説明

交通信号制御機、車載装置および交通信号制御システム

【課題】AEDを簡単に見つけかつ利用することができる交通信号制御機を提供する。
【解決手段】施錠可能な本体扉2を有する筐体を具えた交通信号制御機1であって、該筐体は自動体外式除細動器5を収納するための収納部3を具え、該収納部3は前記本体扉2とは別の扉4により外部から開閉可能に構成されている。交通信号制御機本体の扉2は関係者のみ開錠でき、AED収納部の扉4は一般利用者が必要に応じて開けることができる。AED収納部の扉4には、AEDが収納されていることと、緊急時以外は使用禁止である旨の表示8がされている。AED収納部には、扉の開放とAEDの取外しを検知する検知手段としてマイクロスイッチ7が配設されている。検知した情報に基づいてアラームが鳴り、検知情報と交通信号制御機の位置情報を外部に通知することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動体外式除細動器を収納するための収納部を備えた交通信号制御機、車載装置およびこれらを含む交通信号制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病院外での心停止の発生件数は、年間2〜3万件と推定され、心臓突然死により多くの方が亡くなっている。これらの心臓突然死の主な原因は、不整脈を起こす心室細動である。
【0003】
心室細動の正常化には強い電気ショックにより混沌状態にある心筋のばらばらな動きを
一定の秩序あるリズムに戻す電気的除細動が最も効果的な方法であり、このための自動体
外式除細動器(Automated External Defibrillator、以下AEDと記載する)が開発されている(特許文献1参照)。この装置は、2004年7月から一般市民でも使用ができる医療器具として認められている。
【0004】
心筋細動による心停止が発生してから、除細動により蘇生するチャンスは、3分以内であれば60%であるが、6分では30%と半減し、1分毎に7〜10%蘇生率が低下することが知られている。このため、救命には早期の電気的除細動が必須であり、何時でも利用可能なAEDの設置が求められ、空港や駅、ホールなど、公共施設にAEDが設置されるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−168536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、目撃された心肺停止に対してAEDが使用されたケースは1%に満たない。これはAEDの設置数がまだ少ないことだけでなく、実際にAEDが必要とされる現場付近のAED設置場所が分かりづらいことが挙げられる。
【0007】
例えば、AEDが必要とされる現場として交通事故を想定すると、交通事故件数の6割、さらに死亡事故の4割以上が交差点やその近くでおきている。しかし、交差点付近の交通事故に際して、実際にAEDを利用したい場合、どこにAEDが設置されているか分かりづらいという問題があった。またAEDが交差点付近に設置されているとは限らないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る交通信号制御機は、施錠可能な本体扉を有する筐体を具えた交通信号制御機であって、該筐体は自動体外式除細動器を収納するための収納部を具え、該収納部は前記本体扉とは別の扉により外部から開閉可能に構成されていることを特徴とする(請求項1)。
【0009】
本発明では、交差点の交通信号制御機にAEDが設置されているので、AEDの設置場所を捜す手間が少なく、早急にAEDを使用することができる。特に、交差点付近の交通事故等で心筋細動による心停止が発生した場合、迅速に対応でき効果は大きい。
【0010】
これまでAEDが設置される場所は、空港や駅、ホールなど人が集まる場所であった。つまり、人が多く集まる場所でAEDが使用される可能性が高いという発想しかなかった。しかし、発明者は人が多く集まる場所ではなく、実際にAEDが必要とされる事故現場に設置するのが良いと考えた。そこでAEDが必要とされる事故現場として交通事故があること、交通事故が交差点付近で多発していることに着目して、交差点に設置されている交通信号制御機にAEDを設置しておけばよいことに気づき本発明に到った。
【0011】
例えば、仮に交通事故現場から100m離れた場所にAEDがあったとして、捜す手間を考えるとAEDを手にするまでに数分かかり、それだけ救命率が低下する。またAEDが使用された場合の1ヶ月後生存率は使用されなかった場合の4倍と言われている。
【0012】
本発明によれば、交差点付近の交通事故等で心筋細動による心停止が発生しても、早期にAEDを使用することで救命率を向上することができ、1ヶ月後生存率も上げることができるというさらなる効果を奏する。
【0013】
