説明

光導波路基板、光モジュール及びその製造方法

【課題】複数の光部品(光導波路素子)をアセンブリ化して光モジュールとする場合に、各光部品の精密な位置調整(調芯)を容易に実現できるようにする。
【解決手段】光モジュールを、2つの素子搭載用開口部7,8を有する光導波路基板1と、2つの素子搭載用開口部7,8のそれぞれに搭載された2つの光導波路素子9,10とを備え、光導波路基板1を、一方の光導波路素子9のみをアライメント光が通過するように形成された一のアライメントポートと、他方の光導波路素子10のみをアライメント光が通過するように形成された他のアライメントポートとを備えるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光通信で用いられる複数の光部品(例えば光波伝送用部品)をアセンブリ化して光モジュールを構成する場合に用いて好適の光導波路基板、光モジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光モジュールの量産化、低コスト化の要求に適するとして、SiプラットフォームやPLC(Planar Lightwave Circuit;平面光波回路)プラットフォーム上に光部品をハイブリッド集積する実装技術(光集積技術)が注目されている。
特に、PLCプラットフォーム(光導波路基板)を実装基板として用いる実装技術(平面実装技術)は、表面に導波路を形成した共通基板上に光部品を搭載するため、光モジュールの小型化、アセンブリ工程の簡略化に適していると言われている。
【0003】
また、プラットフォーム上に光部品を搭載する場合、実際の光結合効率をモニタしながら、光部品の位置を調整するアクティブアライメント技術を用いて、調芯作業を行なうのが一般的である。
なお、特許文献1には、ファイバと光素子をSiプラットフォーム上でパッシブにアライメントする手法が開示されている。この特許文献1では、異方性エッチングで形成した高精度の溝に部材をはめ込んで合わせることが開示されている。しかしながら、この特許文献1に開示された技術は、アクティブアライメント技術を想定したものではない。
【特許文献1】特開2004−310066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の光部品をアセンブリ化することによって光モジュールを構成する場合、プラットフォーム上に搭載される各光部品について、それぞれ調芯作業を行なうことが必要になる。
このため、アクティブアライメント技術を用いて、複数の光部品をプラットフォーム上に搭載する場合、調芯作業に大変な手間と時間がかかってしまうことになる。この場合、平面実装型であり、アライメント自由度が小さいことが逆に制約となり、複数の光部品を精密に調芯するのが難しくなっている。
【0005】
特に、例えば図5(A)〜(D)に示すように、両端の入出力ポートを接続するように導波路101を有するプラットフォーム(プラットフォーム基板)100を、複数の部品搭載用溝102を備えるものとし、これらの部品搭載用溝102のそれぞれに複数の光部品(光回路部品,光導波路素子)103を搭載して光モジュール(例えばPLCモジュール)とする場合には、アクティブアライメント技術を用いて複数の光部品103の位置を精密に調整するのは困難である。
【0006】
つまり、アクティブアライメント技術を用いる場合、入力ポートから入射させた光を出力側でモニタする必要がある。
しかしながら、例えば図5(A),(B)に示すように、プラットフォーム100が複数の部品搭載用溝102を有する場合、入射させた光は部品搭載用溝102で放射されてしまうことになる。例えば図5(C),(D)に示すように、1つの光部品103を1つの部品搭載用溝102に搭載する場合には、他の部品搭載用溝102で光が放射されてしまうことになる。このため、アクティブアライメント技術を用いて、各光部品の位置の調整を順次行なって搭載していくのは困難である。
【0007】
このように、入射させた光は部品搭載用溝で放射されてしまうため、アクティブアライメント技術を用いて光部品の位置を精密に調整するのは困難である。
一方、まず、全ての部品搭載用溝に光部品を配置して、入力ポートから出力ポートまでの光の経路を確保した上で、アクティブアライメント技術を用いて、各光部品の位置を調整することが考えられる。
【0008】
しかしながら、アクティブアライメントを行なうための光路が確保されるように、全ての部品搭載用溝に精密に光部品を配置するのは困難である。
このように、光部品の位置を精密に調整するのが困難であるため、アクティブアライメント技術を用いて調芯作業を行なうことを前提とすると、光損失が小さく、高い光結合効率を有する光モジュールを実現するのが難しい。
【0009】
このため、汎用プリント基板上に電子部品を搭載して電子モジュール(例えばハイブリッドIC)を製造する場合のように、予め汎用プラットフォームを作製しておき、この汎用プラットフォーム上に光部品を搭載して光モジュールを製造するという製造方法を実現するのも難しい。
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、複数の光部品(光導波路素子)をアセンブリ化して光モジュールとする場合に、各光部品の精密な位置調整(調芯)を容易に実現できるようにした、光導波路基板、光モジュール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、本発明の光モジュールは、2つの素子搭載用開口部を有する光導波路基板と、2つの素子搭載用開口部のそれぞれに搭載された2つの光導波路素子とを備え、光導波路基板は、一方の光導波路素子のみをアライメント光が通過するように形成された一のアライメントポートと、他方の光導波路素子のみをアライメント光が通過するように形成された他のアライメントポートとを備えることを特徴としている。
【0011】
