作業車両搭載用のエンジン装置
【課題】搭載スペースの制約がある作業車両120に、排気ガス浄化装置1付きのエンジン70を効率良く配置できるようにする。
【解決手段】本願発明に係る作業車両120搭載用のエンジン装置は、エンジン70の一側方にエンジン冷却用の冷却ファン76を備える。エンジン70の周辺部には、エンジン70からの排気ガスを浄化するための排気ガス浄化装置1を配置する。排気ガス浄化装置1と冷却ファン76との間には、冷却ファン76から排気ガス浄化装置1に向かう冷却風を遮る風防体90を配置する。風防体90の存在により、冷却ファン76からの冷却風が排気ガス浄化装置1に直接当たるのを阻止でき、冷却風による排気ガス浄化装置1、ひいてはその内部の排気ガス温度の低下を確実に抑制できる。
【解決手段】本願発明に係る作業車両120搭載用のエンジン装置は、エンジン70の一側方にエンジン冷却用の冷却ファン76を備える。エンジン70の周辺部には、エンジン70からの排気ガスを浄化するための排気ガス浄化装置1を配置する。排気ガス浄化装置1と冷却ファン76との間には、冷却ファン76から排気ガス浄化装置1に向かう冷却風を遮る風防体90を配置する。風防体90の存在により、冷却ファン76からの冷却風が排気ガス浄化装置1に直接当たるのを阻止でき、冷却風による排気ガス浄化装置1、ひいてはその内部の排気ガス温度の低下を確実に抑制できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えばバックホウ、フォークリフト又はトラクタのような作業車両に用いられるエンジン装置に係り、より詳しくは、機体上におけるエンジンや排気ガス浄化装置等の配置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ディーゼルエンジンの排気経路中に、排気ガス浄化装置(後処理装置)として、ディーゼルパティキュレートフィルタ(又はNOx触媒)等を設け、ディーゼルエンジンから排出された排気ガスを、ディーゼルパティキュレートフィルタ(又はNOx触媒)等にて浄化処理するようにした技術が知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。また、ケーシング(外側ケース)内にフィルタケース(内側ケース)を設け、フィルタケース内にパティキュレートフィルタを配置する技術も公知である(特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2000−145430号公報
【特許文献2】特開2003−27922号公報
【特許文献3】特開2008−82201号公報
【特許文献4】特開2001−173429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ディーゼルエンジンは汎用性が広く、建設機械、農作業機、船舶といった様々な分野で用いられる。ディーゼルエンジンの搭載スペースは搭載される車両によって様々であるが、特にバックホウやフォークリフトのような作業車両では、周囲との接触防止のために旋回半径をできるだけ小さくしたい関係上、機体自体をコンパクト化しなければならず、搭載スペースに制約がある(狭い)ことが多い。
【0004】
一方、前述の排気ガス浄化装置においては、これを通過する排気ガスの温度が高温(例えば300℃以上)であるのが機能的に望ましいとされているため、ディーゼルエンジンに排気ガス浄化装置を取り付けたいという要請がある。
【0005】
しかし、排気ガス浄化装置付きのディーゼルエンジンを作業車両に適用するには、狭い搭載スペース内に、排気ガス浄化装置付きのディーゼルエンジンだけでなく、ラジエータやエアクリーナ等の様々な部品を効率よく配置しなければならない。また、搭載スペースの制約という問題もさることながら、駆動によるエンジン振動が排気ガス浄化装置に直接伝わり易いことや、ディーゼルエンジンに設けられた冷却ファンからの冷却風が排気ガス浄化装置に直接当たると、排気ガス浄化装置、ひいては排気ガス温度を下げるおそれがあることも問題になってくる。
【0006】
そこで、本願発明は、このような現状を改善することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1の発明は、エンジンの一側方に前記エンジン冷却用の冷却ファンを備えている作業車両搭載用のエンジン装置であって、前記エンジンの周辺部に、前記エンジンからの排気ガスを浄化するための排気ガス浄化装置が配置されており、前記排気ガス浄化装置と前記冷却ファンとの間に、前記冷却ファンから前記排気ガス浄化装置に向かう冷却風を遮る風防体が配置されているというものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載した作業車両搭載用のエンジン装置において、前記排気ガス浄化装置の筺体に前記風防体が取り付けられているというものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1に記載した作業車両搭載用のエンジン装置において、前記エンジンに設けられた排気マニホールドと前記排気ガス浄化装置とは中継排気管を介して接続されており、前記中継排気管と前記冷却ファンとの間には、前記冷却ファンから前記中継排気管に向かう冷却風を遮る排気管風防体が配置されているというものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載した作業車両搭載用のエンジン装置において、前記中継排気管の外周面のうち前記冷却ファン寄りの部位に、前記排気管風防体が取り付けられているというものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1に記載した作業車両搭載用のエンジン装置において、前記エンジンに設けられた排気マニホールドと前記排気ガス浄化装置とは中継排気管を介して接続されており、前記中継排気管が断熱構造になっているというものである。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1に記載した作業車両搭載用のエンジン装置において、前記排気ガス浄化装置の前記筺体に、前記排気ガス浄化装置の持ち運びのための把手体が設けられているというものである。
【発明の効果】
【0013】
本願発明によると、エンジンの一側方に前記エンジン冷却用の冷却ファンを備えている作業車両搭載用のエンジン装置であって、前記エンジンの周辺部に、前記エンジンからの排気ガスを浄化するための排気ガス浄化装置が配置されており、前記排気ガス浄化装置と前記冷却ファンとの間に、前記冷却ファンから前記排気ガス浄化装置に向かう冷却風を遮る風防体が配置されているから、前記冷却ファンからの冷却風が前記排気ガス浄化装置に直接当たるのを阻止でき、冷却風による前記排気ガス浄化装置、ひいてはその内部の排気ガス温度の低下を確実に抑制できる。従って、前記排気ガス浄化装置の排気ガス浄化性能を適正に維持できるという効果を奏する。
【0014】
前記風防体の発明に関して、例えば前記冷却ファンの下方に前記排気ガス浄化装置を配置していれば、配置態様だけで冷却風が当たり難くなる上、前記風防体の存在によって、冷却風による排気ガス温度の低下を確実に抑制できるので好ましい。ただし、前記排気ガス浄化装置の配置箇所は前記エンジンの周辺部であればよい。
【0015】
言い換えると、前記風防体を備えていれば前記排気ガス浄化装置に対する冷却風の悪影響を考慮しなくて済むから、前記冷却ファンの配置箇所によって前記排気ガス浄化装置の配置箇所が制限されることはまずないのであり、前記エンジンに対する前記排気ガス浄化装置のレイアウトの自由度が高まるという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、排気ガス流入側を単に左側と称し、同じく排気ガス排出側を単に右側と称する。
【0017】
はじめに、図1乃至図7を参照しながら、排気ガス浄化装置の全体構造について説明する。図1乃至図5に示す如く、実施形態の排気ガス浄化装置としての連続再生式のディーゼルパティキュレートフィルタ1(以下、DPFという)を設けている。DPF1は、排気ガス中の粒子状物質(PM)等を物理的に捕集するためのものである。DPF1は、二酸化窒素(NO2)を生成する白金等のディーゼル酸化触媒2と、捕集した粒子状物質(PM)を比較的低温で連続的に酸化除去するハニカム構造のスートフィルタ3とを、排気ガスの移動方向(図1の左側から右側方向)に直列に並べた構造になっている。DPF1は、スートフィルタ3が連続的に再生されるように構成している。DPF1によって、排気ガス中の粒子状物質(PM)の除去に加え、排気ガス中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)を低減できる。
【0018】
図1及び図5を参照して、ディーゼル酸化触媒2の取付け構造を説明する。図1及び図5に示す如く、エンジンが排出した排気ガスを浄化するガス浄化フィルタとしてのディーゼル酸化触媒2は、耐熱金属材料製の略筒型の触媒内側ケース4に内設させている。触媒内側ケース4は、耐熱金属材料製の略筒型の触媒外側ケース5に内設させている。即ち、ディーゼル酸化触媒2の外側にマット状のセラミックファイバー製触媒断熱材6を介して触媒内側ケース4を被嵌させている。また、触媒内側ケース4の外側に端面I字状の薄板製支持体7を介して触媒外側ケース5を被嵌させている。なお、触媒断熱材6によってディーゼル酸化触媒2が保護される。触媒内側ケース4に伝わる触媒外側ケース5の応力(変形力)を薄板製支持体7にて低減させる。
【0019】
図1及び図5に示す如く、触媒内側ケース4及び触媒外側ケース5の左側端部に円板状の左側蓋体8を溶接にて固着している。ディーゼル酸化触媒2の左側端面2aと左側蓋体8とをガス流入空間用一定距離L1だけ離間させて対向させる。ディーゼル酸化触媒2の左側端面2aと左側蓋体8との間に排気ガス流入空間11を形成している。触媒内側ケース4及び触媒外側ケース5における排気ガス流入空間11の部位には、センサ接続プラグ10が固着されている。センサ接続プラグ10には、排気ガス流入空間11内における排気ガスの圧力を検出する排気圧検出手段としての入口側排気圧センサ10aが差し込み装着されている。
【0020】
図1及び図5に示す如く、排気ガス流入空間11が形成された触媒内側ケース4及び触媒外側ケース5の左側端部には、円筒形状の排気ガス入口管16が差し込まれて固定されている。詳細は図示していないが、排気ガス入口管16の一端(先端)側は閉塞されている。排気ガス入口管16のうち触媒内側ケース4と触媒外側ケース5との間には、閉塞リング体15が挟持状に固着されている。排気ガス入口管16、触媒内側ケース4及び触媒外側ケース5という三者間の隙間は閉塞リング体15によって塞がれており、閉塞リング体15にて、触媒内側ケース4と触媒外側ケース5の間に排気ガスが流入するのを防止している。
【0021】
排気ガス入口管16のうち触媒内側ケース4内の部位には、多数の開口孔55が形成されている。排気ガス入口管16の内部は、多数の開口孔55を介して、触媒内側ケース4の内部に連通している。従って、排気ガス入口管16から多数の開口孔55を介して触媒内側ケース4内に排気ガスが送り込まれる。図1、図3及び図5に示す如く、排気ガス入口管16のうち触媒外側ケース5から突出した突出部には、排気接続フランジ体17が溶接されている。排気接続フランジ体17は、ボルト18を介して、ディーゼルエンジン70の排気マニホールド71につながる中継排気管85に接続されている(詳細は後述する)。
【0022】
上記の構成により、ディーゼルエンジン70の排気ガスが、排気マニホールド71から排気ガス入口管16に入り込んだのち、排気ガス入口管16から多数の開口孔55を介して排気ガス流入空間11に送り込まれ、ディーゼル酸化触媒2に左側端面2a側から供給される。ディーゼル酸化触媒2の酸化作用にて二酸化窒素(NO2)が生成される。
【0023】
DPF1の排気ガス入口側である排気ガス流入空間11には、ガス浄化フィルタの一例であるスートフィルタ3への排気ガスの取り込み量を調節するための排気調節機構54が配置されている。排気調節機構54はスートフィルタ3を再生(粒子状物質捕集能力を回復)させるためのものである。すなわち、スート(粒子状物質)がスートフィルタ3に堆積したときに、排気調節機構54の作用にてディーゼルエンジン70の排気圧を高くすることにより、エンジン負荷が増大する。そうすると、エンジン回転数維持のためにディーゼルエンジン70の出力(燃料噴射量)が増大して、ディーゼルエンジン70からの排気ガス温度が上昇する。その結果、スートフィルタ3に堆積したスートが燃焼して消失し、スートフィルタ3が再生することになる。
【0024】
従って、ディーゼルエンジン70において、例えばエンジン負荷が小さくて排気ガス温度が低くなり易い状態(スートが堆積し易い状態)を継続させていても、排気調節機構54による排気圧の強制上昇にてスートフィルタ3を再生でき、DPF1の排気ガス浄化性能を適正に維持できる。スートフィルタ3に堆積したスートを燃やすためのバーナーやヒータ等も不要になる。また、DPF1の構成中に排気調節機構54が組み込まれているから、DPF1とは別個に排気調節機構54を取り付ける必要がなく、ディーゼルエンジン70にDPF1を取り付けるだけで、排気調節機構54まで組み付けられることになる。このため、排気系部品の種類が少なくなり、排気系部品の組付け作業性やメンテナンス作業性を向上できる。
【0025】
実施形態の排気調節機構54は、排気ガス入口管16のうち触媒内側ケース4内の外周側に設けられた配管カバー体56を備えている。配管カバー体56は、排気ガス入口管16における多数の開口孔55の開閉状態(開口数)を調節するためのものであり、排気ガス入口管16のうち触媒内側ケース4内の外周側に、その長手方向に沿ってスライド移動可能に被嵌されている。そして、配管カバー体56は、例えばラックアンドピニオン機構のような伝動ギヤ機構57を介して、左側蓋体8の外面側に取り付けられたカバーアクチュエータ58に連動連結されている。カバーアクチュエータ58の駆動にて、配管カバー体56を排気ガス入口管16の長手方向に沿ってスライド移動させ、配管カバー体56にて塞がれる開口孔55の数を変えることにより、排気ガス入口管16から触媒内側ケース4内に送り込まれる排気ガス流量、ひいては排気ガスの流通抵抗が変動することになる。
【0026】
