説明

光合分波器および光合分波方法

【課題】 例えば集積化された小型の光合分波器において、サイズが大きくなってしまうことなく、外部の光学素子との光学的な結合効率の向上を可能とし、位置ずれに対する結合効率のトレランスを改善することを目的とする。
【解決手段】 光合分波器において、互いに異なる波長をもつ複数の光が波長多重光に合波されるか又は波長多重光が互いに異なる波長をもつ複数の光に分波される光合分波部と、複数の光学素子と前記光合分波部との間にそれぞれ光学的に接続され前記互いに異なる波長それぞれに対応する長さをもち前記複数の光がそれぞれマルチモードで導波される複数のマルチモード光導波路と、1つの光学素子と前記光合分波部との間に光学的に接続され前記互いに異なる波長に対応する長さをもち前記波長多重光がマルチモードで導波される1つのマルチモード光導波路と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光学技術に関し、特に、光の合波または分波を行う光合分波器および光合分波方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スポットサイズがサブミクロンオーダと小さくなる半導体光導波路と例えば光ファイバとの結合損失の低減のために、光導波路の断面形状を変化させることでスポットサイズの変換を行うスポットサイズ変換素子が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−249331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来のスポットサイズ変換素子においては、光基本導波モード以外の高次の導波モードが励起されるのを防ぐために、スポットサイズを緩やかに変換させ、光導波路の長さが長くなるので、例えば半導体基板上に集積化された光合分波器の光導波路との結合に適用しようとすると、光合分波器が小さいにもかかわらず、デバイス全体のサイズが大きくなってしまうという問題点があった。また、従来のスポットサイズ変換素子の入力側のスポットサイズがサブミクロンオーダと小さいので、光合分波器の光導波路とスポットサイズ変換素子の入力側との位置ずれに対する結合効率のトレランスも小さいという問題点もあった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、例えば集積化された小型の光合分波器において、従来のスポットサイズ変換素子のようにサイズが大きくなってしまうことなく、外部の光学素子との光学的な結合効率の向上を可能とし、位置ずれに対する結合効率のトレランスを改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る光合分波器は、互いに異なる波長をもつ複数の光が波長多重光に合波されるか又は波長多重光が互いに異なる波長をもつ複数の光に分波される光合分波部と、複数の光学素子と前記光合分波部との間にそれぞれ光学的に接続され前記互いに異なる波長それぞれに対応する長さをもち前記複数の光がそれぞれマルチモードで導波される複数のマルチモード光導波路と、1つの光学素子と前記光合分波部との間に光学的に接続され前記互いに異なる波長に対応する長さをもち前記波長多重光がマルチモードで導波される1つのマルチモード光導波路と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、光合分波器において、サイズが大きくなることなく、位置ずれに対する結合効率のトレランスを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1による光合分波器を示す構成図
【図2】この発明の実施の形態1による光合分波器を説明するための説明図
【図3】この発明の実施の形態1による光合分波器を説明するための説明図
【図4】この発明の実施の形態1による光合分波器を説明するための説明図
【図5】この発明の実施の形態2による光合分波器を示す構成図
【図6】この発明の実施の形態3による光合分波器を示す構成図
【図7】この発明の実施の形態4による光合分波器を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による光合分波器を示す構成図である。なお、各図において、同一符号は同一または相当部分を示す。図1において、この光合分波器は、同一の基板としての半導体基板1と、半導体基板1上に形成されたマルチモード光導波路101〜104と、マルチモード光導波路101〜104に接続しているスラブ光導波路11と、スラブ光導波路11の端面に形成された反射型グレーティング12と、スラブ光導波路11に接続され、反射型グレーティング12を介して入射マルチモード光導波路101〜104と光学的に結合しているマルチモード光導波路105とで構成されている。
【0010】
