説明

交通情報処理装置

【課題】複数の車載機から通報される突発事象を正確に識別する。
【解決手段】交通情報提供システム1は、交通情報サービスセンタ10と、複数の車載機20とを備える。車載機20からは、道路走行中に観測された事象が通報されてくる。通報は、未確定情報データベース17に格納された後、所定の信頼性をもつと判断できる情報だけが、交通情報として交通情報現況データベース12に反映される。このとき、事象判定手段19においては、複数の通報が同一の事象を示すのか、別の事象を示すのかが、事象が観測されたときの位置情報だけでなく、事象が観測されたときの道路情報にも基づいて判定される。交通情報現況データベース12の内容は、交通情報配信手段14によって複数の車載機20へ配信され、利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の移動局から通報される事象を識別する交通情報処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1ないし特許文献5に記載の技術が知られている。これらの技術では、移動体としての車両に乗車している利用者から、何らかの事象が観測されると、当該事象に関する情報が他の車両へ通知される。通知される事象としては、交通に影響を与えるおそれのある事象とすることができ、特に車両から通報される情報として価値の高いものとして、発生直後の交通事故、道路上の障害、局地的な気象など、突発的な事象を例示することができる。
【0003】
特許文献1の技術は、車載の複数の移動局と、固定の基地局としてのセンタとを含むシステムを構築している。このシステムでは、特定の車両から事象が観測されると、その車両の車載機からセンタへ通報され、さらにセンタから他の車両の車載機へ通知が配信される。
【0004】
また、特許文献2ないし特許文献5の技術は、車両と車両との間で情報を共有するシステムを構築している。このシステムでは、特定の車両から事象が観測されると、その車両の車載機から後続車あるいは付近を走行中の車両の車載機に通知が配信される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−238194号公報
【特許文献2】特開2001−283381号公報
【特許文献3】特開2005−57442号公報
【特許文献4】特開2005−182455号公報
【特許文献5】特開2007−156752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1ないし特許文献2の技術では、複数の移動局から事象に関する通報がなされた場合に、それらの通報が同一の事象を指すのか、あるいは異なる事象を指すのかを識別することが必要となる。例えば、特許文献1のシステムでは、センタにおいて複数の通報が示す事象を識別し、同一の事象に関する複数の通報は統合し、異なる事象に関する複数の通報は区別して、他の車両に配信することが望まれる。また、車両と車両との間で通信する特許文献2ないし特許文献5の技術においても、複数の車両から提供された通報が、同一の事象に起因するのか、あるいは異なる事象に起因するのかを識別し、車両の乗員に提供することが望ましい。
【0007】
かかる複数の通報の取り扱いに関して、特許文献1は、その段落0025、0026において、発生位置が所定範囲内であるときには同一事象であると判定することを提案している。しかし、車両から提供される位置情報だけでは当該車両から観測された事象を識別することは困難である。例えば、車両の位置情報としては、GPS(Global Positioning System 全地球測位システム)装置によって得られる経緯度情報を利用することが考えられる。しかし、経緯度情報には誤差が含まれる。このため、正確な識別は困難である。
【0008】
さらに、高架道路とその下を通る道路、平行に通る二種類の道路、複雑なジャンクション、さらには密集した道路などがある。これらの道路構造においては、ほぼ同一の位置を走行中の車両から、異なる事象が観測されることが想定される。例えば、高架道路からは遠方の事象が観測され、その下の道路からは同じ道路上の事象が観測されるといった具合である。また、逆に、同一の事象であっても、異なる見え方をする場合があり、通報される情報にばらつきを生じるおそれがある。
【0009】
また、特許文献1には、その段落0049に、複数の通報により提供された情報の平均値あるいは多数決を用いることが提案されている。ところが、このような処理では、複数の事象が含まれる場合に、当該事象を正確に評価することを困難にする。例えば、軽微な事象を過大な事象と識別することや、重大な事象を過剰に軽く識別してしまうおそれがあった。
【0010】
このように従来の装置では、複数の通報によって示された事象を正確に識別することができなかった。ここでいう事象の識別には、同一事象と別事象とを区別するという意味と、事象の内容を正確に評価するという意味とが含まれている。この結果、従来の装置では、正確さの低い情報を他の車両に配信することとなっていた。このため、システムに対する利用者の信頼性を低下させるおそれがあるという問題点があった。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑み、信頼性の高い交通情報処理装置を提供することを目的とする。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑み、複数の通報に基づいて正確に事象を識別することができる交通情報処理装置を提供することを他の目的とする。
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑み、複数の通報が同一の事象を示すのか、あるいは異なる事象を示すのかを識別することができる交通情報処理装置を提供することをさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用することができる。
【0015】
請求項1に記載の発明は、道路上から観測された事象の種別情報と、事象が観測されたときに端末機が位置していた道路を示す道路情報とを含む複数の通報を記憶する記憶手段(17)と、複数の通報に含まれる道路情報が同一の道路を示すか否かを判定する道路情報判定手段(S12)と、道路情報判定手段により同一道路であると判定されるとき、複数の通報が示す事象が同一事象であると判定する事象判定手段(19)とを備えることを特徴とする交通情報処理装置という技術的手段を採用する。
