説明

ロボットハンドの姿勢検知システム

【課題】機器構成を簡素化して製造コストの低減及び耐久性の向上を実現するとともに、あらゆる姿勢において、その姿勢を検知することを実現したロボットハンドの姿勢検知システムを提供する。
【解決手段】ロボットハンド1の指部2において、その外周面2cにはバンド8が巻き付けられている。バンド8の外周面には、互いに異なる色で着色された複数の領域b1,b2,b3,・・・,bnが形成されている。各領域b1〜bnに着色された色の色相は、それぞれ指部2の長手方向に沿って同一である。また、各領域b1〜bnの色相は、指部2の周方向に沿って連続的に変化している。ロボットハンド1から所定の距離を隔てた位置には、指部2を撮影するためのカメラ7が配置されている。カメラ7が撮影した指部2の画像は制御部6に出力され、制御部6は、画像上におけるバンド8のエッジ及び色相の変化に基づいて、ロボットハンド1の姿勢を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はロボットハンドの姿勢検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、3次元空間内で任意の方向に姿勢変化するロボットハンドにおいて、その姿勢を検知するための装置が開示されている。これによれば、ロボットハンドには2つの傾斜センサと、画像認識点である3つのLEDとが設けられており、ロボットハンドから所定の距離を隔てた位置には、LEDを撮影するためのCCDカメラが設置されている。2つの傾斜センサは、ロボットハンドの中心を通る座標系の3軸(水平軸であるX軸及びY軸、鉛直軸であるZ軸)のうち、X軸周り及びY軸周りにおけるロボットハンドの回転角度を検出する。また、CCDカメラが撮影した3つのLEDの画像はコンピュータに出力され、これらのLEDを含む平面と既知の基準平面とがなす角度を検出することによって、Z軸周りにおけるロボットハンドの回転角度が算出される。このように、2つの傾斜センサの検出値と、3つのLEDを撮影した画像に基づく算出値とから、3次元空間内におけるロボットハンドの姿勢が検知される。
【0003】
【特許文献1】特開平11−165287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の装置は、2つの傾斜センサと3つのLEDとを用いているため、機器構成が複雑になる。機器構成が複雑になることによって、製造コストの低減が困難になるとともに、装置の故障が生じやすくなって耐久性が低下するという問題点を有していた。また、画像認識点は3つのLEDだけであるため、ロボットハンドの姿勢が変化した際に、いずれかのLEDがロボットハンドの陰に隠れてCCDカメラの死角に入ってしまうことがある。LEDがCCDカメラの死角に入ると、3つのLEDを含む平面を画像から検出することができなくなるため、Z軸周りの回転角度が検出できず、正確な姿勢検知ができない場合が生じるという問題点も有していた。
【0005】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、機器構成を簡素化して製造コストの低減及び耐久性の向上を実現するとともに、あらゆる姿勢において、その姿勢を検知することを実現したロボットハンドの姿勢検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るロボットハンドの姿勢検知システムは、姿勢変化可能に設けられる指部を少なくとも1つ有するロボットハンドと、ロボットハンドの指部を撮影する撮像装置と、撮像装置が撮影した指部の画像が入力される制御部とを備えるロボットハンドの姿勢検知システムにおいて、指部の外周面には、指部の長手方向に沿って同一であるとともに、指部の周方向に沿って変化するパターンを有するマーカ部が、指部の全周にわたって帯状に設けられ、制御部は、撮像装置から入力された指部の画像から、マーカ部を検出するとともに、画像上におけるパターンを認識し、認識したパターンに基づいて、ロボットハンドの姿勢を検知することを特徴とするものである。
【0007】
ロボットハンドの指部に、マーカ部を帯状に設けたので、撮像手段が撮影した指部の画像からマーカ部を検出することによって、3次元空間内における指部の回転角度を取得できる。マーカ部は、指部の長手方向に沿って同一であるとともに、周方向に沿って変化するパターンを有するので、指部の向きとパターンが変化する配列とを予め対応付けておき、画像上においてパターンが変化する配列を認識することにより、指部の向きを特定することができる。マーカ部を設けた指部を撮像装置で撮影するだけでロボットハンドの姿勢検知を行なえるため、他の部材に機械的または電気的に接続されるセンサやLED等を用いる必要がない。また、マーカ部は指部の全周にわたって設けられるため、ロボットハンドの姿勢が変化しても、マーカ部が隠れて撮像装置の死角に入ることがない。したがって、ロボットハンドの姿勢検知システムにおいて、機器構成を簡素化して製造コストの低減及び耐久性の向上を実現するとともに、あらゆる姿勢において、その姿勢を検知することを実現できる。
