説明

内燃機関の制御装置

【課題】この発明は、排気弁のみが停止する状況の発生と、排気系への過剰な酸素流入の発生の、双方を抑制することができる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】吸気弁22の停止のための制御開始後、リフトセンサ40の出力に基づいて、吸気弁22が実際に停止したか否かが検知される。吸気弁22の停止が検知された場合には、続いて、排気弁24を停止するように動弁機構25が制御される。吸気弁22の停止が検知されない場合、つまり吸気弁22が駆動している場合には、燃料カットを中止してポート噴射弁30に燃料噴射を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特開2008−291850号公報に開示されているように、燃料カット中に吸気弁と排気弁の両方を閉じ状態に維持する内燃機関が知られている。以下、吸気弁や排気弁が開弁期間に閉じ状態に維持されることを、「停止」「弁停止」とも称す。燃料カット中に吸気弁と排気弁がそれぞれ開閉すると、吸入空気が排気通路にそのまま流れてしまう。このような事態を招くと、排気触媒が過剰な酸化雰囲気に置かれてしまい、排気触媒の劣化をまねくおそれがある。上記従来の内燃機関によれば、燃料カット中に吸気弁と排気弁の両方を停止することにより、排気通路に空気が流れることを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−291850号公報
【特許文献2】特開2005−090463号公報
【特許文献3】特開2004−100487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸気弁の停止指令が発せられてから、実際に吸気弁が停止するまでに、遅れがある場合がある。この遅れの原因の1つには、例えばアクチュエータの応答遅れが考えられる。遅れの程度によっては、吸気弁の停止が数サイクル遅れることも考えられる。また、吸気弁の停止用の機構に故障があり、吸気弁が停止指令に反して駆動し続ける場合も考えられる。これらの場合、吸気弁が駆動し且つ排気弁が停止する状態(つまり、排気弁のみが停止する状態)が発生する。
【0005】
排気弁のみが停止する状態が発生すると、種々の問題を招く。具体的には、燃料カット中に排気弁のみが停止して吸気弁が駆動してしまった場合、吸気弁が開くときに、気筒内の圧縮された高圧空気が吸気管側に吹き返されてしまう。そうすると、エンジンの振動や、吸気音の発生が懸念される。このような問題の発生を避けるには、燃料カットの際に、吸気弁停止制御→吸気弁の停止確認→排気弁停止制御の順番で弁停止を進める手法が有効である。この弁停止手法によれば、確実に、吸気弁が停止した後に排気弁を停止させることができる。
【0006】
しかしながら、上述した弁停止手法では、吸気弁の停止が確認されるまでは排気弁の駆動が維持される。このような状況下で、吸気弁の停止が遅れた場合、あるいは吸気弁の停止用の機構に故障があった場合、燃料カット中に吸気弁と排気弁の双方が駆動する事態を招いてしまう。このような事態を招くと、吸入空気が排気通路にそのまま流れ、上記従来の技術で述べた排気触媒劣化をまねくおそれがある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、吸気弁および排気弁を停止する場合に、排気弁のみが停止する状況の発生と、排気系への過剰な酸素流入の発生の、双方を抑制することができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする(便宜上「第1の目的」とも称す)。
【0008】
また、上述した弁停止手法のように、吸気弁の停止確認後に排気弁の停止指令が出される場合、排気弁のみが停止する事態は回避される。しかしながら、この弁停止手法は、逆に、吸気弁が停止し排気弁が駆動する状態(つまり、排気弁のみが開閉する状態)を発生させる。排気弁のみが開閉する状態では、ポンプロスによるエンジンブレーキが発生する。複数の気筒に対して弁停止を行う際に、このようなエンジンブレーキが複数の気筒に連続に発生することは好ましくない。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、排気弁のみが開閉する状態が複数の気筒に連続に発生するのを抑制しつつ、排気弁のみが停止する状況の発生を抑制することができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする(便宜上「第2の目的」とも称す)。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、上記の第1の目的を達成するため、内燃機関の制御装置であって、
吸気弁と排気弁の駆動/停止をそれぞれ切替可能な動弁機構と、
所定の運転状態のときに、前記吸気弁および前記排気弁を備える気筒の燃料カットを行う燃料カット手段と、
前記気筒の前記燃料カットの要求があった場合に、前記気筒の前記吸気弁と前記排気弁のうち前記吸気弁のみが停止するように、前記動弁機構を制御する吸気弁停止手段と、
前記気筒の前記吸気弁が停止したか否かを検出する検出手段と、
前記吸気弁停止手段の制御の後、前記検出手段が前記吸気弁の停止を検出した場合に、前記気筒の前記排気弁が停止するように前記動弁機構を制御する排気弁停止手段と、
前記吸気弁停止手段の制御の後、前記検出手段により前記吸気弁の停止が検出されない場合に、前記気筒への燃料噴射を実行する噴射手段と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記内燃機関は、それぞれが吸気弁および排気弁を有しかつ所定の点火順序で爆発する複数の気筒を備え、
前記燃料カット手段が、前記複数の気筒のうち、点火順序が連続する2つ以上の気筒に対して燃料カットを行う手段を含み、
前記吸気弁停止手段が、前記2つ以上の気筒のうち1つの気筒の吸気弁が停止するように前記動弁機構を制御した後、前記2つ以上の気筒のなかで点火順序が前記1つの気筒より後の気筒のうち、点火順序が前記1つの気筒と1つ以上離れた気筒の吸気弁が停止するように前記動弁機構を制御することを特徴とする。
【0012】
また、第3の発明は、第2の発明において、
前記吸気弁停止手段は、
前記1つの気筒の前記吸気弁が停止するように前記動弁機構を制御した後、前記1つの気筒の前記吸気弁が停止したか否かを検出する制御後検出手段と、
前記制御後検出手段により前記1つの気筒の前記吸気弁の停止が検出されない場合には、前記1つの気筒と点火順序が1つ以上離れた気筒の吸気弁が停止するように前記動弁機構を制御し、前記制御後検出手段により前記1つの気筒の前記吸気弁の停止が検出された場合には、点火順序が前記1つの気筒の次である気筒の吸気弁が停止するように前記動弁機構を制御する選択的停止手段と、
を含むことを特徴とする。
【0013】
第4の発明は、上記の第2の目的を達成するため、内燃機関の制御装置であって、
それぞれが吸気弁および排気弁を有しかつ所定の点火順序で爆発する複数の気筒を備える内燃機関を制御する制御装置であって、
前記吸気弁と前記排気弁の駆動/停止をそれぞれ切替可能な動弁機構と、
所定の運転状態のときに、前記複数の気筒のうち、点火順序が連続する2つ以上の気筒に対して燃料カットを行う燃料カット手段と、
前記燃料カットの要求があった場合に、前記2つ以上の気筒のなかの1つの気筒を対象にして、前記吸気弁と前記排気弁のうち前記吸気弁のみが停止するように、前記動弁機構を制御する第1吸気弁停止手段と、
前記1つの気筒の前記吸気弁が停止したか否かを検出する検出手段と、
前記第1吸気弁停止手段の制御の後、前記検出手段が前記1つの気筒の前記吸気弁の停止を検出した場合に、前記1つの気筒の前記排気弁が停止するように前記動弁機構を制御する排気弁停止手段と、
前記第1吸気弁停止手段の制御の後、前記2つ以上の気筒のなかで点火順序が前記1つの気筒より後の気筒のうち、点火順序が前記1つの気筒と1つ以上離れた気筒の吸気弁が停止するように前記動弁機構を制御する第2吸気弁停止手段と、
を備えることを特徴とする。
【0014】
また、第5の発明は、第4の発明において、
前記第2吸気弁停止手段が、
前記第1吸気弁停止手段の前記制御の開始後、前記1つの気筒の前記吸気弁が停止したか否かを検出する制御後検出手段と、
前記制御後検出手段により前記1つの気筒の前記吸気弁の停止が検出されない場合には、点火順序が前記1つの気筒と1つ以上離れた気筒の吸気弁が停止するように前記動弁機構を制御し、前記制御後検出手段により前記1つの気筒の前記吸気弁の停止が検出された場合には、点火順序が前記1つの気筒の次である気筒の吸気弁が停止するように前記動弁機構を制御する選択的停止手段と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、吸気弁の停止が確認された後に、排気弁を停止させる制御を実行することができる。従って、吸排気弁のうち排気弁のみが停止する事態が発生することを抑制できる。また、吸気弁の停止制御開始後に吸気弁の停止が確認されない場合には、燃料噴射を継続することができる。従って、燃料カットの際に吸排気弁がともに開閉する状況が発生しても、排気系への過剰な酸素流入を抑制できる。
