説明

光電変換装置、イメージセンサ及びイメージングシステム

【課題】プローブ光の位相バイアスを抑制せず、かつ回路が飽和することもなしに、THz電磁波によって変調されたプローブ光の変調量を検出可能な光電変換装置を提供する。
【解決手段】フォトダイオード1と、カソード端子がフォトダイオード1のカソード端子と接続されたフォトダイオード1’と、フォトダイオード1とフォトダイオード1’との間に挿入された電荷蓄積用容量3と、電荷蓄積用容量3とフォトダイオード1’との間に挿入された電荷蓄積用容量3’と、一方の入力端子がフォトダイオード1と電荷蓄積用容量3との間に接続され、他方の入力端子がフォトダイオード1’と電荷蓄積用容量3’との間に接続された差動増幅回路6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置、イメージセンサ及びイメージングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セキュリティ検査用途、医療検査用途、食品分析用途、環境モニター用途を目的として、THz帯電磁波イメージング装置の需要が高まりつつあり、活発な開発が進められている(例えば、非特許文献1、2、及び特許文献1−3を参照)。
【0003】
これらの技術においては、THz電磁波源より発せられた周波数0.1THzから100THzの領域にあるTHz電磁波を被検査物に照射し、その透過または反射波に、該被検査物の特性の空間分布情報を変調量として担わせ、これを受信することにより被検査物の特性の空間分布情報を2次元画像として構成する。
【0004】
初期には、被検査物の2次元情報を得る方法として、非特許文献2に記載されているように、照射THz電磁波ビームをレンズによって該被検査物の一部に集束し、該被検査物を走査し、変調されたTHz電磁波を高々一次元情報のみ受信可能な受信器によって逐次受信し、2次元情報を構成するという方法が取られた。
【0005】
しかし、この方法では2次元情報の全データを採取するために数時間という長時間を要し、実時間で検査を終了させることが要求される検査装置としては非実用的である。
【0006】
この欠点を補うための、図19に示す装置が非特許文献3に開示されている。
図19において、光源1701より、パルス幅100fsの超短パルス光が1kHzの周波数で発生され、偏光ビームスプリッタ1702によりP偏光はポンプ光1703として分離され、S偏光はプローブ光1704として分離される。
【0007】
ポンプ光1703は光学遅延線1705を経て、半絶縁性GaAsウエハー上に間隔10mmをおいて形成された電極対を有する光伝導スイッチによって構成されたTHz電磁波エミッター1706に入射され、THz電磁波1707が発生される。このようにして発生されたTHz電磁波1707は極めてコリメート性が高く幅の広いビームであり、THz電磁波1707の進行方向に垂直な面において2次元的な透過分布を有する被測定物1708に照射される。
【0008】
被測定物1708を通過したTHz電磁波1707は被測定物の2次元透過特性に伴い、空間的に強度変調されたビームとなる。これをポリエチレンレンズ1709によって、後段のZnTe結晶よりなる電気光学変調器1713内に結像する。
【0009】
プローブ光1704はミラー1710で進路変更され、さらにビームエクスパンダ1711によってビーム幅が広げられた後、シリコンウエハーで構成されたシリコンミラー1712に入射し、シリコンミラー1712を透過した強度変調されたTHz電磁波1707と光軸を共有する。言い換えれば、重畳される。
【0010】
重畳されたプローブ光1704とTHz電磁波1707とは、電気光学変調器1713に入射する。
【0011】
電気光学変調器1713は、[110]面が光軸に垂直に配置されたZnTe結晶よりなる。
【0012】
電気光学変調器1713の後段には、位相板1714、プローブ光1704に直交する偏波面を有する直線偏光のみ透過する偏光板1715、及び偏光板1715からの透過光を受光する一画素あたり1つのフォトダイオードを有する2次元CMOSイメージセンサ1716がこの順に配置される。
【0013】
偏光板1715の透過光が、CMOSイメージセンサ1716を飽和させない程度の強度になるよう、位相板1714は、位相板1714を通過後のプローブ光1704の偏波面が、所定の基準条件の下で、偏光板1715の透過偏波面に直交する方向から2〜3°程度の偏角を成すように設定される。
【0014】
この基準条件とは、例えば、THz電磁波1707がプローブ光1704の各パルスと同時に電気光学変調器1713に入射しない場合、すなわちTHz電磁波パルスとプローブパルスとが非同期の場合を表す。この基準条件において、プローブ光1704は、上記偏角に応じて抑制された強度で偏光板1715を透過し、イメージセンサ1716に入射する。
【0015】
このように、プローブ光を直線偏波で用いると共にその偏波面を制御することによって偏光板を透過する光量を抑制することを、以下ではプローブ光の位相バイアスを抑制すると言う。
【0016】
このとき、THz電磁波パルスとプローブ光パルスとが同時に電気光学変調器1713に入射する場合、すなわち両パルス間の同期が取れている場合には、非同期の場合と比べて、電気光学変調器1713によってプローブ光1704に与えられる偏角が0.02°程度変動する。
【0017】
この偏波面の角度に関する1%程度の変調に応じて、偏光板1715によってプローブ光1704は強度変調される。
【0018】
同期回路1717は、光源1701のパルス発生タイミングと同期して、例えばTHz電磁波エミッター1706によるTHz電磁波の発生を許可又は抑止することによって、連続する2つのプローブ光パルスにそれぞれTHz電磁波によって変調された情報、及び未変調の情報を担わせる。
【0019】
画像処理回路1718は、これらの2つのプローブ光パルスからイメージセンサ1716によって得られた2つの画像を取り込み、両画像間の差分をとることによって被測定物1708のTHz電磁波に対する透過特性に応じた画像を生成する。
【特許文献1】特開2002−5828号公報
【特許文献2】特開2004−20504号公報
【特許文献3】特開2005−37213号公報
【非特許文献1】Kiyomi Sakai ed., “Terahertz Optoelectronics”, Springer Verlag, 2005.
【非特許文献2】B. B. Hu and M. C. Nuss, Opt. Lett. Vol.20, p.1716, (1995).
【非特許文献3】F. Miyamaru, T. Yonera, M. Tani and M. Hangyo, Japanese Journal of Applied Physics, Vol.43, p.L489−L491, (2004).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかし、上記の従来の技術においては、次の2つの課題が生じる。
第1の課題は、従来のCMOSイメージセンサの飽和を回避すべく、プローブ光の位相バイアスを抑制するために、得られる画像の信号雑音比(S/N比)の向上が困難になることである。
【0021】
図20は、偏光フィルタの特性を説明する図であり、プローブ光の偏波面に関する角度に対するプローブ光の透過強度の特性を概念的に示している。プローブ光の位相バイアスを抑制することで、図20のAの部分の特性が用いられることになる。そのために大きな変調量が得られず、S/N比の向上が困難になる。
【0022】
THz電磁波源として、再生アンプ付きの高出力短パルスレーザを用いた場合、発生したTHz電磁波によってプローブ光に10%程度の変調を与えることができる(図20のBの部分の特性)。ただし、その場合には、飽和を回避するための対策が不可欠である。しかし、例えばNDフィルタでプローブ光の強度を低下させただけでは、信号の絶対値と共に変調量も低下してしまい、S/N比は改善されない。
【0023】
理想的なS/N比を得るために、未変調時に偏光フィルタに入射するプローブ光を円偏光とし、互いに直行する等量の偏光成分に、変調による偏波面の回転に関する情報をロスなく持たせることが好ましい。しかし、それでは、前述した飽和の問題を解決することができない。
【0024】
すなわち、図21に示した一般的なイメージセンサの画素回路によれば、フォトダイオード1801に過大なプローブ光が入射することになり、フォトダイオード1801で生じる電荷量が、容量1804で蓄積可能な飽和電荷量を超えてしまう。そして、リセットパルス発生回路1806による制御に従ってリセットトランジスタ1807がリセット動作を行った後、過大な光入力によって飽和量に達した電荷が、転送パルス発生回路1803による制御に従って転送トランジスタ1802を介して増幅回路1805に入力される。
【0025】
このような事情から、従来、プローブ光の位相バイアスを抑制する手法が用いられ、その結果、信号の変調量を稼ぐことができずにS/N比が低下するという第1の課題が発生する。
【0026】
さらに、偏光フィルタでは、プローブ光に直交する偏光成分を完全に遮断することはできず、μWオーダーの光が透過してくることもS/N比を悪化させる要因に加わる。その結果、得られるS/N比は極めて低く1%程度にとどまる。
【0027】
第2の課題は、従来の技術によれば、2つのプローブ光パルスからそれぞれ得られた画像間の差分をとるために、少なくとも1つの画像を一時的に記憶回路に保存する必要から、装置が複雑化することである。
