説明

内燃機関の制御装置

【課題】 フュエルカット解除時に極力HCCI運転を実行するようにした内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】 開弁制御部47は、SI運転時(サイクル1)にフュエルカットが開始されると、吸気バルブ22を全閉とする一方で排気バルブ23を小リフトで駆動してEGRガスを気筒内にとどめる(サイクル2)。次に、開弁制御部47は、吸排気バルブ22,23をともに全閉してEGRガスを気筒内に残留させる(サイクル3〜5)、フュエルカット解除後に吸気バルブ22を小リフトで駆動して新気を導入させる(サイクル6)。これにより、EGRガスの熱によって気筒の温度低下が抑制されるとともに、フュエルカット解除後に不要となったEGRガスが排出される。しかる後、開弁制御部47は、HCCI運転を開始すべく開始吸排気バルブ22,23を小リフトで駆動する(サイクル7,8)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載される内燃機関の制御装置に係り、詳しくは、フュエルカット解除時に極力HCCI運転を実行させやすくする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熱効率の向上や有害排出ガス成分の減少等を図るべく、予混合圧縮着火(Homogeneous Charge Compression Ignition:以下、HCCIと記す)燃焼による運転(以下、HCCI運転と記す)を行う内燃機関の開発が進められている(特許文献1参照)。HCCIエンジンでは、ガソリンやDME(ジメチルエーテル)、n−ブタン等の燃料と空気とを均一に混合した予混合気を燃焼室に導入した後、ピストンにより圧縮することで高温・高圧にして多点同時的に予混合気を自己着火させるが、HCCI燃焼が成立する負荷範囲(成立範囲)が限られているため、運転要求がこの負荷範囲を外れる場合(すなわち、運転要求が成立範囲より高負荷側あるいは低負荷側である場合)には、HCCI運転から火花点火(Spark Ignition: 以下、SIと記す)燃焼による運転(以下、SI運転と記す)に切り換えることが一般的である。
【0003】
一方、内燃機関とモータジェネレータとを並設し、自動車の走行状況や運転者の加減速要求に応じて、内燃機関とモータジェネレータとの少なくとも一方を走行用動力源として用いるハイブリッド車が出現している(特許文献2参照)。ハイブリッド車には、内燃機関とモータジェネレータとを同時に用いることで高い加速性能や登坂能力を得る、モータジェネレータのみを用いることで燃料消費の低減や夜間走行時の静粛性を実現する、制動エネルギをモータジェネレータによって電力エネルギとして回収できる等の種々の特長が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3936901号公報
【特許文献2】特開2009−292287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車では、赤信号や渋滞で一旦停止した場合のアイドルストップ時や減速走行時等において、燃料消費量の削減(すなわち、燃費の向上)や静粛性の向上を図るべく、燃料供給の中断(フュエルカット)を実行して内燃機関を停止させることが一般的である。フュエルカットは運転者がアクセルペダルを踏み込むことやエンジンの運転状態によって中止され、内燃機関の再始動に伴って燃料供給が開始される。上述したHCCIエンジンでフュエルカットを行った場合、燃費を向上させるためには内燃機関の再始動時にHCCI運転を行うことが望ましいが、内燃機関の停止中に気筒内の温度(筒内温度)が低下してHCCI運転を実行できなくなることがあった。
【0006】
そこで、特許文献1では、フュエルカットからの復帰時において、HCCI運転を行う負荷条件等であっても、フュエルカットの継続長さに応じた期間にわたってSI運転を行わせるようにしている。しかしながら、単純にフュエルカットの継続長さに基づいてSI運転を行わせた場合、フュエルカットからの復帰時点でHCCI運転が実行される場合が少なくなり、排気浄化触媒中のOやNOxを除去するために燃料をリッチ化する必要が生じることや、SI運転がHCCI運転に較べて熱効率が低いことから燃費が悪化する問題があった。
【0007】
