説明

内燃機関のカムシャフト支持構造

【課題】この発明は、内燃機関のカムシャフト支持構造に関し、アッパ軸受けをヘッドカバーに一体化した構造を用いつつ、部品点数の増加を伴うことなくヘッドカバー部の振動および騒音を効率的に抑制することを目的とする。
【解決手段】カムシャフト26、28をシリンダヘッド10側から支持するロア軸受け34を備える。カムシャフト26、28をロア軸受け34とは反対の側から支持するアッパ軸受け32を一体に備えるヘッドカバー30を備える。内燃機関を冷却するための冷却水を供給するための構成として、吸気給水路58、吸気給水溝60、吸気排水路62、カバー側吸気給水溝64、排気給水路66、排気給水溝68、排気排水路70、およびカバー側排気給水溝72を、ヘッドカバー30に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関のカムシャフト支持構造に係り、特に、車両に搭載する内燃機関の内部でカムシャフトを支持する構造として好適なカムシャフト支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1には、アッパ軸受けをヘッドカバーに一体化させたカムシャフトの支持構造が開示されている。上記従来の支持構造は、アッパ軸受けと対をなすロア軸受けを備えている。アッパ軸受けとロア軸受けは、共に半円形状に成型されており、両者が対向した状態に固定されることにより、カムシャフトを支持することができる。
【0003】
【特許文献1】特開平7−166956号公報
【特許文献2】実公平7−29217号公報
【特許文献3】特許第2532277号公報
【特許文献4】特開平1−130043号公報
【特許文献5】実開平6−47609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関のヘッドカバーには、動弁系の各部材の運動(カムシャフトの回転運動やバルブの往復運動など)に伴う振動が伝播する。そのような振動は、ヘッドカバーによって増幅されるとともに、騒音を生じさせる。
【0005】
上記従来のカムシャフト支持構造は、既述したように、アッパ軸受けをヘッドカバーに一体化させている。このため、ヘッドカバーには、アッパ軸受けを介して直に振動が伝達されることになる。従って、上記従来の支持構造が用いられたヘッドカバーは、そのような構造が用いられない一般的なヘッドカバーと比べて、振動や騒音が大きくなり易い。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、アッパ軸受けをヘッドカバーに一体化した構造を用いつつ、ヘッドカバー部の振動および騒音を効率的に抑制し得る内燃機関のカムシャフト支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、内燃機関のシリンダヘッドと、
内燃機関のバルブを駆動するカムを備えるカムシャフトと、
前記カムシャフトを前記シリンダヘッド側から支持するロア軸受けと、
前記カムシャフトを前記ロア軸受けとは反対の側から支持するアッパ軸受けを一体に備えるヘッドカバーと、
前記ヘッドカバーに設けられ、液体を当該ヘッドカバーに供給するための液体通路と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記液体通路は、前記アッパ軸受けに近接して配置されていることを特徴とする。
【0009】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記ヘッドカバーの上に配置された補機を更に備え、
前記液体通路には、前記補機の内部に通された通路が連結されていることを特徴とする。
【0010】
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明の何れかにおいて、前記ヘッドカバーは、前記シリンダヘッドの上に組み付けられた状態でロッカーアームの目視を可能とし、およびまたは、前記カムシャフトが前記アッパ軸受けに保持された状態で前記カムの目視を可能とする目視窓を備え、
