説明

光学的測定装置

【要 約】
【課 題】簡易な構成で、種々の測定対象に対応して、高精度の測定が可能で、かつ工数を低減し時間ロスの少ない光学的測定装置を提供することである。
【解決手段】光源の光を測定対象に投光して測定対象の材質、厚さ、成分、水分等の性状を測定する光学的測定装置において、測定対象の形状に対応した開口形状を有する複数種類のスリットを回転セクタの光学フィルタに近接して設け、スリットの位置は光源から出た光の結像位置に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、測定対象の材質、厚さ、成分、水分等の性状を測定する光学的測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
測定対象に光源からの所定の波長の光を投光し、その反射光や、透過光から材質、厚さ、成分、水分等の性状を測定する光学的測定装置が知られている。例えば、水が近赤外線領域において1.2μm、1.43μm、1.94μmなどに吸収波長を持っていることを利用した赤外線成分計がある。この波長の赤外線を測定対象に投光する。薄いシート状の物体なら透過光を測定するが、粉粒体などでは反射光を測定する。物体にあたった光は、物体内へ部分的に侵入し、物体内部で吸収・反射を繰返して拡散反射光として外部に出てくる。従ってこの拡散反射光は物体内部の水分により減衰しているので、この強度を測定して物体の水分量を測定することができる。しかし、水の吸収波長のみの計測では、物質までの測定距離、表面状態、粒子の大きさ、色などの影響を受け、安定した水分測定が困難となる。そこで、水の吸収波長の近くに比較波長を設け、吸収波長と比較波長の比率から水分値に演算する。
【0003】
図6にミラー式の赤外線成分計の構成例を示す。光源1から出た光Lはレンズ1Aで集光された後、モータMで回転している回転セクタ2を通過する。回転セクタ2には複数枚の光学フィルタ31〜3Nが取付けられており、所定の波長の近赤外線を通過させる。これらの光はミラー6を介し、投光窓ないし投光レンズよりなる光学体71より、測定対象8に投光される。測定対象8からの反射ないし透過した光は、受光窓ないし受光レンズよりなる光学体72を介して、凹面鏡91で集光され、凸面鏡92を反射し検出素子10に入射する。
【0004】
検出素子10で検出されたアナログ出力信号は、図示しない同期検出器で波長毎に分離されAD変換器などを内蔵したμCPU等の処理手段11に入力される。また、周囲温度Tを検出する温度検出器20の出力、およびLCD表示器等の表示手段13を参照してキースイッチ等の設定手段12その他で設定された検量線データなどの設定信号データ等の必要な他の信号が処理手段11に入力される。水分計で求められた値は、試料を加熱乾燥させて水分の減少量を測定する乾燥重量法や、カールフィッシャー試薬を滴定して試料の水分量を測定するカールフィッシャー法などの他の水分測定方法と一定の関係がある。この関係式が検量線であり、測定対象毎に異なった特性を示す。
【0005】
処理手段11は、内蔵したAD変換器でアナログ信号をデジタル信号に変換し、設定データ等を用いて所定の演算処理を行い、測定対象の所望の水分率、厚み等の性状信号を得ることができる。例えば、水分吸収波長帯の光の信号と非吸収波長帯の光の信号との比を取ることで水分率等が測定できる。
【0006】
例えば、測定対象である塗布糊と塗布糊が塗布されたシートの成分の吸収波長域が重複している場合に、塗布糊が塗布されていないシート部分を含んだ領域の測定を行なうと、シート部分の性状信号が影響して測定精度が低下する。
【0007】
このような光学的測定装置の測定精度の向上を目的として、図6に示すように光源からの光の結像位置に測定対象である、例えば塗布糊の塗布形状に応じた任意形状の開口を有する光束を規制する固定スリット5を設けた本件出願人による特開2001−296242号公報がある。固定スリットは、帯状の移動する測定対象の場合は移動方向に沿って長い長方形や、測定対象の形状に対応した凹形状又は二重丸形状などの開口である。このことにより、測定対象の各点につき流れ方向に関してより多くの光量が得て、流れ方向に沿った測定分布精度を向上させたり、静止している測定対象としての塗布糊などのパターンが凹形状あるいは二重丸形状などのとき、これに合わせた形状の光束を規制するスリットを用いて、測定対象の形状に相当する投光パターンとすることで、測定対象の必要部分からの無駄のない大きな測定光量を得て、測定精度の向上を図っている。
