説明

低誘電率膜のアッシング/ウエットエッチング損傷抵抗と組込み安定性を改善する方法

二つの有機シリコン化合物を含む混合物からチャンバ内で基板上に低誘電率膜を堆積させる方法が提供される。混合物には、更に、炭化水素化と酸化ガスが含まれてもよい。第一有機シリコン化合物は、Si原子あたり平均一つ以上のSi-C結合を有する。第二有機シリコン化合物のSi原子あたりのSi-C結合の平均数は、第一有機シリコン化合物におけるSi原子あたりのSi-C結合の平均数より大きい。低誘電率膜は、良好なプラズマ/ウェットエッチング損傷抵抗、良好な機械的性質、且つ望ましい誘電率を有する

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
[0001]本発明の実施形態は、一般的には、集積回路の製造に関する。より具体的には、本発明の実施形態は、基板上に低誘電率膜を堆積するためのプロセスに関する。
【0002】
関連技術の説明
[0002]集積回路の形は、このようなデバイスが数十年前に最初に導入されて以来、サイズが劇的に減少した。それ以来、集積回路は、一般的に、二年で半分のサイズのルール(しばしばムーアの法則と呼ばれる)に従い、それはチップ上のデバイスの数が二年毎に二倍になることを意味する。今日の製造設備は、規定通りに、0.13μm、0.1μmさえもの特徴部サイズを有するデバイスを製造し、未来の設備は、まもなく更に小さな特徴部サイズを有するデバイスを製造するであろう。
【0003】
[0003]デバイスの形の継続した縮小によって、隣接した金属ライン間の容量結合が集積回路上のデバイスのサイズを更に縮小するように減少されなければならないことから、低誘電率(k)値を有する膜の要求が生じてきた。特に、低誘電率、約4.0未満を有する絶縁体が望ましい。低誘電率を有する絶縁体の例としては、スピンオンガラス、フッ素ドープされたシリコンガラス(FSG)、炭素ドープされた酸化物、多孔質炭素ドープされた酸化物、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられ、全て市販されている。
【0004】
[0004]最近、k値が約3.5未満の低誘電率有機シリコン膜が開発された。低誘電率有機シリコン膜を開発するために用いられた一方法は、有機シリコン化合物と熱に不安定な化学種又は揮発性基を含む化合物を含むガス混合物から膜を堆積させ、その後、堆積した膜を後処理して、堆積した膜から熱に不安定な化学種又は揮発性基、例えば、有機基を除去することであった。堆積した膜から熱に不安定な化学種又は揮発性基の除去は、膜内にナノメートルサイズのボイドを作り、空気の誘電率が約1であるので、膜の誘電率が低くなる。
【0005】
[0005]望ましい低誘電率を持つ低誘電率有機シリコン膜が上記のように開発されたが、これらの低誘電率膜の一部が、望ましくない機械的性質、例えば、続いての半導体プロセスステップで損傷を受けやすい膜にする不充分な機械強度を示した。低誘電率膜を損傷し得る半導体処理ステップには、プラズマベースのプロセス、例えば、バリヤ層又はシード層が低誘電率膜上に堆積される前に、パターン形成低誘電率膜上にしばしば行われるプラズマ洗浄ステップが含まれる。誘電体膜フォトレジスト又は底面反射防止コーティング(BARC)を除去するアッシングプロセスとウエットプロセスもまた膜を損傷し得る。
【0006】
[0006]従って、プラズマプロセス又はウエットエッチングプロセスの下流に対して機械的性質と化学抵抗が改善された低誘電率膜を製造するプロセスが依然として求められている。
【発明の概要】
【0007】
[0007]本発明は、一般的には、低誘電率膜を堆積させる方法を提供する。一実施形態において、方法は、第一有機シリコン化合物を第一流量でチャンバへ導入するステップであって、第一有機シリコン化合物がSi原子あたり平均一つ以上のSi-C結合を持つステップと、第二有機シリコン化合物を第二流量でチャンバへ導入するステップであって、第二有機シリコン化合物のSi原子あたりのSi-C結合の平均数が、第一有機シリコン化合物における原子あたりのSi-C結合の平均数より大きく、且つ第一流量と第二流量の合計で割った第二流量が約5%〜約50%であるステップと、第一有機シリコン化合物と第二有機シリコン化合物をRF電力の存在下に反応させて、チャンバ内で基板上に低誘電率膜を堆積させるステップとを含む。酸化ガスは、また、第一有機シリコン化合物と第二有機シリコン化合物を反応させることができる。Si-C結合がほとんどない第一有機シリコン化合物を用いて堆積される低k誘電膜は、典型的には、Si-C結合がより多い第二有機シリコン化合物を用いて堆積される低k誘電膜より良好な機械的性質を有する。しかしながら、第二有機シリコン前駆物質の割合は、プラズマプロセスとウエットエッチングプロセスに対する化学抵抗を機械的性質に対する影響を最小にして改善するように制御され得る。