また、排気ガス入口管16の内部のうち排気接続フランジ体17寄りの部位には、排気調節機構54の別例であるバタフライ形開閉弁59が配置されている。バタフライ形開閉弁は、排気ガス入口管16のうち触媒外側ケース5から突出する外周面に取り付けられた弁アクチュエータ60の駆動にて、排気ガス入口管16内を開閉するように構成されている。バタフライ形開閉弁59の開度を調節することにより、配管カバー体56の作用と同様に、排気ガス入口管16から触媒内側ケース4内に送り込まれる排気ガス流量、ひいては排気ガスの流通抵抗が変動することになる。
【0027】
図1及び図5を参照して、スートフィルタ3の取付け構造を説明する。図1及び図5に示す如く、エンジン70が排出した排気ガスを浄化するガス浄化フィルタとしてのスートフィルタ3は、耐熱金属材料製の略筒型のフィルタ内側ケース20に内設させている。内側ケース4は、耐熱金属材料製の略筒型のフィルタ外側ケース21に内設させている。即ち、スートフィルタ3の外側にマット状のセラミックファイバー製フィルタ断熱材22を介してフィルタ内側ケース20を被嵌させている。なお、フィルタ断熱材22によってスートフィルタ3が保護される。
【0028】
図1及び図5に示す如く、触媒外側ケース5の排気ガス移動下流側(右側)の端部に触媒側フランジ25を溶接する。フィルタ内側ケース20の排気ガス移動方向の中間と、フィルタ外側ケース21の排気ガス移動上流側(左側)の端部にフィルタ側フランジ26を溶接する。触媒側フランジ25と、フィルタ側フランジ26とを、ボルト27及びナット28によって着脱可能に締結している。なお、円筒形の触媒内側ケース4の直径寸法と、円筒形のフィルタ内側ケース20の直径寸法とが略同一寸法である。また、円筒形の触媒外側ケース5の直径寸法と、円筒形のフィルタ外側ケース21の直径寸法とが略同一寸法である。
【0029】
図1に示す如く、触媒側フランジ25とフィルタ側フランジ26を介して、触媒外側ケース5にフィルタ外側ケース21が連結された状態では、触媒内側ケース4の排気ガス移動下流側(右側)の端部に、フィルタ内側ケース20の排気ガス移動上流側(左側)の端部が、センサ取付け用一定間隔L2だけ離間して対峙する。即ち、触媒内側ケース4の排気ガス移動下流側(右側)の端部と、フィルタ内側ケース20の排気ガス移動上流側(左側)の端部との間に、センサ取付け空間29が形成される。センサ取付け空間29位置の触媒外側ケース5に、センサ接続プラグ50を固着している。センサ接続プラグ50には、例えば入口側排気ガス温度センサ(サーミスタ、図示省略)等が接続される。
【0030】
図5に示す如く、触媒内側ケース4の排気ガス移動方向の円筒長さL3よりも、触媒外側ケース5の排気ガス移動方向の円筒長さL4を長く形成している。フィルタ内側ケース20の排気ガス移動方向の円筒長さL5よりも、フィルタ外側ケース21の排気ガス移動方向の円筒長さL6を短く形成している。センサ取付け空間29の一定間隔L2と、触媒内側ケース4の円筒長さL3と、フィルタ内側ケース20の円筒長さL5とを加算した長さ(L2+L3+L5)が、触媒外側ケース5の円筒長さL4と、フィルタ外側ケース21の円筒長さL6とを加算した長さ(L4+L6)に略等しくなるように構成している。フィルタ外側ケース21の排気ガス移動上流側(左側)の端部から、フィルタ内側ケース20の排気ガス移動上流側(左側)の端部が、それらの長さの差(L7=L5−L6)だけ突出する。すなわち、触媒外側ケース5にフィルタ外側ケース21を連結した場合、フィルタ内側ケース20の排気ガス移動上流側(左側)の端部が、オーバーラップ寸法L7だけ、触媒外側ケース5の排気ガス移動下流側(右側)に内挿される。
【0031】
上記の構成により、ディーゼル酸化触媒2の酸化作用にて生成された二酸化窒素(NO2)が、スートフィルタ3にこの左側端面3aから供給される。スートフィルタ3に捕集されたディーゼルエンジン70の排気ガス中の捕集粒子状物質(PM)が、二酸化窒素(NO2)によって、比較的低温で連続的に酸化除去される。ディーゼルエンジン70の排気ガス中の粒子状物質(PM)の除去に加え、ディーゼルエンジン70の排気ガス中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)が低減される。
【0032】
図1乃至図5に示す如く、ディーゼルエンジン70が排出した排気ガスを浄化するガス浄化フィルタとしてのディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3と、ディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3を内設させる触媒内側ケース4やフィルタ内側ケース20と、触媒内側ケース4やフィルタ内側ケース20を内設させる触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21とを備えてなる排気ガス浄化装置において、複数組のディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3及び触媒内側ケース4やフィルタ内側ケース20及び触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21を備え、ディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の接続境界位置に対して、触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21を連結するフランジ体としての触媒側フランジ25やフィルタ側フランジ26をオフセットさせるように構成したものであるから、ディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の接合部の間隔を縮小して、触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21の連結長さを短縮できる。また、ディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の接続境界位置にガスセンサ等を簡単に配置できる。触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21の排気ガス移動方向の長さを短縮できるから、触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21等の剛性の向上や軽量化を図れる。
【0033】
図1乃至図5に示す如く、2種類のディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3を設ける構造であって、一方のスートフィルタ3を内設させるフィルタ内側ケース20に、他方のディーゼル酸化触媒2の触媒内側ケース4を内設させる触媒外側ケース5がオーバーラップするように構成したものであるから、ディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の排気ガス移動方向の長さを確保しながら、触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21の排気ガス移動方向の長さを短縮できる。また、触媒外側ケース5がオーバーラップする触媒内側ケース4(他方のディーゼル酸化触媒2)が、触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21の分離(分解)によって、外部に大きく露出されるから、触媒内側ケース4(他方のディーゼル酸化触媒2)の露出範囲が多くなり、一方のスートフィルタ3のスート(粒子状物質)除去等のメンテナンス作業を簡単に実行できる。
【0034】
図1乃至図5に示す如く、複数組のガス浄化フィルタとしてディーゼル酸化触媒2とスートフィルタ3とを設け、スートフィルタ3の外周側に触媒側フランジ25やフィルタ側フランジ26をオフセットさせるように構成したものであるから、触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21の分離によって、スートフィルタ5の排気ガス入口側の内側ケース20端部を、外側ケース21の端面から大きく露出でき、スートフィルタ3や内側ケース20に付着した煤の除去等のメンテナンス作業を容易に実行できる。
【0035】
図1乃至図5に示す如く、2種類のディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3を設ける構造であって、一方のディーゼル酸化触媒2を内設させる触媒内側ケース4と、他方のスートフィルタ3を内設させるフィルタ内側ケース20との間に、センサ取付け空間29を形成したものであるから、触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21の排気ガス移動方向の連結長さを短縮して、触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21等の剛性の向上や軽量化を図りながら、ディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の接続境界位置の前記センサ取付け空間29にガスセンサ等を簡単に配置できる。
【0036】
図1乃至図5に示す如く、フィルタ内側ケース20にオーバーラップさせる触媒外側ケース5にセンサ支持体としてのセンサ接続プラグ50を組付け、ディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の接続境界位置に、センサ接続プラグ50を介して、入口側排気ガス温度センサ(サーミスタ)等のセンサ手段を配置させるように構成したものであるから、触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21等の剛性の向上や軽量化を図りながら、ディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の接続境界位置にセンサ接続プラグ50をコンパクトに設置できる。
【0037】
なお、上記のように、エンジンが排出した排気ガスを浄化するガス浄化フィルタとして、ディーゼル酸化触媒2及びスートフィルタ3を設けたが、ディーゼル酸化触媒2及びスートフィルタ3に代えて、尿素(還元剤)の添加にて発生したアンモニア(NH3)によってエンジン70の排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を還元するNOx選択還元触媒(NOx除去触媒)と、NOx選択還元触媒から排出される残留アンモニアを取り除くアンモニア除去触媒とを設けてもよい。
【0038】
上記のように、ガス浄化フィルタとして、触媒内側ケース4にNOx選択還元触媒(NOx除去触媒)を設け、フィルタ内側ケース20にアンモニア除去触媒を設けた場合、エンジンが排出した排気ガス中の窒素酸化物(NOx)が還元され、無害な窒素ガス(N2)として排出できる。
【0039】
図1乃至図5に示す如く、触媒内側ケース4やフィルタ内側ケース20における排気ガス移動方向の長さと、触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21における排気ガス移動方向の長さを異ならせている。従って、複数組のディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の接合位置に対して、触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21を連結するフランジ体をオフセットさせて配置できる。複数組のディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の取付け間隔を簡単に縮小又は拡大できる。
【0040】
図1乃至図5に示す如く、複数組のディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3と、触媒内側ケース4やフィルタ内側ケース20と、触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21を備え、複数組のディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の接合位置に対して、複数組の触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21を連結する触媒側フランジ25やフィルタ側フランジ26をオフセットさせるように構成し、一方のスートフィルタ3に対向したフィルタ内側ケース20に、他方のディーゼル酸化触媒2に対向した触媒外側ケース5がオーバーラップするように構成している。
【0041】
従って、複数組のディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の接合間隔を縮小できるものでありながら、複数組のディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の接合間にセンサ等を簡単に配置できる。複数組の触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21の排気ガス移動方向の長さを短縮して、複数組の触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21等の剛性の向上や軽量化を図ることができる。複数組のディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の接合間隔を縮小して、複数組の触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21の排気ガス移動方向の長さを短縮できる。
【0042】
図1及び図5に示すように、触媒外側ケース5の外周面のうちセンサ取付け空間29の近傍には、内外に連通可能な水抜き機構としてのドレンプラグ61が設けられている。ドレンプラグ61の外向き開口部は着脱可能な栓体62にて塞がれている。このように構成すると、ディーゼルエンジン70を長期に亘って使用していない場合に、栓体62を取り外すだけで、ドレンプラグ60を介してDPF1の内部を外気に開放した状態に維持できる。このため、ディーゼルエンジン70の長期不使用による結露のせいで、DPF1内に水が溜まるのを簡単に解消できる。例えばディーゼルエンジン70の暖気運転にて、DPF1の内部に溜まった水を蒸発させたりする必要がない。また、水の存在を原因としたDPF1内での錆の発生を低減できるので、DPF1の耐久性も向上する。また、腐食のために開いた穴から高温の排気ガスが漏れ出すおそれも抑制でき、高温の排気ガスにて周辺の機器等が焼損する可能性を極めて少なくできる。
【0043】
