説明

ワイパモータ

【課題】ウォームホイールの共通化や成形精度の向上を図りつつ、ギヤの早期摩耗やギヤ欠け等の不具合の発生を抑制する。
【解決手段】運動変換部材45のギヤハウジング31の底部側に、セクタギヤ45bの軸心に設けられる歯車軸51と出力軸44とを揺動自在に連結する連結板46を設け、運動変換部材45の連結部45aとセクタギヤ45bとの間に、連結部45aをギヤハウジング31の底部側に配置し、セクタギヤ45bをギヤハウジング31の開口部側に配置する屈曲部45cを設けた。これにより運動変換部材45を段差形状に形成して、連結部45aをウォームホイール43に、セクタギヤ45bをギヤカバー32にそれぞれ近接配置させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイパ部材を揺動駆動するワイパモータに関し、特に、電動モータの回転運動を揺動運動に変換して出力軸に伝達する運動変換機構を備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両のリヤガラスを払拭するリヤワイパ装置は、電動モータの回転運動を揺動運動に変換して出力軸に伝達する運動変換機構を備えたワイパモータを有している。そして、ワイパモータの出力軸にワイパ部材を取り付けてワイパモータを駆動することにより、ワイパ部材をリヤガラスの予め定められた反転位置の間で揺動駆動させることができる。
【0003】
このようなワイパモータは、有底状に形成されたギヤハウジングとギヤハウジングの開口部を閉塞するギヤカバーとを備え、さらにギヤハウジングに固定される電動モータを有している。ギヤハウジング内には、減速機構および運動変換機構が収容され、減速機構は、電動モータにより回転されるウォームと、ウォームに噛み合うウォームホイールとから形成されている。これにより、ウォームの回転を所定の速度にまで減速して高トルク化し、高トルク化された回転力がウォームホイールから出力される。
【0004】
一方、運動変換機構は、セクタギヤおよび連結部を備えた運動変換部材と、出力軸に一体回転可能に設けたピニオンギヤおよびセクタギヤの噛み合いを保持する連結板とから形成されている。運動変換部材の連結部は、ウォームホイールの回転中心軸から離れた位置にある連結軸に回転自在に連結され、連結板は、セクタギヤの軸心にある歯車軸および、ピニオンギヤとともに回転する出力軸の双方に回転自在に連結されている。これにより、電動モータを駆動すると、ウォームホイールが回転して運動変換部材が揺動運動し、これに伴いセクタギヤに噛み合うピニオンギヤ、つまり出力軸が揺動するようになっている。
【0005】
このような運動変換機構を備えたワイパモータとしては、例えば、特許文献1および特許文献2に記載された技術が知られている。
【0006】
特許文献1に記載のワイパモータは、平板状の動力変換部材(運動変換部材)を備え、ギヤケース(ギヤハウジング)の底部側から、揺動プレート(連結板),出力ギヤ(ピニオンギヤ)に噛み合うセクタギヤ部(セクタギヤ)を有する動力変換部材(運動変換部材)の順で配置されている。つまり、ギヤケースの底部と動力変換部材との間で連結板を揺動させる構造を採っている。また、減速機構を形成するウォームホイールはギヤケースの最深部に回転自在に設けられ、出力軸の軸方向に沿うウォームホイールと動力変換部材との間の距離が長くなっている。よって、揺動プレートの揺動スペースを確保するために、軸方向に部分的に突出する突出部をウォームホイールに一体に形成し、この突出部に連結軸を介して動力変換部材を回転自在に連結している。
【0007】
