説明

位置合わせ方法、位置合わせ装置、露光方法、及び露光装置

【課題】 基板上の位置に応じてスケーリングが異なる場合であっても、基板上の各ショット領域を所定の位置に高精度に位置合わせする。
【解決手段】 ウエハ8上の被露光領域を、ウエハ8の中心を原点とする第1象限Q1〜第4象限Q4の内の2つ含む部分領域px1,px2,py1,py2に分け、各部分領域px1,px2,py1,py2について個別にスケーリング補正値を求める。このスケーリング補正値と、全サンプルショットSA〜SAの計測値とを用いてEGA演算を行って、ウエハ8上のショット領域の設計値を実際に位置合わせすべき座標値に変換する変換行列を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば基板上の各ショット領域に順次マスク又はレチクルのパターンを転写する露光装置において、統計処理により算出した配列座標に基づいてウエハ上の各ショット領域を順次露光位置に位置合わせする場合に適用して好適な位置合わせ方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子、液晶表示素子、撮像素子(CCD:Charge Coupled Device等)、薄膜磁気ヘッド等の各種デバイスの多くは露光装置を用いて基板上に多数層のパターンを重ねて露光転写することにより製造される。このため、2層目以降のパターンを基板上に露光転写する際には、基板上の既にパターンが形成された各ショット領域とマスクのパターン像との位置合わせ、即ち基板とレチクルとの位置合わせ(アライメント)を正確に行う必要がある。1層目のパターンが露光転写された基板上には、アライメントマークと呼ばれる位置合わせ用のマークがそれぞれ付設された複数のショット領域(チップパターン)が形成されており、これらショット領域は予め基板上に設定された配列座標に基づいて規則的に配列されている。
【0003】
しかしながら、基板上のショット領域の配列には、以下の4つの要因による配列誤差が生じていることがある。
(A)基板の残存回転誤差Θ
(B)ステージ座標系(又はショット配列)の直交度誤差Ω
(C)基板の線形伸縮(スケーリング)Γx,Γy
(D)基板(中心位置)のオフセット(平行移動)Ox,Oy
【0004】
また、個々のショット領域には、以下の3つの要因による位置誤差が生じていることがある。
(a)ショット領域の残存回転誤差θ
(b)ショット領域内における直交度誤差ω
(c)ショット領域の線形伸縮(スケーリング)γx,γy
【0005】
以上の誤差が生じていると、基板上における各ショット領域の設計上の座標値(ショット配列)に基づいて基板を歩進(ステッピング)させても、基板が正確に位置合わせされるとは限らない。そこで、従来は基板上から選択された複数のショット領域(サンプルショット)について実測した計測結果を統計処理して基板上における全ショット領域の座標値を求め、この座標値に従って各ショット領域の位置合わせを行うエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA)方式が用いられている。
【0006】
ところで、従来のEGA方式で考慮されるスケーリングは、基板に関してはX方向のスケーリングΓx及びY方向のスケーリングΓyの2つであり、ショット領域に関してはX方向のスケーリングγx及びY方向のスケーリングγyの2つである。このため、例えば、基板のX方向における両端でのスケーリングの度合いが異なり、又は基板のY方向における両端でのスケーリングの度合いが異なるような歪みが生じていた場合には、従来のEGA方式ではスケーリングの違いによるショット領域の位置誤差を十分に補正できない場合があるという問題があった。この問題は、EGA方式においてショット領域内のスケーリングを考慮する場合にも同様に生ずる問題である。
【0007】
以上の問題を解消するために、下記の特許文献1に開示されているように、基板上の被露光領域を複数の領域に分割し、個々の分割領域に対して個別にEGA方式を適用することが考えられる。
【0008】
しかしながら、各分割領域に対して個別にEGA方式を適用すると、十分な精度を確保するためには個々の分割領域毎にサンプルショットを所定数以上設定する必要があるため、サンプルショットの数が多くなって計測に長時間を要し、最終的にはスループットが低下するおそれがある。また、分割領域の各々対して個別にEGA方式を適用しているため、各分割領域間の関連性が全くなくなってしまい、個々の分割領域にEGA方式を適用して得られる座標値は基板上において一貫性が無くなり、その結果としてアライメント精度の低下を招いてしまう場合があるという問題があった。
【0009】
よって、本発明の目的は、物体上の被加工領域の位置合わせの高精度化を、スループットの低下を抑制しつつ、達成することである。
【特許文献1】特開平8−316122号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点によると、物体(8)上に配列された複数の被加工領域(ES〜ES)の各々を、所定の加工位置に対して位置合わせする位置合わせ方法において、前記被加工領域毎に設定された計測点(Mxi,Myi)のうち、予め選択された所定数のサンプル計測点(SA〜SA)の位置を計測する第1工程(S11)と、前記物体上を、前記サンプル計測点を複数含む複数の部分領域(px1、px2、py1、py2)に分け、該部分領域の各々に含まれるサンプル計測点の計測位置及び該サンプル計測点の設計上の設計位置を演算パラメータとして該部分領域毎に統計演算を行い、スケーリング(Γx,Γy)についての第1補正値を該部分領域単位でそれぞれ算出する第2工程(S13〜S16)と、前記サンプル計測点についての前記計測位置、前記設計位置及び前記第1補正値を演算パラメータとして統計演算を行い、前記被加工領域の配列のオフセット(Ox,Oy)、ローテーション(Θ)及び直交度(Ω)についての補正値のうちの少なくとも一つを含む第2補正値を前記物体単位で算出する第3工程(S17)と、を備える位置合わせ方法が提供される。尚、本発明において、「部分領域に分ける」とは、サンプル計測点の一部が複数の部分領域に属するように、部分領域の一部が他の部分領域の一部と重複するように分ける場合と、全く重複しないように分ける、即ち分割する場合の双方が含まれる。
【0011】
本発明では、スケーリング(線形伸縮)については、物体上を複数に分けた各部分領域毎に補正値(第1補正値)を求めるようにしたので、物体上の位置に応じてスケーリングが異なる場合に、当該位置に対応した最適な補正を実施することが可能となるとともに、オフセット、ローテーション及び直交度については、物体全体としてこれらの少なくとも一つを含む補正値(第2補正値)を求めるようにしたので、物体全体として一貫性を損なうことなく最適な補正を実施することが可能となり、位置合わせの精度を向上することができる。また、第2工程において、サンプル計測点の一部が複数の部分領域に属するように部分領域の一部が他の部分領域の一部と重複するように分けることにより、実質的なサンプル計測点の数を低減することができ、その結果として、サンプル計測点の計測時間を短縮することができ、スループットの低下を回避することができる。
【0012】
本発明の第2の観点によると、物体(8)上に配列された複数の被加工領域(ES〜ES)の各々を、所定の加工位置に対して位置合わせする位置合わせ方法において、前記被加工領域内に設定された計測点のうち、予め選択された所定数のサンプル計測点(IM〜IM)の位置を計測する第1工程(S21)と、前記被加工領域上を、前記サンプル計測点をそれぞれ複数含む複数の部分領域(psx1、psx2、psy1、psy2)に分け、該部分領域の各々に含まれるサンプル計測点の計測位置及び該サンプル計測点の設計上の設計位置を演算パラメータとして該部分領域毎に統計演算を行い、スケーリング(γx,γy)についての第1補正値を該部分領域単位でそれぞれ算出する第2工程(S24〜S27)と、前記サンプル計測点についての前記計測位置、前記設計位置及び前記第1補正値を演算パラメータとして統計演算を行い、前記被加工領域のローテーション(θ)及び直交度(ω)についての補正値の少なくとも一方を含む第2補正値を該被加工領域単位で算出する第3工程(S28)と、を備える位置合わせ方法が提供される。尚、本発明において、「部分領域に分ける」とは、サンプル計測点の一部が複数の部分領域に属するように、部分領域の一部が他の部分領域の一部と重複するように分ける場合と、全く重複しないように分ける、即ち分割する場合の双方が含まれる。
【0013】
