先鋭化針状ダイヤモンド、およびそれを用いた走査プローブ顕微鏡用カンチレバー、フォトマスク修正用プローブ、電子線源
【課題】効率良く量産可能であり、走査プローブ顕微鏡において高分解能観察や高精度微細加工が可能な先端半径と、高アスペクト比構造観察に十分な長さの針をもち、且つ、先端の耐摩耗性に優れたダイヤモンド探針と、これを備えた走査プローブ顕微鏡用カンチレバー、フォトマスク修正用プローブ、電子線源を提供する。
【解決手段】反応性イオンエッチング等では作製困難な長さを有する針状ダイヤモンドを、熱化学加工法によって作製し、プラズマ中でエッチングもしくはマイクロ波プラズマCVD成長により先端部分を先鋭化することで、効率良く量産可能な先鋭化針状ダイヤモンド5を得ることができる。先鋭化針状ダイヤモンド5のうち少なくとも一本もしくは複数本を、走査プローブ顕微鏡用カンチレバーの探針として備える。
【解決手段】反応性イオンエッチング等では作製困難な長さを有する針状ダイヤモンドを、熱化学加工法によって作製し、プラズマ中でエッチングもしくはマイクロ波プラズマCVD成長により先端部分を先鋭化することで、効率良く量産可能な先鋭化針状ダイヤモンド5を得ることができる。先鋭化針状ダイヤモンド5のうち少なくとも一本もしくは複数本を、走査プローブ顕微鏡用カンチレバーの探針として備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱化学加工によって作製された針状ダイヤモンドにプラズマ処理を施すことによって、少なくとも先端部分が先鋭化された先鋭化針状ダイヤモンド、およびそれを探針として備えた走査プローブ顕微鏡用カンチレバー、フォトマスク修正用プローブ、電子線源に関する。
【背景技術】
【0002】
走査プローブ顕微鏡に用いるカンチレバーの探針には、量産可能なSi製のものが広く用いられている。Si製の探針は、先端半径が5〜10nmと微小であるものの、連続使用によって先端が摩耗してしまうと先端半径が大きくなり、得られる画像が変化してしまうことが問題とされていた。
【0003】
そのため、物質中最高の硬さをもつダイヤモンドの耐摩耗性が注目され、早くから探針部分にダイヤモンドを用いたダイヤモンドカンチレバーの開発が行われてきた。例えば市販されているものでは、Si製の探針に多結晶ダイヤモンド薄膜をコーティングしたダイヤモンドコートプローブや研磨によって作製されたダイヤモンドカンチレバー等があげられ、その先端半径は50〜100nm以上となっている。
【0004】
一方で、単結晶ダイヤモンドを探針に用いたカンチレバーは、主に走査プローブ顕微鏡装置を利用した加工用途で用いられている。これまで単結晶ダイヤモンドカンチレバーは、バルク状の単結晶ダイヤモンドに研磨加工を施して作製された角柱、円錐形状、角柱状等の針を探針として、市販のカンチレバーの梁部の先端に、接着もしくはロウ付けすることで作製されていた。
【0005】
そのため、研磨加工で作製された単結晶ダイヤモンド針の先端半径は、市販のSi製カンチレバーの探針の先端半径と比較して大きく、走査プローブ顕微鏡での高分解能観察や高精度微細加工用には用いることができなかった。
【0006】
さらに微細なナノスケールでの加工を行うために、集束イオンビーム(FIB)等を用いてダイヤモンド小片の先端を任意の形状に加工し、先鋭化した加工用プローブが知られている(特許文献1)。この方法では、複数のダイヤモンド小片の中からカンチレバーの先端寸法に合うサイズで、且つ、加工時間を短縮するために、より鋭角の突起を有するダイヤモンド小片を選択し、このダイヤモンド小片の突起部分を集束イオンビーム等を用いてさらに先鋭化するように加工したものを加工用プローブの探針として用いる。
【0007】
また、電子放出素子用ダイヤモンドの微小突起を形成する方法として、ダイヤモンド単結晶基板上に、反応性イオンエッチングを用いて高さ10μm程度の柱状体を複数本配列形成した後、プラズマ中でエッチングもしくはダイヤモンドを気相合成して、柱状体から先鋭な電子放出部を作製する技術が知られている(特許文献2)。
【0008】
アスペクト比が高く、数十μm長さの針状ダイヤモンドを簡便に作製する方法としては、熱化学加工法によるものが知られている(特許文献3)。この方法では、単結晶ダイヤモンドからなる針状ダイヤモンドを、ダイヤモンド基板上に大量に形成することが可能である。
【0009】
また、熱化学加工法を用いて作製される針状ダイヤモンドの長さには理論上制限がないことから、走査プローブ顕微鏡用カンチレバーで一般的に用いられている長さ10〜15μm程度の探針では測定不可能であった、凹凸の大きな構造や深溝などアスペクト比の高い構造の観察に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−221981号公報
【特許文献2】特開2002−75171号公報
【特許文献3】WO2007/040283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1のように、複数の単結晶ダイヤモンド小片の中から選択した単結晶ダイヤモンドの小片を集束イオンビーム等を用いて先鋭化する場合、小片を一つずつ加工していくため、加工時間がかかり、生産性が悪いという問題がある。さらに、単結晶ダイヤモンド小片の先端部は先鋭化されるものの、ダイヤモンド小片の底部に向かっては極端に幅が広がるため、ナノスケールの微細構造の加工用プローブとして用いることはできても、凹凸の大きな構造や深溝などアスペクト比の高い構造の観察には適さないという問題がある。
【0012】
さらに、単結晶ダイヤモンド小片を集束イオンビーム等で加工すると、表面から数μm〜数十μm深さにわたって加工変質層が形成されることが知られている。加工変質層は非晶質となるため、単結晶ダイヤモンドが本来もつ耐摩耗性を十分に発揮できないという問題があった。
【0013】
また、特許文献2では、電子放出素子用のダイヤモンド微小突起を形成するにあたっては、まず反応性イオンエッチングを用いて複数の柱状体を形成した後に、プラズマ中でエッチングもしくは気相合成を行い、柱状体の先端を先鋭化するが、反応性イオンエッチングを用いて形成される柱状体の高さは10μm程度か、最大でも20μm未満が限界であった。
【0014】
一方、特許文献3の熱化学加工のみで得られた針状ダイヤモンドは、針状部が単結晶ダイヤモンドからなり、且つ、反応性イオンエッチングでは作製困難な20μm以上の長さを有する針状部を効率良く大量に形成できるものの、それのみで高分解能観察に適した先端半径を得ることが困難であった。
【0015】
すなわち単結晶ダイヤモンドを探針に備えたカンチレバーにおいて、効率良く量産が可能であり、走査プローブ顕微鏡において高分解能観察や高精度微細加工が可能な先端半径と、高アスペクト比構造観察に十分な長さの針をもち、且つ、先端の耐摩耗性に優れたダイヤモンド探針は存在しなかった。
【0016】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、熱化学加工方法とプラズマ処理を組み合わることにより、効率良く量産可能であり、走査プローブ顕微鏡において高分解能観察や高精度微細加工が可能な先端半径と、高アスペクト比構造観察に十分な長さの針をもち、且つ、先端の耐摩耗性に優れたダイヤモンド探針と、これを備えた走査プローブ顕微鏡用カンチレバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、反応性イオンエッチング等では作製困難な長さの針状ダイヤモンドを熱化学加工法によって作製し、プラズマ中でエッチングもしくは気相合成により先端を先鋭化することによって、Si製の探針と同等の先端半径をもつ先鋭化針状ダイヤモンドを効率良く量産できることを見出した。この方法で得られた先鋭化針状ダイヤモンドを探針として用いることで、高分解能観察、高精度微細加工および高アスペクト比構造観察とが可能で、且つ、先端の耐摩耗性に優れた走査プローブ顕微鏡用カンチレバーを提供できることを見出し、本発明を完成させた。
【0018】
すなわち、請求項1記載の発明は、
ダイヤモンド基板上で熱化学加工を用いて形成した針状ダイヤモンドにプラズマ処理を行い、先端部分を先鋭化したことを特徴とする先鋭化針状ダイヤモンドである。
【0019】
また、請求項2記載の発明は、
請求項1において、先鋭化針状ダイヤモンドの長さが20μm以上、かつ先端半径が2〜50nmであることを特徴とする先鋭化針状ダイヤモンドである。
【0020】
請求項3記載の発明は、
請求項1または2に記載の先鋭化針状ダイヤモンドのうち少なくとも一本もしくは複数本を探針として備えることを特徴とする走査プローブ顕微鏡用カンチレバーである。
【0021】
また、請求項4記載の発明は、
請求項3において、前記探針は、請求項1または2に記載の先鋭化針状ダイヤモンドを、前記ダイヤモンド基板から平板部を含むように切り出されたものであって、平板部の少なくとも一つの側面に、ダイヤモンドの結晶方位を示すための平面を有することを特徴とする走査プローブ顕微鏡用カンチレバーである。
【0022】
また、請求項5記載の発明は、
請求項1または2に記載の先鋭化針状ダイヤモンドを用いたフォトマスク修正用プローブである。
【0023】
また、請求項6記載の発明は、
請求項1または2に記載の先鋭化針状ダイヤモンドを用いた電子線源である。
【0024】
また、請求項7記載の発明は、
