説明

位相調整装置

【課題】設計時以降に生じる位相差の変動を内部で自動的に調整することで、予め設定された位相差を有する2つの信号を出力する。
【解決手段】2つのクロック信号の位相差を予め定められた位相差に調整する位相調整装置であって、第1クロック信号に対する第2クロック信号の遅延量を選択的に変更可能な遅延部11と、前記遅延量を制御する制御部12とを備え、前記制御部12は、準備モードにおいて、前記遅延量を第1の時間間隔で段階的に増加又は減少させ、遅れ期間、又は、進み期間を検出し、調整モードにおいて、前記遅れ期間又は前記進み期間と同じ長さの期間において第2の時間間隔で前記遅延量を段階的に変化させることで、前記第2クロック信号の位相差を予め定められた位相差に調整し、前記第2の時間間隔と前記第1の時間間隔との比は、180度と予め定められた位相差との比に等しい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路のインターフェースに関する信号のタイミングを調整する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路において高速にデータ送受信を行うために、DDR(Double Data Rate)インターフェース技術が用いられる。DDRインターフェースとは、クロック信号の立上りエッジと立下りエッジの両方に同期させることで、クロック信号の2倍のデータレートでデータを出力する技術である。
【0003】
DDRインターフェースでは、同じ周波数で位相の異なる2つのクロック信号が必要である。このため、正しくデータの送受信を行うためには、2つのクロック信号を所望のタイミングに調整する必要がある。
【0004】
従来、タイミングを調整するために、半導体集積回路の設計段階においてシミュレーションにより2つのクロック信号の位相差を調整している。または、DLL(Delay Locked Loop)を用いて、タイミングの調整を実施している(特許文献1)。DLLは、入力されたクロック信号に対する遅延量を制御して調整することで、所望の位相差を有する信号を出力する回路技術である。
【特許文献1】特開2000−31954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では以下の課題がある。すなわち、半導体集積回路のプロセスのばらつきの影響、或いは、LSI(Large Scale Integration)の大チップ化及び大電流化によるIRドロップの影響により、設計時に調整した2つの信号の位相差が変動する。これにより、DDRインターフェースのタイミングがずれ、データの送受信が行えない場合が生じる。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、設計時以降に生じる位相差の変動を内部で自動的に調整することで、予め定められた位相差を有する信号を出力することのできる位相調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る位相調整装置は、第1クロック信号に対する第2クロック信号の位相差を予め定められた位相差に調整する位相調整装置であって、前記第1クロック信号に対する前記第2クロック信号の遅延量を選択的に変更可能な遅延手段と、前記遅延量を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、準備モードにおいて、前記遅延量を第1の時間間隔で段階的に変化させ、前記第2クロック信号の位相が、進み状態から遅れ状態になった時点から再度進み状態になるまでの期間である遅れ期間、又は、遅れ状態から進み状態になった時点から再度遅れ状態になるまでの期間である進み期間を検出し、調整モードにおいて、前記遅れ期間又は前記進み期間と同じ長さの期間において第2の時間間隔で前記遅延量を段階的に増加又は減少させることで、前記第1クロック信号に対する前記第2クロック信号の位相差を予め定められた位相差に調整し、前記第2の時間間隔と前記第1の時間間隔との比は、180度と予め定められた位相差との比に等しい。これにより、設計時以降に生じる位相差の変動を内部で自動的に調整することで、予め定められた位相差を有する信号を出力することができる。
【0008】