【0016】
この発明によると、道路上から観測された事象が通報されるとき、事象の種別情報を、道路を示す道路情報とが通報に含められる。そして、記憶手段には、それら種別情報と道路情報とを含む複数の通報が記憶される。道路情報判定手段は、複数の通報に含まれる道路情報が同一の道路を示すか否かを判定する。さらに、事象判定手段は、道路情報判定手段によって同一道路であると判定されるときに、複数の通報が示す事象が同一の事象であると判定する。この結果、複数の通報が得られても、第1の通報が示す事象と、第2の通報が示す事象とが同一であるのか、別異であるのかを識別することができる。この結果、通報が示す事象を正確に識別することができ、通報を利用する交通情報処理装置の信頼性を高めることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、複数の通報に含まれる種別情報が同一の種別であるか否かを判定する種別情報判定手段(S11)をさらに備え、事象判定手段は、種別情報判定手段(S11)により同一種別と判定され、かつ道路情報判定手段により同一道路と判定された場合に、複数の通報が示す事象が同一事象であると判定することを特徴とするという技術的手段を採用する。
【0018】
この発明によると、複数の通報に含まれる種別情報が同一の種別であると評価でき、かつ道路情報が同一の道路を示すと評価できる場合に、複数の通報が示す事象が同一事象であると判定される。この結果、通報が示す事象をより正確に識別することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、記憶手段は、事象が観測されたときに端末機が位置していた位置を示す位置情報をさらに記憶しており、交通情報処理装置は、複数の通報に含まれる位置情報が所定範囲内を示すことにより同一位置か否かを判定する位置情報判定手段(S14)をさらに備え、事象判定手段は、種別情報判定手段により同一種別と判定され、かつ道路情報判定手段により同一道路と判定され、かつ位置情報判定手段により同一位置と判定された場合に、複数の通報が示す事象が同一事象であると判定することを特徴とするという技術的手段を採用する。
【0020】
この発明によると、種別情報および道路情報に加えて、位置情報に基づいて複数の通報が示す事象の同一性が判定される。このため、通報が示す事象をより正確に識別することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、交通情報を記憶する交通情報記憶手段(12)と、交通情報源(30)から交通情報を収集し交通情報記憶手段に格納する交通情報収集手段(15)と、複数の端末機からの通報を収集し記憶手段に格納する事象収集手段(18)と、複数の端末機に交通情報記憶手段に記憶された交通情報を配信する交通情報配信手段(14)とをさらに備え、事象判定手段は、複数の通報が示す事象が同一事象か別事象かを判定した上で、信頼できる通報だけを交通情報記憶手段に交通情報として格納し、交通情報配信手段により配信可能とすることを特徴とするという技術的手段を採用する。
【0022】
この発明によると、交通情報を収集して交通情報記憶手段に蓄積し、この交通情報を複数の端末機に配信して利用するシステムにおいて、端末機からの通報を交通情報として交通情報記憶手段に蓄積し、複数の端末機に配信して利用することができる。しかも、事象判定手段が複数の通報が示す事象が同一事象か別事象かを判定しているため、交通情報とされる通報の信頼性を高めることができる。
【0023】
請求項5に記載の発明は、道路情報は、端末機に搭載されたナビゲーション装置から得られた地図道路情報であり、記憶手段は、端末機から見た事象の位置を、当該端末機が位置していた道路を基準に示した観測道路情報をさらに記憶しており、道路情報判定手段(S12)は、観測道路情報が予め定めた類似範囲内にあり、かつ地図道路情報が同じ道路を示していると評価できる場合に、複数の通報に含まれる道路情報が同一の道路を示すと判定することを特徴とするという技術的手段を採用する。
【0024】
この発明によると、通報に含まれる道路情報には、車載機に搭載されたナビゲーション装置から得られた地図道路情報と、車両から見た事象の位置を道路を基準に示した観測道路情報とが含まれる。ひとつの態様においては、地図道路情報としてリンク番号が用いられ、観測道路情報として「同一方向」および「反対方向」といった情報が用いられる。そして、道路情報判定手段は、観測道路情報が予め定めた類似範囲内にあり、かつ地図道路情報が同じ道路を示していると評価できる場合に、複数の通報に含まれる道路情報が同一の道路を示すと判定する。これにより、より正確に道路情報の同一性を評価することができる。この結果、道路情報の同一性に基づき判定される複数の通報が示す事象の同一性判定についても正確さを高めることができる。
【0025】
請求項6に記載の発明は、上記交通情報処理装置(10)と、複数の端末機(20)とを備える交通情報提供システムを提供する。このシステムでは、それぞれの端末機は、道路上から観測された事象を通報する際に、少なくとも種別情報と、道路情報とを通報する事象通報手段(23c)を備える。この発明によると、複数の端末機からの通報を交通情報処理装置において処理し、同一事象と別事象とを正確に識別できるシステムが提供される。
【0026】
なお、特許請求の範囲および上記各手段に記載の括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を適用した実施形態に係る交通情報提供システム1の構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態の車載機の構成を示すブロック図である。
【図3】実施形態の通報に含まれる情報を示すデータの構成図である。
【図4】実施形態の付加情報の一部である事象の発生方向の種別を示す構成図である。
【図5】実施形態の事象の種別を示すデータの構成を示す構成図である。
【図6】実施形態の事象に関する通報処理の流れを示すシーケンス図である。
【図7】実施形態の未確定情報データベースの構成を示す構成図である。