図1乃至図3、及び図5乃至図7を参照して、消音器30の取付け構造を説明する。図1乃至図3、図5に示す如く、ディーゼルエンジン70が排出した排気ガス音を減衰させる消音器30は、耐熱金属材料製の略筒型の消音内側ケース31と、耐熱金属材料製の略筒型の消音外側ケース32と、消音内側ケース31及び消音外側ケース32の右側端部に溶接にて固着した円板状の右側蓋体33とを有する。消音外側ケース32に消音内側ケース31を内設させている。なお、円筒形の触媒内側ケース4の直径寸法と、円筒形のフィルタ内側ケース20の直径寸法と、円筒形の消音内側ケース31とが略同一寸法である。また、円筒形の触媒外側ケース5の直径寸法と、円筒形のフィルタ外側ケース21の直径寸法と、円筒形の消音外側ケース32とが略同一寸法である。
【0044】
図4乃至図7に示す如く、消音内側ケース31及び消音外側ケース32に排気ガス出口管34を貫通させている。排気ガス出口管34の一端側が出口蓋体35によって閉塞されている。消音内側ケース31の内部における排気ガス出口管34の全体に多数の排気孔36が開設されている。消音内側ケース31の内部が、多数の排気孔36を介して、排気ガス出口管34に連通されている。図示しない消音器やテールパイプが排気ガス出口管34の他端側に接続される。
【0045】
図6及び図7に示す如く、消音内側ケース31には、多数の消音孔37が開設されている。消音内側ケース31の内部が、多数の消音孔37を介して、消音内側ケース31と消音外側ケース32との間に連通されている。消音内側ケース31と消音外側ケース32との間の空間は、右側蓋体33と薄板製支持体38によって閉塞されている。消音内側ケース31と消音外側ケース32との間にセラミックファイバー製消音材39が充填されている。消音内側ケース31の排気ガス移動上流側(左側)の端部が、薄板製支持体38を介して、消音外側ケース32の排気ガス移動上流側(左側)の端部に連結されている。
【0046】
上記の構成により、消音内側ケース31内から排気ガス出口管34を介して排気ガスが排出される。また、消音内側ケース31の内部において、多数の消音孔37から消音材39に排気ガス音(主に高周波帯の音)が吸音される。排気ガス出口管34の出口側から排出される排気ガスの騒音が減衰される。実施形態では、触媒外側ケース5、フィルタ外側ケース21、消音外側ケース32及び左右側蓋体9,33にてDPF1の筺体が構成されている。
【0047】
図1及び図5に示す如く、フィルタ内側ケース20とフィルタ外側ケース21の排気ガス移動下流側(右側)の端部にフィルタ側出口フランジ40を溶接する。消音外側ケース32の排気ガス移動上流側(左側)の端部に、消音側フランジ41を溶接する。フィルタ側出口フランジ40と、消音側フランジ41とを、ボルト42及びナット43によって着脱可能に締結している。なお、フィルタ内側ケース20とフィルタ外側ケース21にセンサ接続プラグ44を固着している。センサ接続プラグ44には、消音内側ケース31内における排気ガスの圧力を検出する排気圧検出手段としての出口側排気圧センサ44aが差し込み装着されている。
【0048】
図1、図2、図5乃至図7に示すごとく、ディーゼルエンジン70が排出した排気ガスを浄化するガス浄化フィルタとしてのディーゼル酸化触媒2又はスートフィルタ3と、ディーゼル酸化触媒2又はスートフィルタ3を内設させる内側ケースとしての触媒内側ケース4又はフィルタ内側ケース20と、触媒内側ケース4又はフィルタ内側ケース20を内設させる外側ケースとしての触媒外側ケース5又はフィルタ外側ケース21とを備えてなる排気ガス浄化装置において、ディーゼルエンジン70が排出した排気ガスの排気音を減衰させる排気音減衰体としての消音材39を備え、触媒外側ケース5又はフィルタ外側ケース21の排気ガス出口側端部に消音材39を配置したものであるから、ディーゼル酸化触媒2又はスートフィルタ3の排気ガス浄化機能を維持しながら、ディーゼル酸化触媒2又はスートフィルタ3の構造を変更することなく、排気ガスの消音機能を簡単に付加できる。例えば、前記外側ケースにテールパイプを直接連結させる排気構造や、既設の消音器の消音機能をさらに向上させる排気構造等を容易に構成できる。また、ディーゼル酸化触媒2又はスートフィルタ3の部位での実施が困難であった排気ガスの高周波低減対策を簡単に実行できる。例えばパンチ孔と繊維状マット等にて形成する消音構造(消音材39)を簡単に設置できる。
【0049】
図5乃至図7に示すごとく、消音材39を有する消音器30を備え、フィルタ外側ケース21の排気ガス出口側端部に消音器30を着脱可能に連結させるように構成したものであるから、消音器30の着脱によって、ディーゼル酸化触媒2又はスートフィルタ3の部位における排気ガスの消音機能を簡単に変更できる。
【0050】
図5乃至図7に示すごとく、消音材39を有する消音器30を備え、触媒外側ケース5又はフィルタ外側ケース21及び消音器30を略同一外径寸法の円筒形状にそれぞれ形成し、フィルタ外側ケース21の排気ガス出口側端部にリング形状のフランジ体としてのフィルタ側出口フランジ40を設け、フィルタ外側ケース21の排気ガス出口側端部に、フィルタ側出口フランジ40を介して、消音材39を着脱可能に連結させるように構成したものであるから、略同一外径寸法の消音器30がフィルタ側出口フランジ40によってフィルタ外側ケース21に連結されることによって、排気ガスの移動方向に触媒外側ケース5又はフィルタ外側ケース21の取付け寸法を長くするだけで、消音器30をコンパクトに組込むことができる。例えば、ディーゼルエンジン70の排気ガス排出部の側面に接近させて触媒外側ケース5又はフィルタ外側ケース21を簡単に設置できる。また、排気ガスの温度維持によって、ディーゼル酸化触媒2又はスートフィルタ3のガス浄化機能を向上させながら、消音材39の設置によって排気ガスの高周波低減対策を簡単に実行できる。
【0051】
図5乃至図7に示すごとく、消音材39が内蔵されたサイレンサケーシングとしての消音内側ケース31及び消音外側ケース32と、一端側を閉塞し且つ他端側をテールパイプ(図示省略)に連通させる排気ガス出口管34とを備え、消音内側ケース31及び消音外側ケース32に排気ガス出口管34の排気孔36形成部を貫通させ、フィルタ外側ケース21の排気ガス出口側端部に、フィルタ側出口フランジ40を介して、消音内側ケース31及び消音外側ケース32を着脱可能に連結させるように構成したものであるから、消音内側ケース31及び消音外側ケース32の着脱によって、ディーゼル酸化触媒2又はスートフィルタ3の部位における排気ガスの消音機能を簡単に変更できる。例えば、消音内側ケース31及び消音外側ケース32とは別に消音器(図示省略)を設置することによって、排気ガスの消音機能をさらに向上させる排気構造等を容易に構成できる。一方、消音材39が内蔵されていない消音内側ケース31及び消音外側ケース32の配置によって、フィルタ外側ケース21にテールパイプ(図示省略)を直接連結させる排気構造を容易に構成できる。また、ディーゼル酸化触媒2又はスートフィルタ3の部位での実施が困難であった排気ガスの高周波低減対策として、消音内側ケース31及び消音外側ケース32内に、消音材39(パンチ孔と繊維状マット等)消音構造を簡単に構成できる。
【0052】
図5乃至図7に示すごとく、前記サイレンサケーシングは、円筒形状の消音内側ケース31と円筒形状の消音外側ケース32を有し、消音外側ケース32内に消音内側ケース31を配置させ、消音内側ケース31と消音外側ケース32の間に消音材39を充填させ、消音内側ケース31に多数の消音孔37を形成したものであるから、ディーゼル酸化触媒2又はスートフィルタ3を内設させる触媒内側ケース4又はフィルタ内側ケース20や触媒外側ケース5又はフィルタ外側ケース21を備えた排気ガス浄化構造に近似させて、前記サイレンサケーシング(消音内側ケース31や消音外側ケース32)を構成できる。ディーゼル酸化触媒2又はスートフィルタ3を内設させるための触媒内側ケース4又はフィルタ内側ケース20や触媒外側ケース5又はフィルタ外側ケース21と同一材料(パイプ等)を利用して、前記サイレンサケーシングの消音内側ケース31や消音外側ケース32を形成できる。前記サイレンサケーシングの製造コストを簡単に低減できる。
【0053】
図8乃至図11を参照して、ディーゼルエンジン70に前記DPF1を設けた構造を説明する。図8乃至図10に示す如く、ディーゼルエンジン70の上部に位置するシリンダヘッド72の左右側面に、排気マニホールド71と吸気マニホールド73とが配置されている。図9から明らかなように、排気マニホールド71と吸気マニホールド73とは、平面視においてシリンダヘッド72を挟んだ両側に振り分けて配置されている。シリンダヘッド72は、エンジン出力軸74(クランク軸)とピストン(図示省略)を有するシリンダブロック75に上載される。シリンダブロック75の前面と後面からエンジン出力軸74の前端と後端とを突出させる。シリンダブロック75の前面に、ディーゼルエンジン70等を空冷するための冷却ファン76を設ける。エンジン出力軸74の前端側からVベルト77を介して冷却ファン76に回転力を伝達するように構成している。
【0054】
図8及び図9に示す如く、シリンダブロック75の後面にフライホイールハウジング78を固着している。フライホイールハウジング78にフライホイール79を内設する。エンジン出力軸74の後端側にフライホイール79を軸支させている。後述するバックホウ100やフォークリフト120等の作動部に、フライホイール79を介してディーゼルエンジン70の動力を取り出すように構成している。また、シリンダブロック75の下面にオイルパン81を配置している。シリンダブロック75の側面とフライホイールハウジング78の側面とに、機関脚取付け部82を設ける。機関脚取付け部82には、防振ゴムを有する機関脚体83がボルト80にて締結される。作業車両(バックホウ100、フォークリフトカー120)等のエンジン取付シャーシ84に機関脚体83を介してディーゼルエンジン70が防振支持される。
【0055】
図8及び図10に示す如く、触媒外側ケース5及び消音外側ケース32に、フィルタ支持体としての支持脚体19の一端側を溶接している。シリンダブロック75の左右側面のうち冷却ファン76寄りにある左右一対の機関脚取付け部82に、左右の支持脚体19の他端側をボルト80にて締結している。上記したDPF1は、支持脚体19を介して、高剛性のシリンダブロック75に支持される。DPF1は、エンジン出力軸74と直交する方向に長い形態に形成されていて、冷却ファン76より下方において、排気ガス移動方向がエンジン出力軸74と直交する方向になるように、オイルパン81に対向して(オイルパン81の前方に)配置されている。
【0056】
ディーゼルエンジン70の排気マニホールド71には、中継排気管85を介してDPF1の排気ガス入口管16が着脱可能に連結されている。ディーゼルエンジン70の排気マニホールド71から、中継排気管85及び排気ガス入口管16を介して、DPF1内に排気ガスが移動し、DPF1にて排気ガスが浄化され、排気ガス出口管34からテールパイプ(図示省略)に排気ガスが移動して、最終的に機外に排出されることになる。なお、図11に示すように、中継排気管85は断熱構造になっている。すなわち、中継排気管85は二重管構造を採用しており、内管86とこれに被せた外管87との間に、例えばセラミックファイバー製の断熱材88が充填されている。
【0057】
以上の構成から明らかなように、ディーゼルエンジン70の一側方に、ディーゼルエンジン70冷却用の冷却ファン76を備えており、冷却ファン76の下方に、ディーゼルエンジン70からの排気ガスを浄化するためのDPF1が配置されているから、冷却ファン76より下方の空間を有効利用して、ディーゼルエンジン70の排気マニホールド71にできるだけ近くて、且つ、冷却ファン76からの冷却風が当たり難い位置に、DPF1を配置できることになる。従って、冷却風によるDPF1、ひいてはその内部の排気ガス温度の低下を抑制でき、DPF1の排気ガス浄化性能を適正な状態に維持し易い。その上、例えば消音器30等より重量物であるDPF1を、冷却ファン76の下方に配置するから、ディーゼルエンジン70の重心が低くなり防振性を向上できる。
【0058】
また、ディーゼルエンジン70の左右両側面のうち冷却ファン76寄りの部位にある一対の機関脚取付け部82に、DPF1を支持する支持脚体19を備えており、DPF1は、前記各支持脚体19を介して各機関脚取付け部82に連結されているから、ディーゼルエンジン70の構成部品の一つとして、ディーゼルエンジン70にDPF1を高剛性に配置でき、作業車両等の機器毎の排気ガス対策を不用にし、ディーゼルエンジン70の汎用性を向上できるという効果を奏する。
【0059】
すなわち、ディーゼルエンジン70の高剛性部(シリンダブロック75)の利用にてDPF1を高剛性に支持して、振動等によるDPF1の損傷を防止できる。また、ディーゼルエンジン70の製造場所でディーゼルエンジン70にDPF1を組み込んで出荷することが可能になり、ディーゼルエンジン70とDPF1をまとめてコンパクトに構成できるという利点もある。前述の通り、ディーゼルエンジン70にDPF1を組み込んで出荷可能であるから、ディーゼルエンジン70を搭載する作業車両毎に出荷申請する手間等を省略でき、製造コストを抑制できる。
【0060】
図8〜図10に示すように、実施形態のDPF1は、エンジン出力軸74と直交する左右方向に長い形態になっており、前記左右方向に沿ってDPF1内を排気ガスが移動するように構成されているから、冷却ファン76の下方において、エンジン出力軸74と直交する左右方向に向けてDPF1を延長させることが可能になる。このため、排気ガス浄化性能を向上させたり消音機能を付加させたりすることが簡単に行える。DPF1におけるエンジン出力軸74方向(前後方向)の大きさをコンパクトに構成できるから、冷却ファン76の下方においてDPF1の配置スペースを簡単に確保できる。
【0061】
実施形態のDPF1は、冷却ファン76より下方において、排気ガス移動方向がエンジン出力軸74と直交する方向になるように、オイルパン81に対向して(オイルパン81の前方に)配置されている。このため、シリンダヘッド72、排気マニホールド72及び吸気マニホールド73の上面は広範囲に露出することになり、ディーゼルエンジン70関連のメンテナンス作業がし易い。しかも、ディーゼルエンジン70の排気マニホールド71にできるだけ近くて、且つ、冷却ファン76からの冷却風が当たるのを回避しながら、できるだけディーゼルエンジン70に近接させてDPF1を配置できるので、DPF1を組み込んだディーゼルエンジン70のコンパクト化を図れるのである。
【0062】