また、前記制御手段は、前記準備モードにおいて前記第1の時間間隔を周期とするクロック信号を、前記調整モードにおいて前記第2の時間間隔を周期とするクロック信号を選択する選択部と、選択されたクロック信号に同期してカウントし、遅延量を指示する制御信号としてカウント値を前記遅延手段に出力する第1カウンタ部と、前記準備モードにおいて前記第1クロック信号に対する前記第2クロック信号の位相が進み状態であるか遅れ状態であるかを判定する位相判定部と、前記位相判定部の判定結果に基づいて前記遅れ期間又は前記進み期間を検出する検出部とを備え、前記制御手段は、前記調整モードにおいて、前記遅れ期間又は前記進み期間の開始時におけるカウント値を初期値とし、当該期間と同じ長さの期間だけ前記第1カウンタ部にカウント動作させてもよい。これにより、カウンタのカウント値と遅延量を対応させることができ、簡単な構成で位相差の調整を実行することができる。
【0009】
また、前記制御手段は、さらに、前記第1の時間間隔を周期とするクロック信号を分周することで、前記第2の時間間隔を周期とするクロック信号を出力する分周部を備え、前記選択部は、前記調整モードにおいて前記分周部によって分周されたクロック信号を選択してもよい。これにより、1つのクロック信号を用いるだけで、位相差の調整を実行することができる。
【0010】
また、前記検出部は、出力端子が次段の入力端子に接続される複数段のフリップフロップを備え、前記第1の時間間隔を周期とするクロック信号が各フリップフロップのクロック端子に入力され、初段のフリップフロップの入力端子に前記位相判定部の判定結果が入力され、最終段のフリップフロップから出力されるパルス幅は、前記遅れ期間又は前記進み期間を示し、前記フリップフロップの個数は、少なくとも前記遅延手段が変更可能な遅延量の数であるとしてもよい。これにより、準備期間と調整期間とを分けることができ、確実に位相の遅れ状態又は進み状態を検出することができる。
【0011】
また、前記制御手段は、前記準備モードにおいて前記第1の時間間隔毎にカウントする第1カウンタ部と、前記調整モードにおいて前記第2の時間間隔毎にカウントする第2カウンタ部と、前記準備モード及び前記調整モードにおいて第1カウンタ部のカウント値を選択し、前記調整モードの完了時に、第2カウンタ部のカウント値を選択し、選択したカウント値を、遅延量を指示する制御信号として前記遅延手段に出力する選択部と、前記準備モードにおいて、前記第1クロック信号に対する前記第2クロック信号の位相が進み状態であるか遅れ状態であるかを判定することで、前記遅れ期間又は前記進み期間を検出する位相判定部とを備え、前記制御手段は、前記調整モードの動作として、前記遅れ期間又は前記進み期間の開始時点における第1カウンタ部のカウント値を初期値として前記第2の時間間隔毎に前記第2カウンタ部にカウント動作をさせ、当該期間の終了時点で前記第2カウンタ部のカウント動作を停止させてもよい。これにより、2つの信号の位相差を、より短期間で予め定められた位相差に調整することができる。
【0012】
また、前記制御手段は、前記遅れ期間または前記進み期間の開始時点までは、第2カウンタ部に第1カウンタ部と同じカウント動作をさせてもよい。これにより、2つのカウンタの動作を同期させることができ、位相の調整時に誤差を生じない。
【0013】
また、前記第1カウンタ部は、前記第1の時間間隔を周期とするクロック信号に同期してカウントし、前記制御手段は、さらに、前記第1の時間間隔を周期とするクロック信号を分周することで、前記第2の時間間隔を周期とするクロック信号を出力する分周部を備え、前記第2カウンタ部は、前記分周部によって分周されたクロック信号に同期してカウントしてもよい。これにより、1つのクロック信号を用いるだけで、位相差の調整を実行することができる。
【0014】
また、前記分周部は、前記予め定められた位相差が180/n度である場合、前記第1の時間間隔を周期とするクロック信号をn分周してもよい。これにより、様々な位相差に設定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、設計時以降に生じる位相差の変動を内部で自動的に調整することで、予め設定された位相差を有する2つの信号を出力することができる位相調整装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態の位相調整装置の構成図である。本実施の形態の位相調整装置は、入力された1つのクロック信号を基にして、予め定められた位相差を有する2つのクロック信号を出力する装置である。図1の位相調整装置1は、遅延部11及び制御部12を備える。