前記ヘッドカバーは、前記カムシャフトの軸方向に並んだ複数のアッパ軸受けを備え、
前記アッパ軸受けは、前記カムシャフトのジャーナル部を保持する半円形状部分を有し、
前記ヘッドカバーは、前記複数のアッパ軸受けのうち少なくとも一部のアッパ軸受けを、隣接するアッパ軸受けとの間で、少なくとも前記半円形状部分の最も凸となる部分同士で、連結する連結部を備え、
前記液体通路は、前記連結部に設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、第5の発明は、第1乃至第4の発明の何れかにおいて、前記ヘッドカバーは、マグネシウム、マグネシウム合金、または樹脂複合材で構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、第6の発明は、第1乃至第5の発明の何れかにおいて、前記液体通路は、前記ヘッドカバーの吸気側を通る吸気側液体通路と、前記ヘッドカバーの排気側を通る排気側液体通路とを備え、
前記排気側液体通路は、前記吸気側液体通路に比して通路断面積が大きくなるように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、動弁系の各部材の運動に伴ってヘッドカバーに伝播される振動を、ヘッドカバーに液体を流通させることにより、減衰させることができる。このため、アッパ軸受けをヘッドカバーに一体化した構造を用いたことで、アッパ軸受けに十分に高い剛性を付与しつつ、ヘッドカバー部の振動および騒音を効率的に抑制することのできる内燃機関のカムシャフト支持構造を得ることができる。
【0014】
第2の発明によれば、カムシャフトからアッパ軸受けに伝達される動弁系の振動および騒音を効率的に抑制することができる。
【0015】
第3の発明によれば、ヘッドカバーに搭載される補機の冷却をも行うことができる。
【0016】
第4の発明によれば、ヘッドカバーに目視窓を設けつつ、アッパ軸受けの剛性を効率的に高めることができるとともに、カムシャフトからアッパ軸受けに伝達される動弁系の振動および騒音を効率的に抑制することができる。
【0017】
第5の発明によれば、熱膨脹率の高い材質で構成されたヘッドカバーの膨脹を効率的に抑制することができ、熱膨脹に起因する動弁系のフリクションの増加を防止することができる。
【0018】
第6の発明によれば、排気熱の伝達により吸気側に比して高温となるヘッドカバーの排気側の部位の冷却性能を高めることができる。これにより、ヘッドカバーに生ずる熱膨脹を効率的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
実施の形態1.
[実施の形態1の構造]
(基本構造)
図1は、本発明の実施の形態1のカムシャフト支持構造を説明するための図である。本実施形態の支持構造は、内燃機関のシリンダヘッド10を備えている。シリンダヘッド10は、アルミ或いは鋳鉄により構成されており、吸気ポート12および排気ポート14を備えている。
【0020】
図1に示す内燃機関は、複数の気筒を備える多筒式の機関であり、気筒毎に2つの吸気ポート12および排気ポート14を備えている。図1は、それらのうちの一つが図示されるように内燃機関を切断することで得られる断面図である。図1に示す内燃機関は、紙面に垂直な方向に、直列に配置された状態で、複数の気筒、並びに複数の吸気ポート12および排気ポート14を備えているものとする。
【0021】
図1に示すように、シリンダヘッド10には、吸気ポート12を開閉するための吸気弁16、および排気ポート14を開閉するための排気弁18が組み込まれている。吸気弁16および排気弁18は、何れも、図1において下方向に移動することで開弁状態となる。そして、それらは、何れも、図示しないバルブスプリングによって閉弁方向、つまり、図1における上方向に付勢されている。
【0022】
吸気弁16の上端部は、吸気ロッカーアーム20の一端と接触している。吸気ロッカーアーム20の他端は、ラッシュアジャスタ22の上端に接している。つまり、吸気ロッカーアーム20は、吸気弁16とラッシュアジャスタ22の上に載置された状態となっている。同様に、排気弁18の上端は、排気ロッカーアーム24の一端と接触している。排気ロッカーアーム24の他端は、図示しない排気側のラッシュアジャスタの上に置かれている。つまり、排気ロッカーアーム24は、排気側のラッシュアジャスタと排気弁18の上に載置された状態となっている。