特許文献2に記載のワイパモータは、特許文献1に記載のワイパモータとは逆に、ギヤケースの底部側から、出力ギヤに噛み合うセクタギヤを有する動力変換部材,連結板の順で配置されている。つまり、動力変換部材と、ギヤケースを閉塞するケースカバーとの間で連結板を揺動させる構造を採っている。これにより、特許文献1に比してウォームホイールと動力変換部材との間の連結板の揺動スペースを省略し、ウォームホイールと動力変換部材とを近接配置させている。よって、ウォームホイールの軸方向に部分的に突出する突出部を形成する必要が無く、ウォームホイールの共通化が図れる。つまり、動力変換部材を連結するための連結軸を、ウォームホイールに複数の設置パターンで配置可能として、これにより車種に応じてワイパ部材の揺動位置を変更可能、つまり一のウォームホイールで複数車種に対応できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−088776号公報(図1,図2)
【特許文献2】特開2007−189759号公報(図1,図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のワイパモータによれば、ウォームホイールに部分的に突出する突出部を形成するため、ウォームホイールに連結軸を複数の設置パターンで配置できず、ウォームホイールの共通化ができなかった。また、ウォームホイールはプラスチック等の樹脂材料を射出成形して形成されることが多く、特に肉厚部となる突出部にはヒケ現象(溶融樹脂が冷やされて硬化する時に生じる収縮)が発生し易い。このヒケ現象が発生した場合には、ウォームホイールの成形精度の低下を招き、ひいてはワイパモータからの異音発生等の問題が生じ得る。
【0010】
特許文献2に記載のワイパモータによれば、ウォームホイールは部分的に突出する突出部を備えないため、特許文献1に記載のワイパモータのようなヒケ現象の発生は抑制できる。その一方で、連結板がギヤカバー側に配置されるため、ギヤケースの出力軸案内部(ボス部)から離れた位置で連結板が揺動することになる。つまり、出力軸のギヤカバー側の先端部分に電動モータの駆動力が負荷されるため、仮に積雪等によりワイパ部材から大きな外力が出力軸に作用した時には出力軸が撓む虞がある。この場合には、セクタギヤと出力ギヤとの噛み合いが浅くなり、ひいてはギヤの早期摩耗やギヤ欠け等の不具合が発生するという問題が生じ得る。
【0011】
本発明の目的は、ウォームホイールの共通化や成形精度の向上を図りつつ、ギヤの早期摩耗やギヤ欠け等の不具合の発生を抑制できるワイパモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のワイパモータは、電動モータの回転運動を揺動運動に変換して出力軸に伝達する運動変換機構を備え、前記出力軸に取り付けられるワイパ部材を予め定められた反転位置の間で揺動駆動するワイパモータであって、前記運動変換機構を収容する有底状のギヤハウジングと、前記ギヤハウジングの開口部を閉塞するギヤカバーと、前記出力軸に一体回転可能に設けられ、前記ギヤハウジング内に収容されるピニオンギヤと、前記ギヤハウジング内に延び、前記電動モータにより回転されるウォームと、前記ギヤハウジング内に回転自在に収容され、前記ウォームに噛み合うウォームホイールと、前記ウォームホイールの回転中心軸から離れた位置に設けられる連結軸と、前記連結軸に回転自在に連結される連結部および前記ピニオンギヤと噛み合うセクタギヤを有する運動変換部材と、前記運動変換部材の前記ギヤハウジングの底部側に設けられ、前記セクタギヤの軸心に設けられる歯車軸と前記出力軸とを揺動自在に連結する連結板と、前記運動変換部材の前記連結部と前記セクタギヤとの間に設けられ、前記連結部を前記ギヤハウジングの底部側に配置し、前記セクタギヤを前記ギヤハウジングの開口部側に配置する屈曲部とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明のワイパモータは、前記運動変換部材と前記ギヤカバーとの間に、前記運動変換部材と前記ギヤカバーとの摺動を円滑にする摺動案内部材を装着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のワイパモータによれば、運動変換部材のギヤハウジングの底部側に、セクタギヤの軸心に設けられる歯車軸と出力軸とを揺動自在に連結する連結板を設け、運動変換部材の連結部とセクタギヤとの間に、連結部をギヤハウジングの底部側に配置し、セクタギヤをギヤハウジングの開口部側に配置する屈曲部を設けている。これにより運動変換部材を段差形状に形成して、連結部をウォームホイールに、セクタギヤをギヤカバーにそれぞれ近接配置させることができる。