本発明の光導波路基板は、信号光を入力する複数の入力チャネル光導波路と、複数の入力チャネル光導波路を伝搬した信号光をコリメート光にする複数のコリメートレンズと、コリメート光を導くスラブ光導波路と、スラブ光導波路を伝搬したコリメート光を集光する複数の集光レンズと、複数の集光レンズによって集光された光を出力する複数の出力チャネル光導波路と、2つの素子搭載用開口部と、一方の素子搭載用開口部のみをアライメント光が通過するように形成された一のアライメントポートと、他方の素子搭載用開口部のみをアライメント光が通過するように形成された他のアライメントポートとを備えることを特徴としている。
【0012】
本発明の光モジュールの製造方法は、2つの素子搭載用開口部を有し、一方の素子搭載用開口部のみをアライメント光が通過するように形成された一のアライメントポートと、他方の素子搭載用開口部のみをアライメント光が通過するように形成された他のアライメントポートとを備える光導波路基板を用意し、一方の素子搭載用開口部に一の光導波路素子を挿入し、一のアライメントポートを用いて、一の光導波路素子のアライメントを行ない、他方の素子搭載用開口部に他の光導波路素子を挿入し、他のアライメントポートを用いて、他の光導波路素子のアライメントを行なうことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
したがって、本発明の光導波路基板、光モジュール及びその製造方法によれば、複数の光部品(光導波路素子)をアセンブリ化して光モジュールとする場合に、各光部品の精密な位置調整(調芯)を容易に実現できるという利点がある。このため、コストパフォーマンスの高い実装方法を実現できることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面により、本発明の実施の形態にかかる光導波路基板、光モジュール及びその製造方法について説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態にかかる光導波路基板、光モジュール及びその製造方法について、図1,図2を参照しながら説明する。
【0015】
本実施形態にかかる光導波路基板は、例えばPLC(Planar Lightwave Circuit;平面光波回路)プラットフォーム(光導波路プラットフォーム)であり、複数(ここでは2つ)の光部品(光導波路素子)が光導波路を介して接続されるようにアセンブリ化して、例えば光スイッチなどの光モジュール(光集積回路;多チャンネル光モジュール)を製造する場合に用いるものである。
【0016】
例えば図1に示すように、本光導波路基板(スラブ光導波路基板)1は、信号光を入力する複数の入力チャネル光導波路2と、複数の入力チャネル光導波路2を伝搬した信号光をコリメート光にする複数のコリメートレンズ(コリメートレンズアレイ)3と、コリメート光を導くスラブ光導波路(共通光導波路)4と、スラブ光導波路4を伝搬したコリメート光を集光する複数の集光レンズ(集光レンズアレイ)5と、複数の集光レンズ5によって集光された光を出力する複数の出力チャネル光導波路6とを備える。つまり、入力チャネル光導波路2,コリメートレンズ3,共通光導波路4,集光レンズ5,出力チャネル光導波路6が同一基板上に形成されている。
【0017】
特に、本光導波路基板1は、例えば図1に示すように、光導波路素子(光部品;ここではコリメート光の伝搬方向を切り換える光偏向素子)9,10を搭載するために用いられる2つの素子搭載用開口部(部品搭載溝)7,8を備える。
なお、入力側の素子搭載用開口部を第1素子搭載用開口部7と呼び、出力側の素子搭載用開口部を第2素子搭載用開口部8と呼ぶこととする。また、入力側の光導波路素子を第1光導波路素子9と呼び、出力側の光導波路素子を第2光導波路素子10と呼ぶこととする。
【0018】
ここでは、第1素子搭載用開口部7は、基板1の第1側面1Aにのみ開放された溝部として形成されている。また、第2素子搭載用開口部8は、基板1の第2側面1Bにのみ開放された溝部として形成されている。なお、素子搭載用開口部7,8は、上側のみ開放された穴部として形成されていても良い。
このように、2つの素子搭載用開口部7,8を互い違いに設けることで、素子搭載用開口部7,8の側方までスラブ光導波路4が延びるようにしている。つまり、基板1の第2側面1Bと第1素子搭載用開口部7との間、及び、基板1の第1側面1Aと第2素子搭載用開口部8との間にそれぞれ光導波路4A,4Bが形成されている。
【0019】
そして、本光導波路基板1には、その両側(最外部)に、これらの光導波路4A,4Bのそれぞれに連なるように、アライメント用に入力チャネル光導波路2A,2B、コリメートレンズ3A,3B、集光レンズ5A,5B、出力チャネル光導波路6A,6Bが設けられており、これらにより、2つのアライメントポートが形成される。つまり、本光導波路基板1には、第1素子搭載用開口部7(即ち、素子搭載用開口部7に搭載される光導波路素子9)のみをアライメント光が通過するように形成された第1アライメントポートと、第2素子搭載用開口部8(即ち、素子搭載用開口部8に搭載される光導波路素子10)のみをアライメント光が通過するように形成された第2アライメントポートとが設けられている。
【0020】
なお、アライメント用出力チャネル光導波路6A,6Bには光ファイバ(図示せず)を介してパワーモニタ(図示せず)が接続されており、アライメント光のパワーをモニタできるようになっている。
このように構成される光導波路基板1は、例えば、以下のようにして作製される。
つまり、例えばベース基板上に、下部クラッド層、コア層、上部クラッド層を順に積層させて光導波路を形成する。次に、例えばエッチングによって、光導波路素子9,10を搭載するための2つの素子搭載用開口部7,8を形成する。このようにして、2つの素子搭載用開口部7,8を備える光導波路基板1が作製される。
【0021】
次に、本実施形態にかかる光モジュールの製造方法について説明する。
ここでは、上述の光導波路基板を用いた光モジュール(例えば光スイッチ)の製造方法について、図2(A)〜図2(D)を参照しながら説明する。
まず、図2(A)に示すように、2つの素子搭載用開口部7,8を有し、一方の素子搭載用開口部7のみをアライメント光が通過するように形成された第1アライメントポートと、他方の素子搭載用開口部8のみをアライメント光が通過するように形成された第2アライメントポートとを備える光導波路基板1を用意する。
