説明

光学分析装置

【課題】 分析用光ディスクにて、トレースデータ読み取りに必要なレーザ以外にサンプルの検出に最適な波長のレーザにトレース中の切り換えを可能とした装置を提供する。
【解決手段】 トラックの一部に分析対象のサンプル111を配置した分析用ディスク201にレーザ光を出射し、前記分析対象111の状態を読み取る分析装置において、ディスク201上のピットやウオブルで形成されたデータを読み取る波長のレーザ113とサンプルの検出に適した波長のレーザ114に、制御部210からの指令で切り換えスイッチ208により切り換えて分析する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置の光学スキャン技術を用いて、生物学的、化学的または生化学的なサンプルの光学検査を行う光学分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の分析用ディスクを用いた光学分析装置には、光ディスク装置の再生機能を用いて、光ディスク上のある部分に試験しようとするサンプルを設けて、レーザでトレースしサンプルの映像を取得するものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
光ディスク101は図10と図11に示すように、基盤102の上面にアルミ反射層のトラック103を形成し、そのトラック103に微細な凹凸のピットとウオブル104で情報が記録されている。105は保護層である。
【0004】
従来の光ディスク装置は図12に示すように、ディスクモータ106で光ディスク101を矢印C方向に回転させながら、トラック103上をピックアップ107からのレーザ光Phで読み取る。ピックアップ107は、トラバースモータ108で駆動される送りねじ109に螺合しており、サーボコントロール回路110が、ピックアップ107の再生出力に基づいてトラック103を追随してトレースするように、トラバースモータ108を駆動してピックアップ107を径方向に移動させる。また、サーボコントロール回路110は、トラック103に記録されているアドレス情報を検出し、線速度が一定になるようにディスクモータ106を駆動(CLV制御)する。
【0005】
さらに詳しくは、レーザ光Phの光ディスク101への照射位置は、トラバースモータ108の駆動だけでなく、ピックアップ107の内部に設けられたトラッキングアクチェータ(図示せず)によってレーザ光Phの光路を光ディスク101の面方向に必要に応じて併せて駆動して位置制御しながら正確にトラック103をトレースするように構成されている。
【0006】
ここまでの構成は、従来のオーディオ用やビデオ用の光ディスクを取り扱う一般的な光ディスク装置と同じである。分析用ディスクの場合には、図10と図11に示したように、サンプル111が光ディスク101に配置されており、光学分析装置の場合には、オーディオ用やビデオ用光ディスクの光ディスク装置の構成に加え、さらに このサンプル111の反射光を、ピックアップ107に設けたフォトディテクタ(以下、PDと称す)で読み取って、これを映像信号処理回路112で処理してサンプル111の映像を得るものである。
【0007】
これまでの説明は、光ディスク101の反射光を読み取って分析を行う場合を例に挙げて説明したが、サンプル111を通過する透過光を見て分析を行う場合には、PDを光ディスク101の上面の側に配置して構成される。
【特許文献1】特表平10−504397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような光学分析装置では、トラックの読み取りと、サンプルの分析とを、光ピックアップ107から出力される同じ波長のレーザで行っている。つまり、単一光源からのレーザを用いるため、ディスク上のピットやウオブルなどで記録された情報を正確に読み取ってディスクをトレースしなければならないため、分析に使用するレーザの波長をディスクのピットやウオブルなどを捕捉する波長以外の波長に合わせることはできない。
【0009】
ところで本発明者らが鋭意研究を進めるうち、サンプルが存在する部分の映像取得もしくは濃淡検知に最適なレーザ波長は、前記ピットやウオブルなどを捕捉するレーザ波長(780nm)が最適とは限らないことがわかってきた。
【0010】
例えば、サンプルを分析するのに吸光分析法を利用する場合などは特定のサンプルの極大吸収波長を用いて分析する方が有利な分析方法となる。よって、一つの装置でより多数の種類のサンプルの分析を行うためには、幅広い範囲での波長を発生する光源が求められている。たとえば、過マンガン酸カリウム溶液の場合、波長525nmから545nmがもっとも吸光度が高く極大吸収波長ということになる。この場合、波長700nmではほとんど透過してしまう。
【0011】
また、一般にWST−3(同仁化学研究所株式会社製)と呼ばれる水溶性のホルマザンを生成するテトラゾリウム塩が、NADHにより還元されて生じるホルマザンの吸光度は、433nmで極大吸収波長となる。この場合も、おおよそ600nm以上の波長ではほとんど吸収されない。このように、それぞれ独特の吸収スペクトルを持っている別々の物質に対し、一つの波長で吸光度分析を行うことは、高精度測定の上で不利なものである。
【0012】
また、サンプルの濁度をキャンセルするためには極大吸収波長での吸光度と、その波長から離れた波長での吸光度の差から濁度をキャンセルすることができるのだが、光学分析装置では、単一のレーザ波長しか出力できず、濁度をキャンセルするような分析を行うことができないのが現状である。
【0013】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、光ディスク上のピットやウオブルの情報取得をするとともに、サンプル部分の画像の取得や、濃淡や吸光度等の比色情報の検出に適した光学分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の請求項1記載の光学分析装置は、トラックにアドレス情報が記録された光ディスクの一部に分析対象のサンプルを配置した分析ディスクを回転させながら、前記サンプルを光学的に分析する光学分析装置であって、前記分析ディスクのトラックのアドレス情報に関するデータを読み取るレーザ光を出力する読取用ダイオードと、前記読取用ダイオードとは異なる波長のレーザ光を前記サンプルに出力する分析用ダイオードと、前記読取用ダイオードまたは前記分析用ダイオードから出射されて前記分析ディスクで反射または前記分析ディスクを透過した光を読み取る第1のフォトディテクタと、前記読取用ダイオードまたは前記分析用ダイオードから出射されて前記分析ディスクで反射した光を読み取る第2のフォトディテクタとを備え、前記第2のフォトディテクタの読み取り出力に基づいて前記読取用ダイオードと分析用ダイオードの前記分析ディスクの径方向の位置制御を実行し、前記第1のフォトディテクタの読み取り出力から前記サンプルの分析結果を読み取るよう構成したことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項2記載の光学分析装置は、請求項1において、同一のサンプルに対して、前記読取用ダイオードを光源として前記分析ディスクで反射または前記分析ディスクを透過した光を第1のフォトディテクタで読み取った分析結果と、前記分析用ダイオードを光源として前記分析ディスクで反射または前記分析ディスクを透過した光を第1のフォトディテクタで読み取った分析結果とに基づいて、最終分析結果を出力するように構成したことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項3記載の光学分析装置は、請求項1において、前記分析用ダイオードは、互いに異なる波長のレーザ光を出力する複数の分析用ダイオードで構成し、同一のサンプルに対して、前記分析用ダイオードの一つの分析用ダイオードを光源として前記分析ディスクで反射または前記分析ディスクを透過した光を第1のフォトディテクタで読み取った分析結果と、前記分析用ダイオードの他の分析用ダイオードを光源として前記分析ディスクで反射または前記分析ディスクを透過した光を第1のフォトディテクタで読み取った分析結果とに基づいて、最終分析結果を出力するように構成したことを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項4記載の光学分析装置は、トラックにアドレス情報が記録された光ディスクの一部に分析対象のサンプルを配置した分析ディスクを回転させながら、前記サンプルを光学的に分析する光学分析装置であって、前記分析ディスクのトラックのアドレス情報に関するデータを読取るレーザ光を出力する読取用ダイオードと、前記読取用ダイオードとは異なる波長のレーザ光を前記サンプルに出力する分析用ダイオードと、記読取用ダイオードまたは前記分析用ダイオードから出射されて前記分析ディスクで反射した光を読み取るフォトディテクタとを備え、前記フォトディテクタの読み取り出力に基づいて前記読取用ダイオードと分析用ダイオードの前記分析ディスクの径方向の位置制御を実行し、かつ前記分析ディスクのサンプルの読み取り位置における前記フォトディテクタの読み取り出力から前記サンプルの分析結果を読み取るよう構成したことを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項5記載の光学分析装置は、請求項4において、同一のサンプルに対して、前記読取用ダイオードを光源として前記分析ディスクのサンプルの読み取り位置において前記フォトディテクタの読み取った分析結果と、前記分析用ダイオードを光源として前記分析ディスクのサンプルの読み取り位置において前記フォトディテクタの読み取った分析結果とに基づいて、最終分析結果を出力するように構成したことを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項6記載の光学分析装置は、請求項1または請求項4において、前記分析用ダイオードは、互いに異なる波長のレーザ光を出力する複数の分析用ダイオードで構成したことを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項7記載の光学分析装置は、請求項1または請求項4において、前記分析用ダイオードは、互いに異なる波長のレーザ光を出力する複数の分析用ダイオードで構成し、同一のサンプルに対して、前記分析用ダイオードの一つの分析用ダイオードを光源として前記分析ディスクのサンプルの読み取り位置において前記フォトディテクタの読み取った分析結果と、前記分析用ダイオードの他の分析用ダイオードを光源として前記分析ディスクのサンプルの読み取り位置において前記フォトディテクタの読み取った分析結果とに基づいて、最終分析結果を出力するように構成したことを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項8記載の光学分析装置は、請求項1〜請求項6の何れかにおいて、読取用ダイオードと分析用ダイオードとを1つのピックアップに搭載したことを特徴とする。
本発明の請求項9記載の光学分析装置は、請求項6において、複数のサンプルが周方向の異なる位置に配置された分析ディスクに対して、サンプル位置に応じて駆動する分析用ダイオードを切り換えるように構成したことを特徴とする。
【0022】
本発明の請求項10記載の光学分析装置は、請求項6において、同一のサンプルの走査期間に駆動する分析用ダイオードを切り換えるように構成したことを特徴とする。
本発明の請求項11記載の光学分析装置は、請求項6において、分析用ディスクの所定の回転ごとに駆動する分析用ダイオードを切り換えるように構成したことを特徴とする。
【0023】
本発明の請求項12記載の光学分析装置は、請求項1または請求項4において、分析ディスクに設けたマーカーを読み取ることで、読取用ダイオードの出力と、分析用ダイオードの出力の切り換えを行うよう構成したことを特徴とする。
【0024】
本発明の請求項13記載の光学分析装置は、請求項1または請求項4において、前記読取用ダイオードを駆動する読取用レーザ出力駆動手段と、前記分析用ダイオードを駆動する分析用レーザ出力駆動手段と、前記読取用レーザまたは前記分析用レーザの出力を切換えるためのレーザ切換え手段と、前記読取用ダイオードのレーザ出力をモニタする読取用レーザ出力モニタ手段と、前記分析用ダイオードのレーザ出力をモニタする分析用レーザ出力モニタ手段と、前記読取用または分析用レーザ出力駆動手段が駆動開始してから所定の大きさのレーザが出力されるまでの応答時間を、各出力モニタ手段の出力からそれぞれ測定するレーザ出力応答測定手段とを備え、前記レーザ出力応答測定手段は、前記読取用レーザまたは前記分析用レーザの出力を切り換える場合に、後に切り換えられて駆動される読取用ダイオードまたは分析用ダイオードに対して、前記応答時間またはそれに近い時間だけ早く、各レーザ出力駆動手段により、レーザの出力駆動を開始するよう構成したことを特徴とする。
【0025】
本発明の請求項14記載の光学分析装置は、請求項13において、応答時間は読取用レーザまたは分析用レーザの駆動に際して分析に使用するダイオードの応答時間を測定するよう構成したことを特徴とする。
【0026】
本発明の請求項15記載の光学分析装置は、請求項13において、前記読取用レーザ出力駆動手段及び前記分析用レーザ出力駆動手段は、それぞれのレーザを出力していない場合にも、それぞれのダイオードにバイアス電流を流すように構成したことを特徴とする。