【0028】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、プローブ光の位相バイアスを抑制せず、かつ回路が飽和することもなしに、THz電磁波によって変調されたプローブ光の変調量を検出可能な光電変換装置を提供することを目的とする。
【0029】
さらには、1つのプローブ光パルスを受光するだけで、THz電磁波によって変調されたプローブ光の変調量を検出可能な光電変換装置を提供することを目的とする。
【0030】
また、そのような光電変換装置を用いたイメージセンサ、イメージングシステムを提供することも、本発明の目的に含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記目的を達成するために、本発明の光電変換装置は、第1フォトダイオードと、第1極性の端子が前記第1フォトダイオードの第1極性の端子と接続された第2フォトダイオードと、前記第1フォトダイオードと前記第2フォトダイオードとの間に挿入された第1容量と、前記第1容量と前記第2フォトダイオードとの間に挿入された第2容量と、一方の入力端子が前記第1フォトダイオードと前記第1容量との間に接続され、他方の入力端子が前記第2フォトダイオードと前記第2容量との間に接続された差動増幅回路とを備えることを特徴とする。ここで、前記第1フォトダイオード及び前記第2フォトダイオードは、同等の特性を有し、前記第1容量及び前記第2容量は、同等の特性を有し、前記第1フォトダイオード及び前記第2フォトダイオードには、入射光を、その入射光が有する特定の物理量に応じた強度で、互いに異なる特性に従って透過するフィルタが設けられていてもよい。また、前記フィルタは、異なる偏光透過特性を有する偏光フィルタであってもよいし、前記フィルタは、異なる波長透過特性を有する波長フィルタであってもよい。
【0032】
光電変換装置は、偏波面の方向や波長について変調されたプローブ光の変調量の検出に用いられ、第1フォトダイオード及び第2フォトダイオードに形成された2つのフィルタは、所定の基準状態、例えば変調量が0である場合、つまりプローブ光が変調されていない状態において、各々のフォトダイオードに入射するプローブ光の光量が等しくなるように設定される。プローブ光の偏波面の方向や波長を変調するためには、従来知られている電気光学変調素子を用いることができる。
【0033】
この構成によれば、未変調光には円偏光となるプローブ光を2つのフォトダイオードに入射し、フォトダイオードに等量の電流を発生させ、第1容量及び第2容量のそれぞれの対向電極に等量の電流を流入させることによって、出力を抑止する。そして、変調時には、フィルタ特性の違いによって変調量に応じた受光量の差をそれぞれのフォトダイオードについて生ぜしめ、この差に相当する電流を第1容量及び第2容量にそれぞれ流して電荷を蓄積させ、蓄積電荷量の差に応じた電圧信号を検出することが可能となる。従って、未変調光が入射した場合では2つのフォトダイオードで発生する電流は信号に寄与することは無く、出力信号も飽和することはなく、変調光が入射した場合のみ変調光に起因する信号を検出することが可能となる。また、差動増幅回路により蓄積電荷量の差に応じた電圧信号を所定の利得で増幅することが可能となり、得られる画像の高いS/N比を実現することが可能となる。
【0034】
これにより、プローブ光の位相バイアスを抑制せず、かつ回路を飽和させることなく、しかも、1つのプローブ光パルスを受光するだけで、THz電磁波によって変調されたプローブ光の変調量を検出可能な光電変換装置が得られる。
【0035】
ここで、前記第1フォトダイオードは、第1導電型の半導体基板表面に形成された、互いに接する第1導電型の第1領域及び第2導電型の第2領域から構成され、前記第2フォトダイオードは、前記半導体基板表面に形成された、互いに接する第1導電型の第3領域及び第2導電型の第4領域から構成され、前記第1領域及び第3領域の形状は等しく、前記第2領域及び第4領域の形状は等しく、前記第1領域及び第2領域のいずれかは、前記半導体基板表面に形成された第1電極と接続され、前記第3領域及び第4領域のいずれかは、前記半導体基板表面に形成された第2電極と接続されてもよい。
【0036】
この構成によれば、光電変換装置をより対称性の高い構成とすることが可能となり、容易に光電変換装置の回路構成を集積回路として半導体基板に形成することが可能になる。
【0037】
また、前記第1容量及び第2容量は、それぞれPN接合の接合容量であり、前記第1電極は、前記第1容量の第2導電型の電極であり、前記第2電極は、前記第2容量の第2導電型の電極であってもよい。
【0038】
この構成によれば、第1容量及び第2容量の2つの容量は、それぞれ第1電極及び第2電極と半導体基板との間のPN接合による接合容量となる。従って、第1電極、第2電極及び半導体基板の不純物濃度を低くすることで2つの容量の大きさを低減し、得られる画像のより高いS/N比を実現することが可能となる。
【0039】
また、前記第1容量及び第2容量は、それぞれショットキー接合の接合容量であり、前記第1電極は、前記半導体基板とショットキー接続する前記第1容量の電極であり、前記第2電極は、前記半導体基板とショットキー接続する前記第2容量の電極であってもよい。
【0040】
この構成によれば、2つの容量は、それぞれ第1電極及び第2電極と半導体基板との間のショットキー接合による接合容量となる。従って、第1電極、第2電極及び半導体基板の不純物濃度を低くすること、又は第1電極及び第2電極と半導体基板とのショットキー接合高さを高めることによって2つの容量の大きさを低減し、得られる画像のより高いS/N比を実現することが可能となる。
【0041】
また、前記第1容量及び第2容量は、それぞれ誘電体を導電体で挟んだ構造であってもよい。
【0042】
この構成によれば、誘電体膜の膜厚と誘電率とを制御することによって半導体基板を改質するだけでは実現できない、高いダイナミックレンジを有する容量を確実に半導体基板上に形成することが可能となる。
【0043】
また、前記第1容量の誘電体の膜厚と前記第2容量の誘電体の膜厚とは等しくてもよい。
【0044】
この構成によれば、2つの容量は同一のものとなり、2つのフォトダイオードで等量の光電流が発生した場合には確実に等量の電荷が各々の容量に蓄積される。従って、未変調光が入射した場合には信号出力を抑止するという所望の特性を確実に実現することができる。
【0045】
また、前記光電変換装置は、さらに、前記第1容量と前記第2容量との間に挿入され、前記第1容量及び第2容量の電荷を排出する排出スイッチを備えてもよい。
【0046】
この構成によれば、2つの容量の蓄積電荷をキャンセル、すなわちリセット動作することが可能となる。
【0047】
また、前記排出スイッチは、MOSFETであり、前記MOSFETは、前記第1電極と前記第2電極との間に位置するように前記半導体基板上に形成されたゲート電極を有してもよい。
【0048】
この構成によれば、ゲート電極に電圧を印加し、半導体基板におけるゲート電極下の空乏層厚を制御することができる。従って、ゲート電極両側に位置する2つの容量の大きさを外部電圧によって制御し、蓄積電荷量に応じて電圧信号の大きさを変えることが可能となる。さらに、ゲート電極に電圧を印加し、半導体基板におけるゲート電極下にチャネルを形成することができる。従って、2つの容量を電気的に短絡、すなわち、リセット動作することが可能となる。
【0049】
また、前記排出スイッチは、接合型FETであり、前記接合型FETは、前記第1電極と前記第2電極との間に位置するように前記半導体基板表面に形成された第2導電型のゲート電極を有してもよい。
【0050】
この構成によれば、ゲート電極に電圧を印加し、半導体基板におけるゲート電極下の空乏層厚を制御することができる。従って、ゲート電極両側に位置する容量の大きさを外部電圧によって制御し、蓄積電荷量に応じて電圧信号の大きさを変えることが可能となる。さらに、ゲート電極に電圧を印加し、半導体基板におけるゲート電極下に空乏層幅を薄くすることができる。従って、2つの容量を電気的に短絡、すなわち、リセット動作することが可能となる。
【0051】
また、前記光電変換装置は、さらに、前記第1フォトダイオードと前記第1容量との間に挿入された第1転送スイッチと、前記第2フォトダイオードと前記第2容量との間に挿入された第2転送スイッチとを備えてもよい。
【0052】
この構成によれば、フォトダイオードと接続される容量との電気的接続状態を独立に制御することが可能となる。特に、入射光量が大きくフォトダイオード容量を超える光電流が発生した場合には、第1転送スイッチ及び第2転送スイッチによってフォトダイオードを容量に電気的に短絡することによって、電荷を常時容量に蓄積し続けることが可能となり、信号飽和は発生しない。一方、入射光量が少ない場合には、フォトダイオードを容量から電気的に遮断し、電荷をフォトダイオードに蓄積させ、電荷読み出し時に第1転送スイッチ及び第2転送スイッチによって容量に転送することが可能である。
【0053】
また、本発明は、2次元に配置され、それぞれに上記光電変換装置を有した複数の画素回路と、それぞれの画素回路が有する前記光電変換装置の出力信号を読み出す読み出し回路とを備えることを特徴とするイメージセンサとすることもできる。
【0054】
この構成によれば、2つのフォトダイオードで発生した光電流の差分をイメージ情報として取り出すことが可能となる。
【0055】
また、本発明は、上記光電変換装置の駆動方法であって、前記半導体基板の前記ゲート電極下方の領域において空乏層が広げられるように前記ゲート電極にバイアス電圧を印加した状態で、前記第1容量及び第2容量に蓄積された電荷の差に応じた電圧を前記差動増幅回路から読み出すことを特徴とする光電変換装置の駆動方法とすることもできる。
【0056】
