内燃機関のオイル供給装置
【課題】オイル供給対象から通路内に空気が流入しても通路内にオイルを溜めることができ、始動時にオイル供給対象に迅速にオイルを供給することが可能な内燃機関のオイル供給装置を提供する。
【解決手段】オイルタンク11から可変動弁機構8にオイルを送るオイル供給経路12に内燃機関1の内部に設けられたメインギャラリ18と、メインギャラリ18と可変動弁機構8とを接続する下流側供給通路16bとが含まれているオイル供給装置10Aにおいて、メインギャラリ18の内部には上流側から順に第1オイル室19と第2オイル室20が形成され、第2オイル室20と下流側供給通路16bにてU字部12aが形成され、下流側供給通路16bには、第2オイル室20の上端よりも上方かつ可変動弁機構8よりも下方の高さに配置され、かつメインギャラリ18から可変動弁機構8へのオイルの流れは許容し、逆方向への流れは阻止する逆止弁22が設けられている。
【解決手段】オイルタンク11から可変動弁機構8にオイルを送るオイル供給経路12に内燃機関1の内部に設けられたメインギャラリ18と、メインギャラリ18と可変動弁機構8とを接続する下流側供給通路16bとが含まれているオイル供給装置10Aにおいて、メインギャラリ18の内部には上流側から順に第1オイル室19と第2オイル室20が形成され、第2オイル室20と下流側供給通路16bにてU字部12aが形成され、下流側供給通路16bには、第2オイル室20の上端よりも上方かつ可変動弁機構8よりも下方の高さに配置され、かつメインギャラリ18から可変動弁機構8へのオイルの流れは許容し、逆方向への流れは阻止する逆止弁22が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルを供給すべきオイル供給対象を備えた内燃機関のオイル供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は、運転中にオイルを供給すべき複数のオイル供給対象を備えている。また、内燃機関には、それら複数のオイル供給対象にオイルを供給するためのオイル供給装置が設けられている。このようなオイル供給装置として、オイル供給対象にオイルを供給するための通路に機関停止時にオイルが蓄えられるU字状の油貯溜部を設け、内燃機関の再始動時にはその油貯溜部のオイルをオイル供給対象に供給するものが知られている(特許文献1参照)。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2、3が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−087718号公報
【特許文献2】特開2010−084520号公報
【特許文献3】特開2000−179311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、U字状に構成された通路の一方の断面積を他方の断面積よりも大きくし、これにより油貯溜部からオイルが流出することを防止しているが、オイル供給対象から通路内に大量の空気が流入したり通路内に残っている空気の量が多かった場合には油貯溜部から流出するオイル量が増加し、溜められるオイルの量が減少するおそれがある。この場合、油貯溜部に十分な量のオイルを確保できず、再始動時にオイルの供給が遅れるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、オイル供給対象から通路内に空気が流入しても通路内にオイルを溜めることができ、始動時にオイル供給対象に迅速にオイルを供給することが可能な内燃機関のオイル供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の内燃機関のオイル供給装置は、オイルを供給すべきオイル供給対象を備えた内燃機関に適用され、オイルが溜められるオイル溜め部と、前記オイル溜め部と前記オイル供給対象とを接続するオイル供給経路と、前記オイル溜め部のオイルを前記オイル供給経路を介して前記オイル供給対象に送るオイルポンプと、を備え、前記オイル供給経路には、前記内燃機関の内部に設けられたメインギャラリと、前記メインギャラリと前記オイル供給対象とを接続する下流側供給通路と、が含まれているオイル供給装置において、前記メインギャラリには、内部にいずれも上下方向に延びるように設けられて上部又は下部で接続された一対のオイル室が形成されるように壁部が設けられ、前記オイル供給経路には、前記一対のオイル室の少なくともいずれか一方を含むようにして形成され、まず上方から下方に延び、その後下方から上方に延びるU字部が設けられ、前記オイル供給対象は、前記オイルギャラリの上端よりも上方に配置され、前記下流側供給通路には、前記一対のオイル室の少なくともいずれか一方の上端よりも上方、かつ前記オイル供給対象よりも下方の高さに配置され、かつ前記メインギャラリから前記オイル供給対象へのオイルの流れは許容し、逆方向への流れは阻止する逆止弁が設けられている(請求項1)。
【0007】
本発明の第1のオイル供給装置によれば、下流側供給通路に逆止弁を設けたので、オイル供給対象から下流側供給通路に空気が流入しても逆止弁より上流側への空気の流入を抑制できる。また、逆止弁よりも上流側にU字部が設けられているので、この部分を直線にした場合と比較して逆止弁に対してオイル流れの上流側から作用する吸引力を小さくできる。これにより逆止弁よりも上流側に空気が吸い込まれることを抑制できるので、逆止弁のシール性を向上できる。そのため、第1のオイル供給装置では、内燃機関の停止時にオイル供給経路のうち逆止弁からU字部までの区間にオイルを溜めることができる。そして、次の内燃機関の始動時にそのオイルをオイル溜め部のオイルよりも先にオイル供給対象に送ることができるので、始動時にオイル供給対象に迅速にオイルを供給することができる。
【0008】
本発明の第1のオイル供給装置の一形態において、前記一対のオイル室は、上部にて接続され、前記下流側供給通路は、前記一対のオイル室のうち前記オイル供給対象へのオイル供給時に下流側に位置する一方のオイル室の下部に接続され、前記逆止弁は、前記一方のオイル室の上端より上方、かつ前記オイル供給対象より下方の高さに配置されていてもよい(請求項2)。この形態によれば、一方のオイル室と下流側供給通路とによってオイル供給経路にU字部を形成することができる。
【0009】
