説明

光学的検出装置

【目的】
デザインや配色上の制約をなくし、低コストかつ高強度で、検出方法を自由に選択できると共に素子の故障等にも対応し得る装置を提供する。
【構成】
光学的検出装置の透明板23の周縁部に、一体的にかつ発光素子6及び受光素子7側へ拡大してフィルタ部23Cを形成した。このフィルタ部23Cは各素子6,7への外部からの不要な光の侵入を防ぐと共に上側面が保護カバー21に広い面積で接着される。フィルタ部23Cの内側には装置の外観等に合わせた色の着色部を設けた。選択手段で一方向と他方向の素子対を選択的に駆動させ、各素子の使用頻度を抑える。隣接素子作動手段で故障素子に代えて隣接する素子を作動させ、一部の故障等に対する抵抗力を強めて信頼性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の有無または位置を光学的に検出する光学的検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、光学的検出装置1は、図15に示すように、表示部2と組み合わされ、コンピュータ等の入力装置として使用される。この光学的検出装置1は表示部2の表面を覆って設けられる。
【0003】
表示部2の表示画面2Aには、コンピュータ等から送信されるメニュー等の画面やアイコン等を表示する。オペレータは希望する命令を実行させるために、特定のアイコンを指で触れる等の手段により選択する。また、表示部2をなぞり、文字や図形等を入力する。
【0004】
表示部2を指で触れる等の手段でアイコン等を選択するときに、その指等の有無及び位置を検出する手段が光学的検出装置1である。
【0005】
この光学的検出装置1は主に、後述の発光素子6及び受光素子7等が搭載される基板3と、この基板3を覆って設けられ発光素子6及び受光素子7等を保護する保護カバー4と、保護カバー4の開口部4Aに取り付けられ表示部2の表示画面2Aを覆って保護する透明板5とから構成されている。保護カバー4の開口部4Aは表示部2の表示画面2Aとほぼ同じ大きさに設定されている。そして、この開口部4Aが、アイコンを選択したり、文字や図形等を入力するときのタッチ領域となっている。
【0006】
基板3には、その開口部3Aを取り囲むように一群の発光素子6及び受光素子7が取り付けられている。各発光素子6は開口部3Aの隣り合う2つの辺に亘って配設され、各受光素子7は各発光素子6に対向する位置である開口部3Aの隣り合う2つの辺に亘って配設されている。これらの発光素子6及び受光素子7は互いに対向したもの同士でそれぞれ対をなしている。各発光素子6及び受光素子7によって、図16に示すようにタッチ領域でXY軸方向にマトリックス状の光を通すようになっている。各発光素子6及び受光素子7間に通される各光で構成されるXY座標が、コンピュータの座標系に整合するように設定されている。各発光素子6及び受光素子7はこれらを制御する制御部8(図19参照)に接続されている。なお、図16中のAは指等の障害物であり、この障害物AによってX軸及びY軸方向の光が遮られた状態を示す。
【0007】
発光素子6及び受光素子7が取り付けられる部分の具体的な構成は、図17に示すように、保護カバー4の内側(下側)に基板3が位置し、この保護カバー4に透明板5が取り付けられている。この透明板5は基板3と同一高さに配設され、基板3に取り付けられた発光素子6及び受光素子7による光を透明板5の外側面(上側面)に通すようになっている。この透明板5は保護カバー4に、傾斜窓部材10を介して取り付けられている。傾斜窓部材10と透明板5との間及び傾斜窓部材10と保護カバー4との間は接着剤等で接着されている。この傾斜窓部材10は、可視光線を通さず発光素子6からの光を通すフィルタ材で構成されている。このフィルタ材は黒色を有している。
【0008】
また、図18に示すように、傾斜窓部材11が保護カバーを兼用する構成のものもある。傾斜窓部材11と透明板5との間は接着剤等で接着されている。この場合は、必要に応じて別部材の保護カバー12が設けられる。
【0009】
各発光素子6及び受光素子7を制御する制御部8は、図19に示すように構成されている。各発光素子6及び受光素子7はそれぞれまとまって、発光素子アレー6A及び受光素子アレー7Aを構成している。図中の15は発光素子駆動回路、16はマルチプレクサ、17はマイクロプロセッサ、18は増幅器、19は比較器である。
【0010】
発光素子駆動回路15は発光素子アレー6Aの各発光素子6を駆動して一方から順に発光させ、タッチ領域においてX軸方向及びY軸方向に光を走査させる。マルチプレクサ16は受光素子アレー7Aの各受光素子7を制御し、発光素子6からの光の走査に応じて受光素子7を順に作動させる。
