説明

位置測定システム、リソグラフィ装置およびデバイス製造方法

【課題】従来の較正方法と比べてあまり時間がかからない較正を適用するより正確な位置測定システムを提供する。
【解決手段】位置測定システムは、第1部分EGおよび第2部分ESと、計算ユニットと、を備える。第1部分および第2部分は、第2部分に対する第1部分の位置を表す位置信号を提供することによって第2部材に対する第1部材の位置を決定する。計算ユニットは、位置信号を受信するための入力端子を含む。計算ユニットは、使用中、位置信号に変換を適用して第2部材に対する第1部材の位置を表す信号を得るように、および、変換に調整を適用して第1部分または第2部分あるいは両方のドリフトを少なくとも部分的に補償するように、構成される。調整は、第1部分または第2部分あるいは両方のそれぞれの所定のドリフト特性に基づく。所定のドリフト特性は、第1部分および/または第2部分の1つ以上の基本形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001] 本発明は、位置測定システム、リソグラフィ装置およびデバイスを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[002] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板上、通常、基板のターゲット部分上に付与する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に用いることができる。その場合、ICの個々の層上に形成される回路パターンを生成するために、マスクまたはレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを用いることができる。このパターンは、基板(例えば、シリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば、ダイの一部、または1つ以上のダイを含む)に転写することができる。通常、パターンの転写は、基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)層上への結像によって行われる。一般には、単一の基板が、連続的にパターニングされる隣接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。公知のリソグラフィ装置としては、ターゲット部分上にパターン全体を一度に露光することにより各ターゲット部分を照射する、いわゆるステッパ、および放射ビームによってある特定の方向(「スキャン」方向)にパターンをスキャンすると同時に、この方向に平行または逆平行に基板をスキャンすることにより各ターゲット部分を照射する、いわゆるスキャナが含まれる。パターンを基板上にインプリントすることにより、パターニングデバイスから基板にパターンを転写することも可能である。大抵の場合、ターゲット部分を露光するプロセスは複数回繰り返され、それによって、複数の層を含むデバイスを生成する。デバイスの正確な動作のために、互いの層の正確な位置決めが必要である。したがって、露光プロセス中、パターニングデバイスに対する基板の位置を知る必要がある。この位置を決定するために、リソグラフィ装置は、一般に、干渉計ベースの測定システムまたはエンコーダベースの測定システムなどの位置測定システムを含む。そのようなシステムは、例えば、装置の投影システムに対してパターニングデバイスまたは基板を保持するサポートの位置を決定するために使用することができる。
【0003】
[003] エンコーダベースの測定システムが使用された場合、そのようなシステムは、例えば、1つ以上の一次元または二次元格子および1つ以上の格子と協働する1つ以上のセンサを含んでよい。そのようなシステムは、例えば、1つ以上のセンサを基板テーブルに設置することによって、かつ投影システムが設置されるメトロロジフレームなどの基準フレームに1つ以上の格子を設置することによって、投影レンズに対する基板テーブルの位置を測定するために使用することができる。使用中、1つ以上のセンサは、1つ以上の格子に対するセンサの位置を表す位置信号を提供することができる。基板に対するセンサの位置および投影システムに対する格子の位置が知られた場合、位置信号を、投影システムに対する基板の位置を表す位置基準(例えば、位置制御システムによって使用されることが適しているもの)に変換することができる。そのような変換は、例えば、位置信号をセンサから位置基準に変換するための1つ以上のルックアップテーブルを含んでよい。そのようなルックアップテーブルなどは、例えば、オーバーレイまたはフォーカスマップの決定を伴うかまたは第2位置測定システムの使用を伴う位置測定システムの初期較正によって決定することができる。
【0004】
[004] 当業者には明らかなように、上記した位置測定システムを用いた例えば投影システムに対する基板の正確な位置決めは、位置信号から決定される位置基準に依存する。しかしながら、(1つ以上の)センサまたは(1つ以上の)格子(あるいは両方)のいずれかの変形または変位により、位置信号に適用される変換は、不正確な位置基準を提供する場合があり、これは、例えば、基板上のターゲット部分の露光中の基板の不正確な位置決めという結果となり得る。そのようなドリフト(drift)、すなわち、変形または変位を少なくとも部分的に補償するためには、位置測定システムの定期的較正を考慮に入れてよい。しかしながら、そのような較正は、一般に、時間がかかり、したがって装置のダウンタイムという結果になり得るので、装置の生産性に悪影響を及ぼす。
【発明の概要】
【0005】
[005] 従来の較正方法と比べてあまり時間がかからない較正を適用するより正確な位置測定システムを提供することが望ましい。したがって、本発明の一実施形態によると、第1部分および第2部分であって、第2部分に対する第1部分の位置を表す位置信号を提供することによって第2部材に対する第1部材の位置を決定するための第1部分および第2部分と、位置信号を受信するための入力端子を含む計算ユニットと、を含む位置測定システムが提供される。計算ユニットは、使用中、位置信号に変換を適用して第2部材に対する第1部材の位置を表す信号を得るように、かつ変換に調整を適用して第1部分または第2部分あるいは両方のドリフトを少なくとも部分的に補償するように構成される。調整は、第1部分または第2部分あるいは両方のそれぞれの所定のドリフト特性に基づき、所定のドリフト特性は、第1部分または第2部分あるいは両方の1つ以上の基本形状(base shape)を含む。
【0006】
[006] 本発明の一実施形態によると、放射ビームを調整するように構成された照明システムと、放射ビームの断面にパターンを付与してパターン付き放射ビームを形成することができるパターニングデバイスを支持するように構築されたサポートと、基板を保持するように構築された基板テーブルと、パターン付き放射ビームを基板のターゲット部分上に投影するように構成された投影システムと、投影システムに対するパターニングデバイスまたは基板の位置を決定するための位置測定システムと、を含むリソグラフィ装置が提供される。位置測定システムは、投影システムまたは投影システムが設置された基準フレームに設置された第1部分と、サポートテーブルまたは基板テーブルに設置された第2部分であって、第1部分および第2部分は、第2部分に対する第1部分の位置を表す位置信号を提供するように配置される、第2部分と、位置信号を受信するための入力端子を含む計算ユニットと、を含む。計算ユニットは、使用中、位置信号に変換を適用してサポートまたは基板テーブルに対する投影システムの位置を表す信号を得るように、および変換に調整を適用して第1部分または第2部分あるいは両方のドリフトを少なくとも部分的に補償するように構成される。調整は、第1部分または第2部分あるいは両方のそれぞれの所定のドリフト特性に基づき、所定のドリフト特性は、第1部分または第2部分あるいは両方の1つ以上の基本形状を含む。
【0007】
[007] 一実施形態では、放射ビームの断面にパターンを付与してパターン付き放射ビームを形成することと、基板を保持する基板テーブルを位置決めすることと、パターン付き放射ビームを基板のターゲット部分上に投影することと、投影システムに対する基板の位置を決定するための位置測定システムを使用することと、を含むデバイス製造方法が提供される。位置測定システムは、投影システムまたは投影システムに設置された基準フレームに設置された第1部分と、基板テーブルに設置された第2部分であって、第1部分および第2部分は、第2部分に対する第1部分の位置を表す位置信号を提供するように配置される、第2部分と、位置信号を受信するための入力端子を含む計算ユニットと、を含む。計算ユニットは、使用中、位置信号に変換を適用して基板テーブルに対する投影システムの位置を表す信号を得るように、および変換に調整を適用して第1部分または第2部分あるいは両方のドリフトを少なくとも部分的に補償するように構成され、調整は、第1部分または第2部分あるいは両方のそれぞれの所定のドリフト特性に基づき、所定のドリフト特性は、第1部分または第2部分あるいは両方の1つ以上の基本形状を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
