説明

三次元形状計測装置、および当該三次元形状計測装置の製造方法

【課題】計測精度を向上させた三次形状元計測装置を実現する。
【解決手段】計測対象に投影された、位置に応じて輝度が変化する縞状の光パタンを解析することによって、計測対象12の三次元形状を計測する三次元形状計測装置10であって、計測対象12が配置され、上記光パタンが投影される計測面52を備えた移動ユニット11と、上記光パタンを計測対象12および計測面52に投影する投光ユニット13と、上記光パタンを画像として読み取る撮像ユニット15とを備え、撮像ユニット15は、計測面52上のある位置Wからレンズ33までを結んだ線分Lと計測面52の垂線との間の角度をθ、位置Wから撮像ユニット15までを結んだ線分と上記計測面の垂線との間の角度をθとする場合に、計測対象となる計測面52の領域内において、tanθ+tanθを一定に保つように上記光パタンの縞を投影している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測対象に投影された光パタンを解析することによって、計測対象の三次元形状を計測する三次元形状計測装置、および当該三次元形状計測装置で用いられる投影手段の設計方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像解析によって対象物の三次元形状情報を得る手段として、所定の撮像視野内に存在する計測対象に光パタンを投影し、計測対象の三次元形状に応じて変形した光パタンの変形量を解析する方法がある。代表的な方法としては、光切断法や空間コード法、縞解析法などが挙げられる。これらは全て三角測量の原理に基づいているが、中でも、縞解析法に関しては空間縞解析や時間縞解析など多くの手法が提案されており、高い計測精度を得る手法として知られている。
【0003】
特許文献1に記載の格子パタン投影法を用いた三次元形状測定装置では、液晶素子に一定のピッチの幅を有するストライブ電極で正弦波を形成することで、三次元形状の計測を行っている。
【0004】
また、特許文献2に記載の頭部の三次元形状計測システムでは、位相シフトを用いて三次元形状の計測を行っている。
【0005】
また、特許文献3に記載の光電式エンコーダでは、複数の回折格子を用いて光線を照射、一方の回折格子を移動させた場合に光検出器で検出する干渉光の強度の変化に基づいて移動量を検出している。
【特許文献1】特開平11−83454号公報(1999年3月26日公開)
【特許文献2】特開2005−106491号公報(2005年4月21日公開)
【特許文献3】特開2005−55360号公報(2005年3月3日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような構成では、通常、計測対象を設置した移動ユニットに対して垂直にカメラなどを含む撮像ユニットを配置し、計測対象に光パタンを照射する投光ユニットを上記移動ユニットに対して斜め方向に配置している。そのため、カメラは移動ユニットを正面から撮像することができるが、投光ユニットは、移動ユニットに対して光パタンを斜め方向から照射することになる。
【0007】
このように、レンズ光軸が物面に対して傾いているときにピントを合わせるための配置として、シャインプルーフの原理が利用されたシャインプルーフカメラなどが用いられる。シャインプルーフの条件を満たしていない場合、物面が光軸に対して垂直でないので、物面上にそれぞれの位置において光パタンの倍率が異なる。
【0008】
三次元形状計測装置では、縞模様などを正弦波として投影しているため、ピントを均等にずらすことが必要になる。そのため、個々の光パタンのピントはあうが、それぞれの縞の投影する位置に応じて倍率が異なり、縞模様の間隔が変わってしまう。これは、投影側から離れるほど、投影される像は小さくなるためである(図8参照)。
【0009】
上記の理由から、計測する三次元形状の高さの誤差が、計測する場所によって異なってしまったり、移動ユニットの高さを変えると高さ誤差がばらついたりするという問題を生じる。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、計測精度を計測面上において一定に保つことができる三次形状元計測装置、および当該三次元計測装置で用いられる投影手段の設計方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る三次元形状計測装置は、上記課題を解決するために、計測対象に投影された、位置に応じて輝度が変化する縞状の光パタンを解析することによって、計測対象の三次元形状を計測する三次元形状計測装置であって、上記計測対象が配置され、上記光パタンが投影される計測面を備えた被投影手段と、上記光パタンを上記計測対象および計測面に投影する投影手段と、上記光パタンを撮像する撮像手段とを備え、上記投影手段は、上記計測面上のある位置から上記投影手段までを結んだ線分と上記計測面の垂線との間の角度をθ、上記ある位置から上記撮像手段までを結んだ線分と上記計測面の垂線との間の角度をθとする場合に、計測面上の所定の領域内において、tanθ+tanθを一定に保つように上記光パタンの縞を投影することを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、投影手段が縞状の光パタンを計測対象および計測面に投影し、撮像手段が投影された光パタンを読み取る構成において、tanθ+tanθを計測対象となる領域内で一定に保つことができるように設計されたパタン形成手段を備えているので、撮像手段から計測面に対する視線角度であるθおよび投影手段から計測面に対する投影角度であるθを考慮した縞模様を投射することができる。
【0013】
三次元計上計測装置では、光パタンである縞模様を正弦波として投影する際に、斜め方向から投影を行っている。そのため、投影する距離によって倍率が変化し、計測面に対して投影される縞模様が、投影する位置に応じて倍率が異なってしまうので、縞の間隔が変化する。縞の間隔が変化することによって、正弦波として投影された縞模様の周期が変化し、測定する物体の計測誤差として検出されてしまう。
【0014】
さらに、この計測誤差は、計測面上の位置によってばらばらに変化してしまう。これは、投影側から距離が離れれば離れるほど、計測対象に投影される光パタンの像は小さくなってしまうためである。三次元形状を計測する場合、計測範囲全体で計測精度を一定にすることが重要である。計測範囲の位置によって誤差が変動する場合、計測対象による周期のずれであるのか計測誤差であるのかが分からず、計測精度が不確かになってしまう。また、誤差が場所によって一定でないため計算によって補正を行うことができない。これは、撮像手段からの撮像角度や、投影手段からの投影角度を考慮して、光パタンが投影されていないことに起因する。
【0015】
そこで、本願の三次元形状計測装置では、撮像角度や投影角度を考慮した像を計測対象および計測面に対して投射している。これによって、1)撮像する撮像手段の中心から離れると視野角が狭くなるため縞が狭く見える、2)投光器から離れると投影する光パタンの縞の幅が狭くなるという問題を解決し、計測範囲全体で高さ誤差を一定の範囲に収め、計測精度を計測面上において一定に保つことができるという効果を奏する。
【0016】
本発明に係る三次元形状計測装置では、上記投影手段は、縞状の光パタンを射出する光射出面を備えるパタン生成手段と、パタン生成手段から射出された光パタンを所定の倍率で上記計測面に投影する光学投影手段とを含み、上記計測面に投影される光パタンは、上記撮像手段の撮像位置において、周期Tで繰り返す縞模様が撮像されるように形成されており、上記計測面と、上記パタン生成手段における光射出面と、上記光学投影手段の光軸に直交するレンズ面とが一つの直線Sで交差し、直線Sに垂直な面において、上記レンズ面および光軸の交点Lから上記光射出面および光軸の交点Pまでの距離をf’、上記Lから上記計測面および光軸の交点Wまでの距離をZ、角度LSWをθ、角度LSPをθ’とする場合に、上記光パタンの位相誤差によって計測される三次元形状の限界である測距レンジHが、
【0017】
【数1】