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、フュエルカット解除時に極力HCCI運転を実行するようにした内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面は、予混合圧縮着火燃焼によるHCCI運転と火花点火燃焼によるSI運転とを選択可能な内燃機関を制御する制御装置であって、フュエルカット開始時点での内燃機関の運転状態に応じ、フュエルカット解除時に前記内燃機関をHCCI運転できるか否かを判定するHCCI可否判定手段を備え、前記HCCI可否判定手段の判定結果が肯定であった場合、フュエルカット解除時から前記内燃機関をHCCI運転することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の第2の側面は、少なくとも排気バルブの開弁特性を変化させることができる開弁特性可変手段を更に備え、前記HCCI可否判定手段の判定結果が肯定であった場合、気筒内に内部EGRガスを多く残留させるべく、フュエルカットを行う燃焼サイクルの排気行程中に排気バルブを閉弁させる時期を早めることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第3の側面は、内部EGRガスを多く残留させた気筒において、吸気バルブと排気バルブとの少なくとも一方を休止させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第4の側面は、前記HCCI可否判定手段の判定結果が否定であった場合、気筒内のEGRガスを掃気すべく、フュエルカット中に吸気バルブおよび排気バルブの休止を解除することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第5の側面は、フュエルカット開始時点での内燃機関の運転状態に応じ、フュエルカット解除時に前記内燃機関をHCCI運転できるHCCI可能期間をフュエルカット開始時点を起点として設定するHCCI期間設定手段を更に備え、フュエルカットの継続期間が前記HCCI可能期間内にあれば、フュエルカット解除時から前記内燃機関をHCCI運転することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第6の側面は、前記内燃機関の筒内温度を推定する筒内温度推定手段を更に備え、前記筒内温度が所定のHCCI可能温度範囲内にあれば、フュエルカットからの復帰時に前記内燃機関をHCCI運転することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の側面によれば、フュエルカット解除時にHCCI運転が行われる比率が高まることで、熱効率の向上や有害排出ガス成分の減少等が実現される。また、本発明の第2の側面によれば、残留するEGRガスによって筒内温度の低下が緩やかになり、フュエルカット解除時にHCCI運転が行われる比率がより高まる。また、本発明の第3の側面によれば、気筒内に残留させたEGRガスを高温のまま保持することが可能となるために、フュエルカット解除時にHCCI運転が行われる比率がより高まる。また、本発明の第4の側面によれば、フュエルカット解除に先だって気筒内のEGRガスが掃気され、SI運転が行いやすくなる。また、本発明の第5の側面によれば、フュエルカットの継続時間が比較的短ければ、フュエルカット解除時にHCCI運転が行われるようになる。また、本発明の第6の側面によれば、筒内温度の推定結果が比較的高ければ、フュエルカット解除時にHCCI運転が行われるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係るパワーユニットの概略構成図である。
【図2】実施形態に係るPCUの概略構成図である。
【図3】実施形態に係る燃焼モード判定の手順を示すフローチャートである。
【図4】実施形態に係るフュエルカットカウンタの経時変化を示すグラフである。
【図5】実施形態に係るフュエルカットカウンタの経時変化を示すグラフである。
【図6】実施形態に係る開弁制御の手順を示すフローチャートである。
【図7】実施形態に係る第1開弁モードの流れを示すタームチャートである。
【図8】実施形態に係る第2開弁モードの流れを示すタームチャートである。
【図9】実施形態に係る第3開弁モードの流れを示すタームチャートである。
【図10】実施形態に係る第4開弁モードの流れを示すタームチャートである。
【図11】実施形態に係る第5開弁モードの流れを示すタームチャートである。