本発明では、スケーリング(線形伸縮)については、被加工領域上を複数に分けた各部分領域毎に補正値(第1補正値)を求めるようにしたので、被加工領域上の位置に応じてスケーリングが異なる場合に、当該位置に応じた最適な補正を実施することが可能となるとともに、ローテーション及び直交度については、被加工領域全体としてこれらの少なくとも一方を含む補正値(第2補正値)を求めるようにしたので、被加工領域全体として一貫性を損なうことなく最適な補正を実施することが可能となり、位置合わせの精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る露光装置の概略構成図である。尚、以下の説明では、マスクとしてのレチクル2に形成されたパターンを投影光学系7を介して感光性材料(レジスト)が塗布された物体としてのウエハ8上にステップ・アンド・リピート方式で転写する露光装置(ステッパー)に本発明を適用した場合を例に挙げて説明する。
【0015】
また、以下の説明においては、必要に応じて図中に設定されたXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。XYZ直交座標系は、X軸及びY軸がウエハ8に対して平行となるよう設定され、Z軸がウエハ8に対して直交する方向に設定されている。図中のXYZ座標系は、実際にはXY平面が水平面に平行な面に設定され、Z軸が鉛直上方向に設定される。
【0016】
図1に示す本実施形態の露光装置は、ArFエキシマレーザ(波長193nm)等の光源を含んで構成され、光源から射出される露光光をレチクル2に導く照明光学系1を備えている。光源から射出された露光光ELは、照明光学系1を通過して投影光学系7の物体面に配置されるレチクル2に導かれてレチクル2をほぼ均一な照度で照明する。レチクル2はレチクルステージ3上に保持され、レチクルステージ3はベース4上の2次元平面内で移動及び微小回転ができるように支持されている。装置全体の動作を制御する主制御系6が、ベース4上の駆動装置5を介してレチクルステージ3の動作を制御する。
【0017】
レチクル2を透過した光束は、投影光学系7を介してウエハ8上に導かれ、これによってレチクル2のパターン像が投影光学系7の像面に配置されるウエハ8上に投影される。投影光学系7は、レチクル2のパターン像を所定の投影倍率αでウエハ8上に投影するものであって、例えば両側テレセントリックな光学系である。投影光学系7は縮小系であり、投影倍率は、例えば1/4又は1/5に設定されている。
【0018】
ウエハ8はウエハホルダ9を介してウエハステージ10上に載置されている。ウエハステージ10は、投影光学系7の光軸AXに垂直な面内でウエハ8を2次元的に位置決めするXYステージ、投影光学系7の光軸AXに平行な方向(Z方向)にウエハ8を位置決めするZステージ、及びウエハ8をX軸、Y軸、又はZ軸の周りで微小回転させるステージ等から構成されている。
【0019】
ウエハステージ10上面の一端には移動ミラー11が固定されており、移動ミラー11に対向するようにレーザ干渉計12が配置されている。尚、図1では図示を簡略化しているが、移動鏡11はX軸に垂直な反射面を有する平面鏡及びY軸に垂直な反射面を有する平面鏡より構成されている。また、レーザ干渉計12は、X軸に沿って移動鏡11にレーザビームを照射する2個のX軸用のレーザ干渉計及びY軸に沿って移動鏡11にレーザビームを照射するY軸用のレーザ干渉計より構成されており、X軸用の1個のレーザ干渉計及びY軸用の1個のレーザ干渉計により、ウエハステージ10のX座標及びY座標が計測される。レーザ干渉計12で計測されるX座標及びY座標よりなる座標系(X,Y)を、以下ではステージ座標系又は静止座標系と呼ぶことにする。
【0020】
また、X軸用の2個のレーザ干渉計の計測値の差により、投影光学系7の光軸AX周りのウエハステージ10の回転角が計測される。レーザ干渉計12により計測されたX座標、Y座標、及び回転角の情報が座標計測回路12a及び主制御系6に供給され、主制御系6は、供給された座標をモニターしつつ駆動装置13を介して、ウエハステージ10の位置決め動作を制御する。尚、図1には示していないが、レチクル側にもウエハ側とほぼ同様の干渉計システムが設けられている。
【0021】
投影光学系7には結像特性制御装置14が装着されている。この結像特性制御装置14は、例えば投影光学系7を構成するレンズ群の内の所定のレンズ群の間隔を調整し、又は所定のレンズ群の間のレンズ室内における気圧を調整することにより、投影光学系7の投影倍率、歪曲収差等の光学特性の調整を行う。結像特性制御装置14の動作も主制御系6により制御されている。
【0022】
また、投影光学系7の側方にはオフ・アクシス方式のアライメント系15が配置されている。このアライメント系15は、例えばハロゲンランプ等の広帯域波長の光を射出する光源16を備えており、光源16から射出された照明光がコリメータレンズ17、ビームスプリッター18、ミラー19、及び対物レンズ20を介してウエハ8上に形成された計測点としてのアライメントマークAM上に照射される。対物レンズ20の光軸20aと投影光学系7の光軸AXとの間隔であるベースライン量は予め高精度に計測されている。アライメントマークAMからの反射光は、対物レンズ20、ミラー19、ビームスプリッター18、及び集光レンズ21を介して指標板22上に導かれ、指標板22上にアライメントマークAMの像が結像される。
【0023】
指標板22を透過した光は、第1リレーレンズ23を経てビームスプリッター24に向かい、ビームスプリッター24を透過した光が、X軸用第2リレーレンズ25Xにより2次元CCDよりなるX軸用撮像素子26Xの撮像面上に集束され、ビームスプリッター24で反射された光が、Y軸用第2リレーレンズ25Yにより2次元CCDよりなるY軸用撮像素子26Yの撮像面上に集束される。撮像素子26X,26Yの撮像面上にはそれぞれアライメントマークAMの像及び指標板22上の指標マークの像が重ねて結像される。撮像素子26X,26Yの撮像信号は共に座標計測回路12aに供給される。
【0024】
図2は、図1の指標板22上のパターンの一例を示す図である。図2において、6本の直線パターンよりなるウエハマークMxの像MxPが結像され、この像MxPのピッチ方向であるXP方向、その像MxPの長手方向であるYP方向が、それぞれ図1のウエハステージ10のステージ座標系のX方向及びY方向と共役になっている。また、ウエハマーク像MxPをXP方向に挟むように2個の指標マーク31a,31bが形成され、ウエハマーク像MyPをYP方向に挟むように2個の指標マーク32a,32bが形成されている。
【0025】
ここで、XP方向で指標マーク31a,31b及びウエハマーク像MxPを囲む検出領域33X内の像は図1のX軸用撮像素子26Xで撮像される。一方、YP方向で指標マーク32a,32b及びY軸用のウエハマークMyの像を囲む検出領域33Y内の像は図1のY軸用撮像素子26Yで撮像される。
【0026】
更に、撮像素子26X,26Yの各画素から光電変換信号を読み取る際の走査方向はそれぞれXP方向及びYP方向にそれぞれ設定されており、撮像素子26X,26Yの撮像信号を処理することにより、X軸用のウエハマーク像MxPと指標マーク31a,31bとのXP方向の位置ずれ量、及びY軸用のウエハマークMyの像と指標マーク32a,32bとのYP方向の位置ずれ量を求めることができる。
【0027】
従って、図1において、座標計測回路12aは、ウエハ8上のウエハマークMxの像MxPと指標板22上の指標マーク31a,31bとの位置関係及びそのときのレーザ干渉計12の計測結果より、そのウエハマークMxのステージ座標系(X,Y)上でのX座標を求め、このように計測されたX座標を主制御系6に供給する。同様にして、Y軸用のウエハマークのステージ座標系(X,Y)上でのY座標も計測されて、主制御系6に供給される。
【0028】
主制御系6は、ウエハ8上に設定された被加工領域としてのショット領域の内から予め選択された複数のショット領域(サンプルショット)のアライメント系15を用いた計測結果に基づいてEGA(エンハンスト・グローバル・アライメント)演算を行い、ウエハ8上におけるショット領域の配列を算出する。そして、この算出結果に従ってウエハステージ10を移動させて各ショット領域を被加工位置としての露光領域(投影光学系7の投影領域)に位置合わせしつつ露光処理を行う。ここで、主制御系6で行われるEGA方式を概説すると以下の通りである。
【0029】