得ようとする針状部長さおよび平板部厚みを合算した厚みを有するダイヤモンド基板を準備する工程と、
前記ダイヤモンド基板表面に、炭素を溶融し得る金属またはそれらの合金からなる単結晶金属膜を膜厚0.1μm以上成膜する工程と、
前記単結晶金属膜に、前記ダイヤモンド基板表面を露出するように凹部を形成する工程と、
前記ダイヤモンド基板を、水素を含む雰囲気中で熱処理し熱化学加工を行う工程とによって、20μm以上の長さを有する針状ダイヤモンドを形成した後に、
前記針状ダイヤモンドが形成されたダイヤモンド基板をプラズマ処理装置内に導入し、
水素、または酸素、または水素,酸素,炭素に加えダイヤモンドに導電性を付与する元素のうち複数の元素の供給源となり得るガスを含む雰囲気中でプラズマ処理を行うことによって、前記針状ダイヤモンド先端を、先端半径2〜50nmに先鋭化することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の先鋭化針状ダイヤモンドの製造方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、以下に記載されるような効果を有する。
請求項1に記載の発明によれば、熱化学加工により形成された針状ダイヤモンドにプラズマ処理を施す際、反応室の温度, 圧力, 雰囲気ガス等の条件を選択することでエッチングもしくは成長を制御することができる。
【0026】
例えばエッチングを施す条件では、針状ダイヤモンド先端部分がエッチングされることによって、針状ダイヤモンドの先端部分に、例えば(111)面からなる四角錐形状のピラミッド型ダイヤモンドが形成されるため、先端の先鋭化が可能になる。また、同時に外周部分もエッチングされるため、外周部全体が細くなるようなエッチングを施せば、アスペクト比を所望の大きさに制御できる。
【0027】
一方、成長させる条件では、針状ダイヤモンドの外周部分の直径は成長によって若干大きくなるものの、針状ダイヤモンドの先端部分に、例えば(111)面で形成される四角錐形状のピラミッド型ダイヤモンドを形成することが可能である。これによって、反応性イオンエッチングでは作製困難な長さの針状ダイヤモンドにおいて、先端部分が先鋭化された、先鋭化針状ダイヤモンドを得ることができるという効果を有する。
【0028】
さらに成長時にホウ素(B)やリン(P)などダイヤモンドに導電性を付与する元素を含むガスを導入することにより、針状ダイヤモンドの先端部分に、四角錘形状のピラミッド型ダイヤモンドを形成することが可能である。これによって、反応性イオンエッチングでは作製困難な長さの針状ダイヤモンドにおいて、先端部分が導電性を持ち、かつ先鋭化された、先鋭化針状導電性ダイヤモンドを得ることができるという効果を有する。
【0029】
請求項2に記載の発明によれば、熱化学加工により形成された針状ダイヤモンドは、反応性イオンエッチングでは作製困難な、特に20μm以上の長さを有する針状部を効率良く大量に形成することが可能である。さらに、プラズマ処理によって先端半径を2〜50nmに先鋭化することが可能である。これによって、走査プローブ顕微鏡用のカンチレバーの探針として用いることが可能な、耐摩耗性に優れたダイヤモンドからなり、高アスペクト比構造観察に適した長さを有し、且つ、市販のSiカンチレバーと同等の先端半径をもつ先鋭化針状ダイヤモンドを得ることができるという効果を有する。
【0030】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の先鋭化針状ダイヤモンドを探針として備えたダイヤモンドカンチレバーを用いることで、走査プローブ顕微鏡観察において、高分解能観察、高精度微細加工と高アスペクト比構造観察が可能となるという効果を有する。さらに、先鋭化にあたってはプラズマ処理を用いるため、集束イオンビームで先鋭化された先端部分に形成される加工変質層などが発生せず、ダイヤモンドの耐摩耗性を十分に発揮したダイヤモンドカンチレバーを得ることができる。
【0031】
先鋭化針状導電性ダイヤモンドを探針として備えたダイヤモンドカンチレバーを用いることで、走査プローブ顕微鏡において、高分解能電流像観察、高分解能陽極酸化が可能となるという効果を有する。さらに、先鋭化にあたってはプラズマ処理を用いるため、集束イオンビームで先鋭化された先端部分に形成される加工変質層などが発生せず、ダイヤモンドの耐摩耗性を十分に発揮した導電性ダイヤモンドカンチレバーを得ることができる。
【0032】
本発明のダイヤモンドカンチレバーを用いると、連続測定を行う際にも観察画像が探針の先端形状の影響を受けにくくなるという効果を有する。また、複数本の先鋭化針状ダイヤモンドを探針として備えたダイヤモンドカンチレバーを、走査プローブ顕微鏡装置に用いる場合、熱化学加工によって作製された針状ダイヤモンドは長さが均一となるため、マルチプローブによる加工や直流4端子測定などの物性測定に用いるのにも適している。
【0033】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の先鋭化針状ダイヤモンドを、ダイヤモンド基板から一本毎もしくは任意の複数本毎に、平板部を含むように切り出すことによって、先鋭化針状ダイヤモンドをカンチレバーの梁部など所望の位置に取り付ける際に、ハンドリングスペースが確保できるため取り扱いが容易になるという効果を有する。
【0034】
また、針状部のみで固定するよりも平板部と梁部を接着することによって、接着面積が大きくなるため、より安定した固定ができるという効果を有する。さらに、平板部の少なくとも一つの側面に、ダイヤモンドの結晶方位を示すための平面を有することによって、平板部をカンチレバーの梁部に固定する際に、ダイヤモンドの最も耐摩耗性の大きな結晶軸を走査方向に平行に合わせて固定しやすくなるという効果を有する。
【0035】
請求項5に記載の発明によれば、従来のフォトマスク修正用プローブでは困難であった、高いアスペクト比を有するフォトマスクの修正加工に用いることのできるプローブを作製することができる。これによって、ドライエッチング等を用いてアスペクト比の高い構造体を作製する際に用いることのできるフォトマスクを得ることができるという効果を有する。
【0036】
請求項6に記載の発明によれば、高いアスペクト比と先鋭化された先端を有する先鋭化針状ダイヤモンドを、従来用いられている電子放出素子に比べて電子の引き出し電圧を下げることが可能な電子線源として用いることができるという効果を有する。
【0037】
請求項7に記載の発明によれば、ダイヤモンド基板上に熱化学加工を用いて20μm以上の長さを有する針状ダイヤモンドを大量に作製することができる。さらに、針状ダイヤモンドにプラズマ処理を行うことによって先端半径を2〜50nmに先鋭化することができるため、反応性イオンエッチングとプラズマ処理を組み合わせた方法では作製困難な長さを有する先鋭化針状ダイヤモンドを効率良く大量に形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態に係る針状ダイヤモンドの形成工程を示す図である。
【図2】本実施形態に係る針状ダイヤモンドの拡大図である。
【図3】本実施形態に係る先鋭化針状ダイヤモンドを示す図である。
【図4】本実施形態に係る先鋭化針状ダイヤモンドの拡大図である。
【図5】本実施形態に係る先鋭化針状ダイヤモンドの別の形態を示す図である。
【図6】本実施形態に係る先鋭化針状ダイヤモンドを示す図である。
【図7】本実施形態に係る先鋭化針状ダイヤモンドの拡大図である。
【図8】本実施形態に係るダイヤモンドカンチレバーの構成を示す図である。
【図9】本実施例に係る針状ダイヤモンドのSEM画像である。
【図10】本実施例1に係る先鋭化針状ダイヤモンドのSEM画像である。
【図11】本実施例2に係る先鋭化針状ダイヤモンドのSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
<針状ダイヤモンドの作製方法>
以下、本発明を実施するための最良の形態について図1(a)〜(e)を用いて説明する。
【0040】
図1(a)〜(e)は、熱化学加工による針状ダイヤモンドの形成工程を示している。
針状ダイヤモンドを作製するためのダイヤモンド基板1には、天然のほか、高圧合成法や気相合成法で作製された単結晶ダイヤモンドを用いることができる。単結晶ダイヤモンドは、BやP等を不純物としてドーピングすることにより、その電気伝導率を絶縁体から金属並みまで変化させることが可能であるから、針状ダイヤモンドの用途に応じて適宜選択すればよい。
【0041】
多結晶ダイヤモンドを用いることもできるが、熱化学加工によって得られる構造体の表面に粒界に起因する凹凸が発生する可能性があるため、針状ダイヤモンドのように微細な構造体を得ようとする場合には、単結晶ダイヤモンドを用いることが好ましい。
【0042】
単結晶ダイヤモンド基板を用いる場合、プラズマ処理された後の針状ダイヤモンドの先端形状は、用意されるダイヤモンド基板の結晶方位に依存する。例えば容易に入手できる(100)面を基板上面に持つ単結晶ダイヤモンド基板を用い、走査型プローブ顕微鏡装置搭載時に、カンチレバーのスキャン方向と耐摩耗性の大きなダイヤモンド<110>軸方向が平行になるように設計するのが好ましい。
【0043】