【0022】
次に、図2(B)に示すように、光導波路基板1に形成されている第1素子搭載用開口部7に第1光導波路素子(ここでは光偏向素子)9を、アクティブアライメントを行なって搭載する。
つまり、図2(B)に示すように、2つの素子搭載用開口部7,8のうちの一方(ここでは入力側の第1素子搭載用開口部7)に、第1光導波路素子(光導波路部品)9を平行な状態で挿入する。ここでは、予め、第1光導波路素子9を光導波路基板1に対して平行な状態にした上で、第1素子搭載用開口部7に第1光導波路素子9を挿入する。
【0023】
その後、第1アライメントポート(ここでは、アライメント用の入力チャネル光導波路2B,コリメートレンズ3B,スラブ光導波路4,光導波路4B,集光レンズ5B,出力チャネル光導波路6Bからなる)を用いて、第1光導波路素子9のアクティブアライメントを行なって、第1光導波路素子9の位置(ここでは高さ位置)を精密に調整する。つまり、第1光導波路素子9、及び、基板1の第1側面1Aと他方の素子搭載用開口部(ここでは出力側の第2素子搭載用開口部8)との間に形成された光導波路4Bを通過したアライメント光を用いて、第1光導波路素子9のアクティブアライメントを行なって、第1光導波路素子9の位置(ここでは高さ位置)を精密に調整する。
【0024】
ここでは、第1素子搭載用開口部7(即ち、第1素子搭載用開口部7に搭載される第1光導波路素子9)だけを通過する第1アライメントポートを用いて、第1光導波路素子9のアライメントを、第2光導波路素子10のアライメントとは独立して行なう。
このようにして、第1光導波路素子9のアクティブアライメントを行なった後、第1光導波路素子9を第1素子搭載用開口部7内に固定する。
【0025】
その後、図2(C)に示すように、光導波路基板1に形成されている第2素子搭載用開口部8に第2光導波路素子(ここでは光偏向素子)10を、アクティブアライメントを行なって搭載する。
つまり、図2(C)に示すように、他方の素子搭載用開口部(ここでは、出力側の第2素子搭載用開口部8)に、第2光導波路素子(光導波路部品)10を平行な状態で挿入する。ここでは、予め、第2光導波路素子10を光導波路基板1に対して平行な状態にした上で、第2素子搭載用開口部8に第2光導波路素子10を挿入する。
【0026】
その後、第2アライメントポート(ここでは、アライメント用の入力チャネル光導波路2A,コリメートレンズ3A,スラブ光導波路4,光導波路4A,集光レンズ5A,出力チャネル光導波路6Aからなる)を用いて、上記の第1光導波路素子9のアライメントとは独立して第2光導波路素子10のアクティブアライメントを行なって、第2光導波路素子10の位置(高さ位置)を精密に調整する。つまり、基板1の第2側面1Bと第1素子搭載用開口部7との間に形成された光導波路4A、及び、この第2光導波路素子10を通過したアライメント光を用いて、上記の第1光導波路素子9のアライメントとは独立して第2光導波路素子10のアクティブアライメントを行なって、第2光導波路素子10の位置(高さ位置)を精密に調整する。
【0027】
ここでは、第2素子搭載用開口部8(即ち、第2素子搭載用開口部8に搭載される第2光導波路素子10)だけを通過する第2アライメントポートを用いて、第2光導波路素子10のアライメントを、第1光導波路素子9のアライメントとは独立して行なう。
このようにして、第2光導波路素子10のアクティブアライメントを行なった後、第2光導波路素子10を第2素子搭載用開口部8内に固定する。
【0028】
これにより、図2(D)に示すように、2つの素子搭載用開口部7,8にそれぞれ光導波路素子9,10を搭載した光モジュール(例えば光スイッチ)が製造される。
なお、上述のように、アライメントポートを用いてアクティブアライメントを行なって、2つの光導波路素子9,10をそれぞれ素子搭載用開口部7,8に挿入した後、これらを固定する前に、光スイッチを構成する各チャンネルを用いて、精密なアライメントを行なって、これらの光導波路素子9,10の位置の微調整を行なうようにしても良い。
【0029】
このようにして製造される光モジュール(例えば光スイッチ)は、図2(D)に示すように、2つの素子搭載用開口部7,8を有する光導波路基板1と、2つの素子搭載用開口部7,8のそれぞれに搭載された2つの光導波路素子(光部品;ここでは光偏向素子)9,10とを備え、光導波路基板1は、第1光導波路素子9のみをアライメント光が通過するように形成された第1アライメントポートと、第2光導波路素子10のみをアライメント光が通過するように形成された第2アライメントポートとを備えるものとなる。
【0030】
特に、第1アライメントポートは、光導波路基板1の第1側面1Aと第2素子搭載用開口部8との間に光導波路4Bを備えるものとなる。また、第2アライメントポートは、光導波路基板1の第2側面1Bと第1素子搭載用開口部7との間に光導波路4Aを備えるものとなる。
本実施形態では、スラブ光導波路基板(スラブ光導波路部品)1に形成された2つの素子搭載用開口部7,8のそれぞれに、入力側光偏向素子(ここでは複数の光偏向素子からなる入力側光偏向素子アレイ)9と、出力側光偏向素子(ここでは複数の光偏向素子からなる出力側光偏向素子アレイ)10とを実装することで、光スイッチが構成される。
【0031】
そして、これらの入力側光偏向素子アレイ9及び出力側光偏向素子アレイ10を構成する各入力側光偏向素子及び各出力側光偏向素子を用いて、一の入力チャネル光導波路2から入力された光信号の経路を切り換えて一の出力チャネル光導波路6へ出力しうるようになっている。
したがって、本実施形態にかかる光導波路基板、光モジュール及びその製造方法によれば、複数の光導波路素子(光部品)9,10を高精度に位置決めして搭載する必要のある光モジュールにおいて、各光導波路素子9,10の精密な位置調整(調芯)を簡便かつ容易に実現できるという利点がある。このため、コストパフォーマンスの高い実装方法を実現できることになる。
【0032】
