による回転中心とされることを特徴とする請求項7記載のレーザ装置。
【請求項9】
前記レーザ光源と前記コリメータレンズとの間に光ファイバーが配置されることを特徴とする請求項7記載のレーザ装置。
【請求項10】
前記外部共振器内に非線形光学結晶が配置されて成ることを特徴とする前記請求項1記載のレーザ装置。
【請求項11】
前記レーザ光源が、連続波を発振するレーザ光源であることを特徴とする請求項1記載のレーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−317871(P2007−317871A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145604(P2006−145604)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】