さて、図8〜図10に示すように、DPF1と冷却ファン76との間には、冷却ファン76からDPF1に向かう冷却風を遮る風防体90が配置されている。実施形態の風防体90は、DPF1の筺体(この場合は触媒外側ケース5、フィルタ外側ケース21及び消音外側ケース32)に沿って湾曲した円弧板状のものであり、DPF1の筺体のうち冷却ファン76寄りの部位を覆うようにして、DPF1の筺体側に取り付けられている。この場合、風防体90は、DPF1における筺体の外周面に溶接固定された複数の取付け座部91にボルト92にて着脱可能に締結されている。なお、図9に詳細に示すように、風防体90のうち排気ガス入口管16と重なる箇所は切り欠かれていて、風防体90をDPF1に取り付けた状態では、切り欠き部分に排気ガス入口管16とこれを覆う排気管風防体93(詳細は後述する)とが嵌まることになる。
【0063】
このように、DPF1と冷却ファン76との間に、冷却ファン76からDPF1に向かう冷却風を遮る風防体90を配置すると、冷却ファン76からの冷却風がDPF1に直接当たるのを阻止でき、冷却風によるDPF1、ひいてはその内部の排気ガス温度の低下を確実に抑制できる。従って、DPF1の排気ガス浄化性能を適正に維持できる。
【0064】
風防体90の発明に関して、実施形態のように冷却ファン76の下方にDPF1を配置していれば、配置態様だけで冷却風が当たり難くなる上、風防体90の存在によって、冷却風による排気ガス温度の低下を確実に抑制できるので好ましい。ただし、DPF1の配置箇所はディーゼルエンジン70の周辺部であればよく、実施形態の配置箇所(冷却ファン76の下方)に限定されない。
【0065】
言い換えると、風防体90を備えていればDPF1に対する冷却風の悪影響を考慮しなくて済むから、冷却ファン76の配置箇所によってDPF1の配置箇所が制限されることはまずないのであり、ディーゼルエンジン70に対するDPF1のレイアウトの自由度が高まるのである。
【0066】
実施形態の風防体90は、DPF1の筺体のうち冷却ファン76寄りの部位を覆うようにして、DPF1の筺体側に取り付けられているから、DPF1の筺体を利用して風防体90の支持構造を簡単に構成できる。また、DPF1の構成中に風防体90を組み込みできるから、DPF1を含む排気系部品の組付け作業性を向上できる。
【0067】
一方、中継排気管85と冷却ファン76との間には、冷却ファン76から中継排気管85に向かう冷却風を遮る排気管風防体93が配置されている。実施形態の排気管風防体93は、中継排気管85に沿って延びる断面円弧長板状のものであり、中継排気管85の外周面のうち冷却ファン76寄りの部位を覆うようにして、中継排気管85に取り付けられている。この場合、排気管風防体93は、中継排気管85における外管87の外周面に溶接固定された複数の取付けボス部94にボルト95にて着脱可能に締結されている。
【0068】
このように、中継排気管85と冷却ファン76との間に、冷却ファン76から中継排気管85に向かう冷却風を遮る排気管風防体93を配置すると、中継排気管85が冷却ファン76の近傍を通っていても、冷却ファン76からの冷却風が中継排気管85に直接当たるのを阻止でき、冷却風による中継排気管85内の排気ガス温度の低下を確実に抑制できる。その上、その上、中継排気管85は断熱構造になっているから、冷却風による中継排気管85内の排気ガス温度の低下は極めて抑えられることになる。このため、中継排気管85を通過する排気ガスに対する冷却風の悪影響を考慮しなくて済み、冷却ファン76の下方のデッドスペースをDPF1の配置空間として有効利用できる。
【0069】
また、実施形態の排気管風防体93は、中継排気管85の外周面のうち冷却ファン76寄りの部位を覆うようにして、中継排気管85に取り付けられているから、中継排気管85(外管87)の外周面を利用して排気管風防体93の支持構造を簡単に構成できる。しかも、中継排気管85の構成中に排気管風防体93を組み込みできるから、中継排気管85を含む排気系部品の組付け作業性を向上できる。
【0070】
なお、図9及び図10に示すように、実施形態におけるDPF1の筺体(この場合は右側蓋体33)には、DPF1の持ち運びのための把手体96が設けられている。このように構成すると、DPF1の筺体が片手で持ち難い円筒形状に形成されていても、把手体96を利用してDPF1を片手で簡単に持つことができ、DPF1の組付けや取り外し等を簡単に行えるという利点がある。
【0071】
次に、図12及び図13を参照しながら、スートフィルタ3の再生制御を実行するための構成とその制御態様の一例とについて説明する。ディーゼルエンジン70搭載の作業車両(バックホウ100、フォークリフトカー120)に設けられた制御手段の一例であるコントローラ140は、各種演算処理や制御を実行するCPU141の他、制御プログラムやデータを記憶させるためのROM142、制御プログラムやデータを一時的に記憶させるためのRAM143、及び入出力インターフェイス等を備えている。また、コントローラ140には、排気圧検出手段としての入口側排気圧センサ10a及び出口側排気圧センサ44a、配管カバー体56に対するカバーアクチュエータ58、並びに、バタフライ形開閉弁59に対する弁アクチュエータ60等が電気的に接続されている。
【0072】
実施形態のコントローラ140は、排気圧センサ10a、44aの検出値の差に基づく排気調節機構54(配管カバー体56及びバタフライ形開閉弁59)の駆動にてディーゼルエンジン70の排気圧を高くすることにより、エンジン負荷を増大させるというスートフィルタ3再生制御を実行するように構成されている。スートフィルタ3再生制御は、適宜時間間隔にて、DPF1内のうちスートフィルタ3を挟んだ上流側及び下流側間の圧力差ΔPをチェックする割り込み診断処理の結果に応じて実行される。
【0073】
この場合、図13のフローチャートに示すように、両排気圧センサ10a、44aの検出値の差ΔPが予め設定された設定上限値ΔPmax以上になると、カバーアクチュエータ58の駆動にて、排気ガス入口管16における開口孔55の開口数を減らす方向に配管カバー体56をスライド移動させると共に、弁アクチュエータ60の駆動にてバタフライ形開閉弁59の開度を狭くする。そうすると、ディーゼルエンジン70の排気圧が高くなってエンジン負荷が増大するので、エンジン回転数維持のためにディーゼルエンジン70の出力(燃料噴射量)が増大して、ディーゼルエンジン70からの排気ガス温度が上昇する。その結果、スートフィルタ3に堆積したスートが燃焼して消失し、スートフィルタ3が再生することになる。
【0074】
その後、両排気圧センサ10a、44aの検出値の差ΔPが予め設定された設定下限値ΔPmin以下になると、カバーアクチュエータ58の駆動にて、開口数を減らす前の元の位置に配管カバー体56をスライド移動させると共に、弁アクチュエータ60の駆動にて、バタフライ形開閉弁59の開度を、狭くする前の元の状態に戻すのである。
【0075】
なお、配管カバー体56とバタフライ形開閉弁59との両方をスートフィルタ3再生制御に常に利用する必要はなく、状況に応じて少なくとも一方を用いればよい。また、スートフィルタ3再生制御には、配管カバー体56とバタフライ形開閉弁59とのうち少なくとも一方の構成を採用していれば足りる。両方を併用すれば、ディーゼルエンジンの駆動状態等にも配慮した細やかなスートフィルタ3再生制御が可能になる。
【0076】
図14及び図15を参照して、バックホウ100に前記ディーゼルエンジン70を搭載した構造を説明する。図14及び図15に示す如く、バックホウ100は、左右一対の走行クローラ103を有する履帯式の走行装置102と、走行装置102上に設けられた旋回機体104とを備えている。旋回機体104は、図示しない旋回用油圧モータによって、360°の全方位にわたって水平旋回可能に構成されている。走行装置102の後部には、対地作業用の土工板105が昇降動可能に装着されている。旋回機体104の左側部には、操縦部106とディーゼルエンジン70とが搭載されている。旋回機体104の右側部には、掘削作業のためのブーム111及びバケット113を有する作業部110が設けられている。
【0077】
操縦部106には、オペレータが着座する操縦座席108と、ディーゼルエンジン70等を出力操作する操作手段や、作業部110用の操作手段としてのレバー又はスイッチ等が配置されている。作業部110の構成要素であるブーム111には、ブームシリンダ112とバケットシリンダ114とが配置されている。ブーム111の先端部には、掘削用アタッチメントとしてのバケット113が、掬い込み回動可能に枢着されている。ブームシリンダ112又はバケットシリンダ114を作動させて、バケット113によって土工作業(作溝等の対地作業)を実行するように構成している。
【0078】
図16及び図17を参照して、フォークリフトカー120に前記ディーゼルエンジン70を搭載した構造を説明する。図16及び図17に示す如く、フォークリフトカー120は、左右一対の前輪122及び後輪123を有する走行機体124を備えている。走行機体124には、操縦部125とディーゼルエンジン70とが搭載されている。ディーゼルエンジン70はカバー体133にて上方から覆われており、カバー体133上に操縦部125が設けられることになる。
【0079】
走行機体124の前部側には、荷役作業のためのフォーク126を有する作業部127が設けられている。走行機体124の後部側には、作業部127との重量バランスを取るためのカウンタウェイト131が設けられている。操縦部125には、オペレータが着座する操縦座席128と、操縦ハンドル129と、ディーゼルエンジン70や作業部127用の操作手段としてのレバー及びスイッチ等が配置されている。
【0080】
作業部127の構成要素であるマスト130には、フォーク126が昇降可能に装着されている。フォーク126を昇降動させて、荷物を積んだパレット(図示省略)をフォーク126に上載させ、走行機体124を前後進移動させて、前記パレットの運搬等の荷役作業を実行するように構成している。
【0081】
ディーゼルエンジン70は、フライホイールハウジング78が走行機体124の前部側に、冷却ファン76が走行機体124の後部側に位置するように配置されている。すなわち、エンジン出力軸74の向きが作業部127とカウンタウェイト131とが並ぶ前後方向に沿うように、ディーゼルエンジン70が配置されている。走行機体124を構成するエンジン取付シャーシ84に、機関脚体83を介してディーゼルエンジン70が防振支持されている。フライホイールハウジング78の前面側には作動部としてのミッションケース132が連結されている。ディーゼルエンジン70からフライホイール79を経由した動力は、ミッションケース132にて適宜変速され、前輪122及び後輪123やフォーク126の油圧駆動源に伝達されることになる。
【0082】
カバー体133内であって操縦座席128とこれより後方に配置されたカウンタウェイト131との間には、カウンタウェイト131寄りの高位置に、エンジン冷却用のラジエータ134が冷却ファン76に相対向するように配置されている。冷却ファン76の回転駆動にてラジエータ134に冷却風を吹き付けることにより、ラジエータ134が空冷されることになる。
【0083】
図16に示すように、ラジエータ134はカウンタウェイト131寄りの高位置に配置されるため、ラジエータ134並びに冷却ファン76の下方にはスペースが空くことになえる。当該スペースには、ディーゼルエンジン70の下面側に配置されたオイルパン81に対向するように、DPF1が収容されている。
【0084】
このように構成すると、ラジエータ134並びに冷却ファン76の下方のスペースをDPF1の配置空間として有効利用でき、カバー体133の内部スペースの利用効率を向上できる。また、ディーゼルエンジン70の排気マニホールド71にできるだけ近くて、且つ、冷却ファン76からの冷却風が当たり難い位置に、DPF1を配置することになるから、冷却風によるDPF1、ひいてはその内部の排気ガス温度の低下を抑制でき、DPF1の排気ガス浄化性能を適正な状態に維持し易い。その上、例えば消音器30等より重量物であるDPF1を、冷却ファン76の下方に配置するから、ディーゼルエンジン70の重心が低くなり防振性を向上できるのである。
【0085】
なお、本願発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施形態に係る排気ガス浄化装置の正面視断面図である。
【図2】同外観底面図である。
【図3】同排気ガス流入側から見た左側面図である。
【図4】同排気ガス排出側から見た右側断面図である。
【図5】図1の正面視分解断面図である。
【図6】同排気ガス排出側の正面視拡大断面図である。
【図7】同排気ガス排出側の側面視拡大断面図である。
【図8】ディーゼルエンジンの左側面図である。
【図9】ディーゼルエンジンの平面図である。
【図10】ディーゼルエンジンの正面図である。
【図11】中継排気管の拡大断面図である。
【図12】コントローラの機能ブロック図である。
【図13】制御の一例を示すフローチャートである。
【図14】バックホウの側面図である。
【図15】バックホウの平面図である。
【図16】フォークリフトカーの側面図である。
【図17】フォークリフトカーの平面図である。
【符号の説明】
【0087】
1 DPF(排気ガス浄化装置)
2 ディーゼル酸化触媒
3 スートフィルタ
16 排気ガス入口管(DPFの排気ガス入口)
19 支持脚体(フィルタ支持体)
34 排気ガス出口管(DPFの排気ガス出口)
54 排気調節機構
70 ディーゼルエンジン
71 排気マニホールド
73 吸気マニホールド
76 冷却ファン
78 フライホイールハウジング
90 風防体
120 フォークリフト(作業車両)
134 ラジエータ
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えばバックホウ、フォークリフト又はトラクタのような作業車両に用いられるエンジン装置に係り、より詳しくは、機体上におけるエンジンや排気ガス浄化装置等の配置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ディーゼルエンジンの排気経路中に、排気ガス浄化装置(後処理装置)として、ディーゼルパティキュレートフィルタ(又はNOx触媒)等を設け、ディーゼルエンジンから排出された排気ガスを、ディーゼルパティキュレートフィルタ(又はNOx触媒)等にて浄化処理するようにした技術が知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。また、ケーシング(外側ケース)内にフィルタケース(内側ケース)を設け、フィルタケース内にパティキュレートフィルタを配置する技術も公知である(特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2000−145430号公報