【0008】
[0008]他の実施形態において、方法は、第一有機シリコン化合物を第一流量でチャンバへ導入するステップであって、第一有機シリコン化合物がSi原子あたり平均一つ以上のSi-C結合を有する前記ステップと、第二有機シリコン化合物を第二流量でチャンバへ導入するステップであって、第二有機シリコン化合物のSi原子あたりのSi-C結合の平均数が、第一有機シリコン化合物における原子あたりのSi-C結合の平均数より大きく、且つ第一流量と第二流量の合計で割った第二流量が約5%〜約50%である、前記ステップと、熱に不安定な化合物をチャンバへ導入し、第一有機シリコン化合物と第二有機シリコン化合物と熱に不安定な化合物をRF電力の存在下に反応させて、チャンバ内で基板上に低誘電率膜を堆積させるステップとを含む。酸化ガスは、また、第一有機シリコン化合物と、第二有機シリコン化合物と、熱に不安定な化合物とを反応させることができる。
【0009】
[0009]実施形態において、更に、方法は、メチルジエトキシシランを第一流量でチャンバへ導入するステップと、トリメチルシランを第二流量でチャンバへ導入するステップであって、第一流量と第二流量の合計で割った第二流量が約5%〜約50%である前記ステップと、アルファ-テルピネンをチャンバへ導入するステップと、メチルジエトキシシランと、トリメチルシランと、アルファ-テルピネンをRF電力の存在下に反応させて、チャンバ内で基板上に低誘電率膜を堆積させる、前記ステップとを含む。酸化ガスは、また、メチルジエトキシシランと、トリメチルシランと、アルファ-テルピネンとを反応させることができる。
【0010】
[0010]本発明の上記特徴が詳細に理解され得るように、上で簡単にまとめた本発明のより具体的な説明は、実施形態によって参照されてもよく、その一部が添付の図面に示されている。しかしながら、添付の図面が本発明の典型的な実施形態のみを示し、それ故、本発明の範囲を限定するものとしてみなされるべきでなく、本発明が他の等しく有効な実施形態を許容することができることは留意すべきである。
【詳細な説明】
【0011】
[0014]本発明は、第一有機シリコン化合物と第二有機シリコン化合物を低誘電率膜を堆積させるのに充分な条件でチャンバ内で反応させることによりシリコンと、酸素と、炭素をと含む低誘電率膜を堆積させる方法を提供する。低誘電率膜は、典型的には、約3.0以下、好ましくは約2.5以下の誘電率を有する。膜は、化学気相堆積(CVD)を行うことができるチャンバ内でプラズマ増強型化学気相堆積(PECVD)を用いて堆積させることができる。プラズマは、一定の高周波(RF)電力、パルスRF電力、高周波RF電力、二重周波数RF電力、それらの組合わせ、又は他のプラズマ生成技術を用いて生成させることができる。
【0012】
[0015]第一有機シリコン化合物は、Si原子あたり平均一つ以上のSi-C結合を有する。一態様において、第一有機シリコン化合物は、少なくとも一つのSi-O結合、例えば、二つのSi-O結合と、Si-C結合と、Si-H結合とを含む。堆積された誘電膜内のSi-O結合がSi-H結合とのネットワークを増大し、堆積された誘電膜内のSi-CH結合が低誘電率の原因となり、プラズマとウエットエッチング損傷に対する膜の抵抗を増大することがわかったことから、少なくとも一つのSi-O結合と、Si-C結合と、Si-H結合とを含む有機シリコン化合物が望ましい。第一有機シリコン化合物として用いることができる化合物の例は、以下のものである:メチルジエトキシシラン(mDEOS、CH-SiH-(OCHCH))、1,3-ジメチルジシロキサン(CH-SiH-O-SiH-CH)、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(((CH)-SiH-O-SiH-(CH))、ビス(1-メチルジシロキサニル)メタン((CH-SiH-O-SiH-)-CH)、及び2,2-ビス(1-メチルジシロキサニル)プロパン(CH-SiH-O-SiH-)-C(CH)
【0013】
[0016]第二有機シリコン化合物のSi原子あたりのSi-C結合の平均数は、第一有機シリコン化合物におけるSi原子あたりのSi-C結合の平均数より大きい。例えば、Si原子あたり一つのSi-C結合を有するメチルジエトキシシランが第一有機シリコン化合物として用いられる場合には、第二有機シリコン化合物はSi原子あたり二つ以上のSi-C結合を有する。例えば、第二有機シリコン化合物は、トリメチルシランであってもよく、これはSi原子あたり三つのSi-C結合を有する。
