説明

内燃機関の制御装置

【課題】 層状希薄燃焼運転が可能なスプレーガイド直噴エンジンの回転変動を容易に抑制することができるようにする。
【解決手段】 燃料噴射装置により点火プラグに指向して噴射された燃料が層状希薄状態で点火プラグ近傍に存在する状態で点火プラグを点火することで層状希薄燃焼運転が可能な筒内噴射型の内燃機関を制御する内燃機関の制御装置において、内燃機関の回転変動を検出する回転変動検出手段22と、層状希薄燃焼運転中に、回転変動検出手段22によって検出された回転変動に応じて燃料噴射装置の目標燃料噴射時期と点火プラグの目標点火時期とを同時に等しく変更する燃料噴射・点火時期制御手段23とをそなえて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、層状希薄燃焼運転が可能な筒内噴射型のガソリンエンジンが実用化されている。このような筒内噴射型のガソリンエンジンでは、一般にピストン上面に凹部を形成し、ピストンが上死点付近に位置する際に、ピストン上面の凹部へ向けて燃料を噴射できるようにインジェクタが配設され、また、ピストン上面の凹部内に点火プラグの先端が位置するように点火プラグが配設されている。
【0003】
これにより、燃焼室内へ噴射された燃料は、点火プラグ回りにおいては空燃比が比較的リッチとなり、点火プラグから離れた箇所においては超リーンの雰囲気を形成することで、燃焼室内に層状希薄状態を形成し、この状態で点火プラグが点火することで、燃焼室全体としてはリーンな空燃比であっても安定して運転できるようになっている。
一方、上述の一般的な筒内噴射型のエンジンとは別に、スプレーガイド方式と呼ばれる筒内噴射型ガソリンエンジン(以下、「スプレーガイド直噴エンジン」という)も開発されている。
【0004】
このスプレーガイド直噴エンジンは、燃焼室の上面に設けられた点火プラグへ向けて燃料を直接的に噴射することで、燃焼室内に層状希薄状態を形成することができる筒内噴射型のガソリンエンジンであって、例えば、以下の特許文献1においてその技術が開示されている。
【特許文献1】特開平10−54246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スプレーガイド直噴エンジンは、上述のように、一般的なポート噴射型のエンジンや一般的な筒内噴射型エンジンとは技術思想が大きく異なっているため、これらの従来型のエンジンと同様の制御を実行したとしても、スプレーガイド直噴エンジンの回転変動を抑制し、安定した状態で運転することは困難である。
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、層状希薄燃焼運転が可能なスプレーガイド直噴エンジンの回転変動を容易に抑制することができる、内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の内燃機関の制御装置(請求項1)は、燃料噴射装置から点火プラグに指向して噴射された燃料に直接点火することで層状希薄燃焼運転が可能な筒内噴射型の内燃機関を制御する内燃機関の制御装置において、該内燃機関の回転変動を検出する回転変動検出手段と、該層状希薄燃焼運転中に、該回転変動検出手段によって検出された回転変動に応じて該燃料噴射装置の目標燃料噴射時期と該点火プラグの目標点火時期とを同時に等しく変更する燃料噴射・点火時期制御手段とを備えて構成されていることを特徴としている。
【0007】
また、請求項2記載の本発明の内燃機関の制御装置は、請求項1記載の内容において、該燃料噴射・点火時期制御手段は、基準となる燃料噴射時期である基準燃料噴射時期と、基準となる点火時期である基準点火時期とを算出し、該回転変動検出手段によって回転変動が検出されていない場合には、該基準燃料噴射時期および該基準点火時期に従って該燃料噴射装置および該点火プラグをそれぞれ制御するとともに、該回転変動検出手段により回転変動が検出された場合には、該基準燃料噴射時期および該基準点火時期からそれぞれ等しく進角して該目標燃料噴射時期および該目標点火時期とし、該進角後の目標燃料噴射時期および該進角後の目標点火時期に従って概念量噴射装置および該点火プラグをそれぞれ制御することを特徴としている。
【0008】