【図8】実施形態の複数の通報を識別する処理を示すフローチャートである。
【図9】実施形態の表示画像の一例を示す平面図である。
【図10】実施形態の表示画像の一例を示す平面図である。
【図11】実施形態の表示画像の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、本発明を適用した一実施形態を説明する。図1は、実施形態に係る交通情報提供システム1の構成を示すブロック図である。図2は、車載機の構成を示すブロック図である。図3は、通報に含まれる情報を示すデータの構成図である。図4は、付加情報の一部である事象の発生方向の種別を示す構成図である。図5は、事象の種別を示すデータの構成を示す構成図である。図6は、事象に関する通報処理の流れを示すシーケンス図である。図7は、未確定情報データベースに格納された複数の通報を示す構成図である。図8は、複数の通報を識別する処理を示すフローチャートである。図9ないし図11は、ナビゲーション装置22による表示画像の例を示す平面図である。
【0029】
図1において、交通情報提供システム1は、交通情報サービスセンタ10と、複数の車載機20とにより構成されている。交通情報サービスセンタ10(以下、センタ10という)は、地上に定置された基地局であって、交通情報処理装置でもある。車載機20は、道路上などを移動可能な移動局であって、端末機とも呼ばれる。車載機20には、車両に固定的に搭載された端末機のほか、歩行者が形態可能な可搬型の端末機を含むことができる。車載機20は、この交通情報提供システム1において提供されるサービスを受ける端末機として登録されたものである。センタ10と、車載機20とは、無線回線あるいはネットワーク回線を含む通信システムを介して情報通信可能に接続されている。
【0030】
センタ10は、マイクロコンピュータとして構成された制御装置11と、現在の交通情報に関する情報を格納する交通情報現況データベース12(以下、交通DB12という)と、通信装置13とを有する。交通DB12は、交通情報を記憶する交通情報記憶手段を提供する。センタ10は、その基本機能として、交通DB12に格納された交通情報を、車載機20に配信する。この配信機能を提供するために、制御装置11は、交通情報配信手段14を備える。交通情報配信手段14は、交通情報をそのままの形態で複数の車載機20に配信するか、あるいは交通情報を例えば渋滞を回避するための推奨経路情報に加工して複数の車載機20に配信する。
【0031】
センタ10は、交通DB12に交通情報を格納し、さらに格納された交通情報を更新するために、交通情報源30から交通情報を取得し、交通DB12に最新の交通情報を格納する。センタ10と交通情報源30との間は通信システムを介して情報通信可能に接続されている。交通情報源30には、他の交通情報センタ、および他の車両に搭載された交通情報端末機を含むことができる。交通情報端末機は、それが搭載された車両の走行位置、走行速度などの車両走行状態を示すプローブ情報を提供する。制御装置11は、交通情報収集手段15を備える。交通情報収集手段15は、通信装置16を介して取得し収集された交通情報を交通DB12に格納する。
【0032】
さらに、センタ10は、車載機20から通報される事象の情報に基づいて交通DB12に交通情報を格納し、さらに格納された交通情報を更新する。センタ10は、車載機20から通報された情報を格納する未確定情報データベース17(以下未確定DB17という)を備える。未確定DB17は、交通DB12とともに、センタ10内の記憶装置によって提供される。未確定DB17は、道路上から観測された事象の種別情報と、事象が観測されたときに端末機が位置していた道路を示す道路情報とを含む複数の通報を記憶する記憶手段を提供する。センタ10は、車載機20から通報された情報を、まずは未確定DB17に格納し、信頼性の高い情報を選定する。そして、選定された情報を交通DB12に格納する。このために、制御装置11は、複数の車載機20から事象に関する情報を収集し、未確定DB17に格納する事象収集手段18を備える。さらに、制御装置11は、未確定DB17に格納された事象に関する情報を分析し、特定の事象を示す情報として正確さが高く、信頼できるものだけを交通DB12へ反映する事象判定手段19を有する。例えば、事象判定手段19は、複数の車載機20から通報された事象に関する情報のうち、信頼性の高いものだけを、交通DB12に最新の交通情報として新たに登録し、配信可能な状態とする。なお、事象判定手段19は、後述する道路情報判定手段により複数の通報に含まれる道路情報が同一道路であると判定されるとき、複数の通報が示す事象が同一事象であると判定し、別道路であると判定されるとき別事象であると判定するという事象識別処理をした上で、交通DB12への反映処理を行う。
【0033】
この結果、制御装置11は、交通情報源30から提供される交通情報ばかりではなく、この交通情報提供システム1に所属する車載機20から通報された交通に関する情報からも交通情報を取得することとなる。そして、制御装置11の交通情報配信手段14は、交通情報源30から提供される交通情報と、複数の車載機20から通報された交通情報との両方を他の車載機20へ配信する。この結果、一般的に入手可能な交通情報に加えて、さらに複数の車載機20から通報された最新の交通情報が車載機20へ配信される。しかも、複数の車載機20から通報された事象に関する情報は、事象判定手段19によって選定されたものであるため、信頼性の高い最新の情報が提供される。
【0034】
図2において、各車載機20は、テレマティクス装置21と、ナビゲーション装置22とを有する。テレマティクス装置21は、センタ10と通信するための通信装置を含む装置である。ナビゲーション装置22は、マイクロコンピュータとして構成された制御装置23と、位置情報取得装置24と、地図データ格納装置25と、外部メモリ26と、インターフェース装置27とを備える。
【0035】
位置情報取得装置24は、当該車載機20の位置を示す情報を取得する装置であって、例えば、車両が位置している経緯度情報を出力する。位置情報取得装置24には、車両の方位を計測する地磁気センサ24a、車両の運動加速度を計測するジャイロセンサ24b、車両の走行速度に基づいて走行距離を計測する距離センサ24cおよびGPS受信機24dなどを含むことができる。