【0016】
第2の発明によれば、吸気弁停止かつ排気弁駆動という状態が複数の気筒に連続に発生することを、防止することができる。これにより、吸気弁停止かつ排気弁開閉という状態で生ずるポンピングロスが、連続発生することを避けることができる。
【0017】
第3の発明によれば、吸気弁停止かつ排気弁駆動という状態が複数の気筒に連続に発生することを、防止することができる。これにより、吸気弁停止かつ排気弁開閉という状態で生ずるポンピングロスが、連続発生することを避けることができる。
【0018】
第4の発明によれば、吸気弁停止かつ排気弁駆動という状態の連続発生が心配されない場合に、複数の気筒の吸気弁停止を連続に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる内燃機関の制御装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1においてECUが実行するルーチンのフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態2においてECUが実行するルーチンのフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態2においてECUが実行するルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
図1は、本発明の実施の形態1にかかる内燃機関の制御装置の構成を示す図である。実施の形態1の制御装置により制御される内燃機関10は、車両等の移動体に好適である。図1では1つの気筒のみを示しているが、内燃機関10は、実際には複数の気筒(4気筒)を有する多気筒内燃機関である。なお図示を省略するが各気筒は図1の同様の構成を備えるものとする。
【0021】
内燃機関10は、ピストン12と、燃焼室に火花を発する点火プラグ34とを備える。また、内燃機関10は、吸気弁22および排気弁24を備える。内燃機関10の燃焼室には、吸気通路20および排気通路26に接続する。吸気弁22により吸気通路20と燃焼室の間が開閉され、排気弁24により排気通路26と燃焼室の間が開閉される。内燃機関10は、吸気弁22のリフト量を検知可能なリフトセンサ40を備える。リフトセンサは、例えば特開2004−100487号公報に開示の技術を利用できる。
【0022】
内燃機関10は、吸気弁22および排気弁24の駆動と停止を、個別に切替えることができる動弁機構25を備えている。ここで、「駆動」とは吸気弁や排気弁が通常どおり各々の開弁期間(排気行程、吸気行程)に開弁することを意味し、「停止」とは吸気弁や排気弁が開弁期間に閉じ状態に維持されることを意味する。この種の動弁機構の具体的構造は既に各種技術が公知となっており、新規な事項ではないため、詳細な説明は行わない。また、図示しないが、排気通路26の下流には、排気浄化触媒が備えられる。また、内燃機関10には、吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射弁30が備えられる。
【0023】
内燃機関10は、ECU(Electronic Control Unit)50を備えている。ECU50は、ポート噴射弁30、動弁機構25、リフトセンサ40に接続している。ECU50からの停止指令(つまり制御信号)に応じて動弁機構25が制御され、吸気弁22と排気弁24の停止/駆動がそれぞれ切り替えられる。また、ECU50は、リフトセンサ40の出力に基づいて、吸気弁22のリフト量を検出することができる。また、内燃機関10は、例えば車両減速時などの所定の運転状態のときに燃料カットを行う処理を備える。なお、この燃料カットは、全気筒を対象に行う燃料カットの他に、一部の気筒を対象にして行う燃料カット(いわゆる気筒休止運転、減筒運転)もある。
【0024】
[実施の形態1の動作]
実施の形態1では、燃料カットの要求があった場合に、吸気弁22の停止が可能な気筒から順に、吸気弁22の停止が開始される。これに伴い、吸気弁22の停止予定の気筒の燃料噴射はカットされる。吸気弁22の停止のための制御開始後、リフトセンサ40の出力に基づいて、吸気弁22が実際に停止したか否かが検知される。吸気弁22の停止が検知された場合には、続いて、排気弁24を停止するように動弁機構25が制御される。吸気弁22の停止が検知されない場合、つまり吸気弁22が駆動している場合には、排気弁24の駆動が継続される。これにより、燃料カットの際に、吸気弁22停止制御→吸気弁22停止確認→排気弁24停止制御の順番で弁停止を進めることができる。その結果、排気弁24の停止制御開始前に確実に吸気弁22を停止させることができ、排気弁24のみが停止する事態を抑制できる。よって、排気弁24のみが停止した場合に心配される各種弊害、すなわち、エンジンの振動発生ひいてはドライバビリティ悪化、吸気音発生、吸気マニホールドへのダメージ発生といった種々の弊害を抑制できる。