前述したウエハ8上におけるショット領域の配列誤差を生じさせる誤差量は6つのパラメータ(Θ、Ω、Γx、Γy、Ox、Oy)で表すことができるため、EGA方式においては、これらのうち4個のパラメータで表される要素からなる2行×2列の変換行列Aと、オフセット(平行移動)Ox,Oy を要素とする2行×1列の変換行列Oとを考える。これらの変換行列A,Oを用いると、ウエハ8上の各ショット領域の設計上の配列座標値(Dx,Dy)(n=0,1,2,……)と、位置合わせすべき実際の配列座標値(Fx,Fy)との関係は(1)式で表される。
【0030】
【数1】

【0031】
EGA方式では、サンプルショットについて実測して得られた配列座標値(FMx,FMy)と、そのショット領域の設計上の配列座標値を上記(1)式に代入して得られた計算上の配列座標値(Fx,Fy)との平均的な偏差が最小になるように、最小自乗法を用いて変換行列A,Oを決定する。以下、この演算をEGA演算という。ここで、上記の実測して得られた配列座標値(FMx,FMy)から上記の計算上の配列座標値(Fx,Fy)を差し引いた値をアライメント誤差と考える。上記の変換行列A,Oが決定されると、この決定された変換行列A,Oと設計上の配列座標値(Dx,Dy)とに基づいて、上記(1)式から実際に位置合わせすべき位置の計算上の配列座標値(Fx,Fy)を算出し、その算出された座標値をもとにウエハ8上の各ショット領域を位置決めする。
【0032】
また、主制御系6は、ウエハ上の被露光領域(ショット領域が形成された領域)を複数の部分領域に分けて各々の部分領域のスケーリングΓx,Γyを個別に求め、各部分領域のスケーリングΓx,Γyを考慮して他の4つのパラメータΘ、Ω、Ox、Oyを求めるEGA演算を行う。これは、ウエハ8のX方向の両端におけるスケーリング及びY方向の両端におけるスケーリングの度合いの違いを考慮してアライメント精度の向上を図るためである。
【0033】
次に、露光対象としてのウエハ8上に設定されるショット領域について、図3を参照して説明する。図3に示す通り、ウエハ8上には図1に示すステージ座標系(X,Y)とは異なる座標系(x,y)が設定されており、この座標系(x,y)に沿って規則的にショット領域ES,ES,…,ES(Mは3以上の整数)が形成されている。各ショット領域ES(i=1〜M)にはそれまでの工程によりそれぞれチップパターンが形成されている。また、各ショット領域ESはx方向及びy方向に伸びる所定幅のストリートライン(スクライブライン)で区切られており、各ショット領域ESに接するx方向に伸びたストリートラインの中央部にX軸、Y軸の2次元方向計測用のウエハマークMiが形成されている。
【0034】
X軸用のウエハマークMx及びY軸用のウエハマークMyはそれぞれx方向に6本、y方向に3本の直線パターンを並べたものであり、これらのパターンはウエハ8の下地に凹部又は凸部のパターンとして形成されている。ウエハ8上の座標系(x,y)でのウエハマークMiのx座標(設計上の座標値)x、及びy座標(設計上の座標値)yは既知であり、図1の主制御系6内の記憶部に記憶されている。この場合、ウエハマークMiのx座標、及びy座標を、それぞれショット領域ESのx座標及びy座標とみなす。
【0035】
また、ウエハ8上に設定された複数のショット領域ES〜ESの内、予め所定数のショット領域がサンプルショット(サンプル領域)として選択されている。図3に示す例では、斜線を付した9個のショット領域がサンプルショットSA〜SAとして選択されている。サンプルショットSA〜SAの各々にはウエハマークMx,Myがそれぞれショットに付随して設けられている。例えば、サンプルショットSAには、ウエハマークMx,Myがそれぞれ設けられている。また、ウエハ8上には大まかな位置合わせ(グローバル・アライメント)を行うための2つの2次元のグローバル・アライメントマーク(不図示)が形成されている。これら2つのグローバル・アライメントマークのウエハ8上の座標系(x,y)での座標値は既知である。
【0036】
上述した通り、主制御系6はEGA演算時にウエハ8上の被露光領域を複数の領域に分けているが、本実施形態においては、ウエハ8上の被露光領域を、+X部分領域、−X部分領域、+Y部分領域、及び−Y部分領域の4つの領域に分けるものとする。図4は、EGA演算時に主制御系6によって分けられる部分領域の一例を示す図である。尚、図4においては、ウエハ8上に設定されたショット領域の内のサンプルショットSA〜SAを模式的に図示している。
【0037】
いま、図4に示す通り、ウエハ8の中心(ウエハ8上に配列されたショット領域の配列の中心)を通りX軸に平行な線及びウエハ8の中心を通りY軸に平行な線の2つの線によって分割される第1象限Q1〜第4象限Q4を考える。上記の+X部分領域px1は第1象限Q1と第4象限Q4とを含む領域であり、−X部分領域px2は第2象限Q2と第3象限Q3とを含む領域であり、+Y部分領域py1は第1象限Q1と第2象限Q2とを含む領域であり、−Y部分領域py2は第3象限Q3と第4象限Q4とを含む領域である。
【0038】
+X部分領域px1、−X部分領域px2、+Y部分領域py1、及び−Y部分領域py2の各々には6個のサンプルショットが含まれる。具体的には、+X部分領域px1にはサンプルショットSA〜SA,SA,SA,SAが含まれ、−X部分領域px2にはサンプルショットSA,SA〜SA,SA,SAが含まれ、+Y部分領域py1にはサンプルショットSA〜SA,SA,SAが含まれ、−Y部分領域py2にはサンプルショットSA,SA,SA,SA,SA,SAが含まれる。
【0039】
次に、上記構成の露光装置において、露光対象とするウエハ8上に設定された各ショット領域の位置決めを行って各ショット領域を露光することにより、各ショット領域の各々にレチクル2のパターンを転写する際の動作について、図5に示すフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0040】
露光処理が開始されると、まず主制御系6は露光対象とするウエハ8を図1のウエハホルダ9上にロードする。ウエハ8のロードが完了すると、まず主制御系6は、ウエハ8のスケーリングを等方的とみなし(Γx=Γy)、ステージ座標系の直交度誤差Ωを0とみなして、前述した(1)式の未知の変換パラメータを4個にした上で、駆動装置13を駆動してウエハステージ10をXY平面内で移動させて、ウエハ8に形成されたグローバル・アライメントマークを順にアライメント系15の計測視野内に配置し、アライメント系15を介してグローバル・アライメントマークのステージ座標系(X,Y)での座標値を計測する。この計測結果より、主制御系6は(1)式の簡略化された4個の変換パラメータの値を決定する。
【0041】
その後、主制御系6は、これら4個の変換パラメータ、及びウエハマークMiの設計上のx座標、及びy座標を順次(1)式に代入することにより、ステージ座標系(X,Y)上でのウエハマークMiの計算上のX座標の初期値、及びY座標の初期値を算出する。
【0042】
以上の処理が終了すると、主制御系6はステージ座標系(X,Y)上での設計上の座標値の初期値に基づいてウエハステージ10を駆動し、サンプルショットSA〜SAに対して設けられているウエハマークMx及びウエハマークMyを順次アライメント系15の計測視野内に追い込み、アライメント系15を介して、各サンプルショットSA〜SAのステージ座標系(X,Y)上での座標値を高い精度で計測する(ステップS11)。尚、本実施形態においてサンプルショットSA〜SAの座標値を計測するとは、各サンプルショットSA〜SAに付設されたX軸用及びY軸用のウエハマークのステージ座標系(X,Y)上での座標値を計測することを意味する。
【0043】
サンプルショットSA〜SAの計測を終えると、主制御系6は計測値の各々とサンプルショットSA〜SAの各々の設計値とを前述した(1)式に代入してEGA演算を行って(1)式中の変換行列A,Oを決定する。つまり、ここでは、ウエハ8上の被露光領域を部分領域に分けずにEGA演算を行う。ここで行われるEGA演算は、位置合わせ誤差を生じさせる要因である、ウエハ8の残存回転誤差Θ、ステージ座標系(X,Y)の直交度誤差Ω、ウエハ8の線形伸縮(スケーリング)Γx,Γy、及びウエハ8のオフセットOx,Oyからなる6つのパラメータを考慮したものであり、これらを用いると上記(1)式は以下の(2)式で表される。
【0044】
【数2】

【0045】
尚、このEGA演算において、n番目のサンプルショットSAのステージ座標系上で計測された座標値を(XM,YM)とし、n番目のサンプルショットSAの設計上の座標値を上記の(2)式に代入して計算される座標値を(X,Y)とすると、残留誤差成分は以下の(3)式で表される。但し、本実施形態ではnの値は9である。
【0046】
【数3】

【0047】