【0011】
各受光素子7で得た受光信号は、マルチプレクサ16を介して増幅器18で増幅され、比較器19で特定基準レベルと比較される。そして、遮光の有無によって変る比較器19からの出力信号が検出信号としてマイクロプロセッサ17に入力する。
【0012】
マイクロプロセッサ17は、発光素子駆動回路15及びマルチプレクサ16を制御して、各素子6,7をX座標からY座標に亘って一通り走査させる。これにより、1走査毎に物体による遮光の有無を検出する。遮光があった場合は、物体による遮光(タッチオン)を示す走査識別情報と、その遮光位置を示す座標データとからなる遮光情報をコンピュータ等に送信する。
【0013】
また、マイクロプロセッサ17では、走査中に異常を検出したとき、例えば一定時間以上遮光があるときや光量が異常に低下したときは、この素子対の故障か否かを判定する。この判定は次のようにして行なう。対象となる素子対方向に配設された発光素子6を発光させ、相対向する受光素子7の出力の有無をみる。出力が無いときは、発光素子6の電圧を測定し、故障か否かを判断する。故障でなければ受光素子7の不良、故障していれば発光素子6の不良として、この素子対は不良素子とみなして検出処理から除外される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところが、前述の光学的検出装置では、傾斜窓部材10として黒色のフィルタ材が用いられるので、外観デザイン上及び配色上の制約が大きくなる。
【0015】
また、保護カバー4、透明板5及び傾斜窓部材10を互いに接着する構成であるため、組み立て工程が複雑になり、コスト高になってしまう。さらに、強度も弱く、信頼性に欠ける。
【0016】
また、これを補うために傾斜窓部材11の外側を保護カバー12で覆って補強することも考えられるが、この場合、保護カバー12の分だけ厚みが増して嵩ばる。配色上の制約は依然として残る。傾斜窓部材11の接続部分の強度は依然として劣る。さらに、保護カバー12を設けると、部品点数が増加すると共に組立工程も複雑化し、コスト高の原因となる。
【0017】
一方、前記従来の光学的検出装置1では、発光素子6及び受光素子7の素子対の走査方法にはおおまかに2種類あった。
【0018】
1つは、1回の走査処理でX軸とY軸の両方を走査し、各走査処理毎に物体の有無及び座標の検出を行なうものである。もう1つは、1回の走査処理でX軸かY軸の片方のみを走査し、その軸方向で遮光があったときだけ、もう一方の軸方向も走査し、物体の有無及び座標の検出を行なうものである。後者は消費電力の低減、各素子6,7の寿命の延長、耐用年数の長期化(あるいは応答時間の短縮)を図っている。ところが、これらの走査処理は各装置に固定されたもので、必要に応じて切替えることはできなかった。
【0019】
また、物体が遮光する位置と同一箇所の素子対の各素子6,7が故障すると、その位置での物体の検出が不可能であった。
【0020】
さらに、光学的検出装置1を接続するコンピュータ等において、故障箇所の位置座標をプログラムに組み込んだソフトウェアを用いていると、故障発生によってコンピュータ等が使用できなくなってしまう。
【0021】
また、図20のように対となるべき素子6,7の片方が構造的にどうしても配設できない部分が生じる場合がある。この場合、その配設できない部分での検出が不可能となり、不感地帯となってしまう。
【0022】
本発明は上記問題点に鑑みなされたもので、デザインや配色上の制約が少なく、低コストかつ高強度で、検出方法を自由に選択できると共に素子の故障等にも対応できる薄型の光学的検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するために第1の発明は、表示装置の表示部を取り囲むように形成され発光素子及び受光素子等を搭載する基板と、この基板を覆って設けられた保護カバーと、この保護カバーに取り付けられ前記表示部を覆う透明板とからなり、前記発光素子からの光を前記透明板の外側面に沿って前記受光素子まで通し、この光が遮光されることで透明板の表面に存する物体を光学的に検出する光学的検出装置において、前記透明板の周縁部に一体的にかつ前記発光素子及び受光素子側へ拡大して形成され、各素子への外部からの不要な光の侵入を防ぐと共に上側面が前記保護カバーに接着されるフィルタ部を備えたことを特徴とする。
【0024】
第2の発明は、前記フィルタ部の内側に着色部を設けたことを特徴とする。