【図12】実施形態に係るHCCI運転可能負荷領域マップである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明を自動車(ハイブリッド車)のパワーユニット制御に適用した一実施形態を詳細に説明する。
【0017】
≪実施形態の構成≫
<パワーユニットの概略構成>
図1に示すように、本実施形態のパワーユニット1は、エンジン2と、モータジェネレータ3とから構成されており、ディファレンシャル装置と一体の変速機4を介して図示しない左右前輪に駆動力を与える。
【0018】
エンジン2は、直列4気筒のHCCIエンジンであり、エアクリーナ11、電動スロットル弁12、サージタンク13、吸気管14等からなる吸気系と、排気マニホールド15、排気浄化触媒16、排気管17等からなる排気系を備えている。エンジン2のシリンダヘッド21には、各気筒ごとに、一対の吸気バルブ22、一対の排気バルブ23、点火プラグ25、吸排気バルブ22,23の開弁特性をそれぞれ変化させる可変動弁機構26,27等が設けられている。また、吸気管14には、各気筒ごとに燃料噴射弁28が設けられている。なお、本実施形態の可変動弁機構26,27は、吸排気バルブ22,23の開弁特性をそれぞれ3段階(休止,小開,大開)で切り換えるべく、カム位相およびリフト量が異なる3種のカムを備えている。
【0019】
モータジェネレータ3は、エンジン2に対する駆動力アシストや電動走行に供されるモータ31、エンジン2の出力や自動車の走行エネルギを電力に変換するジェネレータ32を備えており、図示しない変速機やディファレンシャル装置を介して左右前輪に連結されている。モータジェネレータ3は、自動車の車体後部に搭載されたバッテリ33に接続されており、バッテリ33との間で電力の授受を行う。バッテリ33にはDC−DCコンバータ等からなるダウンバータ34が接続されており、このダウンバータ34によって12Vに降圧された電力が各種電動補機(電動エアコンディショナや電動ウォータポンプ等)や電気装置(灯火類や電気ヒータ等)に供給される。
【0020】
自動車の車体にはPCU(パワーコントロールユニット)41が搭載されており、このPCU41がエンジン2やモータジェネレータ3を統括制御する。PCU41には、エンジン2やモータジェネレータ3、バッテリ33等からの情報の他、アクセルセンサ42からのアクセルペダル43の踏込量情報(すなわち、運転者の要求エンジン出力)が入力する。
【0021】
<PCUの概略構成>
図2に示すように、PCU41は、エンジン2に対するフュエルカットの可否を車速等に基づき決定するフュエルカット制御部45と、エンジン回転速度や目標エンジン負荷等に基づきエンジン2の燃焼モードを判定する燃焼モード判定部46と、燃焼モード判定部46の判定結果等に基づき吸排気バルブ22,23の開弁制御を行う開弁制御部47とを備えている。
【0022】
≪実施形態の作用≫
アイドルストップ時や減速走行時に燃料カットを行う場合、フュエルカット制御部45は、エンジン2に対するフュエルカットを開始すると同時に、燃焼モード判定部46および開弁制御部47に1としたフュエルカットフラグFfcを出力する。なお、フュエルカットフラグFfcの値は、フュエルカット実行中には1となり、フュエルカットを行っていない場合に0となる。
【0023】
<燃焼モード判定>
燃焼モード判定部46は、フュエルカット制御部45から入力したフュエルカットフラグFfcが1となった時点で、図3のフローチャートにその手順を示す燃焼モード判定制御を所定の制御間隔(例えば、10msec)で実行し始める。燃焼モード判定制御を開始すると、燃焼モード判定部46は、図3のステップS1でフュエルカットフラグFfcが1であるか否かを判定し、初回の判定は当然にYesとなるため、ステップS2で初期値NのフュエルカットカウンタCfcが0であるか否かを判定する。なお、フュエルカットカウンタCfcは、フュエルカットの解除時にHCCI運転を行えるか否かを判定するためのカウンタであり、その値が0になると(すなわち、所定時間が経過すると)筒内温度が低下してエンジン2の再始動時にSI運転が選択される。ここで、初期値Nは比較的値の大きな自然数である。
【0024】
フュエルカット開始直後にはステップS2の判定がNoとなるため、燃焼モード判定部46は、ステップS3でHCCI待機フラグFhstbを1とした後、ステップS4でフュエルカットカウンタCfcを1だけデクリメントする。フュエルカットカウンタCfcが0にならないうちにフュエルカットが解除された場合、フュエルカットの解除時点ではHCCI待機フラグFhstbが1となる(図4)。また、フュエルカットが所定時間継続して行われ、フュエルカットカウンタCfcが0になると、燃焼モード判定部46は、ステップS5でHCCI待機フラグFhstbを0とする(図5)。