【特許文献2】特開2003−27922号公報
【特許文献3】特開2008−82201号公報
【特許文献4】特開2001−173429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ディーゼルエンジンは汎用性が広く、建設機械、農作業機、船舶といった様々な分野で用いられる。ディーゼルエンジンの搭載スペースは搭載される車両によって様々であるが、特にバックホウやフォークリフトのような作業車両では、周囲との接触防止のために旋回半径をできるだけ小さくしたい関係上、機体自体をコンパクト化しなければならず、搭載スペースに制約がある(狭い)ことが多い。
【0004】
一方、前述の排気ガス浄化装置においては、これを通過する排気ガスの温度が高温(例えば300℃以上)であるのが機能的に望ましいとされているため、ディーゼルエンジンに排気ガス浄化装置を取り付けたいという要請がある。
【0005】
しかし、排気ガス浄化装置付きのディーゼルエンジンを作業車両に適用するには、狭い搭載スペース内に、排気ガス浄化装置付きのディーゼルエンジンだけでなく、ラジエータやエアクリーナ等の様々な部品を効率よく配置しなければならない。また、搭載スペースの制約という問題もさることながら、駆動によるエンジン振動が排気ガス浄化装置に直接伝わり易いことや、ディーゼルエンジンに設けられた冷却ファンからの冷却風が排気ガス浄化装置に直接当たると、排気ガス浄化装置、ひいては排気ガス温度を下げるおそれがあることも問題になってくる。
【0006】
そこで、本願発明は、このような現状を改善することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1の発明は、エンジンの一側方に前記エンジン冷却用の冷却ファンを備えている作業車両搭載用のエンジン装置であって、前記エンジンの周辺部に、前記エンジンからの排気ガスを浄化するための排気ガス浄化装置が配置されており、前記排気ガス浄化装置と前記冷却ファンとの間に、前記冷却ファンから前記排気ガス浄化装置に向かう冷却風を遮る風防体が配置されているというものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載した作業車両搭載用のエンジン装置において、前記排気ガス浄化装置の筺体に前記風防体が取り付けられているというものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1に記載した作業車両搭載用のエンジン装置において、前記エンジンに設けられた排気マニホールドと前記排気ガス浄化装置とは中継排気管を介して接続されており、前記中継排気管と前記冷却ファンとの間には、前記冷却ファンから前記中継排気管に向かう冷却風を遮る排気管風防体が配置されているというものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載した作業車両搭載用のエンジン装置において、前記中継排気管の外周面のうち前記冷却ファン寄りの部位に、前記排気管風防体が取り付けられているというものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1に記載した作業車両搭載用のエンジン装置において、前記エンジンに設けられた排気マニホールドと前記排気ガス浄化装置とは中継排気管を介して接続されており、前記中継排気管が断熱構造になっているというものである。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1に記載した作業車両搭載用のエンジン装置において、前記排気ガス浄化装置の前記筺体に、前記排気ガス浄化装置の持ち運びのための把手体が設けられているというものである。
【発明の効果】
【0013】
本願発明によると、エンジンの一側方に前記エンジン冷却用の冷却ファンを備えている作業車両搭載用のエンジン装置であって、前記エンジンの周辺部に、前記エンジンからの排気ガスを浄化するための排気ガス浄化装置が配置されており、前記排気ガス浄化装置と前記冷却ファンとの間に、前記冷却ファンから前記排気ガス浄化装置に向かう冷却風を遮る風防体が配置されているから、前記冷却ファンからの冷却風が前記排気ガス浄化装置に直接当たるのを阻止でき、冷却風による前記排気ガス浄化装置、ひいてはその内部の排気ガス温度の低下を確実に抑制できる。従って、前記排気ガス浄化装置の排気ガス浄化性能を適正に維持できるという効果を奏する。
【0014】
前記風防体の発明に関して、例えば前記冷却ファンの下方に前記排気ガス浄化装置を配置していれば、配置態様だけで冷却風が当たり難くなる上、前記風防体の存在によって、冷却風による排気ガス温度の低下を確実に抑制できるので好ましい。ただし、前記排気ガス浄化装置の配置箇所は前記エンジンの周辺部であればよい。
【0015】
言い換えると、前記風防体を備えていれば前記排気ガス浄化装置に対する冷却風の悪影響を考慮しなくて済むから、前記冷却ファンの配置箇所によって前記排気ガス浄化装置の配置箇所が制限されることはまずないのであり、前記エンジンに対する前記排気ガス浄化装置のレイアウトの自由度が高まるという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、排気ガス流入側を単に左側と称し、同じく排気ガス排出側を単に右側と称する。
【0017】
はじめに、図1乃至図7を参照しながら、排気ガス浄化装置の全体構造について説明する。図1乃至図5に示す如く、実施形態の排気ガス浄化装置としての連続再生式のディーゼルパティキュレートフィルタ1(以下、DPFという)を設けている。DPF1は、排気ガス中の粒子状物質(PM)等を物理的に捕集するためのものである。DPF1は、二酸化窒素(NO2)を生成する白金等のディーゼル酸化触媒2と、捕集した粒子状物質(PM)を比較的低温で連続的に酸化除去するハニカム構造のスートフィルタ3とを、排気ガスの移動方向(図1の左側から右側方向)に直列に並べた構造になっている。DPF1は、スートフィルタ3が連続的に再生されるように構成している。DPF1によって、排気ガス中の粒子状物質(PM)の除去に加え、排気ガス中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)を低減できる。
【0018】
図1及び図5を参照して、ディーゼル酸化触媒2の取付け構造を説明する。図1及び図5に示す如く、エンジンが排出した排気ガスを浄化するガス浄化フィルタとしてのディーゼル酸化触媒2は、耐熱金属材料製の略筒型の触媒内側ケース4に内設させている。触媒内側ケース4は、耐熱金属材料製の略筒型の触媒外側ケース5に内設させている。即ち、ディーゼル酸化触媒2の外側にマット状のセラミックファイバー製触媒断熱材6を介して触媒内側ケース4を被嵌させている。また、触媒内側ケース4の外側に端面I字状の薄板製支持体7を介して触媒外側ケース5を被嵌させている。なお、触媒断熱材6によってディーゼル酸化触媒2が保護される。触媒内側ケース4に伝わる触媒外側ケース5の応力(変形力)を薄板製支持体7にて低減させる。
【0019】
図1及び図5に示す如く、触媒内側ケース4及び触媒外側ケース5の左側端部に円板状の左側蓋体8を溶接にて固着している。ディーゼル酸化触媒2の左側端面2aと左側蓋体8とをガス流入空間用一定距離L1だけ離間させて対向させる。ディーゼル酸化触媒2の左側端面2aと左側蓋体8との間に排気ガス流入空間11を形成している。触媒内側ケース4及び触媒外側ケース5における排気ガス流入空間11の部位には、センサ接続プラグ10が固着されている。センサ接続プラグ10には、排気ガス流入空間11内における排気ガスの圧力を検出する排気圧検出手段としての入口側排気圧センサ10aが差し込み装着されている。
【0020】
図1及び図5に示す如く、排気ガス流入空間11が形成された触媒内側ケース4及び触媒外側ケース5の左側端部には、円筒形状の排気ガス入口管16が差し込まれて固定されている。詳細は図示していないが、排気ガス入口管16の一端(先端)側は閉塞されている。排気ガス入口管16のうち触媒内側ケース4と触媒外側ケース5との間には、閉塞リング体15が挟持状に固着されている。排気ガス入口管16、触媒内側ケース4及び触媒外側ケース5という三者間の隙間は閉塞リング体15によって塞がれており、閉塞リング体15にて、触媒内側ケース4と触媒外側ケース5の間に排気ガスが流入するのを防止している。
【0021】
排気ガス入口管16のうち触媒内側ケース4内の部位には、多数の開口孔55が形成されている。排気ガス入口管16の内部は、多数の開口孔55を介して、触媒内側ケース4の内部に連通している。従って、排気ガス入口管16から多数の開口孔55を介して触媒内側ケース4内に排気ガスが送り込まれる。図1、図3及び図5に示す如く、排気ガス入口管16のうち触媒外側ケース5から突出した突出部には、排気接続フランジ体17が溶接されている。排気接続フランジ体17は、ボルト18を介して、ディーゼルエンジン70の排気マニホールド71につながる中継排気管85に接続されている(詳細は後述する)。
【0022】
上記の構成により、ディーゼルエンジン70の排気ガスが、排気マニホールド71から排気ガス入口管16に入り込んだのち、排気ガス入口管16から多数の開口孔55を介して排気ガス流入空間11に送り込まれ、ディーゼル酸化触媒2に左側端面2a側から供給される。ディーゼル酸化触媒2の酸化作用にて二酸化窒素(NO2)が生成される。
【0023】
DPF1の排気ガス入口側である排気ガス流入空間11には、ガス浄化フィルタの一例であるスートフィルタ3への排気ガスの取り込み量を調節するための排気調節機構54が配置されている。排気調節機構54はスートフィルタ3を再生(粒子状物質捕集能力を回復)させるためのものである。すなわち、スート(粒子状物質)がスートフィルタ3に堆積したときに、排気調節機構54の作用にてディーゼルエンジン70の排気圧を高くすることにより、エンジン負荷が増大する。そうすると、エンジン回転数維持のためにディーゼルエンジン70の出力(燃料噴射量)が増大して、ディーゼルエンジン70からの排気ガス温度が上昇する。その結果、スートフィルタ3に堆積したスートが燃焼して消失し、スートフィルタ3が再生することになる。
【0024】
従って、ディーゼルエンジン70において、例えばエンジン負荷が小さくて排気ガス温度が低くなり易い状態(スートが堆積し易い状態)を継続させていても、排気調節機構54による排気圧の強制上昇にてスートフィルタ3を再生でき、DPF1の排気ガス浄化性能を適正に維持できる。スートフィルタ3に堆積したスートを燃やすためのバーナーやヒータ等も不要になる。また、DPF1の構成中に排気調節機構54が組み込まれているから、DPF1とは別個に排気調節機構54を取り付ける必要がなく、ディーゼルエンジン70にDPF1を取り付けるだけで、排気調節機構54まで組み付けられることになる。このため、排気系部品の種類が少なくなり、排気系部品の組付け作業性やメンテナンス作業性を向上できる。
【0025】
実施形態の排気調節機構54は、排気ガス入口管16のうち触媒内側ケース4内の外周側に設けられた配管カバー体56を備えている。配管カバー体56は、排気ガス入口管16における多数の開口孔55の開閉状態(開口数)を調節するためのものであり、排気ガス入口管16のうち触媒内側ケース4内の外周側に、その長手方向に沿ってスライド移動可能に被嵌されている。そして、配管カバー体56は、例えばラックアンドピニオン機構のような伝動ギヤ機構57を介して、左側蓋体8の外面側に取り付けられたカバーアクチュエータ58に連動連結されている。カバーアクチュエータ58の駆動にて、配管カバー体56を排気ガス入口管16の長手方向に沿ってスライド移動させ、配管カバー体56にて塞がれる開口孔55の数を変えることにより、排気ガス入口管16から触媒内側ケース4内に送り込まれる排気ガス流量、ひいては排気ガスの流通抵抗が変動することになる。
【0026】
また、排気ガス入口管16の内部のうち排気接続フランジ体17寄りの部位には、排気調節機構54の別例であるバタフライ形開閉弁59が配置されている。バタフライ形開閉弁は、排気ガス入口管16のうち触媒外側ケース5から突出する外周面に取り付けられた弁アクチュエータ60の駆動にて、排気ガス入口管16内を開閉するように構成されている。バタフライ形開閉弁59の開度を調節することにより、配管カバー体56の作用と同様に、排気ガス入口管16から触媒内側ケース4内に送り込まれる排気ガス流量、ひいては排気ガスの流通抵抗が変動することになる。
【0027】
図1及び図5を参照して、スートフィルタ3の取付け構造を説明する。図1及び図5に示す如く、エンジン70が排出した排気ガスを浄化するガス浄化フィルタとしてのスートフィルタ3は、耐熱金属材料製の略筒型のフィルタ内側ケース20に内設させている。内側ケース4は、耐熱金属材料製の略筒型のフィルタ外側ケース21に内設させている。即ち、スートフィルタ3の外側にマット状のセラミックファイバー製フィルタ断熱材22を介してフィルタ内側ケース20を被嵌させている。なお、フィルタ断熱材22によってスートフィルタ3が保護される。
【0028】
図1及び図5に示す如く、触媒外側ケース5の排気ガス移動下流側(右側)の端部に触媒側フランジ25を溶接する。フィルタ内側ケース20の排気ガス移動方向の中間と、フィルタ外側ケース21の排気ガス移動上流側(左側)の端部にフィルタ側フランジ26を溶接する。触媒側フランジ25と、フィルタ側フランジ26とを、ボルト27及びナット28によって着脱可能に締結している。なお、円筒形の触媒内側ケース4の直径寸法と、円筒形のフィルタ内側ケース20の直径寸法とが略同一寸法である。また、円筒形の触媒外側ケース5の直径寸法と、円筒形のフィルタ外側ケース21の直径寸法とが略同一寸法である。
【0029】
図1に示す如く、触媒側フランジ25とフィルタ側フランジ26を介して、触媒外側ケース5にフィルタ外側ケース21が連結された状態では、触媒内側ケース4の排気ガス移動下流側(右側)の端部に、フィルタ内側ケース20の排気ガス移動上流側(左側)の端部が、センサ取付け用一定間隔L2だけ離間して対峙する。即ち、触媒内側ケース4の排気ガス移動下流側(右側)の端部と、フィルタ内側ケース20の排気ガス移動上流側(左側)の端部との間に、センサ取付け空間29が形成される。センサ取付け空間29位置の触媒外側ケース5に、センサ接続プラグ50を固着している。センサ接続プラグ50には、例えば入口側排気ガス温度センサ(サーミスタ、図示省略)等が接続される。
【0030】