特に、本実施形態では、2つの光導波路素子9,10をそれぞれ独立にアライメントできるように、一方の素子搭載用開口部7,8(即ち、素子搭載用開口部7,8に搭載される光導波路素子9,10)だけを通過するアライメント用の経路(ポート;チャンネル;光路)が確保されているため、この光路を用いてアライメントを行なう場合のアライメント光の結合効率が良好なものとなり(一方の素子搭載用開口部だけを通過するため、本来のパスと同等もしくはそれ以上になる)、より厳密なアライメントが可能となる。
【0033】
また、素子搭載用開口部7,8を互い違いに設けるだけで良く、最終製品の形態としては素子搭載用開口部の形成エリアがずれるだけであるため、大きな設計変更を必要としないという利点もある。
なお、本発明は、上述した実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【実施例1】
【0034】
以下、実施例1によって本発明を、更に詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例1によって限定されるものではない。
本実施例1では、光路の途中に2つの素子搭載用開口部(部品搭載溝)を設けた光導波路プラットフォーム基板(平面光導波路回路基板)を作製し、素子搭載用開口部に何も入れない場合のこれらの開口部を通過した光ビームの挿入損失、一方の素子搭載用開口部に光導波路素子(光部品)を挿入し、アクティブアライメントを行なった上で固定した場合の1つの光導波路素子を通過した光ビームの挿入損失、さらに、他方の素子搭載用開口部に光導波路素子(光部品)を挿入し、独立にアクティブアライメントを行なった上で固定した場合の2つの光導波路素子を通過した光ビームの挿入損失を評価することによって、本発明による効果を確認した。
【0035】
[光導波路プラットフォーム基板の構成及び製造方法]
光導波路プラットフォーム基板は、以下のようにして作製した。
まず、石英ガラス基板上の全面に、新日鐵化学社製の透明エポキシ樹脂V259を用いてポリマ光導波路を形成した。ポリマ光導波路は、下部クラッド層を屈折率1.55、厚さ20μmとし、コア層は屈折率1.57、厚さ10μmとし、上部クラッド層は屈折率1.55、厚さ20μmとした。
【0036】
そして、ドライエッチングによって、光回路の構成部材を作り込んだ。つまり、光の入射側から順に、入力チャネル光導波路、平面コリメートレンズ、第1の素子搭載用開口部、スラブ光導波路、第2の素子搭載用開口部、集光レンズ、出力チャネル光導波路を形成した。
ここでは、素子搭載用開口部は、ポリマ光導波路をドライエッチングによって凹状に掘り込んで、互い違いに形成した。また、レンズとスラブ光導波路はその周囲の不要部分(ポリマ光導波路)を除去して削りだしで形成した。チャネル光導波路は、長さ5mm、コア断面10×10μmとした。レンズは、長さ2mm、幅1mmとし、6個設けてレンズアレイとした。素子搭載用開口部は、長さ3mm、幅6mmとし、2つ設けた。スラブ光導波路は長さ10mm、幅8mmとした。
【0037】
[評価方法]
入力チャネル光導波路にバットジョイント法で接続したマルチモードファイバから波長1.31μm/3mWの光ビームを入射させ、出力チャネル光導波路に接続したマルチモードファイバで結合した光のパワーを測定して、評価を行なった。
まず、2つの素子搭載用開口部には何も入れない状態で、出射された光のパワーを測定し、挿入損失を計算したところ、1つの素子搭載用開口部を通る経路(2つのアライメントポート)で約30dB、2つの素子搭載用開口部を通る経路(2つのアライメントポート間に設けられた各チャンネル)で約60dBであった。大部分のパワーは素子搭載用開口部で放射されて失われたと考えられる。
【0038】
次に、光導波路素子として、2つのポリマ光導波路部品(光導波路素子,光部品)を作製した。ポリマ光導波路部品は、その外形を長さ2.950mm、幅6mmとし、石英ガラス基板上に形成した光導波路プラットフォームと同じ層構成のスラブ光導波路を備えるものとした。
そして、第1の素子搭載用開口部に、上述のようにして作製した第1の光導波路素子をはめ込んだ。つまり、まず、実装ステージ上で、第1の光導波路素子の導波路面を下に向けて(即ち、上側にベース基板がくるようにして)光導波路プラットフォームの導波路面に押し当てて、両者の平行出しを行なった。このようにして得られた平行度を保ちつつ、第1の光導波路素子を第1の素子搭載用開口部にはめ込み、光を入射させながら調芯作業(アクティブアライメント;ここでは高さ調整)を行なった。この調芯作業には第2の素子搭載用開口部を通過しない経路(第1アライメントポート)を用いた。また、光導波路プラットフォームと第1の光導波路素子との間の隙間には屈折率を整合させるためにNTT−AT社製の透明UVエポキシ樹脂を滴下した。
【0039】
調芯完了後、第2の素子搭載用開口部を通過しない経路(第1アライメントポート)を用い、出射された光のパワーを測定し、挿入損失を計算したところ、6.5dBであった。
その後、紫外線を照射して透明UVエポキシ樹脂を硬化させて、第1の光導波路素子を固定した。
【0040】
続いて、第2の素子搭載用開口部に、上述のようにして作製した第2の光導波路素子をはめ込んだ。つまり、上述と同様に、実装ステージ上で、第2の光導波路素子の導波路面を下に向けて(即ち、上側にベース基板がくるようにして)光導波路プラットフォームの導波路面に押し当てて、両者の平行出しを行なった。このようにして得られた平行度を保ちつつ、第2の光導波路素子を第2の素子搭載用開口部にはめ込み、光を入射させながら調芯作業(アクティブアライメント;ここでは高さ調整)を行なった。この調芯作業には第1の素子搭載用開口部を通過しない経路(第2アライメントポート)を用いた。また、光導波路プラットフォームと第2の光導波路素子との間の隙間には屈折率を整合させるためにNTT−AT社製の透明UVエポキシ樹脂を滴下した。
【0041】
調芯完了後、第1の素子搭載用開口部を通過しない経路(第2アライメントポート)を用い、出射された光のパワーを測定し、挿入損失を計算したところ、6.7dBであった。
その後、紫外線を照射して透明UVエポキシ樹脂を硬化させて、第2の光導波路素子を固定した。
【0042】