図1において、半導体基板1上には、マルチモード光導波路101〜104とそれぞれ光学的に結合しており、互いに異なる波長をもつ複数の光を出射する複数の光学素子としての発光素子21〜24が形成されている。また、マルチモード光導波路105から出射した光を集光するための光学レンズ31と、光学レンズ31によって集光された光が結合される1つの光学素子としてのシングルモード光ファイバ32とが設けられている。
【0011】
図1において、発光素子21〜24から出射した各光のスラブ光導波路11内での伝搬経路41〜44を概念的に示す。なお、実際には、スラブ導波路中の光は扇状に広がって伝搬し、グレーティングで反射すると、今度は扇状に収束しながら伝搬するのであるが、伝搬経路41〜44は、代表的な光路を抜き出して概念的に示したものである。
【0012】
また、半導体基板1は、例えば、Siを構成材料とする基板である。マルチモード光導波路101〜105およびスラブ光導波路11は、半導体基板1上に、図示しない3層構造として、Siを構成材料とする1層のコアと、このコアを上下に挟み、コアより屈折率が低いSiOを構成材料とする2層のクラッドを有するものであり、いわゆる、PLC(Planar Lightwave Circuit)として構成されている。
【0013】
マルチモード光導波路101〜105およびスラブ光導波路11においては、上述の3層構造により、層に垂直な方向では、コア厚が薄いことから0次導波モードで、すなわちシングルモードで光が伝播し、層に水平な方向では、コア幅が広いことから0次導波モードに加え高次導波モードで、すなわちマルチモードで光が伝播することになる。
【0014】
反射型グレーティング12は、図1における拡大図に示すように、スラブ光導波路11の凹面形状の側面に鋸歯形状の回折格子構造が形成されたものであり、この構造パラメータで規定される波長および反射角度で、スラブ光導波路11内を伝搬する光を回折により反射させるものである。なお、スラブ光導波路11と反射型グレーティング12とで光合分波部を構成する。
【0015】
また、発光素子21〜24は、例えば、InGaAsP/InP系化合物半導体混晶を構成材料とする半導体レーザ、すなわち、LD(Laser Diode)であり、波長1.295μm、1.300μm、1.305μm、1.310μmという1.3μm波長帯のレーザ光をそれぞれ発光して出力する。この各波長は、反射型グレーティング12の各反射波長に対応したものである。
【0016】
次に動作について説明する。図1において、発光素子21〜24から出射した各光は、マルチモード光導波路101〜104にそれぞれ入射する。マルチモード光導波路101〜104をマルチモードで導波された互いに異なる波長をもつ複数の光としての各光は、スラブ光導波路11に入射する。
【0017】
スラブ光導波路11に入射した各光が反射型グレーティング12にて反射するとき、反射型グレーティング12の構造パラメータを適切に設定することで、互いに異なる波長をもつ4つの光を伝搬経路41〜44経由で同位置に集光することが可能となる。この集光点にマルチモード光導波路105の端部を配置することにより、スラブ光導波路11内の伝搬経路41〜44からの光をマルチモード光導波路105に入射させる。マルチモード光導波路105をマルチモードで導波されて、その端面から出射した波長多重光は、光学レンズ31にて集光し、シングルモード光ファイバ32の端面に入射する。
【0018】
以上の動作原理で、実施の形態1による光合分波器は、複数の光学素子としての発光素子21〜24から入力した互いに異なる波長をもつ複数の光としての4つの光を合波し、この合波した波長多重光を1つの光学素子としてのシングルモード光ファイバ32に出力することができる。
【0019】
ここで、実施の形態1では、マルチモード光導波路m(ただし、m=101〜104)の長さzを、式(1)を満足するように設定する。
【0020】
【数1】

【0021】
ただし、式(1)において、kは、マルチモード光導波路m中をそれぞれ伝搬する光の真空中の波数であり、真空中の波長λを用いて2π/λと表される。nは、マルチモード光導波路mのコアの波数kにおける屈折率であり、Wは、全導波モードのエバネッセント成分まで含めた仮想的なコア幅の平均値であり、Nは自然数である。
【0022】
同様に、実施の形態1では、マルチモード光導波路105の長さz105を、式(2)を満足するように設定する。
【0023】
【数2】

【0024】
ただし、式(2)において、kaveは、発光素子21〜24からそれぞれ出射する光の真空中の波数kの平均値である。naveは、マルチモード光導波路105のコアの波数kaveにおける屈折率である。
【0025】
このとき、マルチモード光導波路101〜104の長さが式(1)を満足し、マルチモード光導波路105の長さが式(2)を満足することで、発光素子21〜24とマルチモード光導波路101〜104との位置ずれに起因する結合トレランス、すなわち、光学結合に対する発光素子と入射光導波路との間の許容位置ずれ量が改善されることになる。
【0026】
以下では、このように結合トレランスが改善される動作原理を説明する。マルチモード光導波路に入射した光の電磁界分布は、各次の導波モードに基底展開され、式(3)で表される。