[008] 本発明のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の概略図を参照して以下に説明する。これらの図面において同じ参照符号は対応する部分を示す。
【図1】[009] 図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を示す。
【図2a】[0010] 図2aは、本発明の一実施形態による、図1のリソグラフィ装置で使用することができる位置測定システムを示す。
【図2b】[0011] 図2bは、位置測定システムの変形またはドリフトと、不整合性と、オーバーレイおよび/またはデフォーカス効果と、の関係を示す。
【図3a】[0012] 図3aは、エンコーダベースの測定システムにおける不整合性の使用を示す。
【図3b】[0012] 図3bは、エンコーダベースの測定システムにおける不整合性の使用を示す。
【図4】[0013] 図4は、本発明の一実施形態による別の位置測定システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0014] 図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示している。このリソグラフィ装置は、放射ビームB(例えば紫外線または他の任意の適切な放射)を調整するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを支持するように構築され、かつ特定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1位置決めデバイスPMに連結されたマスクサポート構造(例えば、マスクテーブル)MTとを含む。装置は、さらに、基板(例えば、レジストコートウェーハ)Wを保持するように構築され、かつ特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第2位置決めデバイスPWに連結された基板テーブル(例えば、ウェーハテーブル)WTまたは「基板サポート」を含む。装置は、さらに、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付けられたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PLを含む。
【0010】
[0015] 照明システムとしては、放射を誘導し、整形し、または制御するために、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、またはその他のタイプの光コンポーネント、あるいはそれらのあらゆる組合せなどのさまざまなタイプの光コンポーネントを含むことができる。
【0011】
[0016] マスクサポート構造は、パターニングデバイスの重量を支えるなどしてパターニングデバイスを支持する。マスクサポート構造は、パターニングデバイスの向き、リソグラフィ装置の設計、および、パターニングデバイスが真空環境内で保持されているか否かなどの他の条件に応じた態様で、パターニングデバイスを保持する。マスクサポート構造は、機械式、真空式、静電式またはその他のクランプ技術を使って、パターニングデバイスを保持することができる。マスクサポート構造は、例えば、必要に応じて固定または可動式にすることができるフレームまたはテーブルであってもよい。マスクサポート構造は、パターニングデバイスを、例えば、投影システムに対して所望の位置に確実に置くことができる。本明細書において使用される「レチクル」または「マスク」という用語はすべて、より一般的な「パターニングデバイス」という用語と同義であると考えるとよい。
【0012】
[0017] 本明細書において使用される「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分内にパターンを作り出すように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使用できるあらゆるデバイスを指していると、広く解釈されるべきである。なお、留意すべき点として、放射ビームに付与されたパターンは、例えば、そのパターンが位相シフトフィーチャまたはいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板のターゲット部分内の所望のパターンに正確に一致しない場合もある。通常、放射ビームに付けたパターンは、集積回路などのターゲット部分内に作り出されるデバイス内の特定の機能層に対応することになる。
【0013】
[0018] パターニングデバイスは、透過型であっても、反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、マスク、プログラマブルミラーアレイ、およびプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクは、リソグラフィでは公知であり、バイナリ、レべンソン型(alternating)位相シフト、およびハーフトーン型(attenuated)位相シフトなどのマスク型、ならびに種々のハイブリッドマスク型を含む。プログラマブルミラーアレイの一例では、小型ミラーのマトリックス配列が用いられており、各小型ミラーは、入射する放射ビームを様々な方向に反射させるように、個別に傾斜させることができる。傾斜されたミラーは、ミラーマトリックスによって反射される放射ビームにパターンを付ける。
【0014】
[0019] 本明細書において使用される「投影システム」という用語は、使われている露光放射にとって、あるいは液浸液の使用または真空の使用といった他の要因にとって適切な、屈折型、反射型、反射屈折型、磁気型、電磁型、および静電型光学系、またはそれらのあらゆる組合せを含むあらゆる型の投影システムを包含していると広く解釈されるべきである。本明細書において使用される「投影レンズ」という用語はすべて、より一般的な「投影システム」という用語と同義であると考えるとよい。
【0015】
[0020] 本明細書に示されているとおり、リソグラフィ装置は、透過型のもの(例えば、透過型マスクを採用しているもの)である。また、リソグラフィ装置は、反射型のもの(例えば、上述のプログラマブルミラーアレイを採用しているもの、または反射型マスクを採用しているもの)であってもよい。
【0016】
[0021] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)以上の基板テーブルまたは「基板サポート」(および/または2つ以上のマスクテーブルまたは「マスクサポート」)を有する型のものであってもよい。そのような「マルチステージ」機械においては、追加のテーブルまたはサポートは並行して使うことができ、または予備工程を1つ以上のテーブルまたはサポート上で実行しつつ、別の1つ以上のテーブルまたはサポートを露光用に使うこともできる。
【0017】
[0022] また、リソグラフィ装置は、投影システムと基板との間の空間を満たすように、比較的高屈折率を有する液体(例えば水)によって基板の少なくとも一部を覆うことができるタイプのものであってもよい。また、リソグラフィ装置内の別の空間(例えば、マスクと投影システムとの間)に液浸液を加えてもよい。液浸技術は、投影システムの開口数を増加させるために使用することができる。本明細書において使用される「液浸」という用語は、基板のような構造物を液体内に沈めなければならないという意味ではなく、単に、露光中、投影システムと基板との間に液体があるということを意味するものである。
【0018】
[0023] 図1を参照すると、イルミネータILは、放射源SOから放射ビームを受ける。例えば、放射源がエキシマレーザである場合、放射源とリソグラフィ装置は、別個の構成要素であってもよい。そのような場合には、放射源は、リソグラフィ装置の一部を形成しているとはみなされず、また放射ビームは、放射源SOからイルミネータILへ、例えば、適切な誘導ミラーおよび/またはビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムBDを使って送られる。その他の場合においては、例えば、放射源が水銀ランプである場合、放射源は、リソグラフィ装置の一体部分とすることもできる。放射源SOおよびイルミネータILは、必要ならばビームデリバリシステムBDとともに、放射システムと呼んでもよい。
【0019】
[0024] イルミネータILは、放射ビームの角強度分布を調節するように構成されたアジャスタADを含むことができる。一般に、イルミネータの瞳面内の強度分布の少なくとも外側および/または内側半径範囲(通常、それぞれσ-outerおよびσ-innerと呼ばれる)を調節することができる。さらに、イルミネータILは、インテグレータINおよびコンデンサCOといったさまざまな他のコンポーネントを含むことができる。イルミネータを使って放射ビームを調整すれば、放射ビームの断面に所望の均一性および強度分布をもたせることができる。
【0020】