【0018】
遅延部11は、基準信号に対する調整信号の遅延量を選択的に変更することができる処理部である。遅延部11は、入力されたクロック信号CLKに基づいて、位相差を調整するための基準となる基準信号CK1と、基準信号CK1に対して予め定められた位相差を有する調整信号CK2とを出力する。また、遅延部11は、後述する制御信号CTLに基づいて位相差を選択して調整可能であり、制御信号CTLを受け取ることで、制御信号CTLに含まれるカウント値に対応する位相差を有する調整信号CK2を出力する。
【0019】
図2は、遅延部11の一例を示す図である。遅延部11は、複数のバッファと複数のスイッチとを含む。本実施の形態では、遅延部11の分解能は8段階である。すなわち、基準信号CK1に対する調整信号CK2の位相差を、8個のバッファを用いることにより、8段階で調整することができる。例えば、スイッチ20が閉じられている場合、バッファ210を通過した入力信号CLKはバッファ200のみを通過し、入力信号CLKより少し遅れた信号CK2が出力される。スイッチ21が閉じられている場合、バッファ210を通過した入力信号CLKは、バッファ200及びバッファ201を通過し、前述のバッファ200のみを通過した信号より遅れた信号CK2が出力される。以下同様に、より番号が大きいスイッチを閉じることで、入力信号CLKからより遅れた位相を持つ信号CK2が出力される。したがって、スイッチ20からスイッチ27までを順に閉じていくことで、遅延部11は、段階的に位相の遅れた信号CK2を出力することができる。また逆に、スイッチ27からスイッチ20までを順に閉じていくことで、遅延部11は、段階的に位相の遅れた調整信号CK2を出力することができる。
【0020】
制御部12は、遅延部11が選択的に変更できる遅延量を制御する処理部である。制御部12は、図1に示されるように位相判定部13、検出部14及び位相設定部15を備える。
【0021】
位相判定部13は、基準信号CK1に対する調整信号CK2の位相が進み状態であるか遅れ状態であるかを判定する処理部である。図3は、位相判定部13の一例を示す図である。同図に示されるように、位相判定部13はフリップフロップで構成される。フリップフロップのクロック端子Clkには調整信号CK2が入力され、データ端子Dには基準信号CK1が入力される。これにより、フリップフロップの出力端子Qから、基準信号CK1を調整信号CK2の立上り時に読み出した信号DATAが出力される。フリップフロップの出力端子Qから出力されるデータ信号DATAがHiである場合、基準信号CK1に対する調整信号CK2の位相が遅れ状態であることを示す。一方、データ信号DATAがLoである場合、基準信号CK1に対する調整信号CK2の位相が進み状態であることを示す。
【0022】
図4は、検出部14及び位相設定部15の一例を示す図である。
検出部14は、位相判定部13の判定結果に基づいて遅れ期間又は進み期間を検出する処理部である。ここで、遅れ期間は、基準信号CK1に対する調整信号CK2の位相が進み状態から遅れ状態になった時点から再度進み状態になるまでの期間である。例として、図5に示されるデータ信号DATAのHi期間が遅れ期間である。進み期間は、基準信号CK1に対する調整信号CK2の位相が遅れ状態から進み状態になった時点から再度遅れ状態になるまでの期間である。図4に示されるように、検出部14は、8個のフリップフロップ401〜408を多段に構成したものである。フリップフロップの個数は、少なくとも遅延部11の分解能、すなわち、遅延部11が選択可能な遅延量の個数である。各フリップフロップのクロック端子clk1〜clk8には、基準信号CK1と同じ周波数の信号CK3が入力される。初段のフリップフロップ401のデータ端子D1には、データ信号DATAが入力される。フリップフロップ402のデータ端子D2には、フリップフロップ401の出力端子Q1から出力される信号が入力される。以下同様にして、全てのフリップフロップは直列に接続される。最終段のフリップフロップ408の出力端子Q8から出力されるパルス幅は、遅れ期間又は進み期間を示す。