【0036】
地図データ格納装置25には、地図情報に加えて、道路に関する複数の情報が格納されている。制御装置23は、位置情報取得装置24から提供される位置情報と、地図データ格納装置25に格納された道路情報とに基づいて、任意の時点で車両が位置している道路を特定し、当該道路の道路情報を取得することができる。道路情報には、ひとつまたは複数の情報を含むことができる。例えば、道路情報のひとつとしてリンク番号を含むことができる。リンク番号は、道路網を構成する一部の道路区間をひとつのリンクとして、各リンクに割り当てられた識別番号である。また、道路情報のひとつとして、走行中の車線を示す情報、別の観点では走行方向を示す情報を含むことができる。また、道路情報のひとつとして、道路の種別を示す情報、例えば自動車専用道路と一般道路との別を示す情報を含むことができる。また、道路情報のひとつとして、道路の幅に関する情報を含むことができる。また、道路情報のひとつとして、道路の高度を示す情報、例えば道路の標高を示す情報、または上下に重複して通る他の道路との上下関係を示す情報を含むことができる。これらの道路情報は、車載機20から観測された事象を識別するために貢献する付加情報として扱われる。
【0037】
インターフェース装置27は、液晶表示装置などの表示装置27aと、経路案内などを音声で提供するための音声出力装置27bと、装置を操作するための機能スイッチと、情報入力のためのキーボードとを含むスイッチ群27cと、リモコン装置27dとを含むことができる。リモコン装置27dは、リモコン送受信機27eと、リモコン端末機27fとを備える。
【0038】
制御装置23は、地図データ格納装置25に格納された地図を表示装置27a上に表示するとともに、位置情報取得装置24から提供された位置情報に基づいて、表示装置27a上の地図画像上に車両の現在位置を表示するナビゲーション手段23aを備える。また、このナビゲーション手段23aは、利用者から指示された目的地までの経路を探索し、表示装置27aおよび音声出力装置27bによって利用者に経路案内を提供する。
【0039】
また、制御装置23は、テレマティクス装置21から提供される交通情報を利用者に提供する交通情報提供手段23bを備えている。交通情報提供手段23bは、ひとつまたは複数の手法によって交通情報を利用者に提供する。そのひとつの態様では、交通情報は表示装置27aに文字あるいは画像によって表示される。また、ひとつの態様では、交通情報は、音声出力装置27bから音声として提供される。また、ひとつの態様では、交通情報に基づいてナビゲーション手段23aが経路を探索し、その探索された経路が提供されることによって交通情報が間接的に提供される。例えば、交通情報が交通事故あるいは交通渋滞である場合に、当該交通事故あるいは交通渋滞を回避するように経路が設定される。
【0040】
さらに、制御装置23は、当該車両から観測された事象をセンタ10に通報する事象通報手段23cを備えている。事象通報手段23cは、車両から交通事故などの事象を見た利用者がスイッチ群27cの中のひとつのスイッチを操作することによって通報処理を開始する。事象通報手段23cは、事象を特定するための複数の情報を車両において収集し、それらの情報をセンタ10に送信することによって、事象を通報する。
【0041】
事象通報手段23cは、何らかの事象が観測された旨の情報と、事象の内容を示す主情報と、事象に関する付加的な付加情報とをセンタ10に送信する。主情報には、事象の種別を示す事象種別情報と、事象が観測されたときの車両の位置を示す位置情報とを含むことができる。種別情報は、交通に影響を与えるおそれのある事象を区別するための情報とすることができる。例えば、種別情報は、交通事故、路上落下物、道路の損傷、渋滞、局所的な気象などを示す情報とすることができる。位置情報は、経緯度として与えることができる。
【0042】
また、付加情報には、事象の詳細を示す情報を含むことができる。例えば、事象が交通事故であるなら、その状況、事故車種、規模、救援の要否などの情報を含むことができる。さらに、付加情報には、事象が観測されたときに車両が位置していた道路情報を含むことができる。この道路情報には、事象が観測されたときに車両が位置していた道路を示す情報として地図データ格納装置25から取得可能な地図道路情報が含まれる。地図道路情報には、上述のリンク番号、道路種別、走行中の方向、道路の高度が含まれている。
【0043】
さらに、付加情報には、利用者によって入力された観測道路情報を含むことができる。観測道路情報は、車両から見た事象の位置を、その車両に搭載された端末機が位置していた道路を基準に示したものであって、観測された事象と車両との相対的な位置関係を示す情報でもある。観測道路情報は、観測された事象の位置に基づいて、通報を発出した車両が位置している道路を相対的に示しているとも解釈することができる。このような観点から、観測道路情報を、上記の道路情報に含めて取り扱うことができる。また、観測道路情報は、複数の通報が示す道路情報の一致を判定する補助的な情報として利用することができる。
【0044】
図3には、事象を通報するデータ構成の一例が示されている。事象通報手段23cからセンタ10に送信される事象に関する情報には、事象種別情報と、位置情報と、付加情報とが含まれている。位置情報は、経度および緯度によって表されている。
【0045】
図4には、道路情報の一部である観測道路情報の一例が列挙されている。観測道路情報として、車両から見た事象の道路上の位置を示す情報を用いることができる。「同一方向」は、自車の走行方向と同一方向上に事象が観測されたことを示す。「反対方向」は、自車の走行方向と反対方向上に事象が観測されたことを示す。「車線なしのため不明」は車線区分のない道路上で事象が観測されたことを示す。「路側帯」は道路脇の路側帯において事象が観測されたことを示す。「道路外」は、道路の外に事象が観測されたことを示す。「同一方向別道路」は、同一方向に走行するために延びている別の道路上に事象が観測されたことを示す。「反対方向別道路」は、反対方向に走行するために延びている別の道路上に事象が観測されたことを示す。
【0046】