【0018】
の式で求められ、上記計測面上に投影されるn+1番目の縞の基準点からの位置dn+1が、
【0019】
【数2】

【0020】
の式で求められ、上記光射出面上の縞の基準点からの位置d’が、
【0021】
【数3】

【0022】
の式で求められていることが好ましい。
【0023】
上記の式に基づいてチャート面上の縞の位置が決定されるので、投影手段および撮像手段の角度が異なっている場合でも、撮像手段から撮影される角度を考慮した縞模様を計測面に投影することができるという効果を奏する。
【0024】
本発明の三次元形状計測装置の製造方法では、上記問題を解決するために、計測対象に投影された、位置に応じて輝度が変化する縞状の光パタンを解析することによって、計測対象の三次元形状を計測する三次元形状計測装置の製造方法であって、上記三次元形状計測装置は、上記計測対象が配置され、上記光パタンが投影される計測面を備えた被投影手段と、上記光パタンを上記計測対象および計測面に投影する投影手段と、上記光パタンを撮像する撮像手段とを備えており、上記計測面上のある位置から上記投影手段までを結んだ線分と上記計測面の垂線との間の角度をθ、上記位置から上記撮像手段までを結んだ線分と上記計測面の垂線との間の角度をθとする場合に、計測面上の所定の領域内において、tanθ+tanθを一定に保つ光パタンの縞を投影する投影手段を製造するステップを備えている。
【0025】
上記の方法によれば、上述の三次元形状計測装置と同様に、計測範囲全体で高さ誤差を一定の範囲に収め、計測精度を向上させることができるという効果を奏する三次元形状計測装置を製造することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る三次元形状計測装置は、計測面上のある位置から投影手段までを結んだ線分と計測面の垂線との間の角度をθ、上記位置から撮像手段までを結んだ線分と計測面の垂線との間の角度をθとする場合に、計測面上の所定の領域内において、tanθ+tanθを一定に保つように上記光パタンの縞を投影するので、高さ誤差や計測精度の変化率を一定に抑えて計測精度を一定に保つことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の一実施形態について図1から図22に基づいて説明すると以下の通りである。
【0028】
図1は、三次元形状計測装置10の要部構成を示すブロック図である。図2は、三次元形状計測装置10の物理的構成を示す概念図である。図1および図2に示すように、三次元形状計測装置10は、移動ユニット(被投影手段)11、投光ユニット(投影手段)13、撮像ユニット(撮像手段)15、および解析・処理ユニット16を備えている。さらに、三次元形状計測装置10は、移動ユニット11を制御する移動コントローラ22と、投光ユニット13を制御する投光コントローラ23とを備えている。
【0029】
投光ユニット13は、計測対象12の表面に光パタン14を投影するためのものである。また、投光ユニット13は、図1に示すように、例えば、ハロゲンランプやキセノンランプなどの光源31、光源31から照射された光にパタンを持たせるためのパタン生成素子(パタン形成手段)32、およびマクロレンズなどのレンズ(光学投影手段)33を備えている。
【0030】
投影する光パタン14としては、正弦波、三角波、又は矩形波などの、位置に応じて周期性を有し、かつ位相を特定できるパタンであれば何れのものでもよいが、本実施形態では、計測分解能の向上に寄与する正弦波状の光パタン14を用いるものとする。また、パタン生成素子32としては、ガラス又はフィルムを加工したものなどを用いることができる。
【0031】
撮像ユニット15は、上述のように、光パタン14が投影された計測対象12を読み取り、その画像を取得するものである。また、撮像ユニット15は、図1に示すように、撮像部34と、マクロレンズなどの光学系35とを備えている。
【0032】
移動ユニット11は、撮像部34の主走査方向(長手方向)、および該主走査方向と垂直な方向(以下「副走査方向」という)に計測対象12を水平移動させるためのものである。また、移動ユニット11は、図1に示すように、計測対象12を載置するための移動テーブル41、移動テーブル41を駆動するサーボモータ42、移動テーブル41の位置を検出するリニアスケーラ43などを備えている。
【0033】
移動ユニット11により計測対象12を副走査方向に移動させつつ撮像部34により逐次撮像することによって、計測対象12全体の三次元形状を計測することが可能になる。また、計測対象12が撮像部34の撮像範囲よりも主走査方向に広い場合には、移動ユニット11により計測対象12を主走査方向に移動させて撮像部34により逐次撮像すればよい。
【0034】
解析・処理ユニット16は、撮像ユニット15によって撮像された画像に含まれる光パタン14を縞解析法によって解析し、計測対象12の三次元形状を算出すると共に、移動コントローラ22および投光コントローラ23に各種指示を行うものである。また、解析・処理ユニット16は、図1に示すように、撮像ユニット15からの画像をデジタルデータで取り込むキャプチャボード44、各種の制御を行う制御部45、および各種の情報を記憶する記憶部46を備えている。
【0035】
なお、本実施形態では、移動ユニット11は、計測対象12を移動させる構成としたが、計測対象12を移動させる代わりに、投光ユニット13および撮像ユニット15を副走査方向に、さらには主走査方向に移動させる構成としてもよい。すなわち、移動ユニット11は、計測対象12を投光ユニット13および撮像ユニット15に対して相対的に移動させるものであればよい。
【0036】
このような三次元形状計測装置10に備わる各部の構成について概略を説明する。本実施形態の三次元形状計測装置10では、撮像ユニット15の撮像部34は、その主走査方向の軸が移動テーブル41の計測面と平行になるように設置されている。
【0037】
撮像部34の光軸と移動テーブル41の計測面とを平行にすることにより、計測対象12の上面を均一な倍率で撮像することができる。また、撮像部34の光軸(主走査方向の軸)と副走査方向とを垂直にしているので、搬送しながら撮影した複数のライン画像からなる2次元画像には、直角部分が直角部分として撮像される。
【0038】
また、投光ユニット13は、その光軸が撮像ユニット15の光軸に対して所定の角度を有するように設置されている。これにより、詳細は後述するが、計測対象12に投影した光パタンのずれに基づいて、計測対象12の高さを算出することができる。なお、撮像ユニット15および投光ユニット13の幾何学的配置は設置時にあらかじめ計測しておいてもよいし、校正により算出してもよい。
【0039】
このような三次元形状計測装置10の動作について説明すると以下の通りである。まず、解析・処理ユニット16から移動コントローラ22を介しての命令によって、移動ユニット11のサーボモータ42が移動テーブル41を初期設定位置にセットする。この初期設定位置は、撮像ユニット15が計測対象12を撮像する際の副走査方向の撮像開始位置を決定するものであり、撮像ユニット15の撮像領域が、移動ユニット11の移動テーブル41に載せられた計測対象12の副走査方向における端部に来るような位置であることが好ましい。
【0040】