本発明の第2の内燃機関のオイル供給装置は、オイルを供給すべきオイル供給対象を備えた内燃機関に適用され、オイルが溜められるオイル溜め部と、前記オイル溜め部と前記オイル供給対象とを接続するオイル供給経路と、前記オイル溜め部のオイルを前記オイル供給経路を介して前記オイル供給対象に送るオイルポンプと、を備え、前記オイル供給経路には、前記内燃機関の内部に設けられたメインギャラリと、前記オイル溜め部から前記メインギャラリにオイルを導くための上流側供給通路と、前記メインギャラリと前記オイル供給対象とを接続する下流側供給通路と、が含まれているオイル供給装置において、前記メインギャラリには、内部にいずれも上下方向に延びるように設けられて上部で接続され、それぞれの下端に前記上流側供給通路が接続された第1オイル室及び第2オイル室が形成されるように壁部が設けられ、前記オイル供給対象は、前記オイルギャラリの上端よりも上方に配置され、前記下流側供給通路が前記第2オイル室の上部に接続され、前記第2オイル室の下端には、前記上流側供給通路から前記第2オイル室内へのオイルの流れは許容し、逆方向への流れは阻止する第1逆止弁が設けられ、前記下流側供給通路には、前記第2オイル室の上端よりも上方、かつ前記オイル供給対象よりも下方の高さに配置されて前記メインギャラリから前記オイル供給対象へのオイルの流れは許容し、逆方向への流れは阻止する第2逆止弁が設けられている(請求項3)。
【0010】
本発明の第2のオイル供給装置によれば、下流側供給通路に第2逆止弁を設けたので、第1のオイル供給装置と同様にオイル供給対象から下流側供給通路に空気が流入しても第2逆止弁より上流側への空気の流入を抑制できる。また、この第2のオイル供給装置では、第2オイル室の下端に第1逆止弁を設けたので、オイル溜め部からオイル供給対象へのオイルの流れが停止した場合に第2オイル室内にオイルが溜まる。そのため、第2のオイル供給装置では、内燃機関の停止時に逆止弁から第2オイル室までの区間にオイルを溜めることができる。そして、次の内燃機関の始動時には、このオイルをオイル溜め部のオイルよりも先にオイル供給対象に送ることができる。そのため、始動時にオイル供給対象に迅速にオイルを供給することができる。
【0011】
本発明の第1又は第2のオイル供給装置の一形態において、前記オイル供給対象は、油圧を使用して前記内燃機関の吸気弁及び排気弁の少なくともいずれか一方の動弁特性を変更可能な可変動弁機構であってもよい(請求項4)。この形態によれば、内燃機関の始動時に可変動弁機構に迅速にオイルを供給できるので、内燃機関の始動直後から吸気弁や排気弁の動弁特性を変更することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上に説明したように、本発明のオイル供給装置によれば、下流側供給通路に逆止弁を設けたので、オイル供給対象から下流側供給通路に空気が流入してもオイル供給経路内にオイルを溜めることができる。また、内燃機関の始動時にそのオイルをオイル溜め部のオイルよりも先にオイル供給対象に送ることができるので、始動時にオイル供給対象に迅速にオイルを供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の形態に係るオイル供給装置が組み込まれた内燃機関の一部を示す図。
【図2】第1の形態に係るオイル供給装置を概略的に示す図。
【図3】本発明の第2の形態に係るオイル供給装置を概略的に示す図。
【図4】図3のメインギャラリに設けられている逆止弁を拡大して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の形態)
図1は、本発明の第1の形態に係るオイル供給装置が組み込まれた内燃機関の一部を示している。この内燃機関(以下、エンジンと称することがある。)1は、車両に動力源として搭載されるものであり、複数の気筒(不図示)を有するシリンダブロック2と、シリンダブロック2の上部に取り付けられたシリンダヘッド3とを備えている。シリンダヘッド3には、各気筒の吸気弁及び排気弁を開閉駆動する動弁装置4が設けられている。動弁装置4は、各気筒の吸気弁を開閉駆動する複数のカムが設けられた吸気側カムシャフト6と、各気筒の排気弁を開閉駆動する複数のカムが設けられた排気側カムシャフト5とを備えている。各カムシャフト5、6及びクランクシャフト1aには、タイミングチェーン7が巻き掛けられている。これにより各カムシャフト5、6にクランクシャフト1aの回転が伝達される。なお、この図では便宜上タイミングチェーン7を各シャフト1a、5、6と離して示す。
【0015】
また、動弁装置4は、各気筒の吸気弁の動弁特性(例えば、開閉タイミング、作用角など)を変更可能な可変動弁機構8を備えている。可変動弁機構8は、クランクシャフト1aに対する吸気側カムシャフト6の位相を進角させたり遅角させたりすることにより吸気弁の動弁特性を変更する。可変動弁機構8は、図2に示すように油圧を使用してクランクシャフト1aに対する吸気側カムシャフト6の位相を変化させるアクチュエータ8aと、アクチュエータ8aに送られる油圧を制御するためのオイルコントロールバルブ(OCV)8bとを備えている。なお、これら可変動弁機構8の構造及び制御方法は、内燃機関に設けられる周知のものと同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0016】
図1に示したようにシリンダブロック2及びシリンダヘッド3の側面には、タイミングチェーン7を覆うためのタイミングチェーンカバー9が設けられている。なお、このタイミングチェーンカバー9も便宜上シリンダブロック2及びシリンダヘッド3と離して示す。
【0017】
周知のようにエンジン1には、オイルを供給すべき複数のオイル供給対象が設けられている。オイル供給対象は、例えば、クランクシャフト1a、クランクシャフト1aを回転自在に支持する軸受、及びピストンに向けてオイルを噴射するオイルジェット等である。また、上述した可変動弁機構8もオイル供給対象となる。エンジン1には、これらオイル供給対象にオイルを供給するためのオイル供給装置10Aが設けられている。図2は、オイル供給装置10Aを概略的に示している。なお、図2はタイミングチェーンカバー9の裏側を図示している。この図に示すようにオイル供給装置10Aは、オイルが溜められるオイル溜め部としてのオイルタンク11と、オイルタンク11とオイル供給対象とを接続するオイル供給経路12とを備えている。オイル供給経路12には、オイルタンク11内のオイルをストレーナ13を介して汲み出すオイルポンプ14と、オイルポンプ14から吐出されたオイルを濾過するオイルフィルタ15とが設けられている。オイルポンプ14は、クランクシャフト1aにて駆動される周知のものである。また、ストレーナ13はオイルを濾過する周知のものである。そのため、これらについての詳細な説明は省略する。