【0025】
第3の発明は、前記着色部が、前記フィルタ部の内側面に直接着色して構成されたことを特徴とする。
【0026】
第4の発明は、前記着色部が、前記フィルタ部の内側に配設された着色板材で構成されたことを特徴とする。
【0027】
第5の発明は、前記フィルタ部のうち前記発光素子及び受光素子に対向する面に黒色フィルタを貼設したことを特徴とする。
【0028】
第6の発明は、交差する2方向のそれぞれに少なくとも一対の発光素子及び受光素子を互いに対向させ所定距離離間して配置し、各素子間に通された光を遮断する物体の有無または位置の一方または両方を検出する光学的検出装置において、一方向の素子対と他方向の素子対とをともに駆動する第1駆動手段を備えた第1検出手段と、前記各方向のいずれか一方の素子対を駆動する第2駆動手段及び、遮光があったときのみ他方の素子対を駆動させる第3駆動手段を備えた第2検出手段と、前記第1または第2検出手段のいずれを選択するかの条件信号を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された条件信号に従って前記第1または第2検出手段のいずれかを選択する選択手段とを有することを特徴とする。
【0029】
第7の発明は、交差する2方向のそれぞれに少なくとも一対の発光素子及び受光素子を互いに対向させ所定距離離間して配置し、各素子間に通された光を遮断する物体の有無または位置の一方または両方を検出する光学的検出装置において、前記発光素子または受光素子の故障情報を記憶する第1記憶手段と、前記発光素子または受光素子の不具備情報を記憶する第2記憶手段と、前記第1または第2記憶手段に記憶された故障または不具備の発光素子または受光素子に代えて該素子に隣接する素子を作動させる隣接素子作動手段とを備えたことを特徴とする。
【0030】
〔作用〕
第1の発明では、発光素子及び受光素子側へ拡大して形成したフィルタ部を備えたので、外部からの不要な光はこのフィルタ部に侵入しても発光素子及び受光素子まで到達することはできず、誤動作を防止することができる。
【0031】
また、透明板の周縁部に一体的に形成したフィルタ部の上側面が保護カバーの下側面に広い範囲で接着されるため、この保護カバーと透明板とが強固に接合される。
【0032】
第2の発明では、フィルタ部の内側に、フィルタとしての機能を考慮する必要なしに、任意の色を施した着色部を設けることができるので、デザイン上及び配色上の制約をなくすことができる。
【0033】
この場合、着色部としては、第3の発明のように前記フィルタ部の内側面に直接着色してもよく、また第4の発明のように前記フィルタ部の内側に着色板材を配設してもよい。
【0034】
第5の発明では、前記フィルタ部のうち前記発光素子及び受光素子に対向する面に黒色フィルタを貼設したので、フィルタ部の機能だけでは除去できない程度の強い外部光がある場合に有効である。この黒色フィルタは、可視光線を通さず発光素子6からの光を通す従来のフィルタである。この黒色フィルタはフィルタ部のうち最も内側である発光素子及び受光素子に対向する面に設けられているので、外部から見えることはなく、外観デザインへ影響を及ぼすことはない。
【0035】
第6の発明では、記憶手段に記憶された条件信号に従って選択手段で第1または第2検出手段のいずれかを選択する。第1検出手段を選択すると、第1駆動手段で一方向の素子対と他方向の素子対とをともに駆動し、物体の有無とその位置を検出する。第2検出手段を選択すると、まず第2駆動手段で遮光があるまでいずれか一方の素子対を駆動させる。そして、遮光があると、第3駆動手段で他方の素子対を駆動させて、両方向の素子対で物体の有無とその位置を検出する。
【0036】
これにより、各素子の使用頻度を抑えて消費電力の低減、各素子6,7の寿命の延長、耐用年数の長期化を図ることができる。
【0037】
第7の発明では、走査中に素子の故障が発生すると、その故障情報を第1記憶手段に記憶する。また、不具備情報は予め第2記憶手段に記憶しておく。走査する場合は、隣接素子作動手段で第1または第2記憶手段に記憶された情報に基づいて故障等の素子に代えて該素子に隣接する素子を作動させる。
【0038】
これにより、一部の故障等に対する抵抗力が強く、信頼性の高い装置とすることができる。
【発明の効果】
【0039】
以上詳述したように、本発明の光学的検出装置によれば以下のような効果を奏することができる。
【0040】
(1) 発光素子及び受光素子側へ拡大して形成したフィルタ部を備えたので、外部からの不要な光はこのフィルタ部に侵入しても発光素子及び受光素子まで到達することはできず、誤動作を防止することができる。