また、請求項3記載の本発明の内燃機関の制御装置は、請求項1記載の内容において、該燃料噴射・点火時期制御手段は、基準となる燃料噴射時期である基準燃料噴射時期と、基準となる点火時期である基準点火時期とを算出するとともに、該基準燃料噴射時期および該基準点火時期に対し、該回転変動検出手段によって検出された回転変動に応じて、等しく補正を行なうことで該目標燃料時期および該目標点火時期を得る補正手段とをそなえ、該燃料噴射・点火時期制御手段は、該回転変動検出手段によって回転変動が検出されていない場合には、該基準燃料噴射時期および該基準点火時期に従って該燃料噴射装置および該点火プラグを制御するとともに、該回転変動検出手段により回転変動が検出された場合には、該補正手段により得られた該補正後の目標燃料噴射時期および該補正後の目標点火時期に従って該燃料噴射装置および該点火プラグをそれぞれ制御することを特徴としている。
【0009】
また、請求項4記載の本発明の内燃機関の制御装置は、請求項1記載の内容において、該燃料噴射・点火時期制御手段は、該回転変動検出手段により検出された回転変動が進角所定値以上の場合には該目標噴射時期および該目標点火時期を等しく進角側に補正し、該回転変動検出手段により検出された回転変動が遅角所定値以下の場合には該目標噴射時期および該目標点火時期を等しく遅角側に補正して、該燃料噴射装置および該点火プラグをそれぞれ制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の内燃機関の制御装置によれば、燃料噴射装置の目標燃料噴射時期と点火プラグの目標点火時期とを同時に等しく変更することで、燃料噴射装置から点火プラグに指向して噴射された燃料が層状希薄状態で点火プラグ近傍に存在する状態で点火プラグを点火することで層状希薄燃焼運転が可能な筒内噴射型の内燃機関(いわゆる、スプレーガイド直噴エンジン)の回転変動を容易に抑制することができる。(請求項1)
また、スプレーガイド直噴エンジンに回転変動が生じていない場合には、基準燃料噴射時期および基準点火時期に従って燃料噴射装置および点火プラグを制御することで制御の簡略化を図ることができる。一方、スプレーガイド直噴エンジンに回転変動が生じた場合には、基準燃料噴射時期および基準点火時期からそれぞれ等しく進角することで得られた目標燃料噴射時期および目標点火時期に従って燃料噴射装置および点火プラグを制御することで、確実にスプレーガイド直噴エンジンの回転変動を抑制することができる。(請求項2)
また、スプレーガイド直噴エンジンに回転変動が生じていない場合には、基準燃料噴射時期および基準点火時期に従って燃料噴射装置および点火プラグを制御することで制御の簡略化を図ることができる。一方、スプレーガイド直噴エンジンに回転変動が生じた場合には、基準燃料噴射時期および基準点火時期に対して等しく補正することで得られた目標燃料噴射時期および目標点火時期に従って燃料噴射装置および点火プラグを制御することで、素早く回転変動を抑制することができる。(請求項3)
また、スプレーガイド直噴エンジンの回転変動に応じて目標燃料噴射時期および目標点火時期を等しく進角側または遅角側に補正することで、回転変動の抑制と燃費悪化の抑制をすることができる。(請求項4)
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面により、第1実施形態に係る内燃機関の制御装置について説明すると、図1はスプレーガイド直噴エンジンの要部構成を示す模式的な断面図、図2はその全体構成を示す模式的なブロック図、図3はその作用を示す模式的なフローチャート、図4は点火時期と燃料噴射時期とに基づくスプレーガイド直噴エンジンの回転安定性を示すグラフである。
【0012】
図1に示すように、スプレーガイド方式の筒内噴射型ガソリンエンジン(以下、「スプレーガイド直噴エンジン」あるいは「内燃機関」という)10には燃焼室11が形成され、燃焼室11の上方には吸気ポート12を開閉する吸気バルブ13と排気ポート14を開閉する排気バルブ15とがそれぞれ設けられるとともに、吸気ポート12と排気ポート14との間には燃焼室11へ突出するように点火プラグ16が設けられている。
【0013】
また、この燃焼室11内の上側方には、点火プラグ16の下端16aへ指向してガソリンを噴射するインジェクタ17がそなえられ、点火プラグ16回りにストイキに近似した雰囲気を形成するとともに点火プラグ16から離れた箇所においてはリーンの雰囲気を形成することで、燃焼室11内に層状希薄状態を形成することができるようになっている。