【0018】
オイル供給経路12は、オイルフィルタ15の下流側にて第1分岐通路16と第2分岐通路17とに分岐する。第1分岐通路16は、可変動弁機構8にオイルを供給する経路である。第2分岐通路17は、クランクシャフト1a、軸受、及びオイルジェット等にオイルを供給する経路である。第1分岐通路16の一部は、メインギャラリ18にて構成されている。メインギャラリ18は、タイミングチェーンカバー9の内側に形成されており、この図に示すようにシリンダブロック2に沿って上下方向に延びるように設けられている。メインギャラリ18には、その内部に上下方向に延びる第1オイル室19及び第2オイル室20が形成されるように壁部としての仕切り壁21が設けられている。この図に示すように仕切り壁21は、第1オイル室19と第2オイル室20とが上部では連通部18aで接続され、下部では区分されるように設けられている。第1オイル室19は、上流側供給通路16aを介してオイルフィルタ15と接続されている。この際、上流側供給通路16aは、第1オイル室19の下部に接続されている。第2オイル室20は、下流側供給通路16bを介して可変動弁機構8のOCV8bと接続されている。この際、下流側供給通路16bは、第2オイル室20の下部に接続されている。このように第2オイル室20と下流側供給通路16bとがU字管構造になるように接続されるため、この部分がU字部12aとなる。この図に示すように下流側供給通路16bは、第2オイル室20の下部に接続された一端から上方に立ち上がるように設けられている。下流側供給通路16bには、第2オイル室20からOCV8bへのオイルの流れは許容し、逆方向への流れは阻止する逆止弁22が設けられている。逆止弁22は、下流側供給通路16bのうち第2オイル室20の上端よりも上方、かつOCV8bよりも下方の区間、より詳しくはOCV8bの直ぐ上流側に設けられている。
【0019】
次に図2を参照してオイル供給装置10Aにおけるオイルの流れについて説明する。オイルポンプ14が動作している場合、オイルタンク11内のオイルがオイルポンプ14で汲み出されてオイルフィルタ15に送られる。オイルフィルタ15を通過したオイルは、一部が第1分岐通路16に送られ、残りが第2分岐通路17に送られる。第2分岐通路17に送られたオイルは、クランクシャフト1a、軸受、及びオイルジェット等に供給され、その後オイルタンク11に戻される。第1分岐通路16に送られたオイルは、上流側供給通路16aを介して第1オイル室19の下部に送られる。その後、オイルは第1オイル室19内を下方から上方に移動し、連通部18aを介して第2オイル室20の上部に流入する。オイルは、第2オイル室20内において上方から下方に移動し、続いて第2オイル室20の下部から下流側供給通路16bに流入する。下流側供給通路16bでは、オイルが下方から上方に移動する。その後、オイルは逆止弁22、OCV8bを介してアクチュエータ8aに導かれる。アクチュエータ8aで使用されたオイルは、不図示のリターン通路を介してオイルタンク11に戻される。
【0020】
次にこのようにオイルが流れている状態からエンジン1を停止した場合について説明する。エンジン1を停止した場合はオイルポンプ14が停止するので、オイル供給通路12をオイルが逆流する。この際、第1分岐通路16においては逆止弁22により可変動弁機構8からメインギャラリ18へのオイルの逆流が防止される。また、この逆止弁22により可変動弁機構8に流入した空気がメインギャラリ18に流入することも抑制される。そのため、エンジン1を停止した場合、下流側供給通路16bのうち逆止弁22よりも上流側の区間にオイルが溜まる。また、上述したように第2オイル室20と下流側供給通路16bとはU字管構造になっているので、第2オイル室20にも図2に矢印Aで示した高さまでオイルが溜まる。これらの部分に溜められたオイルは、エンジン1の停止中はその位置に保持され、次にエンジン1が始動されたときにオイルタンク11のオイルよりも先に可変動弁機構8に送られる。
【0021】
以上に説明したように第1の形態のオイル供給装置10Aによれば、下流側供給通路16bに逆止弁22を設けたので、エンジン1が停止した際に可変動弁機構8から下流側供給通路16に空気が流入しても逆止弁22よりも上流側への空気の流入を抑制できる。また、第2オイル室20と下流側供給通路16bとをU字管構造にしたので、これらの部分を直線的にした場合よりも逆止弁22に対して上流側から作用する吸引力を小さくできる。そのため、空気が逆止弁22よりも上流側に吸い込まれることを抑制でき、これによりシール性を向上できる。従って、このオイル供給装置10Aでは、エンジン1の停止時に第2オイル室20から逆止弁22までの区間にオイルを溜めることができる。そして、次のエンジン1の始動時にそのオイルをオイルタンク11のオイルよりも先に可変動弁機構8に送ることができるので、エンジン1の始動時に可変動弁機構8に迅速にオイルを供給することができる。これによりエンジン1を始動させてから可変動弁機構8が動作するまでの遅れ時間を短縮できるので、エンジン1の始動直後から可変動弁機構8を動作させることができる。
【0022】
(第2の形態)
次に図3及び図4を参照して本発明の第2の形態に係るオイル供給装置10Bについて説明する。また、図3も図2と同様にタイミングチェーンカバー9の裏側を図示している。なお、この形態において第1の形態と共通の部分には同一の符号を付して説明を省略する。この形態では、下流側供給通路16bが第2オイル室20の上部に接続され、第2オイル室20の下端に逆止弁30が設けられている点が異なり、それ以外は上述した形態と同じである。図4は逆止弁30を拡大して示している。この図に示したように逆止弁30は、仕切り壁21に設けられた開口部21aを塞ぐことが可能な球状の弁体31と、弁体31を開口部21aに押し付けるスプリング32とを備えている。そして、この逆止弁30では、第1オイル室19から第2オイル室20へオイルが流れようとすると弁体31に押されてスプリング32が縮まるので、オイルが流れる。一方、第2オイル室20から第1オイル室19にオイルが流れようとすると弁体31が開口部21aを塞ぐので、オイルの流れが阻止される。すなわち、逆止弁30は、第1オイル室19から第2オイル室20へのオイルの流れは許可し、第2オイル室20から第1オイル室19へのオイルの流れは阻止する。そのため、この逆止弁30が本発明の第1逆止弁に相当し、逆止弁22が本発明の第2逆止弁に相当する。