そして、2つの光導波路素子を通過する経路(2つのアライメントポート間に設けられた各チャンネル)を用い、出射された光のパワーを測定し、挿入損失を計算したところ、いずれも7.5〜7.8dBという良好な値が得られた。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態にかかる光導波路基板、光モジュール及びその製造方法について、図3,図4を参照しながら説明する。
【0043】
本実施形態にかかる光導波路基板、光モジュール及びその製造方法は、上述の第1実施形態のものに対し、光導波路素子(光導波路部品;ここでは光偏向素子)に、その導波路内をアライメント光が伝搬するようにアライメント光の一部を反射するミラーが設けられており、このミラーを利用して、光導波路素子のアライメント(平行度調整)を二方向で行なう(即ち、高さ調整と傾き調整を行なう)ようにしている点が異なる。
【0044】
本実施形態では、図3に示すように、光導波路素子9,10は、その導波路に介装されるように、一方の端面9A,10A側に、他方の端面9B,10B側へ向けて光を反射させうるミラー11を備える。なお、図3では、上述の第1実施形態(図1参照)と同一のものには同一の符号を付している。
ここでは、光導波路素子9,10は、一方の端面9A,10A側にアライメントに使用する領域を有し、このアライメント領域に、光路に対して45度傾いたスリットを形成し、これに例えば樹脂を充填することで、光ビームを2分割するビームスプリッタ(ハーフミラー)を形成している。
【0045】
そして、第1光導波路素子9は、図3に示すように、一方の端面9Aが基板1の第1側面1A側になるように、第1素子搭載用開口部7に挿入される。つまり、ミラー11が第1アライメントポート(アライメント用の入力チャネル光導波路2B,コリメートレンズ3B,スラブ光導波路4,光導波路4B,集光レンズ5B,出力チャネル光導波路6Bからなる)上にくるように、第1光導波路素子9は第1素子搭載用開口部7に挿入される。
【0046】
これにより、基板1の第1側面1A側に位置する第1アライメントポートに入射されたアライメント光の一部(ここでは半分)は、第1光導波路素子9に形成されたミラー11で反射され、90度曲げられて、基板1の第2側面1B側へ向けて第1光導波路素子9の導波路内を伝搬し、光導波路基板1の光導波路4Aを通じて基板1の側方へ出力されることになる。なお、光導波路基板1の側方には、例えばニアフィールドカメラが設けられており、アライメント光のパワーをモニタできるようになっている。
【0047】
なお、アライメント光の残り(ここでは半分)は、アライメント用のスラブ光導波路4,光導波路4B,集光レンズ5Bを介して、アライメント用出力チャネル光導波路6Bから出力されることになる。なお、アライメント用出力チャネル光導波路6Bには光ファイバ(図示せず)を介してパワーモニタ(図示せず)が接続されており、アライメント光のパワーをモニタできるようになっている。
【0048】
同様に、第2光導波路素子10は、図3に示すように、一方の端面10Aが基板1の第2側面1B側になるように、第2素子搭載用開口部8に挿入される。つまり、ミラー11が第2アライメントポート(アライメント用の入力チャネル光導波路2A,コリメートレンズ3A,スラブ光導波路4,光導波路4A,集光レンズ5A,出力チャネル光導波路6Aからなる)上にくるように、第2光導波路素子10は第2素子搭載用開口部8に挿入される。
【0049】
これにより、基板1の第2側面1B側に位置する第2アライメントポートに入射されたアライメント光の一部(ここでは半分)が、第2光導波路素子10に形成されたミラー11で反射され、90度曲げられて、基板1の第1側面1A側へ向けて第2光導波路素子10の導波路内を伝搬し、光導波路基板1の光導波路4Bを通じて基板1の側方へ出力されることになる。なお、光導波路基板1の側方には、例えばニアフィールドカメラが設けられており、アライメント光のパワーをモニタできるようになっている。
【0050】
なお、アライメント光の残り(ここでは半分)は、アライメント用の集光レンズ5Aを介して、アライメント用出力チャネル光導波路6Aから出力されることになる。なお、アライメント用出力チャネル光導波路6Aには光ファイバ(図示せず)を介してパワーモニタ(図示せず)が接続されており、アライメント光のパワーをモニタできるようになっている。
【0051】
そして、本実施形態では、基板1の側方へ出力されるアライメント光(ミラー11によって90度曲げられて進行する光ビーム)のパワー(出力)と、アライメント用出力チャネル光導波路6A,6Bから出力されるアライメント光(基板1の入力側から出力側へ向けて直進する光ビーム)のパワー(出力)とが、両方とも最大になるようにアライメントを行なうようにしている。これにより、より高精度のアライメントが可能となる。
【0052】
なお、その他の構成は、上述の第1実施形態のものと同じであるため、ここでは説明を省略する。
次に、本実施形態にかかる光モジュールの製造方法について説明する。
ここでは、上述の光導波路基板を用いた光モジュール(例えば光スイッチ)の製造方法について、図4(A)〜図4(D)を参照しながら説明する。
【0053】
まず、図4(A)に示すように、2つの素子搭載用開口部7,8を有し、一方の素子搭載用開口部7のみをアライメント光が通過するように形成された第1アライメントポートと、他方の素子搭載用開口部8のみをアライメント光が通過するように形成された第2アライメントポートとを備える光導波路基板1を用意する。
次に、図4(B)に示すように、光導波路基板1に形成されている第1素子搭載用開口部7に、ミラー11を備える第1光導波路素子(ここでは光偏向素子)9を、アクティブアライメントを行なって搭載する。
【0054】
つまり、図4(B)に示すように、2つの素子搭載用開口部7,8のうちの一方(ここでは入力側の第1素子搭載用開口部7)に、ミラー11を備える第1光導波路素子(光導波路部品)9を、一方の端面9Aが基板1の第1側面1A側になるように、第1素子搭載用開口部7に挿入する。つまり、ミラー11が第1アライメントポート(アライメント用の入力チャネル光導波路2B,コリメートレンズ3B,スラブ光導波路4,光導波路4B,集光レンズ5B,出力チャネル光導波路6Bからなる)上にくるように、第1光導波路素子9を第1素子搭載用開口部7に挿入する。