【0015】
したがって、ウォームホイールには、従前(特許文献1)のように突出部を形成する必要が無くなり、ウォームホイールを突出部の無い面一形状に形成できる。よって、複数の設置パターンで連結軸を配置できるようになり、ひいてはウォームホイールの共通化を図ることができる。また、ウォームホイールには突出部を形成しなくて済むため、ヒケ現象の発生を抑制してウォームホイールの成形精度を向上できる。さらに、出力軸の軸方向に沿うセクタギヤとウォームホイールとの間に連結板の揺動スペースを確保でき、従前(特許文献2)のように運動変換部材とケースカバーとの間で連結板を揺動させなくて済む。よって、セクタギヤとピニオンギヤとの噛み合いが浅くなることに起因するギヤの早期摩耗やギヤ欠け等の不具合の発生を抑制することができる。
【0016】
本発明のワイパモータによれば、運動変換部材とギヤカバーとの間に、運動変換部材とギヤカバーとの摺動を円滑にする摺動案内部材を装着するので、運動変換部材のギヤカバーに対する相対移動をスムーズにして、電動モータへの負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施の形態に係るワイパモータを示す正面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図2の破線円B部を拡大して示す拡大断面図である。
【図4】図1のワイパモータにおける運動変換機構の組み付け手順を説明する説明図である。
【図5】(a),(b),(c)は、図1のワイパモータにおける運動変換機構の動作状態を説明する説明図である。
【図6】第2実施の形態に係るワイパモータにおける運動変換機構の組み付け手順を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0019】
図1は第1実施の形態に係るワイパモータを示す正面図を、図2は図1のA−A線に沿う断面図を、図3は図2の破線円B部を拡大して示す拡大断面図をそれぞれ表している。
【0020】
図1に示すワイパモータ10は、自動車等の車両のリヤウィンドガラスを払拭するためのリヤワイパ装置(図示せず)の駆動源として用いられるもので、ワイパモータ10は、電動モータとしてのモータ部20とギヤユニット部30とを備えている。
【0021】
モータ部20は、鋼板等の磁性材料をプレス加工(深絞り加工)することにより、有底筒状に形成されたモータケース21を備えており、その内部には、断面が略円弧形状に形成された一対の永久磁石22が対向して固定されている。各永久磁石22の内側には、コイル23が所定の巻き方で巻装されたアーマチュア24が回転自在に設けられ、アーマチュア24の回転中心には回転軸としてのアーマチュア軸25が貫通して固定されている。
【0022】
アーマチュア軸25の軸方向に沿う略中間部分には、筒状のコンミテータ(整流子)26が固定され、コンミテータ26にはコイル23の端部が電気的に接続されている。コンミテータ26の外周部分には、一対のブラシ27が摺接するようになっており、これにより車載コントローラ(図示せず)から各ブラシ27に駆動電流を供給することで、コンミテータ26を介してコイル23に駆動電流が流れ、アーマチュア24に回転力(電磁力)が発生し、ひいてはアーマチュア軸25が所定の回転方向/回転速度で回転する。
【0023】
アーマチュア軸25は、モータケース21から突出してギヤユニット部30のギヤハウジング31内に延びており、アーマチュア軸25の突出端側(図中左端側)の外周面には、螺旋状の歯部28aを有するウォーム28が一体に形成されている。ここで、ウォーム28は、例えば、転造加工等により形成されている。ウォーム28は、モータ部20への駆動電流の供給により、アーマチュア軸25と一体回転する。
【0024】