【0027】
【数3】

【0028】
ただし、φ(x,y)はi次導波モードの電磁界分布、βはi次導波モードのz方向の伝搬定数、aはi次導波モードの振幅係数、θはi次導波モードの初期位相である。なお、z方向を光の伝搬方向、x方向を光導波路の断面方向とする。また、簡単のため、ここでは2次元系を仮定する。
【0029】
一方、伝搬方向の伝搬定数βと、光導波路の断面方向の波数kとの関係は、式(4)で表される。
【0030】
【数4】

【0031】
ただし、kは、マルチモード光導波路中を伝搬する光の真空中の波数であり、マルチモード光導波路101〜104ではk(m=101〜104)にそれぞれ対応し、マルチモード光導波路105ではkaveに対応する。nは、マルチモード光導波路のコア屈折率であり、マルチモード光導波路101〜104ではn(m=101〜104)にそれぞれ対応し、マルチモード光導波路105ではnaveに対応する。
【0032】
また、エバネッセント成分まで含めた実効的な光導波路の幅Wを用い、モード次数iのときの波数k=π(i+1)/Wなので、式(4)より、伝搬方向の伝搬定数βは式(5)で表される。なお、式(5)の上式から下式への変形にはテイラー展開を用い、高次の項を省略している。
【0033】
【数5】

【0034】
式(3)、式(5)より、距離Lだけマルチモード光導波路を伝搬したときの光の電磁界分布は、式(6)で表される。
【0035】
【数6】

【0036】
式(6)において、各モードの位相差が全て2πの整数倍になれば、全てのモードの位相関係が入射時と同じになり、入射光と同じ光の分布がマルチモード光導波路の中に出現する。そのときの長さLの条件は、式(7)で表される。
【0037】
【数7】

【0038】
ここで、i、Jは0以上の整数であり、Mは任意の整数である。式(7)は入射モードと同一のパターンが出現する条件であるが、単峰パターンとなれば問題ないことから、入射モードと対称なパターンが出現する条件であっても良い。このときの条件は、各モードの位相差が全て2π×Mになるのではなく、奇関数モード(iは偶数)と偶関数モード(iは奇数)同士の位相差は全て2π×Mとなり、奇関数モードと偶関数モードの位相差が全て2π×M+πとなるようにLを定めれば良く、式(8)で表される。
【0039】
【数8】

【0040】
このように、マルチモード光導波路の長さLが式(8)を満たすとき、マルチモード光導波路の出射端面では入射端面での光の分布が再現される。なお、Lをzとし、kをkとし、nをnとすれば、式(8)は式(1)となり、Lをz105とし、kをkaveとし、nをnaveとすれば、式(8)は式(2)となる。
【0041】
従って、マルチモード光導波路101〜104が式(1)を満足するとき、発光素子21〜24からの各出射光が単峰性である場合、マルチモード光導波路101〜104から出力されてスラブ光導波路11に入射する光も単峰性となる。発光素子21〜24とマルチモード光導波路101〜104とでそれぞれ位置ずれが生じている場合、マルチモード光導波路101〜104に対する入射光の偏芯もスラブ光導波路11への入射時に再現する。
【0042】
このとき、スラブ光導波路11への入射光が単峰性であれば、スラブ光導波路11からマルチモード光導波路105に対して出射する光も単峰性になる。これにより、マルチモード光導波路105には、発光素子21〜24から出射した各波長の単峰性の光が、発光素子21〜24とマルチモード光導波路101〜104との偏芯を保存したままで入射する。
【0043】
そして、マルチモード光導波路105が式(2)を満足するとき、マルチモード光導波路101〜104と同様に、出射位置で入射位置での光の分布が再現されるので、合波後の光に対しても同様の現象が生じるようになる。すなわち、マルチモード光導波路105からは、発光素子21〜24から出射した各波長の単峰性の光が、合波された波長多重光として、発光素子21〜24とマルチモード光導波路101〜104との偏芯を保存したままで出射される。
【0044】
通常、半導体基板上に形成されたシングルモード光導波路と発光素子とを直接的に光学結合させる場合、両者の位置ずれ量が約0.5μmになると結合効率が約−3dBとなる。一方、マルチモード光導波路を用いると、例えば光導波路幅が15μmのときには、両者の位置ずれが約10μmになってもほぼ無損失で発光素子の光がマルチモード光導波路に入射する。
【0045】
そして、本実施の形態1の場合、マルチモード光導波路105の出射位置で、マルチモード光導波路101〜104に入射する光の分布における単峰性と位置ずれを再現できる。マルチモード光導波路105から出射した光が光学レンズ31にて集光されてシングルモード光ファイバ32に入射するとき、このように単峰性が確保できていれば、約10μmの出射点位置ずれで結合効率は約−3dBとなる。これにより、発光素子21〜24と光導波路101〜104との間の許容位置ずれ量が約10μmであることと同義になり、結合トレランスが改善されるのである。