【0023】
このオイル供給装置10Bでは、オイルポンプ14が動作している場合、上流側供給通路16aからメインギャラリ18に送られたオイルは、第1オイル室19及び第2オイル室20の両方にそれぞれの下端から流入する。第1オイル室19に流入したオイルは、連通部18aを介して第2オイル室20の上部に移動する。すなわち、メインギャラリ18に流入したオイルは全て第2オイル室20を移動する。その後、オイルは第2オイル室20から下流側供給通路16bを介して可変動弁機構8に送られる。
【0024】
一方、エンジン1を停止した場合は、逆止弁22によって可変動弁機構8からメインギャラリ18へのオイルの逆流が防止されるとともに空気の流入が抑制される。そのため、下流側供給通路16bのうち逆止弁22よりも上流側の区間にオイルが溜まる。また、逆止弁30が第2オイル室20から第1オイル室19へのオイルの流出を防止するので、第2オイル室20にも図3に矢印Bで示した高さまでオイルが溜まる。これらの部分に溜められたオイルは、エンジン1の停止中はその位置に保持される。そして、次にエンジン1が始動されたときにオイルタンク11のオイルよりも先に可変動弁機構8に送られる。
【0025】
この形態のオイル供給装置10Bによれば、逆止弁22によってエンジン1の停止時に下流側供給通路16bのうち逆止弁22よりも上流側の区間にオイルを溜めることができる。また、逆止弁30によって第2オイル室20にオイルを溜めることができる。そして、次のエンジン1の始動時にはそれらのオイルをオイルタンク11のオイルよりも先に可変動弁機構8に送ることができる。そのため、エンジン1の始動時に可変動弁機構8に迅速にオイルを供給でき、これによりエンジン1の始動直後から可変動弁機構8を動作させることができる。
【0026】
本発明は、上述した各形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。例えば、本発明におけるオイル供給対象は可変動弁機構に限定されない。メインギャラリの上端よりも上方に設けられてオイルを供給すべきカムシャフトの軸受等の種々の部分を本発明のオイル供給対象としてよい。
【0027】
上述した第1の形態では、メインギャラリ内を下方から延びる仕切り壁で仕切り、第2オイル室と下流側供給通路とでU字部を形成したが、U字部の形状はこれに限定されない。例えば、メインギャラリ内を上方から延びる仕切り壁で仕切り、下部で接続された第1オイル室及び第2オイル室を設ける。そして、上流側供給通路を第1オイル室の上部に接続するとともに下流側供給通路を第2オイル室の上部に接続し、第1オイル室及び第2オイル室にてU字部を形成してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 内燃機関
8 可変動弁機構(オイル供給対象)
10A、10B オイル供給装置
11 オイルタンク
12 オイル供給経路
12a U字部
14 オイルポンプ
16a 上流側供給通路
16b 下流側供給通路
18 メインギャラリ
19 第1オイル室
20 第2オイル室
21 仕切り壁(壁部)
22 逆止弁(第2逆止弁)
30 逆止弁(第1逆止弁)
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルを供給すべきオイル供給対象を備えた内燃機関のオイル供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は、運転中にオイルを供給すべき複数のオイル供給対象を備えている。また、内燃機関には、それら複数のオイル供給対象にオイルを供給するためのオイル供給装置が設けられている。このようなオイル供給装置として、オイル供給対象にオイルを供給するための通路に機関停止時にオイルが蓄えられるU字状の油貯溜部を設け、内燃機関の再始動時にはその油貯溜部のオイルをオイル供給対象に供給するものが知られている(特許文献1参照)。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2、3が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−087718号公報
【特許文献2】特開2010−084520号公報
【特許文献3】特開2000−179311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、U字状に構成された通路の一方の断面積を他方の断面積よりも大きくし、これにより油貯溜部からオイルが流出することを防止しているが、オイル供給対象から通路内に大量の空気が流入したり通路内に残っている空気の量が多かった場合には油貯溜部から流出するオイル量が増加し、溜められるオイルの量が減少するおそれがある。この場合、油貯溜部に十分な量のオイルを確保できず、再始動時にオイルの供給が遅れるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、オイル供給対象から通路内に空気が流入しても通路内にオイルを溜めることができ、始動時にオイル供給対象に迅速にオイルを供給することが可能な内燃機関のオイル供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の内燃機関のオイル供給装置は、オイルを供給すべきオイル供給対象を備えた内燃機関に適用され、オイルが溜められるオイル溜め部と、前記オイル溜め部と前記オイル供給対象とを接続するオイル供給経路と、前記オイル溜め部のオイルを前記オイル供給経路を介して前記オイル供給対象に送るオイルポンプと、を備え、前記オイル供給経路には、前記内燃機関の内部に設けられたメインギャラリと、前記メインギャラリと前記オイル供給対象とを接続する下流側供給通路と、が含まれているオイル供給装置において、前記メインギャラリには、内部にいずれも上下方向に延びるように設けられて上部又は下部で接続された一対のオイル室が形成されるように壁部が設けられ、前記オイル供給経路には、前記一対のオイル室の少なくともいずれか一方を含むようにして形成され、まず上方から下方に延び、その後下方から上方に延びるU字部が設けられ、前記オイル供給対象は、前記オイルギャラリの上端よりも上方に配置され、前記下流側供給通路には、前記一対のオイル室の少なくともいずれか一方の上端よりも上方、かつ前記オイル供給対象よりも下方の高さに配置され、かつ前記メインギャラリから前記オイル供給対象へのオイルの流れは許容し、逆方向への流れは阻止する逆止弁が設けられている(請求項1)。