なお、本発明においてマーカ部とは、指部とは別体の部材であることに限定するものではなく、例えば塗装や、ショットブラストやエッチングなど加工を加えることでパターンを形成し、マーカ部とすることも含む。
【0008】
マーカ部のパターンは、色相であって、色相は、指部の周方向に沿って連続的に変化してもよい。マーカ部のパターンとして色相を用いることにより、マーカ部に着色された色が有する本来の色合いを、光の明暗やコントラスト等、撮影時における環境的要因の影響を受けることなく認識できるため、姿勢検知の精度を向上することができる。また、色相と指部の向きとは簡単に対応付けられるため、制御部における処理も単純化される。さらに、色相を指部の周方向に沿って連続的に変化させたので、非連続的、すなわちランダムに変化させた場合と比較すると、検知精度を向上させることが可能となる。
【0009】
マーカ部のパターンは、互いに異なる幅を有する直線状の模様であってもよい。
マーカ部は、指部の複数箇所に設けられてもよい。複数箇所でロボットハンドの姿勢検知が行なわれるため、姿勢検知の精度を向上することが可能となる。
制御部によるパターンの認識は、マーカ部のエッジを認識すること、及び指部の周方向におけるパターンの変化を認識することによって行なわれてもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、ロボットハンドの姿勢検知システムにおいて、機器構成を簡素化して製造コストの低減及び耐久性の向上を実現するとともに、あらゆる姿勢において、その姿勢を検知することを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、この発明の実施の形態について添付図に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1に、この実施の形態1に係るロボットハンドの姿勢検知システムを概略的に示す。
姿勢検知の対象であるロボットハンド1は、図示しない物体を把持するための指部2を備えている。指部2は、先端部2a及び基端部2bを有する略円筒形状の部材であって、基端部2bには、連結部3を介してアーム4が接続されている。アーム4には駆動装置5が接続されており、駆動装置5がアーム4を駆動することによって、ロボットハンド1の姿勢が3次元的に変化する。また、駆動装置5には、ロボットハンド1の姿勢を制御するための制御部6が電気的に接続されており、制御部6から駆動装置5に出力される指令信号に基づいて、駆動装置5がアーム4を駆動する。制御部6は、図示しない記憶部や演算部等を有するコンピュータであって、ロボットハンド1の姿勢を制御するとともに、後述するカメラ7から入力された画像の処理や、ロボットハンド1の姿勢検知を行なう。
【0012】
指部2の外周面2cにおける所定の位置には、マーカ部としてのバンド8が帯状に巻き付けられており、指部2とバンド8とが一体として移動するように固定されている。ここで、指部2に巻き付けられたバンド8が展開された状態を図2に示す。図2に示すように、バンド8は長方形に形成された薄いシート状の部材であって、図2の矢印Aで示す長さ方向が指部2の長手方向に一致し、且つ矢印Bで示す幅方向が指部2の周方向に一致するように、指部2に巻き付けられるようになっている。また、バンド8が指部2に巻き付けられたときに外周側となる表面、すなわち図2に見えている側の表面には、互いに異なる色で着色された複数の領域b1,b2,b3,・・・,bnが形成されている。
【0013】
各領域b1〜bnは、矢印Bで示す幅方向に沿って等間隔に区分されるとともに、矢印Aで示す長さ方向に対して平行に延びており、その内部が同一色となるように着色されている。また、各領域b1〜bnは、一方の端部側に位置する領域b1から他方の端部側に位置する領域bnに向かって、その色相が連続的に変化するように着色されている。ここで、色相とは、色を表す属性のうち、例えば赤、黄、青等のように色の種類を表す属性であって、数値的には各色が有する波長に基づいて表され、光の明暗やコントラスト等、撮影時における環境的要因の影響に応じて変動しにくい属性である。バンド8において、例えば一方の端部側にある領域b1を赤で着色した場合、領域b2以降は、次第に黄、緑、青、紫と変化するように着色され、他方の端部側にある領域bnは、最終的に赤と紫との混合色で着色される。