【0046】
次に計算例について説明する。図2〜4は、この発明の実施の形態1による光合分波器を説明するための説明図であり、マルチモード光導波路の長さが式(8)を満足するときに、入射光の分布が出射位置で再現する作用効果について計算例を示す図である。なお、各図において、同一符号は同一または相当部分を示す。この計算例において、マルチモード光導波路は、コア屈折率が1.466、クラッド屈折率が1.46、コア幅が46.5μmのPLC光導波路である。入射光は、波長が1.300μmであり、半値全幅FWHMが15.0μmのガウシアンである。
【0047】
図2に、伝搬シミュレーションによる導波光の電界分布を示す。なお、縦軸はx方向であり、横軸はz方向である。図2において、ガウシアンの入射位置が光導波路の中心位置に一致している場合(図中、「入射位置0μm」で示し、以下同様)と、中心位置から5μm、7.5μm、10μmずれた場合について計算を行った。ガウシアンの入射位置にかかわらず、L=9.68mmで入射光と対称のフィールドパターンが再現し、L=19.36mmで入射光と同じフィールドパターンが再現している。
【0048】
図3に、導波光のフィールドパターンと入射光のフィールドパターンとの重なり積分の伝搬距離依存性を示す。なお、縦軸は、その重なり積分であり、横軸は伝搬距離である。図3では、対称に再現した位置は明らかにはならないが、入射光と同じフィールドパターンが再現する位置は明確にピークとして示されており、いずれの入射位置でもL=19.36mmで重なりが最大の96%、すなわち、損失が最小の4%(=−0.18dB)となった。これは、この特定の位置で入射光の96%が再現していることを示す。
【0049】
図4に、上述の伝搬シミュレーションで計算した各次導波モードの有効屈折率と、それから算出できる伝搬定数をまとめる。図4において、全導波モードの有効屈折率の平均値から導出した実効光導波路幅をコア幅Wとして式(8)に代入すると、フィールドパターンが入射光と同一になる伝搬長Lは19.34mmとなり、上述の伝搬シミュレーションの結果とよく一致することがわかる。
【0050】
以上のように、この発明の実施の形態1による光合分波器においては、発光素子21〜24から入力した互いに異なる波長をもつ4つの光を、式(1)の長さのマルチモード光導波路101〜104によりそれぞれマルチモードで導波し、反射型グレーティング12が形成されたスラブ光導波路11により合波し、この合波した波長多重光を、式(2)の長さのマルチモード光導波路105によりマルチモードで導波し、光学レンズ31を介してシングルモード光ファイバ32に出力するように構成している。これにより、マルチモード光導波路101〜105を含めたサイズが大きくなることなく、発光素子21〜24との光学的な結合効率の向上を可能とし、これらの位置ずれに対する結合効率のトレランスを改善することができるという作用効果を奏する。
【0051】
実施の形態2.
上述のように、この発明の実施の形態1による光合分波器は、合波機能を実現するための構成において、反射型グレーティングが形成されたスラブ光導波路と発光素子との位置ずれに対する結合効率のトレランスが改善可能となるようにしたものであるが、この発明の実施の形態2による光合分波器は、実施の形態1の変形例であり、分波機能を実現するための構成において、反射型グレーティングが形成されたスラブ光導波路と受光素子との位置ずれに対する結合効率のトレランスが改善可能となるようにするものである。
【0052】
図5は、この発明の実施の形態2による光合分波器を示す構成図である。なお、各図において、同一符号は同一または相当部分を示す。図5において、発光素子21〜24に代え、複数の光学素子としての受光素子21a〜24aを配置するように構成した以外は、この発明の実施の形態1による光合分波器と同様の構成であり、説明を省略する。なお、伝搬経路41〜44は、受光素子21a〜24aに入射する各光のスラブ光導波路11内での伝搬経路を概念的に示すものとなる。また、マルチモード光導波路101〜104の長さが式(1)を満足し、マルチモード光導波路105の長さが式(2)を満足することは言うまでもない。
【0053】
また、受光素子21a〜24aは、例えば、InGaAs/InP系化合物半導体混晶を構成材料とするPD(Photo−Diode)であり、波長1.295μm、1.300μm、1.305μm、1.310μmという1.3μm波長帯のレーザ光をそれぞれ受光して電気信号に変換して出力する。この各波長は、反射型グレーティング12の各反射波長に対応したものである。
【0054】
次に動作について説明する。図5において、互いに異なる波長をもつ4つの光が多重化された波長多重光は、シングルモード光ファイバ32から出射し、光学レンズ31にて集光し、マルチモード光導波路105の端面に入射する。マルチモード光導波路105に入射した波長多重光は、マルチモード光導波路105をマルチモードで伝搬してスラブ光導波路11に入射する。
【0055】