【0023】
位相設定部15は、遅延部11が遅延量を選択するための制御信号CTLを出力する処理部である。図4に示されるように、位相設定部15は、分周器411、セレクタ412及びカウンタ413を備える。
【0024】
分周器411は、入力された信号の1/n倍の周波数を持つ信号を出力する。本実施の形態では、分周器411はクロック信号CK3を、1/n倍の周波数を持つ信号に変換し、セレクタ412に出力する。分周器411は、予め設定された位相差が何度であるかによって何分周するかが設定される。すなわち、予め設定された位相差が180/n度である場合、分周器411はクロック信号CK3をn分周した信号を出力する。例えば、予め設定された位相差が90度である場合、分周器411はクロック信号CK3を1/2分周した信号を出力すればよい。予め設定された位相差が60度又は45度である場合、分周器411はそれぞれクロック信号CK3を1/3分周又は1/4分周した信号を出力すればよい。なお、設定可能な位相差の精度は、遅延部11の分解能によって決定される。すなわち、遅延部11の分解能が高い程、設定可能な位相差の精度も向上する。なお、請求項に記載された第1の時間間隔は、クロック信号CK3の周期である。第2の時間間隔は、分周器411によって分周された信号の周期である。以上のようにクロック信号CK3を分周することで、第2の時間間隔と第1の時間間隔とは、180度と予め定められた位相差との比に等しくなる。
【0025】
セレクタ412は、クロック信号CK3と分周器411によってn分周された信号とのいずれかを選択し、カウンタに信号CK4として出力する。セレクタ412の制御信号として、フリップフロップ408から出力される信号Q8が入力される。セレクタ412は、後述する準備期間においてクロック信号CK3を選択し、後述する調整期間において分周器411によってn分周された信号を選択する。
【0026】
カウンタ413は、セレクタ412から入力された信号CK4に同期してカウントし、遅延量を指示する制御信号CTLとしてカウント値を遅延部11に出力する。後述するように、カウント値は0〜7の値である。カウンタ413は、カウンタ413の停止指示を受け取るまで0〜7までのカウントを繰り返す。遅延部11は制御信号CTLを受け取ると、該制御信号CTLに対応するスイッチを閉じる。例えば、制御信号CTLに含まれるカウント値が0である場合、スイッチ20を閉じる。
【0027】
なお、遅れ期間中に第1の時間間隔でカウントすることで、遅れ期間終了時のカウント値は、基準信号CK1に対する調整信号CK2の位相差が180度であることを示す。これに対し、第2の時間間隔が第1の時間間隔の2倍である場合では、遅れ期間中に第2の時間間隔でカウントすることで、遅れ期間終了時のカウント値は、基準信号CK1に対する調整信号CK2の位相差が90度であることを示す。本実施の形態の位相調整装置は、上記の関係を利用することで、予め定められた位相差を有する2つの信号を出力することができる。
【0028】
以下では、本実施の形態の位相調整装置の動作について図5に示すタイムチャートに沿って説明する。なお、例として、基準信号CK1に対する調整信号CK2の位相差を90度に設定する。また、図5は、遅れ期間を検出する場合のタイムチャートである。
【0029】
本実施の形態の位相調整装置の動作は、準備期間501、調整期間502及び保持期間503に分けられる。準備期間501は、遅延部11が調整可能な位相差を段階的に変化させ、遅れ期間又は進み期間を検出するのに必要な期間である。調整期間502は、遅れ期間又は進み期間と同じ長さの期間において第2の時間間隔で遅延量を段階的に変化させることで、遅延部11が予め定められた位相差に調整信号CK2を調整するための制御信号CTLを生成する期間である。保持期間503は、カウント値を保持することで、遅延部11が常に一定の位相差を有する2つのクロック信号を出力する期間である。また、図5に示すように、準備期間501は、フリップフロップ408の出力信号Q8がLoである期間である。調整期間502は、準備期間501に続く期間であって、出力信号Q8がHiである期間である。保持期間503は、調整期間502に続く期間である。
【0030】
