説明

光基板及び該光基板の製造方法、並びに該光基板を備える光部品及び電子機器

【課題】受発光素子と光導波路が高精度に実装されて光接続損失が小さく、かつ信頼性を低下させずに薄膜化できる光基板、及び該光基板を容易に製造する方法。また、前記光基板を備えた光部品及び電子機器。
【解決手段】絶縁樹脂層2を有し、該絶縁樹脂層2には、第1面にパターニングされた電気配線3と、第2面に設置された光入出力面51を有する光導波路5と、受発光面41を有する受発光素子4とが少なくとも備えられた光基板であって、絶縁樹脂層2には空孔が形成されており、受発光素子4は、受発光面41が絶縁樹脂層2の第2面2bと同一平面となるように空孔に設置されており、光導波路5は、光入出力面51と受発光素子4の受発光面41とが少なくとも一部で接触するように設置されていることを特徴とする光基板1、及び該光基板1の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光基板及び該光基板の製造方法、並びに該光基板を備える光部品及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートパソコンや携帯電話等の電子機器等では、高速の情報伝達が可能な光信号を利用した光基板が広く用いられている。光基板は、基板に設けられた受発光素子や光導波路等の接続部品を用いた光接続を利用して光信号を送受信する。このような光接続においては、接続部品から出力された光信号が拡散することによる光接続損失を抑えるために、これらの接続部品同士をできるだけ近い間隔で設置する必要がある。また、接続部品の設置位置がずれていると光信号が漏洩損失するため、正確な位置合わせが必要である。
また、通常、光信号が伝播する光導波路は基板平面に沿って設置され、受発光素子は基板に対して垂直方向に設置されるため、光導波路と受発光素子との間で光信号を入出力するには、光信号路を概略90°変換する必要がある。
【0003】
このような光基板の製造方法としては、特許文献1に、端面に光信号路を概略90°変換するミラーを設けた光導波路を有する配線板に、受発光素子を実装したサブマウント基板をセルフアライメント実装する方法が示されている。
しかし、特許文献1の製造方法では、光導波路の実装、受発光素子の実装、セルフアライメント実装の各過程の全てを高精度に行うことが困難であり、歩留まりが低下してしまう。
【0004】
また、特許文献2には、樹脂に予め開口部を設けておき、該樹脂よりも厚みの大きい受発光素子を前記開口部に挿入して設置した後、樹脂から突出した受発光素子に合わせてフォトリソグラフィーにより光導波路を形成する光基板の製造方法が示されている。
しかし、特許文献2の製造方法では、光導波路を形成する材料中に受発光素子が埋め込まれた状態となるため、光導波路を形成する材料部分における応力への耐性が低くなり、クラック等が生じるおそれがある。
そのため、受発光素子や光導波路等の接続部品の高精度な実装が容易に行え、薄膜化してもクラック等が生じるおそれの少ない信頼性の高い光基板が望まれている。
【特許文献1】特開2006−234850号公報
【特許文献2】特開2006−178121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、受発光素子と光導波路が高精度に実装されることにより光接続損失が小さく、かつ信頼性を低下させずに薄膜化できる光基板、及び該光基板を容易に製造する方法を目的とする。また、前記光基板を備えた光部品及び電子機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光基板は、絶縁樹脂層を有し、該絶縁樹脂層には、第1面にパターニングされた電気配線と、第2面に設置された光入出力面を有する光導波路と、受発光面を有する受発光素子とが少なくとも備えられた光基板であって、前記絶縁樹脂層には空孔が形成されており、前記受発光素子は、受発光面が前記絶縁樹脂層の第2面と同一平面となるように前記空孔に設置されており、前記光導波路は、光入出力面と前記受発光素子の受発光面とが少なくとも一部で接触するように設置されていることを特徴とする。
また、本発明の光基板は、前記絶縁樹脂層が感光性絶縁樹脂からなり、前記空孔がフォトリソグラフィーにより形成されていることが好ましい。
【0007】