ここで、スラブ光導波路11に入射した波長多重光が反射型グレーティング12にて反射するとき、反射型グレーティング12の構造パラメータを適切に設定することで、波長毎に反射型グレーティング12での反射角度をずらし、伝搬経路41〜44経由で、それぞれ異なるマルチモード光導波路101〜104に入射させ、波長分波機能を実現する。マルチモード光導波路101〜104をマルチモードでそれぞれ伝搬した互いに異なる波長をもつ4つの光は、受光素子21a〜24aにそれぞれ入射し、受光される。
【0056】
以上の動作原理で、実施の形態2による光合分波器は、1つの光学素子としてのシングルモード光ファイバ32から光学レンズ31経由で入力した波長多重光を分波し、この分波した互いに異なる波長をもつ複数の光としての4つの光を複数の光学素子としての受光素子21a〜24aにそれぞれ出力することができる。
【0057】
このとき、実施の形態1と同様に、マルチモード光導波路101〜104の長さが式(1)を満足し、マルチモード光導波路105の長さが式(2)を満足することで、受光素子21a〜24aとマルチモード光導波路101〜104との位置ずれに起因する結合トレランス、すなわち、光学結合に対する受光素子と出射光導波路との間の許容位置ずれ量が改善される。
【0058】
以上のように、この発明の実施の形態2による光合分波器においては、光学レンズ31を介してシングルモード光ファイバ32から入力した波長多重光を、式(2)の長さのマルチモード光導波路105によりマルチモードで導波し、反射型グレーティング12が形成されたスラブ光導波路11により分波し、この分波した互いに異なる波長をもつ4つの光を、式(1)の長さのマルチモード光導波路101〜104によりそれぞれマルチモードで導波し、受光素子21a〜24aに出力するように構成している。これにより、実施の形態1と同様に、マルチモード光導波路101〜105を含めたサイズが大きくなることなく、受光素子21a〜24aとの光学的な結合効率の向上を可能とし、位置ずれに対する結合効率のトレランスを改善することができるという作用効果を奏する。
【0059】
実施の形態3.
上述のように、この発明の実施の形態1による光合分波器は、合波機能を実現するための構成において、反射型グレーティングが形成されたスラブ光導波路と発光素子との位置ずれに対する結合効率のトレランスが改善可能となるようにしたものであるが、この発明の実施の形態3による光合分波器は、合波機能を実現するための構成において、AWG(Arrayed Waveguide Grating)と発光素子との位置ずれに対する結合効率のトレランスが改善可能となるようにするものである。
【0060】
図6は、この発明の実施の形態2による光合分波器を示す構成図である。なお、各図において、同一符号は同一または相当部分を示す。図6において、スラブ光導波路11、反射グレーティング12に代え、スラブ光導波路11a、スラブ光導波路11b、シングルモード光導波路アレイ12aを配置するように構成した以外は、この発明の実施の形態1による光合分波器と同様の構成であり、説明を省略する。スラブ光導波路11a、11bおよびシングルモード光導波路アレイ12aは、光合分波部としてのAWGを構成する。なお、伝搬経路41〜44は、発光素子21〜24から出射した各光のスラブ光導波路11a内での伝搬経路を概念的に示すものとなる。また、マルチモード光導波路101〜104の長さが式(1)を満足し、マルチモード光導波路105の長さが式(2)を満足することは言うまでもない。
【0061】
また、マルチモード光導波路101〜105、スラブ光導波路11a、11b、およびシングルモード光導波路アレイ12aは、半導体基板1上に、図示しない3層構造として、Siを構成材料とする1層のコアと、このコアを上下に挟み、屈折率がコアより低いSiOを構成材料とする2層のクラッドを有するものであり、いわゆる、PLCとして構成されている。シングルモード光導波路アレイ12aは、0次導波モード、すなわちシングルモードのみが伝播可能な薄いコア厚と狭いコア幅をもつ複数の光導波路がアレイ状に並列配置されたものである。
【0062】
スラブ光導波路11a、11bにおいては、上述の3層構造により、層に垂直な方向では、コア厚が薄いことから0次導波モードで、すなわちシングルモードで光が伝播し、層に水平な方向では、コア幅が広いことから0次導波モードに加え高次導波モードで、すなわちマルチモードで光が伝播することになる。
【0063】
次に動作について説明する。図6において、発光素子21〜24から出射した各光は、マルチモード光導波路101〜104にそれぞれ入射する。マルチモード光導波路101〜104をマルチモードで導波された互いに異なる波長をもつ複数の光としての4つの光は、スラブ光導波路11aに入射する。
【0064】
スラブ光導波路11aに入射した4つの光は、スラブ光導波路11aではそれぞれ拡散しながら伝搬し、シングルモード光導波路アレイ12aとの接続位置に到達する。このとき、伝搬経路41〜44でスラブ光導波路11aへの入射点が異なるため、それぞれの光でシングルモード光導波路アレイ12aの初期位相の関係が異なる。