【0014】
以上のように着色されたバンド8が指部2に巻きつけられると、各領域b1〜bnに着色された色の色相が、それぞれ指部2の長手方向に沿って延在した状態となる。また、各領域b1〜bnの色相は、指部2の周方向に沿って連続的に変化した状態となる。このように、指部2の長手方向に沿って同一であるとともに、周方向に沿って変化する色相が、バンド8のパターンを形成している。
【0015】
図1に戻って、ロボットハンド1から所定の距離を隔てた位置には、指部2を撮影するための撮像装置である1台のカメラ7が配置されている。カメラ7は制御部6に電気的に接続されており、撮影した指部2の画像を制御部6に出力可能となっている。上述したように、制御部6は、カメラ7から入力された指部2の画像の処理及びロボットハンド1の姿勢検知を行う。また、制御部6はカメラ7の位置も制御しており、画像上における指部2の座標と実際の3次元空間内における座標とが、予め対応付けられている。さらに、バンド8の領域b1〜bnの色相の配列と、指部2の向き、すなわち指部2の長手方向中心である中心軸線C周りの回転角度との相関関係も予め対応付けられており、制御部6に記憶されている。したがって、入力された画像上において、領域b1〜bnの色相が指部2の周方向に沿ってどのように変化しているのかを認識することによって、指部2の向きを特定することが可能となっている。また、先端部2aと基端部2bとの相対的な位置関係、すなわち基端部2bに対して先端部2aがどのような位置に配置されているのかを特定することも可能となっている。
【0016】
次に、この発明の実施の形態1に係るロボットハンドの姿勢検知システムを用いたロボットハンド1の姿勢検知方法について、図3、4を用いて説明する。
尚、図3は、実際の3次元空間内に配置された指部2及びカメラ7を概略的に示したものである。また、図4は、図3に示すカメラ7が指部2を撮影した画像Fを示したものであり、図3に概略的に示す画像Fを、矢印Gの方向から見た場合を示したものでる。ここで、図3に示すように、バンド8は指部2の長手方向に沿った長さL1及び直径W1を有するものとする。また、指部2が位置する3次元空間における座標系を、図3に示すX軸及びY軸と、図3の奥行方向に沿って延びるZ軸(図4参照)とによって規定する。X軸は、カメラ7のレンズ7aの中心軸線に対して平行に延びる水平軸、Y軸はX軸に対して垂直をなす水平軸、Z軸はX軸及びY軸に対して垂直をなす鉛直軸である。
【0017】
図3に示すように、まず、バンド8が巻き付けられた指部2がカメラ7によって撮影され、撮影された画像Fが制御部6に入力される。ここで、バンド8は、指部2の全周にわたって巻き付けられているため、あらゆる姿勢において、バンド8がロボットハンド1の陰に隠れることがない状態となっている。カメラ7から画像Fが入力されると、制御部6は、画像F上の指部2からバンド8を検出する。バンド8の検出は、そのエッジを認識することによって行なわれており、画像F上の指部2(図4参照)から、バンド8の外周面を示すエッジ8a及びエッジ8bと、長手方向における端部を示すエッジ8c及びエッジ8dとが認識される。制御部6は、これらのエッジ8a〜8dに囲まれた領域を、バンド8として検出する。
【0018】
次いで、制御部6は、検出したバンド8から数値的な色情報であるRGB値を抽出し、抽出したRGB値をHSV値に変換する。RGB値とは、光の3原色である赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)を示す3つの数値の組み合わせによって色を表したものである。一方、HSV値とは、色相(Hue)、彩度(Saturation)、明度(Value)を示す3つの値の組み合わせによって色を表したものである。制御部6は、変換したHSV値のうち色相を用いて、バンド8の各領域b1〜bn(図2参照)のうち、画像F上に映っている領域を認識する。上述したように、色相は光の明暗やコントラスト等、撮影時における環境的要因の影響に応じて変動しにくい値であるため、色相を用いることにより、画像F上に映っている領域に着色された色を正確に認識することが可能となっている。
【0019】
以上のように、図4に示されるバンド8のエッジ及び色相を検出すると、制御部6は、X軸周りにおける指部2の回転角度θ1と、指部2の向きを取得する。まず、バンド8を検出する際に認識したエッジ8aとエッジ8bとに基づいて、これらの間の中間部を通る直線である、指部2の中心軸線Cが算出される。中心軸線Cが算出されると、画像F上においてY軸と中心軸線とがなす角度、すなわちX軸周りにおける指部2の回転角度θ1が測定される。