【0027】
本発明の請求項16記載の光学分析装置は、請求項2または請求項5において、分析用ダイオードにてレーザ光を出力する区間では、光ピックアップの位置を読取用ダイオードからレーザを出力していた時の最後の位置に保持するように構成したことを特徴とする。
【0028】
本発明の請求項17記載の光学分析装置は、請求項1または請求項4において、読取用ダイオードを用いて前記サンプルの画像データを取得し、分析用ダイオードを用いて前記サンプルの比色データを取得するよう構成したことを特徴とする。
【0029】
本発明の請求項18記載の光学分析装置は、請求項3または請求項7において、分析ディスクの所定の回転数ごとに分析用ダイオードのレーザ光の波長を切り換えて分析を行うか、または分析ディスクが所定の回転を行う間に複数の分析用ダイオードのレーザ出力を切り換えて分析を行うよう構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明の光学分析装置によれば、ディスク上のピットやウオブルの情報取得と、サンプルの分析に、それぞれ異なる最適なレーザ波長を用いることができる。
また、波長の異なる複数のレーザを持ち、かつ短い時間でレーザ切り換えを行うことで、単一のディスク上において光学特性の異なる複数のサンプルを走査するために複数のレーザが必要な場合でも一連の走査を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の光学分析装置を各実施の形態に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1〜図5は本発明の光学分析装置を示す。
【0032】
図1は、本発明の(実施の形態1)における光学分析装置を示す。
図1において、分析ディスク201上には、図10で示す同心円状または螺旋状のトラック(図示せず)があり、さらに生物学的、化学的、または生化学的なサンプル111が存在する領域がある。分析ディスク201にアクセスする1つのピックアップ107には、分析ディスク201のトラックにビットやウオブルとして存在する情報読取用に適した波長のレーザ光を出射する第1のレーザダイオード(LD1)113と、サンプル111の光学特性を分析するのに適した波長のレーザ光を出射する第2のレーザダイオード(LD2)114が搭載されている。
【0033】
第1,第2のレーザダイオード113,114から出力されたレーザ光のうち、分析ディスク201を透過する成分は、第1のフォトディテクタ(PD1)117にて検知された後、映像信号処理回路112に送られる。分析ディスク201で反射する成分については、同じピックアップ107に搭載された第2のフォトディテクタ(PD2)213にて検知された後に、RF信号処理回路214へ送られる。
【0034】
第1のフォトディテクタ(PD1)117の具体例としては、分析ディスク201の径方向に長く配設されたラインセンサを固定して設ける例と、第2のフォトディテクタ(PD2)213と同じように分析ディスク201の径方向に長くないセンサを、ピックアップ107とおなじ構成で分析ディスク201の径方向に移動させる例などを挙げることができる。
【0035】
第1のレーザダイオード113は第1レーザ出力駆動手段115によって駆動され、第2のレーザダイオード114は第2レーザ出力駆動手段116によって駆動される。第1,第2レーザ出力駆動手段115,116は、マイクロコンピュータを主要部とする制御部210によって制御される切り換えスイッチ208によって、何れかを運転するように切り換えるように構成されている。
【0036】
ディスクモータ106によって回転駆動される分析ディスク201の回転方向は矢印Cの方向であり、分析ディスク201には、サンプル111より先にレーザが走査する部分に、マーカー204が設けられている。
【0037】
図2に示すように分析ディスク201に設けられている前記サンプル111は、サンプルと検査項目に応じた試薬との混合物であって、マーカー204は、サンプル111が配置された読み取りエリア203に対して回転方向Cの直前位置のみに、読み取りエリアの径方向(矢印A方向)の区間にわたって記録されている。さらに詳しくは、図3に示すように、分析ディスク201におけるサンプル111は分析ディスク201の表面202aとトラック103の間に設けられている。マーカー204は分析ディスク201の裏面202bにインクを帯状に印刷して形成されている。この図3において206は鏡面加工されたトラック103に形成されたピットもしくはウオブルである。207は鏡面加工されたトラック103に形成されたランドである。
【0038】
なお、サンプル111は図3に仮想線で示すように分析ディスク201の裏面202bとトラック103の間に設けて構成した場合も同様である。
図1において、第1のレーザダイオード(LD1)113または第2のレーザダイオード(LD2)114から出射されたレーザ光によって、分析ディスク201のピットもしくはウオブル206のデータ信号は、分析ディスク201のランド207で反射されて、前記ピックアップ107の第2のフォトディテクタ(PD2)213によって検出されてRF信号処理回路214にて信号処理される。
【0039】
分析ディスク201のランド207は、反射率30%〜60%になるように薄い金などの金属を蒸着して構成されており、レーザ光は透過し分析ディスク201上の第1のフォトディテクタ(PD1)117にも到達する。この際、分析ディスク201上のサンプル111も透過するため、サンプル111の濃淡が第1のフォトディテクタ(PD1)117で検出され、その信号は映像信号処理回路112にて信号処理される。
【0040】
分析ディスク201上の前記サンプル111の無い部分では、前記制御部210が第1レーザ出力駆動手段115を介して第1のレーザダイオード(LD1)113側が出射するように切り換えスイッチ208を切り換えており、マーカー204を検知した制御部210は、切り換えスイッチ208を切り換えて第2のレーザダイオード(LD2)114側を出射させる。
【0041】
前記光ピックアップ107には、CD/DVD用のレーザが1つのピックアップに搭載されているピックアップを使用することができる。また、DVD/「Blu−ray」用、CD/DVD/「Blu−ray」用のレーザダイオードが1つのピックアップに搭載されているものを使用することもできる。
【0042】