【0065】
ここで、シングルモード光導波路アレイ12aの複数の光導波路の長さをそれぞれ適切に設定し、スラブ光導波路12bに入射する光の位相関係を全ての光で同一に揃えることで、全ての光をマルチモード光導波路105に結合させることができる。マルチモード光導波路105をマルチモードで伝搬して、その端面から出射した波長多重光は、光学レンズ31にて集光し、出射シングルモード光ファイバ32の端面に入射する。
【0066】
以上の動作原理で、実施の形態3による光合分波器は、複数の光学素子としての発光素子21〜24から入力した互いに異なる波長をもつ複数の光としての4つの光を合波し、この合波した波長多重光を1つの光学素子としてシングルモード光ファイバ32に出力することができる。
【0067】
このとき、実施の形態1と同様に、マルチモード光導波路101〜104の長さが式(1)を満足し、マルチモード光導波路105の長さが式(2)を満足することで、発光素子21〜24とマルチモード光導波路101〜104との位置ずれに起因する結合トレランス、すなわち、光学結合に対する発光素子と入射光導波路との間の許容位置ずれ量が改善される。
【0068】
以上のように、この発明の実施の形態3による光合分波器においては、発光素子21〜24から入力した互いに異なる波長をもつ4つの光を、式(1)の長さのマルチモード光導波路101〜104によりマルチモードで導波し、AWGにより合波し、この合波した波長多重光を、式(2)の長さのマルチモード光導波路105によりマルチモードで導波し、光学レンズ31を介してシングルモード光ファイバ32に出力するように構成している。これにより、実施の形態1と同様に、マルチモード光導波路101〜105を含めたサイズが大きくなることなく、発光素子21〜24との光学的な結合効率の向上を可能とし、これらの位置ずれに対する結合効率のトレランスを改善することができるという作用効果を奏する。
【0069】
実施の形態4.
上述のように、この発明の実施の形態3による光合分波器は、合波機能を実現するための構成において、AWGと発光素子との位置ずれに対する結合効率のトレランスが改善可能となるようにしたものであるが、この発明の実施の形態4による光合分波器は、実施の形態3の変形例であり、分波機能を実現するための構成において、AWGと受光素子との位置ずれに対する結合効率のトレランスが改善可能となるようにするものである。
【0070】
図7は、この発明の実施の形態4による光合分波器を示す構成図である。なお、各図において、同一符号は同一または相当部分を示す。図7において、発光素子21〜24に代え、実施の形態2と同様の受光素子21a〜24aを配置するように構成した以外は、この発明の実施の形態3による光合分波器と同様の構成であり、説明を省略する。なお、伝搬経路41〜44は、受光素子21a〜24aに入射する各光のスラブ光導波路11内での伝搬経路を概念的に示すものとなる。また、マルチモード光導波路101〜104の長さが式(1)を満足し、マルチモード光導波路105の長さが式(2)を満足することは言うまでもない。
【0071】
次に動作について説明する。図7において、互いに異なる波長をもつ4つの光が多重化された波長多重光は、シングルモード光ファイバ32から出射し、光学レンズ31にて集光し、マルチモード光導波路105の端面に入射する。そして、実施の形態3と同様の動作により、実施の形態4による光合分波器は、1つの光学素子としてのシングルモード光ファイバ32から光学レンズ31経由で入力した波長多重光をAWGにより分波し、この分波した互いに異なる波長をもつ複数の光としての4つの光を複数の光学素子としての受光素子21a〜24aにそれぞれ出力することができる。
【0072】
このとき、実施の形態1と同様に、マルチモード光導波路101〜104の長さが式(1)を満足し、マルチモード光導波路105の長さが式(2)を満足することで、受光素子21a〜24aとマルチモード光導波路101〜104との位置ずれに起因する結合トレランス、すなわち、光学結合に対する受光素子と出射光導波路との間の許容位置ずれ量が改善される。
【0073】
以上のように、この発明の実施の形態4による光合分波器においては、光学レンズ31を介してシングルモード光ファイバ32から入力した波長多重光を、式(2)の長さのマルチモード光導波路105によりマルチモードで導波し、AWGにより分波し、この分波した互いに異なる波長をもつ4つの光を、式(1)の長さのマルチモード光導波路101〜104によりそれぞれマルチモードで導波し、受光素子21a〜24aに出力するように構成している。これにより、実施の形態3と同様に、マルチモード光導波路101〜105を含めたサイズが大きくなることなく、受光素子21a〜24aとの光学的な結合効率の向上を可能とし、位置ずれに対する結合効率のトレランスを改善することができるという作用効果を奏する。
【0074】