この構成によれば、半導体基板におけるゲート電極下の空乏層を拡げて容量の大きさを低減した状態で、2つの容量の蓄積電荷の差に応じた電圧信号が出力される。従って、得られる画像のより高いS/N比を実現することが可能となる。
【0057】
また、本発明は、上記光電変換装置の駆動方法であって、前記半導体基板の前記ゲート電極下方の領域において空乏層が狭められるように前記ゲート電極にバイアス電圧を印加した状態で、前記第1容量及び第2容量に蓄積された電荷を排出させることを特徴とする光電変換装置の駆動方法とすることもできる。
【0058】
この構成によれば、半導体基板におけるゲート電極下の空乏層を狭めて容量の蓄積電荷を排出する。従って、独立したリセット用ゲートを設けることなく容量のリセット動作を行うことが可能となり、デバイス面積の増大を抑制することが可能となる。
【0059】
また、本発明は、周波数が0.1THzから10THzの領域にあるTHz電磁波を発生する電磁波源と、プローブ光を発生する光源と、被写体を透過又は反射した後の前記THz電磁波を前記プローブ光と重畳する重畳光学素子と、前記重畳されたTHz電磁波とプローブ光とを入射され、前記THz電磁波の電界に応じて前記プローブ光の特定の物理量を変調する電気光学変調素子と、前記変調後のプローブ光を撮像する上記イメージセンサとを備えることを特徴とするイメージングシステムとすることもできる。
【0060】
この構成によれば、高速動作可能でかつ高いS/N比を有するTHzイメージングシステムを実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0061】
本発明の光電変換装置によれば、2つのフォトダイオードに生じる光電流の差を出力信号に増幅できるので、入射光をその特定の物理量に応じた強度で、異なる特性に従って透過するフィルタをそれぞれのフォトダイオードに設ければ、入射光が特定の物理量に関してどの程度変調されているかを、2つのフォトダイオードに生じる光電流の差として検出することができる。
【0062】
例えば、特定の物理量が偏波面の方向であれば、フィルタは偏光フィルタであり、特定の物理量が波長であれば、フィルタは波長フィルタである。
【0063】
このとき、出力信号は入射光の光量の差に基づくので、入射光の光量そのものが大きくても回路は飽和しない。従って、回路の飽和を防ぐために従来行われている入射光の位相バイアスを抑制するのをやめて、高いS/N比で入射光の変調量を検出することが可能になる。しかも、その検出は、変調された入射光を一回受光するだけで行うことができる。
【0064】
この効果は、本発明の光電変換装置をイメージセンサ、及びイメージングシステムに適用した場合に、特に顕著である。一回の撮影で、入射光の変調量に反映された対象物の特性を画像化できることから、装置の簡素化、及び実時間での撮像が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0066】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る光電変換装置の構成の一例を示す回路図である。
【0067】
この光電変換装置において、特性の等しい2つのフォトダイオード1、1’の同一極性(P側)端子は各々接地され、もう一方の端子は各々MOSFET(Metal Oxide Semiconductor−Field Effect Transistor)等の転送スイッチ2、2’を介して特性の等しい電荷蓄積用容量3、3’に接続されている。すなわち、2つのフォトダイオード1、1’は極性を反転して直列に接続され、フォトダイオード1のカソード端子とフォトダイオード1’のカソード端子とが接続されている。電荷蓄積用容量3は2つのフォトダイオード1、1’の間に挿入され、電荷蓄積用容量3’は電荷蓄積用容量3とフォトダイオード1’との間に挿入されている。転送スイッチ2、2’は制御回路4に従い、制御回路4はフォトダイオード1、1’に蓄積された電荷を各々電荷蓄積用容量3、3’に転送する制御信号を発生する。フォトダイオード1と電荷蓄積用容量3との間の電荷蓄積用容量3のフォトダイオード側の容量端子5は、差動増幅回路6の一方の端子に接続されている。フォトダイオード1’と電荷蓄積用容量3’との間の電荷蓄積用容量3’のフォトダイオード側の容量端子5’は、差動増幅回路6の他方の端子に接続されている。差動増幅回路6は、容量端子5、5’の両端子間電圧を増幅する。また、MOS型FET等のスイッチ7、7’は、各々電荷蓄積用容量3、3’をリセット信号発生回路8の出力信号に従い排出させるスイッチである。
【0068】
本光電変換装置において、フォトダイオード1、1’に等しい強度の光が入射した場合、等量の光電流が発生し、各々電荷蓄積用容量3、3’を逆極性で充電する。電荷蓄積用容量3、3’の蓄積電荷量は等しいため、容量端子5、5’間には電圧は発生しない。一方、フォトダイオード1、1’に入射する光強度が異なる場合、両フォトダイオード1、1’に発生する光電流量は異なる。従って、電荷蓄積用容量3、3’の蓄積電荷量は異なり、かつ電荷蓄積用容量3、3’は逆極性に充電されているため、容量端子5、5’間に蓄積電荷量の差に相当する電圧が発生する。この電圧は、差動増幅回路6によって増幅され、電荷蓄積用容量3、3’の蓄積電荷量の差すなわちフォトダイオード1、1’への入射光強度差に比例した信号が差動増幅回路6から出力される。
【0069】
ここで、フォトダイオード1、1’、転送スイッチ2、2’、スイッチ7、7’及び電荷蓄積用容量3、3’を、光電変換部11と総称する。なお、電荷蓄積用容量3、3’は、それぞれ本発明の第1容量及び第2容量の一例である。また、転送スイッチ2、2’は、それぞれ本発明の第1転送スイッチ及び第2転送スイッチの一例である。
【0070】
図2は、前述した光電変換装置の各部に発生し又は与えられる主要な信号を示すタイミングチャートである。
【0071】
フォトダイオード1、1’には、1kHzのプローブ光パルスが入射し、その光量に応じてパルス電流が流れる。Aの期間はフォトダイオード1、1’に等しい光量が入射し等しい光電流が流れた場合、Bの期間はフォトダイオード1への入射光量がフォトダイオード1’への入射光量よりも多い場合である。Bの期間において、電荷蓄積用容量3、3’の蓄積電荷量の差に相当する電圧が容量端子5、5’間の電圧として発生する。
【0072】
図3は、本実施の形態における光電変換装置の、光電変換部11のフォトダイオード1’を通る断面を模式的に示したものである。
【0073】
半導体基板300の最表面には、P層301とその下層に接して形成されたN層302とからなるPN接合が形成されている。このPN接合は、フォトダイオード1を構成する。同様に、P層301’とN層302’とからなるPN接合は、フォトダイオード1’を構成する。N+電極304、304’は、転送スイッチ2、2’のドレインを構成すると共に、各々半導体基板300とPN接合を形成し、PN接合の接合容量である電荷蓄積用容量3、3’を形成する。N+電極304は、P層301及びN層302とP層301’及びN層302’との間に位置するように半導体基板300表面に形成される。N+電極304’は、N+電極304とP層301’及びN層302’との間に位置するように半導体基板300表面に形成される。転送ゲート303、303’は、転送スイッチ2、2’のゲートを構成する。フォトダイオード1、1’は、転送ゲート303、303’及びN+電極304、304’を挟んで互いに隣接する領域に形成される。
【0074】
ここで、P層301とP層301’、N層302とN層302’、N+電極304とN+電極304’、転送ゲート303と転送ゲート303’は、それぞれ同一の製造プロセスにより同時に形成されるためその形状は等しい。
【0075】
なお、P層301及びN層302は、それぞれ本発明の第1領域及び第2領域の一例である。また、P層301’及びN層302’は、それぞれ本発明の第3領域及び第4領域の一例である。さらに、N+電極304は、本発明の第1電極の一例であり、N+電極304’は、本発明の第2電極の一例である。
【0076】
デバイス全体は窒化シリコン膜よりなる保護層305で被覆され、保護層305内、2つのフォトダイオード1、1’間には遮光メタル306が配置されている。
【0077】
各フォトダイオード1、1’上方には集光量を増加させるためのオンチップレンズ307、307’が形成されている。
【0078】
さらに、オンチップレンズ307、307’上には第2の保護層308が形成されている。第2の保護層308上には、フォトダイオード1上方に位置し、紙面に垂直方向の振動電界を有する偏光のみを透過させる偏光フィルタ309と、フォトダイオード1’上方に位置し、偏光フィルタ309が透過させる偏光と直交する偏光のみを透過させる偏光フィルタ309’とが形成されている。すなわち、フォトダイオード1、1’上方には、それぞれ入射光を、その入射光が有する特定の物理量に応じた強度で、互いに異なる特性に従って透過する偏光フィルタ309、309’が形成されている。例えば、フォトダイオード1上方にはP偏光のみを透過させる偏光フィルタ309が形成され、フォトダイオード1’上方にはS偏光のみを透過させる偏光フィルタ309’が形成される。
【0079】
偏光フィルタ309、309’ともに配線金属である銅を幅0.25μm、間隔0.25μmで10周期分配置された格子を構成することによって形成されている。この時、偏光フィルタ309、309’間で格子の方向は直交しており、直交する偏光に対する透過特性を有する。
【0080】
本光電変換装置において、フォトダイオード1、1’は同一の特性を有し、光電変換装置は遮光メタル306に対して対称な構成となる。従って、容易に光電変換装置の回路構成を集積回路として半導体基板300に形成することが可能になり、製造プロセスが簡易となるので、光電変換装置を低コスト化することが可能となる。