図5に示す如く、触媒内側ケース4の排気ガス移動方向の円筒長さL3よりも、触媒外側ケース5の排気ガス移動方向の円筒長さL4を長く形成している。フィルタ内側ケース20の排気ガス移動方向の円筒長さL5よりも、フィルタ外側ケース21の排気ガス移動方向の円筒長さL6を短く形成している。センサ取付け空間29の一定間隔L2と、触媒内側ケース4の円筒長さL3と、フィルタ内側ケース20の円筒長さL5とを加算した長さ(L2+L3+L5)が、触媒外側ケース5の円筒長さL4と、フィルタ外側ケース21の円筒長さL6とを加算した長さ(L4+L6)に略等しくなるように構成している。フィルタ外側ケース21の排気ガス移動上流側(左側)の端部から、フィルタ内側ケース20の排気ガス移動上流側(左側)の端部が、それらの長さの差(L7=L5−L6)だけ突出する。すなわち、触媒外側ケース5にフィルタ外側ケース21を連結した場合、フィルタ内側ケース20の排気ガス移動上流側(左側)の端部が、オーバーラップ寸法L7だけ、触媒外側ケース5の排気ガス移動下流側(右側)に内挿される。
【0031】
上記の構成により、ディーゼル酸化触媒2の酸化作用にて生成された二酸化窒素(NO2)が、スートフィルタ3にこの左側端面3aから供給される。スートフィルタ3に捕集されたディーゼルエンジン70の排気ガス中の捕集粒子状物質(PM)が、二酸化窒素(NO2)によって、比較的低温で連続的に酸化除去される。ディーゼルエンジン70の排気ガス中の粒子状物質(PM)の除去に加え、ディーゼルエンジン70の排気ガス中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)が低減される。
【0032】
図1乃至図5に示す如く、ディーゼルエンジン70が排出した排気ガスを浄化するガス浄化フィルタとしてのディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3と、ディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3を内設させる触媒内側ケース4やフィルタ内側ケース20と、触媒内側ケース4やフィルタ内側ケース20を内設させる触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21とを備えてなる排気ガス浄化装置において、複数組のディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3及び触媒内側ケース4やフィルタ内側ケース20及び触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21を備え、ディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の接続境界位置に対して、触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21を連結するフランジ体としての触媒側フランジ25やフィルタ側フランジ26をオフセットさせるように構成したものであるから、ディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の接合部の間隔を縮小して、触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21の連結長さを短縮できる。また、ディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の接続境界位置にガスセンサ等を簡単に配置できる。触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21の排気ガス移動方向の長さを短縮できるから、触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21等の剛性の向上や軽量化を図れる。
【0033】
図1乃至図5に示す如く、2種類のディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3を設ける構造であって、一方のスートフィルタ3を内設させるフィルタ内側ケース20に、他方のディーゼル酸化触媒2の触媒内側ケース4を内設させる触媒外側ケース5がオーバーラップするように構成したものであるから、ディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の排気ガス移動方向の長さを確保しながら、触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21の排気ガス移動方向の長さを短縮できる。また、触媒外側ケース5がオーバーラップする触媒内側ケース4(他方のディーゼル酸化触媒2)が、触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21の分離(分解)によって、外部に大きく露出されるから、触媒内側ケース4(他方のディーゼル酸化触媒2)の露出範囲が多くなり、一方のスートフィルタ3のスート(粒子状物質)除去等のメンテナンス作業を簡単に実行できる。
【0034】
図1乃至図5に示す如く、複数組のガス浄化フィルタとしてディーゼル酸化触媒2とスートフィルタ3とを設け、スートフィルタ3の外周側に触媒側フランジ25やフィルタ側フランジ26をオフセットさせるように構成したものであるから、触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21の分離によって、スートフィルタ5の排気ガス入口側の内側ケース20端部を、外側ケース21の端面から大きく露出でき、スートフィルタ3や内側ケース20に付着した煤の除去等のメンテナンス作業を容易に実行できる。
【0035】
図1乃至図5に示す如く、2種類のディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3を設ける構造であって、一方のディーゼル酸化触媒2を内設させる触媒内側ケース4と、他方のスートフィルタ3を内設させるフィルタ内側ケース20との間に、センサ取付け空間29を形成したものであるから、触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21の排気ガス移動方向の連結長さを短縮して、触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21等の剛性の向上や軽量化を図りながら、ディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の接続境界位置の前記センサ取付け空間29にガスセンサ等を簡単に配置できる。
【0036】
図1乃至図5に示す如く、フィルタ内側ケース20にオーバーラップさせる触媒外側ケース5にセンサ支持体としてのセンサ接続プラグ50を組付け、ディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の接続境界位置に、センサ接続プラグ50を介して、入口側排気ガス温度センサ(サーミスタ)等のセンサ手段を配置させるように構成したものであるから、触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21等の剛性の向上や軽量化を図りながら、ディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の接続境界位置にセンサ接続プラグ50をコンパクトに設置できる。
【0037】
なお、上記のように、エンジンが排出した排気ガスを浄化するガス浄化フィルタとして、ディーゼル酸化触媒2及びスートフィルタ3を設けたが、ディーゼル酸化触媒2及びスートフィルタ3に代えて、尿素(還元剤)の添加にて発生したアンモニア(NH3)によってエンジン70の排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を還元するNOx選択還元触媒(NOx除去触媒)と、NOx選択還元触媒から排出される残留アンモニアを取り除くアンモニア除去触媒とを設けてもよい。
【0038】
上記のように、ガス浄化フィルタとして、触媒内側ケース4にNOx選択還元触媒(NOx除去触媒)を設け、フィルタ内側ケース20にアンモニア除去触媒を設けた場合、エンジンが排出した排気ガス中の窒素酸化物(NOx)が還元され、無害な窒素ガス(N2)として排出できる。
【0039】
図1乃至図5に示す如く、触媒内側ケース4やフィルタ内側ケース20における排気ガス移動方向の長さと、触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21における排気ガス移動方向の長さを異ならせている。従って、複数組のディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の接合位置に対して、触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21を連結するフランジ体をオフセットさせて配置できる。複数組のディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の取付け間隔を簡単に縮小又は拡大できる。
【0040】
図1乃至図5に示す如く、複数組のディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3と、触媒内側ケース4やフィルタ内側ケース20と、触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21を備え、複数組のディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の接合位置に対して、複数組の触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21を連結する触媒側フランジ25やフィルタ側フランジ26をオフセットさせるように構成し、一方のスートフィルタ3に対向したフィルタ内側ケース20に、他方のディーゼル酸化触媒2に対向した触媒外側ケース5がオーバーラップするように構成している。
【0041】
従って、複数組のディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の接合間隔を縮小できるものでありながら、複数組のディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の接合間にセンサ等を簡単に配置できる。複数組の触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21の排気ガス移動方向の長さを短縮して、複数組の触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21等の剛性の向上や軽量化を図ることができる。複数組のディーゼル酸化触媒2やスートフィルタ3の接合間隔を縮小して、複数組の触媒外側ケース5やフィルタ外側ケース21の排気ガス移動方向の長さを短縮できる。
【0042】
図1及び図5に示すように、触媒外側ケース5の外周面のうちセンサ取付け空間29の近傍には、内外に連通可能な水抜き機構としてのドレンプラグ61が設けられている。ドレンプラグ61の外向き開口部は着脱可能な栓体62にて塞がれている。このように構成すると、ディーゼルエンジン70を長期に亘って使用していない場合に、栓体62を取り外すだけで、ドレンプラグ60を介してDPF1の内部を外気に開放した状態に維持できる。このため、ディーゼルエンジン70の長期不使用による結露のせいで、DPF1内に水が溜まるのを簡単に解消できる。例えばディーゼルエンジン70の暖気運転にて、DPF1の内部に溜まった水を蒸発させたりする必要がない。また、水の存在を原因としたDPF1内での錆の発生を低減できるので、DPF1の耐久性も向上する。また、腐食のために開いた穴から高温の排気ガスが漏れ出すおそれも抑制でき、高温の排気ガスにて周辺の機器等が焼損する可能性を極めて少なくできる。
【0043】
図1乃至図3、及び図5乃至図7を参照して、消音器30の取付け構造を説明する。図1乃至図3、図5に示す如く、ディーゼルエンジン70が排出した排気ガス音を減衰させる消音器30は、耐熱金属材料製の略筒型の消音内側ケース31と、耐熱金属材料製の略筒型の消音外側ケース32と、消音内側ケース31及び消音外側ケース32の右側端部に溶接にて固着した円板状の右側蓋体33とを有する。消音外側ケース32に消音内側ケース31を内設させている。なお、円筒形の触媒内側ケース4の直径寸法と、円筒形のフィルタ内側ケース20の直径寸法と、円筒形の消音内側ケース31とが略同一寸法である。また、円筒形の触媒外側ケース5の直径寸法と、円筒形のフィルタ外側ケース21の直径寸法と、円筒形の消音外側ケース32とが略同一寸法である。
【0044】
図4乃至図7に示す如く、消音内側ケース31及び消音外側ケース32に排気ガス出口管34を貫通させている。排気ガス出口管34の一端側が出口蓋体35によって閉塞されている。消音内側ケース31の内部における排気ガス出口管34の全体に多数の排気孔36が開設されている。消音内側ケース31の内部が、多数の排気孔36を介して、排気ガス出口管34に連通されている。図示しない消音器やテールパイプが排気ガス出口管34の他端側に接続される。
【0045】
図6及び図7に示す如く、消音内側ケース31には、多数の消音孔37が開設されている。消音内側ケース31の内部が、多数の消音孔37を介して、消音内側ケース31と消音外側ケース32との間に連通されている。消音内側ケース31と消音外側ケース32との間の空間は、右側蓋体33と薄板製支持体38によって閉塞されている。消音内側ケース31と消音外側ケース32との間にセラミックファイバー製消音材39が充填されている。消音内側ケース31の排気ガス移動上流側(左側)の端部が、薄板製支持体38を介して、消音外側ケース32の排気ガス移動上流側(左側)の端部に連結されている。
【0046】
上記の構成により、消音内側ケース31内から排気ガス出口管34を介して排気ガスが排出される。また、消音内側ケース31の内部において、多数の消音孔37から消音材39に排気ガス音(主に高周波帯の音)が吸音される。排気ガス出口管34の出口側から排出される排気ガスの騒音が減衰される。実施形態では、触媒外側ケース5、フィルタ外側ケース21、消音外側ケース32及び左右側蓋体9,33にてDPF1の筺体が構成されている。
【0047】