[0025] 放射ビームBは、マスクサポート構造(例えば、マスクテーブルMT)上に保持されているパターニングデバイス(例えば、マスクMA)上に入射して、パターニングデバイスによってパターン形成される。マスクMAを通り抜けた後、放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSは、基板Wのターゲット部分C上にビームの焦点をあわせる。第2位置決めデバイスPWおよび位置測定システム(例えば、エンコーダ格子EGおよびセンサESを含むエンコーダベースの測定システム)を使って、例えば、さまざまなターゲット部分Cを放射ビームBの経路内に位置決めするように、基板テーブルWTを正確に動かすことができる。同様に、第1位置決めデバイスPMおよび別の位置測定システム(図1aには明示的に示されていない)を使い、例えば、マスクライブラリから機械的に取り出した後またはスキャン中に、マスクMAを放射ビームBの経路に対して正確に位置決めすることもできる。通常、マスクテーブルMTの移動は、第1位置決めデバイスPMの一部を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)およびショートストロークモジュール(微動位置決め)を使って達成することができる。同様に、基板テーブルWTまたは「基板サポート」の移動も、第2ポジショナPWの一部を形成するロングストロークモジュールおよびショートストロークモジュールを使って達成することができる。ステッパの場合は(スキャナとは対照的に)、マスクテーブルMTは、ショートストロークアクチュエータのみに連結されてもよく、または固定されてもよい。マスクMAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1およびM2と、基板アライメントマークP1およびP2とを使って、位置合わせされてもよい。例示では基板アライメントマークが専用ターゲット部分を占めているが、基板アライメントマークをターゲット部分とターゲット部分との間の空間内に置くこともできる(これらは、スクライブラインアライメントマークとして公知である)。同様に、複数のダイがマスクMA上に設けられている場合、マスクアライメントマークは、ダイとダイの間に置かれてもよい。
【0021】
[0026] 一般に、(例えば、投影システムPLに対する)パターニングデバイスおよび基板の位置を決定するために適用される位置測定システムは、例えば、投影システムPLが設置されるメトロロジフレームMFなどのフレームに設置された第1部分(例えば、格子EGなどの格子)と、サポートまたは基板テーブルに設置することができる第2部分(例えば、エンコーダセンサESなどの1つ以上のセンサ)とを含むことができる。当然のことながら、1つ以上の格子がサポートまたは基板テーブルに設置される代替の構成や1つ以上のセンサがメトロロジフレームなどの基準フレームに設置される代替の構成も同様に適切である。本発明の一実施形態によると、リソグラフィ装置に適用される位置測定システムは、例えば、マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラ、専用電子機器または他の任意のプロセシングデバイスの形態であってよい、位置測定システムから得られる(1つ以上の)位置信号を処理するための計算ユニットをさらに含む。計算ユニットは、例えば、投影システムPLに対する基板またはパターニングデバイスの位置を表す、例えば、位置基準として適用されることができる信号が得られるように1つ以上の位置信号に変換を適用するように配置される。本発明の一実施形態によると、計算ユニットは、さらに、測定システム、すなわち、第1部分または第2部分のいずれかあるいは両方の所定のドリフト特性に基づく変換に調整を適用するように配置される。
【0022】
[0027] 例示の装置は、以下に説明するモードのうち少なくとも1つのモードで使用できる。
【0023】
[0028] 1.ステップモードにおいては、マスクテーブルMTまたは「マスクサポート」および基板テーブルWTまたは「基板サポート」を基本的に静止状態に保ちつつ、放射ビームに付けられたパターン全体を一度にターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一静的露光)。その後、基板テーブルWTまたは「基板サポート」は、Xおよび/またはY方向に移動され、それによって別のターゲット部分Cを露光することができる。ステップモードにおいては、露光フィールドの最大サイズによって、単一静的露光時に結像されるターゲット部分Cのサイズが限定される。
【0024】
[0029] 2.スキャンモードにおいては、マスクテーブルMTまたは「マスクサポート」および基板テーブルWTまたは「基板サポート」を同期的にスキャンする一方で、放射ビームに付けられたパターンをターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一動的露光)。マスクテーブルMTまたは「マスクサポート」に対する基板テーブルWTまたは「基板サポート」の速度および方向は、投影システムPSの(縮小)拡大率および像反転特性によって決めることができる。スキャンモードにおいては、露光フィールドの最大サイズによって、単一動的露光時のターゲット部分の幅(非スキャン方向)が限定される一方、スキャン動作の長さによって、ターゲット部分の高さ(スキャン方向)が決まる。
【0025】
[0030] 3.別のモードにおいては、プログラマブルパターニングデバイスを保持した状態で、マスクテーブルMTまたは「マスクサポート」を基本的に静止状態に保ち、また基板テーブルWTまたは「基板サポート」を動かす、またはスキャンする一方で、放射ビームに付けられているパターンをターゲット部分C上に投影する。このモードにおいては、通常、パルス放射源が採用されており、さらにプログラマブルパターニングデバイスは、基板テーブルWTまたは「基板サポート」の移動後ごとに、またはスキャン中の連続する放射パルスと放射パルスとの間に、必要に応じて更新される。この動作モードは、前述の型のプログラマブルミラーアレイといったプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
【0026】
[0031] 上述の使用モードの組合せおよび/またはバリエーション、あるいは完全に異なる使用モードもまた採用可能である。
【0027】
[0032] 本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置においては、本発明の一実施形態による位置測定システムなどの位置測定システムが適用される。
【0028】
[0033] 図2では、そのような位置測定システムの側面図を概略的に示している。示されている構成では、位置測定システムは、例えば第1次元または第2次元格子であってもよい第1格子100.1および第2格子100.2を含む第1部分100と、格子と協働しかつ測定システムの計算ユニット150に位置信号110を提供するように配置されたセンサ200.1および200.2を含む第2部分200と、を含む。代替として、第1部分は、第2部分の(1つ以上の)センサと協働するように配置された1つ以上の一次元または二次元位置マーカを含んでもよい。そのような位置マーカは、例えば、容量ベースの位置センサ、誘導ベースの位置センサ、短距離干渉計、フィゾー(Fizeau)干渉計または短距離絶対干渉計(short range absolute interferometer)に使用することができる位置基準マークまたは1つ以上のターゲットであってもよい。
【0029】
[0034] 示されている構成では、格子100.1および100.2は、測定システムの共通フレーム120に設置される(フレームは、例えば、ゼロデュール(Zerodur)または他のあらゆる種類の低熱膨張材から成る)。この共通フレーム120は、投影システムPLも設置されている基準フレームRFに設置される。示されるように、センサ200.1および200.2はオブジェクトテーブル210に設置され、このテーブル210は、例えばリニアモータまたはアクチュエータを用いて投影システムPLに対して移動可能であるステージ220に設置された基板テーブルであってよい。
【0030】
[0035] 動作中、センサは、信号110を計算ユニット150に提供することができる。この信号は、例えば、格子100.1に対するセンサ200.1の位置を表す。一般に、位置信号は、(XY平面内の)水平方向または垂直方向(Z方向)あるいはその組み合わせにおける位置を表し得る。
【0031】
[0036] オブジェクトテーブルを、特にオブジェクトテーブル(例えば基板)に設置されたオブジェクトを、投影システムPLに対して位置決めするために、センサによって提供される位置信号は、投影システムに対するオブジェクトテーブル210の実際の位置を表す信号にマッピングまたは変換される。そのような信号は、さらに、例えば、ステージ220のアクチュエータまたはモータを制御する位置制御システムに対する位置基準(またはフィードバック)として使用されてもよい。そのようなマッピングまたは変換は、例えば、線形変換を含んでよい。マッピングまたは変換は、センサおよび格子の協働する対ごとに異なり得ることに留意されたい。
【0032】
