説明

光波干渉測定装置

【課題】凹面部と凸面部と軸外停留点部を有する被検面の形状を測定できるようにする。
【解決手段】被検面80の凹面部81を測定する場合には、球面波からなる測定光が一旦収束した後に発散しながら凹面部81に照射されるように、凸面部82を測定する場合には、球面波からなる測定光が収束しながら凸面部82に照射されるように、干渉光学系2に対する被検面80の測定光軸L方向の位置をサンプルステージ用いて変化させる。また、軸外停留点部83を測定する場合には、平面波からなる測定光が軸外停留点部83に照射されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検面に測定光を照射し、該被検面からの戻り光と参照光との干渉により得られる干渉縞に基づき被検面の形状を測定する光波干渉測定装置に関し、特に、被検面が凹面部と凸面部と軸外停留点部を有してなる場合の形状測定に好適な光波干渉測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非球面形状の被検面に球面波を照射して被検面からの戻り光と参照光との干渉により形成される干渉縞に基づき、被検面の形状を特定する手法が知られているが、このような手法により被検面全域に対応した干渉縞を得ることは難しい。
【0003】
そこで、干渉計または被検面を測定光軸方向に順次移動させることにより、被検面の径方向の部分領域毎に対応した干渉縞が順次生じるようにし、その各干渉縞を解析して被検面の径方向の各部分領域の形状を求め、それらを繋ぎ合わせることにより被検面全域の形状を特定する手法が知られている(下記特許文献1参照)。
【0004】
一方、干渉計または被検面を測定光軸と垂直な面内において順次移動させ、移動毎に被検面の各部分領域に対応した干渉縞を縞解析可能な程度に拡大して撮像し、その各干渉縞を解析して被検面の各部分領域の形状を求め、それらを繋ぎ合わせることにより被検面全域の形状を特定する手法も知られている(下記特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開昭62−126305号公報
【特許文献2】USP6,956,657
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、非球面レンズの形状が複雑化しており、1つのレンズ面において、該レンズ面の光軸(中心軸)を中心に、凹形状となっている部分(凹面部)と凸形状となっている部分(凸面部)と光軸外において頂点または底点となって勾配が零となる部分(軸外停留点部)を併せ持つような形状のものが利用されるようになっている。このような凹面部と凸面部を有する被検面の形状を光干渉計測により測定することは困難であるとされ、これまでは、光触針を用いた三次元形状測定により形状測定が行われていた。
【0007】
光干渉計測による形状測定が困難とされる理由としては、凹面部と凸面部とでは、被検面の光軸に対する面の勾配が互いに逆となる(被検面を上方に向けたときに、凹面部では光軸に向かって下り勾配となるのに対し、凸面部では光軸に向かって上り勾配となる)ことが挙げられる。すなわち、一般的な光干渉計測法では、被検面に照射された測定光が被検面から再帰反射される(戻り光が元の光路を逆進する)領域のみで適正な干渉縞が得られるが、被検面に照射される測定光が、測定光軸に沿って発散しながら進行する球面波か、測定光軸に沿って収束しながら進行する球面波、または平面波のいずれかに固定されている従来の干渉計では、被検面からの戻り光の進行方向が凹面部と凸面部とで全く異なるため、凹面部と凸面部の両方の領域で共に適正な干渉縞を得ることができないのである。
【0008】
一方、軸外停留点部は、面の勾配が略零となっている(軸外停留点部に法線を立てた場合、その法線は、被検面の光軸と平行になる)ので、測定光として球面波を用いた場合、軸外停留点部に照射された測定光が再帰反射されず、やはり適正な干渉縞を得ることができない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、凹面部と凸面部と軸外停留点部を有してなる被検面の形状を測定することが可能な光波干渉測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の光波干渉測定装置は以下のように構成されている。
【0011】