図1及び図5に示す如く、フィルタ内側ケース20とフィルタ外側ケース21の排気ガス移動下流側(右側)の端部にフィルタ側出口フランジ40を溶接する。消音外側ケース32の排気ガス移動上流側(左側)の端部に、消音側フランジ41を溶接する。フィルタ側出口フランジ40と、消音側フランジ41とを、ボルト42及びナット43によって着脱可能に締結している。なお、フィルタ内側ケース20とフィルタ外側ケース21にセンサ接続プラグ44を固着している。センサ接続プラグ44には、消音内側ケース31内における排気ガスの圧力を検出する排気圧検出手段としての出口側排気圧センサ44aが差し込み装着されている。
【0048】
図1、図2、図5乃至図7に示すごとく、ディーゼルエンジン70が排出した排気ガスを浄化するガス浄化フィルタとしてのディーゼル酸化触媒2又はスートフィルタ3と、ディーゼル酸化触媒2又はスートフィルタ3を内設させる内側ケースとしての触媒内側ケース4又はフィルタ内側ケース20と、触媒内側ケース4又はフィルタ内側ケース20を内設させる外側ケースとしての触媒外側ケース5又はフィルタ外側ケース21とを備えてなる排気ガス浄化装置において、ディーゼルエンジン70が排出した排気ガスの排気音を減衰させる排気音減衰体としての消音材39を備え、触媒外側ケース5又はフィルタ外側ケース21の排気ガス出口側端部に消音材39を配置したものであるから、ディーゼル酸化触媒2又はスートフィルタ3の排気ガス浄化機能を維持しながら、ディーゼル酸化触媒2又はスートフィルタ3の構造を変更することなく、排気ガスの消音機能を簡単に付加できる。例えば、前記外側ケースにテールパイプを直接連結させる排気構造や、既設の消音器の消音機能をさらに向上させる排気構造等を容易に構成できる。また、ディーゼル酸化触媒2又はスートフィルタ3の部位での実施が困難であった排気ガスの高周波低減対策を簡単に実行できる。例えばパンチ孔と繊維状マット等にて形成する消音構造(消音材39)を簡単に設置できる。
【0049】
図5乃至図7に示すごとく、消音材39を有する消音器30を備え、フィルタ外側ケース21の排気ガス出口側端部に消音器30を着脱可能に連結させるように構成したものであるから、消音器30の着脱によって、ディーゼル酸化触媒2又はスートフィルタ3の部位における排気ガスの消音機能を簡単に変更できる。
【0050】
図5乃至図7に示すごとく、消音材39を有する消音器30を備え、触媒外側ケース5又はフィルタ外側ケース21及び消音器30を略同一外径寸法の円筒形状にそれぞれ形成し、フィルタ外側ケース21の排気ガス出口側端部にリング形状のフランジ体としてのフィルタ側出口フランジ40を設け、フィルタ外側ケース21の排気ガス出口側端部に、フィルタ側出口フランジ40を介して、消音材39を着脱可能に連結させるように構成したものであるから、略同一外径寸法の消音器30がフィルタ側出口フランジ40によってフィルタ外側ケース21に連結されることによって、排気ガスの移動方向に触媒外側ケース5又はフィルタ外側ケース21の取付け寸法を長くするだけで、消音器30をコンパクトに組込むことができる。例えば、ディーゼルエンジン70の排気ガス排出部の側面に接近させて触媒外側ケース5又はフィルタ外側ケース21を簡単に設置できる。また、排気ガスの温度維持によって、ディーゼル酸化触媒2又はスートフィルタ3のガス浄化機能を向上させながら、消音材39の設置によって排気ガスの高周波低減対策を簡単に実行できる。
【0051】
図5乃至図7に示すごとく、消音材39が内蔵されたサイレンサケーシングとしての消音内側ケース31及び消音外側ケース32と、一端側を閉塞し且つ他端側をテールパイプ(図示省略)に連通させる排気ガス出口管34とを備え、消音内側ケース31及び消音外側ケース32に排気ガス出口管34の排気孔36形成部を貫通させ、フィルタ外側ケース21の排気ガス出口側端部に、フィルタ側出口フランジ40を介して、消音内側ケース31及び消音外側ケース32を着脱可能に連結させるように構成したものであるから、消音内側ケース31及び消音外側ケース32の着脱によって、ディーゼル酸化触媒2又はスートフィルタ3の部位における排気ガスの消音機能を簡単に変更できる。例えば、消音内側ケース31及び消音外側ケース32とは別に消音器(図示省略)を設置することによって、排気ガスの消音機能をさらに向上させる排気構造等を容易に構成できる。一方、消音材39が内蔵されていない消音内側ケース31及び消音外側ケース32の配置によって、フィルタ外側ケース21にテールパイプ(図示省略)を直接連結させる排気構造を容易に構成できる。また、ディーゼル酸化触媒2又はスートフィルタ3の部位での実施が困難であった排気ガスの高周波低減対策として、消音内側ケース31及び消音外側ケース32内に、消音材39(パンチ孔と繊維状マット等)消音構造を簡単に構成できる。
【0052】
図5乃至図7に示すごとく、前記サイレンサケーシングは、円筒形状の消音内側ケース31と円筒形状の消音外側ケース32を有し、消音外側ケース32内に消音内側ケース31を配置させ、消音内側ケース31と消音外側ケース32の間に消音材39を充填させ、消音内側ケース31に多数の消音孔37を形成したものであるから、ディーゼル酸化触媒2又はスートフィルタ3を内設させる触媒内側ケース4又はフィルタ内側ケース20や触媒外側ケース5又はフィルタ外側ケース21を備えた排気ガス浄化構造に近似させて、前記サイレンサケーシング(消音内側ケース31や消音外側ケース32)を構成できる。ディーゼル酸化触媒2又はスートフィルタ3を内設させるための触媒内側ケース4又はフィルタ内側ケース20や触媒外側ケース5又はフィルタ外側ケース21と同一材料(パイプ等)を利用して、前記サイレンサケーシングの消音内側ケース31や消音外側ケース32を形成できる。前記サイレンサケーシングの製造コストを簡単に低減できる。
【0053】
図8乃至図11を参照して、ディーゼルエンジン70に前記DPF1を設けた構造を説明する。図8乃至図10に示す如く、ディーゼルエンジン70の上部に位置するシリンダヘッド72の左右側面に、排気マニホールド71と吸気マニホールド73とが配置されている。図9から明らかなように、排気マニホールド71と吸気マニホールド73とは、平面視においてシリンダヘッド72を挟んだ両側に振り分けて配置されている。シリンダヘッド72は、エンジン出力軸74(クランク軸)とピストン(図示省略)を有するシリンダブロック75に上載される。シリンダブロック75の前面と後面からエンジン出力軸74の前端と後端とを突出させる。シリンダブロック75の前面に、ディーゼルエンジン70等を空冷するための冷却ファン76を設ける。エンジン出力軸74の前端側からVベルト77を介して冷却ファン76に回転力を伝達するように構成している。
【0054】
図8及び図9に示す如く、シリンダブロック75の後面にフライホイールハウジング78を固着している。フライホイールハウジング78にフライホイール79を内設する。エンジン出力軸74の後端側にフライホイール79を軸支させている。後述するバックホウ100やフォークリフト120等の作動部に、フライホイール79を介してディーゼルエンジン70の動力を取り出すように構成している。また、シリンダブロック75の下面にオイルパン81を配置している。シリンダブロック75の側面とフライホイールハウジング78の側面とに、機関脚取付け部82を設ける。機関脚取付け部82には、防振ゴムを有する機関脚体83がボルト80にて締結される。作業車両(バックホウ100、フォークリフトカー120)等のエンジン取付シャーシ84に機関脚体83を介してディーゼルエンジン70が防振支持される。
【0055】
図8及び図10に示す如く、触媒外側ケース5及び消音外側ケース32に、フィルタ支持体としての支持脚体19の一端側を溶接している。シリンダブロック75の左右側面のうち冷却ファン76寄りにある左右一対の機関脚取付け部82に、左右の支持脚体19の他端側をボルト80にて締結している。上記したDPF1は、支持脚体19を介して、高剛性のシリンダブロック75に支持される。DPF1は、エンジン出力軸74と直交する方向に長い形態に形成されていて、冷却ファン76より下方において、排気ガス移動方向がエンジン出力軸74と直交する方向になるように、オイルパン81に対向して(オイルパン81の前方に)配置されている。
【0056】
ディーゼルエンジン70の排気マニホールド71には、中継排気管85を介してDPF1の排気ガス入口管16が着脱可能に連結されている。ディーゼルエンジン70の排気マニホールド71から、中継排気管85及び排気ガス入口管16を介して、DPF1内に排気ガスが移動し、DPF1にて排気ガスが浄化され、排気ガス出口管34からテールパイプ(図示省略)に排気ガスが移動して、最終的に機外に排出されることになる。なお、図11に示すように、中継排気管85は断熱構造になっている。すなわち、中継排気管85は二重管構造を採用しており、内管86とこれに被せた外管87との間に、例えばセラミックファイバー製の断熱材88が充填されている。
【0057】
以上の構成から明らかなように、ディーゼルエンジン70の一側方に、ディーゼルエンジン70冷却用の冷却ファン76を備えており、冷却ファン76の下方に、ディーゼルエンジン70からの排気ガスを浄化するためのDPF1が配置されているから、冷却ファン76より下方の空間を有効利用して、ディーゼルエンジン70の排気マニホールド71にできるだけ近くて、且つ、冷却ファン76からの冷却風が当たり難い位置に、DPF1を配置できることになる。従って、冷却風によるDPF1、ひいてはその内部の排気ガス温度の低下を抑制でき、DPF1の排気ガス浄化性能を適正な状態に維持し易い。その上、例えば消音器30等より重量物であるDPF1を、冷却ファン76の下方に配置するから、ディーゼルエンジン70の重心が低くなり防振性を向上できる。
【0058】
また、ディーゼルエンジン70の左右両側面のうち冷却ファン76寄りの部位にある一対の機関脚取付け部82に、DPF1を支持する支持脚体19を備えており、DPF1は、前記各支持脚体19を介して各機関脚取付け部82に連結されているから、ディーゼルエンジン70の構成部品の一つとして、ディーゼルエンジン70にDPF1を高剛性に配置でき、作業車両等の機器毎の排気ガス対策を不用にし、ディーゼルエンジン70の汎用性を向上できるという効果を奏する。
【0059】
すなわち、ディーゼルエンジン70の高剛性部(シリンダブロック75)の利用にてDPF1を高剛性に支持して、振動等によるDPF1の損傷を防止できる。また、ディーゼルエンジン70の製造場所でディーゼルエンジン70にDPF1を組み込んで出荷することが可能になり、ディーゼルエンジン70とDPF1をまとめてコンパクトに構成できるという利点もある。前述の通り、ディーゼルエンジン70にDPF1を組み込んで出荷可能であるから、ディーゼルエンジン70を搭載する作業車両毎に出荷申請する手間等を省略でき、製造コストを抑制できる。
【0060】
図8〜図10に示すように、実施形態のDPF1は、エンジン出力軸74と直交する左右方向に長い形態になっており、前記左右方向に沿ってDPF1内を排気ガスが移動するように構成されているから、冷却ファン76の下方において、エンジン出力軸74と直交する左右方向に向けてDPF1を延長させることが可能になる。このため、排気ガス浄化性能を向上させたり消音機能を付加させたりすることが簡単に行える。DPF1におけるエンジン出力軸74方向(前後方向)の大きさをコンパクトに構成できるから、冷却ファン76の下方においてDPF1の配置スペースを簡単に確保できる。
【0061】
実施形態のDPF1は、冷却ファン76より下方において、排気ガス移動方向がエンジン出力軸74と直交する方向になるように、オイルパン81に対向して(オイルパン81の前方に)配置されている。このため、シリンダヘッド72、排気マニホールド72及び吸気マニホールド73の上面は広範囲に露出することになり、ディーゼルエンジン70関連のメンテナンス作業がし易い。しかも、ディーゼルエンジン70の排気マニホールド71にできるだけ近くて、且つ、冷却ファン76からの冷却風が当たるのを回避しながら、できるだけディーゼルエンジン70に近接させてDPF1を配置できるので、DPF1を組み込んだディーゼルエンジン70のコンパクト化を図れるのである。
【0062】
さて、図8〜図10に示すように、DPF1と冷却ファン76との間には、冷却ファン76からDPF1に向かう冷却風を遮る風防体90が配置されている。実施形態の風防体90は、DPF1の筺体(この場合は触媒外側ケース5、フィルタ外側ケース21及び消音外側ケース32)に沿って湾曲した円弧板状のものであり、DPF1の筺体のうち冷却ファン76寄りの部位を覆うようにして、DPF1の筺体側に取り付けられている。この場合、風防体90は、DPF1における筺体の外周面に溶接固定された複数の取付け座部91にボルト92にて着脱可能に締結されている。なお、図9に詳細に示すように、風防体90のうち排気ガス入口管16と重なる箇所は切り欠かれていて、風防体90をDPF1に取り付けた状態では、切り欠き部分に排気ガス入口管16とこれを覆う排気管風防体93(詳細は後述する)とが嵌まることになる。
【0063】
このように、DPF1と冷却ファン76との間に、冷却ファン76からDPF1に向かう冷却風を遮る風防体90を配置すると、冷却ファン76からの冷却風がDPF1に直接当たるのを阻止でき、冷却風によるDPF1、ひいてはその内部の排気ガス温度の低下を確実に抑制できる。従って、DPF1の排気ガス浄化性能を適正に維持できる。
【0064】
風防体90の発明に関して、実施形態のように冷却ファン76の下方にDPF1を配置していれば、配置態様だけで冷却風が当たり難くなる上、風防体90の存在によって、冷却風による排気ガス温度の低下を確実に抑制できるので好ましい。ただし、DPF1の配置箇所はディーゼルエンジン70の周辺部であればよく、実施形態の配置箇所(冷却ファン76の下方)に限定されない。
【0065】
言い換えると、風防体90を備えていればDPF1に対する冷却風の悪影響を考慮しなくて済むから、冷却ファン76の配置箇所によってDPF1の配置箇所が制限されることはまずないのであり、ディーゼルエンジン70に対するDPF1のレイアウトの自由度が高まるのである。
【0066】
実施形態の風防体90は、DPF1の筺体のうち冷却ファン76寄りの部位を覆うようにして、DPF1の筺体側に取り付けられているから、DPF1の筺体を利用して風防体90の支持構造を簡単に構成できる。また、DPF1の構成中に風防体90を組み込みできるから、DPF1を含む排気系部品の組付け作業性を向上できる。
【0067】
一方、中継排気管85と冷却ファン76との間には、冷却ファン76から中継排気管85に向かう冷却風を遮る排気管風防体93が配置されている。実施形態の排気管風防体93は、中継排気管85に沿って延びる断面円弧長板状のものであり、中継排気管85の外周面のうち冷却ファン76寄りの部位を覆うようにして、中継排気管85に取り付けられている。この場合、排気管風防体93は、中継排気管85における外管87の外周面に溶接固定された複数の取付けボス部94にボルト95にて着脱可能に締結されている。