CDフォーマットでトラックが形成された分析ディスク201を走査する場合には、第1のレーザダイオード(LD1)113としてはピットやウオブルなどのディスク上のデータを取得するのに最適な、たとえば波長780nmのレーザを用い、第2のレーザダイオード(LD2)114としてはサンプル111の濃淡反応を取得しやすい波長650nmのレーザを用いる。
【0043】
図4は制御部210による切り換えスイッチ208の切り換えタイミング例を示している。このように制御部210は、第1のレーザダイオード(LD1)113でのトラッキング中にマーカー204を検出したタイミングから、サンプル111の部分を通過するためにあらかじめ定められた一定の時間Tにわたって切り換えスイッチ208を切り換えて第2のレーザダイオード(LD2)114側を出射させる。
【0044】
なお、図5に示すように、マーカー204が分析ディスク201の前記サンプル111の手前位置だけでなく後方位置にもマーカー204を設けた場合には、この後方のマーカー204によって第2のレーザダイオード(LD2)114の出射による走査期間を終了させて第1のレーザダイオード(LD1)113の出射による走査状態に復帰させることができ、前記一定の時間Tをあらかじめ定める必要がない。このように前記サンプル111の後方位置にもマーカー204を設けた場合には、第2のレーザダイオード(LD2)114の出射期間中には、トラッキング等のサーボ信号が取得できないので、ピックアップ107による分析ディスク201のディスク面及びトラックへの追従は、図12に示したサーボコントロール回路110,トラバースモータ108,送りねじ109からなるトラックに追従させる制御手段を用い、欠陥ディスクをトレースする時のようにピックアップの位置をホールドしておくことで、第1のレーザダイオード(LD1)113の出射時の最後の位置(第2のレーザダイオード(LD2)114に切り替わる直前の位置)に保持することが可能になる。この構成により、第2のレーザダイオード(LD2)114の出射に切り替わった時にもピックアップ107の位置が大きく変化することがなくなり、より正確な分析が可能になる。
【0045】
このように(実施の形態1)では、分析用ダイオードと読取用ダイオードを別々にすることで、第1のレーザダイオード(LD1)113のレーザ光の波長は、分析ディスク201上のビットやウオブル上のデータを読み取るために最適な波長、例えば、CD規格で設けられているビットやウオブルを読み取るためには780nm付近の波長を用いたダイオードや、またDVD規格で設けられているビットやウオブルを読み取るためには650nm付近の波長を用いたダイオードや、またブルーレイディスク(Blu−rayディスク)規格で設けられているビットやウオブルを読み取るためには405nm付近の波長を用いたダイオードを選定することができる。この時、分析用レーザの波長はデータの読み取りに関係なく、自由に選択できる。
【0046】
ここで特に、光吸収を用いた溶液中の化学種の定量として、本発明の光学分析装置を用いる場合には、あらかじめ測定対象物の光学特性(吸収スペクトル)を測定しておき、その測定を行うために最適な波長に近い波長のレーザ光を出射する第2のレーザダイオード(LD2)114を選択することが可能になる。
【0047】
一般的な光吸収を用いた溶液中の化学種の定量の場合には、原理的には光の吸収のある波長ならばどの波長を選んでもよいが、実際には光の検出はある有限の波長幅の光の強度を積算することで得られるため、吸光度の測定は吸光度の変動の少ない波長、つまり吸収極大の波長で行う場合が最適であることが多い。つまり、一つの装置を用い、あるいは一つの分析用ディスクを用いて、複数の種類のサンプルの分析を用いるためには(複数の光学特性を持つサンプルを分析するためには)一つの装置で複数の波長を出力して分析が行える事は、極めて有利な特徴となる。
【0048】
また、サンプル111の光学的特性として画像データを取得する場合には、分析に使用するレーザはより短い波長で、できるだけ小さいトラック幅で走査することがより詳細な画像データを得るために有利であるが、先に述べたように吸光度を用いた分析には、サンプル111に合わせた最適な波長があり、必ずしも短波長が有利とは限らない。この2種類の分析を一つの装置あるいは、1つの分析用ディスクを用いて行う場合にも、本発明は極めて有利な特徴となる。
【0049】
「Blu−ray」規格で設けられているビットやウオブルを分析領域以外に持つ分析ディスクを用い、サンプルの分析を行う場合、サンプル111の画像データは405nmの波長のレーザを用い、0.32μmのトラックピッチで走査することで、CDやDVD規格で設けられているビットやウオブルを持つ分析ディスクを用いて画像分析する場合より詳細な画像が得られる。分析ディスク201上のサンプル111に対する画像分析の精細度は走査するトラックピッチと波長に依存する部分が大きく、できるだけ短い波長を用い、狭いトラックピッチで走査するほうが向上するからである。
【0050】
このとき、CD/DVD用の別波長を出力するダイオードを合わせて搭載するピックアップ107を使用することで、先に記載したように光吸収を用いた分析のために利用できる波長の幅が650nm、780nmへと広がり、サンプルの光学特性に応じたより有利な波長を使うことができる。
【0051】
一般にWST−4(同仁化学研究所株式会社製)と呼ばれる水溶性のホルマザンを生成するテトラゾリウム塩を利用して、NADHにより還元されて生じるホルマザンの吸光度を測定する場合などでは、ブルーレイディスク(Blu−rayディスク)規格である405nmやCD規格である780nm近傍の波長では濃度依存性が少なく、DVD規格である650nm付近では吸光度の濃度異存が出現するため、DVD波長のレーザにて分析する事は有利な測定法である。
【0052】
また一般にWST−3(同仁化学研究所株式会社製)と呼ばれる水溶性のホルマザンを生成するテトラゾリウム塩が、NADHにより還元されて生じるホルマザンの吸光度は、433nmで極大吸収波長となる。この場合には、おおよそ600nm以上の波長ではほとんど吸収されないために、ブルーレイディスク(Blu−rayディスク)規格の405nmのレーザにて測定する方が濃度依存性が高く有利な分析ができる。
【0053】
このように、それぞれ独特の吸収スペクトルを持っている種々の物質に対し、複数の波長で吸光度分析ができるということは、一つの装置で測定できる物質の範囲を広げ、測定精度を向上させるために有利な構成である。
【0054】
(実施の形態2)
図6と図7は本発明の光学分析装置の(実施の形態2)を示す。