【0023】
図1に示す内燃機関は、吸気弁16を駆動するための吸気カムシャフト26と、排気弁18を駆動するための排気カムシャフト28を備えている。吸気カムシャフト26は、直列に配置されるすべての気筒の上を延在するように設けられており、個々の吸気弁16に対応する吸気カム、より具体的には、個々の吸気弁16の上に載置されている個々の吸気ロッカーアーム20と接触する吸気カム(図示せず)を備えている。同様に、排気カムシャフト28は、個々の排気ロッカーアーム24と接触する排気カム(図示せず)を備えている。
【0024】
シリンダヘッド10の上には、ヘッドカバー30が組み付けられている。ヘッドカバー30は、アルミや鋳鉄に比して軽量なマグネシウムにより構成されている。ヘッドカバー30には、アッパ軸受け32が一体的に設けられている。アッパ軸受け32は、より具体的には、個々の気筒の境界部分に位置するように、ヘッドカバー30において複数設けられている。
【0025】
それぞれのアッパ軸受け32には、ロア軸受け34が組み付けられている。ロア軸受け34は、ヘッドカバー30と同様に(従ってアッパ軸受け32とも同様に)マグネシウムで構成されている。アッパ軸受け32およびロア軸受け34には、互いに対を成す半円形状部分36、38が設けられている。吸気カムシャフト26および排気カムシャフト28のジャーナル部は、それらの半円形状部分36、38の間に、回動可能に保持されている。
【0026】
(ヘッドカバーの構造)
図2は、図1に示すヘッドカバー30の斜視図である。本実施形態の支持構造は、ヘッドカバー30の構造に特徴の一部を有している。ヘッドカバー30は、内燃機関の内部空間を外部空間から隔絶するためのシール部を全周に渡って備えている。すなわち、ヘッドカバー30は、その全周に渡ってフランジ部40を備えている。フランジ部40には、ボルト締結孔42が複数設けられている。ヘッドカバー30は、それらのボルト締結孔42に挿入されるボルト(図示せず)によって、シリンダヘッド10に締結される。フランジ部40には、シール部材が組み込まれている。このため、ヘッドカバー30をシリンダヘッド10に締結すると、フランジ部40とシリンダヘッド10との間に十分なシールを得ることができる。
【0027】
ヘッドカバー30には、吸気目視窓44と、排気目視窓46とが設けられている。吸気目視窓44は、図1に示す吸気カムシャフト26の長手方向に沿って延在するように設けられている。また、排気目視窓46は、図1に示す排気カムシャフト28の長手方向に沿って延在するように設けられている。
【0028】
吸気目視窓44は、ヘッドカバー30がシリンダヘッド10に組み付けられた状態で、吸気目視窓44越しに、吸気ロッカーアーム20(図1参照)および吸気カムシャフト26が具備するすべての吸気カムがそれぞれ目視できるように設けられている。また、排気目視窓46は、ヘッドカバー30がシリンダヘッド10に組み付けられた状態で、排気目視窓46越しに、排気ロッカーアーム24(図1参照)および排気カムシャフト28が具備するすべての排気カムがそれぞれ目視できるように設けられている。
【0029】
また、吸気目視窓44および排気目視窓46は、何れも、アッパ軸受け32の剛性を大きく低下させることのない領域に限って開口されている。すなわち、吸気カムシャフト26には、吸気カムが吸気弁16を押し下げる際に、その反力として、アッパ軸受け32に向かう大きな力が作用する。同様に、排気カムシャフト28には、排気カムが排気弁18を押し下げる際に、その反力として、アッパ軸受け32に向かう大きな力が作用する。
【0030】
アッパ軸受け32に向かうこれらの反力は、主として、半円形状部分36(図1参照)の中央部分、つまり、半円形状部分36のうち、最も上に凸となっている部分の近傍に作用する。そこで、本実施形態のヘッドカバー30は、隣接するアッパ軸受け32が少なくとも半円形状部分36の最も凸となる部分同士で、互いに連結されるようにするための連結部48を備えるようにした。言い換えれば、半円形状部分36の最も凸となる部分同士の間には、吸気目視窓44および排気目視窓46を介入させないようにした。