【0041】
(2) 透明板の周縁部に一体的に形成したフィルタ部の上側面が保護カバーの下側面に広い範囲で接着されるため、この保護カバーと透明板とが強固に接合される。
【0042】
(3) フィルタ部の内側に、フィルタとしての機能を考慮する必要なしに、任意の色を直接着色したり、着色板材を配設した着色部を設けることができるので、デザイン上及び配色上の制約をなくすことができる。
【0043】
(4) 前記フィルタ部のうち前記発光素子及び受光素子に対向する面に黒色フィルタを貼設したので、フィルタ部の機能だけでは除去できない程度の強い外部光がある場合に有効である。この黒色フィルタは、可視光線を通さず発光素子6からの光を通す従来のフィルタである。この黒色フィルタはフィルタ部のうち最も内側である発光素子及び受光素子に対向する面に設けられているので、外部から見えることはなく、外観デザインへ影響を及ぼすことはない。
【0044】
(5) 記憶手段に記憶された条件信号に従って選択手段で第1または第2検出手段のいずれかを選択するようにしたので、各素子の使用頻度を抑えて消費電力の低減、各素子6,7の寿命の延長、耐用年数の長期化を図ることができる。
【0045】
(6) 隣接素子作動手段で第1または第2記憶手段に記憶された情報に基づいて故障等の素子に代えて該素子に隣接する素子を作動させるので、一部の故障等に対する抵抗力が強く、信頼性の高い装置とすることができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明に係る光学的検出装置の実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施例に係る光学的検出装置の全体構成は、前記従来の光学的検出装置とほぼ同様であるため、同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0047】
本実施例の光学的検出装置では、発光素子6及び受光素子7が取り付けられる部分の具体的な構成は図1に示すようになっている。保護カバー21の内側(下側)に基板22が位置し、この保護カバー21に透明板23が取り付けられている。透明板23は基板22と同一高さに配設され、基板22に取り付けられた発光素子6及び受光素子7による光を透明板23の外側面(上側面)に通すようになっている。以上の構成は前記従来の光学的検出装置とほぼ同様である。
【0048】
そして透明板23は、表示部2の表示画面2Aを覆うカバー部23Aと、このカバー部23Aの周縁から斜め上方に立ち上げて一体成形された傾斜窓部23Bと、この傾斜窓部23Bの上端部から外周方向(図1中の左方向)に延ばして形成されたフィルタ部23Cとから構成されている。このカバー部23A、傾斜窓部23B及びフィルタ部23Cは全部透明な材料(合成樹脂等)で成形されている。フィルタ部23Cは、受発光素子6,7側端面から外側端面(傾斜窓部23Bの外側面)までの距離を長くすることで、フィルタとして機能させ、外部からの不要な光の侵入(特に受光素子7への侵入)を防止している。傾斜窓部23B及びフィルタ部23Cの内側面23D,23Eは、光学的検出装置全体のデザインに合せた色に着色されている。この着色は、保護カバー21と表示画面2Aとの間であって、外側から内部が見える部分に施されている。これにより、外観デザインが向上すると共に外部から受発光素子6,7が見えないようになっている。この着色の手段としては、シルク印刷、塗装、インモールド等が用いられる。シルク印刷は、図2に示すように、印刷対象部分25以外をマスキングし、布26を製品にあて印刷する。塗装は、その対象部分以外をマスキングし吹付け塗装、その他の塗装法により行なう。インモールド法では、図3に示すように、金型27に予め特定色のシート28を入れ込み、透明な樹脂を成形する。
【0049】
保護カバー21と透明板23とは、保護カバー21の下側面と透明板23のフィルタ部23Cの上側面とが互いに接着されることで、広い面積で互いに接合されている。
【0050】
光学的検出装置の回路構成は、前記従来技術の光学的検出装置とほぼ同様である。そして、本実施例のマイクロプロセッサ31には、図4に示すように、制御回路32の他にROM33、フラグ34が備えられている。フラグ34には、条件フラグ34A、規定回数34B,規定時間34C,規定回数カウンタ34D,規定時間カウンタ34Eが備えられている。条件フラグ34Aは各種の条件に対応した信号を設定するためのものである。この条件としては、ホストコンピュータ等から条件信号が出力されたときや、遮光のない状態が規定時間及び規定回数を超えたとき等がある。また、ホストコンピュータ等からの条件信号としては次のようなものがある。例えばATMにおいて、ホストコンピュータ等に接続されたセンサ等を用いてATMの前における人間の存在の有無を検出し、人間が存在しないときにX軸かY軸の片方のみを走査させる制御信号等である。