【0055】
なお、上述の第1実施形態の場合と同様に、予め、第1光導波路素子9を光導波路基板1に対して平行な状態にした上で、第1素子搭載用開口部7に第1光導波路素子9を挿入するのが好ましい。
その後、第1アライメントポートを用いて、第1光導波路素子9の高さ方向のアクティブアライメントを行なって、第1光導波路素子9の高さを精密に位置調整する。つまり、第1光導波路素子9、及び、基板1の第1側面1Aと他方の素子搭載用開口部(ここでは出力側の第2素子搭載用開口部8)との間に形成された光導波路4Bを通過したアライメント光を用いて、第1光導波路素子9の高さ方向のアクティブアライメントを行なって、第1光導波路素子9の高さを精密に位置調整する。
【0056】
ここでは、第1素子搭載用開口部7(即ち、第1素子搭載用開口部7に搭載される第1光導波路素子9)だけを通過する第1アライメントポートを用いて、第1光導波路素子9のアライメントを、第2光導波路素子10のアライメントとは独立して行なう。
これと同時に、第1光導波路素子9に形成されたミラー11によって反射され、第1光導波路素子9の導波路内を伝搬し、光導波路基板1の側方へ出力されたアライメント光を用いて、第1光導波路素子9の傾き方向のアクティブアライメントを行なって、第1光導波路素子9の傾きを精密に位置調整する。つまり、第1光導波路素子9に形成されたミラー11によって反射され、第1光導波路素子9、及び、基板1の第2側面1Bと一方の素子搭載用開口部(ここでは入力側の第1素子搭載用開口部7)との間に形成された光導波路4Aを通過したアライメント光を用いて、第1光導波路素子9の傾き方向のアクティブアライメントを行なって、第1光導波路素子9の傾きを精密に位置調整する。
【0057】
このようにして、第1光導波路素子9のアクティブアライメントを行なった後、第1光導波路素子9を第1素子搭載用開口部7内に固定する。
その後、図4(C)に示すように、光導波路基板1に形成されている第2素子搭載用開口部8に、ミラー11を備える第2光導波路素子(ここでは光偏向素子)10を、アクティブアライメントを行なって搭載する。
【0058】
つまり、図4(C)に示すように、他方の素子搭載用開口部(ここでは、出力側の第2素子搭載用開口部8)に、ミラー11を備える第2光導波路素子(光導波路部品)10を、一方の端面10Aが基板1の第2側面1B側になるように、第2素子搭載用開口部8に挿入する。つまり、ミラー11が第2アライメントポート(アライメント用の入力チャネル光導波路2A,コリメートレンズ3A,スラブ光導波路4,光導波路4A,集光レンズ5A,出力チャネル光導波路6Aからなる)上にくるように、第2光導波路素子10を第2素子搭載用開口部8に挿入する。
【0059】
なお、上述の第1実施形態の場合と同様に、予め、第2光導波路素子10を光導波路基板1に対して平行な状態にした上で、第2素子搭載用開口部8に第2光導波路素子10を挿入するのが好ましい。
その後、第2アライメントポートを用いて、上記の第1光導波路素子9のアライメントとは独立して第2光導波路素子10の高さ方向のアクティブアライメントを行なって、第2光導波路素子10の高さを精密に位置調整する。つまり、基板1の第2側面1Bと第1素子搭載用開口部7との間に形成された光導波路4A、及び、この第2光導波路素子10を通過したアライメント光を用いて、上記の第1光導波路素子9のアライメントとは独立して第2光導波路素子10の高さ方向のアクティブアライメントを行なって、第2光導波路素子10の高さを精密に位置調整する。
【0060】
ここでは、第2素子搭載用開口部8(即ち、第2素子搭載用開口部8に搭載される第2光導波路素子10)だけを通過する第2アライメントポートを用いて、第2光導波路素子10のアライメントを、第1光導波路素子9のアライメントとは独立して行なう。
これと同時に、第2光導波路素子10に形成されたミラー11によって反射され、第2光導波路素子10の導波路内を伝搬し、光導波路基板1の側方へ出力されたアライメント光を用いて、第2光導波路素子10の傾き方向のアクティブアライメントを行なって、第2光導波路素子10の傾きを精密に位置調整する。つまり、第2光導波路素子10に形成されたミラー11によって反射され、第2光導波路素子10、及び、基板1の第1側面1Aと一方の素子搭載用開口部(ここでは出力側の第2素子搭載用開口部8)との間に形成された光導波路4Bを通過したアライメント光を用いて、第2光導波路素子10の傾き方向のアクティブアライメントを行なって、第2光導波路素子10の傾きを精密に位置調整する。
【0061】
このようにして、第2光導波路素子10のアクティブアライメントを行なった後、第2光導波路素子10を第2素子搭載用開口部8内に固定する。
これにより、図4(D)に示すように、2つの素子搭載用開口部7,8にそれぞれ光導波路素子9,10を搭載した光モジュール(例えば光スイッチ)が製造される。
なお、上述のように、アライメントポートを用いてアクティブアライメントを行なって、2つの光導波路素子9,10をそれぞれ素子搭載用開口部7,8に挿入した後、これらを固定する前に、光スイッチを構成する各チャンネルを用いて、精密なアライメントを行なって、これらの光導波路素子9,10の位置の微調整を行なうようにしても良い。
【0062】
このようにして製造される光モジュール(例えば光スイッチ)は、図4(D)に示すように、2つの素子搭載用開口部7,8を有する光導波路基板1と、2つの素子搭載用開口部7,8のそれぞれに搭載され、ミラー11を備える2つの光導波路素子(光部品;ここでは光偏向素子)9,10とを備え、光導波路基板1は、第1光導波路素子9のみをアライメント光が通過するように形成された第1アライメントポートと、第2光導波路素子10のみをアライメント光が通過するように形成された第2アライメントポートとを備えるものとなる。
【0063】
特に、第1アライメントポートは、光導波路基板1の第1側面1Aと第2素子搭載用開口部8との間に光導波路4Bを備えるものとなる。また、第2アライメントポートは、光導波路基板1の第2側面1Bと第1素子搭載用開口部7との間に光導波路4Aを備えるものとなる。