上記(3)式に示す残留誤差成分が最小になるように、主制御系6は(2)式中の変換行列の各パラメータを決定する。尚、(2)式に示す変換行列A,Oは、設計上の配列座標値(Dx,Dy)を実際に位置合わせすべき位置の計算上の配列座標値(Fx,Fy)に変換する行列であるため、ウエハ8上におけるショット領域の配列誤差を補正する補正値ということができる。
【0048】
EGA演算を終えると、主制御系6は、各サンプルショットSAの計測された座標値(XM,YM)から、上記(3)式に示す残留誤差成分が最小になるように求めた変換行列中のパラメータを用いて計算した計算上の配列座標値(X,Y)を差し引いた残留成分を求め、これらの残留成分の2乗和を残留誤差(第2残留誤差)として算出する(ステップS12)。
【0049】
以上の処理が終了すると、主制御系6は、ウエハ8上の被露光領域を図4に示す+X部分領域px1、−X部分領域px2、+Y部分領域py1、及び−Y部分領域py2の4つの領域に分ける。そして、X部分領域px1に含まれるサンプルショットSA〜SA,SA,SA,SAのステップS11における計測結果を用いてEGA演算を行い、+X部分領域px1に関するウエハスケーリング補正値を算出する(ステップS13)。
【0050】
具体的には、ステップS11におけるサンプルショットSA〜SA,SA,SA,SAの計測結果のみを上記の(2)式に代入して、上記(3)式に示される残留誤差成分を最小にする変換行列中のパラメータを算出する。尚、ここでのEGA演算においては、ウエハ8の+X部分領域px1についてのスケーリングΓx,Γy以外に、ウエハ8の+X部分領域px1についての残存回転誤差Θ、ステージ座標系(X,Y)の直交度誤差Ω、及びウエハ8のオフセットOx,Oyからなる4つのパラメータも決定されるが、ここではスケーリングΓxのみウエハスケーリング補正値として採用する。
【0051】
次に、主制御系6は、図4に示す−X部分領域px2に含まれるサンプルショットSA,SA〜SA,SA,SAのステップS11における計測結果を用いてEGA演算を行い、−X部分領域px2に関するウエハスケーリング補正値を算出する(ステップS14)。具体的には、ステップS11におけるサンプルショットSA,SA〜SA,SA,SAの計測結果のみを上記の(2)式に代入して、上記(3)式に示される残留誤差成分を最小にする変換行列中のパラメータを算出する。このEGA演算においてもウエハ8の−X部分領域px2についてのスケーリングΓx,Γy以外に、ウエハ8の−X部分領域px2についての残存回転誤差Θ、ステージ座標系(X,Y)の直交度誤差Ω、及びウエハ8のオフセットOx,Oyからなる4つのパラメータも決定されるが、ここではスケーリングΓxのみウエハスケーリング補正値として採用する。
【0052】
以下同様に、主制御系6は、図4に示す+Y部分領域py1に含まれるサンプルショットSA〜SA,SA,SAの計測結果を(2)式に代入して+Y部分領域py1についてのスケーリングΓyを求める(ステップS15)。また、−Y部分領域py2に含まれるサンプルショットSA,SA,SA,SA,SA,SAの計測結果を(2)式に代入して−Y部分領域py2についてのスケーリングΓyを求める(ステップS16)。尚、ステップS15,S16ではY方向についてのスケーリングΓyのみを採用する。
【0053】
以上の処理が終了すると、主制御系6は、ステップS13〜ステップS16の処理で求められた各スケーリング補正値と、全サンプルショットSA〜SAの計測値とを用いてEGA演算を行う。具体的には、まず上記ステップS13,S14の処理で求めたスケーリングΓxとステップS15,S16の処理で求めたスケーリングΓyとの組み合わせを変えて上記の(2)式に代入して4種類の式を求める。ここで得られる式は、+X部分領域px1のスケーリングΓxと+Y部分領域py1のスケーリングΓyとが考慮された第1象限Q1についての式、−X部分領域px2のスケーリングΓxと+Y部分領域py1のスケーリングΓyとが考慮された第2象限Q2についての式、−X部分領域px2のスケーリングΓxと−Y部分領域py2のスケーリングΓyとが考慮された第3象限Q3についての式、及び+X部分領域px1のスケーリングΓxと−Y部分領域py2のスケーリングΓyとが考慮された第4象限Q4についての式である。
【0054】
次いで、第1象限Q1〜第4象限Q4の各々について求められた式に対し、全サンプルショットSA〜SAの計測値(ステップS11の計測値)と設計値とを代入し、上記(3)式に示される残留誤差成分を最小にする変換行列中のパラメータを各象限毎に算出する。ここで算出されるパラメータは、スケーリングΓx,Γy以外の残存回転誤差Θ、ステージ座標系(X,Y)の直交度誤差Ω、及びウエハ8のオフセットOx,Oyである。
【0055】
ここで各象限毎に求められるパラメータ(4つの変換行列)は、第1象限Q1〜第4象限Q4各々のスケーリング誤差を考慮して設計上の配列座標値(Dx,Dy)を実際に位置合わせすべき位置の計算上の配列座標値(Fx,Fy)に変換する行列であるため、ウエハ8上におけるショット領域の配列誤差を補正する補正値ということができる。複数の象限に跨らないショット領域(ショットSA〜SA)の計算上の配列座標値は、そのショット領域が属する象限に対して求められた変換行列を用いて算出することができる。これに対し、複数の象限に跨るショット領域(ショットSA〜SA)の計算上の配列座標値は、跨っている象限に対して求められた変換行列中のスケーリングの平均値を用いて算出する。
【0056】
EGA演算を終えると、主制御系6は、各サンプルショットSAの計測された座標値(XM,YM)から、上記(3)式に示す残留誤差成分が最小になるように求めた変換行列中のパラメータを用いて計算した計算上の配列座標値(X,Y)を差し引いた残留成分を求め、これらの残留成分の2乗和を残留誤差(第1残留誤差)として算出する(ステップS17)。
【0057】
以上の処理が終了すると、主制御系6は、ステップS12で算出した残留誤差(残留成分の2乗和)とステップS17で算出した残留誤差(残留成分の2乗和)とを比較し、残留誤差がより小さくなる補正値を選択する(ステップS18)。ここで、ステップS12で算出された補正値が選択されると、従来のEGA方式により算出された変換行列が選択される。ステップS17で算出された補正値が選択されると、ウエハ8上の各部分領域のスケーリング補正値を考慮して得られた各象限についての変換行列が選択される。主制御系6はステップS18で選択した補正値(変換行列)に対して、ウエハ8上に設定された各ショット領域の設計上の座標値を代入してウエハ8上の全てのショット領域ES,ES,…,ESの計算上の配列を求める。
【0058】
次いで、主制御系6は算出したショット領域ES,ES,…,ESの座標値に基づいてウエハステージ10を駆動して各ショット領域を順次露光領域(投影光学系7の投影領域)に位置合わせしつつ、レチクル2のパターンを露光領域に位置合わせされたショット領域に転写する。このときの投影倍率は、2以上の象限に跨らないショット領域については、その属する象限について求められたスケーリング補正値に基づいて、結像特性制御装置14によって微調整される。2以上の象限に跨るショット領域については、その跨る各象限について求められたスケーリング補正値の平均値に基づいて、結像特性制御装置14によって微調整される。このようにして各ショット領域ES,ES,…,ESをステップ・アンド・リピート方式により露光する。尚、ステップ・アンド・スキャン方式の露光装置の場合には、投影倍率の微調整は、スキャン方向(例えば、Y方向)はスキャン速度により微調整され、非スキャン方向(例えば、X方向)は上記と同様に結像特性制御装置によって微調整される。
【0059】
以上説明した通り、本実施形態においては、ウエハ8上の被露光領域を互いに一部が重複する複数の部分領域に分けて各々の部分領域についてスケーリング補正値を求め、このスケーリング補正値と全サンプルショットSA〜SAの計測値とを用いてEGA演算を行って変換行列を求めている。このため、ウエハ8上の位置に応じてスケーリングの度合いが異なる場合であっても、ウエハ8上におけるショット領域の位置に応じて個別にスケーリング補正を行うことができるため、ウエハ8上の各ショット領域とマスクのパターンの投影像とをより高精度に重ね合わせることができる。
【0060】
また、従来のように個々の分割領域に個別にEGA方式を適用しているのではなく、最終的な変換行列の算出はウエハ8上の全サンプルショットSA〜SAの計測値を用いている。このため、最終的に算出されるショット領域ES,ES,…,ESのウエハ8上における座標値は一貫性が保たれ、アライメント精度の低下を招くことはない。更に、例えば図4に示す通りサンプルショットSA〜SAの配置を工夫することで、幾つかのサンプルショットを複数の部分領域で共有することができるため、実質的なサンプルショットの数を低減することができる。この結果として、サンプルショットの計測時間を短縮することができ、スループットの低下を回避することができる。