【0051】
条件フラグ34Aは、このような条件に従って走査モード(例えば、X軸かY軸の片方のみを走査する省エネルギーモードや高速で走査する高速モード等)を判断するものである。
【0052】
規定回数34Bは検出回数の規定となる回数、規定時間34Cは検出時間の規定となる時間、規定回数カウンタ34Dは検出回数をカウントするRAM、規定時間カウンタ34Eは検出時間を測定(カウント)するRAMである。
【0053】
ROM33には座標検出等に必要なプログラム及び図5及び図6に示す処理機能が格納され、これに基づいて制御回路32で各部を制御する。マイクロプロセッサ31には条件信号発生器(図示せず)が接続されている。この条件信号発生器は前記ホストコンピュータ等である。
【0054】
図5(A)のフローチャートで示す処理は次のようになっている。この処理は光学的検出装置が電源ONされている間中、繰り返し行なわれる。具体的にはステップ1において、制御回路32でROM33のプログラムに従い条件信号発生器を参照して条件信号の有無を判断する。条件信号がある場合は、ステップ2に移り、条件フラグ34Aをセットする。条件信号がない場合は、ステップ3に移り、条件フラグ34Aをクリアする。
【0055】
ステップ4では規定回数カウンタ34Dと規定回数34Bとを比較し、カウンタ34Dでのカウント数が規定回数34Bを超えている場合はステップ5に移り、条件フラグをセットする。超えていない場合はステップ6に移る。
【0056】
ステップ6では、規定時間カウンタ34Eと規定時間34Cとを比較し、カウンタ34Eでのカウンタ数が規定時間34Cを超えている場合はステップ7に移り、条件フラグ34Aをセットする。超えていない場合はステップ8に移る。
【0057】
ステップ8では条件フラグ34Aがセットされているか否かを判断し、セットされていない場合はステップ9においてX軸とY軸との両方を走査して物体の有無及び位置を検出し、ステップ10において座標データ等の遮光情報を送信してステップ1に戻る。
【0058】
ステップ8において条件フラグ34Aがセットされている場合は、ステップ11において、X軸またはY軸の一方を走査する。なおこの場合、X軸またはY軸のいずれを走査させるように設定してもよい。次いで、ステップ12において遮光があるか否かを判断し、遮光がない場合は、ステップ13において遅延時間を置いた後、ステップ14において規定回数カウンタ34Dをカウントアップする。次いで、ステップ10において座標データ等の座標情報を送信してステップ1に戻る。
【0059】
ステップ12において遮光がある場合は、ステップ15においてX軸またはY軸の他方を走査する。次いで、ステップ16において条件フラグ34Aをクリアし、ステップ17において規定回数カウンタ34Dをクリアし、さらにステップ18において規定時間カウンタ34Eをクリアする。次いでステップ10において座標データ等の遮光情報を送信してステップ1に戻る。そして、前記各処理を繰り返す。
【0060】
一方、前記処理の途中において、図5(B)に示す割込み処理が行なわれる。割込み処理はタイマにより一定時間毎に行なわれる。
【0061】
この割込み処理では、ステップ19において遮光があるか否かを判断し、遮光がある場合は割込み処理を終了する。遮光がない場合にはステップ20において規定時間カウンタ34Eを作動させる。
【0062】
なお、前記ステップ9によって、X軸及びY軸の両方向の素子対をともに駆動する第1駆動手段が構成されている。このステップ9によって構成された第1駆動手段によって第1検出手段が構成されている。
【0063】
ステップ11によって、X軸及びY軸のいずれか一方の素子対を駆動する第2駆動手段が構成されている。ステップ12及びステップ15で、遮光があったときのみ他方の素子対を駆動させる第3駆動手段が構成されている。そして、これらステップ11、ステップ12及びステップ15で第2検出手段が構成されている。
【0064】
また、ステップ8で、記憶手段に記憶された条件信号に従って前記第1または第2検出手段のいずれかを選択する選択手段が構成されている。
【0065】