当該ダイヤモンド基板1は、(得ようとする針状ダイヤモンドの針状部の長さ)+(得ようとする平板部の厚さ)がダイヤモンド基板の厚みとなるように、上下面を研磨加工することによって仕上げる。この際、両面を表面粗さRaで1nm以下、好ましくは0.1nm程度になるように鏡面研磨を行う(図1(a))。
【0044】
鏡面研磨されたダイヤモンド基板1を十分に洗浄した後、スパッタ装置等の成膜装置中に設置し、0.01Pa〜10Paの圧力下で基板温度を600℃〜1800℃に設定し、ダイヤモンド基板表面上にNi等の炭素を溶解しうる金属またはそれらの合金からなる単結晶金属膜2を膜厚0.1μm以上形成する(図1(b))。炭素を溶解しうる金属として、Ni以外にはRh,Pd,Pt,Ir,W,Mo,Mn,Fe,Ti,Cr,Coなどとそれらの合金を用いることができる。
【0045】
ダイヤモンド基板1上に形成された単結晶金属膜2に、ダイヤモンド表面が露出するように、すなわち単結晶金属膜2のみを貫通するように、レーザー加工等を用いて複数個の円形状の凹部3を形成する(図1(c))。円形状の凹部の直径は1μm程度、凹部の間隔は40μm程度が好ましい。凹部の形成方法は、針状ダイヤモンドの形状に応じて、機械加工,レーザー加工,フォトリソグラフィ,集束イオンビーム等を用いることができる。
【0046】
単結晶金属膜2に凹部3を形成させた後、当該サンプルに対し、大気圧水素雰囲気中において600℃〜1000℃の温度で、3〜100時間熱処理し熱化学加工を行うと、単結晶金属膜中に取り込まれたダイヤモンドを構成する炭素原子が、単結晶金属膜の表面において雰囲気ガスと反応することにより炭化物を生成し、単結晶金属膜が形成されている部分のダイヤモンドのみが加工されていくこととなる。
【0047】
熱処理を行う雰囲気は、水素雰囲気中の他、酸素,不活性ガス雰囲気中もしくは真空中でも行うことができる。また、針状ダイヤモンドの針状部の長さは、熱化学加工を行う熱処理温度,熱処理時間,雰囲気等の条件によってコントロールすることができるが、深溝測定に最適なカンチレバーの探針として用いる場合、長さ20μm以上が好ましい。
【0048】
以上のような熱化学加工の結果、ダイヤモンド基板の表面を露出させた凹部部分のみが加工されずに残ることによって、針状ダイヤモンド4を形成する(図1(d))。熱化学加工後に、ダイヤモンド基板上に残存する単結晶金属膜2は、硝酸等を用いて除去することができる(図1(e))。
【0049】
<針状ダイヤモンドの先鋭化>
以上のように熱化学加工によって得られた針状ダイヤモンド4は、針状部が少なくとも20μm以上の長さをもち、ダイヤモンド基板表面に一体に保持されている。図2に針状ダイヤモンドの拡大図を示す。この針状ダイヤモンドが形成されたダイヤモンド基板をプラズマ処理装置内に導入し、先鋭化のためのプラズマ処理を行う。
【0050】
プラズマ処理装置には、直流プラズマ装置、マイクロ波プラズマ装置、プラズマジェット装置や熱フィラメント装置などを用いることが可能である。また、プラズマ処理において、反応室の温度, 圧力, 雰囲気ガス等の条件を選択することでエッチングもしくは成長を制御することができる。
【0051】
プラズマ処理は、水素、または酸素、または水素,酸素,炭素に加えホウ素(B)やリン(B)等のダイヤモンドに導電性を付与する元素のうち複数の元素の供給源となり得るガスを含む雰囲気中で行うことが好ましい。例えば、主にエッチングに寄与する水素や酸素の供給源としては、水素ガスや二酸化炭素ガスを用いることができる。一方で、成長に寄与しエッチングと成長のバランスを制御する炭素の供給源としては、メタンガスを用いることができる。
【0052】
(実施形態1)
例えば針状ダイヤモンド先端にダイヤモンドを成長させて先鋭化を行う場合、直流プラズマ処理を施す際のメタン/水素比を0.1〜5%、その際の基板温度は600〜1000℃程度に設定することが好ましい。この時、雰囲気ガス中にBやPを少量導入することで、成長したダイヤモンドに導電性を付与することも可能である。
【0053】
また例えば針状ダイヤモンド先端に導電性ダイヤモンドを成長させて先鋭化を行う場合、直流プラズマ処理を施す際のメタン/水素/トリメチルボロン比を5/94/1、その際の基板温度は600〜1000℃程度に設定することが好ましい。
【0054】
また、投入電力と反応室圧力は、αパラメータを3以上に維持するよう設定することが好ましい。αパラメータとは、結晶方向の成長速度比を示すパラメータであり、(111)結晶面に垂直な方向及び(100)結晶面に垂直な方向の成長速度をそれぞれV111及びV100とすると、
【数1】
と表され、αパラメータ3以上では、(111)面からなる四角錐形状のピラミッド型ダイヤモンドが、αパラメータ1以下では、(100)面からなる四角柱状のダイヤモンドが形成されることが知られている。
【0055】
これによって、図3に示すように、針状ダイヤモンド4の先端に(111)面からなる四角錐形状のピラミッド型ダイヤモンドが形成された、先鋭化針状ダイヤモンド5を得ることが出来る。図4に先鋭化針状ダイヤモンド5の拡大図を示す。
【0056】
また、針状ダイヤモンドの外形が真円に近いほど、ピラミッド型ダイヤモンドの頂点が一致しやすいため、より走査プローブ顕微鏡観察に最適な先端形状を得ることができる。一方で、針状ダイヤモンドの外形が真円から外れると頂点が一点で交わらなくなるため、例えば、針状ダイヤモンドの外形を楕円に作製し、図5に示すようなピラミッドの頂点部分が直線状に伸びたダイヤモンド6を形成すれば、加工に用いることのできる探針にもなり得る。
【0057】
一方、針状ダイヤモンドにプラズマ処理によるエッチングを施して先鋭化を行う場合、水素のみ、二酸化炭素+水素、二酸化炭素+メタン+水素のいずれの雰囲気でもエッチングを行うことが可能である。
【0058】
(実施形態2)
水素のみの雰囲気でエッチングを行う場合、好ましくは基板温度を900〜1000℃に保ち、針状ダイヤモンドにエッチングを行うと、図6に示すように、針状ダイヤモンド4の先端および外周部が全体的にエッチングされて先鋭化された先鋭化針状ダイヤモンド7を得ることができる。図7に先鋭化針状ダイヤモンド7の拡大図を示す。
【0059】
(実施形態3)
二酸化炭素+水素雰囲気でエッチングを行う場合、好ましくは二酸化炭素/水素比は0.1〜5%、基板温度を600〜1000℃に保つことで針状ダイヤモンドをエッチングし、先鋭化することが可能である。
【0060】
(実施形態4)
二酸化炭素+メタン+水素雰囲気でエッチングを行う場合、好ましくは二酸化炭素濃度/メタン濃度=0.1〜5%/0.1〜5%、残りは水素濃度とし、その際の基板温度を600〜1000℃に保つことで針状ダイヤモンドをエッチングし、先鋭化することが可能である。また、ここでメタン濃度を増やすことで、成長にもなり得る。
【0061】
以上のようなエッチングによって熱化学加工によって作製された針状ダイヤモンド先端のエッチング面をコントロールしたり、先端のみならず針状部全体を細くし、針状ダイヤモンドのアスペクト比を高くすることも可能である。
【0062】
以上のように、熱化学加工によって作製された針状ダイヤモンドにプラズマ処理を施すことによって、先端に(111)面からなる四角錐形状のピラミッド型ダイヤモンドや(100)からなる四角柱形状のダイヤモンドを有し、先端半径が2〜50nmに先鋭化された先鋭化針状ダイヤモンドを、ダイヤモンドの成長もしくはエッチングによって得ることができる。また、エッチングにおいては、針状部全体をエッチングすることも可能であるから、それによって針状ダイヤモンドのアスペクト比を高くすることが可能である。
【0063】
<先鋭化針状ダイヤモンドを用いたカンチレバーの形態>
先鋭化針状ダイヤモンドを探針として用いた、本発明のダイヤモンドカンチレバーの構成について図8に示す。本発明のダイヤモンドカンチレバー8は、チップ部9、梁部10、先鋭化針状ダイヤモンドからなるダイヤモンド探針11で構成される。
【0064】
ダイヤモンド探針11を取り付けるカンチレバーとして、市販されているSi製のカンチレバーやプローブレスカンチレバーを用いることができる。梁部の材質は、走査プローブ顕微鏡観察における測定対象物によって最適なバネ定数をもつ材質が選択される。市販のSi製カンチレバーを用いる場合、梁部は通常チップ部と一体に形成されているため梁部の材質もSiであるが、その他、本発明のダイヤモンドカンチレバーを硬度の大きな試料に対するスクラッチやナノインデントに用いる場合には、梁部の材質をバネ定数100N/m以上のステンレスやアモルファス金属にすることが好ましい。
【0065】
ダイヤモンド探針11は、ダイヤモンド基板表面に形成された先鋭化針状ダイヤモンドの針状部周辺の平板部を含むように切り出し、平板部の少なくとも一つの側面に、ダイヤモンドの結晶方位を示すための平面を有するものを用いることが好ましい。この平面の結晶方位は、カンチレバーの走査方向と最も耐摩耗性のある結晶方位とが平行になるようにダイヤモンド探針を取り付けた際に、カンチレバーの梁部の側面と平行になる結晶方位を選択することが好ましい。
【0066】
平板部の形状は、長方形をはじめとした多角形など、カンチレバーの梁部に固定可能で、且つ、十分な接着面積を有し、取り付けの際のハンドリングスペースが確保できていることが必要である。また、カンチレバーとしての特性に支障をきたさない重さに設定される必要がある。
【0067】