【0014】
[0017]第二有機シリコン化合物としても用いることができる化合物の例は以下のものである:ジメチルシラン((CH)-SiH)、トリメチルシラン(TMS、(CH)-SiH)、テトラメチルシラン((CH)-Si)、フェニルシラン、例えば、(C)SiH4-y(ここで、yは2-4である)、ビニルシラン、例えば、(CH=CH)SiH4-z(ここで、zは2-4である)、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン((CH)-SiH-O-SiH-(CH))、ヘキサメチルジシロキサン((CH)-Si-O-Si-(CH))、(-O-Si-(CH)-)環状(ここで、nは3以上である)、例えば、ヘキサメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、及びデカメチルペンタシロキサン、ジメチルジエトキシシラン((CH)-Si-(OCH))、メチルフェニルジエトキシシラン((CH)(C)-Si-(OCH))、及びそれらの部分的にフッ素化された炭素誘導体、例えば、CF-Si-(CH)
【0015】
[0018]所望により、第一有機シリコン化合物と第二有機シリコン化合物は、また、酸化ガスと反応させてもよい。用いることができる酸化ガスとしては、酸素(O)、オゾン(O)、亜酸化窒素(NO)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、水(HO)、2,3-ブタンジオン、又はそれらの組合わせが挙げられる。酸化ガスとしてオゾンが用いられる場合、オゾン発生器が質量で6%〜20%、典型的には約15%のオゾンをソースガス中の酸素に変換し、残りは、典型的には、酸素である。しかしながら、オゾン濃度は、所望されるオゾン量や用いられるオゾン発生装置の種類に基づいて増減してもよい。酸素又は酸素含有化合物の分離は、堆積チャンバに入る前にマイクロ波チャンバ内で生じてもよい。好ましくは、高周波(RF)電力が反応ゾーンに印加されて解離が増加する。
【0016】
[0019]所望により、一つ以上のキャリアガスが、第一有機シリコン化合物と第二有機シリコン化合物に加えてチャンバへ導入される。用いることができるキャリアガスの例としては、ヘリウム、アルゴン、水素、エチレン、及びそれらの組合わせが挙げられる。
【0017】
[0020]一実施形態において、一つ以上の熱に不安定な化合物、例えば、一つ以上の炭化水素化合物が、第一有機シリコン化合物と第二有機シリコン化合物に加えてチャンバへ導入され、所望により酸化ガスに加えて導入されてもよく、所望によりキャリヤガスに加えて導入されてもよい。本明細書に定義される“炭化水素化合物”は、炭化水素だけでなく、炭素と水素に加えて他の原子を含む炭化水素ベースの化合物が含まれる。一つ以上の炭化水素化合物は、第一有機シリコン化合物と第二有機シリコン化合物と反応させて、所望により酸化ガスと反応させてもよく、低誘電率膜を堆積させる。炭化水素化合物は、熱に不安定な化学種又は揮発性基が含まれるのがよい。熱に不安定な化学種又は揮発性基は、環状基であるのがよい。本明細書に用いられる用語“環状基”は、環構造を意味するものである。環構造は、わずか三つの原子を含有してもよい。原子には、例えば、炭素、窒素、酸素、フッ素、及びそれらの組合わせが含まれてもよい。環状基には、一つ以上の単結合、二重結合、三重結合、及びそれらの組合わせが含まれてもよい。例えば、環状基としては、一つ以上の芳香族、アリール、フェニル、シクロヘキサン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、及びそれらの混合物が挙げられるのがよい。環状基は、二環状又は三環状であってもよい。一実施形態において、環状基は、直鎖又は分枝鎖官能基に結合される。直鎖又は分枝鎖官能基は、好ましくは、アルキル基又はビニルアルキル基を含有し、炭素原子1〜12個を有する。直鎖又は分枝鎖官能基は、また、酸素原子、例えば、ケトン、エーテル、エステルに含まれてもよい。用いることができ、少なくとも一つの環状基を有するある例示的な化合物としては、アルファ-テルピネン(ATP)、ノルボルナジエン、ビニルシクロヘキサン(VCH)、及び酢酸フェニルが挙げられる。
【0018】