図5には、事象種別情報のデータ構成の一例が列挙されている。この例では、8ビットの中に、「事故」、「故障」、「落下物、障害物」、「その他、不明」という4つの事象種別と、それら事象種別の詳細を示す情報とがコード化されている。この例では、「事故」という事象については、「対物」、「対人」といった事象の内容を示す情報が含まれている。さらに、「事故」という事象については、「人身あり(救急車不要)」、「人身あり(救急車1台必要)」などの事象の内容、規模などを通報者が評価した結果として得られる主観的な評価を含む情報が含まれている。同様に、「事故」という事象については、「火災なし」、「火災あり(ボヤ程度)」などの主観的な評価を含む情報が含まれている。これら救急車の要否、火災の有無といった情報は、救援を要請する情報でもある。また、これら救急車の要否、火災の有無といった情報は、「事故」という事象の規模、交通に与える影響度を示す情報でもある。また、「故障、落下物、障害物」という事象については、「車線上」、「路肩など」といった事象の内容を示す情報が含まれている。
【0047】
図6には、事象に関する通報処理の流れが図示されている。通報処理は、利用者からの通報を入力するインターフェース装置27と、ナビゲーション装置22と、テレマティクス装置21と、センタ10との間で実施される。まず、利用者が車両から事象を観測すると、処理P1において、利用者によってインターフェース装置27の通報スイッチが操作されたことが検出される。通報スイッチが操作されたことを示す情報は、ナビゲーション装置22に入力される。ナビゲーション装置22は、通報スイッチが操作されたときの車両の位置を示す位置情報と、ナビゲーション装置22において取得することが可能な上記付加情報とをテレマティクス装置21に送信する。テレマティクス装置21は、車両を識別するための車両IDを付加して、センタ10に通報する。この情報は、事象が観測されたことを示す一次通報となる。センタ10では、処理P2において、通報されてきた情報を事象候補として記憶する。
【0048】
センタ10では、処理P3において、タイマを起動する。このタイマは、一次通報から所定時間の間に事象の詳細に関する二次通報が得られない場合に、一次通報が誤報であったか、あるいは交通情報として採用するには信頼度が低いものと判断して一次通報を破棄するためのタイマである。センタ10は、処理P3で起動されたタイマが、後述する処理P7が実行される前に、所定時間の経過を計測した場合、処理P4においてタイマが所定時間の経過を計測したことを検出し、処理P5において事象候補を削除する。
【0049】
一方、センタ10は、車載機20のテレマティクス装置21に対して情報入力要求を送信する。情報入力要求は、ナビゲーション装置22に送信され、ナビゲーション装置22は、インターフェース装置27を制御する。ナビゲーション装置22は、利用者に対して事象の詳細を示す情報の入力を促し、その操作を検出するようにインターフェース装置27を制御する。例えば、表示装置27a上に入力を求める項目、選択岐を提示し、利用者の操作を入力する。より具体的には、観測道路情報などの入力を求めることとなる。処理P6において利用者が必要な情報を入力すると、ナビゲーション装置22は、入力情報をテレマティクス装置21に送信する。この入力情報には、上記事象種別と、事象の発生方向を示す観測道路情報とが含まれることとなる。テレマティクス装置21は、入力情報に車両IDを付加して、二次通報としてセンタ10に送信する。
【0050】
入力情報を受信したセンタ10は、処理P7において、先に受信し記憶した一次通報に含まれていた情報と、二次通報に含まれていた情報とを、事象に関する未確定情報として、未確定DB17に格納する。
【0051】
図7は、未確定DB17に格納された複数の通報のデータ構成を示す。未確定DB17には、複数の通報が、通報毎に格納されている。ひとつの通報に対応して未確定DB17に格納されたデータの集まりは、メンバと呼ばれる。図示の例においては、横の行に配列された複数のデータによってひとつのメンバが構成されている。未確定DB17に格納された複数のメンバには、異なる車両からの通報に基づくものと、同じ車両から異なる時刻になされた通報に基づくものとを含むことができる。ひとつのメンバには、事象種別、経緯度、および付加情報からなる通報情報に加えて、グループ番号が付与されている。このグループ番号は、同一の事象を示す可能性がある通報の集合を示すものとしてセンタ10内の処理によって与えられる識別番号である。
【0052】
図8には、センタ10において実行される通報識別処理のフローチャートが示されている。センタ10は、この処理によって、複数の通報のなかから、信頼性の高い通報を選択し、未確定DB17から、交通DB12へ登録している。この結果、交通DB12に格納された交通情報の信頼性が高められる。図8において、S1からS25は、センタ10の制御装置11において実行されるステップを示しており、それぞれが機能を実現する手段を提供している。
【0053】
センタ10は、ステップS1(以下、ステップを省略して符号で呼称する)において、新たな通報(以下、新通報という)を受け付け、未確定DB17に追加したか否かを判定する。新通報がない場合、NOに分岐する。S2からS6では、種々の入力によって随時更新されてゆく交通DB12に整合するように未確定DB17を更新する処理がなされる。S2では、交通DB12に登録されている交通情報に何らかの更新が加えられたか否かを判定する。ここでは、車載機20からの通報に基づく更新だけでなく、他の交通情報源30からの情報により交通DB12の交通情報が更新された場合も検出する。交通DB12の交通情報が更新されている場合、YESに分岐する。S3では、交通DB12に新たな交通情報として、新たな事象の発生地点が追加されたか否かを判定する。新たな事象の発生地点が追加されていた場合、YESに分岐する。S4では、未確定DB17に格納されている未確定の事象に関する情報を読み出す。S5では、S3で新規追加されたと判定された事象と、未確定DB17に格納されている未確定の事象とを対比し、同一の事象を示していると判定されるメンバを、未確定DB17から削除する。この削除されるメンバが示す事象は、すでに交通DB12に格納されているからである。この削除処理では、同じグループ番号を付与されているすべてのメンバが削除される。これにより、交通DB12にすでに反映された事象発生情報は棄却される。さらに、S6では、最初に未確定DB17に追加された時刻から十分な時間を経過した未確定事象と、それと同一のグループ番号を付与された全てのメンバを削除する。未確定DB17上に、確定情報として交通DB12に移設されないまま長時間格納されているメンバは、信頼するに値しなかった情報として未確定DB17から削除する。