すなわち、本発明に係る光波干渉測定装置は、被検面の光軸が測定光軸と一致するように該被検面を保持する保持手段と、光源部からの出力光を測定光に変換して前記被検面に照射し該被検面からの戻り光を参照光と合波して干渉光を得る干渉光学系と、得られた干渉光を該干渉光学系の光路から分岐させる分岐光学素子と、分岐された干渉光により形成される干渉縞を撮像する撮像系と、撮像された干渉縞を解析して前記被検面の形状を求める測定解析系と、前記干渉光学系に対する前記被検面の前記測定光軸方向の相対的位置を変化させる照射位置可変手段と、を備えた光波干渉測定装置であって、
前記被検面は、前記光軸を中心に前記干渉光学系側に凹となる凹面部と、該光軸を中心に該干渉光学系側に凸となる凸面部と、該光軸から外れた位置にあって該光軸に対し垂直な軸外停留点部とを有するものであり、
前記干渉光学系は、収束しながら進行する球面波または円筒波、および平面波を選択的に前記測定光として出力するものであり、
前記軸外停留点部を測定する場合には、前記平面波からなる前記測定光を該軸外停留点部に照射して測定を行い、
前記照射位置可変手段を用いて前記相対的位置を変化させることにより、前記凹面部を測定する場合には、前記球面波または前記円筒波からなる前記測定光が一旦収束した後に発散しながら該凹面部に照射されるようにして測定を行い、前記凸面部を測定する場合には、前記球面波または前記円筒波からなる前記測定光が収束しながら該凸面部に照射されるようにして測定を行う、ことを特徴とする。
【0012】
本発明において、前記照射位置可変手段を用いて前記相対的位置を順次変化させながら、前記凹面部または前記凸面部の複数の部分領域毎に対応した複数の領域別干渉縞を前記撮像系において順次撮像し、
前記測定解析系において、前記複数の領域別干渉縞に基づき前記複数の部分領域毎の形状情報を求め、該複数の部分領域毎の形状情報を互いに繋ぎ合わせることにより、該複数の部分領域を合併した全域の形状情報を求める、とすることができる。
【0013】
また、前記被検面に前記測定光が照射されたときに該被検面の一部領域から反射されて前記撮像系に入射する不要光の発生を防止するために、前記一部領域に入射する前記測定光の光量が低減するように該測定光の前記被検面上での光量分布を調整する光量分布調整手段を、前記光源部と前記分岐光学素子との間の光路上に配置することが好ましい。
【0014】
本発明において、被検面とは、該被検面の光軸(中心軸)回りに回転対称な形状のもの以外に、柱面形状のものを含む。
【0015】
また、凹面部とは、被検面を上方に向けたときに、被検面の光軸に向かって下り勾配となる領域、すなわち、該凹面部に法線を立てた場合、その法線が、該法線に沿って凹面部から離れるのに従って一旦は被検面の光軸に近づくように延びることとなる領域を意味し、凸面部とは、被検面を上方に向けたときに、被検面の光軸に向かって上り勾配となる領域、すなわち、該凸面部に法線を立てた場合、その法線が、該法線に沿って凸面部から離れるのに従って始めから被検面の光軸から遠ざかるように延びることとなる領域を意味する。
【0016】
また、軸外停留点部とは、被検面の光軸から外れた位置に在って、被検面を上方に向けたときに勾配が零となる領域、すなわち、該軸外停留点部に法線を立てた場合、その法線が、被検面の光軸と平行となるような領域を意味する。なお、通常、凹面部と凸面部との境界領域が軸外停留点部となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る光波干渉測定装置は、上述の構成を備えていることにより、以下のような作用効果を奏する。
【0018】
すなわち、本発明の光波干渉測定装置においては、照射位置可変手段を用いて被検面の測定光軸方向に沿った相対的位置を変化させることによって、凹面部を測定する場合には、球面波または円筒波からなる測定光が一旦収束した後に発散しながら該凹面部に照射されるようにし、凸面部を測定する場合には、球面波または円筒波からなる測定光が収束しながら該凸面部に照射されるようにしている。また、軸外停留点部を測定する場合には、平面波からなる測定光が該軸外停留点部に照射されるようにしている。
【0019】
これにより、凹面部と凸面部と軸外停留点部のいずれの領域でも、被検面で再帰反射される測定光の戻り光を発生させることができるので、凹面部と凸面部と軸外停留点部のいずれの領域においても共に適正な干渉縞を得ることが可能となる。
【0020】
したがって、本発明に係る光波干渉測定装置によれば、凹面部と凸面部と軸外停留点部を有してなる被検面の形状を高精度に測定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係る光波干渉測定装置の概略構成図である。
【0022】