【0081】
また、電荷蓄積用容量3、3’は、それぞれN+電極304、304’と半導体基板300との間のPN接合による接合容量となる。従って、N+電極304、304’及び半導体基板300の不純物濃度を低くすることで電荷蓄積用容量3、3’の大きさを低減し、得られる画像のより高いS/N比を実現することが可能となる。
【0082】
また、転送スイッチ2、2’により、フォトダイオード1、1’と接続される電荷蓄積用容量3、3’との電気的接続状態を独立に制御することが可能となる。特に、入射光量が大きくフォトダイオード1、1’の容量を超える光電流が発生した場合には、転送スイッチ2、2’によってフォトダイオード1、1’を電荷蓄積用容量3、3’に電気的に短絡することによって、電荷を常時電荷蓄積用容量3、3’に蓄積し続けることが可能となり、信号飽和は発生しない。一方、入射光量が少ない場合には、フォトダイオード1、1’を電荷蓄積用容量3、3’から電気的に遮断し、電荷をフォトダイオード1、1’に蓄積させ、電荷読み出し時に転送スイッチ2、2’によって電荷蓄積用容量3、3’に転送することが可能である。
【0083】
図4は、本実施の形態における光電変換装置の、フォトダイオード1、1’、転送スイッチ2、2’及び電荷蓄積用容量3、3’を含む光電変換部11を装置上方から見たレイアウトを模式的に示したものである。
【0084】
フォトダイオード1、1’のN層302、302’は、その全面が各々P層301、301’で覆われている。フォトダイオード1、1’で発生した電荷は、転送ゲート303、303’によって制御回路4からの出力に従って各々電荷蓄積用容量3、3’を構成するN+電極304、304’に転送される。さらに、N+電極304、304’の端子間電圧は各々配線405、405’によって差動増幅回路6に入力される。さらに各N+電極304、304’に隣接してスイッチ7、7’のゲートを構成するリセットゲート407、407’が配置され、リセット信号発生回路8の出力に従い、蓄積電荷を差動増幅回路6に読み出した後に排出する。
【0085】
図5は、前述した光電変換装置を用いたTHzイメージングシステムの構成例を模式的に示した図である。
【0086】
光源501より、パルス幅100fsの超短パルス光列が1kHzの周波数で発生され、偏光ビームスプリッタ502によりP偏光はポンプ光503として、S偏光はプローブ光504として分離される。ポンプ光503は光学遅延線505を経て、THz電磁波エミッター506を構成するZnTe結晶[110]面に垂直に入射され、周波数が0.1THzから10THzの領域にあるTHz電磁波507が発生される。
【0087】
プローブ光504はミラー508で進行方向を調整された後、シリコンウエハーで構成されたシリコンミラー509に入射し、シリコンミラー509を透過したTHz電磁波507と光軸を共有して、[110]面が光軸に垂直に配置されたZnTe結晶よりなる電気光学変調器510に入射する。電気光学変調器510の後段には1/4波長板511と、イメージセンサ512とがこの順に配置された構成となっている。
【0088】
イメージセンサ512は、後に詳述するように、2次元に配置され、それぞれに前述した光電変換装置を有した複数の画素と、各々の画素の前記光電変換装置の出力信号を読み出す読み出し回路とを備える。
【0089】
1/4波長板511はその後段において、THz電磁波507がプローブ光504の各パルスと同時に電気光学変調器510に入射しない場合、すなわちTHz電磁波パルスとプローブパルスが非同期の場合にはプローブ光504を完全な円偏光状態に設定する。この時、イメージセンサ512には円偏光が入射するため、P偏光成分、S偏光成分は等しく、従って、内部の各フォトダイオード1、1’には等量の電流が発生し、電荷蓄積用容量3、3’には電荷は蓄積されない。
【0090】
他方、電気光学変調器510にTHz電磁波パルスとプローブ光パルスとが同時に入射する、すなわち両パルス間の同期が取れている場合には、THz電磁波507の電界に応じてプローブ光504の特定の物理量が変調され、電気光学変調器510に透過後のプローブ光504の偏光状態はTHz電磁波507と非同期の場合に比べて、偏光軸が回転し、さらに、楕円偏光となるため、1/4波長板511透過後の偏光状態も完全な円偏光とはならず、楕円偏光となる。
【0091】
従って、プローブ光504を撮像するイメージセンサ512内部の2つのフォトダイオード1、1’に入射する光強度も異なり、異なった量の光電流が発生するため、電荷蓄積用容量3、3’には電荷が蓄積され、電圧信号すなわちTHz電磁波検出信号が出力される。その結果、課題であるフォトダイオード1、1’を飽和させることなくTHz電磁波を検出することが可能である。さらに本実施の形態の光電変換装置の構成では従来の光電変換装置の構成で必要であった、バルクの偏光ビームスプリッタ、又は偏光プリズムが必要なく、かつ、光電変換装置には2つのフォトダイオード1、1’が集積化されているため、光学系が簡略化されるという利点を有する。
【0092】
図6は、イメージセンサ512の機能的な構成の一例を示すブロック図である。イメージセンサ512は、それぞれに前述した光電変換装置を含む複数の画素回路を2次元に配列し、垂直走査回路601及び水平走査回路602を配置することによって実現される。
【0093】
垂直走査回路601は、図1に示される制御回路4、及びリセット信号発生回路8を含み、これらの回路から出力される制御信号に加えて、行選択信号を、行データ選択線603を介して、行ごとに画素回路に供給する。
【0094】
各々の画素回路は、図1に示される光電変換装置の光電変換部11及び差動増幅回路6に加えて、画素回路の出力信号を読み出す読み出し回路を備える。すなわち、スイッチ610を備えると共に、制御回路4及びリセット信号発生回路8からのそれぞれの制御信号、及び行選択信号を受け取る端子607、609及び606を備える。
【0095】
行選択信号に従ってスイッチ610を閉じることによって、画素回路の出力信号が列データ読み出し線604へ出力される。
【0096】
水平走査回路602は、選択された行の画素回路からの出力信号を、列データ読み出し線604を介して、画素毎に順次読み出す。
【0097】
なお、本イメージセンサはTHzイメージングシステムへの適用を前提として、各画素の光電変換部11に含まれるフォトダイオード1、1’上には、前述したオンチップレンズ307、307’及び偏光フィルタ309、309’が設けられる。
【0098】
以上説明したように、本実施の形態のイメージセンサ512においては一画面データ読み出し時間に相当する一定の信号電荷蓄積時間が存在する。この電荷蓄積時間内に各画素回路において、図2のタイミングチャートで説明される動作が行われることによってフォトダイオード1、1’に入射する光量の差に応じた電荷が電荷蓄積用容量3、3’に蓄積され、読み出される。
【0099】
従って、毎画面で各画素回路における2つのフォトダイオード1、1’への入射光量差が検出され、外部の画像再生回路によって2次元画像として再生される。
【0100】
図7は、前述したTHzイメージングシステムの変形例を模式的に示す図である。
光源701より、パルス幅100fsの超短パルス光列が1kHzの周波数で発生され、偏光ビームスプリッタ702によりP偏光はポンプ光703として、S偏光はプローブ光704として分離される。ポンプ光703は光学遅延線705を経て、半絶縁性GaAsウエハー上に間隔10mmをおいて形成された電極対を有する光伝導スイッチによって構成されたTHz電磁波エミッター706に入射され、THz電磁波707が発生される。
【0101】
このようにして発生されたTHz電磁波707は極めてコリメート性の高いビームであり、THz電磁波707に対して2次元的な透過特性分布を有する被測定物708に照射される。被測定物708を通過したTHz電磁波707は被測定物708の2次元透過特性分布に伴い、空間的に強度変調されたビームとなる。これをポリエチレンレンズ709によって、後段のZnTe結晶よりなる電気光学変調器713内に結像する。
【0102】
プローブ光704はミラー710で進路変更され、さらにビームエクスパンダ711によってビーム幅が広げられた後、シリコンウエハーで構成されたシリコンミラー712に入射し、シリコンミラー712を透過した強度変調されたTHz電磁波707と光軸を共有して、[110]面が光軸に垂直に配置されたZnTe結晶よりなる電気光学変調器713に入射する。
【0103】
電気光学変調器713の後段には1/4波長板714とイメージセンサ715とがこの順に配置された構成となっている。イメージセンサ715は、前述したイメージセンサ512と同等である。
【0104】
1/4波長板714はその後段において、THz電磁波707がプローブ光704の各パルスと同時に電気光学変調器713に入射しない場合すなわちTHz電磁波パルスとプローブパルスが非同期の場合にはプローブ光704を完全な円偏光状態に設定する。この時、イメージセンサ715には円偏光が入射するため、P偏光成分、S偏光成分は等しく、従って、内部の各画素のフォトダイオード1、1’対には等量の光電流が発生し、電荷蓄積用容量3、3’には電荷は蓄積されない。
【0105】
他方、電気光学変調器713にTHz電磁波パルスとプローブ光パルスとが同時に入射する、すなわち両パルス間の同期が取れている場合には、電気光学変調器713に透過後のプローブ光704の偏光状態はTHz電磁波707と非同期の場合に比べて、偏光軸が回転し、さらに、楕円偏光となるため、1/4波長板714透過後の偏光状態も完全な円偏光とはならず、楕円偏光となる。