【特許文献1】特開2001‐296242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1において、固定スリット用のスペースや、固定スリット設置用の部品などが必要となり、装置の構成が複雑になり、設計の自由度が減少するという問題点があった。また、一つの固定スリットの開口形状により限定されて測定対象に投光される固定パターンでは、測定対象の形状が一つの条件しか対応できず、測定対象の形状が変化するとそれに応じて固定スリットの交換が必要となり、工数がかかり、時間のロスがあるという問題点があった。
【0009】
この発明の目的は、以上の点に鑑み、簡易な構成で、種々の測定対象に対応して、高精度の測定が可能な光学的測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を達成するため、本発明の請求項1記載の発明は、光源の光を測定対象に投光して測定対象の性状を測定する光学的測定装置において、前記測定対象の形状に対応した開口形状を有する複数種類のスリットを回転セクタの光学フィルタに近接して設け、前記スリットの位置は前記光源からの光の結像位置であることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、前記スリットを保持するスリットホルダーを備えたことを特徴とする請求項1記載の光学的測定装置である。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、光源の光を測定対象に投光して測定対象の性状を測定する光学的測定装置において、前記測定対象の形状に対応した形状の開口を有する複数種類のスリットを回転セクタの光学フィルタに近接して設け、前記スリットを前記光源からの光の結像位置に配置したことを特徴とする光学的測定装置である。このことにより、固定スリット用のスペースが不要となり、回転セクタ用の設置部品と共用することで固定スリット設置専用の部品などが不要となり、簡易な装置構成となる。
【0013】
また、スリットの開口形状が複数種類であることにより、測定対象の形状変化によるスリットの交換頻度が少なくなって工数が減り、時間ロスを低減できる。
【0014】
さらに、測定対象のパターンに合わせた開口を有するスリットを用い、測定対象の形状に対応した投光パターンとすることで、測定対象の必要部分からの無駄のない大きな測定光量が得られ、測定精度の向上が図ることができる。なお、スリットの開口の形状は、どのようなものでもよく、測定対象に応じた最適なものとすればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、この発明の一実施例を示すミラー形の光学的測定装置の構成説明図である。図6と同じ構成部品には同一符号を付している。図1において、投光ランプのような光源1から放射される光Lは、レンズ1Aを介しモータMで回転する回転セクタ2に投光される。この回転セクタ2は、円盤の上に配置された複数の光学フィルタ31〜3Nを有しこれが分光手段を構成し、光源1からの光Lは、測定時に各光学フィルタ31〜3Nのいずれかを順次透過する。
【0016】
この回転セクタに、光源1の集光・結像位置に任意形状の開口を有するスリット41〜4Nが各光学フィルタ31〜3Nに近接して設けられ、光学フィルタを透過した所定波長の光は、ミラー6を介し、投光窓ないし投光レンズよりなる光学体71より、スリット41〜4Nの任意形状の開口に対応したパターンの光として、測定対象8に投光される。
【0017】
測定対象8からの反射ないし透過した光は、受光窓ないし受光レンズよりなる光学体72を介して、凹面鏡91で集光され、凸面鏡92を反射し検出素子10に入射する。
【0018】
検出素子10で検出されたアナログ出力信号は、図6に示した赤外線成分計と同様に、図示しない同期検出器で波長毎に分離されAD変換器などを内蔵したμCPU等の処理手段11に入力される。また、周囲温度Tを検出する温度検出器20の出力、およびLCD表示器等の表示手段13を参照してキースイッチ等の設定手段12その他で設定された検量線データなどの設定信号データ等の必要な他の信号が処理手段11に入力される。処理手段11は、内蔵したAD変換器でアナログ信号をデジタル信号に変換し、設定データ等を用いて所定の演算処理を行い、測定対象の所望の水分率、厚み等の性状信号を得ることができる。
【0019】
図2(a)は回転セクタの平面図を示している。図2(b)は図2(a)のA−A線断面図である。回転セクタはモータMの取付け孔22を中心に、例えば1秒間に30回転程度の速度で回転する。本例では、同心円上に4つの光学フィルタが設けられているが、測定条件に応じた数の光学フィルタを配置可能である。