そして、投光ユニット13が計測対象12に光パタンを投影する。撮像ユニット15は、光パタンが投影された計測対象12を走査し、この計測対象12の画像を取得する。撮像ユニット15によって取得された画像は、解析・処理ユニット16に送信され、解析・処理ユニット16のキャプチャボード44によってデジタルデータに変換される。そして、解析・処理ユニット16の制御部45が光パタン14を解析することによって、計測対象12の高さ情報が算出される。
【0041】
ここで、本実施形態の三次元形状計測装置10では、画像中の光パタン14を解析する際に、空間縞解析法を用いる構成となっている。これにより、撮像ユニット15に備わった1本の撮像部34が1回走査して取得した画像から、計測対象12の、撮像ユニット15の走査領域(撮像領域)内での各位置における高さを求めることができる。
【0042】
そして、移動ユニット11は、解析・処理ユニット16の制御によって、計測対象12を副走査方向に所定の距離だけ移動させる。これにより、計測対象12における撮像ユニット15の撮像領域と投光ユニット13によって投影される光パタン14とが、所定の距離だけ副走査方向にずれることになる。この後、再び撮像ユニット15が計測対象12を走査し、画像を取得する。ここで得られた画像には、計測対象12の、先ほどの走査領域よりも所定の距離だけ副走査方向にずれた領域が含まれることになる。得られた画像は、同様に解析・処理ユニット16に送信され、新しい走査領域内での各位置における三次元情報が求められる。
【0043】
このように、移動ユニット11が再び計測対象12を所定の距離だけ移動させ、撮像ユニット15が計測対象12を撮像し、解析・処理ユニット16がライン画像を解析する処理を繰り返すことによって、計測対象12の全体の三次元形状が計測される。
【0044】
なお、計測対象12の三次元形状情報のうち、撮像部34の主走査方向の長さおよび副走査方向の長さ情報については、公知の方法によって計測する。具体的に説明すると、計測対象12の主走査方向の長さ情報は、ライン画像に撮像された計測対象の主走査方向の長さに基づいて算出する。一方、計測対象12の副走査方向の長さ情報は、移動ユニット11による移動速度に基づいて算出する。このように、計測対象12の主走査方向および副走査方向の長さ情報と、高さ情報とを求めることによって、計測対象12の三次元形状情報を得ることができる。
【0045】
なお、上記の所定の距離とは、撮像ユニット15の撮像領域の副走査方向における長さと等しいことが好ましい。これにより、上記の工程によって計測対象12の全領域を漏らすことなく迅速に計測することができる。
【0046】
また、所定の距離ごとの撮像は、移動テーブル41を一定速度で移動させつつ、撮像ユニット15に一定時間ごとに撮像させることによって実現することができる。この場合、移動コントローラ22が、キャプチャボード44を介して、例えば数KHzオーダーの一定時間ごとに撮像駆動信号を撮像ユニット15に送信する。撮像ユニット15は、この駆動信号をトリガとして光パタンの投影された計測対象12の画像を取得する。一方、移動コントローラ22は、同様の一定時間ごとの搬送駆動信号を移動ユニット11にも送信する。移動ユニット11のサーボモータ42は、この搬送駆動信号をトリガとして移動テーブル41を一定速度で駆動する。これにより、所定の領域ずつ計測対象12を撮像することができる。
【0047】
また、所定の距離ごとの撮像にリニアスケーラ43を利用してもよい。この場合、図2に示すように、リニアスケーラ43は移動ユニット11に設けられ、移動テーブル41が所定の距離だけ移動されるたびに、移動コントローラ22に対して信号を送信する。そして、移動コントローラ22は、この信号を受信すると、撮像ユニット15の撮像部34に対して撮像駆動信号を送信する。これにより、移動ユニット11の搬送速度ムラなどに左右されることなく、精確に所定の距離ごとの撮像を行うことが可能になり、その結果、三次元計測の精度が向上する。
【0048】
次に、図3を用いて、投光ユニット13の構成について、詳細を説明する。図3は、投光ユニット13の投光器部分の詳細な構成を示す断面図である。投光ユニット13は、投影レンズ61、チャート(パタン生成素子)62、フィールドレンズ(光学投影手段)63、コリメータレンズ(光学投影手段)64、インテグレータレンズ(光学投影手段)65、コンデンサレンズ(光学投影手段)66、ランプユニット(光源)67、バラスト(安定化電源)およびランプ制御回路68を備えている。
【0049】
ランプユニット67から投影された光線は、各レンズを経由することで光線量を調整された後にチャート62に照射される。照射された光線によって、チャート62上の形成された縞模様が投影レンズ61によって拡大され、像が反転されて計測面に縞状の光パタン14が形成される。
【0050】
次に、縞解析法について説明する。本実施形態では、計測対象12に投影する光パタン14として、正弦波状の光パタンを用いる。正弦波状の光パタンとは、輝度が正弦関数によって表されるグラデーションを有するパタンのことをいう。言い換えれば、位置と輝度との関係が正弦関数によって表される光パタンのことを正弦波状の光パタンという。
【0051】
ここで、計測対象12に照射する光パタン14について、図4から図6を参照して説明する。図4は、計測対象12の形状を示す図で、同図(a)は上面図であり、同図(b)は側面図である。図5は、計測対象12に光パタン14を投影した場合に、計測対象12に投影された光パタン14の歪みを示す図で、同図(a)は上面図であり、同図(b)は基準面での輝度変動と凸部での輝度変動を示す波形図である。図6は、位相誤差Δpおよび測距レンジHの定義について説明する図である。
【0052】
光パタン14を、図4(a)、図4(b)に示すような計測対象12に投影した場合、投影される光パタン14を上面から観測すると図5(a)のようになる。すなわち、斜め方向から投影された光パタン14は、高さを有する凸部において歪みを生じることになる。このように光パタン14が投影された計測対象12を撮像ユニット15の撮像部34によって走査すると、走査位置と輝度との関係は図5(b)のようになる。
【0053】
図5(b)に示すように、凸部のない基準面に投影された光パタン14は、常に一定の周期で輝度が変化する。これに対して、凸部に投影された光パタン14は凸部の傾斜によって輝度の周期が変化し、その結果、基準面に投影された光パタン14に対して位相のずれを生じることになる。よって、実際に計測対象12に光パタン14を投影して撮像した画像に含まれる或る位置の画素における光パタンの位相と、基準面に光パタン14を投影した場合の同画素の位相(基準位相)との差を求めれば、その画素に対応する位置における計測対象12の高さを三角測量の原理に基づいて求めることができる。
【0054】
上記の位相差を算出するにあたって、基準位相は、基準面に光パタン14を投影して撮像することなどによって予め求めておくことができる。一方、実際に計測対象に光パタン14を投影して撮像した画像に含まれる各位置の画素における光パタン14の位相の求め方には、大別して2通りある。空間縞解析法と時間縞解析法との相違点は、この位相の求め方にある。
【0055】
図5(b)に示すように、正弦関数では、ある一つの変位を与える位相が一周期内に2つ存在する。例えば、y=sinθによって表される関数において、変位y=0を与える位相θは0及びπの2つ存在する。また、変位y=1/2を与える位相θはπ/6及び5π/6の2つ存在する。このような理由から、撮像した画像において、単一の画素の輝度値(正弦関数の変位に相当)のみから、その画素における光パタン14の位相を求めることはできない。
【0056】