図1〜図3に示すように、ギヤユニット部30は、有底状に形成されたギヤハウジング31と、ギヤハウジング31内に回転自在に収容されたギヤ機構40と、ギヤハウジング31の開口部を閉塞するギヤカバー32とから形成されている。ここで、ギヤ機構40は、減速機構41と運動変換機構42とから形成されている。
【0025】
減速機構41は、アーマチュア軸25に形成されたウォーム28と、ギヤハウジング31内に回転自在に収容されたウォームホイール43とから形成されている。ウォームホイール43は、溶融したプラスチック等の樹脂材料を射出成形することにより形成され、ギヤハウジング31の底部面積の略半分を占める大径の歯車(ヘリカルギヤ)となっている。ウォームホイール43の径方向外側には歯部43aが形成され、歯部43aはウォーム28の歯部28aに噛み合わされている。これにより、アーマチュア軸25の回転が所定の速度にまで減速され、高トルク化された回転力がウォームホイール43から出力される。
【0026】
ウォームホイール43は、ギヤハウジング31の底面P1よりもさらに深底となった深底収容部31a内に収容されている。ウォームホイール43の回転中心軸43bは、ギヤハウジング31の深底収容部31aの底部を貫通するとともに、ギヤハウジング31に回転自在に支持されている。
【0027】
ウォームホイール43の回転中心軸43bから径方向外側に所定量離れた位置には、連結軸としての有底の連結孔43cが形成されている。連結孔43cは、ウォームホイール43の周方向に沿って4箇所に設けられ、各連結孔43cはそれぞれ回転中心軸43bからの距離が同じ距離となっている。
【0028】
ウォームホイール43の軸方向に沿う厚さ寸法は、ギヤハウジング31の深底収容部31aの深さ寸法と略同じ寸法に設定され、ウォームホイール43の側面P2、つまり、各連結孔43cの上面(図2,図3中下面)は、ギヤハウジング31の底面P1とその軸方向位置が略一致している。また、ウォームホイール43の側面P2は面一形状に形成され、側面P2を基準位置として側面P2から外側に向けて突出する突出部は存在しない。したがって、ウォームホイール43を射出成形する際に、従前のような突出部の成形に起因するヒケ現象の発生を抑制して、ウォームホイール43の成形精度を向上させている。
【0029】
運動変換機構42は、出力軸44のピニオンギヤ44c,運動変換部材45,連結板46,摺動案内部材47を備えている。運動変換機構42は、モータ部20(アーマチュア軸25)の回転運動を、減速機構41を介して揺動運動に変換し、出力軸44(ワイパ部材)に伝達するものである。
【0030】
図2に示すように、出力軸44は鋼鉄製の丸棒からなり、基端側がギヤハウジング31内に配置され、先端側がギヤハウジング31外に延出されている。出力軸44は、ギヤハウジング31に一体に設けられたボス部31bに回転自在に支持されている。出力軸44とボス部31bとの間には、ゴム製のシール部材48が装着され、シール部材48は雨水や埃等がギヤハウジング31内に進入するのを阻止している。
【0031】
出力軸44の先端側(図中上側)には、ワイパ部材を形成するワイパアーム(図示せず)の基端側が相対回転不能に固定されるセレーション部44aおよび、ワイパアームの基端側を出力軸44に固定するための固定ねじ(図示せず)がねじ結合される雄ねじ部44bが一体に設けられている。
【0032】
出力軸44の基端側(図中下側)には、焼結材料等により形成されたピニオンギヤ44cが一体回転可能に設けられ、ピニオンギヤ44cは、小径の平歯車により形成されている。ピニオンギヤ44cの中心部分には、椀状に形成された樹脂キャップ49が装着され、樹脂キャップ49はギヤカバー32の内側面を摺接するようになっている。樹脂キャップ49は、ピニオンギヤ44cのギヤカバー32に対する相対回転を円滑にする役割を果たすものである。
【0033】
運動変換部材45は、鉄板等の金属材料により段差形状(階段形状)に形成され、連結部45a,セクタギヤ45bおよび屈曲部45cを備えている。
【0034】