【0054】
S1において、新通報があった場合、YESに分岐する。続くS7からS20では、新通報が示す事象、すでに未確定DB17に格納されたメンバと同一の事象であるのか、別の事象であるのかを判定し、グループ番号を付与する。さらに、S21からS25では、新通報が加えられた結果、当該グループに属するメンバが示す事象が、交通DB12に反映できる程度に信頼性をもつか否かが判定され、信頼性ありと判定された場合に交通DB12への反映処理が実行される。
【0055】
S7では、新通報に含まれる事象種別、位置情報、および付加情報が読み出される。特に、付加情報として、事象が観測されたときに車両が位置していた道路区間を示すリンク番号などの観測道路情報が読み出される。S8では、演算処理における変数の初期化が行われる。ここでは、地点間距離と最短グループ番号とが初期値にリセットされる。
【0056】
S9では、未確定DB17から格納されている情報をメンバ毎、すなわち通報毎に順次読み出す。S10では、読み出すメンバが残っているか否かが判定される。すなわち、S9の処理は、未確定DB17に格納されたすべてのメンバに対して実行される。読み出すメンバがまだあった場合、YESに分岐する。
【0057】
S11では、新通報の事象種別と、読み出されたメンバの事象種別とが一致するか否かが判定される。この一致判定においては、新通報の事象種別と、読み出されたメンバの事象種別とが完全に一致する場合と、事象の重大性ゆえに一致している可能性が高いと判断できる場合とに、一致していると判定することができる。例えば、両方の事象種別がともに事故の場合、ともに故障の場合、ともに落下物、障害物の場合に一致と判定する。また、新通報の事象種別がその他又は不明である場合、読み出されたメンバの事象種別が事故で付加情報が人身ありまたは火災ありの場合に一致と判定する。S11で事象種別が不一致の場合、NOに分岐し、S9に戻り、次のメンバを読み出す。事象種別が一致している場合、YESに分岐する。S11は、複数の通報に含まれる種別情報が同一の種別と評価できるか否かを判定する種別情報判定手段を提供する。
【0058】
S12では、新通報の付加情報と、読み出されたメンバの付加情報とが、所定の条件を満たす関係にあるか否かが判定される。この条件は、両方の付加情報が、同一の事象を示している可能性が高い場合に満たされるように設定されている。特に、付加情報のうち、道路情報については、新通報が示す道路と、読み出されたメンバが示す道路とが一致していると判定できる場合に、条件を満足したとされる。例えば、観測道路情報が予め定めた類似範囲内にあり、かつナビゲーション装置22から得られた地図道路情報が同じ道路を示していると評価できる場合に、道路情報が一致していると判定することができる。S12は、複数の通報に含まれる道路情報が同一の道路を示すか否かを判定する道路情報判定手段を提供する。このような道路情報に基づく事象の一致判定を備えることで、複雑に入り組んだ複数の道路から観測された事象を識別することができる。
【0059】
道路情報の条件として、例えば、以下の条件を用いることができる。新通報の道路情報をXとし、読み出されたメンバの道路情報をYとする。観測道路情報を、それぞれ、同一方向=A、反対方向=B、同一方向別道路=C、反対方向別道路=D、車線なしのため不明=E、路側帯=F、道路外=G、その他又は不明=Hとする。さらに、地図道路情報に含まれるリンク番号が一致する場合をIとする。2つの通報のリンク番号が一致することにより、高い確立で同一の道路からの通報であると評価できる。また、地図道路情報に含まれる道路種別が一致する場合をJとする。また、地図道路情報に含まれる走行中の方向の差が許容範囲内の場合をKとする。走行中の方向の差が許容範囲内であることは、同じ車線上を走行している可能性が高いことを示している。また、地図道路情報に含まれる道路の高度の差が許容範囲内の場合をLとする。高度差が許容範囲内であることは、立体交差などにおける同じ道路上を走行している可能性が高いことを示している。このような場合、右の論理式「(((X=A OR X=B OR X=C OR X=D) AND (Y=A OR Y=B OR Y=C OR Y=D)) OR ((X=E OR X=H) AND (Y=E OR Y=H)) OR ((X=F OR X=H) AND (Y=F OR Y=H)) OR ((X=G OR X=H) AND (Y=G OR Y=H))) AND (I OR (J AND K AND L))」が満たされる場合に、道路情報が所定条件を満足しているとする。なお、「OR」は論理和、「AND」は論理積を示す。この条件では、観測道路情報が類似範囲内にあり、かつリンク番号が一致している場合に、条件が満足される。また、観測道路情報が類似範囲内にあり、かつ道路種別、走行車線、および道路高度の3情報が一致と評価できる場合に、条件が満足される。ここでは、リンク番号の一致「I」と、道路種別、走行車線、および道路高度の3情報の条件満足とが、同程度の確からしさをもって道路情報の一致を示すものとされている。
【0060】
S12で付加情報が条件を満たさない場合、NOに分岐し、S9に戻り、次のメンバを読み出す。付加情報が条件を満たす場合、YESに分岐する。続くS13からS17の処理では、S11およびS12の判定により同種の事象を示していると判定された新通報の事象と、読み出されたメンバの事象との距離を求め、この距離に基づいて新通報の事象に付与すべきグループ番号を決定する。
【0061】
S13では、新通報の事象と、読み出されたメンバの事象との間の通報間距離を求める。ここでは、経緯度を含む位置情報に基づいて、2つの事象の間の距離を求める。S14では、今回求められた通報間距離が予め定めた所定距離以内か否かを判定する。通報間距離が所定距離を超える場合は、S9に戻る。この所定距離は、2つの通報が示す事象が別の事象であろうと判断できる程度の距離とされている。S14は、複数の通報に含まれる位置情報が所定範囲内を示すことにより同一位置と評価できるか否かを判定する位置情報判定手段を提供する。
【0062】