ここで、従来用いられてきた手法である時間縞解析法では、所定の量だけ位相をずらした光パタン14を計測対象に投影して再び計測対象を撮像し、2つの画像を解析することによって位相を1つに決定する。つまり、初めに撮像した画像における或る画素の輝度を基に、その画素における光パタン14の位相を2つに絞り込み、次に撮像した画像におけるその画素の輝度を基に、光パタン14の位相を1つに特定する。従って、時間縞解析法を用いる場合は、計測対象の反射特性が厳密に一様であったとしても、計測対象を最低でも2回撮像しなければならないことが分かる。
【0057】
一方、空間縞解析法では、位相を求める画素(以下「注目画素」という)及びその周辺の画素の輝度に基づいて、注目画素における位相を算出する。例えば、上記の例において変位y=0を与える位相θは0及びπの2つあるが、ここで、注目画素における位相が0の場合とπの場合とでは、周辺の画素の輝度が異なることになる。もし、注目画素における位相が0の場合、例えば注目画素よりも少し位相が小さい側に存在する周辺画素の輝度値は、注目画素の輝度値よりも小さくなる。一方、注目画素における位相がπの場合は、注目画素よりも少し位相が小さい側に存在する周辺画素の輝度値が注目画素の輝度値よりも大きくなる。従って、注目画素の近傍の画素に基づいて、光パタンの位相を1つに決定することができる。このように、注目画素の近傍に存在する画素の輝度値に基づいて、注目画素における位相を決定するのが空間縞解析法の特徴である。
【0058】
本実施形態の三次元形状計測装置10では、空間縞解析法に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されず、上述した空間縞解析法の原理に基づいたものであればどのようなものであってもよい。
【0059】
次に、図6を用いて、位相誤差Δpおよび測距レンジHの定義について説明する。図6(a)では、位相誤差によって計測される三次元形状の限界である測距レンジHを説明している。図6(b)は、理想の正弦波の波形と、計測対象が測定面に存在することによって歪んだ正弦波とを比較している。
【0060】
図6(a)では、測距レンジHについて点線で示している。位相誤差は、理想波形とのずれであるので、波形の一周期、すなわち2πを超えると同じ波形が現れる。そのため、位相誤差によって計測できる範囲は、2πよりも少ない距離に限られる。本実施形態では、正弦波の位相ずれを比較することで計測対象12の高さを計測しているが、位相誤差が一周期ずれた波形と比較しても、正確な高さを計測することはできない。つまり、高さを計測するために使用できるのは、縞模様の一周期分となる。この縞模様の一周期を用いて計測できる高さの変化を測距レンジHとしている。
【0061】
図6(b)では、理想の正弦波形76および歪んだ正弦波形77が比較されている。何もない物面に照射された光パタン14は一定の周期を保っており、一定の理想の正弦波形76に変換される。これに対して、計測対象12が配置された計側面では光パタン14が変化し、正弦波形77も変形する。これら二つの正弦波形の差が位相誤差Δpにあたる。本実施形態の三次元形状計測装置10では、この位相誤差Δpを計測することで、計測対象12の高さを算出している。
【0062】
次に、図7から図10を用いて、本実施形態における三次元形状計測装置10の各部材の位置関係について詳細を説明する。図7は、三次元形状計測装置10の各ユニットおよび投影する光パタンの位置関係を示す概念図である。本実施形態では、図7のように、撮像ユニット15を移動ユニット11の正面に配置し、投光ユニット13を計測面の斜め上方に配置している。
【0063】
移動ユニット11に対して撮像視線71および投光視線72が図7のような配置になっている場合、計測面52の垂線に対する撮像視線71の角度をθ、計測面52の垂線に対する投光視線72の角度をθ、計測面52に投影された光パタン12の像を撮像ユニット15から撮影した場合の一周期をT[μm]、光パタン12の位相誤差によって計測される距離の限界である測距レンジをH[μm]、光パタン12の位相誤差をΔp[rad]、上記の条件において発生する高さの計測誤差をΔh[μm]としている。高さの計測誤差Δhについては、詳細は後述する。
【0064】
なお、レンズ33を含む面をレンズ面50、パタン形成素子32を含む面をチャート面51、移動ユニット11上の光パタン14を投影する面を計測面52と呼ぶ。以降、三次元形状計測の表現を、便宜上二次元で表現する。図面においても同様である。これら3つの平面は、後述するシャインプルーフ条件が満たされる1つの点Sで交差する。
【0065】
次に、光パタン14の投影倍率の変化について説明する。図8は、計測面52に投影される光パタン14の像が、遠くになるほど小さくなってしまうことを示した模式図である。チャート面51上の縞模様は、Pを中心に所定の幅を持っているが、レンズ面50に存在する光学レンズによって集光されて計測面52に投影される。この場合、チャート面51から距離が離れるほど、計測面52に投影される像は小さくなる。
【0066】
次に、図9を用いて本実施形態の三次元形状計測装置10における各ユニットの配置の前提となるシャインプルーフ条件について説明を行う。図9は、シャインプルーフ条件を満たした投光ユニット13および移動ユニット11の位置関係を示す概略図である。
【0067】
投光ユニット13のパタン生成素子32は、図示しない光源31からの光線を受けて、レンズ33を通して移動テーブル41上の計測面52に対して光パタン14を形成する。
【0068】
このとき、レンズ33の光軸53は、計測面52に対して斜めになっている。レンズ33の光軸53が計測面52に対して傾いているときにピントを合わせるための配置として、シャインプルーフの原理が利用される。シャインプルーフ配置で無い場合は計測面のそれぞれの位置で光パタンのピントが異なる。
【0069】
図7の例では、パタン生成素子32のチャート面、レンズ33のレンズ面、および移動テーブル41の計測面52の、各面の延長線が1つの点で交わることがシャインプルーフ条件を満たすための配置となる。以下では、上記3つの面が交わる点を点Sとする。また、上記3つの面の位置関係を示す場合には、点Sに垂直な面において位置関係を示すものとする。
【0070】
また、光軸53と、レンズ面50、チャート面51、および計測面52とのそれぞれの交点を点L、点P、点Wとする。さらに、点L間の距離をf’、点L間の距離をZ、角LSWの角度をθ、角LSPの角度をθ’とする。
【0071】
上記の定義において、シャインプルーフ状態における幾何学的関係について、図10を参照して説明する。図10(a)および図10(b)は、レンズ面50、チャート面51、および計測面52の位置関係から導き出せる幾何学的関係について示した図である。
【0072】
本実施形態の三次元形状計測装置10では、上述のシャインプルーフ条件を満たすようにレンズ面50、チャート面51、および計測面52が点Sで交わっている。レンズ面50に垂直な直線Pは、光軸53を表している。
【0073】
また、距離d’は、チャート面51上の基準点Pから縞の開始座標までの距離を、距離dは、計測面52上の基準点Wから縞の開始座標までの距離を示している。さらに、WSLを結ぶ直線の角度をθ、PSLを結ぶ直線の角度をθ’、直線Pおよび直線Pの角度をαとしている。
【0074】
上記のような条件において、以下のような関係が成り立つ。まず、図10の直線Pの傾きについて、次の式が成り立つ。
【0075】
【数4】