連結部45aはウォームホイール43側に配置され、連結部45aには、ウォームホイール43の連結孔43cに回転自在に差し込まれる連結ピン50が固定されている。つまり、連結部45aは連結ピン50を介して連結孔43cに回転自在に連結されている。ここで、連結ピン50の差し込み位置は複数の設置パターンに設定可能、つまり各連結孔43cの内の任意の連結孔43cに差し込み可能となっており、これにより、車種に応じてワイパ部材の揺動位置や停止位置等を変更できるようになっている。
【0035】
セクタギヤ45bは略扇形の平歯車であり、ピニオンギヤ44cと噛み合わされて、セクタギヤ45bの軸心には歯車軸51が固定されている。屈曲部45cは、連結部45aとセクタギヤ45bとの間に設けられ、屈曲部45cは、連結部45aをギヤハウジング31の底部側(底面P1側)に配置し、セクタギヤ45bをギヤハウジング31の開口部側(ギヤカバー32側)に配置している。
【0036】
運動変換部材45のセクタギヤ45bにおけるギヤハウジング31の底面P1側には、鋼板等をプレス成形することにより所定形状に形成された連結板46が設けられている。連結板46の長手方向両側には、第1ピン孔46aおよび第2ピン孔46bが形成されており、第1ピン孔46aには出力軸44が揺動自在に装着され、第2ピン孔46bには運動変換部材45の歯車軸51が揺動自在に装着されている。このように、連結板46は、出力軸44と歯車軸51とを揺動自在に連結するようになっている。
【0037】
ここで、第1ピン孔46aと第2ピン孔46bとの間の距離は、セクタギヤ45bのピッチ円半径寸法とピニオンギヤ44cのピッチ円半径寸法との和に設定され、したがって、連結板46は、各ギヤ44c,45bの噛み合い部Gの噛み合い状態をがたつくこと無く保持するようになっている。
【0038】
ウォームホイール43の側面P2とセクタギヤ45bの側面P3との間の距離は、屈曲部45cにより連結板46の板厚よりも長い長さ寸法となっており、ウォームホイール43の側面P2とセクタギヤ45bの側面P3との間には、図3に示すように高さ寸法hの揺動スペースSが形成されている。揺動スペースSは、ワイパモータ10を駆動した際の連結板46の揺動を許容するスペースであり、これにより連結板46はギヤハウジング31の底部側と運動変換部材45との間を揺動可能となっている。
【0039】
摺動案内部材47は、プラスチック等の樹脂材料により所定形状に形成され、運動変換部材45のギヤカバー32側に装着、つまり、運動変換部材45とギヤカバー32との間に設けられている。摺動案内部材47は、ギヤカバー32の内側面を摺接し、これにより、運動変換部材45のギヤカバー32に対する摺動(相対移動)を円滑にしている。
【0040】
摺動案内部材47は、運動変換部材45の段差形状に倣って段差形状に形成され、運動変換部材45のギヤカバー32側の略全面を覆っている。摺動案内部材47には、運動変換部材45の連結部45aに固定された連結ピン50に装着される第1キャップ部47aと、運動変換部材45のセクタギヤ45bに固定された歯車軸51に装着される第2キャップ部47bとを備えている。これにより、摺動案内部材47を運動変換部材45の形状に沿わせてずれることなく精度良く装着可能となっている。なお、摺動案内部材47の第2キャップ部47b側が、ギヤカバー32に摺接するようになっている。
【0041】
次に、ワイパモータ10を形成する運動変換機構42の組み付け手順について、図面を用いて詳細に説明する。
【0042】
図4は図1のワイパモータにおける運動変換機構の組み付け手順を説明する説明図を表している。なお、図4においては、説明を分かり易くするために、モータケース21,ギヤハウジング31およびギヤカバー32等を省略している。
【0043】
図4に示すように、まず、アーマチュア軸25やウォームホイール43等を、モータケース21およびギヤハウジング31(図1参照)のそれぞれに組み付けたワイパモータサブ組立体SA1を準備する。また、出力軸44にピニオンギヤ44cや連結板46を装着した出力軸組立体SA2を準備する。さらに、連結ピン50および歯車軸51を固定した運動変換部材45、および摺動案内部材47を準備する。