[0037] そのようなマッピングまたは変換は、例えば、位置測定システムの初期設定または較正中に得ることができ、かつ測定システムの計算ユニット150内に格納することができる。したがって、位置測定システムが一度較正されると、システムがドリフトを経験し得ることが分かった。本発明の実施形態の意図する範囲の中で、ドリフトは、第1または第2部分が設置される構造体または部材に対する第1または第2部分の変形または変位のあらゆる形態を表すために用いられる。したがって、図2を参照すると、基準フレームRFまたは投影システムPLに対する格子100.1および100.2または共通フレーム120の変位または変形をドリフトとみなすことができる。位置測定システムの第1部分または第2部分のいずれか(あるいは両方)は異なる原因を有し得る。機械的応力または熱応力が、例えば、ドリフトを生じさせる。例えば、フレームに対する格子の過制約設置が、変形を引き起こす。同様に、格子の変形は、重力によって生じ得る。図2の構成では、重力による(例えば、基準フレームRFへの格子または共通フレームの接続部160の延在による)格子100.1および100.2または共通フレーム120の下方変位が生じ、較正に影響を及ぼし得る。
【0033】
[0038] ドリフトにより、基準フレームRFまたは投影システムに対するオブジェクト(またはオブジェクトテーブル)の実際の位置へのセンサの位置信号のマッピングまたは変換は、もはや有効ではなく不正確となり得る。当業者には明らかなように、そのような無効または不正確なマッピングは、位置測定システムが例えばリソグラフィ装置に適用された場合、露光プロセスに悪影響を及ぼし(オーバーレイまたはフォーカスの両方の観点から)、したがって装置の歩留まりに悪影響を及ぼし得る。そのような装置においては、変換がもはや有効または正確ではないという範囲は、例えば(面内精度を評価するための)オーバーレイマップまたは(垂直位置決め精度を評価するための)デフォーカスマップを決定することによって評価することができる。これは、オーバーレイおよびフォーカスマークを有する基板を露光させ、それによって図2に示すシステムのような位置測定システムを用いて基板を支持する基板テーブルを位置決めし、測定されたずれを評価することを伴う。そのようなずれは、例えば、基板の不正確な位置決めによるオーバーレイエラーを含んでよい。不正確な位置決めは、例えば、不正確なマッピングまたは変換によって引き起こされる。上記を行うことによって、ドリフトの性質を所望の自由度で決定することができ、観測されたずれに基づいて変換を調整することができる。これらの方法は基板の露光およびその結果の評価を必要とするため、そのような方法は、装置の有効性を著しく低下し得る。
【0034】
[0039] したがって、位置測定システムで発生するドリフトを決定するために代替の方法が考案された。この点において、例えば、本明細書中にその全体が参考により援用される米国特許出願公開第2009/0128791号を参照されたい。参照される出願では、位置測定システムのドリフトは、位置測定システムから得られる位置信号で観測される不整合性に基づいて決定される。参照される出願では、そのような不整合性は、以下で考察するように、位置測定システムの動作領域(の一部)で決定され得る位置信号の冗長性から決定される。
【0035】
[0040] そのような不整合性から決定されるドリフトは位置測定システムの実際のドリフトのほんの一部であることが本発明者により分かった。これは、位置測定システムの第1部分、第2部分または両方の部分のある変形は、得られる位置信号における不整合性を全く引き起こさないという事実による。一例として、格子100.1または100.2の垂直変位はその全体において位置信号における不整合性を全く引き起こさず、したがって、ドリフトまたはドリフトコンポーネント(drift component)として観測されない。別の例としては、例えば共通フレーム120とともに格子の傾斜も、位置信号における不整合性という結果にならない。しかしながら、当業者には明らかなように、そのような垂直変位または傾斜は補正されるべきである。なぜなら、格子または傾斜の既知または仮定位置からの垂直変位は、補償されない場合、露光中の基板のデフォーカスまたはオーバーレイエラーとなり得る。
【0036】
[0041] したがって、本発明の一実施形態によると、ドリフト補償は、位置信号における不整合性という結果にならない位置測定システム(またはその一部)のドリフトを補償するのに特に適しているものが提案されている(しかしながら、以下に説明するようにそうようなドリフトは、一実施形態では、観測された不整合性に基づいて導き出される)。本発明の実施形態によると、位置測定システムの第1部分または第2部分(あるいは両方)のそのようなドリフト補償は、それぞれ、第1部分または第2部分あるいは両方の所定のドリフト特性に基づいており、所定のドリフト特性は、第1部分または第2部分あるいは両方の1つ以上のいわゆる基礎または基本の変形形状を含む。発生するドリフトの一部が限定された数の特定の変形の(例えば、組み合わせの)関数として説明することができることが本発明者により分かった。そのような変形は、例えば、移動または傾斜あるいは放物線変形を含む。本発明者により、本発明の実施形態では基本形状または基本形状変形と呼ばれるそのような変形(第1または第2部分全体の相対的変位も含み得る)が特定の(機械的または動作)条件に起因することがあり、かなりの程度予測することができることが分かった。システム部品(例えば、格子)の機械的性質またはこれらの部品が設置される方法に基づき、特定の変形形状を事前に(例えば、シミュレーションによって)決定することができる。同様に、位置測定システム周辺の熱源による熱負荷、あるいは基板またはパターニングデバイスが設置されたサポートの加速力などの位置測定システム(の一部)に作用する力などの動作条件は、事前に(例えば、シミュレーションによって)決定することができる特定の変形形状という結果となり得る。さらに、位置測定システムの格子またはセンサアレイが例えば過剰決定法(over-determined manner)で設置された場合、この設置方法は、例えば、事前に(例えば、シミュレーションによって)決定することができる特定の変形形状という結果となり得る。
【0037】
[0042] 熱源が例えば位置測定システムの格子の近くにあった場合、これは、例えば多項式または他の関数を用いて曲線適合方法によって説明または定義することができる特定の変形という結果となり得る。
【0038】
[0043] したがって、位置測定システムのコンポーネント(component)の変形/変位(一般には、ドリフト)の様々な原因を識別することができ、これらの各々の原因について、位置測定システムの対応する変形またはドリフトを決定することができる。本発明の実施形態において、そのようなドリフトコンポーネントまたは特性を本発明の実施形態では基本形状または基本形状変形と呼ぶ。
【0039】
[0044] 一実施形態では、ドリフト特性に含まれる基本形状または基本形状変形は、位置測定システムの(例えば、有限要素モデリングを用いた)数学モデリングから決定される。代替としてまたはそれに加えて、基本形状または基本形状変形を実験的に決定することもできることに留意されたい。
【0040】
[0045] 本発明の一態様によると、位置測定システム(またはそのコンポーネント)の実際の変形は、それ自体を様々な方法で表すことができ、したがって様々な方法で観測および分析することができることが考案された。
【0041】
[0046] 位置測定システム(の一部)の変形またはドリフトに気づくことができる第1方法は、位置測定で観測される不整合性によってである(これは以下の図3を参照してより詳細に考察される)。本発明の一実施形態では、そのような不整合性(例えば、不整合性マップに示される)は、分析されかつ異なる基礎のコンポーネント(basic component)(基底ベクトル(base vector)の基本形状と呼ぶこともできる)の線形結合として表すことができる。言い換えると、(設置態様および動作態様を含む)位置測定システムの既知の構成を考慮すると、測定システムの可能な変形は、限られたセットの基礎の変形の線形結合として説明することができる。そのような変形を基本形状または基底ベクトルとして数学的に説明することができる。そのような基本形状または基底ベクトルのうちの1つ以上の組み合わせ(例えば、線形重み付き結合(linear weighted combination)を考慮すると、変形を説明することができる。さらに、そのような変形を考慮すると、そのような変形が実際に生じた場合、(位置測定における)どの不整合性が観測されるかを決定することができる。したがって、本発明の一実施形態においては、1つ以上の基本形状は、不整合性マップを表すための1つ以上の基底ベクトルの第1セットを含む。したがって、そのような基底ベクトルのセットでは、各ベクトルは特定の不整合性を表す。
【0042】