(実施の形態1)では第1のレーザダイオード(LD1)113と第2のレーザダイオード(LD2)114を設けて、第1のレーザダイオード(LD1)113によってピットやウオブルなどのディスク上のデータを取得し、第2のレーザダイオード(LD2)114によってサンプル111の濃淡反応を取得したが、この(実施の形態2)では分析ディスク201の上に、同心円状または螺旋状のトラックがあり(図示せず)、さらに生物学的、化学的または生化学的な複数のサンプル111a,111bが存在する領域があるものを取り扱う光学分析装置の例である。
【0055】
具体的には、図6に示した1つのピックアップ107には、分析ディスク201のトラックにビットやウオブルとして存在する情報を読み込むために適した波長のレーザ光を出射する第1のレーザダイオード(LD1)113と、サンプル111aの光学特性を分析するのに適した波長のレーザ光を出射する第2のレーザダイオード(LD2)114aと、サンプル111bの光学特性を分析するのに適した波長のレーザ光を出射する第3のレーザダイオード(LD3)114bと、が搭載されている。
【0056】
ピックアップ107から出力されたレーザ光は、分析ディスク201を透過する成分は、第1のフォトディテクタ(PD1)117で検出され、その信号は映像信号処理回路112にて信号処理される。分析ディスク201で反射する成分については、第2のフォトディテクタ(PD2)213で検出された後に、RF信号処理回路214へ送られる。
【0057】
第1のレーザダイオード(LD1)113は第1のレーザ駆動手段115によって駆動され、第2のレーザダイオード(LD2)114aは第2のレーザ駆動手段116aによって駆動され、第3のレーザダイオード(LD3)114bは第3のレーザ駆動手段116bによって駆動される。第1〜第3のレーザ駆動手段115,116a,116bは、制御部210によって制御される切り換えスイッチ208によって切り換えられる。
【0058】
ディスクモータ106によって回転駆動される分析ディスク201の回転方向は矢印Cの方向であり、分析ディスク201には、図7にも示すように複数箇所、ここでは2個所のサンプル111a,111bが設けられ、さらに、サンプル111a,111bより先にレーザが走査する部分に、マーカー204a,204bが設けられている。
【0059】
サンプル111a,111bは、サンプルと検査項目に応じた試薬との混合物がセットされたもので、このサンプル111a,111bが配置された読み取りエリア203a,203bに対して回転方向Cの直前位置のみに、読み取りエリアの径方向(矢印A方向)の区間にわたってマーカー204a,204bが記録されている。
【0060】
切り換えスイッチ208は制御部210にて選択され、分析ディスク201上のピットやウオブルのデータ信号は 、第1のレーザダイオード(LD1)113から出射されたレーザ光が分析ディスク201のランド207で反射されて、前記ピックアップ107の第2のフォトディテクタ(PD2)213によって検出されてRF信号処理回路214にて信号処理される。
【0061】
一方、分析ディスク201の反射膜(図示せず)は反射率30%〜60%になるように薄い金などの金属で蒸着されており、レーザ光は透過しディスク201上のPD1(117)にも到達する。この際、分析ディスク201上のサンプル111a,111bも透過するため、サンプルによる光学的影響が第1のフォトディテクタ(PD1)117の出力信号に反映され、その信号は映像信号処理回路112にて信号処理される。
【0062】
(実施の形態1)に記述したように、一般的な光吸収を用いた溶液中の化学種の定量の場合には、吸収スペクトルは測定対象物によって異なることが多いために、複数の種類のサンプルに用いる最適な波長は複数種類になることから、複数の種類の分析用レーザを切り換えることが可能な構成は、複数の種類の分析対象をそれぞれ有利な条件で測定する場合に有効な手段となる。
【0063】
よって、本発明においては、複数の分析用ダイオードを備えることから、種々のサンプルに最適な波長を選択することができることから、1つの分析装置を用いて分析できるサンプルの範囲が広がることになる。
【0064】
また、サンプル111a,111bの場所に互いに種類の違うサンプルがある場合には、それぞれに最適な分析ダイオード114a,114bを使い分けることもできることから1つのディスク上で、同一回転中に複数の分析対象を、それぞれに最適な波長を用いて測定することができる。
【0065】
さらに、一箇所のサンプル111aまたは111bを走査中に、第2のレーザダイオード(LD2)114aから第3のレーザダイオード(LD3)114bにレーザ光の波長を切り換えて出射することも可能である。
【0066】
また、本発明の基本構成が、回転する分析ディスク201上のサンプルを、固定したダイオードから出力されるレーザによって走査することから、同じ分析領域に対し、出射するレーザ光の波長が異なる分析ダイオードを特定の回転ごとに使い分けることもできる。このとき、サンプル111a,111bが存在しない領域では、第1のレーザダイオード(LD1)113から出力されるレーザ光によってピックアップ107が正確にディスク上をトラッキングできるため、例えば第2のレーザダイオード(LD2)114aが走査した部分を正確に第3のレーザダイオード(LD3)114bに走査させることができる。このように、一つのサンプル111aまたは111bに対し、複数の波長による分析データを得ることは、特に分析したいサンプルの濁りによる影響をキャンセルする場合に有効である。
【0067】
本実施の形態では、サンプル111aまたはサンプル111bに対して、特有の吸収極大波長に近い波長を持つ第2のレーザダイオード(LD2)114aが走査した後に、サンプル111aまたはサンプル111bに特有の吸収極大波長から遠い波長を持つ第3のレーザダイオード(LD3)114bによって、同じサンプルが存在する部分を走査するように制御部210を構成し、得られた吸光度の差を取るように映像信号処理回路112を構成することから、サンプルの濁りによる影響をキャンセルすることができる。
【0068】
この場合には、サンプル111aあるいは111bを走査している間に、第2のレーザダイオード(LD2)114a,第3のレーザダイオード(LD3)114bを切換えるように制御部210を構成することで、同一周回時におなじサンプルが存在する部分にて、第2のレーザダイオード(LD2)114a,第3のレーザダイオード(LD3)114bからのレーザによる個々のデータを取ることも可能である。
【0069】
また、分析ディスク201の1回転もしくは所定の複数の回転毎に、または分析ディスク201が所定の角度だけ回転する毎に、第2のレーザダイオード(LD2)114a,第3のレーザダイオード(LD3)114bを切り換えるように制御部210を構成することで、同一位置での個々の信号を得ることもできる。
【0070】