【0031】
以上説明した目視窓44、46によれば、アッパ軸受け32の剛性を確保しつつ、ヘッドカバー30の組み付け工程において、作業者は、それらの目視窓44、46越しに、ロッカーアーム20、24並びに吸気カムおよび排気カムをそれぞれ目視しながら作業を進めることができる。更に、その作業者は、ヘッドカバー30を乗せる作業が終わった後に、すべてのロッカーアーム20、24並びにすべての吸気カムおよび排気カムがそれぞれ適切な状態にあるか否かを、それらの目視窓44、46を介して、容易に確認することができる。
【0032】
図3は、吸気目視窓カバー50および排気目視窓カバー52の全体形状を示すための図である。ヘッドカバー30は、当該ヘッドカバー30上に組み付けられる吸気目視窓カバー50と、排気目視窓カバー52とを備える。吸気目視窓カバー50は、吸気目視窓44をカバーするための部材である。他方、排気目視窓カバー52は、排気目視窓46をカバーするための部材である。吸気目視窓カバー50および排気目視窓カバー52は、何れも、マグネシウムで構成されている。
【0033】
吸気目視窓カバー50および排気目視窓カバー52は、それぞれ、その全周に渡ってフランジ部54、56を備えている。これらの目視窓カバー50、52は、それぞれのフランジ部54、56を貫通する締結ボルト(図示せず)によって、図1に示すように、ヘッドカバー30に締結される。
【0034】
(本実施形態の特徴部分)
以下、図1および図4を参照して、本実施形態における最も特徴的な部分を説明する。
図4は、ヘッドカバー30を内燃機関の上方から見下ろした図である。内燃機関のシリンダブロック(図示せず)やシリンダヘッド10における所定の部位には、冷却水が供給されている。冷却水は、車両に別途備えられるラジエター(図示せず)によって冷却されるものである。本実施形態のヘッドカバー30は、そのような用途で内燃機関に備えられた冷却水を、当該ヘッドカバー30に流通させるための構成を備えている。
【0035】
具体的には、図4に示すように、吸気側の第1気筒(#1気筒)のアッパ軸受け32の近傍には、シリンダヘッド10から冷却水を導くための吸気給水路58がヘッドカバー30を貫通して形成されている。また、ヘッドカバー30の頂面には、吸気給水路58と交差して吸気給水溝60が形成されている。吸気給水溝60は、ヘッドカバー30と吸気目視窓カバー50との合わせ面に、吸気カムシャフト26と平行して、すべての気筒の上を延在するように設けられている。言い換えれば、吸気給水溝60は、カムシャフト26、28のジャーナル部を保持するために各気筒に設けられたアッパ軸受け32に近接して配置されている。更に付け加えると、吸気給水溝60は、アッパ軸受け32の近傍の部位の剛性を確保するための上記連結部48に設けられている。
【0036】
また、吸気給水溝60の#4気筒側の端部には、冷却水をシリンダヘッド10に戻すための吸気排水路62がヘッドカバー30を貫通して形成されている。吸気給水路58、吸気給水溝60、および吸気排水路62の上には、吸気目視窓44のフランジ部54が位置する。そのフランジ部54には、ヘッドカバー30の吸気給水溝60に対応するカバー側吸気給水溝64が形成されている(図1参照)。以上の構成によれば、ヘッドカバー30における吸気側のアッパ軸受け32の周辺に冷却水を供給することができる。
【0037】
図4に示すように、排気側のヘッドカバー30に冷却水を流通させるための構成として、ヘッドカバー30には、排気給水路66、排気給水溝68、および排気排水路70がそれぞれ設けられ、また、排気目視窓カバー52には、カバー側排気給水溝72が設けられている。それらの各構成要素の詳細な構成は、上述した吸気側と同様であるため、ここではその詳細な説明を省略するものとする。
【0038】
[実施の形態1の効果]