図5の△t0から△t7は、基準信号CK1に対する調整信号CK2の位相の遅れ量又は進み量を示す。データ信号DATAは、調整信号CK2のクロックの立上り時に基準信号CK1を検出した信号である。データ信号DATAのHi期間は、調整信号CK2が基準信号CK1に対して遅れていることを示す。Q1は、フリップフロップ401の出力信号であり、データ信号DATAをクロック信号CK3で検出した信号である。Q8は、フリップフロップ408の出力信号であり、フリップフロップ401の出力信号を7クロック分遅延させた信号である。クロック信号CK3は、基準信号CK1と同じ周波数であり、位相が反転した信号である。信号CK4は、フリップフロップ408の出力信号がHiである期間のみクロック信号CK3を2分周した信号である。カウント値は、カウンタ413が入力されるクロック信号に同期してカウントした値を示す。
【0031】
準備期間501において、セレクタ412はクロック信号CK3を選択し、カウンタ413に信号CK4として出力する。カウンタ413は、入力される信号CK4をカウントし得られたカウント値を含む制御信号CTLを遅延部11に出力する。例えば、最初のクロック信号CK3がHiになることで、カウント値が0となる。これにより、制御信号CTLとして遅延部11に出力されるカウント値は0となり、遅延部11はスイッチ20を閉じる。図2に示される遅延部11では、調整信号CK2はバッファ200のみを通過した信号であるのに対して、基準信号CK1はバッファ211、212、213の3つを通過した信号である。これにより、図5に示されるように調整信号CK2は、基準信号CK1より△t0だけ進んだ信号となる。同様に、CK3に同期してカウント値が増加するごとに、調整信号CK2が通過するバッファの数が増加し、基準信号CK1に対して徐々に遅れた信号として調整信号CK2が出力される。以上のようにして、図5に示される調整信号CK2が得られる。
【0032】
また、遅延部11から出力された基準信号CK1と調整信号CK2とは、位相判定部13に入力される。位相判定部13は、前述したようにフリップフロップで構成され、調整信号CK2の立ち上がり時の基準信号CK1の値を保持し出力する。これにより、図5に示されるデータ信号DATAが得られる。データ信号DATAの立上り時は、基準信号CK1と調整信号CK2との位相差がほぼ0度であることを示す。データ信号DATAの立下り時は、基準信号CK1と調整信号CK2との位相差がほぼ180度であることを示す。遅延部11は基準信号CK1に対して徐々に遅れるように調整信号CK2を出力させたことから、データ信号DATAのHi期間の中間地点が、位相差90度であることを示す。
【0033】
位相判定部13から出力されるデータ信号DATAは、検出部14に入力される。検出部14は、遅延部11の分解能と同じ個数のフリップフロップが多段に構成される。
【0034】
フリップフロップ408の出力信号Q8がLoからHiに変わる時点で、準備期間501が終了し、調整期間502が開始される。セレクタ412は、調整期間502において、クロック信号CK3が2分周された信号を選択することで、信号CK4は図5に示される通りになる。カウンタ413は、準備期間501が終了された時点のカウント値を保持しており、調整期間502においても、保持されたカウント値を初期値としてカウント動作を続ける。
【0035】
出力信号Q8がHiからLoに変わる時点で、調整期間502が終了し、保持期間503が開始される。保持期間503が開始されると、カウンタ413は信号CK4に同期してカウントするのを停止し、保持期間503の開始時に得られているカウント値を保持する。
【0036】
図5に示される例では、保持期間503において、カウンタ413が保持するカウント値は4である。これにより、遅延部11は、制御信号CTLとしてカウント値4を受け取り、スイッチ24を閉じる。以後、カウント値は4で保持されるので、遅延部11は、スイッチ24を閉じたままであり、互いの位相差がおよそ90度の基準信号CK1と調整信号CK2とを出力し続ける。
【0037】