【0068】
このように、中継排気管85と冷却ファン76との間に、冷却ファン76から中継排気管85に向かう冷却風を遮る排気管風防体93を配置すると、中継排気管85が冷却ファン76の近傍を通っていても、冷却ファン76からの冷却風が中継排気管85に直接当たるのを阻止でき、冷却風による中継排気管85内の排気ガス温度の低下を確実に抑制できる。その上、その上、中継排気管85は断熱構造になっているから、冷却風による中継排気管85内の排気ガス温度の低下は極めて抑えられることになる。このため、中継排気管85を通過する排気ガスに対する冷却風の悪影響を考慮しなくて済み、冷却ファン76の下方のデッドスペースをDPF1の配置空間として有効利用できる。
【0069】
また、実施形態の排気管風防体93は、中継排気管85の外周面のうち冷却ファン76寄りの部位を覆うようにして、中継排気管85に取り付けられているから、中継排気管85(外管87)の外周面を利用して排気管風防体93の支持構造を簡単に構成できる。しかも、中継排気管85の構成中に排気管風防体93を組み込みできるから、中継排気管85を含む排気系部品の組付け作業性を向上できる。
【0070】
なお、図9及び図10に示すように、実施形態におけるDPF1の筺体(この場合は右側蓋体33)には、DPF1の持ち運びのための把手体96が設けられている。このように構成すると、DPF1の筺体が片手で持ち難い円筒形状に形成されていても、把手体96を利用してDPF1を片手で簡単に持つことができ、DPF1の組付けや取り外し等を簡単に行えるという利点がある。
【0071】
次に、図12及び図13を参照しながら、スートフィルタ3の再生制御を実行するための構成とその制御態様の一例とについて説明する。ディーゼルエンジン70搭載の作業車両(バックホウ100、フォークリフトカー120)に設けられた制御手段の一例であるコントローラ140は、各種演算処理や制御を実行するCPU141の他、制御プログラムやデータを記憶させるためのROM142、制御プログラムやデータを一時的に記憶させるためのRAM143、及び入出力インターフェイス等を備えている。また、コントローラ140には、排気圧検出手段としての入口側排気圧センサ10a及び出口側排気圧センサ44a、配管カバー体56に対するカバーアクチュエータ58、並びに、バタフライ形開閉弁59に対する弁アクチュエータ60等が電気的に接続されている。
【0072】
実施形態のコントローラ140は、排気圧センサ10a、44aの検出値の差に基づく排気調節機構54(配管カバー体56及びバタフライ形開閉弁59)の駆動にてディーゼルエンジン70の排気圧を高くすることにより、エンジン負荷を増大させるというスートフィルタ3再生制御を実行するように構成されている。スートフィルタ3再生制御は、適宜時間間隔にて、DPF1内のうちスートフィルタ3を挟んだ上流側及び下流側間の圧力差ΔPをチェックする割り込み診断処理の結果に応じて実行される。
【0073】
この場合、図13のフローチャートに示すように、両排気圧センサ10a、44aの検出値の差ΔPが予め設定された設定上限値ΔPmax以上になると、カバーアクチュエータ58の駆動にて、排気ガス入口管16における開口孔55の開口数を減らす方向に配管カバー体56をスライド移動させると共に、弁アクチュエータ60の駆動にてバタフライ形開閉弁59の開度を狭くする。そうすると、ディーゼルエンジン70の排気圧が高くなってエンジン負荷が増大するので、エンジン回転数維持のためにディーゼルエンジン70の出力(燃料噴射量)が増大して、ディーゼルエンジン70からの排気ガス温度が上昇する。その結果、スートフィルタ3に堆積したスートが燃焼して消失し、スートフィルタ3が再生することになる。
【0074】
その後、両排気圧センサ10a、44aの検出値の差ΔPが予め設定された設定下限値ΔPmin以下になると、カバーアクチュエータ58の駆動にて、開口数を減らす前の元の位置に配管カバー体56をスライド移動させると共に、弁アクチュエータ60の駆動にて、バタフライ形開閉弁59の開度を、狭くする前の元の状態に戻すのである。
【0075】
なお、配管カバー体56とバタフライ形開閉弁59との両方をスートフィルタ3再生制御に常に利用する必要はなく、状況に応じて少なくとも一方を用いればよい。また、スートフィルタ3再生制御には、配管カバー体56とバタフライ形開閉弁59とのうち少なくとも一方の構成を採用していれば足りる。両方を併用すれば、ディーゼルエンジンの駆動状態等にも配慮した細やかなスートフィルタ3再生制御が可能になる。
【0076】
図14及び図15を参照して、バックホウ100に前記ディーゼルエンジン70を搭載した構造を説明する。図14及び図15に示す如く、バックホウ100は、左右一対の走行クローラ103を有する履帯式の走行装置102と、走行装置102上に設けられた旋回機体104とを備えている。旋回機体104は、図示しない旋回用油圧モータによって、360°の全方位にわたって水平旋回可能に構成されている。走行装置102の後部には、対地作業用の土工板105が昇降動可能に装着されている。旋回機体104の左側部には、操縦部106とディーゼルエンジン70とが搭載されている。旋回機体104の右側部には、掘削作業のためのブーム111及びバケット113を有する作業部110が設けられている。
【0077】
操縦部106には、オペレータが着座する操縦座席108と、ディーゼルエンジン70等を出力操作する操作手段や、作業部110用の操作手段としてのレバー又はスイッチ等が配置されている。作業部110の構成要素であるブーム111には、ブームシリンダ112とバケットシリンダ114とが配置されている。ブーム111の先端部には、掘削用アタッチメントとしてのバケット113が、掬い込み回動可能に枢着されている。ブームシリンダ112又はバケットシリンダ114を作動させて、バケット113によって土工作業(作溝等の対地作業)を実行するように構成している。
【0078】
図16及び図17を参照して、フォークリフトカー120に前記ディーゼルエンジン70を搭載した構造を説明する。図16及び図17に示す如く、フォークリフトカー120は、左右一対の前輪122及び後輪123を有する走行機体124を備えている。走行機体124には、操縦部125とディーゼルエンジン70とが搭載されている。ディーゼルエンジン70はカバー体133にて上方から覆われており、カバー体133上に操縦部125が設けられることになる。
【0079】
走行機体124の前部側には、荷役作業のためのフォーク126を有する作業部127が設けられている。走行機体124の後部側には、作業部127との重量バランスを取るためのカウンタウェイト131が設けられている。操縦部125には、オペレータが着座する操縦座席128と、操縦ハンドル129と、ディーゼルエンジン70や作業部127用の操作手段としてのレバー及びスイッチ等が配置されている。
【0080】
作業部127の構成要素であるマスト130には、フォーク126が昇降可能に装着されている。フォーク126を昇降動させて、荷物を積んだパレット(図示省略)をフォーク126に上載させ、走行機体124を前後進移動させて、前記パレットの運搬等の荷役作業を実行するように構成している。
【0081】
ディーゼルエンジン70は、フライホイールハウジング78が走行機体124の前部側に、冷却ファン76が走行機体124の後部側に位置するように配置されている。すなわち、エンジン出力軸74の向きが作業部127とカウンタウェイト131とが並ぶ前後方向に沿うように、ディーゼルエンジン70が配置されている。走行機体124を構成するエンジン取付シャーシ84に、機関脚体83を介してディーゼルエンジン70が防振支持されている。フライホイールハウジング78の前面側には作動部としてのミッションケース132が連結されている。ディーゼルエンジン70からフライホイール79を経由した動力は、ミッションケース132にて適宜変速され、前輪122及び後輪123やフォーク126の油圧駆動源に伝達されることになる。
【0082】
カバー体133内であって操縦座席128とこれより後方に配置されたカウンタウェイト131との間には、カウンタウェイト131寄りの高位置に、エンジン冷却用のラジエータ134が冷却ファン76に相対向するように配置されている。冷却ファン76の回転駆動にてラジエータ134に冷却風を吹き付けることにより、ラジエータ134が空冷されることになる。
【0083】
図16に示すように、ラジエータ134はカウンタウェイト131寄りの高位置に配置されるため、ラジエータ134並びに冷却ファン76の下方にはスペースが空くことになえる。当該スペースには、ディーゼルエンジン70の下面側に配置されたオイルパン81に対向するように、DPF1が収容されている。
【0084】
このように構成すると、ラジエータ134並びに冷却ファン76の下方のスペースをDPF1の配置空間として有効利用でき、カバー体133の内部スペースの利用効率を向上できる。また、ディーゼルエンジン70の排気マニホールド71にできるだけ近くて、且つ、冷却ファン76からの冷却風が当たり難い位置に、DPF1を配置することになるから、冷却風によるDPF1、ひいてはその内部の排気ガス温度の低下を抑制でき、DPF1の排気ガス浄化性能を適正な状態に維持し易い。その上、例えば消音器30等より重量物であるDPF1を、冷却ファン76の下方に配置するから、ディーゼルエンジン70の重心が低くなり防振性を向上できるのである。
【0085】
なお、本願発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施形態に係る排気ガス浄化装置の正面視断面図である。
【図2】同外観底面図である。
【図3】同排気ガス流入側から見た左側面図である。
【図4】同排気ガス排出側から見た右側断面図である。
【図5】図1の正面視分解断面図である。
【図6】同排気ガス排出側の正面視拡大断面図である。
【図7】同排気ガス排出側の側面視拡大断面図である。
【図8】ディーゼルエンジンの左側面図である。
【図9】ディーゼルエンジンの平面図である。
【図10】ディーゼルエンジンの正面図である。
【図11】中継排気管の拡大断面図である。
【図12】コントローラの機能ブロック図である。
【図13】制御の一例を示すフローチャートである。
【図14】バックホウの側面図である。
【図15】バックホウの平面図である。
【図16】フォークリフトカーの側面図である。
【図17】フォークリフトカーの平面図である。
【符号の説明】
【0087】
1 DPF(排気ガス浄化装置)
2 ディーゼル酸化触媒
3 スートフィルタ
16 排気ガス入口管(DPFの排気ガス入口)
19 支持脚体(フィルタ支持体)
34 排気ガス出口管(DPFの排気ガス出口)
54 排気調節機構
70 ディーゼルエンジン
71 排気マニホールド
73 吸気マニホールド
76 冷却ファン
78 フライホイールハウジング
90 風防体
120 フォークリフト(作業車両)
134 ラジエータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの一側方に前記エンジン冷却用の冷却ファンを備えている作業車両搭載用のエンジン装置であって、
前記エンジンの周辺部に、前記エンジンからの排気ガスを浄化するための排気ガス浄化装置が配置されており、前記排気ガス浄化装置と前記冷却ファンとの間に、前記冷却ファンから前記排気ガス浄化装置に向かう冷却風を遮る風防体が配置されている、
作業車両搭載用のエンジン装置。
【請求項2】
前記排気ガス浄化装置の筺体に前記風防体が取り付けられている、
請求項1に記載した作業車両搭載用のエンジン装置。
【請求項3】
前記エンジンに設けられた排気マニホールドと前記排気ガス浄化装置とは中継排気管を介して接続されており、前記中継排気管と前記冷却ファンとの間には、前記冷却ファンから前記中継排気管に向かう冷却風を遮る排気管風防体が配置されている、
請求項1に記載した作業車両搭載用のエンジン装置。
【請求項4】
前記中継排気管の外周面のうち前記冷却ファン寄りの部位に、前記排気管風防体が取り付けられている請求項3に記載した作業車両搭載用のエンジン装置。
【請求項5】
前記エンジンに設けられた排気マニホールドと前記排気ガス浄化装置とは中継排気管を介して接続されており、前記中継排気管が断熱構造になっている、
請求項1に記載した作業車両搭載用のエンジン装置。
【請求項6】
前記排気ガス浄化装置の前記筺体に、前記排気ガス浄化装置の持ち運びのための把手体が設けられている、
請求項1に記載した作業車両搭載用のエンジン装置。
【請求項1】
エンジンの一側方に前記エンジン冷却用の冷却ファンを備えている作業車両搭載用のエンジン装置であって、
前記エンジンの周辺部に、前記エンジンからの排気ガスを浄化するための排気ガス浄化装置が配置されており、前記排気ガス浄化装置と前記冷却ファンとの間に、前記冷却ファンから前記排気ガス浄化装置に向かう冷却風を遮る風防体が配置されている、
作業車両搭載用のエンジン装置。
【請求項2】
前記排気ガス浄化装置の筺体に前記風防体が取り付けられている、
請求項1に記載した作業車両搭載用のエンジン装置。
【請求項3】
前記エンジンに設けられた排気マニホールドと前記排気ガス浄化装置とは中継排気管を介して接続されており、前記中継排気管と前記冷却ファンとの間には、前記冷却ファンから前記中継排気管に向かう冷却風を遮る排気管風防体が配置されている、
請求項1に記載した作業車両搭載用のエンジン装置。
【請求項4】
前記中継排気管の外周面のうち前記冷却ファン寄りの部位に、前記排気管風防体が取り付けられている請求項3に記載した作業車両搭載用のエンジン装置。
【請求項5】
前記エンジンに設けられた排気マニホールドと前記排気ガス浄化装置とは中継排気管を介して接続されており、前記中継排気管が断熱構造になっている、
請求項1に記載した作業車両搭載用のエンジン装置。
【請求項6】
前記排気ガス浄化装置の前記筺体に、前記排気ガス浄化装置の持ち運びのための把手体が設けられている、
請求項1に記載した作業車両搭載用のエンジン装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−143452(P2010−143452A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323482(P2008−323482)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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