そして、このスプレーガイド直噴エンジン10には、図2に示すように、その運転を制御する電子制御ユニット(ECU)20が設けられている。また、このECU20は、図示しないCPU、メモリ、インターフェースなどがそなえられるとともに、ソフトウェアとして、目標Pe検出部21と、回転変動検出部(回転変動検出手段)22と、燃料噴射・点火時期制御部(燃料噴射・点火時期制御手段)23とが備えられている。
【0014】
このうち、目標Pe算出部21は、アクセルペダルポジションセンサ24によって検出されたアクセルペダルの踏み込み量Accと、エンジン回転数センサ25によって検出されたエンジン回転数Neとに基づいてスプレーガイド直噴エンジン10の目標筒内圧Peを算出するものである。そして、算出された目標筒内圧Peは、噴射・点火時期制御部23に伝達されるようになっている。
【0015】
また、回転変動検出部22は、エンジン回転数センサ25から出力されるエンジン回転数Neをモニタし、エンジン回転数Neの変動量ΔNeが所定の閾値を超えているか否かを判断することでスプレーガイド直噴エンジン10に回転変動が生じているか否かを判断するものである。なお、スプレーガイド直噴エンジン10は、一般的なポート噴射型のエンジンや一般的な筒内噴射型のエンジンに比べ、回転数の変動量ΔNeと点火時期および燃料噴射時期との相関性が強いという特性を有している。この点については後述する。
【0016】
燃料噴射・点火時期制御部23は、インジェクタ17によって燃料が噴射される目標時期(目標燃料噴射時期)と点火プラグ16によって点火される目標時期(目標点火時期)とを設定し、設定された目標燃料噴射時期に従ってインジェクタ17を制御するとともに、設定された目標点火時期に従って点火プラグ16を制御するようになっている。
また、スプレーガイド直噴エンジン10が層状希薄燃焼運転をしており且つスプレーガイド直噴エンジン10に回転変動が生じていない場合、即ち、回転変動検出部22によって検出された回転変動ΔNeが許容値以内(進角所定値以下)である場合、この燃料噴射・点火時期制御部23は、目標Pe算出部21によって算出された目標Peとエンジン回転数センサ25によって検出されたエンジン回転数Neとを図示しないメモリに記憶された基準マップに対して適用することで、スプレーガイド直噴エンジン10が層状希薄燃焼運転している場合に基準となる燃料噴射時期(基準燃料噴射時期)と、基準となる点火時期(基準点火時期)とを得ることができるようになっている。
【0017】
そして、ここで得られた基準燃料噴射時期を目標燃料噴射時期として設定することで、基準燃料噴射時期に従ってインジェクタ17を制御するとともに、得られた基準点火時期を目標点火時期として設定することで、基準点火時期に従って点火プラグ16制御するようになっている。なお、上記の基準燃料噴射時期および基準点火時期を「マッチング点」という。
【0018】
一方、スプレーガイド直噴エンジン10が層状希薄燃焼運転中であり且つ回転変動検出部22によりスプレーガイド直噴エンジン10に回転変動が生じていると判定された場合、燃料噴射・点火時期制御部23は、基準燃料噴射時期から5度進角させた位相角を目標燃料噴射時期とし、また、基準点火時期から5度進角させた位相角を目標点火時期とするようになっている。なお、この目標点火時期と目標燃料噴射時期との進角制御は、単位時間(例えば、0.1秒)毎に繰り返し実行されるようになっており、例えば、基準燃料噴射時期および基準点火時期から目標燃料噴射時期および目標点火時期をそれぞれ5度進角させても、依然、回転変動検出部22がスプレーガイド直噴エンジン10に回転変動が生じている旨の判定を行なっている場合には、目標燃料噴射時期と目標点火時期とをさらに5度ずつ進角させて回転変動を抑制するようになっている。なお、ここで、「進角」、「遅角」という表現はエンジンのクランク軸の角度を基準としたものであるが、実質的には時間と同義である。
【0019】
つまり、目標燃料噴射時期や目標点火時期を進角させることによって、インジェクタ17によって実際に燃料が噴射される時期および点火プラグ16によって実際に点火される時期を早くすることが可能となり、一方、目標燃料噴射時期や目標点火時期を遅角させることによって、インジェクタ17によって実際に燃料が噴射される時期および点火プラグ16によって実際に点火される時期を遅くすることができるようになっている。
【0020】
そして、この燃料噴射・点火時期制御部23は、スプレーガイド直噴エンジン10の回転変動が抑制された(即ち、回転変動量ΔNeが遅角所定値以下となった)ことが回転変動検出部22によって認められた場合には、目標点火時期および目標燃料噴射時期を1段階遅くする(即ち、5度遅角させる)ようになっており、これにより、スプレーガイド直噴エンジン10における回転変動の発生を防止しながら極力燃費を向上することができるようになっている。