[0047] 位置測定システム(の一部)の変形またはドリフトを観測できる第2方法は、オーバーレイまたはフォーカス測定によってであり、露光プロセスのオーバーレイまたは(デ)フォーカスをウェーハまたは基板上の関数位置として説明するオーバーレイまたはフォーカスマップという結果となる。上記したように、これは、オーバーレイおよびフォーカスマークを有する基板を露光し、それによって位置測定システムを用いることを伴う。そのようなオーバーレイまたはフォーカスマップが利用できる場合、(位置測定システムの可能な変形を説明する)基本形状または基底ベクトルのセットを求めることができ、これは、特定の方法で組み合わされた場合、所定のオーバーラップまたはフォーカスマップを引き起こす(またはその近似値になる)。したがって、本発明の一実施形態では、1つ以上の基本形状は、オーバーレイまたはフォーカスマップを表すための1つ以上の基底ベクトルの第2セットを含む。したがって、この基底ベクトルの第2セットにおける各基底ベクトルは、基板の特定のオーバーレイまたはフォーカス分布を説明することができ、そのようなベクトルの組み合わせ(例えば、線形重み付き結合)は、実際のオーバーレイまたは(デ)フォーカスマップを近似させるために使用することができるオーバーレイまたは(デ)フォーカスマップという結果となる。
【0043】
[0048] 一実施形態では、マッピングは、(不整合性を表すために適している)第1セットの基底ベクトルと、(オーバーレイまたは(デ)フォーカスマップを表すために適している)第2セットの基底ベクトルと、から導き出される。そのようなマッピングは、第1セットの基底ベクトルと第2セットの基底ベクトルとの間の相関を提供し、それによって、第1セットの基底ベクトルの所定のベクトルの組み合わせに対して、第2セットの基底ベクトルの対応するベクトルの組み合わせを導き出すことができる。
【0044】
[0049] 一実施形態では、基本形状は、不整合性を説明するための第1セットの基底ベクトルと、オーバーレイおよび/またはデフォーカスマップを説明するための第2セットの基底ベクトルと、を含み、相関は、不整合性を表すために第1セットの基底ベクトルの組み合わせを決定し、第1セットの基底ベクトルの組み合わせを第2セットの基底ベクトルの組み合わせにマッピングすることによって得られる。第2セットの基底ベクトルの組み合わせは、オーバーレイおよび/またはデフォーカスマップを表す。
【0045】
[0050] 一実施形態では、そのようなマッピングを用いて、観測した不整合性マップからオーバーレイまたは(デ)フォーカスマップを近似することができる。したがって、そのような実施形態では、以下のプロセスを行うことができる。
【0046】
[0051] 第1ステップでは、不整合性マップは、冗長な測定のセットが利用できる領域内の位置測定から導き出される。
【0047】
[0052] 第2ステップでは、第1セットの基底ベクトルを用いて、基底ベクトルの組み合わせ(例えば、線形重み付き結合)によって不整合性マップを近似する。
【0048】
[0053] 第3ステップでは、上記のマッピングを用いて、第2セットの基底ベクトルの対応するベクトルの組み合わせを決定し、それによってこの組み合わせはオーバーレイおよび/または(デ)フォーカスマップを説明する。
【0049】
[0054] 第4ステップでは、そのようなオーバーレイまたは(デ)フォーカスマップを用いて、オーバーレイまたはフォーカスを改善するために位置信号の変換に適用される調整を決定することができる。
【0050】
[0055] したがって、本発明の一実施形態によると、上記したように、基本形状(例えば、不整合性マップあるいはオーバーレイまたは(デ)フォーカスマップを表す基底ベクトル)を事前に決定することができ、それによってこれらの形状を説明する情報を適切な形態で本発明の一実施形態による位置測定システムの計算ユニット内、例えば、データバース内に格納することができる。
【0051】
[0056] 上記したように、本発明の実施形態にしたがって位置信号の変換に対する調整を決定するために適用される基本形状は、設置の方法などといったいくつかの原因に帰し得るが、重力または位置測定システムの近くの熱源によってもたらされる熱負荷による変形にも起因し得る。上記したように、一部の場合では、これらの基礎の変形形状に対応するドリフトは、位置測定における不整合性として検出することができない(以下、そのようなドリフトまたは変形を、整合性のあるドリフトまたは変形と呼ぶ)。したがって、特定の変形は不整合性マップでは見えない場合があるが、それらはオーバーレイまたはフォーカスに対するエラーを引き起こし得る。したがって、第1セットの基底ベクトルと第2セットの基底ベクトルとの間の上記のマッピングを使用した場合、不整合性測定に基づいて位置測定システムの整合性のあるドリフトの少なくとも一部を補償することができる。したがって、一実施形態では、変換が適用されかつ第1部分または第2部分あるいは両方の1つ以上の基本形状(例えば、上記したような第1セットの基底ベクトルおよび第2セットの基底ベクトル)を含む所定のドリフト特性に基づく調整は、位置測定システムの整合性のあるドリフトを少なくとも部分的に補償するために使用することができる。
【0052】
[0057] したがって、一実施形態では、相関が、位置測定で観測される不整合性と整合性のないおよび整合性のあるドリフトまたは変形との間で導き出される。そのような相関は、例えば、位置測定システムの有限要素モデルから導き出すことができ、それによって、位置測定システムの所定の変形に対して、発生する不整合性およびオーバーレイ/フォーカスマップならびに上記した第1および第2ベクトルのセットを導き出す。
【0053】
[0058] 図2bは、実際の変形またはドリフトと、観測可能な不整合性およびエラー(オーバーレイまたはデフォーカスなど)と、基本形状の対応する重さと、の間の関係を概略的に示している。
【0054】
[0059] 図2bでは、PM変形/ドリフトは、位置測定システム(PMS)の実際の変形またはドリフトを示している。そのようなドリフトまたは変形は、位置測定値における不整合性(不整合性マップ(IM)に表すことができる)およびオーバーレイおよび/またはフォーカスエラー(オーバーレイ/フォーカスマップ)を引き起こし得る。不整合性およびオーバーレイ/フォーカスエラーの両方は、測定することができる検出可能な量である。しかしながら、不整合性マップを決定することはオーバーレイまたはデフォーカスマップを決定することより少ない努力と時間を必要とし得ることを挙げておく。不整合性マップはリアルタイムで決定および更新することができる一方、オーバーレイまたはデフォーカスマップはオーバーレイまたはフォーカスマークを有する専用の基板の露光を必要とし得る。したがって、オーバーレイまたはデフォーカスマップを決定することは、装置の重要なダウンタイムという結果となることがあり、したがって、装置の生産性に悪影響を与え得る。本発明の一実施形態によると、不整合性マップIMとオーバーレイおよび/またはデフォーカスマップとの相関250は、1つ以上の基本形状を含む所定のドリフト特性を用いて決定される。そのような実施形態では、不整合性マップ(IM)およびオーバーレイおよび/またはデフォーカスマップの両方を、図2bに示すように、第1および第2基底ベクトルまたは基本形状のそれぞれのセットにマッピングすることができ(矢印255.1および255.2で示される)、それによって、ベース座標または重みの第1および第2セットのそれぞれで表される(第1セット、第2セット)。したがって、そのような重みのセットは、不整合性マップIMあるいはオーバーレイまたは(デ)フォーカスマップのいずれかを表す/近似する基底ベクトルまたは基本形状の特定の組み合わせを説明する。ベース座標の両セットを互いにマッピング260することによって相関250は、比較的簡単に決定される不整合性(IM)と重大な測定力を必要とする対応するオーバーレイまたはデフォーカスエラーとの間で決定される。
【0055】
[0060] したがって、整合性のあるドリフトを、不整合性測定を用いて実際に測定することはできないが、図示したような方法を用いて、位置信号の変換に対する調整は、観測される不整合性に基づくことができる。そのような構成では、図3を参照して以下に説明するように、不整合性は、冗長な位置測定のセットが可能である動作領域の一部における1つ以上の不整合性マップで説明することができる。さらに、ドリフトという結果となり得る原因は限定された(有限)セットだけであるため、不整合性マップは、不整合性基底ベクトル(すなわち、第1セットの基底ベクトル)の組み合わせとして説明/近似することができ、各不整合性基底ベクトルは、例えば、位置測定システムの特定の設置方法または特定の負荷などの特定の原因によって得られる不整合性マップを説明する。
【0056】
[0061] したがって、本発明の一実施形態によると、計算ユニットは、不整合性マップを決定してその不整合性マップに基づいて変換のさらなる調整を決定するようにさらに配置される。
【0057】
[0062] 一実施形態では、位置信号に適用される変換は、例えば、ルックアップテーブルとして公式化されるマッピングを含む。そのような構成では、調整は、ルックアップテーブルの変形として公式化することができる。
【0058】
[0063] 代替として、変換は、多項式などの関数を用いて公式化することができ、その後、調整は、多項式のパラメータに対する調整として公式化される。
【0059】