【0007】
本発明の第1のオイル供給装置によれば、下流側供給通路に逆止弁を設けたので、オイル供給対象から下流側供給通路に空気が流入しても逆止弁より上流側への空気の流入を抑制できる。また、逆止弁よりも上流側にU字部が設けられているので、この部分を直線にした場合と比較して逆止弁に対してオイル流れの上流側から作用する吸引力を小さくできる。これにより逆止弁よりも上流側に空気が吸い込まれることを抑制できるので、逆止弁のシール性を向上できる。そのため、第1のオイル供給装置では、内燃機関の停止時にオイル供給経路のうち逆止弁からU字部までの区間にオイルを溜めることができる。そして、次の内燃機関の始動時にそのオイルをオイル溜め部のオイルよりも先にオイル供給対象に送ることができるので、始動時にオイル供給対象に迅速にオイルを供給することができる。
【0008】
本発明の第1のオイル供給装置の一形態において、前記一対のオイル室は、上部にて接続され、前記下流側供給通路は、前記一対のオイル室のうち前記オイル供給対象へのオイル供給時に下流側に位置する一方のオイル室の下部に接続され、前記逆止弁は、前記一方のオイル室の上端より上方、かつ前記オイル供給対象より下方の高さに配置されていてもよい(請求項2)。この形態によれば、一方のオイル室と下流側供給通路とによってオイル供給経路にU字部を形成することができる。
【0009】
本発明の第2の内燃機関のオイル供給装置は、オイルを供給すべきオイル供給対象を備えた内燃機関に適用され、オイルが溜められるオイル溜め部と、前記オイル溜め部と前記オイル供給対象とを接続するオイル供給経路と、前記オイル溜め部のオイルを前記オイル供給経路を介して前記オイル供給対象に送るオイルポンプと、を備え、前記オイル供給経路には、前記内燃機関の内部に設けられたメインギャラリと、前記オイル溜め部から前記メインギャラリにオイルを導くための上流側供給通路と、前記メインギャラリと前記オイル供給対象とを接続する下流側供給通路と、が含まれているオイル供給装置において、前記メインギャラリには、内部にいずれも上下方向に延びるように設けられて上部で接続され、それぞれの下端に前記上流側供給通路が接続された第1オイル室及び第2オイル室が形成されるように壁部が設けられ、前記オイル供給対象は、前記オイルギャラリの上端よりも上方に配置され、前記下流側供給通路が前記第2オイル室の上部に接続され、前記第2オイル室の下端には、前記上流側供給通路から前記第2オイル室内へのオイルの流れは許容し、逆方向への流れは阻止する第1逆止弁が設けられ、前記下流側供給通路には、前記第2オイル室の上端よりも上方、かつ前記オイル供給対象よりも下方の高さに配置されて前記メインギャラリから前記オイル供給対象へのオイルの流れは許容し、逆方向への流れは阻止する第2逆止弁が設けられている(請求項3)。
【0010】
本発明の第2のオイル供給装置によれば、下流側供給通路に第2逆止弁を設けたので、第1のオイル供給装置と同様にオイル供給対象から下流側供給通路に空気が流入しても第2逆止弁より上流側への空気の流入を抑制できる。また、この第2のオイル供給装置では、第2オイル室の下端に第1逆止弁を設けたので、オイル溜め部からオイル供給対象へのオイルの流れが停止した場合に第2オイル室内にオイルが溜まる。そのため、第2のオイル供給装置では、内燃機関の停止時に逆止弁から第2オイル室までの区間にオイルを溜めることができる。そして、次の内燃機関の始動時には、このオイルをオイル溜め部のオイルよりも先にオイル供給対象に送ることができる。そのため、始動時にオイル供給対象に迅速にオイルを供給することができる。
【0011】
本発明の第1又は第2のオイル供給装置の一形態において、前記オイル供給対象は、油圧を使用して前記内燃機関の吸気弁及び排気弁の少なくともいずれか一方の動弁特性を変更可能な可変動弁機構であってもよい(請求項4)。この形態によれば、内燃機関の始動時に可変動弁機構に迅速にオイルを供給できるので、内燃機関の始動直後から吸気弁や排気弁の動弁特性を変更することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上に説明したように、本発明のオイル供給装置によれば、下流側供給通路に逆止弁を設けたので、オイル供給対象から下流側供給通路に空気が流入してもオイル供給経路内にオイルを溜めることができる。また、内燃機関の始動時にそのオイルをオイル溜め部のオイルよりも先にオイル供給対象に送ることができるので、始動時にオイル供給対象に迅速にオイルを供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の形態に係るオイル供給装置が組み込まれた内燃機関の一部を示す図。
【図2】第1の形態に係るオイル供給装置を概略的に示す図。
【図3】本発明の第2の形態に係るオイル供給装置を概略的に示す図。
【図4】図3のメインギャラリに設けられている逆止弁を拡大して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の形態)
図1は、本発明の第1の形態に係るオイル供給装置が組み込まれた内燃機関の一部を示している。この内燃機関(以下、エンジンと称することがある。)1は、車両に動力源として搭載されるものであり、複数の気筒(不図示)を有するシリンダブロック2と、シリンダブロック2の上部に取り付けられたシリンダヘッド3とを備えている。シリンダヘッド3には、各気筒の吸気弁及び排気弁を開閉駆動する動弁装置4が設けられている。動弁装置4は、各気筒の吸気弁を開閉駆動する複数のカムが設けられた吸気側カムシャフト6と、各気筒の排気弁を開閉駆動する複数のカムが設けられた排気側カムシャフト5とを備えている。各カムシャフト5、6及びクランクシャフト1aには、タイミングチェーン7が巻き掛けられている。これにより各カムシャフト5、6にクランクシャフト1aの回転が伝達される。なお、この図では便宜上タイミングチェーン7を各シャフト1a、5、6と離して示す。