【0106】
従って、プローブ光704を撮像するイメージセンサ715内部の各画素のフォトダイオード1、1’対に入射する光強度も異なり、異なった量の光電流が発生するため、電荷蓄積用容量3、3’には電荷が蓄積され、電圧信号すなわちTHz電磁波検出信号が出力される。
【0107】
以上の原理で検出出力された2次元信号は画像再生装置716によって映像情報としてモニターに出力される。従って、課題であるプローブ光の位相バイアスを抑制せず、かつ回路を飽和させることなく、しかも、1つのプローブ光パルスを受光するだけで、フォトダイオードを飽和させることなくTHz電磁波イメージングを行うことが可能である。
【0108】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態で示した光電変換装置(図1を参照)と同等の機能を有する光電変換装置を、他の構成によって実現することもできる。
【0109】
図8は、本実施の形態における光電変換装置の、光電変換部11のフォトダイオード1、1’を通る断面を模式的に示したものである。
【0110】
半導体基板300の最表面には、P層301とその下層に形成されたN層302とからなるPN接合が形成されている。このPN接合は、フォトダイオード1を構成する。同様に、P層301’とN層302’とからなるPN接合は、フォトダイオード1’を構成する。ニッケルシリサイド電極804、804’は、転送スイッチ2、2’のドレインを構成すると共に、半導体基板300とショットキー接続し、ショットキー接合の接合容量である電荷蓄積容量3、3’を形成する。ニッケルシリサイド電極804は、P層301及びN層302とP層301’及びN層302’との間に位置するように半導体基板300表面に形成される。ニッケルシリサイド電極804’は、ニッケルシリサイド電極804とP層301’及びN層302’との間に位置するように半導体基板300表面に形成される。転送ゲート303、303’は、転送スイッチ2、2’のゲートを構成する。フォトダイオード1、1’は、転送ゲート303、303’及びニッケルシリサイド電極804、804’を挟んで互いに隣接する領域に形成される。ここで、ニッケルシリサイド電極804、804’は、電極領域に200オングストロームのNiを堆積後、350℃でアニールすることにより形成される。
【0111】
ここで、ニッケルシリサイド電極804とニッケルシリサイド電極804’とは、同一の製造プロセスにより同時に形成されるためその形状は等しい。なお、ニッケルシリサイド電極804は、本発明の第1電極の一例であり、ニッケルシリサイド電極804’は、本発明の第2電極の一例である。
【0112】
デバイス全体は窒化シリコン膜よりなる保護層305で被覆され、保護層305内、2つのフォトダイオード1、1’間には遮光メタル306が配置されている。
【0113】
各フォトダイオード1、1’上方には集光量を増加させるためのオンチップレンズ307、307’が形成されている。
【0114】
さらに、オンチップレンズ307、307’上には第2の保護層308が形成されている。第2の保護層308上には、フォトダイオード1上方に位置し、紙面に垂直方向の振動電界を有する偏光のみを透過させる偏光フィルタ309と、フォトダイオード1’上方に位置し、偏光フィルタ309が透過させる偏光と直交する偏光のみを透過させる偏光フィルタ309’が形成されている。例えば、フォトダイオード1上方にはP偏光のみを透過させる偏光フィルタ309が形成され、フォトダイオード1’上方にはS偏光のみを透過させる偏光フィルタ309’が形成される。
【0115】
偏光フィルタ309、309’ともに配線金属である銅を幅0.25μm、間隔0.25μmで10周期分配置された格子を構成することによって形成される。この時、偏光フィルタ309、309’間で格子の方向は直交しており、直交する偏光に対する透過特性を有する。
【0116】
本光電変換装置において、フォトダイオード1、1’は同一の特性を有し、光電変換装置は遮光メタル306に対して対称な構成となる。従って、容易に光電変換装置の回路構成を集積回路として半導体基板300に形成することが可能になり、製造プロセスが簡易となるので、光電変換装置を低コスト化することが可能となる。
【0117】
また、電荷蓄積用容量3、3’は、それぞれニッケルシリサイド電極804、804’と半導体基板300との間のショットキー接合による接合容量となる。従って、ニッケルシリサイド電極804、804’及び半導体基板300の不純物濃度を低くすること、又はニッケルシリサイド電極804、804’と半導体基板300とのショットキー接合高さを高めることによって電荷蓄積用容量3、3’の大きさを低減し、得られる画像のより高いS/N比を実現することが可能となる。
【0118】
(第3の実施の形態)
第1の実施の形態で示した光電変換装置(図1を参照)と同等の機能を有する光電変換装置を、他の構成によって実現することもできる。
【0119】
図9は、本実施の形態における光電変換装置の、光電変換部11のフォトダイオード1、1’を通る断面を模式的に示したものである。
【0120】
半導体基板300の最表面には、P層301とその下層に形成されたN層302よりなるPN接合が形成されている。このPN接合は、フォトダイオード1を構成する。同様に、P層301’とN層302’とからなるPN接合は、フォトダイオード1’を構成する。ニッケルシリサイド電極901、901’上には、ビスマス・ストロンチウム・チタン酸化物よりなる高誘電率膜902、902’が100nm堆積され、さらに高誘電率膜902、902’表面はTiNからなる上部電極903で被覆される。上部電極903と、高誘電率膜902、902’及びニッケルシリサイド電極901、901’は、誘電体を導電体で挟んだ構造の電荷蓄積容量3、3’を構成する。ニッケルシリサイド電極901、901’は、転送スイッチ2、2’のドレインを構成する。転送ゲート303、303’は、転送スイッチ2、2’のゲートを構成する。フォトダイオード1、1’は、転送ゲート303、303’、上部電極903及び高誘電率膜902、902’を挟んで互いに隣接する領域に形成される。
【0121】
ここで、ニッケルシリサイド電極901とニッケルシリサイド電極901’、高誘電率膜902と高誘電率膜902’は、それぞれ同一の製造プロセスにより同時に形成されるためその形状は等しい。例えば、高誘電率膜902の膜厚と高誘電率膜902’の膜厚とは等しい。
【0122】
デバイス全体は窒化シリコン膜よりなる保護層305で被覆され、保護層305内、2つのフォトダイオード1、1’間には遮光メタル306が配置されている。
【0123】
各フォトダイオード1、1’上方には集光量を増加させるためのオンチップレンズ307、307’が形成されている。
【0124】
さらに、オンチップレンズ307、307’上には第2の保護層308が形成されている。第2の保護層308上には、フォトダイオード1上方に位置し、紙面に垂直方向の振動電界を有する偏光のみを透過させる偏光フィルタ309と、フォトダイオード1’上方に位置し、偏光フィルタ309が透過させる偏光と直交する偏光のみを透過させる偏光フィルタ309’とが形成されている。例えば、フォトダイオード1上方にはP偏光のみを透過させる偏光フィルタ309が形成され、フォトダイオード1’上方にはS偏光のみを透過させる偏光フィルタ309’が形成される。
【0125】
偏光フィルタ309、309’ともに配線金属である銅を幅0.25μm、間隔0.25μmで100周期分配置された格子を構成することによって形成される。この時、偏光フィルタ309、309’間で格子の方向は直交しており、直交する偏光に対する透過特性を有する。
【0126】
本光電変換装置において、上部電極903、高誘電率膜902及びニッケルシリサイド電極901よりなる電荷蓄積容量3と、上部電極903、高誘電率膜902’及びニッケルシリサイド電極901’よりなる電荷蓄積容量3’とは、面積、誘電体膜厚とも等しく、これらに接続されるフォトダイオード1、1’も同一の特性を有するため、光電変換装置は上部電極903に対して電気的に対称な構成となる。従って、2個のフォトダイオード1、1’に等量の光電流が流れる際には、電圧は容量端子5、5’間には発生しない。一方、2個のフォトダイオード1、1’に流れる光電流が異なる場合には、ニッケルシリサイド電極901、901’間に正味の電荷が蓄積され、容量端子5、5’間に電圧が発生する。
【0127】
また、電荷蓄積用容量3、3’に高誘電体材料であるビスマス・ストロンチウム・チタン酸化物が用いられる。従って、多量の電荷を低電圧で電荷蓄積用容量3、3’に蓄積することが可能であり、バックグラウンド光量が高い場合に特に有利である。
【0128】
また、フォトダイオード1、1’は同一の特性を有し、光電変換装置は上部電極903に対して対称な構成となる。従って、容易に光電変換装置の回路構成を集積回路として半導体基板300に形成することが可能になり、製造プロセスが簡易となるので、光電変換装置を低コスト化することが可能となる。
【0129】
また、電荷蓄積用容量3、3’は、上部電極903、高誘電率膜902、902’及びニッケルシリサイド電極901、901’よりなる。従って、高誘電率膜902、902’の膜厚と誘電率とを制御することによって半導体基板300を改質するだけでは実現できない、高いダイナミックレンジを有する電荷蓄積用容量3、3’を確実に半導体基板300上に形成することが可能となる。
【0130】
また、高誘電率膜902の膜厚と高誘電率膜902’の膜厚とは等しい。従って、2つの電荷蓄積用容量3、3’は同一のものとなり、2つのフォトダイオード1、1’で等量の光電流が発生した場合には確実に等量の電荷が各々の電荷蓄積用容量3、3’に蓄積される。従って、未変調光が入射した場合には信号出力を抑止するという所望の特性を確実に実現することができる。