【0044】
次いで、図中矢印(1)に示すように、出力軸44の雄ねじ部44b側を、ギヤハウジング31の開口部側から臨ませて、ギヤハウジング31のボス部31bに出力軸44を挿入する。その後、図中矢印(2)に示すように、運動変換部材45を臨ませて、ウォームホイール43の各連結孔43cの内の仕様に見合った連結孔43cを選択して連結ピン50を装着し、さらに歯車軸51を連結板46の第2ピン孔46bに装着する。このとき、ウォームホイール43および連結板46の位置を適宜調整し、連結ピン50および歯車軸51をそれぞれ装着し易いようにしておく。これにより、ギヤハウジング31内でピニオンギヤ44cとセクタギヤ45bとが噛み合わされる。
【0045】
次いで、図中矢印(3)に示すように、摺動案内部材47を臨ませて、運動変換部材45に装着する。このとき、摺動案内部材47の第1キャップ部47aを連結ピン50に、第2キャップ部47bを歯車軸51にそれぞれ対応させるようにする。なお、摺動案内部材47には引っかけ爪47cが一体に設けられ、この引っかけ爪47cを運動変換部材45に引っかけることにより、摺動案内部材47の運動変換部材45からの脱落が防止される。これにより、運動変換機構42のギヤハウジング31への組み付けが完了する。
【0046】
次に、以上のように形成したワイパモータ10の動作について、図面を用いて詳細に説明する。
【0047】
図5(a),(b),(c)は図1のワイパモータにおける運動変換機構の動作状態を説明する説明図を表している。なお、図5においては、説明を分かり易くするために、主要部品以外の構成部品を省略している。
【0048】
運転者等によりワイパスイッチ(図示せず)を操作すると、図1に示すモータ部20に駆動電流が供給され、ウォーム28の回転がウォームホイール43に伝達される。すると、図5(a)に示す状態、つまりワイパ部材の位置が下反転位置(格納位置)にある状態から、ウォームホイール43が図中矢印Iに示す方向(時計回り方向)に高トルク化された状態で回転する。これに伴い、運動変換部材45の連結部45aも時計回り方向に回転する。
【0049】
その後、セクタギヤ45bが揺動運動して、セクタギヤ45bに噛み合うピニオンギヤ44cが回転中心Cを中心に時計回り方向に揺動する。これにより、出力軸44に取り付けられたワイパ部材が矢印M1の方向に揺動し、下反転位置(格納位置)から上反転位置に向かって揺動し始める。
【0050】
その後、図5(b)の矢印IIに示すように、さらにウォームホイール43が時計回り方向への回転を進めると、揺動スペースS(図3参照)内を連結板46が揺動しつつ、連結板46はウォームホイール43とセクタギヤ45bとの間に入り込む。そして、ピニオンギヤ44cにおいても回転中心Cを中心に揺動を続ける。これにより、出力軸44に取り付けられたワイパ部材が矢印M2の方向に揺動を続け、上反転位置に近づいていく。
【0051】
このとき、屈曲部45cによりウォームホイール43とセクタギヤ45bとの間には充分な揺動スペースSが確保されているため、連結板46とウォームホイール43とが干渉することは無い。また、仮にワイパ部材に積雪等により大きな負荷が掛かったとしても、連結板46はギヤハウジング31の底部側に配置されているので出力軸44が撓むようなことは無く、各ギヤ44c,45bの噛み合いが浅くなるようなことは無い。
【0052】
次いで、図5(c)の矢印IIIに示すように、さらにウォームホイール43が時計回り方向への回転を進めると、セクタギヤ45bの揺動運動に伴ってピニオンギヤ44cが反時計回り方向に回転し始める。ここで、ピニオンギヤ44cの回転方向が切り替わる切り替えポイントは、ワイパ部材が上反転位置にあるポイントとなっている。その後、出力軸44に取り付けられたワイパ部材が矢印M3の方向に揺動し、上反転位置から下反転位置(格納位置)に向かって揺動し始める。このようにして、ウォームホイール43(モータ部20)の回転運動が運動変換機構42により揺動運動に変換されて出力軸44、つまりワイパ部材に伝達される。これにより、ワイパ部材はリヤウィンドガラス上の予め定められた反転位置の間(払拭範囲)で揺動駆動されて、リヤウィンドガラスに付着した雨水や埃等を払拭することができる。