【0015】
また、動弁装置4は、各気筒の吸気弁の動弁特性(例えば、開閉タイミング、作用角など)を変更可能な可変動弁機構8を備えている。可変動弁機構8は、クランクシャフト1aに対する吸気側カムシャフト6の位相を進角させたり遅角させたりすることにより吸気弁の動弁特性を変更する。可変動弁機構8は、図2に示すように油圧を使用してクランクシャフト1aに対する吸気側カムシャフト6の位相を変化させるアクチュエータ8aと、アクチュエータ8aに送られる油圧を制御するためのオイルコントロールバルブ(OCV)8bとを備えている。なお、これら可変動弁機構8の構造及び制御方法は、内燃機関に設けられる周知のものと同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0016】
図1に示したようにシリンダブロック2及びシリンダヘッド3の側面には、タイミングチェーン7を覆うためのタイミングチェーンカバー9が設けられている。なお、このタイミングチェーンカバー9も便宜上シリンダブロック2及びシリンダヘッド3と離して示す。
【0017】
周知のようにエンジン1には、オイルを供給すべき複数のオイル供給対象が設けられている。オイル供給対象は、例えば、クランクシャフト1a、クランクシャフト1aを回転自在に支持する軸受、及びピストンに向けてオイルを噴射するオイルジェット等である。また、上述した可変動弁機構8もオイル供給対象となる。エンジン1には、これらオイル供給対象にオイルを供給するためのオイル供給装置10Aが設けられている。図2は、オイル供給装置10Aを概略的に示している。なお、図2はタイミングチェーンカバー9の裏側を図示している。この図に示すようにオイル供給装置10Aは、オイルが溜められるオイル溜め部としてのオイルタンク11と、オイルタンク11とオイル供給対象とを接続するオイル供給経路12とを備えている。オイル供給経路12には、オイルタンク11内のオイルをストレーナ13を介して汲み出すオイルポンプ14と、オイルポンプ14から吐出されたオイルを濾過するオイルフィルタ15とが設けられている。オイルポンプ14は、クランクシャフト1aにて駆動される周知のものである。また、ストレーナ13はオイルを濾過する周知のものである。そのため、これらについての詳細な説明は省略する。
【0018】
オイル供給経路12は、オイルフィルタ15の下流側にて第1分岐通路16と第2分岐通路17とに分岐する。第1分岐通路16は、可変動弁機構8にオイルを供給する経路である。第2分岐通路17は、クランクシャフト1a、軸受、及びオイルジェット等にオイルを供給する経路である。第1分岐通路16の一部は、メインギャラリ18にて構成されている。メインギャラリ18は、タイミングチェーンカバー9の内側に形成されており、この図に示すようにシリンダブロック2に沿って上下方向に延びるように設けられている。メインギャラリ18には、その内部に上下方向に延びる第1オイル室19及び第2オイル室20が形成されるように壁部としての仕切り壁21が設けられている。この図に示すように仕切り壁21は、第1オイル室19と第2オイル室20とが上部では連通部18aで接続され、下部では区分されるように設けられている。第1オイル室19は、上流側供給通路16aを介してオイルフィルタ15と接続されている。この際、上流側供給通路16aは、第1オイル室19の下部に接続されている。第2オイル室20は、下流側供給通路16bを介して可変動弁機構8のOCV8bと接続されている。この際、下流側供給通路16bは、第2オイル室20の下部に接続されている。このように第2オイル室20と下流側供給通路16bとがU字管構造になるように接続されるため、この部分がU字部12aとなる。この図に示すように下流側供給通路16bは、第2オイル室20の下部に接続された一端から上方に立ち上がるように設けられている。下流側供給通路16bには、第2オイル室20からOCV8bへのオイルの流れは許容し、逆方向への流れは阻止する逆止弁22が設けられている。逆止弁22は、下流側供給通路16bのうち第2オイル室20の上端よりも上方、かつOCV8bよりも下方の区間、より詳しくはOCV8bの直ぐ上流側に設けられている。
【0019】
次に図2を参照してオイル供給装置10Aにおけるオイルの流れについて説明する。オイルポンプ14が動作している場合、オイルタンク11内のオイルがオイルポンプ14で汲み出されてオイルフィルタ15に送られる。オイルフィルタ15を通過したオイルは、一部が第1分岐通路16に送られ、残りが第2分岐通路17に送られる。第2分岐通路17に送られたオイルは、クランクシャフト1a、軸受、及びオイルジェット等に供給され、その後オイルタンク11に戻される。第1分岐通路16に送られたオイルは、上流側供給通路16aを介して第1オイル室19の下部に送られる。その後、オイルは第1オイル室19内を下方から上方に移動し、連通部18aを介して第2オイル室20の上部に流入する。オイルは、第2オイル室20内において上方から下方に移動し、続いて第2オイル室20の下部から下流側供給通路16bに流入する。下流側供給通路16bでは、オイルが下方から上方に移動する。その後、オイルは逆止弁22、OCV8bを介してアクチュエータ8aに導かれる。アクチュエータ8aで使用されたオイルは、不図示のリターン通路を介してオイルタンク11に戻される。
【0020】
次にこのようにオイルが流れている状態からエンジン1を停止した場合について説明する。エンジン1を停止した場合はオイルポンプ14が停止するので、オイル供給通路12をオイルが逆流する。この際、第1分岐通路16においては逆止弁22により可変動弁機構8からメインギャラリ18へのオイルの逆流が防止される。また、この逆止弁22により可変動弁機構8に流入した空気がメインギャラリ18に流入することも抑制される。そのため、エンジン1を停止した場合、下流側供給通路16bのうち逆止弁22よりも上流側の区間にオイルが溜まる。また、上述したように第2オイル室20と下流側供給通路16bとはU字管構造になっているので、第2オイル室20にも図2に矢印Aで示した高さまでオイルが溜まる。これらの部分に溜められたオイルは、エンジン1の停止中はその位置に保持され、次にエンジン1が始動されたときにオイルタンク11のオイルよりも先に可変動弁機構8に送られる。
【0021】