以上のように、遅れ期間中に第1の時間間隔を周期とするクロック信号CK3に同期してカウントすると、遅れ期間終了時のカウント値は、基準信号CK1に対する調整信号CK2の位相差が180度であることを示す。一方で、第2の時間間隔を周期とする、クロック信号CK3を2分周した信号に同期して、遅れ期間中すなわち調整期間中にカウントすると、遅れ期間終了時のカウント値が、基準信号CK1に対する調整信号CK2の位相差が90度であることを示す。したがって、調整期間終了時のカウント値に対応する位相差を選択することで、遅延部11は、予め定められた位相差を有する2つのクロック信号を出力することができる。これにより、本実施の形態の位相調整装置によると、2つの信号の位相差を自動で調整することが可能となる。
【0038】
(実施の形態2)
本実施の形態の位相調整装置は、実施の形態1の位相調整装置に比べてより短い期間で位相差の調整を行い、予め定められた位相差を有する2つのクロック信号を出力する装置である。
【0039】
図6は、本実施の形態の位相調整装置が備える制御部の構成図である。本実施の形態の位相調整装置は、図1の位相調整装置に比べて制御部の構成が異なっている。位相判定部は、図1に示される位相判定部13と同様であり、省略されている。図6の制御部600は、図4の制御部12と比べて、検出部14が削除され、カウンタ413の代わりに第1カウンタ601、第2カウンタ602及びセレクタ603が追加された点が異なる。以下では、図4の制御部12と同様の構成については説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
【0040】
第1カウンタ601は、第1の時間間隔を周期とするクロック信号CK3が入力され、クロック信号CK3に同期してカウントする。
【0041】
第2カウンタ602は、第2の時間間隔を周期とする信号CK4が入力され、信号CK4に同期してカウントする。また、後述する準備・調整期間が終了時にカウント動作を停止する。
【0042】
セレクタ603は、後述する準備・調整期間において、第1カウンタ601から入力されるカウント値を選択し、制御信号CTLとして遅延部11に出力する。また、準備・調整期間が完了時に、第2カウンタ602から入力されるカウント値を選択し、以後、選択されたカウント値を保持し、制御信号CTLとして保持されたカウント値を遅延部11に出力し続ける。
【0043】
以下では、本実施の形態の位相調整装置の動作について、図7のタイムチャートを用いて説明する。
【0044】
本実施の形態の位相調整装置の動作は、準備・調整期間701及び保持期間702に分けられる。準備・調整期間701は、遅延部11が調整可能な位相差を段階的に変化させ、遅れ期間又は進み期間を検出し、かつ、該遅れ期間又は進み期間において、第2の時間間隔で遅延量を段階的に変化させることで、遅延部11が予め定められた位相差に調整信号CK2を調整するための制御信号CTLを生成する期間である。保持期間702は、カウント値を保持することで、遅延部11が常に一定の位相差を有する2つのクロック信号を出力する期間である。
【0045】
また、図7に示される第1カウント値は、第1カウンタ601のカウント値である。第2カウント値は、第2カウンタのカウント値である。
【0046】
準備・調整期間701において、第1カウンタ601はクロック信号CK3に同期してカウントする。準備・調整期間701では、セレクタ603は、第1カウント値を選択し、制御信号CTLとして遅延部11に第1カウント値を出力する。第1カウント値がクロック信号CK3に同期して増加することにより、遅延部11はスイッチ20〜27を順に閉じていく。これにより、図7に示されるように、調整信号CK2は、基準信号CK1に対して徐々に遅れた信号となる。
【0047】
また、遅延部11から出力された基準信号CK1と調整信号CK2とは、位相判定部13に入力される。位相判定部13は、前述したようにフリップフロップで構成され、調整信号CK2の立ち上がり時の基準信号CK1の値を保持し出力する。これにより、図7に示されるデータ信号DATAが得られる。
【0048】
準備・調整期間701において、セレクタ412は、データ信号DATAがLoである場合、クロック信号CK3を選択し、データ信号DATAがHiである場合、分周器411によって分周された信号を選択する。これにより、信号CK4として第2カウンタ602に出力された信号CK4は、図7に示される通りになる。第2カウンタ602は、入力される信号CK4に同期してカウントする。これにより、得られる第2カウント値は図7に示される通りになる。