内燃機関のヘッドカバーには、一般的に、動弁系の各部材の運動(カムシャフトの回転運動やバルブの往復運動など)に伴う振動が伝播する。そのような振動は、ヘッドカバーによって増幅されるとともに、騒音を生じさせる。そして、本実施形態のようにアッパ軸受けをヘッドカバーに一体化させている場合には、更に、ヘッドカバーには、アッパ軸受けを介して直に振動が伝達されることになる。従って、アッパ軸受けを一体化した構造が用いられたヘッドカバーは、そのような構造が用いられない一般的なヘッドカバーと比べて、振動や騒音が大きくなり易い。
【0039】
本実施形態のヘッドカバー30は、上述したように、カムシャフト26、28からの入力を直に受けるアッパ軸受け32の周辺に、冷却水を供給するための構成を備えている。このため、アッパ軸受け32をヘッドカバー30に一体化した構造を用いたことで、アッパ軸受けに十分に高い剛性を付与しつつ、アッパ軸受け32に生ずる振動を冷却水によって効率的に減衰させることができ、これにより、ヘッドカバー30からの騒音の発生を効率的に低減することができる。更に、ヘッドカバーは、軽量化の要求から極力薄肉となるように形成されるものである。このため、上記連結部48についても同様の要求を受ける。薄肉であると、振動を伝播し易くなる。本実施形態の構成によれば、アッパ軸受け32に近く、かつ薄肉に形成される連結部48において、冷却水の流通によって振動を効率的に減衰させることができる。
【0040】
そして、上記の構成によれば、そのような振動および騒音の抑制効果を、ヘッドカバー30に冷却水を供給するための別体の給水パイプなどを必要とすることなく、実現することができる。すなわち、コスト増や重量増を抑制しつつ、また、組み付け性や人目に触れるヘッドカバー30の見栄えを悪化させることなく、ヘッドカバー部の振動および騒音を効率的に抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態の構成によれば、冷却水をヘッドカバー30に供給することによって、ヘッドカバー30の冷却を行うことができる。ヘッドカバー30には、内燃機関の排気熱がシリンダヘッド10から伝達する。上記のように、ヘッドカバー30の材質は、マグネシウムである。マグネシウムは、シリンダヘッド10に用いられるアルミや鉄に比して熱膨脹率が高い。また、カムシャフト26、28も鉄製である。本実施形態の構成によれば、カムシャフト26、28等の周辺部品に比して熱膨脹率の大きなヘッドカバー30の膨張を防ぐことができ、周辺部品との寸法変化に起因する動弁系のフリクションの増加を防止することができる。
【0042】
また、仮に、排気熱の伝熱によるヘッドカバー30の塑性変形(高温クリープ現象)が、例えば、ヘッドカバー30におけるロア軸受け34の締結部に生ずると、締結ボルトの軸力の低下を招き、内燃機関の信頼性が低下してしまう。これに対し、本実施形態の構成によれば、冷却水によってヘッドカバー30を冷却することで、そのような弊害をも回避することができる。
【0043】
ところで、上述した実施の形態1においては、ヘッドカバー30および目視窓カバー50、52の双方に設けた給水溝60等によって、ヘッドカバー30に冷却水を供給するための通路を形成するようにしているが、このような溝に限らず、例えば、カムシャフト26、28と平行して、すべての気筒の上を延在するようにした給水用の管路をアッパ軸受け32の近くに設けるようにしてもよい。
【0044】
また、上述した実施の形態1においては、ヘッドカバー30、ロア軸受け34、および目視窓カバー50、52をマグネシウムで構成することとしているが、それらの材質は、マグネシウムに限定されるものではない。すなわち、それらは、アルミや鋳鉄に比して軽量なマグネシウム合金や樹脂複合材により構成することとしてもよい。更には、それらは、シリンダヘッド10と同様に、アルミや鋳鉄で構成することとしてもよい。
【0045】
尚、上述した実施の形態1においては、吸気給水路58、吸気給水溝60、吸気排水路62、カバー側吸気給水溝64、排気給水路66、排気給水溝68、排気排水路70、およびカバー側排気給水溝72が前記第1の発明における「液体通路」に相当している。
【0046】
実施の形態2.