【0020】
X軸周りにおける指部2の回転角度θ1が測定されると、画像F上においてバンド8の色相がどのようにして変化しているのか、その配列が制御部6によって認識される。ここで、指部2の向きと領域b1〜bnの色相の配列とは予め対応付けられており、その相関関係は制御部6に記憶されている。したがって、制御部6に記憶されている相関関係と、画像F上から認識した色相の変化の配列とを照合することによって、指部2の向きが取得される。また、先端部2aと基端部2bとの相対的な位置関係も取得される。ここで、バンド8の各領域b1〜bnは、指部2の周方向に沿って色相が連続的に変化するように着色されている。したがって、色相がランダムに配置されるように着色した場合と比較すると、色相が変化する傾向を認識しやすく、且つ、色相の変化の配列を誤って認識することも防止される。
【0021】
次に、制御部6は、回転角度θ2(図3参照)を取得する。角度θ2は、XY平面に対してX軸周りに角度θ1だけ傾き、且つ、中心軸線Cを通る平面上において、X軸と中心軸線Cとがなす角度である。なお、図3は角度θ2をZ軸方向に投影した場合の角度を図示している。まず、画像F上におけるバンド8の直径W2が測定され、バンド8の実際の直径W1と画像F上における直径W2との比率により、カメラ7とバンド8との距離が算出される。カメラ7とバンド8との距離が算出されると、その距離におけるバンド8の長さL2が算出される。次いで、制御部6は、画像F上におけるバンド8の長さL3を計測する。ここで、実際の指部2はZ軸周りに角度θ2だけ傾いているため、算出された長さL2と、画像F上におけるバンド8の長さL3との間には差異が生じた状態となっており、画像F上における長さL3が、算出された長さL2よりも短くなっている。制御部6は、この長さL2と長さL3との差異に基づいて、下記(1)式よりZ軸周りにおける回転角度θ2を算出する。
90°−θ2=acos(L3/L2)・・・(1)
ここで、指部2の長手方向に沿った長さL1を長くすればするほど、Z軸周りにおける指部2の回転角度θ2の検出精度を向上させることが可能となっている。
【0022】
以上のように、ロボットハンド1の指部2に、バンド8を帯状に設けたので、カメラ7が撮影した指部2の画像Fからバンド8を検出することによって、3次元空間内における指部2の回転角度を取得できる。バンド8は、指部2の長手方向に沿って同一であるとともに、周方向に沿って変化する色相を有するので、指部2の向きと色相が変化する配列とを予め対応付けておき、画像F上において色相が変化する配列を認識することにより、指部2の向きを特定することができる。バンド8を設けた指部2をカメラ7で撮影するだけでロボットハンド1の姿勢検知を行なえるため、他の部材に機械的または電気的に接続されるセンサやLED等を用いる必要がない。また、バンド8は指部2の全周にわたって設けられるため、ロボットハンド1の姿勢が変化しても、バンド8が隠れてカメラ7の死角に入ることがない。したがって、ロボットハンドの姿勢検知システムにおいて、機器構成を簡素化して製造コストの低減及び耐久性の向上を可能にするとともに、あらゆる姿勢において、その姿勢を検知することが可能となる。
【0023】
また、各領域b1〜bnに着色された色の色相を、バンド8のパターンとして用いたので、各領域に着色された色が有する本来の色合いを、光の明暗やコントラスト等、撮影時における環境的要因の影響を受けることなく認識でき、姿勢検知の精度が向上する。各領域b1〜bnの色相と指部2の向きとは簡単に対応付けられるため、制御部における処理も単純化される。さらに、色相を指部2の周方向に沿って連続的に変化させたので、その変化の配列が同一方向に対して規則的になり、誤った認識をすることがない。したがって、非連続的、すなわちランダムに色相を変化させた場合と比較して、検知精度を向上させることが可能となる。
【0024】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2に係るロボットハンドの姿勢検知システムについて説明する。尚、以下の実施の形態において、図1〜4の参照符号と同一の符号は同一または同様の構成であるので、その詳細な説明は省略する。
図5は実施の形態2に係る指部2を示す概略図である。