これは、サンプルが存在しない領域では、第1のレーザダイオード(LD1)113から出力されるレーザによって、ピックアップ107が正確に分析ディスク201上をトラッキングできることで第2のレーザダイオード(LD2)114a,第3のレーザダイオード(LD3)114bが別の周回においてでも、それぞれ通過する位置を正確に合わせることができるためである。
【0071】
このとき、第2のレーザダイオード(LD2)114a,第3のレーザダイオード(LD3)114bの出力時にはピックアップ107のトラッキングをホールドすると、例えば第2のレーザダイオード(LD2)114aが走査した部分を、さらに正確に第3のレーザダイオード(LD3)114bに走査させることができる。
【0072】
また、一つのサンプルに対し第2のレーザダイオード(LD2)114aと第3のレーザダイオード(LD3)114bによる複数の波長による分析データを得ることは、一つのサンプル領域に複数の光学的特性を物質が混在している場合にその双方を分析するための有効な手段である。存在する複数の物質にそれぞれ最適な波長を選択することで、一度にそれぞれのデータが得られるためである。この構成はサンプル中に存在する阻害物質の影響を排除するためにも有効な手段である。複数のレーザを用いて一つのサンプル領域を走査する場合に、分析対象に最適な波長と、サンプル中に含まれる阻害物質に最適な波長の双方で走査することで吸光度を測定し、双方の測定結果から、阻害物質の影響を相殺できるためである。
【0073】
この構成により、酸素化ヘモグロビンと、脱酸素化ヘモグロビンが混在する比率を求める場合では、両者の吸光度が一致する805nm(等吸収点)と、それ以外の吸収の違いが大きい波長、例えば640〜660nm付近での吸光度を同じサンプルで測定することで、両者の存在する比率を知ることもできる。
【0074】
このように本実施例においては分析用レーザを2種類使用して切り換える例を示したが先に記載したように2種類のうち1つを読取用レーザと兼用することも可能である。また、CD/DVD/「Blu−ray」などの記録再生に用いるレーザダイオードを用い、3種類以上の分析用レーザを切り換えて使用した場合にも本発明の効果は発揮される。
【0075】
(実施の形態3)
図8は図6における第2のレーザダイオード(LD2)114a,第3のレーザダイオード(LD3)114bのレーザ切り換え及びレーザ駆動手段、制御部210の具体例を示す。また図9は図8における信号のタイミングチャートを示す。
【0076】
図8のレーザ切換え手段9は、図9(b)に示す第2レーザ駆動信号9aまたは図9(d)に示す第3レーザ駆動信号9bを出力する。
第2レーザ出力駆動手段116aは第2レーザ駆動信号9aによって第2のレーザダイオード(LD2)114aを駆動し、第3レーザ出力駆動手段116bは第3レーザ駆動信号9bによって第3のレーザダイオード(LD3)114bを駆動する。
【0077】
第2レーザ出力駆動手段116aのレーザ出力は、第2レーザ出力モニタ手段10aによってモニタされ第2レーザ出力モニタ信号11aを出力し、第3のレーザ出力駆動手段116bのレーザ出力は、第3レーザ出力モニタ手段10bによってモニタされて第3レーザ出力モニタ信号11bを出力する。
【0078】
レーザ応答時間測定手段12は、第2レーザ駆動信号9aと図9(c)に示す第2レーザ出力モニタ信号11aによって、第2のレーザダイオード(LD2)114aのレーザ光が出力されるまでの応答時間t2を測定し、また第3レーザ駆動信号9bと図9(e)に示す第3レーザ出力モニタ信号11bによって第3のレーザダイオード(LD2)114bのレーザ光が出力されるまでの応答時間t3を測定して、それぞれの応答時間t2,t3を記憶する。
【0079】
ここで分析手段13は、あらかじめ決められたタイミングで図9(a)に示す分析トリガ信号14を出力し、この分析トリガ信号14を受けてレーザ切換え手段9はレーザ切換え動作に入る。この分析トリガ信号14の出力はあらかじめ決められたタイミングだけでなく、レーザによる走査がマーカー204を通過したときに出力されてもよい。
【0080】
分析トリガ信号14の立ち上がりタイミングP1に、図9(a)(b)に示すように第2のレーザダイオード(LD2)114aのレーザ光が出力されている場合には、図9(c)(d)に示すように第3のレーザダイオード(LD3)114bのレーザ光が出力されるべく第3レーザ駆動信号9bを発して切り換え動作に入ることになるが、この時に、第3レーザダイオード(LD3)114bの前回に取得した応答時間t3を記憶していることで、第3レーザ駆動信号9bが発せられてから第3のレーザダイオード(LD3)114bのレーザ光の出力がピークになるまでの時間がわかり、第3レーザ駆動信号9bを発生する前記タイミングP1からこの記憶している応答時間t3だけ、第2のレーザダイオード(LD2)114aのレーザ光の出力停止を遅らせるように構成することによって、第2のレーザダイオード(LD2)114aのレーザ光の出力が無くなるタイミングP2に、第3のレーザダイオード(LD3)114bのレーザ光の出力のピークを持ってくることができ、第2のレーザダイオード(LD2)114aの波長のレーザ光による分析区間W2から第3のレーザダイオード(LD3)114bの波長のレーザ光による分析区間W3へと連続した分析が可能になる。
【0081】
また、第3のレーザダイオード(LD3)114bの出力から、第2のレーザダイオード(LD2)114aの出力に切り換える場合も同様であり、本実施例では分析トリガ信号14の立ち下がりタイミングP3に第2レーザ駆動信号9aを出力するが、第2レーザダイオード(LD2)114aの前回に取得した応答時間t2を記憶していることで、第2レーザ駆動信号9aが発せられてから第2のレーザダイオード(LD2)114aのレーザ光の出力がピークになるまでの時間がわかり、第2レーザ駆動信号9aを発生する前記タイミングP3からこの記憶している応答時間t2だけ、第3のレーザダイオード(LD3)114bのレーザ光の出力停止を遅らせるように構成することによって、第3のレーザダイオード(LD3)114bのレーザ光の出力が無くなるタイミングP4に、第2のレーザダイオード(LD2)114aのレーザ光の出力のピークを持ってくることができ、第3のレーザダイオード(LD3)114bの波長のレーザ光による分析区間W3から第2のレーザダイオード(LD2)114aの波長のレーザ光による分析区間W2への連続した分析が可能になる。
【0082】
分析ディスク201上には、サンプルが存在する部分と、それ以外の部分があるが、限られた面積のサンプルが存在する部分において、効率よく複数のレーザを切り換えることができる。
【0083】