S15では、今回求められた通報間距離が、新通報に関して求められた複数の通報間距離の中で最短であるか否かが判定される。複数の通報が示す事象の位置が接近しているところへ、さらに新通報が加えられた場合に、最も近いメンバと同じグループ番号を付与するための処理である。S16では、今回求められた通報間距離を、変数としての地点間距離に設定し、地点間距離を更新する。S17では、読み出されたメンバに既に付与されているグループ番号を、変数としての最短グループ番号に記憶する。
【0063】
以上に述べたS9からS17の処理を、未確定DB17に格納されたすべてのメンバ、すなわち既存の通報と、今回新たに得られた新通報との間で実施することで、新通報に付与すべきグループ番号が決定される。すべてのメンバについてS9からS17の処理が遂行されると、S10からNOに分岐する。
【0064】
S18では、最短グループ番号がS8でリセットされたままであるのか、あるいはS17で特定のグループ番号に設定されているのかが判定される。S18は、最短グループ番号が初期値である場合、YESに分岐する。この場合、新通報と同一事象であると評価できる既存のメンバがなかった場合である。S19では、新通報を新たなメンバとして未確定DB17に格納するとともに、新たなグループ番号を付与する。最短グループ番号に特定のグループ番号が設定されていると、S18はNOに分岐する。この場合、新通報と同一事象であると評価できる既存のメンバがあった場合である。S20では、新通報を新たなメンバとして未確定DB17に格納するとともに、最短グループ番号として設定されている既存のグループ番号を付与する。
【0065】
S21では、新通報、およびその新通報と同一グループ番号が付与されたメンバの信頼性を評価し、交通DB12に登録するに足る信頼性をもつか否かを判定する。例えば、同一グループ番号が付与されたメンバの総数が所定値以上であると、それらのメンバによって示される事象を信頼可としてYESに分岐する。
【0066】
S22では、信頼可とされた同一グループ番号を付与されたメンバが示す事象の発生地点を特定する。ここでは、複数のメンバがあるので、メンバのもつ経緯度の平均値を求める。S23では、S21で信頼可とされた事象が、既に交通DB12に格納されているか否かを判定する。例えば、交通DB12内に、S22において特定された事象発生地点から所定距離以内の事象発生地点が既に格納されていれば、既存の事象があると判定し、YESに分岐する。S24では、新通報が示す事象を交通情報として交通DB12に格納する。S25では、交通DB12に既に格納済みであるとS23で判定された事象、またはS24で交通DB12に新たに格納された事象を示している同一グループ番号を付与された全てのメンバを処理済み情報として未確定DB17から削除する。
【0067】
以上に説明した処理により、実際に道路網上を走行している車両からの情報が交通情報として交通DB12に格納される。この実施形態では、事象の種別などの情報だけでなく、事象が観測されたときに車両から見た事象の道路に対する位置、さらには車両が位置していた道路を示す情報が道路情報として通報され、事象の識別に利用される。このため、複数の通報がセンタ10に届いても、同一の事象に関する通報であるのか、別の事象に関する通報であるのかを確実に識別することができる。
【0068】
次に、センタ10の交通情報配信手段14の作用と、交通情報配信手段14によって配信された交通情報を利用する車載機20のナビゲーション手段23aと交通情報提供手段23bとの作動を説明する。図9ないし図11に、ナビゲーション手段23aによる表示画像の例が示されている。
【0069】
図9は、AからFの交差点をもつ道路網と、車両の位置を示す三角形の記号と、目的地を示す記号とが表示された状態を示している。さらに、この画像上には、センタ10から提供された交通情報が、交通情報提供手段23bとナビゲーション手段23aとの共同によって表示されている。交通情報として、画像上には、各道路区間、すなわちリンクにおける予想走行時間と、渋滞を示す斜線とが表示されている。この場合、運転者は、交差点E−F−Cを経由して走行することで、合計25分で目的地に到達できると走行計画を立てることができる。さらに、この実施形態では、交差点F−C間の道路を先行して走行している他の車載機20からの通報に基づく交通情報が提供される。
【0070】
図10において、他の車載機20からの通報に基づく交通情報として、事象Xが表示されている。例えば、Xで示された記号は、交通事故といった突発的な事象を示すものとすることができる。交通情報提供手段23bとナビゲーション手段23aとは、他の車載機20からの通報に基づき得られた交通情報を、他の交通情報源30から得られた交通情報とは異なる態様で運転者に通知する。例えば、異なる図形を使用したり、異なる色彩を使用したり、音声とあわせて通知したりする。これにより、一般的な交通情報と、この交通情報提供システム1だけで得られる交通情報とを区別して運転者に認識させることができる。このような表示画像を見た運転者は、事象Xを回避する経路を通る走行計画を立てることができる。また、ナビゲーション手段23aが経路案内機能をもつ場合には、事象を回避するように自動的に推奨経路を設定することができる。このような、他の車載機20から得られた交通情報を運転者に提供することにより、交通に影響を与えるおそれのある事象を、交通情報提供システム1を利用する運転者に、早期に提供することができる。
【0071】
図11において、交差点F−C間の道路における事象が発生してから一定時間が経過した後の交通情報が示されている。事象Xは、交差点F−C間の道路の走行を不可能とし、さらに交差点Fへの道路に渋滞を引き起こす。この実施形態では、事象Xが発生した直後に、他の車載機20からの通報に基づいて、事象Xの情報が提供されるから、図11のような事態になる前から、かかる事態を予見して走行計画を立てることができる。
【0072】
(他の実施形態)
本発明の技術的範囲は、上述した実施形態にのみ限定されるものではない。上述した実施形態は、本発明の技術的範囲内で、多様な変形、改良、または拡張を伴うことができる。本発明は、少なくとも次のような変形、改良または拡張を伴う実施形態を包含する。
【0073】