図1に示す本実施形態の光波干渉測定装置1は、被検レンズ8が有する被検面80(被検レンズ8の図中上側のレンズ面)の形状を測定解析するものであり、被検面80に測定光を照射し該被検面80からの戻り光を参照光と合成して干渉光を得る干渉光学系2と、得られた干渉光を干渉光学系2の光路から分岐させるハーフミラー等の分岐光学素子3と、分岐された干渉光により形成される干渉縞を撮像する撮像系4と、撮像された干渉縞を解析して被検面80の形状を求める測定解析系5と、被検レンズ8が載置保持されるサンプルステージ6と、光量分布調整手段7と、を備えてなる。
【0023】
上記干渉光学系2は、フィゾータイプの光学系配置をなすものであり、高可干渉性の光束を出力する光源部20と、該光源部21からの出力光を平行光束に変換する第1コリメータレンズ21と、該第1コリメータレンズ21からの平行光束を一旦収束させる収束レンズ22と、該収束レンズ22からの収束光束の集光点に配されたピンホール23aを有するピンホール板23と、該ピンホール23aを通過した発散光束を平行光束に変換する第2コリメータレンズ24と、該第2コリメータレンズ24からの平行光束を測定光軸Lに沿って収束しながら進行する球面波に変換する球面基準レンズ25と、を備えてなる。
【0024】
上記球面基準レンズ25は、球面形状をなす参照基準球面25aを有してなり、当該球面基準レンズ25に入射された、第2コリメータレンズ24からの光束の一部を、この参照基準球面25aにおいて再帰反射して参照光となすとともに、該光束の他の一部を球面波からなる測定光となして被検面80に向け出力するように構成されている。そして、上記被検面80から反射された測定光の一部が、参照基準球面25aで反射された参照光と合波されることにより干渉光が得られるようになっている。
【0025】
また、本実施形態においては、上記球面基準レンズ25を、平面基準板26または円筒基準レンズ27と交換可能に構成されている。平面基準板26は、参照基準平面26aを有するものであり、被検面80や柱面形状をなす他の被検面(後述の被検面90)の所定領域(後述の軸外停留点部83,93)を測定する際に使用される。円筒基準レンズ27は、図1の紙面と垂直な方向に延びる円柱面(円筒面)形状の参照基準円筒面27aを有するものであり、後述の被検面90を測定する際に使用される。なお、図1では、上記球面基準レンズ25および円筒基準レンズ27を各々1枚のレンズで構成されているように示しているが、実際には複数枚のレンズにより構成される場合もある。また、これらの球面基準レンズ25、平面基準板26および円筒基準レンズ27は、測定光軸L上において図示せぬフリンジスキャンアダプタに保持され、フリンジスキャン計測等を実施する際に測定光軸L方向に微動せしめられるように構成されている。
【0026】
上記撮像系4は、結像レンズ40と、CCDやCMOS等からなる2次元イメージセンサ42を有してなる撮像カメラ41とを備えてなり、結像レンズ40により2次元イメージセンサ42上に形成された干渉縞の画像データを取得するように構成されている。
【0027】
上記測定解析系5は、2次元イメージセンサ42により取得された干渉縞の画像データに基づき、被検面80の形状データを求める、コンピュータ等からなる形状解析手段50と、該形状解析手段50による解析結果や画像を表示する表示装置51と、キーボードやマウス等からなる入力装置52とを備えてなる。なお、本実施形態において上記形状解析手段50は、上述のサンプルステージ6および光量分布調整手段7の駆動を制御するように構成されている。
【0028】
上記サンプルステージ6は、本実施形態において保持手段および照射位置可変手段を構成するものであり、被検面80の光軸Cが測定光軸Lと一致するように被検レンズ8の位置調整を行うとともに、被検レンズ8を測定光軸L方向に移動させることにより、被検面80に対する測定光の照射位置を変えるように構成されている。
【0029】
上記光量分布調整手段7は、被検面80に測定光が照射されたときに該被検面80の一部領域から反射されて撮像系4に入射する不要光の発生を防止するために、この一部領域に入射する測定光の光量が低減するように測定光の被検面80上での光量分布を調整するための遮光パターン(詳しくは後述する)を形成するものであり、上述の第1コリメータレンズ21と収束レンズ22との間の平行光束の光路上に配置された透過型液晶表示素子70(本実施形態における空間光変調素子)を備えてなる。
【0030】
次に、上述の被検レンズ8について説明する。図2は被検レンズ8の構成を示す図((A)は断面図、(B)は平面図)である。