例えば、外形50×30μm角以上200×300μm角以下、厚み5μm以上〜30μm以下が好ましい。外形が50×30μm角より小さいと、平板部をハンドリングするスペースが確保できず、200×300μm角より大きいと、カンチレバーの先端に取り付けた際、平板部の重みでカンチレバーの振動等の動きに支障をきたす恐れがあるため好ましくない。
【0068】
また、厚みが5μmより小さいと熱化学加工によって作製される針状ダイヤモンドの歩留まりが悪くなり、30μmより大きいと、カンチレバーの先端に取り付けた際、平板部の重みでカンチレバーの振動等の動きに支障をきたす恐れがあるため好ましくない。好ましくは、外形50×30μm角程度, 厚み15μm程度が、最も先鋭化針状ダイヤモンドを作製しやすく、カンチレバーとしての特性を妨げることがない。
【0069】
また、先鋭化針状ダイヤモンドを複数本含むように平板部を切り出すと、マルチ加工や直流4端子法測定等が可能な、デュアルもしくはマルチプローブ型のダイヤモンドカンチレバーとして用いることができる。
【0070】
ダイヤモンド探針を梁部に固定する方法としては、液状の接着剤等を用いて、平板部の裏面を梁部に接着して固定する方法を用いることができる。接着剤としては、液状の接着剤の他、Au,Ti等を用いて金属接合によって固定することも可能である。
【0071】
また、ダイヤモンド探針の表面には、導電性を付与するための金属コーティングや、撥水性をもたせるためのフッ素終端をはじめとして、様々な測定に用いるための表面化学終端や化学修飾が可能である。
【0072】
同様にして、前述した走査プローブ顕微鏡用カンチレバーの実施形態は、走査プローブ顕微鏡と同様の機構で動作するフォトマスク修正装置において、修正加工用プローブとしても用いることができる。フォトマスク修正以外にも、各種の加工用途に用いることが可能である。
【0073】
また、ダイヤモンド基板上に複数の先鋭化針状ダイヤモンドを形成することによって、従来用いられている電子放出素子に比べて、電子の引き出し電圧を下げることが可能な電子線源として用いることが可能である。
【実施例】
【0074】
次に、本発明にかかる実施例について具体的に説明する。
【0075】
本実施例では、高圧合成法で作製された大きさ約4mm角の(100)面単結晶ダイヤモンド基板を用いた。単結晶ダイヤモンド基板0.08mm厚さに上下面を研磨し、表面粗さRaを0.1nm以下に仕上げた。
【0076】
その後、ダイヤモンド基板表面を水素終端させるために水素100%、大気圧下で1000℃3時間の熱処理を施した。表面を水素終端することによって、熱化学加工を平坦に仕上げることが可能になる。表面を水素終端したダイヤモンド単結晶基板上に、スパッタリング法を用いて、基板を600℃程度に加熱しながら厚み約1μmのNi単結晶薄膜をエピタキシャル成長させた。
【0077】
次にNi単結晶薄膜上にパルスレーザーを用いて直径約1μmの円形状の凹部を複数個形成し、ダイヤモンド表面を一部露出させた。形成した凹部の配列間隔は40μmであった。その後、水素100%、大気圧下900℃で24時間熱処理を施して熱化学加工を行い、針状ダイヤモンドを作製した。
【0078】
その後、熱化学加工後に単結晶ダイヤモンド基板上に残っているNi薄膜を硝酸で除去した。この熱化学加工により得られた針状ダイヤモンドは、図9に示すように、針状部の長さ約65μm、針状部の底部の直径約5μm、先端部の外形の直径約1μm、先端半径は約500nmであった。また、平板部の厚みは15μmであった。
【0079】
続いて針状ダイヤモンドを先鋭化するために、上記針状ダイヤモンドが形成された単結晶ダイヤモンド基板を直流プラズマ装置内に設置し、次の4種類のプラズマ処理条件で針状ダイヤモンドの先鋭化を行った。
【0080】
(実施例1)
直流プラズマ処理の条件として、メタン/水素比を5%、基板温度1000℃程度、出力1.2kW、圧力120torrになるように設定し、1時間のプラズマ処理を行った。その結果、図10に示すように、針状ダイヤモンド先端には(111)面からなるピラミッド型のダイヤモンドが成長し、その先端半径は約20nmとなった。また、針状ダイヤモンド先端部の外形の直径は3μmとなった
【0081】
(実施例2)
直流プラズマ処理の条件として、水素100%、基板温度950℃程度、出力1.2kW、圧力120torrになるように設定し、1時間のプラズマ処理を行った。その結果、図11に示すように、針状ダイヤモンドの先端部および外周部がエッチングされ、針状部全体が細くなった。針状ダイヤモンド先端部の外形の直径は300nmとなり、先端半径は約150nmとなった。
【0082】
(実施例3)
マイクロ波プラズマCVD装置によるプラズマ処理の条件として、二酸化炭素/水素比を1%、基板温度950℃程度、出力1.2kW、圧力120torrになるように設定し、10分間のプラズマ処理を行った。その結果、針状ダイヤモンド先端部の外形の直径はエッチングされることにより約200nmとなり、針先端には(111)面からなるピラミッド型のダイヤモンドが形成された。その先端半径は約100nmであった。
【0083】
(実施例4)
直流プラズマ処理の条件として、二酸化炭素/メタン/水素比を1%/1.5%/97.5%、基板温度930℃、出力は1.2kW、圧力は120torrになるよう条件を設定し、60分間のプラズマ処理を行った。その結果、針状ダイヤモンド先端部の外形の直径は500nmとなり、針先端には(111)面からなるピラミッド型のダイヤモンドが成長していた。その先端半径は約20nmであった。
【0084】
(実施例5)
直流プラズマ処理の条件として、メタン/水素/トリメチルボロン比を5%/94%/1%、基板温度1020〜1030℃、出力は1.2kW、圧力は120torrになるよう条件を設定し、30分間のプラズマ処理を行った。その結果、針状ダイヤモンド先端部の外形の直径は3μmとなり、針先端には(111)面からなるピラミッド型のダイヤモンドが成長していた。その先端半径は50nmであった。
【0085】
実施例1〜5の条件でプラズマ処理を施した単結晶ダイヤモンド基板から先鋭化針状ダイヤモンドの外周に30×50μmの平板部を含むように切り出し、カンチレバーの梁部に液状接着剤を用いて固定し、ダイヤモンドカンチレバーを作製した。
【0086】
このダイヤモンドカンチレバーを用いて、凹凸の大きな高アスペクト比構造表面の走査プローブ顕微鏡観察を行ったところ、深溝の底面にアプローチし凹凸の大きな構造の形状像を得ることができた。また、深溝の底面部分においては、市販されている先端半径5nm程度を有するSi製カンチレバーと同様の分解能で表面観察像を得ることができた。さらに、本発明のダイヤモンドカンチレバーの耐摩耗性は、Si製のカンチレバーと比較して5倍以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係る先鋭化針状ダイヤモンドは、走査プローブ顕微鏡用カンチレバーの探針として用いることができる他、フォトマスク修正装置における加工用プローブ、電子線源、三次元計測用プローブとして用いることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 ダイヤモンド基板
2 単結晶金属膜
3 凹部
4 針状ダイヤモンド
5 先鋭化針状ダイヤモンド
6 ピラミッドの頂点部分が直線状に伸びたダイヤモンド
7 先鋭化針状ダイヤモンド
8 ダイヤモンドカンチレバー
9 チップ部
10 梁部
11 ダイヤモンド探針
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱化学加工によって作製された針状ダイヤモンドにプラズマ処理を施すことによって、少なくとも先端部分が先鋭化された先鋭化針状ダイヤモンド、およびそれを探針として備えた走査プローブ顕微鏡用カンチレバー、フォトマスク修正用プローブ、電子線源に関する。
【背景技術】
【0002】
走査プローブ顕微鏡に用いるカンチレバーの探針には、量産可能なSi製のものが広く用いられている。Si製の探針は、先端半径が5〜10nmと微小であるものの、連続使用によって先端が摩耗してしまうと先端半径が大きくなり、得られる画像が変化してしまうことが問題とされていた。
【0003】
そのため、物質中最高の硬さをもつダイヤモンドの耐摩耗性が注目され、早くから探針部分にダイヤモンドを用いたダイヤモンドカンチレバーの開発が行われてきた。例えば市販されているものでは、Si製の探針に多結晶ダイヤモンド薄膜をコーティングしたダイヤモンドコートプローブや研磨によって作製されたダイヤモンドカンチレバー等があげられ、その先端半径は50〜100nm以上となっている。
【0004】
一方で、単結晶ダイヤモンドを探針に用いたカンチレバーは、主に走査プローブ顕微鏡装置を利用した加工用途で用いられている。これまで単結晶ダイヤモンドカンチレバーは、バルク状の単結晶ダイヤモンドに研磨加工を施して作製された角柱、円錐形状、角柱状等の針を探針として、市販のカンチレバーの梁部の先端に、接着もしくはロウ付けすることで作製されていた。
【0005】
そのため、研磨加工で作製された単結晶ダイヤモンド針の先端半径は、市販のSi製カンチレバーの探針の先端半径と比較して大きく、走査プローブ顕微鏡での高分解能観察や高精度微細加工用には用いることができなかった。
【0006】