[0064] 図3では、ステージの角の近くに配置された4つのセンサ320が設けられた(基板ステージなどの)ステージ310の上に配置された4つの板状格子300を含む位置測定システムの上面図を示している。各センサは、垂直(z位置)および水平(x位置またはy位置)位置信号を提供する。したがって、図3(a)に示すように、ステージが3つのセンサのみが操作可能である位置(すなわち、格子の下の位置)にある場合、6自由度のステージ位置を決定するのに十分である6位置信号が得られる。ステージが図3(b)に示すような位置にある場合、8つの位置信号が有効であり、これは、格子または格子を基準フレームに接続する共通フレームのドリフトによって不整合となり得る。そのような不整合性は、異なる方法で公式化することができる。すなわち、2つの位置信号と他の6つ信号に基づくその2つの信号の予測との差があり、1つの6つの信号のサブセットから導かれるステージ位置と別の6つの信号のサブセットに基づく位置との差がある。
【0060】
[0065] 当然のことながら、不整合性は、格子および/またはセンサの無数の異なる変形/ドリフトに起因することができる。したがって、不整合性のある信号のセットを整合性のある信号のセットに変換するための無数の方法がある。
【0061】
[0066] 本発明の一実施形態によると、不整合性は任意の方法で除去されるのではなく、例えば、有限要素計算によって決定される個別の限定された数の変形に起因する。そのような計算を用いて、上記で説明したように、特定の原因による基本形状変形を決定することができる。そのような変形が決定された場合、変形が位置信号における不整合性を引き起こした場合に対応する不整合性マップを決定することも可能である。したがって、不整合性基底ベクトルのセットを基本形状変形のセットから導き出すことができる。基底ベクトルという単語は、特定の基本形状から導き出される特定の不整合性の数学的記述を示すために用いられる。これらの不整合性基底ベクトルは、例えば、測定された不整合性マップ(例えば、不整合性基底ベクトルの線形および重み付き結合として)を表すために本発明の一実施形態で使用することができる。そのような表示は、その後基本形状変形の組み合わせに変形または変換することができ、この組み合わせから、位置信号の変換の調整を得ることができる。
【0062】
[0067] 図4では、本発明の一実施形態による位置測定システム(図2で説明するシステムのようなエンコーダベースの測定システム)の一実施形態の上面図を概略的に示している。位置測定システムは、例えば、基準フレーム(図示せず)に設置することができる4つのセンサアレイ400.1、400.2、400.3および400.4(各々は、複数のセンサ405を含んでいる)および基板430を保持するように配置された基板ステージに設置された4つの格子410.1〜410.4を含む。示されるような構成内の4つのセンサアレイを用いることによって、ステージはセンサの制御のもとで比較的大きな動作領域を網羅することができる一方、(ステージに設置される)格子を比較的小さく維持することができる。任意のセンサアレイが任意の格子の上にあった場合、上記した方法と同様の方法で位置信号を得て処理することができる。さらに、上記したように、1つ以上の位置信号は、例えば、ルックアップテーブルを用いて位置信号の座標マッピングによって、投影システムに対する基板の位置を得るために変換することができる。本発明の実施形態によると、例えば、1つ以上のセンサアレイまたは格子のドリフトを考慮に入れるためにこの変換に調整が適用される。そのような調整は、例えば、センサアレイまたはセンサアレイのアセンブリ全体としての所定のドリフト特性に基づくことができ、このドリフト特性はアレイまたはアレイのアセンブリの基本形状を含む。
【0063】
[0068] さらに、示されているような位置測定システムは、不整合性または不整合性マップを導き出すことができるステージの動作領域(の一部)における冗長な位置信号のセットの生成も可能にすると理解することができる。そのような不整合性は、上記した方法と同じ方法で、位置信号の変換にさらなる調整を適用するために同様に使用されてよい。
【0064】
[0069] 上記の実施形態では、位置測定システム(例えば、エンコーダまたは干渉計ベースの測定システム)(の一部)の変形またはドリフトの効果は、(1つ以上の基本形状を含む所定のドリフト特性を用いて)概算され、決定され、かつ位置測定信号の変換を調整するために使用される。
【0065】
[0070] 上記の実施形態では、調整は、例えば、位置決めされたオブジェクトの動作範囲の一部で利用可能である位置測定信号における測定された不整合性に基づくことができる。そのような不整合性を観測するために、冗長な位置測定のセットが可能となるべきである。そのような冗長な位置測定のセットは、一般に、位置決めされたオブジェクトの動作範囲の一部に対してのみ可能である(しかしながら、本発明は、冗長位置測定が位置測定システムの動作領域全体にわたって可能である実施形態を排除しない。そのような測定システムは、例えば、図3aおよび図3bに示す4つのセンサ(格子と協働する)より多く含む。)したがって、不整合性から生じる変形のモデリング(例えば、上記の第1セットの基底ベクトルを用いた)は、以下の近似またはエラー源の影響を受けることがある。
【0066】
[0071] 1.不整合性が測定範囲(または動作範囲)の一部のみで有効な場合、外挿を、不整合性を測定することができない領域における変形またはドリフトの決定に含む可能性がある。
【0067】
[0072] 2.位置測定におけるエラーは、決定される不整合性の実際値、したがって、変形またはドリフトの後続のモデリングに影響を及ぼし得る。
【0068】
[0073] 3.冗長測定が可能である動作または測定範囲の領域は一般には所定でありかつ装置の設計次第であり、またある程度変形またはドリフトに対して鈍感であり、あるいはそのような冗長測定が可能である所定の領域に対して鈍感であり得るため、発生する異なる基本変形または基本形状を識別することが困難となり得る。言い換えると、(例えば、不整合性マップを用いて)不整合性を1つ以上の基底ベクトルの組み合わせにモデリングすることは、いわゆる不良条件問題であり得る。あるいは、モデルは、比較的高調整数を有し得る(これは、冗長な位置測定のセットが動作範囲全体で可能である場合に事実であり得ることに留意されたい)。同様に、(第1セットの基底ベクトルを用いて)モデリングされた不整合性を(第2セットの基底ベクトルを用いた)オーバーレイおよび/またはデフォーカスマップを表すモデルにマップすることと上述したマッピングは、同じ悪い状態に悩まされる場合がある。
【0069】
[0074] この悪い状態により、モデル化された変形またはドリフトは、位置信号の変換に行われる調整に影響を及ぼし得る不整合性を有し得る。この問題を回避または少なくとも軽減するためには、位置測定システム(の一部)の実際の変形またはドリフトをより正確に決定または予測するようにセンサを利用することが本発明の一態様である。
【0070】
[0075] そのような実施形態では、複数の温度および/または歪みセンサが、1つ以上の基本形状を含む所定のドリフト特性とともに使用されて位置信号の変換に対する調整を決定する。この手法は、変形またはドリフトを観測することができる第3方法を提供することに留意されたい。上記したように、変形またはドリフトを観測する第1方法は、位置測定における不整合性によって(例えば、冗長位置測定が可能である動作領域の一部において)であり、第2方法は、オーバーレイまたはフォーカス測定を行いかつオーバーレイまたはデフォーカスマップを確立することによってである(オーバーレイまたはフォーカスエラーの少なくとも一部は、測定システムの変形またはドリフトに起因することができる)。本発明の一実施形態によると、温度または歪みセンサは、以下の方法で位置測定システムの変形またはドリフトの予測を容易にするために用いることができる。
【0071】
[0076] 当業者には明らかなように、位置測定システム(例えば、一次元または二次元格子またはセンサアレイ)(の一部)の変形は、歪みセンサによって観測することができる局所的変形を引き起こす。さらに、変形またはドリフトの重大な原因として、熱負荷を挙げることができる。したがって、歪みまたは温度センサは、位置測定システムの変形またはドリフトの表示を提供することができる。有限要素シミュレーションなどのシミュレーションを用いて、特定の負荷状況(例えば、アクチュエータによって生成される力および熱負荷を含む)をモデリングすることができ、それによって、所定の負荷状況に対する変形または温度分布についてのフィードバックを得る。代替的にまたはそれに加えて、測定を同様に適用して異なる負荷状況を分析することもできる。
【0072】
[0077] そのようなシミュレーションは、上記したように、例えば熱負荷などの特定の原因に起因し得る特定の変形を説明する基本形状または基底ベクトルのセットの確立を容易にし得ることにも留意されたい。
【0073】
[0078] 一実施形態では、そのようなシミュレーションを用いてさらに複数のセンサ(温度または歪みセンサあるいはその組み合わせ)を設置するための最適または所望の位置を決定する。センサのための最適または所望の位置を決定するために、以下のような1つ以上の基準を用いることができる。
【0074】