第1または第2検出手段のいずれを選択するかの条件信号を記憶する記憶手段は、条件フラグ34Aによって構成されている。
【0066】
図6のフローチャートで示す処理は次のようになっている。この処理も光学的検出装置が電源ONされている間中、繰り返し行なわれる。具体的には、ステップ21において、各素子をチェックする。即ち、各素子が異常であるか否か、異常の場合には素子自体の故障か、または不具備、即ち構造上有効か否かが判断される。
【0067】
異常と判断された場合、遮光部の発光素子6の発光量及び受光素子7の受光感度を調整する。これにより、受光素子7から受光信号が発生したときは、遮光部の各素子6,7は正常と判断する。この場合、次の走査から該当素子対の発光量または受光感度を前記調整値で走査するようにRAMに記録される。
【0068】
前記発光量及び受光感度の調整によって受光信号が発生しないときは、以下の態様のチェックを行なう。
【0069】
(1) 遮光部の発光素子6が異常であるか否かをチェックするために、遮光部の発光素子6を作動させたままで遮光部の受光素子7に隣接する正常な受光素子7を作動させてみる。この隣接受光素子7から受光信号が発生したときは遮光部の発光素子6は正常と判断する。隣接受光素子7から受光信号が発生しないときは遮光部の発光素子6は故障と判断する。
【0070】
(2) 遮光部の受光素子7が異常であるか否かをチェックするために、遮光部の受光素子7を作動させたままで遮光部の発光素子6に隣接する正常な発光素子6を発光させてみる。これにより、遮光部の受光素子7から受光信号が発生する場合はこの遮光部の受光素子7は正常と判断する。遮光部の受光素子7から受光信号が発生しない場合はこの受光素子7の故障と判断する。
【0071】
また、構造上無効の発光素子6及び受光素子7は予めROM33に記録されており、この情報と遮光部の素子対との比較により、構造上無効か有効かを判断する。
【0072】
以上の情報は前記RAMに記録される。
【0073】
なお、前記各判断は、例えばATMにおいて、ホストコンピュータに接続されたセンサ等で人間の存在を検出しないとき等に行なうのが好ましい。
【0074】
以上の情報をステップ21で処理、判断し、各素子6,7が正常か異常かを判断する。正常の場合はステップ22で通常の素子6,7を選択し、異常の場合はステップ23で隣接する発光素子6あるいは受光素子7を選択する。
【0075】
次いで、ステップ24で選択した素子6,7を受発光させ、遮光がないか否かを判断する。
【0076】
さらにステップ25において、すべての素子対の検出が終了しているか否かを判断し、終了していなければステップ21に戻り、前記処理を繰り返す。終了していればステップ26で座標出力処理を行ない、ステップ21に戻って前記処理を繰り返す。
【0077】
なお、前記RAMによって、発光素子6または受光素子7の故障情報を記憶する第1記憶手段及び各素子6,7の不具備情報を記憶する第2記憶手段が構成されている。
【0078】
また、ステップ21,22,23,24によって、前記第1または第2記憶手段に記憶された故障または不具備の各素子6,7に代えて隣接素子6,7を作動させる隣接素子作動手段が構成されている。
【0079】
以上のように構成された光学的検出装置では、フィルタ部23Cを広く(長く)形成することでフィルタとして機能させるため、傾斜窓部23Bを黒色にする必要がなく、任意の色に着色することができる。これにより、外観デザイン上及び配色上の制約がなくなり、光学的検出装置全体のデザインに合せた色に着色することができるようになる。
【0080】
保護カバー21と透明板23とは、広く形成されたフィルタ部23Cの上側面と保護カバー21の下側面とを当接して広い面積で接合したので、接合強度が増し、信頼性が向上する。さらに、このフィルタ部23Cの上側面と保護カバー21の下側面との間だけでこれらを接合するため、組み立て工程が減少し、コスト低減を図れる。
【0081】
また、保護カバー21及び透明板23の部分の厚みが増して嵩ばることがなく、装置を薄形に維持することができる。
【0082】
走査モードを必要に応じて切替え、X軸またはY軸の一方の走査を休止させるので、エネルギーの消費を抑えて、ランニングコストを低減することができる。
【0083】
また、一方の走査を行なうとき、X軸とY軸とを交互に走査すれば、各素子6,7の使用頻度を抑えて寿命を延ばすことができる。
【0084】
さらに、不良素子6,7等を他の素子6,7で補うようにしたので、故障の発生が少なく、信頼性を大幅に向上させることができる。
【0085】