【0061】
尚、上記実施形態においては、ウエハ8に9個のサンプルショットSA〜SAが設定されてサンプルショットSA〜SAが部分領域に共有される場合について説明した。しかしながら、サンプルショットの数は任意で良く、複数の部分領域に共有されるサンプルショットが無くてもよい。但し、サンプルショットの計測時間を短縮する観点からは部分領域に共有されるサンプルショットがあることが好ましい。
【0062】
また、上記実施形態では、ショット領域(サンプルショットSA〜SA)の各々に図3に示すウエハマークMx,Myが形成されており、これらのx座標、y座標をショット領域のx座標及びy座標とみなしていた。ショット領域に対して形成されるウエハマークは上記のウエハマーク以外に、ショット領域内に複数のアライメントマークが形成されるものもある。かかるアライメントマークが形成されている場合には、その形成位置又は形状が好ましい1つのアライメントマークの座標値をもってショット領域の座標値としてもよく、ショット領域に形成されたアライメントマークの座標値の平均的な座標値をもってショット領域の座標値としても良い。或いは、ショット領域について形成された複数のアライメントマークの全てを用いて上記のEGA演算を行っても良い。
【0063】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以上説明した実施形態においては、ウエハ8の残存回転誤差Θ、ステージ座標系(X,Y)の直交度誤差Ω、ウエハ8の線形伸縮(スケーリング)Γx,Γy、及びウエハ8のオフセットOx,Oyからなる6つのパラメータを考慮してウエハ8上のショット領域の配列誤差を補正するものであった。これに対し、本実施形態は、上記の6つのパラメータに加えてショット領域の残存回転誤差θ、ショット領域内における直交度誤差ω、及びショット領域のスケーリングγx,γyからなる10個のパラメータを考慮してウエハ8上のショット領域の配列誤差及びショット領域自体の変形等からなる位置誤差を補正するものである。
【0064】
図6は、サンプルショット内に複数形成されるアライメントマークの一例を説明するための図である。尚、図6においては、図2に示すアライメントマーク(ウエハマーク)との比較を容易にするためにアライメントマークの像が指標板22上に結像した状態を図示している。また、図6に示すアライメントマークは、サンプルショット以外のショット領域にも形成されていても良い。
【0065】
本実施形態で用いられるアライメントマークは、X方向に伸びた直線パターンと、これに直交するY方向に伸びた直線パターンとからなる十字形状である。このアライメントマークの像が指標板22上に結像すると図6中の像MPが得られる。像MPは、XP方向に伸びる像MPxとY方向に伸びる像MPyとからなり、図6に示す状態で指標板22上に結像すると、像MPxが検出領域33X内に配置されるとともに像MPyが検出領域33Y内に配置される。よって、このアライメントマークを用いることで、一度の計測でX方向の位置情報及びY方向の位置情報を得ることができる。
【0066】
図7は、ショット領域内におけるアライメントマークの形成位置の一例を示す図である。図7に示す通り、本実施形態では、サンプルショットSAの中心位置に十字形状のアライメントマークIMが形成されており、サンプルショットSAの外周に沿って8個のアライメントマークIM〜IMが形成されている。尚、図7においては、サンプルショットSA内に「×」字形状の印を付してアライメントマークIM〜IMの形成位置を示しているが、アライメントマークIM〜IMの形状はX方向及びY方向に伸びる十字形状である。尚、図7に示すサンプルショットSAはサンプルショットSA〜SAを代表して図示したものであり、アライメントマークIM〜IMは図3示すサンプルショットSA〜SAの各々に形成されているものとする。
【0067】
本実施形態においては、主制御系6はEGA演算時にサンプルショットSAを+X部分領域、−X部分領域、+Y部分領域、及び−Y部分領域の4つの領域に分けている。いま、図7に示す通り、サンプルショットSAの中心を通りX軸に平行な線及びウエハ8の中心を通りY軸に平行な線の2つの線によって分割される第1象限q1〜第4象限q4を考える。+X部分領域psx1は第1象限q1と第4象限q4とを含む領域であり、−X部分領域psx2は第2象限q2と第3象限q3とを含む領域であり、+Y部分領域psy1は第1象限q1と第2象限q2とを含む領域であり、−Y部分領域psy2は第3象限q3と第4象限q4とを含む領域である。
【0068】
+X部分領域psx1、−X部分領域psx2、+Y部分領域psy1、及び−Y部分領域psy2の各々には6個のアライメントマークが含まれる。具体的には、+X部分領域psx1にはアライメントマークIM〜IM,IM,IMが含まれ、−X部分領域psx2にはアライメントマークIM,IM〜IMが含まれ、+Y部分領域psy1にはアライメントマークIM〜IMが含まれ、−Y部分領域psy2にはアライメントマークIM,IM,IM〜IMが含まれる。
【0069】
次に、このようなアライメントマークがサンプルショット(ショット領域)内に形成されたウエハ8を露光する際の動作について、図8に示すフローチャートを参照して説明する。露光処理が開示されると、まず主制御系6は露光対象とするウエハ8を図1のウエハホルダ9上にロードする。ウエハ8のロードが完了すると、主制御系6は、第1実施形態と同様に、不図示のグローバル・アライメントマークの計測を行ってEGA演算を行う。次いで、このEGA演算結果に基づいてウエハステージ10を駆動して、サンプルショットSA〜SA内に設けられているアライメントマークIM〜IMを順次計測視野内に追い込み、アライメント系15を介して各アライメントマークのステージ座標系(X,Y)上での座標値を高い精度で計測する(ステップS21)。
【0070】
サンプルショットの計測を終えると、主制御系6は計測したアライメントマークIM〜IMの内、サンプルショットSA〜SAの代表的な座標値を定めるアライメントマークの選択を行うとともに、EGA演算に用いるモデルの指定を行う(ステップS22)。この処理では、例えば、サンプルショットSA〜SAの中心に形成されるアライメントマークIMを選択し、EGA演算に用いるモデルとして以下の(4)式に示すモデルの指定を行う。
【0071】
【数4】

【0072】
上記(4)式では、ウエハ8の残存回転誤差Θ、ステージ座標系(X,Y)の直交度誤差Ω、ウエハ8の線形伸縮(スケーリング)Γx,Γy、及びウエハ8のオフセットOx,Oyからなる6つのパラメータに加えて、ショット領域の残存回転誤差θ、ショット領域内における直交度誤差ω、及びショット領域のスケーリングγx,γyからなる10個のパラメータを用いている。尚、上記(4)式において、(Ex,Ey)は、ショット領域に設定される座標系におけるアライメントマークIM〜IMの設計上の座標値であり、(Cx,Cy)はウエハ8上に設定される座標系(x,y)における各ショット領域の基準点(例えば、アライメントマークIM)の座標値である。
【0073】
次に、主制御系6は、ウエハ8上におけるウエハスケーリングの違いを補正するための補正値を算出する処理を行う(ステップS23)。この処理においては、上記のステップS22で選択されたアライメントマークの座標値をサンプルショットSA〜SAの座標値として、図5に示したステップS12〜ステップS18の処理とほぼ同様の処理が行われる。即ち、サンプルショットSA〜SAの座標値(計測値)を用いてEGA演算により補正値及び残留成分の2乗和としての残留誤差が算出され(ステップS12)、ウエハ8上を部分領域に分割して各々の領域についてウエハスケーリング補正値が算出され(ステップS13〜ステップS16)、ウエハスケーリング補正値とサンプルショットSA〜SAの座標値(計測値)とを用いてEGA演算により補正値及び残留成分の2乗和としての残留誤差が算出され(ステップS17)、残留誤差がより小さくなる補正値が選択される(ステップS18)。但し、ここでEGA演算に用いるモデルは、ステップS22で指定した上記(4)式に表されるモデルである。また、前記ステップS23において、ウエハ内各象限ごとのスケーリングを求めず、ステップS22で指定されたEGA計算モデルにより算出されたウエハスケーリングxとウエハスケーリングyを用いてもよい。