交通信号制御機の本体扉とAEDの収納部扉を別個に設けることで、交通信号制御機本体扉は関係者しか開錠できないように通常は施錠しておいて、AEDの収納部扉は一般利用者が必要に応じてあけることができるように、開錠しておくことができる。
【0014】
また、AEDの存在を示し、AED収納部扉が間違って開けられることを防止するために、収納部扉にAEDの表示、注意書きをしても良い。AED使用時に周囲に注意喚起するために、取り外すとアラームとしてブザーが鳴ったり、ランプが光るようにしても良い。
【0015】
第2発明に係る交通信号制御機は、第1発明において、前記収納部の扉の開放及び/又は前記自動体外式除細動器の取外しを検知する検知手段と、前記検知した情報を外部に通知する第一の通知手段とを備えたことを特徴とする(請求項2)。
【0016】
本発明では、収納部の扉の開放及び/又は前記自動体外式除細動器の取外しを検知することで、外部にAEDが使用されることを伝えることができる。例えば、交差点の周辺の警察署、消防署に通知することで、事故現場である交差点に急行してもらうことができる。また交差点周辺の交通表示板に通知し、受信した交通表示板に前方注意等の表示をすることで、交差点の周辺車両に注意喚起することができる。
【0017】
第3発明に係る交通信号制御機は、前記第一の通知手段は、さらに前記交通信号制御機の位置情報を前記検知した情報と共に外部に通知することを特徴とする(請求項3)。
【0018】
本発明では、交通信号制御機の位置情報を前記検知した情報と共に外部に通知することで、どの場所でAEDが使用されるかを知ることができる。例えば、救急センターや交通管理センターあるいは救急車両に情報を送ることで迅速な救急活動に効果がある。またAEDを収納した複数の交通信号制御機を管理している場合に、いずれの交通信号制御機でAEDが使用されるかを判別することができる。
【0019】
第4発明に係る交通信号制御システムは、第2発明又は第3発明の交通信号制御機と中央管理装置と少なくとも一つの車載装置を含む交通信号制御システムであって、前記中央管理装置は当該交通信号制御機から通知された通知信号を受信する第一の受信手段と、前記車載装置が搭載された車両の位置を把握する車両検出手段と、前記受信した情報に基づいて当該交通信号制御機に向かわせる車両を選択する車両選択手段と、選択した車両に搭載された車載装置に前記受信した情報を通知する第二の通知手段とを備え、前記車載装置は前記中央管理装置から通知された通知信号を受信する第二の受信手段を備えたことを特徴とする(請求項4)。
【0020】
本発明では、AEDが使用される交通信号制御機から通知された通知信号を中央管理装置が受信した場合、車載装置が搭載された車両の位置を把握し、前記受信した情報に基づいて当該交通信号制御機に向かわせる最適な車両を選択することができる。さらに選択した車両に搭載された車載装置に前記受信した情報を通知し、車載装置は前記中央管理装置から通知された通知信号を受信し、AEDが使用される交通信号制御機の情報を把握することができるので、事故現場に急行することができる。
【0021】
第5発明に係る車載装置は、第4発明の車載装置であって、前記受信した情報に基づいて当該交通信号制御機の位置を地図データと共に表示する機能を備えたことを特徴とする(請求項5)。
【0022】
本発明では、受信した情報に基づいて当該交通信号制御機の位置を地図データと共に表示することができるので、簡便にAEDが使用される交通信号制御機の位置を知ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、交差点の交通信号制御機にAEDが設置されているので、AEDの設置場所を捜す手間が少なく、早急にAEDを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る交通信号制御機の一例を示す正面図である。
【図2】本発明に係る交通信号制御機の一例を示す側面図である。
【図3】本発明に係る交通信号制御機の他の例を示す正面図である。
【図4】本発明に係る交通信号制御機の他の例を示す側面図である。
【図5】本発明に係る交通信号制御機の構成の一例を示すブロック図である。
【図6】本発明に係る交通信号制御機の処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係る交通信号制御機システムの概略を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る交通信号制御機を示す正面図、図2はその側面図である。交通信号制御機1は、施錠可能な本体扉2を有する筐体を具えている。該筐体はAED5を収納するための収納部3を具えている。該収納部3は前記本体扉2とは別の扉4により外部から開閉可能に構成されている。該収納部3には、AED5が取出し可能に収納されている。
【0026】
交通信号制御機本体の扉2とAED収納部の扉4は、いずれも左端側をヒンジにより片開き式に支持されて開閉自在になっており、扉2,4には取手6が設けられている。