上記の説明では、第2のレーザダイオード(LD2)114a,第3レーザダイオード(LD3)114bを駆動させるたびに応答時間を測定し、応答時間t2,t3を更新する場合を例に挙げて記載したが、第2のレーザダイオード(LD2)114a,第3レーザダイオード(LD3)114bの応答時間をあらかじめ測定した値を記憶しておき、駆動時にこれを選択して使用するように設定操作し、これによってレーザ光の出力が無くなるタイミングに、次のレーザダイオードのレーザ光の出力のピークを持ってくることもできる。
【0084】
また、レーザ出力のために駆動されていない状態(待機状態)のダイオ−ドに対して、バイアス電流を流しておく事は、待機状態のレーザの応答時間を短縮するために有効な手段である。バイアス電流の好ましい流し方は、ダイオードがレーザを出力するための閾値電流よりも低く、80パーセント以上の電流であり、第2のレーザダイオード(LD2)114aにCD用のダイオードを使った場合ではレーザ出力に必要な閾値30mAに対しバイアス電流を25mA流し、また第3レーザダイオード(LD3)114bにDVD用のダイオードを使った場合ではレーザ出力に必要な閾値25mAに対しバイアス電流を20mA流すことで、バイアス電流を全く流さない場合に比べて応答時間の短縮を実現している。
【0085】
上記の各実施の形態では、第2のレーザダイオード(LD2)114aと第3レーザダイオード(LD3)114bとの2種類の分析用ダイオードの駆動切り換え時の状況を説明しているが、3種類以上の分析用ダイオードの切り換え時にも、同様な形態をとることは可能である。さらに、読取用ダイオードである第1のレーザダイオード(LD1)113と分析用ダイオード間の切り換え時にも、同様な形態をとることは可能である。
【0086】
上記の各実施の形態において、読取用レーザまたは前記分析用レーザの出力を切り換える場合に、後に切り換えられて駆動される読取用ダイオードまたは分析用ダイオードに対して、前記応答時間だけ早く、各レーザ出力駆動手段により、レーザの出力駆動を開始するよう構成したが、後に切り換えられて駆動される読取用ダイオードまたは分析用ダイオードに対して、前記応答時間に近い時間だけ早くレーザの出力駆動を開始するよう構成することもできる。
【0087】
上記の各実施の形態において、読取用ダイオード(LD1)113または前記分析用ダイオード(LD2)(LD3)から出射されて前記分析ディスク201を透過した光を読み取るために第1のフォトディテクタ(PD1)117を分析ディスク201の上側に設けたが、読取用ダイオード(LD1)113または前記分析用ダイオード(LD2)(LD3)から出射されて前記分析ディスク201で反射した光を読み取るための第1のフォトディテクタ(PD1)117を分析ディスク201の下側、つまりピックアップ107と同じ側に設けて構成することもできる。この場合、第1のフォトディテクタ(PD1)117と第2のフォトディテクタ(PD2)213とを格別に設けて構成する例と、第1のフォトディテクタ(PD1)117を設けずに第2のフォトディテクタ(PD2)213だけを設けて、第2のフォトディテクタ(PD2)213の出力から映像信号処理回路112とRF信号処理回路214とに信号を供給して構成する例を挙げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明にかかる光学分析装置は、生物学的、化学的または生化学的なサンプルの光学特性に広範囲に対応することができ、血液中の脂質、血糖値などの測定を行う医療検査分野等に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施の形態1における光学分析装置の構成図
【図2】同実施の形態で使用する分析ディスクの平面図
【図3】同実施の形態の分析ディスクの断面図
【図4】レーザ切り換えタイミングチャート
【図5】サンプルの前後位置にマーカーを設けた分析ディスクの平面図
【図6】本発明の実施の形態2における光学分析装置の構成図
【図7】同実施の形態における分析ディスクの平面図
【図8】本発明の実施の形態3における光学分析装置のレーザ切換え及びレーザ駆動手段の構成図
【図9】同実施の形態における動作を示すタイミングチャート
【図10】従来の分析ディスクの一部切り欠き平面図
【図11】従来の分析ディスクの断面図
【図12】一般的な光ディスクドライブ装置の構成図
【符号の説明】
【0090】
9 レーザ切換え手段
9a 第2レーザ駆動信号
9b 第3レーザ駆動信号
10a 第2レーザ出力モニタ手段
10b 第3レーザ出力モニタ手段
11a 第2レーザ出力モニタ信号
11b 第3レーザ出力モニタ信号
12 レーザ応答時間測定手段
14 分析トリガ信号
103 分析ディスク201のトラック
106 ディスクモータ
107 ピックアップ
108 トラバースモータ
109 送りねじ
110 サーボコントロール回路
111,111a,111b サンプル
112 映像信号処理回路
113 第1のレーザダイオード(LD1)
114 第2のレーザダイオード(LD2)
114b 第3のレーザダイオード(LD3)
115 第1レーザ出力駆動手段
116 第2レーザ出力駆動手段
116a 第2レーザ出力駆動手段
116b 第3レーザ出力駆動手段
117 第1のフォトディテクタ(PD1)
201 分析ディスク
202a 分析ディスク201の表面
202b 分析ディスク201の裏面
203 サンプル111が配置された読み取りエリア
204,204a,204b マーカー
206 トラック103に形成されたピットもしくはウオブル
207 トラック103に形成されたランド
208 切り換えスイッチ
210 制御部
213 第2のフォトディテクタ(PD2)
214 RF信号処理回路
C 回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックにアドレス情報が記録された光ディスクの一部に分析対象のサンプルを配置した分析ディスクを回転させながら、前記サンプルを光学的に分析する光学分析装置であって、
前記分析ディスクのトラックのアドレス情報に関するデータを読み取るレーザ光を出力する読取用ダイオードと、
前記読取用ダイオードとは異なる波長のレーザ光を前記サンプルに出力する分析用ダイオードと、
前記読取用ダイオードまたは前記分析用ダイオードから出射されて前記分析ディスクで反射または前記分析ディスクを透過した光を読み取る第1のフォトディテクタと、
前記読取用ダイオードまたは前記分析用ダイオードから出射されて前記分析ディスクで反射した光を読み取る第2のフォトディテクタと
を備え、前記第2のフォトディテクタの読み取り出力に基づいて前記読取用ダイオードと分析用ダイオードの前記分析ディスクの径方向の位置制御を実行し、前記第1のフォトディテクタの読み取り出力から前記サンプルの分析結果を読み取るよう構成した