【0025】
自動車を再発進させるべく運転者がアクセルペダル43を踏み込むと、フュエルカット制御部45は、フュエルカットを解除すると同時に、燃焼モード判定部46に値を0としたフュエルカットフラグFfcを出力する。すると、ステップS1の判定がNoとなるため、燃焼モード判定部46は、ステップS6でHCCI環境条件が成立しているか否かを判定する。そして、この判定がNoであれば、燃焼モード判定部46は、ステップS7でフュエルカットカウンタCfcを0とし、ステップS8でHCCI待機フラグFhstbを0とし、ステップS9でHCCI許可フラグFhcciを0とする。なお、HCCI環境条件の成立は、吸気温度や冷却水温度、吸気圧力等に基づき、図示しないマップや演算式から判定される。
【0026】
一方、HCCI環境条件が成立してステップS6の判定がYesになると、燃焼モード判定部46は、ステップS10で、エンジン回転速度NEにエンジン負荷LEを乗じることで得られたフュエルカットカウンタCfc(CFCHCCI)によりCFCHCCIマップを検索する。次に、燃焼モード判定部46は、ステップS11でフュエルカットカウンタCfcが0であるか否かを判定し、この判定がYesであればステップS12でHCCI待機フラグFhstbを0し、NoであればステップS13でHCCI待機フラグFhstbを1とする。
【0027】
次に、燃焼モード判定部46は、ステップS14で、フュエルカットフラグFfcの前回値Ffczが1であったか否かを判定する。そして、ステップS14の判定がYes(すなわち、フュエルカット解除直後)であった場合、燃焼モード判定部46は、ステップS15でHCCI待機フラグFhstbの値が1であるか否かを判定し、この判定がYesであればステップS16でHCCI許可フラグFhcciを1とし、NoであればステップS17でHCCI許可フラグFhcciを0とする。
【0028】
また、フュエルカットフラグFfcの前回値Ffczが0でステップS14の判定がNoとなった場合、燃焼モード判定部46は、ステップS18でHCCI許可条件が成立しているか否かを判定する。そして、燃焼モード判定部46は、ステップS18の判定がYesであればステップS16に移行してHCCI許可フラグFhcciを1とし、NoであればステップS9に移行してHCCI許可フラグFhcciを0とする。なお、HCCI許可条件の成立は、エンジン回転速度NEとエンジン負荷ELとから、図12のHCCI運転可能負荷領域マップを用いて判定される。
【0029】
<開弁制御>
開弁制御部47は、フュエルカット制御部45から入力したフュエルカットフラグFfcが1となった時点で、図6のフローチャートにその手順を示す開弁制御を所定の制御間隔(例えば、10msec)で実行し始める。開弁制御を開始すると、開弁制御部47は、図6のステップS21でフュエルカットフラグFfcが1であるか否かを判定し、初回の判定は当然にYesとなるため、ステップS22でHCCI待機フラグFhstbが0であるか否かを判定する。ステップS22の初回の判定は上述した燃焼モード判定でHCCI待機フラグFhstbが1となることでNoとなることから、開弁制御部47は、なんら処理を行わずにスタートに戻る。
【0030】
自動車を再発進させるべく運転者がアクセルペダル43を踏み込むと、フュエルカット制御部45は、フュエルカットを解除すると同時に、開弁制御部47に値を0としたフュエルカットフラグFfcを出力する。すると、ステップS21の判定がNoとなるため、開弁制御部47は、ステップS23でフュエルカットフラグ条件(F_FC条件)の成立が1回だけであったか否かを判定し、この判定がNoであればなんら処理を行わずにスタートに戻る。なお、F_FC条件の成立は、減速フュエルカット時においてはエンジン回転速度NEやアクセルペダル踏込量等によって判定され、アイドルストップ時においては車速やアクセルペダル踏込量、制動量、エアコン負荷、バッテリ充電状態等によって判定される。
【0031】
フュエルカットフラグ条件の成立が1回だけであり、ステップS23の判定がYesとなった場合、開弁制御部47は、ステップS24でHCCI待機フラグFhstbが1であるか否かを判定し、この判定がYes(すなわち、フュエルカット解除後にHCCI運転が可能な状況)であれば、ステップS25でHCCI許可フラグFhcciが0であるか否かを判定する。そして、この判定がYesとなった場合、開弁制御部47は、ステップS26で第1開弁モードをもって吸排気バルブを駆動制御する。