【0020】
各光学フィルタ31、32、33、34(3N)には、光遮蔽部(斜線部)と測定対象の形状に対応した開口である光透過部からなるスリット41、42、43、44(4N)が近接して設けられ、光学フィルタとともに回転する。本実施例では、2種類のスリットが示されており、2種類の測定形状に対応することができる。
【0021】
光学フィルタ31が第1の吸収波長の光を透過し、光学フィルタ32が第1の比較波長の光を透過する。光学フィルタ31、32には、同一の開口形状のスリット41,42が配置されている。同様に、光学フィルタ33が第2の吸収波長、光学フィルタ34が第2の比較波長の組み合わせであり、同一の開口形状のスリット43,44が配置されている。第1の吸収波長信号と第1の比較波長信号の比率、または、第2の吸収波長信号と第2の比較波長信号の比率から水分率等が測定される。本例では、同心円上に4つの光学フィルタが設けられているが、測定条件に応じた数の光学フィルタ、スリットを、設置スペースが許す限り配置可能である。
【0022】
図3は、スリット45〜48(4N)をスリットホルダー4に設けた一例で、(a)が平面図、(b)が(a)のA−A線断面図である。本例では4種類のスリットが示されており、4種類の測定形状に対応可能である。スリットホルダー4の回転軸は、回転セクタ2と共通で、不図示のモータなどで回転してスリットを選択する。測定時には、回転セクタ2は回転しているが、スリットホルダー4は静止している。
【0023】
図4は、スリット45〜48(4N)をスリットホルダー40に設けた他の例で、(a)が平面図、(b)が(a)のA−A線断面図である。本例でも4種類のスリットが示されており、4種類の測定形状に対応可能である。スリットホルダー40の回転軸は、回転セクタ2の回転軸とは別で、モータM2などで回転してスリットを選択する。測定中は、回転セクタ2は回転するが、スリットホルダー40は静止している。
【0024】
図5は、さらに他のスリットホルダー400の例である。図3,4は回転する円形板であったが、本例では長方形の板に複数種類のスリット45〜48(4N)が並んで設けられている。スリットの選択は図の矢印方向に、適切な駆動手段を用いて移動することにより行う。測定中は、回転セクタは回転するが、スリットホルダーは静止している。
【0025】
なお、以上で述べたスリット41〜4Nの開口の形状は、どのようなものでもよく、測定対象に合わせた最適な形状となるようにすればよく、測定対象の形状に応じて組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の光学的測定装置の一実施形態を示す構成説明図である。
【図2】回転セクタの平面図および断面図である。
【図3】スリットホルダーの一例を示す図である。
【図4】スリットホルダーの一例を示す図である。
【図5】スリットホルダーの一例を示す図である。
【図6】従来の光学的測定装置の一例を示す構成説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 光源
2 回転セクタ
31〜3N 光学フィルタ
4、40、400 スリットホルダー
41〜4N スリット
5 固定スリット
6 ミラー
71、72 光学体
8 測定対象
91 凹面鏡
92 凸面鏡
10 検出素子
11 処理手段
12 設定手段
13 表示手段
20 温度検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源の光を測定対象に投光して測定対象の性状を測定する光学的測定装置において、前記測定対象の形状に対応した開口形状を有する複数種類のスリットを回転セクタの光学フィルタに近接して設け、前記スリットの位置は前記光源からの光の結像位置であることを特徴とする光学的測定装置。
【請求項2】
前記スリットを保持するスリットホルダーを備えたことを特徴とする請求項1記載の光学的測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−242824(P2006−242824A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60504(P2005−60504)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000133526)株式会社チノー (113)
【Fターム(参考)】