【0021】
本実施形態に係る内燃機関の制御装置は上述のように構成されているので、以下のような作用および効果を奏する。
スプレーガイド直噴エンジン10が層状希薄燃焼運転している場合には、図3のステップS11において、燃料噴射・点火時期制御部23が、目標Pe算出部21によって算出された目標Peとエンジン回転数25センサによって検出されたエンジン回転数Neとを図示しないメモリに記憶された基準マップに対して適用することでマッチング点を得て、ここで得られたマッチング点を目標燃料噴射時期および目標点火時期として設定し、この目標燃料噴射時期および目標点火時期に従ってインジェクタ17および点火プラグ16を制御する。
【0022】
そして、回転変動検出部22が、エンジン回転数センサ25によって検出された回転変動量ΔNeと所定の許容値とを比較し、変動量ΔNeが進角所定値以下であればリターンし(ステップS12のYesルート)、変動量ΔNeが進角所定値を超えていればスプレーガイド直噴エンジン10に回転変動が生じていると判定してステップS13へ進む(ステップS12のNoルート)。
【0023】
そして、ステップS13において、燃料噴射・点火時期制御部23が、基準点火時期および基準燃料噴射時期からそれぞれ同時に5度進角させた時期(位相)を新たな目標燃料噴射時期および目標点火時期として設定し、この新たな目標燃料噴射時期および目標点火時期に従ってインジェクタ17および点火プラグ16を制御する。
その後、スプレーガイド直噴エンジン10の回転変動量ΔNeが進角所定値以下(許容内)になったとの判定が回転変動検出部22によってなされるまで、ステップS13に示す目標点火時期および目標燃料噴射時期を5度ずつ進角させる制御が続けられる(ステップS14a)。
【0024】
一方、スプレーガイド直噴エンジン10の回転変動量ΔNeが遅角所定値以下になると(ステップS14b)、燃料噴射・点火時期制御部23は、点火時期および燃料噴射時期を現在の点火時期および燃料噴射時期からそれぞれ同時に5度遅角させ、できる限り燃費を向上させるように制御する。(ステップS15)。
その後、ステップS16において、噴射時期および点火時期が遅角されたことにより回転変動検出部22によりスプレーガイド直噴エンジン10に発生する回転変動量ΔNeが遅角所定値を超えていると、ステップS14aに戻り、一方、回転変動検出部22によりスプレーガイド直噴エンジン10に発生する回転変動が遅角所定値以下であると判断されると、燃料噴射・点火時期制御部23はマッチング点に従ってインジェクタ17および点火プラグ16を制御する(ステップS16のYesルートからリターンしたステップS11)。
【0025】
なお、本実施形態においては、遅角所定値が進角所定値より小さい値に設定され、遅角所定値<変動量ΔNe<進角所定値という条件が成立する場合には、進角および遅角の補正を行わないようにしてハンチング等が生じないようになっているが、遅角所定値=進角所定値としてもよい。
ここで、点火時期および燃料噴射時期とスプレーガイド直噴エンジン10のエンジン回転数Neの変動量ΔNeとの関係について、図4のグラフを用いて説明する。
【0026】
アクセルペダル開度Accが同一であり、且つ、走行条件や積載重量など、エンジン負荷が一定であればエンジンの回転数Neの変動は理論上生じないはずであるが、実際にはエンジン回転数Neは微妙に変動しており、また、この変動量ΔNeは点火時期と燃料噴射時期とに相関している。なお、この点は、スプレーガイド直噴エンジン10であっても、ポート噴射型などの一般的なエンジンであっても同様である。
【0027】
しかしながら、スプレーガイド直噴エンジン10の場合は、その相関性が一般的なポート噴射型のエンジンなどよりも強く、図4のグラフ中符号Aで示す楕円形の領域に示されるように、スプレーガイド直噴エンジン10の回転数Neが比較的安定する点火時期と燃料噴射時期との関係は略1対1となるのである。これは、スプレーガイド直噴エンジン10が、燃料であるガソリンを点火プラグ16に対して直接的に噴霧し、噴霧された燃料に対して着火するようになっているためである。
【0028】
また、図4中符号Pで示す箇所は、基準となる点火時期(基準点火時期)および基準となる燃料噴射時期(基準燃料噴射時期)、即ち、上述のマッチング点である。そして、このマッチング点から、点火時期および燃料噴射時期を同時に且つ同一の割合で進角させると、燃費が低減するもののスプレーガイド直噴エンジン10の回転変動量ΔNeが抑制されて回転安定性が向上する。