【0076】
これを変形して、次の式(5)、式(6)、式(7)が求められる。
【0077】
【数5】

【0078】
【数6】

【0079】
【数7】

【0080】
以上の式から、dおよびd’の関係が、式(8)および式(3)で表すことができる。
【0081】
【数8】

【0082】
【数9】

【0083】
上記の式によって、幾何学配置からチャート面51および計測面52上でのdおよびd’の関係が求められる。ここで、図形の相似関係から、光軸53および光線Pの間の角度を求める。
【0084】
【数10】

【0085】
以上から、チャート面51からの主光線角度θは、以下の式(10)となる。
【0086】
【数11】

【0087】
なお、チャート面51上の距離d’と計測面52上の距離dの倍率mは、以下の各式から求められる。
【0088】
【数12】

【0089】
【数13】

【0090】
【数14】

【0091】
【数15】

【0092】
図11は、シャインプルーフ条件を満たして投影された光パタン14の例である。図11(a)は、光パタンが物面に対して平行に投影された場合の例であり、図11(b)は、光パタンが物面に対して斜めに投影された場合の例である。
【0093】
投光ユニット13が計測面52正面に配置している場合であれば、図11(a)のように、投影される光パタン14に歪みは生じない。しかし、本実施形態の三次元形状計測装置10では、光パタンである縞模様を正弦波として投影する際に、シャインプルーフ条件を満たした投影を行っている。そのため、ピントは合うが、投影する倍率が距離によって変化し、計測面52に対して投影される縞模様の倍率が変わるので、縞の間隔が変化する(図11(b))。
【0094】
次に、図12から図15を用いて、本実施形態の三次元形状計測装置10が解決する課題の一つについて説明する。
【0095】
図12(a)は、本実施形態における三次元形状計測装置10の主要部の位置関係を示す概念図であり、図12(b)は、(a)の位置関係を具体的な数値または数式で示した側面図である。
【0096】
本実施形態では、図12(a)のように、撮像ユニット15を移動ユニット11の正面に配置し、投光ユニット13を計測面52の斜め上方に配置している。撮像ユニット15による撮像視線71と、投光ユニット13による投光角度72は、図12(a)(b)に示すようになる。計測面52が52aの位置にある場合でも、座標x1における撮像視線71と座標x2における撮像視線71は異なる。同様に、座標x1における投光視線72と座標x2における投光視線72は異なる。
【0097】
今、実際に高さの計測を行う計側面52は52aの位置に存在しているが、図形の歪みによって発生した高さの計測誤差Δhのため、計測面52が52bの位置に存在しているように計算されている。すなわち、本来X、Xの座標に位置する縞模様が、歪みによって広がり、あるいは狭まり、X’X’の位置に存在している。そのため、本来はhと計測されるべき計測対象の高さhが、h+Δhとして計測されている。
【0098】
上記の高さの計測誤差Δhについて、さらに詳細に説明すれば図12(b)のようになる。計測面52に対して撮像視線71および投光視線72が図12(b)のような配置になっている場合、計測面52の垂線に対する撮像視線71の角度をθ、物面52の垂線に対する投光視線72の角度をθ、撮像ユニット15によって撮像される光パタン14の縞の一周期をT[μm]、光パタンの位相誤差によって計測される距離の限界である測距レンジをH[μm]、光パタンの位相誤差をΔp[rad]、上記の条件において発生する高さの計測誤差をΔh[μm]とする。
【0099】
直線74は、Δhによって誤って観測された縞の位置に対する投光ユニット13からの投光視線である。このとき、Δhが微小かつθが90から遠く、光源が十分に遠い場合には、理想上の投光視線72と、誤差が入った現在の投光視線である直線74とは、平行であるとみなすことができる。図12(b)では、本来、実際の計測面52の位置である52aの位置を計測することが目標であるが、計測誤差Δhによって、52bの位置に存在するものと計測されている。このような条件において、投光視線72および直線74を平行と見なしているので、Δhtanθ+Δhtanθは位相誤差Δpに単位をそろえるために周期Tをかけた値Δp/2π・Tと等しいと考えられる。
【0100】
上記のことから、高さの計測誤差Δhは、位相誤差Δpによる縞のずれ量と、光線角度から、次の式(15)のように求められる。
【0101】
【数16】

【0102】
ところが、このΔpが、投光ユニット13の光軸が斜めであることに起因する縞模様の変形によって、高さの計測誤差を含む状態となっている。さらに、この計測誤差は、計測面15上の座標に応じて変形量がことなるので、場所によってまちまちになってしまう。
【0103】
図13は、計測位置と高さ誤差の標準偏差の関係の一例を示すグラフである。図13のグラフの横軸は計測位置を、縦軸は高さ誤差の標準偏差σ[μ]を示している。グラフの横軸の計測位置は、図18の計測面上に示した数字と対応している。
【0104】
図13のグラフでは、計測位置によって高さ誤差の標準偏差σがばらばらになっている。傾向としては、グラフ左側の数字の小さい計測位置では高さ誤差が多く、右側の数字の大きい計測位置では高さ誤差が少ない傾向が見られるが、ばらつきがあり、高さ誤差を正確に把握することは困難である。
【0105】
図14では、高さ誤差が一定にならない原因について説明している。投光ユニット13は、計測面52に対して斜めに配置されているので、上述のように位置に応じて光パタン14の縞模様の太さ、すなわち正弦波の周期が変化する。本来、縞模様の太さや間隔は、計測面52に配置されている計測対象の存在によってのみ変化しなくてはならないが、ここでは、投光ユニット13の配置の問題によって変化し、計測誤差が発生している。
【0106】
本発明が解決する課題の一つは、上記のように計測位置によって高さの計測誤差が異なることであり、本発明の目的の一つは、計測面の高さを決定した際に、高さ誤差Δhを計測位置に依存させないことである。
【0107】
上記の課題は、従来、撮像ユニット11よって撮像される像が場所によって変形するということが考慮されていなかったために発生していた。本発明の発明者は上記課題について見出し、撮影視線71や投光視線72を考慮した光パタン14を作成することで上記の問題を解決し、計測範囲内で高さ誤差を一定に揃えて計測精度を向上させている。
【0108】
以上のように、本発明は、1)撮像ユニット15の撮像の中心から離れると視野角が狭くなるため縞が狭く見える、2)投光ユニット13から離れると、投影する光パタン14の縞の幅が狭くなる、という原因に基づく高さの計測誤差のばらつきを解決するものであって、撮影視線71および投光視線72を考慮した縞を投影することで、計測範囲全体で計測精度を一定に保つものである。
【0109】
次に、視線角度71および投影角度72を考慮した縞の実際の作成方法について説明する。まず、測距レンジHは、光線角度の関係から次の式(1)のように求められる。
【0110】
【数17】