[0021]第一有機シリコン化合物は、約50mgm〜約5000mgmの流量でチャンバへ導入されるのがよい。第二有機シリコン化合物は、約5sccm〜約1000sccmの流量でチャンバへ導入されるのがよい。第一有機シリコン化合物と第二有機シリコン化合物の流量は、第一有機シリコン化合物の流量と第二有機シリコン化合物の流量の合計で割った第二有機シリコン化合物の流量が約5%〜約50%であるように選ばれる。第一有機シリコン化合物と第二有機シリコン化合物の相対流量は、更に以下に述べる。
【0019】
[0022]所望により、一つ以上の酸化ガスが、約50〜5,000sccm、例えば、約100〜1,000sccm、好ましくは200sccmの流量を有してもよい。所望により、一つ以上の炭化水素化合物が、約100〜約5,000mgm、例えば、約500〜約5,000mgm、好ましくは3,000mgmの流量でチャンバに導入されてもよい。任意により、一つ以上のキャリアガスが、約500sccm〜約5,000sccmの流量を有してもよい。好ましくは、第一有機シリコン化合物はmDEOSであり、第二有機シリコン化合物はTMSであり、炭化水素化合物はアルファ-テルピネンであり、酸化ガスは酸素である。
【0020】
[0023]上記及び本出願全体の流量は、二つの分離した処理領域を有する300mmチャンバ、例えば、カリフォルニア州サンタクララのAppliedMaterials社から入手できるProducer(登録商標)チャンバに関して示される。従って、各基板処理領域に対して受けた流量は、チャンバへの流量の半分である。
【0021】
[0024]チャンバ内で基板上に低誘電率膜の堆積中、基板は、典型的には約25℃〜約400℃の温度で維持される。300mm基板に対して約50W〜約2000WのRF電力レベルである、約0.07W/cm〜約2.8W/cmの範囲にある電力密度が典型的には用いられる。好ましくは、RF電力レベルは約100W〜約1500Wである。RF電力は、約0.01MHz〜300MHzの周波数で供給されるのがよい。RF電力は、混合周波数、例えば、約13.56MHzの高周波数と約350kHzの低周波数で供給されるのがよい。RF電力は、基板の加熱を下げるとともに堆積した膜においてより大きい多孔性を促進するように循環又はパルスされるのがよい。RF電力は、連続であっても非連続であってもよい。
【0022】
[0025]低誘電率膜が堆積された後、膜は堆積した膜から熱に不安定な化学種又は揮発性基、例えば、有機基を除去するために後処理されるのがよい。用いることができる後処理としては、電子ビーム処理、UV処理、熱処理(電子ビーム及び/又はUV処理の存在しないとき)、及びそれらの組合わせが挙げられる。
【0023】
[0026]用いることができる例示的電子ビーム条件は、約200℃〜約600℃、例えば、約350℃〜約400℃のチャンバ温度が含まれる。電子ビームエネルギーは、約0.5keV〜約30keVであってもよい。照射線量は、約1μC/cm〜400μC/cmであるのがよい。チャンバ圧は、約1ミリトール〜約100ミリトールであるのがよい。チャンバ内のガス雰囲気は、以下のガス:窒素、酸素、水素、アルゴン、水素と窒素のブレンド、アンモニア、キセノン、又はこれらのガスのいかなる組合わせのいずれでもよい。電子ビーム電流は、約0.15mA〜約50mAであってもよい。電子ビーム処理は、約1分〜約15分間行われるのがよい。いかなる電子ビームデバイスが用いられてもよいが、用いることができる例示的電子ビームチャンバは、カリフォルニア州サンタクララのAppliedMaterials社から入手できるEBKTM電子ビームチャンバである。
【0024】
[0027]用いることができる例示的UV後処理条件には、約1トール〜約10トールのチャンバ圧と約350℃〜約500℃の基板支持温度が含まれる。UV放射は、いかなるUV源、例えば、水銀マイクロ波アークランプ、パルスキセノンフラッシュランプ、又は高効率UV光放射ダイオードアレイによって供給することができる。UV放射は、例えば、約170nm〜約400nmの波長を有するのがよい。用いることができるUVチャンバと処理条件の詳細は、更に、2005年5月9日出願の共同譲渡された米国特許出願第11/124,908号に記載され、この開示内容は本明細書に援用されている。AppliedMaterials社のNaNoCureTMチャンバは、UV後処理に用いることができる市販のチャンバの一例である。
【0025】
[0028]例示的熱後処理は、膜をチャンバ内で約200℃〜約500℃の基板温度で約2秒〜約3時間、好ましくは約0.5〜約2時間アニールすることを含む。非反応性ガス、例えば、ヘリウム、水素、窒素、又はそれらの混合物は、約100〜10,000sccmの流量でチャンバへ導入することができる。チャンバ圧は、約1ミリトール〜約10トールで維持される。好ましい基板間隔は、約300ミル〜約800ミルである。低誘電率膜が堆積された後、低誘電率膜を約200℃〜約500℃、好ましくは約400℃〜約420℃の基板温度でアニールすると、膜内の有機基の少なくとも一部が揮発し、膜内にナノサイズのボイドが形成される。