【0053】
以上のように形成した第1実施の形態に係るワイパモータ10によれば、運動変換部材45のギヤハウジング31の底部側に、セクタギヤ45bの軸心に設けられる歯車軸51と出力軸44とを揺動自在に連結する連結板46を設け、運動変換部材45の連結部45aとセクタギヤ45bとの間に、連結部45aをギヤハウジング31の底部側に配置し、セクタギヤ45bをギヤハウジング31の開口部側に配置する屈曲部45cを設けた。これにより運動変換部材45を段差形状に形成して、連結部45aをウォームホイール43に、セクタギヤ45bをギヤカバー32にそれぞれ近接配置させることができる。
【0054】
したがって、ウォームホイール43には、従前(特許文献1)のように突出部を形成する必要が無くなり、ウォームホイール43を突出部の無い面一形状に形成できる。よって、複数の設置パターンで連結孔43cを配置できるようになり、ひいてはウォームホイール43の共通化を図ることができる。また、ウォームホイール43には突出部を形成しなくて済むため、ヒケ現象の発生を抑制してウォームホイール43の成形精度を向上できる。さらに、出力軸44の軸方向に沿うセクタギヤ45bとウォームホイール43との間に連結板46の揺動スペースSを確保でき、従前(特許文献2)のように運動変換部材とケースカバーとの間で連結板を揺動させなくて済む。よって、セクタギヤ45bとピニオンギヤ44cとの噛み合いが浅くなることに起因するギヤの早期摩耗やギヤ欠け等の不具合の発生を抑制することができる。
【0055】
また、第1実施の形態に係るワイパモータ10によれば、運動変換部材45とギヤカバー32との間に、運動変換部材45とギヤカバー32との摺動を円滑にする摺動案内部材47を装着したので、運動変換部材45のギヤカバー32に対する相対移動をスムーズにして、モータ部20への負荷を軽減することができる。
【0056】
次に、本発明の第2実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0057】
図6は第2実施の形態に係るワイパモータにおける運動変換機構の組み付け手順を説明する説明図を表している。
【0058】
第2実施の形態に係るワイパモータにおいては、上述した第1実施の形態に比して、ウォームホイールの形状のみが異なっている。図6に示すように、ウォームホイール60は、第1実施の形態に係るウォームホイール43(図4参照)に比して、ウォームホイール60の軸方向に沿う各連結孔43cを有する部分の厚み寸法のみを厚くし、歯部43aの厚み寸法が相対的に薄くなっている点が異なっている。つまり、ウォームホイール60は、歯部43aと各連結孔43cを有する部分とで2段構造を採用している。なお、この場合のウォームホイール60の基準位置は、図示の通り側面P4となっている。
【0059】
以上のように形成した第2実施の形態においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。第2実施の形態においては、これに加えて、連結ピン50の長さ寸法を長くすることができる。したがって、ウォームホイール60と運動変換部材45との振れを効果的に抑えることができる。よって、各ギヤをより正確に噛み合わせることができ、ワイパモータ10(図1参照)の長寿命化を図ることが可能となる。
【0060】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態においては、ウォームホイール43,60に連結孔43cを周方向に沿って4個設けたものを示したが、本発明はこれに限らず、ウォームホイールの剛性上許容できる範囲内であれば、その個数を自由に設定することができる。
【0061】
また、上記各実施の形態においては、焼結材料等により形成されたピニオンギヤ44cと鉄板等の金属材料により形成された運動変換部材45とを示したが、本発明はこれに限らず、ピニオンギヤ44cと運動変換部材45とは、プラスチック等の樹脂材料により形成したものとすることができる。