本発明の光基板の製造方法は、絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の第1面に形成された金属膜とを有する絶縁樹脂基板について、前記絶縁樹脂層に空孔を形成してパターニングする絶縁樹脂層形成工程と、キャリアフィルム上に、前記パターニングされた絶縁樹脂層の第2面を貼り合わせる絶縁樹脂基板設置工程と、前記キャリアフィルム上で、前記金属膜をパターニングして電気配線を形成する電気配線形成工程と、前記キャリアフィルム上で、受発光素子の受発光面と前記絶縁樹脂層の第2面とが同一平面となるように、前記絶縁樹脂層に形成された空孔に受発光素子を設置する受発光素子設置工程と、前記受発光素子を前記電気配線に接続する受発光素子接続工程と、前記キャリアフィルムを前記絶縁樹脂層から取り外すキャリアフィルム除去工程と、前記受発光素子を設置した絶縁樹脂層の第2面に、前記受発光素子の受発光面と光入出力面とが少なくとも一部で接触するように光導波路を設置する光導波路設置工程とを含む方法である。
また、本発明の光基板の製造方法は、前記受発光素子接続工程の後に、前記絶縁樹脂層に設置された受発光素子を絶縁樹脂層の第1面側からモールド樹脂により封止する受発光素子封止工程を含むことが好ましい。
また、前記キャリアフィルム除去工程の後に、前記受発光素子の受発光面と、前記光導波路の光入出力面との間隙に透明樹脂を充填する透明樹脂充填工程を含むことが好ましい。
また、前記光導波路設置工程後に、絶縁樹脂層の第2面に設置された光導波路に合わせて光ファイバを設置する光ファイバ設置工程を含むことが好ましい。
【0008】
また、本発明の光部品は、前記いずれかの光基板を備えた部品である。
また、本発明の電子機器は、前記いずれかの光基板を備えた機器である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光基板は、受発光素子と光導波路が高精度に実装されており、光接続損失が小さい。また、薄膜化してもクラック等が生じるおそれが小さく、信頼性が高い。
また、本発明の製造方法によれば、受発光素子と光導波路とが高精度に実装され、光接続損失が小さい光基板を容易に製造できる。また、さらに信頼性を保ったまま薄膜化した光基板を製造できる。
また、本発明によれば、前記光基板を備えた光部品及び電子機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[光基板]
以下、本発明の光基板の一実施形態例について、図1に基づいて詳細に説明する。
本発明の光基板1は、図1に示すように、絶縁樹脂層2と、該絶縁樹脂層2に設けられた電気配線3、受発光素子4、及び光導波路5とを備えている。また、絶縁樹脂層2には空孔21(図5参照)が形成されており、電気配線3は絶縁樹脂層2の第1面2a(以下、面2aという)にパターニングされており、受発光素子4は絶縁樹脂層2の空孔21に設置されており、光導波路5は絶縁樹脂層2の第2面2b(以下、面2bという)に設置されている。
【0011】
絶縁樹脂層2の材料としては、任意の有機材料及び無機材料を使用することができ、例えば、エポキシ材料、アクリル材料、シリコーン材料、シリコンウェハ、金属材料、硝子材料、プリプレグ、積層板材料等が挙げられる。
また、絶縁樹脂層2は、高精度にパターニングできる点から、感光性絶縁樹脂からなることが好ましい。感光性絶縁樹脂としては、例えば、感光性ポリイミド樹脂、感光性アクリル樹脂、感光性エポキシ樹脂、又はこれらを重合させた感光性エポキシアクリレート樹脂等が挙げられる。
【0012】
絶縁樹脂層2には、受発光素子4を設置する空孔21が形成される。空孔21は、面2aから面2bまで貫通している。
空孔21の位置、形状、及び大きさは、特に限定されず、光基板1に設置する受発光素子4の位置、形状、及び大きさに合わせて形成すればよい。
絶縁樹脂層2が感光性絶縁樹脂からなる場合には、空孔21はフォトリソグラフィーにより形成されることが好ましい。
【0013】
電気配線3は、絶縁樹脂層2の面2aに銅箔等の金属膜が成膜され、それがパターニングされることにより形成される。電気配線3のパターニング形状は、特に限定されず、光基板の用途に沿った形状とすればよい。
電気配線3は、単層であってもよく、電気配線上にさらに別の絶縁樹脂と電気配線からなる層を形成して複数の電気配線層が積層されている形状としてもよい。
【0014】