【0027】
交通信号制御機本体の扉2は関係者のみ開錠でき、AED収納部の扉4は一般利用者が必要に応じて開けることができる。AED収納部の扉4には、AEDが収納されていることと、緊急時以外は使用禁止である旨の表示8がされている。
【0028】
AED収納部には、扉の開放とAEDの取外しを検知する検知手段としてマイクロスイッチ7が配設されている。検知した情報に基づいてアラームが鳴り、検知情報と交通信号制御機の位置情報を外部に通知することができる。
【0029】
例えば、交差点の周辺の警察署、消防署に通知することで、事故現場である交差点に急行してもらうことができる。また交差点周辺の交通表示板に通知し、受信した交通表示板にAED使用中・前方注意等の表示をすることで、交差点の周辺車両に注意喚起することができる。
【0030】
図面1,2に示す交通信号制御機の例では、筐体上部にAED収納部3を具えているが、筐体下部に具えていても良い。また本体扉2と収納部の扉4は筐体の同一面に具えられているが、本体扉2の開口部を大きく確保するために正面と側面のように異なった面に具えたり、本体扉2にAED収納部3とAED収納部扉4を設けるようにしても良い。
【0031】
図3は本発明に係る交通信号制御機の他の例を示す正面図、図4はその側面図である。筐体正面の上部張り出し部分にAED収納部3を具えている。既存の交通信号制御機に該AED収納部を新たに増設した場合に相当する構成である。既存の交通信号制御機を置き変えることなく、収納部部分を増設することで簡易かつ低コストである。
【0032】
図面3,4に示す交通信号制御機の例では、筐体上部にAED収納部3を具えているが、筐体下部に具えていても良い。また本体扉2と収納部の扉4は筐体の同一面に具えられているが、正面と側面のように異なった面に具えていても良い。
【0033】
図5は本発明に係る交通信号制御機の構成の一例を示すブロック図である。図5に示すように、交通信号制御機10は、AED収納部の扉4の開閉を検知する扉検知部(マイクロスイッチを含む)11、AEDの取外しを検知するAED検知部(マイクロスイッチを含む)12、信号灯器を制御するともに、外部出力部14、通信部15を制御する信号制御部13、ブザー、ランプ、音声、文字表示出力等を起動する外部出力部14、中央管理装置、警察署、消防署、交通表示板等に該検知した情報を通知する通信部15などを備えている。
【0034】
次に、本発明に係る交通信号制御機の処理について説明する。図6は本発明に係る交通信号制御機の処理の一例を示すフローチャートである。信号制御部13は、扉検知部11からAED収納部の扉4の開閉を検知したかを確認し(S1)、検知した場合(S1でYES)、AED検知部12からAED5の取外しを検知したかをさらに確認し(S2)、検知した場合(S2でYES)、AEDが利用される事故が発生したと判断し(S3)、
外部出力部14及び通信部15に出力する。また、信号制御部13は該交通信号制御器の位置情報を記憶しており、前記交通信号制御機の位置情報を前記検知した情報と共に外部に通知する。
【0035】
扉検知部11からAED収納部3の扉の開閉を検知しなかった場合(S1でNO)、AED検知部12からAEDの取外しを検知しなかった場合(S2でNO)、AEDが利用される事故は発生していないと判断し終了する。扉の開閉のみ検知し(S1でYES)、AEDの取外しを検知しなかった場合(S2でNO)は、誤開閉として別途対応を促す出力をしても良い。
【0036】
外部出力部14は、信号制御部13からの出力を受け取るとブザー、ランプ、音声、文字表示出力等を起動する。通信部15は、信号制御部13からの出力を受け取ると中央管理装置、警察署、消防署、交通表示板等に該検知した情報とともに該交通信号制御器の位置情報を通知する。
【0037】
図7は本発明に係る交通信号制御システムの概略を示す模式図である。本発明に係る交通信号制御機システムは、交通信号制御機10と中央管理装置20と少なくとも一つの車載装置30を含む。
【0038】
中央管理装置20は、AEDを収納した交通信号制御機10とAEDが使用される交通信号制御機に向かわせる車載装置30を搭載した車両40を管理する機能を有し、例えば交通管理センター内に設置されている。中央管理装置20は、交差点Iに設置されたAEDを収納した交通信号制御機10と電話回線などの通信回線を介して接続されており、交通信号制御機10から通知された通知信号を受信することができる。また、受信した情報に基づいて交通信号制御機の位置を中央管理装置20のモニターに表示することもできる。
【0039】
AEDが使用される交通信号制御機の位置情報は、住所、経度・緯度の情報の他に、例えば交通信号制御機の認識番号であっても良い。中央管理装置20に前記認識番号に対応した住所等の情報を記憶させ対応させることで、いずれのAEDを収納した交通信号制御機から通知されたかを判別することができる。
【0040】