【0029】
一方、点火時期および燃料噴射時期を同時に且つ同一の割合で遅角させることにより、スプレーガイド直噴エンジン10の回転変動量ΔNeが増大して安定性が低下するものの、燃費を向上させることができる。
つまり、スプレーガイド直噴エンジン10の点火時期と燃料噴射時期とをそれぞれ個別に制御するのではなく、点火時期と燃料噴射時期とを同時に且つ同位相早くしたり遅くしたり(即ち、等しく進角させたり遅角させたり)することで、エンジンの回転変動量ΔNeを抑制しながら、燃費の低減を極力抑制することができるのである。
【0030】
上述のように、本実施形態に係る内燃機関の制御装置によれば、インジェクタ17の目標燃料噴射時期と点火プラグ16の目標点火時期とを同時に等しく変更することで、層状希薄燃焼運転が可能なスプレーガイド直噴エンジン10の回転変動を容易に抑制することができる。
また、スプレーガイド直噴エンジン10が層状希薄燃焼運転をしている場合には、原則的に、基準燃料噴射時期および基準点火時期となるように燃料噴射時期および点火時期を制御することで、燃費の向上に寄与することができる。
【0031】
また、スプレーガイド直噴エンジン10が層状希薄燃焼運転中であり且つ回転変動が生じた場合には、基準燃料噴射時期および基準点火時期から、それぞれ同一の所定角(ここでは5度)ずつ目標燃料噴射時期および目標点火時期を進角させることで、燃費の低下を極力抑制しながら確実にスプレーガイド直噴エンジン10の回転変動を抑制することができる。
【0032】
次に、図面により、第2実施形態に係る内燃機関の制御装置について説明すると、図5はその全体構成を示すブロック図、図6はその作用を示す模式的なフローチャートである。なお、上述の第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。また、上述の第1実施形態を説明するのに用いた図も併せて用い、第1実施形態との相違点に重点を置いて説明する。
【0033】
本実施形態におけるECU30は、図5に示すように、目標Pe算出部21と、回転変動検出部22と、補正量算出部33をそなえた燃料噴射・点火時期制御部31とから構成されている。つまり、図2を用いて説明した第1実施形態のECU20と異なるのは、回転変動検出部32および燃料噴射・点火時期制御部31が補正量算出部33を有している点である。
【0034】
このうち、回転変動検出部32は、上述した第1実施形態における回転変動検出部22と同様に、エンジン回転数センサ25から出力されるエンジン回転数Neをモニタし、エンジン回転数Neの変動量ΔNeが所定の閾値を超えているか否かを判断することでスプレーガイド直噴エンジン10に回転変動が生じているか否かを判断するようになっている。
【0035】
そして、本実施形態におけるこの回転変動検出部32は、スプレーガイド直噴エンジン10に回転変動が生じている場合には、エンジン回転数Neの変動量ΔNeを点火・燃料噴射時期制御部31に送信するようになっている。
また、補正量算出部33は、基準燃料噴射時期および基準点火時期から、燃料噴射時期および点火時期をそれぞれ同位相で進角させるように設定された補正マップ(図示略)をそなえている。なお、この補正マップのマップ値は、スプレーガイド直噴エンジン10の回転変動量ΔNeに応じて設定されている。
【0036】
そして、回転変動検出部32によって検出されたエンジン回転変動量ΔNeをこの補正マップに適用することによって、基本点火時期および基本燃料噴射時期に対する補正値を得られるようになっている。なお、この補正値は、具体的には、基本点火時期および基本燃料噴射時期に対する遅角または進角を示す位相である。
そして、燃料噴射・点火時期制御部31は、スプレーガイド直噴エンジン10が層状希薄燃焼運転している場合には、原則的に基準燃料噴射時期および基準点火時期(即ち、マッチング点)となるように燃料噴射時期および点火時期を制御し、一方、スプレーガイド直噴エンジン10が層状希薄燃焼運転中であり且つ回転変動検出部により回転変動が検出された場合には、補正マップによって得られた補正値を用いて目標燃料噴射時期および目標点火時期を補正するようになっている。
【0037】
本実施形態に係る内燃機関の制御装置は上述のように構成されているので、以下のような作用および効果を奏する。