受発光素子4は、光基板に通常用いられる素子が使用でき、特に限定されない。本実施形態例の受発光素子4は、図1に示すように、受発光面41と配線接続部42とを有している。受発光素子4は、単チャンネルもしくは複数チャンネルの光素子を用いることができ、具体的には、端面発光型LD、面発光型LD、面受光型PD等が挙げられる。
【0015】
受発光素子4は、受発光面41が絶縁樹脂層2の面2bと同一平面を形成するように揃えられて空孔21に設置され、絶縁樹脂層2の面2bに設置された光導波路5の光入出力面51との間で光信号の伝達を行う。
また、受発光素子4の高さは、空孔21への設置が容易になる点、下記に示すモールド樹脂での封止による信頼性が高まる点等から、絶縁樹脂層2の厚さよりも大きいことが好ましい。
【0016】
本実施形態例では、受発光素子4の配線接続部42と電気配線3とがワイヤボンディング31により接続されている。
また、本実施形態例の光基板1では、電気配線3上に、受発光素子4における受発光を制御するコントロールチップ43が設けられている。絶縁樹脂層2の面2a側に設置する実装部品はこれらに限定されず、光信号路変換部品等の他の実装部品を設置してもよい。
【0017】
光導波路5は、受発光素子4の位置に合わせ、受発光面41と光入出力面51とが少なくとも一部で接触するように設置される。
光導波路5は、一般的な光配線を用いることができる。光導波路5の材質としては、例えば、カーボネート系、エポキシ系、アクリル系、イミド系、ウレタン系、ノルボルネン系等の高分子材料、及び石英等の無機材料を用いることができる。伝送モードとしては、例えば、シングルモード、マルチモード、シングルマルチ混合配線等が挙げられる。
【0018】
また、光導波路5は、光入出力面51と受発光素子4の受発光面41との間で光信号を伝達するため、光導波路端面52に光信号路を概略90°変換する光信号路変換部品を有している。
光信号変換部品としては、例えば、ミラー、グレーティング、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等の構造を用いることができる。また、材質としては、例えば、ポリマー材料、金属材料等が挙げられ、光導波路端面52への金属蒸着、誘電体多層膜蒸着等により形成するものが挙げられる。
【0019】
光導波路5には、光ファイバ53が接続される。光ファイバ53は、一般的に用いられる光ファイバを用いることができ、例えば、石英系光ファイバ、ポリマー光ファイバ等が挙げられる。また、光ファイバ53の厚さは、光ファイバ53と光導波路5との間における光接続損失を小さくしやすい点から、光導波路5の厚さと同じであることが好ましい。
【0020】
また、光基板1においては、必要に応じて、受発光素子4の受発光面41と、光導波路5の光入出力面51との間に透明樹脂を充填してもよい。これにより、受発光素子4と光導波路5との間に隙間ができる場合等にその間隙を埋めることができる。
透明樹脂としては、光基板に通常用いられる高分子材料を用いることができ、例えば、カーボネート材料、エポキシ材料、アクリル材料、イミド材料、ウレタン材料、シリコーン材料、無機フィラー混入有機材料等が挙げられる。また、透明樹脂の屈折率は、その界面における屈折率差をなくして損失を最小限にする点から、光導波路5の屈折率と同等であることが好ましい。
【0021】
また、光基板1の絶縁樹脂層2の面2a側に形成された電気配線3、ワイヤボンディング31、受発光素子4、コントロールチップ43等の実装部品は、モールド樹脂6により封止されている。これにより、光基板1の環境信頼性を高めることができる。
【0022】
尚、本発明の光基板は、図1に例示したものには限定されない。例えば、受発光素子、光導波路等の実装部品の数は光基板の用途により決定すればよく、また、その他の実装部品が設置されていてもよい。また、モールド樹脂6による封止が行われていなくてもよい。また、必要があれば、絶縁樹脂層2の面2b側に光導波路5以外の実装部品が設置されてもよい。
【0023】
[製造方法]
本発明の光基板の製造方法は、空孔21を形成する絶縁樹脂層形成工程(1)と、キャリアフィルム7と絶縁樹脂層2を貼り合わせる絶縁樹脂基板設置工程(2)と、電気配線3を形成する電気配線形成工程(3)と、受発光素子4を設置する受発光素子設置工程(4)と、受発光素子4を電気配線3に接続する受発光素子接続工程(5)と、キャリアフィルム7を取り外すキャリアフィルム除去工程(6)と、光導波路5を設置する光導波路設置工程(7)とを含む方法である。