【0026】
[0029]以下の実施例は、本発明の実施形態を具体的に説明するものである。実施例における基板は、300mm基板とした。低誘電率膜は、カリフォルニア州サンタクララのAppliedMaterials社から入手できるProducer(登録商標)チャンバ内で基板上に堆積させた。低誘電率膜はeビームを用いて後処理したが、或いは低誘電率膜は、カリフォルニア州サンタクララのAppliedMaterials社から入手できるEBkTM電子ビームチャンバ内でミリトール範囲の非常に低圧で約400℃で1時間又はProducer(登録商標)チャンバ内でトール範囲の低圧で400℃で2時間硬化され得る。
【0027】
[0030]実施例
[0031]低誘電率膜を、約7.5トールと約260℃の温度で基板上に堆積させせた。以下の処理ガスと流量を用いた:
ATP、2900mgmで;
TMS、62sccmで;
mDEOS、1044mgm(=186sccm)で;
酸素、200sccmで。
【0028】
[0032]従って、TMS/mDEOS+TMS比率が25%の混合物(62sccmのTMS/186sccmのmDEOS+62sccmのTMS)から膜を堆積させた。基板を、ガス分配シャワーヘッドから約300ミルに位置決めした。13.56MHzの周波数で600Wの電力レベルを、膜のプラズマ増強堆積のためにシャワーヘッドに印加した。膜は、後処理前に、0.1MHzでSSm5100HgCV測定を用いて測定された場合に約2.8の誘電率(k)を有した。その後、基板を、以下の条件:Vacceleration=5keV、1.5mAの電子ビーム電流、100μC/cmの電子ビーム量によってeビームを用いて後処理した。基板上の低誘電率膜は、後処理後、以下の性質:50MPaの応力、0.78GPaの硬度、5.4GPaのモジュラスを有した。
【0029】
[0033]本発明の実施形態に従って堆積された低誘電率膜の確認を、更に、図1-図3に示される結果について示す。図1は、第一有機シリコン化合物としてmDEOSと、第二有機シリコン化合物としてTMSと、アルファ-テルピネンと、酸素を含むガス混合物を用いて堆積された低誘電率膜において、CH/SiO、Si-CH/SiO、Si-H/SiOを含む、異なる種類の結合の相対量を示すグラフである。異なる種類の結合の相対量は、後処理後の堆積された膜における結合のFTIRピーク面積によって推定した。TMS流量/(TMS流量+mDEOS流量)の異なる比率を用いて膜を堆積させた。図1は、ガス混合物おけるTMSとmDEOSの全量に相対してTMSの量が増加するにつれて膜内のSi-CH3結合とSiO結合との相対量が増加し、ガス混合物におけるTMSとmDEOSの全量に相対してTMSの量が減少するにつれて膜内のSi-H結合とSiO結合との相対量が減少することを示している。また、ガス混合物におけるTMSとmDEOSの全量に相対するTMSの量が増加するにつれてCHx結合とSiO結合との相対量が増加する。一有機シリコン前駆物質から堆積された膜と比較して、本発明の実施形態に従って堆積された膜におけるSi-CH結合の増加量とSi-H結合の減少量は望ましくない水吸収に対する膜の抵抗を改善すると思われる。
【0030】
[0034]図2は、第一有機シリコン化合物としてmDEOSと、第二有機シリコン化合物としてTMSと、アルファ-テルピネンと、酸素を含むガス混合物から堆積された低誘電率膜の誘電率(k)と収縮を示すグラフである。TMS流量/(TMS流量+mDEOS流量)の異なる比率を用いて膜を堆積させた。図2は、誘電率が2.56以下の膜が本発明の実施形態に従って得ることができること、また、ガス混合物におけるTMSとmDEOSの全量に相対してTMSの量が増加するにつれて膜の誘電率が増大することを示している。しかしながら、ガス混合物におけるTMSとmDEOSの全量に相対するTMSの量が増加するにつれて膜の収縮は増大する。約5%〜約50%のTMS流量(TMS流量+mDEOS流量)を選択することによって、誘電率と機械的性質の許容され得る組合わせが、より良好な化学抵抗に加えて得ることができる。
【0031】