さらに微細なナノスケールでの加工を行うために、集束イオンビーム(FIB)等を用いてダイヤモンド小片の先端を任意の形状に加工し、先鋭化した加工用プローブが知られている(特許文献1)。この方法では、複数のダイヤモンド小片の中からカンチレバーの先端寸法に合うサイズで、且つ、加工時間を短縮するために、より鋭角の突起を有するダイヤモンド小片を選択し、このダイヤモンド小片の突起部分を集束イオンビーム等を用いてさらに先鋭化するように加工したものを加工用プローブの探針として用いる。
【0007】
また、電子放出素子用ダイヤモンドの微小突起を形成する方法として、ダイヤモンド単結晶基板上に、反応性イオンエッチングを用いて高さ10μm程度の柱状体を複数本配列形成した後、プラズマ中でエッチングもしくはダイヤモンドを気相合成して、柱状体から先鋭な電子放出部を作製する技術が知られている(特許文献2)。
【0008】
アスペクト比が高く、数十μm長さの針状ダイヤモンドを簡便に作製する方法としては、熱化学加工法によるものが知られている(特許文献3)。この方法では、単結晶ダイヤモンドからなる針状ダイヤモンドを、ダイヤモンド基板上に大量に形成することが可能である。
【0009】
また、熱化学加工法を用いて作製される針状ダイヤモンドの長さには理論上制限がないことから、走査プローブ顕微鏡用カンチレバーで一般的に用いられている長さ10〜15μm程度の探針では測定不可能であった、凹凸の大きな構造や深溝などアスペクト比の高い構造の観察に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−221981号公報
【特許文献2】特開2002−75171号公報
【特許文献3】WO2007/040283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1のように、複数の単結晶ダイヤモンド小片の中から選択した単結晶ダイヤモンドの小片を集束イオンビーム等を用いて先鋭化する場合、小片を一つずつ加工していくため、加工時間がかかり、生産性が悪いという問題がある。さらに、単結晶ダイヤモンド小片の先端部は先鋭化されるものの、ダイヤモンド小片の底部に向かっては極端に幅が広がるため、ナノスケールの微細構造の加工用プローブとして用いることはできても、凹凸の大きな構造や深溝などアスペクト比の高い構造の観察には適さないという問題がある。
【0012】
さらに、単結晶ダイヤモンド小片を集束イオンビーム等で加工すると、表面から数μm〜数十μm深さにわたって加工変質層が形成されることが知られている。加工変質層は非晶質となるため、単結晶ダイヤモンドが本来もつ耐摩耗性を十分に発揮できないという問題があった。
【0013】
また、特許文献2では、電子放出素子用のダイヤモンド微小突起を形成するにあたっては、まず反応性イオンエッチングを用いて複数の柱状体を形成した後に、プラズマ中でエッチングもしくは気相合成を行い、柱状体の先端を先鋭化するが、反応性イオンエッチングを用いて形成される柱状体の高さは10μm程度か、最大でも20μm未満が限界であった。
【0014】
一方、特許文献3の熱化学加工のみで得られた針状ダイヤモンドは、針状部が単結晶ダイヤモンドからなり、且つ、反応性イオンエッチングでは作製困難な20μm以上の長さを有する針状部を効率良く大量に形成できるものの、それのみで高分解能観察に適した先端半径を得ることが困難であった。
【0015】
すなわち単結晶ダイヤモンドを探針に備えたカンチレバーにおいて、効率良く量産が可能であり、走査プローブ顕微鏡において高分解能観察や高精度微細加工が可能な先端半径と、高アスペクト比構造観察に十分な長さの針をもち、且つ、先端の耐摩耗性に優れたダイヤモンド探針は存在しなかった。
【0016】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、熱化学加工方法とプラズマ処理を組み合わることにより、効率良く量産可能であり、走査プローブ顕微鏡において高分解能観察や高精度微細加工が可能な先端半径と、高アスペクト比構造観察に十分な長さの針をもち、且つ、先端の耐摩耗性に優れたダイヤモンド探針と、これを備えた走査プローブ顕微鏡用カンチレバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、反応性イオンエッチング等では作製困難な長さの針状ダイヤモンドを熱化学加工法によって作製し、プラズマ中でエッチングもしくは気相合成により先端を先鋭化することによって、Si製の探針と同等の先端半径をもつ先鋭化針状ダイヤモンドを効率良く量産できることを見出した。この方法で得られた先鋭化針状ダイヤモンドを探針として用いることで、高分解能観察、高精度微細加工および高アスペクト比構造観察とが可能で、且つ、先端の耐摩耗性に優れた走査プローブ顕微鏡用カンチレバーを提供できることを見出し、本発明を完成させた。
【0018】
すなわち、請求項1記載の発明は、
ダイヤモンド基板上で熱化学加工を用いて形成した針状ダイヤモンドにプラズマ処理を行い、先端部分を先鋭化したことを特徴とする先鋭化針状ダイヤモンドである。
【0019】
また、請求項2記載の発明は、
請求項1において、先鋭化針状ダイヤモンドの長さが20μm以上、かつ先端半径が2〜50nmであることを特徴とする先鋭化針状ダイヤモンドである。
【0020】
請求項3記載の発明は、
請求項1または2に記載の先鋭化針状ダイヤモンドのうち少なくとも一本もしくは複数本を探針として備えることを特徴とする走査プローブ顕微鏡用カンチレバーである。
【0021】
また、請求項4記載の発明は、
請求項3において、前記探針は、請求項1または2に記載の先鋭化針状ダイヤモンドを、前記ダイヤモンド基板から平板部を含むように切り出されたものであって、平板部の少なくとも一つの側面に、ダイヤモンドの結晶方位を示すための平面を有することを特徴とする走査プローブ顕微鏡用カンチレバーである。
【0022】
また、請求項5記載の発明は、
請求項1または2に記載の先鋭化針状ダイヤモンドを用いたフォトマスク修正用プローブである。
【0023】
また、請求項6記載の発明は、
請求項1または2に記載の先鋭化針状ダイヤモンドを用いた電子線源である。
【0024】
また、請求項7記載の発明は、
得ようとする針状部長さおよび平板部厚みを合算した厚みを有するダイヤモンド基板を準備する工程と、
前記ダイヤモンド基板表面に、炭素を溶融し得る金属またはそれらの合金からなる単結晶金属膜を膜厚0.1μm以上成膜する工程と、
前記単結晶金属膜に、前記ダイヤモンド基板表面を露出するように凹部を形成する工程と、
前記ダイヤモンド基板を、水素を含む雰囲気中で熱処理し熱化学加工を行う工程とによって、20μm以上の長さを有する針状ダイヤモンドを形成した後に、
前記針状ダイヤモンドが形成されたダイヤモンド基板をプラズマ処理装置内に導入し、
水素、または酸素、または水素,酸素,炭素に加えダイヤモンドに導電性を付与する元素のうち複数の元素の供給源となり得るガスを含む雰囲気中でプラズマ処理を行うことによって、前記針状ダイヤモンド先端を、先端半径2〜50nmに先鋭化することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の先鋭化針状ダイヤモンドの製造方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、以下に記載されるような効果を有する。
請求項1に記載の発明によれば、熱化学加工により形成された針状ダイヤモンドにプラズマ処理を施す際、反応室の温度, 圧力, 雰囲気ガス等の条件を選択することでエッチングもしくは成長を制御することができる。
【0026】
例えばエッチングを施す条件では、針状ダイヤモンド先端部分がエッチングされることによって、針状ダイヤモンドの先端部分に、例えば(111)面からなる四角錐形状のピラミッド型ダイヤモンドが形成されるため、先端の先鋭化が可能になる。また、同時に外周部分もエッチングされるため、外周部全体が細くなるようなエッチングを施せば、アスペクト比を所望の大きさに制御できる。
【0027】
一方、成長させる条件では、針状ダイヤモンドの外周部分の直径は成長によって若干大きくなるものの、針状ダイヤモンドの先端部分に、例えば(111)面で形成される四角錐形状のピラミッド型ダイヤモンドを形成することが可能である。これによって、反応性イオンエッチングでは作製困難な長さの針状ダイヤモンドにおいて、先端部分が先鋭化された、先鋭化針状ダイヤモンドを得ることができるという効果を有する。
【0028】
さらに成長時にホウ素(B)やリン(P)などダイヤモンドに導電性を付与する元素を含むガスを導入することにより、針状ダイヤモンドの先端部分に、四角錘形状のピラミッド型ダイヤモンドを形成することが可能である。これによって、反応性イオンエッチングでは作製困難な長さの針状ダイヤモンドにおいて、先端部分が導電性を持ち、かつ先鋭化された、先鋭化針状導電性ダイヤモンドを得ることができるという効果を有する。
【0029】
請求項2に記載の発明によれば、熱化学加工により形成された針状ダイヤモンドは、反応性イオンエッチングでは作製困難な、特に20μm以上の長さを有する針状部を効率良く大量に形成することが可能である。さらに、プラズマ処理によって先端半径を2〜50nmに先鋭化することが可能である。これによって、走査プローブ顕微鏡用のカンチレバーの探針として用いることが可能な、耐摩耗性に優れたダイヤモンドからなり、高アスペクト比構造観察に適した長さを有し、且つ、市販のSiカンチレバーと同等の先端半径をもつ先鋭化針状ダイヤモンドを得ることができるという効果を有する。