【0049】
データ信号DATAがHiからLoに切り替わった時点で準備・調整期間701は終了され、保持期間702が開始される。
【0050】
保持期間702において、セレクタ603は、第2カウント値を選択する。また、第2カウンタは、保持期間702においてカウントを停止し、第2カウント値を保持する。図7の例では、第1カウント値は4で保持されるので、遅延部11はスイッチ24を閉じることで、基準信号CK1に対する位相差が90度である調整信号CK2を出力し続ける。
【0051】
以上のように、本実施の形態の自動調整装置は、カウンタを2つ備えることで、遅れ期間又は進み期間の検出と、予め定められた位相差へ調整するための制御信号の生成とを同時に実行することができる。これにより、実施の形態1に比べて、短い期間で位相差の調整を行うことができ、予め定められた位相差を有する2つのクロック信号を出力することができる。
【0052】
以上、本発明の自動調整装置について実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも本発明の範囲に含まれる。
【0053】
例えば、本実施の形態ではカウンタ413としてアップカウンタが用いられたが、ダウンカウンタとしてもよい。これにより、カウント値が段階的に減少することで、遅延部11が選択する遅延量が段階的に小さくなる。すなわち、基準信号CK1に対する調整信号CK2の位相が段階的に進むような調整信号CK2を、遅延部11は出力することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、2つのクロック信号の位相差のずれを内部で自動的に調整する自動調整装置であって、例えば、DDR−SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)などの半導体集積回路に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施の形態1の位相調整装置の構成図である。
【図2】遅延部11の一例を示す図である。
【図3】位相判定部13の一例を示す図である。
【図4】制御部12の一例を示す図である。
【図5】実施の形態1の位相調整装置の動作を示すタイムチャートである。
【図6】実施の形態2の制御部12の一例を示す図である。
【図7】実施の形態2の位相調整装置の動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0056】
1 位相調整装置
11 遅延部
12、600 制御部
13 位相判定部
14 検出部
15 位相設定部
20、21、22、23、24、25、26、27 スイッチ
200、201、202、203、204、205、206、207、210、211、212、213 バッファ
401、402、403、404、405、406、407、408 フリップフロップ
411 分周器
412、603 セレクタ
413 カウンタ
501 準備期間
502 調整期間
503、702 保持期間
601 第1カウンタ
602 第2カウンタ
701 準備・調整期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1クロック信号に対する第2クロック信号の位相差を予め定められた位相差に調整する位相調整装置であって、
前記第1クロック信号に対する前記第2クロック信号の遅延量を選択的に変更可能な遅延手段と、
前記遅延量を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
準備モードにおいて、前記遅延量を第1の時間間隔で段階的に変化させ、前記第2クロック信号の位相が、進み状態から遅れ状態になった時点から再度進み状態になるまでの期間である遅れ期間、又は、遅れ状態から進み状態になった時点から再度遅れ状態になるまでの期間である進み期間を検出し、
調整モードにおいて、前記遅れ期間又は前記進み期間と同じ長さの期間において第2の時間間隔で前記遅延量を段階的に増加又は減少させることで、前記第1クロック信号に対する前記第2クロック信号の位相差を予め定められた位相差に調整し、
前記第2の時間間隔と前記第1の時間間隔との比は、180度と予め定められた位相差との比に等しい