【0111】
ここで、計測面52上におけるn番目の縞模様の開始座標をdとおいた場合、式(1)を式(16)のように変形することができる。
【0112】
【数18】

【0113】
以上の式を変形し、n+1番目の縞の位置をn番目の縞の位置および幾何学配置によって求めることができる。
【0114】
【数19】

【0115】
次に、上記の光パタンを用いることによって解決される別の問題について、図15から図17を用いて説明する。図15は、計測する高さと高さ誤差の関係を説明する図である。図16は投光ユニット13および撮像ユニット15の計測面に対する位置関係を示している。図16(a)は、投光ユニット13および計測面間の距離が400mmの場合の座標および高さ誤差の関係を、図16(b)は、投光ユニット13および計測面間の距離が495mmの場合の座標および高さ誤差の関係を示すグラフである。
【0116】
上記の各部材が図15の位置関係にある場合に、計測面52上の座標−60から+60までの高さの計測誤差を示すグラフが図16(a)および図16(b)である。図15の上の直線52aが投光ユニット13および計測面間の距離が400mmである計測面の位置を、下の直線が投光ユニット13および計測面間の距離が495mmである計測面の位置を示している。上記各グラフにおいて、計測面上の座標がマイナスからプラス方向に少しずつ高さ誤差が減少する傾向にあるが、減少幅は一定ではない。
【0117】
このように、計測面の高さが変化することによって、高さ誤差も変化している。これらの高さ誤差の変動は、投光ユニット13から計測面52までの距離の変化によって発生している。本発明の別の目的は、計測面52の高さが変化した場合の計測精度の変化率Δh2−Δh1を場所に依存させないようにすることである。
【0118】
図17は、計測する高さによって高さ誤差が変化する原因について説明する図である。図17において丸で示しているように、計測面52の高さが変化すると、投光ユニット13から照射される投光角度も変化する。このため、計測面52の高さを変更した場合の縞振幅の変化率が異なってくる。従来のように投光視線72を考慮せずに光パタン14を作成した場合には、このように計測面52の高さが変わることによって投光視線72も変化するため、撮像ユニット15で撮像される縞模様が変化し、計測誤差が発生する。このような課題は、上述したように光パタン14の縞模様を設計することによって問題が低減される。
【0119】
以上の各課題に対して、本実施形態の方法で設計した光パタンを投影して三次元形状計測装置10における計測を行った結果について、図18を用いて説明する。図18は、計測位置によって高さ誤差が異なるという課題に対する本発明の効果を示すグラフである。各グラフの横軸は投影先の座標[mm]を表し、縦軸は光パタンの縞の間隔(チャート間隔)[μm]を示している。
【0120】
図18(a)にはチャート面51における縞の間隔(チャート間隔)が、図18(b)には投光ユニット13からの主光線の角度[°]が、図18(c)には計測面52における縞のサイズが、そして図18(d)には計測面52の各座標における高さ誤差の値が示されている。図18(a)で示された間隔で縞模様を計測面52に投射した場合、各縞における主光線角度、すなわち、計測面52上の各座標における投光ユニット13に対する角度は図18(b)に示すようになる。また、図18(a)の縞模様を計測面52に投影した場合の縞のサイズは、計測面52上の各座標において図18(c)に示すようになる。
【0121】
上記の条件で、式(15)を用いて高さ誤差Δhを計算すると、図18(d)に示すように、投影先の全座標においてほぼ均一な状態とすることができる。これは、高さの計測誤差を一定の範囲に抑えるために、撮影視線71および投影視線72を計算し、主光線角度をチャートによって制御したことに起因する。なお、図18(a)が撮影視線、投影視線、および主光線角度θを考慮したチャートであり、図18(c)が実際に計測面52に投影される縞模様にあたる。
【0122】
次に、計測面52の高さが変化することによって、高さの計測誤差Δhも変化するという課題に対する本発明の効果について説明する。本実施形態の方法で設計した光パタン14を投影して三次元形状計測装置10における計測を行った結果について、図19から図21を用いて説明する。
【0123】
図19は、計測面の高さが495mmの場合の、図20は、計測面の高さが400mmの場合の、図21は計測面の高さが300mmの場合の座標および高さ計測誤差Δhの関係を示すグラフである。図19(a)、図20(a)、および図21(a)は、従来、用いられている等間隔のピッチチャート(パタン生成部)を用いた場合のグラフであり、図19(b)、図20(b)、および図21(b)は、本実施形態で用いている、不均等なピッチチャート(パタン生成部)を用いた場合のグラフである。
【0124】
従来のピッチチャートを用いた場合には、計測面52上の座標位置によって高さの計測誤差が変化している。また、計測面52の高さによっても高さ位置は変化し、その変化率は一定ではない。これに対して、本実施形態のピッチチャートを用いた場合には、高さの計測誤差Δhはワーク上の計測範囲内でほぼ一定の状態となっている。
【0125】
以上のように、本実施形態の三次元形状計測装置10では、計測対象に投影された、位置に応じて輝度が変化する縞状の光パタンを解析することによって、計測対象12の三次元形状を計測する三次元形状計測装置10であって、計測対象12が配置され、光パタン14が投影される計測面52を備えた移動ユニット11と、光パタン14を計測対象12および計測面52に投影する投光ユニット13と、光パタン14を撮像する撮像ユニット15とを備え、撮像ユニット15は、計測面52上のある位置Wからレンズ33までを結んだ線分Lと計測面52の垂線との間の角度をθ、位置Wから撮像ユニット15までを結んだ線分と上記計測面の垂線との間の角度をθとする場合に、計測面52の所定の領域内において、tanθ+tanθを一定に保つように光パタン14の縞を投影している。
【0126】
上記の構成によれば、投光ユニット13が縞状の光パタンを計測対象12および計測面52に投影し、撮像ユニット15が投影された光パタンを読み取る構成において、tanθ+tanθを計測対象となる領域内で一定に保つことができるように設計されたパタン生成素子(チャート)32を備えているので、撮像ユニット15から計測面52に対する視線角度であるθおよび投影手段から計測面に対する投影角度であるθを考慮した縞模様を投射することができる。これによって、高さ誤差Δhを一定の範囲に収め、計測精度を向上させている。
【0127】
三次元計上計測装置10では、光パタン14の縞模様を正弦波として投影する際に、斜め方向から投影を行っている。そのため、投影する倍率が距離によって変化し、計測面52に対して投影される縞模様の倍率が変わるので、縞の間隔が変化する。縞の間隔が変化することによって、正弦波として投影された縞模様の周期が変化し、測定する物体23の計測誤差として検出されてしまう。
【0128】
さらに、この計測誤差は、計測面52上の位置によってばらばらに変化してしまう。これは、投影側から距離が離れれば離れるほど、計測対象に投影される光パタン14の像は小さくなってしまうためである。三次元形状を計測する場合、計測範囲全体で計測精度を一定にすることが重要である。計測範囲の位置によって誤差が変動する場合、計測対象による周期のずれであるのか計測誤差であるのかが分からず、計測精度が不確かになってしまう。また、誤差が場所によって一定でないため計算によって補正を行うことができない。これは、撮像ユニット15からの撮像視線71や、投影ユニット13からの投影視線72を考慮して、光パタン14が投影されていないことに起因する。
【0129】
そこで、上記の三次元形状計測装置10では、撮像視線71や投影視線72を考慮した光パタン14を計測対象12および計測面52に対して投射している。これによって、1)撮像する撮像手段の中心から離れると視野角が狭くなるため縞が狭く見える、2)投光器から離れると投影する光パタンの縞の幅が狭くなるという問題を解決し、計測範囲全体で高さ誤差を一定の範囲に収め、計測精度を向上させることができる。
【0130】
また、上記の三次元形状計測装置10では、撮像ユニット15は縞状の光パタン14を射出するチャート62を備えたパタン生成素子32と、パタン生成素子32から射出された光パタン14を所定の倍率で計測面52に投影するレンズ33とを含み、計測面52と、パタン生成素子32におけるチャート面51と、レンズ33の光軸に直交するレンズ面50とが点Sで交差している。
【0131】
上記のように計測面52、チャート面51、およびレンズ面50が1点で交差する条件を満たすことによりシャインプルーフ状態となるため、レンズ33の光軸が計測面52に対して傾いていても、ピントをあわせることができる。
【0132】
また、上記の三次元形状計測装置10では、計測面52に投影される光パタン14は、撮像ユニット15の撮像位置において、周期Tで繰り返す縞模様が撮像されるように形成されており、点Sに垂直な面において、レンズ面50および光軸の交点Lからチャート面51および光軸の交点Pまでの距離をf’、上記Lから計測面52および光軸の交点Wまでの距離をZ、角度LSWをθ、角度LSPをθ’とする場合に、光パタン14の位相誤差によって計測される三次元形状の限界である測距レンジHが、
【0133】
【数20】