次に、図5を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。
本実施形態のカムシャフト支持構造は、基本的に上述した実施の形態1の支持構造と同様に構成されている。図5は、本発明の実施の形態2のカムシャフト支持構造における特徴部分を説明するための図であり、ヘッドカバー80を内燃機関の側方から見た図である。以下、図5において、図1および図2に示す構成要素と同一の要素については、同一の参照符号を用いて、その詳細な説明を省略または簡略する。
【0047】
図5に示すように、本実施形態のヘッドカバー80の上には、内燃機関の補機82が搭載されることがある。この補機82は、ここでは、稼動時に発熱が生ずるものであるものとし、具体的にはモータであるものとする。また、補機82は、説明の便宜上、吸気側のアッパ軸受け32の上方に配置されているものとする。そして、補機82の設けられていない部位においては、図5に示すように、目視窓カバー84が設けられているものとする。
【0048】
本実施形態においても、上述した実施の形態1と同様に、ヘッドカバー80に冷却水を供給するようにしている。そして更に、本実施形態では、ヘッドカバー80に供給された冷却水を、冷却を目的として補機82にも導くようにしたことを特徴としている。より具体的には、図5に示すように、ヘッドカバー80には、シリンダヘッド10からヘッドカバー80に冷却水を供給する吸気給水路86と、ヘッドカバー80からシリンダヘッド10に冷却水を戻すための吸気排水路88とが設けられている。そして、ヘッドカバー80における吸気側のアッパ軸受け32の周辺部には、吸気給水路86と吸気排水路88とを結ぶように、吸気カムシャフト26と平行に、吸気給水管90が形成されている。吸気給水管90は、ヘッドカバー80の内部に管路として形成されており、また、吸気給水管90には、補機82の内部を通る補機給水管92が連結されている。
【0049】
以上説明した本実施形態の構成によれば、アッパ軸受け32をヘッドカバー80に一体化した構造を用いつつ、部品点数の増加を伴うことなく、ヘッドカバー部の振動および騒音を効率的に抑制することができるとともに、ヘッドカバー80に搭載された補機82の冷却をも行うことができる。
【0050】
尚、上述した実施の形態2においては、補機給水管92が前記第3の発明における「前記補機の内部に通された通路」に相当している。
【0051】
実施の形態3.
次に、図6を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。
本実施形態のカムシャフト支持構造は、基本的に上述した実施の形態1の支持構造と同様に構成されている。図6は、本発明の実施の形態3のカムシャフト支持構造における特徴部分を説明するための図であり、ヘッドカバー100を内燃機関の上方から見下ろした図である。以下、図6において、図1および図2に示す構成要素と同一の要素については、同一の参照符号を用いて、その詳細な説明を省略または簡略する。
【0052】
図6に示すように、本実施形態のヘッドカバー100では、排気側のアッパ軸受け32に冷却水を供給するための通路(排気給水路102、排気給水溝104、排気排水路106、およびカバー側排気給水溝108)の通路径(通路断面積)が、吸気側のアッパ軸受け32に冷却水を供給するための通路(吸気給水路58、吸気給水溝60、吸気排水路62、およびカバー側吸気給水溝64)の通路径に比して大きく形成されている点に特徴を有している。
【0053】
排気側は、シリンダヘッド10からの排気熱の伝達を直接的に受けるため、吸気側に比して高温になり易い。その結果として、ヘッドカバー100とシリンダヘッド10との間に用いられるシール剤自体の性能低下や、ヘッドカバー100とシリンダヘッド10との材質が異なるために生ずる熱膨脹差に起因する両者の相対的な変位量が大きくなることで、両者間のシール性能の低下が考えられる。
【0054】
以上説明した本実施形態の構成によれば、ヘッドカバー100における排気側の部位には、吸気側に比して多量の冷却水が供給される。このため、上記のような問題の発生を未然に回避することができる。また、以上のように、吸気側と排気側とで冷却水の通路径を異ならせる手法は、マグネシウムや樹脂複合材などが用いられる本実施形態のヘッドカバー100のように、シリンダヘッド10に比して熱膨張率の高いヘッドカバー100を用いた場合に、特に効果的である。
【0055】
尚、上述した実施の形態3においては、吸気給水路58、吸気給水溝60、吸気排水路62、およびカバー側吸気給水溝64が前記第6の発明における「吸気側液体通路」に、排気給水路102、排気給水溝104、排気排水路106、およびカバー側排気給水溝108が前記第6の発明における「排気側液体通路」に、それぞれ相当している。
【0056】