【0025】
また、実施の形態1では、吸気弁22の停止が検知されない場合、つまり吸気弁22が駆動していると判断される場合には、燃料カットを中止してポート噴射弁30に燃料噴射を行わせる。これにより混合気を供給し、その後、点火を行う。この時点では排気弁24は未だ駆動状態にある。従って、着火、燃焼後、膨張行程を経て、排気行程において排気通路26に既燃ガスが排出される。このように、実施の形態1によれば、吸気弁22の停止が遅れた場合(換言すれば間に合わなかった場合)には燃焼を継続させることができるので、吸入空気が排気通路にそのまま流れてしまうことを避けることができる。以上説明したように、実施の形態1によれば、吸気弁22および排気弁24を停止する場合に、排気弁24のみが停止する状況の発生と、排気系への過剰な酸素流入の発生の双方を抑制することができる。
【0026】
[実施の形態1の具体的処理]
以下、実施の形態1にかかる内燃機関の制御装置が行う具体的処理を説明する。図2は、実施の形態1においてECU50が実行するルーチンのフローチャートである。図2のルーチンは、実施の形態1の内燃機関10の運転中に実行される。
【0027】
図2に示すルーチンでは、先ず、燃料カットの要求があるか否かが判定される(ステップS100)。このステップでは、例えば、内燃機関10の車両搭載時には、車両減速時等の所定運転条件の成立により燃料カット条件が成立したか否かが判定される。このステップの条件が不成立の場合には、今回のルーチンが終了する。
【0028】
燃料カット要求があった場合には、吸気弁22の停止指令が発せられる(ステップS102)。このステップで発せられた停止指令に従って、吸気弁22が停止するように、ECU50の制御信号により動弁機構25が制御される。このとき、排気弁24は駆動が継続される。次いで、ステップS102で吸気弁停止指令が発せられた気筒の、燃料噴射がカットされる(ステップS104)。
【0029】
次いで、吸気弁22の閉停止が完了したか否かが判定される(ステップS106)。このステップでは、具体的には、リフトセンサ40の出力に基づいて吸気弁22のリフト量が検出され、開弁期間(より具体的には吸気弁22が開き始めるべき時間帯)における吸気弁22のリフト量がゼロであるか否かが判定される。開弁期間のリフト量がゼロであれば、吸気弁22の停止が完了したと判断することができる。逆に、リフトが検出された場合には、吸気弁22は停止していないと判断できる。
【0030】
上記ステップS106で吸気弁22が停止したと判定された場合には、続いて、排気弁24の停止指令が発せられる(ステップS108)。このステップで発せられた停止指令に従って、排気弁24が停止するように、ECU50の制御信号により動弁機構25が制御される。続いて、ステップS108で排気弁停止指令があった気筒の点火がカットされる(ステップS110)。以上の結果、吸気弁22および排気弁24の両方の停止が実現される。その後今回のルーチンが終了する。
【0031】
上記ステップS106で吸気弁22が停止していない(駆動している)と判定された場合には、燃料カットが中止される(ステップS112)。このステップでは、ステップS104での燃料噴射カットを取りやめて、ポート噴射弁30によって燃料噴射がなされる。この燃料噴射は、ステップS106でリフトが検出された後、吸気弁22の開弁期間内に速やかに行われる。続いて、点火プラグ34に点火信号が送られ、混合気への着火が行われる(ステップS114)。その後、処理はステップS104に戻り、ステップS106が成立した時点でこのループから抜ける。
【0032】
以上の処理によれば、吸気弁22の停止が確認された後に、排気弁24を停止させる制御を実行することができる。従って、排気弁24のみが停止する事態が発生することを抑制できる。また、吸気弁22の停止制御開始後に吸気弁22の停止が確認されない場合には、燃料噴射を継続することができる。従って、燃料カットの際に吸排気弁がともに開閉する状況が発生しても、排気系への過剰な酸素流入を抑制できる。よって、吸気弁22および排気弁24を停止する場合に、排気弁24のみが停止する状況の発生と、排気系への過剰な酸素流入の発生の、双方を抑制することができる。
【0033】