以下、本発明の光基板の製造方法の一実施形態例として、光基板1の製造について図1〜9に基づいて詳細に説明する。
【0024】
まず、図2に示すように、絶縁樹脂層20と、該絶縁樹脂層20の面20a(第1面)に形成された銅箔等の金属膜30とを有する絶縁樹脂基板を用意する。
そして、絶縁樹脂層形成工程(1)において、図3に示すように、前記絶縁樹脂基板について、絶縁樹脂層20のうち受発光素子4を設置する部分を除去し、空孔21を形成してパターニングした絶縁樹脂層2を得る。また、バイアホールを有する光基板を製造する場合には、この工程においてバイアホールを同時に形成しておけばよい。これらのパターニングはドリル等によって行ってもよく、絶縁樹脂層20が感光性絶縁樹脂からなる場合は、高精度にパターニングできる点からフォトリソグラフィーにより行うことが好ましい。
【0025】
絶縁樹脂基板設置工程(2)では、図4に示すように、空孔21を設けた絶縁樹脂層2の面2b(第2面)側がキャリアフィルム7側となるようにして、絶縁樹脂層2とキャリアフィルム7とを貼り合わせる。この絶縁樹脂層2とキャリアフィルム7とを貼り合わせる方法は特に限定されず、絶縁樹脂層2をキャリアフィルム7上にラミネートする方法等が挙げられる。
【0026】
キャリアフィルム7は、光基板の製造に一般的に用いられている高分子材料を用いることができ、例えば、カーボネート材料、エポキシ材料、アクリル材料、イミド材料、ウレタン材料、シリコーン材料、無機フィラー混入有機材料等が使用できる。また、キャリアフィルム7の絶縁樹脂層2と貼り合わせる面には、キャリアフィルム除去工程(6)においてキャリアフィルム7を絶縁樹脂層2から容易に取り外すことができるように紫外線剥離型の粘着層を設けてもよい。
【0027】
電気配線形成工程(3)では、キャリアフィルム7上で、金属膜30をパターニングすることにより、図5に示すように、絶縁樹脂層2の面2a上に電気配線3として配線パターンや実装用パッドを形成する。金属膜30のパターニング方法は、従来公知の方法を用いればよく、例えば、金属膜30上にレジストパターンを形成した後に、エッチングする方法等が挙げられる。
電気配線形成工程(3)においては、必要に応じて、電気配線3の汚れを防止するためにソルダーレジスト形成を行ってもよく、また、接続信頼性を向上させるためにNi/Auメッキを行ってもよい。
【0028】
受発光素子設置工程(4)では、図6に示すように、絶縁樹脂層2に設けられた空孔21に受発光素子4を設置する。具体的には、受発光素子4の受発光面41をキャリアフィルム7側に向け、受発光面41がキャリアフィルム7に接触するまで受発光素子4を面2a側から空孔21に挿入する。
【0029】
空孔21を受発光素子4の形状に合わせて形成しておくことにより、絶縁樹脂2の面方向の位置を高精度に制御できる。
そして、キャリアフィルム7に接触するまで受発光素子4を空孔21に挿入することにより、容易に受発光素子4の受発光面41と絶縁樹脂層2の面2bとが同一平面となるように高精度に揃えることができる。
【0030】
また、受発光素子4を制御するコントロールチップ43や、例えば光信号路変換部品等の他の実装部品を絶縁樹脂層2の面2a上に実装する。
【0031】
受発光素子接続工程(5)では、電気配線3と受発光素子4の配線接続部42とを接続する。本実施形態例では、図7に示すように、ワイヤボンディング31により接続を行っている。また、必要に応じて、ワイヤボンディング等の方法によりコントロールチップ43と基板(電気配線3等)との接続を行う。
受発光素子4の実装は、ワイヤボンディング、バンプ実装等の方法により行うことができる。また、コントロールチップ43の実装は、ワイヤボンディング、フリップチップ実装等の方法を用いることができる。
【0032】
絶縁樹脂層2の面2a側にある受発光素子4、コントロールチップ43、ワイヤボンディング31等の実装部品は、受発光素子封止工程において、図8に示すようにモールド樹脂6により封止することが好ましい。モールド樹脂6による封止は、従来公知の方法を用いることができる。
【0033】
キャリアフィルム除去工程(6)では、図9に示すように、絶縁樹脂層2の面2bからキャリアフィルム7を剥離して取り外す。
【0034】