S14における所定距離以内か否かの判定においては、可変の基準値を用いることができる。例えば、事象種別の情報として、火災が含まれる場合、遠くから観測することができるため、S14における基準値を他の事象よりも長くすることができる。
【0074】
S21においては、メンバ数が所定値以上か否かとの判定に代えて、点数制の判定手法を採用することができる。例えば、通常の事象については1点を付与し、被害大、つまり、早急な対応が必要な事象については、通常より大きい点数を付与する。また、種別がその他や不明などのときには、通常より小さい点数を付与する。そして、同一グループ番号を付与されたメンバの合計点数が所定点数を超えれば信頼可と判定する。
【0075】
S22においては、経緯度だけに基づいて事象の発生位置を特定する処理に代えて、事象を観測した車両が位置していた道路情報に基づいて、事象の発生位置を補正して特定してもよい。例えば、前処理として、発生方向の違いにより、通報された経緯度補正をおこなう。通報された経緯度を、通報されたリンク番号で示された該当道路区間上に投影する。もしくは、通報された経緯度を、通報と道路種別が一致し、かつ高度の差が許容範囲内にある最も近い道路に投影し、自車の走行方向で示された車線上にいるものとする。次に、発生方向の違いにより、発生地点の経緯度変換処理をおこなう。同一方向、車線なしのため不明、路側帯、道路外、その他・不明の場合は、補正せずそのままとする。反対方向、同一方向別道路、反対方向別道路の場合は、それぞれ補正後の経緯度から一番近い反対車線、同一方向別道路車線、反対方向別道路車線に変換する。
【0076】
上記実施形態では、複数の車載機20からの通報がセンタ10に集中する構成を説明したが、これに代えて、複数の車載機20からの通報が一の車載機20に直接に送信されてもよい。かかる構成においては、車載機20が交通情報処理装置として構成され、車載機20において道路情報に基づく事象識別が実施され、複数の通報が同一の事象を示すのか、別の事象を示すのかを識別することが可能となる。
【符号の説明】
【0077】
1 交通情報提供システム
10 センタ(交通情報サービスセンタ)
11 制御装置
12 交通DB(交通情報現況データベース)
13 通信装置
14 交通情報配信手段
15 交通情報収集手段
16 通信装置
17 未確定DB(未確定情報データベース)
18 事象収集手段
19 事象判定手段
20 車載機
21 テレマティクス装置
22 ナビゲーション装置
23 制御装置
24 位置情報取得装置
25 地図データ格納装置
26 外部メモリ
27 インターフェース装置
30 交通情報源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上から観測された事象の種別情報と、事象が観測されたときに端末機が位置していた道路を示す道路情報とを含む複数の通報を記憶する記憶手段と、
複数の通報に含まれる前記道路情報が同一の道路を示すか否かを判定する道路情報判定手段と、
前記道路情報判定手段により同一道路であると判定されるとき、前記複数の通報が示す事象が同一事象であると判定する事象判定手段とを備えることを特徴とする交通情報処理装置。
【請求項2】
複数の通報に含まれる前記種別情報が同一の種別であるか否かを判定する種別情報判定手段をさらに備え、
前記事象判定手段は、前記種別情報判定手段により同一種別と判定され、かつ前記道路情報判定手段により同一道路と判定された場合に、前記複数の通報が示す事象が同一事象であると判定することを特徴とする請求項1に記載の交通情報処理装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、事象が観測されたときに端末機が位置していた位置を示す位置情報をさらに記憶しており、
前記交通情報処理装置は、複数の通報に含まれる前記位置情報が所定範囲内を示すことにより同一位置か否かを判定する位置情報判定手段をさらに備え、
前記事象判定手段は、前記種別情報判定手段により同一種別と判定され、かつ前記道路情報判定手段により同一道路と判定され、かつ前記位置情報判定手段により同一位置と判定された場合に、前記複数の通報が示す事象が同一事象であると判定することを特徴とする請求項2に記載の交通情報処理装置。
【請求項4】
交通情報を記憶する交通情報記憶手段と、
交通情報源から交通情報を収集し前記交通情報記憶手段に格納する交通情報収集手段と、
複数の端末機からの通報を収集し前記記憶手段に格納する事象収集手段と、
複数の端末機に前記交通情報記憶手段に記憶された交通情報を配信する交通情報配信手段とをさらに備え、
前記事象判定手段は、前記複数の通報が示す事象が同一事象か別事象かを判定した上で、信頼できる通報だけを前記交通情報記憶手段に交通情報として格納し、前記交通情報配信手段により配信可能とすることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の交通情報処理装置。
【請求項5】
前記道路情報は、前記端末機に搭載されたナビゲーション装置から得られた地図道路情報であり、
前記記憶手段は、前記端末機から見た事象の位置を、当該端末機が位置していた道路を基準に示した観測道路情報をさらに記憶しており、
前記道路情報判定手段は、前記観測道路情報が予め定めた類似範囲内にあり、かつ前記地図道路情報が同じ道路を示していると評価できる場合に、複数の通報に含まれる前記道路情報が同一の道路を示すと判定することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の交通情報処理装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の交通情報処理装置と、
複数の端末機とを備え、
それぞれの端末機は、道路上から観測された事象を通報する際に、少なくとも前記種別情報と、前記道路情報とを通報する事象通報手段を備えることを特徴とする交通情報提供システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−237794(P2010−237794A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82676(P2009−82676)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】