なお、実施の形態1〜4において、上述のような数値、形状、素材、位置関係等に構成が限られるものではない。例えば、互いに異なる波長の数、複数の光学素子の数、入力側の複数のマルチモード光導波路の数を4つとした例を示したが、2つや3つでも良いし、4つ以上であっても良い。また、複数の光学素子、マルチモード光導波路、光合分波部は、半導体基板1上に配置することで、位置調整等で製造が容易となり好適であるが、これに限られるものではなく、別々に固定するようにしても良い。
【0075】
また、上述の実施の形態1〜4において、式(2)で波長多重光の波数の平均値kaveを用いているので、結合トレランスの改善効果を高めることができ、好適であるものの、これに限られるものではなく、例えば、波長多重光の波数の範囲の中央値や、波長多重光の波数の代表値など、波長多重光の波数に対応した値を用いるようにしても良く、同様の作用効果を奏する。
【0076】
また、上述の実施の形態1〜4において、マルチモード光導波路101〜105は、Si/SiOを構成材料とするPLCとして構成したものを示したが、これに限られるものではなく、例えば、SiN、SiON、GaAs系化合物半導体混晶、InP系化合物半導体混晶、LiNbO結晶またはポリイミドなど、半導体材料、誘電体材料もしくはポリマー材料を構成材料に用いるようにしても良く、また、コア屈折率1.466、クラッド屈折率1.46、コア幅46.5μmの数値は、これに限られるものではない。
【0077】
また、スラブ光導波路11、反射型グレーティング12は、Si/SiOを構成材料とするPLCとして構成したものを示したが、これに限られるものではなく、例えば、SiN、SiON、GaAs系化合物半導体混晶、InP系化合物半導体混晶、LiNbO結晶またはポリイミドなど、半導体材料、誘電体材料もしくはポリマー材料を構成材料に用いるようにしても良く、また、要するに、スポットサイズが小さいことから、その位置ずれに対する結合効率のトレランスが小さいような光合分波部であれば、どのようなものでも、実施の形態1、2として適用可能である。
【0078】
また、スラブ光導波路11a、11b、シングルモード光導波路アレイ12aは、Si/SiOを構成材料とするPLCとして構成したものを示したが、これに限られるものではなく、例えば、SiN、SiON、GaAs系化合物半導体混晶、InP系化合物半導体混晶、LiNbO結晶またはポリイミドなど、半導体材料、誘電体材料もしくはポリマー材料を構成材料に用いるようにしても良く、また、要するに、スポットサイズが小さいことから、その位置ずれに対する結合効率のトレランスが小さいような光合分波部であれば、どのようなものでも、実施の形態3、4として適用可能である。
【0079】
また、発光素子21〜24は、上述の構成に限られるものではなく、例えば1.5μm波長帯や、固体レーザ等を用いるようにしても良く、要するに、光合分波部の合分波波長において、所望の光通信等の光システムを実現するための光を発光するものを、実施の形態1、3として適用可能である。
【0080】
また、受光素子21a〜24aは、上述の構成に限られるものではなく、例えば1.5μm波長帯、0.8μm波長帯でも良く、Ge半導体結晶、Si半導体結晶等を用いるようにしても良く、要するに、光合分波部の合分波波長において、所望の光通信等の光システムを実現するための光を受光するものを、実施の形態2、4として適用可能である。
【0081】
また、上述の実施の形態1〜4において、発光素子21〜24や受光素子21a〜24aといった光学素子は、個別素子に限られるものではなく、例えば同一の基板としての1つの半導体基板上に集積されたような形態であっても良い。この場合、全ての光学素子で、マルチモード光導波路101〜104との位置ずれが等しくなるので、マルチモード光導波路105での光の偏芯量を揃えることができるという作用効果を奏する。特に、発光素子21〜24が同一基板上に等間隔に形成されることで、マルチモード光導波路101〜104と、発光素子21〜24から出射した各光の偏芯量が全て一致するため、マルチモード光導波路105で現れる単峰の位置が全て一致し、光学レンズ31にて集光した波長多重光が高効率にシングルモード光ファイバ32に結合できるという効果がある。なお、複数の光学素子が形成された半導体基板を半導体基板1上に配置するようにすれば、位置調整等で製造が容易となり好適であるが、これに限られるものではなく、複数の光学素子が形成された半導体基板と、光合分波部およびマルチモード光導波路が形成された半導体基板1とを別々に固定するようにしても良い。
【0082】
また、上述の実施の形態1〜4において、マルチモード光導波路101〜104に光を入出力する光学素子は、発光素子や受光素子に限られるものではなく、例えば光ファイバのようなものであっても良く、光学レンズとシングルモード光ファイバの組み合わせ、シングルモード光ファイバ単体、マルチモード光ファイバ単体であっても良い。この場合、構成要素を全て受動素子にできるので、光合分波器を簡易に使用することができるという作用効果を奏する。
【0083】