光導波路設置工程(7)では、絶縁樹脂層2の面2bに受発光素子4の位置に合わせて光導波路5を設置する。より詳しくは、絶縁樹脂層2の面2bと同一平面に揃えられた受発光素子4の受発光面41と、光導波路5の光入出力面51とが少なくとも一部で接触するように光導波路5を設置する。
光導波路設置工程(7)において光導波路5を設置する際には、必要に応じて、受発光素子4の受発光面41と光導波路5の光入出力面51とを光学接着剤を介して接続してもよい。
【0035】
また、光導波路設置工程(7)において、受発光素子4の受発光面41と光導波路5の光入出力面51との間に、一部間隙が形成される場合等は、その受発光面41と光入出力面51との間隙に透明樹脂を充填する透明樹脂充填工程を行うことが好ましい。
【0036】
また、光ファイバ設置工程において、絶縁樹脂層2の面2bに設置された光導波路5に合わせて光ファイバ53を設置する。これにより、図1に示すような、光基板1が得られる。
【0037】
本発明の製造方法においては、キャリアフィルム7上で空孔21に受発光素子4を設置することにより、絶縁樹脂層2の面2bと受発光素子4の受発光面41とが同一平面となるように、これらの面を容易に揃えることができる。そのため、前記面2bと受発光面41からなる面に高精度にコネクタ等を設置することができる。コネクタの具体例としては、例えば、LGA(Land Grid Array)、PGA(Pin Grid Array)、小型電気コネクタ等が挙げられる。
【0038】
尚、本発明の製造方法は、本実施形態例で説明した方法には限定されない。例えば、必要がない場合にはモールド樹脂6により受発光素子封止工程を行わなくてもよく、透明樹脂層充填工程を行わなくてもよい。
また、本発明の光基板の製造方法における各工程の順序も、本実施形態例で説明した順序には限定されない。例えば、モールド樹脂6による受発光素子封止工程は、受発光素子接続工程(5)の後であればよく、この工程を光導波路設置工程(7)の後に行ってもよい。また、この場合には、封止前に予め受発光素子4と光導波路5との間隙への透明樹脂充填工程を行えば、受発光素子4と光導波路5との界面にモールド樹脂6が混入することを防ぐこともできる。透明樹脂充填工程もキャリアフィルム除去工程(6)の後であれば、光導波路設置工程(7)の前であっても後であってもよく、光ファイバ設置工程(8)の後であってもよい。
また、光ファイバ設置工程は、光導波路設置工程(7)の精度を低下させなければ、光導波路設置工程(7)の前であってもよい。
【0039】
[光部品及び電子機器]
以下、本発明の光部品及び電子機器について図10及び11に基づいて詳細に説明する。本発明の光部品及び電子機器は、前記光基板を備えている。
光基板を搭載した電子機器の一例として、図10に示すような、携帯電話80について説明する。図10に示すように、携帯電話80は、操作面81aを有する第一の筐体81と、表示面82aを有する第二の筐体82とを備え、ヒンジ部83によって連結されている。第一の筐体81の内部には、LSI84が内蔵されている。また、第二の筐体82には、メイン液晶パネル85、サブ液晶パネル86、及び、デジタルカメラ87等が内蔵されている。
【0040】
第一の筐体81と第二の筐体82とは、ヒンジ部83によって、操作面81a及び表示面82aを視認可能に開いた状態から、操作面81aと表示面82aとが対向して閉じた状態まで回動可能となっている。ヒンジ部83は、略管状に形成されていて、光基板1A、1Bの各光導波路5が第一の筐体81の内部からヒンジ部83を経由して第二の筐体82の内部まで配設されている。本実施形態の光基板1A、1Bでは、光導波路5が、両端面5a、5b側の光入出力面のそれぞれが受発光素子4の受発光面に少なくとも一部で接触するようにして光接続されている。そして、光基板1A、1Bのそれぞれは、第一の筐体81の内部において、一方のコントロールチップ43がLSI84と電気的に接続されている。また、光基板1Aは、第二の筐体82の内部において、他方のコントロールチップ43がサブ液晶パネル86及びデジタルカメラ87に電気的に接続されている。また、光基板1Bは、第二の筐体82の内部において、他方のコントロールチップ43がメイン液晶パネル85に電気的に接続されている。
【0041】