【0032】
(第1開弁モード)
図7に示すように、開弁制御部47は、SI運転時(サイクル1)にフュエルカットが開始されると、吸気バルブ22を全閉とする一方で排気バルブ23を小リフトで駆動してEGRガスを気筒内にとどめる(サイクル2)。次に、開弁制御部47は、吸排気バルブ22,23をともに全閉してEGRガスを気筒内に残留させる(サイクル3〜5)、フュエルカット解除後に吸気バルブ22を小リフトで駆動して新気を導入させる(サイクル6)。これにより、EGRガスの熱によって気筒の温度低下が抑制されるとともに、フュエルカット解除後に不要となったEGRガスが排出される。しかる後、開弁制御部47は、HCCI運転を開始すべく開始吸排気バルブ22,23を小リフトで駆動する(サイクル7,8)。
【0033】
HCCI許可フラグFhcciが1でステップS25の判定がNoとなった場合、開弁制御部47は、ステップS27で第2開弁モードをもって吸排気バルブを駆動制御する
【0034】
(第2開弁モード)
図8に示すように、開弁制御部47は、HCCI運転時(サイクル1)にフュエルカットが開始されると、吸気バルブ22を全閉とする一方で排気バルブ23を小リフトで駆動してEGRガスを気筒内にとどめる(サイクル2)。次に、開弁制御部47は、吸排気バルブ22,23をともに全閉してEGRガスを気筒内に残留させる(サイクル3〜5)、フュエルカット解除後に吸気バルブ22を小リフトで駆動して新気を導入させる(サイクル6)。これにより、EGRガスの熱によって気筒の温度低下が抑制されるとともに、フュエルカット解除後に不要となったEGRガスが排出される。しかる後、開弁制御部47は、HCCI運転を開始すべく開始吸排気バルブ22,23を小リフトで駆動する(サイクル7,8)。
【0035】
一方、HCCI待機フラグFhstbが0でステップS24の判定がNoとなると、開弁制御部47は、ステップS28でHCCI許可フラグFhcciが0であるか否かを判定する。そして、この判定がYesとなった場合、開弁制御部47は、ステップS29で第3開弁モードをもって吸排気バルブを駆動制御する。
【0036】
(第3開弁モード)
図9に示すように、開弁制御部47は、SI運転時(サイクル1)にフュエルカットが開始されると、吸気バルブ22を全閉とする一方で排気バルブ23を大リフトで駆動してEGRガス(排気ガス)を気筒外に排出させる(サイクル2)。次に、開弁制御部47は、吸排気バルブ22,23をともに全閉し(サイクル3〜5)、フュエルカット解除後に吸気バルブ22を大リフトで駆動して新気を導入させる(サイクル6)。しかる後、開弁制御部47は、SI運転を開始すべく開始吸排気バルブ22,23を大リフトで駆動する(サイクル7,8)。
【0037】
HCCI許可フラグFhcciが1でステップS28の判定がNoとなった場合、開弁制御部47は、ステップS30で第4開弁モードをもって吸排気バルブを駆動制御する。
(第4開弁モード)
図10に示すように、開弁制御部47は、HCCI運転時(サイクル1)にフュエルカットが開始されると、吸気バルブ22を全閉とする一方で排気バルブ23を小リフトで駆動してEGRガスを気筒内にとどめる(サイクル2)。次に、開弁制御部47は、排気バルブ23を大リフトで駆動してEGRガス(排気ガス)を気筒外に排出させ(サイクル3)、吸排気バルブ22,23をともに全閉する(サイクル4,5)。次に、開弁制御部47は、フュエルカット解除後に吸気バルブ22を大リフトで駆動して新気を導入させ(サイクル6)、SI運転を開始すべく吸排気バルブ22,23を大リフトで駆動する(サイクル7,8)。
【0038】
また、HCCI待機フラグFhstbが0でステップS22の判定がYesになると、開弁制御部47は、ステップS31でHCCI待機フラグFhstbの前回値Fhstbzが1であるか否かを判定し、この判定がNoであれば(すなわち、HCCI待機フラグFhstbの値に変化が無ければ)、なんら処理を行わずにスタートに戻る。
【0039】
前回値Fhstbzが1でステップS31の判定がYesになると、開弁制御部47は、ステップS32で第5開弁モードをもって吸排気バルブを駆動制御する。
(第5開弁モード)