本実施形態では、スラブ光導波路基板(スラブ光導波路部品)1に形成された2つの素子搭載用開口部7,8のそれぞれに、入力側光偏向素子(ここでは複数の光偏向素子からなる入力側光偏向素子アレイ)9と、出力側光偏向素子(ここでは複数の光偏向素子からなる出力側光偏向素子アレイ)10とを実装することで、光スイッチが構成される。
【0064】
そして、これらの入力側光偏向素子アレイ9及び出力側光偏向素子アレイ10を構成する各入力側光偏向素子及び各出力側光偏向素子を用いて、一の入力チャネル光導波路2から入力された光信号の経路を切り換えて一の出力チャネル光導波路6へ出力しうるようになっている。
したがって、本実施形態にかかる光導波路基板、光モジュール及びその製造方法によれば、上述の第1実施形態のものと同様の作用、効果がある。
【0065】
特に、本実施形態では、光導波路素子9,10の傾き調整も行なうため、上述の第1実施形態のものと比べ、より高精度な調芯が可能となるという利点がある。
特に、本実施形態のものによれば、上述の第1実施形態のものに対し、光導波路素子9,10にミラー11を形成することは必要となるものの、光導波路基板(プラットフォーム)1の形状・設計には変更を加えずに、より精密なアライメントが可能となる。
【実施例2】
【0066】
上述の第1実施形態の実施例1と同様にして、光導波路プラットフォーム及び光導波路素子を製造し、評価を行なった。
但し、本実施例2では、上述のようにして作製した光導波路素子のアライメント用ビームが通過する位置に、深さ50μm、幅50μm、長さ1000μmのスリットを、例えばエッチングによって、ビームに対して45度傾くように形成し、このスリットに屈折率1.33の樹脂を充填して、簡易ビームスプリッタ(ハーフミラー)を形成した。
【0067】
そして、素子搭載用開口部に、上述のようにして作製した光導波路素子をはめ込んだ。つまり、まず、実装ステージ上で、光導波路素子の導波路面を下に向けて光導波路プラットフォームの導波路面に押し当てて、両者の平行出しを行なった。このようにして得られた平行度を保ちつつ、光導波路素子を素子搭載用開口部にはめ込み、光を入射させながら調芯作業(アクティブアライメント;ここでは高さ及び傾き調整)を行なった。
【0068】
なお、ここでは、上述の第1実施形態の実施例1と同様に平行出しを行なっているが、本実施例2では、傾き調整も行なえるため、平行出しは必須ではない。但し、平行出しを行なって、大まかな傾き調整を行なった上で、後述の傾き調整(微調整)を行なうのが現実的である。
特に、本実施例2では、簡易ビームスプリッタで得られた2本のビームを使って調芯作業を行なった。つまり、簡易ビームスプリッタを通過して直進し、上述の第1実施形態の実施例1と同様に、出力用チャネル導波路から出力された光のパワー(出力)をモニタすることによって、高さ調整を行なった。一方、簡易ビームスプリッタによって直角に曲げられ、光導波路素子から光導波路プラットフォームの光導波路に結合させ、その外側で、ニアフィールドカメラで観察して強度の積分値から、光のパワー(出力)をモニタすることによって、傾き調整を行なった。ここでは、2つの出力が共に最大となるように高さ及び傾きの調整を行なって最適化した。
【0069】
なお、ここでは、ニアフィールドカメラを用いているが、これに限られるものではなく、例えば、基板側面又はその近傍にレンズを設け、パワーモニタでアライメント光のパワーをモニタするようにしても良い。
このようにして2つの光導波路素子を固定した後、2つの光導波路素子を通過する経路(2つのアライメントポート間に設けられた各チャンネル)を用い、出射された光のパワーを測定し、挿入損失を計算したところ、いずれも7.0〜7.4dBという良好な値が得られた。
[その他]
また、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することができる。
【0070】
以上の第1実施形態及び第2実施形態に関し、更に、以下の付記を開示する。
(付記1)
2つの素子搭載用開口部を有する光導波路基板と、
前記2つの素子搭載用開口部のそれぞれに搭載された2つの光導波路素子とを備え、
前記光導波路基板は、一方の光導波路素子のみをアライメント光が通過するように形成された一のアライメントポートと、他方の光導波路素子のみをアライメント光が通過するように形成された他のアライメントポートとを備えることを特徴とする、光モジュール。
【0071】
(付記2)
前記光導波路素子は、その導波路内をアライメント光が伝搬するようにアライメント光の一部を反射するミラーを備えることを特徴とする、付記1記載の光モジュール。
(付記3)
前記光導波路基板が、
信号光を入力する複数の入力チャネル光導波路と、
前記複数の入力チャネル光導波路を伝搬した信号光をコリメート光にする複数のコリメートレンズと、
コリメート光を導くスラブ光導波路と、
前記スラブ光導波路を伝搬したコリメート光を集光する複数の集光レンズと、
前記複数の集光レンズによって集光された光を出力する複数の出力チャネル光導波路とを備えることを特徴とする、付記1又は2記載の光モジュール。
【0072】
(付記4)
前記光導波路素子は、コリメート光の伝搬方向を切り換える光偏向素子であることを特徴とする、付記3記載の光モジュール。
(付記5)
信号光を入力する複数の入力チャネル光導波路と、
前記複数の入力チャネル光導波路を伝搬した信号光をコリメート光にする複数のコリメートレンズと、
コリメート光を導くスラブ光導波路と、
前記スラブ光導波路を伝搬したコリメート光を集光する複数の集光レンズと、
前記複数の集光レンズによって集光された光を出力する複数の出力チャネル光導波路と、
2つの素子搭載用開口部と、
一方の素子搭載用開口部のみをアライメント光が通過するように形成された一のアライメントポートと、
他方の素子搭載用開口部のみをアライメント光が通過するように形成された他のアライメントポートとを備えることを特徴とする、光導波路基板。
【0073】
(付記6)
2つの素子搭載用開口部を有し、一方の素子搭載用開口部のみをアライメント光が通過するように形成された一のアライメントポートと、他方の素子搭載用開口部のみをアライメント光が通過するように形成された他のアライメントポートとを備える光導波路基板を用意し、