【0134】
の式で求められ、計測面52上に投影されるn+1番目の縞の基準点からの位置dn+1が、
【0135】
【数21】

【0136】
の式で求められ、チャート面51上の縞の基準点からの位置d’が、
【0137】
【数22】

【0138】
の式で求められている。
【0139】
上記の式に基づいてチャート面51上の縞の幅が決定されるので、投光ユニット13および撮像ユニット15の角度が異なっている場合でも、撮像ユニット15から撮影される角度を考慮した縞模様を計測面52に投影することができる。
【0140】
また、上記の条件を満たす縞模様を持つチャートを形成することで、三次元形状計測装置10で用いることができるパタン生成素子32を製造している。
【0141】
なお、上述の説明では、パタン生成素子32が、投影角度、撮影角度、移動ユニット11の位置、測定距離レンジ、パタン周期、レンズ位置、およびその他のパラメータに基づいて動的に光パタンを生成する場合について説明したが、これに限るものではない。解析・処理ユニット16が、上記各パラメータの入力に基づいて適切な光パタン生成器具、具体例をあげれば、スライドグラスやプラスチックなどに投影パタンが刻まれたチャートなどを投光ユニット13に設置するように指示する構成などであってもよい。投影角度および撮影角度に基づいて光パタンを形成する構成であれば、本実施形態と略同様の効果が得られる。
【0142】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0143】
なお、本実施形態では、光源31およびレンズ50を用いて光パタンを投影する例について説明するが、これに限るものではない。プロジェクターのようなもので干渉縞を投影してもよいし、回折格子に応用してもよい。
【0144】
また、本実施形態で用いた光パタン14は、透視投影で計測面52に投射された場合について説明を行ってきたが、平行投影であっても使用することができる。平行投影とは、三次元形状を二次元平面に垂直に押し当てるように投影する手法である。平行投影の場合には、計測面に投影される縞は等間隔の縞となる。
【0145】
図22は、透視投影および平行投影を用いて光パタンを投影した場合を比較する図である。図22(a)および図22(b)では透視投影で光パタンを投影した場合を、図22(c)および図22(d)では平行投影で光パタンを投影した場合について説明している。
【0146】
通常、現実世界では透視投影の状態にあり、視線には角度が存在する。図22(a)のEの位置に視点があった場合には、前方クリップ面から後方クリップ面に進むにつれて、視界内の像は拡大されていく。これは、図22(b)のように光線が広がりを持って放射状に投射されるからである。
【0147】
これに対して、平行投影の状態では、図22(c)のように、無限遠の物体と近くの物体とが同じ大きさで表示される。これは、図22(d)に示すように、光線が後方から平行に対象に照射しており、前方クリップ面から後方クリップ面にかけて、広がっていくことがないためである。
【0148】
なお、図22(c)および図22(d)のような平行投影の状態であっても、本実施形態で作成した光パタン14を用いることができる。平行投影のカメラを用いるような場合には、視線角度にあたるθを0として計算すればよい。
【0149】
また、パタン生成素子32としては、液晶素子によって構成されたものを用いてもよい。その場合には、液晶素子によって構成されたパタン生成素子32にパタンを表示させるパタン生成部2を解析・処理ユニット16に持たせ、投光角度、撮像角度、および移動ユニットの高さを検出する投光角度検出部3、撮像角度検出部4、および移動ユニット高さ検出部5をさらに備えることによって、動的にパタン生成素子32に適切な光パタン14を投影するためのチャートを表示させてもよい(図23)。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明の三次元形状計測装置10では、投光ユニット13が縞状の光パタン14を計測対象12および計測面52に投影し、撮像ユニット15が投影された光パタンを読み取る構成において、tanθ+tanθを計測対象となる領域内で一定に保つことができるように設計されたパタン生成素子(チャート)32を備え、高さ誤差Δhを一定の範囲に収めることで計測精度を向上させているので、空間縞解析を用いた三次元形状計測装置や、当該三次元計測装置で用いられるチャートの設計方法として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、三次元形状計測装置の要部構成を示すブロック図である。
【図2】上記三次元形状計測装置の物理的な構成を示す概念図である。
【図3】上記三次元形状計測装置において、投光ユニットの投光器部分の詳細な構成を示す断面図である。
【図4】上記三次元形状計測装置で計測する計測対象の形状を示す図であって、(a)は上面図であり、同図(b)は側面図である。
【図5】上記計測対象に光パタンを投影した場合に、上記計測対象に投影された光パタンの歪みを示す図であって、(a)は上面図であり、(b)は基準面での輝度変動と凸部での輝度変動を示す波形図である。
【図6】位相誤差Δpおよび測距レンジHの定義について説明する図である。
【図7】上記三次元形状計測装置の各ユニットおよび投影する光パタンの位置関係を示す概念図である。
【図8】上記三次元形状計測装置において、計測面に投影される光パタンの像がチャート面よりも小さくなってしまう原理について示した模式図である。
【図9】上記三次元形状計測装置において、シャインプルーフ条件を満たした投光ユニットおよび移動ユニットの位置関係を示す概略図である。
【図10】(a)および(b)は、チャート面上における縞模様および物面上における縞模様の関係と、レンズの位置関係を示した図である。
【図11】上記三次元形状計測装置において、シャインプルーフ条件を満たして投影された光パタンの例である。
【図12】(a)は、上記三次元形状計測装置の主要部の位置関係を示す概念図であり、(b)は(a)の位置関係を具体的な数値または数式で示した側面図である。