【0030】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の先鋭化針状ダイヤモンドを探針として備えたダイヤモンドカンチレバーを用いることで、走査プローブ顕微鏡観察において、高分解能観察、高精度微細加工と高アスペクト比構造観察が可能となるという効果を有する。さらに、先鋭化にあたってはプラズマ処理を用いるため、集束イオンビームで先鋭化された先端部分に形成される加工変質層などが発生せず、ダイヤモンドの耐摩耗性を十分に発揮したダイヤモンドカンチレバーを得ることができる。
【0031】
先鋭化針状導電性ダイヤモンドを探針として備えたダイヤモンドカンチレバーを用いることで、走査プローブ顕微鏡において、高分解能電流像観察、高分解能陽極酸化が可能となるという効果を有する。さらに、先鋭化にあたってはプラズマ処理を用いるため、集束イオンビームで先鋭化された先端部分に形成される加工変質層などが発生せず、ダイヤモンドの耐摩耗性を十分に発揮した導電性ダイヤモンドカンチレバーを得ることができる。
【0032】
本発明のダイヤモンドカンチレバーを用いると、連続測定を行う際にも観察画像が探針の先端形状の影響を受けにくくなるという効果を有する。また、複数本の先鋭化針状ダイヤモンドを探針として備えたダイヤモンドカンチレバーを、走査プローブ顕微鏡装置に用いる場合、熱化学加工によって作製された針状ダイヤモンドは長さが均一となるため、マルチプローブによる加工や直流4端子測定などの物性測定に用いるのにも適している。
【0033】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の先鋭化針状ダイヤモンドを、ダイヤモンド基板から一本毎もしくは任意の複数本毎に、平板部を含むように切り出すことによって、先鋭化針状ダイヤモンドをカンチレバーの梁部など所望の位置に取り付ける際に、ハンドリングスペースが確保できるため取り扱いが容易になるという効果を有する。
【0034】
また、針状部のみで固定するよりも平板部と梁部を接着することによって、接着面積が大きくなるため、より安定した固定ができるという効果を有する。さらに、平板部の少なくとも一つの側面に、ダイヤモンドの結晶方位を示すための平面を有することによって、平板部をカンチレバーの梁部に固定する際に、ダイヤモンドの最も耐摩耗性の大きな結晶軸を走査方向に平行に合わせて固定しやすくなるという効果を有する。
【0035】
請求項5に記載の発明によれば、従来のフォトマスク修正用プローブでは困難であった、高いアスペクト比を有するフォトマスクの修正加工に用いることのできるプローブを作製することができる。これによって、ドライエッチング等を用いてアスペクト比の高い構造体を作製する際に用いることのできるフォトマスクを得ることができるという効果を有する。
【0036】
請求項6に記載の発明によれば、高いアスペクト比と先鋭化された先端を有する先鋭化針状ダイヤモンドを、従来用いられている電子放出素子に比べて電子の引き出し電圧を下げることが可能な電子線源として用いることができるという効果を有する。
【0037】
請求項7に記載の発明によれば、ダイヤモンド基板上に熱化学加工を用いて20μm以上の長さを有する針状ダイヤモンドを大量に作製することができる。さらに、針状ダイヤモンドにプラズマ処理を行うことによって先端半径を2〜50nmに先鋭化することができるため、反応性イオンエッチングとプラズマ処理を組み合わせた方法では作製困難な長さを有する先鋭化針状ダイヤモンドを効率良く大量に形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態に係る針状ダイヤモンドの形成工程を示す図である。
【図2】本実施形態に係る針状ダイヤモンドの拡大図である。
【図3】本実施形態に係る先鋭化針状ダイヤモンドを示す図である。
【図4】本実施形態に係る先鋭化針状ダイヤモンドの拡大図である。
【図5】本実施形態に係る先鋭化針状ダイヤモンドの別の形態を示す図である。
【図6】本実施形態に係る先鋭化針状ダイヤモンドを示す図である。
【図7】本実施形態に係る先鋭化針状ダイヤモンドの拡大図である。
【図8】本実施形態に係るダイヤモンドカンチレバーの構成を示す図である。
【図9】本実施例に係る針状ダイヤモンドのSEM画像である。
【図10】本実施例1に係る先鋭化針状ダイヤモンドのSEM画像である。
【図11】本実施例2に係る先鋭化針状ダイヤモンドのSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
<針状ダイヤモンドの作製方法>
以下、本発明を実施するための最良の形態について図1(a)〜(e)を用いて説明する。
【0040】
図1(a)〜(e)は、熱化学加工による針状ダイヤモンドの形成工程を示している。
針状ダイヤモンドを作製するためのダイヤモンド基板1には、天然のほか、高圧合成法や気相合成法で作製された単結晶ダイヤモンドを用いることができる。単結晶ダイヤモンドは、BやP等を不純物としてドーピングすることにより、その電気伝導率を絶縁体から金属並みまで変化させることが可能であるから、針状ダイヤモンドの用途に応じて適宜選択すればよい。
【0041】
多結晶ダイヤモンドを用いることもできるが、熱化学加工によって得られる構造体の表面に粒界に起因する凹凸が発生する可能性があるため、針状ダイヤモンドのように微細な構造体を得ようとする場合には、単結晶ダイヤモンドを用いることが好ましい。
【0042】
単結晶ダイヤモンド基板を用いる場合、プラズマ処理された後の針状ダイヤモンドの先端形状は、用意されるダイヤモンド基板の結晶方位に依存する。例えば容易に入手できる(100)面を基板上面に持つ単結晶ダイヤモンド基板を用い、走査型プローブ顕微鏡装置搭載時に、カンチレバーのスキャン方向と耐摩耗性の大きなダイヤモンド<110>軸方向が平行になるように設計するのが好ましい。
【0043】
当該ダイヤモンド基板1は、(得ようとする針状ダイヤモンドの針状部の長さ)+(得ようとする平板部の厚さ)がダイヤモンド基板の厚みとなるように、上下面を研磨加工することによって仕上げる。この際、両面を表面粗さRaで1nm以下、好ましくは0.1nm程度になるように鏡面研磨を行う(図1(a))。
【0044】
鏡面研磨されたダイヤモンド基板1を十分に洗浄した後、スパッタ装置等の成膜装置中に設置し、0.01Pa〜10Paの圧力下で基板温度を600℃〜1800℃に設定し、ダイヤモンド基板表面上にNi等の炭素を溶解しうる金属またはそれらの合金からなる単結晶金属膜2を膜厚0.1μm以上形成する(図1(b))。炭素を溶解しうる金属として、Ni以外にはRh,Pd,Pt,Ir,W,Mo,Mn,Fe,Ti,Cr,Coなどとそれらの合金を用いることができる。
【0045】
ダイヤモンド基板1上に形成された単結晶金属膜2に、ダイヤモンド表面が露出するように、すなわち単結晶金属膜2のみを貫通するように、レーザー加工等を用いて複数個の円形状の凹部3を形成する(図1(c))。円形状の凹部の直径は1μm程度、凹部の間隔は40μm程度が好ましい。凹部の形成方法は、針状ダイヤモンドの形状に応じて、機械加工,レーザー加工,フォトリソグラフィ,集束イオンビーム等を用いることができる。
【0046】
単結晶金属膜2に凹部3を形成させた後、当該サンプルに対し、大気圧水素雰囲気中において600℃〜1000℃の温度で、3〜100時間熱処理し熱化学加工を行うと、単結晶金属膜中に取り込まれたダイヤモンドを構成する炭素原子が、単結晶金属膜の表面において雰囲気ガスと反応することにより炭化物を生成し、単結晶金属膜が形成されている部分のダイヤモンドのみが加工されていくこととなる。
【0047】
熱処理を行う雰囲気は、水素雰囲気中の他、酸素,不活性ガス雰囲気中もしくは真空中でも行うことができる。また、針状ダイヤモンドの針状部の長さは、熱化学加工を行う熱処理温度,熱処理時間,雰囲気等の条件によってコントロールすることができるが、深溝測定に最適なカンチレバーの探針として用いる場合、長さ20μm以上が好ましい。
【0048】
以上のような熱化学加工の結果、ダイヤモンド基板の表面を露出させた凹部部分のみが加工されずに残ることによって、針状ダイヤモンド4を形成する(図1(d))。熱化学加工後に、ダイヤモンド基板上に残存する単結晶金属膜2は、硝酸等を用いて除去することができる(図1(e))。
【0049】
<針状ダイヤモンドの先鋭化>
以上のように熱化学加工によって得られた針状ダイヤモンド4は、針状部が少なくとも20μm以上の長さをもち、ダイヤモンド基板表面に一体に保持されている。図2に針状ダイヤモンドの拡大図を示す。この針状ダイヤモンドが形成されたダイヤモンド基板をプラズマ処理装置内に導入し、先鋭化のためのプラズマ処理を行う。
【0050】
プラズマ処理装置には、直流プラズマ装置、マイクロ波プラズマ装置、プラズマジェット装置や熱フィラメント装置などを用いることが可能である。また、プラズマ処理において、反応室の温度, 圧力, 雰囲気ガス等の条件を選択することでエッチングもしくは成長を制御することができる。
【0051】
プラズマ処理は、水素、または酸素、または水素,酸素,炭素に加えホウ素(B)やリン(B)等のダイヤモンドに導電性を付与する元素のうち複数の元素の供給源となり得るガスを含む雰囲気中で行うことが好ましい。例えば、主にエッチングに寄与する水素や酸素の供給源としては、水素ガスや二酸化炭素ガスを用いることができる。一方で、成長に寄与しエッチングと成長のバランスを制御する炭素の供給源としては、メタンガスを用いることができる。