【0031】
図2に示すように被検レンズ8は、光軸Cを中心とした回転対称の被検面80を有しており、該被検面80は、光軸Cを中心に上記干渉光学系2側(図2(A)での上側)に凹となる凹面部81と、光軸Cを中心に上記干渉光学系2側に凸となる凸面部82と、凹面部81と凸面部82との境界部分に位置する軸外停留点部83とを有してなる。
【0032】
凹面部81は、被検面80を上方に向けたときに、光軸Cに向かって下り勾配となる領域、すなわち、該凹面部81に立てた法線Nが、該法線Nに沿って凹面部81から離れるのに従って光軸Cに一旦近づく(交わる)ように延びる領域であり、凸面部82は、被検面80を上方に向けたときに、光軸Cに向かって上り勾配となる領域、すなわち、該凸面部82に立てた法線Nが、該法線Nに沿って凸面部82から離れるのに従って始めから光軸Cから遠ざかるように延びる領域である。また、軸外停留点部83は、厳密には、該軸外停留点部83に立てた法線Nの方向が、光軸Cの方向と一致する(平行となる)線状の領域であるが、本実施形態では少し広くとって、図中幅dの円環状の領域を軸外停留点部83としている。そして、この軸外停留点部83の内周側に位置する幅(径)dの凹状領域を凹面部81とし、軸外停留点部83の外周側に位置する幅dの円環状の凸状領域を凸面部82としている。
【0033】
以下、光波干渉測定装置1の作用および測定手順について説明する。図3は被検面80への測定光の照射パターン((A)は凹面部81、(B)は凸面部82、(C)は軸外停留点部83の各測定時)を示す図であり、図4は被検面80を測定する際の遮光パターンの一例((A)は凹面部81、(B)は凸面部82および軸外停留点部83の各測定時)を示す図である。なお、以下の説明では、被検面80の凹面部81、凸面部82、軸外停留点部83の順に測定する場合を例にとっているが、測定順序は適宜変更することが可能である。
【0034】
(1)まず、サンプルステージ6を用いて、被検面80の光軸Cが測定光軸Lと一致するように被検レンズ80の位置調整を行う。なお、干渉光学系2、分岐光学素子3および撮像系4のアライメント調整は完了しているものとする。
【0035】
(2)次に、被検面80の凹面部81を測定するために、サンプルステージ6を用いて、被検面80の測定光軸L方向の位置調整を行う。この位置調整は、干渉光学系2から出力された球面波からなる測定光が、図3(A)に示すように、測定光軸L上で一旦収束した後、発散しながら凹面部81に入射する状態となるように行われる。
【0036】
(3)次いで、透過型液晶表示素子70を用いて、凹面部81の測定時における測定光の光量分布を調整するための遮光パターンP(図4(A)参照)を形成する。この遮光パターンPは、光源部20からの出力光を透過する円板状の透光エリアSが中央部に形成され、その周辺部に、出力光を遮断する遮光エリアS(図中で斜線を付した部分。以下同様)が形成されたものであり、凹面部81を測定する際に、透光エリアSが凹面部81に投影され、遮光エリアSが凸面部82および軸外停留点部83に投影されるように設定されている。この遮光パターンPの投影により、凹面部81の測定時における凸面部82および軸外停留点部83からの不要光の発生を防止するようになっている。
【0037】
(4)次に、凹面部81に測定光を照射して、凹面部81の被測定領域から反射された戻り光と、球面基準レンズ25の参照基準球面25aからの参照光との干渉により形成される干渉縞を撮像系4において撮像し、その画像データを形状解析手段50に入力する。なお、凹面部81は、非球面形状をなしており、曲率が場所ごとに変化するので、凹面部81全域に対応した干渉縞画像を一度に得ることは難しい。そこで、サンプルステージ6を用いて被検面80の測定光軸L方向の位置を順次変化させながら、凹面部81の複数の部分領域毎(各々の部分領域は光軸Cを中心とした円板状または円環状となる)に対応した複数の領域別干渉縞を撮像系4において順次撮像し、その各画像データを取得するようにする。
【0038】
(5)次いで、被検面80の凸面部82を測定するために、サンプルステージ6を用いて、被検面80の測定光軸L方向の位置調整を行う。この位置調整は、干渉光学系2から出力された球面波からなる測定光が、図3(B)に示すように、収束しながら凸面部82に入射する状態となるように行われる。
【0039】