[0035]図3は、第一有機シリコン化合物としてのmDEOSと、第二有機シリコン化合物としてのTMSと、アルファ-テルピネンと、酸素を含むガス混合物から堆積された低誘電率膜の応力とモジュラスを示すグラフである。TMS流量/(TMS流量+mDEOS流量)の異なる比率を用いて膜を堆積させた。図3は、ガス混合物におけるTMSとmDEOSの全量に相対するTMSの量が増加するにつれて、膜の応力が低下し、これは望ましいことを示している。しかしながら、ガス混合物におけるTMSとmDEOSの全量に相対するTMSの量が減少するにつれて膜のモジュラスも低下する。約5%〜約50%のTMS流量/(TMS流量+mDEOS流量)を選択することによって、膜応力とモジュラスの許容され得る組合わせを得ることができる。
【0032】
[0036]一つの有機シリコン前駆物質で堆積された膜に相対する二つの有機シリコン前駆物質で堆積された膜、即ち、第一有機シリコン化合物流量と第二有機シリコン化合物流量の合計で割った第二有機シリコン化合物流量が0である膜(図1を参照)におけるSi-CH3結合の増加量が、例えば、プラズマ洗浄ステップからの、プラズマ損傷に対する膜の抵抗、フォトレジスト又はBARCを除去するアッシングプロセスからの損傷、また、ウエットエッチングからの損傷を増大させると思われる。約5%〜約50%に等しい第二有機シリコン化合物流量/第一有機シリコン化合物流量と第二有機シリコン化合物流量の合計を用いて低誘電率膜を堆積させることによって、プラズマ/ウエットエッチング損傷抵抗、良好な機械的性質、及び望ましい誘電率の最適な組合わせを得ることができる。
【0033】
[0037]上記は本発明の実施形態に関するが、本発明の更に多くの実施形態は本発明の基本的な範囲から逸脱することなく構成されてもよく、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲によって決定される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の実施形態の二つの有機シリコン化合物前駆物質の異なる比率を有する前駆物質混合物から堆積された低誘電率膜の膜組成比率(CH/SiO、SiCH/SiO、Si-H/SiO)を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明の実施形態の二つの有機シリコン化合物前駆物質の異なる比率を有する前駆物質混合物から堆積された低誘電率膜の誘電率と収縮を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明の実施形態の二つの有機シリコン化合物前駆物質の異なる比率を有する前駆物質混合物から堆積された低誘電率膜の応力とモジュラスを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低誘電率膜を堆積させる方法であって:
第一有機シリコン化合物を第一流量でチャンバへ導入するステップであって、該第一有機シリコン化合物がSi原子あたり平均一つ以上のSi-C結合を有する、前記ステップと;
第二有機シリコン化合物を第二流量で該チャンバへ導入するステップであって、該第二有機シリコン化合物のSi原子あたりのSi-C結合の平均数が、該第一有機シリコン化合物におけるSi原子あたりのSi-C結合の平均数より大きく、且つ該第一流量と該第二流量の合計で割った該第二流量が約5%〜約50%である、前記ステップと;
該第一有機シリコン化合物と該第二有機シリコン化合物をRF電力の存在下に反応させて、該チャンバ内で基板上に低誘電率膜を堆積させるステップと;
を含む、前記方法。
【請求項2】
該第一有機シリコン化合物が、Si-H結合を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該第一有機シリコン化合物が、少なくとも一つのSi-O結合と、Si-C結合と、Si-H結合とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該第一有機シリコン化合物が、二つのSi-O結合を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該第二有機シリコン化合物が、酸素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該第二有機シリコン化合物が、ジメチルシラン、トリメチルシラン、テトラメチルシラン、(C)SiH4-y、ここで、yは2-4である、(CH=CH)SiH4-z、ここで、zは2-4である、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルペンタシロキサン、ジメチルジエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、CF-Si-(CH)、及びそれらの部分的にフッ素化された炭素誘導体からなる群より選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