また、上述の実施の形態1〜4において、マルチモード光導波路105と光学的に結合している光学素子は、光学レンズ31とシングルモード光ファイバ32の組み合わせに限られるものではなく、マルチモード光導波路105からシングルモード光ファイバ32に直接的に光を出射しても良いし、シングルモード光ファイバでなくマルチモード光ファイバ単体であっても良い。光ファイバに直接的に出射することで、部材点数を削減し、製造が容易になるという効果がある。特に、マルチモード光ファイバを用いる場合、位置ずれに対する結合効率のトレランスが広くなるため、さらに製造が容易になるという作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0084】
1 半導体基板
11、11a、11b スラブ光導波路
12 反射型グレーティング
12a シングルモード光導波路アレイ
21〜24 発光素子
21a〜24a 受光素子
31 光学レンズ
32 シングルモード光ファイバ
101〜105 マルチモード光導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる波長をもつ複数の光が波長多重光に合波されるか又は波長多重光が互いに異なる波長をもつ複数の光に分波される光合分波部と、
複数の光学素子と前記光合分波部との間にそれぞれ光学的に接続され前記互いに異なる波長それぞれに対応する長さをもち前記複数の光がそれぞれマルチモードで導波される複数のマルチモード光導波路と、
1つの光学素子と前記光合分波部との間に光学的に接続され前記互いに異なる波長に対応する長さをもち前記波長多重光がマルチモードで導波される1つのマルチモード光導波路と、
を備えたことを特徴とする光合分波器。
【請求項2】
前記1つのマルチモード光導波路は、前記互いに異なる波長に対する波数の平均値に対応する長さをもつことを特徴とする請求項1に記載の光合分波器。
【請求項3】
Lを前記互いに異なる波長それぞれに対応する長さ又は前記互いに異なる波長に対応する長さとし、kを波数とし、nを屈折率とし、Wをコア幅とし、Nを自然数とするとき、
L = (2k/π)×N
であることを特徴とする請求項1に記載の光合分波器。
【請求項4】
前記光合分波部は、
前記複数のマルチモード光導波路と前記1つのマルチモード光導波路との間に光学的に接続されたスラブ光導波路と、
前記スラブ光導波路の側面に形成され、互いに異なる波長をもつ複数の光が波長多重光として回折により反射されるか又は波長多重光が互いに異なる波長をもつ複数の光として回折により反射される反射型グレーティングと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の光合分波器。
【請求項5】
前記光合分波部は、AWG(Arrayed Waveguide Grating)であることを特徴とする請求項1に記載の光合分波器。
【請求項6】
前記光合分波部、前記複数のマルチモード光導波路および前記1つのマルチモード光導波路は、同一の基板に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光合分波器。
【請求項7】
前記複数の光学素子は、発光素子または受光素子であり、前記1つの光学素子は、光ファイバであることを特徴とする請求項1に記載の光合分波器。
【請求項8】
前記複数の光学素子は、同一の基板に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の光合分波器。
【請求項9】
前記複数の光学素子および前記1つの光学素子は、光ファイバであることを特徴とする請求項1に記載の光合分波器。
【請求項10】
互いに異なる波長をもつ複数の光が波長多重光に合波されるか又は波長多重光が互いに異なる波長をもつ複数の光に分波される光合分波ステップと、
前記光合分波ステップで合波される互いに異なる波長をもつ複数の光がこの互いに異なる波長それぞれに対応する長さをマルチモードで導波されるか又は前記光合分波ステップで分波された互いに異なる波長をもつ複数の光がこの互いに異なる波長それぞれに対応する長さをマルチモードで導波される複数のマルチモード光導波ステップと、
前記光合分波ステップで互いに異なる波長をもつ複数の光から合波された波長多重光がこの互いに異なる波長に対応する長さをマルチモードで導波されるか又は前記光合分波ステップで互いに異なる波長をもつ複数の光に分波される波長多重光がこの互いに異なる波長に対応する長さをマルチモードで導波される1つのマルチモード光導波ステップと、
を備えたことを特徴とする光合分波方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−242654(P2012−242654A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113561(P2011−113561)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】