図7では、1箇所の交差点に設置された交通信号制御機10を示しているが、複数の交差点に設置され、中央管理装置20に複数の交通信号制御機10からの情報が通信回線を介して集められる。この場合、AEDを収納した交通信号制御機の位置情報あるいは認識番号を合わせて通知することで、いずれのAEDを収納した交通信号制御機10から通知されたかを判別することができる。
【0041】
車載装置30はGPSを搭載しており、中央管理装置20は車載装置30の位置情報を随時取得している。この位置情報は光ビーコンや携帯電話などの通常の通信手段を用いて随時取得され、車載装置30が搭載された車両40の位置を把握することができ、交通信号制御機10から通知された情報に基づいて、いずれの車両を交通信号制御機10に向かわせるかを選択することができる。次に、選択した車両40に無線通信等の通常の通信手段を用いて、交通信号制御機10から通知された情報を車載装置30に通知することができる。また車両の選択は複数の車両であっても良い。
【0042】
車両の選択方法は、AEDが取外された交通信号制御機10の位置から直線距離が最も近い車両を選択したり、各車両から該交通信号制御機10の位置まで経路探索をして最も経路の距離が短い車両又は経路の走行所要時間が短くなる車両を選択することができる。
【0043】
車載装置30は、中央管理装置20から通知された情報を受信することができる。また受信情報に基づいて、交通信号制御機10の位置を車載装置30のモニターに表示することもできる。
【0044】
警察署、消防署50、交通表示板60は、交差点Iに設置されたAEDを収納した交通信号制御機10と電話回線などの通信回線を介して接続されており、交通信号制御機10から通知された通知信号を受信することができる。交差点Iの周辺の警察署、消防署50に通知することで、事故現場である交差点Iに急行してもらうことができる。さらに交差点Iの周辺の交通表示板60に通知し、受信した交通表示板60に前方注意等の表示をすることで、交差点Iの周辺車両に注意喚起することができる。尚、交通信号制御機だけでなく、高速道路の非常用電話機にAED収納部を設けることもできる。
【0045】
以上に開示された実施の形態及び実施例は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態及び実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての修正や変形を含むものと意図される。
【符号の説明】
【0046】
1、10 交通信号制御機
2 交通信号制御機本体の扉
3 AED収納部
4 AED収納部の扉
5 AED
6 取手
7 マイクロスイッチ
8 AEDの表示
11 扉検知部
12 AED検知部
13 信号制御部
14 外部出力部
15 通信部
20 中央管理装置
30 車載装置
40 車両
50 警察署、消防署
60 交通表示板
I 交差点
R 道路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施錠可能な本体扉を有する筐体を具えた交通信号制御機であって、該筐体は自動体外式除細動器を収納するための収納部を具え、該収納部は前記本体扉とは別の扉により外部から開閉可能に構成されている交通信号制御機。
【請求項2】
前記収納部の扉の開放及び/又は前記自動体外式除細動器の取外しを検知する検知手段と、前記検知した情報を外部に通知する第一の通知手段とを備えた請求項1に記載の交通信号制御機。
【請求項3】
さらに、前記第一の通知手段は、前記交通信号制御機の位置情報を前記検知した情報と共に外部に通知する請求項2に記載の交通信号制御機。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の交通信号制御機と中央管理装置と少なくとも一つの車載装置を含む交通信号制御システムであって、前記中央管理装置は当該交通信号制御機から通知された通知信号を受信する第一の受信手段と、前記車載装置が搭載された車両の位置を把握する車両検出手段と、前記受信した情報に基づいて当該交通信号制御機に向かわせる車両を選択する車両選択手段と、選択した車両に搭載された車載装置に前記受信した情報を通知する第二の通知手段とを備え、前記車載装置は前記中央管理装置から通知された通知信号を受信する第二の受信手段を備えた交通信号制御システム。
【請求項5】
前記請求項4に記載の車載装置であって、前記受信した情報に基づいて当該交通信号制御機の位置を地図データと共に表示する機能を備えた車載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−76125(P2011−76125A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223586(P2009−223586)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】