[変形例]発光素子6及び受光素子7が取り付けられる保護カバー21、基板22及び透明板23の部分の構成は、前記実施例の場合に限らず、以下に示す種々の構成でもよい。
【0086】
(1) 第1変形例に係る光学的検出装置の全体構成は図7に示すように、前記実施例の光学的検出装置(図1参照)とほぼ同様である。保護カバー41及び基板42は、前記実施例と同一の構成を有している。
【0087】
透明板43は基板42をその下側から支持する基板支持部43Eを含めて一体的に成形されている。即ち、透明板43は、表示部2の表示画面2Aを覆うカバー部43Aと、このカバー部43Aの周縁部から斜め上方に立上げて形成された傾斜窓部43Bと、この傾斜窓部43Bの上端部に一体的に接続されたフィルタ部43Cと、このフィルタ部43Cの外周縁部から斜め下方に傾斜して形成された連接部43Dと、この連接部43Dの下端部から基板42の下方に延設されこの基板42を支持する基板支持部43Eとから構成されている。フィルタ部43Cは前記実施例同様の機能を有している。
【0088】
そして、傾斜窓部43Bとフィルタ部43Cの内側面が前記実施例同様の手段で着色されている。
【0089】
(2) 第2変形例に係る光学的検出装置は図8に示すように、保護カバー51、基板52及び透明板53ともに前記実施例の光学的検出装置と同様の構成を有している。そして、本変形例では、傾斜窓部53Bとフィルタ部53Cのそれぞれの内側面に、前記実施例同様の手段で所望の色に着色した板材54を貼設した。板材54は傾斜窓部53B及びフィルタ部53Cの内側に合せてくの字形に形成されている。
【0090】
(3) 第3変形例に係る光学的検出装置は図9に示すように、保護カバー61、基板62及び透明板63ともに前記実施例の光学的検出装置と同様である。そして、本変形例では、基板62と透明板63との間に、前記実施例同様の手段で所望の色に着色した板材64を配設した。この板材64は基板62の延長上に位置し、基板62と同様の厚さの平板材で構成されている。
【0091】
(4) 第4変形例に係る光学的検出装置は図傾斜窓部材10に示すように、前記第1変形例の光学的検出装置とほぼ同様の構成を有している。透明板73は、基板72をその下側から支持する基板支持部73Eを含めて一体的に成形されている。即ち、透明板73は、表示部2の表示画面2Aを覆うカバー部73Aと、このカバー部73Aの周縁部から斜め上方に立上げて形成された傾斜窓部73Bと、この傾斜窓部73Bの上端部に一体的に接続されたフィルタ部73Cと、このフィルタ部73Cの外周縁部から斜め下方に傾斜して形成された連接部73Dと、この連接部73Dの下端部から基板42の下方に延設されこの基板72を支持する基板支持部73Eとから構成されている。
【0092】
基板72は傾斜窓部73Bの内側面まで延長して形成されている。そして、この基板72の傾斜窓部73B側の部分または全体を所望の色に着色している。即ち、この基板72が前記第3変形例の板材64と同様に機能している。
【0093】
連接部73Dは、各角部(保護カバー71の4角部)に位置する部分を残し、基板72が挿入できる長穴75が形成されている。
【0094】
(5) 第5変形例に係る光学的検出装置は図11に示すように、保護カバー81、基板82及び透明板83ともに前記実施例の光学的検出装置とほぼ同様の構成を有している。そして、本変形例では、フィルタ部83Cのうち、受発光素子6,7側端部面に前記従来技術で用いた黒色フィルタ材84を貼設した。このフィルタ材84は、別体の板材としても、シルク印刷等で施してもよい。このフィルタ材84は、フィルタ部83Cで防止できない程の外部光がある場合に設けられる。傾斜窓部83Bとフィルタ部83Cのそれぞれの内側面は所望の色に着色している。黒色フィルタ材84はその貼設位置のため外部から見えることはなく、デザイン上等の制約とはならない。
【0095】
(6) 第6変形例に係る光学的検出装置は図12に示すように、第5変形例の光学的検出装置と同様の構成を有している。そして、本変形例では、傾斜窓部83Bとフィルタ部83Cの内側面に、前記第2変形例の板材54と同様の板材86を貼設した。
【0096】
(7) 第7変形例に係る光学的検出装置は図13に示すように、前記実施例の光学的検出装置と同様である。そして、本変形例では、傾斜窓部23Bの外側面に、所望の色に着色した板材91を貼設した。
【0097】
(8) 第8変形例に係る光学的検出装置も図14に示すように、前記実施例の光学的検出装置と同様である。そして、本変形例では、傾斜窓部23Bの外側面を所望の色に着色した。
【0098】