このため、LSI84から出力される電気信号は、第一の筐体81の内部において、各光基板1A、1Bの一方の受発光素子4で光信号に変換されて出力される。受発光素子4から出力された光信号は、光導波路5を経由して、第二の筐体82の内部において、各光基板1A、1Bの受発光素子4に入力される。この際、各光基板1A、1Bは、光導波路5と各受発光素子4との光接続を前記のように損失を抑えて効率良いものとして、光信号を送受信することができる。そして、第二の筐体82の内部の受発光素子4に入力された光信号は、電気信号に変換されて、接続されたメイン液晶パネル85、サブ液晶パネル86、又は、デジタルカメラ87に入力されることとなり、液晶パネル85及びサブ液晶パネル86においては所定の画像表示を、また、デジタルカメラ87では撮影動作等の制御を行うことが可能となる。また、同様に、デジタルカメラ87で取得された画像データ等を、光基板1AによってLSI84に送信することができる。
【0042】
このように、ヒンジ部83を有する折畳み式の携帯電話80においては、第一の筐体81と第二の筐体82との間で信号を送受信する必要があるが、光基板を備えて光信号によって送受信することで、第一の筐体81及び第二の筐体82に内蔵された他の構成からのノイズの影響を受けることなく、好適に送受信することが可能である。特に、本実施形態の光基板1A、1Bを用いることで、損失を抑えて効率的に光信号を送受信することができ、信頼性の向上を図ることができるとともに、装置全体のコストも低減させることができる。さらに、前記のように光信号の損失を抑えて効率的に光信号を送受信可能であることで、アンプによって信号を増幅させる必要がなく、これによりさらに装置全体の小型化、低コスト化を図ることができる。
【0043】
尚、前記においては、本実施形態の光基板1を搭載する例として、ヒンジ部83によって開閉可能な携帯電話80を例に挙げたが、これに限るものではない。例えば、さらにヒンジ部83の中心軸と直交する軸回りに回転可能な他のヒンジ部をさらに備えて、操作部に対して表示部を反転させることが可能な構成としてもよい。また、ヒンジ部を有さずに一つの筐体で構成されているものとしてもよい。
【0044】
図11は、光基板を搭載した電子機器の他の例として、ノートパソコン90を示している。光基板1はこのようなノートパソコン90等にも搭載可能である。この場合でも、本体部91とディスプレイ92との間の信号の送受信を、ヒンジ部93に配設した光導波路を有する本実施形態の光基板によって行うことで、ノイズの影響を受けずに、効率的に信号の送受信ができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0045】
また、前記においては、光基板1を搭載した電子機器の具体例として、携帯電話及びノートパソコンを例に挙げたが、これに限るものではない。前記のような携帯電話を含む様々な電話機、前記のようなノートパソコンや業務用大型コンピュータを含む様々な電子計算機、家庭用ゲーム機、録画再生機、テレビ、あるいは、ルータ等、大きな情報の入出力を伴う情報・通信機器に特に有効である。
また、光基板1を搭載するものとしては電子機器に限るものではなく、光インターコネクション(光電気配線板)、光コネクタ、光カプラ、光結合器、光スイッチ、光スプリッタ、あるいは、光送受信機等の、光部品にも搭載することで、同様の効果を期待することができる。
【0046】
以上説明した本発明の光基板は、受発光素子と光導波路が高精度に実装されることから光接続損失が小さい。また、信頼性を低下させずに基板を薄膜化することもできる。また、本発明の光基板の製造方法によれば、前記光基板を容易に製造できる。
これは、本発明の光基板の製造方法においては、絶縁樹脂層に空孔を設け、キャリアフィルム上において、受発光素子の受発光面がキャリアフィルムに接触するまで受発光素子を空孔に挿入することで、受発光素子の受発光面と絶縁樹脂層の第2面とを高精度に揃えて設置できるためである。これにより、受発光素子の受発光面と光導波路の光入出力面とを少なくとも一部で接触させて設置することも容易となり、かつ高精度となる。
【0047】
また、本発明の光基板では、絶縁樹脂層の第2面と受発光素子の受発光面とを揃え、その第2面に光導波路を設けており、光導波路形成材料中に受発光素子が埋め込まれた構成となっていないため、薄膜化した場合においても光導波路形成材料の応力への耐性が低くなりすぎてクラック等を生じるおそれが少ない。
【0048】