前記一方の素子搭載用開口部に一の光導波路素子を挿入し、
前記一のアライメントポートを用いて、前記一の光導波路素子のアライメントを行ない、
前記他方の素子搭載用開口部に他の光導波路素子を挿入し、
前記他のアライメントポートを用いて、前記他の光導波路素子のアライメントを行なうことを特徴とする、光モジュールの製造方法。
【0074】
(付記7)
前記光導波路素子は、前記素子搭載用開口部に平行な状態で挿入することを特徴とする、付記6記載の光モジュールの製造方法。
(付記8)
前記一の光導波路素子として、その導波路内をアライメント光が伝搬するようにアライメント光の一部を反射するミラーを備える光導波路素子を、前記一方の素子搭載用開口部に挿入し、
前記一のアライメントポートを用いて、前記一の光導波路素子の高さ調整を行なうとともに、前記ミラーによって反射され、その導波路内を伝搬し、前記光導波路基板の側方へ出力されたアライメント光を用いて、前記一の光導波路素子の傾き調整を行ない、
前記他の光導波路素子として、その導波路内をアライメント光が伝搬するようにアライメント光の一部を反射するミラーを備える光導波路素子を、前記他方の素子搭載用開口部に挿入し、
前記他のアライメントポートを用いて、前記他の光導波路素子の高さ調整を行なうとともに、前記ミラーによって反射され、その導波路内を伝搬し、前記光導波路基板の側方へ出力されたアライメント光を用いて、前記他の光導波路素子の傾き調整を行なうことを特徴とする、付記6又は7記載の光モジュールの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる光モジュール及び光導波路基板の構成を示す模式的平面図である。
【図2】(A)〜(D)は、本発明の第1実施形態にかかる光モジュールの製造方法を説明するための模式的平面図である。
【図3】本発明の第2実施形態にかかる光モジュール及び光導波路基板の構成を示す模式的平面図である。
【図4】(A)〜(D)は、本発明の第2実施形態にかかる光モジュールの製造方法を説明するための模式的平面図である。
【図5】(A)〜(D)は、従来の光モジュールの製造方法の課題を説明するための模式図であって、(A),(C)はその平面図であり、(B),(D)はその断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 光導波路基板(スラブ光導波路基板)
1A 基板の第1側面
1B 基板の第2側面
2 入力チャネル光導波路
2A,2B アライメント用入力チャネル光導波路
3 コリメートレンズ
3A,3B アライメント用コリメートレンズ
4 スラブ光導波路
4A,4B 光導波路
5 集光レンズ
5A,5B アライメント用集光レンズ
6 出力チャネル光導波路
6A,6B アライメント用出力チャネル光導波路
7 第1素子搭載用開口部(部品搭載溝)
8 第2素子搭載用開口部(部品搭載溝)
9 第1光導波路素子(光部品;光偏向素子)
10 第2光導波路素子(光部品;光偏向素子)
9A,10A 光導波路素子の一方の端面
9B,10B 光導波路素子の他方の端面
11 ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの素子搭載用開口部を有する光導波路基板と、
前記2つの素子搭載用開口部のそれぞれに搭載された2つの光導波路素子とを備え、
前記光導波路基板は、一方の光導波路素子のみをアライメント光が通過するように形成された一のアライメントポートと、他方の光導波路素子のみをアライメント光が通過するように形成された他のアライメントポートとを備えることを特徴とする、光モジュール。
【請求項2】
前記光導波路素子は、その導波路内をアライメント光が伝搬するようにアライメント光の一部を反射するミラーを備えることを特徴とする、請求項1記載の光モジュール。
【請求項3】
前記光導波路基板が、
信号光を入力する複数の入力チャネル光導波路と、
前記複数の入力チャネル光導波路を伝搬した信号光をコリメート光にする複数のコリメートレンズと、
コリメート光を導くスラブ光導波路と、
前記スラブ光導波路を伝搬したコリメート光を集光する複数の集光レンズと、
前記複数の集光レンズによって集光された光を出力する複数の出力チャネル光導波路とを備えることを特徴とする、請求項1又は2記載の光モジュール。
【請求項4】
信号光を入力する複数の入力チャネル光導波路と、
前記複数の入力チャネル光導波路を伝搬した信号光をコリメート光にする複数のコリメートレンズと、
コリメート光を導くスラブ光導波路と、
前記スラブ光導波路を伝搬したコリメート光を集光する複数の集光レンズと、
前記複数の集光レンズによって集光された光を出力する複数の出力チャネル光導波路と、
2つの素子搭載用開口部と、
一方の素子搭載用開口部のみをアライメント光が通過するように形成された一のアライメントポートと、
他方の素子搭載用開口部のみをアライメント光が通過するように形成された他のアライメントポートとを備えることを特徴とする、光導波路基板。
【請求項5】
2つの素子搭載用開口部を有し、一方の素子搭載用開口部のみをアライメント光が通過するように形成された一のアライメントポートと、他方の素子搭載用開口部のみをアライメント光が通過するように形成された他のアライメントポートとを備える光導波路基板を用意し、
前記一方の素子搭載用開口部に一の光導波路素子を挿入し、
前記一のアライメントポートを用いて、前記一の光導波路素子のアライメントを行ない、
前記他方の素子搭載用開口部に他の光導波路素子を挿入し、
前記他のアライメントポートを用いて、前記他の光導波路素子のアライメントを行なうことを特徴とする、光モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−333951(P2007−333951A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164688(P2006−164688)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】