ことを特徴とする位相調整装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記準備モードにおいて前記第1の時間間隔を周期とするクロック信号を、前記調整モードにおいて前記第2の時間間隔を周期とするクロック信号を選択する選択部と、
選択されたクロック信号に同期してカウントし、遅延量を指示する制御信号としてカウント値を前記遅延手段に出力する第1カウンタ部と、
前記準備モードにおいて前記第1クロック信号に対する前記第2クロック信号の位相が進み状態であるか遅れ状態であるかを判定する位相判定部と、
前記位相判定部の判定結果に基づいて前記遅れ期間又は前記進み期間を検出する検出部とを備え、
前記制御手段は、前記調整モードにおいて、前記遅れ期間又は前記進み期間の開始時におけるカウント値を初期値とし、当該期間と同じ長さの期間だけ前記第1カウンタ部にカウント動作させる
ことを特徴とする請求項1記載の位相調整装置。
【請求項3】
前記制御手段は、さらに、
前記第1の時間間隔を周期とするクロック信号を分周することで、前記第2の時間間隔を周期とするクロック信号を出力する分周部を備え、
前記選択部は、前記調整モードにおいて前記分周部によって分周されたクロック信号を選択する
ことを特徴とする請求項2記載の位相調整装置。
【請求項4】
前記検出部は、出力端子が次段の入力端子に接続される複数段のフリップフロップを備え、
前記第1の時間間隔を周期とするクロック信号が各フリップフロップのクロック端子に入力され、初段のフリップフロップの入力端子に前記位相判定部の判定結果が入力され、最終段のフリップフロップから出力されるパルス幅は、前記遅れ期間又は前記進み期間を示し、
前記フリップフロップの個数は、少なくとも前記遅延手段が変更可能な遅延量の数である
ことを特徴とする請求項2記載の位相調整装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記準備モードにおいて前記第1の時間間隔毎にカウントする第1カウンタ部と、
前記調整モードにおいて前記第2の時間間隔毎にカウントする第2カウンタ部と、
前記準備モード及び前記調整モードにおいて第1カウンタ部のカウント値を選択し、前記調整モードの完了時に、第2カウンタ部のカウント値を選択し、選択したカウント値を、遅延量を指示する制御信号として前記遅延手段に出力する選択部と、
前記準備モードにおいて、前記第1クロック信号に対する前記第2クロック信号の位相が進み状態であるか遅れ状態であるかを判定することで、前記遅れ期間又は前記進み期間を検出する位相判定部とを備え、
前記制御手段は、
前記調整モードの動作として、前記遅れ期間又は前記進み期間の開始時点における第1カウンタ部のカウント値を初期値として前記第2の時間間隔毎に前記第2カウンタ部にカウント動作をさせ、当該期間の終了時点で前記第2カウンタ部のカウント動作を停止させる
ことを特徴とする請求項1記載の位相調整装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記遅れ期間または前記進み期間の開始時点までは、第2カウンタ部に第1カウンタ部と同じカウント動作をさせる
ことを特徴とする請求項5記載の位相調整装置。
【請求項7】
前記第1カウンタ部は、前記第1の時間間隔を周期とするクロック信号に同期してカウントし、
前記制御手段は、さらに、
前記第1の時間間隔を周期とするクロック信号を分周することで、前記第2の時間間隔を周期とするクロック信号を出力する分周部を備え、
前記第2カウンタ部は、前記分周部によって分周されたクロック信号に同期してカウントする
ことを特徴とする請求項5記載の位相調整装置。
【請求項8】
前記分周部は、前記予め定められた位相差が180/n度である場合、前記第1の時間間隔を周期とするクロック信号をn分周する
ことを特徴とする請求項3又は7記載の位相調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−44660(P2009−44660A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209968(P2007−209968)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】