以上に説明したように第1の形態のオイル供給装置10Aによれば、下流側供給通路16bに逆止弁22を設けたので、エンジン1が停止した際に可変動弁機構8から下流側供給通路16に空気が流入しても逆止弁22よりも上流側への空気の流入を抑制できる。また、第2オイル室20と下流側供給通路16bとをU字管構造にしたので、これらの部分を直線的にした場合よりも逆止弁22に対して上流側から作用する吸引力を小さくできる。そのため、空気が逆止弁22よりも上流側に吸い込まれることを抑制でき、これによりシール性を向上できる。従って、このオイル供給装置10Aでは、エンジン1の停止時に第2オイル室20から逆止弁22までの区間にオイルを溜めることができる。そして、次のエンジン1の始動時にそのオイルをオイルタンク11のオイルよりも先に可変動弁機構8に送ることができるので、エンジン1の始動時に可変動弁機構8に迅速にオイルを供給することができる。これによりエンジン1を始動させてから可変動弁機構8が動作するまでの遅れ時間を短縮できるので、エンジン1の始動直後から可変動弁機構8を動作させることができる。
【0022】
(第2の形態)
次に図3及び図4を参照して本発明の第2の形態に係るオイル供給装置10Bについて説明する。また、図3も図2と同様にタイミングチェーンカバー9の裏側を図示している。なお、この形態において第1の形態と共通の部分には同一の符号を付して説明を省略する。この形態では、下流側供給通路16bが第2オイル室20の上部に接続され、第2オイル室20の下端に逆止弁30が設けられている点が異なり、それ以外は上述した形態と同じである。図4は逆止弁30を拡大して示している。この図に示したように逆止弁30は、仕切り壁21に設けられた開口部21aを塞ぐことが可能な球状の弁体31と、弁体31を開口部21aに押し付けるスプリング32とを備えている。そして、この逆止弁30では、第1オイル室19から第2オイル室20へオイルが流れようとすると弁体31に押されてスプリング32が縮まるので、オイルが流れる。一方、第2オイル室20から第1オイル室19にオイルが流れようとすると弁体31が開口部21aを塞ぐので、オイルの流れが阻止される。すなわち、逆止弁30は、第1オイル室19から第2オイル室20へのオイルの流れは許可し、第2オイル室20から第1オイル室19へのオイルの流れは阻止する。そのため、この逆止弁30が本発明の第1逆止弁に相当し、逆止弁22が本発明の第2逆止弁に相当する。
【0023】
このオイル供給装置10Bでは、オイルポンプ14が動作している場合、上流側供給通路16aからメインギャラリ18に送られたオイルは、第1オイル室19及び第2オイル室20の両方にそれぞれの下端から流入する。第1オイル室19に流入したオイルは、連通部18aを介して第2オイル室20の上部に移動する。すなわち、メインギャラリ18に流入したオイルは全て第2オイル室20を移動する。その後、オイルは第2オイル室20から下流側供給通路16bを介して可変動弁機構8に送られる。
【0024】
一方、エンジン1を停止した場合は、逆止弁22によって可変動弁機構8からメインギャラリ18へのオイルの逆流が防止されるとともに空気の流入が抑制される。そのため、下流側供給通路16bのうち逆止弁22よりも上流側の区間にオイルが溜まる。また、逆止弁30が第2オイル室20から第1オイル室19へのオイルの流出を防止するので、第2オイル室20にも図3に矢印Bで示した高さまでオイルが溜まる。これらの部分に溜められたオイルは、エンジン1の停止中はその位置に保持される。そして、次にエンジン1が始動されたときにオイルタンク11のオイルよりも先に可変動弁機構8に送られる。
【0025】
この形態のオイル供給装置10Bによれば、逆止弁22によってエンジン1の停止時に下流側供給通路16bのうち逆止弁22よりも上流側の区間にオイルを溜めることができる。また、逆止弁30によって第2オイル室20にオイルを溜めることができる。そして、次のエンジン1の始動時にはそれらのオイルをオイルタンク11のオイルよりも先に可変動弁機構8に送ることができる。そのため、エンジン1の始動時に可変動弁機構8に迅速にオイルを供給でき、これによりエンジン1の始動直後から可変動弁機構8を動作させることができる。
【0026】
本発明は、上述した各形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。例えば、本発明におけるオイル供給対象は可変動弁機構に限定されない。メインギャラリの上端よりも上方に設けられてオイルを供給すべきカムシャフトの軸受等の種々の部分を本発明のオイル供給対象としてよい。
【0027】
上述した第1の形態では、メインギャラリ内を下方から延びる仕切り壁で仕切り、第2オイル室と下流側供給通路とでU字部を形成したが、U字部の形状はこれに限定されない。例えば、メインギャラリ内を上方から延びる仕切り壁で仕切り、下部で接続された第1オイル室及び第2オイル室を設ける。そして、上流側供給通路を第1オイル室の上部に接続するとともに下流側供給通路を第2オイル室の上部に接続し、第1オイル室及び第2オイル室にてU字部を形成してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 内燃機関
8 可変動弁機構(オイル供給対象)
10A、10B オイル供給装置
11 オイルタンク
12 オイル供給経路
12a U字部
14 オイルポンプ
16a 上流側供給通路
16b 下流側供給通路
18 メインギャラリ
19 第1オイル室
20 第2オイル室
21 仕切り壁(壁部)
22 逆止弁(第2逆止弁)
30 逆止弁(第1逆止弁)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルを供給すべきオイル供給対象を備えた内燃機関に適用され、
オイルが溜められるオイル溜め部と、前記オイル溜め部と前記オイル供給対象とを接続するオイル供給経路と、前記オイル溜め部のオイルを前記オイル供給経路を介して前記オイル供給対象に送るオイルポンプと、を備え、
前記オイル供給経路には、前記内燃機関の内部に設けられたメインギャラリと、前記メインギャラリと前記オイル供給対象とを接続する下流側供給通路と、が含まれているオイル供給装置において、
前記メインギャラリには、内部にいずれも上下方向に延びるように設けられて上部又は下部で接続された一対のオイル室が形成されるように壁部が設けられ、