(6)次に、透過型液晶表示素子70を用いて、凸面部82の測定時における測定光の光量分布を調整するための遮光パターンP(図4(B)参照)を形成する。この遮光パターンPは、光源部20からの出力光を遮断する円板状の遮光エリアSが中央部に形成され、その周辺部に、出力光を透過する透光エリアSが形成されたものであり、凸面部82を測定する際に、透光エリアSが凸面部82および軸外停留点部83に投影され、遮光エリアSが凹面部81に投影されるように設定されている。この遮光パターンPの投影により、凸面部82の測定時における凹面部81からの不要光の発生を防止するようになっている。なお、この凸面部82の測定に際しては、軸外停留点部83にも測定光が照射されることとなるが、コンピュータシミュレーション等による光線追跡によって、該軸外停留点部83からの反射光は、後述の不要光とはならないことを確認した上で、このような遮光パターンPを投影するようにしている。
【0040】
(7)続いて、凸面部82に測定光を照射して、凸面部82の被測定領域から反射された戻り光と、球面基準レンズ25の参照基準球面25aからの参照光との干渉により形成される干渉縞を撮像系4において撮像し、その画像データを形状解析手段50に入力する。なお、凸面部82は、非球面形状をなしており、曲率が場所ごとに変化するので、凸面部82全域に対応した干渉縞画像を得ることは難しい。そこで、凹面部81の測定時と同様に、サンプルステージ6を用いて被検面80の測定光軸L方向の位置を順次変化させながら、凸面部82の複数の部分領域毎(各々の部分領域は光軸Cを中心とした円環状となる)に対応した複数の領域別干渉縞を撮像系4において順次撮像し、その各画像データを取得するようにする。
【0041】
(8)次に、被検面80の軸外停留点部83を測定するために、球面基準レンズ25に替えて平面基準板26を測定光軸L上に配置するとともに、サンプルステージ6を用いて、被検面80の測定光軸L方向の位置調整を行う。この位置調整は、干渉光学系2から出力された平面波からなる測定光が、図3(C)に示すように、軸外停留点部83に入射し、該軸外停留点部83の形状情報を担持した干渉縞を、撮像系4において撮像し得る状態となるように行われる。なお、軸外停留点部83の測定時には、透過型液晶表示素子70を用いて上述の遮光パターンPを形成し、これを被検面80に投影するようにする(透光エリアSが凸面部82および軸外停留点部83に投影され、遮光エリアSが凹面部81に投影されるようにする)。
【0042】
(9)続いて、軸外停留点部83に測定光を照射して、軸外停留点部83から反射された戻り光と、平面基準板26の参照基準平面26aからの参照光との干渉により形成される干渉縞を撮像系4において撮像し、その画像データを形状解析手段50に入力する。なお、この軸外停留点部83の測定に際しては、凸面部82にも測定光が照射されることとなるが、コンピュータシミュレーション等による光線追跡によって、該凸面部82からの反射光は、後述の不要光とはならないことを確認した上で、このような遮光パターンPを投影するようにしている。
【0043】
(10)次に、形状解析手段50において、各々の干渉縞の画像データに基づき、凹面部81、凸面部82および軸外停留点部83の形状情報を求め、各々の形状情報を互いに繋ぎ合わせることにより、被検面80全域の形状情報を求める。具体的には、凹面部81の上記複数の部分領域毎に対応した複数の領域別干渉縞の画像データに基づき複数の部分領域毎の形状情報を求め、該複数の部分領域毎の形状情報を互いに繋ぎ合わせることにより、該複数の部分領域を合併した凹面部81全域の形状情報を求める。同様に、凸面部82の上記複数の部分領域毎に対応した複数の領域別干渉縞の画像データに基づき複数の部分領域毎の形状情報を求め、該複数の部分領域毎の形状情報を互いに繋ぎ合わせることにより、該複数の部分領域を合併した凸面部82全域の形状情報を求める。また、軸外停留点部83に対応した干渉縞の画像データに基づき軸外停留点部83の形状情報を求める。そして、凹面部81全域、凸面部82全域および軸外停留点部83の各形状情報を互いに繋ぎ合わせることにより、被検面80全域の形状情報を求める。
【0044】
なお、上述のように遮光パターンP,Pは、被検面80に測定光が照射されたときに該被検面80の一部領域から反射されて撮像系4に入射する不要光の発生を防止するために、この一部領域に入射する測定光の光量を低減させるためのものである。ここで、この不要光について図5を用いて説明する。図5は測定時に発生する不要光を示す模式図であり、図5の上部には、2次元イメージセンサ42の正面図がその断面図と共に模式的に示してある(正面図の方が上方に位置する)。また、図5では、分岐光学素子3、第2コリメータレンズ24、球面基準レンズ25および結像レンズ40を含む光学系を簡略化して示してある。