尚、上述した実施の形態1では、動弁機構25が、前記第1の発明における「動弁機構」に、ECU50が実行する燃料カット処理が、前記第1の発明における「燃料カット手段」に、それぞれ相当している。また、実施の形態1では、図2のステップS102の処理の実行により、前記第1の発明における「吸気弁停止手段」が、図2のステップS106の処理の実行により、前記第1の発明における「検出手段」が、図2のステップS108の処理の実行により、前記第1の発明における「排気弁停止手段」が、図2のステップS112の処理の実行により、前記第1の発明における「噴射手段」が、それぞれ実現されている。
【0034】
[実施の形態1の変形例]
(第1変形例)
実施の形態1の内燃機関10は、ポート噴射弁30のみを備える。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。ポート噴射弁に代えて、気筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射弁を備えてもよい。また、ポート噴射弁と筒内噴射弁を備えるいわゆるデュアルインジェクション型の内燃機関であってもよい。なお、筒内噴射弁は噴射時期の融通が効くため、つまり吸気弁閉じ後も噴射可能なため、図2のステップS112で述べた燃料カット中止による燃料噴射に好適である。
【0035】
(第2変形例)
実施の形態1ではリフトセンサ40を用いて吸気弁22のリフト量を検出することにより、吸気弁22が停止したか否かを検出した。しかしながら、本発明はこれに限られない。吸気弁や排気弁の動作を確認するための様々な技術が公知である。例えば、吸気圧センサや筒内圧センサにより、吸気弁の開弁動作に伴う圧力変化に基づいて吸気弁の動作確認をすることができる。吸気弁や排気弁の動作確認は既に各種の技術が公知であり、それらを用いて実現すればよい。
【0036】
また、下記に述べるように、内燃機関10にノックセンサを取り付け、ノックセンサの出力に基づいて吸気弁22が停止したか否かを検出することもできる。一般に、吸気弁や排気弁は、開閉動作中に、着座音を発する。ここでいう「着座音」とは、弁が閉じられる際に(つまり着座時に)、弁が内燃機関のシリンダヘッドに衝突して発生する音である。着座音発生時のシリンダブロックの震え(振動、ショック)は、ノックセンサに伝わる。よって、ノックセンサの出力波形に弁の着座に相当する出力変動が認められれば、弁の開閉動作があったと判断できる。そこで、吸気弁22の閉弁時期にノックセンサ出力に着座音があるか否かに基づいて、吸気弁22が停止したか否かを検出することができる。
【0037】
また、本発明において吸気弁の停止を検出するための構成は、リフトセンサや、吸気弁22の開弁動作に応じて変化する物理量を計測する構成に限られない。例えば、特開2005−090463号公報の内燃機関では、吸排気弁の駆動/停止をピンの進退により切り換えている。そして、このピンの位置を、磁気的、電気的、光学的、或いは超音波センシングすることにより、吸排気弁の駆動/停止を判別している。このような手法を採用しても良い。つまり、吸気弁の駆動/停止を切り換えるため部材の位置或いは動作を検知することにより、吸気弁の駆動/停止を判別してもよい。
【0038】
なお、実施の形態1では内燃機関10は4気筒としたが、様々な気筒数(1つ以上の気筒)や各種の気筒配列方式の内燃機関に対して上述した実施の形態1の制御を行うことができる。
【0039】
実施の形態2.
[実施の形態2の構成]
以下、本発明の実施の形態2にかかる内燃機関の制御装置を説明する。実施の形態2は、実施の形態1の構成(図1の構成)において、ECU50が図3および図4のフローチャートに示すルーチンを実行することにより、実現される。以下、重複を避けるために、適宜に説明を省略ないしは簡略化する。
【0040】
[実施の形態2の動作]
実施の形態1にかかる弁停止制御によれば、吸気弁22の停止確認がなされた後に、排気弁24の停止指令が出される。この弁停止動作によれば、排気弁24のみが停止する事態は回避されるものの、逆に、吸気弁22のみが停止し排気弁24が駆動する場合が生じうる。排気弁24のみが開閉する場合、ポンプロスによりエンジンブレーキが発生する。仮に、このポンプロスが連続発生した場合(すなわちこのエンジンブレーキが複数の気筒に連続発生した場合)、内燃機関10の車両搭載時にはドライバビリティの悪化が心配される。
【0041】