ところで、上述した実施の形態1乃至3においては、内燃機関を冷却するための冷却水をヘッドカバー30に導くようにしているが、本発明において、内燃機関に、冷却や潤滑等の他の用途で搭載される液体であってヘッドカバー30等に供給される液体は、内燃機関の冷却水に限らず、例えば、内燃機関を潤滑するためのオイルであってもよい。ヘッドカバー30等に供給する液体を、内燃機関に他の用途で搭載されるそのような液体とすることにより、部品点数の増加を伴うことなく、ヘッドカバー30等の振動および騒音を効率的に抑制することが可能となる。
【0057】
また、上述した実施の形態1乃至3においては、ヘッドカバー30等の頂面に冷却水などの液体を供給するための構成を備えるようにしているが、これに限らず、ヘッドカバー30等の側面にそのような液体を供給するような構成を備えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態1のカムシャフト支持構造を説明するための図である。
【図2】図1に示すヘッドカバーの斜視図である。
【図3】吸気目視窓カバーおよび排気目視窓カバーの全体形状を示すための図である。
【図4】ヘッドカバーを内燃機関の上方から見下ろした図である。
【図5】本発明の実施の形態2のカムシャフト支持構造における特徴部分を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態3のカムシャフト支持構造における特徴部分を説明するための図である。
【符号の説明】
【0059】
10 シリンダヘッド
16 吸気弁
18 排気弁
20 吸気ロッカーアーム
24 排気ロッカーアーム
26 吸気カムシャフト
28 排気カムシャフト
30、80、100 ヘッドカバー
32 アッパ軸受け
34 ロア軸受け
36、38 半円形状部分
44 吸気目視窓
46 排気目視窓
48 連結部
50、84 吸気目視窓カバー
52 排気目視窓カバー
54、56 目視窓カバーのフランジ部
58、86 吸気給水路
60 吸気給水溝
62、88 吸気排水路
64 カバー側吸気給水溝
66、102 排気給水路
68、104 排気給水溝
70、106 排気排水路
72、108 カバー側排気給水溝
82 補機
90 吸気給水管
92 補機給水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のシリンダヘッドと、
内燃機関のバルブを駆動するカムを備えるカムシャフトと、
前記カムシャフトを前記シリンダヘッド側から支持するロア軸受けと、
前記カムシャフトを前記ロア軸受けとは反対の側から支持するアッパ軸受けを一体に備えるヘッドカバーと、
前記ヘッドカバーに設けられ、液体を当該ヘッドカバーに供給するための液体通路と、
を備えることを特徴とする内燃機関のカムシャフト支持構造。
【請求項2】
前記液体通路は、前記アッパ軸受けに近接して配置されていることを特徴とする請求項1記載の内燃機関のカムシャフト支持構造。
【請求項3】
前記ヘッドカバーの上に配置された補機を更に備え、
前記液体通路には、前記補機の内部に通された通路が連結されていることを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関のカムシャフト支持構造。
【請求項4】
前記ヘッドカバーは、前記シリンダヘッドの上に組み付けられた状態でロッカーアームの目視を可能とし、およびまたは、前記カムシャフトが前記アッパ軸受けに保持された状態で前記カムの目視を可能とする目視窓を備え、
前記ヘッドカバーは、前記カムシャフトの軸方向に並んだ複数のアッパ軸受けを備え、
前記アッパ軸受けは、前記カムシャフトのジャーナル部を保持する半円形状部分を有し、
前記ヘッドカバーは、前記複数のアッパ軸受けのうち少なくとも一部のアッパ軸受けを、隣接するアッパ軸受けとの間で、少なくとも前記半円形状部分の最も凸となる部分同士で、連結する連結部を備え、
前記液体通路は、前記連結部に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の内燃機関のカムシャフト支持構造。
【請求項5】
前記ヘッドカバーは、マグネシウム、マグネシウム合金、または樹脂複合材で構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の内燃機関のカムシャフト支持構造。
【請求項6】
前記液体通路は、前記ヘッドカバーの吸気側を通る吸気側液体通路と、前記ヘッドカバーの排気側を通る排気側液体通路とを備え、
前記排気側液体通路は、前記吸気側液体通路に比して通路断面積が大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の内燃機関のカムシャフト支持構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−57406(P2008−57406A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234445(P2006−234445)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】