以上の構成の各変形例でも、前記実施例同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】保護カバー、基板及び透明板の取り付け構造を分解した状態で示す断面図である。
【図2】シルク印刷法を示す模式図である。
【図3】インモールド法を示す模式図である。
【図4】マイクロプロセッサの構成を示すブロック図である。
【図5】X軸とY軸の走査の選択処理及び割込み処理を示すフローチャートである。
【図6】不良素子等の検出処理を示すフローチャートである。
【図7】第1変形例に係る光学的検出装置を示す断面図である。
【図8】第2変形例に係る光学的検出装置を示す断面図である。
【図9】第3変形例に係る光学的検出装置を示す断面図である。
【図10】第4変形例に係る光学的検出装置を示す断面図である。
【図11】第5変形例に係る光学的検出装置を示す断面図である。
【図12】第6変形例に係る光学的検出装置を示す断面図である。
【図13】第7変形例に係る光学的検出装置を示す断面図である。
【図14】第8変形例に係る光学的検出装置を示す断面図である。
【図15】光学的検出装置を示す分解斜視図である。
【図16】光学的検出装置のタッチ領域を示す平面図である。
【図17】従来の光学的検出装置における保護カバー、基板及び透明板の取り付け構造を分解した状態で示す断面図である。
【図18】図17の光学的検出装置の変形例を示す断面図である。
【図19】制御部を示すブロック図である。
【図20】構成上素子を配置できない場合の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0100】
21…保護カバー、
22…基板、
23…透明板、
23A…カバー部、
23B…傾斜窓部、
23C…フィルタ部、
23D…傾斜窓部の内側面、
23E…フィルタ部23Cの内側面、
31…マイクロプロセッサ、
32…制御回路、
33…ROM、
34…フラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差する2方向のそれぞれに少なくとも一対の発光素子及び受光素子を互いに対向させ所定距離離間して配置し、各素子間に通された光を遮断する物体の有無または位置の一方または両方を検出する光学的検出装置において、前記発光素子または受光素子の故障情報を記憶する第1記憶手段と、前記発光素子または受光素子の不具備情報を記憶する第2記憶手段と、前記第1または第2記憶手段に記憶された故障または不具備の発光素子または受光素子に代えて該素子に隣接する素子を作動させる隣接素子作動手段とを備えたことを特徴とする光学的検出装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差する2方向のそれぞれに少なくとも一対の発光素子及び受光素子を互いに対向させ所定距離離間して配置し、各素子間に通された光を遮断する物体の有無または位置の一方または両方を検出する光学的検出装置において、
前記発光素子または受光素子の故障情報を記憶する第1記憶手段と、前記発光素子または受光素子の不具備情報を記憶する第2記憶手段と、前記第1または第2記憶手段に記憶された故障または不具備の発光素子または受光素子に代えて該素子に隣接する素子を作動させる隣接素子作動手段とを備え、
前記一対の発光素子または受光素子に異常が起きた場合は、当該発光素子または受光素子のいずれに故障が起きたのかを判断し、
当該故障を起こした発光素子または受光素子に隣接する素子を作動させ、
正常な発光素子または受光素子と、当該故障を起こした受光素子または発光素子に隣接する受光素子または受光素子との間で走査を行い、
前記交差する2方向のそれぞれに少なくとも一対の発光素子及び受光素子において、当該2方向の内の1方向の走査を休止することを特徴とする光学的検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−244454(P2006−244454A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−309136(P2005−309136)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【分割の表示】特願2003−97139(P2003−97139)の分割
【原出願日】平成6年7月8日(1994.7.8)
【出願人】(000224798)同和鉱業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】