そこで、実施の形態2では、排気弁24のみが駆動する気筒が複数の気筒の間で連続して発生しないように、ECU50の吸気弁停止指令の与え方を工夫することとした。以下、便宜上、実施の形態2の内燃機関において、4つの気筒(#1〜#4気筒)の点火順序が#1→#3→#4→#2→#1であるものとして説明を行う。実施の形態2では、先ず、燃料カット要求があった後、吸気弁22が停止可能な気筒(ここでは#1気筒とする)の吸気弁停止指示が発せられる。続いて、次の点火順序の気筒である#3気筒では、基本的に吸気弁停止指令を出さず、次の次の点火順序の気筒である#4気筒で吸気弁停止指示を発する。このように、点火順序を1つ離しながら、各気筒に吸気弁停止指示を出していく。その結果、実施の形態2の例では、#1→(#3飛ばし)→#4→(#2飛ばし)→(#1停止指示済)→#3→(#4停止指示済)→#2のように、#1、#4、#3、#2の順に吸気弁停止指示が出される。その結果、例えば、#1気筒で上記ポンプロスが生じても、次の#3気筒では上記ポンプロスを回避できる。これにより、既述したポンプロスの連続発生を防止し、各気筒で1サイクルずつ発生するエンジンブレーキを時間的に分散させる(連続させない)ことができる。その結果、ドライバビリティの悪化を抑制することができる。
【0042】
[実施の形態2の具体的処理]
図3および図4は、実施の形態2においてECU50が実行するルーチンのフローチャートである。図3のルーチンは、内燃機関10の運転中に繰り返し実行される。図4のルーチンは、図3のステップS204の処理で実行されるサブルーチンである。図4のルーチンは、ステップS100を備えない点、及び、ステップS114の後処理が終了する点を除き、図2のルーチンと同じ内容である。従って、図4の説明は、適宜に簡略化する。
【0043】
図3のルーチンでは、先ず、既述した図2のステップS100の処理により、燃料カット要求があるか否かが判定される。燃料カット要求が無い場合には、今回のルーチンが終了する。
【0044】
燃料カット要求があった場合には、吸気弁停止指令タイミングか否かの判定が行われる(ステップS200)。吸気弁停止指令タイミングでないと判定された場合には、今回のルーチンが終了する。
【0045】
吸気弁停止指令タイミングである場合には、これから吸気弁停止指令が出される気筒よりも点火順序が1つ前の気筒で、吸気弁停止指令があったか否かが判定される(ステップS202)。例として、これから吸気弁停止指令が出される気筒、つまり、弁停止予定気筒を、ここでは#1気筒とする。この場合、点火順序が1つ前の気筒は、#2気筒である。ステップS202は、例えば、ECU50内の吸気弁停止指令履歴を参照するなどして、実現すればよい。
【0046】
ステップS202において、#2気筒で吸気弁停止指令が無かったと判定された場合には、現在の弁停止予定気筒(つまり#1気筒)の吸気弁22を停止する制御が実行される(ステップS204)。ステップS204に処理が移ると、図4に示すサブルーチンがスタートする。その結果、吸気弁停止指令(S102)、燃料噴射カット(S104)、吸気弁停止完了判定(S106)が順次実行される。そして、S106の判定結果に応じて、排気弁停止指令(S108)→点火カット(S110)の一連の処理と、燃料カット中止つまり燃料噴射(S112)→点火(S114)の一連の処理と、のうち一方が実行される。その後、図4のサブルーチンが終了し、図3のルーチンが終了→再度スタートから繰り返し(リターン)する。
【0047】
一方、ステップS202において、#2気筒で吸気弁停止指令があったと判定された場合には、処理がステップS206に移る。ステップS206では、点火順序が1つ前の気筒(ここでは#2気筒)の吸気弁停止が完了したか否かが判定される。この判定は、ステップS106と同様に、リフトセンサ40の出力に基づいて行えばよい。
【0048】
ステップS206の条件が不成立の場合には、今回のルーチンが終了し、スタートに戻る。その結果、#2気筒で吸気弁停止指令があった場合には、#2気筒の次の点火順序の#1気筒の吸気弁停止指令が行われない。その結果、仮に#2気筒でポンプロスが生じても、次の#1気筒ではポンプロスを回避できる。これにより、既述したポンプロスの連続発生を防止することができる。
【0049】
一方、実施の形態2の具体的処理では、ステップS206の条件が成立した場合には、処理がステップS204に移る。その結果、現在の弁停止予定気筒(つまり#1気筒)の吸気弁22を停止する制御が実行される。ステップS206の条件成立時には、既に#2気筒で吸気弁22が停止している。従って、次の点火順序の#1気筒の吸気弁停止指令を行ったとしても、既述した連続ポンプロスのおそれは無い。実施の形態2の具体的処理は、ステップS206の判定処理を行うことにより、連続ポンプロスが発生してしまう場合には点火順序が1つ離れた気筒を対象に吸気弁停止指令を出し、連続ポンプロスの問題が無い場合には次順の点火順序の気筒を対象に吸気弁停止指令を出すことができる。その結果、速やかに吸気弁停止を進めていくことができる。