【0074】
以上の処理を終えると、主制御系6はサンプルショットSA〜SAの各々を図7に示す+X部分領域psx1、−X部分領域psx2、+Y部分領域psy1、及び−Y部分領域psy2の4つの領域に分ける。そして、サンプルショットSA〜SA各の々について、+X部分領域psx1に含まれるアライメントマークIM〜IM,IM,IMのステップS21における計測結果を用いてEGA演算を行い、+X部分領域psx1に関するショットスケーリング補正値を算出する(ステップS24)。
【0075】
具体的には、上記のステップS23で得られた補正値(Θ、Ω、Γx、Γy、Ox、Oy)を上記の(4)式に代入して得られた式(以下、中間式という)に対して、ステップS21におけるアライメントマークIM〜IM,IM,IMの計測結果のみを代入して、上記(3)式に示される誤差成分を最小にする変換行列中のパラメータを算出する。尚、ここで行われるEGA演算では、各サンプルショット毎の+X部分領域psx1についてのスケーリングγx,γy以外に、残存回転誤差θ及び直交度誤差ωも決定されるが、ここではスケーリングγxのみショットスケーリング補正値として採用する。
【0076】
次に、主制御系6は、サンプルショットSA〜SAの各々について、図7に示す−X部分領域psx2に含まれるアライメントマークIM,IM〜IMのステップS21における計測結果を用いてステップS24と同様にEGA演算を行い、−X部分領域psx2に関するショットスケーリング補正値(スケーリングγx)を算出する(ステップS25)。
【0077】
以下同様に、主制御系6は、サンプルショットSA〜SAの各々について、図7に示す+Y部分領域psy1に含まれるアライメントマークIM〜IMの計測結果を中間式に代入して+Y部分領域psy1についてのスケーリングγyを求める(ステップS26)。また、サンプルショットSA〜SAの各々について、−Y部分領域psy2に含まれるアライメントマークIM,IM,IM〜IMの計測結果を中間式に代入して−Y部分領域psy2についてのスケーリングγyを求める(ステップS27)。尚、ステップS24,S25ではX方向についてのスケーリングγxのみを採用しており、ステップS26,S27ではY方向についてのスケーリングγyのみを採用している。
【0078】
以上の処理が終了すると、主制御系6は、サンプルショットSA〜SA毎に、ステップS24〜ステップS27の処理で求められた各スケーリング補正値と、サンプルショット内に形成された全てのアライメントマークIM〜IMの計測値とを求めてEGA演算を行う。このEGA演算では、上記ステップS24,S25の処理で求めたスケーリングγxとステップS26,S27の処理で求められたスケーリングγyとの組み合わせを変えて中間式に代入して4種類の式を求める。
【0079】
ここで得られる式は、+X部分領域psx1のスケーリングγxと+Y部分領域psy1のスケーリングγyとが考慮された第1象限q1についての式、−X部分領域psx2のスケーリングγxと+Y部分領域psy1のスケーリングγyとが考慮された第2象限q2についての式、−X部分領域psx2のスケーリングγxと−Y部分領域psy2のスケーリングγyとが考慮された第3象限q3についての式、及び+X部分領域psx1のスケーリングγxと−Y部分領域psy2のスケーリングγyとが考慮された第4象限q4についての式である。
【0080】
次いで、サンプルショットSA〜SA毎に、第1象限q1〜第4象限q4の各々について求められた式に対してアライメントマークIM〜IMの計測値と設計値とを代入し、上記(3)式示される誤差成分を最小にする変換行列中のパラメータを各象限毎に算出する。ここで算出されるパラメータは、スケーリングγx,γy以外の残存回転誤差θ及び直交度誤差ωである。サンプルショットSA〜SAの各々について各象限毎に求められるパラメータ(4つの変換行列)は、各サンプルショット内の第1象限q1〜第4象限q4各々のスケーリング誤差を考慮して設計上の配列座標値(Dx,Dy)を実際に位置合わせすべき位置の計算上の配列座標値(Fx,Fy)に変換する行列であるため、ショット領域自体の変形等による位置誤差を補正する補正値ということができる。尚、第1実施形態と同様に、複数の象限に跨るアライメントマークの計算上の配列座標値は、跨っている象限に対して求められた変換行列中のスケーリングの平均値を用いて算出する。
【0081】
EGA演算を終えると、主制御系6は、各アライメントマークIMの計測された座標値(XM,YM)から、上記(3)式に示す残留誤差成分が最小になるように求めた変換行列中のパラメータを用いて計算した計算上の配列座標値(X,Y)を差し引いた残留成分を求め、これらの残留成分の2乗和を残留誤差として算出する(ステップS28)。
【0082】
以上の処理が終了すると、主制御系6は、ステップS23で算出(選択)した残留誤差(残留成分の2乗和)とステップS28で算出した残留誤差(残留成分の2乗和)とを比較し、残留誤差がより小さくなる補正値を選択する(ステップS29)。ここで、ステップS23で算出された補正値が選択されると、第1実施形態で求められる変換行列と同様の変換行列、即ちウエハスケーリング補正値のみを考慮した変換行列が選択され、ステップS28で算出された補正値が選択されると、ショット領域内の各部分領域のショットスケーリング補正値を考慮して得られた変換行列が選択される。主制御系6はステップS29で選択した補正値(変換行列)に対して、ウエハ8上に設定された各ショット領域の設計上の座標値を代入してウエハ8上の全てのショット領域ES,ES,…,ESの計算上の座標値を求める。
【0083】
次いで、主制御系6は算出したショット領域ES,ES,…,ESの座標値に基づいてウエハステージ10を駆動して各ショット領域を順次露光領域(投影光学系7の投影領域)に位置合わせする。次に、照明光学系1内に設けられた不図示のブラインド装置(4枚のブラインド板により照明光の矩形状の照射領域の大きさを調整する装置)を制御して、例えば第1象限q1に相当する領域以外を遮蔽して、ショット領域の該第1象限q1に相当する領域を露光する。このとき、結像特性調整装置14を制御して投影光学系7の投影倍率が当該ショット領域の当該第1象限についてのショットスケーリング補正値に従って調整されて露光される。次いで、順次当該照射領域を第2象限、第3象限、第4象限に相当する領域に設定して同様に露光することにより、一つのショット領域についての露光を完了する。以後、同様にして、レチクル2のパターンを露光領域に位置合わせされた各ショット領域ES,ES,…,ESにステップ・アンド・リピート方式により露光転写する。
【0084】
以上説明した通り、本実施形態においては、ウエハ8上の被露光領域を複数の部分領域に分けるとともに、サンプルショットSA〜SAを複数の部分領域に分けて、ウエハスケーリング補正値及びショットスケーリング補正値を求めた上でEGA演算を行って変換行列を求めている。このため、ウエハ8上の位置に応じてスケーリングの度合いが異なり、且つショット領域の内部の位置に応じてスケーリングの度合いが異なるような場合であっても、ウエハ8の位置及びショット領域内の位置に応じて個別にスケーリング補正を行うことができるため、ウエハ8上の各ショット領域とマスクのパターンの投影像とを極めて高精度に重ね合わせることができるようになる。
【0085】
尚、上記実施形態においては、サンプルショット領域SA〜SA内に9個のアライメントマークIM〜IMが設定されており、アライメントマークIM,IM,IM,IM,IMが部分領域に共有される場合について説明した。サンプルショット領域SA〜SA内のアライメントマークは、その数を減じて図9に示す通り5個に設定することも可能である。
【0086】
図9(a),(b)に示す通り、サンプルショットSA内には、アライメントマークim〜imが設けられており、図9(a)に示す例ではサンプルショットSAの辺に対して平行にアライメントマークim〜imが十字形状に配列され、図9(b)に示す例ではサンプルショットSAの対角線に沿ってアライメントマークim〜imが「×」形状に配列されている。
【0087】
図9(a)に示す配列の場合には、各部分領域に4つのアライメントマークが含まれる。具体的には、+X部分領域psx1にはアライメントマークim〜im,imが含まれ、−X部分領域psx2にはアライメントマークim,im〜imが含まれ、+Y部分領域psy1にはアライメントマークim〜imが含まれ、−Y部分領域psy2にはアライメントマークim,im,im,imが含まれる。
【0088】