[0079] −歪みまたは温度センサの位置は、シミュレートされた歪みまたは温度の絶対値またはピーク値に基づくことができる。
【0075】
[0080] −あるいは、センサの位置は、異なる変形形状(すなわち、基本形状)の識別を容易にするような位置であることができる。
【0076】
[0081] 理想的には、後者の選択肢は、センサに対する位置のセットおよび直交する対応の基本形状のセットという結果となる。実際には、そのような状態が起きる可能性は低いが、センサの位置の適切な選択により、(多数の基本形状による)変形のモデリングまたは上記のマッピングの問題は、改善された条件数を有することができる。したがって、本発明の実施形態における複数のセンサ(歪みおよび/または温度センサ)の用途は2つあってよい。
【0077】
[0082] 一実施形態において、センサから得られるフィードバックは、位置測定システムの変形またはドリフトをモデリングするために直接使用することができる。
【0078】
[0083] あるいは、一実施形態では、1つ以上のセンサから得られるフィードバックは、不整合性マップを用いて変形またはドリフトの改善されたモデリングを得るためのさらなる入力または制約として使用することができ、またはその逆である。不整合性マップは、センサフィードバックに基づいて変形またはドリフトのモデリングを得るためのさらなる入力または制約として使用することができる。センサフィードバックを採用する両方法を以下により詳細に説明する。
【0079】
[0084] 本発明による位置測定システムの一実施形態では、位置測定システム(例えば、エンコーダベースの測定システム)には、複数の温度および/または歪みセンサが設けられており、計算ユニットの入力端子は、複数のセンサのセンサ信号を受信するように構成され、計算ユニットは、使用中、センサ信号に基づいて変換に対する調整を決定するようにさらに配置される。そのような実施形態では、複数のセンサは、例えば、位置測定システムの格子またはセンサアレイ上の所定の配置に設置することができる。
【0080】
[0085] どの配置にセンサが位置決めされるべきかを決定するために、以下の手法を適用することができる。
【0081】
[0086] 第1ステップでは、位置測定システムの熱力学的分析が行われる。そのような分析は、システムの熱力学的挙動をそれぞれの負荷(例えば、熱負荷)が適用される時間の関数として決定することを含むことができる。そのような分析は、システムの試験的設定を用いて行うことができるかまたはシミュレーションに基づくことができることに留意されたい。観測された性質から、最も関連性のある変形モードを説明する基本形状のセットを導き出すことができる。これは、例えば、特異値解析または分解、主成分分析またはPOD(固有直交分解)として公知である数学的手法を用いて行うことができる。そのような基本形状のセットは、したがって、発生する負荷状況を基本形状の組み合わせ(例えば、線形重み付き結合)の説明を可能にする。記述した手法を用いて、所望の精度内で説明するためにいくつの基本形状が必要かについて評価を行うことができる。したがって、理想的には、この基本形状の数は、センサのフィードバックを用いて実際の負荷状況を概算または近似するために必要とされるセンサの最小数も示す。上記した分析に基づいて、変形またはドリフトに影響を与える最も重要な動的コンポーネントを識別することができる。したがって、少なくとも動的コンポーネントの数と同じ数のセンサを採用するべきである。
【0082】
[0087] 第2ステップでは、センサのセットのための最適な位置が決定される。本発明の一実施形態によると、センサための最適な位置は、異なる基本形状を最も簡単に識別することができる位置に対応する。数学的に、これはマトリクスとして表すことができ、さらに、センサ‐基本形状マトリクスとも呼ばれる。これは、低い条件数を有するセンサ信号と位置測定システムの変形またはドリフトとの関係を説明する。有限要素計算および/または試験的測定を用いて、そのようなセンサ‐基本形状マトリクスを特定のオンライン負荷状況における位置測定システムの実際の変形を決定するためのモデルとして構築および使用することができる。そのようなマトリクスは、通常、センサの数と等しい数の列および基本形状の数と等しい数の行を有する静的マトリクスである。
【0083】
[0088] この手法を用いて、測定エラーまたはノイズなどの影響に対するモデル(すなわち、適用されるマトリクス)の感度を決定することができ、マトリクスの条件数を介して可能である。感度が高いと分かった場合、許容の感度が得られるまでさらなるセンサがモデルに含まれてよい。
【0084】
[0089] 一実施形態では、複数のセンサの位置および数は、センサ‐基本形状マトリクスの条件数を所定の閾値より下で維持するために決定される。
【0085】
[0090] 一実施形態では、温度センサおよび歪みセンサの両方の組み合わせは、センサ信号を計算ユニットに提供するために適用される。そのような構成においては、センサ(歪みまたは温度)の種類の最適な選択を行うことができ、これは様々な基本形状の識別性を改善し、したがって、さらに条件数を減少させる。
【0086】
[0091] 既に述べたように、一実施形態では、センサ‐基本形状マトリクスの適用は、上記したように不整合性測定と組み合わせることができる。一例として、センサ‐基本形状マトリクスを用いて位置測定システムまたはその一部の変形またはドリフトが決定された場合、当業者はそのような変形またはドリフトの場合に測定されるべきである位置測定における不整合性を決定することができる。これらの不整合性は、上記で説明したように冗長な位置測定のセットから導き出される実際の不整合性マップと比較することができる。両方の不整合性間のあらゆる不一致は、使用されるモデル、例えば、センサ‐基準形状マトリクスに対して調整を行うことを生じさせ得る。
【0087】
[0092] あるいは、変形またはドリフトを決定/予測するために不整合性マップを使用した場合、例えば、センサ信号を介して得られるさらなる情報を使用してモデリングを改良または補正するか、または検証として使用することができる。これを図示するためには、不整合性マップおよび第1セットの基底ベクトルと第2セットの基底ベクトルとのマッピングの使用が位置測定システムの一部の変形を決定するために使用された場合、当業者はこの変形が実際に発生しているかを歪みセンサからのフィードバックに基づいてある程度確認することができる。
【0088】
[0093] 上記の位置測定システムの実施形態では、モデリングされた変形またはドリフトを確認または補正するためにさらなる入力を提供し得る他のタイプのセンサを含むことが有益であり得る。一例として、容量センサなどの位置センサを用いて、例えば、格子またはセンサアレイの角の実際の位置を決定することができ、それによって、モデリングされたまたは数学的に決定された変形またはドリフトを検証するためにフィードバックを提供する。
【0089】
[0094] 一実施形態では、変換の調整は、例えば一週間に一度、定期的に適用される。それを行うことにより、信号を位置決めするために適用される変換(すなわち、調整された変換)は、比較的長い期間正確な位置決めを可能にすることができ、それによって、例えば、オーバーレイマップおよびフォーカスマップの評価を必要とする時間のかかる再較正の適用を回避する。
【0090】
[0095] 提案された位置測定システムのドリフトの少なくとも一部を補償する方法はエンコーダベースの測定システムに特に適しているが、干渉計ベースの測定システムなどの他の種類の位置測定システムにおける適用も同様に考えられる。
【0091】
[0096] リソグラフィ装置の一実施形態では、1つ以上のアレイまたはセンサおよび一次元または二次元格子は、サポートまたは基板テーブルの動作領域における過剰決定された数(over-determined number)の位置信号を提供するように配置される。過剰決定された数の信号は、不整合性マップを決定するために使用される。
【0092】
[0097] 位置測定システムの実施形態では、不整合性は、第2部材に対する第1部材の位置の関数として不整合性を説明する不整合性マップを含み、調整は、不整合性マップおよび所定のドリフト特性から導き出される。
【0093】
[0098] 位置測定システムのさらなる実施形態では、所定のドリフト特性は、不整合性とオーバーレイおよび/またはデフォーカスマップとの相関を含む。
【0094】
[0099] 本明細書において、IC製造におけるリソグラフィ装置の使用について具体的な言及がなされているが、本明細書記載のリソグラフィ装置が、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンスパターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造といった他の用途を有し得ることが理解されるべきである。当業者にとっては当然のことであるが、そのような別の用途においては、本明細書で使用される「ウェーハ」または「ダイ」という用語はすべて、それぞれより一般的な「基板」または「ターゲット部分」という用語と同義であるとみなしてよい。本明細書に記載した基板は、露光の前後を問わず、例えば、トラック(通常、基板にレジスト層を塗布し、かつ露光されたレジストを現像するツール)、メトロロジーツール、および/またはインスペクションツールで処理されてもよい。適用可能な場合には、本明細書中の開示内容を上記のような基板プロセシングツールおよびその他の基板プロセシングツールに適用してもよい。さらに基板は、例えば、多層ICを作るために複数回処理されてもよいので、本明細書で使用される基板という用語は、すでに多重処理層を包含している基板を表すものとしてもよい。