【0050】
なお、上述した実施の形態2では、#1〜#4気筒が、前記第2の発明における「複数の気筒」に相当し、図3のステップS202、204,206の処理が実行されることにより、前記第2の発明における「吸気弁停止手段」が実現されている。また、上述した実施の形態2では、図3のステップS206の処理が実行されることにより、前記第3の発明における「制御後検出手段」および「選択的停止手段」が実現されている。
【0051】
[実施の形態2の変形例]
実施の形態2では、一例として、4気筒の内燃機関において点火順序が#1→#3→#4→#2である場合を説明した。しかしながら、本発明はこれに限られない。複数の各種気筒数(例えば、3気筒、6気筒、8気筒、その他)を備える内燃機関に対しても、また、実施の形態2の例とは異なる点火順序で爆発する内燃機関に対しても、本発明を適用することができることは言うまでもない。
【0052】
また、実施の形態2では、吸気弁停止指示の対象の気筒を、点火順序が1つずつ離れるように吸気弁停止指示を出す手法によって、時間的に分散させた。しかしながら、本発明はこれに限られない。点火順序を2つ以上(つまり、2つ、3つ、・・・)離してもよい。例えば、実施の形態2において、#1気筒で吸気弁停止指示を出した後に、#3、#4気筒を飛ばして(つまり、#3、#4気筒の吸気弁停止指示タイミングで指示を出さずに)、点火順序が2つ離れた#2気筒に吸気弁停止を指示してもよい。
【0053】
なお、実施の形態2の具体的処理(図3のルーチン)では、上述したように、ステップS206の判定処理により、連続ポンプロスの有無に応じて吸気弁停止指示の連続/不連続を切り換えている。しかしながら、本発明はこれに限られない。点火順が1つ前の気筒の吸気弁停止状況に係らず、常に点火順序が1つ離れた気筒に吸気弁停止指示を出してもよい。
【0054】
なお、実施の形態2にかかる制御は、全気筒に対して燃料カットを行う場合に限らず、一部の気筒の燃料カット時(気筒休止運転時)でも、連続ポンプロス防止の効果を奏することができる。点火順序が連続する2つ以上の気筒に対して燃料カットを行う場合、既述したような連続ポンプロスが生じうるからである。なお、実施の形態2は、実施の形態1またはその変形例と組み合わせてもよい。
【0055】
実施の形態3.
実施の形態1では、吸気弁22の停止が検知されない場合、燃料カットを中止してポート噴射弁30に燃料噴射を行わせる。また、実施の形態2では、排気弁24のみが駆動する気筒が複数の気筒の間で連続して発生しないように、吸気弁停止指令の与え方を工夫している。しかしながら、これら実施の形態1、2の制御は、必ずしも組み合わせなくとも良い。つまり、実施の形態2にかかる吸気弁停止指令の与え方の工夫を、実施の形態1の燃料カット中止制御とは独立に、内燃機関の制御に用いることができる。
【0056】
実施の形態3では、図3のルーチンのステップS204の内容(つまり図4のサブルーチン)から、実施の形態1にかかる燃料カット中止制御の部分をとり除く。具体的には、図4のルーチンのうちステップS112およびS114を除き、S106の条件が否定されたら図4のルーチンを終了する。この場合にも、吸気弁22の停止制御→リフトセンサ40に基づく吸気弁22の停止確認→排気弁24の停止制御という順番で弁停止が行われる。しかし、実施の形態3においても図3のルーチンにより弁停止指示の与え方が工夫されているので、実施の形態2と同様に既述したポンプロスの連続発生を防止することができる。
【0057】
なお、上述した実施の形態3では、図4のルーチンのステップS102の処理により、前記第4の発明における「第1吸気弁停止手段」が、図4のルーチンのステップS106の処理により、前記第4の発明における「検出手段」が、図4のルーチンのステップS108の処理により、前記第4の発明における「排気弁停止手段」が、それぞれ実現されている。また、図3のステップS202、204,206の処理が実行されることにより、前記第4の発明における「第2吸気弁停止手段」が実現されている。
【0058】
また、実施の形態3では、図3のステップS206の処理が実行されることにより、前記第5の発明における「制御後検出手段」および「選択的停止手段」が実現されている。
【符号の説明】
【0059】
10 内燃機関
12 ピストン
20 吸気通路
22 吸気弁
24 排気弁
25 動弁機構
26 排気通路
30 ポート噴射弁