一方、図9(b)に示す配列の場合には、各部分領域に3つのアライメントマークが含まれる。具体的には、+X部分領域psx1にはアライメントマークim,im,imが含まれ、−X部分領域psx2にはアライメントマークim,im,,imが含まれ、+Y部分領域psy1にはアライメントマークim〜imが含まれ、−Y部分領域psy2にはアライメントマークim,im,imが含まれる。
【0089】
また、上記実施形態では、ショット領域の配列誤差を補正する6つのパラメータ(Θ、Ω、Γx、Γy、Ox、Oy)とショット領域自体の変形等を補正する4つのパラメータ(θ、ω、γx、γy)とを考慮した(4)式に示すモデルを用いていたが、このモデルに制限されることはない。
【0090】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、本発明をステップ・アンド・スキャン方式の露光装置に適用したものである。ここで、ステップ・アンド・スキャン方式の露光装置は、スリット状の露光光をレチクルに照射している状態で、レチクルを載置したレチクルステージとウエハを載置したウエハステージとを投影光学系に対して互いに同期移動させつつレチクルに形成されたパターンの一部をウエハのショット領域に逐次転写し、1つのショット領域に対するパターンの転写が終了するとウエハをステッピングさせて他のショット領域にパターンの転写を行う露光装置である。
【0091】
本実施形態においても、上述した第2実施形態と同様の処理によりウエハスケーリング補正値及びショットスケーリング補正値を求めてウエハ8上の位置及びショット領域内の位置に応じて個別にスケーリング補正が行われる。但し、レチクルステージ及びウエハステージの相対移動方向(走査方向)のスケーリング補正は、レチクルステージ及びウエハステージの移動速度を制御することにより行い、レチクルステージ及びウエハステージの相対移動方向に交差する方向(非走査方向)のスケーリング補正は投影光学系の倍率を制御することにより行う。
【0092】
尚、本実施形態において、装置構成上、ウエハスケーリング補正及びショットスケーリング補正について、+方向及び−方向について個別に補正することができない場合には、上記の処理により求められた各々の補正値の平均値(+X方向の補正値と−X方向の補正値との平均値、+Y方向の補正値と−Y方向の補正値との平均値)を求め、この補正値を用いて補正する。更に、X方向とY方向について個別に補正することができない場合には、X方向の補正値とY方向の補正値との平均値を求め、この平均値を用いて補正する。
【0093】
例えば、走査方向である+Y方向及び−Y方向について個別にスケーリング補正を行うことはできるが、非走査方向である+X方向及び−X方向について個別にスケーリング補正を行うことができない場合には、走査方向であるY方向を優先して補正値を求める。図10は、本発明の第3実施形態において、Y方向を優先的にスケーリング補正する場合に用いられるサンプルショット内のアライメントマークを示す図である。
【0094】
Y方向を優先的にスケーリング補正する場合には、図7に示す9個のアライメントマークIM〜IMのうち、7個のアライメントマークIM〜IM,IM〜IM,IMの計測結果を用いる。尚、図7中のアライメントマークIM,IMを計測に用いないことが予め分かっている場合には、サンプルショットSA内に7個のアライメントマークIM〜IM,IM〜IM,IMのみを形成しても良い。
【0095】
図10に示す7個のアライメントマークIM〜IM,IM〜IM,IMの計測結果を用いてEGA演算を行うにあたっては、サンプルショットSAを第1象限q1と第2象限q2とを含む+Y部分領域psy1と、第3象限q3と第4象限q4とを含む−Y部分領域psy2との2つの領域に分け、X方向については領域を分けていない。+Y部分領域psy1には5個のアライメントマークIM〜IM,IM,IMが含まれ、−Y部分領域psy2には5個のアライメントマークIM,IM,IM,IM,IMが含まれる。+Y部分領域psy1及び−Y部分領域psy2については、上述した第2実施形態と同様の処理を行ってスケーリング補正値を算出する。一方、X方向のスケーリング補正値は、サンプルショットSA内の7個のアライメントマークIM〜IM,IM〜IM,IMを全て用いて平均的なスケーリング補正値を算出する。
【0096】
そして、+Y方向及び−Y方向のスケーリング補正については個別にレチクルステージ及びウエハステージの移動速度を制御して行い、X方向のスケーリング補正については平均的なスケーリング補正値を用いて投影光学系の光学特性を制御して行う。このように、ステップ・アンド・スキャン方式の露光装置においても、ウエハ8上の各ショット領域とマスクのパターンの投影像とを極めて高精度に重ね合わせることができる。
【0097】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。従って、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。例えば、上記実施形態においては、理解を容易にするために、ウエハスケーリング補正値を求める場合の処理(図5)とショットスケーリング補正値を求める場合の処理(図8)とを別々に説明したが、これらの処理を一つにまとめても良い。
【0098】
上述した第2実施形態においては、一つのショット領域内を複数の部分領域に分け、各部分領域についてのスケーリング補正値を求めた後で、このスケーリング補正値とそのショット領域内における全アライメントマークIM〜IMを用いてEGA演算を行うことで、サンプルショット内の座標値の一貫性を保つようにしている。しかしながら、この処理による効果がさほど高くない場合には、サンプルショットを複数の領域に分割し、分割された各領域について個別にEGA演算を行って、各領域毎の補正値を求め、これに基づいて位置決め、露光を行うようにしても良い。また、ダイバイダイアライメントにおいても、ショット内多点計測を行う場合、本実施形態と同様に、ショット内各領域ごとにスケーリング補正値を求めてもよい。
【0099】
本発明の露光装置は、半導体素子や液晶表示素子の製造に用いられる露光装置だけでなく、プラズマディスプレイ、薄膜磁気ヘッド、及び撮像素子(CCD等)の製造にも用いられる露光装置、及びレチクル、又はマスクを製造するために、ガラス基板、又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも適用することができる。即ち本発明は、露光装置の露光方式や用途等に関係なく適用可能である。
【0100】
また、照明光学系1に光源としてArFエキシマレーザ(波長193nm)を備える場合を例に挙げて説明したが、光源としてはこれ以外に例えば超高圧水銀ランプ(g線(波長436nm)、i線(波長365nm))、又はKrFエキシマレーザ(波長248nm)若しくはFレーザ(波長157nm)を用いることができる。更には、上記実施形態では本発明を露光装置に適用した場合について説明したが、本発明は、搬送装置、計測装置、検査装置、試験装置、レーザリペア装置、その他の物体の位置合わせを行う装置全般について適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施形態に係る露光装置の概略構成図である。
【図2】図1の指標板上のパターンを示す図である。
【図3】ウエハ上に設定されるショット領域の配列の一例を示す図である。
【図4】EGA演算時に主制御系によって分けられる部分領域の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態における処理を示すフローチャートである。
【図6】サンプルショット内に複数形成されるアライメントマークを説明するための図である。
【図7】ショット領域内におけるアライメントマークの形成位置の一例を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態における処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2実施形態において、ショット領域におけるアライメントマークの形成位置の他の例を示す図である。
【図10】本発明の第3実施形態において、Y方向を優先的にスケーリング補正する場合に用いられるサンプルショット内のアライメントマークを示す図である。
【符号の説明】
【0102】
8…ウエハ
ES〜ES…ショット領域
IM〜IM…アライメントマーク
im〜im…アライメントマーク
px1,px2…部分領域
py1,py2…部分領域
psx1,psx2…部分領域
psy1,psy2…部分領域