【0045】
図5に示すように、被検面80の凸面部82を測定するために、収束する球面波からなる測定光を被検面80に照射する場合を考察する。このとき、凸面部82から再帰反射され、球面基準レンズ25、第2コリメータレンズ24、分岐光学素子3および結像レンズ40を経て2次元イメージセンサ42上の結像点Fに入射する光があるとする。一方、同時に、凹面部81から反射されて上記結像点Fに入射する、光量の大きい光がある場合に、この光が不要光となる。なお、被検面80が回転対称形状であるため、このような不要光が入射する位置は、2次元イメージセンサ42上において円を描くように生じる。本実施例では、凸面部82を測定する際に、上記遮光パターンPを被検面80に投影することにより、凹面部81に入射する測定光の光量を低減することができるので、このような不要光の発生を防止することが可能となる。なお、凹面部81を測定する場合の不要光の発生および上記遮光パターンPの作用についても同様である。
【0046】
また、どのように測定光を照射したときに、被検面80のどの位置から不要光が発生するかについては、コンピュータシミュレーション等による光線追跡によって事前に把握することが可能である。そこで、このような光線追跡により把握した、不要光が発生する領域のみを遮光するような遮光パターン(図示略)を被検面80に投影してもよい。
【0047】
一方、上述のように、凹面部81や凸面部82を複数の部分領域に分割し、その部分領域毎に測定を行う場合には、この各部分領域のみに測定光が照射されるような遮光パターン(図6に示す遮光パターンP)を被検面80に投影してもよい。図6は被検面80を測定する際の遮光パターンの別の例を示す図である。図6に示す遮光パターンPは、光源部20からの出力光を透過する透光エリアSが、上記複数の部分領域毎に対応するように円環状に形成され、その他の部分が、出力光を遮断する遮光エリアSとされたものであり、複数の部分領域毎に測定する際に、透光エリアSが測定対象となる部分領域に投影され、遮光エリアSが被検面80のその余の領域に投影されるように設定されている。また、複数の部分領域の位置や大きさの変化に応じて、透光エリアSの径や円環の幅が順次変更されるようになっている。この遮光パターンPの投影により、測定対象となる部分領域以外の領域からの不要光の発生を防止することが可能となる。
【0048】
次に、他の被検レンズ(図7に示す被検レンズ9)を測定する場合について説明する。図7は他の被検レンズ9の構成を示す図((A)断面図、(B)平面図)であり、図8はこの被検レンズ9の被検面90を測定するときの遮光パターンの一例((A)は凹面部、(B)は凸面部および軸外停留点部の各測定時)を示す図である。また、図9はこの被検面90を測定するときの遮光パターンの別の例を示す図である。
【0049】
図7に示すように被検レンズ9は、光軸Cを挟んで図中左右対称となる柱面形状の被検面90を有しており、該被検面90は、光軸Cを中心に上記干渉光学系2側(図7(A)での上側)に凹となる凹面部91と、光軸Cを中心に上記干渉光学系2側に凸となる凸面部92と、凹面部91と凸面部92との境界部分に位置する軸外停留点部93とを有してなる。
【0050】
なお、凹面部91、凸面部92および軸外停留点部93の形状の特徴は、柱面形状の一部を構成するものである点を除けば上記被検面80と同様であり、図中幅d´の直帯状の2つの領域を軸外停留点部93とし、この2つの軸外停留点部93の内側に位置する幅(径)d´の凹状領域を凹面部91とし、各軸外停留点部93の外側に位置する幅d´の2つの直帯状の領域を凸面部92としている。
【0051】
この被検レンズ9の被検面90を測定する場合は、図1に示す円筒基準レンズ27を測定光軸L上に配置する。なお、測定手順は、上記被検面80を測定する場合と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0052】
一方、図8(A)に示す遮光パターンPは、上記凹面部91を測定する際に、上記透過型液晶表示素子70を用いて形成されるものである。この遮光パターンPは、光源部20からの出力光を透過する直帯状の透光エリアSが中央部に形成され、その左右両側に、出力光を遮断する2つの遮光エリアSが形成されたものであり、凹面部91を測定する際に、透光エリアSが凹面部91に投影され、遮光エリアSが凸面部92および軸外停留点部93に投影されるように設定されている。この遮光パターンPの投影により、凹面部91の測定時における凸面部92および軸外停留点部93からの不要光の発生を防止するようになっている。