34 点火プラグ
40 リフトセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気弁と排気弁の駆動/停止をそれぞれ切替可能な動弁機構と、
所定の運転状態のときに、前記吸気弁および前記排気弁を備える気筒の燃料カットを行う燃料カット手段と、
前記気筒の前記燃料カットの要求があった場合に、前記気筒の前記吸気弁と前記排気弁のうち前記吸気弁のみが停止するように、前記動弁機構を制御する吸気弁停止手段と、
前記気筒の前記吸気弁が停止したか否かを検出する検出手段と、
前記吸気弁停止手段の制御の後、前記検出手段が前記吸気弁の停止を検出した場合に、前記気筒の前記排気弁が停止するように前記動弁機構を制御する排気弁停止手段と、
前記吸気弁停止手段の制御の後、前記検出手段により前記吸気弁の停止が検出されない場合に、前記気筒への燃料噴射を実行する噴射手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記内燃機関は、それぞれが吸気弁および排気弁を有しかつ所定の点火順序で爆発する複数の気筒を備え、
前記燃料カット手段が、前記複数の気筒のうち、点火順序が連続する2つ以上の気筒に対して燃料カットを行う手段を含み、
前記吸気弁停止手段が、前記2つ以上の気筒のうち1つの気筒の吸気弁が停止するように前記動弁機構を制御した後、前記2つ以上の気筒のなかで点火順序が前記1つの気筒より後の気筒のうち、点火順序が前記1つの気筒と1つ以上離れた気筒の吸気弁が停止するように前記動弁機構を制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記吸気弁停止手段は、
前記1つの気筒の前記吸気弁が停止するように前記動弁機構を制御した後、前記1つの気筒の前記吸気弁が停止したか否かを検出する制御後検出手段と、
前記制御後検出手段により前記1つの気筒の前記吸気弁の停止が検出されない場合には、前記1つの気筒と点火順序が1つ以上離れた気筒の吸気弁が停止するように前記動弁機構を制御し、前記制御後検出手段により前記1つの気筒の前記吸気弁の停止が検出された場合には、点火順序が前記1つの気筒の次である気筒の吸気弁が停止するように前記動弁機構を制御する選択的停止手段と、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
それぞれが吸気弁および排気弁を有しかつ所定の点火順序で爆発する複数の気筒を備える内燃機関を制御する制御装置であって、
前記吸気弁と前記排気弁の駆動/停止をそれぞれ切替可能な動弁機構と、
所定の運転状態のときに、前記複数の気筒のうち、点火順序が連続する2つ以上の気筒に対して燃料カットを行う燃料カット手段と、
前記燃料カットの要求があった場合に、前記2つ以上の気筒のなかの1つの気筒を対象にして、前記吸気弁と前記排気弁のうち前記吸気弁のみが停止するように、前記動弁機構を制御する第1吸気弁停止手段と、
前記1つの気筒の前記吸気弁が停止したか否かを検出する検出手段と、
前記第1吸気弁停止手段の制御の後、前記検出手段が前記1つの気筒の前記吸気弁の停止を検出した場合に、前記1つの気筒の前記排気弁が停止するように前記動弁機構を制御する排気弁停止手段と、
前記第1吸気弁停止手段の制御の後、前記2つ以上の気筒のなかで点火順序が前記1つの気筒より後の気筒のうち、点火順序が前記1つの気筒と1つ以上離れた気筒の吸気弁が停止するように前記動弁機構を制御する第2吸気弁停止手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記第2吸気弁停止手段が、
前記第1吸気弁停止手段の前記制御の開始後、前記1つの気筒の前記吸気弁が停止したか否かを検出する制御後検出手段と、
前記制御後検出手段により前記1つの気筒の前記吸気弁の停止が検出されない場合には、点火順序が前記1つの気筒と1つ以上離れた気筒の吸気弁が停止するように前記動弁機構を制御し、前記制御後検出手段により前記1つの気筒の前記吸気弁の停止が検出された場合には、点火順序が前記1つの気筒の次である気筒の吸気弁が停止するように前記動弁機構を制御する選択的停止手段と、
を含むことを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−223012(P2010−223012A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68746(P2009−68746)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】