【0131】
(第4の実施の形態)
図10は、本実施の形態における光電変換装置の構成の一例を示す回路図である。
【0132】
この光電変換装置において、特性の等しい2つのフォトダイオード1、1’の同一極性(P側)端子は各々接地され、もう一方の端子は各々転送スイッチ2、2’を介して電荷蓄積用容量3、3’に接続されている。転送スイッチ2、2’は制御回路4に従い、制御回路4はフォトダイオード1、1’に蓄積された電荷を各々電荷蓄積用容量3、3’に転送する制御信号を発生する。電荷蓄積用容量3、3’のフォトダイオード側の容量端子5、5’は両端子間電圧を増幅する差動増幅回路6に接続されている。また、接合型FET(Field Effect Transistor)及びMOSFET等のスイッチ17は、電荷蓄積用容量3、3’の間に挿入され、リセット制御回路19の出力信号に従い電荷蓄積用容量3、3’の蓄積電荷を同時に排出させるスイッチである。
【0133】
ここで、フォトダイオード1、1’、転送スイッチ2、2’、スイッチ17及び電荷蓄積用容量3、3’を、光電変換部11と総称する。なお、スイッチ17は、本発明の排出スイッチの一例である。
【0134】
図11は、前述した光電変換装置の各部に発生し又は与えられる主要な信号を示すタイミングチャートである。
【0135】
Aの期間はフォトダイオード1、1’に等しい光量が入射し等しい光電流が流れた場合、Bの期間はフォトダイオード1、1’に異なる光量が入射し異なる光電流が流れた場合である。Bの期間において、両フォトダイオード1、1’に発生する光電流が異なり、従って電荷蓄積用容量3、3’の蓄積電荷量も異なり、容量端子5、5’間に蓄積電荷量の差に相当する電圧が発生する原理は第1の実施の形態の光電変換装置と同様である。電荷蓄積用容量3、3’の蓄積電荷の差に応じた電圧を差動増幅回路6から読み出すA、Bの両期間の最終段階において、リセット制御回路19の出力は単一のトランジスタから構成されるスイッチ17に入力され、スイッチ17を導通させた状態で、電荷蓄積用容量3、3’の蓄積電荷が同時に読み出され、動作が完了する。
【0136】
図12は、本実施の形態における光電変換装置の、光電変換部11のフォトダイオード1、1’を通る断面を模式的に示したものである。
【0137】
半導体基板300の最表面には、P層301とその下層に形成されたN層302とからなるPN接合が形成されている。このPN接合は、フォトダイオード1を構成する。同様に、P層301’とN層302’とからなるPN接合は、フォトダイオード1’を構成する。N+電極304、304’は、半導体基板300とPN接合を形成し、電荷蓄積用容量3、3’を形成する。転送ゲート303、303’は、転送スイッチ2、2’のゲートを構成する。制御ゲート電極1001は、スイッチ17のゲートを構成する。フォトダイオード1、1’は、制御ゲート電極1001、転送ゲート303、303’及びN+電極304、304’を挟んで互いに隣接する領域に形成される。
【0138】
2つのN+電極304、304’の間には、半導体基板300上に形成された絶縁膜よりなるMOS絶縁ゲートを構成する制御ゲート電極1001が配置されている。
【0139】
デバイス全体は窒化シリコン膜よりなる保護層305で被覆され、保護層305内、2つのフォトダイオード1、1’間には遮光メタル306が配置されている。
【0140】
各フォトダイオード1、1’上方には集光量を増加させるためのオンチップレンズ307、307’が形成されている。
【0141】
さらに、オンチップレンズ307、307’上には第2の保護層308が形成されている。第2の保護層308上には、フォトダイオード1上方に位置し、紙面に垂直方向の振動電界を有する偏光のみを透過させる偏光フィルタ309と、フォトダイオード1’上方に位置し、偏光フィルタ309が透過させる偏光と直交する偏光のみを透過させる偏光フィルタ309’とが形成されている。
【0142】
偏光フィルタ309、309’ともに配線金属である銅を幅0.25μm、間隔0.25μmで10周期分配置された格子を構成することによって形成されている。この時、偏光フィルタ309、309’間で格子の方向は直交しており、直交する偏光に対する透過特性を有する。
【0143】
本光電変換装置において、フォトダイオード1、1’は同一の特性を有し、光電変換装置は制御ゲート電極1001に対して対称な構成となる。従って、容易に光電変換装置の回路構成を集積回路として半導体基板300に形成することが可能になり、製造プロセスが簡易となるので、光電変換装置を低コスト化することが可能となる。
【0144】
本実施の形態で示した光電変換装置は、第1の実施の形態の光電変換装置と比べ、より感度の高い電荷―電圧変換が可能である。以下にその理由を示す。
【0145】
図13は、N+電極304、304’間の容量(CG)における制御ゲート電極1001の制御ゲート電圧(VG)依存性を示す図である。なお、本特性は、制御ゲート電極1001としてN+ポリシリコンを用い、半導体基板300の不純物濃度を1×1015cm-3とし、酸化膜の膜厚を5〜10nmに設定した場合におけるものである。
【0146】
制御ゲート電圧がフラットバンド電圧(VFB=−0.4V)よりも低くなると半導体基板300の制御ゲート電極1001下の空乏層が広がり、N+電極304、304’間の容量が極めて小さい値となる。例えば、VG=−2Vとすれば、制御ゲート電極1001を有さない第1の実施の形態の光電変換装置における電荷蓄積容量3、3’とほぼ同等の容量であるフラットバンド電圧印加時の容量CG=200fFの約1/10(CG=20fF)となる。従って、あらかじめVG=−2Vを制御ゲート電極1001に印加しておき、各電荷蓄積容量3、3’の蓄積電荷の差に応じた電圧を差動増幅回路6から読み出すことにより、各フォトダイオード1、1’に発生する電荷量が異なる場合には、ゲートバイアスがVG=VFBの場合に比して容量端子5、5’間電圧は10倍となる。すなわち10倍高い感度を実現することができる。なお、フラットバンド電圧は、制御ゲート電極1001の材料、半導体基板300の不純物濃度、及び制御ゲート電極1001と半導体基板300との間の酸化膜の膜厚に依存して変化する。
【0147】
さらに、制御ゲート電圧をフラットバンド電圧以上の電圧(VG≧VFB)に設定することで、半導体基板300の制御ゲート電極1001下の反転層が形成され、空乏層が狭められてN+電極304、304’間の容量が短絡され、蓄積電荷が排出される。すなわち、ただ1つの制御ゲート電圧を制御することによって、信号感度を可変として高めることが可能であるばかりでなく、リセット動作も実現できるため、素子面積の大幅な低減が達成される。
【0148】
(第5の実施の形態)
第4の実施の形態で示した光電変換装置(図10を参照)と同等の機能を有する光電変換装置を、MOSゲートではなくPN接合ゲートを用いた他の構成によって実現することもできる。
【0149】
図14は、本実施の形態における光電変換装置の、光電変換部11のフォトダイオード1、1’を通る断面を模式的に示したものである。
【0150】
半導体基板300の最表面には、P層301とその下層に形成されたN層302とからなるPN接合が形成されている。このPN接合は、フォトダイオード1を構成する。同様に、P層301’とN層302’とからなるPN接合は、フォトダイオード1’を構成する。N+電極304、304’は、半導体基板300とPN接合を形成し、電荷蓄積用容量3、3’を形成する。転送ゲート303、303’は、転送スイッチ2、2’のゲートを構成する。制御ゲート電極1201は、スイッチ17のゲートを構成する。フォトダイオード1、1’は、制御ゲート電極1201、転送ゲート303、303’及びN+電極304、304’を挟んで互いに隣接する領域に形成される。
【0151】
2つのN+電極304、304’の間の半導体基板300表面には、PN接合ゲートを構成する制御ゲート電極1201が配置されている。
【0152】
デバイス全体は窒化シリコン膜よりなる保護層305で被覆され、保護層305内、2つのフォトダイオード1、1’間には遮光メタル306が配置されている。
【0153】
各フォトダイオード1、1’上方には集光量を増加させるためのオンチップレンズ307、307’が形成されている。
【0154】
さらに、オンチップレンズ307、307’上には第2の保護層308が形成されている。第2の保護層308上には、フォトダイオード1上方に位置し、紙面に垂直方向の振動電界を有する偏光のみを透過させる偏光フィルタ309と、フォトダイオード1’上方に位置し、偏光フィルタ309が透過させる偏光と直交する偏光のみを透過させる偏光フィルタ309’とが形成されている。
【0155】
偏光フィルタ309、309’ともに配線金属である銅を幅0.25μm、間隔0.25μmで10周期分配置された格子を構成することによって形成されている。この時、偏光フィルタ309、309’間で格子の方向は直交しており、直交する偏光に対する透過特性を有する。
【0156】
本光電変換装置において、フォトダイオード1、1’は同一の特性を有し、光電変換装置は制御ゲート電極1201に対して対称な構成となる。従って、容易に光電変換装置の回路構成を集積回路として半導体基板300に形成することが可能になり、製造プロセスが簡易となるので、光電変換装置を低コスト化することが可能となる。
【0157】
本実施の形態で示した光電変換装置は、第1の実施の形態の光電変換装置に比べ、より感度の高い電荷―電圧変換が可能である。以下にその理由を示す。
【0158】