【0052】
(実施形態1)
例えば針状ダイヤモンド先端にダイヤモンドを成長させて先鋭化を行う場合、直流プラズマ処理を施す際のメタン/水素比を0.1〜5%、その際の基板温度は600〜1000℃程度に設定することが好ましい。この時、雰囲気ガス中にBやPを少量導入することで、成長したダイヤモンドに導電性を付与することも可能である。
【0053】
また例えば針状ダイヤモンド先端に導電性ダイヤモンドを成長させて先鋭化を行う場合、直流プラズマ処理を施す際のメタン/水素/トリメチルボロン比を5/94/1、その際の基板温度は600〜1000℃程度に設定することが好ましい。
【0054】
また、投入電力と反応室圧力は、αパラメータを3以上に維持するよう設定することが好ましい。αパラメータとは、結晶方向の成長速度比を示すパラメータであり、(111)結晶面に垂直な方向及び(100)結晶面に垂直な方向の成長速度をそれぞれV111及びV100とすると、
【数1】
と表され、αパラメータ3以上では、(111)面からなる四角錐形状のピラミッド型ダイヤモンドが、αパラメータ1以下では、(100)面からなる四角柱状のダイヤモンドが形成されることが知られている。
【0055】
これによって、図3に示すように、針状ダイヤモンド4の先端に(111)面からなる四角錐形状のピラミッド型ダイヤモンドが形成された、先鋭化針状ダイヤモンド5を得ることが出来る。図4に先鋭化針状ダイヤモンド5の拡大図を示す。
【0056】
また、針状ダイヤモンドの外形が真円に近いほど、ピラミッド型ダイヤモンドの頂点が一致しやすいため、より走査プローブ顕微鏡観察に最適な先端形状を得ることができる。一方で、針状ダイヤモンドの外形が真円から外れると頂点が一点で交わらなくなるため、例えば、針状ダイヤモンドの外形を楕円に作製し、図5に示すようなピラミッドの頂点部分が直線状に伸びたダイヤモンド6を形成すれば、加工に用いることのできる探針にもなり得る。
【0057】
一方、針状ダイヤモンドにプラズマ処理によるエッチングを施して先鋭化を行う場合、水素のみ、二酸化炭素+水素、二酸化炭素+メタン+水素のいずれの雰囲気でもエッチングを行うことが可能である。
【0058】
(実施形態2)
水素のみの雰囲気でエッチングを行う場合、好ましくは基板温度を900〜1000℃に保ち、針状ダイヤモンドにエッチングを行うと、図6に示すように、針状ダイヤモンド4の先端および外周部が全体的にエッチングされて先鋭化された先鋭化針状ダイヤモンド7を得ることができる。図7に先鋭化針状ダイヤモンド7の拡大図を示す。
【0059】
(実施形態3)
二酸化炭素+水素雰囲気でエッチングを行う場合、好ましくは二酸化炭素/水素比は0.1〜5%、基板温度を600〜1000℃に保つことで針状ダイヤモンドをエッチングし、先鋭化することが可能である。
【0060】
(実施形態4)
二酸化炭素+メタン+水素雰囲気でエッチングを行う場合、好ましくは二酸化炭素濃度/メタン濃度=0.1〜5%/0.1〜5%、残りは水素濃度とし、その際の基板温度を600〜1000℃に保つことで針状ダイヤモンドをエッチングし、先鋭化することが可能である。また、ここでメタン濃度を増やすことで、成長にもなり得る。
【0061】
以上のようなエッチングによって熱化学加工によって作製された針状ダイヤモンド先端のエッチング面をコントロールしたり、先端のみならず針状部全体を細くし、針状ダイヤモンドのアスペクト比を高くすることも可能である。
【0062】
以上のように、熱化学加工によって作製された針状ダイヤモンドにプラズマ処理を施すことによって、先端に(111)面からなる四角錐形状のピラミッド型ダイヤモンドや(100)からなる四角柱形状のダイヤモンドを有し、先端半径が2〜50nmに先鋭化された先鋭化針状ダイヤモンドを、ダイヤモンドの成長もしくはエッチングによって得ることができる。また、エッチングにおいては、針状部全体をエッチングすることも可能であるから、それによって針状ダイヤモンドのアスペクト比を高くすることが可能である。
【0063】
<先鋭化針状ダイヤモンドを用いたカンチレバーの形態>
先鋭化針状ダイヤモンドを探針として用いた、本発明のダイヤモンドカンチレバーの構成について図8に示す。本発明のダイヤモンドカンチレバー8は、チップ部9、梁部10、先鋭化針状ダイヤモンドからなるダイヤモンド探針11で構成される。
【0064】
ダイヤモンド探針11を取り付けるカンチレバーとして、市販されているSi製のカンチレバーやプローブレスカンチレバーを用いることができる。梁部の材質は、走査プローブ顕微鏡観察における測定対象物によって最適なバネ定数をもつ材質が選択される。市販のSi製カンチレバーを用いる場合、梁部は通常チップ部と一体に形成されているため梁部の材質もSiであるが、その他、本発明のダイヤモンドカンチレバーを硬度の大きな試料に対するスクラッチやナノインデントに用いる場合には、梁部の材質をバネ定数100N/m以上のステンレスやアモルファス金属にすることが好ましい。
【0065】
ダイヤモンド探針11は、ダイヤモンド基板表面に形成された先鋭化針状ダイヤモンドの針状部周辺の平板部を含むように切り出し、平板部の少なくとも一つの側面に、ダイヤモンドの結晶方位を示すための平面を有するものを用いることが好ましい。この平面の結晶方位は、カンチレバーの走査方向と最も耐摩耗性のある結晶方位とが平行になるようにダイヤモンド探針を取り付けた際に、カンチレバーの梁部の側面と平行になる結晶方位を選択することが好ましい。
【0066】
平板部の形状は、長方形をはじめとした多角形など、カンチレバーの梁部に固定可能で、且つ、十分な接着面積を有し、取り付けの際のハンドリングスペースが確保できていることが必要である。また、カンチレバーとしての特性に支障をきたさない重さに設定される必要がある。
【0067】
例えば、外形50×30μm角以上200×300μm角以下、厚み5μm以上〜30μm以下が好ましい。外形が50×30μm角より小さいと、平板部をハンドリングするスペースが確保できず、200×300μm角より大きいと、カンチレバーの先端に取り付けた際、平板部の重みでカンチレバーの振動等の動きに支障をきたす恐れがあるため好ましくない。
【0068】
また、厚みが5μmより小さいと熱化学加工によって作製される針状ダイヤモンドの歩留まりが悪くなり、30μmより大きいと、カンチレバーの先端に取り付けた際、平板部の重みでカンチレバーの振動等の動きに支障をきたす恐れがあるため好ましくない。好ましくは、外形50×30μm角程度, 厚み15μm程度が、最も先鋭化針状ダイヤモンドを作製しやすく、カンチレバーとしての特性を妨げることがない。
【0069】
また、先鋭化針状ダイヤモンドを複数本含むように平板部を切り出すと、マルチ加工や直流4端子法測定等が可能な、デュアルもしくはマルチプローブ型のダイヤモンドカンチレバーとして用いることができる。
【0070】
ダイヤモンド探針を梁部に固定する方法としては、液状の接着剤等を用いて、平板部の裏面を梁部に接着して固定する方法を用いることができる。接着剤としては、液状の接着剤の他、Au,Ti等を用いて金属接合によって固定することも可能である。
【0071】
また、ダイヤモンド探針の表面には、導電性を付与するための金属コーティングや、撥水性をもたせるためのフッ素終端をはじめとして、様々な測定に用いるための表面化学終端や化学修飾が可能である。
【0072】
同様にして、前述した走査プローブ顕微鏡用カンチレバーの実施形態は、走査プローブ顕微鏡と同様の機構で動作するフォトマスク修正装置において、修正加工用プローブとしても用いることができる。フォトマスク修正以外にも、各種の加工用途に用いることが可能である。
【0073】
また、ダイヤモンド基板上に複数の先鋭化針状ダイヤモンドを形成することによって、従来用いられている電子放出素子に比べて、電子の引き出し電圧を下げることが可能な電子線源として用いることが可能である。
【実施例】
【0074】
次に、本発明にかかる実施例について具体的に説明する。
【0075】
本実施例では、高圧合成法で作製された大きさ約4mm角の(100)面単結晶ダイヤモンド基板を用いた。単結晶ダイヤモンド基板0.08mm厚さに上下面を研磨し、表面粗さRaを0.1nm以下に仕上げた。
【0076】
その後、ダイヤモンド基板表面を水素終端させるために水素100%、大気圧下で1000℃3時間の熱処理を施した。表面を水素終端することによって、熱化学加工を平坦に仕上げることが可能になる。表面を水素終端したダイヤモンド単結晶基板上に、スパッタリング法を用いて、基板を600℃程度に加熱しながら厚み約1μmのNi単結晶薄膜をエピタキシャル成長させた。
【0077】
次にNi単結晶薄膜上にパルスレーザーを用いて直径約1μmの円形状の凹部を複数個形成し、ダイヤモンド表面を一部露出させた。形成した凹部の配列間隔は40μmであった。その後、水素100%、大気圧下900℃で24時間熱処理を施して熱化学加工を行い、針状ダイヤモンドを作製した。
【0078】
その後、熱化学加工後に単結晶ダイヤモンド基板上に残っているNi薄膜を硝酸で除去した。この熱化学加工により得られた針状ダイヤモンドは、図9に示すように、針状部の長さ約65μm、針状部の底部の直径約5μm、先端部の外形の直径約1μm、先端半径は約500nmであった。また、平板部の厚みは15μmであった。