図5に示すように、指部2の外周面2cには、実施の形態1におけるバンド8より短く形成され、互いに距離を置いて配置された2つのバンド11a及び11bが、指部2の全周にわたって巻き付けられている。2つのバンド11a及び11bの外周面は、実施の形態1におけるバンド8と同様に複数の色で着色されており、その色相が、指部2の長手方向に沿って同一であるとともに、周方向に沿って連続的に変化するようになっている。その他の構成については、実施の形態1と同様である。
【0025】
制御部6は、指部2を撮影した画像Fから2つのバンド11a及び11bを検出し、それぞれについて、指部2の周方向における色相の変化を認識する。次いで、認識したバンド11a及び11bの色相の変化に基づいて、指部2の向きを2箇所で取得する。また、XY平面に対してX軸周りに角度θ1だけ傾き、且つ、中心軸線Cを通る平面上において、X軸と中心軸線Cとがなす角度(実施の形態1における角度θ2)に関しては、バンド11aとバンド11bとの、対応する端部同士の間の既知の長さL4、及び直径W1を画像F上で計測することにより、実施の形態1と同様に算出することができる。また、上記の長さL4とは別の端部同士の間の長さ、すなわち図5に示す長さL5も計測し、2箇所の計測結果に基づいてZ軸周りの回転角度を算出することにより、検知精度をさらに向上させることも可能である。
以上のように、指部2の複数箇所にバンド11a及びバンド11bを巻き付けても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、指部2の向きを複数箇所で取得できるため、ロボットハンドの姿勢検知の精度をさらに向上することが可能となる。
【0026】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3に係るロボットハンドの姿勢検知システムについて説明する。この実施の形態3に係るロボットハンドの姿勢検知システムは、実施の形態1において色相をパターンとしたバンド8の代わりに、互いに異なる幅を有する直線状の模様で形成されたパターンを有するバンドを用いたものである。
図6(a)に示すように、指部2の外周面2cには、実施の形態1と同様の外形形状を有するバンド12が巻き付けられている。バンド12の外周面には、図6(b)に展開された様子を示すように、指部2の長手方向に沿って同一の幅で延びるとともに、指部2の周方向に沿って互いに異なる幅となる直線状の模様c1,c2,・・・,cnが形成されている。
【0027】
指部2の向きと、各模様c1〜cnの幅の配列との相関関係は、予め制御部に記憶されている。制御部は、直線状の模様c1〜cnのうち、画像上に映った模様の幅をそれぞれ計測して幅の変化の配列を認識し、その変化の配列に基づいて指部2の向きを取得するように構成されている。その他の構成については実施の形態1と同様である。
このように、バンド12に、指部2の長手方向に沿って同一の幅で延びるとともに、指部2の周方向に沿って互いに異なる幅となる直線状の模様c1〜cnを形成することによっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0028】
実施の形態1〜3において、円筒形状を有する部材として指部を構成したが、その断面形状を限定するものではない。例えば、図7(a)に示す指部13のように、一部に平坦面13aが形成されるような異形断面を有する部材とすることも可能である。この場合、実施の形態1のバンド8と同様に色相のパターンを有するバンド14を指部13の外周面に巻きつけるとともに、平坦面13a上に配置される色相を予め記憶しておくことにより、実施の形態1と同様にロボットハンドの姿勢を検知することができる。
また、図7(b)に示す指部15のように、その断面形状を楕円形状とすることも可能である。この場合、指部15に巻き付けられたバンド16のパターンのうち、楕円形状の長径部分と短径部分とに配置されるパターンを予め記憶しておくことにより、ロボットハンドの姿勢を検知することができる。
さらに、図7(c)に示す指部17のように、その断面形状を矩形形状とし、バンド18を巻き付けることも可能である。この場合、例えば図7(c)に示す矢印Hの方向から撮影すると、撮影した画像から3箇所のエッジ17a〜17cが検出される。指部17の外周面である4面に配置されるパターンを予め記憶しておくとともに、エッジ17aとエッジ17bとの間のパターン、及びエッジ17bとエッジ17cとの間のパターンを認識することによって、姿勢を検知することも可能である。
図7(a)〜(c)に示すような指部の場合、中心軸線は例えば断面の図心にすることができる。
【0029】