図15は、N+電極304、304’間の容量(CG)における制御ゲート電極1201の制御ゲート電圧(VG)依存性を示す図である。
【0159】
制御ゲート電圧が負になると制御ゲート電極1201下の空乏層が広がり、N+電極304、304’間の容量が極めて小さい値となる。例えば、VG=−2Vとすれば、制御ゲート電極1201を有さない第1の実施の形態の光電変換装置における電荷蓄積容量3、3’とほぼ同等の容量である電圧無印加時の容量CG=200fFの約1/10(CG=20fF)となる。従って、あらかじめVG=−2Vを制御ゲート電極1201に印加しておき、各電荷蓄積容量3、3’の蓄積電荷の差に応じた電圧を差動増幅回路6から読み出すことにより、各フォトダイオード1、1’に発生する電荷量が異なる場合には、ゲートバイアスがVG=VFBの場合に比して容量端子5、5’間電圧は10倍となる。すなわち10倍高い感度を実現することができる。
【0160】
さらに、制御ゲート電圧を0V以上の値(VG≧0V)に設定することで、半導体基板300の制御ゲート電極1201下に高濃度多数キャリア層が形成され、空乏層が狭められてN+電極304、304’間の容量が短絡され、蓄積電荷を排出させる。すなわち、ただ1つの制御ゲート電圧を制御することによって、信号感度を可変として高めることが可能であるばかりでなく、リセット動作も実現できため、素子面積の大幅な低減が達成される。
【0161】
(第6の実施の形態)
第1の実施の形態で示した光電変換装置(図1を参照)と同等の機能を有する光電変換装置を、他の構成によって実現することもできる。
【0162】
図16は、本実施の形態における光電変換装置の、光電変換部11のフォトダイオード1、1’を通る断面を模式的に示したものである。
【0163】
半導体基板300の最表面には、P層301とその下層に形成されたN層302とからなるPN接合が形成されている。このPN接合は、フォトダイオード1を構成する。同様に、P層301’とN層302’とからなるPN接合は、フォトダイオード1’を構成する。N+電極304、304’は、半導体基板300とPN接合を形成し、電荷蓄積用容量3、3’を形成する。転送ゲート303、303’は、転送スイッチ2、2’のゲートを構成する。フォトダイオード1、1’は、転送ゲート303、303’及びN+電極304、304’を挟んで互いに隣接する領域に形成される。
【0164】
デバイス全体は窒化シリコン膜よりなる保護層305で被覆され、保護層305内、2つのフォトダイオード1、1’間には遮光メタル306が配置されている。
【0165】
各フォトダイオード1、1’上方には集光量を増加させるためのオンチップレンズ307、307’が形成されている。
【0166】
さらに、オンチップレンズ307、307’上には第2の保護層308が形成されている。第2の保護層308上には、フォトダイオード1上方に位置し、波長790nmにピークと半値幅20nmの透過帯域を有する狭帯域フィルタ1409と、フォトダイオード1’上方に位置し、波長810nmにピークと半値幅20nmの透過帯域を有する狭帯域フィルタ1409’とが形成されている。すなわち、フォトダイオード1、1’上方には、それぞれ入射光を、その入射光が有する特定の物理量に応じた強度で、互いに異なる特性(波長透過特性)に従って透過する狭帯域フィルタ1409、1409’が形成されている。
【0167】
本光電変換装置において、フォトダイオード1、1’は同一の特性を有し、光電変換装置は遮光メタル306に対して対称な構成となる。従って、容易に光電変換装置の回路構成を集積回路として半導体基板300に形成することが可能になり、製造プロセスが簡易となるので、光電変換装置を低コスト化することが可能となる。
【0168】
図17(A)及び(B)は、それぞれ狭帯域フィルタ1409、1409’の透過特性を示す図である。
【0169】
狭帯域フィルタ1409、1409’ともに最大透過率は0.6、半値幅は20nmである。このような狭帯域フィルタ1409、1409’は、例えば、文献E. Hecht,“Optics”, 4th ed., p.425−430, Addison Wesley, San Francisco (2002).に示されているような多層誘電体薄膜を用いた干渉フィルタをフォトリソグラフィによって各々のフォトダイオード1、1’に別々に作製することができる。
【0170】
本実施の形態の光電変換装置に波長800nmの光を入射すると、狭帯域フィルタ1409、1409’の透過特性は透過ピークを中心に対称であるので、透過光量は等しく、フォトダイオード1、1’に発生する光電流も等しく、従って電荷蓄積容量3、3’には正味の電荷は蓄積されず、信号出力は発生しない。
【0171】
一方、入射光の波長が例えば低波長側に5nmシフトした場合には、狭帯域フィルタ1409を透過する光量が増加すると共に、狭帯域フィルタ1409’を透過する光量が減少し、これに従ってフォトダイオード1、1’に発生する電流が各々増減し、この差分に相当する電荷が電荷蓄積容量3、3’に正味電荷として蓄積され、この差分を増幅することで信号出力を得ることが可能となる。従って、本実施の形態の光電変換装置は入射光の波長に関する変調量を検出する波長シフトモニターとして作用する。
【0172】
図18は本実施の形態の光電変換装置を用いたTHzイメージングシステムの構成例を模式的に示した図である。
【0173】
光源1601より、パルス幅100fsの超短パルス光列が1kHzの周波数で発生され、偏光ビームスプリッタ1602によりポンプ光1603とプローブ光1604とに分離される。ポンプ光1603は光学遅延線1605を経て、THz電磁波エミッター1606を構成するZnTe結晶[110]面に垂直に入射され、THz電磁波1607が発生される。
【0174】
プローブ光1604はミラー1608で進行方向を調整された後、シリコンウエハーで構成されたシリコンミラー1609に入射し、シリコンミラー1609を透過したTHz電磁波1607と光軸を共有して、アルミニウムガリウム砒素とガリウム砒素薄膜を交互に積層した超格子よりなる電気光学変調器1610に入射する。
【0175】
電気光学変調器1610の後段には本実施の形態で説明した光電変換装置を有し、プローブ光1604を撮像するイメージセンサ1611が配置された構成となっている。この時、電気光学変調器1610にTHz電磁波1607がプローブ光1604と同時に入射しない場合には、透過光の波長は変化せず、従って内部の各フォトダイオード1、1’には等量の光が入射し、発生する光電流も等量であるため、信号は検出されない。
【0176】
一方、電気光学変調器1610にTHz電磁波パルスとプローブ光パルスとが同時に入射する、すなわち両パルス間の同期が取れている場合には、THz電磁波1607の電界に応じてプローブ光1604の特定の物理量が変調され、電気光学変調器1610を透過後のプローブ光1604の波長はTHz電磁波1607と非同期の場合に比べて、長波長側に5nmシフトし、フォトダイオード1’に入射する光量が増大、フォトダイオード1に入射する光量が減少するため、両フォトダイオード1、1’に異なる光電流が発生し、電荷蓄積用容量3、3’には電荷が蓄積され、電圧信号すなわちTHz電磁波検出信号が出力される。
【0177】
従って、課題であるフォトダイオードを飽和させることなくTHz電磁波を検出することが可能である。
【0178】
なお、異なる波長フィルタをそれぞれのフォトダイオード1、1’に設けたこの構成は、上記説明したように入射光の波長に関する変調度を検出する用途とは別に、入射光から色差情報を直接に検出するために利用することもできる。
【0179】
さらに、それぞれのフォトダイオード1、1’に、偏光フィルタも波長フィルタも設けない構成では、2つのフォトダイオード1、1’が受光した光量差が直接に検出できることから、画像内のエッジ検出に応用することも考えられる。
【0180】
以上、本発明の光電変換装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲内で当業者が思いつく各種変形を施したものも本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0181】
本発明の光電変換装置は、セキュリティ検査装置、食品検査装置、大気センサ、医療診断装置等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る光電変換装置の構成の一例を示す回路図である。
【図2】同実施の形態の光電変換装置の動作に係る主要信号のタイミングチャートである。
【図3】同実施の形態の光電変換装置の光電変換部の模式的な断面図である。
【図4】同実施の形態の光電変換装置の光電変換部を装置上部から見たレイアウト図である。
【図5】同実施の形態の光電変換装置を用いたTHzイメージングシステムの構成例を模式的に示す図である。
【図6】同実施の形態の光電変換装置を用いたイメージセンサの機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【図7】同実施の形態の光電変換装置を用いたTHzイメージングシステムの変形例を模式的に示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態の光電変換装置の光電変換部の模式的な断面図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態の光電変換装置の光電変換部の模式的な断面図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態に係る光電変換装置の構成の一例を示す回路図である。