【0053】
また、図8(B)に示す遮光パターンPは、上記凸面部92を測定する際に、上記透過型液晶表示素子70を用いて形成されるものである。この遮光パターンPは、光源部20からの出力光を遮断する直帯状の遮光エリアSが中央部に形成され、その左右両側に、出力光を透過する2つの透光エリアSが形成されたものであり、凸面部92を測定する際に、透光エリアSが凸面部92および軸外停留点部93に投影され、遮光エリアSが凹面部91に投影されるように設定されている。この遮光パターンPの投影により、凸面部92の測定時における凹面部91からの不要光の発生を防止するようになっている。なお、この凸面部92の測定に際しては、軸外停留点部93にも測定光が照射されることとなるが、コンピュータシミュレーション等による光線追跡によって、該軸外停留点部93からの反射光は、前述の不要光とはならないことを確認した上で、このような遮光パターンPを投影するようにしている。
【0054】
また、この遮光パターンPは、軸外停留点部93を測定する場合にも用いられる。すなわち、軸外停留点部93を測定する際には、円筒基準レンズ27に替えて平面基準板26が測定光軸L上に配置されるとともに、過型液晶表示素子70を用いて遮光パターンPを形成し、これを被検面90に投影するようにする(透光エリアSが凸面部92および軸外停留点部93に投影され、遮光エリアSが凹面部91に投影されるようにする)。なお、この軸外停留点部93の測定に際しては、凸面部92にも測定光が照射されることとなるが、コンピュータシミュレーション等による光線追跡によって、該凸面部92からの反射光は、前述の不要光とはならないことを確認した上で、このような遮光パターンPを投影するようにしている。
【0055】
また、図9に示す遮光パターンPは、上述の被検面80における凹面部81および凸面部82に対する測定と同様に、凹面部91や凸面部92を複数の部分領域に分割し、その部分領域毎に測定を行う場合において、この各部分領域のみに測定光が照射されるようにするためのものである。この遮光パターンPは、光源部20からの出力光を透過する透光エリアSが、複数の部分領域毎に対応するように2つの細い直帯状に形成され、その他の部分が、出力光を遮断する遮光エリアSとされたものであり、複数の部分領域毎に測定する際に、透光エリアSが測定対象となる部分領域に投影され、遮光エリアSが被検面90のその余の領域に投影されるように設定されている。また、複数の部分領域の位置や大きさの変化に応じて、2つの透光エリアSの位置や幅が適宜変更されるようになっている。この遮光パターンPの投影により、測定対象となる部分領域以外の領域からの不要光の発生を防止することが可能となる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々に態様を変更することが可能である。
【0057】
例えば、上述の実施形態では、回転対称形状の被検面80と柱面形状の被検面90を共に測定するために、球面波を出力する球面基準レンズ25と、円筒波を出力する円筒基準レンズ27とを交換可能に備えているが、測定対象となる被検面の形状が限定されている場合には、2種類の基準レンズを備える必要はない。
【0058】
また、上述の実施形態では、被検面80,90の軸外停留点部83,93を測定する場合に、平面波を出力する平面基準板26を交換可能に備えているが、このような軸外停留点部を測定対象としない場合や、測定対象とする場合でも上記球面基準レンズ25や円筒基準レンズ27によって測定が可能である場合には、平面基準板26を備える必要はない。
【0059】
また、上述の実施形態では、光量分布調整手段7の空間光変調素子が透過型液晶表示素子70とされているが、反射型液晶表示素子やDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)等の空間光変調素子を用いることも可能である。
【0060】
また、光量分布調整手段7を、光源部20からの出力光を2つの光束に分岐し、該2つの光束を互いに異なる経路を経由させた後に互いに干渉させることによって測定光の光量分布を調整する干渉縞形成光学系を用いて構成することも可能である。このような干渉縞形成光学系については、特願2008−256886号明細書に詳述されている。
【0061】
また、上述の実施形態では、干渉光学系2がフィゾータイプの光学系配置をなすものとされているが、マイケルソンタイプ等の他の光学系配置をなす干渉光学系を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】一実施形態に係る光波干渉測定装置の概略構成図