光学分析装置。
【請求項2】
同一のサンプルに対して、前記読取用ダイオードを光源として前記分析ディスクで反射または前記分析ディスクを透過した光を第1のフォトディテクタで読み取った分析結果と、前記分析用ダイオードを光源として前記分析ディスクで反射または前記分析ディスクを透過した光を第1のフォトディテクタで読み取った分析結果とに基づいて、最終分析結果を出力するように構成した
請求項1記載の光学分析装置。
【請求項3】
前記分析用ダイオードは、互いに異なる波長のレーザ光を出力する複数の分析用ダイオードで構成し、同一のサンプルに対して、前記分析用ダイオードの一つの分析用ダイオードを光源として前記分析ディスクで反射または前記分析ディスクを透過した光を第1のフォトディテクタで読み取った分析結果と、前記分析用ダイオードの他の分析用ダイオードを光源として前記分析ディスクで反射または前記分析ディスクを透過した光を第1のフォトディテクタで読み取った分析結果とに基づいて、最終分析結果を出力するように構成した
請求項1記載の光学分析装置。
【請求項4】
トラックにアドレス情報が記録された光ディスクの一部に分析対象のサンプルを配置した分析ディスクを回転させながら、前記サンプルを光学的に分析する光学分析装置であって、
前記分析ディスクのトラックのアドレス情報に関するデータを読み取るレーザ光を出力する読取用ダイオードと、
前記読取用ダイオードとは異なる波長のレーザ光を前記サンプルに出力する分析用ダイオードと、
前記読取用ダイオードまたは前記分析用ダイオードから出射されて前記分析ディスクで反射した光を読み取るフォトディテクタと
を備え、前記フォトディテクタの読み取り出力に基づいて前記読取用ダイオードと分析用ダイオードの前記分析ディスクの径方向の位置制御を実行し、かつ前記分析ディスクのサンプルの読み取り位置における前記フォトディテクタの読み取り出力から前記サンプルの分析結果を読み取るよう構成した
光学分析装置。
【請求項5】
同一のサンプルに対して、前記読取用ダイオードを光源として前記分析ディスクのサンプルの読み取り位置において前記フォトディテクタの読み取った分析結果と、
前記分析用ダイオードを光源として前記分析ディスクのサンプルの読み取り位置において前記フォトディテクタの読み取った分析結果とに基づいて、最終分析結果を出力するように構成した
請求項4記載の光学分析装置。
【請求項6】
前記分析用ダイオードは、互いに異なる波長のレーザ光を出力する複数の分析用ダイオードで構成した
請求項1または請求項4記載の光学分析装置。
【請求項7】
前記分析用ダイオードは、互いに異なる波長のレーザ光を出力する複数の分析用ダイオードで構成し、同一のサンプルに対して、前記分析用ダイオードの一つの分析用ダイオードを光源として前記分析ディスクのサンプルの読み取り位置において前記フォトディテクタの読み取った分析結果と、前記分析用ダイオードの他の分析用ダイオードを光源として前記分析ディスクのサンプルの読み取り位置において前記フォトディテクタの読み取った分析結果とに基づいて、最終分析結果を出力するように構成した
請求項1または請求項4記載の光学分析装置。
【請求項8】
読取用ダイオードと分析用ダイオードとを1つのピックアップに搭載した
請求項1〜請求項6の何れかに記載の光学分析装置。
【請求項9】
複数のサンプルが周方向の異なる位置に配置された分析ディスクに対して、サンプル位置に応じて駆動する分析用ダイオードを切り換えるように構成した
請求項6記載の光学分析装置。
【請求項10】
同一のサンプルの走査期間に駆動する分析用ダイオードを切り換えるように構成した
請求項6記載の光学分析装置。
【請求項11】
分析用ディスクの所定の回転ごとに駆動する分析用ダイオードを切り換えるように構成した
請求項6記載の光学分析装置。
【請求項12】
分析ディスクに設けたマーカーを読み取ることで、読取用ダイオードの出力と、分析用ダイオードの出力の切り換えを行うよう構成した
請求項1または請求項4記載の光学分析装置。
【請求項13】
前記読取用ダイオードを駆動する読取用レーザ出力駆動手段と、
前記分析用ダイオードを駆動する分析用レーザ出力駆動手段、
前記読取用レーザまたは前記分析用レーザの出力を切り換えるためのレーザ切換え手段と、
前記読取用ダイオードのレーザ出力をモニタする読取用レーザ出力モニタ手段と、
前記分析用ダイオードのレーザ出力をモニタする分析用レーザ出力モニタ手段と、
前記読取用または分析用レーザ出力駆動手段が駆動開始してから所定の大きさのレーザが出力されるまでの応答時間を、各出力モニタ手段の出力からそれぞれ測定するレーザ出力応答測定手段と
を備え、前記レーザ出力応答測定手段は、前記読取用レーザまたは前記分析用レーザの出力を切り換える場合に、後に切り換えられて駆動される読取用ダイオードまたは分析用ダイオードに対して、前記応答時間またはそれに近い時間だけ早く、各レーザ出力駆動手段により、レーザの出力駆動を開始するよう構成した
請求項1または請求項4記載の光学分析装置。
【請求項14】
応答時間は読取用レーザまたは分析用レーザの駆動に際して分析に使用するダイオードの応答時間を測定するよう構成した
請求項13記載の光学分析装置。
【請求項15】
前記読取用レーザ出力駆動手段及び前記分析用レーザ出力駆動手段は、それぞれのレーザを出力していない場合にも、それぞれのダイオードにバイアス電流を流すように構成した
請求項13記載の光学分析装置。
【請求項16】
分析用ダイオードにてレーザ光を出力する区間では、光ピックアップの位置を読取用ダイオードからレーザを出力していた時の最後の位置に保持するように構成した
請求項2または請求項5記載の光学分析装置。
【請求項17】
読取用ダイオードを用いて前記サンプルの画像データを取得し、分析用ダイオードを用いて前記サンプルの比色データを取得するよう構成した
請求項1または請求項4記載の光学分析装置。
【請求項18】
分析ディスクの所定の回転数ごとに分析用ダイオードのレーザ光の波長を切り換えて分析を行うか、または分析ディスクが所定の回転を行う間に複数の分析用ダイオードのレーザ出力を切り換えて分析を行うよう構成した
請求項3または請求項7記載の光学分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−47157(P2006−47157A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230006(P2004−230006)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】