【図11】同実施の形態の光電変換装置の動作に係る主要信号のタイミングチャートである。
【図12】同実施の形態の光電変換装置の光電変換部の模式的な断面図である。
【図13】同実施の形態の光電変換装置のN+電極間の容量(CG)における制御ゲート電極の制御ゲート電圧(VG)依存性を示す図である。
【図14】本発明の第5の実施の形態の光電変換装置の光電変換部の模式的な断面図である。
【図15】同実施の形態の光電変換装置のN+電極間の容量(CG)における制御ゲート電極の制御ゲート電圧(VG)依存性を示す図である。
【図16】本発明の第6の実施の形態の光電変換装置の光電変換部の模式的な断面図である。
【図17】(A)狭帯域フィルタの透過特性を示す図である。(B)狭帯域フィルタの透過特性を示す図である。
【図18】同実施の形態の光電変換装置を用いたTHzイメージングシステムの構成例を模式的に示す図である。
【図19】従来技術に係るTHzイメージングシステムの構成例を示す模式図である。
【図20】偏光フィルタの特性を説明する図である。
【図21】従来技術に係る一般的なイメージセンサの画素回路の一例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0183】
1、1’、1801 フォトダイオード
2、2’ 転送スイッチ
3、3’ 電荷蓄積用容量
4 制御回路
5、5’ 容量端子
6 差動増幅回路
7、7’、17、610 スイッチ
8 リセット信号発生回路
19 リセット制御回路
300 半導体基板
301、301’ P層
302、302’ N層
303、303’ 転送ゲート
304、304’ N+電極
305 保護層
306 遮光メタル
307、307’ オンチップレンズ
308 第2の保護層
309、309’ 偏光フィルタ
405、405’ 配線
407、407’ リセットゲート
501、701、1601、1701 光源
502、702、1602、1702 偏光ビームスプリッタ
503、703、1603、1703 ポンプ光
504、704、1604、1704 プローブ光
505、705、1605、1705 光学遅延線
506、706、1606、1706 THz電磁波エミッター
507、707、1607、1707 THz電磁波
508、710、1608、1710 ミラー
509、712、1609、1712 シリコンミラー
510、713、1610、1713 電気光学変調器
511、714 1/4波長板
512、715、1611、1716 イメージセンサ
601 垂直走査回路
602 水平走査回路
603 行データ選択線
604 列データ読み出し線
606、607、609 端子
708、1708 被測定物
709、1709 ポリエチレンレンズ
804、804’、901、901’ ニッケルシリサイド電極
902、902’ 高誘電率膜
903 上部電極
1001、1201 制御ゲート電極
1409、1409’ 狭帯域フィルタ
711、1711 ビームエクスパンダ
1714 位相板
1715 偏光板
1717 同期回路
1718 画像処理回路
1802 転送トランジスタ
1803 転送パルス発生回路
1804 容量
1805 増幅回路
1806 リセットパルス発生回路
1807 リセットトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1フォトダイオードと、
第1極性の端子が前記第1フォトダイオードの第1極性の端子と接続された第2フォトダイオードと、
前記第1フォトダイオードと前記第2フォトダイオードとの間に挿入された第1容量と、
前記第1容量と前記第2フォトダイオードとの間に挿入された第2容量と、
一方の入力端子が前記第1フォトダイオードと前記第1容量との間に接続され、他方の入力端子が前記第2フォトダイオードと前記第2容量との間に接続された差動増幅回路とを備える
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記第1フォトダイオードは、第1導電型の半導体基板表面に形成された、互いに接する第1導電型の第1領域及び第2導電型の第2領域から構成され、
前記第2フォトダイオードは、前記半導体基板表面に形成された、互いに接する第1導電型の第3領域及び第2導電型の第4領域から構成され、
前記第1領域及び第3領域の形状は等しく、
前記第2領域及び第4領域の形状は等しく、
前記第1領域及び第2領域のいずれかは、前記半導体基板表面に形成された第1電極と接続され、
前記第3領域及び第4領域のいずれかは、前記半導体基板表面に形成された第2電極と接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記第1容量及び第2容量は、それぞれPN接合の接合容量であり、
前記第1電極は、前記第1容量の第2導電型の電極であり、
前記第2電極は、前記第2容量の第2導電型の電極である
ことを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記第1容量及び第2容量は、それぞれショットキー接合の接合容量であり、
前記第1電極は、前記半導体基板とショットキー接続する前記第1容量の電極であり、
前記第2電極は、前記半導体基板とショットキー接続する前記第2容量の電極である
ことを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記第1容量及び第2容量は、それぞれ誘電体を導電体で挟んだ構造である
ことを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記第1容量の誘電体の膜厚と前記第2容量の誘電体の膜厚とは等しい
ことを特徴とする請求項5に記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記光電変換装置は、さらに、前記第1容量と前記第2容量との間に挿入され、前記第1容量及び第2容量の電荷を排出する排出スイッチを備える
ことを特徴とする請求項3に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記排出スイッチは、MOSFETであり、
前記MOSFETは、前記第1電極と前記第2電極との間に位置するように前記半導体基板上に形成されたゲート電極を有する
ことを特徴とする請求項7に記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記排出スイッチは、接合型FETであり、
前記接合型FETは、前記第1電極と前記第2電極との間に位置するように前記半導体基板表面に形成された第2導電型のゲート電極を有する
ことを特徴とする請求項7に記載の光電変換装置。
【請求項10】
前記光電変換装置は、さらに、前記第1フォトダイオードと前記第1容量との間に挿入された第1転送スイッチと、前記第2フォトダイオードと前記第2容量との間に挿入された第2転送スイッチとを備える
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項11】
前記第1フォトダイオード及び前記第2フォトダイオードは、同等の特性を有し、
前記第1容量及び前記第2容量は、同等の特性を有し、
前記第1フォトダイオード及び前記第2フォトダイオードには、入射光を、その入射光が有する特定の物理量に応じた強度で、互いに異なる特性に従って透過するフィルタが設けられている
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項12】
前記フィルタは、異なる偏光透過特性を有する偏光フィルタである
ことを特徴とする請求項11に記載の光電変換装置。
【請求項13】
前記フィルタは、異なる波長透過特性を有する波長フィルタである
ことを特徴とする請求項11に記載の光電変換装置。
【請求項14】
2次元に配置され、それぞれに請求項1〜13のいずれか1項に記載の光電変換装置を有した複数の画素回路と、
それぞれの画素回路が有する前記光電変換装置の出力信号を読み出す読み出し回路とを備える
ことを特徴とするイメージセンサ。
【請求項15】
請求項8又は9に記載の光電変換装置の駆動方法であって、
前記半導体基板の前記ゲート電極下方の領域において空乏層が広げられるように前記ゲート電極にバイアス電圧を印加した状態で、前記第1容量及び第2容量に蓄積された電荷の差に応じた電圧を前記差動増幅回路から読み出す
ことを特徴とする光電変換装置の駆動方法。
【請求項16】
請求項8又は9に記載の光電変換装置の駆動方法であって、
前記半導体基板の前記ゲート電極下方の領域において空乏層が狭められるように前記ゲート電極にバイアス電圧を印加した状態で、前記第1容量及び第2容量に蓄積された電荷を排出させる
ことを特徴とする光電変換装置の駆動方法。
【請求項17】
周波数が0.1THzから10THzの領域にあるTHz電磁波を発生する電磁波源と、
プローブ光を発生する光源と、
被写体を透過又は反射した後の前記THz電磁波を前記プローブ光と重畳する重畳光学素子と、
前記重畳されたTHz電磁波とプローブ光とを入射され、前記THz電磁波の電界に応じて前記プローブ光の特定の物理量を変調する電気光学変調素子と、
前記変調後のプローブ光を撮像する請求項14に記載のイメージセンサとを備える
ことを特徴とするイメージングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−199414(P2008−199414A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34062(P2007−34062)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】