【0095】
[00100] 光リソグラフィの関連での本発明の実施形態の使用について上述のとおり具体的な言及がなされたが、当然のことながら、本発明は、他の用途、例えば、インプリントリソグラフィに使われてもよく、さらに状況が許すのであれば、光リソグラフィに限定されることはない。インプリントリソグラフィにおいては、パターニングデバイス内のトポグラフィによって、基板上に創出されるパターンが定義される。パターニングデバイスのトポグラフィは、基板に供給されたレジスト層の中にプレス加工され、基板上では、電磁放射、熱、圧力、またはそれらの組合せによってレジストは硬化される。パターニングデバイスは、レジストが硬化した後、レジスト内にパターンを残してレジストの外へ移動される。
【0096】
[00101] 本明細書で使用される「放射」および「ビーム」という用語は、紫外線(UV)(例えば、365nm、248nm、193nm、157nm、または126nmの波長、またはおよそこれらの値の波長を有する)、および極端紫外線(EUV)(例えば、5〜20nmの範囲の波長を有する)、ならびにイオンビームや電子ビームなどの微粒子ビームを含むあらゆる種類の電磁放射を包含している。
【0097】
[0102] 「レンズ」という用語は、文脈によっては、屈折、反射、磁気、電磁気、および静電型光コンポーネントを含む様々な種類の光コンポーネントのいずれか1つまたはこれらの組合せを指すことができる。
【0098】
[0103] 以上、本発明の具体的な実施形態を説明してきたが、本発明は、上述以外の態様で実施できることが明らかである。
【0099】
[0104] 上記の説明は、制限ではなく例示を意図したものである。したがって、当業者には明らかなように、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本記載の発明に変更を加えてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部分および第2部分であって、前記第2部分に対する前記第1部分の位置を表す位置信号を提供することによって第2部材に対する第1部材の位置を決定する、第1部分および第2部分と、
前記位置信号を受信する入力端子を有する計算ユニットであって、前記計算ユニットは、使用中、前記位置信号に変換を適用して前記第2部材に対する前記第1部材の位置を表す信号を得るとともに、前記変換に調整を適用して前記第1部分または前記第2部分あるいは両方のドリフトを少なくとも部分的に補償し、前記調整は、前記第1部分または前記第2部分あるいは両方のそれぞれの所定のドリフト特性に基づき、前記所定のドリフト特性は、前記第1部分または前記第2部分あるいは両方の1つ以上の基本形状を有する、計算ユニットと、
を備える、位置測定システム。
【請求項2】
前記1部分は、格子を有し、
前記第2部分は、前記格子と協働しかつ前記位置信号を提供するセンサまたはセンサアレイを含む、請求項1に記載の位置測定システム。
【請求項3】
前記調整は周期的に適用される、請求項1または2に記載の位置測定システム。
【請求項4】
前記位置測定システムは、前記第2部分に対する前記第1部分の位置を表す複数の位置信号間の不整合性を決定し、
前記計算ユニットは、さらに前記不整合性に基づいて前記調整を決定する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の位置測定システム。
【請求項5】
前記第1部分は、一次元または二次元格子を有し、
前記第2部分は、前記一次元または二次元格子と協働しているときに過剰決定された数の位置信号を提供する複数のセンサを有し、前記不整合性は、前記過剰決定された数の位置信号に基づいている、請求項4に記載の位置測定システム。
【請求項6】
前記システムには複数の温度および/または歪みセンサがさらに設けられており、
前記計算ユニットの前記入力端子は、前記複数のセンサのセンサ信号を受信し、
前記計算ユニットは、さらに、使用中、前記センサ信号に基づいて前記変換に対する前記調整を決定する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の位置測定システム。
【請求項7】
前記複数のセンサの位置は、前記複数のセンサによる前記基本形状の識別性に基づいている、請求項6に記載の位置測定システム。
【請求項8】
前記所定のドリフト特性は、前記センサ信号を前記位置測定システムの変形またはドリフトに変換するためのセンサ‐基本形状マトリクスを有する、請求項6または7に記載の位置測定システム。
【請求項9】
パターン付き放射ビームを基板のターゲット部分上に投影する投影システムと、
請求項1〜8のいずれか一項に記載の位置測定システムであって、前記基板を前記投影システムに対して位置決めする位置測定システムと、
を備える、リソグラフィ装置。
【請求項10】
リソグラフィ装置であって、
放射ビームを調整する照明システムと、
前記放射ビームの断面にパターンを付与してパターン付き放射ビームを形成することができるパターニングデバイスを支持するサポートと、
基板を保持する基板テーブルと、
前記パターン付き放射ビームを前記基板のターゲット部分上に投影する投影システムと、
前記投影システムに対する前記パターニングデバイスまたは前記基板の位置を決定する位置測定システムと、を備え、
前記位置測定システムは、
前記投影システムまたは前記投影システムが設置された基準フレームに設置された第1部分および前記サポートテーブルまたは基板テーブルに設置された第2部分であって、前記第2部分に対する前記第1部分の位置を表す位置信号を提供する、第1部分および第2部分と、
前記位置信号を受信する入力端子を有する計算ユニットであって、前記計算ユニットは、使用中、前記位置信号に変換を適用して前記サポートまたは前記基板テーブルに対する前記投影システムの位置を表す信号を得るとともに、前記変換に調整を適用して前記第1部分または前記第2部分あるいは両方のドリフトを少なくとも部分的に補償し、前記調整は、前記第1部分または前記第2部分あるいは両方のそれぞれの所定のドリフト特性に基づき、前記所定のドリフト特性は、前記第1部分または前記第2部分あるいは両方の1つ以上の基本形状を有する、計算ユニットと、
を備える、リソグラフィ装置。
【請求項11】
前記第1部分は、1つ以上のセンサアレイを有し、
前記第2部分は、1つ以上の一次元または二次元格子を有する、請求項10に記載のリソグラフィ装置。
【請求項12】
前記第1部分は、1つ以上のセンサアレイを有し、
前記第2部分は、1つ以上の一次元または二次元位置マーカを有する、請求項10に記載のリソグラフィ装置。
【請求項13】
前記第1部分は、1つ以上のセンサアレイを含み、
前記第2部分は、容量ベースの位置センサ、誘導ベースの位置センサ、短距離干渉計、フィゾー干渉計または短距離絶対干渉計用に使用される1つ以上のターゲットを有する、請求項10に記載のリソグラフィ装置。
【請求項14】
前記所定のドリフト特性は、前記1つ以上のセンサアレイの1つ以上の基本形状を有する、請求項10に記載のリソグラフィ装置。
【請求項15】
デバイス製造方法であって、
放射ビームの断面にパターンを付与してパターン付き放射ビームを形成することと、
基板を保持する基板テーブルを位置決めすることと、
前記パターン付き放射ビームを前記基板のターゲット部分上に投影することであって、それによって前記投影システムに対する前記基板の位置を決定する位置測定システムを使用する、ことと、を含み、
前記位置決定システムは、
前記投影システムまたは前記投影システムに設置された基準フレームに設置された第1部分および前記基板テーブルに設置された第2部分であって、前記第2部分に対する前記第1部分の位置を表す位置信号を提供する、第1部分および第2部分と、
前記位置信号を受信する入力端子を含む計算ユニットであって、前記計算ユニットは、使用中、前記位置信号に変換を適用して前記基板テーブルに対する前記投影システムの位置を表す信号を得るとともに、前記変換に調整を適用して前記第1部分または前記第2部分あるいは両方のドリフトを少なくとも部分的に補償し、前記調整は、前記第1部分または前記第2部分あるいは両方のそれぞれの所定のドリフト特性に基づき、前記所定のドリフト特性は、前記第1部分または前記第2部分あるいは両方の1つ以上の基本形状を有する、計算ユニットと、
を備える、デバイス製造方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−79939(P2013−79939A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−167132(P2012−167132)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】