【0062】
さらに、本発明は、アーマチュア軸25がモータ部20とギヤユニット部30との間で分割される形状のものや、モータケース21に永久磁石が4個以上固定されるものとすることができる。
【0063】
また、上記各実施の形態においては、ワイパモータ10を、自動車等の車両のリヤワイパ装置の駆動源に適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、自動車等の車両のフロントウィンドガラスを払拭するフロントワイパ装置の駆動源に適用することもできる。
【0064】
さらに、上記各実施の形態においては、ワイパモータ10を、自動車等の車両に搭載されるワイパ装置の駆動源としたものを示したが、本発明はこれに限らず、鉄道車両や航空機,船舶等に搭載されるワイパ装置の駆動源としても用いることができる。
【符号の説明】
【0065】
10 ワイパモータ
20 モータ部(電動モータ)
21 モータケース
22 永久磁石
23 コイル
24 アーマチュア
25 アーマチュア軸
26 コンミテータ
27 ブラシ
28 ウォーム
28a 歯部
30 ギヤユニット部
31 ギヤハウジング
31a 深底収容部
31b ボス部
32 ギヤカバー
40 ギヤ機構
41 減速機構
42 運動変換機構
43 ウォームホイール
43a 歯部
43b 回転中心軸
43c 連結孔(連結軸)
44 出力軸
44a セレーション部
44b 雄ねじ部
44c ピニオンギヤ
45 運動変換部材
45a 連結部
45b セクタギヤ
45c 屈曲部
46 連結板
46a 第1ピン孔
46b 第2ピン孔
47 摺動案内部材
47a 第1キャップ部
47b 第2キャップ部
47c 引っかけ爪
48 シール部材
49 樹脂キャップ
50 連結ピン
51 歯車軸
60 ウォームホイール
G 噛み合い部
S 揺動スペース
P1 底面
P2〜P4 側面
SA1 ワイパモータサブ組立体
SA2 出力軸組立体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータの回転運動を揺動運動に変換して出力軸に伝達する運動変換機構を備え、前記出力軸に取り付けられるワイパ部材を予め定められた反転位置の間で揺動駆動するワイパモータであって、
前記運動変換機構を収容する有底状のギヤハウジングと、
前記ギヤハウジングの開口部を閉塞するギヤカバーと、
前記出力軸に一体回転可能に設けられ、前記ギヤハウジング内に収容されるピニオンギヤと、
前記ギヤハウジング内に延び、前記電動モータにより回転されるウォームと、
前記ギヤハウジング内に回転自在に収容され、前記ウォームに噛み合うウォームホイールと、
前記ウォームホイールの回転中心軸から離れた位置に設けられる連結軸と、
前記連結軸に回転自在に連結される連結部および前記ピニオンギヤと噛み合うセクタギヤを有する運動変換部材と、
前記運動変換部材の前記ギヤハウジングの底部側に設けられ、前記セクタギヤの軸心に設けられる歯車軸と前記出力軸とを揺動自在に連結する連結板と、
前記運動変換部材の前記連結部と前記セクタギヤとの間に設けられ、前記連結部を前記ギヤハウジングの底部側に配置し、前記セクタギヤを前記ギヤハウジングの開口部側に配置する屈曲部とを備えることを特徴とするワイパモータ。
【請求項2】
請求項1記載のワイパモータにおいて、前記運動変換部材と前記ギヤカバーとの間に、前記運動変換部材と前記ギヤカバーとの摺動を円滑にする摺動案内部材を装着することを特徴とするワイパモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−84251(P2011−84251A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240481(P2009−240481)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】