まず、スプレーガイド直噴エンジン10が層状希薄燃焼運転している場合には、図6に示すように、燃料噴射・点火時期制御部31が、目標Pe算出部21によって算出された目標Peとエンジン回転数センサ25によって検出されたエンジン回転数Neとを図示しないメモリに記憶された基準マップに対して適用することでマッチング点を得て、ここで得られたマッチング点を目標燃料噴射時期および目標点火時期として設定し、この目標燃料噴射時期および目標点火時期に従ってインジェクタ17および点火プラグ16を制御する(ステップS21)。
【0038】
そして、回転変動検出部22が、エンジン回転数センサ25によって検出されたエンジン回転数Neの変動量ΔNeと所定の許容値とを比較し、許容値以下(許容内)であればリターンし(ステップS22のYesルート)、エンジン回転数Neの変動量ΔNeが許容値を超えていれば回転変動が生じていると判断してステップS23へ進む(ステップS22のNoルート)。
【0039】
そして、ステップS23において、燃料噴射・点火時期制御部31の補正量算出部33が、回転変動検出部32によって検出された回転変動量ΔNeに基づき、基準点火時期および基準燃料噴射時期に対する位相角(補正値)を補正マップから得る。
そして、ステップS24において、基準燃料噴射時期および基準点火時期に対してステップS23において得られた位相角を加味することで得られた目標燃料噴射時期および目標点火時期となるように、点火プラグ16の点火時期とインジェクタ17の燃料噴射時期を制御してリターンする。
【0040】
このように、本実施形態に係る内燃機関の制御装置によれば、インジェクタ17の燃料噴射時期と点火プラグ16の点火時期とを同時に等しい位相で変更することで、層状希薄燃焼運転が可能なスプレーガイド直噴エンジン10の回転変動を容易に抑制することができる。
また、スプレーガイド直噴エンジン10が層状希薄燃焼運転をしている場合、原則的には、基準燃料噴射時期および基準点火時期となるように燃料噴射時期および点火時期を制御することで、燃費の向上に寄与することができる。
【0041】
また、スプレーガイド直噴エンジン10が層状希薄燃焼運転中であり且つ回転変動が生じた場合には、回転変動量ΔNeに応じて設定された補正マップから得られた補正値を加味した目標燃料噴射時期および目標点火時期となるようにインジェクタ17および点火プラグ16を制御することで、素早く回転変動を抑制することができる。
以上、各実施形態に係る内燃機関の制御装置を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0042】
上述の第1実施形態においては、燃料噴射・点火時期制御部23が、目標Peとエンジン回転数Neとに基づいて基準点火時期および基準燃料噴射時期を得るようにした場合を例にとって説明したが、目標Peに代えてアクセルペダルポジションセンサによって計測されたアクセルペダル開度Accを直接用いるようにしてもよい。これにより、制御をより簡素化することが可能となる。
【0043】
また、上述の第1実施形態においては、回転変動検出部22によりスプレーガイド直噴エンジン10で回転変動が生じていることが検出され、回転変動が抑制されるまで、燃料噴射・点火時期制御部23が点火時期および燃料噴射時期を進角させる場合を例にとって説明したが、この進角制御には、当然、限界角度が設定してある。したがって、過剰に進角させることがないようになっている。同様に、燃費向上を図るべく、燃料噴射・点火時期制御部23が点火時期および燃料噴射時期を遅角させる場合も、遅角限界値が予め設定してあるので、点火時期および燃料噴射時期を過剰に遅角させることがないようになっている。
【0044】
また、上述の第1実施形態においては、回転変動検出部23によりスプレーガイド直噴エンジン10の回転変動が検出されると、燃料噴射・点火時期制御部23が目標燃料噴射時期および目標点火時期を1段階ずつ進角させ、その後、回転変動が抑制されると、目標燃料噴射時期および目標点火時期を1段階遅角させる場合を例にとって説明したが、目標点火時期および目標燃料噴射時期を数段階ずつ進角または遅角させるように制御してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1実施形態に係る内燃機関の制御装置におけるスプレーガイド方式の筒内噴射型ガソリンエンジンの要部を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る内燃機関の制御装置の全体構成を示す模式的なブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る内燃機関の制御装置の作用を示す模式的なフローチャートである。