【図2】被検レンズの構成を示す図((A)断面図、(B)平面図)
【図3】測定光の照射パターン((A)凹面部、(B)凸面部、(C)軸外停留点部の各測定時)を示す図
【図4】遮光パターンの一例((A)は凹面部、(B)は凸面部および軸外停留点部の各測定時)を示す図
【図5】発生する不要光を模式的に示す図
【図6】遮光パターンの別の例を示す図
【図7】他の被検レンズの構成を示す図((A)断面図、(B)平面図)
【図8】他の被検面測定時の遮光パターンの一例((A)は凹面部、(B)は凸面部および軸外停留点部の各測定時)を示す図
【図9】他の被検面測定時の遮光パターンの別の例を示す図
【符号の説明】
【0063】
1 光波干渉測定装置
2 干渉光学系
3 分岐光学素子
4 撮像系
5 測定解析系
6 サンプルステージ
7 光量分布調整手段
8,9 被検レンズ
20 光源部
21 第1コリメータレンズ
22 収束レンズ
23 ピンホール板
23a ピンホール
24 第2コリメータレンズ
25 球面基準レンズ
25a 参照基準球面
26 平面基準板
26a 参照基準平面
27 円筒基準レンズ
27a 参照基準円筒面
40 結像レンズ
41 撮像カメラ
42 2次元イメージセンサ
50 形状解析手段
51 表示装置
52 入力装置
70 透過型液晶表示素子
80,90 被検面
81,91 凹面部
82,92 凸面部
83,93 軸外停留点部
,C (被検面の)光軸
L 測定光軸
〜N 法線
〜P 遮光パターン
(遮光パターンの)透光エリア
(遮光パターンの)遮光エリア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検面の光軸が測定光軸と一致するように該被検面を保持する保持手段と、光源部からの出力光を測定光に変換して前記被検面に照射し該被検面からの戻り光を参照光と合波して干渉光を得る干渉光学系と、得られた干渉光を該干渉光学系の光路から分岐させる分岐光学素子と、分岐された干渉光により形成される干渉縞を撮像する撮像系と、撮像された干渉縞を解析して前記被検面の形状を求める測定解析系と、前記干渉光学系に対する前記被検面の前記測定光軸方向の相対的位置を変化させる照射位置可変手段と、を備えた光波干渉測定装置であって、
前記被検面は、前記光軸を中心に前記干渉光学系側に凹となる凹面部と、該光軸を中心に該干渉光学系側に凸となる凸面部と、該光軸から外れた位置にあって該光軸に対し垂直な軸外停留点部とを有するものであり、
前記干渉光学系は、収束しながら進行する球面波または円筒波、および平面波を選択的に前記測定光として出力するものであり、
前記軸外停留点部を測定する場合には、前記平面波からなる前記測定光を該軸外停留点部に照射して測定を行い、
前記照射位置可変手段を用いて前記相対的位置を変化させることにより、前記凹面部を測定する場合には、前記球面波または前記円筒波からなる前記測定光が一旦収束した後に発散しながら該凹面部に照射されるようにして測定を行い、前記凸面部を測定する場合には、前記球面波または前記円筒波からなる前記測定光が収束しながら該凸面部に照射されるようにして測定を行う、ことを特徴とする光波干渉測定装置。
【請求項2】
前記照射位置可変手段を用いて前記相対的位置を順次変化させながら、前記凹面部または前記凸面部の複数の部分領域毎に対応した複数の領域別干渉縞を前記撮像系において順次撮像し、
前記測定解析系において、前記複数の領域別干渉縞に基づき前記複数の部分領域毎の形状情報を求め、該複数の部分領域毎の形状情報を互いに繋ぎ合わせることにより、該複数の部分領域を合併した全域の形状情報を求める、ことを特徴とする請求項1記載の光波干渉測定装置。
【請求項3】
前記被検面に前記測定光が照射されたときに該被検面の一部領域から反射されて前記撮像系に入射する不要光の発生を防止するために、前記一部領域に入射する前記測定光の光量が低減するように該測定光の前記被検面上での光量分布を調整する光量分布調整手段を、前記光源部と前記分岐光学素子との間の光路上に配置してなる、ことを特徴とする請求項1または2記載の光波干渉測定装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−96526(P2010−96526A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265237(P2008−265237)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】