前記オイル供給経路には、前記一対のオイル室の少なくともいずれか一方を含むようにして形成され、まず上方から下方に延び、その後下方から上方に延びるU字部が設けられ、
前記オイル供給対象は、前記オイルギャラリの上端よりも上方に配置され、
前記下流側供給通路には、前記一対のオイル室の少なくともいずれか一方の上端よりも上方、かつ前記オイル供給対象よりも下方の高さに配置され、かつ前記メインギャラリから前記オイル供給対象へのオイルの流れは許容し、逆方向への流れは阻止する逆止弁が設けられているオイル供給装置。
【請求項2】
前記一対のオイル室は、上部にて接続され、
前記下流側供給通路は、前記一対のオイル室のうち前記オイル供給対象へのオイル供給時に下流側に位置する一方のオイル室の下部に接続され、
前記逆止弁は、前記一方のオイル室の上端より上方、かつ前記オイル供給対象より下方の高さに配置されている請求項1に記載のオイル供給装置。
【請求項3】
オイルを供給すべきオイル供給対象を備えた内燃機関に適用され、
オイルが溜められるオイル溜め部と、前記オイル溜め部と前記オイル供給対象とを接続するオイル供給経路と、前記オイル溜め部のオイルを前記オイル供給経路を介して前記オイル供給対象に送るオイルポンプと、を備え、
前記オイル供給経路には、前記内燃機関の内部に設けられたメインギャラリと、前記オイル溜め部から前記メインギャラリにオイルを導くための上流側供給通路と、前記メインギャラリと前記オイル供給対象とを接続する下流側供給通路と、が含まれているオイル供給装置において、
前記メインギャラリには、内部にいずれも上下方向に延びるように設けられて上部で接続され、それぞれの下端に前記上流側供給通路が接続された第1オイル室及び第2オイル室が形成されるように壁部が設けられ、
前記オイル供給対象は、前記オイルギャラリの上端よりも上方に配置され、
前記下流側供給通路が前記第2オイル室の上部に接続され、
前記第2オイル室の下端には、前記上流側供給通路から前記第2オイル室内へのオイルの流れは許容し、逆方向への流れは阻止する第1逆止弁が設けられ、
前記下流側供給通路には、前記第2オイル室の上端よりも上方、かつ前記オイル供給対象よりも下方の高さに配置されて前記メインギャラリから前記オイル供給対象へのオイルの流れは許容し、逆方向への流れは阻止する第2逆止弁が設けられているオイル供給装置。
【請求項4】
前記オイル供給対象は、油圧を使用して前記内燃機関の吸気弁及び排気弁の少なくともいずれか一方の動弁特性を変更可能な可変動弁機構である請求項1〜3のいずれか一項に記載のオイル供給装置。
【請求項1】
オイルを供給すべきオイル供給対象を備えた内燃機関に適用され、
オイルが溜められるオイル溜め部と、前記オイル溜め部と前記オイル供給対象とを接続するオイル供給経路と、前記オイル溜め部のオイルを前記オイル供給経路を介して前記オイル供給対象に送るオイルポンプと、を備え、
前記オイル供給経路には、前記内燃機関の内部に設けられたメインギャラリと、前記メインギャラリと前記オイル供給対象とを接続する下流側供給通路と、が含まれているオイル供給装置において、
前記メインギャラリには、内部にいずれも上下方向に延びるように設けられて上部又は下部で接続された一対のオイル室が形成されるように壁部が設けられ、
前記オイル供給経路には、前記一対のオイル室の少なくともいずれか一方を含むようにして形成され、まず上方から下方に延び、その後下方から上方に延びるU字部が設けられ、
前記オイル供給対象は、前記オイルギャラリの上端よりも上方に配置され、
前記下流側供給通路には、前記一対のオイル室の少なくともいずれか一方の上端よりも上方、かつ前記オイル供給対象よりも下方の高さに配置され、かつ前記メインギャラリから前記オイル供給対象へのオイルの流れは許容し、逆方向への流れは阻止する逆止弁が設けられているオイル供給装置。
【請求項2】
前記一対のオイル室は、上部にて接続され、
前記下流側供給通路は、前記一対のオイル室のうち前記オイル供給対象へのオイル供給時に下流側に位置する一方のオイル室の下部に接続され、
前記逆止弁は、前記一方のオイル室の上端より上方、かつ前記オイル供給対象より下方の高さに配置されている請求項1に記載のオイル供給装置。
【請求項3】
オイルを供給すべきオイル供給対象を備えた内燃機関に適用され、
オイルが溜められるオイル溜め部と、前記オイル溜め部と前記オイル供給対象とを接続するオイル供給経路と、前記オイル溜め部のオイルを前記オイル供給経路を介して前記オイル供給対象に送るオイルポンプと、を備え、
前記オイル供給経路には、前記内燃機関の内部に設けられたメインギャラリと、前記オイル溜め部から前記メインギャラリにオイルを導くための上流側供給通路と、前記メインギャラリと前記オイル供給対象とを接続する下流側供給通路と、が含まれているオイル供給装置において、
前記メインギャラリには、内部にいずれも上下方向に延びるように設けられて上部で接続され、それぞれの下端に前記上流側供給通路が接続された第1オイル室及び第2オイル室が形成されるように壁部が設けられ、
前記オイル供給対象は、前記オイルギャラリの上端よりも上方に配置され、
前記下流側供給通路が前記第2オイル室の上部に接続され、
前記第2オイル室の下端には、前記上流側供給通路から前記第2オイル室内へのオイルの流れは許容し、逆方向への流れは阻止する第1逆止弁が設けられ、
前記下流側供給通路には、前記第2オイル室の上端よりも上方、かつ前記オイル供給対象よりも下方の高さに配置されて前記メインギャラリから前記オイル供給対象へのオイルの流れは許容し、逆方向への流れは阻止する第2逆止弁が設けられているオイル供給装置。
【請求項4】
前記オイル供給対象は、油圧を使用して前記内燃機関の吸気弁及び排気弁の少なくともいずれか一方の動弁特性を変更可能な可変動弁機構である請求項1〜3のいずれか一項に記載のオイル供給装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2012−87667(P2012−87667A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234500(P2010−234500)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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