【図4】本発明の第1実施形態に係る内燃機関の制御装置におけるスプレーガイド方式の筒内噴射型ガソリンエンジンの点火時期および燃料噴射時期と燃費および回転安定性とを示す模式的なグラフである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る内燃機関の制御装置の全体構成を示す模式的なブロック図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る内燃機関の制御装置の作用を示す模式的なフローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
10 スプレーガイド直噴エンジン(内燃機関)
11 燃焼室
16 点火プラグ
17 インジェクタ(燃料噴射装置)
21 目標Pe算出部(目標Pe算出手段)
22 回転変動検出部(回転変動検出手段)
23 燃料噴射・点火時期制御部(燃料噴射・点火時期制御手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射装置から点火プラグに指向して噴射された燃料に直接点火することで層状希薄燃焼運転が可能な筒内噴射型の内燃機関を制御する内燃機関の制御装置において、
該内燃機関の回転変動を検出する回転変動検出手段と、
該層状希薄燃焼運転中に、該回転変動検出手段によって検出された回転変動に応じて該燃料噴射装置の目標燃料噴射時期と該点火プラグの目標点火時期とを同時に等しく変更する燃料噴射・点火時期制御手段とを備えて構成されている
ことを特徴とする、内燃機関の制御装置。
【請求項2】
該燃料噴射・点火時期制御手段は、
基準となる燃料噴射時期である基準燃料噴射時期と、基準となる点火時期である基準点火時期とを算出し、
該回転変動検出手段によって回転変動が検出されていない場合には、該基準燃料噴射時期および該基準点火時期に従って該燃料噴射装置および該点火プラグをそれぞれ制御するとともに、該回転変動検出手段により回転変動が検出された場合には、該基準燃料噴射時期および該基準点火時期からそれぞれ等しく進角して該目標燃料噴射時期および該目標点火時期とし、該進角化後の目標燃料噴射時期および該進角後の目標点火時期に従って該燃料噴射装置および該点火プラグをそれぞれ制御する
ことを特徴とする、請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
該燃料噴射・点火時期制御手段は、
基準となる燃料噴射時期である基準燃料噴射時期と、基準となる点火時期である基準点火時期とを算出するとともに、
該基準燃料噴射時期および該基準点火時期に対し、該回転変動検出手段によって検出された回転変動に応じて、等しく補正を行なうことで該目標燃料時期および該目標点火時期を得る補正手段とをそなえ、
該燃料噴射・点火時期制御手段は、
該回転変動検出手段によって回転変動が検出されていない場合には、該基準燃料噴射時期および該基準点火時期に従って該燃料噴射装置および該点火プラグを制御するとともに、該回転変動検出手段により回転変動が検出された場合には、該補正手段により得られた該補正後の目標燃料噴射時期および該補正後の目標点火時期に従って該燃料噴射装置および該点火プラグをそれぞれ制御する
ことを特徴とする、請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
該燃料噴射・点火時期制御手段は、
該回転変動検出手段により検出された回転変動が進角所定値以上の場合には該目標噴射時期および該目標点火時期を等しく進角側に補正し、該回転変動検出手段により検出された回転変動が遅角所定値以下の場合には該目標噴射時期および該目標点火時期を等しく遅角側に補正して、該燃料噴射装置および該点火プラグをそれぞれ制御する
ことを特徴とする、請求項1記載の内燃機関の制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−77688(P2006−77688A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263252(P2004−263252)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】