また、本発明によれば、前記のような光基板を備えた光部品、及び電子機器が得られる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。本実施例においては、光基板の光導波路が1層のマルチモードとして説明するが、これらに限定されない。
【0050】
[実施例1]
まず、感光性絶縁樹脂材料として、ビスフェノールA型エポキシアクリレート(商品名:リポキシVR−90、昭和高分子株式会社製)52質量部と無水フタル酸15質量部とをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶媒中で110℃、30分間攪拌してアルカリ現像型感光性絶縁樹脂ワニス原料を調製した。更に、前記アルカリ現像型感光性絶縁樹脂ワニス原料を50質量部、脂環式エポキシ類化合物(商品名:EHPE3150、ダイセル化学工業株式会社製)17質量部、光硬化型エポキシ樹脂(商品名:サイクロマーM100、ダイセル化学工業株式会社製)30質量部、光開始剤(商品名:LucirinTPO、BASF社製)3質量部に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶剤を加えて連続式横型サンドミルにて約3時間分散し、アルカリ現像型感光性絶縁樹脂ワニスを調製した。
【0051】
次に、銅箔(金属膜30)を用意し、該銅箔上に前記アルカリ現像型感光性絶縁樹脂ワニスをスリットコーターにて塗布し、70℃で20分間乾燥して、約50μm厚の半硬化状態の感光性絶縁樹脂層(絶縁樹脂層20)を形成し、片側銅箔付き感光性絶縁樹脂(絶縁樹脂基板)を製造した(図2)。
【0052】
次に、絶縁樹脂層20にフォトマスクを密着させ、超高圧水銀灯により500mJ/cmで露光、紫外線硬化させた。その後、有機アミン系アルカリ水溶液(約5%)にて現像、水洗し、130℃オーブンで60分間乾燥させることで、空孔21を形成し、パターニングされた絶縁樹脂層2を得た(図3)。
【0053】
次に、絶縁樹脂層2をキャリアフィルム7(PET:東洋インキ製造株式会社製)にラミネートした(図4)。
【0054】
次に、銅箔(金属膜30)上にエッチングレジストパターンを形成し、銅箔をエッチングすることで、パターニングされた銅箔(電気配線3)を得た(図5)。
【0055】
次に、電気配線3上にコントロールチップ43(商品名:VCSELドライバーチップ、HELIX AG製)と、受発光素子4である発光素子(商品名:4ch VCSEL、ULM社製)を設置した(図6)。
【0056】
次に、受発光素子4をワイヤボンディングにて電気配線3に接続した(図7)。
【0057】
次に、絶縁樹脂層2の面2a側の実装部品をモールド樹脂6により封止した(図8)。
【0058】
次に、キャリアフィルム7を剥離し、基板Aを得た(図9)。
【0059】
次に、光導波路5を形成する光導波路フィルム(マルチモードエポキシ系光導波路フィルム、NTT−AT株式会社製)を、基板Aに設置した受発光素子4の光受発光面41に合わせて設置し、さらに光ファイバ53(マルチモード石英系裸芯光ファイバ、株式会社フジクラ製)を設置して光基板1Cを得た(図1)。
光基板1Cの光学特性評価の結果、各チャンネルで0.9〜1.1mWの安定した光出力を確認した。
【0060】
[実施例2]
光導波路5の設置までは実施例1と同様の方法で行い、得られた光基板の受発光素子4の受発光面41と光導波路5との間に、透明樹脂である屈折率整合材料(エポキシ系接着剤、NTT−AT株式会社製)を注入し、該屈折率整合材料周辺を500mJ/cmの紫外線露光により硬化して、光基板1Dを得た。
光基板1Dの光学特性評価の結果、各チャンネルで0.9〜1.1mWの安定した光出力を確認した。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の光基板は、受発光素子と光導波路とを高精度に設置して光接続損失を小さくでき、また信頼性を低下させずに薄膜化できるため、携帯電話、ノートパソコン等の様々な電子機器、光部品等に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の光基板の一実施形態例を示した断面図である。
【図2】本発明の光基板の製造方法に用いる絶縁樹脂基板の一例を示した断面図である。
【図3】本発明の光基板の製造方法における絶縁樹脂層形成工程の説明図である。