【図13】上記三次元形状計測装置において、計測位置と高さ誤差の標準偏差の関係を示すグラフである。
【図14】上記三次元形状計測装置において、高さ誤差が一定にならない原因について説明する概念図である。
【図15】上記三次元形状計測装置において、計測する高さと高さ誤差の関係を説明する図である。
【図16】高さ誤差の関係を説明する図であって、(a)は計測面の距離が400mmの場合の座標および高さ誤差の関係を、(b)は計測面の距離が495mmの場合の座標および高さ誤差の関係を示す図である。
【図17】上記三次元形状計測装置において、計測する高さによって高さ誤差が変化する原因について説明する図である。
【図18】計測位置によって高さ誤差が異なるという課題に対する本発明の効果を示すグラフである。
【図19】計測面の高さが495mmの場合の座標および高さ誤差の関係を示すグラフである。
【図20】計測面の高さが400mmの場合の座標および高さ誤差の関係を示すグラフである。
【図21】計測面の高さが300mmの場合の座標および高さ誤差の関係を示すグラフである。
【図22】透視投影および平行投影を用いて光パタンを投影した場合を比較する図であって、(a)(b)では透視投影で光パタンを投影した場合を、(c)(d)では平行投影で光パタンを投影した場合について説明している。
【図23】本発明の別の実施形態を示すものであり、三次元形状計測装置の要部構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0152】
1 撮像部(撮影手段)
2 パタン生成部
3 投光角度検出部
4 撮像角度検出部
5 移動ユニット高さ検出部
6 設定情報記憶部
10 三次元形状計測装置
11 移動ユニット(被投影手段)
12 計測対象
13 投光ユニット(投影手段)
14 光パタン
15 撮像ユニット(撮像手段)
16 解析・処理ユニット
22 移動コントローラ
23 投光コントローラ
31 光源
32 パタン生成素子(パタン生成手段)
33 レンズ(光学投影手段)
34 カメラ(撮像手段)
35 光学系
41 移動テーブル(被投影手段)
42 サーボモータ
43 リニアスケーラ
44 キャプチャボード
45 制御部
46 記憶部
50 レンズ(光学投影手段)
51 像面(チャート面)
52 物面(計測面)
61 投影レンズ(光学投影手段)
62 チャート(パタン生成手段)
63 フィールドレンズ
64 コリメータレンズ
65 インテグレータレンズ
66 コンデンサレンズ
67 ランプユニット
68 ランプ制御回路
71 撮像視線
72 投光視線
81 チャート面
50 レンズ面
52 計測面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象に投影された、位置に応じて輝度が変化する縞状の光パタンを解析することによって、計測対象の三次元形状を計測する三次元形状計測装置であって、
上記計測対象が配置され、上記光パタンが投影される計測面を備えた被投影手段と、
上記光パタンを上記計測対象および計測面に投影する投影手段と、
上記光パタンを撮像する撮像手段とを備え、
上記投影手段は、上記計測面上のある位置から上記投影手段までを結んだ線分と上記計測面の垂線との間の角度をθ、上記ある位置から上記撮像手段までを結んだ線分と上記計測面の垂線との間の角度をθとする場合に、計測面上の所定の領域内において、tanθ+tanθを一定に保つように上記光パタンの縞を投影することを特徴とする三次元形状計測装置。
【請求項2】
上記投影手段は、縞状の光パタンを射出する光射出面を備えるパタン生成手段と、パタン生成手段から射出された光パタンを所定の倍率で上記計測面に投影する光学投影手段とを含み、
上記計測面に投影される光パタンは、上記撮像手段の撮像位置において、周期Tで繰り返す縞模様が撮像されるように形成されており、
上記計測面と、上記パタン生成手段における光射出面と、上記光学投影手段の光軸に直交するレンズ面とが一つの直線Sで交差し、
直線Sに垂直な面において、上記レンズ面および光軸の交点Lから上記光射出面および光軸の交点Pまでの距離をf’、上記Lから上記計測面および光軸の交点Wまでの距離をZ、角度LSWをθ、角度LSPをθ’とする場合に、
上記光パタンの位相誤差によって計測される三次元形状の限界である測距レンジHが、
【数1】

の式で求められ、
上記計測面上に投影されるn+1番目の縞の基準点からの位置dn+1が、
【数2】

の式で求められ、
上記光射出面上の縞の基準点からの位置d’が、
【数3】

の式で求められていることを特徴とする請求項に記載の三次元形状計測装置。
【請求項3】
計測対象に投影された、位置に応じて輝度が変化する縞状の光パタンを解析することによって、計測対象の三次元形状を計測する三次元形状計測装置の製造方法であって、
上記三次元形状計測装置は、
上記計測対象が配置され、上記光パタンが投影される計測面を備えた被投影手段と、
上記光パタンを上記計測対象および計測面に投影する投影手段と、
上記光パタンを撮像する撮像手段とを備えており、
上記計測面上のある位置から上記投影手段までを結んだ線分と上記計測面の垂線との間の角度をθ、上記位置から上記撮像手段までを結んだ線分と上記計測面の垂線との間の角度をθとする場合に、計測面上の所定の領域内において、tanθ+tanθを一定に保つ光パタンの縞を投影する投影手段を製造するステップを備えることを特徴とする三次元形状計測装置の製造方法。

【図8】
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【図21】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−36631(P2009−36631A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201151(P2007−201151)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】