【0079】
続いて針状ダイヤモンドを先鋭化するために、上記針状ダイヤモンドが形成された単結晶ダイヤモンド基板を直流プラズマ装置内に設置し、次の4種類のプラズマ処理条件で針状ダイヤモンドの先鋭化を行った。
【0080】
(実施例1)
直流プラズマ処理の条件として、メタン/水素比を5%、基板温度1000℃程度、出力1.2kW、圧力120torrになるように設定し、1時間のプラズマ処理を行った。その結果、図10に示すように、針状ダイヤモンド先端には(111)面からなるピラミッド型のダイヤモンドが成長し、その先端半径は約20nmとなった。また、針状ダイヤモンド先端部の外形の直径は3μmとなった
【0081】
(実施例2)
直流プラズマ処理の条件として、水素100%、基板温度950℃程度、出力1.2kW、圧力120torrになるように設定し、1時間のプラズマ処理を行った。その結果、図11に示すように、針状ダイヤモンドの先端部および外周部がエッチングされ、針状部全体が細くなった。針状ダイヤモンド先端部の外形の直径は300nmとなり、先端半径は約150nmとなった。
【0082】
(実施例3)
マイクロ波プラズマCVD装置によるプラズマ処理の条件として、二酸化炭素/水素比を1%、基板温度950℃程度、出力1.2kW、圧力120torrになるように設定し、10分間のプラズマ処理を行った。その結果、針状ダイヤモンド先端部の外形の直径はエッチングされることにより約200nmとなり、針先端には(111)面からなるピラミッド型のダイヤモンドが形成された。その先端半径は約100nmであった。
【0083】
(実施例4)
直流プラズマ処理の条件として、二酸化炭素/メタン/水素比を1%/1.5%/97.5%、基板温度930℃、出力は1.2kW、圧力は120torrになるよう条件を設定し、60分間のプラズマ処理を行った。その結果、針状ダイヤモンド先端部の外形の直径は500nmとなり、針先端には(111)面からなるピラミッド型のダイヤモンドが成長していた。その先端半径は約20nmであった。
【0084】
(実施例5)
直流プラズマ処理の条件として、メタン/水素/トリメチルボロン比を5%/94%/1%、基板温度1020〜1030℃、出力は1.2kW、圧力は120torrになるよう条件を設定し、30分間のプラズマ処理を行った。その結果、針状ダイヤモンド先端部の外形の直径は3μmとなり、針先端には(111)面からなるピラミッド型のダイヤモンドが成長していた。その先端半径は50nmであった。
【0085】
実施例1〜5の条件でプラズマ処理を施した単結晶ダイヤモンド基板から先鋭化針状ダイヤモンドの外周に30×50μmの平板部を含むように切り出し、カンチレバーの梁部に液状接着剤を用いて固定し、ダイヤモンドカンチレバーを作製した。
【0086】
このダイヤモンドカンチレバーを用いて、凹凸の大きな高アスペクト比構造表面の走査プローブ顕微鏡観察を行ったところ、深溝の底面にアプローチし凹凸の大きな構造の形状像を得ることができた。また、深溝の底面部分においては、市販されている先端半径5nm程度を有するSi製カンチレバーと同様の分解能で表面観察像を得ることができた。さらに、本発明のダイヤモンドカンチレバーの耐摩耗性は、Si製のカンチレバーと比較して5倍以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係る先鋭化針状ダイヤモンドは、走査プローブ顕微鏡用カンチレバーの探針として用いることができる他、フォトマスク修正装置における加工用プローブ、電子線源、三次元計測用プローブとして用いることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 ダイヤモンド基板
2 単結晶金属膜
3 凹部
4 針状ダイヤモンド
5 先鋭化針状ダイヤモンド
6 ピラミッドの頂点部分が直線状に伸びたダイヤモンド
7 先鋭化針状ダイヤモンド
8 ダイヤモンドカンチレバー
9 チップ部
10 梁部
11 ダイヤモンド探針
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤモンド基板上で熱化学加工を用いて形成した針状ダイヤモンドにプラズマ処理を行い、先端部分を先鋭化したことを特徴とする先鋭化針状ダイヤモンド。
【請求項2】
請求項1において、先鋭化針状ダイヤモンドの長さが20μm以上、かつ先端半径が2〜50nmであることを特徴とする先鋭化針状ダイヤモンド。
【請求項3】
請求項1または2に記載の先鋭化針状ダイヤモンドのうち少なくとも一本もしくは複数本を探針として備えることを特徴とする走査プローブ顕微鏡用カンチレバー。
【請求項4】
請求項3において、前記探針は、請求項1または2に記載の先鋭化針状ダイヤモンドを、前記ダイヤモンド基板から平板部を含むように切り出されたものであって、平板部の少なくとも一つの側面に、ダイヤモンドの結晶方位を示すための平面を有することを特徴とする走査プローブ顕微鏡用カンチレバー。
【請求項5】
請求項1または2に記載の先鋭化針状ダイヤモンドを用いたフォトマスク修正用プローブ。
【請求項6】
請求項1または2に記載の先鋭化針状ダイヤモンドを用いた電子線源。
【請求項7】
得ようとする針状部長さおよび平板部厚みを合算した厚みを有するダイヤモンド基板を準備する工程と、
前記ダイヤモンド基板表面に、炭素を溶融し得る金属またはそれらの合金からなる単結晶金属膜を膜厚0.1μm以上成膜する工程と、
前記単結晶金属膜に、前記ダイヤモンド基板表面を露出するように凹部を形成する工程と、
前記ダイヤモンド基板を、水素を含む雰囲気中で熱処理し熱化学加工を行う工程とによって、20μm以上の長さを有する針状ダイヤモンドを形成した後に、
前記針状ダイヤモンドが形成されたダイヤモンド基板をプラズマ処理装置内に導入し、
水素、または酸素、または水素,酸素,炭素に加えダイヤモンドに導電性を付与する元素のうち複数の元素の供給源となり得るガスを含む雰囲気中でプラズマ処理を行うことによって、前記針状ダイヤモンド先端を、先端半径2〜50nmに先鋭化することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の先鋭化針状ダイヤモンドの製造方法。
【請求項1】
ダイヤモンド基板上で熱化学加工を用いて形成した針状ダイヤモンドにプラズマ処理を行い、先端部分を先鋭化したことを特徴とする先鋭化針状ダイヤモンド。
【請求項2】
請求項1において、先鋭化針状ダイヤモンドの長さが20μm以上、かつ先端半径が2〜50nmであることを特徴とする先鋭化針状ダイヤモンド。
【請求項3】
請求項1または2に記載の先鋭化針状ダイヤモンドのうち少なくとも一本もしくは複数本を探針として備えることを特徴とする走査プローブ顕微鏡用カンチレバー。
【請求項4】
請求項3において、前記探針は、請求項1または2に記載の先鋭化針状ダイヤモンドを、前記ダイヤモンド基板から平板部を含むように切り出されたものであって、平板部の少なくとも一つの側面に、ダイヤモンドの結晶方位を示すための平面を有することを特徴とする走査プローブ顕微鏡用カンチレバー。
【請求項5】
請求項1または2に記載の先鋭化針状ダイヤモンドを用いたフォトマスク修正用プローブ。
【請求項6】
請求項1または2に記載の先鋭化針状ダイヤモンドを用いた電子線源。
【請求項7】
得ようとする針状部長さおよび平板部厚みを合算した厚みを有するダイヤモンド基板を準備する工程と、
前記ダイヤモンド基板表面に、炭素を溶融し得る金属またはそれらの合金からなる単結晶金属膜を膜厚0.1μm以上成膜する工程と、
前記単結晶金属膜に、前記ダイヤモンド基板表面を露出するように凹部を形成する工程と、
前記ダイヤモンド基板を、水素を含む雰囲気中で熱処理し熱化学加工を行う工程とによって、20μm以上の長さを有する針状ダイヤモンドを形成した後に、
前記針状ダイヤモンドが形成されたダイヤモンド基板をプラズマ処理装置内に導入し、
水素、または酸素、または水素,酸素,炭素に加えダイヤモンドに導電性を付与する元素のうち複数の元素の供給源となり得るガスを含む雰囲気中でプラズマ処理を行うことによって、前記針状ダイヤモンド先端を、先端半径2〜50nmに先鋭化することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の先鋭化針状ダイヤモンドの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−59044(P2010−59044A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179208(P2009−179208)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000240477)並木精密宝石株式会社 (210)
【出願人】(508239333)AGDマテリアル株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000240477)並木精密宝石株式会社 (210)
【出願人】(508239333)AGDマテリアル株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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