実施の形態1〜3において、指部の外周面に巻き付けられるシート状のバンドとしてマーカ部を構成したが、指部とは別体の部材であるバンドを巻き付けることに限定するものではなく、例えば塗装等によってマーカ部を構成することも可能である。また、ショットブラストやエッチングなど加工を加えることで、例えば反射率を変えてパターンを形成し、マーカ部を構成することも可能である。
また、実施の形態1、2において、制御部は画像上におけるバンドの色相を、RGB値からHSV値に変換することによって検出したが、HSV値を用いることに限定するものではない。色相を用いて色を表すものであればよく、例えばHLS色空間(色相(Hue)、彩度(Saturation)、輝度(Lightness))や、マンセル色体系等を用いることも可能である。
また、実施の形態1〜3において、指部の画像は1台のカメラによって撮影されたが、カメラの台数を限定するものではなく、複数台のカメラを用いることも可能である。例えば、2台のカメラを用いる場合は、回転角度θ2を、画像上で計測したバンドの長さ及び直径から算出するのではなく、三角測量の原理を用いて算出することも可能となる。
また、実施の形態1、2において、マーカ部は複数の領域b1,b2,b3,・・・,bnについてそれぞれの内部が同一色になるように着色されていたが、領域を分けることなく、周方向に沿って連続的に色相が変化するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施の形態1に係るロボットハンドの姿勢検知システムの構成を示す概略図である。
【図2】実施の形態1におけるマーカ部を示す概略図である。
【図3】実施の形態1におけるロボットハンドの姿勢検知方法を説明するための概略図である。
【図4】実施の形態1におけるロボットハンドの指部2をカメラ7が撮影した画像Fを示す概略図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係るロボットハンドの姿勢検知システムにおけるマーカ部を示す概略図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係るロボットハンドの姿勢検知システムにおけるマーカ部を示す概略図である。
【図7】ロボットハンドの指部の変形例を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0031】
1 ロボットハンド、2,13,15,17 指部、2c 指部の外周面、6 制御部、7 カメラ(撮像装置)、8,11a,11b,12,14,16,18 バンド(マーカ部)、8a,8b,8c,8d バンドのエッジ(マーカ部のエッジ)、b1〜bn,c1〜cn パターン、F 画像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
姿勢変化可能に設けられる指部を少なくとも1つ有するロボットハンドと、
前記ロボットハンドの前記指部を撮影する撮像装置と、
前記撮像装置が撮影した前記指部の画像が入力される制御部と
を備えるロボットハンドの姿勢検知システムにおいて、
前記指部の外周面には、前記指部の長手方向に沿って同一で、且つ前記指部の周方向に沿って変化するパターンを有するマーカ部が、前記指部の全周にわたって帯状に設けられ、
前記制御部は、前記撮像装置から入力された前記指部の前記画像から、前記マーカ部を検出するとともに、前記画像上における前記パターンを認識し、
認識した前記パターンに基づいて、前記ロボットハンドの姿勢を検知することを特徴とするロボットハンドの姿勢検知システム。
【請求項2】
前記マーカ部の前記パターンは、色相であって、
前記色相は、前記指部の周方向に沿って連続的に変化する請求項1に記載のロボットハンドの姿勢検知システム。
【請求項3】
前記マーカ部の前記パターンは、互いに異なる幅を有する直線状の模様である請求項1に記載のロボットハンドの姿勢検知システム。
【請求項4】
前記マーカ部は、前記指部の複数箇所に設けられる請求項1〜3のいずれか1項に記載のロボットハンドの姿勢検知システム。
【請求項5】
前記制御部による前記パターンの認識は、
前記マーカ部のエッジを認識すること、及び
前記指部の周方向における前記パターンの変化を認識すること
によって行なわれる請求項1〜4の何れか1項に記載のロボットハンドの姿勢検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−285778(P2009−285778A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141102(P2008−141102)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】