SA〜SA…サンプルショット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体上に配列された複数の被加工領域の各々を、所定の加工位置に対して位置合わせする位置合わせ方法において、
前記被加工領域毎に設定された計測点のうち、予め選択された所定数のサンプル計測点の位置を計測する第1工程と、
前記物体上を、前記サンプル計測点を複数含む複数の部分領域に分け、該部分領域の各々に含まれるサンプル計測点の計測位置及び該サンプル計測点の設計上の設計位置を演算パラメータとして該部分領域毎に統計演算を行い、スケーリングについての第1補正値を該部分領域単位でそれぞれ算出する第2工程と、
前記サンプル計測点についての前記計測位置、前記設計位置及び前記第1補正値を演算パラメータとして統計演算を行い、前記被加工領域の配列のオフセット、ローテーション及び直交度についての補正値のうちの少なくとも一つを含む第2補正値を前記物体単位で算出する第3工程と、
を備えることを特徴とする位置合わせ方法。
【請求項2】
前記サンプル計測点の前記計測位置及び前記設計位置を演算パラメータとして統計演算を行い、前記被加工領域の配列のスケーリングについての第3補正値、並びにオフセット、ローテーション及び直交度についての補正値のうちの少なくとも一つを含む第4補正値を算出する第4工程と、
前記サンプル計測点の前記計測位置を前記第1補正値及び前記第2補正値で補正した補正位置の前記設計位置からの誤差の総和である第1残留誤差を算出する第5工程と、
前記サンプル計測点の前記計測位置を前記第3補正値及び前記第4補正値で補正した補正位置の前記設計位置からの誤差の総和である第2残留誤差を算出する第6工程と、
前記第1残留誤差と前記第2残留誤差を比較して、該残留誤差が小さいものに係る前記第1補正値及び前記第2補正値又は前記第3補正値及び前記第4補正値を、前記位置合わせに用いる補正値と決定する第7工程と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の位置合わせ方法。
【請求項3】
前記第2工程は、前記被加工領域が配列された前記物体上を、前記物体の中心を原点とした四象限のうちの、第1及び第2象限に相当する部分領域、第2及び第3象限に相当する部分領域、第3及び第4象限に相当する部分領域、並びに第4及び第1象限に相当する部分領域の4つの部分領域に分けることを特徴とする請求項1又は2に記載の位置合わせ方法。
【請求項4】
前記第7工程で決定した補正値を用いて前記被加工領域の設計上の配列座標を変換して前記物体が移動すべき位置の配列座標を算出する第8工程と、
前記第8工程で算出された配列座標を用いて前記被加工領域を前記加工位置に位置決めする第9工程と、
を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の位置合わせ方法。
【請求項5】
マスクのパターンの投影像を基板上に配列された複数のショット領域に対して露光転写する露光方法において、
請求項4に記載の位置合わせ方法を用いて、前記被加工領域としての前記ショット領域を、前記所定の加工位置としての露光位置に対して、順次位置合わせしつつ、各ショット領域を露光する露光工程を含み、
前記露光工程では、露光対象のショット領域が含まれる前記部分領域についての前記第7工程で決定された前記第1補正値又は前記第3補正値を用いて、当該ショット領域の露光時に倍率補正を実施することを特徴とする露光方法。
【請求項6】
物体上に配列された複数の被加工領域の各々を、所定の加工位置に対して位置合わせする位置合わせ方法において、
前記被加工領域内に設定された計測点のうち、予め選択された所定数のサンプル計測点の位置を計測する第1工程と、
前記被加工領域上を、前記サンプル計測点をそれぞれ複数含む複数の部分領域に分け、該部分領域の各々に含まれるサンプル計測点の計測位置及び該サンプル計測点の設計上の設計位置を演算パラメータとして該部分領域毎に統計演算を行い、スケーリングについての第1補正値を該部分領域単位でそれぞれ算出する第2工程と、
前記サンプル計測点についての前記計測位置、前記設計位置及び前記第1補正値を演算パラメータとして統計演算を行い、前記被加工領域のローテーション及び直交度についての補正値の少なくとも一方を含む第2補正値を該部分領域単位で算出する第3工程と、
を備えることを特徴とする位置合わせ方法。
【請求項7】
前記サンプル計測点の前記計測位置及び前記設計位置を演算パラメータとして統計演算を行い、前記被加工領域のスケーリングについての第3補正値、並びにローテーション及び直交度についての補正値の少なくとも一方を含む第4補正値を算出する第4工程と、
前記サンプル計測点の前記計測位置を前記第1補正値及び前記第2補正値で補正した補正位置の前記設計位置からの誤差の総和である第1残留誤差を算出する第5工程と、
前記サンプル計測点の前記計測位置を前記第3補正値及び前記第4補正値で補正した補正位置の前記設計位置からの誤差の総和である第2残留誤差を算出する第6工程と、
前記第1残留誤差と前記第2残留誤差を比較して、該残留誤差が小さいものに係る前記第1補正値及び前記第2補正値又は前記第3補正値及び前記第4補正値を、前記位置合わせに用いる補正値と決定する第7工程と、
を更に備えることを特徴とする請求項6に記載の位置合わせ方法。
【請求項8】
前記第2工程は、前記被加工領域上を、該被加工領域の中心を原点とした四象限のうちの、第1及び第2象限に相当する部分領域、第2及び第3象限に相当する部分領域、第3及び第4象限に相当する部分領域、並びに第4及び第1象限に相当する部分領域の4つの部分領域に分けることを特徴とする請求項6又は7に記載の位置合わせ方法。
【請求項9】
前記第7工程で決定した補正値を用いて前記被加工領域を前記加工位置に位置合わせする第8工程
を更に備えることを特徴とする請求項7又は8に記載の位置合わせ方法。
【請求項10】
物体上に配列された複数の被加工領域の各々を、所定の加工位置に対して位置合わせする位置合わせ方法において、
前記被加工領域内に設定された複数の計測点のうち、予め選択された所定数のサンプル計測点の位置を計測する第1工程と、
前記被加工領域上を、前記サンプル計測点を複数含む複数の部分領域に分け、該部分領域の各々に含まれるサンプル計測点の計測位置及び該サンプル計測点の設計上の設計位置を演算パラメータとして該部分領域毎に統計演算を行い、スケーリングについての第1補正値、並びにローテーション及び直交度についての補正値の少なくとも一方を含む第2補正値を該部分領域単位で算出する第2工程と、
を備えることを特徴とする位置合わせ方法。
【請求項11】
前記第7工程で決定した補正値を用いて前記被加工領域を前記加工位置に位置合わせする第3工程
を更に備えることを特徴とする請求項10に記載の位置合わせ方法。
【請求項12】
物体上に配列された複数の被加工領域の各々を、所定の加工位置に対して位置合わせする位置合わせ装置において、
前記被加工領域毎に設定された計測点のうち、予め選択された所定数のサンプル計測点の位置を計測する計測手段と、
前記物体上を、前記サンプル計測点を複数含む複数の部分領域に分け、該部分領域の各々に含まれるサンプル計測点の計測位置及び該サンプル計測点の設計上の設計位置を演算パラメータとして該部分領域毎に統計演算を行い、スケーリングについての第1補正値を該部分領域単位でそれぞれ算出する第1演算手段と、
前記サンプル計測点についての前記計測位置、前記設計位置及び前記第1補正値を演算パラメータとして統計演算を行い、前記被加工領域の配列のオフセット、ローテーション及び直交度についての補正値のうちの少なくとも一つを含む第2補正値を前記物体単位で算出する第2演算手段と、
を備えることを特徴とする位置合わせ装置。
【請求項13】
マスクのパターンを基板上に配列された複数のショット領域に対して露光転写する露光装置において、
請求項12に記載の位置合わせ装置を備え、
前記位置合わせ装置を用いて、前記被加工領域としての前記ショット領域を、前記所定の加工位置としての露光位置に対して、順次位置合わせしつつ、且つ露光対象のショット領域が含まれる前記部分領域についての前記第1補正値を用いて、当該ショット領域の露光時に倍率補正を実施しつつ、各ショット領域を露光することを特徴とする露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−269562(P2006−269562A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−82721(P2005−82721)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】