図11に示すように、開弁制御部47は、SI運転時(サイクル1)にフュエルカットが開始されると、吸気バルブ22を全閉とする一方で排気バルブ23を小リフトで駆動してEGRガスを気筒内にとどめ(サイクル2)、吸排気バルブ22,23をともに全閉してEGRガスを気筒内に残留させる(サイクル3,4)。次に、開弁制御部47は、排気バルブ23を大リフトで駆動してEGRガスを気筒外に排出させ(サイクル5)、吸排気バルブ22,23をともに再び全閉する(サイクル6)。次に、開弁制御部47は、フュエルカット解除後に吸気バルブ22を大リフトで駆動して新気を導入させ(サイクル7)、SI運転を開始すべく吸排気バルブ22,23を大リフトで駆動する(サイクル8)。
【0040】
本実施形態では、上述した構成を採ったことにより、フュエルカット後にHCCI運転が実行される比率が従来装置に較べて高くなり、熱効率の向上や有害排出ガス成分の減少等を実現できる。
【0041】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明はこれら実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態はハイブリッド車に搭載されるHCCIエンジンに本発明を適用したものであるが、通常の自動車に搭載されるHCCIエンジンにも当然に適用可能である。その他、パワーユニットの具体的構成や制御の具体的手順等についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 パワーユニット
2 エンジン
22 吸気バルブ
23 排気バルブ
26,27 可変動弁機構(開弁特性可変手段)
41 PCU
45 フュエルカット制御部
46 燃焼モード判定部
47 開弁制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予混合圧縮着火燃焼によるHCCI運転と火花点火燃焼によるSI運転とを選択可能な内燃機関を制御する制御装置であって、
フュエルカット開始時点での内燃機関の運転状態に応じ、フュエルカット解除時に前記内燃機関をHCCI運転できるか否かを判定するHCCI可否判定手段を備え、
前記HCCI可否判定手段の判定結果が肯定であった場合、フュエルカット解除時から前記内燃機関をHCCI運転することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
少なくとも排気バルブの開弁特性を変化させることができる開弁特性可変手段を更に備え、
前記HCCI可否判定手段の判定結果が肯定であった場合、気筒内に内部EGRガスを多く残留させるべく、フュエルカットを行う燃焼サイクルの排気行程中に排気バルブを閉弁させる時期を早めることを特徴とする、請求項1に記載された内燃機関の制御装置。
【請求項3】
内部EGRガスを多く残留させた気筒において、吸気バルブと排気バルブとの少なくとも一方を休止させることを特徴とする、請求項2に記載された内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記HCCI可否判定手段の判定結果が否定であった場合、気筒内のEGRガスを掃気すべく、フュエルカット中に吸気バルブおよび排気バルブの休止を解除することを特徴とする、請求項2または請求項3に記載された内燃機関の制御装置。
【請求項5】
フュエルカット開始時点での内燃機関の運転状態に応じ、フュエルカット解除時に前記内燃機関をHCCI運転できるHCCI可能期間をフュエルカット開始時点を起点として設定するHCCI期間設定手段を更に備え、
フュエルカットの継続期間が前記HCCI可能期間内にあれば、フュエルカット解除時から前記内燃機関をHCCI運転することを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載された内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記内燃機関の筒内温度を推定する筒内温度推定手段を更に備え、
前記筒内温度が所定のHCCI可能温度範囲内にあれば、フュエルカットからの復帰時に前記内燃機関をHCCI運転することを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載された内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−185170(P2011−185170A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51852(P2010−51852)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】