酸化ガスを該チャンバへ導入するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
該低誘電率膜をUV、電子ビーム、熱後処理、又はそれらの組合わせで後処理するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
低誘電率膜を堆積させる方法であって:
第一有機シリコン化合物を第一流量でチャンバへ導入するステップであって、該第一有機シリコン化合物がSi原子あたり平均一つ以上のSi-C結合を有する、前記ステップと;
第二有機シリコン化合物を第二流量で該チャンバへ導入するステップであって、該第二有機シリコン化合物のSi原子あたりのSi-C結合の平均数が、該第一有機シリコン化合物におけるSi原子あたりのSi-C結合の該平均数より大きく、且つ該第一流量と該第二流量の合計で割った該第二流量が約5%〜約50%である、前記ステップと;
熱に不安定な化合物を該チャンバへ導入するステップと;
該第一有機シリコン化合物と、該第二有機シリコン化合物と、該熱に不安定な化合物とをRF電力の存在下に反応させて、該チャンバ内で基板上に低誘電率膜を堆積させる、前記ステップと;
を含む、前記方法。
【請求項10】
酸化ガスを該チャンバへ導入するステップを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
該熱に不安定な化合物が炭化水素である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
該炭化水素が、環状炭化水素である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該環状炭化水素が、アルファ-テルピネン、ノルボルナジエン、ビニルシクロヘキサン、及び酢酸フェニルからなる群より選ばれる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
該低誘電率膜をUV、電子ビーム、熱後処理、又はそれらの組合わせで後処理するステップを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
該第一有機シリコン化合物が、少なくとも一つのSi-O結合と、Si-C結合と、Si-H結合とを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
該第一有機シリコン化合物が、二つのSi-O結合を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
低誘電率膜を堆積させる方法であって:
メチルジエトキシシランを第一流量でチャンバへ導入するステップと;
トリメチルシランを第二流量で該チャンバへ導入するステップであって、該第一流量と該第二流量の合計で割った該第二流量が約5%〜約50%である、前記ステップと;
アルファ-テルピネンを該チャンバへ導入するステップと;
該メチルジエトキシシランと、トリメチルシランと、アルファ-テルピネンとをRF電力の存在下に反応させて、該チャンバ内で基板上に低誘電率膜を堆積させる、前記ステップと;
を含む、前記方法。
【請求項18】
酸化ガスを該チャンバへ導入するステップを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
該第一流量と該第二流量の合計で割った該第二流量が、約10%〜約45%である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
該低誘電率膜をUV、電子ビーム、熱後処理、又はそれらの組合わせを後処理するステップを更に含む、請求項17に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2009−519612(P2009−519612A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545924(P2008−545924)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/061789
【国際公開番号】WO2007/117320
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】