【図4】本発明の光基板の製造方法における絶縁樹脂基板設置工程の説明図である。
【図5】本発明の光基板の製造方法における電気配線形成工程の説明図である。
【図6】本発明の光基板の製造方法における受発光素子設置工程の説明図である。
【図7】本発明の光基板の製造方法における受発光素子接続工程の説明図である。
【図8】本発明の光基板の製造方法における受発光素子封止工程の説明図である。
【図9】本発明の光基板の製造方法におけるキャリアフィルム除去工程の説明図である。
【図10】本発明の電子機器の一実施形態例である携帯電話を示した概要図である。
【図11】本発明の電子機器の他の実施形態例であるノートパソコンを示した概要図である。
【符号の説明】
【0063】
1 光基板 2 絶縁樹脂層 2a 絶縁樹脂層の第1面 2b 絶縁樹脂層の第2面 3 電気配線 4 受発光素子 41 受発光面 5 光導波路 51 光入出力面 6 モールド樹脂 7 キャリアフィルム 80 携帯電話 90 ノートパソコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁樹脂層を有し、該絶縁樹脂層には、第1面にパターニングされた電気配線と、第2面に設置された光入出力面を有する光導波路と、受発光面を有する受発光素子とが少なくとも備えられた光基板であって、
前記絶縁樹脂層には空孔が形成されており、
前記受発光素子は、受発光面が前記絶縁樹脂層の第2面と同一平面となるように前記空孔に設置されており、
前記光導波路は、光入出力面と前記受発光素子の受発光面とが少なくとも一部で接触するように設置されていることを特徴とする光基板。
【請求項2】
前記絶縁樹脂層が感光性絶縁樹脂からなり、前記空孔がフォトリソグラフィーにより形成されている、請求項1に記載の光基板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光基板の製造方法であって、
絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の第1面に形成された金属膜とを有する絶縁樹脂基板について、前記絶縁樹脂層に空孔を形成してパターニングする絶縁樹脂層形成工程と、
キャリアフィルム上に、前記パターニングされた絶縁樹脂層の第2面を貼り合わせる絶縁樹脂基板設置工程と、
前記キャリアフィルム上で、前記金属膜をパターニングして電気配線を形成する電気配線形成工程と、
前記キャリアフィルム上で、受発光素子の受発光面と前記絶縁樹脂層の第2面とが同一平面となるように、前記絶縁樹脂層に形成された空孔に受発光素子を設置する受発光素子設置工程と、
前記受発光素子を前記電気配線に接続する受発光素子接続工程と、
前記キャリアフィルムを前記絶縁樹脂層から取り外すキャリアフィルム除去工程と、
前記受発光素子を設置した絶縁樹脂層の第2面に、前記受発光素子の受発光面と光入出力面とが少なくとも一部で接触するように光導波路を設置する光導波路設置工程とを含む光基板の製造方法。
【請求項4】
前記受発光素子接続工程の後に、前記絶縁樹脂層に設置された受発光素子を絶縁樹脂層の第1面側からモールド樹脂により封止する受発光素子封止工程を含む、請求項3に記載の光基板の製造方法。
【請求項5】
前記キャリアフィルム除去工程の後に、前記受発光素子の受発光面と、前記光導波路の光入出力面との間隙に透明樹脂を充填する透明樹脂充填工程を含む、請求項3又は4に記載の光基板の製造方法。
【請求項6】
前記光導波路設置工程後に、絶縁樹脂層の第2面に設置された光導波路に合わせて光ファイバを設置する光ファイバ設置工程を含む、請求項3〜5のいずれかに記載の光基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の光基板を備える光部品。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の光基板を備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−145605(P2009−145605A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322558(P2007−322558)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】